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欠乏症

#アルダワ魔法学園 #ノベル #敗北 #風船

全会原・タイガ
複数ピンナップのストーリーをお願いします。
https://tw6.jp/gallery/?id=127805

・状況
宿敵の風船魔法によってタイガの肉体が風船に変えられ無力化される敗北シチュ。

体が徐々に風船化し身動きがとれなくなる。
風船に変わった部分から感じる異様なゴムらしき質感、擦れる音、臭い。
自分の身体が自分のものでなくなっていくような恐怖と無力感がタイガの精神を蝕んでいく――
という内容をお願いします。



 理性とは人を人とする唯一のネジで在り、煩わしくて吐き気がする、アウトサイダーな個体が居ても仕方のない事だ。
 真実は時として物語、驚天動地すらも脅かすものだと、あの頃のオマエは理解出来なかった。ジャバウォックとでも謂うべきか、パンタースナッチとでも謂うべきか、生々しい或いは機械仕掛けな怪物に晒された刹那、嗚呼、女体だって今ならば当たり前の状況だ。まるでシリコン地獄だとオマエは日々苦笑いを浮かべている。それで、くらり、よろけた所以は何者かの意思・意志、上位からの指図に他ならないのか。ぎしぎしと嗤い、回転している歯車に潰されなかっただけマシとも謂えよう――有態に描写してしまえば瞬間転移罠――嗚呼、此処は何処だろうか。オレは何処に連れ去られるのだろうか。壁の中、もしくは床の下だけは止めてくれよ、と、存在しない神様に祈ってみる。いや、忘れてはならない『精神』がひとつだけ有った。男は度胸、女でも度胸だ。ヤケに艶やかな唇、孔、ストローめいてすっぽりと……あら。この状況を諺にして視るならば、飛んで火にいる夏の虫。
 己が未だ『元の性別』で在るならば、きっと、頬を赤らめて目を廻していたに違いない。目の前でふよふよと微笑みかけている『それ』は災魔、オブリビオンだと謂う事に嘘偽りはないが。そんな事よりも――口腔に入った『もの』の感触だ。歯触りのいい、若干平ぺったい、ホースのようなそれ――所謂空気入れなのではないか。名状し難い心地の良さを如何にか吐き捨てる。おい、アンタ。災魔だよな? それも厄介で面倒臭いタイプの。あ、バレちゃった。そうよね、バレバレよね。でもね、アナタ一人くらいなら頭の中までフワフワに出来るんじゃないかしら。コイツは何を、そんなに余裕なのかとオマエは首を傾げてみる。やわやわな腹部に一発、拳を入れてやれば簡単に落ちそうな面だ。握り締めた右、近くへ、近くへ、もっと近くへ……それは愚行ってやつじゃないかしら?
 たとえば蛇に睨まれた蛙、硬直して抗う事も出来ない奴隷、咀嚼された方が人間らしい最期だったと謂えよう。転移の際とはまた別の水泡のような光に中てられる。痛くはない、痒くもない、いったい、人のような化け物は「オレに何をした」と哄笑するのか。これでアナタは私のものよ。接近を試みたのがいけなかったわね――ぷくぅ。なんとも気の抜けた、間抜けた効果音だろうか。きぅきぅと鬱陶しい足元を確かめる……いや。う、嘘だろ。お、オレの足が……? つるりと身体が傾いたのはバランスが『取れなくなってきた』所為だ。最早、爪先は原形を留めていない――。
 やめて。やめてくれよ。やめてください――臀部がクッションになって倒れ込まなかったのは不幸中の幸いか。胴体、腹部分がぎりぎりとネジくれた刹那、ぱぁん、と屈したのはオマエの内臓とも考えられる。何故、痛くないのか、痒くもないのか。そんなの決まってるじゃない。純粋に、ただ純粋に、風船になった気分を味わってもらいたいのよ。ダメだ。この女、この災魔、このオブリビオン……正気じゃない……この埒外性を本気で『愉しい』とお裾分けしたいと思っている。ぶくぅと今度は果実が、腕が、同時に訪れた。なんと謂うか、妙な臭いまでしてくる。鼻を弄るような護謨臭の、むわりとくる、眩暈を想わせる浮遊感……な、なんだ。おかしい。オレ……わたし。なんだか……。
 ――いや。いやだ。まだオレはオレだ。
 ――無力だろうけども、意識はしっかりと、まだ、わたしだ。
 限界まで膨らまされたオマエは重力に勝り、ぷくぷくと浮き上がっていく。きゃっきゃと燥いでいる『原因』が紐――いつのまに付けたのだろうか――を引っ張ると身体がくるくると遊びだす。天蓋にあたって跳ね返り壁にあたって跳ね返る。大丈夫だ。きっと、他の猟兵が異変に気付いて「わたしのことを」「助けないでよ」は? 今、今、オレは何と思った? わたしは今、何と思った。膨らむ快感、楽しんでくれてるかしら。楽しんでくれてるわね、なら良かったわ……まるで林檎のような染まり具合だ。あとは飾りつけもしなくちゃ勿体ない、形容出来てしまう背徳が脳味噌まで風船にした。これは要らないものよ。要らないものだって? ええ、要らないわよ。だってアナタ「最初っから望んでた気がするもの」
 鳥葬――バルーン・アートがオマエの周囲をぐるぐるとし出来損ないの嘴を中ててくる。犬のように中空を漂う沙汰も数分間舐ればボイス・チェンジじみた可笑しさだ。それじゃあ皆のところに連れてくからおとなしくしててよね、まあ、もうフワフワの虜なんだろうけど。全ては風船になる為に生まれてきたのだ。全ては膨らむ為に存在していたんだ。この世の真理に導かれてダンジョンの奥底、元の身体もクソもない……。

 ぷす。
 ぷす?

 ハテナ・マーク、何処かに引っ掛かった――ぴゅるるる、ひゅるるるる……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年12月22日


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