朱酉・逢真
こんにちは、お世話になっております
◆希望
NPC側になってみたい
◆あらすじ
UDCアースの一般女子が友人と話している。彼女は「そういえば」と口を開く。「私、むかし『かみさま』と話したことあって」……
彼女の家庭はあまり良いものではなく、幼い頃からよく隠れて泣いていた。そういうときに机の下や押し入れの中に隠れると、暗いところに"かみさま"と名乗るイマジナリーフレンドが居たという。彼はいつも「今日はどうした?」と話を聞いてくれたらしい。話を聞くだけで何かをしてくれるわけではなかったが、それでも苦しさを抱え込まずに吐き出せたことはいい効果があったようで、幸いにして精神を止むようなこともなく彼女は大人になれたという。
「いまは家も出たし、(イマジナリーフレンドを)見ることもなくなった」という彼女だが、暗い場所はなんとなく落ち着くらしい。
……というイメージの話をお願いしたいです。
このイマジナリーフレンドが当PCです。泣いている子が居たので話を聞いていました。聞くだけでしたが、会うたび吐き出される心の"病み"をもらっていたので、結果的に好転したようです。
◆主人公(NPC)
どこにでも居るような一般女性です。あらすじに書いていないことはおまかせします。口調も含めてアレンジ歓迎です。
みみずねMSさまの描かれるNPCがいつも魅力的だったので、たっぷり浴びたくなりました。よろしくお願いします。
◆イマジナリーフレンド(当PC)
「お兄ちゃん、だれ?」「かみさまだよ」
ただ寄り添い、話を聞くだけの神性存在です。
彼女が小さい頃は子供の姿、十代を越えたあたりで青年の姿になったかもしれません。書いていない部分はおまかせします
◆
猟兵でない時の当PCを描いていただきたくて、依頼させていただきました。文字数は多めに取りましたが、無理のない量で大丈夫です。
可能でしたらぜひ、よろしくお願いします!
●現在・UDCアース
『女三人寄れば』なんとやらという言葉がある。
それは今、この時代、この世界においてもそうだ。
今日の話題は、幼い頃の
“友だち” について。
「わたしはうさぎさんのぬいぐるみだったなぁ」
あ、うさぎ“さん”って言っちゃった。そう笑いながら友人が語る。
大人からすればただのおもちゃだっただろう。けれど、イマジナリーフレンドは子ども本人からすれば大切な友だちだ。子どもは実際にその友だちが生きているかのように、彼らを大事な友人として扱う。
「ね、そういうのなかった?」
水を向けられて、少し戸惑った。うーん、と言葉を一度濁す。
「そういえば」
ひとつ、記憶にかかったものを取り出す。子どもの頃の話し相手は、そういえばずっと“彼”だった。イマジナリーフレンドと呼ぶべきものだったかどうかは、今もって分からないけれど。
「私ね、むかし『かみさま』と話したことあって」
「……神様?」
友人は不思議そうな顔で聞き返した。
「そう、かみさま。」
いたずらっぽく笑う。神様と話したなんて、オカルトじゃあるまいしと友人は笑うだろうか。
「でもね、」
●過去・とある追憶
幼い頃、家族が嫌いだった。父と母と私、三人きりの家族だったけれど、酒に酔っては暴力を振るう父も、父のいないところで私に八つ当たりする母も、私は嫌いだった。
両親の前で泣くとまた怒られるから我慢した。そうやって、毎日のように隠れて泣いていた。
そんな日々のなか。
「おや、どうしたィ?」
夜の押し入れの暗がりに、“彼”はいた。私よりいくらか年上……とは言え、頑張っても小学校の中学年くらいに見えた……その男の子は、まるで自分のほうこそがここの主だと言わんばかりに、奇妙なほど当たり前にそこにいたのだ。
「お兄ちゃん、だれ?」
不思議に思って訊いた私に、ひひ、と軽く笑った彼は答えた。
俺かい?
俺は──
かみさま だよ。
それ以来、嫌なことがある都度、押し入れに潜っては、現れる彼と話した。
……あのね、かみさま。
「お父さんがね、お母さんをぶつの」
「わたしはね、やめてって言うんだけど、そうするとわたしもぶたれるの」
「お母さんはそれなら言わなくていいって言うの」
「こういうのも、おそとではね、言っちゃいけないんだって」
“彼と話した”と言うにはあまりに一方的だったように、今では思う。けれどもかみさまは私のどんな言葉も、「ああ」とか「そうか」「そうかい」と頷くばかりで、他には何もしなかった。他の大人たちのように偉ぶって何かを諭したり、子ども扱いして頭を撫でて誤魔化したりもしなかった。
押し入れの暗さと低い天井は、私たちに心地よさをくれた。
暗くて狭い小さな世界のかみさまは、幼い私にとって、唯一の救いだった。
●そして、
「お父さんなんか死んじゃえばいい!」
父と大喧嘩をしたのは、高校生のときだ。自分自身、何を叫んだかも判然としないくらい感情的に喚き散らして家を飛び出した。
日も落ちてきて、人気のなくなった公園。本来は子どもたちがかくれんぼで遊ぶのだろう遊具に隠れた。家には帰りたくない気分だった。父の顔も母の顔も見たくない。このまま家出しようかとも思った。
「泣く子はここかね」
そんな私の前に現れたのは、三つ編みに束ねた長い後ろ髪を揺らす、赤い目の青年だった。その姿は初めて見たけれど、一目で『かみさまだ』と分かった。
私は縋るように、彼を呼んだ。
「……かみさま。かみさま」
「今日はどうした?」
まったくいつも通りの彼の態度に、何だか妙に安心して、もう一度涙が込み上げてきた。しゃくりあげながら、父との喧嘩の話をした。
「そォかい」
そうか、と。かみさまはいつもと同じように相槌を打った。
黄昏の公園で、私は誰かに見られるとかも気にせず泣きじゃくった。うまく言葉にならない部分も、かみさまは静かに聞いていてくれた。
父に死んじゃえと言ったことも全部話したけれど、それも特に嗜めたりされなかった。“神様”なんだったら、私の願いを聞き届けてくれるのかとも少しだけよぎったが、そうでもなさそうで。
……私はそのことに、ちょっとだけがっかりして、それから安堵した。
泣きたいだけ泣いたおかげか、かみさまが一つの否定もなく話を聞いてくれたおかげか、私はその夜にはちゃんと家に帰った。父は珍しく早く布団に入っていて、お互いに謝ったりもしなかったけれど、次の日になっても蒸し返すこともなかった。
──ついでに言うなら、母はもの言いたげに私を見るだけだった。
●かえって、現在
あの喧嘩の日からずっと家族の仲は冷え切っていたけど、それだけ。仲が良くなかったのは元々だったし、夕食を食べながら楽しく会話をするような家庭ではなかったから、何も変わらなかったと言えば変わらなかったと言ってもいいのかもしれない。私は結局家出もしなかったし、グレたりだとかもしなかった。むしろ早く家から離れたくて一層真剣に勉強したし、バイトでも真面目に働いた。
それなりに評価の高い大学を、自分のお金で受験したら父も母も文句は言わないだろうと思った。実際には学費のことについてなんかで少しは文句を言われたけれど、奨学金や学校の先生の後押しもあって、私の計画は上手くいった。
家を離れた今では家族からの干渉を受けることもなくなり、もちろん押し入れに逃げ込むこともなくなった。だからかどうかは分からないが、いつの間にか、彼の姿を見る頻度は減っていった。
「……でも、友だちだった。と、思う。」
暗がりの友だち。励ましてはくれないけど、うなずいてくれるかみさま。私にとってはひとりだけの神様。
今でも黄昏時になる度に、あるいは部屋の明かりを落とす度に。そこに暗がりがことに、なんとなくほっとする。
狭い場所に潜るのは、今でも好きだ。かみさまは現れないけれど、それでもなんだか落ち着くのだ。
「だからね。もし──」
もし、だけど。
もしも叶うのならば。もう一度、彼に会えたなら。或いは会えずとも、この言葉が届くのなら。
「ありがとうって、言いたいな」
一緒にいてくれて、話を聞いてくれてありがとう。
私の友だちになってくれて、友だちでいてくれてありがとうって……。
●とある場所
「チ」
おや、と一緒にいた何人かが怪訝そうに見る。
──くしゃみなんて珍しい……風邪ですか?
──逢真君に限ってそんなわけないだろう。
──誰かが噂してるんじゃないかな?
──へー……かみさまでもそんなことあるんです?
「マ、そんなトコさ」
鼻の頭を掻きながら、へらりと笑って見せた。
それは、彼が“彼”として分かたれる前のことだ。
だから“本人”といえばほん
にん だが、そうではないとも言える。
だから、まぁ。
風に乗ってきたその言葉は、“一応”受け取っておくとしよう──。
成功
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