【サポート優先】本日は花見日和、テロル日和。
これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)
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「大変じゃー! 帝都軍がテロルに巻き込まれるのじゃー!」
サクラミラージュに咲き誇る幻朧桜が再現されたグリモアベースの一角に、グリモア猟兵氷長・霰(角型宝石人形、なわけないのじゃ角娘じゃ・f13150)の声が響く。
猟兵たちが集まる中、グリモア猟兵は予知した光景について説明を始めた。
「さて、まずは今回テロルの標的にされた帝都軍なる存在について説明しよう。
影朧への対処、そして昨今のサクラミラージュを騒がすテロルへの対応には帝都桜學府が行っておる。では帝都軍をはじめ各国の軍部は何をしているのか。それは『保安及び治安維持』なのじゃ」
猟兵達の中には帝都桜學府と協力しテロルの阻止に努めた者もいるだろう。猟兵に労いの言葉をかけた後、グリモア猟兵は資料の続きを読み上げた。
「帝都軍は地味で目立たないと言われておる様じゃが彼らは市民の安全を守ることを誇りに思っている。彼らを狙うテロルを防ぐのが今回の任務の目的じゃ!」
グリモア猟兵が予知した屯所では市民と交流を深めるため、広大な敷地に沢山の花壇や花畑が作られていた。
軍人と市民が協力して苗や木を植え、水を撒き、そして春の花が一斉に開花した。
空は青く幻朧桜の花びらは風に舞う。
格好の花見日和だと軍人と市民が手を取り合い喜んだちょうどその日。
「一般市民に扮していた影朧『梅代』がテロルを開始する。
梅代は『テロルのスクープ』を独占し、脚光を浴びたいがためにテロルを引き起こした。最早その魂は堕ちきり救えぬ。遠慮はいらぬ、撃破してくれ」
梅代はまず花の姿をした影朧『誘花の影朧』を屯所中にばら撒いた。
根を張った『誘花の影朧』は人を誘う香気を発し、市民が次々と花の中へと倒れていったという。
「花自体はさほど驚異では無いが数が多い。すなわち巻き込まれた市民や帝都軍の数も多い。帝都軍は自分たちでは対処しきれないと現地にいた帝都桜學府に応援を要請したのじじゃ」
帝都桜學府と帝都軍が連携して市民を守らねばならない状況。
猟兵の誰かが「それは陽動ではないか」と口を開けば、グリモア猟兵は苦々しい表情を浮かべ頷いた。
「向こうの思惑通りに動かなければというのは不本意であるが撒かれた花の数と場所が多いのじゃ。まずは迅速に帝都軍に加勢し、市民への被害を少しでも減らしてほしい」
現場となる屯所の目立つ場所に、梅代の姿は既にない。混乱に乗じてテロルを成功させるため隠れ潜んでいるのかもしれないとグリモア猟兵は自分の推測を語る。
「となれば、花を刈った後は影朧探し、か。皆には多くの仕事を任せることになるがテロルは絶対に阻止せねばならない!」
猟兵達に任務遂行の協力を訴えたグリモア猟兵は転送ゲートを展開した後、個人的なお願いだと前置きをし振り返る。
「転移先は快晴。幻朧桜は今日も満開。そして、花も満開。……ただ咲いているだけの無実の花々をあまり無為に散らしてほしくない、のじゃ」
硅孔雀
ここまで目を通していただきありがとうございます。
初めてのサポート優先シナリオです。
硅孔雀です。サクサク進行を心がけます。
●構成
第1章:集団戦『誘花の影朧』×複数。
屯所中の花畑や花壇、庭園に紛れて大量に咲いています。
独自のプレイングボーナスとして【植えられた花を無為に傷つけず、影朧のみ倒す】があります。
人々の救出についてはプレイングに言及が無くても自動で成功します。ボーナスもペナルティーもありません。
第2章:冒険『庭園の隠れ鬼』。
広大な敷地のどこかに梅代は隠れました。見つけてください。
第3章:ボス戦『梅代』×1体。
帝都への敵意と悪意に染まった影朧、「テロル影朧」と化した強力なボスオブリビオンです。
その魂は既に堕ち、もはや鎮まることはありません。倒してください。
●プレイング受付
サポート優先シナリオですが通常のプレイング、オーバーロードも募集しております。
執筆できる間に進め、完結するを目標にしています。
また、全てのサポートプレイングを採用することは出来ないことをご了承ください。
●連絡事項
・どの章からでも参加して頂いてOKです!飛び入り参加、特定の章のみの参加大歓迎です!
・過度に性的・グロテスクなプレイングは採用しません。
・キャラクターシートの年齢が20歳未満のPCさんの飲酒・喫煙は描写しません。
・連携希望など:MSページに簡略化の項目がございます。一読して頂けますと幸いです。
第1章 集団戦
『誘花の影朧』
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POW : 気まぐれな落花
【舞い散る花】に触れた対象の【戦う意思】を奪ったり、逆に与えたりできる。
SPD : 花あそび
【花の香り】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
WIZ : 花檻のたわむれ
レベルm半径内を【所構わずに咲く花】で覆い、[所構わずに咲く花]に触れた敵から【攻撃力】を吸収する。
👑11
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キノ・コバルトリュフ
マーツータケ、キノコセラピーはいかがかな?
かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!!
美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ!
ナメコ!?なんだか、目が血走ってるね。
キノは食べても……おいしいけど食べちゃダメだからー。
●
繁殖する『誘花の影朧』に触れ花見客が倒れる。騒然とした屯所内では帝都軍が民間人を助けようと花畑に飛び込む。しかしそれは、木乃伊取りが木乃伊になる結果を招くだけだった。
悲鳴と怒号。そして訪れる沈黙。目の前の惨状に咄嗟にハンカチを口に押し当てた花見客はぎゅうと強く手を握りしめた。花の鮮やかな色彩が、香りがこんなにも恐ろしいと感じたことは無く震えている。
『……?』
嗅ぎなれない匂いがした。
否、正確には、『今の時期』には体験しない匂いだ。
『土瓶蒸し……?』
美味しいお酒と花と、美味しい料理。楽しい記憶がふいに蘇る。
「かぐわしいキノコ! マツータケ! キノコセラピー絶好調!」
記憶にない大きな大きなキノコの傘と青空のような鮮やかな青の髪。
『わあ!』
食欲を誘う香しいキノコの香りを漂わせたキノ・コバルトリュフ
(キノコつむり の星霊術士・f39074)は紫色の目を細め、不安げな様子の花見客に手を伸ばした。
「キノキノ、キノが来たからもー大丈夫。ニオウシメジに乗ったつもりでどんとこい!」
キノコ傘をゆらゆらと揺らしながらキノはにっこりと笑う。そして、無差別に人から力を奪う混沌の坩堝と化した花畑の一点を指さし退路を示した。
「キノキノ、わるーい花の薄い場所発見! 逃げるチャンス!」
『で、でも……あの花、どんどん増殖して……!』
「キノキノ、元気ない?」
猟兵キノが現場に到着したとはいえ、一般人である花見客は超弩級戦力を持つ彼女一人だけでこの窮地を脱することが出来るのか心配だと花見客は口にした。
ふんふんと頷いた
「それならば。かぐわしいキノコは香りマツタケ、味シメジ!!」
キノのユーベルコヲド:ベルベットパフュームで周囲を包むかぐわしい香りが強化された。
元より楽しい宴を開いていた場所にキノコのいい匂いが混ざる。春の訪れを待ちわびていた人々が抱いていた感情が揺り動かされ、心の奥底からキノコ型の炎が上がる。
『これは…!』
「美味しそうなキノコ香りはみんなを元気にさせちゃうよ!」
キノが杖と扇を振るいベルベットパヒュームを周囲に展開する。倒れていた人々は次々に起き上がり、自分達を助けに来たとキノの周囲へと駆け寄った。
「皆には指一本触れさせないよ!」
手にした扇を水平に薙ぎ払い、花粉一粒も残さずキノは『誘花の影朧』を散らしていく。
春の陽気な風にのって漂うキノコの芳醇な香りが人々を包み込み安全な空間と道を創り出していった。
大成功
🔵🔵🔵
パルピ・ペルポル(サポート)
名乗るときにはフルネーム。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用する。
基本は隠密行動。
空中に雨紡ぎの風糸を張り巡らせて攻守両方に利用し、敵の行動を阻害したところに穢れを知らぬ薔薇の蕾を併用して行動を封じる、もしくはそのまま糸で切り裂くのが主な攻撃方法。
もしくは徳用折り紙で作成した折り鶴を筆頭に折り紙動物たちをけしかけてのかく乱兼攻撃を行う。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしない。
好奇心旺盛ではあるが、行動は慎重。
お宝大好き。宝石などは勿論素材になりそうな物も出来る限り確保しエプロンのポケットに格納する。
もふもふは抵抗できないよう拘束してからもふる。
アドリブはご自由に。
「太陽に透かしてみればキラキラ光って宝石みたい。綺麗だわ」
幻朧桜の花びらはモルガナイトのように優しい色をしていて、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は丁寧にエプロンのポケットにそれをしまう。
緑の瞳に映るのは綺麗なものと美味しいもの……否、そうだった痕跡。ひっくり返されたお盆や中身が零れた酒瓶。倒れた人を飲み込もうと広がる『誘花の影朧』。
「綺麗な花を見て、美味しく楽しい思い出を作っている人達を巻き込むテロルは絶対に阻止しないと!」
ピンクに赤、黄色といった明るい花畑に浸食した彼らと同じ体躯のフェアリーであるパルピは、まずは羽を広げ戦場を見渡すことにした。
「これは。……花の数も多いし、倒れている人も多い」
普段は隠密行動を得意としているパルピだが、相手となる『誘花の影朧』は上空を飛び交う自分を認識している様子はない。であれば大胆に行動が出来る、と頷き。
「鶴にカエルに牛に……とにかく沢山!」
青空の下、パルピは空に向かって色や柄が様々な【徳用折り紙セット】を放り投げた。風邪で折り紙がバラバラに吹き散るよりも早く空を舞い次々に動物の形を折る。
「さあ皆、倒れている人を助けながら危ない花達は切って退治!」
『──!!』
折り紙のライオンに跨ったパルピが明るい声で指示を出し、折り紙動物たちが応えるように吼える。
鳥たちはその嘴で人を持ち上げ、牛の群れは背中にぐったりとした人を抱え、手を伸ばすように攻撃を開始した『誘花の影朧』を虫たちが食む。
彼らの救助とかく乱兼攻撃を前に少しずつ『誘花の影朧』はその数を減らすが、根絶には至っていなかった。
「それじゃあ纏めて縛って」
蜘蛛の糸より細く、柔軟性と強度を兼ね備えた透明な【雨紡ぎの風糸】を手にパルピは縦横無尽に花畑の中を飛び交う。花を捕えるように大きな輪、網の形を描いた所で風糸を引き、空に向かって花を縛り上げ、【穢れを知らぬ薔薇の蕾】を花開かせ、その拷問具の茨の中へと押し込み刻んでいく。
空中で美しい花びらの嵐が吹き荒れる中、パルピはうんと羽を大きく広げ、花の渦へと飛び込んだ。
「ちょっとばかり付き合ってあげて……」
ユーベルコヲド:どこでも井戸端会議(ドトウノゴトクナガレユクコトバノゲキリュウ)で無数のおしゃべり妖精がお友達の印を発見し集まってくる。
姦しい妖精たちのお喋りの話題は美しい花吹雪の中でどう自分達を輝かせるかであった
成功
🔵🔵🔴
セレナリア・アーチボルト(サポート)
『どんなピンチもズバッと解決! このメイドにおまかせあれ!』
一人称:私(わたくし)
二人称:〜様、貴方
離れ離れの主人を探して彷徨うメイドです
全ての行動は主人を想ってでありオブリビオン退治もその一環です
なお、主人に関する記憶の一切を無くしているため「なんかあの人、主人っぽくないですか?」という雑な判断により老若男女を問いません
戦闘冒険日常問わず大抵の事は「メイドですから!」と物理的にゴリ押しでどうにかします
おおよそメイドらしからぬ事でもメイドに不可能はないのでどうにでもします(よろしくお願いします)
比較的穏便ですが「こいつ主人じゃないな」と気づきだしたら扱いがやや雑になりますが命に別状はありません
バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』
年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?
下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も
アドリブ、連携歓迎
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猟兵達の活躍により『誘花の影朧』が広がる花畑や花壇から人々が避難を始めた。
混乱していた帝都軍達も落ち着きを取り戻し、救護班を設置。
花見に使われていた鮮やかな敷物で覆われたそこに二人の猟兵はいた。
「ちょっと体温が高くて汗もかいている。氷で冷やすのと熱さまし……そう、そこの粉薬を湯に溶いて」
ウロコに覆われた蛇の下半身、尻尾の先で薬棚を指?さしたのは通りすがりの薬剤師バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)。
「お待たせしました! 全力で汗拭き氷嚢取り替えて、スペシャルなお薬を飲んで回復をー!」
サクラミラージュの世界に溶け込むクラシカルなメイド服、ロングスカート姿で患者の間を駆けまわるのは通りすがりのメイドセレナリア・アーチボルト(鉄壁のお手伝いさん・f19515)。
勿論二人の猟兵はテロルの阻止の説明を受け転送してきた身であったが。
「あら。逃げようとして擦りむいたのね……ほおって置けないわ。まずは水で洗いましょう」
「主人はきっとこのシチュエーションを目にしたら、まずは人々を助けよと私(わたくし)に命じるはずです! メイドのご奉仕精神を見せる時!」
「あら」
「はい! 主人がどこからか見ているかもしれません。お手伝いいたします!」
薬剤師兼救急医とメイドの即席コンビはこうして誕生した。
二人の的確な治療と介抱によって、帝都軍や花見に参加していた一般人は落ち着きを取り戻し、自主的に避難活動を手伝うまでに回復した。
パニック状態から起こるであろう二次災害を未然に防いだ二人の前に、意識を取り戻した軍人たちが集まる。超弩級戦力である二人の力になればと屯所内の地図を持ちだし、誘花の影朧の増殖が酷い箇所を伝えに来たのだ。
『先程見回りの者が確認したところ、西にある花畑と、その近くで作ったばかりの花壇が特に……』
「ありがとう。効率的に採取しちゃいましょうか」
「はい! 庭の手入れはメイドの基本! 大掃除です!」
バジルとセレナリアは協力してくれる人々に見送られ、花畑へ向かう。
「ふむ。毒草だけどこれは……」
ちょっと持って帰りたくなるわね、なんてとマッドサイエンティストな部分を見せながらバジルは揺れる花々を観察する。花びらが風に吹かれてバジルの元に飛ぶが──触れる寸前でセレナリアが手にしたはたきでぱしん!と叩き落とす。
「倒れた皆さんは花に触れた時に『力が抜けた』や『立っていられなくなった』と仰られていました」
とっても危険です!綺麗ですが主人の庭を覆ってしまったら大変です!と頬を膨らませたセレナリア。
「……その、セレナリアちゃん。主人というのは、」
「はい! 私すっかりその姿もお声も忘れてしまっていますが、離れ離れとなった主人が私を待っているのです」
「そ、そう」
「もしかしたら。きっと。いいえ恐らく主人はこの混乱を収めて見せよと見守っているはずです! バジル様も見守っててください! 為せば成る! 成さねばならぬ! と申しますので!」
セレナリアのユーベルコヲド:従者の夢(ドラマチック・メイキング)は自身の思い──無敵の自身の理想を描いたメイド像──を想像から現実に想像する。故にメイドとして生きる存在セレナリアに無限で無敵の力を与えるのだ。
「私は主人じゃないし、欲しいのはどちらかというとモルモ……助手の方がいいのだけれど、セレナリアちゃん。花を採取してもらうと助かるわ」
「お任せあれ!」
ランバージャックと大型のハンマーを振り上げ、猪突猛進とばかりにメイドが花畑の掃除を開始する。
無敵のメイドは花を無為に揺らし花びらを散らさない。無敵のメイドは花の根から丁寧に切り出し、他の花を傷つけたりしない。もし『誘花の影朧』が意識を持つ存在ならば、自分達が関知するより早くその身が宙に浮いたことに驚きの声を上げたかもしれない。
鮮やかに影朧を刈り取っていくセレナリアに負けていられない。なんて冗談めいたことを言いながらバジルも動く。
「植物は専門外だけど、影朧ならば人や動物相手の毒薬も多少は効果あるはず、ね」
手にしていた【ヒュギエイアの薬箱】の中から数本のアンプルを取り出し、封を切る。
「これとこれを混ぜて……意思を持ったカビの完成」
妖しく光る薬が『誘花の影朧』に触れると、根や葉、そして鮮やかな花びらといった全てが萎れている。
「おお!」
「植物の敵は害虫と病気。私の命で作用する植物をコントロール出来る毒薬を散布するわ」
美しい花畑を蝕む『誘花の影朧』だけが枯れていく。
「そして、トドメは……薬も過ぎれば毒となる。元々毒だけど、たっぷりと味わいなさい」
ユーベルコヲド:ポイズン・スピアで生み出された無数の槍。その穂先にはバジル調合した毒を混ぜられ、主人の命の元発射される。
春を告げる花を散らすことなく、二人は『誘花の影朧』のみを正確無比に駆除していった。
成功
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東・よるは
色は桜。浪漫謳う大正の色。
帝都軍が地味で目立たないという意見に対しては、大黒柱という単語で以て反論したい。
市民の安全の中心にあるもの、穢される事を侮ってはならない。
その為にも桜の精が、帝都桜學府があると知りなさい。
花を踏み荒らしてしまう?
最初から空中浮遊で浮けば良いのです。
人々を助ける為には、こうした軽いフットワークも必要。
少しでも被害が減るのなら、それのみでも願ったり叶ったりですよ。
UCを発動。花の香りが命中するという道理から宙に浮き、自在な空中機動にて花を傷付ける事なく誘花の影朧のみを閃夜で切断。
悪い花を浄化し慰め奉る、今はそれを優先してやります。
報道の自由という別世界の言葉がありますが…
自由には責任が伴う。
人を害す自由を得ようというのであれば尚更。
であるならば、わたくしも選びますからね。
どの様に影朧を救うのかではなく……
どの様にあれを消すのかを。
桜の精としていつも『選んで』きたことです。
堕ち切った者改善無き者、
大罪有りき最悪も癌たる最善も――
世界を明確に滅ぼす、毒ですから。
●
『猟兵さんが花を刈り取ってくれたんだ……!』
『そりゃあ良かった。あの帝都桜學府お墨付きの方々だ、俺達みたいな裏方も助けてくれるなんてありがたい』
「……裏方?」
救護室に凛とした……そして、少し怒気を含んだ少女、東・よるはの声(風なるよるは・f36266)が響いた。
慌てて振り返る帝都軍の若い兵士に東はふっと微笑む。桜の精の証である桜の花びらがはらりと落ちる。
「帝都の、いいえ、この世界に生きる市民の安全の中心……大黒柱は帝都桜學府ではなく帝都軍の皆様でしょう」
サクラミラージュに咲き誇る幻朧桜。
伸びた大木の影──影朧を刃と穢れなき魂を持って鎮める桜の精の學徒兵である自分。
大木に集う人々の安全を守る、精神的な支柱である帝都軍の若い兵士達。
二つの組織に優劣などはない。東はこほんと息を整え語りかけた。
「市民の安全の中心にあるもの、穢される事を侮ってはならない。その為にも桜の精が、帝都桜學府があると知りなさい」
平和を支える帝都軍がいるからこそ帝都桜學府は脅威の排除を行えるのですから。
(「だから、安心して欲しい。」)
花が綻ぶような笑顔を浮かべ霊刀【閃夜】を抜き東は影朧の掃討戦へと向かった。
桜色。
浪漫謳う大正の色の光を灯すその刃の光に一瞬見とれていた兵士達は慌て、彼女に戦況を伝えるべく走り出す。
手入れの行き届いている美しい花畑には未だ無数の『誘花の影朧』が存在していた。
他の花々が割く地に根を張り、色とりどりの色彩に混じり花を開かせる。
兵士の案内で訓練用に組み立てられた櫓に上っていた東は花畑全体を見回し状況を確認していた。
「(さて。花を踏み荒らさないで、かつ、全てを祓うには……)」
住民や帝都軍の避難が完了した現在では花畑に足を踏み入れ、根から影朧を断つのも一つの作戦ではある。
しかし、被害を受ける他の花、花を慈しむ帝都軍や人々の心を傷つける結果になってしまう選択肢を当然東は選ばなかった。
「(最初から浮けば……そう、花の香りの届かない上空からの行動であれば十分対処できる。それより……)」
東は少し前、慌てた様子の兵士達との会話を思い出していた。
『一般人に紛れていた影朧の首謀者
……!?』
「はい。新聞記者の風貌をした……このような……」
『お、おい俺昨日そんな女と話したぞ!』
訓練を終え日課である花の手入れをしていた兵士に女は語り掛ける。
勇ましい兵隊さん。大きな戦はないのに今日も鍛えているのかい。嫌にならないのか。
『それで自分は、帝都軍として市民の身に危険が無ければ幾らでも暇でいいと答えました』
女は苦々しい顔をして舌打ちをした。全く、そんなんじゃあスクープの欠片にもならないじゃないか。
忌々しい、忌々しいと踵を返し歩いていく女の影は揺れていた。
「花に罪も無く。影朧にも罪はない。……とはいえ、人を害してしまった以上首謀者は祓う必要がある」
首謀者であるテロル影朧と堕ちた『梅代』の姿はどこにもなく花だけが静かに風に吹かれて揺れている戦場。
テロルのスクープに執着しているという彼女の姿を探したが、猟兵の手により脅威が取り除かれたの察知し身を潜めているのだろうと東は結論を出す。
であれば、今最優先すべきは残存戦力の掃討。
「……桜の風。平和を揺らす影を祓うよるはに力を」
祈るように言の葉を紡ぎ足場の櫓を蹴り上げ桜の精は空を飛んだ。身軽な猟兵の体を支えるように吹く風に乗り、かつ花の香りの漂うそれを避けながら空中を自在に東は動く。
まるで意思を持っているかのように『誘花の影朧』は葉や花びらの形状を巨大化させ、花の絨毯へと東を捉えようとするが。
「残念。わたくしの体に傷を付けることは出来ない──彼方より、桜在れ」
サクラミラージュ、果ては世界に存在する次元の壁という理すら捻じ曲げる神の権能、ユーベルコヲド:Xi(ワレソラヲマウサクラナリ)を発動した彼女は赤や黄、青の花で出来た縄を簡単にすり抜ける。
空を縦横無尽に駆け回り、動く影朧を一か所に集めるかのように東は宙を飛び交い続ける。祈りの言葉を歌うように口ずさみ、悪い花を浄化し慰め奉ることに精神を集中する。
そして、全ての花に祈りを込めた東は【閃夜】を掲げ、振り下ろす。
「その色に、花に、安らぎが訪れますように……!」
桜色に輝く刃の光が影朧を包み込み、一瞬花畑を包み込む。
大きな衝撃音と共に風は吹き荒れ。
「ひとまず、わたくしの任務は完了しました」
花畑の花を踏み荒らさないよう花壇そばに降り立った東の頭上に降り注ぐのは『誘花の影朧』の残骸、溶けて消えていく儚い花弁だった。
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『……くそ! こうなったら』
「……! 待ちなさい!」
花の雨が静かに降り注ぐ駐屯所、東の視界端に映った『彼女』が逃げる。
瞬時にそれがテロル影朧『梅代』だと悟った猟兵は走る。
「(報道の自由という別世界の言葉がありますが……自由には責任が伴う。人を害す自由を得ようというのであれば尚更。)」
猶更その魂の在り方を許すわけにはいかない。
旧棟に逃げたぞ!と叫ぶ兵士達の声を聞き、東は息を弾ませながら向かう。
桜の精としていつも『選んで』きたこと。
堕ち切った者、改善無き者、大罪有りき最悪も癌たる最善も――世界を明確に滅ぼす、毒だから。
「テロル、毒を流し世界を脅かすのであれば、わたくしも選びますからね」
どの様に影朧を救うのかではなく……どの様に『あれ』を消すのかを。
蔦に覆われた旧棟の奥へと姿を消した『梅代』。
その後姿を決して忘れない、と猟兵は入り口の前に立っていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『庭園の隠れ鬼』
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POW : 池の中等、危険そうな場所を調べる
SPD : 植え込み等、物陰の多い場所を調べる
WIZ : 花壇等、人目を惹きやすそうな場所を調べる
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駐屯所の旧棟、かつては空中庭園として開放されていた場所へと猟兵達は足を踏み入れた。
屋上だということを忘れそうになるほどに広く、庭木や花はそこに在った。
程花の色に染められた花壇は今も尚美しく、庭師が訪れることの無くなった庭木は自由に重なり合い無数の物陰を作り出している。
とっくに池の水は抜いたのに、と猟兵を案内した駐屯所の兵隊たちは青ざめた顔で呟く。
青く澄んだ水から顔を出した鯉がぷくりと泡を出し、猟兵達を出迎えた
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奇妙な様子の庭園に隠れた『梅代』を探す章です。
過去と現実が入り混じった不思議な空間と化した庭園というシチュエーションです。
ティエン・ファン(サポート)
シルバーレイン出身の除霊建築士です。
明るく善良な性格で、できることがあるならば、できる限りを全うしようとします。
除霊建築士というジョブに拘りがあるため、その知識や技術が活かせそうな場面では、積極的にそれらを使って問題解決に取り組みます。
戦闘時は主武器のT定規と副武器の浄銭貫を用いて、近距離戦も遠距離戦も行います。
キャバリアが有効な場面では、『蚩尤』を使用します。
『蚩尤』は普段イグニッションカードに収納しています。
ユーベルコードは『蚩尤』搭乗時は”蚩尤”とついたものを、そうでないときはその他のものを状況に応じて使用します。
以上を基本として、シナリオに合わせて思うままに動かして頂ければと思います。
キノ・コバルトリュフ
エリンギ!今日は楽しくハイキング!!
シメジ、なんだか周りが騒がしいね。
でも、キノたちは気にしなーい。
キノ?スピちゃんどこに行ったのかな?
シイタケ、おいしいお菓子とか用意したのに。
帰ってきた、どこに行ってたの?
軽く運動でもしてきたのかな?
マイタケ、それじゃあ、いただきます。
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テロルの首謀者『梅代』が逃げ込んだ空中庭園。
手入れするものがいなくなり思う存分に枝葉を伸ばした茂みがあり、その横には植えたばかりのように整然と並ぶ花々達の姿もあった。
「キノコも沢山あるねー。じめじめ湿度に原木沢山!」
並び立つ庭木の根元ですくすくと育っているきのこをキノ・コバルトリュフ(
キノコつむりの星霊術士・f39074)は発見し、嬉しそうに覗き込む。
閉鎖されて久しいと駐屯所の関係者は言っていたが。
「間引きされた跡にー菌床にお日様の光がピカピカしないように日陰もばっちり……毎日お手入れ、んー?」
紫の瞳でぐるりと庭園を見て回ったキノはこてりと首を傾げる。
とても綺麗な所だ、と呟こうとした時。
同じく庭園に足を踏み入れたティエン・ファン(除霊建築学フィールドワーカー・f36098)が同じく首を傾げていることに気が付いた。
「どーしました?」
いつも明るい笑顔をしているティエンは怪訝そうな表情を浮かべ、慎重に辺りを見回す。
「手入れは行き届いているし、木や花から感じる『気』は澄んでいる。だけど、ここの、ううん、建物全体に不浄な気が満ちている」
「エリンギ! そんなことが分かるんですか!?」
「私は学生の頃から除霊建築士だから、かな。この手の『様子のおかしい建物』にはちょっと人より鼻が利くんだ」
黒い瞳がキラリと輝く。
除霊建築士として銀の雨降る世界を生き、今も尚勉学に励み建造物──庭園に満ちた不浄な残留思念をティエンは感じ取っていた。
「ほうほう。建物に漂う妖しいパワーと。キノの生まれ故郷も星霊建築で不思議な建物いっぱいありました!」
「星霊建築!」
珍しいとティエンはいつもの明るい笑みを浮かべた。
シルバーレイン世界とエンドブレイカー世界。
異なる世界を故郷に持つ猟兵達はお互いの世界に伝わる仙術に魔術、神秘の力について知識を共有しながら庭園を散策することにした。
「穢れを生み出す類の祠や妖しい場所は無し、と」
「スピちゃん元気いっぱいだね。キノコもたくさんあってテンションアップ!」
キノの頭にある大きなキノコ笠から顔を出した星霊スピカのスピちゃんは楽しそうに尻尾を揺らした。
庭園全体をくまなく散策し分かった事。
「ひとつ。この庭園は過去や今、時間の流れを狂わせるように幾重にも不浄な気が渦巻いている」
「ふたーつ。影朧さんは重なった時間軸を行ったり来たりして行動しているので、今のキノ達には捕まえることが出来ない!」
影朧の捕獲どころか遭遇も難しい状況だと分かった今。
しかし、二人の猟兵は余裕たっぷりと言った様子で頷き合う。
「折角相手が作ってくれた仕掛けがあるのなら、それを利用して捕まえちゃおうね! 現れ出でよ、見えざる迷宮!」
除霊建築学・八卦迷宮(ジョレイケンチクガク・ハッケメイキュウ)。
ティエンの発動したユーベルコヲドの力により気の流れが乱される。庭園の草木が暴風に晒されるが如く揺れ動き、迷路を作り上げる。
『なんだいこれは!』
庭園の遠くから『梅代』の悲鳴が上がる。
「ふふん。そこから動けないって次は驚くんじゃないのかな?」
ティエンが悪戯っぽく呟くと、影朧が「草木が邪魔で動けない!」とさらに声を上げた。
続いてばさばさ、ぼきぼき、という派手な音が立てられ、キノとスピちゃんは顔を合わせ眉をひそめる。
「キノコさん達の大事なお家が危ない! スピちゃん。手筈通りにお願いしまーす!」
キノはスピちゃんを抱きしめ、ユーベルコヲド:星霊スピカの力を与える。
楽しい庭園散策で深まった二人の絆の力は強く、より強大な魔力の奔流を生み出した。
「スピちゃん、レッツゴー
!」「!」
ティエンが生み出した迷路の出口は一つしかない。
慌てふためきながら迷路を突破しようとしている相手をその方向に追い立てることが出来れば──。
『うわあ! こっちに来るんじゃないよ!』
スピちゃんはキノがお願いした通り影朧を威嚇し、出口の方へと誘導しているようだ。
「スピちゃん虐めちゃだめだよー!」
「そうだそうだー!」
ティエンとキノはあらかじめ決めていた迷路の出口、草木が比較的少ない場所へと移動する。
影朧が暴れても損害を与えない場所を二人はあらかじめ選んでいたのだ。
「キノコには罪がないの!」
「うん。不浄な気を祓うことと建物を壊すことはイコールじゃないからね。駐屯所の人達が大切にしていた庭園を滅茶苦茶にするならお仕置きだよ」
猟兵の思慮深い行動に礼を言うかのように庭木がひときわ大きく揺れ、まるでお辞儀をしているかのようにしなる。
穏やかな時を過ごしていた庭園、否、帝国軍を脅かす闖入者との邂逅までもう少し。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
東・よるは
池の水を抜いただけで起こる代物ではありませんか。
時間が混ざらなければここまでの様相にはならぬのです。
…ここに、隠れていたと言うのでしょう?
わたくしも逃げていく姿は見ていましたから。
……しらみつぶしに探していたのでは旧棟から場所を移動される可能性がある。隠れ鬼なら焦ることも無いとは言いつつも、他の猟兵くんたちのアクションもあるでしょうから、それを考えると……
……もって20秒が限界か。
静寂をば――
左手を20秒かざす事で『梅代』を発見・確保する行動の成功率を高め、その状態で素早く行動に出ます。勿論花は花弁ひとひらとも踏み荒らさぬよう、空中機動と空中浮遊を用いて宙舞うように探し追いかけましょう。
そして辿り着き捕まえることが叶ったのなら――挨拶でもしておきましょうか。
こんにちは、堕ち切ってしまった新聞記者さん。
まだ人の生命を、花を穢す報道の自由をお望みですか?
これ以上そんな望み方はしてほしくないのですがね。
心を改めようという意志も無くまだ足掻くのならば。
花弁が如く
消去ても仕方ないわね?
●
東・よるは(風なるよるは・f36266)が旧棟──かつての空中庭園への扉を勢いよく開く。
古びた木材の軋む音の先に広がっていたのは美しい庭だった。
「成程。池の水を抜いただけで起こる代物ではありませんか」
苔むした庭石とは対照的に水車は軽やかに周り、水が池に流れる光景は東に強烈な違和感を与える。
(「本来の池と過去の姿を重ね合わせているかのように感じます」)
影朧『梅代』が他の影朧を駐屯所にばら撒いたような、外部から持ち込まれた力によって空間の異常は発生していない。そう東は冷静に考え、更なる答えを導き出そうと思案に耽る。
「元からある……そう、元あるものを重ねて、混ぜている。時間が混ざらなければここまでの様相にはならぬのです」
放棄された庭園。過去にあった庭園。
影朧テロルを起こすに至った動機は未だに彼女本人から語られていないが、彼女には世の理を捻じ曲げる力を持っているのであろうか。
(「帝都の安全を守る帝都軍にいつから目を付けていたのかはまだ分からないけど、」)
東は桜の花びらを揺らしながらゆっくりと歩き出す。
花壇を揺らす優しい風が、花びらをひらひらと庭園に漂わせた。
「彼女は必ずここにいます……わたくしも逃げていく姿は見ていましたから」
恐らく影朧は駐屯所でテロルを起こすと決めた際に拠点として庭園を選んでいたのであろう。穏やかな風、ざわざわと音を立てて揺れる庭木、いろとりどり花壇。まるで時が止まり──否、時が歪んだ庭園に潜んでいた闇。
「荒ぶる心を欲に染めたその魂が鎮まることを祈るのが平和に繋がる……とはいえ」
隠れ潜んでいる魂が堕ちに墜ちているのなら、學徒兵として、猟兵として東が進むべく道はただ一つ。
霊刀【閃夜】が纏う光は魔を祓う、鋭利な輝きを放つ銀のそれであった。
(「さて……しらみつぶしに探していたのでは旧棟から場所を移動される可能性がある」)
他の猟兵との足並みを揃える意味でも、無為に時間を凄し捜索するのは状況を悪化させるだけだと東は庭を見渡す。
隠れた影朧の気配を探ろうとしたが、正に、
「隠れ鬼そのもの。……だとすれば今は隠れている方が無難であると、わたくしに対して危害を加えることはない」
焦って庭園の美観を損ねる可能性や、取り逃がして駐屯所の兵隊達を危険な目にあわす事態には繋がらないだろう。
だとしても、と東は精神を集中する。
影朧をここで逃がしてはならない。
「……もって20秒が限界か」
『静寂をば――』
翳された左手に意識を集中する。
ユーベルコヲド:活路在リテ(カツロアリテ)の発動条件が整う。
庭園を吹き抜ける風の勢いが強まり、風が東の体を吹き抜け……分かった、と小さな声が庭園に響く
「見えました。わたくしから逃げようなどと思わないでくださいね」
そう呟くと、素早い動作で東は庭石を蹴り上げた。
花壇の上空へと躍り出た彼女は、花弁ひとひらとも踏み荒らさぬよう、宙舞うように陣取り影朧の姿を探す。
「……! 見えました」
霊刀【閃夜】を掲げ、東は振り下ろす。過去と現実、理が重なっているその縫い目は一刀両断され──。
『ああっ! あたしの姿が!』
「こんにちは、堕ち切ってしまった新聞記者さん。まだ人の生命を、花を穢す報道の自由をお望みですか?」
花弁一枚も散らすことなく影朧『梅代』の前に東は降り立つ。
「これ以上そんな望み方はしてほしくないのですがね」
荒ぶる魂がこれ以上堕ちないように。次の生に向け明るく見送りたいと東は思っていた。
『は! あんた達猟兵の奴らが来たっていうのならむしろスクープゲットのチャンスってい奴だね!』
影朧を取り巻く邪悪な気が膨れ上がる。底知れない悪意。敵意。最早その魂は救えない。
(「嗚呼。心を改めようという意志も無くまだ足掻くのならば。」)
──花弁が如く
消去ても仕方ないわね?
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『梅代』
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POW : ペンは何者より強し
自身に【帝都で起きた殺人事件の怨念】をまとい、高速移動と【手にした万年筆の斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 鮮血紅梅の予告状
【血のインキで文章を書くこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【刃の様に鋭く硬い予告状】で攻撃する。
WIZ : !プークス大すが騒都帝
対象への質問と共に、【自身が綴った文章】から【帝都を騒がせた殺人鬼】を召喚する。満足な答えを得るまで、帝都を騒がせた殺人鬼は対象を【サクラミラージュにある武器】で攻撃する。
👑11
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●
猟兵達の活躍により奇妙な庭園は姿を変える。
花は萎れ、庭木は枯れ、水面は濁っていく。
庭園の中央を陣取った影朧『梅代』は自身の内にある苛立ちを隠すことなく叫んだ。
『ああ! もう! 間抜けな軍人共なんざあたしのスクープの元に晒されていれば良かったものを!』
テロルを防げなかった醜態を自分のスクープとして取り上げたかった。脚光を浴びたかった。
生前彼女に向けられることの無かった賞賛。
拍手代わりに響くのは、庭園の枯れ木が強風により折れる音だけだ。
『にくい、にくいにくい! あたしの邪魔をしやがって!』
テロル影朧として膨れ上がる巨大な力を半ば暴走させながら、猟兵達へと『梅代』は襲い掛かる。
キノ・コバルトリュフ(サポート)
キノキノ、キノが来たから
もう、大丈夫だよ。
キノノ?キノだけじゃ心配だって?
マツタケ!キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!
トリュフ!!キノ達の活躍を見せてあげるよ。
シメジ?キノが苦戦はありえないけど、その時は一発逆転を狙っていくよ。
キノキノ、みんなよろしくね。
●
『これは一体……!』
猟兵のサポートをしようと慌てて駆けつけた帝都軍の若い兵士が動揺する。
影朧は心が傷ついた存在であり、サクラミラージュを生きる人々を無差別に傷つける者ではないはずだ。しかし、目の前にいる『梅代』は世界の全てが憎いと言わんばかりに兵士と猟兵を睨む。
「キノキノ。皆は下がってて。ここにはキノがいるから大丈夫だよ」
猟兵キノ・コバルトリュフ(
キノコつむりの星霊術士・f39074)は兵士たちを落ち着かせた。
頭にある大きな【キノ笠】にぶら下がっていた星霊スピカの【スピちゃん】も兵士達を癒そうと尻尾を振り体を擦り付ける。
「今の影朧ちゃんはとってもデンジャラス! カエンタケ!」
『し、しかし守られてばかりというのも……』
超弩級の戦力である猟兵達の活躍に刺激を受けたのか、帝都軍は暴動鎮圧用の装備を纏い臨戦態勢だ。
「それじゃあ皆は庭園を守って欲しいの。キノコさんや他の植物も生きているから。守って!」
キノコたち、そして、花や木が傷つけられるのはキノも本意ではない。
兵士達は頷き、隊列を組み庭園の保護に向かった。
『兵隊が花? キノコ? そんなちっぽけなもん守ってるんじゃないよ! あんた達それでも軍人なのかい!』
兵士達の行動が気に入らない『梅代』が叫ぶと、彼女の背後からぬらりと巨大な影が現れる。
帝都を騒がせた殺人鬼、『梅代』の考えるスクープになる犯人が召喚され兵士達に襲い掛かる。
「危ない!」
キノは慌てて殺人鬼を薙ぎ払うように【世界樹の原木】を振るい、兵士達を守る。
「エリンギ! サクラミラージュの皆やキノコを守ることだって大切なことだよ!」
『わっ!』
キノ笠や菌糸服から噴出される胞子を目くらましがわりにしながらキノは『梅代』を攻撃する。
「一気に決めるよ。スピちゃん、キノに力を与えて!」
キノの祈りに応えるようにスピちゃんは尻尾を大きく振るい、膨らませる。
ユーベルコヲド:星霊スピカの発動と共にスピちゃんは尻尾だけではなく全身の毛を逆立て、『梅代』の前に飛び出した。
『くそ、何するんだい!』
踊るように『梅代』の死角から死角を飛び、舞い、スピちゃんは『梅代』の注意を引く。
「マッシュルームにしいたけさん! 明日に向かってにょきにょきエノキスイング!」
世界樹の原木を握るキノは力を最大限に込める。
腰を落とし、世界樹の原木──バットの芯に『梅代』の体を捉え。
「キノコの星まで飛んで行っちゃえ。シメジ!」
『ぎゃ、ぎゃあああ!』
成功
🔵🔵🔴
四条・眠斗(サポート)
ぅゅ……くぅ……あらぁ?
いつの間にか始まってましたかぁ?
さっさと事件を解決しないとぉ、安心してもうひと眠りできませんからねぇ。
ユーベルコードは出し惜しみしても仕方ありませんからぁ、
一気に片づけるつもりでやっちゃいましょう。
こう見えてもぉ、腕には少し自信があるのですよぉ。
それにぃ、様子を見てる間にまた眠くなっちゃっても困っちゃいますしぃ。
荒事じゃなくてぇ、楽しいことならめいっぱい楽しんじゃいましょう。
のんびりできるところとかぁ、動物さんがたくさんいるところなんか素敵ですよねぇ。
でもぉ、身体を動かすのも好きですよぉ。
お互いに納得の上で全力が出せると一番良いですよねぇ。
※アドリブ・絡み歓迎
アンガンチュール・アルヴィトル(サポート)
えっと…エンジェルのバロックメイカー×死霊術士、28歳の女です。
普段の口調は「僕っ娘(僕、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」。
大切な人には「少女(わたし、あなた、~さん、ね、よ、なの、なの?)」です。
吃音気味です。
…自分で言うのもなんですが、基本的に怖がりで、慎重に動く事を好みます。
自分で何かしようとすると高確率で失敗すると思っているので、可能な限り召喚したバロックレギオンにやらせたがります。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
絡みOK、NGなし。
あとはおまかせします。よろしくおねがいします…。
佐藤・和鏡子(サポート)
佐藤和鏡子、15歳。
看護用モデルのミレナリィドールです。
服装はスクール水着の上にセーラー服の上着を着て看護帽を被っています。
銀色の髪と紫色の瞳に白い肌が特徴です。
看護用モデルらしく温和な心優しい性格で困っている人に積極的に手助けします。
(看護兵×ハイウェイスターなので医療技術と運転技術に特に強いです)
戦闘では回復や援護など防御的な立ち回りをします。
(ユーベルコードは状況に応じて使用します)
描写におけるタブーは一切ありませんので、NPC・フリー素材感覚で自由に使い倒して頂いて大丈夫です。
●
『ちくしょう……この、ふざけんじゃないわよ!』
猟兵の攻撃を受けた影朧『梅代』が再び猟兵の前に立ちふさがる。
帝都への敵意と悪意に染まった影朧、「テロル影朧」と化した彼女の目に留まったのは。
「ぅゅ……くぅ……あらぁ? いつの間にか始まってましたかぁ?」
「兵士の皆さん、お怪我はありませんでしたか? 手当てが必要な方は遠慮なく声をかけてくださいね」
「あ、あの……」
瞼を擦りながら銀の目をゆっくりと瞬かせる四条・眠斗(白雪の眠り姫・f37257)の体を支えながら、看護用ミレナリィドールの佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)が可愛らしい【救急箱】を掲げ帝都軍の兵士に声をかける。影朧からの殺気を真正面から浴びながら一人は背伸びをしながらあくびをし、一人はニコニコと笑顔で怪我人人はいないか確認する。
二人のマイペースな様子に思わず物陰に隠れていたアンガンチュール・アルヴィトル(ブロウクンハート・エンジェル・f34491)は姿を現し、声をかけていた。
「あ、あの人が……影朧、なんですよね」
「うん。怖そうな人だねぇ」
「それは大変です。お二方、怪我をしたら私が治しますよ」
「け、怪我をするのは……怖いです……僕が何かをすると、い、いやなことが起きてしまうので」
自分で何か行動を起こすと失敗してしまう、と常日頃考えているアンガンチュールがぶるりと震えた。
その小動物めいた仕草に四条はあらあらぁと白い髪を揺らしながら微笑み、佐藤は紫色の瞳を輝かせながら看護用モデルとしてお助けしますと意気込む。
三人の愛らしい猟兵達が、今も尚鮮やかに咲き誇る花に包まれた庭園に立ち並ぶ姿。
『癒される……』『ずっと見ていたい……』『尊い……』
感嘆の声を漏らしたのは兵士達。
『あたしを無視するんじゃなないわよ! ムカつくわね!』
怒りの声を上げるのは影朧。
影朧は膨れ上がる憎悪を黒い瘴気へと変える。、
『あんた達! この小娘たちを……いいや、ここにいる奴ら全員やっちまいな!』
『──ぁ、ぁ』
影朧『梅代』が投げ捨てた紙の束、恐らくは彼女が昔綴ったであろう文章が記されたそれから影の体持つ化け物がが現れる。
「ひっ!」
怖がりの気が強いアンガンチュールにとって、その光景は恐怖を煽るには十分なもので。
「こ、こわいよぉ……助けて!」
ユーベルコヲド:ガーディアン・バロック(ガーディアン・バロック)、彼女の心を蝕む悪夢を人の形にしたようなバロックレギオンがアンガンチュールを守るように召喚された。
「おぉ、寄り掛かれそうな大きな枕さんねぇ。起きたばかりだけど、気持ちよさそう……」
おおきなぬいぐるみを抱きしめるかのように四条はバロックレギオンに寄り添う。
自分が召喚したバロックレギオンに対し無警戒に接近した四条にアンガンチュールは驚いた。
「あ、あ、あの、怖くないんですか……?」
「うにゅ? 大丈夫ですよぉ。それより、この抱き枕さんはとても丈夫そうですねぇ」
「だ、抱き枕……」
「それにとても頑丈ですね。私達を守ってくださる、大きなお人形さんです」
二人の会話を聞いていた佐藤は、うーんと少し考えこむ。
無敵の防御力を誇るアンガンチュールの召喚したバロックレギオン。
「こう見えてもぉ、腕には少し自信があるのですよぉ。攻撃ならお任せあれ、なんてねぇ」
と穏やかな口調の奥底に強い意思を感じる四条の言葉。
「……! そうです。この作戦なら……」
『あははは! 弱い軍人共め、精々殺人鬼の餌食になってあたしの描くスクープの材料にでもなっちまいな!』
庭園のあちこちで暴れまわる殺人鬼、応戦する兵士達、それを嘲り笑う影朧『梅代』。
しかし。
『ん……なんだい、あれ……は!?』
庭園の向こうから大きな獣が現れる。
鉄の肉体を大きく振るわせ、風を切る音と整備された地面を蹴り上げる疾走音。
「みえました。バロックレギオンさんの防御を2時の方角に展開してください」
「わ……分かりました!」
「わわ、揺れてるわぁ」
年代物のアメ車の【救急車】が勢いよく影朧目掛けて走る。
佐藤がアクセルを床まで踏み込み、エンジンは唸り声を上げ回転速度を上げる。
質量と加速、そしてバロックレギオンの防御力を合わせれば、影朧『梅代』の生みだした影など一撃で粉砕され。
『くそ! でも今のあたしには車なんか目じゃないわよ!』
テロル影朧と化したその身に溢れる力を手にした予告状へと込め、車体をそのまま切り捨てんと『梅代』は接近する。
「あらぁ、やっぱり飛び出してきましたねえ。それではぁ、一気に片付けちゃいましょうかぁ……」
救急車に揺られ、再び眠りの世界に入ろうとしていた四条が窓から顔を出す。
そして、ユーベルコヲド:ゲリラ豪雨(枕)(ゲリラゴウウトコロニヨリマクラ)で創り出された【枕の雨】が勢いよく『梅代』の体を貫く。
『が、あ、あ!』
「今です。お願いします!」
「は、はい!」
佐藤が叫び、アンガンチュールは一瞬怖くなり目を瞑る。
(「だ、だけど、……うん。打ち合わせ通り僕は動かない。バロックレギオンにお願いするのだから大丈夫」)
無敵の防御力を誇るバロックレギオンに身を守らせながらあえて、車体から身を乗り出し。
「ふ、吹き飛んでください……!」
庭園に響く衝撃音。
影朧の絶叫。
それはやがて、三人の猟兵が力を合わせ危機を脱したことを称える兵士達の歓声へと変わっていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
東・よるは
言葉が過ぎますよ、君。
脚光を浴びたいその想いは感じ取っていましたが――些か目に余る。
その戯言が聞くに耐ぬし……名声に過度に囚われた結果がこの有り様では是非も無し。
はっきり言いましょう。
君は人の不幸を、自分ばかりの特ダネを望み過ぎる。
これ以上テロルという形で恐怖をばら撒かれては困る。
そしてこうも言ったはずですよ。
花弁が如く
消去ても仕方ないと。
人に自分の何かを知ってほしいと願う生命がもっとも嫌うこと、ご存知ですか?
自分が誰からも望まれなくなること、そして。
自分が誰からも覚えてもらえなくなることですよ。
……いないいない、
真の姿に変身せず、左手に桜の暴風を発生させたまま、ゆっくりと近づきます。
予告状なぞは風で吹き飛ばしてしまえばいい。重要なのは彼女が直接手を加えにくることです。
その瞬間を狙い暴風を解き、その反発を利用して黒く染まった左手を触れさせましょう。
そうすれば分かりますから――自分がしてきたことの報いが、どれほどに痛烈か。
…このように稚拙な手段でごめんなさい。
それほどにこの度は。
●
美しい庭園を彩っていた花が色を失い、萎び枯れていく。
過去の栄華、幻想、或いは妄執のヴェールが捲られ、現実の庭園へと戻っていく。
それは帝都軍へのテロルを企てていた影朧『梅代』の力が弱まっていることを示していた。
『猟兵の畜生共め……! あたしのスクープをどうして邪魔するんだい!』
己の魂に眠る怒りや憎しみを燃料に『梅代』は地団太を踏んだ。
すると、彼女の怨嗟を形にしたような黒い炎が生まれ、庭園へと延焼する。
「影朧はわたくしが相手をいたします。帝都軍の皆様は安全確保を!」
『はい! 旧棟一帯に市民が近づかないよう誘導に回れ!』
東・よるは(風なるよるは・f36266)は、兵士達を落ち着かせ指示を出す。
(「人々の安全を守る、精神的な支柱である帝都軍は彼らの戦いを。そして──」)
息を吐き、呼吸を整え、東は霊刀【閃夜】を抜いた。
「言葉が過ぎますよ、君。脚光を浴びたいその想いは感じ取っていましたが――些か目に余る」
冷たく、そして、鋭利な刃を思わせるような声色で東は語り掛ける。
『うるさいねえ! あたしは、あたしは漸くスクープを』
「黙ってください……否。話していても構いません。もうわたくしの心にその叫び、綴られる記事は届かない」
『はぁ!?』
激昂する『梅代』に憐憫の欠片も見せず、東は言の葉を紡ぐ。
(「その戯言が聞くに耐ぬし……名声に過度に囚われた結果がこの有り様では是非も無し」)
「はっきり言いましょう。君は人の不幸を、自分ばかりの特ダネを望み過ぎる。……これ以上テロルという形で恐怖をばら撒かれては困る」
『ふん。言わせておけば! あたしがどれだけ、この帝都を揺るがすスクープを……賞賛を欲しがっていたと思ってるんだい!』
血のインキの滲む予告状。刃のように鋭利に研がれたそれを無数に召喚した『梅代』が叫ぶ。
主の怒りを表現したかのように予告状は竜巻の如く渦巻き、東へと襲い掛かる。
「……どこまでも自分勝手な悪意をばら撒き、そして、平和を脅かすのですね」
『!?』
無数の斬撃に切り刻まれるはずの猟兵は、その場を動かないまま【閃夜】を抜き、竜巻を斬る。
その動作一つで庭園の枯草の上に予告状の残骸が広がっていた。
「わたくしは、こうも言ったはずですよ」
心を改めようという意志も無くまだ足掻くのならば。
「花弁が如く
消去ても仕方ないと」
炎が庭園を飲み込み、煙が地を這うように流れていた。
枯れ木が爆ぜる音と共に煙が渦巻く。先ほど東が受けた予告状の竜巻を模した──否、それをも上回る規模の風が吹き荒れる。
『な、なんだい! あたしを斃そうっていうのかい!』
必死に叫ぶ『梅代』の声をかき消す暴風。
どこからか吹き込んできた幻朧桜の花びらと、東の頭上に咲き誇る桜の花びら。
そして【閃夜】から零れる桜の色が混じったその風の色は桜そのもの。
左手で暴風を制御し、右手で【閃夜】を構えたまま自分にゆっくりと歩み寄る東に怯えた『梅代』は予告状の竜巻を複数作っては接近を防ごうとする。
しかし、どれだけ大きな竜巻を作っても予告状は風で吹き飛ばされる。
『くそ……あたしが直接!』
勢いよく『梅代』が接近してきた瞬間。
「お待ちしていました」
『!?』
暴風を止めた東は、勢いよく飛び込んでくる影朧の顔を覗き込む。
「人に自分の何かを知ってほしいと願う生命がもっとも嫌うこと、ご存知ですか?
自分が誰からも望まれなくなること、そして」
「自分が誰からも覚えてもらえなくなることですよ。」
『あ……あ?』
影朧の本能が警鐘を『梅代』の脳内に鳴らす。
眼前に迫った東の瞳は自分を見つめていて、しかし、自分を見ていなかった。
恨みと憎しみに堕ちた自らを映し出す鏡のように冷ややかな光を帯びる白の瞳。
そして、己の顔に添えられる黒く染まった左手。
「……いないいない、」
影朧に対する憐憫や、平和を脅かしたことへの怒りを感じさせない声色で。
「ばあ」
猟兵東・よるはは、ユーベルコヲド:μ(イナイイナイ)を発動するその言葉を言い放った。
『はは……何をすると思ったら。汚い手であたしを触りやがって! 切り裂いてやる!』
大袈裟な芝居であたしを良くも騙したな、と影朧は予告状を握ろうとしたが、彼女はそれが出来なかった。
「右手、無いですね」
『……ぁ。ああああああ!!』
モダンな洋装。それに映える皮手袋、万年筆毎影朧の手は『消滅』してしまっていて。
炎に包まれる庭園に影朧『梅代』の絶叫が響き渡る。
『消える……消える? あ、あ、あ、あたしが!?』
「己の存在を刻みたい。脚光を浴びたい。そのために世界の理を乱すのであれば……散るのが相応しい罰。炎に焼かれた花は塵と化し、風に吹かれて消える」
消える。焼失。消滅。
呪文のように東は口ずさみ、蹲る『梅代』をじっと見据える。
(「堕ち切り救えぬ魂への答え。この黒く染まった左手が触れたなら、誰も君を―― 」)
その存在を証明するもの全てを消去する左手で影朧に触れた以上、それが辿る道はただ一つ。
「消滅」
『ぁ……いや、いやぁぁぁぁぁあああああ!』
「お分かりいただけましたでしょうか――自分がしてきたことの報いが、どれほどに痛烈か」
影朧の輪郭がぐにゃりと歪む。編み物の糸を解くように端々から『消え』ていく。
恨みを抱えたまま、堕ちた魂のまま存在が消される恐怖。
魂を癒す桜の精からの罰を受け、残されたわずかな時間影朧はもがき苦しみ。
「……このように稚拙な手段でごめんなさい」
消えた。
庭園は静まり返っていた。東の呼吸音だけが僅かに響く。
枯れた枝を広げる庭木だったもの。花壇だった土。干上がった池。
人々の記憶からやがて消え去られるであろう元庭園を月明りが照らしていた。
テロルの痕跡1つ残っていない戦場から、日常へと猟兵は帰還する。
誰もいない庭園の、土の上に一枚だけ桜の花弁が残されていた。
大成功
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