きん、と冴えた音を鳴らし、刀身が鞘に収められる。武藤誠也は息を一つ零した。
たった今、彼が完成させたのは、武器だった。外見は、退魔刀によく似ている。しかし、その刀身は非常に長く、小柄な者ならば腰に佩くだけで先端を地面に擦りかねない。
激化する影朧との戦いを想定して、広範囲を一度に攻撃出来るという点を重視して作り出したのがこの刀だ。まだ開発段階故に、実戦での試用を必要としている。
だが、並のユーベルコヲド使いでは、この刀を巧く取り回す事すら難しいだろう。誠也は眉間に皺を寄せて考え込んだ末――ひとつの結論に到達し、改良退魔刀の試作品を持って外へ出た。
帝都桜學府の内部には、帝都鍛冶司という技術部門が存在するのだと、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は猟兵達に告げた。
「そこに所属する鍛冶師の皆さんは、日々、新たな武装の開発と研究を行っています」
帝都鍛冶司の構成員は、みなサクラミラージュでもトップクラスの技術を持つ。刀や光線銃、動力甲冑のような個人装備ならば朝飯前。鉄道のような大型設備さえも、彼らの手による作品だという。
「帝都鍛冶司の鍛冶師の皆さんは製作技術が非常に高く、異世界の器物であっても図面から再現が可能なのだそうです」
例えば、スマアトフォンのようなものであっても、図面さえあれば作り上げてしまえるらしい。勿論、通信機器として使用するのは無理なのだが。
「その、帝都鍛冶司に所属する鍛冶師の一人……武藤誠也さんという方から、こちらに依頼が持ち込まれたのです」
武藤誠也は三十代半ばの鍛冶師だ。その武藤氏曰く、新型武装の試用に超弩級戦力である猟兵の力を借りたいのだという。
「武藤さんがお作りになったのは、退魔刀を改良して、広範囲を一度に攻撃出来るようにした刀です」
その刀身は通常の退魔刀よりも遥かに長く、当然ながら巧く取り回せる者も限られている。そこで、猟兵達に白羽の矢が立ったのだ。
「皆さんには、実際に戦闘で使用してみて、その実用性を確かめてみて頂きたいのです」
武藤氏が用意したのは、試作段階のものだ。使用してみて感じた不具合や改善点等があれば、それも教えて欲しいという。
是非とも忌憚なき意見を、と強調してらっしゃいましたと薙人は言う。
「皆さんに行って頂きたいのは、複数の影朧が存在する荒れ地です」
一般人の姿は無く、新型武装の試用にはうってつけだ。
「ただ、その荒れ地の奥には、一際強力な影朧の存在も感じられました。こちらの対処もお願い致します」
無事に影朧を倒し、新型武装の手応えを確かめ終わった後は、帝都に帰還する事になる。武藤氏は、そこにあるカフェーで猟兵達の報告を待ち侘びているようだ。
「カフェーで歓談しつつ、改良退魔刀の使い心地や改善点を教えて頂ければ、と武藤さんは仰っていました」
協力のお礼として、カフェーの会計は武藤氏が持ってくれるという。
それではお気を付けて、と薙人は掌にグリモアを浮かべた。
牧瀬花奈女
こんにちは。牧瀬花奈女です。
帝都鍛冶司(ていとかぬちつかさ)のシナリオをお届けします。
●一章
集団戦です。帝都鍛冶司に所属する鍛冶師の一人である武藤誠也(むとう・せいや)から預かった、改良退魔刀を使って影朧の群れを退治して下さい(武藤氏は三章までリプレイはに登場しません)
改良退魔刀の特性を活かして戦った場合・想定される欠点を補うように戦った場合はプレイングボーナスが付きます。
改良退魔刀の詳細等は断章にて。
●二章
ボス戦です。集団戦と同じく、改良退魔刀の特性を活かす・欠点を補う戦い方をした場合はプレイングボーナスが付きます。
詳細は断章にて。
●三章
カフェーにて、武藤氏と合流し、改良退魔刀の使い心地や改善点等を報告します。ここの会計は武藤氏が持ってくれるので、色々頼んでも大丈夫です。
この章のみ、プレイングにてお声掛けを頂いた場合、神臣・薙人がお邪魔します。武藤氏以外に話し相手が欲しい際等にどうぞ。
●その他
再送が発生した場合、タグ及びマスターページにて対応をお知らせ致します。再送が発生しても構わない、という方はプレイングの冒頭に○を記載頂けますと幸いです。
第1章 集団戦
『煙魔エグゾヲスト』
|
POW : ヴェノムスモッグ
肉体の一部もしくは全部を【様々な疫病を含んだ猛毒の瘴気】に変異させ、様々な疫病を含んだ猛毒の瘴気の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD : 煙魔轟身
自身と仲間達の【身体】が合体する。[身体]の大きさは合体数×1倍となり、全員の合計レベルに応じた強化を得る。
WIZ : 忍び寄る煙の魔刃
【闇煙の暗殺者(ハイドスモーカー)】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●
改良退魔刀は、集った猟兵の数だけ用意されていた。
それを受け取った猟兵達は、順に荒れ地へ転送される。辺りに一般人の姿は無く、障害となりそうなものも見当たらない。
改良退魔刀の刀身は通常の退魔刀の倍近くある。これならば、確かに一振りで多くの敵を斬り倒せそうだ。しかしその分、重みもあった。刀身が長いだけに取り回しが難しく、懐に飛び込まれた場合は対処が厳しいかもしれない。
この利点と欠点をどう戦いに活かすか。考える猟兵達の視界に、毒々しい色の煙が入り込んだ。煙は次々とその数を増やし、じりじりと距離を詰めて来る。
まずはこの意思持つ煙の悪魔をどうにかしなければならないようだ。
浅間・墨
〇
やはりこの退魔刀は私の背丈だと石突部分が地面を擦りますね。
ですが…慣れていないだけで抜けない長さではありません。
慣れるために何度か抜刀したかったですが無理そうですか…。
初めは技(ユーベルコード)を使用せず早業のみで斬ります。
周囲を警戒しつつ相手の攻撃を見切りと野生の勘で回避しますね。
抜刀時は刀の重量が生み出す抵抗などに逆らわずに抜きます。
無理に従わせようと力むと剣速が落ち威力が低下する…と思うので。
何度か斬りましたが…これは薙刀のように扱うのがよさそうですね。
鞘に納めるのを一旦中止し両手持ちで突きや払うように斬ります。
相手が間合いに入りそうになった場合は鞘で牽制しようと思います。
●
やはりこの退魔刀は、私の背丈だと石突部分が地面を擦りますね。
浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は改良退魔刀を腰に佩き、その長さを実感して思う。しかし、慣れぬ長さというだけで、抜けない訳ではない。
居合術の構えを取り、抜刀する。冴えた音が荒れ地に鳴った。
慣れるために何度か抜刀したかったですが――まっすぐに切り揃えられた前髪の合間から、墨はこちらへ迫る煙の悪魔を捉える。どうやらこれ以上は、実戦で練習するしかないらしい。
墨の顔を隠すように伸びた前髪は、しかし戦いを阻害する事は無い。赤茶色の瞳は煙魔の動きをしかと補捉し、突き出された腕の一撃を避ける。墨は一度鞘に収めた改良退魔刀を再び抜刀して、斬り付けた。その一振りで、複数の煙魔が霧のように散って行った。
見切る瞳で、或いはぴりと肌で感じる野生の勘で、墨は煙魔の攻撃を回避し改良退魔刀を振るっては鞘に収める。剣速が落ちないよう、刀の重量に逆らわぬように柄を引けば、刃は鞘からすらりと滑らかに抜け出た。無理に従わせようと力めば却って威力を殺す事になるという墨の見立ては、どうやら正しかったらしい。
何度か抜刀と納刀を繰り返した後、墨は煙魔達から距離を取った。動きやすいように仕立て直した装束の袴が、足首の辺りを掠める。
これは薙刀のように扱うのがよさそうですね。
幾つもの煙魔を散らした感覚から、そう判断する。墨は鞘に収める動きを一旦中止して、改良退魔刀を両手持ちにした。
正面から突進して来る煙魔の腹を、突き出した刃が貫く。一突きに巻き込まれた煙魔達が、幾体かまとめて散り消える。横合いから迫る煙魔を、今度は払う動きで退けた。
もう、と墨の鼻先に煙の気配が漂う。煙魔が懐へ忍び寄る前に、鞘で打ち払った。
間合いを取った煙魔を刃で薙ぎ払い、墨は未だ襲い来る敵を見据えた。
大成功
🔵🔵🔵
仁藤・衣笠
成程。影朧を試し斬れ、と。
浮気が過ぎると儂の刀に愛想を尽かされる故、手短に済まそうか。
儂のユーベルコヲドは愛刀なくして使えぬのでな。
多少粗く、力(POW)で押し通るとしよう。
退魔の刀。その実、野太刀に等しいものとみた。
本来この刃渡りは徒歩には不向きじゃが……遣りようは、幾らでも。
縮地の法にて駆け跳躍の後、背に抱えた刀を大上段にて振り下ろす。
勢い殺さず、地を打たぬよう太刀筋を横へ。
物は使いよう、縦にばかり薙ぐから邪魔になる。
太い幹に食い込ませては無用の長物。
首、腕、細いところを狙って鋭く刎ね、
途切れぬよう見舞えば間合いも活かせよう。
煙を吸う前に足を削ぎ、弱ったところへ止めを刺すと致そう。
●
――成程。影朧を試し斬れ、と。
仁藤・衣笠(浪こさじ・f38633)は、群れを成す煙の悪魔達を見て片目を眇めた。
「浮気が過ぎると儂の刀に愛想を尽かされる故、手短に済まそうか」
衣笠はそう独り言つと、改良退魔刀を鞘から抜き放つ。彼のユーベルコヲドは愛刀なくしては使えない。傍目にはただの折れた刀に映ろうとも、衣笠にとっては無二の相棒に等しかった。
多少粗く、力で押し通る。改良退魔刀の柄が小さく鳴った。
この退魔の刀を、衣笠は野太刀に等しいものだと判断する。長過ぎる刃渡りは本来、徒歩には不向きだ。だが、遣りようは幾らでもある。
体を大きく前傾させて衣笠は地を蹴った。瞬き一度の間に、煙魔達との距離が縮まる。衣笠は跳躍した後、背に抱えた改良退魔刀を大上段にて振り下ろした。そのまま煙魔を縦に両断するかに思えた刃は、しかし途中でその太刀筋を横へと変える。長い刃は地を打たず、横に振り抜かれて複数の煙魔を一呼吸の間に塵へと還した。
「物は使いよう、縦にばかり薙ぐから邪魔になる」
煙魔の胸部は太い。幹に食い込ませては無用の長物だと、衣笠は細い首や腕を狙って刎ねる。枝葉のように払われたそれらが宙を舞う度、煙魔達がばらばらに捻れて消えて行った。
じりと、後退った衣笠の草履と荒れ地の間で、挟まれた小石が小さく音を立てる。その間も、改良退魔刀は一度の斬撃で複数の煙魔を散らし続けていた。
途切れぬよう見舞えば間合いも活かせよう。
衣笠の考え通り、切れ間の無い攻撃に煙魔達はこちらへ近付けないでいる。
腕を薙がれた煙魔の一体が、もう片方の腕を毒々しい色の煙に変えた。猛毒の瘴気だと、衣笠はすぐに見抜いた。
それが己が身に届く前に、改良退魔刀を振るう。鋭い色を帯びた一撃は、煙魔の足を正確に削いでいた。瘴気と化した片腕ごと、煙魔がまた仲間と共に消えて行く。
衣笠は小さく息を吐き、次の一撃をまた振るった。
大成功
🔵🔵🔵
エンマ・リョウカ
〇
盟友のキラさん(f38926)と向かおう
「ふむ…ご期待に添えられるかは分からないが、任せてもらうよ」
柄を握って感触を確かめ、これだけの大業物であれば
出身のアマツカグラの経験からもこう、と考える
「まずは…重さの為に力を入れて持ちたくなる所だけれど
柄はあくまで手首を返しやすいように優しく握り、
重さはもう片手を棟に添える事で支え…振う時は巨躯の重さに逆らわず」
キラさんに説明するように言葉を紡ぎ
両の手で構えた刀を、身体を回転させながら前に並ぶ煙の悪魔へ横薙ぎに振い
そのまま振り切るだけでなく、流れるように次の攻撃へ繋げ続ける
「懐に入られる事が弱点であれば、懐を作らない動きで対処…といった所かな」
キラティア・アルティガル
〇
盟友エンマ殿(f38929)との
先ず片手両手と持ってみる
ふむ…斯くの如きを大業物と言うとか
エンマ殿に聞いた気がするのう
「我は大刀は経験が無い。先ず型を見せて貰うとしよう」
友はアマツカグラの出じゃからの
おお!矢張り挙措の全てがぴたりと決まるのう
感心し真似はすれど…うむ。付け焼刃の我では難しやの
「なれば…心のままに振るう!」
デモンウィングにて魔翔
視えようが視えまいが上から薙ぎ払おう
大鎌の柄が良う斬れる刃物で出来ておると思わば良い
振り下ろさば膂力さえあれば斬力も増そう
よし!
「ふふ…素晴らしい斬れ味じゃ!」
ザンザ振り回す我と違い無駄一つ無く敵屠るエンマ殿
「組んで当たれば取りこぼしは無さそうじゃの!」
●
キラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)は荒れ地へ転送された後、まず改良退魔刀を片手で握った。次いで、両の手に。
ふむ、とキラティアはその長い刀身に緑の目を向ける。斯くの如きを大業物と言うと、隣に立つエンマ・リョウカ(紫月の侍・f38929)に聞いた気がする。
エンマ殿、と同じ武器を手にした盟友の名を呼べば、深く黒い瞳がキラティアを見る。
「我は大刀は経験が無い。先ず型を見せて貰うとしよう」
「ふむ……ご期待に添えられるかは分からないが、任せてもらうよ」
エンマはふっと柔和な笑みを浮かべ、改良退魔刀の柄を握る手に力を込めた。
これだけの大業物であれば。思考が出身地であるアマツカグラでの記憶を泳ぐ。刃の形、全体の重量、刀身の長さ。手にした武器の全てを考慮して、自らの取るべき型を決める。
幸いと言うべきなのか、斬るべき煙の悪魔達はエンマ達二人を攻撃対象に定めたようだった。
「まずは……重さの為に力を入れて持ちたくなる所だけれど、柄はあくまで手首を返しやすいように優しく握り、重さはもう片手を棟に添える事で支えて」
「こうかの?」
エンマの言葉と仕草から、キラティアは改良退魔刀の握り方を変える。先程よりは随分と持ちやすくなったが、エンマのようにうまく様にはならない。
「……振う時は巨躯の重さに逆らわず」
煙の悪魔達が射程に入った刹那、エンマは両手で構えた刃を体を回転させながら横薙ぎに振るう。複数の煙が、瞬き一度の間に掻き消えて行った。
キラティアへ説明するように言葉を紡ぎながらも、エンマの動きは刃を振り切るだけでは終わらない。そのまま、流れるように滑らかに次の動きを繋げ、煙の悪魔達を斬り裂き続ける。
おお、とキラティアは盟友の動きに目を見開いた。東方の都市国家であるアマツカグラの出自ゆえか、エンマは挙措の全てがぴたりと決まっている。煙の悪魔達も、順調にその数を減らしていた。
友にばかり任せている訳には行かぬとキラティアも動きを真似てみるが、やはりエンマのように流麗に立ち回る事は出来ない。
付け焼刃の我では難しやの。
胸中で呟いて、キラティアはすっと唇の端を持ち上げる。
「なれば……心のままに振るう!」
声の響きが消えるより早く、その背にデモンの黒き翼が生えた。ばさりと羽ばたく音に反応して煙の悪魔が暗殺者を召喚するも、その時既にキラティアは視認すら難しい速度で魔翔している。
視えようが視えまいが。キラティアは構わず空から刃を振るった。振り下ろされた刃に、煙の悪魔も、召喚された暗殺者も等しく刻まれる。
大鎌の柄が、良く切れる刃物で出来ていると思えば良いのだと、キラティアは自分なりにこの武器を理解した。膂力さえあれば、振り下ろせば斬力は増す。
「ふふ……素晴らしい斬れ味じゃ!」
「キラさんも馴染んで来たみたいだね」
キラティアへかける声は柔らかくも、煙の悪魔を斬るエンマの斬撃の鋭さは変わらない。霧のように散る悪魔達の残骸の合間を、途切れる事無く水の流れのように通り抜ける。
「懐に入られる事が弱点であれば、懐を作らない動きで対処……といった所かな」
ふっと、動きは止めぬままエンマが微笑む。
力でもって煙の悪魔を狩るキラティアには、エンマの動きに無駄なところは何一つ見えなかった。
「組んで当たれば取りこぼしは無さそうじゃの!」
空から降下し、煙の悪魔をまた数体まとめて葬る。闇煙の暗殺者もまた、幾体か霧散していた。
「そっちは頼むよ、キラさん」
エンマの声に、うむとキラティアが応じる。地上と空で、背と背が向き合う。
「こちらは任せて貰おうかの」
その背に負う翼の黒さとは対照的に、笑むキラティアの顔は無邪気ですらあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
〇
【護】
刀めっちゃ長!?
私が振るうには膂力が絶対的に足りませんね…うーん…あ、時人さんナイスアイディア!
じゃあククルカンさん、宜しくお願いしますね?
ようしでは…ククルカンさんの上から…じゃーんぷ!
そして勢いをのせて…斬る!
更にその後で自分の着地点にスターライト・エアリアルでティンクルスターを出し…再じゃーんぷ!
更に縦に横に斜めに出しまくり、勢いを付けて縦横無尽に…斬る切るKILL!
跳躍する高さ×跳ね回る勢い×刀の長さ=獅子奮迅疾風怒濤一刀両断!
「白燐星光舞空剣とでも名付けましょうかっ♪」なんて軽口言ってみたり
うん、膂力のなさを補う手段学べて、私も良い経験になりましたっ!
今後の参考にしましょう♪
葛城・時人
〇
【護】
新武器使い勝手やどうすれば的確に使えるか
見とくの絶対必要だもんね
うん、これは確かに難しい
陸井は元々日本刀系強いから心配しないけど
キアラには確かに長いかな
ってコトで提案
「良かったら俺のククルカンの上にチョイ乗りとーう!とかどう?」
キアラが上から斬、俺は構え通りがてら斬
クロスアタック的なと説明
陸井の足場と合わせたら全員で立体的な攻撃軸作れるよって
「って訳で往くよ!」
UC白燐武空翔のククルカンで敵を蹴散らしつつ
真横に構えて敵を切り裂いてく
キアラや陸井が乗って来たら一瞬片手で支えて
攻撃を躱したり俺も足場使わせて貰ったりしつつ的確に
斬れ味に不足はないね
良い訓練になるよ
「長い刀身も使いようだね!」
凶月・陸井
〇
【護】
説明を聞いてなんだか納得していた
そういう戦い方もあるし、それも面白いなって
だからこそ全力で手伝うよ
時人達から扱いに慣れてるだろうなって視線を感じるけど
この長さは俺も中々骨が折れそうだぞ
「ん-…膂力で振り回すのもいいけど、これは特性を活かす方がいいかな」
相棒の立体的な機動の提案に乗って
【神速「空閃」】を使用し足場を作成
自身の足場と時人のククルカンの力を借りて縦横無尽に跳ぶ
「まずはこれで敵を翻弄して、と」
後は柄頭ギリギリを握り込んで半身一歩後ろへ
そこから踏み込み、半身ごと腕を伸ばすよう突き出し
三間槍もかくやの距離から、高速の突きを叩き込む
「いい刀だ。こんな無茶な使い方でも手に馴染む」
●
手にかかる重みが、ずっしりとしている。葛城・時人(光望護花・f35294)は改良退魔刀の外観や重量を、ひとしきり確かめた。
新武器の使い勝手や、どうすれば的確に使えるのかを見ておくのは、絶対に必要な事だ。鞘を払いつつ時人はそう思う。
凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は改良退魔刀についての説明を聞いて、納得した思いを抱いていた。一度に複数を狩り取る。そのような戦い方もあるだろうし、それも面白い。だからこそ、全力で手伝う気持ちになった。
「刀めっちゃ長!?」
驚いた声を上げるのはキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)だ。小柄で細身のキアラがこの刀を振るうには、膂力が絶対的に足りない。
そう感じたのは時人もだった。日本刀系に強い陸井はともかく、キアラにとってこの刀は長過ぎる。
「キアラ。良かったら俺のククルカンの上にチョイ乗りとーう! とかどう?」
キアラが上から斬り、自分は構え通りがてら斬る。クロスアタック的な、という時人の提案に、キアラは碧眼を輝かせた。
「時人さんナイスアイディア!」
「よし。じゃあ、ククルカン呼ぶからねー」
時人の深い青の瞳が、笑みの形に細められる。その目は次いで、相棒たる陸井の方を向いた。信頼の乗った眼差しに、陸井は手の中の改良退魔刀へ目を落とす。
こういったものの扱いには慣れているだろう。視線に抱かれた信をひしひしと感じるが、この長さは陸井にとってもなかなか骨が折れそうだ。
「んー……膂力で振り回すのもいいけど、これは特性を活かす方がいいかな」
「あ。じゃあさ、陸井が空中に足場作って、ククルカンも合わせたら立体的な攻撃軸作れるよね」
相棒の提案に、なるほどと陸井は改良退魔刀を持ち上げる。幾度か空を切り裂けば、軌跡に残る不可視の斬撃が宙における足場となった。
「って訳で往くよ!」
時人の身の内から、荒ぶる巨大な
白燐蟲が呼び出される。純白の羽毛と翼持つ蛇の姿をしたククルカンは、羽ばたきと共にきゅいと一声鳴いた。
ユーベルコードの気配を察して、煙の悪魔達がぞろりと動き始める。飛翔するククルカンに跳び乗る時人に合わせて、宜しくお願いしますねとキアラも白い背へ身を躍らせた。小さな背中を、時人は瞬き一度の間、片手で支える。
「ようしでは……じゃーんぷ!」
ククルカンが煙魔に食らい付き散らして行くのを見て、キアラはぽんと高く跳躍した。落下の勢いを乗せ、煙魔達を撫で斬りにする。軽やかな音と共に着地点へ現れたのは、キアラ自身が呼び出したティンクルスターだ。極めて柔らかいそれをジャンプ台にして、また跳躍する。
無数にも思えるほど多く召喚されたティンクルスターは、あらゆる方角からキアラを受け止め、優しく宙へと送り出す。煙魔達も、呼び出された闇煙の暗殺者達も、ひとところに留まらないキアラを捕まえられぬまま斬られて行った。
「白燐星光舞空剣とでも名付けましょうかっ♪」
そんな軽口すら口をついて出る。
時人はククルカンの攻撃に合わせ、真横に構えた改良退魔刀を振るった。斬撃の餌食となった煙魔と暗殺者達が、霧のようになって大気中に散る。
煙魔の一体が周囲の仲間達と合体し、めりめりと音を立てて巨大化した。陸井はその目が自分を見ている事を察し、空中に作り出した足場へと跳んだ。一呼吸の間も置かず、次の足場へと跳ねる。
「まずはこれで敵を翻弄して、と」
陸井がその身を置く場所を変える度、巨大化した煙魔はぐるりぐるりと身を捩らせた。身を大きくした事で、素早く動き回る陸井を巧く標的に定められなくなったようだ。
ククルカンの背へ跳び移れば、頼もしい相棒の片手がひととき背を押さえてくれる。こちらの動きに翻弄される煙魔を見て、陸井はひらとククルカンから飛び降りた。改良退魔刀の柄頭ぎりぎりを握り締める。
「ククルカン、このまま攻撃継続。いいね」
時人は相棒の背から離した手でククルカンを軽く撫で、中空に残る足場へと跳ね飛んだ。そのまま、空中から煙魔達へ向けて改良退魔刀を横に振り抜く。
斬れ味に不足は無い。良い訓練になると、時人はまた一振りで煙魔と暗殺者達をまとめて斬り飛ばした。
「長い刀身も使いようだね!」
また不可視の斬撃が残した足場を幾つか経由して、時人はククルカンの上へ戻る。陸井がその隙に、巨大化した煙魔へ向けて踏み込み、半身ごと腕を伸ばすように突き出した。三間槍もかくやの距離から、高速の突きを叩き込む。巨大化した煙魔が、瞬く間に捻れて霧散した。
「いい刀だ。こんな無茶な使い方でも手に馴染む」
また空中の足場へと身の置きどころを変えながら、陸井は微笑んだ。
「うん、膂力のなさを補う手段学べて、私も良い経験になりましたっ! 今後の参考に、もう少し付き合ってもらいましょう♪」
まだ残る煙魔を見据え、キアラはティンクルスターからククルカンへと跳んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神塚・深雪
○
【麟鳳】
戦争くらいしか猟兵として動いてないパートナーを半ば強引に誘って来たので、少し浮かれ気味に見えるかもしれないですが、お仕事はお仕事ですからねっ。きちんとやりますよ!
(試作刀の実物を見て、手にして)これは、うん。確かに、ずっしり。
取り回し方を定めて動き始めたパートナーをみて
(あー、うん。なるほど。……ってことは)
と、意図を察して。
「そぉ……れぃっ!」
振りかぶって体重もUCも乗っけた斬撃をお見舞い!
「シェルの使い方のが向いてるっぽい気がする」
肯定してもらったら嬉しそうに言葉を返し。
「ふふー! ちゃんと見てるもの!」
褒めてもらえるのは、嬉しいし、一緒にこうやってお仕事できるのも、嬉しい。
シェルリード・カミツカ
○
【麟鳳】
事前に聞いてはいたが、聞いてた以上に重さを感じる。
恐らく攻撃を主として扱うよりは、攻撃を受けいなす用途に重きを置いた上でトドメを刺すために範囲攻撃を使う用途向きかも知れないな。
重さ等を利用して攻撃する方の扱い方はパートナーに任せ、
UCに頼らず刀身で攻撃を受け止めてみる等、先述の用途としての扱い方で感触を確かめる事にする。
元よりそちらの戦い方のほうが性にあっているしな。
パートナーの攻撃に続き、追撃と斬りつけたあと
「……お前がそう言うなら、見立ては間違ってないってことか」
嬉しそうな視線に、少し喜ばせ過ぎたかと内心反省する。調子に乗らせると碌な事がない。
「……まだ敵は残ってる。行くぞ」
●
荒れ地に立つ神塚・深雪(光紡ぐ
麟姫・f35268)は少しばかり心が浮き立っていた。隣にパートナーであるシェルリード・カミツカ(
黄金の
鳳皇・f35465)がいるからだ。
シェルリードは大きな戦いの時くらいしか戦地に出て来てくれない。社会人としての生活に重きを置くシェルリードを、深雪は今回、半ば強引に誘い出していた。
自分の心がほんのりふわふわしているのを、深雪は自覚している。しかしお仕事はお仕事と、貸し出された改良退魔刀と向き合う。確かにずっしりしている。
そう思ったのは、シェルリードも同じだった。事前に聞いてはいたが、その時予想していた以上に重さを感じる。攻撃を主とするよりは、相手の攻撃を受けいなす用途に重きを置いた上で、とどめを刺すために範囲攻撃を使う用途に向いているかもしれないとシェルリードは考えた。
煙の悪魔達が、金と銀、二つのきらめきを見付けて接近して来る。突き出された腕をシェルリードは改良退魔刀を横に構えて受け流し、見えた隙を逃さず刃を振るった。複数体の煙魔がまとめて薙ぎ払われる。
動き始めたシェルリードを見て、深雪はその意図を察した。ならばと左の掌に浮かべるのは、三色の光だ。赤珠と瑠璃、そして玻璃の光が深雪の力を高める。
「そぉ……れぃっ!」
改良退魔刀を大きく振りかぶり、高まった力も乗せて眼前の煙魔へ斬撃をお見舞いした。長い刀身は後ろに控える煙魔まで届き、煙の体が霧の如く掻き消える。
その間もシェルリードは、煙魔の攻撃を受け流し切り返していた。猛毒の瘴気を漂わせる一体に追い打ちをかけ、宙に散らす。
「シェルの使い方のが向いてるっぽい気がする」
「……お前がそう言うなら、見立ては間違ってないってことか」
自らの言葉を肯定されて、深雪は満面にぎゅっと笑みを浮かべた。元より年齢より若く見える面差しが、尚更若さを増したようになる。あどけないとすら言えそうな、僅かな幼さも含んだ笑顔だった。
「ふふー! ちゃんと見てるもの!」
嬉しそうなパートナーの視線に、少し喜ばせ過ぎたかとシェルリードは内心で反省する。己のパートナーは、あまり調子に乗らせると碌な事が無いとシェルリードは常から思っていた。
「……まだ敵は残ってる。行くぞ」
「うんっ」
答える深雪の声は明るく弾んでいる。
褒められる事も、こうして隣で戦える事も。深雪にとっては胸の内が暖かくなるほど嬉しかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『悲哀ノ雪華』
|
POW : 豪雪破壊衝動
自身の【負の感情】を代償に、【雪の怪物】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【代償が保つ限り、無限に増え続ける雪の力】で戦う。
SPD : 機会を伺ツテ…嗚呼、憎イ、憎イ…!
非戦闘行為に没頭している間、自身の【次回の戦闘攻撃力を高め続ける体】が【消えて、あらゆるものを通過し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 愛呪ウ悲哀ノ雪華
【感情を爆発させて】から【呪いの吹雪】を放ち、【キスでしか治せない、物言わぬ雪像化の呪い】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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煙の悪魔達を退け、荒れ地の奥へと進んだ猟兵達に、ひゅうと寒風が吹き付けた。春はとうに訪れて、他の世界でも桜が咲き誇る時期だというのに。
歩を進めた猟兵達は、一人の少女の姿を見て取る。雪を孕んだ風が少女の掌から吹き荒れ、裂けた袴から伸びる足を曖昧にぼかしていた。
少女の瞳が赤く光り、猟兵達を見て憎々しげに歪む。
「なんでなンデ、貴方達は生きテイるの……憎イ憎イ……!」
この足元がおぼろな少女は、影朧だと猟兵達は察した。このまま放置する訳には行かない。
「私ハこんなニ寒イ、寒イのニ!」
びゅうと、再び冷たい風が吹く。
改良退魔刀をもって、いかにこの影朧と相対すべきか。猟兵達は考えなければならなかった。
仁藤・衣笠
はて……何ゆえ生きるとは、妙な事を申す。
生憎と、生き死にに理由を要するほどせんちめんたるではないのでな。
影朧ならば転生も叶おう。然し儂は、そうは頼まれておらぬ。
退魔刀を携え、横一閃の構え。
口には折れた刀の柄を咥え、些か不格好だが二刀で挑む。
予備動作なく走りて斬りかかれば、間合いも無視できよう。
退魔の刀を振るう――が、大方呪いの吹雪が阻むのじゃろう。
雪に覆われる前に、折れ刀の封印を解く。
来たれ、我が嫉妬深き伴侶、ばある・ぺおるよ。
首さえ動けば倒れ込む勢いでお主を斬るに事足りる。
噴出する悪意の刃、肩口より絹のように裂く。
情など不要。霜より前に、儂の心は凍てておる。
お命、儂らがもらい受ける。
●
「なンで、なんデ、貴方は生キてイルの……!」
影朧の少女の赤く光る瞳が、仁藤・衣笠(浪こさじ・f38633)を捉える。ぎりと歯軋りの音が、寒気の中に響いて来そうだった。
何ゆえ生きるとは、妙な事を申す。
少女の言葉を耳にして、衣笠はそう思う。
「生憎と、生き死にに理由を要するほどにせんちめんたるではないのでな」
影朧ならば転生も叶うのだろう。しかし、衣笠はそうは頼まれていない。改良退魔刀を携え、折れた刀の柄を口に咥える。改良退魔刀で横一閃の構えを取ると、些か不格好だが二刀で挑む体裁が整った。
先に動いたのは衣笠だった。予備動作無しの疾駆から、改良退魔刀を振るう。長い刀身は間合いを無視して、少女の胴を真横に薙いだ。
「あアああアァッ!」
浅い青の小袖に血が滲み、少女が絶叫する。弾けた感情の塊に呼応して、その全身から呪いの吹雪が吹き荒れた。眩いほどに白い雪が衣笠を殴り付け、着物の上に重ねた黒い羽織を染めて行く。このままでは雪像に変えられてしまう事を、衣笠は知っていた。
ならばその前にと、折れ刀を咥える歯に力を込める。
「来たれ、我が嫉妬深き伴侶、ばある・ぺおるよ」
ユーベルコヲドにより、衣笠の身が悪魔の憑依体へと変化する。それと共に、確かに折れている筈の刀身から、うっすらと向こう側を透かす黒い悪意の刃が噴出した。
バアル・ペオルの憑依により、呪いの吹雪の威力は削がれている。しかしそれでも、刻一刻と衣笠の体が雪像へと近付いている事に変わりはない。
全てが雪に覆われてしまう前に。衣笠は少女との間合いを詰めにかかる。あと数歩の距離で、足が動かなくなった。
だが、衣笠にはそれで十分だった。首さえ動けばそれで良い。
倒れ込む勢いで、黒き悪意の刃を少女の肩口へと振り下ろす。華奢な肢体はあたかも絹であるかの如く裂けた。
再びの絶叫が周囲の空気を震わせる。しかし衣笠の心は動かない。霜より前に、衣笠の心は凍てているのだから。
――お命、儂らがもらい受ける。
藍の瞳は雄弁に、そう語っていた。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
〇
相手の少女は雪の精のようなので属性の技を退魔刀に乗せます。
抜刀の斬撃になるので早業でなるべく速度をお補いますね。
破魔の力を込めて【赫灼『迦具土神』】を使用します。
一般の方はいなくとも木々や他猟兵さんの位置を把握します。
木々や草花は少しでも被害を最小限にするために。
他猟兵さん達は行動の妨害にならないようにするために。
攻撃回避や相手の動きは見切りと野生の勘を利用します。
「…ご…ん…さい…」
残念ですが私にはこの方法でしか還してあげられません。
かなり苦しい目に合わせてしまうので謝罪の言葉を。
●
憎イ憎い憎イ――
裂かれた傷から小袖に血を滲ませながらも、影朧の少女はその掌に、おぼろな足に、雪をまといながら呪詛めいた言葉を紡ぎ続けている。
そんな少女を見て、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は雪の精のようだと思った。ならばと、納刀状態の改良退魔刀に火の属性をまとわせる。
荒れ地の奥には、木々や草花の姿は無い。墨はその事に安堵した。これから自分が使おうとしているユーベルコヲドに、自然物が巻き込まれる心配は無いのだ。
さらと流れる前髪の合間から、他の猟兵達の位置を確認する。彼らの行動を妨害しない場所に、墨は自らの立ち位置を定めた。
荒く息を吐きながら、影朧の少女は墨の様子を窺っている。墨は柄を僅かに下げて、破魔の力をも上乗せした改良退魔刀を抜刀した。
燃え盛れと動いた唇に、声が伴っていたのかどうか。軌跡が光としてしか見えぬほどの速さで抜かれた刃は、その影響で炎をまとっている。瞬き一度の後、戦場となった荒れ地全体に、炎の渦が広がった。息を吸うだけで肺を焼きそうな炎は、しかし少女の体をすり抜ける。それでも手足には消えず燃え続ける炎が絡み付き、少女の爛と光る目は墨を確かに敵として捉えた。
もう一度。墨は改良退魔刀を納刀する。白い小袖がその勢いで広がった。
少女の掌がこちらに向けられる。そこから雪が吹雪くよりも、墨が再び抜刀する方が早かった。ここに木々があれば瞬き一度の間に炭と化したであろうほどの炎が、渦を巻いて今度こそ少女を呑んだ。
ぴり、と頬に殺気立った気配を感じ、墨は装束の裾を翻して真横に跳ぶ。一瞬前まで墨がいた場所を、氷雪が通り過ぎて行った。
「ア、アああ……!」
火に呑まれながらも、少女の眼光は憎しみを湛えている。
残念ですが、私にはこの方法でしか還してあげられません。
墨はぎゅっと、改良退魔刀の柄を握る手に力を込めた。
「……ご……ん……さい……」
小さな、小さな、それでも真摯な謝罪の言葉が、墨の唇から零れた。
大成功
🔵🔵🔵
エンマ・リョウカ
〇盟友のキラさん(f38926)と
今度は強敵だね。こちらも気を引き締めて行こうか
キラさんがサポートしてくれるなら心強い
私は全力の攻撃を浴びせよう
それに私もキラさんに同意だ
強敵だからこそ、全力をもって挑む
その行為に卑怯なんてものはないさ
「ありがとう、キラさん。任せてくれ」
キラさんの棘で押さえられた敵へ
退魔の刃を両手で構え、天地無双剣を使用
全力で放つ神速の突きで敵を貫き
そのまま連続で、返す刀で切り裂く
「その寒さも、これで終わりにしよう」
敵の少女も、雪も風も
キラさんの最後の一刀の道を作るよう
改めて退魔の刃の心強さも感じながら
この刃で切り払い、討ち払って導くように前へ
「あとはゆっくり、眠るといい」
キラティア・アルティガル
〇盟友のエンマ殿(f38929)と
容易ならぬ相手じゃが彼奴は一人
「眷族は兎も角、こ奴めを確実に倒すのなら
数を斬り裂く戦法でなく刺突が正しかろ」
大刀を振るう事に異議はないが
矢張り手慣れたエンマ殿に任せたが良かろう程にな
「征くが良い!あれなるは我が縫い留める!」
UCは創世神の棘
まず敵を抑えその後繰り出されるモノらへも棘を伸ばす
抑え込めぬモノあらばこの刃が役立とう
棘を展開しつつ吹雪等の回避もの
この退魔の刃も吹雪返しに役立つ
その上友の技も冴え渡って居るの
「おお!吹雪も一刀両断とは…見事じゃ」
自由を奪うは卑怯ではないぞ
貴様は強敵じゃ
「あらゆる手で戦うが戦の本分であろう!」
もし叶わば我も一太刀浴びせたやの
●
刀傷と消えぬ火をまといながらも、影朧の少女はまだ戦意を失ってはいなかった。瞳は未だ爛と赤く光り、こちらへ敵意を剥き出しにしている。
これは強敵だと、エンマ・リョウカ(紫月の侍・f38929)はその姿を見て思う。
「こちらも気を引き締めて行こうか」
「うむ。眷族は兎も角、こ奴めを確実に倒すのなら、数を斬り裂く戦法でなく刺突が正しかろ」
容易ならぬ相手だとキラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)も分かっているが、少女は一人だ。広範囲を薙ぐよりは、一点に攻撃を特化させた方が一撃の威力は重くなる。
大刀たる改良退魔刀を振るう事には、キラティアにも異議は無い。しかし不慣れな自分よりも、やはり手慣れたエンマに任せるのが良いとの判断が働いた。
「征くが良い! あれなるは我が縫い留める!」
一歩を踏み出した盟友の背に向けて、キラティアは宣言する。瞬き一度の後、少女の周りに現れたのは
棘だ。傷付いた肩口を、おぼろな足を、放たれた棘が物質組成を改竄して石へと変えて行く。
「ありがとう、キラさん。任せてくれ」
キラティアがサポートに回ってくれるのならば、エンマにとってこれほど心強い事は無い。改良退魔刀を両手で構え、動きの制限された少女へと荒れ地を蹴って接近する。
「あぁアアァ!」
少女が怒りを炸裂させて、呪いの吹雪を巻き起こした。しかしその時既に、エンマは少女を射程内に収めている。吹雪をも返し刀で受け止め、改良退魔刀の切っ先を神速と呼ぶに相応しい速度で少女の体に埋めた。
「おお! 吹雪も一刀両断とは……見事じゃ」
自らへ吹き付けた吹雪を跳ね飛んで回避し、キラティアは盟友の技の冴えに目を細める。エンマの突きは雪の怪物を生み出したが、それすらもキラティアの棘が石へと変え始めていた。
「これは安心して攻撃が出来るね」
「憎い憎イ憎イ……卑怯者!」
エンマの突きが命中した箇所に、流れるように追撃が浴びせられる。少女が感情を爆発させても、生み出された呪いの吹雪すらエンマに断たれ新たな突きを生み出してしまう。動きを止められた少女に、それを避ける術は無かった。
「自由を奪うは卑怯ではないぞ」
貴様は強敵じゃ、とキラティアは未だ倒れぬ少女に言う。
「あらゆる手で戦うが戦の本分であろう!」
「私もキラさんに同意だ」
エンマの握る改良退魔刀の柄が小さく音を立てた。
「強敵だからこそ、全力をもって挑む。その行為に卑怯なんてものはないさ」
手に馴染む退魔の刃に改めて心強さを感じながら、エンマは突きで道を切り開く。終の一刀が、その道を憂い無く歩めるように。
最後の雪の怪物が、完全に石へと変わる。キラティアは改良退魔刀の柄を握り直した。
もし叶わば我も一太刀――その願いを、盟友は叶えてくれるつもりのようだ。
「厚意に甘えさせて貰うとしようかの!」
エンマが少女の正面から位置をずらす。キラティアの一刀は、過たず少女の胸元へと吸い込まれて行った。細い体がぐらりと傾ぐ。
「あとはゆっくり、眠ってはどうかな」
柔らかなエンマの声に返事は無く、少女はただ、血を吐くような叫びを上げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
〇
【護】
…う。さっきは試し斬りしましたけど
本来影朧は傷つき虐げられた者達の「過去」から生まれたもの
ある程度データは取れただろうし、必要以上に実験台にする事へ罪悪感があるので、今回は静かに眠らせてあげたい、かな?
と言う訳で茨の世界で動きを止めます
「時人さん、陸井さん、あまり苦しまないように…一思いにとどめを刺してあげて下さい」
…茨の世界、使いすぎると私の寿命削れるのもありますが(ぼそ
「ごめんなさい、私には貴方を眠らせてあげる事しか出来ない」
「憎しみは受け止めるから。その寒さから解放するから」
「どうか安らかに」
…必要なら、最期の一太刀は私の手で
「ごめんね?」
音も立てず近寄り改良退魔刀で介錯をします
凶月・陸井
〇
【護】
今度はさっきまでと違っては遠慮なく、とはいけないからな
それにこれは俺も本当に、二人と同じ気持ちだからね
「そうだな…可能なら助けたい。無理でも苦しませずに、だな」
二人としっかり決めたら行こう
戦闘開始と同時に【水遁「爆砕繋鎖」】を使用
何時もは腕に纏う術式を退魔刀に纏わせ
二人の行動に合わせて陽動をいれつつ
隙を見て退魔刀を振るうよ
俺は二人の補佐に回って
キアラさんの言葉でも時人の言葉でもいい
何か反応を得られたらって思うから
纏わせた術式で鎖の縛りを
「さぁ、悪いが…二人の言葉、聞いてやってくれ」
言葉が届かずとも、きっとその刃の優しさは届く
最後の一刀はキアラさんに任せて
「頼むよ、キアラさん!」
葛城・時人
〇【護】
影朧の転生を考える所だけど
意思疎通が難しいなら撃破已む無しか
「陸井、キアラ…どう思う?」
仲間たちに問う
可能であれば撃破せずと決め相対
黒影剣発動
魔剣士の頃のUCは矢張り身に馴染む
撹乱の為にククルカンも蟲笛で呼び
「皆、出来るだけ飛び回って攻撃!」
と指示
俺は消え蟲は乱舞する
それも吹雪と同じ白
「さぁ…戦いの時間だ!」
技能も用い攻撃を避けつつ
会話を試みるが無理と判断なら全面攻撃に切り替え
元々撃破するしかない敵の方が多い
拘泥して仲間を危険に晒すのは良くないからね
俺は不可視の特性を生かし
陸井とキアラの攻撃機会を作る事に徹する
雪の怪物を封殺するにもこの長い刀身は丁度うってつけだ
「よし!今だ!キアラ!」
●
傷付き、身の一部を焼かれ石に変えられながらも、少女の瞳には尚も憎しみが宿っていた。生命そのものに向けられているかのような憎悪を見て、葛城・時人(光望護花・f35294)は仲間達を見た。
「陸井、キアラ……どう思う?」
「……う。さっきは試し斬りしましたけど」
キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は僅かに言い淀む。
影朧とは本来、傷付き虐げられた者達の『過去』から生まれたものだ。必要以上に実験台にする事は、キアラの心を重くする。
「今回は静かに眠らせてあげたい、かな?」
煙の悪魔達との戦いで、改良退魔刀のデータはある程度取れている筈だ。キアラがそう願う事を、誰も止められはしない。
「俺も、対話は試みたいかな」
問うた時人自身も、影朧の転生を考えていた。凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)が眼鏡の奥で、漆黒の瞳を笑みの形に細める。
「そうだな……可能なら助けたい。無理でも苦しませずに、だな」
可能であれば、撃破せず救出の道を探る。
三人の方針はここに定まった。
相対する姿勢を取った三人の様子を見て、影朧の少女が目を爛と光らせる。しかしその手がユーベルコヲドを紡ぐ前に、キアラが祈るように片手を胸元で握り締めていた。瞬きを一度する間に魔法の茨が生まれて、少女の体に絡み付く。吹きかけた呪いの吹雪は、途中で掻き消えその力を失った。これで少女はもうユーベルコヲドを使えない。
「時人さん、陸井さん、もし、救えなくても……あまり苦しまないように……一思いにとどめを刺してあげて下さい」
茨の世界、使いすぎると私の寿命削れるのもありますが。あまり聞かれたくない言葉は、ごくごく小さな声で口にした。
その間に、陸井が水の術式を紡ぎ出す。普段は腕にまとうそれを、今は改良退魔刀の上に下ろした。一度、二度。陽動を目的とした斬撃に、少女はゆらゆらと肢体を揺らがせた。
時人は己が身と武装を、闇のオーラで覆う。魔剣士であった頃のユーベルコードは、やはり身に馴染む。そう思いながら、蟲笛を風に晒した。響いた音色に応じて、時人の体から
白燐蟲が現れる。その輝く白さはさながら、少女が操る雪のようだ。
「皆、出来るだけ飛び回って攻撃!」
きゅい、とククルカンが鳴き、きらめきをまといつつ舞い飛ぶ。
「さぁ……戦いの時間だ!」
少女の視界から消えた時人が宣言する。少女は荒れた声で叫び、掌から雪を孕んだ風を吹かせた。
不可視となった時人は中空へ跳び改良退魔刀を振るう。重い一撃とククルカンの光に惑わされ、少女は的確に攻撃を当てる事が出来ない。その隙を逃さず、陸井は刃を閃かせた。透明な飛沫が弾け飛び、水で作られた鎖が少女と陸井を繋ぐ。
「さぁ、悪いが……二人の言葉、聞いてやってくれ」
少女を縛する茨と鎖は、儚げなようでいて強靭だ。ただでさえ動きを制限されている少女は、そのどちらともから脱する事が出来ない。
「アアあ……憎イ憎い憎イ……!」
「君は、どうしてそんなに生者を憎むんだ? 話せるのなら、話してくれないかな」
ユーベルコードにより姿は見えずとも、声は届く。時人の落ち着いた声音に、しかし少女は濁った叫びを上げた。
「どウしてドうシテ……貴方達は生キてイルの! 寒い寒イ憎い……!」
会話が成立していない。少女の言葉を聞いて、キアラは対話は不可能だと判断した。
「ごめんなさい、私には貴方を眠らせてあげる事しか出来ない」
詫びる言葉すら、少女の心に届いているのか分からない。それでもキアラは、少女の有りように胸を痛めた。
倒す事でしか救えない。そう感じたのは時人と陸井も同じだ。
元々、倒すしかない敵の方が多いのだ。時人は思考を全面攻撃へと切り替える。乱れた吹雪を空中へ跳躍する事で回避し、闇をまとわせた改良退魔刀を振るった。生命力を吸い上げられ、少女は尚も雪の欠片を吹かせる。ククルカンが手足に食い付き、白銀の中できらめいた。
「憎しみは受け止めるから。その寒さから解放するから」
キアラの言葉と共に茨が少女に食い込んで、雪の怪物を生む力を阻む。陸井も再びの斬撃を見舞い、派手に水飛沫が上がった。
この長い刀身ならば、仮に雪の怪物が生まれていたとしても封殺出来たろう。時人は改良退魔刀を横薙ぎに振り抜き、少女の足元を危うくする。
「よし! 今だ! キアラ!」
「頼むよ、キアラさん!」
言葉は届かなかった。しかし、その刃の優しさはきっと届く。相棒に次いでキアラに呼び掛けながら、陸井はそう信じていた。
キアラが少女を戒める茨を解除し、改良退魔刀を両手で握って跳躍する。
「どうか安らかに」
ごめんね?
慈悲の心と落下の勢いを乗せた斬撃が、少女を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神塚・深雪
○
【麟鳳】
桜の精さんがいたらお手伝いをお願いして転生できれば……と思ったけれど、それは難しそう。
相手の様子も伺ってみるけれど、衝動?に呑まれてしまって話は無理そう?
「……よね、やっぱり」
そうなれば、出来るだけ速やかに行きましょうか。
もしかしたら、話ができるようになるかもしれないし!
シェルの立ち回りにあわせて動くのは変わらないけど、技能等も使ってなるべく相手の死角に入るように動いて、UCで拘束。
成功したら再度対話を試みようと。
それでも無理なら、それは仕方ないから。
せめて一太刀で。
私は、私達は、生きなくちゃいけないから。
背負ってしまったもののためにも。
(シェルの弁に)……なんかけなされたきがする。
シェルリード・カミツカ
○
【麟鳳】
出来れば穏当に、転生にでも持っていきたいと考えていそうなパートナーの意を汲んで伺う……が。
意思疎通が出来そうにないように見える。何よりどう見ても此方に(生者にか?)敵意を剥き出してきている。
「……流石にあれは手遅れ、なんだろうな」
早期決着には同意。
可能なら対話から転生に持ち込みたいという意図にも。
基本の立ち回りは先程と変わらないが、今回は技能以外にUCも併用。
こちらに意識を引き付けてパートナーのUCが的確に効果を出せるように立ち回る事にも意識を。
最終判断はパートナーに委ねて、その選択と帰結を見守る。
この背負い過ぎる無鉄砲が大惨事を起こさん為にも、目を光らせておかないといけないんでな。
●
血臭がする。
神塚・深雪(光紡ぐ
麟姫・f35268)とシェルリード・カミツカ(
黄金の
鳳皇・f35465)が感じるのは、目の前に立つ影朧の少女から溢れるにおいだ。幾人もの猟兵との戦いを経て、少女はもはや満身創痍と言って良い状態になっていた。
この場に桜の精がいれば。痛々しい少女の姿を見て深雪は思う。お手伝いをお願いして転生できれば――深雪のそんな優しい願いは、どうやら叶いそうになかった。
可能なら転生に持って行きたい。パートナーの意を汲んで、シェルリードは少女の様子を窺っていた。しかし少女は憎悪に満ちた眼差しを返して来るだけだ。
意思疎通が出来そうにない。シェルリードの感覚はそう告げていた。何よりも生者に対する剥き出しの敵意を感じる。深雪も、少女が強い衝動に呑まれているのを見て取った。これでは、話す事すら難しそうだ。
「……流石にあれは手遅れ、なんだろうな」
「……よね、やっぱり」
パートナーの言葉に頷き、深雪はならばと出来るだけ速やかに行こうと心を決める。
「もしかしたら、話ができるようになるかもしれないし!」
「そうだな……早く決着をつけるに越した事はない」
シェルリードは対話からの転生を、深雪がまだ完全には諦めていない事を察した。そうであれば、パートナーたる自分のやるべき事は決まっている。
「アアア……憎い憎イ……!」
シェルリードの持つ改良退魔刀が金光をまとう。少女の掌から溢れた雪は、瞬き一度の間に怪物へと変化した。振り上げた拳が長い刀身に受け止められたかと思うと、黄金に輝く刃がその腕を切り落とす。
その間に、深雪は空を蹴って少女の死角に入っていた。鎖めいた銀の光が掌から生まれて、少女を追尾し、捕縛する。ユーベルコヲドを封じられ、少女の作り出した雪の怪物が消滅した。
着地した深雪は、銀光を振り解こうともがく少女に向けて口を開く。
「その憎しみを……生きる人を妬む気持ちを、捨て去る事はできませんか」
問い掛けに少女は、掌から雪を抱く風を紡ぐ事で答えた。シェルリードが間に入り込み、金光まとう刃でその風を一閃する。返す刀で少女の胴を薙いだ。
「……残念だけど、こっちの言葉は届きそうにないみたい」
「それなら、なるべく苦しまないように終わらせてやろう」
少女は既におぼろな足を折り、地に両膝をついている。深雪は改良退魔刀を、低い位置にある肩目掛けて振り下ろした。
最後の絶叫が、深雪の胸を締め付ける。雪を孕む風は二人へ届く前に霧散して、少女が地に倒れ込む。傷だらけの肢体が消え去るまで、一呼吸の間も必要としなかった。
私は、私達は、生きなくちゃいけないから。背負ってしまったもののためにも。
深雪は静かに目を閉じ、鼓動が二つを数えた後に開いた。頬の辺りに視線を感じ振り向くと、シェルリードと目が合った。
パートナーの選択とその帰結を、シェルリードは最後まで見届けていたのだ。その事実に、深雪は慰められた気がした。ほんの少しだけ、口元が綻ぶ。
「背負い過ぎる無鉄砲が大惨事を起こさん為にも、目を光らせておかないといけないんでな」
「……なんかけなされたきがする」
むう、と少しむくれながらも、深雪はシェルリードの眼差しに暖かさを感じていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『帝都のカフェーの優雅な日常』
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POW : ミルクやカステラでばっちり栄養補給!
SPD : 臨時のボーイやメイドとしてちゃっかり臨時収入!
WIZ : 最新の雑誌や噂話からきっちり情報収集!
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荒れ地から帝都へ帰還した猟兵達は、指定されたカフェーへ足を踏み入れた。誰かが頼んだ珈琲の匂いがふわりと鼻先を掠める。
「こちらですよ」
塩辛声に目を向けると、三十代半ばの男が窓際の席で軽く手を挙げていた。彼が武藤誠也らしい。
猟兵達が側まで来れば、武藤氏は椅子に座ったままではあったが深く頭を下げた。
「ご協力、ありがとうございました。実際に使ってみて、気になった点や改善点があれば教えて頂きたいのです」
是非とも、忌憚なき意見をと武藤氏は強調する。
「試用に付き合って頂いたお礼に、ここの会計は私が持ちます。どうぞお好きなものを頼んで下さい」
先程香った珈琲の他にも、紅茶や甘い飲み物、軽食等もあるようだ。アルコール類は無いが、おおよそのカフェーにあるものは揃っていると思って良いだろう。
先にメニューを見るべきか、武藤氏への報告を先にするべきか。猟兵達は少しばかり頭を悩ませた。
エンマ・リョウカ
〇盟友のキラさん(f38926)と
改善点か…思う所はある
刀を振るってみてよくわかったこととして
彼は紛れもなく本物の天才で類を見ない鍛冶師という事だ
だからこそ私が思った事と感じたこととして、これは伝えなければ
「素晴らしい刀だ。扱い慣れている人間からすると特にね」
私としてもこのような刀に巡り合えた事はいい事だと感じる
だからこそ気になって、言うべきと思った事は
「刀というよりも、武藤さんはどう作りたいか、かと感じた」
「次の一振りは…何のためにでなく、誰のために、想いを馳せて作るのはどうだろうか」
扱うものに寄り添って生み出せたのならそれがいい
後はゆっくりと珈琲でも飲みながら刀の道を語れると嬉しいな
キラティア・アルティガル
〇盟友のエンマ殿(f38929)と
珈琲と言うは良い香りだの
貝の形のマドレーヌも良い
遠慮はせぬ
これらを喫するとしようぞ
さて武藤殿、と話しかけよう
お主は良い鍛冶師じゃ
刃に見敵必殺の気魄が籠っておった
じゃがのう…我が猟兵でなくば
これは使えなんだの
我は生粋の武人ではない
この太刀はこの刃に慣れた者
長さに呑まれぬ者
二種の前提を要する
ゆえに向かぬ者が多かろの
幾何か万人向けにしたが良かろうよ
じゃが…お主の道はお主しか歩めぬ
我の言が道を狭めるなれば捨て置くがよいぞ
厳しい顔では語らぬよ
素晴らしい切れ味は褒め称えたやの
武藤殿とエンマ殿は太刀の事でなくとも
話は弾みそうじゃのう
道を極めんとする者の話を聞くは真に楽しやの
●
エンマ・リョウカ(紫月の侍・f38929)とキラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)を見上げる武藤氏の瞳は、午後の陽だまりを思わせた。
「お二人とも、ご協力ありがとうございます」
礼を述べる声も塩辛声ではあるが、何処か柔らかさを帯びている。
彼は本物の天才で、類を見ない鍛冶師だ。エンマは改良退魔刀を振るった感触から、そう感じていた。
キラティアと共に軽い挨拶を交わし、武藤氏の向かいに並んで腰を下ろす。
「先に何か頼んでも良いかの」
漂う珈琲の良い香りに目を細め、キラティアはメニューを広げた。武藤氏がそれを阻む事は無く、声を掛けた女給は貝の形をしたマドレーヌと珈琲の注文を受け取って下がって行く。
「さて、武藤殿」
女給の足音が聞こえなくなると、キラティアは緑の眼差しをまっすぐ武藤氏に向けた。
「お主は良い鍛冶師じゃ。刃に見敵必殺の気魄が籠っておった」
「私も、そう思ったよ」
エンマが盟友の言葉に緩やかに頷く。
「素晴らしい刀だ。扱い慣れている人間からすると特にね」
武人たるエンマにとっても、このような刀に巡り会えた事は僥倖だった。だからこそ、伝えなければならない事がある。だが今は、キラティアに先を譲る事にした。
「じゃがのう……我が猟兵でなくば、これは使えなんだの」
我は生粋の武人ではないと、キラティアは言葉を継ぐ。エンマの立ち居振る舞いを見て、同じように取り回そうとしても、巧くは行かなかった。
「この太刀はこの刃に慣れた者、長さに呑まれぬ者。二種の前提を要する」
ゆえに向かぬ者が多かろの。
キラティアの言は正鵠を射ていた。体格や膂力が改良退魔刀に適していない者は、巧く扱うために知恵を必要としたのだから。
「幾何か万人向けにしたが良かろうよ」
柔らかに紡がれるキラティアの言葉を、武藤氏は熱心に帳面へ書き付けていた。
「じゃが……お主の道はお主しか歩めぬ。我の言が道を狭めるなれば捨て置くがよいぞ」
「いいえ、忌憚なきご意見、感謝致します」
深々と頭を下げる武藤氏を見るキラティアの目は、あくまでも穏やかだ。切れ味の素晴らしさはキラティアも認めるところだった。厳しい顔で語るつもりなど、最初から無い。
「私は、刀というよりも、武藤さんはどう作りたいか、かと感じた」
武藤氏が頭を上げたのを見て、エンマは口を開いた。
エンマは金や物ではなく、意思を酌み取り動く。彼が野太刀を手に取るのは、ある時は理不尽な終焉に抗う術を持たぬ人のためであり、ある時は盟友のためであり、またある時は生涯を懸けて護ると誓ったひとのためだった。
「次の一振りは……何のためにでなく、誰のために、想いを馳せて作るのはどうだろうか」
扱うものに寄り添って生み出せたのなら、それがいい。
エンマの思いが伝わったのか、帳面に書き込みをしていた武藤氏の手が、ふと止まる。
「誰のため……と考えて作った事は、あまり無かったように思います」
瞳をほんの一時、過去へとさまよわせて、武藤氏は笑った。
「先程頂いたご意見も踏まえて、少し立ち止まって考えてみたいです」
「うむ。それも良かろう」
キラティアが軽く頷いた時、頼んだ珈琲とマドレーヌが運ばれて来た。早速、珈琲を手に取れば、芳しい匂いが鼻先を掠める。
「私にも珈琲をお願いできるかな」
「かしこまりました」
エンマの言葉を受けて、女給が手元の伝票に書き込みを始めた。
「武藤さんも一緒にどうだろうか。刀の道を語れると嬉しい」
「ああ、良いですね……それでは、私も珈琲を一つお願いします」
女給が微笑み、注文を受け取ってまた去って行く。
「私は、普段は野太刀を愛用していてね」
「野太刀ですか。そちらも良い武器です」
珈琲が運ばれて来る前から、エンマと武藤氏は話が弾んでいた。その様子を見て、キラティアは口元が綻ぶのを感じる。
道を極めんとする者の話を聞くは真に楽しやの。
胸の内で呟いて、キラティアは貝の形をしたマドレーヌにフォークを入れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
〇
【護】
あ、武藤さん、好きな物頼んでいいんですかっ!?
ええと、じゃあ…
紅茶とー、あんみつとー、ソーダ水とー
あ、メインも! ライスカレーとオムレツとビフテキと
ええい面倒っ! おねーさん! メニューの品ぜんぶ!(真顔
…ふふ、しあわせ♪(もぎゅもぎゅ
陸井さん大丈夫、お腹一杯になったら最後の手段「お持ち帰り」がありますっ!(ぐっ
あ、ちゃんと感想言わないと(もぐもぐごくん
えっと改良退魔刀強いですけど、私みたいな小柄な人間は使い難くて
なので、別の方向性で軽量化とかも試したらいいのかな、とか
あ、皆でお茶会の流れ?
薙人さん何食べます? んー、何か薙人さん見てたら…桜茶と桜餅が頂きたく!
時人さんも桜餅ごーごー!
葛城・時人
〇【護】
美味しそうなの沢山だけど一旦我慢
珈琲をお願いして武藤と話すよ
「すっごい良い武器だよ、ありがと!」
褒めるけど問題点の提起も
「ただ取り回しに少し難があるね」
一撃で多数を屠れるのは有利だけど
長い分重いから体力勝負になりかねない
「斬れ味は最高だから」
そこはそのまま、大小、懐剣、刀子、薙刀とかで
誰でも斬れ味で敵に有利が取れるように
するのが一番良いと思うと伝達
「學徒兵も猟兵も愛用の武器あるし」
カスタム受注が一番良いと思うよ、って
落ち着いたら神臣も来るよね
「神臣もお疲れ様!美味しそうなぷりんあるよ!」
笑顔で招き
折角だから皆で…あ。キアラも陸井も、しっかり食べてる!
俺も何か甘いの頼もませてもらおうっと
凶月・陸井
〇
【護】
コーヒーの香りでいい店だっていう事がよくわかる
まずは改善点提案から…いや、先に突っ込みかな
俺は相棒で慣れてるけど、武藤さんの懐的にもね
「キアラさん、お腹いっぱいになりすぎちゃうよ?」
「武器として、って言う点では凄い刀だ、って思うよ」
まずは単純なリーチと切れ味
此処は本当にこれ以上ないくらいの出来だ
俺としても一振り欲しいくらいだしね
改善点としては個人的に、かな
二人の言うサイズの問題もだけど、これだけの大業物なら
「少し全体的にバランスが良すぎるから、もう少し偏った
…釣り竿で言う先調子みたいな形だと嬉しいな」
一通り終わったら神臣くんと一緒にお茶会だ
「二人もだけど、神臣くんもお疲れ様だよ」
●
お好きなものを頼んで下さい。武藤氏にそう言われ、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は目を輝かせた。小さな手が、机上のメニュー表を素早く取り上げる。
「ええと、じゃあ……紅茶とー、あんみつとー、ソーダ水とー……」
呼び止められた女給が、キアラの読み上げる注文を伝票へと写し取って行く。メインのライスカレーとオムレツ、そしてビフテキを頼んだところで、キアラはぺたりとメニューを机の天板に広げて置いた。
「ええい面倒っ! おねーさん! メニューの品ぜんぶ!」
「ぜ、全部ですか?」
引っ繰り返った声で尋ねる女給は、会計よりもキアラの体格を気にしているように見える。この細身の体にそれだけの量が入るのか。普段のキアラを知らぬ者がそう心配になっても不思議ではない。
俺は相棒で慣れてるけど、と、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は胸の内で呟く。眼鏡の奥の瞳は、ちらと武藤氏の方を見た。ここの会計は全て彼が持ってくれる事になっている。そう申し出るくらいなのだからそれなりに裕福なのだろうが、懐具合が些か心配でもあった。
「キアラさん、お腹いっぱいになりすぎちゃうよ?」
「陸井さん大丈夫、お腹一杯になったら最後の手段『お持ち帰り』がありますっ!」
巡る自然の糧を無駄にするような事は、決してしない。ぐっと拳を握り締めたキアラは、運ばれて来たあんみつに早速手を付けた。
はは、と塩辛声が笑う。
「失礼。こちらの事は気にしないで下さい。鍛冶師一筋で趣味も無いものですから、貯蓄には余裕があります」
良い食べっぷりです。器を空にして行くキアラに目を細める武藤氏を見て、陸井は安堵した。
「改良退魔刀だけど、すっごい良い武器だよ、ありがと!」
自らも珈琲を頼んだ葛城・時人(光望護花・f35294)は、まず礼を述べる。
「ただ取り回しに少し難があるね」
望まれているのは、忌憚なき意見だ。問題点も指摘しなければ、この依頼は果たせない。
一撃で多数を屠れるのは有利だが、改良退魔刀は刀身が長い分、全体の重量が重くなっている。これでは体力勝負になりかねない。
「私もそれは感じました。強いですけど、私みたいな小柄な人間は使い難くて」
口の中のものを呑み下し、キアラは時人の意見に同意を示す。
「なので、別の方向性で軽量化とかも試したらいいのかな、とか……」
扱う者全てが、キアラのように跳躍の術を持っている訳ではない。武藤氏は二人の意見を、熱心に帳面へ書き込んでいた。
「武器として、って言う点では凄い刀だ、って思うよ」
陸井は無茶な戦い方にも応えてくれた刃の感触を思い出し、穏やかな声音で言う。
まずは単純なリーチと切れ味。この二点はこれ以上無いほどの出来だった。自分としても一振り欲しいくらいだと、陸井は武藤氏に告げる。
「改善点としては個人的に、かな」
時人とキアラが挙げたサイズの問題もある。だが陸井はそれ以上に、これだけの大業物ならば、と思う点があった。
「少し全体的にバランスが良すぎるから、もう少し偏った……釣り竿で言う先調子みたいな形だと嬉しいな」
魚を得た竿のように先端が曲がっていれば、戦法の幅は狭まるかもしれない。だがその分、特性を活かした時の効果が大きくなる。
「斬れ味は最高だから」
時人は、その点は活かすべきだと考えていた。
大小、懐剣、刀子、薙刀など。刀の種類を増やし、誰でも斬れ味で敵に有利を取れるようにするのが良いと時人は言う。
「學徒兵も猟兵も愛用の武器あるし」
カスタム受注が一番良いと思うよ。運ばれて来た珈琲に手を付けて、時人はにこっと笑顔を見せた。
「誰かのために、と考えて作ってはどうかと、先程もご提案を頂きました」
そっと帳面を閉じた武藤氏は、静かな声で言葉を紡ぐ。
「個人に合わせて受注する……というのは、そのためにも良いかもしれません」
ありがとうございます、と礼を述べ、武藤氏は次の猟兵へと話を聞きに行く。
その背中を見送った時人は、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)の姿を見付けた。何か騒動が起きた時のために、離れた場所で控えていたらしい。
神臣、と呼び掛けると、薙人は座っていた席から立ち上がって時人達の方へやって来た。
「皆さん、お疲れ様です」
「神臣もお疲れ様! 美味しそうなぷりんあるよ!」
ぷりんの一言に、薙人はぴくりと反応を示す。
「……私がお邪魔しても良いのでしょうか」
「二人もだけど、神臣くんもお疲れ様だよ。一緒にお茶会するくらいは良いんじゃないかな?」
柔らかく微笑む陸井に背を押される格好で、薙人は先程まで武藤氏が座っていた席に腰を下ろす。
女給にプリンを頼む薙人を見て、キアラは体がうずうずするのを感じた。何しろ目の前に、枯れない桜花がふわふわしているのだ。
「桜茶と桜餅が頂きたく!」
メニューの端から端までをぺろりと平らげたキアラの追加注文に、しかし女給は動じる事は無かった。超弩級戦力ならば、これくらい食べてもおかしくないと思われたのかもしれない。
「俺も何か甘いのも頼ませて貰おっと」
「時人さんも桜餅ごーごー!」
改めてメニュー表を見る時人に、キアラが発破をかける。陸井はそんな友たちに、のんびりとした眼差しを向けていた。
折角だから皆で――そう思った時人の希望は、既に叶えられていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神塚・深雪
○
【麟鳳】
ふっふー。デート、デートっ♪
二人でこういうお店のとか、ほんっと久し振りな気がするっ!
ビジネスモードでテキパキ話を勧めるパートナーをじーっと見て。
(そういえばお仕事モードのシェルって初めて見る気がするな……)
と、ちょっと興味津々。(むしろ二人がしている話はあまり入ってきていないくらいになっている)
そんな矢先に急に話を振られたら、慌てて使ってみた感じを説明してみる。(が、擬音表現をふんだんに使った、おおざっぱな説明しか出来ない)
「……ま、まちがったことはいってないもん」
……またシェルの視線がつめたい気がする。
こ、こういう(拗ねた)時だけ(かまってくれるん)じゃ、満足しないんだからね!
シェルリード・カミツカ
○
【麟鳳】
パートナー一人浮かれているのではと、呆れつつ、先ずは、此処へ来た本題を。
武藤氏と挨拶を交わした後、そのまま試作刀についての話に。
扱ってみた感想(使う人を選ぶ武器であると思った第一印象等)、
実戦で自分がどの様に使ったか(両手剣の扱いに近い、防御や盾役寄りの使い方等)を説明した後、
元々武藤氏が意図した使い方や立ち回りとの乖離がどの程度あったのかを確認したい。
此方の立ち回りの一助にもなりそうだからな。
横で話についてきているか少々疑問があるパートナーにも話を振って。
説明の大雑把さと表現の幼稚さにまた呆れつつ。
あまり邪険にすると後々拗ねて面倒なので、諸々支障が無い程度にはかまってやることにする
●
デート。
カフェーに入った時から、神塚・深雪(光紡ぐ
麟姫・f35268)の頭にはその文字が踊っていた。パートナーであるシェルリード・カミツカ(
黄金の
鳳皇・f35465)と二人でこういった店に入るのは、本当に久しぶりな気がする。武藤氏の前に並んで腰掛けても、頬が緩むのは止められない。
そんなパートナーの様子を見て、一人で浮かれているのでは、とシェルリードは少々呆れていた。カフェーのメニューにあるものは好きに頼んで良いと言われているが、まずは本題を片付けるべきだろう。
武藤氏と軽く挨拶を交わし、シェルリードは口火を切る。
「まず、人を選ぶ武器だと俺は感じた」
「やはりそうですか……」
既に複数の猟兵達から同じ事を言われていたのだろう。軽く頷く武藤氏の表情には、何処か納得したような色が浮かんでいた。
「これは、両手剣に近い扱い方が良いとも思った。だから、防御や受け流しを主体に……」
てきぱきと武藤氏へ話すシェルリードを、深雪は隣でまじまじと見る。
そういえばお仕事モードのシェルって初めて見る気がするな。
ふとそう気付き、深雪の眼差しが興味津々といった色を帯びた。その間もシェルリードは簡潔に、分かりやすい言葉で武藤氏へ報告を行っている。
「……俺の扱い方はこういった風だったが、武藤氏はどういう使い方や取り回しを想定して作ったのか、聞かせて貰いたい」
武藤氏の想定と自らの扱いの乖離については、シェルリードとしては確認したいところだった。それを知る事が出来れば、今後の自分の立ち回りの一助にもなるかもしれない。
「まず、一度の斬撃で可能な限り多くの敵を仕留められるように、と考えていました」
使い手を少々選ぶ事には気付いていたが、超弩級戦力たる猟兵ならば問題無いと考えていたと武藤氏は続ける。懐に入らせず、その前に敵を仕留める扱い方を想定していたとも。
「実際には、猟兵でも扱いが難しい者がいた。小柄な者は特にそうだな」
落ち着いたシェルリードの話しぶりに、深雪は自らの笑みが深くなるのを感じる。お仕事モードのパートナーの姿は、思っていたよりもずっと凛々しかった。
見詰めていたシェルリードの碧眼がこちらを向き、深雪の鼓動が一つ跳ねる。
「ほら。お前もきちんと報告しろ」
果たして己がパートナーはきちんと話について来ているのか。疑問を乗せたシェルリードの言葉に、深雪は慌ててしまう。
「えっと、ぶんって振り下ろすとざくーっと斬れて、そこはすごくいいなって思いましたっ」
大雑把な物言いに、ふうと隣から溜め息が聞こえた。
「……ま、まちがったことはいってないもん」
「もう少し言い方があるだろう」
またシェルの視線がつめたい気がする。
むうっと深雪がむくれると、武藤氏が帳面を閉じる音がした。
「ありがとうございます。参考になりました」
笑顔で頭を下げて、武藤氏は席を移る。その姿が見えなくなると、シェルリードの手が深雪の髪をぽんぽんと撫でた。
「ほら。何か甘いものでも頼もう」
「……こういう時だけ構ってくれるんじゃ、満足しないんだからね!」
ひっそりと主張しつつも、深雪は二人でメニュー表を覗き込む事に嬉しさを感じていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅間・墨
そういえば。
こういう西洋風の『かふぇー』に一人で入ったことありませんでしたね。
店員さんには…えと。おすすめの紅茶をお願いしますと紙に認め見せます。
あぅ。友人さんが居れば円滑に注文できたのですが…。
「…あ。ごめ…なさ…」
挙動不審なところを武藤さんに見せてしまっていました。あぅ…。
「それで…ですね…」
今回使用した改良した退魔刀のことを報告します。
刃渡りが長く武器…特に刀を使い慣れた方でないと扱いが困難なこと。
長刃と重量で女性では少々遠心力で振り回されてしまうこと。
を告げます。
「…次に、改良点…ですが…」
薙刀のように使えば重量も手伝ってとても扱いやすかったこと。
を告げてから一言補足します。
「…丈を…えと。通常の…薙刀よりも少しだけ短くすると…ですね。
あの…近接戦闘に…多少は有効かも…しれないと…感じました。
短くできない…のなら…いっそ…三節棍のようにしたらどうでしょうか。
…柄の強度や…刃の重量の…調整が、とても難しいとは…思いますが」
三節棍の提案は少し無理難題でしょうか…と思いつつ紅茶を一口。
●
そういえば、と浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は鼻先を通り過ぎて行く珈琲の香りを感じながら思う。
こういう西洋風の『かふぇー』に一人で入ったことありませんでしたね。
女給に武藤氏の斜め向かいの席へ案内されて、墨は改めてその事に気付いた。ご注文は、と女給に問われ、少しばかり慌てて荷物から紙と筆記用具を取り出す。
『おすすめの紅茶をお願いします』
紙に認められた注文を、女給は伝票に写し取り、軽く頭を下げて墨のいる席から離れて行った。
友人さんが居れば円滑に注文できたのですが。
僅かに俯いた拍子に、まっすぐな前髪が鼻梁をくすぐった。ふと斜め前から視線を感じ、ぱっと顔を上げる。
「……あ。ごめ……なさ……」
今の行動は、武藤氏には挙動不審に思えたに違いない。あぅ、と落ち込みかける墨に、しかし武藤氏は大らかに首を振った。
「お気になさらないで下さい。超弩級戦力のみなさんだって、全員がお話が得意な訳ではないでしょうし」
猟兵だからといって、皆が雄弁である必要は無い。墨の心が仄かに軽くなる。
とはいえ、引き受けた依頼は完遂しなければならないだろう。墨は静かに口を開いた。
「それで……ですね……」
紡ぎ出された声は、強い風が吹けばさらわれてしまいそうなほどか細い。それでも武藤氏は一言も聞き漏らすまいとするかのように、熱心に耳を傾けた。
墨が改良退魔刀で最初に気になったのは、その刃渡りだった。長い刃は武器――特に、刀を使い慣れた者でなければ扱いが困難だろう。そして、長刃と重量は、墨のように小柄な女性には少々遠心力で振り回されてしまう面がある。
墨の報告に、武藤氏が帳面へ筆記用具を走らせる音が被さった。
「……次に、改良点……ですが……」
薙刀のように使えば、重量も手伝ってとても扱いやすかった。両手持ちにして煙魔を薙ぎ払った感覚から、そう告げる。
「……丈を……えと。通常の……薙刀よりも少しだけ短くすると……ですね。あの……近接戦闘に……多少は有効かも……しれないと……感じました」
補足として付け加えた一言に、武藤氏は感嘆の息を漏らした。
柄や刃の長さが懐へ飛び込まれた時の隙となるならば、持ち手である柄を短くすれば問題は多少改善されるかもしれない。
「短くできない……のなら……いっそ……三節棍のようにしたらどうでしょうか」
柄の強度や刃の重量の調整が、とても難しいとは思いますが。
言うべき事を言い終えて、墨は運ばれて来た紅茶のカップを手に取る。ふわりと芳香が漂った。
「三節棍、という発想はありませんでした。新しい武器の案の一つとして、仲間の鍛冶師に提案してみたいと思います」
少し、無理難題かと思ったのですが。
武藤氏の明るい声に、紅茶を一口飲んだ墨の唇が、ほんのりと弧を描いた。
大成功
🔵🔵🔵
仁藤・衣笠
珈琲、か。あまり馴染みはないが、
折角ならばご相伴にあずかるとしよう。
武藤殿の近くが空いていれば同席したく。
頼むものは……この「ぶれんど」に致そう。
見知らぬものは変に案じず、店主に任すのが佳い。
さて、刀の感想じゃったか。
悪くない……が、やはり気になるのは取り回しじゃな。
撫で切りにするか、まとめて突くか、
どちらかに偏らせた方が役目を果たせるやもしれぬ。
現状の刀身は恐らく抜刀を考えてのものじゃろうが、
抜いた後を思えば些か実戦向きでない。
柄は力を籠められるよう長く、刃は殺傷力のみを考えて反らせ、
体軸を中心に弧を描けばすぱりと刎ねられる鋭さを。
鞘は背中で肩骨を使って抜けるよう、
背負い紐を伸びるものに変えては如何か。
しがない人斬りの戯言じゃ。使えるものだけ拾うて構わんよ。
……儂は帝都の行く末など微塵も興味はないが、
人斬りの視点が世の役に立つなら、
不釣り合いな役目もたまには面白かろう。
では、な。
●
珈琲、か。
仁藤・衣笠(浪こさじ・f38633)は、カフェーの中に漂う香りを感じ胸中で独り言つ。依頼人である武藤氏の姿を捜せば、幾人かの猟兵達の元を回った末、元通りの窓際の席に戻ったようだった。正面に空席を見付け、断りを入れて腰を下ろす。
「ご協力、ありがとうございました」
武藤氏は珈琲のカップを置いて、こちらへ深々と頭を下げた。衣笠にとってはあまり馴染みの無いこの深い色の飲み物を、武藤氏はどうやら愛飲しているらしい。
折角ならばご相伴にあずかるとしよう。
「この『ぶれんど』を一つ頼みたい」
注文を聞きに来た女給へ、衣笠はメニューを開いて告げる。見知らぬものは変に案じず、店主に任すのが佳い。衣笠はそう思っていた。
程なくして、注文した珈琲が運ばれて来る。芳しい香りに誘われて一口飲み下すと、仄かな酸味が舌の上に広がった。
「さて、刀の感想じゃったか」
珈琲カップをソーサーに置いて、武藤氏を見る。机に置いてあった帳面と、筆記用具をすぐさま手に取るのが見えた。
「悪くない……が、やはり気になるのは取り回しじゃな」
撫で切りにするか、まとめて突くか。どちらかに偏らせた方が役目を果たせるやもしれぬ。それが、衣笠の見解だった。
「半端なところがあるために、使い手を選ぶのでしょうか」
「そうかもしれぬ」
武藤氏の呈した疑問に、衣笠はゆるりと首を振る。
「現状の刀身は恐らく抜刀を考えてのものじゃろうが、抜いた後を思えば些か実戦向きではない」
柄は力を籠められるように長く、刃は殺傷力のみを考えて反らせ、体軸を中心に弧を描けば、すぱりと刎ねられる鋭さを。
衣笠の出した改善案を、武藤氏は帳面に記して行く。
「鞘は背中で肩骨を使って抜けるよう、背負い紐を伸びるものに変えては如何か」
「それならば、抜刀の時、身の丈が問題になる事はありませんね」
ありがとうございます、と提案へ礼を述べる武藤氏を、衣笠はほんの少し目を細めて見た。
「しがない人斬りの戯言じゃ。使えるものだけ拾うて構わんよ」
「いえ……とても参考になりました」
武藤氏が帳面を閉じるのに合わせ、珈琲を飲み切る。馴染みの薄い飲み物だが、味は悪くないと感じた。
「……儂は帝都の行く末など微塵も興味はないが、人斬りの視点が世の役に立つなら、不釣り合いな役目もたまには面白かろう」
空になった珈琲カップを置き、衣笠は立ち上がる。
「では、な」
静かな別れの挨拶に、深い会釈が返って来た。
ドアベルを鳴らしてカフェーの外に出る。空はよく晴れていた。
推理小説を一冊、買って帰るのも悪くない。そう思える空だった。
大成功
🔵🔵🔵