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|『傍観者』と『救命者』《バイ・スタンダー》と

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●ブレイクスルー
 流星が空を駆ける。
 剥がれ落ちながら光が空に舞う。
 それはきっと最初の願いであり、また同時に数多の願いであったことだろう。
 多くの願いが祈りに昇華した。
 それを見上げたのだ。
 黒い瞳は見た。
 自分の中には何もなかったから、そのきれいなものに憧れたのだ。星映す黒い瞳は、見たのだ。
 そして、その亜麻色の髪を揺らして、願う。

『熾天大聖』は願った。
「多くの人を守れますように。多くの人に平和をもたらすことができますように」
『エリクシル』は叶えた。
「叶えましょう。それを叶えましょう。『争いを止めるために生まれる』『存在』を数多の世界に齎しましょう。あらゆる世界の人々が『心に平和を』持つように。『あなた』がそうなるのです」
 その言葉は、流星のように欠片となって降り注ぐ。
 数多の世界にもたらされた願いは、平和を希求する。

『フュンフ・エイル』は問い掛ける。
「平和を求めるあまり、争いがなければ平和も存在しないことを見落としていたんだ。君は一体どちらだ。『傍観者』か、それとも『救命者』か――」
『皐月・エイル』は説く。
「悲しみは尽きない。けれど、それは幸せを得るために必要なことだ。平和が争いなくば勝ち取れないように。だから、悲しめど嘆くな」
『メリサ』は叫んだ。
「嘆くなだと。お前たちはいつだって遅い。お前たちはいつだって世界のためにしか戦わない。世界の悲鳴に応えて、ただそれだけのために戦う。何が『戦いに際しては心に平和を』だ! その『生命を見ろ』――!」

 選んだのだ。願いの色で世界を塗ったのだ。
 選べない傷で己を練磨したのだ――。

●その名は
 誰かが諦めた夢がある。
 憧憬はいつだって眩いからこそ影を落とす。
 女神の如き万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』はゆっくりと歩む。
 その姿は唯一人でありながら万能。彼女はあらゆる願いを叶える。
 例え、『過日手放した願い』であったとしてもだ。必ず叶える。
 彼女が歩むのは『砂月楼閣シャルムーン』。
 そして今日は『シャルムーンデイ』。

 曰く、それは伝承に語られるものである。
『シャルムーン姫の伝承』は告げる。
 声を発することを印字られた姫が恋に落ちるも、己の胸の内を表現する術が思いつかない。
 だが、気持ちを伝えたい。
 けれど、この気持ちを例えることができる宝石もなければ花も存在しない。
 ならば、宝物は自らの手で作り出せば良い。
 そう、声を発することの出来ない姫、シャルムーンは自らの気持ちを現す宝物を己の手で作ることにしたのだ。
 恋のように甘く、葛藤のように苦いお菓子。
 その名を『チョコレート』と呼び、そして、彼女がそれを作った日を『シャルムーンデイ』と呼ぶに至ったのだ。
『おさなごころの君』もまた声を発することのない『エリクシル』。
 奇しくも、かつての伝承と重なる日に彼女という災厄は『砂月楼閣シャルムーン』に降り立つ――。

●壊す
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は、『エンドブレイカー!』世界。万能の魔神『エリクシル』――『おさなごころの君』は恋人たちのお祭り『シャルムーンデイ』において、人々の強気願いを引き出すために虐殺を引き起こそうとしています」
 それは『エリクシル』である『おさなごころの君』の策略である。
 恋人たちの一時である『シャルムーンデイ』にて気持ち通じ合った恋人たち虐殺することによって、『虐殺された人々を生き返らせたい』という強く大きな願いを得ようとしているのだ。

「万能の魔神『エリクシル』がもたらす悲劇は必ず世界の破滅を引き起こすでしょう。これを見過ごすことはできません。故に皆さんにはこれを誰にも気づかれないように密かに倒す必要があります」
 そう、そうした悲劇の未来が存在し得たことを人々に悟らせる理由はない。
 幸いに『おさなごころの君』が現れる場所は予知で判明している。
 それは『エンドブレイカー!』世界において『シャルムーンデイ』――所謂バレンタインデーに相当する行事の発祥となった都市国家『砂月楼閣シャルムーン』だ。
「『砂月楼閣シャルムーン』の頂上部――巨大な『爪』に『おさなごころの君』は降り立ちます。今ならば『シャルムーンデイ』のお祭りに人々は気を取られています。これを撃破してください」
 ナイアルテは、悲劇を未然に防げたのならば、後は少しだけ『シャルムーンデイ』のお祭りに参加してもいいと告げる。
 それは都市国家を見て回る機会でもあったし、また『エンドブレイカー!』世界に習って恋人たちの時間を過ごすのもいいだろう。

 どちらにせよ、『エリクシル』の策動を阻む必要がある。
 これをなせなければ、『エリクシル』である『おさなごころの君』は強大な願いの力を得てしまうだろう。
「誰にも気が付かれることなく敵を打倒するのは至難を極めるでしょう。ですが、皆さんの双肩に恋人たちの大切な一日がかかっているのです。どうか、お願い致します」
 ナイアルテは再び頭を下げて猟兵たちを見送る。
 誰もが幸せであってほしいと願う。
 自分ではない誰かの幸せを願う。
 けれど、『エリクシル』はその願いをこそ狙う。そして、歪めて叶えることでもって人々の心を絶望に叩き落とすだろう。
 それが必ず世界の破滅につながるのならば、世界の悲鳴に応える猟兵は果敢にも万能の魔神に挑むのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 エンドブレイカー!世界の都市国家『砂月楼閣シャルムーン』にて行われているお祭り『シャルムーンデイ』にて人々を虐殺し、生き残った者たちの『死んだものを生き返らせたい』という強烈な願いを狙う万能の魔神『エリクシル』を打倒するシナリオになります。

●第一章
 ボス戦です。
 人々の強烈な願いを引き出すために敢えて恋人たちのお祭『シャルムーンデイ』にて虐殺を引き起こそうとしている万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』との対決になります。
 彼女は言葉を発しませんが、『砂月楼閣シャルムーン』という都市国家を形成している頂上部、巨大な『爪』の上に降り立とうとしています。
 今ならば誰にも気が付かれることなく彼女と対決することができます。
『爪』の上で彼女と戦いましょう。

●第二章
 集団戦です。
 みなさんが撃破した『おさなごころの君』は最期の力で大量の巨怪『ギガンウォーム』を生み出し、『砂月楼閣シャルムーン』を蹂躙しようとしています。
 死んでも己の目的を果たそうとしているのです。
 現れた『ギガンウォーム』を全て打倒し、『シャルムーンデイ』を守りましょう。

●第三章
 日常です。
 人知れず事件を解決した皆さんは、『シャルムーンデイ』は恋人たちのお祭としてつつがなく幸せに行われています。
 皆さんは少しだけお祭りに参加してもいいですし、何事もなかったように都市国家内部を探索してから帰還することもできます。
 どうするかは皆さんの自由です。

 それでは恋人たちのお祭『シャルムーンデイ』にて虐殺を引き起こそうとしている万能の魔神『エリクシル』の野望を打破する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『おさなごころの君』

POW   :    薔薇色の追憶
【対象の忘れられない者の姿】に変形し、自身の【最も近くに居る者の寿命】を代償に、自身の【かけられた願いを叶える力】を強化する。
SPD   :    月下の約束
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【月の光で編んだ鎖】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
WIZ   :    星屑の憧憬
戦場全体に、【対象がかつて抱いた夢や憧憬と、その煌めき】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:西東源

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠チェーザレ・ヴェネーノです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 都市国家『砂月楼閣シャルムーン』において恋人たちは幸せな一時を過ごす。
 思いを伝える甘いお菓子チョコレートを手に。
 彼が、彼女が。
 時に他人同士が繋がる瞬間であっただろうし、家族が家族に日頃の感謝を伝えることもあっただろう。何処を見ても幸せに溢れていた。
 だからこそ『おさなごころの君』は都市国家の中心に存在する巨大な『爪』の直上より舞い降りながら、その様子を見下ろす。
「――」
 声を発することはない。
 彼女は見下ろすだけだ。
『エリクシル』は強い願いの力を求める。
 この幸せを惨劇に蹂躙すれば、必ずや生き残った者は『死んだものを生き返らせたい』と願うだろう。
 死者の蘇生はあまりにも強烈な願いだ。

 幸せの絶頂から転落したのならば、殊更に。
 故に彼女は強烈な力の奔流を迸らせるように天にユーベルコードの輝きを湛える。
「――」
 彼女は『傍観者』だ。ただ傍らにあって見るだけだ。
 どれだけ幸せであっても不幸であっても彼女には関係ない。
 そこに強き願いがあるかどうかだけが判断基準だった。どれだけ悪辣な行いであろうとも、善悪など彼女には意味がないのだ。
 だからこそ、都市国家を構成する巨大な『爪』の頂上に転移してきた猟兵たちを見やってもやるべきことは変わらなかった。
 ただ虐殺を引き起こす。
 それだけのために彼女は、『救命者』たる猟兵たちを意思感じさせぬ瞳でもって見下ろす――。
村崎・ゆかり
恋人たちを虐殺して、生き残った片割れに相手の蘇りを願わせる。随分と悪辣ね。
迷う必要なんてなし。速やかにあなたを討滅するわ。

「全力魔法」「精神攻撃」「レーザー射撃」「弾幕」「仙術」「道術」で、落魂陣布陣。
十絶陣の中では、これが一番「目立たない」。大判呪符の放つ光で心を砕くわ。

ん、変身したのはアヤメか。残念、彼女の符はあたしがしっかり持ってるわ。惑わされたりしない。躊躇無く薙刀で「串刺し」にしてあげる。

あなたのようなものに願いをかけたいなんて思う人はいない。大人しく骸の海へ墜ちなさい。
その水先案内くらいはしてあげるわ。



 薔薇色の人生というものがあるのならば、万能の魔神『エリクシル』に願えばいい。
 願うだけで『エリクシル』は願いを叶える。
 しかし、それが歪められて叶えられるものであることを知らねばならない。
 確かに願いの力は強大だ。
 それを求めてやまない『エリクシル』にとっては、それを得るためならば如何なる願望をも叶えるだろう。
「――」 
 ただ。
 願いを叶える願望の徒は、答えない。
 如何なる願いであっても語ることをしない。
 いまだかつて彼らは語らない。
 何故願いを求めるのか。その力をもって何をなそうとしているのか。

 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)が見上げる先にある『エリクシル』、『おさなごころの君』は何も語らず、彼女の眼の前で姿を変える。
 それは願いの発露。
 この恋人たちの祭りである『シャルムーンデイ』において、共にあることを願うのは即ち力へと変ずる。
 片割れが失われれば、それだけ強い願いが生まれるだろう。
「それをあなたたちは欲するというわけ。随分と悪辣ね」
 ゆかりは迷うことはなかった。
 すぐさまに『砂月楼閣シャルムーン』を形成する『爪』の頂上へと走る。

 その直上に浮かぶ『おさなごころの君』を討つために。
 だが、ゆかりは目の前で姿を変える『おさなごころの君』の姿を見やり、目を見張る。
「アヤメ……!」
 彼女の瞳に映るのは恋人にしたエルフのくノ一の姿だった。
「――……」
 だが、言葉を発することはなかった。
『おさなごころの君』と同じ瞳の色でゆかりを見下ろし、その力を振るう。
 願いの力はそれだけで膨れ上がっていく。
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。

 眼の前のアヤメは偽物だとわかる。
 どれだけ精巧に模しているのだとしても、彼女の存在する符はゆかり自身がしっかりと持っている。
 今も胸の中にあるのならば、迷う必要などどこにもない。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。心身支える三魂七魄の悉くを解きほぐし、天上天下へと帰らしめん。疾!」
 煌めくユーベルコード。
 魂魄を吹き飛ばす呪詛を込めた無数に浮かぶ呪符から光線が放たれる。

『おさなごころの君』を取囲むのは、落魂陣(ラッコンジン)。
 肉体を傷つけず、敵の魂魄のみを攻撃するユーベルコード。
 惑わされることはない。
 手にした薙刀に力が込められる。
「あなたのようなものに願いをかけたいなんて思う人はいない」
「――……」
 放たれる薙刀の突きを眼前に掲げた掌が受け止め、願いの力と刃が激突して火花を散らす。

「大人しく躯の海へ墜ちなさい」
 ゆかりの言葉に意思宿さぬ瞳は何を映すか。
 そこにあるのは何もないということ。
 万能の魔神『エリクシル』は願いの力だけを求める。
 振るう薙刀の一撃を受け止めていた『おさなごころの君』へと光線が迸る。幾条にも走った光線を受けてぐらつく身体をゆかりの薙刀が打ち据え、ゆかりは告げる。
「その水先案内くらいはしてあげる――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュプリムント・メーベルナッハ
恋人さんなら片割れを生き返らせて欲しいって願わないワケが無いもんね。
分かりやすく酷い作戦だよね!
そんなあなたには願いじゃなくて呪いをお届けしちゃうんだから!

足場が良くないから足元注意しつつ、呪蛇鎌を振るって【斬撃波】を飛ばして敵を攻撃。身体を蝕む【呪詛】もセットでね。
敵の攻撃は、傍らに浮かべた怨念珠から放つ呪いの【オーラ防御】で防ぐよ。

ユーベルコードの迷路は…滅びた故郷(アマツカグラの寒村)が豊かで平和になった風景かな?
でも、今のプリムには素敵なお嫁さんがいるし未練は全然無いんだよねえ。
水晶髑髏に『外の敵を屈服させる為に迷宮の脱出経路を教えて』とお願いして、そのナビに従って脱出を目指すよ。



 もし愛を誓いあった者同士がいたのだとして、目の前で彼、ないし彼女が命を奪われて死したのならば、誰もが願わずにはいられなかっただろう。
 死者の蘇生を。
 生命が蘇ることを。
 それを悪しきことだと言うことのできる者はいないだろう。
 生命は戻らない。戻ることはない。
 だからこそ、それを願うことの強さは言うまでもない。万能の魔神『エリクシル』は、そうして都市国家『砂月楼閣シャルムーン』にて『シャルムーンデイ』のお祭りに興じる人々を虐殺しようとしている。
「――……」
『エリクシル』、『おさなごころの君』は見下ろす。

 猟兵に打撃を受けてなお彼女は見下ろすばかりだった。
 その瞳に意思はない。
 求めるのは強き願いのみ。
「恋人さんなら片割れを生き返らせて欲しいって願わないわけが無いもんね。わかりやすく酷い作戦だよね!」
 シュプリムント・メーベルナッハ(穢死檻の巫女・f38888)は、それを許せないと思った。理不尽だと思ったし、またその願いのためだけに命を奪う行いを赦せるわけがなかったのだ。
 振るう呪いの大鎌の刀身が煌めく。
 弧を描く斬撃は斬撃波となって『おさなごころの君』へと放たれる。

 呪詛は身を蝕むだろう。
 けれど、『おさなごころの君』はシュプリムントを一瞥するだけだった。
「――……」
 まるで意に介した様子はない。 
 掲げた掌から発露するユーベルコードの輝き。
 それは一瞬でシュプリムントを取り囲む迷路を形成し、彼女を取り込んでいく。
「これは……プリムの故郷……?」
 かつて滅びた寒村。
 それは彼女の生まれ故郷。寒村故に生活は厳しかった。
 だからこそ、目の前に広がる迷宮の光景は、その真逆。
 平和であり豊か。
 誰もが奪われず、誰もが奪わなくて良い生活。穏やかで、時間の流れすら緩やかに思えるほどの……そんな幻想。

 シュプリムントに未練というものがあったのならば、きっとその光景に手を伸ばしただろう。
 けれど、彼女が足を踏み出さないのはたった1つの理由があった。
 たった1つの理由で、そして数多の幻想を否定する事実がある。
「今のプリムには素敵なお嫁さんがいるし、未練は全然ないんだよねぇ」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 愛おしく思う者がいる。
 ならばこそ、シュプリムントは己の手にした水晶髑髏(クリスタルシェイデル)より放たれる怨念から願いを発露する。

 それは単純なことだった。
「プリムの願いを叶えてね!」
『おさなごころの君』は空より見下ろすばかりだった。
 その姿を屈服させたい。その願いを叶えるためには何をすべきかなどわかりきっている。この寒村であった平和な故郷を乗り越えていかなければならない。
「お願い、教えてね。この迷宮を突破する道筋を!」
 掲げた水晶髑髏から発せられる光が一気にシュプリムントに道を示す。

 迷宮は破壊できない。
 ならば突破するしか無い。出口は一つ。満ちるユーベルコードの光はシュプリムントに道を示している。
 たどるべき道。往くべき道を。
「ほら、簡単なこと! 確かに誰かを生き返らせたいって願いは、誰もが抱くものだろうけど」
 彼女は走って飛ぶようにして迷宮から脱出し、その手にした大鎌の一閃を『おさなごころの君』に叩き込む。
 未練はない。
 願ったものの残滓は、もう彼女の足を取ることはない。

 なぜなら、彼女の手を取る者がいるから。
 光に導かれるようにシュプリムントは笑って、その未来に駆け出していく。
 そのために壊したエンディングがあるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

エリクシルの考えそうなことですが…。いらないことを。
こういう日には、不要ですよ。
ええ、いうでしょう?『馬に蹴られて』とか。

さてー、まあ変身されてもねぇ。白髪青目の…『静かなる者』ですねー。
で、それがどうしました?そんなものが、忍に効くとでも?
本物は身の内にいますしねー。

というわけでー、UCつきの漆黒風を全力投擲しましょうかー。
あなたにかける願いなんてもの、本当にありませんしねー。

本当に、今日という日にあなたはいりませんのでー。皆につつがなく、幸せに過ごしてほしいものですー。



 虐殺の後に生き残った者に死した者たちの蘇生を願わせる。
 その強烈な願いの力をこそ万能の魔神『エリクシル』は求める。そして、それが今日という日であったのならば、悪辣そのものであったことだろう。
「『エリクシル』の考えそうなことですが……いらないことを」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の中の一柱『疾き者』は都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の中心に存在する巨大な『爪』の切っ先の上に浮かぶ『おさなごころの君』の姿を見上げ、嘆息する。

 そう、今日は恋人たちの祭り。
『シャルムーンデイ』だ。
 その日に、よりにもよって虐殺を敢行しようというのだからたちが悪い。
「こういう日には不要ですよ」
「――……」
 だが『エリクシル』、『おさなごころの君』は見下ろすばかりだった。
 意思の感じられない瞳。
 ただ、願いの力を求めるだけの存在は、掲げた掌よりユーベルコードの煌めきを解き放つ。
 その眩い輝きの中から現れるのは『疾き者』にとって最も忘れがたき者。
 おのれの中にある存在。
 四柱の一柱。
『静かなる者』――白髪青目の男性。
 確かに忘れがたいと思っただろう。

 だが、と思う。
「で、それがどうしました? そんなものが忍びに効くとでも?」
 目の前にある存在に動揺することはない。
 中に存在しているからこそ、目の前の光景に心揺れることはない。己は忍びなのだ。
 例え、本当に『静かなる者』と対峙することになろうとも、その心は揺れることはなかっただろう。
「本物は身の内にいますしねー」
 揺れるわけがない。
 それ以前に此処は戦場である。『エリクシル』に願うものなどない。
「――……」
「そんな目でみても、本当にないんですからねー。本当に」
 煌めくユーベルコード。

 どれだけ強化されているのだとしても、己の手に握り込んだ棒手裏剣は四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)となって空中を一直線に走る。
 掲げた掌が迫る棒手裏剣に突き出される。
 ユーベルコードの奔流が棒手裏剣を受け止める。
「ええ、本当に今日という日にはあなたはいりませんのでー。皆につつがなく幸せに過ごして欲しいものですー」
 そう、今日は恋人たちの日だ。
 今日という日を境に関係性が変わる者たちだっているだろう。
 いつだって人はより良きを求める。
 今日よりも明日が良い一日であることを望む。そして、それは共に歩む者がいるのならば、誰かを思うことにもなるだろう。

 それを『おさなごころの君』は取り上げようとしているのだ。
「そんなこと許されるわけないでしょう。ええ、いうでしょう? そういうことは『馬に蹴られて』とかなんとか」
 巨大な『爪』の直上へと『疾き者』は駆け抜ける。
 蹴って、飛び、走って。
 目の前には討つべき敵がいる。
 どれだけ『静かなる者』の姿を真似ようとも、所作がそのものであったとしても。

 それでも放つ棒手裏剣はユーベルコードに輝き、その体を貫く。
「本質というものが見えていないですねー。例え、姿かたちを真似たところで、私の忘れがたきを見せるのだとしてもー」
 余計なお世話である。
 忘れがたきを映し出す鏡などいらない。
 いつだって、心の中に在るのだから。
 故に、放つ棒手裏剣の一撃が偽りの『忘れがたき』を貫いて砕く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

これは……『エイル』さんが複数?

ぎぎぎ、と恐る恐る首を回してみたら、

あ、あれ?
いつものやべー叫びがきません?

あああああ!? ステラさん、ステラさーん!?

香りの濃密さ? に、いろいろオーバーフローしたステラさんが、
なんか顔を赤らめてもじもじしています!?

ステラさん、|嬉孕《ウレハラ》してる場合じゃないです!
しっかりしないと『エイル』さん、また逃げちゃいますよー!

うわぁ、また在るべき姿に戻さないといけない『(はぁと)』が……。

って、そんな魔法使ったことないです!?
でもシャルムーンにふさわしい演奏なら任せてください。

めいっぱいの想いを込めた【Canon】を弾かせてもらいますね!


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りが……濃厚、すぎるぅぅ……
孕む、孕みそう
ルクス様、私はここまでのようです……
誰がやべーメイドですか

しかし最近、エイル様の事といい、セラフィムの事といい
情報が多すぎて、本当に困惑しておりますが
ステラ負けない(はぁと)
|メイド《犬》の維持をお見せしましょう!!
とりあえず、エイル様にチョコを渡せない私の恨みを思い知るがいい!

というわけでルクス様
広域蹂躙魔法……じゃなかった、演奏お願いします
ええ、シャルムーンデイですしそのような雰囲気もよろしいかと
私はルクス様の演奏に合わせて
【シーカ・サギッタ】にて剣舞といきましょう
投げナイフの舞、とくとご覧あれ



 一つの願いが多くの祈りに昇華する。
 それは剥がれ落ちるようであったし、その残滓を見る者にはかけがえのないものに映ったかもしれない。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、そう思えたし、また同時にこれを見たステラ・タタリクス(紫苑・f33899)がどんな行動をするかなど予想に難くなかった。
 正直にいうとヤベーことなっているだろうと思った。
 恐怖が先に立つのだろう。
 背後にいるだろうメイドに顔を向けるのを身体が本能的に拒否しているのだろう。
 軋むように首を回す。

 だが、『いつもの』がない。
『いつもの』というのは即ちやべーメイドのやべー叫びである。
 あれ? と拍子抜けした思いもあった。
 けれど、視線を向けた先に会ったのは予想を超えるものであった。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りが……濃厚、すぎるぅぅ……」
 こわ。
 ルクスはそう思った。
 何を言っているのかさっぱりわからない。いや、わかるけど、そういうもんだいではない。レーティングとか大丈夫だろうかと思うようなことを口走っているヤベーメイドことステラの方をガクガク振って正気に戻そうとルクスは必死だった。
「ああああああ!? ステラさん、ステラさーん!?」
「ルクス様、私はここまでのようです……」
 がっくり燃え尽きるように……いや、なんかやべー顔しているな。
 結構余裕なのではないだろうかと思うほどの顔である。しかし、ステラはそれどころではなかった。

 本当に最近濃密な情報が多すぎて彼女は困惑しきりであった。
 多くのことが彼女の頭の中に詰め込まれているような気がする。
 ルクス的に言うのならば、色々オーバーフローしている、というところであろう。
「ステラ負けない(はぁと)」
「何が!?」
 なんか顔を赤らめてもじもじしているステラにルクスは、えぇ……と当惑するような感情しか向けられない。
 いつも通りだと言われたらそうなのだけれど、今はそれどころではないのである。
 エンドブレイカー! 世界の危機なのである。

 都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の中心に存在する巨大な『爪』。
 その直上に万能の魔神『エリクシル』たる『おさなごころの君』がいるのだ。掲げた掌から放たれるユーベルコードの煌めき月光の如き輝きを放っている。
「――……」
 彼女は何も語らない。
 何の意思も感じさせぬ瞳で見下ろすばかりであった。
「ステラさん、|嬉孕《ウレハラ》してる場合じゃないです! しっかりしないと『エイル』さん、また逃げちゃいますよー! っていか、うわぁ……また在るべき姿に戻さないといけない『(はぁと)』が……」
 ルクスはステラの様子を見やる。
 これは大変そうである。戻そうと思って戻せるものではないのかもしれないと思うほどであった。

 迫る鎖と迷宮。
「|メイド《犬》の意地をお見せしましょう11 とりあえず、『エイル』様にチョコを渡せない私の恨みを思い知るがいい!」
「どう考えても逆恨みじゃないですかー!?」
「というわけでルクス様、広域蹂躙魔法……」
「そんな魔法使ったことないです!?」
「失礼。演奏お願いします。シャルムーンデイですし」
「ふふふ、シャルムーンに相応しい演奏なら任せてください」
 ルクスの自身が逆に怖い。
 というか、確実にルクスの瞳はユーベルコードに輝き、構えるヴァイオリンから奏でられる旋律は破壊魔法のそれであった。

 Canon(カノン)に想いを込めて。
 ルクスはそういった。けれど、彼女の弦を弾く音は、単一のそれだけでも大気を震わせ『おさなごころの君』を撃つ。
 ものすごい音であった。
 ステラは耳栓していたのかもしれないが、その演奏に合わせて、シーカ・サギッタ(シーカサギッタ)――即ち投げナイフを解き放つ。
 投げナイフはあらゆる防護を貫く。
 防御など意味をなさない。
 即ち、迷宮が迫るのだとしても、生命繋ぐ鎖さえもすり抜けるようにして『おさなごころの君』へと到達するのだ。
「どうです。シャルムーンデイらしくありませんか!?」
「ええ、シャルムーンデイですし、そのような雰囲気もよろしいかと」

 二人は頷く。
 だが、ルクスは見た。
 己の奏でる旋律の最中、風に揺れるステラの紫の髪の合間に見える耳に詰められた栓を。
 そう、耳栓である。
 聞こえているわけではないのだ。
 ただステラはなんとなくルクスの口の動きを見て相槌とも言える返事をしているだけなのだ。
「ええ、ほんとうに」
「完璧に今、適当に相槌打ちましたね――!?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーリス・レイフィスト
零れ落ちた物は戻らない……その摂理を曲げたいと、失った者なら誰しも一度はよぎるだろう。
願うだろうな……当然の話だ。
だが……そうして弄ぶと言うのであれば私も私の都合で動く。今の私の心の矛先のやり場はそこにしか無いのだから。

「付き合って貰うぞ、エリクシル」
右手の甲に残った傷跡に左手の人差し指をかけ、腕の方へ向け引き裂く。
痛みか……些事だ。目覚めてから事の顛末を知った時に感じた無力感に比べればな。
傷跡より喚び出した憎しみの化身をエリクシルへとけしかけながら、血の滴る右手で、左の腰元に提げた太刀『天空桜』へと手をかける。憎しみの化身の攻撃に続きエリクシルとの距離を詰め、居合による斬撃を加えるとしよう。



 己自身ことを平凡な街の平凡な男だと彼――ユーリス・レイフィスト(還れなかった男・f39756)は思っていた。
 いつまでもこの平凡だけれど、平穏な日々が続くのだと思っていた。
 けれど、それが思い違いであったことを最悪の形で知ることになる。
 今でも己の手の中には血潮流れる痛みを感じる事ができる。
 奪われたのだ。
 そして代わりに得たのだ。
 終焉を見る力。
 即ち、エンドブレイカーの力を。デモンの叛乱に抗い、しかして目醒めることのなかった男。それが己である。

 失ったのは幼馴染。
 ぬくもりもやさしさも。全て己の腕の中からこぼれ落ちたのだ。仮面と魔女を巡る戦いの結末は、ただ見ることも叶わなかった。
 ただ文字として知ることになった。
 自分の仇も。元凶も、全ては消え去ったのだ。

「だから、これは八つ当たりだ。私の」
 故にユーリスは『砂月楼閣シャルムーン』の巨大な『爪』の直上に在る『おさなごころの君』を睨めつける。
「零れ落ちたものは戻らない……その摂理を曲げたいと、失った者なら誰しも一度はよぎるだろう」
 自分だって願うだろう。誰だって願うだろう。
 失う痛みは未だ己の胸の中にある。
 されど、とユーリスは己の右手の甲に残った傷跡に己の指をかける。一文字に引き裂かれる傷。癒える端から自傷する。
 なぜなら、これは八つ当たりだからだ。

 万能の魔神『エリクシル』。
 人の願いを歪めて叶える元凶。
 故にユーリスは、その瞳をユーベルコードにきらめかせる。怒りに燃えるように。
「付き合って貰うぞ、『エリクシル』」
「――……」
 消えぬ傷跡から現れる憎しみの化身。
 それはユーリスのユーベルコードであり、彼の憎悪の権化。
 走る憎しみの化身は、都市国家を形成する中心部である巨大な『爪』を駆け上がり、『おさなごころの君』へと迫る。
 放たれる迷宮も、ユーリスには関係なかった。
 憎しみの化身は死ぬまで『エリクシル』を追跡し続ける。迷宮で持って己の憎しみを煙に巻こうというのだとしても、それは叶わない。

 一瞬で迷宮を突破した憎しみの化身は『おさなごころの君』へと迫っていた。
 痛みが腕に走る。
 ジクジクとした痛み。
 引き裂くような痛み。
 どれもが些事だった。些細なことだった。ユーリスの心の奥底でくすぶるように内側から身を焼く無力感に比べれば、どうってことはなかった。
 血の赤が視界に映る。
 掲げた右手に握られていたのは、太刀。

 これも模造だ。
 偽物だ。偽りだ。けれど、己の中にある、己を焼く無力という業火は模造でもなければ偽りでもない。
「『エリクシル』、お前たちは弄ぶ。自らの都合だと言うのだろう。ならば、私も私の都合で動く」
『爪』の切っ先へと走る。
 憎しみの化身が『おさなごころの君』を両手のひらを合わせた一撃で直上より叩き落とし、その身体がユーリスに迫っている。
 ためらわなかった。
 走って、走って、手にした太刀を彼は振るう。

「今の私の心の矛先のやり場は」
 振るう一閃が『おさなごころの君』の身体へと吸い込まれるようにして走る。
 確かに彼の手にした太刀は模造。
 されど、刻まれた銘は、その名を世界に示す。
 天空桜。
 魔神の業火を斬り裂いたという逸話を持つ太刀。ならば、それを示せと言う。
 己の中にくすぶる無力感という業火。
 己自身の無力を憎む刃は、万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』の意思感じさせぬ瞳を鮮血に染めるように振り抜かれる。

「もはやお前たちを倒すことしかないのだから」
 両断した『おさなごころの君』は見上げる。
 斬り裂いた肉体より迸る鮮血が桜の花弁のように『砂月楼閣シャルムーン』の空に舞うのを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ギガンウォーム』

POW   :    踏み潰し
【踏み潰し】で近接攻撃する。低威力だが、対象が近接範囲から離脱するまで何度でも連続攻撃できる。
SPD   :    ウォームスウォーム
対象の周りにレベル×1体の【巨大イモムシ型モンスター】を召喚する。[巨大イモムシ型モンスター]は対象の思念に従い忠実に戦うが、一撃で消滅する。
WIZ   :    爆破鱗粉
着弾点からレベルm半径内を爆破する【鱗粉】を放つ。着弾後、範囲内に【大量の蟲】が現れ継続ダメージを与える。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』は胴を両断されながら『砂月楼閣シャルムーン』の空より失墜していく。
 意思なき瞳はただ空を見上げるのみであった。
「――……」
 語る言葉はない。
 されど、己が失敗したということを理解しているのだろう。
 猟兵たちの攻勢によって彼女の目論見は打破された。シャルムーンデイにおいて恋人たちを虐殺し、その片割れを活かすことによって得られる願いの力の蒐集。
 それが成しえぬことを理解し、また同時にそれは過ちであることもまた理解していた。

「――……」
 そう、願いは自分が叶えなくてもいい。
『エリクシル』は自分だけではない。自分は失敗したが、自分ではない他の『エリクシル』が願いの萌芽を摘み取ればいいだけの話。
 故に彼女の掌は天に掲げられ、まばゆき力を解き放つ。
 一瞬で光が『砂月楼閣シャルムーン』の空から飛散する。

 その光の先を猟兵たちは見ただろう。
 飛散した先にあったのは巨大な怪物。無数の『ギガンウォーム』が都市国家の外に現れる。
 あの巨怪が都市国家に迫れば蹂躙されるほかない。
『おさなごころの君』は己が消えるのだとしても、願いの萌芽だけはなさしめようと最後の力を持って『ギガンウォーム』を招来せしめたのだ――!
村崎・ゆかり
今度はミミズの化物ね。都市の内部に呼び出されなくて助かったわ。
飛鉢法にて交戦地点へ急行し、絶陣を張る。

「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「結界術」「呪詛」「仙術」「道術」で、紅水陣!
この絶陣に囚われたなら、もはや生命尽きたも同じ。
赤い酸性の靄で、尽く朽ち果てなさい。
反撃も、結界が遮断するわ。鱗粉程度じゃ、絶陣の結界は抜けられない。

この戦闘、都市から見えてるのかしらね? せっかくのシャルムーンデイに水を差したくはないものだけど。
ま、やるだけやるしかないわね。大きいだけあって、|消化《・・》には時間がかかるか。
早くお祭に行きたいんだから、さっさと溶けて滅びなさい。



 巨怪『ギガンウォーム』が都市国家『砂月楼閣シャルムーン』に迫る。
 都市国家の外は未だ多くの巨獣でもってひしめく、人間が活動するには不向きと言われる環境である。
 エンドブレイカー! 世界には未だこうした脅威が存在しているのだ。
『ギガンウォーム』もその例に漏れない。
「今度はミミズの化け物ね」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、それらが都市内部に召喚されなかったことを不幸中の幸いであると認識していた。
 だが、放置すれば必ずや『ギガンウォーム』は都市国家を蹂躙するだろう。

 そうなれば今日という日、恋人の祭りである『シャルムーンデイ』は、『エリクシル』が目論んだ通り悲劇に見舞われた日として記憶されるだろう。
 そうなれば死した者たちを願う力は強くなる。
「その時が収穫の時ってわけね。悪辣がすぎる」
 だからこそゆかりは都市国家の外へと鉄鉢と共に飛び出す。
 眼下にうごめく『ギガンウォーム』は無数に土煙を上げて『砂月楼閣シャルムーン』に迫っている。
 幸いにお祭気分で物見台の見張りたちもいない。
 今ならば『ギガンウォーム』の到来を知られることなく彼らを撃退することができる。
 だが、敵の数は膨大である上に撒き散らされる鱗粉が次々と大量の蟲を生み出していくのだ。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 ゆかりの瞳がユーベルコードにきらめいた瞬間、彼女を中心に展開するのは紅水陣(コウスイジン)。
 真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨が降り注ぐ。
 それはあらゆるものを腐食させる赤い靄であり、その雨に触れた『ギガンウォーム』と彼らが生み出した鱗粉、蟲たちを尽く溶かしていくのだ。
「この戦い、都市から見えていないといいのだけど。せっかくのシャルムーンデイですもの。水を差したくはないものだけど……」
 ゆかりはそう願う。

 恋人たちをお祭。
 年に一度のお祭。想いをチョコレートに込めて伝える祭り。言葉無くとも人は何かを伝えることができる。
 込められた想いを解くようにリボンをとれば、そこから香るのはチョコレートの甘い香りと想い。
 そんな恋人たちのお祭をゆかりは守りたいと思う。
「ま、やるだけやるしかないわね」
「――!!!」
 大地を揺らす巨怪。
 それがのたうつように赤い靄の中に消えていく。
 強酸性の雨はあらゆるものを溶かし尽くす。どれだけ巨大な『ギガンウォーム』であったとしても。巨大であるがゆえに逃れ得ぬ攻勢を前にただ溶けゆくのみ。

「大きいだけあって、|消火《・・》には時間が掛かるか」
 ゆかりは赤い靄の中にうごめく『ギガンウォーム』を見下ろす。
 早く、と思う。 
 だって、恋人たちの祭りであるというのならば、式神であるアヤメと共に楽しみたい。強という一日は、たった一日しかないのだ。
 戦いにだけ消費されるなんてそんな勿体ないこと許しておける訳がない。
 ならばこそ、ゆかりは己のユーベルコードが生み出す強酸性の雨に願う。

 早く、疾く、速くと。
 もっと速くと願うのは、きっとアヤメとの時間を思えばこそ。
「さっさと溶けて滅びなさい」
 ゆかりは赤靄を見下ろしながら、溶けゆく巨怪の躯を完全に溶かし尽くすまで、その瞳輝くユーベルコードを発現させ続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:灰遠雷

最後のあがきというやつですねー。厄介なことを。
霹靂に乗りまして、すぐさま近くへ。
対象を、私や霹靂にしたいんですよねー。

そうして…すぐさまUCで射かけましょう。
増えたとして、それは一撃で消えるのですから…私が優先するのは、本体になる方ですねー。
ええまあ…視界に入ってるだけで、もう逃げられませんけどね?と思いながら二回攻撃しましょう。
…本当に、今日という日にいりませんから。


霹靂「クエッ。…クエー?」
全速力で虫の近くへ。迫ってきたら、爪で引っ掻く!
…自分の後ろ足で蹴ったら、『馬に蹴られて』になるんじゃ?
陰海月「ぷきゅ!」
後ろは任せて!シュシュッと触腕パンチ!



 万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』が最期に見せた輝きは、大量の『ギガンウォーム』の召喚だった。
 彼女が例え、猟兵に破れるのだとしても、彼女が目論んだ虐殺をなさしめるための一手。
「――……」
 声はなく。意思はなく。
 されど、己が何をなすかを知っている彼女にとって、この一手こそが次に繋がる手だったのだ。

 都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の外に現れる巨怪『ギガンウォーム』。
 のたうつように巨体がうねり、『ギガンウォーム』より小ぶりとは言え、巨大イモムシ型モンスターがあふれかえる。
 それは『砂月楼閣シャルムーン』を蹂躙するには十分すぎる数であった。
 猟兵たちが対応に当たるのだとしても、『ギガンウォーム』を放置すれば、それだけで都市国家は滅ぶ。
 それほどまでにエンドブレイカー! 世界は未だ過酷な環境なのだ。
 巨獣闊歩する世界。
『ギガンウォーム』は正しく、それを示す巨怪であったことだろう。

「最期のあがきというやつですねー。厄介なことを」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』はヒポグリフである『霹靂』に乗り、都市国家の外へと飛び出していく。
 確かに『エリクシル』のあがきは厄介なものであった。
 しかし、不幸中の幸いと云うべきだろう。都市国家の内部ではなく外側に『ギガンウォーム』を召喚されたのは。
 すぐさま『疾き者』は弓を構え、ユーベルコードの輝きを満たす矢を解き放つ。
 宙を走る矢は呪詛を込められたがゆえに黒い矢となって次々と巨大イモムシ型モンスターを穿つ。

 敵の数は確かに膨大だ。 
 だが、一撃で消えるというのならば、やりようはある。
『疾き者』は細まった瞳を薄く開き、周囲に存在するモンスターたちを空より見下ろす。
「悪霊からは逃げられない。ええ、まあ、視界に入っているだけで逃げられませんけどね?」
 四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)は視界に入った敵全てを分裂し、追尾する矢でもって討ち滅ぼす。
 敵が数を頼みとしているのは、その巨大イモムシ型モンスターである。
 ならば、それらを全て排除することによって敵の強みを潰すことができる。幸いにして、他の猟兵たちも『ギガンウォーム』の排除に乗り出してくれているのだ。

「ならば、我等がなすことは歩哨たるモンスターを駆逐すること」
『疾き者』は次々と視線を戦場に巡らせる。
 射掛ける矢は雨のように降り注ぎ、『ギガンウォーム』たちを護るように存在する巨大イモムシ型モンスターたちを霧散させていくのだ。
「クエッ……クエー?」
「ぷきゅ!」
 共にある『霹靂』と『陰海月』も負けてはいない。

 彼らの思いもまた同様であろう。
「……本当に、強という日にはいりませんから」
 恋人たちの祭り。
 誰もが思いを伝え合う。時に破れることもあるかもしれない。繋がりが絶たれるかもしれない。
 けれど、それでも人々は己の想いを形に変えて贈る。
 誰かのために、と願った心は暖かなものをもたらすだろう。
 ならばこそ、『エリクシル』が成そうとしていたことを許すわけにはいかないのだ。
「馬に蹴られて……はは、そうですね。『霹靂』の後ろ足で蹴るのならば」
 確かにそうなるだろうと、『霹靂』の首を傾げる所作に『疾き者』は笑う。
 恋人たちの道を阻むもの。
『エリクシル』という不届き者を蹴飛ばす馬のごとく『霹靂』と共に『疾き者』は戦場を駆け抜け、次々とモンスターを駆逐していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリス・レイフィスト
足掻くか……だが、お前の都合で刈り取られた者は己の意志で次へと繋ぐ事を許されない。
故に……お前が次へ繋げようとするその行為を、私は認めるわけにはいかない。
……私はエリクシルを、そして、エリクシルに歪められた物を喰らう為に戻った。
「力を見せろ、棘(ソーン)。……喰らい尽くせ」
ユーベルコード、創世神の棘を使用し、棘を解き放つ。
そうして棘で大量の蟲共を貫き石化を施していく。数が多ければ時間もかかる。エンジェリックウイングの羽を飛ばしたり、アイスレイピアによる凍結攻撃も併用し、効率よく討伐していく。
……思惑は果たさせん、悉くを潰し切る。



 万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』が最期にもたらしたのは巨怪『ギガンウォーム』の群れであった。
 都市国家の外で蠢く巨大な影は、今はまだ『砂月楼閣シャルムーン』で今日という日を楽しむ人々の目に触れることはなかった。
 猟兵たちが秘密裏にこれらを駆逐しようとしているからだ。
「足掻くか……」
『おさなごころの君』が見せた最期の足掻き。
 その力の発露をみやり、ユーリス・レイフィスト(還れなかった男・f39756)は太刀を納める。

 次につなげるためなのだろう。
 ここで今すぐに願いの力を得ることができなくとも。
 シャルムーンデイにおいて人々が虐殺されたという悲劇さえ残れば、次なる『エリクシル』が人々の願いを叶えれば良い。
 結局、意思のなき瞳は、自分すらも捨て駒にしてみせたのだ。
「……だが、お前の都合で刈り取られた者は己の意思で次へと繋ぐことを許されない」
 そう、生命がなければ次に進むこともできない。
 次の機会などと言っていられない。
 生きてさえいれば、次が、と言えるだろう。慰めにもなるだろう。
 けれど、死んでしまえば。
 殺されてしまえば、次など無いのだ。ならばこそ、ユーリスは、『エリクシル』が次につなげようとすることを許せなかった。
「私は、認めるわけにはいかない……私は『エリクシル』を、そして、『エリクシル』に歪められたものを喰らう為に戻った」

 輝く瞳がユーベルコードを発露させる。
 己の周囲に渦巻く|棘《ソーン》が満ちていく。
「力を見せろ、|棘《ソーン》」
 みちるは創世神の棘(ソーン)。
 解き放つ力の奔流は物質組成を改ざんし、石化する超常なる力。一瞬で放たれた棘は、巨大な怪物である『ギガンウォーム』事態を石化していく。
 敵の数は多けれど、されど他の猟兵が歩哨の如きモンスターたちを一掃してくれている。

 大本たる『ギガンウォーム』さえ排除できるのならば、ユーリスのユーベルコードは彼らを石化し、砕くだろう。
「……喰らい尽くせ」
 己があるのは『エリクシル』を、彼らがもたらす災の全てを鏖殺することのみ。
 これを八つ当たりだというのならば、そのとおりだろう。
 だが、それでもいい。
 なにかにぶつけなければ遣る瀬無いのだ。
 悲しみも。
 苦しみも。 
 憎しみも。
 全てが己の身体を蝕む棘となるのならば、それは喜ぶべきものであろう。痛みは己の中にある無力感を切り刻んでくれる。

 手にしたレイピアの刺突の一撃が巨怪を仕留める。
 棘が巻き付き、石化していく巨体の上でユーリスは睥睨する。
「……思惑は果たさせはせん。悉くを潰し切る」
 一欠片とて存在させてはならない。
 それが終わりの始まり。
 遠大なる己の旅路の始まりでもあったのだ。故に、全てを弄ぶ歪んだ願望機が消えるときまで、ユーリスは歩みを止めることなく、その瞳に輝くユーベルコードの光をもって滅ぼし尽くさんと力を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

急なシリアスで誤魔化そうとしても、そうはいきませんよ!
さぁステラさん、その耳栓をパージです!

耳栓を引き抜こうとじりじり近づきつつ、一考。

あれ? 別にシリアスでもなかったかもです?
でも、とりあえず、演奏会はしないといけないですね!

って、え?
ステラさん以上にヤバいのなんて、宇宙崩壊レベルなんじゃ……?

言われて外を見てみれば、
たしかにヤバいですけど、ステラさんほどじゃないですよね?

え、えぇ……ステラさん、あれ食べるんですか?
食べるなら調理してみますけど、あとで『やーめた』はなしですよ?

ほどよく焼かれた芋虫を切り分け、
切ったときにでた液をシェイク風に注いで、ステラさんにサーブしますね。


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
あれ?戦場に全然|エイル様《主人様》の気配なくないですか?
導入で終わり?ほんとに?
ばかな……エイル様の秘密に迫る絶好のチャンスだというのに!
大きな芋虫に用はありません
私のエイル様を返せ!

くっ、誤魔化せませんか……(ルクス様の追求から)

ルクス様、後にしましょう
ちょっと周囲がヤバめです
誰がやべーメイドですか
リアルに外がヤバいタイプですから

しかし芋虫……ルクス様、料理人の出番では?
ささっとアレ料理できたりしません?
一応、上から爆撃して焼いておきますので
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態
【エールプティオー・プルウィア】でバッチリ焼きましょう
さぁ光の勇者の腕前見せていただきましょうか!



 万能の魔神『エリクシル』の最期の力によって招来された巨怪『ギガンウォーム』。
 その群れを見やり、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は首を傾げた。
「あれ? 戦場に全然|『エイル』様《主人様》の気配なくないですか? ほんとに? え、これで終わり?」
 ステラは動揺していた。
 もしかしたら、もしかしたらと思っていた。
 あわよくばとも思っていたし、そうであったらと思っていた。これはチャンスだと思っていたのだ。
 彼女が『主人様』と呼んで憚らない存在。
『エイル』という存在の秘密に迫るチャンスだと。
 けれど、彼女の前にあるのはイモムシである。でっかいイモムシ。

「ばかな……大きな芋虫には用はありません。私の『エイル』様を返せ!」
「いえ、急にシリアスで誤魔化そうとしても、そうはいきませんよ! さぁステラさん、その耳栓をパージです!」
 すっぽーんとステラの耳から引っこ抜かれるれぞなんするくすぷらぐいやー。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、その耳栓をぽいす、と荒野に投げ捨てた。
「くっ、誤魔化せませんか……」
 どうして誤魔化せると思ったのだろうか。
 というか別にシリアスでもなんでもなかった。普通にいつものステラだった。
「ええ、演奏会をしないといけないですね!」
「ルクス様、それは後にしましょう。周囲がヤバめです」
「やべーのはステラさんだけなので。それにステラさん以上にヤバいのなんて、宇宙崩壊レベルじゃないと」
 さらっとルクスのディスがステラの鋼のハートにぶつかって火花を散らす。

「誰がヤベーメイドですか。いえ、そうではなく。リアルに外がヤバいタイプですから」
 ほら、とステラが示す先にあったのは都市国家『砂月楼閣シャルムーン』に迫る巨怪『ギガンウォーム』と随伴するように溢れる巨大イモムシ型モンスターたちであった。
 その数は尋常ではなかった。
 あれだけの数と巨大さ。未だエンドブレイカー! 世界の荒野は人類にとって過酷そのものな環境なのだ。
 都市国家はそれらから身を守る城塞そのものでもあった。
 しかし、『エリクシル』は巨怪の蹂躙によって、己の目論見を叶えようとしている。

「確かにヤバいですけど、ステラさんほどじゃないですよね?」
 ルクスは、すん、としていた。 
 たしかに数はヤバい。大きさもヤバい。
 けれど、ルクスは知っている。本当にヤバいっていうのは、大きさや数なのではないのである。質なのである。
 答えはルクスの視線の先に揺れる紫の髪をしたメイドである。
「私を何と比べていらっしゃるので?」
「いえ。というか、本当にどうしましょう。ものすごく数は多いんですけど……」
「ささっとアレ料理できたりしません?」
 ステラは一応上空から爆撃して焼いたりすることはできますけど、と本気か冗談かわからないことを言う。
 冗談だよね?

 しかし、ルクスは若干引きつつも頷く。
「え、えぇ……ステラさん、あれ食べるんですか?」
 食べるのなら調理すること事態は難しくないとルクスは頷く。いや、やるんかい、と思わんでもない。
「でも、あとで『やーめた』はなしですよ?」 
 調理したのならば意地でも食べさせる。それがルクスの料理人の流儀。いや、勇者ですよね?
「ふっ、光の勇者の腕前を見せて頂きましょうか」
「師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)ですってば!」
 そういうところじゃないんだよなぁ、と誰かは思った。

 ステラは即座に飛空艇に変身し、空より天使核で生成したミサイルを『ギガンウォーム』へと爆撃していく。
 空よりの蹂躙に地を這うだけの『ギガンウォーム』が抵抗できるわけもない。
「天使核誘導弾です。逃げられるとは思わないことです」
 次々と投下されていくミサイル。
 都市国家の中では恋人たちがシャルムーンデイの花火かなと呑気に甘いひとときを味わっていることだろう。
 だが、それでいい。
 ステラとルクス、猟兵たちはそのためにこそ戦っているのだから。
「えっと、ほどよく焼かれた芋虫のステーキ。あと切った時に出た液をシェイカーにかけて……と! はい、ステラさん!」
 宙をしゃー!って滑るようにして巨大イモムシ型モンスターの体液をサーブしたグラスを飛んでいく。

 何処にってステラにである。
 飛空艇に変身したステラの甲板にサーブされた巨大イモムシ型モンスターの体液がびっしゃー! となる運命は言うまでもない。
 とぅーびーこんてぃにゅー――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
少し出遅れたけど
厄介な置き土産の対処に参加するよ
お祭りの日に相応しくないものだからね

結構な大きさだし
ガトリングガンの火力じゃ心もとないから
鉑帝竜に乗って戦うよ

分霊が乗り気になるような
見た目の相手では無いしね

邪神の聖域で使い魔と鉑帝竜を呼び出そう

おまかせくださいですよー

鉑帝竜に乗り込んだら飛行しながら砲撃
できるだけ敵に接近せずにレールガンで攻撃しよう

上方や側面から攻撃して
敵の注意を都市国家から逸らすように戦うよ

巨大なだけあって結構タフそうだね
こっちもUCを使用して確実に減らしていこう

兵装創造で無敵斬艦刀相当の絶対超硬剣を生成
攻撃力を5倍にし装甲を半分にするよ

生成した剣を咥えて突撃
首を刎ねていくよ



 万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』の最後の力によって招来された無数の巨怪『ギガンウォーム』。
 それはエンドブレイカー! 世界において未だ荒野が人類にとって過酷な環境であることを知らしめる威容であったことだろう。
 都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の内部に召喚されなかったことは不幸中の幸いであった。
「厄介な置き土産だね。こんなのお祭りの日に相応しくない」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は荒野に降り立ち、己の手にした携行式ガトリングガンを見やる。
 敵の大きさは凄まじいものであった。
 ガトリングガンの手数の大きさは頼もしくもあったが、しかしどう考えてもサイズ差は覆せるものではなかったのだ。
 ならばなんとするか。

 ここからが猟兵としての力の見せ所であった。
 晶の瞳がユーベルコードに輝く。
「さぁて、でかいの一発いってみようか」
 兵装創造(オルタナティブ・ウェポン)によって晶の手にあった携行式ガトリングガンが分解され、さらに周囲に在った無機物を分解しは追加し、再構成していく。
 晶の眼前に組み上げられたのは、鉑帝竜。
 希少金属で構成された鋼鉄の竜であった。
「分霊が乗り気になるような見た目の相手ではないしね。さあ、行こうか、鉑帝竜!」
 晶は使い魔を呼び出し、鋼鉄の竜に乗り込んで迫る『ギガンウォーム』を抑え込む。突進の一撃は、巨体であるが故に凄まじいものであった。

 鉑帝竜であってもパワー負けするような突進能力は脅威であったが、しかし晶の瞳はユーベルコードに輝く。
 レールガンの砲口が『ギガンウォーム』に向けられ、その電磁加速された砲弾が『ギガンウォーム』の巨体を貫く。
「大きいばかりじゃあね!」
 敵の注意を引き付けるように晶は屠った『ギガンウォーム』の巨体を荒野に投げ放ち、鉑帝竜の翼でもって飛翔する。
 あの巨体が都市国家に迫れば、それだけで人々はお祭り気分に冷水を浴びせかけられてしまう。この戦いは、お祭を楽しむ人々から隠すようにしなければならない。
 ならばこそ、晶は敢えて己に注意を引き付け、『ギガンウォーム』たちを都市国家から引き離しながら戦うのだ。

 空より放たれるレールガンの一撃を受けながら『ギガンウォーム』たちが迫る。
「巨体だけあってタフだね。なら!」
 レールガンでは止まらないと理解した晶は鉑帝竜を大地に下ろし、装甲をユーベルコードによって剣へと変性させていく。
 握りしめた剣の柄より伸びるのは超硬金属の剣。
 鋭さと強靭さを併せ持つ剣の輝きが『ギガンウォーム』たちをたじろがせることだろう。
 けれど、晶は止まらない。

「これで終わりにさせてもらうよ! こんなお祭りの日に君たちは来てちゃいけなかったんだ。いてもいけなかった」
 だから、ここで人知れず潰える運命なのだと晶は鉑帝竜の握りしめた超硬剣を振るう。
 斬撃の一撃が『ギガンウォーム』たちの首を刎ね落とし、その巨体を荒野に沈ませる。
 お祭りは今もつつがなく進んでいるだろうか。
「折角の日なんだ。水を差すことも、邪魔をすることも許さないよ」
 相手をしてほしいのならば、自分がしてあげるというように晶は鉑帝竜と共に戦場となった荒野を飛ぶ。

 どんな生命にだって願いはあるだろう。
 だからこそ、晶はそれを弄ぶ目論見を弄する存在を許さない。
「使い魔たちも頼んだよ!」
「おまかせくださいですよー」
 断ち切った『ギガンウォーム』の死骸を使い魔たちが石化していく。もとより、そこにあった石塊のように。
 戦いの痕跡すら残さぬように。
 だって、今日は恋人たちの日。なら、と晶は死骸であっても残してはならないと思うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルジェン・カーム
…エリクシル
嘗てその力で偉大なる勇者ラズワルドは死の|終焉《エンディング》から救われた
だが…やり方を間違えればラッドシティのような悲劇も齎した

そして今…こうして更にゆがみを加速させる
マスカレイド以上の脅威とは

だが…貴方方の齎す|終焉《エンディング》…破壊させて頂きます

【戦闘知識】
敵陣の陣形把握
【念動力・弾幕】
念動光弾を乱射して敵の動きを封じ
UC発動
【二回攻撃・空中戦・切断】
飛び回りながら襲い掛かり拳や斬撃
離れた敵も空気の断層を以て切り刻む
僕は集団を殲滅する技は苦手なんですよね
なので…殴らせて頂きます

一体一体丁寧に破壊し敵が居なくなるまで斬撃も断層も拳も止めはしない

…そろそろ範囲攻撃も考えないと



「……『エリクシル』。かつてその力で偉大なる勇者ラズワルドは死の|終焉《エンディング》から救われた」
 アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)は思う。
 結局のところ、力の使いようなのではないのかと。
 どれだけ強大な力でも、使い方を誤れば悲劇を生む。けれど、使い方によっては終焉すらも破壊することができる。
 けれど、人はいつだって間違えるものだ。
『エリクシル』が人の願いを歪めて叶えるように。
 嘗ての悲劇を思い起こす。
 都市国家、ラッドシティもそうであったように。それは歪みを加速させるものであった。

 あの忌まわしき仮面。
 マスカレイド以上の脅威と『エリクシル』がなるのならば。
「……貴方がたのもたらす|終焉《エンディング》……破壊させて頂きます」
 アルジェンは『砂月楼閣シャルムーン』の巨大な『爪』の切っ先から荒野を見下ろす。
 そこにあったのは『ギガンウォーム』の群れであった。
 万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』が最期の力を振り絞って招来した災厄。
 今もなお都市国家を滅ぼし、『エリクシル』亡き後も、その願いの力を高めるためだけに虐殺を敢行しようとしているのだ。

「風よ、世界を巡る風よ……我が武としてその力を示せ……」
 アルジェンの瞳がユーベルコードに輝く。
『爪』の頂上から荒野に飛び込むようにして戦場へと風を纏いながら放つ超高速の拳と蹴撃の連撃が『ギガンウォーム』の巨体へと叩き込まれる。
 巨体が浮くほどの連撃。
 放たれた光弾が『ギガンウォーム』たちの進撃を遅らせる。

 しかし、それだけでは彼らは止まらないだろう。
 何故ならば、巨怪であるからだ。その威容はあらゆるものを踏み潰し、蹂躙する。
 未だエンドブレイカー! 世界の荒野は人類にとって過酷そのものたる環境なのだ。『ギガンウォーム』は、その過酷な環境で存在する巨獣。
 故に止まらない。
「白虎門開門(ビャッコモンカイモン)!」
 アルジェンの蹴撃から、超音速で放たれる空気の断層による斬撃が『ギガンウォーム』の外皮を切り裂き、体液を雨のように降り注がせる。
 だが、それをアルジェンが浴びることはなかった。
 即座に高速飛翔し、手にした宝剣から放たれる斬撃が、体液の雨すら斬り裂いて両断してみせるのだ。

「……僕は集団を殲滅する技は苦手なんですよね。なので……」
 アルジェンは両断した『ギガンウォーム』の身体の上に降り立ち、迫る『ギガンウォーム』の群れを見据える。
 集団を相手取ることは苦手だと言った。
 だが、迫る敵が単一で来るというのならばアルジェンにとって恐れることはなかった。
「殴らせて頂きます」
 荒野より己を狙う『ギガンウォーム』たち。
 だが、その悉くをユーベルコードに輝く超高速の打撃、蹴撃、斬撃でもって屠り去っていく。
 息継ぎする暇すら与えられぬのは、一体どちらであっただろうか。
 アルジェンは最期の一体いなくなるその時まで拳と斬撃を振るうだろう。『ギガンウォーム』が逃げ出すことはない。
  ただ、前に進むことだけを成す巨獣を前に理性など必要ではないからだ。

 体液が雨のように降り注ぎ、アルジェンはしかして息を吐き出す。
「……そろそろ一度に多数を相手取る術も考えないと」
 そんな風に思う。
 今回は巨獣が相手だったからいい。 
 けれど、これが理性持ち得る複数であったのならば。
「数で圧殺されることもあるのかも」
 例え、どれだけの|終焉《エンディング》を壊してきたのだとしても、それでもまだアルジェンの戦いは終わらない。
 壊すべきもの。
 脅威を払うべき時。
 あらゆるものがアルジェンの歩みを止めさせないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュプリムント・メーベルナッハ
うわあ、巨獣があんなにいっぱい…。
あんなのが街に入ってきたら酷いコトになるし、なんとかして全部やっつけないとね。

昔だったら一人であれだけの数を相手するなんて無茶だったけど、今だったら大丈夫。
プリムの新しい力で、みんな纏めて焼き尽くしちゃうんだから!

森羅穢炎陣を発動、芋虫さん達を炎の迷路に閉じ込めて燃やしちゃうよ。
迷路は丈夫だから、鱗粉で爆破されても大丈夫。寧ろ鱗粉や出て来る蟲さんごと燃やしちゃえるよ。

プリムは迷路の出口近くで待ち構えて、出て来ようとした芋虫さんを呪蛇鎌で【切断】っ♪
この迷路に出口は無いんだよ、残念でした♪



「うわあ、巨獣があんなにいっぱい……」
 万能の魔神『エリクシル』たる『おさなごころの君』が最期に振り絞った力によって招来された巨怪『ギガンウォーム』の群れをシュプリムント・メーベルナッハ(穢死檻の巫女・f38888)は都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の中心に存在する巨大な『爪』の上から見下ろす。
 大地を耕すように荒野をのたうつ威容にシュプリムントは頭を振る。
 あれだけの巨体と数である。
 都市国家の内部にて招来されなかったことが、不幸中の幸いであることは言うまでもない。
「あんなのが街に入ってきたら酷いコトになるし、なんとかして全部やっつけないと」
 以前の彼女であったのならば、一人でアレだけの数を相手取ることなどできなかっただろう。
 無茶そのものであると思えた。

 けれど、今のシュプリムントは違う。
 今ならば大丈夫だとシュプリムントの中には絶望ではなく希望がある。
 エンドブレイカーは終焉を見て、破壊する力。
 だが、猟兵に、ユーベルコードに目覚めたシュプリムントは、その瞳を輝かせる。
「プリムの新しい力で、みんなまとめて焼き尽くしちゃうんだから!」
 煌めくは、森羅穢炎陣(フェールンフラメ・ゲフェングニス)。
 戦場となった荒野に生み出されるのは、呪いの森。
『ギガンウォーム』たちは困惑しただろう。
 周囲を見回してみても、何処もかしこも森。一面に広がる森。今まで荒野にあった己たちがどうして、と理解の及ばぬところもあっただろう。

 けれど、それ以上に脅威であったのは、呪いの炎であった。
 シュプリムントのユーベルコードは森に敵を閉じ込め、呪いの炎でもって全てを焼き滅ぼすもの。
 迫る炎に追い立てられながら『ギガンウォーム』たちは出口を目指して蠢く。
 されど、これは森でありながら迷路。
 惑う内に迫る呪いの炎によって巨体が燃えていくのだ。
「さりとて、ってやつだよね♪ 出口は一つ。そして、出口の前には」
 シュプリムントは大鎌を構え、這々の体で出口から飛び出した『ギガンウォーム』の首を一撃のもとに切断して見せる。
「プリムがいるんだから。この迷路に出口はないんだよ、残念でした♪」

 可愛らしく微笑みながら出口より這い出そうとする『ギガンウォーム』を次々と刈り取っていく。
 ここより先には行かせない。
 都市国家には近づかせない。
 恋人たちの祭りに思い通じ合わせる人々を害することを許さない。

 どれもがエンドブレイカーであった頃から変わらぬ思いであったことだろう。
 猟兵に覚醒したことによって、その力はさらなる拡大解釈を見せた。
 呪いの炎で包み込む森の迷宮も。
 手にした大鎌の斬撃も。
「全部、全部プリムがやったげるよ♪」
 迷路の中で燃えて尽きていく『ギガンウォーム』たち。鱗粉も巨大イモムシ型モンスターもシュプリムントのユーベルコードの前では意味をなさない。

 その残滓すら残さない。
 荒野にありて、都市国家に住まう人々に接近していたことすら知覚させない。
「もう逃げられないんだよ。そのまま燃え尽きちゃえ♪」
 シュプリムントは大鎌の刃にまとわりついた『ギガンウォーム』の体液を振るって飛ばし、迷路の入り口に背を向ける。
 彼女の視線の先にあったのは『砂月楼閣シャルムーン』。
 その巨大な『爪』の先に浮かぶようにして見上げる月にシュプリムントは、恋人たちの夜が素晴らしいものであることを願うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『都市国家の日常』

POW   :    街中をあちこち歩き回り、面白い物を見つける

SPD   :    露天市場や人々の集まる広場を訪れる

WIZ   :    街の伝統的な料理やお菓子を食べる

イラスト:純志

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 万能の魔神『エリクシル』、『おさなごころの君』が最期に招来した『ギガンウォーム』の群れは都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の人々に気が付かれる前に全て猟兵たちが打倒し得た。
 それは驚異的な戦いであったし、人知れず、と猟兵たちが戦ったが故であった。
 今日はシャルムーンデイ。
 恋人たちの祭りであり、想いを形にして伝え合う日でもある。
 荒野での戦いなど知らぬ人々は、多くが笑顔であった。共に寄り添う者がいるからかもしれないし、家族に日頃の感謝を伝えあって、暖かな気持ちに包まれているからかもしれない。

 そんな幸せな雰囲気漂う街中を猟兵たちは守れたことを誇りに思うかもしれない。
 本来なら猟兵たちの戦いはこれで終いだ。
 けれど、少しだけ。
 ほんの少しだけこの幸せな雰囲気の相伴を預かってもいいのではないだろうか。
 甘やかなチョコレートと云うなの宝物の香りが漂う『砂月楼閣シャルムーン』。その由来となったシャルムーン姫の名を関する都市国家の日々を猟兵たちは垣間見る――。
村崎・ゆかり
やれやれ、片付いたわね。アヤメ、出てらっしゃい。一緒にお祭を楽しもう。
腕を絡めて都市国家の中へと。

シャルムーンデイか。どこでも似たお祭はあるものねぇ。アヤメの故郷ではどうだった?
チョコフォンデュのお店もあるのね。チーズをチョコレートに付けて、お互い食べさせ合いましょうか。はい、あーん。

あんまり時間は無いってことだし、人の来ない裏路地へ入って、アヤメの唇を激しく貪って。ん、今回はここまで。後はゆりゆりや羅睺と楽しみましょ。
あたしだって、もう濡れてるんだから、アヤメも我慢なさいな。

さて、ナイアルテへのお土産も選ばなきゃね。チョコチップクッキーもらいましょう。
さ、早く帰ってさっきの続きをするわよ!



 荒野に沈んでいく巨怪の影。
 戦いの音はすでにもうない。荒野に広がるのは静けさだけだった。
 猟兵たちが望んだのは、今日という日の静寂。都市国家は多くの人々が喜びに似た感情を持って暖かな空気を生み出していた。
 その雰囲気を背に戦う者にこそ、背負うものの力が宿るというのならば、猟兵達にはそれが宿っていたのだろうと思える。

 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は息を吐き出す。
 万能の魔神『エリクシル』が齎したのは、願望を強めるためだけの策動。
 人の情念というものが強い願いを呼び起こすのならば、『エリクシル』はそれを求めるだろう。虐殺という悲劇によって願われる願いは、きっと強烈なものであっただろうから。
「やれやれ、片付いたわね。アヤメ、出ていらっしゃい」
「はい、お疲れ様でした。この後は?」
「せっかくだから、この都市国家の人たちと一緒にお祭りを楽しむっていうのもいいんじゃあないかしら?」
 アヤメはその言葉にゆかりの手を取って絡める。

 都市国家の中を見やれば、何処もかしこも甘い香りがしているように思える。
 なら、自分たちがこうしていたって咎める者はいないだろう。
「エンドブレイカーたちの居た世界ではバレンタインデーのことをシャルムーンデイっ言うそうね。まったくどこでも似たお祭りはあるものねぇ」
 アヤメの元いた世界にも存在しているのかもしれない。
 アックス&ウィザーズ世界には、この『砂月楼閣シャルムーン』と同じ名を持つ言葉の神が伝えられているのだから。
 まったくの無関係であるとも言えないし、もしかしたのならば、言葉の響きだけが同じであったということもありえるだろう。

「あっ、あのお店は面白そうですね。チョコが滝のようになっていますよ」
「ああ、チョコフォンデュって言うやつね。果物とかパンとかを串刺しにしてチョコレートをかけて食べるのよ」
「興味あります。こういうのって、こういう日ならではなんでしょうか?」
「UDCアースなんかには、こういうカフェもありそうよね。カフェーと言えばサクラミラージュかもしれないけれど」
 そんな風にして二人はチョコフォンデュのお店に入る。
 互いに食べさせ合ったり、チョコレートをかける具材のバイキングを覗いたりと、とても楽しい思い出が積み重なっていく。

 同時にその思い出は楽しいが故に重たく手放し難いものとなっていくだろう。
『エリクシル』が目をつけたのもわかる。
 もしも、と思う。
 もしも、今店を出て自分と指を絡めるようにして手をつなぐアヤメをゆかりが失ったのならば。
 自分は『エリクシル』に願わずにはいられるだろうか。
 それが歪めて叶えられると知っていながらも、手を伸ばしてしまうのではないだろうか。
 故に『エリクシル』は、今回のような事件をいくらでも繰り返すのだろう。

「考え事ですか?」

 その言葉にゆかりは、はっとするだろう。
 そして自分を覗き込む瞳の色も。また触れる距離にある吐息も。
 全部が得難いものであると思えるだろう。
 誰も咎めないのは、いつのまにか人気のない場所にアヤメによって誘導されていたからかもしれない。
 言葉を紡ぐよりも伝わるものがあるというのならば、今日という日は確かに言葉ではない宝物で持って思いを伝える日なのだろう。

 それを実感するとゆかりは微笑む。
「ええ。早く宿を取りたいって、そう思っただけよ」
 だから、ここから先は他の誰にも見せることのない時間なのだと笑ってゆかりはアヤメの手を引いて、言葉ならずとも伝わる思いと共にシャルムーンデイの夜を過ごすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

(くねくねトークは聞こえないふり)

シャルムーン……チョコレートな感じなんですね。
たまにはステラさんに贈ったりしてもいいでしょうか。

師匠なら大きさ勝負なんですが、
ステラさんは質で勝負が良さそうですね。

ここはカカオ豆からいっちゃいましょう!

と、すり鉢でごりごりカカオを擂っていたのですが。

闇になんて堕ちてないですよ!?
っていうか、わたし|師匠《魔女》に憧れてますし、
ごりごりしててもおかしくないといいますか……。

あれ? 勇者? あ、そうでした。忘れてました!

で、でもせっかくのシャルムーンですし、
勇者がチョコ作ったっていいじゃないですか!

ス、ステラさんのために作ったんじゃないんだからね!


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
うう、汚れちゃったもうお嫁に行けない
これはルクス様に責任を持ってもらわないと
エイル様を探し出して私とエイル様が仲睦まじく暮らせる段取りをしていただかないと!!
あの、スルーはやめていただけますか?

ふむ、やはりこういう場はルクス様の独壇場ですね
えっ?私に?
ルクス様?毒盛ったりとかしませんよね?
いえ、チョコ作りの光景があまりにも
闇の勇者でしたので……
ちょっとびっくりしまして
いや、忘れるものですか?

まぁ確かにシャルムーンデイですから
そんなこともあってもいいかもしれません

……は?(ルクス様のツンデレに)
そういうことしてるとアゴクイしますよ?
『私好みのチョコになってるじゃないですか?』



 聞こえないったら聞こえないのである。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、そういうふりをしていた。
 馬耳東風。
 それを気取ることができたのならば、本当に良かった。
 なんでそんなふうに振る舞っているかというと、別に巨大イモムシ型モンスターの体液をサーブした結果、飛空艇に変身したステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の甲板が汚れに汚れてしまった責任を感じているから……とかだったりしたのかもしれない。
「うう汚れちゃったもうお嫁に行けないこれはルクス様に責任を持ってもらわないと『エイル』様を探し出して私と『エイル』様が仲睦まじく暮らせる段取りをしていただかないと!!」
 一息にステラは言っていた。
 正直に言うと、それは無理な話ではないかとルクスは思った。
 くねくねと身を捩らせるステラをルクスは見ないふりをしていた。

 目があったら確実に言葉にしたことを実行に移さないと承知しないという圧を感じたからである。
 だからこそ、ルクスは守った都市国家『砂月楼閣シャルムーン』を見やる。
 今日は恋人たちの祭り『シャルムーンデイ』である。穏やかな雰囲気が街中にあふれている。
「シャルムーンデイ……チョコレートな感じなんですね。ふむ」
 シャルムーンデイは取り分けて男女の仲を取り持つだけの行事ではない。想いを形にして贈るという行為こそが尊ばれるのだ。
 ならばこそ、ルクスは思う。
 チョコレートを作るのならば、と頭に思い浮かんだ魔女の顔。
 彼女ならば大きさが勝負である。なにせ大きければ大きいほど喜んでくれるだろうから。なら、ステラならどうだろうか。
 質だろうか?
「なら、ここはカカオ豆からいっちゃいましょう!」

 ルクスが手に取ったのは薬研である。
 車輪の形をしたそれを手にとって、ルクスはカカオ豆をゴリゴリし始めたのだ。その間、ステラは放置である。
「あの、スルーはやめていただけますか?」
 ステラはくねくねをやめる。
 ちょっと飽きたとも言えるかもしれない。なんかルクスがチョコレートを作ろうとしていることはわかる。
 こういう時、ルクスは本格的に鳴るのだ。
 そして、得てして彼女の独壇場である。如何にデキるメイドであっても、こういうことに関しては万遍なくできる者と、一点特化した者とでは確実に差が出るものである。
「ルクス様? 毒盛ったりとかしませんよね?」

 なんとなく思う。
 薬研でごりごりしている姿はルクスが憧れている魔女そのものであったからだ。
 それとなく怪しい雰囲気も醸し抱いているようにさえ思えてしまうのだ。
「えっ!? なんでですか!?」
「いえ、チョコ作りの光景があまりにも闇の勇者でしたので……」
「風評被害がすぎませんか!? 闇に堕ちてないですよ!?」
 ルクスは心外だと言う。
 しかし、どう見ても……とステラは思った。ゴリゴリやる姿はマジで魔女であったからだ。

「っていう、わたし|師匠《魔女》にあこがれてますし、ごりごりしていてもおかしkないといいますか……」
 チョコを作る工程はたしかに魔女っぽいかもしれない。
 カカオをゴリゴリして、煮て、かき混ぜる。
「闇の勇者……色味的にも」
「あれ? 勇者? あ、そうでした。わすれてました!」
「忘れるものですか? そういうの」
 勇者である自覚。
 そういうのって普通忘れないものである。魔女の憧れている以上、なんとも言い難いのである。
 けれど、ルクスは思う。

「で、でもせっかくのシャルムーんですし、勇者がチョコを作ったっていいじゃないですか! す、ステラさんのために作ったんじゃないんだからね!」
 テンプレである。
 しかし、そのテンプレがステラの胸に刺さるのである。
「は?」
 その、は? はどっちの意味だろうか。ポジティヴ? ネガティヴ?
 答えは簡単である。

 ステラの指がルクスの顎をくいっと持ち上げる。
「そういうことしてるとアゴクイしますよ?『私好みのチョコになってるじゃないですか?」
「お生憎様です! これは別に質を優先してカカオからゴリゴリしてるわけじゃないんですから!」
 ふーん、おもしれー勇者。
 このままではステラがオラオラ系メイドになってしまう!
 いや、もとからそんな感じがしていた。
 押しかけメイドしたり、主人様認定したり。
 思い当たる節はいっぱいあったのである!

 ステルクの明日はどっちだ――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルジェン・カーム
UC発動
(肩の鴉がメイド服の黒髪赤目の男の娘に!
「ありがとうアルジェン!やっぱり人型はいいなー♪」
どう致しまして。ぷっさんもシャルムーンのお祭りを楽しんでいただこうと思いまして
「この世界ではバレンタインをそういう風に言うんだねー?いや…いろんな世界で同じ風習がある事の方が凄いのかもね」
ええ…僕からすれば他世界でもシャルムーンと同じ風習がある事の方が驚きでしたしね

という訳で幾つかチョコを物色しましょうか
家族のお土産にもいいですしね
「僕もメルクリウスにあげようかな!その後バラバラにして冥界の各名所に飾るのもいいな…うふふふふ」
…神の愛とは恐ろしいものですね(遠い目をしつつチョコの試食



 アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)の肩に止まっていた鴉がユーベルコードの輝きと共に都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の大地に下りる。
「ありがとうアルジェン! やっぱり人型はいいなー♪」
 メイド服に見を包んだ黒髪赤目の少女とも見紛う姿となったのは、冥皇神機『プルートー』であった。
「どういたしまして。ぷっさんもシャルームのお祭を楽しんでいただこうと思いまして」
 アルジェンにぷっさんと呼ばれた『プルートー』が頷く。
 エンドブレイカー! 世界の都市国家は荒野に住まう巨獣から人類が身を護るための生活圏である。

 今日という日は、かつて言葉を発することを禁じられたシャルムーン姫が想いを伝えるためにチョコレートを贈ったことに由来している。
 思いを伝えるために言葉ではなく品物で。
 それは奥ゆかしいと捉えるべきものであったかもしれないし、遠回りな気持ちの伝え方であるとも思えたかもしれない。
「この世界ではバレンタインをそういうふうにいうんだねー?」
『プルートー』にとっては、他の世界を知っているだけに名前を変えただけに過ぎないのかもしれない。
 けれど、人が生きて、そこに営みがあるのならば同じような催しが生まれるのもまた興味深いものであった。

「いや……いろんな世界で同じ風習があることのほうが凄いのかもね」
「ええ……僕からすれば他世界でもシャルムーンと同じ風習があることの方が驚きでしたね」
 アルジェンは見慣れた風景に笑む。
 今日という日はいつになく人々が浮かれている。
 当然と言えば当然だろう。
 一年間つのらせた想いが結実する日でもあるのだから。
 答えが如何なるものであっても、そこに至る道程はいつだって甘酸っぱくも苦く、そして甘やかな日々であるはずだからだ。
「というわけで幾つかチョコを物色しましょうか」
「へぇ、自分で作るんじゃないんだ?」
「この日のためにパティシエ……特にショコラティエは腕によりをかけますからね。力の入りようというのも違うはずです」
 そうした力作を家族への土産にするのも悪くはない。

 誰かの喜ぶ顔がみたいと願うのは良いことだと『プルートー』は頷く。
「僕も『メルクリウス』にあげようかな! その後バラバラにして明快の各名所に飾るのもいいな……うふふふふ」
 何か物騒なことをつぶやいているメイド男の娘。
 そんな彼を横目にあるジェンは苦笑いというか、遠い目をしてしまう。
「神の愛とは恐ろしいものですね」
 自分には及びもつかぬところであろうけれど。
 それでもアルジェンはショコラトリーの試食チョコレートを摘む。

 カカオの香りが際立つようだ。
 それに甘い香りも。
 この特別な日に、特別な贈り物で想いを伝えようとした嘗てのシャルムーン姫もまた同じ思いであったのかもしれない。
 愛という愛に溺れることも。
 恋という熱にうなされることも。
 どれもが特別なこと。思いは形に。されど、込めた想いが伝わることが恐ろしくも願いたくもあり。

 故に、今日という日は、遠き時を超えて今もなお紡がれる。
 それをアルジェンは口の中に広がる甘やかさと共に感じ、物騒なことを言っている『プルートー』をたしなめながら、いくつかのチョコレートを購入するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュプリムント・メーベルナッハ
そー言えば、一番上のお姉ちゃんが言ってたっけ。
お姫様にチョコ贈られた勇者さん、いまいちわかってなかったらしいとかなんとか。

それはさておき!
エリクシルもやっつけたし、プリムもお祭りめいっぱい楽しんでくよー♪

あっちこっち見て回って、美味しそうなチョコ菓子を色々食べて回るよー。
甘さの強いヤツを優先的に。
どれも美味しくて、いくらでも食べちゃえそうだよー♪

一通り食べたら、一番美味しかったヤツを買ってお持ち帰りしようかと。
プリムのお嫁さんと一緒に食べるんだー♪
えへへ、喜んでくれればいいなぁ…♪



 言葉を発せぬ姫が想いを形にする。
 恋心を込める品物は何が良いかと。この焦がれるように切なく甘い想いを伝える品物は、宝物のように甘やかなものがいい。
 宝石のようなチョコレート。
 己の想いを込めた甘い菓子は、きっと彼の口の中で溶けて伝わってくれるだろうか。

『砂月楼閣シャルムーン』の名の由来になったであろう勇者シャルムーン姫。
 彼女にちなんだ日であるシャルムーンデイをつつがなく送る人々を見やり、シュプリムント・メーベルナッハ(穢死檻の巫女・f38888)は嘗ての戦いの折に一番上の姉から聞いた言葉を思い出す。
「お姫様にチョコを贈られた勇者さん、いまいちわかってなかったらしいとかなんとか……」
 それが本当なのならば、恋とは難しいものである。
 言葉で伝えても伝わりきらぬ想い。
 例え、品物に変えても伝える事は難しかったのかもしれない。それだけ抱えた想いが大きすぎたとも言えるだろう。
 だから、とシュプリムントは思う。
 言葉だけでも、品物だけでも想いは伝わらないのだ。

 言葉と品物。行動と意思。
 それらが伴えばこそ、正しく人は理解し合うことができるのではないかと。
 そんな事を考えながら『エリクシル』から守り抜いた街中を彼女は歩く。今日はお祭だ。恋人たちの祭り。
 シャルムーンデイ。
 街中は何処もかしこも甘い香りが満ちている。
 戦いは終わったのだから、めいっぱい楽しんだって罰は当たらないだろう。
「あー♪あっちにも美味しっそうなのいっぱいあるー♪」
 シュプリムントは跳ねるように街路を歩く。
 ショコラトリーに並ぶのは、ショコラティエが腕によりをかけた一品ばかりだ。

 形も様々。
 色もとりどり。
「ちょっと試食っていーい?」
「ええ、構いませんよ。せっかくのシャルムーンデイですから。納得行くものを選びたいですよね」
 ショコラトリーの店員が微笑んでいる。
 シュプリムントが無邪気にチョコに目を輝かせているせいもあるのかもしれない。
 それほどまでにシュプリムントの笑顔は良いものであった。
 なにせ、今の彼女の中には最も大切なお嫁さんの顔が浮かんでいるのだ。ならばこそ、とっておきの甘いチョコレートを選びたいと思う。

「うーん♪ どれも美味しくて、いくらでも食べちゃえそうだよー♪」
「お褒めに預かり光栄です。こちらなどどうでしょう?」
 シュプリムントはあんまりにも美味しいものだから、どれが一つなんてとても選べないと嬉しい困り方をしている。
 一通り試食させてもらった上に悩んでしまうのは、ショコラティエ冥利に尽きるというものだろう。
「うーん、うーん……じゃあ、こっち、かなぁ……でも、こっちも……」
「ふふ、贈り物ですよね? ラッピングはどうなさいます?」
「あー! そういうのもあるよねぇ♪ 可愛いのがいいなぁ……」
 お嫁さんと一緒に食べるものなのだ。
 味もこだわりたいけれど、包装にもこだわりたい。

 お嫁さんが喜んでくれたら一番嬉しい。
 あの笑顔を見ることができたら嬉しくって飛び跳ねてしまうだろう。だから、シュプリムントは抱えた特別な包装紙を胸に抱えてショコラトリーを出る。
 弾む足音は幸せへのカウントダウン。
「えへへ、喜んでくれればいいなぁ……♪」
 不安もある。
 けれど、それ以上の胸の高鳴りがある。喜ぶ顔。ほころぶ顔。弾けるような笑顔。
 どれもがシュプリムントにとっては大切なもので、得難い宝物。
 だから、シュプリムントは微笑みながら帰り路を駆けていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリス・レイフィスト
シャルムーンデイの喧騒に背を向ける。私が戦ったのはこれを守る為では無かった。

遠き日を回想する。
……俺もあいつも、日々の修練は欠かさなかった。あの日途切れる事が無ければ、荒野を旅する未来もあったのだろうか。
いや、恐らくはあの小さな世界で、単調な--しかし、満ち足りた日々を送っていただろう。
失った物に目を向けて生きるのは愚かだ、分かっている。しかし……私はその精算すら果たす事が出来なかった。
右手の傷が疼く……今日のこの街の喧騒は特に息苦しい。



 都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の街中に溢れる穏やかな雰囲気は万華鏡のようにユーリス・レイフィスト(還れなかった男・f39756)の視界を彩り、思わず彼は目を背けていた。
 喧騒が背中に突き刺さるように感じたのは、自分の後ろめたさがあったせいかもしれない。
 なぜなら、自分が戦ったのは八つ当たりだったからだ。
 万能の魔神『エリクシル』。
 願いを歪めて叶える願望を求める魔神。
 それがもたらす災厄をユーリスは知っている。
 だから、彼は喧騒に背を向けた。
「私が戦ったのは、これを守るためではなかった」

 瞳を閉じる。
 街の穏やかな光景から目を背けるように、まぶたを貫いて来ないで欲しいと願ったかもしれない。
 けれど、まぶたを閉じれば、その暗闇の中に映し出されるのは遠き日。
 彼女も自分も日々の鍛錬は欠かさなかった。
 とある街の、とある自警団。
 平々凡々と言えばそれまでであっただろうが、すくなくとも自分は満たされていたのだ。あの日々は退屈だったかもしれないけれど。
 それでも、得難いものであると今ならば思える。
 もしも、と思う。

「ねえ、この先って何があるのだと思う?」
 その言葉にユーリスは答えた。
 荒野があると。巨獣がひしめく危険な荒野があると。けれど、人はただ囲われた中にあるだけのものではない。
 彼女は願っただろうか。
 荒野の旅を。
 次なる新天地を求める旅を。
 それはもうわからない。もしかしたら、いや、おそらくはあの小さな街の中、世界の中で単調な――。

「しかし、満ち足りた日々を送っていたことだろう」
 瞼を開ける。
 光が飛び込んでくる。けれど、眩い輝きは暗闇と同じだ。白か黒かの違いしかない。
 くらむ視界にユーリスは頭を振る。
 これは愚かなことだと分かっている。

 己の手の中から零れ落ちたものを、失ったものに目を向けて生きるのは愚かだ。
「わかっている」
 けれど、人は精算して生きていくしかない。
 どれだけ失っても、どれだけ奪われても、どれだけ苦しんでも。
 谷と山があるように。乗り越えていかなければならない。どれだけの懊悩があるのだとしても、目の前に横たわるそれを越えなければいけない。

 それを清算と呼ぶのならば、そうなのだろう。
 けれど、ユーリスはできなかった。清算すら果たすことができなかった。
 右手の傷が痛む。疼くと言っても良い。
 ユーリスは歩く。
 一歩が重たい。人々の穏やかさを害したいという思いはない。だが、守れてよかった、とも今は思わない。
 ただ、見果てぬ悪夢を見ているような気分だった。
 溺れるように歩むしかない。

 銀色の髪が風に揺れる。瞳は滲むか。それとも。
「……息苦しい」
 喘ぐようにユーリスは街中を立ち去る。
 穏やかな日々があったからこそ、喪失の日々が重くのしかかる。己の喉を押しつぶさんばかりに、迫る……それが何であるのかを知るのは己自身。
 故に。
 ユーリスは己を穏やかさから遠ざけ続ける。
 瞼に浮かぶ、彼女の顔は如何なるか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月が興味を隠せずにいますねー…。
霹靂は…なぎ倒さないように影に入りましたか。

さてー、まあ一端に触れましょうかねー。というわけで、陰海月と一緒に散策。
歩いてましたら(その間に、陰海月にチョコ菓子買ってる)…プレーンクッキーとチョコクッキーの詰め合わせなるものが。
これならば、霹靂も食べられるでしょうねー。

家に帰ったら、二匹に内緒で作ってあるお菓子と一緒に出しましょう。
喜んでくれますかねー。


陰海月「ぷきゅ!」
素敵なお祭り!チョコもいっぱい!
霹靂「クエ…」
チョコは苦手。でも、祭りは気になる!



 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の影の中で、巨大クラゲ『陰海月』がソワソワしている気配を『疾き者』は感じていた。
 万能の魔神『エリクシル』が齎した戦いは、都市国家『砂月楼閣シャルムーン』の人々に知られることなく終えることができた。
 自分たちが守った恋人たちの祭りを少し見物していこうと思うのは、少しばかりの報酬であったことだろう。
「さてー……出ておいでなさい、『陰海月』」
 ヒポグリフである『霹靂』は大きな体で街中のものをなぎ倒さないように影に戻ったが、『陰海月』は違った。
 招かれるように飛び出した『陰海月』の様子は言うまでもない。

 ワクワクしているように巨体がたわんでいる。
「まあ一端に触れましょうかねー」
 触腕がむん、と力こぶを作って見せる。
 意気込み、というやつだろうか。
『砂月楼閣シャルムーン』の街中は何処もかしこも甘い香りが満ちている。今日という楽しもうという人々の想いがあふれているように思えたし、また恋人たちが寄り添うことによって生み出される甘やかな雰囲気が、伝播しているようでもあったのだ。
「ぷっきゅ」
 あっちこっち、と『陰海月』は目をか輝かせるように撓みつづけている。
 物珍しいのもあるのだろう。

 なにせ異世界の風習だ。
 バレンタインデーのように似たような風習であるし、馴染みもある。
「おや、これならば『霹靂』も食べられるでしょうねー」
『疾き者』はショコラトリーの一角にあったクッキーの詰め合わせを見やる。『陰海月』にはチョコ菓子を買い与えているが、影の中にある『霹靂』にもおすそ分けが必要だろうと思ったのだ。
「ぷっきゅ! ぷっきゅ!」
 美味しい! と喜ぶ声色を弾ませる『陰海月』に『疾き者』は笑む。
 満足してもらえただろうか。
 頷くように動く姿に、家路につく。やけにあっさりしているなと『陰海月』は思ったことだろう。
 いつもならば、あれもこれもってなるところだったのに、と思う。
 基本的に彼らは『陰海月』と『霹靂』に甘い。

 祖父母が孫を甘やかすのと同じだ。
 けれど、『陰海月』と『霹靂』は知ることになる。
「さあ、お食べ。実は作っておいたのですよー」
 二匹の前に広がるのは、バレンタインdデー仕様の多くのお菓子。『砂月楼閣シャルムーン』で買っていたクッキーと一緒に出されたお菓子の山に二匹は目を輝かせる。
「ぷきゅ!」
 シャルムーンデイもバレンタインデーもなんて素敵なお祭なのだろう! チョコがいっぱいだと嬉しくなってしまう。
 多分、この後ダイエットに追われることになるのだろうけど、今は!
「クエっ」
『霹靂』はチョコが苦手だ。けれど、友人が喜んでいるのは嬉しい。それにクッキーなら自分も食べられる。

 お祭気分はいつだってよいものだ。
 人が楽しんでいる笑顔を見ることが好きだ。それは自分でなくても心が豊かになるであろうか。
 そして、何より、そんな自分たちを見守る『疾き者』たちの視線が柔らかくなるのが良い。
 悪霊であっても、それでもなお宿るものがある。
 人はそれに名前をつけるだろう。
 それぞれの想いがあるように。けれど、と思うのだ。無理に名前をつけなくてもいいのだと。結局、名前は言葉でしかない。
 感じ取れることのほうが余程真実に近い。
 だから『霹靂』はひと鳴きして伝えるのだ。

 言葉なくとも通じる想いを。
 嬉しい、というその想いを乗せて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月18日


挿絵イラスト