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第二次聖杯戦争㉒〜ゆりゆりさいきょうちょうかわいい

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #聖杯剣揺籠の君 #プレイング受付中


●金沢市金沢大学
「ゆりゆりはさいきょうにちからをつけたいのです。いんよくのかぜよひろがりつづけなさい。
 もっと、もっと、もっとたくさんのいのちをゆりゆりに」

 えっちになったものはすべてしんでしまいそのいのちはゆりゆりにそそがれます。
 ごちそうさまです。いのちにまみれたまんぷくゆりゆりはそれでもすぐにぺこぺこです。

「ああ。もう。まったくもってぷんぷんです」
 おこるとおなかがへるので、ゆりゆりはすぐにおなかがぐぅぐぅなります。

「はやく。いまいましいむくろのうみもこなごなにできるちからを、ゆりゆりに……!」
 はやくはやくゆりゆりのだいきらいなむくろのうみをけちょんけちょんにやっつけたい!
 おおきくなって、せかいのそとにでて、ゆりゆりは……ん?

「なぜそんなにむくろのうみをうらんでいたのでしょうか?」
 おもいでやきおくを「せいはい」にあげたので、わかりません。
 むくろのうみはきらい。おなかがへる。いのちがほしい。みんなみんなほしい。
 つよくなって、ねがいをかなえて、そのさきは……?

 ああ、もう、もっとしんぷるにいきなけばゆりゆりらしくないのでしょう。
 いまはええと……おなかがすいている。
 ごはん、えっち、しょくりょう、ちてきせいめいたい。

 あ。

「りょうへいたちもたいせつないのち。ゆりゆりはおなかがすいて、こうふんしてきました……!」

 淫欲と淫蕩に塗れながらも、まるで穢れを知らない、恋に恋する乙女のようにうっそりと目を細め。
 彼女はずっと待っている。

●グリモアベース
「食欲と性欲を満たしに満たしているというのなら最後は睡眠欲をプレゼントしてあげるのはいかがでしょう。骸の海に送り返してずっと眠ってくれればと私は思うのです」
 グリモア猟兵アルム・サフィレット(愛し子抱えし宝石人形・f02953)は猟兵を前に優雅に礼をし状況の説明を開始した。

「シルバーレインの世界にて第二次聖杯戦争を引き起こしたオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』との決戦の道が開かれました」
 揺籠の君は金沢大学一帯を支配し、白く輝く淫欲の領域に変貌した地で猟兵達を待っている。
「彼女が猟兵達に追い詰められても尚余裕なのは、聖杯の力を引き出した揺籠の君が、その全身から、あらゆる生物を死の絶頂に至らしめる催淫効果を持つ『いんよくのかぜ』を巻き起こしているからです」
 いんよくのかぜに触れ絶頂に至った生命体は行為を繰り返しながら死ぬだけの獣となり。
「死んだ生命はそのまま揺籠の君に吸収され、彼女はその分どこまでも強化されます。無限バフ状態ですね。
 いんよくのかぜは拡大傾向にあります。このまま彼女を止めなければやがて石川県全域が、日本が、そして次の日には地球全て……といった風に最低最悪のカタストロフとなるでしょう。白濁した粘つく液に覆われた大地と獣のような行為にふける者達の組み合わせは中々に淫蕩で最悪でございました。」
 予知した際に見てしまった光景にため息をつくグリモア猟兵。
「いくら猟兵の皆様と言えど淫欲なる光景を認識すればいんよくのかぜに汚染され戦う前に死にます。
 断言しましょう。【淫蕩な光景を一切『認識しないよう』に務めてください】。揺籠の君が放つ最も強大な能力、いんよくなかぜを封じる事にはそれしかありません」
 戦場に絶え間なく吹くいんよくのかぜへの対抗策を伝えたグリモア猟兵は、それでも揺籠の君優位な状況であると資料を読み上げる。
「あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」が生み出すたつまき、「リリスの槍」や「聖杯剣」を組み合わせた攻撃に、彼女自身の淫靡な眼差しによる装備や身体の破壊。皆様を認識した時点で彼女の方が先に動きます。【揺籠の君の先制ユーベルコードに対処する】こともお忘れなく」

 グリモア猟兵が銀の雨降る世界へ繋がる転送ゲートを展開し始める。
「ここが正念場です。ご武運を」

●せかいでいちばんさいきょうのゆりゆり!
 おいしいおいしいりょうへいさんのいのちをまっています。
 ゆりゆりはつよくなりたいんです。むくろのうみをわんぱんするんです。
 さいきょうにかわいくてさいきょうにつよいゆりゆりとずっとずっとあそびましょう。
 おこっているよりこうふんしているときのほうがかわいいかおになるんですゆりゆりは!


硅孔雀
 ここまで目を通していただきありがとうございます。
 硅孔雀です。
 シンプルかつ直球な感想サブタイトルが付いた決戦シナリオです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「第二次聖杯戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 難易度は「やや難」です。苦戦、失敗となる可能性を視野に入れてご参加ください。

●構成
 ボス戦:『聖杯剣揺籠の君』 ×1体。
 かつて銀誓館学園と交戦した強大なリリスがオブリビオン・フォーミュラとして蘇りました。『全ての世界の全ての生命』を求め、本来ならば彼女には扱えないメガリス『聖杯』の真の姿『神の左手』を顕現させています。

●プレイング受付
 OPが公開された時点で受付を開始します。追加オープニング・情報はありません。

●状況
 金沢大学一帯が「白く輝く淫欲の領域」へと変貌しています。
 首謀者である『聖杯剣揺籠の君』は獣のような行為にふける者達に囲まるという淫蕩な光景の真っただ中にいますが、それには目もくれずどうやらちょっぴり怒っている様子。
 猟兵の皆様を視界に捉えたらテンションが上がり、先制攻撃としてユーベルコードを展開するという流れでシナリオが進行します(プレイングに指定されたユーベルコードのPOW/SPD/WIZに合わせ『聖杯剣揺籠の君』の先制攻撃も変化します)

●プレイングボーナス
 淫蕩な光景を一切認識しない/揺籠の君の先制ユーベルコードに対処する。
 認識しなかった光景はリプレイでも一切描写されません。
 プレイングに一言認識しないと記載があれば当シナリオでは描写しません。
 強大なオブリビオン・フォーミュラとの決戦が描写の中心になります。

●連絡事項
 ・やや難シナリオです。それ相応の判定をします。
 ・えっちなのは控えめなシナリオになります。
 ・完結優先でのシナリオ運営になります。タイミング次第でプレイングの不採用が発生する場合がございますのでご了承ください。
 ・プレイング受付の締め切り日等連絡事項がありましたらタグ及びMSページでお伝えします。
 ・MSは当時のPBWシルバーレイン事情には詳しくありません。過去作の情報をメインにしたプレイングに対し完璧な理解の元描写をすることは出来かねますのでご了承ください。
 それではよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『聖杯剣揺籠の君』

POW   :    うずまくいんよく
【神の左手】による近接攻撃の軌跡上に【いんよくのたつまき】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
SPD   :    せいはいうぇぽんず
【あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」】【癒える事なき毒を注ぐ「リリスの槍」】【対象のユーベルコード全てを奪う「聖杯剣」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    みだらなひとみ
【揺籠の君の淫靡な眼差し】が命中した部位に【淫欲に満ちた思念】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
👑11
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数宮・多喜


参ったね、どうも。
本来なら、アタシは存分に周りへ気を配って戦う方がやりやすいんだ。
交通事故でも起こしたらコトだろ?
だからここは覚悟を決めて、大きなバクチといきますかねっと!

戦場への転移の直前辺りから周りの光景を認識しないよう目を閉じ、制御に集中して高めたサイキックのオーラで全身を覆い、ダメージをなるべく抑えるようにするよ。
そうして居りゃあ、ゆりゆりの方からアタシを呼びこんでくれるんだろ?

神の左手によるたつまきが起こす引き寄せに敢えて抵抗せず、その後の槍の一撃も喰らってやらぁ。
その痛みと毒が、ゆりゆり。
アンタの居場所を教えてくれるからな!
耐性で堪えながら、痛みの先へ【漢女の徹し】をぶち込むよ!




「うへえ。参ったね、どうも」
 シルバーレイン世界へと続く転送ゲートの前に立った数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は自分にとって最適な戦闘スタイルを考える。
(「本来なら、アタシは存分に周りへ気を配って戦う方がやりやすいんだ。交通事故でも起こしたらコトだろ?」)
 敵──聖杯剣揺籠の君から巻き起こされる「いんよくのかぜ」に対処するまで、彼女の作り出す地獄のような淫靡な光景を認識しない。
 更に、猟兵達より先んじて放たれる攻撃に対処する。
(「あるといっちゃあるんだよな。思いついたのはいいけど。アタシが博打に大勝ちすることが前提だけどね」)
 強大な敵を前に怯えているわけでも、無謀無策に暴れたいわけでもない。
 数々の世界の危機を救ってきた数宮だからこそ、冷静に考えて『それ』が可能か計算する。
「ま、時には勢い……いや、むしろここは勝算はあって覚悟を決めるのが大事だねぇ!」
 アタシになら出来る。
 計算式に無限大の可能性をありったけ追加し、完璧な結論を導く。
「大きなバクチといきますかねっと!」

 転送ゲートに足を踏み入れた時から感じる空気の流れに混じるいんよくのかぜの勢いはどんどん強まる。
 白く、ただひたすらに白い空間に佇んでいた聖杯剣揺籠の君──ゆりゆりとよんでくださいな──がぱっと明るい表情を見せ、猟兵の到着を歓迎した。
「こんにちわりょうへいのあなた。かんげいします」
 暴風の勢いが増す。いんよくのかぜを神の左手の掌の上に集めた揺籠の君は数宮に左手を伸ばしているのだ。
「随分な歓迎だねえ。ちょっと情熱すぎやしないかい?」
(「目を閉じてるとはいえこりゃあきつい」)
 身に纏うサイキックオーラで戦場を可視化し、さらにダメージを抑えている数宮の姿を間近で眺めているかのように、戦場全体に彼女の粘つく視線を感じる。
 ぎり、と奥歯を嚙みしめているその顔が愛しいと囁かれ。
「もっとそばにきてください。ちこうよれです」
「は! 上等!」
 風向きが変わり数宮は引き寄せられていく。竜巻と一体化した揺籠の君は戯れに数宮を弄び、リリスの槍を四方八方から突き立てる。
「ぐさぐさいっちゃいましょう!」
「ぁ。ぁ、ぁあ!」
 槍の一撃一撃に貫かれ、毒が注ぎ込まれる。
 どこから飛んでくるか分からない攻撃をただ只管に受けながら数宮は引き寄せられる……否、自ら進んで間合いに飛び込んでいく。
 じくじくと、ずきずきと痛む体を無理やりに前進させる。
(「敵さんのことだ。竜巻の中央から攻撃しているとは限らない。向こうは油断して自分の居場所がわからないって思っているだろうさ」)
 猟兵を愛おしいと言いながら、あくまでもその実力は自分以下だ。上から目線で評価している揺籠の君の慢心を数宮は見抜いていた。
 オブリビオン・フォーミュラの慢心と満身創痍でも相手の攻撃に執念で食らいつく猟兵の意地。二つの賽子が衝突し、最上の目を出す。
「……見つけた!」
「わちょっとなんでそこから」
 揺籠の君は予想外の方向から『招いた』はずの数宮が出てきたことに揺籠の君は目を丸くし。
「痛みと毒。アタシとアンタを繋いでくれたのには感謝してるよ…………見えたよ、本当の「アンタ」って奴が……。引き裂け、アストラル・グラインド!」
 ユーベルコード:魂削ぐ刃(アストラル・グラインド)で生み出されたおぼろげに光るサイキックエナジーが揺籠の君の胸を貫く。
「あああつい……おいしいのに……いたい……」
 数宮の体から溢れる血を浴びる恍惚に耽りながら魂を貫かれる痛みに揺籠の君は喘ぐ。

「まったく……難儀な相手だよ……」

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
スペースシップワールドの宇宙服と封魔装甲『アルマドゥラ』で「いんよくのかぜ」を遮断。自分が接触しなければ、影響ないわよね。
さ、行こうか? あたしの愛しいゆりゆり。生きて帰れたら、今夜も一晩中皆と楽しもう。

「結界術」に光の「属性攻撃」を重ねて、あたしたちを眩しさで直視させない。
聖杯武装も狙いを付けられないと役に立たないわね?
『聖杯剣揺籠の君』、今のあなたは捨て去った自分の残り滓。そんなのに、あたしと愛しいゆりゆりが負けるはずない!

『聖杯剣揺籠の君』が立ち直る前に、聖杯武装に「封印術」を施す。気休め程度だけど、性能は落ちるはず。
薙刀を振るって首を「串刺し」狙い。
ゆりゆりは蛇の牙で彼女を攻撃して。




「思ったとおりね」
 いんよくのかぜに接触しなければ影響ないと予測していた村崎・ゆかり(“紫蘭”パープリッシュ・オーキッド/黒鴉遣い・f01658)は安堵したように深く息を吐く。
スペースシップワールド産の宇宙服と封魔装甲『アルマドゥラ』、透明なナノマシンアーマーを装備しているかぎり「いんよくのかぜ」を防ぐことは出来た。
『急急如律令! 疾く来たりませ。我が愛しき淫祠の女王にして、心を縛るもの。骸の海より戻り来たれ!』
 村崎がユーベルコード:淫雅召喚(インガショウカン)を発動する。
 いんよくのかぜを押し流すように魔力の奔流は渦を巻き、何もない空間に亀裂を作り──。
『えっちなのうどたかすぎてこうふんしますね』
 召喚された強大なリリスの女王、『揺籠の君』は蠱惑的な笑みを浮かべ召喚主である村崎にしなだれかかる。。
「さ、行こうか? あたしの愛しいゆりゆり」
『ゆりゆりがふたりいるとおとくですがわかりにくいですね』
「あれは『聖杯剣揺籠の君』、あたしの愛しいゆりゆりじゃないわよ。生きて帰れたら、今夜も一晩中皆と楽しもう」
『いまからこきつかわれてよるもこきつかわれる。にばりきのだいかつやくです』
 二人が笑みを交わしたその時であった。

『ゆりゆりをついかするとはないすあいであですね』

 戦場全体に響く声。
 聖杯剣揺籠の君の淫靡な眼差しに全身を貫かれ。流れ込む淫欲に満ちた思念に押しつぶされる、
「……とでも思った?」
 白一色で染められている空間が光り輝く。
 光の力を重ねた結界術が二人を守っているのだ。
『めがつぶれちゃいます。やりとつるぎであそびましょう』
 リリスの槍と聖杯剣による攻撃が粘つく大地を抉る。しかし二人に狙いを定めることが出来ない。
「あら。聖杯武装も狙いを付けられないと役に立たないわね?」
『ひとりあそびがおじょうずなゆりゆりです』
『こうげきさせないうえにことばせめとはいじわるさんですね』
 むぅ、と頬を膨らませた聖杯剣揺籠の君へと村崎は駆け寄る。彼女が立て直しを図る前にリリスの槍と聖杯剣の間合いに自ら飛び込もうとしているのだ。
『じぶんからとびこむとはこうつご』「悪いわね……これで!」
『え』
 姿を捉えられない猟兵による不意打ちに対し咄嗟に聖杯武装で己の身を守った聖杯剣揺籠の君。
 毒を受け、貫かれながらも村崎は聖杯武装に手を伸ばし封印術を施した。
『ぱわーしゅつりょくがさがってしまいます』
「気休め程度だとは思うけどこれで性能は落ちるはず」
 薙刀『紫揚羽』を振るい驚愕に目を見開いた聖杯剣揺籠の君の首を刎ねる様に攻撃を繰り広げる。
「『聖杯剣揺籠の君』、今のあなたは捨て去った自分の残り滓。そんなのに、あたしと愛しいゆりゆりが負けるはずない!」
『ほめていただいてこうえいです。ゆりゆりもまぜてください』
 未来を切り拓く猟兵の傍らで淫らに微笑む『ゆりゆり』の魂は猟兵のそれと同じ。
 骸の海から蘇り、それでいて骸の海を憎み、果てに全てを失った『聖杯剣揺籠の君』。
 明日を掴むためには斃さねばならない敵だ。薙刀を握る手に力を籠め、叫ぶ。
「ゆりゆりは蛇の牙で彼女を攻撃して」
『まかされました』

『すてきなおふたりです。からっぽのゆりゆりをくらって、とろけてください』
 聖杯剣揺籠の君は、自らを屠ろうとする女達をどこか愛おし気に見つめ、快楽と痛みの渦に溶けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロバート・ブレイズ
素晴らしい――貴様の欲求、貴様の在り方、器として捧げた塑のザマの、グロテスクかつ悦ばしい光輝! 俺は貴様だけを理解し、咀嚼し、臓腑に収める事を約束する。即ち、貴様こそが『最強』に相応しい!
俺の狂気は他の狂気を塗り潰す程度には育まれている。故、俺は俺の脳髄を貴様に定め、此れを運命として固定せねばならない!
嗚呼――神の左手に関しては極力抗って魅せるが、最悪、引き寄せられても構わない。リリスの槍対策としては『銀糸の栞』を絡ませておく。此方に迫ってきたら紙一重のところで狙いをズラシテやろう。
聖杯剣は……放たれる寸前にTru'nembraを押し付ける。引き寄せられているのだ、容易い筈。その状態で恐怖を与える、鈍ったところで回避
最強とは謂ったが結局、猟兵を脅威と認識している
連続攻撃だったな、俺は敵の情報を収集する事に長けている。貴様の動きなど『仏の掌の上』に等しい

オーバーロード

『天賦の才』を発動
今までの情報と60%の成功率を合わせ確実性を高める
奴が隙を晒したら其処に『立ち去れ』、のうみそを潰してやる



 見渡す限りの白に染まり輝く淫欲の領域でオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』が艶めかしくその肢体を揺らす。
 女王の興奮に合わせ奮い立ち、狂い、溶け死んでいく生命達。残骸の上に立つ女はそれでも力が足りないと叫んでいた。
「ケモノよ。何故悶える。骸の海が憎くて恐ろしいのか」
 白濁に塗りつぶされた闇からの呼び声を耳にした男は笑う。クカカ。クカカカッ。
 獣のように、人のように、■のように唸り、牙を剥く。見開かれた黒い瞳は濃い闇色を湛えていた。
「素晴らしい――貴様の欲求、貴様の在り方、器として捧げた塑のザマの、グロテスクかつ悦ばしい光輝!」
 骸の海から蘇りながら海を砕こうと。自らの全てを捧げそして自らの全てを失った揺籠の君。
 ロバート・ブレイズ(冒涜王シャドウ・f00135)は興奮気味にまくし立て歓喜の声を上げる。
 牙を剥いた猟兵が噛みつくのに相応しい敵が今目の前に存在する。
「俺は貴様だけを理解し、咀嚼し、臓腑に収める事を約束する」
『ゆりゆりをねらうおおかみさんせんげんですか。しげきてきです』
 正気と狂気の狭間に立つオブリビオンとロバート。黒色と白色にそれぞれ輝きながら二匹の■は睨みあい戦場に立って。
「刺激。ああそうだ。貴様はこの世界に楔を撃ち、全てを巻き込み世界を融解する。劇物とでも言い換えてみようか。劇物とは刺激。刺激的なスパイスを塗した生命体」
 ──即ち、貴様こそが『最強』に相応しい!
 ロバートの笑い声がいんよくのかぜ吹き荒れる大地に新たな風を巻き起こす。
『みんながえっちにのみこまれるなかあなたはどうじないんですね。せいよくよりしょくよくはですか』
「クカカッ!」
 いんよくのかぜの風を認識しないどころか自らの渦巻く欲望の色に染めあげ、嵐に変えた猟兵。
(「俺の狂気は、他の狂気を塗りつぶす程度には育まれている」)
 底なしの狂い荒れる海の前では骸の海に嘆く女の涙など水滴一粒にも満たないのであろう。
「故、俺は俺の脳髄を貴様に定め、此れを運命として固定せねばならない!」
 シワ一つない服を靡かせロバートは戦場を一歩また一歩と進む。揺籠の君の先制攻撃を真正面から受け止め──或いは与えられる痛みをも脳髄に刻もうとするその姿にオブリビオン・フォーミュラは悦び「神の左手」を発動させた。
『もっと。もっともっともっともっとそばにきてください』
「クカカッ。抗わせては貰おう」
 真正面からの特攻に見せかけ揺籠の君の死角にロバートは回り込む。
『にげないでくださいな。てかずをふやしてあげます』
 猟兵を引き寄せる「神の左手」に加えて「リリスの槍」「聖杯剣」の攻撃が絶え間なくロバートに降り注ぐ。
 障害物ごと猟兵を薙ぎ払おうとする攻撃を紙一重で避け、じわじわと距離を詰められながらもロバートは余裕の表情を崩さない。
 対する揺籠の君は、ふと自らの頬を撫で、痛みに眉を顰める。
「零れだしたか。貴様の中身。膿と海!」
 両手を広げたロバートは鋼糸【銀糸の栞】をもう一度手繰り寄せ、放つ。界断つ刃、侭に万化する蜘蛛の糸は槍とその持ち主ごと弾き飛ばし怪物の手と頬を裂く。
『……っ。あといっぽでとらえられるというのにじれったいです』
 オブリビオンを構成する骸の海を血のように流しながら揺籠の君はリリスの槍を捨て。もう一つの武器聖杯剣を構え、ロバートの首を胴体から切り離そうと迫る。
(「神の左手で引き寄せ確実に頸椎を圧し折る。紙一重のズラシすら狙わせない良い攻撃だ」)
 鋼糸【銀糸の栞】での攻撃を最小限に抑えるための速攻と近接が合わさった攻撃。暗黒色の脳をフル回転させ、猟兵はオブリビオンを屠る手段を探り──。
「ああ。そうだ。ゼロで無い限り振り続けよう」
『なにをいっているのですか。いとしいあなたのくびをいただき……!?』
 猟兵の行動、目の前に出された異形機械【Tru'nembra】の存在に一瞬揺籠の君は行動を止めた。勝った、と猟兵ロバートは笑う。
「俺の牙が届く範囲まで接近したのが運の尽きといった所か」
『あ、あああああ!!』
 ロバートの狂喜に満ちた笑い声を増幅するかのように【Tru'nembra】は狂った旋律を奏でる。揺籠の君は絶叫した。まるで恋人を喪った女の泣き声だ、と埃をはらいロバートはその光景を眺める。
『やめて、やめて。ゆりゆりはさいきょうなんです。むくろのうみをくだくんです』
「俺一人猟兵一人斃せないままで?」
 黙れと揺籠の君は武器を振り下ろすが。
「貴様は最強と謂ったが結局、猟兵を脅威と認識している。だから先んじて攻撃を連続して行う。手数が多いことは圧倒的な優位」
 しかし、先に猟犬の前で自分の武器と戦法を見せた。
「──貴様の動きなど『仏の掌の上』に等しい」
 自分の頭に手を当てぐりぐりとぐちゃぐちゃとロバートは髪をかき混ぜる。頭蓋骨の向こうで浮かんでいる脳味噌をぐるぐる回転させ猟兵は混沌の彼方から己の真に目覚め。
 リリスの槍の軌道、聖杯剣の軌跡が収められた頭脳をユーベルコード:天賦の才が強化する。情報を収集し終えた対象の動きは既に読んでいる。
 後は骰子を振り、自分の肉体を限界まで酷使して避けることが出来ればロバートの勝ちだ。
『は。はは。うんだのみでゆりゆりをおいつめるきですか? しょうきで?』
「無論。何、ほんの数百の道から正解を選ぶ簡単な運試しだ。正しい道理というものがこの宇宙に存在していれば自ずと正解は掴めるもの」
 謳う様に言葉を紡いだロバートと対照的に揺籠の君が悲鳴を上げる。鋼糸で大きく体を裂かれたその隙を見逃さず総てを『否定』する為の鉄塊剣が揺らめく。
「『立ち去れ』、のうみそを潰してやる」
 あはは。ひどいひと。つぶしてやるといいながらもうぐちゃぐちゃにされていますよゆりゆりは。
 脳髄に収めるのにぴったりの液体になったな、と猟兵の口が動き、全ては終わった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東・よるは


わたくしは何も見なかった。
何も聞かなかった。
何も思わなかった。
淫蕩な光景を認識外にやる為にはまず環境耐性。無かったものと思うことで耐性を無意識に得ます。
意識しなければ認識も無い。

ただ先制は厄介ですので、
引き寄せられている最中に空中機動で体勢を少しだけ整え、連続攻撃を全て閃夜の刃で武器受けし確実に防ぎましょう。
色は銀。青春閉ざした雨の色。

全て凌ぎましたならば。
総て越えよとよるはが……
否、君にくれる叫びは無い。
頭の桜の樹が失せ、桜色に転じる髪。真の姿、桜の神が参ります。

桜の神の権能たるUCで認識という道理から宙に浮けば、いんよくのかぜを心配する必要は完全に無くなります。
終焉まで尽きぬ毒だろうが、剥奪の聖杯剣だろうが、戦闘知識を駆使して攻撃を予測、全て回避すればいい。

最後は態と引き寄せられ…空中機動で身体を僅かに動かして避けながら、破魔の力を込めた閃夜で切断、浄化して終わり。

君は世界で一番邪魔な女。
最強をただ並べただけでよるはを越えようなんてね。
せめて最後は、優しく終わらせてあげるわ……。




 ふわりと風を纏い、東・よるは(風なるよるは・f36266)は戦場に降り立つ。
 黒い髪の上に鮮やかな薄桃色の桜の花びらが止まり、そして、
(「──わたくしは何も見なかった。」)
 白く粘つく何かが桜の花びらを穢す光景。吹き荒れる熱を帯びた『いんよくのかぜ』の生温さ。沸き上がる感情。心の底をかき混ぜるように吹き荒れるそれを前にした東は口を開く。
「何も聞かなかった。何も思わなかった。何も感じなかった」
 凛とした声が獣の喘ぐ音に支配された空間、白く輝く淫欲の領域に響いた。世界を渡り歩く猟兵としてオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の作り出した罠に屈することなどあってはならない。
 否、強い精神力を持っている限り打ち破るのは容易い。
(「わたくしの認識。全ては無かったことにすればいい」)
 強く、強く意識しないようにと東は瞳を伏せる。
 清らかに薫る桜の花びらが桜の精を包み込み、凛々しく咲き誇る猟兵は汚れることなくそこに在った。

『きれいなおにんぎょうさん。たえたみたいですね』

「……っ」
『ほめてあげます。もっとちかくによってくださいな』

 空気が震え大地が揺れる。揺籠の君の声が響くたびに空間が変貌していく。
 圧倒的な力を持ち、それでいて無邪気な少女そのものの声色に東は眉を潜めつつ大地を蹴り、飛び上がった。
 両手を広げた揺籠の君は、その左腕と一体化した「神の左手」が鈍く輝く。東を手中に収めるような仕草をしながら笑みを浮かべたままで。
「お断りします」
『あらら。つれないですね』
(「相手に動きは読まれているのでしょう。先制されることは分かっています」)
 神の左手がぶんと振り下ろされるたびに東の体は引き寄せられる。体勢を変え、彼女に隙を見せないよう霊刀【閃夜】を抜き精神を集中させ東はその切っ先を向ける。己という猟兵の立つ世界を写し取り光を灯す閃夜の刃は銀色に煌めき。
「銀、青春閉ざした雨の色。この世界を映す色彩にて君を、君という存在を斬り祓う」
 力強く東は宣言し足場を蹴る。大地から離れ空中での戦闘を選ぶ。それはつまりいんよくのかぜの効力を完全に遮断するということ。
『えっちなきぶんにはなってくれないのですね。それではすこしいたいおもいをしてきもちよくなってください!』
 恍惚とした様子でそう揺籠の君が叫ぶのと同時に「リリスの槍」「聖杯剣」が展開され、東の体を押しつぶさんと迫りくる。
「そうはさせません!」
 間髪を入れずに繰り広げられる攻撃を閃夜の、雨に濡れた銀色の刃は受け流し防戦に徹した。
(「……まだ、まだ遠い。今は攻撃を確実に防ぐことに徹します」)
 刃身の光が揺れる度にその振動、衝撃が東の体を突き抜け体勢を崩してしまいそうになる。しかし、ここで折れるわけにはいかないと両の手に力を入れ、攻撃を防ぎ続ける。
『ぱわふるですね。ゆりゆりちょっとつかれちゃいました』
 未だ自信満々な様子の揺籠の君は攻撃の手を緩めた。今のままでは攻撃を防がれる一方ですとため息をついた瞬間を東は見逃さない。
「全て凌ぎましたか。……ならば」
 淡く、桃色の光が零れだす。
「総て越えよとよるはが……」
 叫ぶ。と言の葉を紡ごうとしたが、東はそれを止めた。
今目の前にいる存在は祈り、慈しみ、見送る存在ではない。
 オブリビオン・フォーミュラ。銀の雨降る世界を穢す君は世界で一番邪魔な女だ。
『……!』
 光に包まれた東を眺めていた揺籠の君は目を丸くする。左手の中にもうすぐ納まりそうな猟兵の魂の色が変化していく光景に舌なめずりし、いいですねと呟く。
「──そうはさせない。君の手の届く相手ではないよ」
 頭上で揺れる桜の樹の色が溶ける。次の刹那消えていく花の下に広がるのは桜色に転じた髪。
『まあ。まあ。すてきなかみさま!』
 銀の雨降る世界を滅ぼす存在の、狂喜する声を遮るように猟兵東・よるは──真の姿、桜の神とその姿を変えた──は飛び出す。

「桜の世から幾千里、最強を並べただけの君を終わらせてあげる」

 空中戦を展開していた東のその体が、更に更に空高く桜色の風を纏いながら上昇する。真の力の開放と共に発動したユーベルコード:Xi(ワレソラヲマウサクラナリ)でいんよくのかぜの届かぬ上空まで浮かび上がり、爛れた地を見下ろす。東を見上げるは天に浮かぶ星を掴もうとする少女の様に無邪気で、そして、残酷な子供のような揺籠の君ただ一人。周囲に展開された武具から繰り出される攻撃は、東の体勢を崩そうと衝撃波を伴う。しかし、空中戦にて圧倒的なアドバンテージを持つ東にとっては彼女の攻撃躱すのは容易く。
(「終焉まで尽きぬ毒だろうが、剥奪の聖杯剣だろうが……攻撃が展開される空間を支配する、その道理から外れた今のよるはには通じない」)
 まってください、と懇願する揺籠の君、彼女の攻撃を振り切り東は手にした霊刀【閃夜】が届く間合いまで急接近した。
 人間を獣へと変えるいんよくのかぜが吹き荒れ、圧倒的な力で繰り出される攻撃も当たらなければ全ては無意味だ。最強の横に最強を置く。ただそれだけを選んだ、
「よるはをそれだけで超えようとなんてね」
『ああ……きてください。ゆりゆりの、そばに』
 神の左手を力が東を引き寄せる。爛れた風に引き寄せられながらも、荒れる魂を沈める桜に染まった髪は、輝く白い瞳に灯る清浄なる光は溢れたまま。
 僅かに体を動かし揺籠の君の攻撃を躱し、奔流に身を委ねながら銀の雨の色に染まった霊刀【閃夜】を振りかざす。

「せめて最後は、優しく終わらせてあげるわ……」

 小さな声をかき消すかのように銀の光が全てを塗りつぶす。

『かなしいかおをしないでください。きれいなすがたがだいなしですよ』
「君は……本当に、世界で一番邪魔な女」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
いよいよ、決着をつける頃だね。
揺籠の君には覚悟してもらうよ。

でも、さすがは大ボス。
いろいろ制限がついて厄介なことこの上なし。
もう面倒な相手だな。
ただ、これだけの強敵を相手にできるっていうのも昂ぶるんだよな。

まずはサイバーアイをカットして、視野を狭めて、揺籠の君に集中。
相手の攻撃は【野生の勘】頼りで【見切り】しよう。

先制攻撃さえしのげば、あとは向こうから呼んでくれるから、それに乗ろう。
その間にUC【月華満天】を発動して、ダメージを抑える。

最後は黒槍『新月極光』に【電撃】を乗せて、【怪力】でぶん殴る!
外したら二撃目なんて無いんだから、全力で決めていこう。




「おっと。これがついてしまうと気分が大変に悪くなる」
 口笛を吹きながら足元の水たまりを避けるようにシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は白濁を避けた。白く、眩しく、淫靡に揺れる太陽の下で氷原のような銀髪が華やかに光る。
『おおかみさんおおかみさん。ゆりゆりをたべにきたのですか?』
 オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』が問いかける。無邪気な彼女の周りに浮かぶ武器とのコントラストにおっかないなあとシモーヌは苦笑した。
「しかしまあ、いよいよ決着をつける頃だ」
 シルバーレインの世界を。
 そして、足掛かりに多重世界全てへ浸食しようとする大ボスはきっちりここで倒させてもらう。
「揺籠の君。覚悟してもらうよ」
 冷水のように透んだ碧眼を輝かせ斃すべきオブリビオンと対峙する。
 戦いに昂り、戦いを楽しみ、戦場へと身を投じることを何より愛するシモーヌの視界には淫靡な光景など映って居なかった。
(「……なんて、もう少し彼女との真剣勝負に集中しようか」)
 シモーヌは目を伏せ脳と視神経を繋ぐ回路に信号を送る。サイバーアイは主人の命令を受け視野が狭まった。
(「なあに一撃を防げば向こうからアタシを引き寄せてくれる」)
 くすくすと零れる揺籠の君の笑い声をいんよくのたつまきの轟音がかき消す。白く穢れた大地や空をミキサーのように破壊的にかき混ぜられ、暴風と共に猟兵を圧し潰さんと迫った。
「さすがは大ボス。いろいろ制限がついて厄介なこと、この上……なし!」
 野生の勘に頼って避け続けるしかないじゃないかと悪態をつきながらシモーヌは構える。
『ふふ。すばしっこいなら貫いてあげましょうか』
 毒を注ぐ「リリスの槍」の穂先が貫いたのは銀髪数本。研ぎ澄まされた集中力を持って先制攻撃を躱したシモーヌは、自分を引きこもうとする風の流れに乗じる。
「そちらの攻撃は既に見切った。次は倒しに行こうか」
 揺籠の君は吹き荒れる嵐の中「リリスの槍」「聖杯剣」を振り回しシモーヌを切り刻まんと動き出す。
 白に染まる視界に現れる刃の煌めきはまるで舞台の上を照らすスポットライトのようで、主演のシモーヌは獣のステップを踏み続け一つの怪我も負うことなく突き進んだ。
『月よ。我を守り、聖なる加護を与え給え』
 にいと笑みの形を浮かべていたシモーヌの唇が動き、ユーベルコード:月華満天(プレーヌ・リュンヌ)が展開し、白く輝く光が辺り一面を照らし出す。
「まぶしいですね……ん?」
 可愛らしい狼を鷲掴みしたはずなのに感触が無いと揺籠の君は首をかしげる。そして、次の瞬間に神の左手を構成するパーツが消し飛び悲鳴を上げた。
「さて。クライマックスといこうか!」
 光り輝く月の戦士に姿を変えたシモーヌは黒槍『新月極光』を掲げた。闇夜を照らすオーロラの如く、穂先の光は揺れ──そして、雷光を纏う。
 オブリビオンは本能的に恐怖を感じ後退りしようとするが、退路を断つように獣は一歩先に動く。
「──は。外したら二撃目なんて無いって覚悟をしてるんだ。絶対に全力で決めさせて貰う」
 獲物の喉笛を噛み潰す歓喜に打ち震える猟兵は笑い、両手に力を込めオブリビオンを貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
さて、終わりを終わりに導きますか。
「継戦能力」でもう一度聖杯剣揺籠の君に挑む。

先の攻防でいんよくのかぜの効果範囲は一旦抜けたはずだけど、油断は禁物。スペースシップワールドの宇宙服を着たまま、「結界術」「呪詛耐性」「狂気耐性」で更にいんよくのかぜを抑え込む。視線攻撃も、結界で遮断するわ。

ゆりゆりは頑張ってくれたから結界の中で休んでて。後はあたしが始末する。応援は歓迎よ。

「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「呪詛」「仙術」「道術」で紅水陣。
その綺麗な肌が焼け爛れるのを見るのは辛いけど、今のあなたは世界の敵。心を鬼にして討滅する。
紅水陣の中に逃げ場はないわ。あなたも、聖杯武装すらも、侵食し腐食させていく。

まだ諦めてないって顔ね。いいわ。最後はお互いの力で勝敗を決めましょ。
「環境耐性」を使って紅水陣の中へ飛び込み、薙刀で聖杯武装と打ち合っていく。
あたしのゆりゆりを完全に近づけるために、あなたの概念をちょうだい。
槍と剣を「受け流し」、「貫通攻撃」で胴体を「串刺し」にする。

骸の海でおやすみなさい。




 聖杯剣揺籠の君。オブリビオン・フォーミュラ、即ち世界=猟兵の敵。
 白い淫欲と淫蕩に揺れる空間に降臨した女王である彼女を構成する、骸の海の泥の黒が白一色の世界にインクを落としたかのように滲んでいた。
「さて、終わりを終わりに導きますか」
『しろいあさがおわればあとはよるをまつのみです』
 戦場を一度離脱し、様子を伺っていた村崎・ゆかり(“紫蘭パープリッシュ・オーキッド”/黒鴉遣い・f01658)と彼女が召喚した『愛しいゆりゆり』は身を寄せ合う。
 記憶を所縁に骸の海から召喚されたリリスの女王はもうおわりですよと優しく声を発し、村崎を後ろから抱きしめた。纏うスペースシップワールドの宇宙服ごと抱きしめられ、そのぬくもりに頬を緩ませながら、しかし、紫の瞳の奥で炎は燃える。
「オブリビオン・フォーミュラとはいえ猟兵との連戦で底なしの力は尽きる寸前。『いんよくのかぜ』の力もあたし達猟兵には効かなかった」
 認識しない、情報を遮断する……あらゆる手段、そして精神力を持ってオブリビオン・フォーミュラの攻撃に耐えてきた猟兵達によって『聖杯剣揺籠の君』は追い詰められ。
『それでもゆりゆりはたのしいのです。いのちがもえておなかもいっぱいになってこうこつでむらむらなのです』
「先制攻撃してくる程に戦いを求めている厄介なものね」
 骸の海に還る最期の時まで聖杯剣揺籠の君が攻撃の手を止めることは無いだろう。
 いんよくのかぜが届く範囲からは離れるよう考え、専門である東洋呪術で組み上げられた結界術を展開したが聖杯武器を駆使するオブリビオンの戦闘能力は底が知れない。大切なゆりゆりを結界の中に引き留めた村崎は一歩、また一歩と結界から離れ白く渦巻く中心へと足を進める。
「ゆりゆりは頑張ってくれたから結界の中で休んでて。後はあたしが始末する」
 猟兵の敵、オブリビオン・フォーミュラはここで必ず斃す。未だに吹き荒れるいんよくのかぜへの対策も、彼女への攻撃方法についても準備は出来ている。
(「……それにあたしの愛しいゆりゆりを巻き込みたくない」)
「応援は歓迎よ」
 その言葉の裏に込められた自分への愛を理解している『ゆりゆり』は微笑み、屈託のない笑みを浮かべこくりと頷いた。

『ああもうじかんがない。はやくはやくむくろのうみをくだきたいのに』
 自身の崩壊に苛立ちながらも聖杯剣揺籠の君は侵入者を見逃すことは無く。
 八つ当たりと言わんばかりに瞳を細め、にいと唇を吊り上げ侵入者を歓迎する淫靡な眼差しを送る。いんよくのかぜの吹き荒れる速度も主人の機嫌に合わせより強く、狂暴に、猟兵を飲み込まんと口を広げた。
「悪いけどもう一度通させて貰うわ」
 村崎は手に握られている霊符に更に力を籠め、呪詛と狂気への耐性を増しながら突き進んでいった。自分自身の強い意志と、結界の向こうで愛しい主人へ祈り続けている二つの意思がより霊力を生み出し攻撃から身を守っているのだ。
『やはりあなたにはきかないのですね。でも』
 先制攻撃を防がれた聖杯剣揺籠の君が「神の左手」を振り上げようとしたその時。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 
 ユーベルコード:紅水陣(コウスイジン)が発動する。
 白い空間に真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨が降り注ぐ。
『あ、ああああああああ!!!!』
 戦場全体があらゆるものを腐蝕させる赤い靄で埋め尽くされる中、皮膚の爛れる痛みに美貌を歪ませ絶叫するオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』。
「……辛いけど、今のあなたは世界の敵」
 一度発動した紅水陣の中に逃げ場など無い。それは村崎が一番理解していることだ。結界の向こうで祈り、力を捧げる『ゆりゆり』の力で防御結界は強化されている。それを以てしても呼吸をする度に肺に僅かな痛みは生じていた。近づくことはリスクでしかない。
 それでも村崎は決して怯まず。
「あなたも、聖杯武装も、侵食し腐食されていく。……まだ、続ける?」
 綺麗な肌が焼け爛れ、中身の黒──骸の海の中身を晒しながら、それでも尚聖杯剣揺籠の君は立ち上がり。
『いたいです。ですがいたいのきもちいですよ。もっともっとあそびましょう』
 痛みに耐えながら、くすくすと笑いだす聖杯剣揺籠の君。赤い雨を振り払う為に振り回されていた聖杯武器の切っ先はまっすぐ村崎に向けられた。
「──まだ諦めてないって顔ね」
 いい顔するじゃない、と笑い。
「いいわ。最後はお互いの力で勝敗を決めましょ」
 全てを溶かす空間への耐性を重ね、薙刀『紫揚羽』を振りかざした状態で猟兵は自ら紅水陣の中に飛び込む。
 肺を焼くような痛み、目が抉られるような痛み、そして、自分を斬り貫こうとするオブリビオンの攻撃の余波が与える痛み。
(「揺籠の君。リリスの女王。痛みも苦しみも。愛も憎悪も等しく貴女の前では快楽に変わる……それが、あなたという存在を構成する概念」)
「だから、あたしのゆりゆりを完全に近づけるために、あなたの概念をちょうだい!」
 槍と剣の攻撃を受け流し、そのままの勢いで薙刀で腕を斬り飛ばし、村崎は叫んだ。自身の腕が、骨が、肉体が吹き飛ばされたオブリビオンが上げるのは悲鳴ではなく吐息交じりの嬌声。
『あははは! きもちいです。たかまります。いかりにみちていたのに。すばらしいです』
 振り上げた神の左手が酸に蝕まれ砕けていく。
 降り注ぐ残骸を弾き飛ばした薙刀は、真っ直ぐに無防備な胴体へと振り下ろされた。

 紅水陣が作り出した赤い水たまりの上に黒い海が広がる。その上に色を重ねたのは白く細い髪。
 どこか満足気な表情の『聖杯剣揺籠の君』は身をぼろぼろと崩しながらも残った手で村崎を招く仕草を見せた。
『おこってばっかのゆりゆりでしたが……やっぱりゆりゆりはわらっていたほうがかわいいとおもうんです』
「そうね。あなたは笑顔がとても似合う」『ゆりゆりはよくぼうがみたせればはっぴーです』
 村崎の隣に立つ『愛しいゆりゆり』と同じくらいに可愛らしい微笑みを浮かべた聖杯剣揺籠の君の顔が溶けて塊となり、黒に消えていく。
『これでゆりゆりはおしまいです。ですがあたらしいゆりゆりはそこにいます。ゆりゆりのすべてはあたらしいゆりゆりに。えっちなこともえっちじゃないことも……おなかいっぱい……たのしんで……』
 ぶくぶく。ごぽごぽ。
 黒い骸の海に溶けて、消えていく。
 これですべては終わる。だから最後に村崎は口を開き、言葉をかけた。

「骸の海でおやすみなさい」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月02日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト