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きらきらぼしに願いを

#アックス&ウィザーズ #お祭り2022 #クリスマス


●星輝く夜に祝う
 海を見下ろす丘の上に建つ神殿の隣には、大きな樹が立っている。
 冬でも緑の葉を絶やすことのないその樹は、『聖樹』として街の人々に愛されていた。
 街の守り神でもある聖樹は、冬のとある一日にだけ、美しい星に似た形の白く輝く花を咲かせる。
 不思議なことに、摘み取った花に願いを込めて触れると色が変わる。
 何色に変わるかは、触れた人の心次第。
 だから、祭の時は冬にも関わらず、まるで春かのように、街は色鮮やかな花で賑わうのだ。

 街の人々は言う。
 この願いを込めた花を海へと流せば、遠く水平線の向こう側にある星に願いが届いて叶うらしい、と。

 無数の星が煌めく、澄んだ冬の夜空の下。
 海を彩る星のような花々に、あなたは何を願う?

●きらきらぼしに願いを
「メリークリスマス~!」
 にこにこと満面の笑みで猟兵たちを迎えるユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)は、慣れた手付きで手元の端末を操作する。すると、宙に浮かぶモニタに祭を楽しむ人々で賑わう、とある港街の様子が映し出された。
「ここはアックス&ウィザーズにあるヴェネラっていう街なのね」
 綺麗な星空と海が名物と言われるこの街では、今の時期はちょうど街の守り主である女神へと感謝を捧げる祭の真っ最中なのだという。
「ヴェネラの街は交易が盛んな街で、色々なものがあるけど……特に有名なのは硝子細工かな~」
 キラキラと輝く色とりどりの硝子をあしらったネックレスや指輪、ブレスレットなどの装飾品の他、ランプや硝子ペンといった日用品など、よりどりみどり。街を見守る聖樹の花を象ったお守りも人気の品だという。
 祭の間は夜市が開催されているので、手頃な価格でおみやげとして気に入った品を買うのも良いかもしれない。
 散策で疲れたら、温かいポタージュスープや、出来立てのコロッケ、ナッツやチョコレートを飾った焼き菓子を食べて一服するのも良いだろう。

「でも、このお祭りの一番のメインイベントの『星流し』はね……」
 ユニはモニタに映った大きな樹を指差した。淡く白色に光る星型の花が咲いた樹は、幻想的な美しさを纏っている。
「このお花――街の人たちは『星の花』って呼んでるんだけど、白いでしょ? でもね、願いを込めて触ると色が変わるの!」
 どんな色になるかは、触れた人の心によって変わるらしい。
 そして、願いを込めた花は、街を流れる運河からそっと海へと流すのだ。そうすれば、遠い海の向こう側にある星に届いて、願いが叶うのだという。

 願いを込めた花はどんな色に染まるのだろう。
 とても綺麗な景色みたいだし、きっと、女神様も楽しみにしているよね――。

 無邪気に笑うユニの手元では、今日もグリモアが光り輝いていた。


春風わかな
 はじめまして、またはこんにちは。春風わかなと申します。
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。

●プレイング受付について
 公開後、タグにて受付期間をお知らせします。
 成功度に達しなかった場合は延長、もしくは追加募集します。
 受付期間外にいただいたプレイングは余力があれば採用します。

●このシナリオについて
 アックス&ウィザーズにある港街『ヴェネラ』のお祭りへのお誘いです。
 時刻は夜。街の雰囲気はワイワイと賑やかな感じです。
 祭のメインイベントは『星の花』に願いを込めて運河から海へと流す『星流し』となっています。
 他、祭の期間中は夜市が出ていますので、おみやげ(硝子細工が有名)を買ったり、温かい飲み物や軽食を堪能したり、星空を楽しむことも可能です。
 POW/SPD/WIZの行動・判定例は気にせず、OPを参考に自由にお楽しみいただければと思います。
 また、お誘いをいただけましたら、ユニもご一緒させていただきます。

●星の花について
 ヴェネラの街の聖樹に咲く白い星型の花。星の女神の加護を受けているため、淡く光っています。
 摘み取った花に、強く願いを込めて触れると色が変わるという性質をもっています。
 どんな色に変わるかはプレイングで指定可能です。
 星の花は街のあちこちで配っています。
 なお、願いを込めた花は、運河の橋の上から流すことが多いです。
 桟橋から海へ流したいなどの希望がありましたら、プレイングでご指定ください。

●共同プレイングについて
 ご一緒される方のID(グループ名も可)を記載ください。
 また、失効日が同じになるように送信していただけると大変助かります。

●その他
 受付期間内にいただいた問題のないプレイングは全て採用したいと考えております。
 そのため、再送が発生する可能性があること、また再送日程に関するお知らせはタグにてお知らせすることを御承知いただければ幸いです。

 以上、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『星送り』

POW   :    星に願いを込める

SPD   :    星空や夜景を眺める

WIZ   :    夜市を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
ティティス・ティファーナ
*アドリブ歓迎
f02580/祝聖嬢と同行

「人々の賑わいと“歓喜と祝福”のパルスに満たされている」と笑顔を浮かべながら星空と夜景を見ながらファンネルビットを使って360℃を撮影したりしながらヴェネラの街の聖樹に咲く白い星型の花を映しながら解説と説明をホログラフで表示したりしながら周囲の人々の声や完成を撮りながら親子の会話や恋人の笑い声を聴き自然と笑顔になります。
姉の祝聖嬢が合流して星の女神の加護を受けているため、淡く光る説明をしてくれたり自慢気な精霊や聖霊の話しを聴きながら摘み取った花に、強く願いを込めて触れると色が変わるという性質をもっていると説明を受けてティティスが触れると“召喚獣”であるティティス自身にまだ強い願望は無く淡く薄い金色や銀色の貴金属類色に変わり姉に「無色じゃないのは段々と“心”が身に付いている証明だから自信をもって♪」と言われて頭を撫でられて、「姉よ、感謝する」と言います。


祝聖嬢・ティファーナ
*アドリブ歓迎
f35555/ティティスと合流

「やっほ~☆来たよ~♪」と妹に呼ばれてやって来るとティティスを見たら『フェアリーランド』の壺の中から精霊や聖霊が出ていてはしゃぎ始めます☆
ファンネルビットの屋台のお土産や食べ物を見ながら摘まみ食いしつつティティスの様をチラチラ見て「星の花が無色じゃないのは段々と“心”が身に付いている証明だから自信をもって♪」と言いながら妹の頭を撫でて上げます♪
周りを見ながらまだまだ研究や情報収集と生真面目な点はあるけれども“召喚獣”の枠の中から猟兵として変わりつつあるのだな☆と安心半分嬉しさ半分でクスリと笑っちゃいます♪

「だんだんと着実に成長しているね☆」




 祭を楽しむ人たちの笑顔で溢れるヴェネラの街を歩きながら、ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は口元を小さく緩ませた。
「人々の賑わいと“歓喜と祝福”のパルスに満たされている」
 心地よいパルスを受け、ティティスは笑顔を浮かべながら傍らにふよふよと漂うサイコミュ・ファンネルビットを器用に操る。
 ファンネルビットは、ティティスが望む通りに、煌めく星空と海に漂う色とりどりの花が照らす街を360℃全ての角度から記録していた。空に浮かぶ星の周りには綺麗な月も見える。今宵も白く美しく輝く月を見つめるティティスだったが、擦れ違う人々が漏らす聞き慣れない単語を耳にするたびに、意識がそちらに向いてしまう。
(『聖樹』とは、確か……」)
 何もない空間に、ティティスにだけ見える解説や説明をホログラムで表示して一つずつ確認する。
 そんな真面目な妹の姿を見つけた祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)は、太陽のように輝く笑顔を浮かべて明るく声をかけた。
「やっほ~☆ 来たよ~♪」
 聞き慣れた姉の声にティティスが顔をあげると、星型の白い花を持った祝聖嬢の周りには大勢の精霊や聖霊たちがいる。祝聖嬢の『フェアリーランド』の壺の中の住人たちか、とティティスが認識するのと同時に、精霊たちは夜市の屋台を見つけ、あれやこれやと美味しそうな食べ物へと手を伸ばし始めた。
 祝聖嬢の精霊たちに強請られたティティスが目についたものを買ってやると、祝聖嬢が両腕いっぱいに抱えていた白い花を差し出し、口を開く。
「じゃ~ん☆ これが、星の花だよ~♪」
 ニコニコと笑顔を浮かべる祝聖嬢から白い星の花を受け取ったティティスは、それが先程のホログラムの説明で見た聖樹の花だと気づいた。
(「確か、この花は……」)
 記憶を辿るティティスに、祝聖嬢は姉らしく解説を始める。
「この花はね~女神の加護を受けているから、淡く光っているんだよ~☆ 今は白いけど、強く願いを込めて触れると色が変わるんだって♪ ね、ティティスもやってみたら?☆」
 祝聖嬢に誘われるまま、ティティスは手にした白い花へとそっと手を伸ばした。ティティスの指が花に触れた途端、白く輝いていた花は淡く薄く輝く金色や銀色といった貴金属を思わせる色へと変化する。
「姉、これは……?」
 まさか“召喚獣”である自分が花に触れて色が変わるとは。思いも寄らなかった結果に驚きを隠せぬまま、ティティスは色を変えた星の花と祝聖嬢の顔を交互に見つめた。
 だが、驚くティティスとは裏腹に、祝聖嬢はこの結果に不思議はないようだ。
「星の花が無色じゃないのは段々と“心”が身に付いている証明だから自信をもって♪」
「姉よ、感謝する」
 優しく頭を撫でてくれる姉の言葉は、戸惑うティティスの“心”にじんわりと染み渡った。
 そんなティティスの様にクスリと笑みを浮かべ、祝聖嬢はにこやかに言葉を紡ぐ。
「だんだんと着実に成長しているね☆」
 周りを見ながらまだまだ研究や情報収集と生真面目な点のあるティティスだが、“召喚獣”の枠の中から猟兵として変わりつつあるのだな☆ と姉は妹の成長を嬉しく思う。
 そして、己の成長をしっかりと見てくれている姉をまたティティスは誇らしく思うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペペル・トーン
【猫魚】
人寂しく思うのを知ってるように
言葉をくれるのが嬉しくて
握った手の主に、つい、甘えたくなる

ああいう風に繋ぐと温かいのかしら
あの腕にひっつくようなのよ
通る人の姿に憧れるも
すぐに叶ってしまうのがこそばゆい

花はそれぞれ?2人で1つ?
他愛もないお話に
揺れる心地で歩みを寄せて

何をお願いしようかしら
貴方はいつも同じ願いなのね
私は…今この時ががとても楽しくて嬉しい心地
だから、こういう時間が続くように
貴方に甘えてみたい私には
小さな願いで十分で

私達の願いは何色かしら
共に触れ染まる姿に綻んで
流してしまうのが勿体ないくらい
もう少しだけ見ていていい?
星に届くまでの旅路は長いもの
少し惜しんだって構わないでしょう?


エンティ・シェア
【猫魚】

指先が冷えるから、温めてくれる?なんて
手を出せば素直に握ってくれる君が微笑ましくて
つい、甘やかしたくなる

してみるかい?
寒い日には、身を寄せるくらいがきっと丁度いい
だから、ね。試してごらん?
つれないお返事も、可愛らしいものだけど

花は、二人で一つがいいな
その方がお揃いのようで好ましい
しかし、願い事か…
私はやっぱり、日々を楽しく恙無く、かな
ふふ、前にも同じことを言ったね
囁くようなペペル嬢の願いに瞳細めて
それなら、楽しい今が続きますように、と
花に託して、星に届けてもらおうか

白い花が色を変える姿に見入って
もう少しと願う声には頷いて
そうだね、長い旅路となるのなら
標となる願いを、沢山添えておかねばね




 海から吹く風は冷たいが、祭を楽しむ人々は、そんなこと全く気にしていない様に見える。大勢の人たちの中、自分一人だけ、感覚が違うような。誰かにしっかりと捕まえていて貰いたい――。
 ペペル・トーン(融解クリームソーダ・f26758)が零した白い吐息に気づいた赤髪の青年は、スッと彼女の前に己の手を差し出した。
「指先が冷えるから、温めてくれる?」
 エンティ・シェア(欠片・f00526)は、何故いつも絶妙なタイミングで欲しい言葉をくれるのだろう――。
 ペペルは嬉しくて、にこりと笑みを浮かべると素直に彼の手を握り締める。
「どう? 温かくなったかしら?」
 ――甘やかしたい。
 ――甘えたい。
 凸凹のピースがカチリと嵌ったかのように、エンティとペペルはしっかりと手を繋ぎ、祭で賑わう人混みの中を歩いていく。家族、友人、恋人同士。祭を楽しむ人々は千差万別だが、擦れ違う人たちの距離感で彼らの関係性にも想像がつく。特に、ギュッと互いの身体を密着させて歩く二人は、この冬の夜の寒さなど構いやしないと語っているようにペペルには見えた。
「ああいう風に繋ぐと温かいのかしら」
 ポツリと漏らしたペペルの言葉に、エンティはつられて彼女と同じ方向に視線を向ける。ほら、と小さく指差すペペルの視線の先では、金髪の女性が黒髪の男性の腕にギュッと身体をくっつけるようにして歩いていた。
 なるほど、とエンティは小さく頷くと、何気ないことのように、さらりとペペルに問いかける。
「してみるかい?」
「――っ、遠慮しておくわ」
 ……本当は、ちょっといいなと思った。だが、その気持ちにペペルはサッと蓋をする。だって、すぐに叶ってしまうのがこそばゆい。
 だが、そんなつれないペペルのお返事もまた、エンティの『甘やかしたい』気持ちを増幅させているのも事実。
「今日のような寒い日には、身を寄せるくらいがきっと丁度いい。だから、ね」
 試してごらん? とエンティにニコリと笑顔を向けられてしまえば、ペペルの『甘えたい』気持ちが敵うわけがないのだった。

 白い星の形をした花を手にした人々を見て、 ペペルはふっと気になったことを口に出す。
「花はそれぞれ? 二人で1つ?」
「二人で1つのがいいな」
 迷うことなくキッパリと告げるエンティは、優しく目を細めると、その理由をペペルの耳元で囁いた。
「その方がお揃いのようで好ましい」
「そうね、お揃いも素敵ね」
 ふふっと笑みを零し、ペペルは白い星の花を一輪手に取る。淡い輝きを纏った白い花を見つめ、エンティとペペルは互いに視線を交わした。
「しかし、願い事か……」
「何をお願いしようかしら」
 花は一輪。願いごとは二人で同じ方が良いのだろう。うーんと考え込むペペルを前に、先に口を開いたのはエンティだった。
「私はやっぱり、日々を楽しく恙無く、かな」
 エンティの願いごとを聞いたペペルは「あら」と呟き、呆れたように小さく肩をすくめる。その様を見て、エンティは己の願いが過去にも告げたことのあるものだったことを思い出した。
「ふふ、前にも同じことを言ったね」
「貴方はいつも同じ願いなのね」
 二人同時に発した言葉に、息ピッタリだと思わず吹き出すタイミングもまた同じ。ひとしきり二人で笑った後、エンティはペペルに尋ねた。
「……で、ペペル嬢の願いは? 決まったかい?」
「私は……今この時がとても楽しくて、嬉しい心地なの。だから、こういう時間が続いたらいいなって」
 囁くようなペペルの願い。エンティはエメラルドと同じ色の瞳を細め、小さく頷く。
「それなら『楽しい今が続きますように』と花に託して、星に届けてもらおうか」
「えぇ、そうしましょう」
 小さな願いかもしれないが、ペペルも、エンティも、それで十分。
 二人同時に願いを告げて花に触れると、白かった花弁がキラキラと輝く澄んだ緑色へと変わっていく。そして、硝子のように透き通った緑の花弁は、一枚だけ赤色に染まった。
 花の色が変わる一部始終を見守っていたペペルとはエンティは花が色づく様を見届けると、どちらからともなく、ほぅと息をつく。「エンティちゃんの瞳と髪の色ね」
「そうかな? ペペル嬢の髪の色だと思うけれど――ほら、この赤はペペル嬢の色だよ」
 ペペルの髪を彩る赤い花と同じ色の花弁を指差し、エンティは星の花をペペルの髪の傍に添えた。しかし、ペペルの目に映る花の色は、エンティの瞳と髪と同じ色に見える。これは譲れない。
 互いの主張を譲らない二人は、顔を見合わせると、どちらからともなく笑い出した。
 ――星に届く前から、その願いを告げた時から、もう願いは叶っているのかもしれない。

 二人で色を染めた星の花を海へと浮かべようとするエンティを、思わずペペルは引き止める。流してしまうのが、勿体ない。
「もう少しだけ、見ていていい? 星に届くまでの旅路は長いもの。少し惜しんだって構わないでしょう?」
 ペペルの願いにエンティは迷うことなく頷いた。
「そうだね、長い旅路となるのなら、標となる願いを、沢山添えておかねばね」
 この大切な時間の終わりを告げる時がまだ来ないことを願い、エンティとペペルは煌めく二人だけの星に願いを託す。
 二人の未来が、たくさんの『楽しい今』へと姿を変えることを願って――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千々波・漣音
ちぃと聖夜を楽しむぞ!(気合

まずは街を巡ってみねェ?
おー硝子が綺麗だなァ
てかやっぱクリスマスだから、プレゼント交換とか…(ちら
って、いねェし!
…うん、コロッケや焼き菓子な
食いたいんだろ、奢ってやるから…
クリスマスでも食い気しかねェのかよ
でも…幸せそうに食うなァ(可愛い!

星流しもやろーぜ!
何色になるんだろ(お任せ
オレは願い聞く側の神格高い竜神だけど
でも、たまには願ってみるのもいいかもなァ
…稲荷寿司ならオレが作ってやるから、別の願いにしていいぞ

ほら、流そうぜ
そっと並んで流して、俺達の星を見送ってから
買ってたお揃いの聖樹の花のお守りを、メリクリ、って渡す
…え、コロッケまた食いたい?
んじゃ、食うかァ!




 祭に訪れた人々で溢れるヴェネラの街へとやって来た千々波・漣音(漣明神・f28184)は、メインイベントである星流しまでまだ時間があることを確認し、傍らの幼馴染へと声をかける。
「まずは街を巡ってみねェ?」
「うん、いいよ~」
 漣音の誘いに異論のなかった千歳は素直に頷き、そして、後ろは振り返らずに己の気の向くままに街の散策を始めた。そんな千歳を慌てて漣音が追いかけるのも、いつも通りの光景だ。
「ちょ、待てって……迷子になるだろ」
「え? さっちゃんが?」
「違う!!」
 ニヤリと笑う千歳から目を離さぬように気を付ける漣音の目に、キラキラと輝く何かが映る。よく見ると、それは色硝子で出来たイヤリングだ。
「おー硝子が綺麗だなァ」
 硝子細工が有名だと聞いていた通り、街にも多くの店が並んでいる。ネックレスや指輪といったアクセサリーはもちろんのこと、精巧な細工を施したオーナメントや厳かな光を放つランプ、日常に使うのが勿体ないような硝子ペンなどなど。オサレなプレゼントにはうってつけの品には事欠かない。
「てかやっぱクリスマスだから、プレゼント交換とか……」
 千歳の様子を伺いながら、漣音は慎重に言葉を選ぶ。『交換なんて面倒くさい』とやる気のない千歳を納得させるための理由をきちんと説明できなければ、120パーセントの確率で、この提案は却下される。
 だが……そもそも漣音が『ここに千歳がいる』と思っていた場所に彼女はいなかった。
「って、いねェし!」
 焦る漣音が慌てて後を追いかければ、千歳は先に進んだところにある店の間を行ったり来たりしながら、真剣な面持ちで何かを考えている。
「コロッケはさっき食べたのと味比べをしてみたい……でも、焼き菓子は種類もいっぱいあるし、次は甘いモノが欲しい気もする……」
「……うん、コロッケと焼き菓子な。食いたいんだろ、奢ってやるから……」
 ガクッと肩を落とす漣音とは対照的に、千歳の顔はパァァッと輝いた。
「本当!? 嬉しいな~、ありがとう、さっちゃん!」
(「クリスマスでも食い気しかねェのかよ」)
 一言、ガツンと言ってやりたい。……でも、そんな満面の笑みを浮かべて御礼を言うのは反則だ。
 漣音は緩む口元を見られないように隠しながら、千歳の望みを叶えるべく店へと走るのだった。

 コロッケも、焼き菓子も。どちらも思っていた通りとても美味しかった。
 大きなモフモフした尻尾をパタパタと揺らしてご機嫌の千歳に向かって、漣音は「なァ」と不自然にならないように気を付けながら声をかける。
「せっかく祭に来たんだし、星流しもやろーぜ!」
「……何それ?」
 キョトンとした顔で漣音を見つめる千歳の返答に漣音はやっぱりなァと苦笑する。そして、漣音は先に貰っておいた白い星の花を千歳に見せた。
「この花に願いを込めて触れると、花びらの色が変わるンだってさ」
「へ~え、スゴイねぇ」
 漣音の説明に千歳はふんふんと頷き、受け取った白い花を物珍しそうに眺める。
「オレは願い聞く側の神格高い竜神だけど、でも、たまには願ってみるのもいいかもなァ」
「え!? さっちゃんはお願い叶える側だってバレたら、願いごとは無視されるんじゃない……?」
「え!? この世界の女神はそんなに心狭いのか……?」
 二人は互いに顔を見合わせ、暫し考え込んだ。結論、その時になればわかるだろうということにして、漣音も願いごとを考えることにする。
「何をお願いしようかな~」
 真剣な時の千歳は右耳だけピコピコ揺れる――そんな幼馴染の癖を愛おしそうに見つめる漣音だったが、ハッと大事なことに気づいた。――今までの経験上、これは先に伝えておく必要がある。
「……稲荷寿司ならオレが作ってやるから、別の願いにしていいぞ」
「あ、そう? うん、わかった」
 怒ったり、否定したりしないということは、やはり願いごとの候補にあがっていたんだと漣音の顔が引きつっていることに千歳が気づくことはなく。
「よーし、願いごと決めた! じゃぁ、お花に触って……」
「ちょ、待てッ! ここは二人で同時に花に触れるところじゃねェの!?」
 早く色が変わるところが見たいのに、と膨れっ面の千歳を宥め、漣音の掛け声に合わせて二人はそっと花に触れた。すると、二人が見つめる先で、白い花は橙色と、藤色へとそれぞれすぅっと染まっていく。
「色、変わった……!」
 目を見開いて花を見つめる千歳の表情がまた可愛いのだが、そこはグッと堪えて。
「ほら、流そうぜ」
 漣音は千歳を促すと、並んで花を水面にそっと浮かべた。千歳も漣音に倣ってポイっと花を海へと落とす。そして、ゆっくりと海を流れてゆく星を見送った後、漣音は千歳の名前を呼んだ。
「ちぃ、手を出して」
 名前を呼ばれ、千歳は何も言わずに両手を差し出す。漣音は「メリクリ」と呟くと、差し出された千歳の掌に小さなお守りをのせた。
「何、これ?」
「聖樹の花のお守りだってさ。やるよ」
「ふーん……」
 それは、聖樹の花を象った硝子で出来たお守りで、実は漣音もお揃いの品を持っているのだが――それは千歳には秘密。
 だが、千歳の関心はもうすでに別のところに向いていて。
「そんなことより、私、やっぱり、もう一度さっきのコロッケが食べたいんだけど……」
「……え? まだ食うの?」
 漣音の口から思わず本音がポロリと漏れた。でも、あの幸せそうに食べる可愛い幼馴染の姿がもう一度見られるというのは、もしかしてご褒美なんじゃないかと前向きに考えることにする。
「しゃーねェなァ……んじゃ、食うかァ!」
 わーい、と嬉しそうに飛び跳ねる千歳の手の中で、聖樹の花のお守りがシャランと鳴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
ユニさん、ご一緒お願い出来ますか
星流しに乗せたい願いがあるんだけど…
その前に色々楽しみたいじゃん?

僕、庭で色んな花育ててるんだけど
そこに一緒に飾れそうなお土産
なにか買おうかなって
花や鳥がモチーフの置物だったり
吊るせるランプもいいなぁ…
風に揺れるオーナメントとかもいいかも
良かったら、一緒に選んでくれる?

代わりに飲み物や軽食奢ってあげる
ポタージュやコロッケ、美味しそうだよね
ユニさんは何食べたい?

最後にそっと星流し
どうか僕の幸せが
今は亡き両親の元にも届いてくれますよう
叶ったかどうかなんて自分では気付けない願いだけど
ただの自己満足だから

綺麗だね
ここから流せばいいんだっけ
ユニさんの願いも、叶うといいね




 祭を楽しむ人で賑わう夜市で、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は知った顔のグリモア猟兵を見つけて声をかけた。
「ユニさん、ご一緒お願い出来ますか」
 星流しに乗せたい願いがあるという澪だったが、「その前に色々楽しみたいじゃん?」と無邪気に笑う彼の言葉にはユニも同意だ。二つ返事で快諾する。

「で、澪くんは何か欲しいものとかあるのー?」
 首を傾げるユニの問いに、澪はうーん……と言葉を選びながら口を開いた。
「僕、庭で色んな花育ててるんだけど、そこに一緒に飾れそうなお土産、なにか買おうかなって」
 ふむふむと頷くユニと一緒に店を回るが、さすがは硝子細工が有名と言われるだけの街。どの店に並ぶ品も素敵で決めきれない。
 陽の光を受けてキラキラと輝く花モチーフの置物に目を奪われ、本物かと見間違えてしまうほど精巧な小鳥の置物を飾ったアンティーク調の鳥籠を前に溜息をつく。柔らかな風に合わせてシャランと軽やかな音色を奏でる硝子のオーナメントの音色にうっとり耳を傾け、ほのかな光を灯す硝子のランプにそっと手を伸ばした。
 あれも、これも。全部綺麗で、どれも良い。
「おみやげ選びがこんなにハードだとは思わなかったのね……!」
 疲れを隠しきれず、ぐったりした様子のユニに、澪は休憩を提案する。
「あの店のポタージュとか、あっちの店のコロッケとか美味しそうだよね。ユニさんは何食べたい?」
「ユニはあのお野菜のポタージュが気になってたの! 澪くんは?」
「いいね、僕は……せっかくだし、貝が入っているクリーム風味のポタージュにしようかな」
 ちょっと待ってて、と言うと、澪はサッと店へ行き、ポタージュの入ったカップを二つ持って出てきた。
「おみやげ選び、付き合ってくれてるお礼ってことで」
「え!? ありがとう~」
 そして、澪とユニはベンチに腰をおろすと、「いただきます」と手を合わせてポタージュを口に運ぶ。湯気の立つポタージュは身体の内側から温めてくれ、澪はふぅっと小さく息を吐いた。
 貝の旨味が存分に出たスープに濃厚なミルクとチーズのコクがよくあっている。シャキシャキと歯ごたえのよい角切りにされた野菜はセロリに似ている気がするが、苦みは全く感じない。ポタージュに添えられたクラッカーを一口齧ると、シンプルな塩味がまた丁度良い。

 ポタージュで一息ついた後、ユニは澪に話しかける。
「ユニ、ちょっと考えたんだけど……聖樹の花モチーフの物を買うのはどうかな?」
 ヴェネラの街に来た記念にするならば、街を象徴するものが良いのではないかと言うユニに、澪はパッと顔を輝かせた。
「確かに、それはいいかも! それなら……」
 澪とユニは顔を見合わせ、二人同時に大きく頷いた。二人が思い描いている品は――きっと同じものだから。

 ありがとうございました、と店主の声に見送られ、澪とユニは満足そうに店を後にする。
 澪とユニが選んだおみやげは、聖樹の花を象った硝子のオーナメントだった。一見すると白い花なのだが、光の加減によっては虹色に輝くオーナメントは、願いを込めることで色が変わる星の花の様で。昼間の陽射しと夜の灯りとで異なる雰囲気を醸し出している。「おみやげ買えてよかったのね~!」
 ほぅっと安堵の溜息をつくユニに「ありがとう」と笑みを浮かべ、澪は白い星の花を差し出した。
「メインイベントは、これからだよ。ユニさんの願いは決まった?」
 澪の問いにユニはこくりと頷くと、白い花を摘み上げる。そして、二人は顔を見合わせると、同時に願いを込めて花に触れる。
(「――どうか僕の幸せが、今は亡き両親の元にも届いてくれますように)」
 澪の願いは叶ったかどうか、自分では気づけない願いだけれども。それが自己満足だとわかっていても、願わずにはいられなかった。
「澪くん、ほら……っ!」
 ユニに名前を呼ばれ、澪がハッと手元の花へ視線を向けると、白かった花は朱色へと変わっている。それは、澪の頭部に咲く花と同じ色の花だった。
「綺麗だね……」
 キラキラと夜空に浮かぶ星のように金色の輝きを纏った朱色の星の花を見つめ、澪はポツリと呟きを漏らす。
 そうだね、と笑みを浮かべるユニの花は苺の色へと変わっていた。
「この花は……ここから流せばいいんだっけ」
 周りの人たちの真似をして、そっと海に花を浮かべれば、煌めく朱色の星は水平線の向こうへ向かってゆっくりと流れてゆく。
「お花、頑張って星に届きますように……っ!」
 花を見送りながら必死に祈るユニを見て、澪は思わずフフッと笑みを零した。
「ユニさんの願いも、叶うといいね」

 星の花が遠い水平線の向こう側にある星に届くのは、どれくらいの時間を要するのだろうか。
 花の旅路が穏やかなものであることを願いながら、澪はその姿が見えなくなるまで朱色の星を見送っていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
ラヴィさん(f35723)と

自分の世界を気に入って貰えたことが嬉しくて
自然と綻んでしまう
私も、ラヴィさんとご一緒出来て嬉しいです!

キラキラ輝く硝子細工はどれも綺麗でつい目移りを
ラヴィさんの声に視線を遣れば
可愛らしくも見事な造形に見惚れてしまう
ラヴィさんにぴったりですね
私は…あ、
近くにあった聖樹の花模様の一輪挿しに目が留まる
真っ赤な薔薇とか飾ったら綺麗だと思いませんか?

本当、あの空のお星様が手元で咲いたみたいですね
ラヴィさんらしい綺麗な薔薇色です
これからも穏やかな日々を過ごせますように
願った瞬間色付いた自分の桜色の花と並べて微笑んで
天の川…そうですね
温かくて素敵な一夜限りの春のような日


ラヴィ・ルージュブランシュ
ラナ(f06644)と

ラヴィね、ラナのご案内でA&Wが大好きになったのよ
そんなラナとこの世界にまた来られてとっても嬉しい!

星流しに参加する前に硝子細工のお店を見ていきたいわ
あっ!ねえこれ可愛くない?
目に止めたのはお花の形をした硝子のペーパーウェイト
使うたびに今から起こる素敵な出来事を思い出せそう
ラナはどれが気になる?
わ、とってもステキ!
お花もきっと喜ぶわ

星のお花、とっても可愛いわね
これからもたくさん楽しい事がありますようにってお願いしたら
ぱっと薔薇色に染まってくれたわ
ラナの桜色とお揃いだけどちょっぴり違うピンク
みんなのお願い事が天の川みたいに灯ってく
川と海を辿ってお空に届くなんてロマンチックね




 まだ見ぬ未知の世界へと一歩を踏み出した時のワクワクした気持ちを、ラヴィ・ルージュブランシュ(甘惑プロロンジェ・f35723)はしっかりと覚えている。
 ラヴィが生まれ育った地は、アリスラビリンスの端っこの方にある国で。そこから出たことのなかったラヴィにとって『外の世界』は新しいこと尽くしで興味深々。
 そんな中でも、ここアックス&ウィザーズを知ると同時に大好きになった切っ掛けをくれた恩人でもあるラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)と共に再びこの世界へと来ることが出来たのことは、感動もひとしおだった。
「ラヴィね、ラナのご案内でアックス&ウィザーズが大好きになったのよ。そんなラナとこの世界にまた来られてとっても嬉しい!」 素直な気持ちを告げるラヴィの言葉に、ラナの顔もほんわりと綻ぶ。
「私も、ラヴィさんとご一緒出来て嬉しいです!」
 自分の世界を気に入って貰えたことは、とても嬉しくて。ラヴィにまたこの世界の楽しい想い出を作ってあげたいと、ラナはラヴィの手を取り、夜市へと繰り出していった。

 星流しに参加する前に、硝子細工のお店が見てみたいというラヴィのリクエストに応えるため、ラナとラヴィは二人、硝子細工を扱う店を覗いてみる。夜市の灯りを受けてキラキラ輝く硝子細工はどれもこれも綺麗で目移りしてしまい、あれも素敵、これも良いと『これぞ!』というお気に入りの品を探すことが出来ない。
 そんな中、先に運命的な出会いを果たしたのはラヴィだった。
「あっ! ねえこれ可愛くない?」
 ラヴィの声にラナは手にしていた硝子で出来たウサギの置物をそっと棚に戻して、ラヴィが見つめる視線の先を追う。ラヴィがじっと見つめているのは聖樹の花を象った硝子製のペーパーウェイトだ。可愛らしくも見事に咲き誇る花の細かな造形にラナも思わず感嘆の声をあげる。
「まぁ……!」
「使うたびに今から起こる素敵な出来事を思い出せそうじゃない?」
 硝子の花を優しく撫でるラヴィに、ラナは大きく頷き、穏やかな笑みを浮かべた。
「ラヴィさんにぴったりですね」
 ラナの言葉にラヴィは嬉しそうに目を細めると、逆にラナへと問いかける。
「ラナはどれが気になる?」
「私は……」
 ぐるりと硝子細工たちを見回すラナの視線が止まったのは、クリスタルのようにキラキラと輝く聖樹の花模様の一輪挿しだった。
「この一輪挿しに、真っ赤な薔薇とか飾ったら綺麗だと思いませんか?」
 想いを馳せるラナに、ラヴィも全力で同意する。
「わ、とってもステキ! お花もきっと喜ぶわ」
 ラヴィがそう言ってくれるのであれば、きっと間違いない。
 確信したラナは早速、帰ったらこの一輪挿しを何処に飾ろうかと想いを巡らせ、胸を躍らせるのだった。

 お気に入りの品を手に入れた二人は、星流しに参加すべく白い星の花を見つめる。
「星のお花、とっても可愛いわね」
「本当、あの空のお星様が手元で咲いたみたいですね」
 ラナの言う通り、夜空に瞬く星がこの地に落ちてきて、花として咲いたかのようだ。そして、この白い花は願いを込めると色が変わるというが、果たして――。
 ドキドキしながらラヴィはそっと花へと手を伸ばす。ラヴィが花に触れた瞬間、白かった花はパッとその色を変えた。
「ラナ、今の見た!? これからもたくさん楽しい事がありますようにってお願いしたら……!」
 ほら、とラヴィが掲げる星の花は鮮やかな薔薇色へと染まっている。
「えぇ、ラヴィさんらしい綺麗な薔薇色です」
「ラナも、早くやってみて!」
 何色に変わるのだろうと、期待に満ちた眼差しを向けるラヴィに頷き、ラナは遠慮がちにまだ白い花にそっと触れた。
(「これからも穏やかな日々を過ごせますように――」)
 願った瞬間、ポッと色づいた桜色の花を、ラナはラヴィの花の隣にそっと並べる。
「ラナの花は桜色ね。お揃いだけどちょっぴり違うピンク」
 色の濃さは違えど同じピンク色に染まった星の花を見て、嬉しそうに顔を輝かせるラヴィの姿にラナの口元にも笑みが浮かんだ。

 己の色に輝く星の花を海に浮かべ、ラヴィとラナは夜空の色を映す海に浮かぶ星をウットリと眺める。
 皆の願いごとを託された沢山の星が灯る様は、まるで空に浮かぶ天の川のようだとラヴィは呟いた。
「川と海を辿ってお空に届くなんてロマンチックね」
「そうですね……温かくて素敵な一夜限りの春のような日」
 そして、春を思わせるような二人の星がゆっくりと海の向こうへと流れていく様子を、ラナとラヴィは見えなくなるまでずっと見つめていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、星の花ですって綺麗ですね。
ふえ?アヒルさん、何をしているんですか?
ふええ、さっそく願い事をってずるいですよ。
私も願い事します。
えっと、早く私の扉が見つかりますように。
やっぱり、私もアリスですから元の世界に戻る扉が見つかってほしいですね。
ふわぁ、色が変わりました。
これを流せばいいんですね。
あれ?アヒルさんの星の花の色が変わっていませんね。
あ、アヒルさんまだ流しちゃ駄目ですよ。
ちゃんと色が変わってからですよ。
ふえ?これでもちゃんと色が変わっているんですか?
ふええ!?白に変わったんですか?
分かりにくいですね。
それじゃあ、星の花を流しましょうね。
私たちの願いが叶うことを願って。




 聖樹に咲く白い星の形をした花は、願いを込めて触れるとその花弁の色を変えるという。
「ふわぁ、星の花ですって綺麗ですね」
 白い花をくるくると指先で回しながら、フリル・インレアン(大きな帽子の物語    👒  🦆 はまだ終わらない・f19557)は相棒のアヒルさんに話しかける……が、アヒルさんの返事はない。
 怪訝に思ったフリルは「ふえ?」と改めてアヒルさんに視線を向けた。
「アヒルさん、何をしているんですか?」
 そして、フリルはアヒルさんが何をしているのかに気づき、再び「ふええ」と驚きの声をあげる。
「さっそく願い事をってずるいですよ」
 思わず口を尖らせるフリルだったが、アヒルさんは素知らぬ顔。負けじとフリルも花に手を添えて願いを込めた。
(「えっと……、早く私の扉が見つかりますように」)
 やはり、アリスであるフリルとしては、元の世界に戻る扉が見つかってほしいというのが一番の願い。フリルの願いを受け、花は淡い水色へと花びらの色を変える。
「ふわぁ、色が変わりました」
 これを海に流せばいいはずだ。フリルが花を海へと流そうとすると、アヒルさんも隣へとやってきた。
「アヒルさんも、一緒に流します? ……あれ?」
 アヒルさんが咥えている花の色はまだ白い。アヒルさんはまだ願いを込めていないのだろうか。
 だが、アヒルさんはフリルのことはお構いなしといった様子で、さっさと星の花を海に向かって流す気満々のようだ。
「あ、アヒルさんまだ流しちゃ駄目ですよ。ちゃんと色が変わってからですよ」
 慌てて止めるフリルに、アヒルさんは『分かってないな』と言いたげな視線を向ける。
「ふえ? これでもちゃんと色が変わっているんですか?」
 しかし、フリルには、どこからどう見ても白い花にしか見えない。懸命に目を凝らして花を見つめるフリルに、アヒルさんはさらりと正解を告げた。
「ふええ!? 白に変わったんですか?」
 分かりにくいですね……と思わずフリルが零すのも無理はない。白から白に変わったのは言われなければ到底わからない。
 とはいえ、色が変わっているのであれば花を海に流しても問題はない。
 改めて、フリルとアヒルさんは星の花を海へと流す。くるくると弧を描きながら、ゆっくりと流れている花を見つめ、フリルはそっと手を組んだ。

 ――どうか、私たちの願いが叶いますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
【花結】
凍えるような真白のなか
鮮緑の美しさに眸を細め
かがやく花に指先伸ばし
ふれあいそうな、互いに
隣の君へと柔く微笑んだ

一番に願いたいことは
僕の花が叶えてくれる
けれど、他の願いもあるんだ
触れる星花に籠めるのは
叶えた先の幸いが増すもの
『とびきり幸せな式になるよう』
なんて、気が早いかな?

託すばかりでない君の願いに
ふたりで叶える未来に綻んで
幸せを必ず咲かせようね

あたたかに染まる星花を
流すまえに、君へ向ける
改めて約束を紡ぐのは
何処か面映ゆくもあれど
願いふたつを捧げるよう
星花も、視線も、真直ぐに

僕だけの、愛し花
ふたりが住む場所で
白が解けて、花が咲いて
春告げの報せが届く頃に
僕と結婚してくれるかい

春のような街の景に
春のような君がいる
気も逸るというものだが
もう少し位は待てるから
ほんとうの家族になろう

いらえに、零す嬉笑が震え
涙を湛えて強く抱き締める
ああ、幸に包まれ感じてほしい
降る“雨”が止んで、虹が出るまで

ブーケトスとするには
ささやかな二輪でも
門出祝いには十分だ
遠く流れる星たちが
添う君との幸の導になるといい


ティル・レーヴェ
【花結】
聖樹が咲かせる星の花
樹は雄大で花は綺麗で
白い吐息ひとつ指を伸ばせば
あなたの指も同じよに伸びて
互いに咲みあうあたたかさ

ふたりの一番の願い事
それは互いに叶え合うもの
他の願い?と見つめつつ
零さぬようにと耳傾けて
まぁ、気が早いだなんて
素敵な願いに頬が緩む

妾は、そうね
あなたと歩むこの先に
『幸せの種が沢山届きますよう』
咲かせるのはきっとふたりで

ふたりの願いで染まる花
其々の色を眺めていたら
向けられる花と約束
真っ直ぐと届く視線に詞に
目の前の花が滲んで見える

あなただけが注いでくれる
この胸満たすあたたかな水
あなたの愛が満ちて溢れて
眸から雫もほろほろと

ええ、もちろんよ
妾だけの、愛しい樹
その傍でずうと添い咲いていたいの
妾をあなたのお嫁さんにしてほしい
あなたとほんとうの家族になりたい

止まらぬ涙が
あなたの顔を滲ませるから
見えるようになるまで
ぎうと抱いて下さる?
あなたを感じて
あなたの幸せに包まれたいの

待ち遠しい春をも思い
共に流す花二輪
あなたとぴたり寄り添い眺め
季節を早く連れてきて、なんて
願いも重ねてしまいそう




 港街に吹き込む風が身に刺さる。いつしか冷たくなった指先に、そっと吹きかける息も白い。

 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、傍らのほっそりとした小さな手を包み込むように、静かにギュッと握り締めた。
 思い掛けない温もり。
 ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は、その瞳に驚きを浮かべる。だが、己を優しく見つめる紫色の眸に気づくと、柔らかな笑みを零した。
 深緑のピンと尖った葉で縁取られた大樹に花咲く白い星々の輝きは神々しく。ライラックとティルは、互いに何も言わず、ただその指先を真っ白な花弁へと伸ばす。二人同じ仕草をしていたことに気づくと共に、交わった視線に時同じく笑顔の花が咲いた。

「一番に願いたいことは僕の花が叶えてくれる。けれど、他の願いもあるんだ」
 ライラックの言葉にティルはパチリと瞬きを一つ。
(「……他の願い?」)
 絶対に聞き洩らすまいと、ジッと見つめる藤色の瞳を、ライラックは宝物のように愛しむ。そして、大切な願いを籠めて、白い星花へと優しく触れた。
「――『とびきり幸せな式になるよう』なんて、気が早いかな?」
 この願いが叶った時、その先にある幸せが増すことを知っているから。故に、願わずにはいられなかったライラックだったが、傍らに寄り添う最愛の君は……。
「まぁ、気が早いだなんて」
 想いも寄らない素敵な願いに頬を緩ませ、色を変えた星の花を見つめて満面の笑みを浮かべる。
(「この願いを共に叶えるという役目を担っているのは、妾……」)
 ティルは、気を抜いたら一瞬でほにゃりと蕩けてしまいそうな顔を必死に両手で押さえた。
 そんな彼女は、いつまでも飽きることなく見ていられるほどに可愛らしいが、ティルの願いも聞いてみたい。ライラックは、ティルを現実に呼び戻すことを決意する。
「ティルは?」
 名前を呼ばれ、ティルはハッとした表情を浮かべた。そして、瞬時にキリリと姿勢を正し、丁寧に言葉を紡ぎながら、白い花弁を指先でそっと撫でる。
「妾は、そうね……『幸せの種が沢山届きますように』」
 彼と歩むこの先の未来で、沢山届いた幸せの種を咲かせるのは、きっとふたりの仕事になるだろう。
 遠くない未来の姿に想いを馳せるティルの傍らで、ライラックはというと……ふたりで叶える未来に小さく口元を綻ばせ、託すばかりではない彼女の願いに心打たれたことは、ティルには秘密。
「――幸せを必ず咲かせようね」
 そんなライラックの言葉に、ティルは極上の笑みを浮かべて頷いたのだった。

 春の陽射しのように柔らかな蜂蜜色に輝く花は、ふたりの心も温かく照らしてくれて。永久の約束と同じ銀色の花は、1枚だけ紫色に染まった花弁がまた大切な銀環と揃いの装いで心が躍る。
 ふたりの願いで染まった花を柔らかく見つめていたティルを前に、ライラックは、己の緊張を悟られぬよう、互いの願いで色づいた星花を見つめた。
 改めて約束を紡ぐのは、どこか面映ゆい。
 しかし、ふたつの願いを捧げるように花も、視線も。ただ、愛しい人へと真っ直ぐに向ける。
「僕だけの、愛し花」
 普段よりも、心なしか乾いた声で響く彼の言葉。
 ティルはパチリと瞬きを一つして、顔をあげた。返事もしたつもりだったが、なぜか、それは声にはならなかった。
 ライラックは普段と変わらぬ優しい視線を向けたまま、ゆっくりとティルに言葉を届ける。
「ふたりが住む場所で、白が解けて、花が咲いて、春告げの報せが届く頃に、――僕と結婚してくれるかい」
 その言葉に、ティルは思わず息を呑む。
 ――嬉しい、嬉しい、すごく、すごく嬉しい。
 応えるべき言葉はわかっているのに、でも、ちっとも声を出すことは出来なくて。その上、眼前の星の花は、なぜか滲んでしまってよく見えない。ティルの胸をいっぱいに満たすあたたかな水――ライラックだけが注いでくれる、彼の愛が満ちて溢れて、藤色の眸からきらきらと輝く雫がほろほろと零れ落ちた。
「ええ、もちろんよ」
 ――ちゃんと、上手に言葉を紡げているだろうか。
 堪えようとしても、一度零れた涙を抑えることは難しく。ティルは涙で濡れた顔を綻ばせ、ライラックへ向かって震える指先をそっと伸ばす。
(「……妾だけの、愛しい樹」)
 その傍でずうと添い咲いていたい。
 ――それは、ティルの切なる願い。
「妾を……」
 自分で発したはずの言葉なのに、それは、なぜかまるで別人の声のようで。思わずティルはビクリと肩を大きく震わせた。
 でも、この気持ちを、きちんと自分の言葉で伝えたい。ティルは胸の奥から絞り出すように、必死に息を吐き出し、震える声で想いを告げる。
「妾を、あなたのお嫁さんにしてほしい。あなたと、ほんとうの家族になりたい……っ」
 ――それは、とても嬉しい、ティルからの聞きたかった返事。
 自然とライラックの口元には笑みが浮かび、紫色の瞳の端がキラリと光った。
 春のような街の景色に、春のような最愛の君がいる。逸る気持ちを抑えることは難しいが、もう少し位は待てるから――否、待ってみせる。
 涙を湛え、ライラックはティルをぎゅうと強く抱きしめ、彼女の耳元に口を寄せた。
「ああ、ほんとうの家族になろう」
 その言葉に、再びティルの瞳から涙がとめどなく溢れ出し、その眼に映るライラックの顔が滲む。
 涙で潤む藤色の眸でライラックを見上げ、ティルはふわりと小さく微笑んだ。
「あなたの顔が見えるようになるまで、ぎうと抱いて下さる?」
「――仰せのままに、愛しい君」
 嬉しそうに目を細め、ライラックはティルを抱きしめる腕にギュッと力を込める。無限に溢れる幸せに包まれ、感じてほしいと想いを込めて――。

 藤色の瞳に降る“雨”が止み、美しい虹がかかる頃。
 待ち遠しい春に想いを馳せ、ライラックとティルはふたり確りと手を繋ぎ、胸に抱いた星の花をそっと海に向かって送り出す。
 ブーケトスとするにはささやかかもしれないが、ふたりの門出を祝うには十分だった。
 二輪の花は、緩やかな放物線を描き、ポチャンと小さな水音を立てて着水すると、ゆっくりと流れに合わせてゆらりゆらりと進んで行く。
 水面でキラキラと輝くふたりの星を眺め、ティルは傍らのライラックにそっと身体を寄せた。
「『季節を早く連れてきて』なんて願いを重ねたら、怒られてしまうかしら?」
 ふふっと悪戯めいた眸でティルは呟く。
 だが、その願いは彼にとっても切なる願い。ライラックは緑色に波打つ長い髪を一房掴み、唇を近づけた。
「その時は、潔く叱られようか――ふたりで」

 二つ仲良くぴたりと寄り添い、キラキラと遠く流れ行く星たちが。
 どうか永久の幸の導きになりますように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月07日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト