恋色アクアリウム~いつか、王子様と
足を運んでみた眼前の世界は、まるで海の中。
沢山の魚たちがひらりと泳いでいたり、海の生物がゆったり思い思いに行動している。
でも、今の水族館は、ちょっぴりだけいつもとは違うのだ。
色とりどりのハートのオブジェに、ほわり淡い色のライト。
水槽の中でのショーで飼育員がサメにあげていた餌もハート型。
そう――今の水族館は、期間限定のバレンタイン仕様。
そんなバレンタインアクアリウムを、ひとりでゆうらり。
揺蕩い泳ぐように散策しているのは、蒼月山・翡翠(恋焦がれし翡翠桜の娘・f25306)。
山奥の小さな村の生まれである彼女にとって、海の中の世界は珍しい彩りに溢れているし。
そこに息づく生き物たちをくるり、ひとり見て歩くのも悪くないのだけれど。
はじまったイルカショーを見ながらも、そっとひとつ。
そして、水族館のマスコットキャラにもなっているジンベエザメのジンザベス3世がいる巨大水槽の前でも……またひとつ。
つい、翡翠が零してしまうのは、溜息であった。
だって、どうしてもふと考えてしまうのだ――“あの時の王子様”のことを。
辿り着いた都会で影朧に追われていた自分を、救ってくれたあの人。
そんな緑髪の王子様のことを思えば、また翡翠は溜息をついてしまうのだけれど。
でも、大水槽が目の前で見られるアクアリウムカフェの席にちょこりと座って。
遊びにきてくれたジベザベス3世を眺めながらも、はむりと食べるのは……ジベザベス3世??
いえ、バレンタイン限定のジンザベス3世チョコエクレアです!
そして翡翠は、ジベザベス3世の大水槽はもちろんのこと。
ペンギンやマンボウやチンアナゴ等々、色々な海の生き物たちを見て回ったり。
まるで海底かのような、バレンタイン仕様の水槽トンネルを歩いてみたりしながらも。
恋色に染まっている水族館を揺蕩いつつ、こう思うのだった。
そう――「今度は王子様と行きたい」って。
成功
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