第二次聖杯戦争㉑〜編笠、再び
……運命とは数奇なものだとコンキスタドール『編笠』は思う。
よもや、『再孵化』にもよらずまたしても
彼らとまみえることになろうとは……人生何が起こるかわからないものだ。
「それで、私はどうすれば良いのだいご同輩?」
編笠は自分を呼び出した閻魔王を名乗る存在に煙管を吹かしながら尋ねた。
「戦え」
「ふむ、なるほど」
「これを」
渡されたものを見て、編笠は「ほう」と言った。
閻魔王が懐から取り出したのは、かつて彼女が使っていた改造モーゼル銃。きちんと弾が入っている。もちろん予備の弾倉も。
「ちょいと読めない御仁だが、骸の海から染み出したとあっちゃあ似た者同士さ。ここで呼ばれたのも何かの縁。ひと暴れさせてもらうとしようかね」
「今度はコンキスタドール『編笠』だそうだよ」
仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)が告げるのは、封神武侠界で戦争があった際に『異門同胞』のユーベルコードによって参戦した香港租界を束ねる主の名前。
「かつて金沢大学の工学部があったという小立野に『
闇の大穴』を開き、漆黒の闇の中へ沈めた閻魔王『生と死を分かつ者』。キリング・フィールドの中央にたたずみ、侵入者を迎え撃つために懐から取り出した過去の存在がこのコンキスタドール『編笠』だ」
閻魔王がこちらを牽制する間、編笠は戦場を自由に動き回って君たちを翻弄しようとするだろう。折しもこの領域内では時間の概念が入り乱れ『人類の過去から未来の全てが混ざったような町並み』が乱立する異界と化している。
「編笠はそこをホームグラウンドの香港租界に見立て、アクロバティックな動きで駆け巡る。紫煙の龍や配下のマフィアを召喚し、改造モーゼル銃を撃ち放し、隙あらば奇襲を仕掛けるつもりだよ。しかもユーベルコードはどちらも先制となれば強敵なのは言うまでもない」
相手が地の利を得るならば、対策としては2種類が考えられる。
「こちらも同じく周囲の状況を利用するか、あるいは相手の地の利を奪うか。なにしろ『人類の過去から未来の全てが混ざったような町並み』だからね。それこそ香港租界のような摩天楼から各地の遺跡、果てはSFに出てくるようなタワーやコロニーまで見つかるかもしれない」
つまり、それは。
「混沌。でたらめな街並みを味方につけ閻魔王と編笠に打ち勝て、ということ。そういえば閻魔王は皆の戦ぶりを見て何やら『学ぶ』素振りをみせるらしい。もし武器や技に興味を示して何か聞いてきたら教えてみるのもいいかもね。それが、いったい何のためなのか注意を払う余裕はないかもしれないけれど……」
ツヅキ
プレイングを送れる間は常時受付中です。
執筆のタイミングによっては早めに締め切られる場合があります。
●第1章
『
闇の大穴』の中で閻魔王と彼が呼び出したコンキスタドール『編笠』の2人が立ちはだかります。
閻魔王と召喚オブリビオンの「先制ユーベルコード」に、両方とも対処するとプレイングボーナスです。
コンキスタドール『編笠』についてはこちらのシナリオをご参照ください。
シナリオ『殲神封神大戦⑰〜ネオンと黒猫Ex(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=40505)』
POW : 紫煙龍降臨
自身の【煙管の煙から具現化した「紫煙龍」】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[煙管の煙から具現化した「紫煙龍」]から何度でも発動できる。
SPD : 拳銃挽歌
【改造モーゼル銃】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無数の銃弾】」を放ち、ダメージと【大量出血】の状態異常を与える。
WIZ : 「今だ、私の家族(マイ・ファミリー)!」
【編笠の命令】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【香港マフィア】で囲まれた内部に【銃弾の雨】を落とし、極大ダメージを与える。
第1章 ボス戦
『生と死を分かつもの』
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POW : テンタクル・ボーダー
戦場全体に【無数の触手】を発生させる。レベル分後まで、敵は【死の境界たる触手】の攻撃を、味方は【生の境界たる触手】の回復を受け続ける。
SPD : キリングホール
レベルm半径内に【『死』の渦】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 閻魔浄玻璃鏡
対象への質問と共に、【無数の触手の中】から【浄玻璃鏡】を召喚する。満足な答えを得るまで、浄玻璃鏡は対象を【裁きの光】で攻撃する。
👑11
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飛・千雨
バルタンさん(f30809)と連携。
アドリブ歓迎。
よもや、再び湧き出てこようとは……。
コンキスタドールのしぶとさには、怒りを通り越して呆れてしまいますね。
ですが、こうして湧いてきたというのであれば。
何度でも討ち果たさせていただきます。
拳銃挽歌にキリングホール。
どちらも広範囲への攻撃を行うUC。
ならば、弾幕の中に紛れることで目立つことなく潜めるでしょう。
縦断は藤甲盾を随行させて防ぎ、『死』の渦に飲まれるよう見せかけて低空飛行で町の中を飛び回ります。
反撃は、バルタンさんのUC展開に合わせて。
偽物の九龍城砦が生じ、彼奴等の感覚が奪われた直後にオーバーロード!
全身の偽神細胞を活性化させ、沸き立ち暴れる力を解放する!
「神器変形!」
木鹿振鈴を掲げ、吹き荒れるオブリビオン・ストームを放射し続ける!
触手が蠢こうと! 物陰に潜もうと!
この領域、この戦場にいるならば片っ端からまとめてぶっ飛ばす!
オレの力が気になるか、閻魔王?
これは、コンキスタドール共によって埋め込まれた力だ!
てめぇに恨みはないが諸共死ねぇ!
バルタン・ノーヴェ
千雨殿(f32933)と連携!
アドリブ歓迎デース!
HAHAHA!
編笠との再びバトル! 久しぶりデスネー!
アナタのデータはとても便利デース、サンキュー!
それでは千雨殿と連携して挑みマショー!
懐かしの紫煙龍!
当たればコピーされマスガ、当たらなければ問題はありマセーン!
しかし今回は無数の触手が蠢いているので回避がしづらいというコラボレーション!
以前より気を付けて滑走靴で回避して、触手はファルシオンで受け流し!
反撃のチャンスを狙い定めて……オーバーロード!
編笠を模した装束に転じて、披露しマショー、編笠の力を!
「骸式兵装展開、笠の番!」
香港租界を九龍城砦の複製で覆い、編笠と触手たちの感知能力を奪いマース!
これで地の利は我輩たちのものとなる!
閻魔王もよく見ることはできないデショー!
それでも何か気になることはありマスカナ?
聞こえていればの話デスガ!
あとはゆっくりとアタック!
千雨殿の激しい攻撃の中、暗躍しマース!
触手を火炎放射器で焼き、編笠をグレネードランチャーで吹き飛ばしマース!
再見!
――
闇の大穴の内部は人類が歩んだ歴史の大博覧会だとでもいうかのようだ。スペクタクルな光景の中へ飛・千雨(偽神宝貝の使い手・f32933)、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の両名を引き込んでゆく。
「HAHAHA! 久しぶりデスネー、編笠!」
「へぇ、敵でも名前を覚えてくれてるってのは嬉しいもんだね」
「アナタのデータはとても便利デース、サンキュー!」
「……ははッ、現金なヤツは嫌いじゃないよ。私から奪ったその技とくと見せてもらおうじゃないか」
編笠は高らかに笑い、そびえ立つ寺社仏閣の塔からアジア風の遺跡へと走り去ってゆく。コンキスタドールらしいしぶとさ、坦懐な性格には千雨ですら怒りを通り越して呆れてしまうほど。
「よもや、ですね。これもまた何かの縁なのでしょうが……」
「いきマスカ、千雨殿?」
「はい、バルタンさんと一緒なら心強いですね」
長柄に取り付けた鈴が、ちりんと鳴った。
まるで覚悟を示すみたいに。
幾度蘇ろうと、何度でも討ち果たす――という、決意が千雨の瞳を鮮烈な戦意となって彩った。それが戦いの幕を上げる合図。
此度の邂逅を制するのはどちらだ?
――編笠vsバルタン&千雨、
戦闘開始!!
暗闇の助力を得て威力を増した死の渦と大量の銃弾は千雨から逃げ場を奪うかのように圧倒的な物量をもって襲いかかる。
まともに戦えばこちらが不利なのは目に見えていた。
千雨はゆえに相手の力を利用する。
浮遊する藤甲盾で直撃を躱しながら弾幕に紛れ、建物にほど近い低空を飛び回った。相手からすれば死の渦に飲まれていったように見えたかもしれない。
「やったのか?」
だが、編笠の声色には疑惑が滲んだ。
「あの猟兵がこんな簡単にやられてくれるわけはないね。おそらく、どこかに潜んでいる。ふふ、やってくれるじゃないか」
煙管の紫煙が漂い、龍の形をとって滑空するバルタンを追跡。
おどけたように笑ったバルタンはファルシオンを抜き払い、滑空靴を自在に操って戦場の空を舞った。
「コピーされるのは勘弁でありますな! ただし、当たらなければ
無問題デース!!」
今回は闇の大穴を舞台に蠢く触手がバルタンを阻むという
高難易度のステージ。それでもバルタンは挑んだ。ファルシオンで触手を受け流しながら、滑空靴を慎重に操って紫煙龍の狙いを定めさせない。
どこかの国の塔をぐるりと一周しながら、紫煙龍は一心不乱にバルタンを追いかけた。大きく開いた顎がついに届くと思われたその時、バルタンのオーバーロードが発動。
「骸式兵装展開、笠の番!」
――編笠に黒眼鏡、中華装束という
彼女を模した衣装に身を包んだバルタンは一瞬にして周囲の環境を香港租界は九龍城砦の街並みへと変えてしまった。
「なに?」
これには編笠も面食らい、うっかりそのままどこかの屋根へ着地してしまう。自分の慣れ親しんだ
街であることが油断を招いたのかもしれない。
よもや、その香港摩天楼が触れたものから視聴嗅覚での感知能力を吸収してしまうという効果を持つとは知らずに。
「しまッ……」
こうして編笠は音すらない暗闇の世界に閉じ込められたも同然となった。
「ほほう」
闇と親和性の高い閻魔王はそれすらも楽しんでいるかのようだが、敵を感知できないことには変わらない。なにより、これでは彼のもうひとつの目的は果たせまい。
「見えぬ、聞こえぬ……」
ひどく残念そうに閻魔王が言った。
「これで地の利は我輩たちのもの! 閻魔王、これでも何か学んで帰れることはありますかな? もっとも、聞こえていればの話デスガ!」
編笠は動けない。
閻魔王は何を考えているのか相変わらずわからない顔で触手を蠢かせている。
「いやはや、見事に何もわからぬ」
「やるじゃないか猟兵」
彼女らが舌を巻いている間、千雨は全身の偽神細胞をフル活性しながら両者を見据えた。オーバーロードによって内部から沸き立ち暴れ狂う力を――ここへ。
「神器変形!」
掲げた木鹿振鈴より、最大風速で吹き荒れるオブリビオン・ストームが戦場に吹き荒れた。
「こいつはやばいね」
肌でその威力を感じた編笠は手探りで建物の裏手へ飛び降りようとするが、オブリビオン・ストームは容赦なくひとつひとつの裏路地、遺跡の内部に至る隅々にまで余すところなく吹き抜ける。
「どこへ逃げようと無駄だ! こいつは片っ端からまとめて全部ぶっ飛ばす……ッ」
「おお――」
閻魔王の触手が千々に避けて吹き飛び、真正面から嵐を受けた身体が仰向けに倒れかける。ぎりぎりで踏み止まろうと足掻く身体が前後左右に激しく揺れた。
「オレの力が気になるか、閻魔王?」
「すさまじい嵐……しかもこれは骸の海より染み出した吾人にも似た気配……?」
「――コンキスタドール共によって埋め込まれた力」
千雨の憎しみを込めた眼差しが編笠を捉える。
ありったけの怨恨をぶつけるように、鈴を鳴らしてオブリビオン・ストームをさらに呼んだ。もっと、もっと、もっと――!
「てめぇに恨みはないが諸共死ねぇ!」
「まずい……ッ」
せめて距離を取って離れようとする素振りを見せた編笠の足を止めたのはグレネードランチャーの爆発。まさかこの間、バルタンが何もしないでいるとでも?
「
再見!」
「ははッ、こいつはやられたね」
編笠は心地よい敗北感に浸りながら、爆風で吹き飛んでいった。バルタンの
胴体から迸る内臓火炎放射器が千雨に迫る触手を焼き払い、近付けさせない。
完敗だった。
「……いったい、どこまで強くなるんだろうね。こいつらはさ……!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
石蕗・つなぎ
「合図があって攻撃される場所が理解るなら、防御や回避のタイミングはとりやすい筈」
先制攻撃は残像で惑わし第六感にも助けて貰い見切って回避
避け切れなくてもオーラで防御や赤手で受ける、受け流すなど可能な限りダメージを軽減
場合によっては敵を盾に地形を利用して構造物を盾代わりにしたり通り抜けて攻撃から逃げたりします
「次はこちらの番、ね」
凌ぎきれればUCで自己強化して反撃に
飛翔能力と雑多な地形を生かし頭上を取ってLv12400相当のマヒ攻撃を乗せた斬撃波と衝撃波の二回攻撃で強襲
尚も攻撃してくるようならオーラ防御で防ぎ受け流し
「そろそろ終わってくれる?」
追撃にバス停の重量攻撃を分かつものへ放ちます
――混沌と化した戦場を、石蕗・つなぎ(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35419)の残像が敵の目を欺きながら駆け抜けた。
「ほほう。それは残像か? その力はどうやって身に着けたものなのだ」
興味津々で戦いぶりを観察する閻魔王の触手には浄玻璃鏡が掲げられ、つなぎを追うように光条が放たれてゆく。
背後からの攻撃を、つなぎは第六感の助けを得ることでそのタイミングを把握。オーラを纏わせた赤手で受け流し、軽やかに着地する。
「編笠は……」
見れば、彼女はひと際高いビルの上に立っていた。
「いけ、
私の家族!」
改造モーゼル銃を天に向けて撃ち放すのが、一斉攻撃の合図であった。
それを待っていたつなぎは閻魔王の背後に回り込み、どこからか現れたマフィアの銃口に向かって盾にする。襟首を掴み、自分の背中は壁に押し付ける形で攻撃を受ける方向を視界内に限定、身を縮こまらせて閻魔王の背中に隠れた。
「あばばばばば!」
無数の弾丸が触手を吹き飛ばし、閻魔王の身体を強かに穿つ。
「おいおい、何をやってるんだい? 同士討ちじゃないか」
あきれ果てる編笠につなぎが告げた。
「次はこちらの番、ね」
「どう出るつもりだい?」
「こうする、のよ」
つなぎは蜘蛛糸の羽衣を纏い、ふわりと浮き上がった。手に入れた飛翔能力は超速である。それで雑多な街並みを一気に飛び抜け、編笠の頭上を奪った。
「これで!」
赤手を二回、ばってんの形に薙ぎ払って繰り出す衝撃波で建物の上から撃ち落とす。
「くッ……」
両手で庇ったはずのその身が痺れて動かない。
それで、編笠は理解した。
「麻痺か」
「その通りよ。――あなたも、そろそろ終わってくれる?」
別の手に握り締めるのは年季の入った古いバス停だ。
つむぎは渾身の力でそれを振り回した。看板の部分が閻魔王の横っ面を
直撃、平手のような形で吹っ飛ばす。
「手ごたえ、あったね」
大成功
🔵🔵🔵
鈴鹿・小春
エアライダー時代なら…いや今でもいけるし!
曲者だろうけど押し切ってみせる!
質問には一族に伝わる生命力を喰らうのが得意な呪剣と回答。
一度喰らい付いたら離れようと逃がさない、大切な剣。
全身にオーラ纏い結界術で強化し攻撃ガード。
頑丈そうな材質の多く遮蔽物の多い場所を探し誘い込む。
編笠の命令が聞こえた瞬間ダッシュで一気に囲いの脱出を狙う。
地形を盾に、呪剣で受け流して攻撃躱しつつマフィア斬って生命力吸収して傷を癒し耐える!
凌ぎきったらUC起動、すれ違いざまにマフィア達を斬りながら編笠へダッシュし呪詛纏わせ一閃!
もし離れて効果消そうとしてもその間に閻魔王へダッシュ、連続コンボで斬る!
※アドリブ絡み等お任せ
「うわー、聞きしにまさる光景だね」
鈴鹿・小春(万彩の剣・f36941)の眼前にはありとあらゆる建造物の歴史が御開帳されていた。太古の遺跡からSF映画に出て来そうなものまで、まさに混沌、多種多様。
だが、小春がそれらに興味を抱いた以上に曲者たる閻魔王も気になるものがあるらしかった。
「その剣はなんだ? とても禍々しい……吾人たちの闇と似た気配を感じる」
「ああこれ? 一族に伝わっている、生命力を喰らうのが得意な剣だよ。呪剣って言うんだ」
「ほうほう」
どうやら閻魔王は満足な答えを得たらしい。
触手の中から取り出そうとしていた浄玻璃鏡を仕舞い直し、何度も頷きを繰り返す。
「大切な剣なのだな」
「その通りだよ」
小春は得意そうに微笑み、できるだけ頑丈そうな建造物を選んでその路地に駆け込んだ。こんな時、昔のエアライダー時代だったらもっと身軽に動き回れたかもしれないと考えかけて――いや、と思い直す。
「今でもいけるし! 勝負だ、編笠!」
「ははッ、受けて立つよ」
編笠の号令は彼女の配下を動かすのみならず、小春も同時に走り出している。一気にダッシュ、包囲が完成する前に路地を抜け出した。
「これだけ入り組んだ地形なら、数の利なんてどうにでもできる!」
迫る弾丸を小春は建物の陰へ滑り込むことで交わした。塀を登り、屋根の上から飛び降りてマフィアを斬り捨てる。
生命力を吸収して傷を癒し、一石二鳥。
「今度はこっちの番だ!」
これから始まるのはその名も『血塗れ奇譚』。
敵はちょうど狭い路地に誘い込まれて一直線に並んでいるところだ。小春は順番に一番近い場所にいるマフィアから編笠を目がけ、順番に一太刀ずつを入れていった。
「こいつは……!」
一向に癒えぬ傷に編笠が驚きの声を上げる。
「その呪詛は僕の剣にずっと喰らった力を送り続ける。つまり――」
とっさに編笠は効果範囲外へ離脱を試みるが、その間も奇譚は活性化中。こうかが切れる前に、と小春は矛先を閻魔王へ差し向けた。
「この一撃は編笠さんの力が乗っているも同然ってこと!」
「おおッ……」
斬られた瞬間、閻魔王はとても嬉しそうに笑ったかのように見える。
「このような技は初めて見たぞ。さすが猟兵、面白いものを見せてくれるわ。のう編笠よ? おや、どこにいってしまったのか」
小春は着地し、剣を構え直しながら肩をすくめた。
「うーん、さすが曲者。何を考えてるのかわからないけど……このまま押しきる! 今度はあなたの力をもらったからね! 覚悟してもらうよ!」
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
あら……懐かしい匂い
お久しぶりね、ご同輩!
なんて挨拶もそこそこに
【軽業】【ジャンプ】高く跳び
広がる「死の渦」から身を躱す
さらに周囲の地形を跳ねまわり
銃撃からも逃れようとするけれど
当たってしまっても【激痛耐性】
出血は【継戦能力】耐えてみせ
【烟霞癖】を使って目眩まし!
煙と幻覚で、近付く隙を作り出す
あなたの
九龍城砦は相変わらずよ
そりゃあ、あなたがいた頃と比べたら?
ちょっとは
治安が良くなったかも知れないけれど
今も
猥雑渾沌悪辣!
お陰様で毎日飽きないわ、なんて
お礼するかのように笑ってみせる
【烟霞癖】と【猟血滴子】(※)の同時使用!
※「血滴子」に狩り立てる獣の本能を宿して射出するユーベルコード
合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する
幻惑香も
血滴子もあの
九龍城砦で手に入れたもの
それを自慢げに使ってみせる
猟犬と連携するかのように
敵を同時に追い立てて
もしくは二体を手分けして
狩って殺してあげるから!
さあ、狩りがはじまるよ。
メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)の猟奇的な
戦り方を存分に味わっていってね。
「あら……懐かしい匂い」
硝煙と煙管の香は忘れもしない、
あの時の。黒い兎耳のついた殭屍姿のメアリーとトレードマークの編笠を被ったコンキスタドールは過去から未来までをごった返す街並みを挟んで対峙した。
「お久しぶりね、ご同輩!」
「おや、可愛らしいお嬢さん。君がお相手してくれるのかい?」
「ふふふ、相も変わらずお口が軽いこと!」
まるで軽業の如く、体重を感じさせない動きで高々と跳ねたメアリーの足下で死の闇がおどろおどろしく渦を巻いた。
「まあ、こわい!」
追いつかれないよう、次々と場所を飛び移って狙いをつけさせない。軒先に突き出した庇や、仏閣の瓦まで全てがメアリーの足場になった。
「逃がすものか」
編笠の改造モーゼル銃が火を噴いて大量の銃弾を浴びせかける。そのうちのほとんどは建造物に当たり、数発がメアリーの肌を掠めた。
「あら、やってくれるじゃないの」
ぺろりと舌で血を舐める仕草はまるで動じていない様子。だって、痛みなど大したことはない。出血さえもメアリーの戦いを終わらせるには至らないのだから。
「なるほど、継戦するのだね?」
「その通りよ」
刹那、香炉から立ち上る煙がメアリーと編笠の間に不透明な幕となって互いの視線を遮った。とてもよく効く、阿片の煙。
「こいつは――……」
とっさに編笠は自分の口元を袖で覆った。
「しまった。吸い込んじまったか……」
同時にメアリーを見失った編笠は四方八方に目を配ってその姿を探す。特徴的な姿は目に入ればすぐにわかるはずなのに、どこにも見つからない。
「そういえば、あなたの
九龍城砦がどうなっているのか知りたくないかしら。相変わらずよ、あそこはね」
メアリーの声は混沌の街の何処かから聞こえ、反響し合いながら編笠の耳に届くのだった。
「そりゃあ、あなたがいた頃と比べたら? ちょっとは
治安が良くなったかも知れないけれど。今も
猥雑渾沌悪辣!」
たった今、編笠の目には何が見えているだろう。
烟霞癖によって幻惑を植え付けられた彼女の脳は、もしかしたらこの街並みが自分の根城に思えてならないかもしれない。
「ははッ、言ってくれるじゃないか」
掠れた笑い声が返される。
「君もそういうところが好きなんだろう? お嬢さん」
「ええ、お陰で毎日飽きないわ」
ようやく、メアリーは姿を現した。
どこかの塔の上で、ちょこんと可愛らしくお辞儀しながら笑っている。編笠は早業で抜き払ったモーゼル銃を撃ち抜いた。
だが、メアリーの放つ血滴子は弾幕を急制動で躱し、何度も折り返し軌道を変えながら編笠を追い詰める。獰猛かつ隙の無い、まるで獲物を本能で追う獣のような動きだった。
「あの
九龍城砦は素敵なところね。面白いものが手に入ったわ。どう? お礼に披露してあげる。どっちもメアリのお気に入りよ」
くすくす、笑う声は幻惑に紛れて正体を掴ませない。
「これはこれは……」
編笠は自分の不利を覚悟する。
これじゃ、どこから血滴子が飛んでくるか分かったものじゃない。時間が経過するごと、彼女の傷が増えてゆく。
いつの間にか、メアリーは猟犬を解き放つように血滴子を編笠に嗾けながら閻魔王の鼻先に阿片を嗅がせることにすら成功していた。
死の渦がぐにゃりと歪み、ところ構わず暴走を始める。
「これじゃ、こっちもお陀仏だ……おっと、しまった。私の負けだねこれは」
足元を掬われそうになった編笠の頭上から血滴子が襲いかかった。ついに狩ったのだ、編笠を。メアリーは香炉の蓋を外し、灰になったそれを地面に捨てた。
「はい、おしまい」
いつの間にか、用を済ませた血滴子も戻ってきている。その刃から滴り落ちる鮮血が地面に模様を描いた。
それはまるで狼の横顔に似ていたという。
大成功
🔵🔵🔵