10
第二次聖杯戦争③〜炎獄の爪

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #執筆中


 その獣経ちは“揺り籠の君”の声を聴いた。そうして獣達は考えようとした時、大きな獣フェンリルが一吠え。
 “そうだ、そうだ、いかなくちゃ”
 “おうさまが いけにえをほしいって”
 ちをあつめなきゃ。
 にくをあつめなきゃ。
 いのちを、あつめなきゃ。

 駆け往く獣が肉を切り骨を断ち、命を引き摺ってゆく。

 “たすけて”と鳴いたいのちを、斬る。
 “こないで”と暴れたいのちを、噛み砕く。
 呻いただけのそのいのちを、くべてしまおう。
 もっと。もっと。――あぁ、もっと。
 炎にくべよう、生命を。
 集めて積み上げ、宴をしよう。
 いけにえだ!いけにえだ!ぜんぶぜえんぶ“いけにえ”だ!

 嘗て斬り伏せられたはずの焔が遠吠え指示をする。
 もっともっとと燃えている。ああ、ならば――……焔の爪先たる我らは、往かなければ。


「ごきげんよう、皆様。ふふふ、年も明けたばかりだというのに誠に忙しいくて叶いませんね?」
 “嫌になってしまうわ”と楚々と微笑む壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)の瞳は、笑っていなかった。
 年明け早々の杜環子からの呼び出しは聊か火急のもの。誰もが穏やかな年明けを喜ぶはずが一転、簡潔に纏められ文字だらけの資料に添付されていた2枚の写真は双方獣。
「此度は獣狩りでございます……まことに欲しい頸は嘗て銀誓館学園が魔狼と呼びし巨獣、フェンリル」
 その名に、席を立ち瞠目する者もいた。
 その名に、拳を握り震わせる者もいた。
 その名に、纏う空気も、視線も、何もかも鋭くする者も。
 パン、と一つ杜環子が手を打つ。
「せっかちは宜しくないわ、わたくしのお話しは最後までお聞きになって?」
 “もうっ”と怒ったような顔をした杜環子だが、剣呑な空気が落ち着いたところで再び口を開く。
「そう、フェンリル。ですがフェンリルに近づく前に、皆様には根こそぎ贄にされそうな命を救っていただきたく存じます」
 杜環子曰く、フェンリルは添付写真に写る“ソードヴォルフ”の親玉。
 本来早期に打ち取るべきではあるが、打ち取る間に一つ街が潰滅させられようとしている。だから先に町の住民を救って欲しい、と。
この世シルバーレインは世界結界という薄壁に人々が守られているのは事実。ですが――物理的な暴力は、別でございます」
 放っておけば人々は容易く蹂躙されるだろう。
「わたくし達が根こそぎ獣を狩るのです。妖獣化オブリビオンとなったせいで件の狼は“暴力衝動に支配されており、単純な思考”しか行えませぬ」
 杜環子がわらう。
 くふくふと悪戯っ子のように笑って見せて、広げた地図の上に奔らせる赤いペン。
「此処――香林坊商店街含め付近半径500m。皆様ならば爪痕一筋さえもお許しにはなりますまい。そして皆様にお気を付けいただきたいのが、市街戦にはなりますが街への損壊は無しにしていただきたく」
 細い指先の撫でた鏡が輝いた。
「殲滅叶い次第、大本の頸を一つ取りにまいりましょう?お帰りをお待ちしておりますわ」


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 守るための戦いを始めましょう。

●注意:こちら一章のみの『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオです。

●プレイングボーナス!:妖獣化オブリビオンの性質を突いて戦う/商店街の一般人を守って戦う。


●第一章:魔狼が爪先『ソードヴォルフ』戦
 狂った獣。
 命潰す者。

 人々を聖杯剣揺籠の君の為の「生贄」として殺すか連れ去ろうとしています。
 片端から駆逐してください。
 市街戦となりますが、今回建物の破損は非推奨のため、工夫があると良いかもしれません。無くても心がけ一つで違うはず。

●戦争シナリオの為、🔵達成数で〆切を予定しています。
 戦闘描写がっつりご希望の場合、可能ならオーバーロードがお勧めです。

●その他
 複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】がオススメです。
 【★今回のみ、団体は2名組まで★】の受付です!
 IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすく助かります。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございますので、良ければご活用ください。

 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

 最後までご閲覧下さりありがとうございます。

 どうか、ご武運を。
106




第1章 集団戦 『ソードヴォルフ』

POW   :    剣狼斬
【日本刀または体から生える刃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    無人刀
【刀に宿る残留思念の励起】によって、自身の装備する【日本刀】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ   :    剣狼の呼び声
【体から生える刃】で武装した【狼型妖獣「剣オオカミ」】の幽霊をレベル×5体乗せた【巨大「剣オオカミ」】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
山立・亨次
最近コイツをよく見るな
ま、やることは変わんねぇが

予めユーベルコード発動
呼び出した1/3は商店街の建物付近にトラバサミとか、足止め兼ダメージソースになる罠を張って貰う
これで万全とまでは言わねぇが、少しは被害も抑えられるだろ

残りは人気の少ない地点でトラップ地帯を形成させて
比較的他の個体と離れた場所にいるソードヴォルフ一体に森人の叡智(包丁)で挑む
騒ぎを聞きつけて集まってきたら背を向けて逃げ出す風を装ってトラップ地帯へ誘導
弱い相手と見做せば追ってくるんじゃねぇか

トラップ地帯に着いたら罠を飛び越えて
追いかけてきた連中が罠にかかるのを待って反撃だ
鼠も追い詰められりゃ猫を嚙むんだ
栗鼠が狼噛むこともあんだろ



●人類の包丁を受けよ
「(最近コイツらはよく見るな……)」
 周囲に点在するソードヴォルフの気配は酷く荒い。
 妖獣であることで既に並みの獣ではなくバケモノで駆除対象。勿論妖獣化オブリビオンの時点でなった場合危険度が上がる程度の変化で山立・亨次(人間の猟理師・f37635)にとって駆除対象には変わりない。
「――ま、やることは変わんねぇ。いくぞ」
 “ちゅい”と鳴いた輝くエゾリスが亨次の体を翔け上げり方にチョコンと腰かければ、分かる。
 UC―妖魔・木渡―が発動していると。

「トラバサミを撒いて狼狩りだ。路地には“森”築んだ――行け」
『ちゅいっ』
 “森”とはトラップ地帯の隠語にすぎない。無論、聞いたところで件の獣共が理解するとは思ってはいないが、少しの警戒を織り交ぜて。
亨次の指示に散開したエゾリスは指示通り罠を撒き路地に“森”を築く。
 小細工や脅威さえ忘れた獣など、自然と向き合い続ける亨次からすれば脅威になど成り得ない。ただ、後戻りも警戒も知り得ないからこそ、無鉄砲な危険性に注意して。

 ――荒い呼気が、迫って来る。

『アォオオーーン!』
 遠吠えは仲間呼びか、興奮か。
『グオォォオ!』
「――来い」
 振り降ろされる刃を森人の叡智包丁で往なせば、唸るソードヴォルフが踏み込んでくる。
『グォァァア!』
「……頃合いか」
 近い遠吠えが二つ。
 騒ぎに気付いた個体が間もなく来る――ならば、亨次が取るべきは一つ。踵を返し“招く”のみ。すれば嬉々として追い来る気配は想定通り三匹。
「(……あれはもう)」
 獣と呼ぶことさえ烏滸がましい。
『ちゅっ!』
「……ここか」
 肩へ飛び乗ったリスの合図に亨次が路地へ身を翻せば、ソードヴォルフ達が嬉々として飛び込み――……。
『ギャァアアア!!』
『ガヒュッ!』
『グ、グオオオ!』
「……騒ぐな。鼠も、追い詰められれば猫を噛む」
 薄明かりに照り返す料理人の爪牙は。

「栗鼠も狼を噛む」

 迷いなく骨の間縫って首を落とす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
連携・アドリブ◎

商店街を壊すな?
何言ってんだ、そんなの――当たり前だろ
戦後は此処で食べ歩きするんだから、店が壊れちゃ私も困る

ってな訳でだ、得意の銃火器は使えない訳よ
この哀しみを分かってくれるかな、ソードヴォルフくん?
昔は青龍拳士だった▲戦闘知識を活かし、格闘術で戦おう
刀は怖いがインファイトに持ち込んじゃえば
そのレンジは逆に仇となる筈だ
無人刀を発動されれば此方も負けじと【指定UC】を起動
何なら残留思念を解析、共感、寝返りを唆し
制御ごと無人刀の日本刀を▲盗み、連続攻撃に組込んでしまおう

運が悪かったね、ソードヴォルフ
抗体ゴーストの猟兵に出遭っちゃうなんてさ



●青花に揺らぐ
「何言ってんだ――」
『グオォオオ!』
 踏み込み“それ”の腹にひたりと拳を当て。
「商店街を壊すな?」
 打つ。
『ギ――』
「そんなの当たり前・・・・だろ?」
 踏み出しで飛び上がり振るった足で、飛来する刃欠けた日本刀を蹴り飛ばす。
 錐揉み回転した刃が商店に刺さる直前、指先で三日月が如く描いた龍撃砲で破壊。空蹴り一歩、振るい落とした翔龍天破がぐらついたソードヴォルフの頭蓋を砕く。
『ガ ひゅ、』
「――ふぅ」
 軽やかに着地したレモン・セノサキ(Gun's Magus魔砲使い・f29870)の足元に蒼炎が花開く。
「ってな訳でだ、得意の銃火器は使えない訳よ」
 こときれたソードヴォルフを見下ろすレモンの瞳は冷たいまま。
 常扱う大型ガンナイフの使用は今日叶わない。
『アォォオオーー!』
「ったく、この哀しみを分かってくれるかな――ソードヴォルフくん?」
 一言終わる間際、背後から飛び掛かった獣は側頭部を蹴り飛ばされ、龍顎拳の一撃が心臓ごと殴り飛ばせば青花咲いて。
 UC―蒼焰龍気斬―
 元青龍拳士たるレモンが蒼炎放つ拳脚振揮う姿は大輪の花が如く。
『グルァ!』
「――っ、ふ!」
 龍撃砲で襲い来るソードヴォルフを撃ち落し、撓らせた龍尾脚で地へ落す!
『グ、グォオオ!』
「っぶな、い!」
 抗うように爪揮うソードヴォルフが掠めたレモンの髪先を切散らす。
 上体逸らし捻り避けたレモンがそのまま翔龍天破で地に縫い止めた、が――!
 ヒュ――と何かが空切る音。
「い――、っぅ」
 咄嗟にレモンの捻ね避けようとしたレモンの脇腹掠めた日本刀を勢いころして掴み、地面に突き立てた。

 息を吐く。
「フーー……まだ、いける。でも」
 目の前の骸から滲む残留思念、それは――。
『ヴルルァァアア!!』
「――無理だな」
 根底さえ狂ったそれは言葉を介さない。殺し損ねた恨みを、狩られた怒りばかりを撒き散らす。放置は厄になるゆえ――絶つ。

「運が悪かったね。“抗体ゴーストの猟兵”に出逢っちゃうなんてさ」
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

青和・イチ

獣は好きだけど…あれはちょっと、別かな
(傍らの相棒を撫でて
これ以上、被害を出さないよう…行こう

襲われてる人がいたら、優先して庇いに入り守ります
その隙に…
くろ丸、いける?の言葉を合図に、特大の遠吠えをして貰います
思考マヒした単純脳なら、本能で気を取られるはず

街の人から気を反らす、小さな隙が出来れば充分
UC『煌星』で、狼穿つ槍を持つ、ケンタウロス座を喚び
見える範囲の剣狼全てを光弾で狙い撃つ
勿論、街は壊さないよう注意

敵の攻撃は第六感やオーラ防御、サイキックの盾で見切ったり受けたりし、光弾を撃ち込んで反撃
遠隔操作の刀は、くろ丸担当
咥えた愛刀で対応頼むね
万一の時は念動力で刀を逸らすよ

…さて、あと何匹?



●真昼の星を識る
 獣は好きだ、けれど――……。
「……あれはちょっと、別かな」
「クゥン」
 擦り寄る相棒 くろ丸の頭を撫で、青和・イチ(藍色夜灯・f05526)は凪いだ瞳で街を見る。
「……行こう」
 これ以上被害を出さないために。
 時々、血溜まりや引き擦った後を見た。だが嘆く暇はない。
 襲撃痕を見る最中、ふと――くろ丸が何かに反応した。ぴん、と立てた耳を震わせ、明らかに何かに気が付いている。
「――くろ丸?」
「ヴォフッ……!」
 駆け出すくろ丸をイチが追った瞬間、静寂を劈いた悲鳴は女性と子供の鳴き声。そして、2体のソードヴォルフ――!
『ひっ、!』
『わぁぁぁああん!!』
『ゴアァァア!』
「くろ丸、いって!――大丈夫ですか?落ち付いて」
 親子を保護するイチを背に庇い、ソードヴォルフと対峙するくろ丸が素早く食らい付き、唸り合い牽制する。
「ウ、ヴゥゥー……!」
『ヴゥウウー……!』
 背のくろ丸に注意を払いながら、イチは怯え泣く親子に落ち付いて逃げるよう指示をし、逃げ往く背を送った後、ソードヴォルフ牽制し続けるくろ丸へと踵を返した。
「くろ丸、いける?」
 それは、合図だ。

「アォオオオオオオーーン!」
 瞬間、咆哮に空気が震えた。
 これは牽制であると同時に呼び水。周囲を滅すための狼煙になる――!
 
 そこかしこで聞こえた遠吠え、迫るいくつもの足音に背筋を伸ばし、イチは手中のtranquilloへ言葉を向けた。
「力を、貸して――」
 それは古い星座図鑑。静かな藍の空に浮かぶ星の耀きは青。紡がれるのはUC―煌星―。
 紡がれたのは甲高い蹄の音。輝ける槍持つ半馬の雄姿。
「流星の耀きを知っているかな?」
 イチが淡々と問う言葉に合わせ、並び立った輝ける半馬の雄姿が槍を擲つ――!

 その時、狼達は真昼の星が奔る様を知る。
 声上げることさえ叶わず、ただ己の胸へ吸いこまれゆく星を見て。

「……さて、あと何匹?」

 イチが踵返した時、背後から強襲した刃を黒手袋の指先が弾き落とし、壊していた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

チェルシー・キャタモール

品のない獣の群れね
主人にでも似たのかしら?
人を食い物にしかすることが出来ない獣は消えなさいな

まずは敵の前に堂々と姿を晒しこちらに注意を向けるわ
ほら、ここに獲物がいるわよ

敵がこちらに迫ればUCを
悪夢を纏い姿を隠すわ
敵は単純な思考をしているのでしょう?
それなら「さっきの獲物が消えたからすぐに別の獲物を」なんて合理的な思考はしないのではないかしら
敵がこっちを探してウロウロしたり剣を振るえば上々よ
『ダイヤモンドリング』を投擲して遠距離から攻めてやるわ

人が狙われていればUCを解除しこちらに引き付けるように
狙われてる人にも逃げてもらわないとね
大丈夫よ、絶対に助けるから

……誰もあの女の餌になんかさせないわ



●夢の埋火
「……品の無い獣の群れね」
 不快だわ、と肩の髪払ったチェルシー・キャタモール(うつつ夢・f36420)が相棒とも言える蛇を撫でて顔を顰め、ヒールを鳴らした――瞬間。
『アォォオオーーン!』
 呼気も荒く日本刀構えたソードヴォルフが一体、チェルシーを見つけにんまりとわらっていた。
「ふふ、そうね?ほら――……ここに獲物がいるわよ」
『ガァアアァア!』
 ひどく、無防備に。
 愛らしく、しかして尊大に。
 優雅なカーテシーをしてみせたチェルシーへソードヴォルフが礼も無く飛び掛か――……った、はずだった。
「残念。外れね?」
『グォオオゥオ!』
 飛び掛かる。
 切りかかる。
 食らい付く。
 しかし、その刃は一切チェルシーを傷つけることが叶わない。
 ただただ全てが空回り。ただただ全てが“ゆめのよう”。

 そう、まるで“わるいゆめ”のような。

「ふふっ、ふふふっ!」
『っ、……グ、がァ……!』
「ねぇ、そろそろ疲れて来たんじゃないかしら?」
 ぐらつくソードヴォルフの足もとには淡い霧が立ち込めていた。まるでチェルシーの髪色にも似た淡い水色の霧悪夢の片鱗が、もうもうと。
 賢き者なら――……いや多少の知恵や、“本来の獣らしい警戒心”があれば、ソードヴォルフは逃げられたかもしれない。もしかすればチェルシー・キャタモールという悪夢と遭遇しなかったかも。
「……――ふふっ!うふふっ!だめよ、“獲れない獲物を獲ろう”だなんて!」
 馬鹿を言わないでと笑うその魔女は獣への全てを殺す術を持っていた。
 その名をUC―夢より来る―。視嗅聴覚という獣の武器全てを殺す感知を不可能にし、悪夢の代償を見せられた方が払う生命力や魔力を奪うのだから!
「おやすみなさい、そろそろ終わりよ」
 ひゅうるり、空奔った皆既の月輪ダイヤモンドリングが首を狩る。

「そう、全ては夢幻――……あの女揺り籠の君の餌になんて、させないわ」

 静に燃える焔は、夢に埋めて密やかに。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラップトップ・アイヴァー
…聞かなくても分かりますわ。
こと単純な犬の遠吠え。
私、人狼の戦線がどうとか、過去の詳しい事情はまるで存じ上げませんの。
だから勝手になさればよろしい。
私も、勝手にさせていただきますので。

Trigger on.

真の姿…死体に変身してお出かけですの。
私は私のしたいことをするだけ。狼さんたちも、偶々私の邪魔をしたから葬るだけ。
戦争だろうが関係ありませんの。
素手で、骸の海を零しながら、無造作に暴れ回って。

さて、この世界の行き先は、

……悲鳴、
人々が、震えてる、助けを求めてる。
人々の願いが、消される?

私は人々の願いを叶えてあげたい、だから見守っていたい。
ええ、そうでなくては私、世界がどうなろうが……

本来の私が絶対に発さないはずの言葉――
そこの人たち!
安全なところに隠れていなさい!!
死にたくないのでしょう!?

……うふふふっ、とても不思議な気分ですわ。
友達と一緒ならまだしも私たった独りにそう思わせた骸共。覚悟なさい。
何も壊さず死なせず通り護してあげる。寝かせている美希の優しさをなぞりながら、だけど。



●銃口を上に
『アォォオオーーン!』
「(ことに単純な遠吠えですわ)」
 聞かずとも察しが付く。
 既にいくつもの遠吠えと同時に恐らく絶命と思える悲鳴もラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)は聞いた。勿論、他の猟兵の戦闘音も共に。
 全てを聞きながら、ラップトップは街を駆けていた。

 そうして、猟兵の気配薄き一帯へ飛び込む瞬間――、UC―Trigger /0―の撃鉄を下ろす。
「――Trigger on.」
 その一言は魔法の言葉。
 その一言は着地し二歩目へ踏み出すラップトップシエルシエル死体にする言葉。
「(全て。全て、私には関係ありません)」
 駆けあがった民家の塀を越えた瞬間、恐らくこの家の飼い犬を食っていたソードヴォルフを撃ち殺す。
 そのまま受け身を取りながら庭を転がり再び塀を蹴り越え、屯す能無しソードヴォルフの頭蓋に弾をプレゼント。
「――これで少しは回るようになりますでしょう?」
 零れる骸の海で亡骸の全てを飲み消して、次へ。
 この諍いの根源など、何も知らないし、シエル自身知る気も無い。ただ、友達になった女壽春杜環子が“できるでしょう?”と挑発的に笑ったから。
「やってやりますわ」
 理由なんて無いけれど、言い訳に借りるには十分すぎる。
 この感覚が尖る限り、あの強欲にも“本当は大きな犬フェンリルの頸がほしいのですけれどね?”なんて笑うあの女の前に、狼の骸でも積んでやろうか。
「……きっと笑われますわね」
 何時も見せない人を食ったような顔で笑って言うだろう。“お上手ですね”と。
『アォォオオ――……ギャッ!』
「静かになさい。けたたましくってよ」
 ズガン、と一発の銃声が遠吠え上げに空仰いだソードヴォルフを顎から頭部を貫通させ、追って腹に二発接近しながらぶち込み蹴り飛ばせば、襲い来たソードヴォルフはもんどうりをうってこときれた。
『ッ、ガッァアアア!!』
「――っ!」
 民家の塀を越え襲い来た新手のソードヴォルフの刃が、シエルラップトップの肩を浅く切る。
「っ、ハハ!お礼をしま――……」
『いやぁあああ!!』
『ママ!ママ!』
 劈く悲鳴。
 幼い涙声。
 突如聞こえたそれにシエルはゆっくりと首を向け瞠目した
『グオォォ――ギャンッ!』
「うるさいわ、黙って」
 不快な瞳ごと狼の頭蓋を撃ち殺し、先程聴こえた悲鳴を脳裏で反芻して――……シエルラップトップの体は悲鳴の方へ走っていた。
「(人々が、震えている――だから?)」
『ひ、い……来ないで!来ないでぇ!』
『あぁぁーん!ふぇぇーん!』
 所謂突き動かされるような感覚、という表現が最も近いだろう。
 あぁ、赤ん坊の泣き声がする。まだ、全ては生きている救うことが出来る――!
『やめてぇ!ママーー!』
 滑り込んで撃つ。
バトロワプレイヤー乱闘戦を得意とする者に、細かな確認はいらない。反射的な敵味方の判断が出来ぬ者など、アスリートアースでは最下層。シエルはアクティブ所属のプレイヤー“だった”のだ。
 あれはスポーツだったがこれは実戦。だが――……。
「(やることは変わりませんわ――!)」
『ひっ、ぃ』
『ふ、ふ、ふぇぇぇーん』
「――その子を抱いて伏せなさい!」
 子供が一人。最もソードヴォルフに近く、手を伸ばし救おうとする母親は赤子を前に抱いている。そしてこの恐怖に、ただ赤子は泣くばかり。
「(間に合う――……いえ、これでは受け止められない?!)」
 例えシエルが子供を救い投げつけたところで、母親らしい女性と共に上手く逃すことは叶わないだろう。
 まず、赤子を前抱いている母親らしい女性に対し、幼いと言えど子供を投げつけるなど無体が過ぎる。

 舌打ちを、飲む。
 ここで諦めたら。もし、取捨選択をしたのなら。
「(――人々の願いが、消される……?)」
 嫌だった。
 “関係ない”はずなのに、シエルは嫌で嫌でしかたがなかった。なんで“こんなところでこの親子が傷付けられなければならない?”なんで“この人達の願いは叶わない?”なんで――……“こんな奴らに踏み躙られねばならない?”

「――あっていいはずが無いでしょう!!」
 叫ぶ。
 空へ向けた銃口の引き金を引けば、パァン!と空撃つ炸裂音。
『ひっ』
「貴女!安全なところ――いいえ!私の近くに隠れて、目を閉じ耳を塞いでいなさい!!」
 この言葉は、まるで美希のようね――と、きっと平素の自分なら思っただろう。だが、今口にしたのは自分シエルだ。
 こんなことを朽ちにする日が来るなど思わなかった。
 こんな思いで人を救う日が来るなんて、思いもしなかった。
『ガアッァァア!』
「結構ですわ、覚悟なさい」
 恐らく気絶している様子の幼子の下へ飛び込み様、滑り込むように狼共の顎を撃ち抜く。
 鋭利な牙も噛む術がなければただの飾り、そのまま幼子を横抱きにしたところで後ろから襲い来た間抜けへヘッドショットの餞を。
「っ、邪魔!」
『アッァッァアア!』
 膝を撃ち崩して蹴り飛ばす。
 掠めた刃の痛みを無視し、飛び掛かる浅はかな者を撃ち殺す!
 弱ったものから順に、骸の海で蕩かして、全て吞み込んでしまえばいい――!

「何も壊さず死なせず護り通してあげましょう……!」
 “美希のように”と、零した声を聞いた者はいない。
 踊るように揮われた銃の咆哮は、たしかな爪痕でイカれた獣を狩ってゆく。密やかに、胸の裡で眠る姫君の優しさをなぞりながら。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント

暴力衝動に支配された、獣
今回の討伐対象の様子が、どうにも他人事には思えず内心複雑
人狼である自分も満月を目にすればそうなる危険がある…そうなってしまった事もある
相手にその意図はないと分かってはいるが、自身の本性を見せられているようで良い気はしない
…しかし、仕事は仕事と割り切って

敵の刃が周囲を傷付ける事のないように、広い場所へ敵を引き付け移動する
また建物を背にしないように立ち位置に注意

離れて戦えば周囲の建物を敵の攻撃に巻き込み兼ねない
思考が単純化している状況を利用、距離を詰めて戦って敵の攻撃を押さえ込みたい
獣人の姿に変じてユーベルコードを発動、肉弾戦の攻撃力と行動速度を強化して挑む

暴力衝動に支配された敵は複雑な動きは出来ない筈
理性のあるこちらは遠慮無くフェイントも織り込み、敵の体の動きを誘導して攻撃を予測
体から生える刃は攻撃範囲が狭い、躱してカウンターで刃を叩き折って危険を減らす
刀は振り上げに合わせて構える腕を蹴り上げて攻撃を妨害
腕を跳ね上げた隙に空いた懐へ飛び込み、爪による攻撃を叩き込む



●姿無き月へ
 悍ましいと思う。
『ヴルァァアアア!』
「……やめろ」
 銃弾が一発、吼えたソードヴォルフを撃ち殺す。
 ぐるぐる、ぐるぐる、腹の奥底でシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)自身にさえ口にできない感情が蠢いている。
「(暴力衝動にいしはいされた、“獣”)」
『オォオオオーーン!』
 撃鉄を下ろす。
「――うるせぇ」
 引き金を引く。
 目の前の可笑しな何かを獣とは、言いたくなかった。
 異形と。

 それこそ、異形、と。自分の口から言ってしまえれば良かったけれど、現実その見た目は“狼”染みていて……あぁ、なんて――!
 握り直した愛銃のグリップが少しだけ軋み悲鳴を上げさせたシキは、人狼であった。
「分かってる……」
 引き金を引く。
「ちゃんと、俺は、」
 ぐるぐるぐつぐつ、蓋をした不安満月への恐怖を開けられた……いや、閉じ込めた、月下の狂った自身を見ているような、感覚。
「――ちがう、」
 あくまでも、“危険”なだけ……否、“危険”なはず、なのだ。
 満月というあの強大な魔力に抗えない、狂わされるような衝動をシキ・ジルモントは知っている。
 地の枠ような衝動と、自身の聴覚を鼓動だけで支配されるような感覚と、抗い難い渇き。
『――アオォォオオオオーーゥ!』
「……仕事だ」
 また一体、空仰ぎ咆哮した異形を撃ち殺す。

 幸いにもシキが選んだ住宅街のこの通りは、道幅がが広かった。
 骸は転がる端からザラリと崩れてゆくのを確認しながら、民家の塀を越え転がり出でてきた一体の異形の強襲を受け流し、転がり避け素早く構えた――瞬間、後方からの突進を辛くも避ける。
『ヴォァアアア!』
『グルァァアア!』
「っ、ちっ!」
 なまじ獣らしい姿な所為か、ソードヴォルフは人型のシキとは体の発条が違う。
獣的な飛び掛かり方をされるのをなんとか躱し、取った間合いに息を吐く。
「――長引けば振り、か!」
 踏みこみ様、深く吸った息を吐く。今、自分は落ち付けているのだと噛みしめて。脳裏を過る帰りたい場所を、思って。
 目の前のそれは、“異形”。それ以上でもそれ以下でも無く、自身は“帰りたい場所のある猟兵”である。
「見てくれを気にしている場合では無いな」
 引いた引鉄はUC―アンリーシュブラッド―のもの。
 振り抜かれる剛腕をしゃがみ避け、入り込んだ懐より下段から銃床で顎を殴り上げ、ぐらつかせた側頭部を撃ち抜く。
『ッ、ッ、ガァッ』
 ぐるりもう一体へ視線向ければ“本来であれば”ソードヴォルフは下がったかもしれない。
 それほどシキの眼光はするどく、見るものを切る付ける感覚さえあった、だが。
『アオォオオオーーン!』
「――仲間呼びかっ!」
 こときれた一体を蹴り上げ足場に、もう一体へ送るは踵落とし。
『グギャッ!』
「――ガァァアッ!」
 そのまま殴り飛ばせば圧し折れた首がぶち切れ飛んだ。
 払った腕で爪先の鮮血を払い落したシキは、陽光に眩い銀毛美しい獣人へと変化するとどどうじに選んだこの域に人が少ないことにホッとしていた。
 恐らく、異なる見た目ではあるがパニックや恐慌状態の人間には刺激が強すぎると分かるから。
 全てをインファイトの距離と速さで仕留め、探すべきは次の獲物。
「(やっぱり、咄嗟のことに対応はできてねぇな――なら、)」
 真昼の天を仰ぎ、シキは咆哮する。
 びりびりと空気震わす異形の仲間呼びにも似た咆哮を。
「――アオォォォオオオーーン!」
 すればそこかしこから上がる咆哮。
 耳に届く足音と荒い呼気が迫って来ているのを感じながら、シキは首や肩を回し考える。
「(手段はインファイト、複数相手ならいっそ誘発の同士討ちも叶う、か?それにこいつら……)」
『グォォオオ!』
『グルァァアアア!』
「(来たか……!)」
 手前の一体目掛け地を蹴り、低く翔けるように走るシキに振り下ろされた拳を“もう一体の方へ体逸らして転がり込み”かち上げる。
『ギャンッ』
「――遅ぇ!」
 薄く掠める程度で躱した一体の方へ昏倒した異形を蹴り込めば、予想通り異形――ソードヴォルフは倒れ込んだ仲間に己の刃を食いこませ、上手く抜くことが叶わない。
「(やっぱり――!)」
 戦った所感、ソードヴォルフは当然の如く非常に筋肉質であり、殴り飛ばして分かったが肉が硬く、恐らく繊維質なのだ。
 お陰でしなやかさがあり、跳ねまわり戦うのは非常に得意な部類なのだろう。よって、“追い立てての戦闘”を得意としているから街の襲撃を指示された可能性がある。が、それはあくまで獲物を追い立てる狼的な戦い方が得意だ、というだけだ。それは“人型的な戦い方”ではない。

 だが、シキ・ジルモントは“人”狼である。

「――シッ!」
 短く息を抜き、狙うは衝動で振り抜かれた腕の刃を殴り上げれば――震えた。
「(なるほどな)」
『ガァァ!』
 すれば肉に響くのか呻いたソードヴォルフが威嚇するように距離を取り、牙を剥く。
 深く肉を切るため刻まれた内側の深い切り込み――所謂セレーション、といわれるであろう部位。そここそ、最もは幅が薄くなり弱い部分であり、“爪の引っ掛かる”場所。
「(殴って揺れる程度の刃なら――!)その刃、貰うぜ……!」
『グォォオオオ!!』

 吼えるがいい、異形よ。狼騙りよ。
 生半なその刃は真の獣の爪に圧し折られ、意味を成さぬ何かへとなりはててしまいのだから。

 今更焦ろうと気付こうともう遅い。貴様が対峙しているのは“人”狼である。

「さ、仕事だ。かかってこいよ」

 煌々と閃く瞳がひたりと異形の頸を睨めつける。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月03日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#シルバーレイン
🔒
#第二次聖杯戦争
#執筆中


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト