沖浦・小夜子
私、小夜子のメインテーマは捕虜状態です。
オブリビオンに敗北し、鎖で厳重に縛られて奥深い投獄された、されている、
といったノベルを希望致します。
基本バッドエンドです。
捕虜である事には慣れています。
人狼ですが、人狼の素養はやや乏しく、ほぼ人間で通します。
私自身も手探りな部分が大きく、大半はおまかせです。
自発的に出せる行動が極めて少ない部分が、ハードルが高いのですが
敢えてそういうのが見たい、というのがあります。
どうぞ宜しくお願い致します。
面倒臭い依頼に巻き込まれたとでも謂うべきだろうか。
狂った王様の接吻を潜り抜けて地獄からの産声を無碍にした。無限ループに近しい邪悪性を乗り越えてお目当てのオブリビオンとぶつかる。のたうち、膨らみ、天高くおどる『影』の足元で摩天楼の輝きに立ち眩んだ。莫迦みたいだ。本当、阿呆みたいだ。これならおんなじ場所で自分で自分の足を踏んでいるのが正解だったのだ。そう謂えば数日前他の
猟兵に占ってもらった記憶――ハングドマン、逆位置。
運命の骰子は見事に的中したのだ。偶然と崇められた天使様がハンカチを噛んでいる。ゼリーみたいだ。プリンみたいだ。私はありとあらゆる柔らかいものを想像し、只管に、現実逃避を反芻する。
――あっ猟兵。君、猟兵だよね。
――答えなくても良いよ。ぼく心が読めるんだ!
――君、心の底ではきっと『こういうの』嫌いじゃないと思うんだよね。
――気にしなくてもいいよ。君専用のお部屋を用意してくるから。
暗黒――と表現するのも甘ったるい惨状、にぶい頭痛に無理矢理起こされた私はヤケに無機質な『空間』に在る事を認識した。いや、その前に、何だろうか。ひどくネチョネチョとした物体が全身に絡まっている。腕を動かそうとしても、足を動かそうとしても、まったく、ピクリともしない。それよりも考えるべきは如何して上下が逆さまに成っているのか、だ。内臓がずるりと頭の中に溜まるかのような、病的な、味わいたくも無い感覚に晒されている。内臓……? 嗚呼、そんな、そんな事があってたまるものか。目の玉をいっぱいに『下』に向けたなら微かにうつるのっぺりとした腸。これを猟兵の力で引き千切れないなんて可笑しな話ではないか。いや、おそらく、思い出した限りだと此処は第三層――強大な闇の種族が蔓延っている世界だ。この程度の埒外性など当たり前なのかもしれない。
永久とも思えた静寂を破ったのは輪郭の曖昧な『オブリビオン』の到来であった。此処から始まるのはおそらく、予想通りの遊戯に違いない。たとえば桶に入った水の中へと突っ込まれる窒息――ああ、ひくついた私の鼻腔がこの時限りに獣性を称えている――逃げなければならない。逃げなければ……? おかしい。何故だろうか『オブリビオン』は私の顔を視るだけ視てそそくさと失せていった。
――これはぼくの友達だよ!
――勝手に持ってかないでね。
幻聴だ――若干の懐かしさを覚えたのだが、何もかもは己の脳髄が齎した嘘に過ぎない。つぅ、と嗤った血液が愈々脳天に溜まって悲鳴を上げている。気持ちが悪い、嗚呼、気持ちが悪い――まだバイコーンの背中で蹂躙された方がマシだと朧げな儘に……。
ぐにゃぐにゃと嗤っている床に汚物があふれた頃、じゅうじゅうと鼠が集ってきた頃、初めましてと、また会ったねと、巨大な掌が這入って来た。たのしかった? そんな騒ぎ立てないでよ、返事をしたところで本当、悪い夢は終わらない。今度はちゃんとした鎖を用意したんだ。きっと気に入ってくれると思って! むんずりと掴まれた私はヨーヨーみたいに振り回されて、鉄の冷たさ……。
新しい冷たさも紫な私の顔を治すには至らなかった。巨大な掌は私の事を解放する気がないらしく、人形か何かだと発狂しているらしい。意志疎通が出来ないなんて、嗚々、まるで神様みたいではないか。ひゅう、と臍に触れて腐った隙間風――それにしても覚醒してから何日経ったのだろうか。
意識はハッキリ……。
死にたくても死ねない、寝たくても眠れない、狂いたくても狂えない。
――だってさ。友達がなくなったら悲しいよ。
理性をいっぱい付けようね!
成功
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