【事前課題】キャバリアを動かそう!
●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
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「お、きたきた」
ハンガー――見た目は倉庫だが――に向かって走ってくる大型トレーラーを確認して、錫華が音を鳴らして階段を降りる。
トレーラーは車体をハンガーの前に横付けすると、運転席から降りてきた男が錫華に書類を渡した。
「キャバリアと予備パーツ、それと運搬用のキャリア。たしかに受け取ったよ」
錫華が書類にサインをし、運転していた男に返した。男はそれを確認し鞄にしまうと、コンテナからバイクを引っ張り出し、エンジンをかけると小気味よい音を響かせながらハンガーを後にした。
それを見送り、錫華がさっそく納品された機体を確かめていく。
量産型キャバリア【スプリガン】。
【スプリガン】は
【希島】において2世代前の主力機であり、かなり長く使われた機体だ。整備のしやすさとクセのない操作性が特徴で、現在でも稼働している機体もあることから、パーツの調達などもしやすく、学生の実習用としては申し分ない機体と言える。
しかし……。
「さすがにどれも使い込まれきってるね。ま、
無料で下ろしてもらったし、しかたないか」
機体をざっとチェックした錫華が呟く。
トレーラーに乗せられていた機体は、工業地区の外れにある倉庫に寝かされ、半ば忘れられていたものだ。目立った破損があるというわけではなかったが、いかんせん放置されていた時間が長かったようだ。
それに……と、錫華が珍しく頭を抱える。
予備パーツが入っているはずのコンテナには、【スプリガン】のもげた腕や、ちぎれた足の膝下、外してそのままの頭部など、様々な部位が壊れたままに詰め込まれている。予備パーツというよりはジャンク屋のような有様だった。
「新品のパーツを期待してはいなかったけど、これはなかなかだね」
壊れた機体からパーツを取って予備部品に回すというのは、戦場ではごくごく当たり前のことだ。だがしかし、
【希島】の工業地区でそれをしなくてはならないとは思わなかったのだ。
「でもこれだけあるし、上手く取り出せば当分パーツには困らないか」
錫華は気を取り直し作業に取りかかろうとして、少し考えた。
【スプリガン】数機と大量の予備パーツ、これを全てひとりで、というのはさすがにちょっとハードだ。それならば……。
錫華は本部に連絡すると、さっそく整備メンバー募集の広告を出してもらうのだった。
●
「自分たちの使う機体は、自分たちで作ろう。みたいな感じだと思ってもらえるかな」
入学予定の生徒達と、サポートする
【異界人】たちを前に錫華がそう告げる。
そして、それに、と錫華が続ける。
「これは、学園からの正式な以来になるから、
【異界人】たちにはもちろん、学生さんでも参加してもらえれば奨学金とかもでるみたいだよ」
錫華はちょっと冗談っぽくそう言ってから、すこし真顔になると、
「メカニック志望ではなくても、機体のことを知っておくのは操縦にも生かせるし、現場経験のひとつとしていい経験になると思うんだ」
基本的に現場主義である錫華の言葉にはけっこうな説得力がある。学生達もしっかり話を聞いていた。
「授業ではないから参加しなくても評価に影響することはないので、興味のある人に、無理しないで集まってもらえると嬉しいな」
錫華はそう言って、笑顔で話を締めくくった。
すい
●
ここまで来てくださりありがとうございます。MSのすいと申します、
今回のシナリオは、【事前課題】の共通題名で括られるシナリオソースのシリーズで、コイネガウ暦20X3年1月と2月に開催される学園入学前における課題遂行の物語となります。
なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
今回は学園での教習で使用するため引き取ってきた、古いキャバリアをメンテナンス&オーバーホールしていただいたり、ジャンクなパーツから使えそうなものを掘り出したりする依頼になります。
キャバリアは旧式の量産型で名前が【スプリガン】。
パーツは新品なども少しは入っていますが、基本は使えなくなったキャバリアのジャンクパーツで、そこから使えそうな部品を取り出し、ストックすることになります。
とにかく倉庫の不要品を詰め込んで持ってきた、という感じなので、中には手違いで最新式やとんでもないものが入っていたりするかもしれないですね。
●POW
【スプリガン】を実際に動かしながら、修理の必要な部分を探していく。
●SPD
再利用が可能そうなパーツを探し出し【スプリガン】のパーツを交換する。
●WIZ
【スプリガン】を一度解体し、機体をメンテナンス&オーバーホールする。
日常系なので、あまり気にすることなく、自由に動いていただけましたら、と思います。
それと『日常系シナリオ』ということもありまして、NPCとの交流も可能となっています。もしプレ内でリクエストがありましたら、錫華も積極的に交流しますのでお声がけください。なにもなければ、錫華はきっと黙々と修理をしているでしょう。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
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コニー・バクスター
【学園組】
「よぉし、コニー達で中古スプリガンのリサイクルをするよ!」
今回の課題でコニーはぬめぬめと組む。
ぬめぬめの軽業や怪力に期待。
コニーの服装は体操着。
「パーツが……外れない? BRRを呼んでみるか!」
錆びて壊れた部分は力仕事が必要。
HCでBRRを操作して力技で取り出す。
ぬめぬめの怪力にも頼る。
ぬめぬめの洗浄もたまに手伝う。
「ふぅ、やっと休憩だね。みんなでおやつを食べよう☆」
コニーはルネ・カフェ・メイトを持って来た。
コニー、ぬめぬめ、錫華の三人で仲良く食べる。
スポドリもあるよ。
「またスプリガンが学園の授業で使えるといいね!」
解体して洗浄したパーツはまとめて錫華に渡すよ。
比嘉・縫愛怒雌
【学園組】
コニーちゃんに誘われてバイトに来たっすよ。(真の姿)
うわっ、ボロっ…あっ、このロボット昔見たことあるかもっす。(←地元民)
作業はコニーちゃんの指示に全面的に従うっす。
足場習熟で不安定な足場でも問題なく動き回って、もうぶった斬ってもいいような場所はワタシの爪で解体。重いパーツも怪力で運搬。大きいのは兎さんに任せるっす。
清掃も真の姿の私の軽業ならスイスイっと作業できるっす。
硬い汚れは爪でガリガリするっすよ。
休憩時間は錫華ちゃんも誘って3人で。
コニーちゃんが持ってきたおやつでティータイムっす。
作業後の細かい諸々の手続きもコニーちゃんに任せるっす。
サボリじゃないっす!適材適所ってやつっすよ!
●
「うわっ、ボロっ……」
使い込まれくたびれたキャバリアと大量のジャンクパーツの前で、比嘉・縫愛怒雌(国立希島学園の放課後キャットヒーロー・f39245)が素直すぎる感想を述べた。
「あっ、でもこのロボット昔見たことあるかもっす」
【希島】で生まれ育った縫愛怒雌は、ところどころサビの浮いたキャバリアを見つめ、んーっ、と首をかしげた後に、ぽん、と手を打つと、この機体が【スプリガン】という名前で、自分が子供の頃
【希島】で稼働していた機体であることを思い出した。
そして、それをコニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)に告げると、コニーは、
「そうなんだ? よぉし、それならコニー達で中古【スプリガン】のリサイクルをするよ!」
また動けるようにね! と、気合いを入れた。ばっちり決めた体操着がコニーのやる気を表している。
この作業は【学園】からの正式な依頼であり奨学金がでるということもあるが、リタイアしていたキャバリアをまた動けるようにするというのは、普段戦いの場が多いコニーにとってやりがいのあることなのだ。
そしてそれは縫愛怒雌も同様な感じだった。
最初はコニーから誘われてバイトにきただけのつもりだったのだが、幼い頃見上げていた【スプリガン】のこの姿を見て、ちょっと感じるところがあったらしい。
2人はまずは使えるパーツを探し出そうと、ジャンクパーツの前に陣取った。そしてパーツを吟味し始めるのだが……。
「パーツが……外れない?」
コニーは壊れた腕のパーツをバラそうとして、まったく動かないことに困惑していた。ネジもボルトも関節部も、あまりに長期間放置されていたパーツは、サビや残留物の体積などで固着してしまっていたのだ。
これは自分の力でなんとかなるものではないと思ったコニーは、
「
ブラック・ラピッド・ラビットを呼んでみるか!」
そう言って自らの愛機を呼ぶと、自分は外から自らの目で確認しながら、リモートレプリカントで【
ブラック・ラピッド・ラビット】を操り、後ろ足の蹴りで固着した関節に衝撃を加えると、ビームダガーを使って器用に切り離していく。
「こんな感じでいいと思うからよろしくね♪」
「了解っす」
コニーの作業を見ていた縫愛怒雌も要領が解ったのか、コニーに言われると頭にぴょこりと耳を生やし、ジャンクパーツの山の中を軽やかに駆けていく。そしてよさそうな
上半身のパーツを見つけると、ヒビの入っていた箇所へ爪を一閃。パーツを切り分け、両手に抱えて戻ってくると、サビをがりがりと刮ぎ落とし始めた。
●
パーツを探しては、バラす。
そんなことを繰り返し、日が傾き始めた頃には、使えそうな部品が山になっていた。
「ふぅ、やっと休憩だね。みんなでおやつを食べよう☆」
コニーが事務所でパーツリストと格闘していた錫華も誘うと、ルネ・カフェ・メイトを振る舞う。
口に入れると、さくりと食感とチョコクッキー特有の甘さと香ばしさ。
「慣れない事務作業だったから糖分は嬉しいね」
錫華がそう言って、クッキーをスポーツドリンクで流し込む。
縫愛怒雌は、深刻な顔をしながらクッキーをかじると、
「今はミッションの最中。食べられるだけマシってことっすね……」
と、呟きながら薄い笑いを浮かべた。
そしてそんな縫愛怒雌にコニーが、
「なんでさ! ルネ・カフェ・メイト美味しいでしょー!?」
そうツッコミを入れていた。
そこからは、和やかな――端から見たら華やかな――お茶会。
作業やキャバリアの話をしていたはずが、いつのまにか他愛のない雑談へ。コニーの振りに、3人の笑い声がパーツの山に吸い込まれていく。
一通り食べ終え、話もちょっと途切れ気味になった頃。
「それじゃ残りの時間はパーツの洗浄だね♪」
そろそろ休憩も終わり、と立ち上がるコニーに、縫愛怒雌と錫華も続いた。
●
洗浄を終えたパーツは、ジャンクの中に埋もれていたものとは思えないものになっていた。納得のできばえに、2人は満足そうに頷き合うと、
「それじゃ、あとはお任せするっ……」
「あれ?最後の最後にサボり?」
そそくさと帰ろうとした縫愛怒雌に「す」まで言わせず、コニーが言葉を遮る。
「サボリじゃないっす! 適材適所ってやつっすよ!」
「解るけど、それじゃひとりでするとき困るよね」
「ひとりじゃバイトしないから大丈夫っすー!」
「またスプリガンが学園の授業で使えるといいね!」
なんとか逃げようとしていた縫愛怒雌の主張を、コニーが笑顔で無視しながらがっちりと捕まえ、2人は事務所へと入っていった。
大成功
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相沢・友子
2世代前の…、今の環境で実戦に出したら、動く棺桶になりそうな…。
…只の教材。もしくは敵対機がもっと古ければワンチャンス。
規格が同じ量産機ならニコイチ出来るけど、製造時期によって、微妙に使われてるパーツが違うんだよ。
1体分組み上げてもOSが、パーツを認識してくれるかどうか…。
プログラミングは、知識がある人に頼むよ。
内蔵部品の検索とバイパスの
確保、規格と拡張性。コンペを勝ち抜いた正規採用機【スプリガン】
用途別にカスタムされた物も、ちらほら。
電脳戦・砲撃戦・突破戦・広報用アイドル機?
それと負担が掛かる部位は、どれもボロボロで、かろうじて原型をとどめていても、動かすと千切れそう。経年と寿命を迎えたものは後回しで。
寝ず見たちと、事故の痕跡の有る機体からパーツ探すよ。
事故の原因が、外因なら、機体はまだ生きれるはずだよ。
フレームが歪んでる。最後まで搭乗者を守った痕跡が在る。いい子だね。
あなたの命も、次の子に繋いであげる。
キャバリア【スプリガン】は現行機から数えると2世代前の主力機だ。
2世代前と言えばそんなに昔でもない感じがするが、キャバリアで2世代の差というのはスペックだけを見ても数十倍の差があることになる。つまり前線で戦うのは自殺行為に近く、動く棺桶になりかねない。
戦場で使うならば、後方での作業用か、
回収用キャバリアくらいだろう。
しかし、これが練習用となれば話が違う。初期型であるがゆえのマニュアル操縦とシンプルな構造は、操縦や整備の訓練機としてはうってつけなのだ。
相沢・友子(水使いの淡水人魚・f27454)は、そんな理由で『教材』として搬入された【スプリガン】とそのパーツ――ジャンクだが――を、うーん、と首を捻りながら眺めていた。
たしかにどれも【スプリガン】のパーツではあるのだが……。
友子は借りてきたデバイスから【スプリガン】の設計図と整備マニュアルを引っ張り出す。
熾烈なコンペを勝ち抜いて正式採用となり、その汎用性の高さから名機と呼ばれた【スプリガン】。今は後方だけとはいえ2世代前の設計の機体が実働できるのは、その基本設計の高さと整備のしやすさがあってのことだ。
だからこそ、ジャンクになっても使えるパーツはたくさんあるのだが……。
通常装備の機体だけでなく、電脳戦機・砲撃戦機・突破戦機・広報用なのか可愛いカラーリングのものまである。製造数もバリエーションも多い汎用量産機とはいえ、あまりに雑多すぎた。
同じ名前を持つ機体ならニコイチ――複数の壊れた機体から使えるパーツを組み合わせて、稼働機を作る――も簡単と思われがちだが、実は製造時期やバージョンによって微妙に使われてるパーツが違うのでそう簡単にはいかないのだ。
(ベースの機体はあるし、あとは使えるパーツを組み合わせれば、機体として組み上げることはできるよね)
そうは思うけれど、それをOSが正常に認識してくれるかどうかは解らない。
動けばいい、という戦場での応急処置ではなく、パーツの摺り合わせや認識まで考えて完動品を組み上げるとなると、なかなかに手間のかかる作業といえるだろう。
(プログラミングや調整は知識がある人にお願いしよう、まずは1体組み上げてみないとだよね)
友子はそう割り切ると、瞳を輝かせて
硝子の寝ず見たちを召喚すると、パーツの山へと走らせた。
ラットたちに機体とパーツのデータを送り、それに近しいと思われるものをピックアップ。集めてきてくれたものは友子が自分の目でひとつずつ確認していくことにした。
とはいえあまりにも量が多い。ここは使える可能性の高いパーツが取れそうなものから見ていかないといけないだろう。
まずは見た感じからもあまりに古いと解るもの。パーツが経年劣化していたり、耐久年数を超えているような感じのものは後回しにしていくことにした。
リビルトすれば使えるようになるものもあるかもしれないが、それはまず『動く1機』を組み上げてからでいい。
狙っていくのは、事故など不意のアクシデントにより廃棄・解体された機体のパーツだ。外因によって機体が処分されたのならば、その要因となったパーツ以外はまだ『生きている』可能性が高い。
そういうパーツならばバージョン違いのものでも部品互換などを考えて確保しておくのもいいだろう。
そう考えた友子が、ラットたちと一緒に『壊れた』形跡のあるパーツをさがしていると、状態の良さそうな頭部パーツが埋もれているのに気がついた。
これは使えそうかな、と、確保しようとしたら、ラットたちがだいぶ苦戦していた。どうやら頭部だけではなく、
上半身ごと埋まっているようだ。
周囲のパーツを撤去し、なんとか掘り出して調べてみると……メインフレームがかなり歪んでいた。
多少の歪みなら修復もできるのだが、これだけ歪んでしまえば機体の稼働に支障をきたしてしまう。それで廃棄となったようだった。
上半身全体の状態から見ると、戦闘での結果というわけではなさそうだった。この機体のバージョンからして、後方での拠点設置、もしくは救助活動などのときにダメージを負ったのだろう。
ひどいダメージではあったが、フレームは崩壊する寸前のところで耐え、コックピットを支えきっている。それはこの【スプリガン】が、最後まで搭乗者を守ったことの証だ。
「いい子だね」
友子はフレームに手をそっと添えると、やさしく撫でながら、
「あなたの命も、次の子に繋いであげる」
パーツだけではなく、キャバリアの『想い』も次の世代に受け継いでいこう。友子はそう心に決めて、ジャンクの山に向き直った。
大成功
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鍋方・稚微
動けばいいの精神も、動かなければ話にならずで、スクラップの半歩手前からのパーツ回収ですか?
バラバラのパーツ、原型が分かるものは(力持ちで)一箇所に運んで繋ぎ合わせて動かします。
安全装置?そんな物付けてませんよ?
機体の全身から、火花や煙が吹き出してますけど。この状態でも焼け付いたり折れ曲がってないパーツは正常なパーツですね。わかりやすいです。
尋常じゃない耐久性能が有りますね、まだ舞える。
カメラアイも少し揺れますが、こういうのは心で動かすものです。技量なんて後から嫌でも付いてくる、何時だって大事なのは勢いです。(受け売りですがね)
ひとまず機体の頭から消火剤浴びたら。無事だった部品を回収しましょう。
(動けばいいの精神も、動かなければ話にならず)
鍋方・稚微(幼い妖狐(もふ子狐)・f36338)は山のように積まれたパーツを金の瞳で見つめながら、ぼんやりと思う。
なにはともあれ、動かなければお話にならないのだ。
しかしここにあるのは『【スプリガン】のパーツである』というだけで、部位もバラバラでまとめられておらず、バージョンも型も違うものが雑多に混ざっている。しかもスクラップ半歩手前のようなパーツばかりで、まずはこの中から使えるを見極めなければならない。
稚微はまず、見た目で壊れ切っていないもの、原形を留めているものを選び出した。
落ち着いた物腰、色白の肌、そしてお世辞にも高いとはいえない身長。『お嬢様』と言われれば大半の人が納得しそうな容姿からは思いもつかない膂力で、よいしょー、と持ち上げ、一か所にどんどん集めていく。
そんなことを小一時間。
目につく範囲にあった『使えそうな』パーツを集め終わった稚微は、上下のフレームと四肢のパーツを揃えると、いきなり組み上げに入った。
稚微が適当に集めたパーツではあったが、それなりに組みあがっていくのは、さすが量産機といえばいいのか。
口金やボルトなど、接合部のサイズが合えば、なんとかなってしまうのが量産機の強みでもある。
組み上げた【スプリガン】のバッテリーだけは新品のものに交換し、起動用のAPUを接続。 謎の気合を入れながら、一気に電源をONにした。
「安全装置? そんな物飾りです!」
そんなことはない。そこに誰かがいればすかさずそうツッコんだだろうが、残念ながらそこには誰もいない。
ぐんぐん上昇していくエネルギーゲージに伴って機体の全身から火花が上がり、パーツの間から煙が噴き出す。しかしこの状態でも焼け付いたり、亀裂が入ったりしていないパーツもある。
「これと、あれと、あっちも……あのあたりは正常なパーツですね」
どうやら正常に起動するパーツを選別するための稚微なりの方法だったらしい。火花と煙に彩られた即席機体を稚微が細かくチェックしていく。
それでは……。
そういいながら一通りパーツのチェックを終えた稚微が、フレームを伝ってコックピットへと乗り込むと|操縦桿《スティック》を握った。
「尋常じゃない耐久性能が有りますね、まだ舞える」
コックピットのディスプレイは真っ赤なアラートで埋め尽くされ、機体各部の火花や煙も治まる気配は見せないが、まだ動く。
メインモニターに繋がるカメラアイも外れかけ、揺れてはいたが外の景色を写しだしていた。
「こういうのは心で動かすものです」
揺れる景色にちょっと酔いそうになりながら、稚微がうんうんと頷く。
動かしていれば技量などはあとから嫌でもついてくる。習うより慣れろ。何時だって大事なのは勢いである。どこかで誰かがそう言っていた、はず!
そのために『動く機体』が必要なのだ。
稚微は機体温度が上がってきた【スプリガン】を操り、側に用意してあった消火剤を持ち上げ、頭からかぶった。即座に電源が落ち【スプリガン】が擱座する。
稚微はコックピットから滑り落ちるように脱出すると、チェックしてあったパーツを回収し、事務所へと引き渡すのだった。
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「フレームとパーツ、これだけあれば十分だね」
大量のパーツの中から、とりあえず使えそうなものを選んだ結果、予備パーツも含めて【スプリガン】5機相当のストックをつくることができた。ジャンクを引き取ってきてこれだけものが手に入ったというのは幸運もあっただろうがやはり、
【異界人】の力の結果というしかない。
しかも精査していないジャンクパーツもまだ残っていて、パイロットだけでなく、メカニックとしての技術を育てるための素材も十分にある状態になっている。
これから始まるキャバリア教習の準備としては十分なものが揃えられたはずだ。
「みんなにいろいろ教えてあげてね」
新たに迎える春。新たに始まる物語に思いを馳せながら、錫華は磨かれた【スプリガン】の機体をぽんと叩いた。
大成功
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