第二次聖杯戦争⑩〜甘美なる魔蛇宴の園
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猟兵に覚醒した妖狐七星将『巨門』は飄然と言ってみせる。
「僕らは戦争みたいな集団戦ではかなり役に立つでしょ!」
力になろうと降り立った戦場は兼六園。
大量のリリス化オブリビオンによって「悦楽の宴」が行われる、酒池肉林と変わり果てた園だ。
一線級の猟兵達と較べては見劣りするが、手に入れたユーベルコードはこのような戦場でこそ精彩を増すと、金彩の瞳に鋭い光を湛えた巨門は、己が露払いを務めようと進み出る。
「宴の中心部から絶えず放たれている香気は、餓魔王の遠距離攻撃無効化能力で食い止められる。君達は餓魔王を盾に儀式の主の所へ行ったらどうだろう?」
巨門の従える「尾」である巨大な蛙の妖獣「餓魔王」に守ってもらいながら、術者の懐を目指す。
宴の周縁部を守るリリス化オブリビオンは己が相手取るので、その間に「悦楽の宴」の術者を倒して欲しいと言った巨門は、間もなく闘争心全開で駆け出す。
「一騎当千とは言えないけれど、好きなだけ暴れてやろうっと!」
何のしがらみもなく「思いっきり殴っていい」状況は、多分、これが初めて。
「さあ、がんばるぞ〜!!!」
無論、闘争心全開なのは猟兵も同じ。
彼等もまた強く蹴り出し、巨門に続いて颯然の風となるのだった。
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宏大と幽邃、人力と蒼古、そして、水泉と眺望。
相兼ぬる能わざる六の景観を持した庭園「兼六園」は、石川県金沢市の代表的な景勝地なのだが、この素晴らしき庭園が大量の「リリス化オブリビオン」によって淫靡な景色に塗り替えられている。
池は万象を酔わせる酒に、木には生血を滴らせる肉が成り。
催淫の気によって人々は倮(裸)に、享楽の涯に魂を吸われるのだ。
「……術者が迸る香気が多くの民間人を魅了し、宴に集めているらしい」
危険な状態だと柳眉を顰めるは、枢囹院・帷(夜帷の白薔薇・f00445)。
幸いにして戦場には妖狐七星将『巨門』が居り、彼が周縁部を守るリリス化オブリビオンを薙ぎ倒してくれるので、我々は中央の「悦楽の宴」に突入して、儀式を行う術者を撃破しようと提案する。
「今、戦場は首魁『サバトクイーン』が放つ惑溺の香気に満ちており、これを嗅いでしまうと、心の奥底に秘める想いや意志をベラベラと話してしまう事になるんだが、餓魔王を盾にして進むと一切が無効化される」
民間人を淫靡に堕とす香気は、猟兵にとっても危険だ。
ひとたび馨香に触れるや、何か全てを打ち明けたくなるような、何もかもを晒して預けたくなるような気持ちになり、お口のチャックが全開になってしまうのだが、そんな恥ずかしさは餓魔王が打ち消してくれる。
「なので、餓魔王と一緒に儀式の中心部へ向かえば良い訳だが……妖獣の放つ脂は凄まじく汚く、ひとたび浴びれば三日は悪臭が取れないと云う」
ニンニクかな? いやそれ以上だとは帷の表情が示そう。
香気に触れさせる儘、告白しまくって術者の所へ向かうか、餓魔王の脂を被りながら進むか――どのように進んでも、サバトクイーンをやっつけて仕舞えば万事オッケー。
全ての説明を終えた帷は、ぱちんと弾指するやグリモアを喚び、
「君が何を口走るか、或いは如何な臭気を放つか……私は触れない事にしておくよ」
と、精鋭を送り出すのだった。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ゆうかり)こあらと申します。
このシナリオは、『第二次聖杯戦争』第十の戦場、無数のオブリビオンによって穢されつつある兼六園に妖狐七星将『巨門』と共に突入し、奪還作戦を行うボス戦シナリオ(難易度:普通)です。
●戦場の情報
石川県金沢市、日本三名園の一つにも数えられる「兼六園」。
大量の「リリス化オブリビオン」によって危険な「悦楽の宴」の場に造り替えられており、多くの一般人が囚われ、宴の犠牲にされようとしています。
●敵の情報:『サバトクイーン』(ボス戦)
全身に無数のヘビを絡みつかせた、妖艶で残虐なゴースト。
魅了の力によって集めた犠牲者同士を淫靡な儀式に没入させ、犠牲者達の快楽が最大となった瞬間に儀式を完成させようとしています。
かなり遠距離から本能を解き放つ馨香を放っており、これに触れると胸の奥に固く鎖している想いを口にしたくなるので、無効化する為に餓魔王の力を借りると良いでしょう。
●プレイングボーナス:『餓魔王を盾にして遠距離攻撃を防ぐ/餓魔王の脂を浴びないように戦う』
このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
また、このシナリオに導入の文章はありません。
先着で5名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 ボス戦
『サバトクイーン』
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POW : クイーンズスネーク
自身の【巨大なヘビ】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[巨大なヘビ]から何度でも発動できる。
SPD : 大蛇蹂躙
【彼女のヘビ】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : サバトへの招待
小さな【体に巻き付いたヘビ】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【サバト会場】で、いつでも外に出られる。
👑11
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愛宕院・燐樹
文字通りの酒池肉林、折角の風流なる景勝が台無しですわねえ。
これ以上の酸鼻を晒す事態に至るより先に解決致しませんと。
蝦蟇王に盾となって貰い、術者のもとへと向かうと致しましょう。
振りまかれる脂は、妖神宝珠から放つ【念動力】で斥力場を形成して弾き、身体に浴びる事態を回避。
ついでに、敵からも身を隠し私の存在を隠匿する助けとなりますでしょうか。
蝦蟇王が敵の近接間合いに入ったと判じた段階で跳躍、蝦蟇王の頭上を飛び越えて敵を強襲。
降下の勢いと【怪力】を籠めた一撃で殴り倒しマウントを取り、我式・暴禍拳嵐にてボコボコにしてくれましょう。
そのお顔、原型を留めおけますかしらね?
「餓魔王樣。御力をお借りします」
丹花の脣を淸かに滑る、美し大瑠璃の囀聲。
聲の主たる愛宕院・燐樹(紅珠媛・f06887)は、妖狐七星将『巨門』が從える「尾」たる巨蛙へ歩履を寄せながら、纎手に握れる百八色妖神光珠に念を籠めると、己の周囲に浮遊させるや斥力場を形成した。
「……
次に私の存在を隱匿する助けとなりますでしょうか」
これで鮮美なる遠野友禅や玉肌香膩が穢れる事も無し、敵の目も欺けようか。
のっしのっしと動き出す大蛙を盾に悠然と「悦楽の宴」に向かった燐樹は、玲瓏と煌く金瞳に広がる陰惨な景色に、はぁ、と溜息を置いた。
「文字通りの酒池肉林……風流なる景勝が台無しですわねえ」
眼眦に遣り過すは
頽廢の園。
術者が放つ淫靡な香氣に蠅の如く群がった者達が、狂熱を帯びる軆より嫋音嬌聲を上げて悦樂に耽る樣は悍ましく、また其の魂を饗饌とするなど冒瀆が過ぎよう。
「これ以上の酸鼻を晒す事態に至るより先に解決致しませんとね」
言って、黑艶の睫が凛と持ち上がった時だった。
巨門が宴の周縁部に切り込み、餓魔王の巨躯が術者『サバトクイーン』の間合いに入った瞬間、燐樹も動く。
「――失礼」
きゅっと鼻緒を踏み込むや巨蝦蟇の頭上を輕々飛び越えた佳人は、我が影を瞳に追う術者を眼下に敷く。
忽ち鎌首を擡げたのは紫の大蛇で、燐樹を飲み込まんと大口を開けて迫るが、彼女は芙蓉の
顏に微笑を湛えた儘、閃々と翩る袖より玉臂を暴くや拳を握り込めた。
『シャァァァアアアッッ!!』
「――あらあら、元気が宜しいこと」
佳聲は柔かく嫋々と、同時に閃く拳は戰槌の如く猛々しく。
巨蛇の吻を捉えたのは、【我式・暴禍拳乱】――獲物を見るなり暴力衝動を剥き出しにした兩拳は先ず蛇を亂打し、穿穿穿穿穿ッと鋭牙を砕くや、強靭な蛇腹に閃拳打突を衝き入れたッ!
『ギシャァァアアアッッ!!』
『!! わたくしのかわいいぼうやが……!』
大蛇の女王が喫驚に目を瞠る最中も亂打は止まらず。
降下する勢いで推進力を増した燐樹は、巨樹ほど大きくなった蛇に一撃を呉れて抉じ開けると、直ぐさま見えた女王の躯に馬乗りに、そのまま強烈な拳を振り下ろす――!
「そのお顏、原型を留め置けますかしらね?」
『ッ、ッッ――!!』
玉雪の美麗しき纎手は凶器。
目下、蛇の女王の眼路いっぱいに其が灼け附いた。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
兼六園。そういえば故郷(サクラミラージュ)にも同じような場所があったっけ
敵の影響もあってか、随分と様変わりしたもんだが……とにかく、攻略を開始するとしよう
協力を拒む理由もないので、餓魔王を盾に
戦闘中だし、集中すれば異臭も無視できる……とはいえわざわざ油を浴びる理由もないし
神刀を抜いて、自分の方に飛んできた油に斬撃波を放って、弾き飛ばしつつ進んでいこう。完全に無力化はできなくとも、直接浴びるよりマシだろう
首魁の元に辿り着いたら、再度遠距離攻撃を使われないように上手く近距離に居座ろう
噛みつきにきた蛇に斬撃波で怯ませて、壱の型【飛燕:重】
斬り上げで蛇を切り倒し、斬り落としを本体に叩き込もう
相反する六の美觀を兼ね揃えるという名勝「兼六園」。
幻朧桜が咲き亂れる故郷でも、慥かこのような庭園があったと記憶が過るが、眼前に広がる光景は如何だろう。
「……香氣の影響か、随分と樣變わりしたもんだ」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の瞳にも、
太甚しい冒瀆が映ろう。
頽廢を前に闘志を萌した靑年は、傍らに佇む巨大な妖獸を瞥て云った。
「兎に角、『悦楽の宴』の中心へ――攻略を開始するとしよう」
妖狐七星将『巨門』の協力を拒む理由も無し。
彼の尾たる『餓魔王』を盾に据えた鏡介は、遠距離攻撃無効化能力の恩惠に大いに与りつつ、淫靡の園を進む、
晋む、
前む。
「――これで惑溺される事は無いだろう」
巨蝦蟇は恐ろしい悪臭を放っているが、集中して呼吸力を整えれば無視出來る。
問題は
脂油の方だが……と、疾ッと噴き上がる油滴を烱瞳に追った鏡介は、直ぐさま神刀【無仭】を抜いて一閃! ひやうと疾る斬撃波に油を彈き飛ばし、或は兩斷して軌跡を變え、我が身に降り掛からぬよう振り払った。
「わざわざ油を浴びる理由も無いし、多分、これ位が適当だ」
完全に無力化は出來なくとも、直接浴びるよりは
愈。
大蝦蟇を盾にして進む利点と欠点、その中庸を進撃速度と合わせて上手く調整した鏡介は、ちょうど巨門が周縁部を打ち崩した瞬間に敵陣に割り入り、首魁を捉えるや一氣に踏み込んだ。
『シャァァアアアッッ!!』
(「――先ず大蛇が來るのは想定済み」)
幾丈もある巨蛇が須臾に鎌首を擡げ、鏡介の頭を嚙み砕かんと鋭牙を剝く。
蓋し彼は更に前進して刃鳴一揮ッ! 巨蛇の大口近くに踏み込んで斬撃を嚙み合わせた!
『ギシャァァアアッッ!!』
「怯まず、寧ろ怯ませる」
敵懐に迫れば迫るほど、鏡介の五感は刃の如く研ぎ澄まされる。
巨蛇が鎌首を退けた刹那、森羅万象を斬る神刀は、壱の型【飛燕:重】!
下段から白光一条を伸ばすや、巨樹ほど大きな蛇腹を斬り上げ、濤ッと鮮血を躍らせた。
『ゼェァァッ!!』
『ッ、なんということ――!』
眞紅に染まる愛蛇を見上げる間も無い。
綺羅と光った劔筋は燕の如く翻り、今度は膂力いっぱい蛇の女王目掛けて斬り落とされる――!
「儀式は畢りだ」
而して須臾。
怜悧なテノール・バリトンを滑らせる佳脣が、しとど返り血に濡れた。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
本来ならそのうちに嫁と観光目的で来たかった場所なんだがな
ったく、リリスって言うか、ゆりゆりの奴には困ったもんだぜ
【戦闘】
「(巨門に)随分と楽しそうに暴れているようで何よりだ」
「こっちのことは気にすんな。思うようにやってくれ」
サバトクイーン、リリスの典型みたいなやつだな
快楽の儀式を行わせるって意味ではここに置くのが最適の奴だ
戦闘能力も決して低くは無いが、魅了の香りを蝦蟇王の油で防げるなら、やりやすい位だぜ!
UCの力でヘビとガマの油を「見切り」で回避しつつ進軍
攻撃可能な範囲に入ったら、「斬撃波」「切断」で敵を攻撃
巨門に敵の攻撃の予測を伝える
上手くかわしたつもりだけど、後で風呂入らねえとな
刹那、熾えるような緋髪を巻き上げていく爽風を瞳に追う。
その風こそ、妖狐七星将『巨門』――先駈は任せろと疾る彼を送った暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は、佳脣に小気味佳い微笑を湛えた。
「――樂しそうで何よりだ」
巨門が望む儘、存分に暴れて欲しい。
而して己も奮起しようと、彼が從える「尾」たる妖獸を仰いだ魎夜は、己の経験と歴代ストームブリンガーの記憶を呼び醒すと、間もなく噴き上がる蝦蟇の脂を飄と躱した。
「何せ視た事あるからな。軌跡や落下地点が判る」
自ずと躯を突き動かすは、【
銀の嵐の記憶】。一度見た技は通じぬと脂を回避した魎夜は、この蝦魔王を盾に進撃を始めた。
「こっちのことは気にすんな。思うようにやってくれ」
巨門の背にそう聲を掛け、酒池肉林の園を突き進む。
品佳い鼻梁を「悦楽の宴」に結ぶ一方、広い視野を心掛ける瞳には淫靡な景が飛ぶように過ぎよう。
(「本来なら、嫁と觀光目的で來たかった場所なんだがな……」)
そのうち雪女の妻を連れて訪れたかった名園、兼六園。
今は頽廢の園と化しているが、術者を倒せば元に戻って呉れようか――不覺えず溜息が零れる。
「ったく、リリスって言うか、ゆりゆりの奴には困ったもんだぜ」
蓋し今はと、陽光燿う瞳を注ぐは、儀式の中心に覗いた首魁。
巨門が周縁部を切り崩した瞬間に見えた香氣の主を捉えた魎夜は、烈々と灼える魔劍を振り被ると、大きく踏み込み業火一閃ッ! 先ずは大蛇に猛炎を叩き附けた!
『シャァァァ嗚呼ッッ!!』
巨大化が徒と成ったか、大きな的に熱撃と痛撃を受け取った大蛇が激しく踠打つ。
この隙に蛇の女王を捉えた魎夜は、水平に眞一文字の斬撃を放って彼女を追い立てた。
「サバトクイーン、リリスの典型みたいな奴だな。快楽の儀式を行わせるって意味では適任だ」
『! 魅了術が、利いていない
……!?』
「蝦蟇王のお陰だぜ!」
戰鬪能力も決して低くは無いが、敵の優位を潰せば更に戰い易い。
本体から放たれる催淫の馨香を無効化した今、脅威は彼女が操る大蛇のみ。その大蛇も的を大きくしてくれるなら、後は巨門と同樣、思いっきり殴るだけだ。
「巨門! 蛇に喰われないよう気をつけろ! 折角の異能が
模倣されるぞ」
共鬪する巨門に呼び掛けつつ、己は正面の巨蛇めがけて滅びの業火を亂打する。
大きな手應えを得たのは、巨大な尻尾が宙空を躍った時――切り離された蛇尾を烱瞳に追った魎夜は、返り血に頬を叩かれると同時、べっとりとした感触を得る。蝦蟇の油だ。
「……上手く躱したつもりだったが、後で風呂入らねえとな」
手の甲に拭う其は、何とも言えない悪臭を放っていた。
大成功
🔵🔵🔵
真月・真白
本体である歴史書がまかり間違っても汚れないように、慎重にしっかりと包みます
あとはゴーグルとマスクをつけて餓魔王を盾に進みましょう
マスクをしていても匂いが入ってくるぐらい強烈ですね……脂で脚を滑らせないように気を付けつつ進みます
此方の攻撃が届く所まできたらUC発動させてとっとと倒してしまいましょう
様々な世界様々な時代の弓矢や銃器や遠距離魔法が蒼炎によって再現されて撃ち抜きます
さて、終わった後の脂の処理ですが…僕達ヤドリガミは器物こそ本体で、この人の身は仮初のものなんですよね、なのでいったん消滅させて、綺麗な姿で再出現させればOKです
それをやる前に他の方の脂落とし等を手伝いましょう
「――では、宜しくお願いします」
此度、透徹と澄めるテノールがくぐもって聽こえるのは、氣密性の高いマスクの所爲。
雪嶺の鼻梁から佳脣までを防護マスクで覆った真月・真白(真っ白な頁・f10636)は、更に眼部を覆うゴーグル越しに『餓魔王』を仰ぐと、のっしのっしと進み出す妖獸を盾に戰場へ向かった。
「っっ、……マスクをしていても匂うとは……」
強烈な悪臭に瞳が白黑する。
不覺えず手を遣るのは、胸懐に隱した「白紙の歴史書」――罷り間違っても“本体”が汚れてはならぬと慎重に包んだ真白は、脂で脚が滑らないよう注意しながら、「悦楽の宴」の中心を目指した。
(「遠距離攻撃を無効化するというより、近接する臭氣が圧倒的過ぎて馨香が気にならなくなるというか……」)
この儘向かっても脅威になるのではと思いつつ、大蛙と共に前進する。
妖狐七星将『巨門』が敵陣の周縁部に切り込んだのは間もなくの事で、リリス化オブリビオンが蹴散らされた瞬間に首魁を捉えた彼は、差し示した指先に蒼炎を紡ぐや、英姿を靑白く浮き立たせた。
『シャァァァアアアッッ!!』
「とっとと倒して仕舞いましょう」
巨大化した蛇が鎌首を擡げるが、狙いを定めたのは真白も同じ。
大蛇が鋭牙を剝くより早く、樣々な世界、樣々な時代の飛び道具を具現化した彼は、全ての的を一にして射出する!
「弓矢、クロスボウ、火槍……鏃を彈丸と變えては銃に砲。魔彈も射撃武器となるでしょう」
世界は『
過去』を棄てる。
然ど人は『未来』への道標として『
過去』を遺し刻む。
此れを『歴史』という。
「
標的が大きくて撃ち易いですね」
『ギシャァァアア嗚呼ッ!!』
巨きな蛇腹に一斉に放たれるは、【
蒼炎が再演せし射手の『年代記』】!
全身を悉く撃ち抜かれた大蛇は、赫々と鮮血を踊らせながら蜿打ち、猶も注ぎ込まれる弓箭銃彈が、首魁をも血斑に染め上げた。
この間にも餓魔王は脂を雨と降らせるが、實の處、処理には困らない真白である。
「――儀式を畢らせた後は、僕も一度“禊”をしますか」
凡そヤドリガミは器物が本体。
この人の身は仮初のものにて、一旦消滅させた後に再出現させれば問題ナシと佳顏を涼しくした彼は、
「脂落としを手伝います。――どなたかお困りの方は?」
と、月色の麗瞳を巡らせ、仲間の猟兵を気遣うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風 属性:風
これまたお正月から騒がしいんですよねー。
ご好意に甘えて、餓魔王を盾にしまして…脂は、陰海月と霹靂が結界張ってくれましたので、それで防ぎまして。
さてと…その宴に終焉を。早業によるUC。同時に漆黒風も投擲して、蛇を潰すように。
ああ、餓魔王殿。大丈夫だとは思いますが、どっしり構えず、抵抗するように。吸い込まれてしまいます。
※
陰海月と霹靂、ぷんすこしつつの結界!
今年こそはお正月、と思ったのに!元旦にお餅とおせち食べた!凧揚げしたかった!
もちろん抵抗する!
「ぷきゅー! ぷきゅぷきゅっ!」
陰海月は激怒した。
必ず、樂しいお正月を剥奪した邪を除かなければならぬと決意した。
「クエーッ! クェェエクェッ!」
霹靂も激怒した。
必ず、おめでたい年明けを不穩な空氣に塗り込めた悪を除かなければならぬと決意した。
「……ええ、今年こそ皆でゆっくりお正月と思ったんですけどねー」
ぷんすこと不滿を訴える彼等の言を代わる、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)。
慥かに陰海月は元旦にお餅とお節を食べたかったし、霹靂は冬の空に揚がる凧と一緒に遊びたかったろうと、優しく撫でて慰めた義透は、我が正面、兼六園を遠望する。
「これまたお正月から騒がしいんですよねー」
瞳に映るは淫蕩の景。耳を掠めるは嫋音嬌聲。
而して眞直ぐ結んだ鼻梁には、催淫の香氣が触れようか――己が淫樂に堕ちるより先、傍らに佇む妖獸を瞥た義透は穩やかに呼び掛けた。
「巨門殿のご厚意に甘えて、盾にさせて頂きますよ」
チロリと視線を寄越したのは、妖狐七星将『巨門』の尾たる妖獸『餓魔王』。
彼が香氣を無力化してくれるのだが、彼が噴く脂は……陰海月と霹靂が気合十分で張った結界が禦いでくれよう。
「では、參りますか」
悦楽の宴に終焉を――。
此度の儀式は名園に不相應と踏み出た義透は、先行する巨門を追って宴の中心部へ、かの猛将が周縁部を切り開いた瞬間に切り込み、首魁の邪影を捉えた。
「ああ、餓魔王殿。大丈夫だとは思いますが、どっしり構えず、抵抗するようにお願いしますよ」
大蛇に睨まれて竦む大蛙ではあるまいが――と。
敵を間際にしても餓魔王を気遣うほど餘裕があるとは、流石は第一線で戰う猟兵。
「如何な巨体も吸い込まれて仕舞いますからねー。お気をつけを」
小さな蛇は振り払うようにと注意を喚起しつつ、然し己はその小さな蛇こそ一匹も逃さぬと【四更・雷】――幾丈の稲妻を迸って降り注ぎ、蛇らを次々と灼き貫いた!
「基本は呪いませんけれど。オブリビオンなら別ですよ?」
矢雨と降る雷と共に射掛けられるは、四悪霊其々の呪詛。
『疾き者』の風、『静かなる者』の氷雪、『侵す者』の炎、『不動なる者』の重力が鋭鏃となって飛び込むと同時、棒手裏劍の漆黒風も擲げ込まれれば、忽ち一帯が赫く染まろう。
「――これは失礼を。餓魔王殿にも掛かっていませんか?」
脂の代わり鮮血をしとど浴びた義透は、少し申し訳なさそうな表情で大蛙に聲を掛けるのだった。
大成功
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煙草・火花
むぅ……なんとも厄介な
それに巨門殿と飢魔王殿の助力は心強いのでありますが、これはその……乙女的には……
はっ。いやいや、小生は乙女である前に世界を守護せんとする學徒兵の一員!
この程度の苦難などなんでも……なんでも、ないので、ありますっっ!!
言いながら、飢魔王殿を盾にして攻撃を防ぎながら前進
ああは言いつつも少しでも脂と臭いに抵抗しようと、外套を被るようにして進んでいるのであります
間合いが届く所にまで踏み込めたならば
ええい!
この鬱憤は貴女にぶつけさせてもらうでありますよ、いざっっ!!
掛け声と共に一気に爆発の踏み込みで加速
巨大化したヘビの動きを翻弄するように加速と方向転換して接近して斬るのであります!
闇雲に攻め掛れば、宴に辿り着くより先に淫蕩に堕とされる。
故に妖狐七星将『巨門』は露払いに疾り、猟兵には「尾」を盾に進むよう言ってくれたのだが――。
「むぅ……なんとも厄介な」
「ゲコリ」
ぱちぱちと瞬く黑艶の睫を持ち上げ、巨大な赤蛙と瞳を合わせる煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)。
こうする間にも、妖獸『餓魔王』はベトベトとした脂を噴くのだが、強烈な悪臭を放つ油滴が眼路を過った時には、ぞわぞわぞわっと輪郭が波打つような悪寒が疾る。
「巨門殿と餓魔王殿の助力は心強いのでありますが、これはその……乙女的には……ひっ!」
ほた、と一滴。兩腕を覆う繃帯に脂が落ちる。
齢十六のうら若き乙女には、少々、いやかなり衝撃的な穢れ(激クサ)であろうが、美し瑠璃色の瞳がぶぁぁあっと潤むところ、火花はぎゅっと拳を固めて氣合を入れ直した。
「いやいや、小生も世界を守護せんとする學徒兵の一員! この程度の苦難などなんでも……」
今度は帽子にポタッ。
「なんっ……なんでも、ないので、ありますっっ!!」
餘りの異臭に瞳は白黑、雪嶺の鼻梁は捥げそうだが、火花は超・超・超ガマンして大蛙と共に一歩を踏み出した。
目指すは「悦楽の宴」、催淫の香氣を放つサバトクイーン。
名園を酒池肉林と變えた首魁をやっつけるべく、火花は餓魔王を盾に戰場を征く。
「……外套を被っていれば、多少は禦げるでありますか……っ」
耐熱式外套にまるっと包まりつつ、光を失わぬ靑瞳を眞直ぐ進路に向けていた少女は、間もなく巨門が周縁部を抉じ開ける瞬間を見たろうか。数多のリリス化オブリビオンが蹴散らされる中、その中央に大蛇が覗く。
「ッ……ええい! この鬱憤、貴女にぶつけさせて貰うでありますよ!」
まだ遠いかと思われる距離も、火花には充分な間合い。
凛然と発聲するや足元で可燃性ガスを圧縮させた可憐は、【帝都桜學府流剣術 桜火ノ型 参式 万雷】――!
「いざっっ!!」
踏み込むなりガスを爆発させて超加速ッ、縮地の如き神速移動で敵懷へ侵襲した火花は、瞬時に抜刀して一揮!
繊手に握れる七◯◯式軍刀丙を水平に斬り払い、大蛇が鎌首を擡げた瞬間に血飛沫を踊らせた。
「そう簡單には模倣させないであります!」
『ギシャァァ嗚呼アアアッ!!』
一太刀呉れた後は再加速して離脱し、飛燕の如く翻った後はガスの爆熱を連れてまた斬る。
捕食されては堪らぬと、變幻自在に機動した火花は、今度はすっかり翻弄させたヘビの瞳を白黑させるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
兼六園には一度伺いたいと思っていましたが…。
こうも台無しにされているのは不快ですね。
元の兼六園を歩きたいです。
「よ…し…お願…し…す…」
とても申し訳ないことですが餓魔王を盾にします。
闘う前に謝罪というか…一言だけ言っておきますね。
リミッターを解除したのちに限界突破し準備をしておきます。
属性攻撃と貫通攻撃に鎧無視を付与し【蒼閃『御神渡』】を。
相手は蛇のオブリビオンのようなので冷気に弱いと考えます。
餓魔王の背後から『国綱』の突きで技を繰り出そうと思います。
狙いはサバトクィーンの動きをなるべく鈍くさせることですね。
冷気は周囲にも影響を与えるので大蛇の動きを制限できるかも。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
説明聞くと近寄ったら魔香でダメみたいだねぃ。
…でも僕は墨ねーみたいな波動技ってないんだよ。
いいや蹴っちゃえ♪蹴っちゃえ♪
墨ねーの冷気の波動で冷たくなった今なら大丈夫♪
多分大丈夫だよ。きっと!うん。問題ないッ!
いつものよーにパフォーマンスで身体強化するよ。
次に封印を解いて限界突破して多重詠唱開始する。
オーラ防御してから動きを見切りつつダッシュ。
オブリビオンのねーちゃんに接近して【禁じ手】。
蹴る時に2回攻撃と重量攻撃に鎧砕きを。
巨大化した蛇が襲って来たらその蛇を先に蹴るじぇ♪
頭に踵落しがいいかな。思いっきり…え?庭壊すのダメ?
「うー? 此處が……兼六園……?」
六の対照の美を備えた名園と聽いて來たが、眼路に広がるは
頽廢の園。
池に滿つ酒精の馨、赫々しい肉の血の
瀝――餘りに悍ましい景色にロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)が頭をふるふると搖すれば、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)もこれ程の冒瀆は無いと佳脣を引き結ぶ。
「……こ、んな……」
兼六園には一度、足を運びたいと思っていたのだ。
かの美觀は天惠に非ず、全て人が丹念に手を加えたもの――魔手が入る事で斯くも台無しにされるとは思わなかった墨の胸裡が、ザワ、とさざめく。
噫、嗚呼。
耳目を掠める淫靡、嫋音嬌聲を直ぐにも掻き消したい。
「……元、の……兼六園、を……歩き……たい……です……」
「儀式を行ってるっていう術者をやっつければ、元通りになってくれるかな?」
蚊の鳴くような纎細い聲に不快を滲ませる墨の隣、ロベルタが今しがた立ち昇った旋風を指差して言う。
旋風の正体は、妖狐七星将『巨門』――リリス化オブリビオンが繰り広げる「悦楽の宴」の周縁部から切り崩さんと露払いを預った猛者で、彼が切り開いて呉れるらしい。
その彼が猟兵に勧めたのが、大蛙『餓魔王』。
この妖獸を盾にして進めば、催淫の香氣を無効化出来ると説明を受けたが、果たして「盾」に使って良いものかと、申し訳なく思う所が墨の優しさだろう。
佳人は脂や悪臭より気にする事があると、餓魔王にとてとてと歩み寄ってぺこり、
「……あ、あの……よ……し……お願……し……す……」
すみませんと、お頼みしますと、そんな想いを籠めた一言を添えて翳陰に隱れる。
而して墨がちょこんと収まれば、ロベルタも寄り添っての前進が始まろう。
「盾というか、壁みたい! 魔馨が効かなくなるなんて凄いねい♪」
噴き出る蝦蟇の脂は――オーラを身に纏っておけば良かろうか。
ちみちゃい墨と、ちまっこロベルタと、でっかい餓魔王。
先行する巨門を追って戰場を進んだ一同は、軈て狂氣の中心へ――「悦楽の宴」に至った。
†
「……見え……まし、た……」
龍尾の如く衝撃波が疾った瞬間、墨が切揃えの前髪の奧で烱瞳を絞る。
巨門が強襲に成功したか、亂れ散る敵群に巨蛇と裸女を捉えた彼女は、餓魔王の翳陰からゆうらと影を滑らせると、さやと暴ける粟田口国綱に巫力を注ぎ、みるみる低温を帯びていく。
「響け……」
極限まで高められた巫力が臨界を超えて
迸發ったのはこの
瞬間。
水平に眞一文字に一揮した劍尖が戰塵を斷つや、冱々と翔け疾る蒼閃【御神渡】――魂魄まで
凝結させる絶対零度の凍氣が戰場に広がり、周辺のリリス化オブリビオンを巻き込みながら何もかもを氷らせ始めた。
「……相手は、蛇……。体を、大きくすれば……する、ほど……熱が……
鹵掠われる……筈……す……」
『シャァァアアア嗚呼ッッ!!』
この場合、大蛇を巨大化させたのは悪手。
隆々と盛り上がる氷堤に咬み附かれた大蛇は、更に弱点を攻められて、一気に挙動を鈍らせる。
『嗚呼、なんて事……! 折角、悦樂の熱でわたくしの軆も昂ぶっていたのに……!』
而して凍えたのは、儀式の主たるサバトクイーンも同じ。
急激に体温を下げる蛇たちにふるりと身震いしたのも一瞬、蛇の女王の魔眼には、いつの間にか銀髪の少女ロベルタが肉薄しており、可憐なるポニーテールを踊らせながら終焉の幕を引きに掛かった。
「いいなー、墨ねー。僕は遠距離からでもいける波動技って持ってないんだじょ」
『……近、い……ッ!!』
「いいや蹴っちゃえ♪ 蹴っちゃえ♪」
何でも
熟せる墨が羨ましいと、佳脣を愛らしく尖らせてはみたものの、持たぬ事を嘆く少女では無い。
元気いっぱい、前向き志向なロベルタは全力前進ッ! 晴れ晴れとした笑顏の儘、己の間合いまでダッシュすると、花脣に祕呪を唱えながら【
禁じ手】を放ッた!
「Non puoi scappare! È rimasto solo il risultato della combustione――!」
凍てる波動に動きを止められた彼等は決して逃れられぬ。
炎の属性魔法に更に炎の属性魔法を重ね掛けたロベルタは、蒼穹へと蹴り上がるようなキックを一閃!
「多分大丈夫だよ。きっと! うん。問題ないッ!」
『ッ、ッッ――!!』
瑞々しい脚より繰り出る蹴撃は宛ら戰鞭。
禁忌の一撃を叩き附けた少女は、刹那、苛ッッッと火柱を噴かせて「燃やした結果」を刻んだ。
『キャァァアア嗚呼嗚呼ッ!!』
『ギシャァァァアアアア!!』
女王の躯に巻き付いた蛇らも、これ程の焦熱を浴びてはロベルタを吸い込めまい。
急激に冷やされ、また急激に熱された蛇らが蜿打つ中、蒼穹へと駆け上がった少女は墜下しざまもう一撃!
サバトクイーンの腦天に踵を落とし、酒池肉林を犯した者を炮烙の刑に処さんとした。
「墨ねーを悲しませたぶんだけ、思いっきり――!」
「……あ、の……庭を……壊す……の、……は……っ」
「え? ダメ? じゃあ一点集中で!」
遠くで墨が纎手をぱたぱた、焦ったように「庭の破壊はNG」と表情で訴えるので、インパクトを絞る。
見事に調整された赫炎の蹴撃を喰らった蛇たちは、悦樂から煉獄へ、儀式の完成を見ずして散るのだった――。
大成功
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