アイ・ブラックウィドー
アイがシスカさんに手作りカレーを作ってあげます。
ですが、料理が壊滅的に下手なアイ。
当然ながら料理とは呼べない何かが出来上がります。(キッチンは大惨状)
しかし、アイは、ズタボロになったエプロン姿で、上手にカレーができたという自信に満ちた笑顔。
「さあ、シスカさん、召し上がれ」
果たして、シスカさんの運命やいかに!?
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それは、アイ・ブラックウィドーがシスカ・ブラックウィドーと結婚してすぐ後の事……。
「シスカさんの為に、今日はご馳走を作ります!」
その日、アイは決意を胸にキッチンに立っていた。夫のシスカは本日は急な予知が入った為、グリモア猟兵業務で絶賛残業中。そこでアイは愛するシスカの労をねぎらうべく、手作りカレーを作ろうと思い立ったのである!
カレー。それは小学生の調理実習にも利用される、比較的簡単な料理である。上を見ればもちろんキリはないが、レシピ通りに作れば誰でもそれなりにおいしく作れる――そういう料理である。
「まずは、フライパンを熱するところからですね! 油、油……えっと……GUN OIL……オイルということは、これですね!」
だがそれは、ある程度料理の基礎知識がある人間の場合に限る。アイはキッチンの上の戸棚から、シスカが武器の手入れに使用している『ガンオイル』を引っ張り出した。ガンオイルとは、その名の通り銃火器の整備に使用するオイルである。黒いボトルからだばだばと惜しげなくオイルをフライパンに垂らしたアイは、フライパンを熱するべくガスコンロの点火スイッチを探した。
「おかしいですね……火が点きません……壊れてるんですかね?」
アイは点火ボタンを連打しながら首をかしげた。それもそのはず。アイはガスの元栓を閉じたまま、点火スイッチを押していたのだ。
「あ、もしかしてこのダイヤルも点火装置でしょうか?」
カチカチカチカチ。アイはガスの元栓をいきなり全開にした。
※危険ですので絶対に真似をしないで下さい。
「これで火が付くはず……えい」
ぽち。その瞬間、最大火力でガスコンロが火を吹き、アイがこぼしまくっていたオイルに引火。フライパンは瞬く間に燃え上がってしまった。
「きゃー! いけません! 急いで消火しなくては! くっ! しかし私が消火に使えそうなユーベルコードはこれしかありません! サイバー・マジカルパワー!」
大慌てのアイは星型のバトンを天に抱げてポーズを取る。その直後、アイはヘキサゴンパネルのエフェクトに包まれ、電脳魔法少女デジタル☆アイへと変身した。
「電脳魔法であなたの魂、砕いてあげますっ! OS☆クラッシュ!」
ちゅどーん。次の瞬間、キッチンは大爆発した。
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「こ、これは一体!? キッチンが死んでる!」
帰宅したシスカは、モデルルーム状態となっていた我が家の惨状に驚きの声を上げた。空爆でもされたか、あるいはここでオブリビオンとの戦いが繰り広げられでもしたのだろうか。シスカはアイの安否を確認する為、大急ぎで玄関へと駆けこんだ。
「あ、お帰りなさい、シスカさん! 私、カレーを作ったんですよ! 初めてにしては上出来だと自負しています!」
アイはズタボロになったエプロン姿で、テーブルに置かれたカレーをシスカへと示した。その表情は自信に満ちた笑顔だ。
(こ、この紫色の謎の汁がカレー……? ボクには有毒物質にしか見えないけど……)
妻の眼鏡の度はちゃんと合っているのか。シスカは訝しんだ。
「さあ、シスカさん、召し上がれ」
「う、うん。ありがとー」
シスカは引き攣った笑顔のまま、恐る恐るスプーンをカレー(?)に付けた。そして、それを口元に運ぶ。
「おいしい! おいしいよアイさん!」
シスカは涙を流しながら、美味しそうに(演技LV90)カレーをほおばったが……。
「がふっ!」
しかし、ついにシスカの胃袋が限界を超えてしまった。
「ああっ! シスカさん!?」
「アイさん……ボクは最期まで君を……愛して……」(ガクッ)
「シスカさーん! シスカさーん!」
シスカは近所の病院に緊急搬送された。
成功
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