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暗澹

#UDCアース #ノベル #過去話

尾守・夜野
宿敵との因果関係等々の補足というか過去話をお願いします

現在の俺等に元々の俺の記憶は無い為書きやすいようにお願いします

なんなら設定増やしていただいてもオーケーです

星余ったら返却オーケーです
かなり暗い事になってると思いますので合わなければ流していただけますと幸いです

以下関係する宿敵設定です

■宿敵①
回帰神・混融
設定:
炎の宿敵
全てを混ぜ、1つに戻す…
原初の惑星の形に戻そうと動いている邪神
肉体も精神も混ぜて1つの存在に帰る事を目標としてる

基本炎で取り込み取り込んだのを加工し出力する敵

■宿敵②
さ迷う人々

設定:
蕪頭の異形の宿敵

回帰神・混融の狂信者
信仰の対価は偽りの不老不死
神が加工した物を取り込んだ結果それに纏わるものでの傷を負わなくなった

だからそう
自分に危害のある現象を別の誰かに負わせそれを贄にし下賜されれば…
自分を脅かすものなど無くなるという事
…見た目は一般人には普通の人に見えてる

■宿敵③
地母神・混融
設定:
女の人の姿の宿敵
回帰神・混融がエリクシルとか多量の贄で完全顕現を遂げた姿

■過去の出来事
一番最初の記憶は黄金色の田畑の真ん中で見上げた茜空
記憶も何もかも無くしてた俺を受け入れてくれた村の皆が好きだった
だからだろうか?
あの日エンストしたとか何かいってた旅行客(※宿敵②)を受け入れたのは

たまたま村長のとこに息子夫婦帰省したってんで懐かしい顔に皆集まって…

話についてけねぇ俺は夫婦んとこの孫を見ててと言われ外であやして…

ふと顔を上げたときに見慣れねぇ顔が歩いてて
皆を呼んだのは
俺だった

普通ならよそ者とか多少警戒すんのかもしれんが、俺というよそもんでも普通に受け入れてたようなお人好しな集団だ
…まぁ皆酒入ってたのもあるからかもしれんが
困ってんなら泊まれと招いたのも俺だ

まだ飯食ってないってんで
集まってるとこに行かせて…

孫にくっついて暫く遊ばせて…振り返った空は、まだそんな時間じゃないのにあの日見た茜色に染まっていた
あわくって孫を急かし戻ってきたら…

皆生きたまま燃えていた(宿敵①)
あぁ全部全部全部
面倒見てくれていたおばさんは切られ
村長のとこのは逃げろと叫び
でも俺は足が切られて逃げられず
喉が焼かれたから叫ぶのもできず

戻ったややこが打ち捨てられるのを見るしか出来なくて

人ならぬ我が身が
あぁなんと口惜しい事か!
憎い奴らに牙を突き立てられないことが!
寄れぬ我が身が!
これなれば戻らなければ!

自分は助からなくていい!
だからせめてあの子は!
赤子は逃げられずともせめて!

何故我らに止めをささぬ
嬲る
あぁこの憎悪が…奴らを焼き尽くすこの炎となればいいのに

【どうか神様】

…気づいたら一人だけ生き残ってなくした部位を糞ったれ共で埋める為刻印が入れられて

…苦痛のなか、病院にいた
あの日あった事は表にゃだせねぇとお偉方がおっしゃる

未だ尽きぬ炎を外に出さぬ為、ダムのそこに沈め…
最初から皆は村は【無かった】事になった

何度も死のうと思った
俺一人だけ生きるなんて

でもその度にすんでで人格がかわりできなかった
いつしかそれだけで変わるようになっていた

…死ねないならばせめてあいつらを
憎いあいつらを!

数年たち事件の担当も変わっちまってた
よく知らんが…調べた奴らが離反したらしく一級の機密になったらしい

死ぬ気でリハリビを熟し、見つけ出し尽く殺し尽くした

仇に近づく為にあちこちに潜った
敵討ちしか見てなかった
睡眠を削った
食事を削った
それでも力は足りなくて
それでも死ぬことはできなくて
だったら…しなくても死なないならなくても良くなって
生きてるのか死んでるのかわからなくなって

それでようやく…と
なんでも仇を倒した所、村の跡地の炎が縮小したんだと
だから消えた今、全員殺せたはずなんだ

…それでも俺というつながりがあるからか、熱が消えなくて記憶は消えなくて
だから故郷が戻ることはない

熱さが嫌いだ
全てを奪うから
ならば冷たい方がいい
感覚をくれるから


■俺が覚えてない事
俺の視点は多岐に渡っているし人とは限らない
※支離滅裂で可

宿敵①の能力は混ぜて一つにする事
つまりそういう事
記憶なくしていて受け入れられた…と考えていた俺を基準としその場の諸々が押し込められたのが俺らであり
肉体性能も年齢も混ぜられ平均値(動植物含む)が取られた

あの瞬間の絶望や罪悪感がそれぞれ皆大きかったのでそれが【俺】の主体となっている
一番元の俺の比率が多いのが【俺】なので【俺】が主人格となっている

俺は宿敵②の顔がわからない
視界がこんなシッチャカメッチャカだったから
この宿敵は己が不死性を布教することにより増えるから
村人の中には抵抗した人もいた…
そして己の顔は自分じゃ見えない
そういうこと

焼けた時一部は噛み付いたりして
敵を…【加工物】を取り込んだ上で加工された
その上で誰かの救いとなることを祈っていたので刻印となった
そしてそれを取り込んだ俺が【神】に祈ったが故に信者と見なされ贄のまま見逃された

だから皆とは俺であり、皆とは怨剣村斬丸であり
そして、俺と近しきもまた俺である
そして贄であるが故に常に皆焼かれている

他の人格は概ね大体あの日何があったのかなんとなくわかってるが
【俺】はわからない
…何故なら俺らの中でも早めに意識を無くしてたし

中間の存在となったがゆえに
https://tw6.jp/garage/gravity/show?gravity_id=101670
のような無理が利いてしまうし、痛みであろうと即死じゃないなら動けてしまう

宿敵②は嫌いだが宿敵①はどうしても嫌いになれない
覚えてないが助けてくれた存在だから

主治医からは刻印は病院で埋め込んだと聞かされているがそんなわけはない

医者で受けてるのはどちらかというと多少なりとも人間の範疇にいるためのメンテ及び拘束

なお、俺がどう頑張っても俺が望む形で皆が助かることはない
何故なら俺が皆の一部のため



 ――退行催眠療法。
 暗示をかけることで忘れていた過去の記憶を取り戻したり、トラウマの根幹を改善させる治療法だ。
 日本ではまだ正式な認可が下りているわけではなく、施術者のスキルも未熟で危険な方法だ。
 しかし海外の一部の国では、国の認定を受けて施術を行っていることも事実。

 そして、UDCアース日本の某所……UDC(アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ)組織の特別医療施設に、尾守・夜野が「検査入院」している。
 彼は薄暗い部屋にただひとり、リクライニングチェアに座っている。
 手足は拘束され、心拍数とバイタルサインを常時計測されている。
 夜野は無言で、目の前のガラス越しの医務官を睨み付けた。
 飢えた獣のような鋭い眼光は、ガラス越しでも呪詛を翔けられそうなほど禍々しい。
 担当医務官は引き攣った笑顔を見せながら、拘束した夜野へマイク越しに語り掛けた。
『これより施術を始めよう。夜野君、最近の君の自傷行為の頻度の増加の原因を調査するために、これから退行催眠療法を行うよ』
「……知ってる。で、どの『夜野君』の記憶が御所望で?」
 唸るような夜野の呟き。
 その言葉の意味に、担当医務官は即答した。
「全てさ。多重人格者である「君たち」の持つ記憶について、各々へ個別にインタヴューして、私が編纂する。そうすれば、夜野君は真実を知ることが出来るし、自傷行為を抑えるヒントが得られるだろうね」
「……そうかよ。確かに最近は1時間ごとに人格が変わっちまうから不便でさ……あんたも自分の研究のモルモットが手に入ってよかったな?」
 夜野の皮肉に担当医務官が思わず声を出して破顔一笑した。
「あっははは! そんな露骨に言わないでくれよ。これでも組織の中じゃ良識派で通ってるんだ」
「それ、目覚めたら同じこと言えるか見ものだな? なにせ……「俺たちの記憶」を見るんだ、トラウマになっても知らねぇぞ」
「忠告ありがとう。では、始めようか」
 担当医務官が素っ気なく施術を始める。
 薄暗い部屋の中に点滅する灯りが電気信号めいてチカチカと瞬く。
 それを凝視していた夜野は、あっという間に意識が遠のいていった……。

 ――最初の記憶は、黄金色の田畑の真ん中で見上げた茜空。
 記憶も何もかも無くしてた俺を受け入れてくれた村の皆が好きだった。
 だからだろうか?
 あの日、エンストしたとか何かいってた旅行客を受け入れたのは。

「いやぁ助かりました。長旅で何も口にしていない上に立ち往生してしまい困ってましたので」
「運が良かったな、お前。たまたま村長のとこに息子夫婦が帰省してんだ。飯ならそこで食ってけ」

 さっきまで懐かしい顔に皆集まって、話についてけねぇ俺は夫婦んとこの孫を見ててと言われて外であやしてた。
 そん時だ、ふと顔を上げたときに見慣れねぇ顔が歩いてて、皆を呼んだのは……俺だった。
 普通なら余所者とか多少警戒すんのかもしれんが、俺という余所者んでも普通に受け入れてたようなお人好しな集団だ、警戒心は緩い。
 ……まぁ皆酒入ってたのもあるからかもしれんが。
 それに、困ってんなら泊まれと招いたのも俺だ。

「ほら、遠慮せずに食ってけ。俺はガキの世話してっから」
「ありがとうございます。では……いただきます」

 今思えば、男の顔がやたら嬉しそうだったのが引っかかった。
 んで、俺は孫にくっついて暫く遊ばせて……しばらくしてだ。
 振り返った空は、まだそんな時間じゃないのにあの日見た茜色に染まっていた。
 しまった、もう夕暮れかと泡食って孫を急かして村に戻ってきたら……。

「いやああぁぁぁっ!」
「たすけてくれぇぇっ!」
「し、死にたくなぁい!」

「……は?」

 俺は呆然と、村中が、村の連中が、生きたまま焼かれてるのを眺めてた。
 あぁ全部全部全部。
 人肉の焦げる異臭と家が燃える黒煙が周囲に充満すると、手を繋いでいた孫は恐怖で泣き叫んだ。
 ただの大火事じゃない事は明白だ。
 何故なら、村を襲う異形がいるからだ。

 大文字ってあるだろ、京都のアレ。
 あれの巨大版が蠢いて火を付け回ってやがる。
 それを囲うように、何故か頭がぼやけて見える連中が村人達を殺してやがる。
 ただ、その中に……あのエンスト旅人野郎がいた。髑髏か蕪頭みてーな頭に変わり果てた姿でな。
 そいつが、面倒見てくれていたおばさんを、持ってた長剣で真っ二つに斬り捨てやがった。
 村長のとこの息子夫婦が俺を見るなり「逃げろ」と叫び、ヒト型の巨大炎に呑み込まれて消えちまった。
 でも俺は呆けてた瞬間、その旅人野郎に足をぶった斬られて逃げられず、喉が焼かれたから叫ぶのもできず。
 当然、傍にいた夫婦んとこのガキは手を引かれるように火が燃え移る。

 ――ヤメロ……!

 声が出ない。

 ――助けなくていいのか?
 ――ここで死ぬの?

 うるせぇ。
 こんな時に『他の人格あかのたにん』が出しゃばんな!

 人ならぬ我が身があぁ、なんと口惜しい事か!
 憎い奴らに牙を突き立てられないことが! 寄れぬ我が身が!
 これなれば戻らなければ! あの子と共に逃げていれば!

 くそっ! 自分は助からなくていい!
 だからせめてあの子は!
 赤子は逃げられずとも、せめて!

 だが、ガキは数秒もせずに生きたまま炭へと変わっちまった。
 小さなヒト型の炭が黒白の表面の中に赤い焔を宿して燃えてやがる。
 あぁ、俺もああなるのか。

 そう思ってた矢先だった。

「よう、木偶の棒。迎えに来たぜ」

 あの旅人が話しかけてきた。
 しかも親し気に、だ。

「俺っちのこと忘れたか? だよな、あの対応じゃ記憶が全部ぶっ飛んでるみてーだし?」

 な、なんのことだ?

「あー質疑応答は必要ねぇから。俺っちの計画がようやく軌道に乗ったんだ。これより、我らが回帰神・混融様は贄を喰らって昇華する。見ろよ、神格昇華の瞬間をよぉ」

 旅人野郎は上着の内ポケットから宝石のようなもんを炎の怪物にくべた。
 すると、その炎がみるみるうちに姿を変えて……人間の女みてぇな姿に変わった。
 紅蓮に燃ゆる長い髪。星空のように闇と光が入り混じったワンピースロングドレスが零れそうな胸元を抑える。

「素晴らしい! 成功だ! これより混融様は地母神と御成り遊ばされた! 感謝するぜ、木偶の棒。あとは死んどけ、お疲れさァん」

 旅人野郎の合図で、俺は有象無象のカオナシ共に嬲られる。
 体のあちこちを剥ぎ取られ、刻まれ、もうヒトの形を保ててるかも分からねぇ。

 なぜ一思いに殺さない?
 なぜ俺に罵倒を浴びせる?
 俺は、お前たちの事なんて知らないのに……!

 ――どうか神様!

 そう願いながら意識が途絶える瞬間、変貌を遂げた女が手を差し伸ばすのだけは、はっきりと覚えてる……。

 次の記憶の始まりは、病院の手術台の上だった。
 UDC組織の連中が俺を救助したらしく、大手術で一命を取り止めた。
 その後、経緯を聞き出せた。
 組織はあの大火事へ急行したが邪神『回帰神・混融』もとい『地母神・混融』とその信奉者集団『さ迷う人々』は既におらず、代わりに焼け果てた村の中に瀕死の俺がいた。
 何故か五体満足で、だ。
 で、あの村で何があったのかを話せってわけだ。
 俺は知ってることを全部話した。
 んで、その際に体中の呪詛……入れ墨みてぇな刻印の事も知った。
 俺の欠損部分を補うように張り巡らされるそれは、ひとつひとつに生命反応がある。
 更に焼け焦げた俺の傍らには、のちに怨剣村斬丸と名付けた不気味な剣があった。
 この剣にも無数の生命反応がある。
 しかもあの日あった事は表にゃ出せねぇとお偉方が仰る。
 なんでも、未だあの村跡で尽きぬ炎を外に出さぬ為、ダムの底に沈めて水で満たしたそうな。
 つまり、最初から皆の存在は、村は――『無かった』事になった。

 だから、何度も死のうと思った。
 俺一人だけ生きるなんて堪えられなかった。
 でもその度に、寸でで人格が変わってできなかった。
 いつしか、首を搔き毟るだけで人格が変わるようになっていた。

「どういうつもりか知らねぇが……お前たちが邪魔して俺が死ねないならば、せめてあいつらを! 憎いあいつらを!」

 復讐を思い立ち、必死にリハビリをこなして。
 この刻印は命を救うために手術でやむなくとか組織はぬかしやがったが、絶対に違う。
 あの日、あの混融とやらが俺の身体をいじったんだ。
 身体の欠損部は俺を嬲ってた連中だろう。
 それらを素材にして、混ぜ合わせる。
 奴は万物を混ぜ合わせる権能があるに違いねぇ。
 で、信者共の身体と融合した俺を奴は殺すなと指図したのだろう。
 だから俺は命を救われた。
 蕪頭の旅人は見つけ次第ぶっ殺すが、あの混融って奴には借りが出来ちまった。
 まぁろくでもねぇ祝福のおかげで、俺の四肢は時間経過で炭化してゆくんだがな。

 んで、退院した頃には数年が経過していた。
 事件の担当も変わっちまって、よく知らんが……調べた奴らが離反したらしく、村の事も組織の一級機密になってた。

 仇に近づく為にあちこちに潜った。
 敵討ちしか見てなかった。
 記憶が混濁してるのは、色んな『自分』がアレコレやってたからだろう。
 とにかく睡眠を削った。
 食事も削った。
 時間が惜しかった。
 それでも力は足りなくて、それでも死ぬことはできなくて。
 だったら……しなくても死なないなら、三大欲求なんてなくても良くなって。
 んなとしてたら、生きてるのか死んでるのかわからなくなって。

 それでようやく……旅人野郎の蕪頭(ただし本当にそんな頭だったかは何故か思い出せない)と混融含めて全員見つけて殺してやった。
 奴らの信仰は『不老不死』……なら俺に施された糞みてぇな祝福がそれなら、ハリボテもいいとこだ。
 代替が利く身体で生き延びる事が不老不死か?
 馬鹿じゃねぇの?
 あの邪神、テセウスの船の逸話とか知らねぇだろ絶対。
 パラドックス理論をぶつけたら、あの邪神様はなんて宣うだろうな?
 んで、俺が仇を倒し回った結果、なんでも村の跡地の炎が縮小したんだと。
 だから消えた今、全員殺せたはずなんだ。
 ……あれ? そうだよな?
 なんか引っかかるが……。

 ともかく、これで謎の水中発火ダムの件は完全に闇に葬られた。
 それでも俺という繋がりがあるからか、身体の熱が消えなくて、記憶は消えなくて。
 だから、『俺』が故郷が戻ることはない。

 ――熱さが嫌いだ。
 全てを奪うから。
 ならば冷たい方がいい。
 ――感覚をくれるから。

 最後の記憶は……時間軸が曖昧だ。
 というか、『俺』の記憶なのかどうかも怪しい。
 他の『自分』から又聞きした情報も混じってるからな。

 前置きが長くなった。
 仇討ちと並行して調べていたら、怨剣村斬丸の正体が分かった。
 混融の奴、最初からあの旅人野郎を使って村人を『信者化』するつもりだったんだ。
 村の連中を殺して仮初の不老不死を与えるようだったが……村の連中は邪神の想像よりも抵抗したようで。
 んで、激しく抗戦した村の連中は混融の怒りに触れた。
 混融は神格昇華で村の連中の魂の殆どを喰らい、残りカスを権能で混ぜ合わせた。
 結果、村の連中は溶けた鉄みてぇにぐっちゃぐちゃの一塊にされて、一振りの剣にされちまった。

 ――つまり、怨剣村斬丸は村のみんなだった。
 生きたまま剣に姿を変えられて一塊にされていた。
 だから、今なら聞こえる。
 柄を握って、耳を澄ますと、ほら。

『お前が余所者を連れてこなければ!』
『なんであんただけが生き残ってるだい!?』
『苦しい、苦しいよぉ』
『もう殺してくれ!』

 ごめんなさい。
 謝ったところで無意味だ、分かってる。
 皆とは俺であり、皆とは怨剣村斬丸であり、そして、俺と近しきもまた俺である。
 そして、贄であるが故に常に皆焼かれている。
 記憶なくしていて受け入れられた……と考えていた俺を基準とし、その場の諸々が押し込められたのが俺らであり、肉体性能も年齢も混ぜられて平均値(動植物含む)が取られたのが、今の俺だ。
 そして蕪頭野郎は俺の事を知っていた。
 だとしたら、俺は混融と面識があった?
 だから俺は混融に助けられたのか?
 そうだとしても、生きながら炭になるって、混融は趣味が悪すぎるだろ……。

「よお、木偶の棒。まだ生きてるか?」

 不意にあのクソ野郎の声が頭に響く。
 それは耳元だ。
 なぜ、と疑問が過るが、俺は数秒後には麻酔剤の影響で思考がぼやけていった。

「喜べよ。俺っちも神格昇華が出来たんだぜ? 俺も今じゃ立派な邪神様だ、敬ってへつらえよ」

 は?
 お前、俺が殺したはずだろ……?

「ふーむ? なぁ、お前は混融様を殺した気になってるが、本当に殺せたか確認したか?」

 何を、言ってやがる?
 俺は全員、ころ、した……?
 あれ……?

「はは、そういうこった。まぁ焦んなよ木偶の棒? そのうち会えるだろうさ。じゃあな」

 ま、まて……。
 話はまだ、終わって……。

「ああ、そういや名乗ってなかったな? 名無しだったあの頃と違ってな、今の俺の名前は――」

 創悪神・闇罹アンリ
 まだ、俺の復讐は終わってなかった、のか……?


 けっきょくおれはわたしはぼくおがみ・やのというそんざい
 だれかにつくられたそんざいだった?


「バイタル低下! 急いで!」
「尾守さんっ!? 聞こえますか!?」
「先生、尾守さんの意識が回復しました!」

 あれ……?
 俺、なんで、運ばれてるんだ?

 ぼんやりと眩しい手術台の照明を眺めている。
 主治医が告げた。

「驚きました。いきなり拘束を破ったと思ったら、怨剣村斬丸で自害するんですから」

 俺が、自害?
 おい、誰がやった?

 俺の中の人格は全員首を横に振る。
 ただ、不自然にぽっかりと『空席』の人格が、いつの間にかある事を俺は訝しんだ。
 あの席、誰だ……?
 さっきまではなかったぞ?

 で、ここで主治医が妙な事を聞いてきた。

「目が覚めたばかりですいませんが……闇罹アンリって誰の事でしょうか? 尾守さんの新たな人格……?」

 酸素マスクで覆われてて喋れない俺は、目で違うと訴えた。
 なんでここで奴の名前が出てくる?
 主治医は意を汲んでくれたようで答えた。

「尾守さんがそう名乗ったんですよ? この身体は闇罹アンリだと……」

 合点がいった。
 あの野郎、自分の身体の一部を俺に混ぜやがった!
 だとすれば、俺と奴は深層意識で繋がっていてもおかしくない!
 幻聴には、思えなかった。

 俺は酸素マスクを剥ぎ取ると、主治医へ言ってやった。

「その名を口にすんな。次は殺すぞ」

 主治医は顔を引き攣らせて無理矢理笑いやがった。

「ああ、それと」

 気まぐれに。
 こうも言った。

「施術のおかげで……『初恋』の相手の顔を思い出せた」

 俺がどう頑張っても俺が望む形で皆が助かることはない。
 何故なら、俺が皆の一部のため。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年01月15日


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