戦場に響く宵闇の歌
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『メーデー、助けてください』
まるで二匹の蛇が競い合うかのように、長く伸びた塹壕がどこまでも続く、ヨーロッパのとある戦線。
そこでは銃声と火砲の音に紛れて、誰かの歌声が響き渡っていた。
「くそっ、またあの歌が聞こえてきた……」
「嫌になってくるぜ……これでもう何日目だ?」
陰鬱な歌詞とメロディで
助けてください、と歌う声は、塹壕の中から聞こえてきていた。
もう1つの塹壕に潜む獣人の兵士達は、夜も昼も絶え間なく聞こえるその歌に肉体と精神をすり減らされ、すっかり憔悴しきっている。
『メーデー、メーデー……』
これはただの歌ではない。闇の力をもって敵対者に物理的・精神的な浸食を引き起こすユーベルコードだ。
歌声が聞こえる範囲にいる限り、この攻撃を防ぐ術はない。銃弾から身を隠すための塹壕も、音ばかりは遮ってはくれない。
ゾルダートグラード軍の『宵闇歌唱兵団』は、今日も戦場に歌声を響かせる。
長い膠着状態にあった戦線は、堰を切るように崩壊の時を迎えようとしていた――。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「獣人戦線のヨーロッパ方面にて、ゾルダートグラード軍との塹壕戦を行っている獣人達が危機に陥っています」
異世界から現れたオブリビオンの超大国と、原住民達が100年以上に渡る世界大戦を繰り広げる獣人戦線。
伝説の「はじまりの猟兵」から伝授されたユーベルコードの力で、獣人達はこれまでどうにか戦線を支えてきた。だが死者を配下に加えるオブリビオンとの戦力差は歴然であり、苦しい戦いを強いられている。今こそ、伝説の再来が求められる時だ。
「問題の戦線ではヨーロッパの獣人部隊とゾルダートグラード軍がお互いの塹壕から睨み合いを続けています」
この世界の戦争の基本は塹壕戦だ。敵の銃砲撃から身を守るための溝を掘り、それを掘り進めながら戦線を広げるのだ。この塹壕陣地を突破することはお互いに容易ではなく、だからこそ戦線は膠着状態に陥っているとも言える。
「ですがこの状況が続けば、個々の戦闘力でも戦闘員の数でも上回るゾルダートグラード軍がいずれ獣人部隊をすり潰し、壊滅させてしまうのは明らかでした。そして先日、新たなオブリビオン部隊が戦線に到着します」
その部隊の名は『宵闇歌唱兵団』。歌で物理的・精神的に浸食する闇を生み出す力を持つオブリビオンの歌唱隊である。彼女らが奏でる陰鬱な歌は敵兵の士気を挫き、闇の音色で生命を絶望と死にいざなう、恐るべき悪の歌い手たちだ。
「この歌唱隊が厄介なのは、音が届けば障害物を無視して塹壕内にも直接攻撃ができる点です。このままでは近い内に獣人部隊は壊滅し、ゾルダートグラード軍が戦線を突破するでしょう」
そうなる前に獣人達は塹壕に潜む敵軍を何とか引きずり出そうとしているが、敵塹壕からの絶え間ない火器と歌の攻撃に晒され、戦いあぐねている。猟兵達に依頼されるのは、この戦線に介入して敵オブリビオンを撃破することだ。
「まずは戦術の要となる宵闇歌唱兵団を壊滅させれば、戦いの流れも再び変わるでしょう。その後は獣人の方々と協力して索敵を行い、塹壕内に残っているオブリビオンも殲滅してください」
塹壕越しに攻撃を仕掛けてくる敵を倒すのは簡単ではないし、それを突破できたとしてもゾルダートグラードの兵士は弱卒ではない。最後まで決して油断しないようにとリミティアは語るが、逆に言えば油断さえなければ猟兵が敵わぬ相手はこの戦線にはいないようだ。
「この長く続いた塹壕戦を制し、獣人の方々を救うため、どうか力をお貸し下さい」
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、獣人戦線のヨーロッパ方面に猟兵達を送り出す。
銃声と闇の歌声が響く地獄の塹壕戦。そこで一同を待っているのは絶望の死か、それとも明日への希望か――。
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオは獣人戦線にて、獣人部隊との塹壕戦を繰り広げるゾルダートグラード軍を撃破する依頼です。
1章は敵塹壕内に潜む『宵闇歌唱兵団』との集団戦です。
彼女達の歌は闇を生み出し、塹壕や戦車の装甲といった障害物を無視して敵にダメージを与えることができます。塹壕戦においてこの能力は非常に厄介であり、獣人達の戦線は瓦解しようとしています。
獣人部隊に協力してこの歌唱兵団を引きずり出し、戦線の崩壊を阻止するのが最初の目標になります。
宵闇歌唱兵団を撃破すれば、戦いの流れは再び揺れ動きはじめます。
この機に乗じて2章では塹壕内に潜む敵を探し出し、3章で発見したオブリビオンと戦う、というのが作戦の流れになります。獣人部隊の兵士達も協力してくれるので、うまく連携して作戦行動を取れれば効率も上がるでしょう。
塹壕戦を制し、ゾルダートグラード軍を殲滅できれば、この依頼は成功です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『宵闇歌唱兵団』
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POW : 絶望の海にのまれて
【歌の届く範囲に自由に生み出せる闇の音符】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を闇で塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 心なんていらないでしょう
【喉】から大音量を放ち、聞こえる範囲の敵全員を【障害物】を無視して攻撃し、【戦意喪失】状態にする。敵や反響物が多い程、威力が上昇する。
WIZ : メーデー、助けてください
自身が【陰鬱な雰囲気で歌って】いる間、レベルm半径内の対象全てに【精神を蝕む闇の音符】によるダメージか【全てを飲み込む闇の安寧】による治癒を与え続ける。
👑11
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キアラ・ドルチェ
うちの母方、ローマ人とケルト人のハーフ&ハーフと言うガリア戦記的勇猛家系なんですよねー…ふふ、ガリアン魂見せちゃるけぇ(何言ってるの?
さあ獣人の皆さん、現代に蘇りしスキピオと自称する(自称する?)大軍師キアラちゃんにお任せあれ!
なんちゃら兵団!…勇猛なるケルトの調べに酔いしれなさい!
「私の唄を聴けぇえええええええええ
!!!!!」
大声で歌って宵闇歌唱兵団の歌を邪魔しつつ、相手をバーサークさせて、塹壕から出て突撃させてやるのです!
獣人の皆さん、そこがチャンスです! 出て来た所を押し包んでれっつふるぼっこ!
「ひゃっはー! 暴力がっ、暴力だけがっ、全てを解決するのですー!」(自分も杖でぼこぼこにする!
「うちの母方、ローマ人とケルト人のハーフ&ハーフと言うガリア戦記的勇猛家系なんですよねー……ふふ、ガリアン魂見せちゃるけぇ」
何を言っているのかよく分からないが、ともかく凄い自信とやる気を漲らせて、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は戦場にやって来た。長期化した塹壕戦は文字通り深い「爪痕」を大地に刻みつけ、塹壕越しに敵軍と睨み合う兵士の顔にも疲弊の色が濃い。
「さあ獣人の皆さん、現代に蘇りしスキピオと自称する大軍師キアラちゃんにお任せあれ!」
「じ、自称する
……??」
そんな兵士達を鼓舞するように彼女は高らかに宣言する。果たしてどこまで信じていいのかは甚だ疑問だったが、とにかくポジティブで明るい態度は陰鬱な雰囲気を吹き飛ばしてくれる。それだけでも今の獣人らに耳を傾けさせる効果はあった。
『メーデー、助けてください』
ゾルダートグラード軍の塹壕からは、今も『宵闇歌唱兵団』の歌が聞こえてくる。彼女達が奏でる闇の音符は精神を蝕み、戦意を喪失させる。なにより最も厄介な点は、この精神攻撃は塹壕に身を隠していても防げない事だろう。
「なんちゃら兵団! ……勇猛なるケルトの調べに酔いしれなさい!」
これに対抗するために、キアラはドルイドの杖をマイクスタンドのように握りしめる。相手の武器が歌ならこちらも歌で対抗ということか――奏でる曲名は【CelticBattleSong-モリガンの勲-】。戦神に祝福されし戦士達の歌だ。
「私の唄を聴けぇえええええええええ
!!!!!」
暴力だけが全てを解決するという、強い意志のこもった歌声が戦場に響き渡る。その声量は味方も「うわっ?!」と思わず耳を塞ぐほどデカく、宵闇歌唱兵団の陰鬱な歌声もかき消してしまう。どんな歌も聞こえなきゃ意味はないというシンプルな対抗策であった。
「なんですか、この歌は……」「心が、ざわついて……うおぉぉぉぉッ!」
それだけではなく、戦女神にして夢魔の女王であるモリガンの勲には、宵闇の歌声とは真逆に闘争心をかき立て、敵を
狂戦士化させる効果があった。内なる血の滾りを抑えられなくなった歌い手達は、獣の本能のままに武器を取り、塹壕の中から飛び出してきた。
「獣人の皆さん、ここがチャンスです! 出て来た所を押し包んでれっつふるぼっこ!」
「お、おうっ!」「わかった、やるぞ!」
今まではどれだけ挑発しても塹壕に引っ込んで姿を見せなかった宵闇歌唱兵団が、歌うのを止めて突撃してきた。
これは言うまでもなく獣人部隊にとっては戦況をひっくり返す絶好の機会である。キアラの号令に応えて兵士達は銃を構え、残された気力を振り絞って反撃を開始する。
「きゃぁッ?!」「うぐッ!!」
敵兵団はその名の通り歌唱を本分とした集団であり、一般の兵士と比べても物理的な戦闘力は高くない。狂戦士化によって歌を封じてしまえばさしたる脅威とは言えず、彼女らの蛮勇は無謀となって戦場に屍を晒す結果となった。
「ひゃっはー! 暴力がっ、暴力だけがっ、全てを解決するのですー!」
この状況を作りだしたキアラ自身も、最前線で杖を振るって敵をボコボコにしている。ユーベルコードの状態異常は味方には効果が無いはずなのだが、歌っているうちに本人までハイになってしまったのかバーサーク気味である。
とはいえ、その暴れっぷりも今は味方を鼓舞し士気を向上させる一因になっているのは間違いない。古き森の叡智を受け継ぐ白魔女に導かれるままに、獣人部隊は敵を打ち倒していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・アルカレイト
錬金術…音響弾とマヒ攻撃の弾丸を錬成
クイックドロウ…素早く放つ
属性攻撃…防音の刹那の無限回転発動
『ん?何これ?』
緋智が変な物体を拾った
『柔らかい…』
慶喜がその物体を触った感触を言う
私もさわ…
歌が聞こえてきた
『防音の結界術や!大丈夫や…俺に秘策がある!、ぐっ』
結界術を展開して他のUC雷と凍結の結界を発動
戦意喪失状態を跳ね返しただけでなく自動追尾の轟雷と瞬間凍結オーラで敵に反撃
よ〜し!くらいなさい!
ヘルパーとディアブロから刹那の無限回転をかけた錬成弾を敵に放つ
音が響き敵の歌が止まる
『行くよ!』
緋智もUC朧月夜・冥道神機『緋智』を発動して冥道朧月で敵を消滅させる
グッバイ!
UC発動して敵を吹き飛ばした
「ん? 何これ?」
膠着状態の続く獣人戦線を訪れたアルマ・アルカレイト(異世界からの来訪者『無能の錬金術士』・f39594)と仲間達。その中の1人である少女「緋智」は、戦場に奇妙なものが落ちているのを見つけ、何だろうと拾い上げる。
「柔らかい……」
もう1人の仲間である「慶喜」が触ってみると、その物体はぐにゅりと柔らかな感触を指先に伝えてきた。兵士の誰かが落とした物とも思えないし、由来も用途もまったく予測がつかない。かと言ってただのゴミだと捨て置くには妙に気になるのだった。
「私もさわ……」
アルマもその物体に興味を持って手を伸ばそうとするが、そこで敵の陣地から歌が聞こえてくる。少しばかり悠長に構えすぎたか、ゾルダートグラード軍は容赦などしてくれない――闇の力に満ちた『宵闇歌唱兵団』の歌は、塹壕に隠れていようが標的を逃さない。
「防音の結界術や! 大丈夫や……俺に秘策がある!、ぐっ」
【心なんていらないでしょう】と、大音量の歌で戦意を喪失させようとする敵に対し、慶喜が結界術を行使する。
展開された【雷と凍結の結界】は音を遮断することで友軍を守護し、さらに敵のユーベルコードを跳ね返しながら反撃する効果を併せ持っていた。
『抵抗を諦め、絶望しなさ……ッ、きゃぁっ!!?』
反射された自分達の歌声に加えて、自動追尾する豪雷と防御貫通する瞬間凍結オーラを浴びせられた宵闇歌唱兵団は、一転して混乱状態に陥る。塹壕に隠れていようが関係ないのはこちらも同じことだが、やり返された側の動揺は相当のものだろう。
「よ~し! くらいなさい!」
この機を逃さずアルマも二丁のガンナイフ『ヘルパー』と『ディアブロ』から、音響弾とマヒ弾を錬成して放つ。
特殊な技術によって刹那の無限回転をかけられた弾丸は、歌声や豪雷にも負けない大音量を響かせながら標的を撃ち抜き、その動きを封じ込めた。
『行くよ!』
さらに緋智も【朧月夜・冥道神機『緋智』】を発動。人間の姿からキャバリアの姿に変身を遂げると【冥道朧月】の波動で畳み掛ける。放たれた十字の冥道は闇よりも昏く、呑み込まれた敵の歌い手は跡形もなく消滅していった。
「な、何なのですか、あなた達は……!」
「おぉ、凄い援軍が来てくれたぞ!」
これまでの相手にはいなかった未知の戦力の攻撃は、宵闇歌唱兵団に大きな打撃を与えている。本来ならゾルダートグラード軍の優勢へと傾くはずだった膠着状態は崩れ、獣人部隊が勢いを盛り返していく。厄介な歌声さえ聞こえなくなれば、彼らとて決してオブリビオンに無力な存在ではないのだ。
「グッバイ!」
「「きゃぁぁぁッ
!!?!」」
この戦況に拍車をかけるように、アルマも自らのユーベルコードを発動。次元すら貫く【神秘殺しの次元撃】が、混乱の渦中にある宵闇歌唱兵団を吹き飛ばす。それはあまねく神秘の力を打ち消す作用を持った、彼女の必殺技だ。
陰鬱な歌声にかわって戦場に響き渡るのは鬨の声。この調子だとばかりに彼女達はなおも攻勢を強めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
バロメリアン・マルゴール
目的:戦場を明るい歌だけで満たす
行動:兵士達と気迫を込めて歌うことで陰鬱な雰囲気を消し飛ばす
オレ達の歌うm'aiderは暗い歌か?
否だ
はじまりの猟兵と共に戦う者達の勇ましい歌であるべきだ
さ、光を届けに来たぜ
まず仲間の近くで歌い
敵の攻撃を相殺し仲間を精神的に癒やす
目立つ衣装で陽気に歌い士気を上げるぜ
暗い雰囲気なんて消し飛ばせ!
合わせて行くぜ
準備は良いかい、
ムッシュー?
兵が士気を取り戻したら本番だ
敵が歌い始めたらそれに重ねて情熱的なm'aiderのシャウトを兵士達と共に重ねるんだ
雰囲気を乱し相手の歌の魔術を妨害し無力化を狙うのさ
攻撃は他の猟兵に任せる
どうにも、ヤツらは攻撃しにくくてね
「オレ達の歌うm'aiderは暗い歌か? 否だ。はじまりの猟兵と共に戦う者達の勇ましい歌であるべきだ」
陰鬱な歌で満たされた塹壕戦の最中に、バロメリアン・マルゴール(戦場の光・f39933)は堂々とそう語った。
彼は戦場の歌い手として様々な戦場を渡り歩き、兵士達に歌を届けてきた。美しい女性と音楽を愛し、闇と暗い話を嫌う彼の歌は、まさに『宵闇歌唱兵団』の歌と対極に位置するものだ。
「さ、光を届けに来たぜ」
そう言って彼はヒツジの顔でニヒルに笑い、無線式マイク『星』を構える。奏でるのは陽気なアレンジがなされた【ユーベルコード】コンブリオバージョン。活気のあるメロディに合わせてハリのある力強い歌声が響けば、塹壕に文字通り"光"があふれた。
「なんだ、この光は
……?」「それに、この歌は……!」
バロメリアンの一族は声に魔力を乗せる魔術に親和性が高く、その歌声は物理的な光を生み出して聴衆を照らす。
闇を作り出す宵闇歌唱兵団とは真逆の性質を持つ歌。光と闇の歌声は相殺され、蝕まれていた獣人部隊の心に情熱の光が灯りだした。
「暗い雰囲気なんて消し飛ばせ!」
派手なオーダーメイドの衣装を着て、陽気に歌う彼の姿は塹壕のどこにいても分かるくらい目立つ。まるでここがライブ会場であるかのような熱唱ぶりは、挫けかけていた味方の士気を上げるのに十分な効果があった。一度は絶望に打ちひしがれた兵士達が、前を向いて立ち上がる。
『メーデー、助けてください』
相手の塹壕側から別の歌が聞こえてくれば、宵闇歌唱兵団も負けじと声量を上げる。戦場を照らす光の歌を、もう一度闇で呑み込まんと。彼女達の歌声は美しくも陰鬱な調べでこちらの歌声を押し返してくるが――バロメリアンは動じずに味方に声をかけた。
「合わせて行くぜ。準備は良いかい、
ムッシュー?」
「「おうッ!!」」
兵の士気が戻ったならここからが本番だ。戦場の歌い手は相手の歌にかぶせるように、情熱的なシャウトを兵士達と共に重ねる。雰囲気を乱すことで相手の歌の魔術を妨害し、無力化を図るのが狙いだ。同系統の術技の使い手だからこそ、その弱点も彼は熟知していた。
「「m'aider!」」
気迫のこもった力強いメーデーのシャウトで陰鬱な雰囲気は消し飛ばされ、情熱の光が広がっていく。相手の塹壕からはまだ宵闇の歌も聞こえてくるが、その声音はさっきまでと比べると力がなく、動揺がありありと感じ取れた。
相手と同じ音楽という舞台で、闇を光に塗り替えてみせたバロメリアン。その技能と魔力、そして何より心の強さは卓越したものと言って良いだろう。
「ありがとよ、いい歌だった!」「アンコールも頼むぜ!」
勢いに乗った兵士達は塹壕から身を乗り出して反撃を開始。ゾルダートグラード軍の侵攻を再び押し返し始める。
その様子を満足げに眺めながら、バロメリアンは引き続き歌で味方を鼓舞する。彼のユーベルコードは浄化の光を顕現させて攻撃にも転用できるが、今回はサポートのみに注力するようだ。
(どうにも、ヤツらは攻撃しにくくてね)
それは対極であるが故のシンパシーか、または宿縁によるものか。バロメリアンは不思議と宵闇歌唱兵団にそれほどの敵意を抱いてはいなかった。自分の目標は戦場を明るい歌だけで満たすこととして、攻撃は他の味方に任せる。
歌の魔術さえ封じてしまえば、あの兵団はさしたる脅威を持たない。この調子でいけば、瓦解しかけていた戦線が反転するのも時間の問題だろう――。
大成功
🔵🔵🔵
ウールリカ・メリノス
う〜ん、どんよりしてよくない雰囲気だね〜
これじゃあやられるのも時間の問題だ〜
すぐに原因を取り除くから、もう少しだけ辛抱しててね〜
戦場に響き渡り、人々の心を揺らがすあの
m'aiderは、ネガティブな魂の叫び声と言えるはず〜
だったら私のユーベルコードで、誰がどこで歌っているか分かるはず〜
敵の場所を把握出来たら、わたしたちまでダメになる前に、なるべく人数の少ない集団の所から優先で転移して、蜂の巣にしていこう〜
悪いけど、コンサートはもうおしまいだよ〜
「う~ん、どんよりしてよくない雰囲気だね~。これじゃあやられるのも時間の問題だ~」
塹壕の中で士気がガタ落ちした兵士達を見回して、ウールリカ・メリノス(ヒツジの衛生兵・f39990)は眠たげな調子で呟いた。衛生兵として多くの戦場を見てきた彼女には、戦況の深刻さが一目で分かる。兵士が戦う気力を失ってしまえば、戦線はあっけないほど脆く崩壊するのだ。
「すぐに原因を取り除くから、もう少しだけ辛抱しててね~」
問題の根本であり兵士の治療を妨げているのは、敵の塹壕から聞こえてくる『宵闇歌唱兵団』の歌。【メーデー、助けてください】と戦死者の末路を想像させる陰鬱な歌詞が、闇の音符を生み出して獣人部隊の精神を蝕んでいる。
「戦場に響き渡り、人々の心を揺らがすあの
m'aiderは、ネガティブな魂の叫び声と言えるはず~。だったら私のユーベルコードで、誰がどこで歌っているか分かるはず~」
宵闇歌唱兵団は塹壕に隠れて姿を見せないが、武器とする歌声こそが居場所を突き止める最大の手がかりになる。
メーデー、メーデーと繰り返し聞こえる宵闇の歌に耳を澄ませながら、ウールリカはユーベルコードを発動した。
「
Je suis le sixième Jaeger...」
【其ははじまりの猟兵がごとく】。通常は助けを求める味方の位置を把握して駆けつけるための能力だが、今回は索敵と強襲にも利用できる。塹壕に潜む兵団の配置を確認すると、彼女はその中でなるべく人数の少ない集団の所を選び、
瞬間移動した。
「メーデー……なっ、どうやってここが?!」
「悪いけど、コンサートはもうおしまいだよ~」
空間を飛び越えて忽然と出現したヒツジの少女に、宵闇歌唱楽団は激しく動揺する。ウールリカはまだ若干ぽわっとした雰囲気のまま、熟練の兵士の動きで「RoAFマシンカービン」を構える。小刻みな短機関銃の銃声が塹壕内に響けば、敵の歌声はたちまち悲鳴に変わった。
「「きゃぁぁぁッ
!!?」」
負傷者の救助で前線に立つことも少なくないウールリカは戦闘猟兵としての訓練も受けており、直接的な戦力としても侮れない。温和な雰囲気に反して容赦なく敵を蜂の巣にしていく様からは、意外な血の気の多さを感じさせた。争いを好まぬ草食獣と侮るなかれ、ヒツジは実は血気盛んな者も多いのだ。
「くっ……あなたも、闇に飲まれなさい……!」
宵闇歌唱兵団はなおも歌い続けて闇の音符を生み出し、治癒と攻撃を同時に行う。しかしウールリカの戦意はその程度の事では挫けない。目の前に友軍を蝕む原因がいるのに、衛生兵が倒れてしまっては誰が彼らを治療するのか。
「わたしたちまでダメになる前に、終わらせるよ~」
「ッ
……!!?」
歌声をかき消すようなけたたましい銃声と弾丸をばらまき、ひとつの集団を壊滅させればすぐに次の集団の元へ。
ゾルダートグラードの塹壕内で転移を繰り返しながら、ウールリカはひとり奮戦する。それに伴ってひとつ、またひとつと闇の音符が消えていき、陰鬱に沈んでいた獣人部隊は士気を取り戻しつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
シプラ・ムトナント
皆さん、意気を削がれている様子……あと少しだけ、待っていて下さいね。
心を惑わす原因を断つのも、衛生兵の
仕事です。
……聴いているだけで戦意が削がれるような歌ですが、【闘争心】を湧き起こせばきっと抗えるはず。
あなた方もヒツジならば知っているでしょう……わたし達が内に秘めるものを。
反響するのが厄介ですが、歌声が大きくなる方へ進んで敵を探しましょう。
敵影を確認次第、接近して『C.Q.C.C.』を発動。
救急カバンの打撃による【気絶攻撃】を仕掛けます。
叩きつけ、横薙ぎ、振り上げ。どれかが入り続ける限り、わたしの攻勢は止まりません。
中身の心配は無用です、衛生兵のカバンはやわではありませんので。
「皆さん、意気を削がれている様子……あと少しだけ、待っていて下さいね」
敵の精神攻撃にやられて心の折れかけている兵士達に、シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は励ましの言葉をかける。ゾルダートグラード軍が投入した『宵闇歌唱兵団』がこの戦線にもたらした影響は見るからに深刻で、士気崩壊が起こるのも時間の問題だ。だが、それを阻止するために彼女らは来たのである。
「心を惑わす原因を断つのも、衛生兵の
仕事です」
そのために必要となる戦いの術を、彼女は父から受け継いだ。愛用の散弾銃を片手に、救護カバンを肩に担いで、ムトナントの娘は塹壕から身を乗り出す。ここから敵の姿は見えないが、陰鬱な歌声ははっきりと聞こえてきた。
『ああ、メーデー、叫んでも助けは来ない……』
【絶望の海にのまれて】と、宵闇歌唱兵団が奏でる歌は、聞こえる範囲に闇の音符を生み出し、戦場を黒く塗り潰していく。ユーベルコードの域まで昇華された歌唱の威力は、ここにいる兵士達の有り様を見れば説明不要だろう。
(……聴いているだけで戦意が削がれるような歌ですが、闘争心を湧き起こせばきっと抗えるはず)
シプラはその歌声が聞こえる方へ、臆することなく走りだした。闇の音符が当たるたびに鉛のような陰鬱さが体に流れ込んでくるが、その程度のことでは立ち止まらない。治療や戦闘の技術だけではなく、鋼の如き精神力も彼女の武器のひとつだ。
「あなた方もヒツジならば知っているでしょう……わたし達が内に秘めるものを」
宵闇歌唱兵団を構成するのはヒツジの獣人だが、偶然にも今回の依頼に参加した猟兵にもシプラを含めてヒツジが多かった。彼女らはみな争いを好まない温和な心を持つ一方で、いざとなれば果敢に困難に挑戦する血気盛んな一面も持っている。内なる情熱と鋼の意志を宿した心は、宵闇の歌声などに塗り潰されはしない。
(反響するのが厄介ですが、これだけはっきりと聞こえるのであれば)
歌声と銃弾が飛び交う戦場を駆け抜け、歌声が大きくなる方向へと進み続けたシプラは、ついに塹壕に潜む敵影をその眼に捉える。向こうもよもやこの戦線を強行突破できる者がいるとは想定外だったようで、ヒツジの顔に驚愕の表情を浮かべていた。
「そんな……なぜ、あなたは絶望しない?!」
「そんな暇はないからです」
敵影を確認次第、シプラは【C.Q.C.C.】による接近戦を仕掛ける。これは医療資材を満載した救急カバンを鈍器として利用する衛生兵ならでは(?)の近接戦闘術であり、見た目よりずっと洗練された侮れない威力を発揮する。
「あぐっ?!」「きゃぁっ!?」
重量に遠心力を乗せた叩きつけ、横薙ぎ、振り上げ。どれか1つでも入り続ける限り、彼女の攻勢は止まらない。
歌い手達は新たな闇の音符を生み出す間もなく、悲鳴を上げて叩き伏せられていく。歌の魔術に特化した宵闇歌唱兵団に、白兵戦の心得はあまり無いようだ。
「中身の心配は無用です、衛生兵のカバンはやわではありませんので」
遠慮も容赦も一切なしで救急カバンをぶん回すシプラ。これで本当に中身は破損ひとつ無いのだから驚きである。
この少々過激な"治療"によって、兵士達の心を蝕んでいた元凶は沈黙し。闇の音符が消えると共に陰鬱な雰囲気が薄らいでいくのを、誰もが肌で感じ取っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ロザリア・プライム
フゥン……敵さんはお歌が上手ってか
だったら本物の戦場の音ってのを教えてやろうか!
Generalを操縦し戦線に参加
キャバリア故に目立つだろうがむしろ好都合
援護射撃で敵を引き付け友軍に与える被害を極力抑えて移動する
行進間射撃だ、あくまで牽制が目的よ
ある程度引き付けたら……逃げるのは止め!
変形拠点形態
音符ごと奴らのドタマを吹き飛ばしてやる!
姿勢を低くし主砲に角度をつけて
安全な状態から制圧射撃! ウラ!
音を止めたらそのまま砲撃続行! ウララララララ!
敵の塹壕ごと貫通攻撃で終わらせてくれるわ
音より早く届く砲弾を買わせると思うなよ
これが本物の戦場の音楽って奴よ。ヤッハ!
「フゥン……敵さんはお歌が上手ってか」
敵側の塹壕から響き渡る陰鬱な歌声を聞いて、皮肉げに呟いたのはロザリア・プライム(ヤッハ隊・f39987)。
ひどく滅入った気分にさせてくれる事を除けば『宵闇歌唱兵団』の歌唱力はなかなか見事なものだった。もっとも彼女らはそれを戦場で獣人達を苦しめるためにしか用いぬ、悪しき超大国の手先でしかないのだが。
「だったら本物の戦場の音ってのを教えてやろうか!」
ロザリアは知っている、奴らが聞かせる歌などより遥かに絶望的なメロディを。相棒たる人型戦車「T40E1"General"」に乗り込んだ彼女は、荒れ果てた大地を踏みしめて戦線に参加する。戦車に手足が生えたが如きキャバリアの威容は、誰もが地に伏せる塹壕戦においては一際目立つものだった。
『キャバリア……そんなものを持ち出しても無意味です』
宵闇歌唱兵団が【絶望の海にのまれて】を発動すると、その歌が聞こえる範囲に幾つもの闇の音符が生まれ、ロザリアが操縦するキャバリアに殺到する。音を武器とした彼女らの精神攻撃は、頑丈な戦車装甲でも防ぐのは難しい。注目を集めてしまえば袋叩きにされるだけだ。
「むしろ好都合だよ」
だがロザリアは巧みな操縦技術で音符を避けながら、敵の陣地めがけて砲撃を加える。古巣を除隊する際に退職金代わりにかっぱらってきたこの機体は、米国陸軍の主力人型戦車を基に、新型の砲塔や動力や制御装置を組み込んだ次期主力試験機。乗り手の技量も相まって、その性能は連中が知るキャバリアとは一線を画していた。
(行進間射撃だ、あくまで牽制が目的よ)
被害を極力抑えつつも堂々と戦場を移動し、砲撃を行う一台の人型戦車は、自ずと敵の注意を引き付ける。それは友軍に対する攻撃の手が緩むということでもあった。ロザリアはそれを好都合として宵闇歌唱兵団の標的にされ続け――ある程度引き付けたところで停止する。
「そろそろ逃げるのは止めだ!
変形拠点形態!」
そう叫ぶや否や【パンツァーフォートレス】を発動すると、彼女のキャバリアは
固定砲台モードに変形。姿勢を低くする一方で主砲には角度をつけ、安全な状態から攻撃力と射程を大幅に強化する。ここまでは好き勝手やらせてやったが、いよいよ反撃の狼煙を上げる時だ。
「音符ごと奴らのドタマを吹き飛ばしてやる! ウラ!」
勇ましい雄叫びと共に火を吹く「T119E1 90mm戦車砲」。その砲声は大気を震わせ、着弾すれば大地を揺るがす。
兵団が奏でる闇の歌などかき消されてしまう、これが本物の「戦場の音」。敵兵に死を告げる鉄と鉛と火の音だ。
「ウララララララ!」
『なっ――!!』
音が止まればロザリアはそのまま砲撃を続行。敵部隊が潜む塹壕ごと徹甲弾で貫通させる気で猛攻を加えまくる。
これには宵闇歌唱楽団も慌てざるを得なくなり、歌唱を一時中断してでも退避を目論むが――逃げるなら、彼女の射程内に入る前にするべきだったろう。
「音より速く届く砲弾を躱せると思うなよ」
砲声を置き去りにして飛来する高速徹甲弾は、一切の慈悲を持たずに敵兵を吹き飛ばす。生身の獣人がこんなものを喰らえば亡骸は原型すら止めないだろう。爆ぜる土煙と血飛沫に紛れて、歌い手達の悲鳴が微かに聞こえてきた。
「これが本物の戦場の音楽って奴よ。ヤッハ!」
兵器と敵の断末魔が織り成すメロディを楽しむかのように、ウサギのソルジャーは凶暴な笑みを浮かべる。それは敵に対してはレクイエムだが、味方にとっては反撃を告げる軍歌となる。宵闇の歌声が止んだ隙に、獣人部隊は崩れかけていた戦線を立て直しつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリュファシオン・アルティウス
オーラ防御さえ貫通するとは何て音だ…ならば!
オーラ防御を貫通してしまったのでUC矛盾の鎖と逆行の炎を発動
状態異常を跳ね返した
『オォォー…』
オーさんがダルそうである
IT'S SHOWTIME!癒やしの神…神夜!
神夜は周りの仲間を癒やす
『オォォー!』
オーさんが光を放って黒い龍に変身
『行くぜ!エル!』
龍に変身したオーさんは時間逆行属性(属性攻撃)のブレスで焼き払う
行くよ!
視力で周りの敵の動きを見ながら障害物を利用して敵の間合いに入ってから素早く呪殺弾を放つ
さあ…行こう!
凍結攻撃の蟲を呼び出し敵を凍らせてた後
オーさん!神夜!行くよ!
皆で敵に総攻撃をかけた
The SHOW'S OVER…
手袋を引き締めた
「オーラ防御さえ貫通するとは何て音だ……」
膠着した戦線を動かすためにゾルダートグラード軍が投入した『宵闇歌唱兵団』。その歌声はエリュファシオン・アルティウス(“やんきー”を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208)が纏う「万能時間覇気」でも防ぎきれない強烈な精神攻撃だった。ただ聞いているだけで酷く陰鬱な気分にさせてくれる、まさに闇の音楽だ。
「……ならば!」
彼女は歌に負けないよう気合を入れて【矛盾の鎖と逆行の炎】を発動。オーラの上から無数の炎と鎖を発生させ、敵部隊に反撃を仕掛けた。これは自身が受けた状態異常や行動制限を反射する、カウンター用のユーベルコードだ。
『なっ……私達の音が、跳ね返って
……?!』
【心なんていらないでしょう】と、自分達が奏でた歌を跳ね返された宵闇歌唱楽団は、矛盾の鎖と逆行の炎に過去の力を奪われ、戦意を喪失する。これまで彼女達がこの世界の獣人にしてきた事を考えば、自業自得の末路だろう。
『オォォー……』
それでも敵の数は多く、全ての歌声が止んだわけではない。エリュファシオンの相棒であるオオサンショウウオ型バイクの「オーさん」もダルそうに唸っている。塹壕内にいる獣人部隊の士気も下がったままで、1人だけ元気でも戦況は覆りそうになかった。
「IT'S SHOWTIME! 癒やしの神……神夜!」
そこでエリュファシオンは【矛盾の鎖と逆行の炎】と並行して【神楽逆行王・神夜】を召喚。黄色の仮面を付けた着物の女性が戦場に現れ、あたたかな光で周りの仲間を癒やす。肉体的な怪我はもちろん精神的な状態異常も完全に治療され、兵士達の目に光が戻ってきた。
「おおっ……なんだかいい気分だ!」
『オォォー!』
一緒にやる気が戻ったオーさんも、光を放って黒い龍に変身。これぞ彼の真の姿である「調停龍パラダイム・パラドックス」だ。敵軍は自分達の歌で戦意が低下し、逆に友軍は万全の状態まで回復。今こそ反撃のチャンスである。
『行くぜ! エル!』
「行くよ!」
龍に変身したオーさんは口からブレスを吐いて敵の塹壕を焼き払う。時間逆行の力を帯びた調停龍のブレスを浴びた敵兵は、誕生前まで回帰させられ亡骸すら残らない。同時にエリュファシオンも塹壕を利用して敵の間合いまで移動すると、手にした「シャドウ・ガンナイフ」素早く呪殺弾を放った。
「さあ……行こう!」
「ぎゃぁッ?!」「さ、寒い……!」
さらに彼女は瓢箪型の蟲笛から冷気を操る蟲達を呼んで追撃を行わせ、塹壕に隠れていた敵を凍てつかせていく。
この一転攻勢に対して宵闇歌唱楽団はほとんど為すすべがなく、歌声を合わせる余裕もなく総崩れになっていた。
「オーさん! 神夜! 行くよ!」
畳み掛けるようにエリュファシオンが【逆行奥義・調停龍パラダイム・パラドックスの総攻撃】を宣言すると、戦場にいる仲間達が敵軍に一斉攻撃を仕掛ける。癒やしの神の光と調停龍のブレス、そしてガンナイフの銃声が響き渡と「ぎゃぁぁぁぁッ!!」と敵の悲鳴が重なり、その後には何者も残りはしない。
「The SHOW'S OVER……」
総攻撃を終えた少女は白い手袋をきゅっと引き締めてポーズを取り、勝利を宣言。彼女達の働きによって崩れかけた戦線は獣人側が盛り返しつつあり、逆に一度は勢いづいたゾルダートグラード軍の侵攻は停滞しつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
花咲・月華
耳栓は意味ないか…来て空亡!
同時発動UC伝説の大妖怪・空亡を発動 歌っていた敵達は突然咳き込み始めた
風邪属性攻撃の蟲達を呼び出し敵を風邪にしたのでこれで歌は歌えない
『さっさとやるぞ』
朱雀はキャバリアに変身した
よっしゃ〜!いくわよ!
爆撃の斬撃波を周りの敵に放つ
弾幕発射よ!朱雀!
キャバリアから焼却の弾幕を放つ
更に障害物を利用して呪殺弾を放ち跳弾にして敵を次々と撃ち抜く
よ〜し、変身よ!
『自分達の歌を聞け…』
UC発動して私と朱雀は敵の姿に変身して『メーデー、助けてください』と二人で歌った
(味方には効かないようにしている)
皆!今よ!
獣人達も攻撃してくれる
『皮肉だな…自分達の歌に倒れるとは…』
朱雀が呟いた
「耳栓は意味ないか……来て空亡!」
耳を塞げば敵の精神攻撃を受けずに済むのではないかと考えた花咲・月華(『野望』を抱く?花咲の鬼姫・f39328)だが、その程度で防げるのなら獣人部隊もここまで追い詰められてはいないだろう。無意味を悟った彼女はすぐさま作戦変更、【伝説の大妖怪・空亡】を召喚する。
『心なんていらないで……けほっ、ごほっ』
黒い球体状の姿をした闇の大妖怪が戦場に現れると、それまで陰気に歌っていた『宵闇歌唱兵団』が突然咳き込み始めた。かの妖怪は強大な闇の力をもって厄災を与える不吉の象徴。その巨体からあふれ出した微小な蟲の群れが、敵軍に牙を剥いたのだ。
「これで歌は歌えないわ」
月華が空亡と共に呼び出した蟲達には病を媒介する性質がある。敵が咳き込んでいるのはこいつらに風邪を引かされたせいだ。不治の病というわけではないが、歌を武器とする宵闇歌唱兵団にとって喉の不調は致命的。反撃を仕掛けるなら絶好のチャンスだ。
『さっさとやるぞ』
「よっしゃ~! いくわよ!」
お目付け役の赤鬼が変身した「鳳凰キャバリア・朱雀」に乗って、月華は爆撃の斬撃波を放つ。真っ赤に燃える炎の波動はゾルダートグラード軍の陣地を抉り、中に潜んでいる敵をあぶり出す。炎と爆風に巻かれた敵兵はたまらず塹壕から這い出てくるが――。
「弾幕発射よ! 朱雀!」
『おう!』
姿を見せた敵兵に浴びせられるのは焼却の弾幕。キャバリアの翼から放たれる炎は鳳凰の羽根のように触れた者を焼き尽くす。さらに月華も呪殺弾を放てば、それは狭い塹壕内で跳弾して、まだ潜んでいた敵を次々に撃ち抜いた。宵闇歌唱兵団の歌声は「ぎゃぁぁぁぁっ」と咳でしわがれた悲鳴に変わる。
「よ~し、変身よ!」
『自分達の歌を聞け……』
追い打ちをかけるように月華と朱雀は【陽炎変化の術】を発動。敵の姿に変身して『メーデー、助けてください』と歌いだす。このユーベルコードは対象の外見だけではなく装備やユーベルコードも複製する高度な変化術であり、その歌声はこれまで獣人部隊が聞かされていたものとまったく同じものだった。
「う……この、歌は……私達の……」
「皆! 今よ!」
陰鬱な歌声に精神を蝕まれていく宵闇歌唱兵団。そこに月華が合図を出すと、獣人部隊が「おうっ!」と雄たけびを上げて攻撃を仕掛ける。これまで散々いいようにやられて鬱憤も溜まっているだろう、反抗に転じた彼らの爆発力は凄まじいものがあった。
『皮肉だな……自分達の歌に倒れるとは……』
これも因果応報というやつだろうか。ぽつりと呟く朱雀の視界では総崩れとなった歌い手達が撤退を始めている。
だが、ここで彼女らを逃がすほど甘くはない。勢いに乗った猟兵と獣人部隊は徐々に戦線を押し上げていく――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
物理障壁無効とか、こういう環境じゃシンプルに厄介すぎるわねぇ…
冗談抜きでタチ悪いわぁ。
とりあえず、まずは
アンサズと
イサで遮音結界張りましょ。言葉が凍る、即ち「沈黙」。歌が届かなければ、音符も何も関係ないわよねぇ?
…で、歌が届くってことは、少なくとも音源はそこにあるわけで。「歌の音源」を攻撃対象に指定して●黙殺・掃域を起動、あとは塹壕内走り回ればオートで弾幕が攻撃してくれるわねぇ。場所さえわかってしまえば獣人部隊の人も攻撃集中してくれるでしょうし。
壁の向こうから散々好き放題してくれたんだもの。
『嗚呼 復讐は罪が故に 粛々と受け入れ給え 嘆いた処でもう手遅れさ』――なぁんてね?
「物理障壁無効とか、こういう環境じゃシンプルに厄介すぎるわねぇ……」
塹壕という遮蔽物に潜んで撃ち合う塹壕戦の前提を、丸ごとひっくり返す『宵闇歌唱兵団』の歌唱魔術。銃撃から身を隠したまま一方的に攻撃ができる優位性の恐ろしさを、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はよく理解していた。
「冗談抜きでタチ悪いわぁ」
歌声と共に出現する闇の音符は戦場を黒く塗り潰し、獣人達の心を侵蝕しながらゾルダートグラード軍の陣地を広げていっている。もし自分達がこの戦線に駆けつけなければ、じきに獣人部隊の防衛ラインは崩壊していただろう。
「とりあえず、まずは
アンサズと
イサで遮音結界張りましょ」
これ以上の被害拡大を防ぐために、ティオレンシアは魔術文字の知識をもって宵闇の歌に対抗する。文字に込められた魔力を抽出することで様々な効果を発揮するルーン魔術。その作用は使い手の解釈によっても大きく変化する。
「言葉が凍る、即ち『沈黙』。歌が届かなければ、音符も何も関係ないわよねぇ?」
『――
……!?』
宵闇歌唱兵団が奏でる歌は、ルーンの結界に触れた途端聞こえなくなる。どれだけ【絶望の海にのまれて】と声を張り上げても無意味だ。物理的に音を遮るのではなく、魔術文字による概念的な護りであれば連中の攻撃も防げる。
「……で、歌が届くってことは、少なくとも音源はそこにあるわけで」
防御の目処が立ったなら、次は攻撃に転じる番だ。ティオレンシアは歌の聞こえてくる方角から塹壕に隠れている敵のおおまかな位置を把握し、「歌の音源」を攻撃対象とした【黙殺・掃域】を発動する。そこに潜んでいれば自分達は撃たれないと、安心していられるのもここまでだ。
「『あたしの距離』に踏み込むってことは……撃たれる覚悟も、当然あるってことよねぇ?」
『な……きゃぁっ!?』『こ、攻撃がっ?!』
鉱物生命体「ゴールドシーン」のペン先を虚空に踊らせながら走り回れば、描かれた魔術文字から弾幕が生じる。
これは射程範囲内にいる指定対象を自動的に攻撃するユーベルコードだ。本人は塹壕内を移動するだけで、文字の弾丸が敵を撃ってくれる。土壁の向こうから歌声にかわって驚きの声が聞こえてきた。
(場所さえわかってしまえば獣人部隊の人も攻撃集中してくれるでしょうし)
キラキラ光りながら標的に向かって飛んでいく魔弾は、友軍にとっては敵の位置を告げる目印だ。ティオレンシアの意図を汲み取ってか、獣人の兵士達は続々とその箇所に集中砲火を浴びせる。ルーンの遮音結界のお陰で、彼らを蝕んでいた闇の音符の効果も切れたのだ。
「よくもやってくれたな!」「今度はこっちの番だ!」
これまで塹壕内で耳を塞ぐしかできなかった鬱憤を晴らすように、獣人達の攻撃は苛烈だった。中には「はじまりの猟兵」から受け継がれたユーベルコードを扱える兵士もいる。歌の脅威さえなくなれば、彼らは決して無力な雑兵などでは無かった。
「壁の向こうから散々好き放題してくれたんだもの」
次はこっちの番よねぇ、とティオレンシアは獣人部隊と共に攻勢を強める。ひとたび攻撃に晒される側に回れば、歌唱に特化している兵団は脆いものだった。塹壕越しにかすかに上がる悲鳴さえも、遮音結界の前では届かない。
「『嗚呼 復讐は罪が故に 粛々と受け入れ給え 嘆いた処でもう手遅れさ』――なぁんてね?」
やがて、その悲鳴すらも完全に聞こえなくなる頃には、宵闇歌唱兵団が受けた損害は壊滅的なものとなっていた。
いつもと変わらぬ穏やかな微笑みを口元に浮かべ、敵兵に餞別の詩を送るティオレンシア。これほど過酷な戦場において"変わらない"まま戦果を挙げた事実こそ、彼女がくぐり抜けてきた戦歴を物語るようでもあった。
大成功
🔵🔵🔵
アヤネ・タチバナ
【アドリブ◎】
🔴REC
ハロハロビーム☆ はい、セーラー星人のアヤネだよ
今回は恐るべき悪の歌い手、宵闇歌唱兵団を聴きに来ていまーす。イェイ☆
でもこれ真面目に聴いちゃうとかなり危険みたいだから、動画を見てくれてるみんなは気を付けてね。メーデー、メーデー♪
なんて、自撮りしてる場合じゃないよね。苦しい戦いを強いられてきた獣人さん達にあの歌はヤバいって
あたしは佳人薄命の
悲哀をくすぐられてしみじみと聴き入ったりはするかもだけど、わりとへーきで歌を楽しめるかも
それは今回も口の端に咥えてる武器:学徒武装「耽溺」のお陰だったり
ポジティブなあたしにネガティブな歌詞がイミフだったり
まだ本当の絶望を味わったことがなかったり。そーゆーこと
そして獣人さん達にはおしゃべり相手になってもらって、UCとコミュ力を生かした楽しいトークで陰鬱な雰囲気をかき消したり
パフォーマンス力と見切りと武器:サイキックガンで闇の音符に華麗な曲撃ちをキメて、士気を盛り上げたりするよ
「ハロハロビーム☆ はい、セーラー星人のアヤネだよ。今回は恐るべき悪の歌い手、宵闇歌唱兵団を聴きに来ていまーす。イェイ☆」
スマホの自撮りアングルでポーズを決めて、アヤネ・タチバナ(セーラー服を脱がさないで・f39709)はネットの向こうの視聴者にスマイルを見せる。いかにもイマドキのJK的なノリの軽さと、背景とBGMの陰鬱さがまったくマッチしていない。ここはマジの戦場で、彼女のいる塹壕は今も敵の攻撃に晒されているのだ。
「でもこれ真面目に聴いちゃうとかなり危険みたいだから、動画を見てくれてるみんなは気を付けてね。メーデー、メーデー♪」
そう言ってる本人はあまり堪えていなさそうなのは、それだけメンタルが強い証だろう。『宵闇歌唱兵団』が奏でる歌声を聞いた者は、精神を蝕まれて戦意を喪失する。普通なら笑って配信なんてやってる余裕はとても持てない。
「なんて、自撮りしてる場合じゃないよね。苦しい戦いを強いられてきた獣人さん達にあの歌はヤバいって」
アヤネも別に空気が読めていない訳ではなく、味方のピンチは理解している。プライバシー等も考慮してカメラの画角には入れてないが、彼女の周りにはぐったりとうなだれる兵士が何人もいる。たとえうずくまって耳を塞いでも【メーデー、助けてください】と唱える敵の歌声は聞こえてくるようだ。
「ちょっと佳人薄命の
悲哀をくすぐられちゃうね」
しかしアヤネはわりと平気で歌を楽しめているようで、美しくも寂寥感のある旋律にしみじみと聴き入っている。
それは今も口の端に銜えている棒付きキャンディ型学徒武装「耽溺」のお陰もある。耽溺力を爆発的に向上させるこのアイテムが、外的要素による精神へのダメージを無効にしているのだ。
「なんで、あんたは平気なんだ……?」
「んー、ポジティブなあたしにネガティブな歌詞がイミフだったりするから?」
この状況下で平然としている謎のセーラー服美少女に、獣人達は不思議そうに声をかける。それに答えるアヤネは相変わらず星のように煌めく笑顔。かつては戦国学徒としてJK星域で覇を争い、現在も猟兵として様々な事件に巻き込まれていながら、ここまで前向きでいられるのは凄い。
「まだ本当の絶望を味わったことがなかったり。そーゆーこと」
その発言の裏を返せば、どんな苦境も激闘も彼女を絶望させるには足りなかったということ。今この状況でさえ、彼女の心に「もうダメだ」とか「諦めよう」という気持ちはカケラもない。そして、皆を諦めさせるつもりもない。
「あたしは女子高校生。結局何が言いたいかっていうと最強ってこと」
「ははっ……なんだそりゃ……」
超新星の如く輝く【
女子高校生】のオーラにあてられたか、獣人達の表情に小さな笑みが戻る。言っていることの意味はあまり伝わらなくても、アヤネのコミュ力と軽快なトークは相手に好印象を与え、周囲のムードを明るくしていた。
『メーデー、メーデー、助けてください……』
宵闇歌唱兵団の歌声はまだ聞こえてくるが、彼女の周りでそれに耳を傾ける者はもう皆無だった。陰鬱な雰囲気を女子高校生のオーラでかき消してしまえば、奴らの精神攻撃は意味をなさない。メーデーなんて知った事かである。
「そんじゃ反撃、いってみよー☆」
皆が元気になってきたところで、アヤネはひょいと塹壕から飛び出し、スカート下のホルスターから「サイキックガン」を抜く。パフォーマンス性の強いハデな動きで闇の音符に華麗な曲撃ちをキメてみせれば、味方の士気はさらに盛り上がった。
「よし、俺たちも行くか!」「おうッ!」
彼女の後に続いて獣人達も反撃開始。敵からすればどうして突然彼らが戦意を取り戻したのか分からないだろう。
宵闇歌唱兵団がどれだけ必死に歌っても、女子高校生のポジティブさが伝染した彼らを足止めする事はできない。
「いい歌だったよ。でもアンコールはナシね♪」
「きゃぁっ?!」
塹壕に隠れていた歌い手をサイキックエナジー弾で撃ち抜き、くるくると銃を回してホルスターに収めるアヤネ。
あれだけ暗かった戦場の雰囲気はすっかり一変しており、陰鬱に沈んでいた獣人部隊は今やゾルダートグラード軍の侵攻を押し返しつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『地獄の塹壕戦』
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POW : 積極的に攻撃を仕掛ける
SPD : 敵の潜んでいそうな箇所を探す
WIZ : 敵の作戦を読み、その裏をかく
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戦線に加わった猟兵達の活躍により『宵闇歌唱兵団』は壊滅し、崩壊しかけていた獣人部隊は士気を取り戻した。
これを切っ掛けにして長く膠着状態にあった戦況は動きだす。思惑を外されたゾルダートグラード軍には動揺が見られ、対する獣人部隊は反撃に転じている。
「この隙に、敵の主力部隊を発見できれば……!」
宵闇歌唱兵団が撃滅された後も、残る敵オブリビオンは塹壕に潜み、こちらの様子を窺っている。
その戦力がどう動くかによっては、再び戦況をひっくり返されることもあり得る。だが、戦闘の長期化により延長に次ぐ延長を重ねられた塹壕のどこに敵がいるのか、一般の獣人兵に発見することは困難だった。
「お願いです、皆さんも索敵に協力して貰えませんか」
「今がチャンスなんだ、頼む!」
隠れ潜む敵を見つけ出し、戦況を動かす次の一手に繋げる。それが猟兵達に求められた次の作戦目標だった。
大地をうねる蛇のように、長く複雑化した塹壕。銃弾飛び交う中を掻い潜りながら、一同は索敵を開始する。
シプラ・ムトナント
この機を逃す訳には行かない、という訳ですね……承知しました、わたしも索敵に回ります。
とはいえ、わたしはあまり探索には長けていません。
できる限りの感知は致しますが……最後は荒っぽいクリアリングになります、ご容赦ください。
敵の潜んでいそうな場所に吸着手榴弾を【投擲】……吸い付けてしまえば、投げ返される危険はありません。
そのまま撃破とは行かずとも、敵を炙り出すことは出来るでしょう。
炙り出した敵への対処や、敵との不意の遭遇の際は
散弾銃が役に立ってくれます。
切り詰めた銃は塹壕戦向きです、容赦は致しません……『近接射撃』を。
シェルベルトから弾を補充すれば【継戦能力】も充分です、進みましょう。
「この機を逃す訳には行かない、という訳ですね……承知しました、わたしも索敵に回ります」
戦況がこちら側に傾きだしたのを実感していたシプラは、獣人部隊の要請に応じて残された敵の捜索を開始する。
温存されている敵オブリビオン部隊を発見・壊滅させれば、この戦線の勝敗は決定的になる。また、ここでの損害は今後のゾルダートグラード軍の動向にも影響を及ぼしうるかもしれない。詰めを誤れない局面だ。
「とはいえ、わたしはあまり探索には長けていません。できる限りの感知は致しますが……最後は荒っぽいクリアリングになります、ご容赦ください」
そう言って敵の塹壕に近付いていく少女の手には、散弾銃と手榴弾が。それを見れば彼女がどうやって敵を見つけ出すつもりなのか想像は付くだろう。どのみち隠れているのは全員オブリビオンである、遠慮する必要は一切ない。
「この辺りが怪しいですね」
経験を元にして敵の潜んでいそうな場所に当たりをつけると、シプラは吸着手榴弾のピンを二本同時に抜いて投擲した。奇麗な放物線を描いて塹壕に落ちていった擲弾は、呪力の作用で着弾地点とぴったり吸着して離れなくなる。
(吸い付けてしまえば、投げ返される危険はありません)
すぐに地面に伏せて耳を塞いだ直後、ドカンと爆音と衝撃が伝わってくる。それと共に慌ただしい悲鳴や怒号も。
どうやら直撃はしなかったようだが、近くにはいるようだ。シプラはすぐに次の手榴弾を取り出し、別のポイントへと投げ込んでいく。
(そのまま撃破とは行かずとも、敵を炙り出すことは出来るでしょう)
さながら爆弾で漁をするかの如く、地面の下にいる敵を追い込んでいくシプラ。これだけ執拗に攻撃を続ければ、どんなに忍耐強い敵でも我慢の限界が来るだろう。塹壕戦とはある意味で精神力の戦いであり、相手のプレッシャーに耐えきれなくなった方が負けだ。
「くそッ、いい加減にしやがれ……ぎゃぁッ?!」
ノイローゼ気味になった敵兵が銃を握りしめ、襲い掛かってくれば炙り出しは成功だ。もちろん、この状況下での遭遇戦でシプラが負ける可能性は万に一つもない。出迎えるように
散弾銃が火を噴けば、敵は頭部を撃ち抜かれて骸の海に還っていった。
「容赦は致しません……」
それからもシプラは視界に入った敵に片っ端から近接射撃を浴びせていく。取り回しを重視して切り詰めた銃身は塹壕戦に向いており、炙り出した敵を始末するだけでなく不意の遭遇戦にも対応力は高かった。撃ったぶんの弾丸は腰に巻いた「シェルベルト」から補充すれば、継戦能力も充分だ。
「進みましょう」
ひとつの区域をクリアすれば、また次の区域へと。ムトナントの娘は索敵の網をじりじりと狭めていく。オオカミのような鼻やウサギのような耳は持たずとも、その眼は決して敵を逃がしはしない。決着を付けるまであと少しだ。
大成功
🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
敵が動揺してる今がチャンス!
戦術練る暇がない内に撃破目指しますよ!
自分にヤドリギの織姫をかけ防御力と隠密性を上げ、植物というか草むらに擬態しながら匍匐前進で索敵
うーん、弾が飛んでくる方角に敵はいるはずなんですよね
なので、どちらから多く弾が飛んでくるか見極め、主力部隊の位置を同定、そちらの方へ索敵範囲を広げます
多少の弾なら織姫で防げるでしょうし、傷ついても生命の実で回復できます
あ、怪我してる獣人さんや仲間がいたら、生命の実分けますよ?
敵の主力を発見したら、事前に決めておいたハンドサインで手近な味方に連絡を取ります
そして味方が近くに揃ったら…植物の槍を打ち込んで戦闘開始の狼煙とします!
いざ決着を!
「敵が動揺してる今がチャンス!」
機を見るに敏なキアラは、宵闇歌唱兵団が撃破されたことによる戦場の潮目の変化を見逃さなかった。戦力的にはまだ獣人部隊よりもゾルダートグラード軍の方が優越している現状、落ち着いて態勢を整えられてしまうとマズい。
「戦術練る暇がない内に撃破目指しますよ!」
という訳でまずは自分に【ヤドリギの織姫】をかけ、ヤドリギで編んだローブを纏うことで隠密性を向上させる。
その格好はさながらギリースーツ――とまでは言わないが、植物や草むらに擬態するには十分だろう。撃たれないように地面に伏せ、匍匐前進でゆっくりと敵の陣地に近付いていく。
「うーん、弾が飛んでくる方角に敵はいるはずなんですよね」
戦闘中のハイテンションさとは打って変わって、索敵中のキアラは冷静だ。どちらから多く銃弾が飛んでくるかを見極めて主力部隊の位置を特定し、そちらの方に索敵範囲を広げていく。多少の被弾ならローブが防いでくれるが、それでも当たらないに越したことはないので慎重に。
「いつつ……ヘマやっちまった……」
「大丈夫ですか? 回復しますよ?」
同じように索敵を行っている味方で怪我をしている者がいれば、ローブから生やした生命の実を分けて治療する。
この世界の魔術体系とは異なるヤドリギ使いの魔法は、護りと癒やしの術にも長けている。回復を受けた味方兵士は「ありがとう、助かった」と感謝を述べて、また索敵に戻っていった。
(うーん、この辺りが怪しそう……あっ、いましたね)
堅実な索敵を続けること暫し、ついにキアラは敵の主力と思しき部隊を発見する。これまでにチラホラいた一般兵と比べても装備と練度、何より士気が段違いである。本来なら宵闇歌唱兵団が獣人部隊を士気崩壊させた後、こいつらが決着を付ける作戦だったのだろう。
(皆さん、こっちです)
キアラは敵に気付かれないよう、事前に決めておいたハンドサインで手近な距離にいる味方と連絡を取る。それに気付いた味方はすぐに他の兵士と連絡を取り、リレー形式で情報を伝達していく。敵に移動される前に、集められる限りの戦力を以てここを攻めるために。
(集まりましたね……では行きましょう)
そうして味方が近くに揃えば、キアラはヤドリギのローブから植物の槍を生み出す。幾本もの枝と蔓を束ねた鋭い矛先を、敵主力部隊のいる塹壕陣地に突きつけて。これを戦闘開始の狼煙とすべく、ありったけの力で撃ち込んだ。
「いざ決着を!」
「「おおぉぉぉーーーッ!!」」
鬨の声が戦場に轟き、ライフルを構えた獣人部隊が一斉攻撃を開始する。敵部隊もそれに反応するものの、出鼻を挫かれた連中の動きは鈍い。最高のスタートを切った白魔女と兵士達は、そのまま決戦へとなだれ込んでいく――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・アルカレイト
属性攻撃…刹那の無限回転発動
蟲使い…敵を探索する
迷彩…刹那の回転で姿を消す
『よう、アルマ』
プサイが空から現れた
プサイ!…ごめんなさい!お店壊しちゃって!一緒にリフォームしたけど繁盛…してる?
『ぼちぼちだ♪』
プサイは私の頭を撫でる
『あはは…』『しゃあないな』
事情(死闘ッ…薔薇舞う球場の逆転劇……!)を知っている慶喜と緋智は苦笑いだった
『ん?それ何だ?』
これ?柔らかい変な物よ?
『……預かっていいか?』
いいけど…はい
プサイに変な物を渡した
来なさい!
蟲達を呼び出し敵の探索をしてもらう
『よし、私も協力しよう』
プサイも刹那の回転で姿を消した
私もやるわ!
UC真実を暴く刹那の回転弾を放ち
敵を居場所を突き止めた
『よう、アルマ』
獣人戦線に参加中のアルマの元に、赤と青が混じった不思議な髪色を持つ女性が、6枚の翼を羽ばたかせて空から舞い降りてくる。彼女の名は「秩序の大天使・プサイ」。ユーベルコードによってアルマに力を貸す仲間の1人であり、用のない時はとある事情で焼肉屋の店長をしていたりもする。
「プサイ! ……ごめんなさい! お店壊しちゃって! 一緒にリフォームしたけど繁盛……してる?」
『ぼちぼちだ♪』
どうも先日その焼肉屋でトラブルがあったらしいが、彼女はさして気にしていない様子でアルマの頭を撫でる。
事情を知る緋智と慶喜は『あはは……』『しゃあないな』と苦笑いだったが。ともあれ後に引きずるような事態になっていないのであれば幸いである。
『ん? それ何だ?』
「これ? 柔らかい変な物よ?」
そこでプサイはふと、アルマ達が先程戦場で見つけた物体に目をつける。一応捨てずに持っていたはいいものの、結局使い道は分からないし触ってもなんの反応もない。だがそれを見た瞬間、大天使の顔色がはっきりと変わった。
『……預かっていいか?』
「いいけど……はい」
首を傾げながらアルマが謎の物体を手渡すと、プサイはそれを丁寧にしまった。一体なんなのかと尋ねたくもなるが、今はあまり世間話をしている余裕があるわけでもない。残存する敵部隊を早急に発見しなくてはならないのだ。
「来なさい!」
アルマは銀色の蟲笛『インゼクター』を吹いて籠から蟲達を呼び出し、敵部隊の索敵をしてもらう。この手の活動はとにかく頭数が多ければ多いほどいい。彼らは使役者の目となり耳となって情報を持ち帰ってきてくれるだろう。
『よし、私も協力しよう』
そう言ってプサイはくるりと身体を回転させ、その場から姿を消した。あらゆるものを見通す千里眼を持つ大天使である彼女は、潜伏しながら敵陣地のより遠くまで索敵網を広げるつもりのようだ。このタイミングで彼女が来てくれたのはまさに僥倖と言うべきだろう。
「私もやるわ!」
アルマもプサイの後に続いて【錬金術士奥義・真実を暴く刹那の無限回転弾】を放つ。この奥義は回転する弾丸の檻を敷設し、接近した者の真実を明らかにして強制的に姿を晒させる奥義である。塹壕に潜む敵を暴きだすうえで、これほど適切なユーベルコードはない。
「すぐに見つけてやるわ!」
大天使の加護と蟲達の目、そして刹那の無限回転を操るアルマの索敵網は広大かつ精密であり、どんな偽装も違和感も見逃さない。敵の主力部隊が集まっている塹壕を発見すると、彼女はすぐさま仲間達と共に急行するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
花咲・月華
よ〜し!私に任せなさい!
私は胸を張る
『まずは蟲を呼ぶぞ』
気配感知と迷彩の蟲達を召喚して周りを索敵する
来て!岩窟!
私はUCを発動して岩窟達を召喚した
皆!敵の武器の残骸とか敵の足跡でもいいから見つけたら私か朱雀に連絡してね!
報・連・相は大切よ!
岩窟達は迷彩を纏い索敵を始めた
よし…私も探すわ!
視力で周りを見たり気配を探ったりしていたが岩窟の一体が私の元に来た
うん…うん…なるほど、じゃあそこに行って見ましょう!
岩窟に案内された場所に行く私
よし…蟲を呼ぶわ!
案内された場所に蟲達を放ち索敵する
…?!居たわ!
私は朱雀達にこの場所を知らせた
『なるほど…確かに凄まじい力を感じるな』
朱雀と共に私もその場所に行った
「よ~し! 私に任せなさい!」
獣人部隊からの協力要請に、自信満々に胸を張って応じたのは月華。鬼の妖力はなにも戦闘にしか使えない訳ではなく、隠れ潜む者を見つけ出すのにだって役立つ。温存されているゾルダートグラード軍のオブリビオンの所在も、きっちり暴いてみせよう。
『まずは蟲を呼ぶぞ』
そう言って朱雀は蟲笛を吹き、瓢箪の籠から蟲の群れを呼び出す。ひらひらと宙を舞う彼らの羽根模様は視認性を下げる迷彩となっており、遠目だとほぼ発見できない。銃弾飛び交う戦場で索敵を行わせるにはちょうどいい蟲だ。
「来て! 岩窟!」
一方の月華もユーベルコードを発動し【伝説の大妖怪・岩窟】を召喚する。こちらは丸い体に4本の手と蜂の羽を生やした蟲で、群体でひとつとして活動する変わった妖怪だ。朱雀の呼んだ蟲と同じく、こちらも索敵向けの仲間と言えるだろう。
「皆! 敵の武器の残骸とか敵の足跡でもいいから見つけたら私か朱雀に連絡してね! 報・連・相は大切よ!」
その言いつけに羽音で応えると、岩窟の群れは迷彩を纏ってバラバラに散っていく。これだけ沢山頭数がいれば、長く伸びた塹壕の隅々まで調べることができるだろう。小さくとも頼れる仲間達の働きぶりを月華は疑っていない。
「よし……私も探すわ!」
月華自身は視力の良さを活かして周りを観察したり、気配を探ったりしてゾルダートグラード軍の居所を探る。
しばらくそうして索敵を行っていると、散っていったはずの岩窟の一体が彼女のもとに戻ってきた。どうやら有益な情報を持ち帰ってきたらしい。
「うん……うん……なるほど、じゃあそこに行って見ましょう!」
話を聞いた月華はその岩窟の案内に従って戦場を移動する。やがて訪れた場所には多数の足跡や食べかけの缶詰、空薬莢などが散らばっており、つい先程までここに誰かがいたような気配を匂わせていた。さらに足跡は塹壕の奥に続いている。
「よし……蟲を呼ぶわ!」
月華はさらに追加の蟲を放ち、この場所から付近の索敵を行わせる。今ならまだ遠くには行っていないはず――という彼女の推測は正しく、共有された視界の先にこれまでとは毛色の違う武装の兵士達が集まっているのが見えた。
「……?! 居たわ!」
あれがゾルダートグラード軍の主力だと判断した月華は、朱雀達のいる方角に蟲を飛ばしてこの場所を知らせる。
あれを撃滅すれば戦いの流れは完全にこちらのものとなり、敵は撤退を余儀なくされるはずだ。また移動される前に叩かないといけない。
『なるほど……確かに凄まじい力を感じるな』
ほどなくして合流した朱雀も何かを感じ取った様子で表情を引き締めると、すぐに月華と共にその場所に向かう。
この戦線の戦いもいよいよ決着の時が近付いていると、言葉に出さずとも誰もがひしひしと感じ取っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
バロメリアン・マルゴール
目標:戦場で一番輝くこと
行動:光の魔術を伴う歌で全力で目立つ
さて、先ほど一緒に歌ってくれた諸君
狙撃の時間と洒落込もうじゃないか?
今度の歌は守りの歌だ
塹壕から半分身を出しつつ声を張り上げ光輝きながら歌うぜ
ま、囮作戦だな
主力敵兵が釣れるとは思わねえが
輝くカカシに引っかかった敵を後ろの一般兵に撃ち落としてもらうコトで
間接的に仲間の索敵の補助をするのさ
行動の内容の関係上、早めに動けるといいが…
コードでオレ自身だけじゃなく兵士達を守れるから
塹壕から顔を出した敵へ攻撃する時に彼らもちょっと無茶がきくわけだ
さぁ、今のうちだぜ
オレがメディックのお世話になる前に戦果挙げときな、
ムッシュー!
「さて、先ほど一緒に歌ってくれた諸君。狙撃の時間と洒落込もうじゃないか?」
宵闇歌唱兵団との戦いが一段落すると、バロメリアンは自身の歌で助けた兵士達に呼びかける。一番厄介な連中は退けたとはいえゾルダートグラード軍はまだ健在。ここからは塹壕に潜む敵兵を炙り出し、撃破していくターンだ。
「狙撃つってもなあ、相手が見えねえことには……あ、おい!」
お互い簡単に姿を見せないからこそ、塹壕戦は今日まで膠着状態に陥っていた訳でもある。が、兵士達がそう言う前にバロメリアンは塹壕からすっと半分身を乗り出し、止める間もなく声を張り上げて歌いだした。楽曲は先程と同じ【ユーベルコード】だが、今度は荘重なアレンジのなされたグラーヴェバージョンである。
「m'aider」
マイクを構えて重々しく低い声で歌えば、バロメリアンの歌声はまたもや光を生み出す。相殺する闇の歌い手達がいなくなった今、この戦場は彼のソロステージだ。目立ち具合で言ったらこれまでの比ではなく、はっきり言って的も良いところである。
(ま、囮作戦だな。主力敵兵が釣れるとは思わねえが)
輝くカカシに引っかかった敵を後ろの一般兵に撃ち落としてもらうことで、間接的に仲間の索敵の補助をするのが彼の狙いだった。案の定、敵は彼を撃つために塹壕からひょこりと顔を出してくる。いくら怪しいと言っても無視を決め込むことはできなかったようだ。
「あのヒツジも歌を
……?」「止めさせろ!」
自軍の宵闇歌唱兵団がやったことをやり返されるのを恐れてか、敵は焦りながらバロメリアンに銃撃を浴びせる。
だが実のところ、このユーベルコードに敵に悪影響を及ぼすような効果はない。与えるのは味方に対してである。
(コードでオレ自身だけじゃなく兵士達を守れるから、敵へ攻撃する時に彼らもちょっと無茶がきくわけだ)
バロメリアン達を包む光は防御力と治癒力を増強させる。その効果は弾丸を受けてなお平然と歌い続ける彼自身が証明する。言うなればこの歌唱は一種の結界だ――塹壕にかわって味方を護り、一方的な攻撃を可能にするための。
「さぁ、今のうちだぜ、オレがメディックのお世話になる前に戦果挙げときな、
ムッシュー!」
「ったく、無茶しやがって!」「やるしかねえか!」
歌手1人にここまで体を張らせておいて、なんの戦果も無かったでは獣人の誇りが廃る。兵士達は塹壕から半身を晒してライフルを構え、バロメリアンという囮に釣られた敵を攻撃し始めた。超大国相手にここまで耐えてきた猛者達だ、狙撃の腕前も決して悪くない。
「ぎゃっ!?」「うわぁっ!」
歌声から生まれる光は敵の陣地までは届かず、それゆえに守護も及ばない。撃ち抜かれた敵兵の悲鳴が向こうから聞こえてくる一方でこちらの損害は軽微だ。とはいえ、もっとも油断ならない敵は未だ身を潜めているのだろうが。
(そっちの方は任せたぜ)
バロメリアンが己に課した役割は、この戦場で一番の輝きとなり、味方の猟兵への注意を逸らすことだ。光が強くなれば影も強くなり、索敵に専念しやすい下地ができる。それは仲間を信頼していなければできない献身であった。
果たして彼の行動は実を結ぶのか。少なくとも本人はそれを疑わないまま、同胞のため仲間のために歌い続ける。
大成功
🔵🔵🔵
ウールリカ・メリノス
お次は索敵任務〜?
わたしの本分は衛生兵なんだけど、しょうがないな〜
猟兵って大忙しだ〜
こんどはずっと声を出してくれるわけじゃないから〜、さっきみたいにユーベルコードを索敵に使うのは難しそう〜
じゃあここは秘密兵器…ドローンを飛ばして偵察だ〜
空からなら塹壕全体の様子を見渡す事ができるし〜、
下手に撃ち落とそうとすれば〜、発砲音とかで大体の位置が予測できちゃうね〜
こうしてゲットした情報をみんなと共有して、不意に敵と鉢合わせないように気をつけて進んでいこ〜
「お次は索敵任務~? わたしの本分は衛生兵なんだけど、しょうがないな~」
近代的な軍隊における兵士とは通常、それぞれの兵科にのっとって役割をこなすものであり、あれもこれもと要求される何でも屋ではない。だが、伝説の「はじまりの猟兵」と同じ力に目覚め、常識を逸脱した能力を得た者には、普通の軍隊ではあり得ない戦果も可能となり、また期待されるものだ。
「猟兵って大忙しだ~」
と、ぼやきながらもウールリカとて要請を拒むつもりはない。頑張るのは疲れるし眠いが、途中で投げ出してそれまでの頑張りが無駄になるのは一番イヤだ。せっかく戦況が自軍に傾いているなら、最後まで敵を追い詰めないと。
「こんどはずっと声を出してくれるわけじゃないから~、さっきみたいにユーベルコードを索敵に使うのは難しそう~」
宵闇歌唱兵団が撃退された戦場は、先程までと比べればずいぶん静かに感じる。無論、銃砲の音や兵士達の号令は変わらず聞こえてくるため無音はあり得ないのだが。一番慎重で、それゆえに撃破したい敵は、塹壕の中でじっと息をひそめているだろう。声を上げる者がいなければテレポートすることもできない。
「じゃあここは秘密兵器……ドローンを飛ばして偵察だ~」
そこでウールリカが取り出したのは『SKY-EYE』。民生品に改造を施して過酷な環境での使用にも耐えうるようにした偵察用のドローンである。電源を入れれば小さな機体はモーターとプロペラの音を響かせて、戦場の空へと舞い上がった。
「空からなら塹壕全体の様子を見渡す事ができるよね~」
敵軍に航空戦力が見当たらないのはこれまでの戦闘で確認済み。戦場を俯瞰する「空の目」のアドバンテージは、こちらが独り占めできる。地上からは目視することの難しい塹壕内の敵の位置も、上から覗けば全部丸見えだった。
「おい、あれ
……!」「くそっ、覗き見かよ!」
勿論、ゾルダートグラード軍も自分達の位置がバレるとまずいのは重々承知している。空から偵察するドローンを見つければ、地上の敵以上に優先して狙ってくる。だが、相当の腕前でもなければ普通のライフルで小さな飛翔体を撃ち落とすのは至難の業なうえ――。
「下手に撃ち落とそうとすれば~、発砲音とかで大体の位置が予測できちゃうね~」
ウールリカはぴこぴことヒツジの耳を動かして、空に向かって放たれる銃声に耳を澄ませる。ドローンが塹壕の上を飛んだ時、発砲音がした所が一番怪しいポイントだ。あれは索敵用の目であり、同時に敵を釣る囮でもあるのだ。
「あそこかな~。みんなに伝えないと~」
こうしてゲットした情報を皆と共有するために、彼女は戦場を駆け回る。他の猟兵も今頃はそれぞれの手段で情報を掴んでいるはず、それらと照らし合わせれば敵の主力部隊を追い詰めることができるだろう。その後はいよいよ決着をつける時だ。
(不意に敵と鉢合わせないように気をつけて進んでいこ~)
情報は集めるのも大変だが持ち帰るのはもっと大変だということを、ウールリカは戦場の経験則から知っていた。
万全を期すためにも敵との遭遇は避け、時にはドローンのほうを目立たせて注意を逸らし。衛生兵はひと時の斥候として地を馳せる――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
塹壕の迷路の中に隠れた主力部隊を探し出せ、ってことねぇ。
さぁてと、どうしたもんかしらねぇ…
まずは
ラグと
摩利支天印で光学○迷彩を展開、さらに●要殺を起動して周辺警戒。敵地に乗り込むわけだし、遭遇戦から延々と援軍呼ばれて立ち往生――なんてのは御免だわぁ。
流紋も併用すれば各種センサーやカメラ視界も丸わかりだし、そう簡単には見つからないはずよねぇ。
あとは
虚空蔵菩薩印と
ラド・ウィンで底上げして索敵しましょうか。
まあ、いざとなったら敵兵張っ倒さなきゃいけないでしょうけれど…
あたし、路地裏喧嘩ならそうそう負けないわよぉ?
「塹壕の迷路の中に隠れた主力部隊を探し出せ、ってことねぇ」
そう呟くティオレンシアの前に広がるのは、長期戦により伸び切った敵の塹壕。長大かつ複雑に曲がりくねったそれは正しく迷宮と呼ぶにふさわしく、隠れ潜む敵兵を見つけだすのは容易ではない。だからこそ宵闇歌唱兵団のような「裏技」が猛威をふるったのだ。
「さぁてと、どうしたもんかしらねぇ……」
ひとまず彼女は
ラグのルーンと
摩利支天印を組み合わせ、魔術文字による光学迷彩を展開する。加えて【要殺】も起動して五感や第六感を強化し、周辺の警戒を厳とする。職業柄多くの夜討ち闇討ちの類を何度もくぐり抜けてきた彼女は、戦闘技術だけでなく危険察知能力も飛び抜けていた。
(敵地に乗り込むわけだし、遭遇戦から延々と援軍呼ばれて立ち往生――なんてのは御免だわぁ)
敵を見つける前にまずは敵に見つからないことを意識して、ティオレンシアはひっそりと敵塹壕に近付いていく。
片手はいつでも撃てるように拳銃を握りつつ、頭にゴーグルのようなな機器を装着しているのが目につく。これは不可視光線の可視化や照準自動検知機能等を備えた、視覚拡張ヘッドマウントディスプレイ『流紋』だ。
(これも併用すれば各種センサーやカメラ視界も丸わかりだし、そう簡単には見つからないはずよねぇ)
敵がどれだけ最新鋭の索敵装備を持っているかは分からないが、少なくともそれで見つかるような彼女ではない。
音もなく密かに、敵軍の塹壕陣地に深く潜り込んでいく女バーテンダー。その様は歴戦の斥候か暗殺者のようだ。
(あとは
虚空蔵菩薩印と
ラド・ウィンで底上げして索敵しましょうか)
真言とルーン、本来なら由来も性質も異なる別文化圏の魔術文字の併用。ティオレンシアは苦もなく行っているがこちらもかなりの達人技である。智慧の菩薩の加護とルーンの導きを身に受けた彼女は、塹壕に残された僅かな痕跡を目敏く見つけ、敵の潜伏場所を暴きだす。
(いたわねぇ)
やがて発見したのは、その他一般の兵士とは明らかに毛色の異なる集団。ゾルダートグラード軍がこの戦線に投入した兵士の中でも最精鋭と思しき部隊だった。この情報を皆に伝えれば索敵任務は成功だが――ある意味、ここからが一番大変なのだと彼女も分かっていた。
(まあ、いざとなったら敵兵張っ倒さなきゃいけないでしょうけれど……)
索敵のために敵陣深くまで潜り込んだということは、帰路で敵と蜂合わせる可能性も上がるということ。極力回避を試みても、制限されたルートでは来ると分かっていても避けられない場合があった。そんな時、ティオレンシアは腹を括ってむしろ自分から仕掛けに行く。
「あたし、路地裏喧嘩ならそうそう負けないわよぉ?」
「な……ッ、ぐぁ!?」
さっと敵の間合いに踏み込んで体勢を崩し、銃床で後頭部を一撃。不意を突かれた相手は叫ぶ間もなく昏倒する。
薄暗くて狭い塹壕は、彼女が居を構えるバーの路地裏にも似ていた。涼し気な微笑を崩さないまま、彼女は倒れた兵士を置いてその場を立ち去っていく――。
大成功
🔵🔵🔵
ロザリア・プライム
ヤハ! 覚悟決めろよ
友軍ども
こっからが正念場だ
奴らが逃げ隠れするってんならこっちは威力偵察って奴よ
(ホントは喰らわせたら引くべきなんだろけどね。仕方ないね)
敵が隠れていそうな場所を戦闘知識で想定し
威嚇の制圧射撃で安全圏を確保しつつ友軍の前進を援護する
奴らは後が無えってんなら、その後ろごと吹っ飛ばすって寸法さ
固定砲台モードで射程を確保して
塹壕ごと砲撃で潰しちまえば迂闊に飛び出て来やしないだろう
てか出てきたらそれこそいい的だっての
こっちは
狙撃も出来るんだぜ?
もし敵を見つけたらスポッターに徹し敵の位置情報を共有
待ち伏せさせて出て来た所を援護しつつズドン!
「ヤハ! 覚悟決めろよ
友軍ども、こっからが正念場だ」
宵闇歌唱兵団を壊滅させた後も、気を抜かぬようにとロザリアは声を張り上げた。当初の作戦計画が崩れた以上、ゾルダートグラード軍は体勢を整えるために塹壕に引きこもるだろう。純粋な戦力差はまだ如何ともしがたいため、ここで仕留めきれなかったら面倒な事になる。
「奴らが逃げ隠れするってんならこっちは威力偵察って奴よ」
「おうよ!」「やってやるぜ!」
これまで散々やられてきた礼をお見舞いしてやろうと、獣人部隊の士気は総じて高い。彼らの中でも体力気力に余裕のある者は前線を押し上げるために進撃し、残った者は塹壕から援護射撃を行う。積極的な攻勢をもって敵陣地に圧力をかけ、敵兵を炙り出すつもりだ。
(ホントは喰らわせたら引くべきなんだろけどね。仕方ないね)
こちらの消耗も考えれば頃合いをみて撤退するのもアリなのだが、オブリビオンは叩ける時に叩いておかないと後が怖いというのもある。ロザリアは引き続き"General"の車内より敵が隠れていそうな場所を想定し、そちらに機関銃を向けた。
「そらビビれ、ウラ!」
ExCaliber.50 汎用重機関銃による威嚇の制圧射撃が、敵を萎縮させて安全圏を確保し、友軍の前進を援護する。
若さに見合わぬ数の戦場と地獄を見てきた彼女の経験と知識は歴戦の古参兵にも相当するもので、それに基づいた戦術眼も確かだった。
「奴らは後が無えってんなら、その後ろごと吹っ飛ばすって寸法さ」
機銃の弾丸をばら撒きながら、ロザリアは再び【パンツァーフォートレス】を発動。機体を
固定砲台に変形させて、塹壕を直接狙えるように主砲の射程を確保する。適当に照準をつけてズドンとぶちかませば、敵陣地で大きな土煙が上がった。
「うわぁッ!?」「ひぃッ!!」
砲撃に晒されて慌てる敵の顔が目に浮かぶようだ。塹壕ごと潰してしまえばあちらも迂闊に飛び出て来やすまい。
逆にこれで顔を出すような奴は練度の浅い雑兵だ。いくら超大国ゾルダートグラードの兵士といっても、精神まで機械と化した精兵ばかりという訳ではない。
「てか出てきたらそれこそいい的だっての。こっちは
狙撃も出来るんだぜ?」
ロザリアはおおよその敵の居所を把握した後は、スポッターとして友軍と敵の位置情報を共有し、待ち伏せするように指示を出す。そのまま威嚇射撃を続ければ、プレッシャーに耐えられなくなった敵が塹壕から飛び出してきた。
「ち、畜生めッ!」「こ、ここにいたらやられる……!」
度重なる砲撃や獣人部隊の前進から息をひそめ続けるのに限界がきたか、オブリビオンと言えども死の恐怖は克服し難いものなのか。追い詰められた人間はもっとも愚かな選択をする。生を求めて踏み込んだ先に待っていたのは、絶望的な死地だった。
「ヤッハ!」
待ち伏せしていた獣人達の一斉攻撃と、ロザリアのキャバリアによる精密狙撃が、ズドンと敵部隊を吹き飛ばす。
雑兵共の"掃除"はこのくらいで十分。あとは戦線を押し上げ、残った主力も炙り出すのみ。ウサギのソルジャーの指揮の下、獣人部隊の進撃は止まらない。
大成功
🔵🔵🔵
エリュファシオン・アルティウス
さて…どうしたものか
『オォォ…』
オーさんは索敵しているが成果は挙がらないようだ
IT'S SHOWTIME!忍びの王…朧!
お願いだ…敵を探してくれないか?
風魔逆行王・朧を発動して敵の索敵を頼む
さてどうしようか?
敵の索敵は思ったより進まず困っていると…
『ふふ…ならば私に任せて下さい!』
独特なポーズをしながら謎の少女が現れた(UC探偵逆行王メロウ・ホームズ)
君は?
『私はメロウ…探偵よ!』
パイプを持ちながらドヤ顔で話す少女
え〜と…
『ふむ…ふむ…これは?』
彼女は周りを勝手に調べ始めた
『よ〜し!探偵777つ道具…ビーストサーチャー〜!』
探偵道具で周りの足跡や匂いを調べていたが…
『ん?あれ?動かない…えい!ぎゃあぁぁぁぁぁ!』
叩いた衝撃で探偵道具が突然爆発し周りも爆発に巻き込まれる
な?!うわぁぁぁぁぁぁぁ!
『オォォー?!』
私とオーさんも爆発に巻き込まれる
『私は探索していただけよ〜!は〜な〜せ〜!』
敵の居場所を特定出来た朧は私達の所に帰って来たが兵士達にぐるぐる巻きにされたメロウは兵士達に連れて行かれた
「さて……どうしたものか」
どこまでも延々と伸びた塹壕を見渡して、ぽつりと呟くのはエリュファシオン。砲弾と銃弾の雨が飛び交う中で、この長大かつ複雑な陣地をくまなく調べて敵を見つけ出せ、というのは簡単ではない。むしろそれが塹壕戦の厄介なところと言うべきか。
『オォォ……』
彼女の相棒、オーさんも索敵しているが成果は上がらないようだ。正面きって襲ってくる奴や、さっきの連中のように歌声で居場所が分かるような奴のほうがよほど与し易い。あれから敵はすっかり亀のように陣地に引きこもってしまった。
「IT'S SHOWTIME! 忍びの王……朧!」
1人と1頭では埒が明かないと、エリュファシオンは黒い忍者装束に身を包んだ【風魔逆行王・朧】を召喚する。
隠密や諜報活動を本分とする忍びであれば、きっと塹壕に潜む敵兵も見つけてくれるだろうと期待しての選択だ。
「お願いだ……敵を探してくれないか?」
頼んでみると朧は無言のまま静かに頷き、音もなくその場から姿を消した。光学的な知覚に限らず匂いと体温まで隠蔽する彼(?)の隠形術を見破るのは容易なことではない。里を出奔した抜け忍だというが、その技量は確かだ。
「さてどうしようか?」
朧の能力には期待が持てるが、さりとて彼1人に任せて待っているのも悠長だろう。思ったよりも進まない索敵にエリュファシオンが困っていると、ふいに背中をツンツンとつつかれ、明るく元気のいい少女の声が聞こえてきた。
『ふふ……ならば私に任せて下さい!』
振り返ってみると、そこに立っていたのは鹿撃ち帽を被り、パイプと虫眼鏡を持った青い髪の少女。泥臭い戦場に似つかわしいとは言えない、まるでシャーロック・ホームズのようなステレオタイプな探偵の装いをした娘だった。
「君は?」
『私はメロウ……探偵よ!』
パイプを持ちながらドヤ顔で離す少女は、名を【探偵逆行王メロウ・ホームズ】と言った。探偵としての使命感と悪や犯罪を許さぬ正義感は強いが、肝心の能力については疑問符が付く。そもそも、出会い頭に探偵と名乗ってくる輩は大概怪しい。
「え~と……」
『ふむ……ふむ……これは?』
どう対応すべきかエリュファシオンが決めかねているうちに、メロウは勝手に周りを調べ始めた。虫眼鏡で地面を観察したり、意味深そうにパイプを弄んでみたり。とりあえず、敵兵を探せばいいという事は分かっているようだ。
『よ~し! 探偵777つ道具……ビーストサーチャー~!』
メロウはどこからともなく謎の装置を取り出し、カチカチと操作し始める。これは周りの足跡や匂いを調べる探偵道具らしい。だが、様々な世界を渡ってきたエリュファシオンが見ても、どんな構造になっているのか分からない。
『ん? あれ? 動かない……えい!」
最初はまだ順調そうに見えたのだが、その探偵道具とやらは突然うんともすんとも言わなくなってしまい。メロウは首を傾げながらバシバシと装置を叩く。古い家電製品ならそれで動くかもしれないが、精密機器相手にその衝撃は良くなかったようで――。
『ぎゃあぁぁぁぁぁ!』
「な?! うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
探偵道具は突如として爆発し、メロウだけでなくエリュファシオンとオーさんも巻き込まれる。この自称名探偵、真の才能は推理能力や未知の探偵道具などではなく、敵味方を問わず周囲に天災を撒き散らす能力にあったようだ。
「なんだ、今の爆発は?!」
自陣の近くで大きな爆発が起きれば当然味方も様子を見に来るし、元凶であるメロウは怪しい奴にしか見えない。
ひょっとしたら敵の工作兵なんじゃないかと、彼女はあえなく事情聴取のために連行される羽目になった――。
『私は探索していただけよ~! は~な~せ~!』
「はいはい、いいからちょっとお話しような」
兵士達にぐるぐる巻きにされて連れて行かれるメロウ。エリュファシオンとオーさんは呆れて声も出なかった。
一体彼女は何をしたかったのだろう――と考えていると、ふいにまた背中をつつかれる。嫌なデジャブを感じて振り返るが、そこに居たのは先程送り出したあの忍びだった。
「朧、もう見つけたの?」
どうやらこっちがドタバタ騒いでいる間に、朧はきっちり自分の仕事を果たし、敵の居場所を特定できたようだ。
最初から彼1人に任せておけば万事問題なかったかもしれない。そう思いながらもエリュファシオンはオーさんと共に敵の元に向かうのだった――この後、メロウがどうなったかについては、また別の話。
大成功
🔵🔵🔵
アヤネ・タチバナ
【アドリブ◎】
あたし宵闇歌唱兵団が詰めてた塹壕を調べてみる
戦場に遺された物って語るよね。塹壕での生活の様子とか、持ち主の人柄や嗜好とか
いい気分はしないけど、それってあたしがまだあたしって事かな
糧食や嗜好品の残し方、備蓄状況、輸送の痕跡
あと真新しい爆発跡や焼け跡があれば、伝令文や塹壕の地図などを捜索。欠片でも残ってないかな
とりま時間ないし考えるのは後で。運任せでざっと捜索したら索敵開始
塹壕を念動力&ダッシュ&ジャンプで飛び越えて地形耐性力を発揮、土泥や罠を避けつつ主力部隊を探すよ
斥候に見つかって戦いになっても主力部隊が何処にいるのか考えちゃう
考えてるように見えないのは(UC:セーラー星人の指定UC:)学徒武装「耽溺」で思考が加速してるせい
(その思考はあたし自身も追いきれない速度で先の捜索結果を戦闘知識と継戦能力に基づいて分析、補給状況・指揮官の性格・主力部隊との距離を推測。その結果である所の――)
疲れたからもう直感で。うん、あの辺が怪しい
思考が加速したからって頭は良くならないよね。知ってた
「あたし宵闇歌唱兵団が詰めてた塹壕を調べてみる」
残存する敵兵の所在を探る手がかりとして、アヤネが目をつけたのは既に倒した敵の遺留品だった。歌の聞こえてきていた塹壕にすっと忍び込むと、まず目に入るのはまだうっすらと温かい遺体。ほとんどは骸の海に還ってしまっているが、大きな血溜まりが残っている。
「戦場に遺された物って語るよね。塹壕での生活の様子とか、持ち主の人柄や嗜好とか」
亡骸に軽く黙祷を捧げた後、彼女はそれ以外に遺されたものはないか調べ始める。長期に渡って膠着した戦線において、塹壕はただの防御陣地ではなく兵士が寝食を過ごす場にもなる。だからこそ、そこにいる――あるいは"いた"人間の痕跡がはっきりと残るのだ。
(いい気分はしないけど、それってあたしがまだあたしって事かな)
胸の奥でモヤつくわだかまりも、何も感じなくなってしまうよりは良いのだろう。人前ではしゃいでいる時とは別人のように黙々と、アヤネは塹壕に遺された情報を集める。糧食や嗜好品の残し方からは備蓄状況、輸送の痕跡を推測できるし、真新しい爆発跡や焼け跡でもあれば、伝令文や塹壕の地図などを燃やした跡かもしれない。
(欠片でも残ってないかな……とりま時間ないし考えるのは後で)
あの戦闘中に完全に焼却しきる時間は無かったと思いたい。運が良ければという気持ちで灰の中を調べてみると、小さな紙の切れ端が燃え残っていた。僅かだが文字や、何らかの指示と思しきマークの描き込みも確認できる。断片的ではあるものの、これは重要な手がかりだ。
「ラッキー。これならいけるかも」
手に入れた証拠を握りしめ、その他の情報と脳内で繋ぎ合わせながら、アヤネはいよいよ本格的な索敵を始める。
曲がりくねった塹壕を念動力を活かしたダッシュ&ジャンプで飛び越え、土泥や罠を避けて軽やかに駆け抜ける。並の兵士ではこうも俊敏には動けないだろうに、【セーラー星人】の環境適応力には目を見張るものがある。
「……! なんだ、この女?!」
しかし敵陣深くに潜り込む以上、どこかでエンカウントは避けられない。敵側の斥候と思しき輩から銃を向けられれば、彼女は即座に戦闘態勢に入った。口にはキャンディを咥えたままサイキックガンを構える姿は、傍目には余裕と見られるだろう。
(主力部隊がいそうな場所はこの先の――)
敵兵との戦闘中もアヤネは本題について考え続けていた。傍からはそう見えないのは【学徒武装「耽溺」】の摂取により集中力と瞬間思考力が加速しているせいで、さながらコンピューターの如き並列・高速思考を実現している。
(発見した痕跡、記録、情報、統合して、類推、ここから――)
その思考は彼女自身でも追いきれない速さで、先の捜索結果を自身の戦闘知識と継戦能力に基づいて分析。さらに補給状況・指揮官の性格・主力部隊との距離を推測。などと何十パターンもの熟慮の結果が毎秒ごとに導き出され、脳髄が情報の洪水に耽溺していく――。
「疲れたからもう直感で。うん、あの辺が怪しい」
「な、なにを……ぐあッ!!」
オーバーヒート寸前の思考に最終的に纏めたのは、論理を超越した女子高校生のカンだった。明らかに狼狽えた敵の反応が、その結論に裏付けをくれる。サイキックガンの一撃でそいつの胸を撃ち抜いて、再び全速力でダッシュ。
「思考が加速したからって頭は良くならないよね。知ってた」
星戦時代は耽溺の学徒と呼ばれていたアヤネだが、向いていない事に頭を使うのはやっぱりコスパが悪いらしい。
直感に身を任せた判断はどうやら正しかったようで、彼女の五感はこの先にいる強敵の気配をはっきりと感じつつあった――。
大成功
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第3章 集団戦
『突撃歩兵』
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POW : グラナーテ!
【対人柄付手榴弾、対戦車集束手榴弾、火炎瓶】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : アタッケ!
【銃剣による刺突】【自身の爪や塹壕スコップによる斬撃】【取っ組み合いからの殴り合い】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ : アングリフ!
【着剣した騎兵銃を撃ちながら銃剣突撃による】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【砲兵隊による迎撃を阻害する突撃支援砲撃】の協力があれば威力が倍増する。
👑11
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各々の技能や才覚を活かして索敵を進めた結果、ついに猟兵達はゾルダートグラード軍の主力部隊と接触する。
それは塹壕の泥と土に塗れたオブリビオンの兵士達。装備は一般の兵卒よりもやや充実している程度だが、彼らを「特別」たらしめているのは気迫の違いだ。
「猟兵め……貴様らさえ居なければ、この戦いはとっくに終わっていたものを」
「まさか、ここまで戦況が一変するとはな。だが、まだ勝った気にはなるなよ」
彼らは『突撃歩兵』。塹壕戦により膠着した戦線を打破する為の兵種であり、国によっては決死隊とも呼ばれる。
その役割上もっとも生還率の低い部隊であり、故にこそ練度はもちろんだが不屈の闘争心を持つ者が集められる。近接戦に特化した装備と訓練を積んできており、狭い塹壕内での白兵戦や乱戦になった場合は非常に危険だ。
「もう一度戦いの流れを変える。最も危険な戦場に風穴をぶち開ける、それが俺達だ」
「俺達はここで死ぬだろうが、お前達も道連れだ、猟兵」
着剣した騎兵銃を構えて突撃体勢を取る歩兵隊は、すでに決死の覚悟を固めているようだ。
戦場においてもっとも危険な兵士とは、死を恐れぬ兵士である。地獄の道連れを求める屍兵の狂気は、確かに戦況を変化させうるかもしれない。
「「ゾルダートグラードに栄光あれ!
攻撃開始!」」
長く続いた塹壕戦に決着を付ける最後のピースは、この突撃歩兵隊の撃破である。
宵闇の歌はすでに絶え、勝利の凱歌は目前にあり。獣人戦線に希望をもたらすべく、猟兵達は戦闘態勢を取った。
エリュファシオン・アルティウス
見つけたぞ!
『オォォー!』
バイクに変身したオーさんに搭乗した
UC幽銃逆行王零と滅詩逆行王命を発動
IT'S SHOWTIME!二人の王、零!命!
『よし、行くぜ命!』『了解ですお姉様』
零は敵に向けて幽銃を連射している
命は零の攻撃を回避した敵に迷彩入りの消滅魔法弾幕を放つ
UC騎士逆行王アリオスを発動した
もう一人いるよ!IT'S SHOWTIME!騎士の王アリオス!
アリオスは神速飛行をしながら敵を次々と聖剣で切り裂いた
私は矢弾の雨を敵に放つそれを逃れた相手には呪殺弾を敵に放つ
『オォォー!』
オーさんは時間逆行属性のブレス攻撃を放つ
行くよ!皆!総攻撃だ!
私達は敵をある程度倒したらUC発動して総攻撃をかけた
「見つけたぞ!」
『オォォー!』
塹壕に潜んでいた『突撃歩兵』を見つけるなり、エリュファシオンとオーさんが大声で叫ぶ。相棒たるオオサンショウウオ型バイクに騎乗した彼女は勇ましいエンジン音を戦場に轟かせ、この戦いを終わらせるために走り出した。
「「うおおおおおおおおッ
!!!」」
対する敵も迷いはない。銃剣を装着した騎兵銃を構え、猛然と突撃する様はまさに戦場の狂気。膠着した塹壕戦に風穴を開けるために編成された彼らは、どんな敵にも臆することのない、まさにこの戦場にいる最強の部隊だった。
「IT'S SHOWTIME! 二人の王、零! 命!」
『よし、行くぜ命!』『了解ですお姉様』
エリュファシオンはオーさんと爆走しながら【幽銃逆行王零と滅詩逆行王命】を召喚。現れた水色髪とピンク髪の姉妹のうち、まずは姉の零が膨大な魔力の幽銃を敵に連射する。並の軍隊なら纏めて蜂の巣にできる威力の弾幕だ。
「こんなもの……うおッ!!?」
銃弾の雨には慣れている突撃歩兵はそれだけでは止まらないが、零の攻撃を回避した後には妹の命が控えている。
迷彩を施した消滅魔法の弾幕が不意をついて放たれ、銃弾に誘導された兵士達を次々に消し去っていく。その後には死体すら残さない、まさに完全な消滅だ。
「怯むな!」「アタッケ!」
だが同胞を消されようとも突撃歩兵の士気は衰えず。銃剣が消されたなら自身の爪や塹壕スコップで、それも無ければ取っ組み合いからの殴り合いを挑むつもりで、ひたすら距離を詰めてくる。損害を度外視した無謀な戦いぶりだからこそ、まともに付き合うのは危険が大きい。
「もう一人いるよ! IT'S SHOWTIME! 騎士の王アリオス!」
そこでエリュファシオンはさらなる仲間を――【騎士逆行王・アリオス】を召喚する。獅子の仮面を付けた赤髪の騎士が翼を羽ばたかせて戦場に降り立ち、聖剣と聖盾で敵に立ち向かう。その佇まいは王の名に恥じぬ凛とした気品に満ちており、血と泥濘に塗れた戦場にあっても輝いていた。
「騎士などに……ぐわッ!!」
その佇まいが虚仮威しでないことを敵はすぐに知る。神速の域に達したアリオスの飛翔力と聖剣の斬撃は、押し寄せる突撃歩兵を次々に切り裂いていった。銃剣で切り結ぶ暇も組み合う隙も与えない、戦士としてのレベルが違う。
「いくよオーさん!」
『オォォー!』
エリュファシオン自身はガンナイフから通常弾の雨と呪殺弾を組み合わせた銃撃で敵を狙い撃ち、オーさんはブレスを浴びせて敵の時間を逆行させていく。これまでに生きてきた時間を強制的に遡らされた者は、現世から生まれる前にいた場所に還る。それはどんな防具でも意志の力でも防げない類の攻撃だ。
「行くよ! 皆! 総攻撃だ!」
敵をある程度倒した所で、エリュファシオンが【逆行奥義・調停龍パラダイム・パラドックスの総攻撃】を宣言。
零、命、アリオス、オーさん、そしてエリュファシオン自身による全力の総攻撃が、突撃歩兵に叩きつけられる。
「「ぐ、ぐわああああッ
!!?」」
いかに蛮勇を誇ろうと力の差はいかんともしがたく、フルスロットルで繰り出される猛攻に吹き飛ばされる敵兵。
歴戦の猟兵がここに来て詰めを誤ることなどあるはずもなく、彼女達はなおも敵が全滅するまで攻撃を続行した。
大成功
🔵🔵🔵
花咲・月華
新しい力を見せてやるわ!
UC発動して鬼の姫に変身して時空崩壊の焔矢を敵に放ち消滅
『俺も解放するか…』
朱雀ももう一つ発動UCで鳳凰烈火を発動して周りの敵に周りの敵に焼却の斬撃波を放つ
あれ?鏡転?いつの間にいたの?
UC・伝説の大妖怪・鏡転が勝手に発動した
『…月華、貴女はサクラミラージュのシナリオで電車の中で召喚系UCを発動して動けなくなった挙げ句苦戦判定を受ける』
と予言を告げた
後にこれは現実(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=48132)になる事を私は知らなかった
『…オラオラオラオラ〜』
鏡転は鏡を召喚して敵の目の前に次々と出てきてラッシュをかけていた
「新しい力を見せてやるわ!」
敵陣から迫る『突撃歩兵』を前にして、自信満々な態度でそう言い放ったのは月華。彼女が弓に矢をつがえるような仕草をすると、髪が長く伸びて全身が焔の妖力に包まれ、手元には焔でできた弓と矢が現れる。これぞ【花咲流奥義・鬼姫覚醒】である。
「よーし! これが私の本気だよ!」
真なる「鬼の姫」に変身を遂げた彼女が弓を引けば、ひょうと音を立てて焔矢が飛んでいく。それは着弾地点周辺の時空を崩壊させ、近くにいた兵士達を巻き込みながら全てを跡形もなく消滅させる、恐るべき妖力の矢であった。
「味方がやられた!」「構うな、突っ込め!」
銃弾や大砲よりも凄まじい妖術の力を前にしても、足を止めない突撃歩兵は流石だった。時空崩壊の巻き添えを免れた者達はそのまま【アタッケ!】と前進を続け、銃剣による刺突を繰り出してくる。1兵1兵の力は劣るものの、捨て身の覚悟となれば侮れぬものだ。
『俺も解放するか……』
これに対抗するために朱雀も【鳳凰烈火】を発動し、解放した鬼の力を焔に変えて敵をなぎ払う。あらゆるものを焼き尽くす【爆焔怒号術】の斬撃波は、触れた敵をたちまち消し炭に変えていく。ここが最後の勝負所ということもあって、二人共出し惜しみなしの全力だ。
「あれ? 鏡転? いつの間にいたの?」
突撃歩兵との激闘を繰り広げる最中、月華はいつの間にか白い着物を着た白髪の人物が立っていた。この者の名は【伝説の大妖怪・鏡転】。鏡の世界と現実の世界を自在に行き来する能力を持ち、さらには未来を予言する妖怪だ。
『……月華、貴女はサクラミラージュの依頼で電車の中で召喚系ユーベルコードを発動して動けなくなった挙げ句苦戦判定を受ける』
主の意思によらず勝手に召喚された鏡転は、不吉な予言を彼女に告げる。この妖怪が口にした予言は百発百中だと言われるが、この予言も後に現実になることを彼女はまだ知らない。事前に知っていれば変えられる類の未来でもないようだ。
「どうして今、それを私にここで?」
『…………』
どうせなら今現在の戦闘に役立つ依頼のほうが欲しかったが、鏡転はその疑問に答えることなく攻撃に参加する。
能力的にはあまり戦闘向きではないようにも思えるが、鏡を召喚して自分の分身を作り出したり、鏡と鏡を通じて離れた空間を瞬時に移動するなど、鏡に関することなら凡そ何でもできるのがこの大妖怪の力だ。
『……オラオラオラオラ~』
「ぐわッ?!」「がはっ!!」
目の前に出てきて次々にラッシュをかける鏡転の鏡像に、敵兵は次々に殴り倒されていく。最初の予言こそ不吉だったものの、戦力として頼もしいのは間違いない。こと相手を翻弄するような戦い方なら妖怪の中でも屈指だろう。
「よーし、私達もいくよ朱雀!」
『おう!』
この機に乗じて月華と朱雀も攻勢を強め、残された敵の掃討にかかる。塹壕内にて荒れ狂う焔の矢と斬撃の嵐は、突撃歩兵共をことごとく消し飛ばしていき――戦いの流れを掴んだ猟兵達の勢いはますます加速していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・アルカレイト
『貴女、電車の中では召喚UCを使わない方が良いよ…例えば拘束系UCを覚えるとかね』
白い変な奴がそう言うと何処かへ去って行った
誰、今の奴…
後にこの変な奴の予言は当たる事になるとはこの時は思いもしなかった
錬金術…凍結攻撃で矢弾の雨で追撃する弾を錬成
属性攻撃…刹那の無限回転発動
クイックドロウ…弾丸を素早く放つ
結界術…慶喜の技能
『どうしたアルマ!』
慶喜が攻撃を結界術で防いた後ライトニング・ブリザード・フォーミュラを放ち敵を攻撃した
『消えて!』
緋智は朧月夜・冥道神機『緋智』を発動して冥道朧月で敵を消滅させた
敵の攻撃は刹那の無限回転で地面を潜り後ろから錬成弾を放つ
止めよ!私はUCを発動して敵を消滅させた
『貴女、電車の中では召喚ユーベルコードを使わない方が良いよ……例えば拘束系ユーベルコードを覚えるとかね』
「はい?」
ゾルダートグラードの残存部隊との激戦が繰り広げられる最中、白い着物を着た白髪の人物がどこからともなくふらっと現れ、よく分からない忠告をしたかと思ったらまたどこかに去っていく。言われたほうのアルマからすれば、面識もなければ心当たりもない。
「誰、今の奴……」
後にこの変な妖怪の告げた「予言」が当たる事になるとは、この時の彼女は思いもしなかった。今は目の前にいる敵の対処が最優先で、気にしている暇など無かったからだ。あるいはこの時点でもっと深刻に受け止めていれば何かが変わったのかもしれないが――たらればの話はなしにしよう。
「どうしたアルマ!」
敵の銃剣突撃やスコップの斬撃を結界で防ぎながら、慶喜が叫ぶ。もはや後がない『突撃歩兵』の攻勢は激しく、【アタッケ!】の号令と共に一丸となって連続攻撃を仕掛けていた。流石にこれを彼1人で防ぎ切るのは荷が重い。
「ごめん、ちょっと気を取られてた!」
「よし、反撃するで!」
気を取り直したアルマがガンナイフから錬成弾を放ち、慶喜も【ライトニング・ブリザード・フォーミュラ】を発動する。降りしきる弾丸の雨と雷とレーザーが塹壕を満たし、敵兵を凍結させていく。突撃の体勢のまま氷像となった敵は、もう二度と雄叫びを上げることはない。
「消えて!」
さらに緋智も【朧月夜・冥道神機『緋智』】を発動。高次元の領域から引き出した力を【冥道朧月】として放ち、敵を消滅させていく。宵闇歌唱楽団を打ち倒した時と変わらず、彼女のユーベルコードはあらゆる生命を奪い去る。
「くっ。負ける、訳には……!」
それでも戦意の挫けない突撃歩兵は、その兵科に恥じぬ精鋭なのだろう。だが根性と蛮勇だけで戦況は覆せない。
突っ込んできた敵の銃剣に刺される寸前に、アルマは刹那の無限回転弾を自分に打ち込み、ぐるぐると回転しながら地面に潜り込んだ。
「な、どこに行った……ぐわッ!?」「後ろに!?」
標的を見失った突撃歩兵がキョロキョロしている間にアルマは地面を掘り進み、そいつの後ろから錬成弾を放つ。
背中に凍結弾を食らった敵は振り返る間もなく凍りつき、他の兵士にも動揺が走る。この瞬間、敵は前方を慶喜と緋智、後方をアルマに挟まれる形となった。
「止めよ!」
「おう!」「行くわ!」
ここぞとばかりにアルマが放った【神秘殺しの次元撃】、そして他2人の同時攻撃が突撃歩兵を挟み撃ちにする。
錬金術という超高度科学技術の力と、本人の才能が合わさって生まれた必殺のユーベルコードが、オブリビオンという超常の存在を撃ち抜いた。
「「ぐ、ぐあああああーーーッ
!!!?」」
雷光と冥道と次元撃に襲われた突撃歩兵隊は次元の果てまで放逐され、肉体はおろか魂さえも完全に破壊される。
勢いの止まるところを知らぬアルマ達は、それからも息の合った連携ぶりで敵兵を追い詰めていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
敵ながら衰えぬ闘志と決死の覚悟や良し!
ならば最大最強の魔法で相対しましょうっ!
【魔力溜め】た状態で【高速詠唱】【全力魔法】でイグドラシルブレイド発動!
近づかれる前に突撃歩兵をなぎ倒し
また塹壕に隠れてるなら塹壕ごとぶった切り。何ならその時の土砂で埋めてしまっても良い
…酷い? いいえ、この肌触りこそ戦場というもの!
覚悟を決めた相手には全力の私の力と戦術で向き合うのが、戦士のつとめ!
一発では倒しきれないなら、そして塹壕が味方の突撃を遮るなら【多重詠唱】で数発まとめてぶっ放し敵も塹壕もぶっとばーす!
必要なら私の寿命を削っても良い!
「さあ、皆さん突撃! 勝利は我らの御許にあり!」(杖振りかざし突撃の合図
「敵ながら衰えぬ闘志と決死の覚悟や良し!」
劣勢にあってなお『突撃歩兵』部隊が見せる、燃え盛る焔の如き士気の高さに、キアラは素直な感嘆を口にする。
たとえ最後の一兵になろうとも、彼らが突撃を止めることはあるまい。窮鼠猫を噛むとはよく言われるが、油断すれば猟兵でも道連れにされそうな勢いだ。
「ならば最大最強の魔法で相対しましょうっ!」
こちらも全力で迎え撃つ覚悟をもって、キアラはトネリコ製の『ドルイドの杖』を天に掲げて呪文を唱える。溜め込まれた魔力が解放され、燦然たる光が戦場を照らし――生命の根源に連なりし、大いなる術式がここに顕現する。
「九つの世界内包せし宇宙樹よ、小さきヤドリギに御身が天地開闢時空道行の光を一欠け与え給え……唯一孤独な栄光なりとも、敵討つ力を我に!」
【創生樹刀『イグドラシルブレイド』】。それは宇宙創生の輝きを刃に変えた、ヤドリギ使いの秘奥であった。
杖の先からまっすぐに伸びた光が、長大な刀身を形成し。キアラはそれに渾身の力を込めて敵部隊を薙ぎ払う。
「「ぐ、おぉぉぉぉぉ―――ッ
!!!!」」
壮大なる
世界創生力を秘めた一閃を受けた突撃歩兵隊は、跡形もなく分解され骸の海に還る。この圧倒的な威力と規模の前では、術者に近付くことさえ困難だった。彼らの得意戦法は死をも恐れぬ銃剣突撃だが、蛮勇だけでは越えられない壁がそこにある。
「砲兵隊、支援を!」
突撃歩兵隊はまだ塹壕に残っている友軍に協力を要請し、支援砲撃で迎撃を阻害した上で再度の銃剣突撃を図る。
だが、その様子を察したキアラは砲兵隊が隠れている場所に杖を向け、もう一度イグドラシルブレイドを放った。
「そこですっ!」
「な……ッ!?」
再び振り下ろされた創生樹刀の斬撃は、塹壕ごと敵をぶった切るのに余りある威力があった。さらに刀身に留まりきらなかった力は周辺地形を爆発炎上させ、崩れた大量の土砂で敵を生き埋めにする。切り札の砲台や弾薬もろとも砲兵隊は壊滅的な被害を受けた。
「……酷い? いいえ、この肌触りこそ戦場というもの! 覚悟を決めた相手には全力の私の力と戦術で向き合うのが、戦士のつとめ!」
敵軍の支援を文字通りに断ち切ってから、キアラはさらに数発分まとめてイグドラシルブレイドを連続発動する。
必要ならユーベルコードの威力と範囲を高めるために自分の寿命を削ることも厭わない。敵も塹壕も全部ぶっ飛ばすつもりだ。
「う、うおおぉぉッ?!」「なんだコイツはッ!!」
流石にこれほどの大火力をバンバンぶっ放されては、勇猛果敢な突撃歩兵達も動揺せずにはいられない。度重なる爆発によって周辺一帯は完全に更地と化しており、前に進むこともできなければ退くための塹壕も消え去っていた。見方を変えればそれは、キアラの友軍が突撃を遮られることも無くなったということである。
「さあ、皆さん突撃! 勝利は我らの御許にあり!」
「「おぉぉぉッ! 行くぞぉーーーッ
!!!」」
キアラが杖を振りかざし突撃の合図を出せば、スタンバイしていた獣人部隊が一斉攻撃を開始する。相手のお株を奪うような見事な銃剣突撃が、浮足立っていた敵部隊に最高のタイミングで突き刺さり――断末魔の絶叫が上がる。
「ぐわぁッ?!」「ち、畜生……ッ!!」
慈悲のない徹底的な攻勢。だが、それこそが戦場に立つものの務めであり、敵への敬意だとキアラは信じていた。
創生樹の輝きに照らされた戦場で、白きドルイドは勇ましく進撃を続ける。頼もしき獣人の勇士達を引き連れて。
大成功
🔵🔵🔵
ロザリア・プライム
フゥン……それじゃあクライマックスと行こうか!
マイクロトーキーで通信し各員と連携
敵の攻撃を受けたら直ぐにメディック! と叫べ
そうすりゃ騎兵隊兼救急隊のお出ましだ――ウラ!
現地まで直ちにGeneralを操縦して急行出来る!
機関銃の制圧援護射撃で敵の動きを止めて
要救助者は
医術でギュッと介抱
覚悟はいいな、ここが正念場だ
仲間に発破をかけて威嚇砲撃開始!
突撃支援砲撃なんかさせねえっての
むしろ撃ってきたらそのまま
精密砲撃で
ブッ叩いてやる!
狙いは敵装甲兵器の足回りだ
動けなくなりゃ突撃は出来ねえだろ! ヤッハ!
「フゥン……それじゃあクライマックスと行こうか!」
最後の意地とばかりに突っ込んでくる、ゾルダートグラードの『突撃歩兵』。それを見たロザリアは"General"の車中にて咽喉マイクに指先を当て、小型通信機「TTMT試製マイクロトーキー」による友軍各員との通信を行う。
「敵の攻撃を受けたら直ぐにメディック! と叫べ。そうすりゃ騎兵隊兼救急隊のお出ましだ――ウラ!」
「「了解! ウラー!!」」
暗号化された通信内容が敵軍に漏れることはなく、指示を受けた獣人部隊は直ちに攻撃を開始する。勝利は目と鼻の先ということもあって士気は非常に高いが、だからこそ気を引き締めないといけない――勝ち戦でみすみす命を落とすなど、馬鹿らしい話ではないか。
「怯むな! 進め!」「押し返すぞ! うおぉぉッ!」
対する敵の突撃歩兵隊は【アングリフ!】の号令を合言葉にして、騎兵銃を撃ちながら銃剣突撃を仕掛けてくる。
最初から生き延びることなど考えていない捨て身の特攻は、生きるために戦う獣人とは覚悟の質が違う。鬼気迫る勢いの反撃によって、獣人部隊にも少なからず被害が出ていた。
「クソっ、やられた……メディーック!」
負傷した兵士達は教えられた通りに救助要請を叫ぶ。これによりロザリアの【メディック・トリアージ】の発動条件が満たされる。戦場のどこにいようが助けを求める声あらば、現地まで直ちに急行するのが衛生兵のたしなみだ。
「死んでる奴はいないな? よし」
操縦するキャバリアごと負傷した味方の元にテレポートしたロザリアは「邪魔だ!」と機関銃の制圧射撃で敵兵の動きを止め、要救助者の介抱を素早く行う。こうした時のために彼女の「Kバッグ」には、緊急用の医療機器一式がぎっしりと詰め込まれている。
「覚悟はいいな、ここが正念場だ」
「おう。まだやれる」「ゾルダートグラードのクソ野郎どもに、俺達の意地を見せてやらあ!」
傷の手当をしてギュッと包帯で縛ると、兵士達はすぐに立ち上がった。ここで負傷したからと言って後方に引っ込むような奴は1人もいない。ロザリアにかけられた発破が効いているのもあるし、沸き立つアドレナリンが苦痛を吹き飛ばしているのだろう。
「くっ、キャバリアまで出てきやがった」「支援はまだか!」
前線に出没した"General"の機銃掃射と装甲に攻めあぐねる突撃歩兵隊は、砲兵隊による突撃の援護を要請する。
砲弾の雨を降らせて敵が怯んだところに突っ込む、歩兵と砲兵の基礎的な連携のひとつだ。決まれば効果的だが、だからこそ読まれやすい。
「突撃支援砲撃なんかさせねえっての。むしろ撃ってきたらそのままブッ叩いてやる!」
敵が撃ってきたポイントに照準を合わせて、ロザリアの主砲が火を吹く。90mm戦車砲の精密狙撃を食らった砲兵隊は「ぐわぁッ?!」と悲鳴を上げたきり沈黙した。兵科ごとに各個撃破して連携を封じてしまえば、もはや軍隊は本来の力を発揮できない。
「こいつはオマケだ!」
さらにロザリアは敵装甲兵器の足回りを狙って砲撃を続け、敵の機動力を削ぎ落としていく。突撃戦法を得意とする連中を迎え撃つのなら、やはり狙うべきは足だ。執拗に攻めたてられた敵部隊の動きが明らかに鈍くなっていく。
「動けなくなりゃ突撃は出来ねえだろ! ヤッハ!」
「流石、いい仕事するぜ! お前ら行くぞ!」「おうッ!!」
彼女の活躍に連動して獣人部隊も勢いを取り戻し、怯んだ敵兵を次々に撃破していく。砲声が轟き兵士達の鬨の声が鳴り響く、まさにクライマックスにふさわしい戦場の光景。その中心でウサギのソルジャーは痛快に笑っていた。
大成功
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シプラ・ムトナント
死を覚悟して臨んでいるのは、こちらとて同じです。
それに……あなた方と同じように、わたしにも仲間がいる
。
その声と力をお借りします、バロメリアンさん(f39933)。ここで彼らを、倒します……!
わたしは『C.Q.C.C.』を使って接近戦を挑みます。
叩きつけ、横薙ぎ、振り上げ。どれがが入れば攻撃を続行できます、これが衛生兵の戦い方です。……ホントですよ?
このままカバンの【気絶攻撃】で押し切りましょう。一人倒したら対象を変更し、攻勢を続けます。
手榴弾や火炎瓶による攻撃は大きな脅威ですが……バロメリアンさんのサイコキネシスが、それを返してくださる。
……爆発物の威力は、あなた方もご存知でしょう?
バロメリアン・マルゴール
目標:敵の投擲武器を投げ返し勢いを削ぐ
行動:狙いを自分に集中させた上で、仲間の兵士に警戒&声かけをしてもらう
さて、大詰めだ
安心しな、マダム・シプラ(f39963)という戦場の女神がオレ達にはついてるんだぜ
まずはマダムと共に塹壕内で敵を迎え撃つぜ
派手に暴れて歌えば、敵は塹壕内を纏めて吹き飛ばす攻撃を狙うことだろうさ
そして、ここがオレの真の狙い
投げてきた投射武器を歌に載せたサイコキネシスで空中で受け止め、投げ返すんだ
衛生兵と歌い手のコンビらしく柔よく剛を制すムーブで敵を倒すのさ
…鞄が衛生兵っぽいな、ヨシ!(鞄ブンブンを見て)
野郎ども、前方向の投げモノを声で教えてくれ!
後ろからのは撃って撃ち落とせ!
「死を覚悟して臨んでいるのは、こちらとて同じです」
不退転の決意で向かってくるゾルダートグラードの『突撃歩兵』を、シプラは正面から見据えて対峙する。死を恐れずに戦うのはオブリビオンだけの特権ではなく、その身に流れる血の誇りと鋼の意志がある限り、彼女が敵に背を向けることはない。
「それに……あなた方と同じように、わたしにも仲間がいる」
そう言って彼女が視線を向けた先には、マイクスタンドを片手に陽気に振る舞うヒツジの男性がいた。彼――バロメリアンは得意の歌とパフォーマンスを活かして味方の士気を高めている。それが彼の戦い方であり、千の銃弾にも勝る頼もしい味方であった。
「さて、大詰めだ。安心しな、マダム・シプラという戦場の女神がオレ達にはついてるんだぜ」
一方のバロメリアンも、衛生兵兼猟兵として活躍するシプラの実力を大いに信頼し、味方を鼓舞するネタにする。
まだ年若い少女が可憐に勇ましく戦う姿は、戦場の兵士達に強い印象を与えるだろう。「おう!」と応える獣人達の目には闘志と希望が宿っていた。
「その声と力をお借りします、バロメリアンさん。ここで彼らを、倒します……!」
「もちろんだ、マダム。最後までライブには手を抜かないぜ」
かくして一丸となった2人のヒツジと獣人部隊は、塹壕内で敵を迎え撃つ体制を取る。これまでと同じようにバロメリアンが歌で引き付け、シプラが接近戦を挑み、残りの部隊が銃撃や銃剣で援護するスタイルだ。今までは攻め込む側だったが、今回は敵の突撃を受け止める側なのが異なる点か。
「突っ込めー!」「うおぉぉぉぉッ!」
敵兵は雄々しき掛け声と共に保身なき突撃を敢行し、味方の屍を踏み越えて塹壕に飛び込んでくる。だが獣人部隊の攻撃によって実際にそこまで辿り着ける者は半分にも満たず。そして塹壕の中では救急カバンを持ったシプラが待ち構えている。
「これ以上は行かせません」
「おぐッ?!」「がはっ!」「ぎゃッ!?」
まず1人目の脳天に叩きつけ、続けて2人目を横薙ぎでふっ飛ばし、振り上げれば3人目の顎にクリーンヒット。
有効打が入る限り連続攻撃が可能な【C.Q.C.C.】の特性を存分に活かして、彼女は寄ってくる敵を片っ端から撃退していった。
「これが衛生兵の戦い方です。……ホントですよ?」
「……鞄が衛生兵っぽいな、ヨシ!」
重たそうなカバンをブンブン振り回すシプラを見て、とりあえず本人の主張を受け入れる事にしたバロメリアン。
果たしてそれが本当に衛生兵的かどうかは些細な問題である。敵を倒し、味方を守れれば結果は同じなのだから。現にゾルダートグラード軍の突撃はいまだ有効な戦果を挙げられてはいない。
「……おっと?」
「来ますね」
迎撃ラインが突破されぬまま敵軍の損害ばかりが増えていく中、突撃歩兵の誰かが【グラナーテ!】と叫んだのを2人は聞き逃さなかった。このまま無闇に突っ込んでも効果は薄いと悟った連中は、手榴弾で塹壕内を纏めて吹き飛ばす戦法に切り替えたようだ。
「喰らえッ!」
突撃歩兵隊はピンを抜いた柄付きの対人手榴弾を振りかぶり、猟兵達のいる塹壕めがけて次々に投げ込んでくる。
狭い塹壕でこれらが炸裂すれば、爆炎と衝撃はどこにも逃げていかずに内部にいる者を蹂躙する。天を仰いだ誰かの「やべぇ!」という叫び声が聞こえるが――シプラとバロメリアンの表情に焦りはなかった。
「手榴弾や火炎瓶による攻撃は大きな脅威ですが……バロメリアンさんが、それを返してくださる」
「そう、ここがオレの真の狙いさ」
バロメリアンが歌声に載せて【サイコキネシス】を放つと、手榴弾が空中でピタリと静止する。歌の魔力で増幅されたサイキックエナジーが投擲を受け止めたのだ。そのまま彼はキャッチした手榴弾を敵部隊めがけて投げ返した。
「……爆発物の威力は、あなた方もご存知でしょう?」
「「なっ?! うわぁぁぁぁッ
!?!」」
自分達が投げた手榴弾が自分達の元に返ってきて、敵兵は慌てて退避しようとするが、その前に信管が作動する。
ドカンと轟音が戦場を揺らし、爆発に巻き込まれた兵は悲鳴を上げて吹き飛ばされ、多くは原形も残らなかった。
「野郎ども、前方向の投げモノを声で教えてくれ! 後ろからのは撃って撃ち落とせ!」
「了解だ!」「そっちも頼むぜ!」
また手榴弾が飛んでくる危険性を考慮して、バロメリアンが部隊に指示を飛ばす。1本でも対処し損なえば甚大な被害になりかねないこともあって、みな神経を張り詰めて警戒している。こうなればもう敵側に付け入る隙はない。
「衛生兵と歌い手のコンビらしく柔よく剛を制すムーブで敵を倒すのさ」
おそらく普通の衛生兵と歌い手にはこんな戦い方はできないが、バロメリアンは得意げに笑いながら歌い続ける。
純粋なライブとして見ても素晴らしいパフォーマンスで注目を一手に集めながらも、敵兵は誰も彼に近付けない。歌声と共に吹き荒れるサイキックエナジーの風が、投擲より味方を守る障壁となる。
「頭上の心配はいりませんね。このまま押し切りましょう」
「「はいッ!」」
攻め手を欠いて浮足立つ敵兵に、シプラを先頭とした一部の獣人部隊が反転攻勢を仕掛ける。もはや相手にとっては恐怖の対象であろう救急カバンを振り回し、片っ端から敵を昏倒させていく様は戦女神の如し。敵味方問わず多くの兵士が入り乱れる最中にあっても、その戦いぶりは際立っていた。
「くそっ!」「俺達が、何もできずに……!」
本来なら突破口を開くはずの突撃歩兵の攻撃は不発に終わり、2人のヒツジ率いる獣人部隊の勢いは止まらない。
この流れは戦場全体に広く波及していき、やがてあちこちから勝利報告が入る頃には、この戦線の趨勢は決しようとしていた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
うーん知ってたけど実に厄介。
どこの世界でもこの手の
死兵は面倒なのよねぇ…
ただまあ実のところ…
この戦場で
この敵で
この戦局、あたしすごぉく得意なのよねぇ。
エオローで○オーラ防御の傾斜装甲を展開、●虐殺・滅尽で突撃してくる連中片っ端から○なぎ払うわぁ。射撃・爆撃・弾幕・投擲、お好きなのをどうぞ?
グレネードは●黙殺・砲列で撃ち落として叩き返しちゃいましょ。
まあ、気迫は大したものだけど…それだけで勝てるほど、世の中甘くないわよぉ?
あなたたちに
詞を贈るならば、やっぱりこれ一択よねぇ。
――『さぁ、潔く死んでから出直してくれたまえ!』
「うーん知ってたけど実に厄介。。どこの世界でもこの手の
死兵は面倒なのよねぇ……」
ゾルダートグラードに忠誠を捧げた、命を惜しまぬ『突撃歩兵』の集団を前に、ティオレンシアは眉をひそめる。
降伏や撤退などといった選択肢を捨て、前に進むことしか知らない敵とは、勝てたとしても余計な被害を受けかねない。地獄に行きたければ1人で行けばいいものを、奴らは常に道連れを求めてくる。
「ただまあ実のところ……
この戦場で
この敵で
この戦局、あたしすごぉく得意なのよねぇ」
1点さえ除けば、状況はティオレンシアにとって有利な要素が揃っている。キレた連中の負け惜しみの特攻など、軽くあしらえるくらいの条件が。だったら、この勝利にケチを付けさせはしない。左手にシトリンのペンを、右手に黒き拳銃を握った彼女の表情には余裕があった。
「突っ込めー!」
損害度外視で無闇矢鱈な突撃を仕掛けてくる敵部隊。迎え撃つティオレンシアは
エオローのルーンによるオーラの傾斜装甲を展開し、攻撃を逸らしながら【虐殺・滅尽】を発動する。これはハッタリ・イカサマ等の小技含めた手練手管を魔術文字と武装で最大限に補助し、敵を殲滅するためのユーベルコードだ。
「あたし、雑魚散らしは得意なの。――逃げられるなんて思わないでねぇ?」
これまでに披露した魔術文字の弾幕に加え、本人が最も得意とする銃撃もここで解禁だ。稲妻の如き早業で6連装リボルバー「オブシディアン」が火を噴き、放たれた弾丸は正確に敵の眉間や心臓を射抜く。6発の弾丸を全て撃ちきれば、リロードに合わせてグレネードを投げ込むなど、反撃する隙は一切与えない。
「射撃・爆撃・弾幕・投擲、お好きなのをどうぞ?」
「な、なんだコイツは
……!」「強すぎるッ!?」
まるで単騎で1部隊並みの戦いぶりを見せられ、突撃歩兵隊は戦慄する。相手の防衛ラインを突破することを存在意義とする彼らが、ティオレンシアが結界を張った陣地に近付くことさえままならない。それは妖術や戦略によるものではなく、戦力と練度の圧倒的格差であった。
「グラナーテ!」
なんとか状況を打開しようと、敵は手榴弾や火炎瓶を手当たり次第に投げ込んでくる。だがそれもティオレンシアは予想済みのようで、ゴールドシーンを上空に向けて【黙殺・砲列】を発動。描かれた魔術文字から弾幕が放たれ、擲弾を跳ね返していく。
「まあ、気迫は大したものだけど……それだけで勝てるほど、世の中甘くないわよぉ?」
「「う、うわぁぁぁッ?!」」
撃ち落とされた手榴弾は敵部隊の元に叩き返され、盛大に同士討ちの爆発を起こす。悲鳴と共に敵部隊の動きが止まれば、追い討ちの銃弾がその命を貫いた。さらに【黙殺・砲列】で描かれた魔術文字はその後もティオレンシアに追従し、浮遊砲台として自動的に弾幕を放ち続ける。
「畜生、どうすりゃいいんだ……!」
鍛えてきた技術も、装備も、覚悟すらも、何一つ通用する気がしない。ただの敗戦以上の敗北感が兵士達を襲う。
もはや彼らが諦めないだけではどうにもならない、絶対的な壁がそこにはあった。根性論では突き崩せない厳しい現実を、微笑みと共にティオレンシアが突きつける。
「あなたたちに
詞を贈るならば、やっぱりこれ一択よねぇ。――『さぁ、潔く死んでから出直してくれたまえ!』」
もはや役者としてこの舞台に立つにも不十分だと、幕引きを告げる言葉が突撃歩兵の最期を決定付ける。駆逐された敵兵の亡骸は骸の海に還っていき、乾いた風が血と硝煙の匂いを運び去る――戦いの終わりが、迫ってきていた。
大成功
🔵🔵🔵
アヤネ・タチバナ
【アドリブ◎】
いい気迫だね。昔を思い出しちゃった
UC:セーラー星人の力がUC:耽溺の学徒(攻撃力重視)を目覚めさせてく
狭い塹壕内で光翼を展開。けど粉塵の内にあたしはもういない
武器:闘気と、師匠直伝の武器:宇宙理心の波動をのせて
自信と慢心は別腹、はいはい分かってまーす。ブランクも長いし
覚悟キマってる相手に小手調べや駆け引きなんかしないって
塹壕飛び出して勢い外の敵を武器:フォースセイバー斬りで切断してく
塹壕上から武器:サイキックガンでヘッドショット
死兵に組み付かれるのマジ遠慮だし
そんな感じで一度に相手する数を絞って戦うよ
銃剣に塹壕スコップか。そーゆー流派があるのかな。動きに無駄がない
イチゴ味がする女子高校生のカンで見切って超反応カウンター
どっちも攻撃偏重ならあたしも無傷ってワケにはいかないか
けど、最後まで。
どっちが生きるも死ぬも、それってきっと時代が起こすムーブメントってやつ
いつだって理不尽だけど、ここで命賭ける意味は必ずあるよ
花実ってさ、あたし達みたいのが駆け抜けてったあとに咲くものだから
「いい気迫だね。昔を思い出しちゃった」
退くことを知らず、がむしゃらに向かってくる『突撃歩兵』を見て、アヤネは懐かしそうに目を細める。覇を競いあったかつての学友達はあんな表情をしていただろうか、あるいは自分も昔はそうだったかもしれない。今は随分丸くなったとはいえ、JKの血が滾るのを感じる。
「いいよ、最後まで相手してあげる」
美しく逞しい【セーラー星人】の力が【耽溺の学徒】を目覚めさせていく。セーラー服の背中側がはだけ、天使のような光の翼が展開される。その耽溺力をもって敵勢力を天真に葬ってきた、かつての己の姿に彼女は立ち返ろうとしていた。
「アタッケ!」
狭い塹壕内で見えた光に向かって、敵歩兵は攻撃を仕掛けてくる。轟く咆哮、舞い上がる粉塵――だが、その中にアヤネはもういない。学徒武装による反応力の大幅な強化と、サイキックエナジーの光翼がもたらす高速移動力は、敵部隊のそれを圧倒的に上回っていた。戦う前から個の実力差は歴然、さりとて彼女は気を抜かない。
「自信と慢心は別腹、はいはい分かってまーす。ブランクも長いし」
耳にタコができるほど聞いた教えを思い出し、意識を研ぎ澄ませる。極限まで練り上げられた闘気と、師匠直伝の「宇宙理心の波動」を乗せたフォースセイバーは、星の光を宿したように燦然と輝き。彼女はそれを構えて真っ向から敵に戦いを挑んだ。
「覚悟キマってる相手に小手調べや駆け引きなんかしないって」
凄まじいスピードで塹壕から飛び出してきたアヤネが、勢いのままに外にいた敵を切り捨てる。破壊の闘気と必殺のサイキックを込めた斬撃に断てない物質は、宇宙広しと言えどもそう多くはない。真っ二つにされた歩兵の体は、塵のようになって骸の海に還っていった。
「怯むな!」「行くぞォッ!」
だが仲間を1人殺られた程度で敵兵の足は止まらず、数にものを言わせて掴み掛かってくる。それを見たアヤネは光翼を羽ばたかせて高度を上げ、敵に捕まらない高さからサイキックガンの銃口を向ける。棒付き飴をくわえた口元を、不敵に歪めて。
「死兵に組み付かれるのマジ遠慮だし」
「ぐはッ?!」
放たれたサイキックの弾丸は標的の脳天を的確に射抜き、敵が撃ち返してくる頃にはもうアヤネは移動している。
機動力と反応速度の高さを活かし、一度に相手をする数を絞って戦う。彼女はそれで何百という敵とも互角に渡り合ってきたのだ。
「まだ終われるか
……!」「テメェも道連れだ!」
それでも突撃歩兵隊は鬼気迫る勢いでセーラー服の少女に追いすがり、持てる武装の限りを尽くして攻め立てる。
【アタッケ!】の号令を合言葉に一丸となり戦う様には、流石は精鋭部隊と唸らせるだけの要素が確かにあった。
「銃剣に塹壕スコップか。そーゆー流派があるのかな。動きに無駄がない」
塹壕戦に特化した敵兵の攻撃を、アヤネは女子高校生のカンで見切り、超反応のカウンターを合わせる。イチゴの香りと鉄錆の匂いが戦場に散らばり、敵の屍が大地に積み重なり、お気に入りのスニーカーを血溜まりが濡らした。
「どっちも攻撃偏重ならあたしも無傷ってワケにはいかないか」
その血には彼女自身のものも含まれている。敵と比べれば軽微なものだが、乱戦の最中に受けた掠り傷の積み重ねはじわじわと体力を消耗させていた。このままダメージが増えるようなら、後は味方に任せて撤退も視野には入る。
「けど、最後まで」
ここで退くつもりは一切ないとフォースセイバーを握り直す。それはアヤネの覚悟であり、敵への敬意でもある。
猟兵だからとか関係なく、ただ1人の兵士として最後まで全力を尽くして戦う。この戦いの意義だとか、終わった後の事とか、今は悩まなくていい。
「どっちが生きるも死ぬも、それってきっと時代が起こすムーブメントってやつ。いつだって理不尽だけど、ここで命賭ける意味は必ずあるよ」
それが何なのかは分からなくても、絶対に無意味にはならないから。だから、ひたすら戦う。短い命を全力で咲く花のように、一斬一射に必殺の意志を宿して。堂々と己の生命を晒して、向かってくる敵兵を一人残らず相手する。
「花実ってさ、あたし達みたいのが駆け抜けてったあとに咲くものだから」
一世紀を超えるこの世界の戦いにも、いつか終わりは来るだろう。そのために散った全ての兵士達の命を抱いて。
それが彼らへの餞になるかは分からないが――安心して逝けばいいよと、耽溺の学徒は最後の一撃を振り下ろす。
「――……ッ。ゾルダートグラードに、栄光、あれ……」
機械帝国に忠誠を捧げた兵士達は、最期まで御国の勝利を願った上で息絶える。戦場に背を向ける者、後ろ向きに倒れる者は誰一人としておらず――抵抗が止んだ戦場には、獣人部隊の兵士による勝利の喝采が響き渡るのだった。
こうして猟兵達は危機的状況にあった獣人部隊を救い、相対するゾルダートグラード軍の撃破を見事成功させる。
この戦線での勝利が戦争に及ぼす影響はまだ小さなものだが、反抗の波はうねりを上げて広がりつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵