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蒸気の奥に潜む凶刃

#アルダワ魔法学園


 地下迷宮の中を、一匹の災魔が居場所を求めて移動している。変動する迷宮そのものが災魔にとって都合の良いものではあるのだが、迷宮に発生したものの本能なのか徐々に上層へとその活動域を移してきたのだ。
 やがて、災魔は自身にとって最良の環境を発見した。蒸気による自動照明機構が一定間隔で配置された広い通路。しかしその照明機構に使われる蒸気機関は、迷宮の変動のせいか脆くなってしまっている。
 本能なのか、そのような知識を得て創造されたのか……災魔は脆い蒸気機関のあちらこちらに細工をしながら、しばしの居場所と決めた区域を進んでいく。
 災魔は自身の背後で仕掛けた罠の一つが誤作動を起こしても、直線のはずの道に目前に不意に曲がり角ができても、気にすることなく変動する迷宮に馴染んでいった。

「――という予知を見てしまいましたので、アルダワ魔法学園に連絡して該当地域に学生が立ち入らないようにしてもらったんです。
 ……しかし、このままほおっておくと迷宮に隠れるタイプのオブリビオンが野放しになってしまうので、皆さんの力をお借りしたいのです」

 そう言ってからようやく大事なことに気づいて、宝石質の髪を揺らしながらグリモアを持つ男は恥ずかしげな笑みを浮かべた。

「じ、自己紹介が、まだでしたね……?僕はグリモア猟兵のネオンと申します、えっと、よろしくお願いしますね?
 ……うっかり見てしまったものから話し始めてしまったので、改めて皆さんに頼みたいことをお伝えします。
 今回皆さんに頼みたいのは、地下迷宮アルダワの一部地域に潜んでいるオブリビオンの討伐です。
 地下迷宮内に隠れ潜み、侵入者の隙をついて襲いかかってくるという行動パターンのオブリビオンのようですね。
 普通であればこちらから探すのは難しいですが、予知で大体の居場所がわかっている今なら予知で見た領域を探索すれば発見できるはずです!
 まずは、探索の邪魔になりそうな蒸気のトラップを解除していきましょう。ええっと……現場の詳しい事等もお伝えしますのでちょっと待ってくださいね」

 ネオンはグリモアを消して、手帳を開く。予知で得た内容と、それに関連した情報をまとめているものだ。
 アルダワ魔法学園から以前マッピングされた地図の写しを貰ったが、予知の現場となった領域は地図上だと仕掛け扉がある大広間なのに、現在は蒸気機関のパイプが張り巡らされた迷路になってしまっている。
 調査制限を示す目印を置くために近辺まで進んだ教員もそれを確認しているため、現在の内部状況はネオンの見た予知と、猟兵達がその場で見た情報で把握するしかない。

「僕の見た予知では、通路の幅はおおよそ3mぐらいでしたね。高さは蒸気機関用配管が横切っていたりして一定ではないのですが、横幅よりも高かったので通行の問題ないはずです。
 余程大人数で団子状に固まったりしなければ、数人で一緒に調査する事も可能だと思います。
 迷宮内の視界ですが、現場の自動照明で十分な明るさがありますね。余程環境が変動しないかぎり、照明を用意する必要はないでしょう。
 誤作動したトラップの蒸気がいつまでも残ることなく引いていましたから、原理はわかりませんが換気も十分なようですね」

 ぱらぱらと手帳を読み返しつつ必要事項を拾い上げていく。
 アルダワ魔法学園側の出した調査規制は、学生が日常生活のため地下迷宮から引きあげてきたタイミングで通達している。知らない学生が居て迷い込んでくるということはまず無い。
 学生達も特に利になる噂が無いため、素直に聞き入れているそうだ。

「蒸気トラップの事も、わかる限りですがお伝えしますね。
 私は災魔が何をどうやったのかいまいちわからなかったのですが……誤作動時の挙動を見る限り、起こる出来事自体は単純です。
 蒸気が突然壁や床……正確にはそこに配置されている蒸気管から噴出し、3~5秒程度勢いを維持してから収まるという物ですね。
 私が予知で見た後も同様にトラップを作りながら移動しているはずですから、皆さんの得意な方法で片っ端からやっつけちゃってください。
 解除できる方法があれば解除するのが良いですけれど、方策があれば敢えて発動させて耐えたり、回避して無効にしちゃってもいいですよ!」

 今度こそ言い忘れたことが無いかを確認して、ネオンは猟兵に向き直る。

「グリモアの仕様の関係上、僕は今回戦えません。ですので、来てくれる皆さんに全てを委ねることになります。
 学生への調査規制は一時しのぎにしかなりません、本当の意味で解決するかは皆さん次第なんです。
 どうか、この機を逃さないために力を貸してください。よろしくお願いします!」

 そういって彼は背筋を正し、猟兵達に頭を下げた。


碧依
 はじめまして。碧依といいます。

 今回はまず、蒸気のトラップ解除大作戦からとなっています。
 基本的には【POW】が受け止めたり壊したりの力技、【SPD】が回避等の本人の技巧、【WIZ】が仕組みを調べての解除という相手に対する技巧って感じになっていますが、これはあくまで一例なので皆さんの発想でプレイングを送っていただけると嬉しいです。
 お互いに初めてのタイプのシナリオなので、みんなでいろんな意味で冒険していきましょう。

 個性も無茶振りもなるだけしっかり書けるように頑張っていきますので、よろしくお願いします。
 皆さんの参加を、心待ちにしています。
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第1章 冒険 『蒸気トラップ』

POW   :    トラップを正面から受け止める

SPD   :    トラップを華麗に回避したり回り込む

WIZ   :    トラップの構造を予測して解除する

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阿紫花・スミコ
迷宮の中を走り回り、蒸気の噴出口を探す。
「おっと!」
ふいに発生した蒸気を、紙一重でかわし、ガジェットを取り出す。
「もらった!」
ガジェットで一撃を加え、破壊を試みる。



迷宮の探索方法にもいろいろあるが、阿紫花・スミコは己の身のこなしを活かす事にした。こういう時は足を使うべきだと彼女は判断したのだ。
 小部屋ほどの幅がある迷宮の通路を駆け巡りながら、同時に周囲に目を配る。トラップに特徴らしい特徴がみつかれば、人形を使って壊しにかかればいいだろう。仮にそうでなくとも、やりようはある。

「にしても見つかんないね?もしかして何個か通り過ぎちゃったのかな?」

 召喚されてからの時間はそう経っていないが、猟兵の身体能力で風のように駆けているので移動した距離自体は長いはず。
 疑問に思いながらもツタのように絡みあい敷き詰められた配管の上を駆けていると、スミコは自身の足音が一つだけ妙に篭った。

「おっと!」

 足音が異常でなかった場所までバックステップで跳び戻った瞬間、彼女があと一歩を踏み出していたら居たはずの場所に蒸気が噴き上がった。
 高温の刃とでもいうような勢いと熱をもつそれから逃げず、スミコはガジェットを取りだし蒸気の根に狙いを定めた。

「そこだね?!もらった!!」

 ガジェットで蒸気を噴出した配管を打ち付けると、甲高い音とともに噴出孔が大きく裂けた。細い裂け目だったからこその勢いと保たれるはずの高温は、不意に広がった穴から一気に霧散していった。
 一つ目のトラップはほんのわずかな時間、スミコの肌にあたたく湿った風がぶつかるのを感じさせただけで役目を終えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルノーン・プライジエ
私は体が大きいためで繊細な回避は期待できないです。
ですので、トラップは走り抜けるか飛び抜けるか厚い装甲で受け止めます。
あとは、破壊できそうなものはどんどん解体します。
解除の方は専門外なのでで行いません。
ただ、有用そうな部品がありましたら教えてください。
壊れたモノでも回収いたします。



「ふむ……発動するかどうかがその場に行かねばわからないのなら、ゆっくり進むのも良いかもしれませんね?」

 ルノーン・プライジエはトラップを発動させながら解除していく方法で迷宮を進むことにした。
 先行した少女は足音でトラップを察知したと聞いたルノーンは、コンコンと配管を叩き、足音も敢えてならしながら進んでいく。歩を進めるうち、手元の音が一つ歪にこもり、直後そのすぐそばから蒸気が噴き出したが……驚くべきことに、ルノーンは悠々とそれを受け止めきった。

「なるほど。前もって覚悟を決めておけば、大したことはないですね」

 異常に気付いたとしても繊細に避ける事は難しいと、彼は自覚していた。
 その巨体は頑健なだけではなく素早くもあるのだが、それでもどこか一部は蒸気を受ける事を避けられないと覚悟したうえで行動していたのだ。
 このように最初から受け止めることを前提にした行動だったので、内部へとダメージを与える事のない部分の外装を蒸気に晒すことでトラップの影響を受けずに流しきることに成功したのだ。
 蒸気の勢いが落ちたのを確認すると、ルノーンは僅かに残った蒸気を吐き出す配管に手を伸ばし解体していく。
 確認しながら進む後続の猟兵がいるなら、裂け目を探させるよりもその対象を撤去してしまう方が良いという判断によるものだが……気のせいか、配管とそれに繋がっていた自動照明を解体する彼は、どこかうきうきと楽しげだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霄・花雫
うーん、熱いのやだし、発動すると同時に空に逃げちゃおう。足元とか腰の高さとかその辺までのはこれで何とかなるんじゃないかなー、漢解除!って感じでアレだけど。
高い位置から吹き出して来る蒸気に関しては、飛ぶより普通に飛び退って距離取った方が良いかもしんないね。
んじゃ、後続のひとのためにもサクサクッと解除するぞー!


ティティモルモ・モルル
ねみーです……。
眠くて頭がぽやーっとするですが、お仕事はがんばるんで安心してくだせー……ZZZ

うー……とりあえず違和感あるとこや嫌な予感のするところがあったら、じっくり見てみましょー……。
隙間があるならちょっとは探れるかもしれねーです……。
(半人半スライム状の体の一部を隙間に流し込んで、蒸気管の存在を調査できないか試みる)

探れたら、壊すのは大変そうなんで解除するでごぜーます……。
どうにも難しいなら罠があるでごぜーますよーっていう目印を置いておきましょー……。


阿紫花・スミコ
「よし、アレを使うか。」
スミコはサーマルスキャナ(熱源を表示するゴーグル型ガジェット)を取り出し、周囲の熱源分布を観察する。
「蒸気を出してるんだ・・・装置周辺はそうとうな温度上昇が観察できるかず。」
迷宮内をくまなく検索し、トラップを発見次第人形で攻撃。
その際、スチームエンジンによって人形を強化。一気に破壊する!



ティティモルモ・モルルは自身の身体を生かしてトラップを調べることにした。
 トラップの仕様としては、鈍い音がした直後に近くから蒸気が噴出する。恐らくは、噴出用の裂け目とそこに刺激を伝える何かがセットになって罠と化しているのだろう。

「とはいえ、先ずは違和感に気づくとこからでごぜーます……違和感……とはー」

 眠気もあり、ぽんやりと宙を見るティティモルモに声を掛けたのはスミコだった。

「キミもトラップ探すのかい?ボクも、あれだけの蒸気がすぐに出てくるってことは、トラップの状態でも周囲より熱くなってるんじゃないかと思ってそれ探す気だったんだ」
「……つまり、あったかいとこはトラップかもしんねーってことでごぜーますね」
「そういうこと!ねえ、手分けしない?ボクは奥側をやるから、キミはそこより手前から探してもらってもいいかな?」

 こくりとティティモルモがうなづいたのを見て、スミコは手を振って迷宮の奥側へと突き進んでいった。
 スミコは迷宮の奥側へと駆けながら、サーマルスキャナを装備する。からくり人形の準備もしつつ、周囲の熱源を検索していく。

「やっぱりね。コレ使うことにして正解だった!一気にやるよ!」

 漏れ出る熱が、サーマルスキャナに熱源として引っかかる。そこにスミコは、自身の人形を向かわせた。
 ユーベルコードの効力でスチームエンジンを得た人形は、急激に加速しトラップに強烈な一撃を加える。先ほどスミコが経験したのと同じように、蒸気は本来よりも大きな噴出孔を得たために一気に霧散していった。

「よし、奥側はこれで見つけきれるかな?」

 蒸気が残した熱がじんわりと散っていくのを確認してから、再びスミコは奥側へと足をすすめた。

 一方ティティモルモは、なんとなくあったかいと思った部分を探すことでトラップを発見していた。
 壁側の絡み合った導管の一つに仕掛けられていたそれも、ブラックタールの半液体の身体を使うことですぐそばまで行く事ができた。
 しかし、小さな裂け目に刺激を伝えるための導線は、蒸気が満ちる導管の内側に仕掛けられている。導管内に身体を入れるとなると噴出孔に刺激を与えることになり、噴き出す蒸気をモロにくらうことになる。かといって噴出孔となる裂け目をふさぐ用意もティティモルモにはなかった。

「目印つけて、さっきの方に壊してもらいましょーか……おや?」

 何者かの視線を感じて振り返ると、霄・花雫がティティモルモに興味深そうな視線を向けていた。

「あっ、ごめん。作業中とかだった?」
「見つけたけど解除は難しそうだと思ってたとこでごぜーます」
「見つけられるものなの?すごいね、あたしは引っかかったら避けるって感じで探す気だったから」
「……でしたら、モルが探したトラップを発動させて避けて解除してってもらってもよいでごぜーましょうか?」
「いいよー、まかせて!君が探してあたしが避ける、だねっ!まずはそれ、やっちゃおうか」

 ティティモルモが目印をつけてその場を離れると、花雫は目印の場所を杖でノックする。予想されていたのと同じように、トラップが作動し、噴出した蒸気が花雫に襲いかかった。
 予測しておけば、花雫にとって避けることは何一つ難しい事ではない。軽く飛び上がり、宙を何度か蹴ってティティモルモのいる少し離れた場所に降り立った。
 獲物を逃した蒸気は次第に弱まっていき、迷宮内に散って行った。

「こんな感じだよ!」
「おぉー。お任せしてもよさそうでごぜーますね。迷宮の奥側は他の方がしてくれてるので、こっち側はモルとあなたでやっちまいましょー」
「おー!」

 そこからの作業は迅速だった。ティティモルモが発見したトラップを、花雫が空間を泳ぎ回るようにして無効化してゆく。
 熱気が迷宮内の空気を暖めて時々蒸し暑くなるが、空中で舞う楽しさとさわやかさが勝るのか花雫は楽しそうにしていた。
 二人がある程度奥へと進むと、引き返してきたスミコに遭遇した。

「こっちは終わったよ。奥側に異常な熱源はもうないはずだ」
「こっちのほうも、見つけられるものは全部発動させたでごぜーます」
「ホントに?やった、これで隠れてるっていうオブリビオンを探しに行けるね!」

 喜んだ花雫が手をあげる。ティティモルモとスミコがあわせてハイタッチしたことで、パチンと心地よい音が迷宮に響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『パズルトラップ』

POW   :    可能性のある組み合わせを総当たりする

SPD   :    詳しく調べたり、鍵開け等の技能で解除する

WIZ   :    知恵を絞って、パズルの解除を目指す

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蒸気トラップ解除の報告を受け、ネオンは迷宮の奥へと進んでいった。猟兵達はまだ誰もオブリビオンの気配を感じておらず、居るなら奥の方だろうということになったのだ。
 オブリビオンが見つかればすぐに退避し猟兵の召喚を行うつもりだったのだが、彼の目の前には大きな紫色の扉が一つあった。

「……もしかして、以前ここにあったという仕掛け扉でしょうか?」

 扉にはわずかに隙間があり、そこから奥を覗くと大量の宝箱がある事に気付く。おそらく、オブリビオンはあの中に紛れているのだろう。
 ネオンは再度周囲を確認する。
 仕掛け扉も蒸気機関によって制御されているらしい。いくつもの配管と、それにつけられている色とりどりのバルブ。
 扉の色のこともある、おそらくはパズルのように、何かを対応させねばならないのだろうが……ネオン一人では総当たりにせよ考えて解くにせよ時間がかかりそうだった。

「外に猟兵が居る事に気付いて、中にいるオブリビオンが逃げないとも限りませんからね……ここも、皆さんの力を借りる事にしましょう」
ペンチ・プライヤ
こういうの解きたくなるんだよなぁ。
どうせ間違えたらまた蒸気なんでしょ。不用意に手を出さないようにしとこ。
とりあえず、調べるところから。
・・・確かにでかい扉、紫色って趣味悪くない?これどういう風に開くんだろ?まさか引き戸じゃ無いよね。レールとか蝶番のような部品とか付いてない??(じろじろ)
件の配管は何本??何色??蒸気で動くんだったら近くに動力源のタービンみたいなのがあるんじゃね??あるなら繋がってる配管とかヒントになりそう。
ま、とりあえず、バルブに紫色が無くて、赤と青のバルブがあったら赤と青のバルブを回してみるけど。
あ、回すときは危ないから錬成カミヤドリでいくつかのペンチを遠隔操作して回すよ。



「これ、どういう風に開くんだろ?」

 紫色の大きな扉は、真中に隙間がある。しかし隙間に対して角度はなく、蝶番らしいものも見当たらない。

「まさかこれ引き戸か?えーっと……隙間の下側にレールは無いな……ってことは」

 扉は真中から2枚の引き戸を開く形の両引き戸であり、レールが存在しないという事は手の届きづらい上部の方にランナーがある上吊り引戸という事になる。
 次にペンチは配管の観察に入った。配管は複雑に張り巡らされているが、実際に仕組みにかかわっているのはバルブが3つづつついた5本だけだとわかった。また、それらの配管は仕組みにかかわっていない配管に比べて白っぽいものばかりだった。

「……扉の右側に2本、左側に3本……怪しいのはこいつらだな。全部のバルブの色も見ておこう」

 怪しい配管には3つづつバルブがあり、色自体は被っているが同じ組み合わせのものはない。

「赤青黄、紫青緑、紫赤白、黄青桃、白黄黒……赤青黄のやつの、赤と青を回してみるか」

 錬成カミヤドリを使用し、自身の複製を使って遠くからバルブを回す。元々しまっていた赤と青のバルブが開き、内部を蒸気が通りだしたのかその周辺がわずかに暖かくなった。

「……とはいえ、これ以上すぐに判る変化はないな。全部の導管に蒸気が通るようになったら仕掛けが作動するとかかもしれないな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿紫花・スミコ
「こういうのは得意なんだ・・・まずはよく観察することさ。」
そういうと、スミコはバルブや歯車、ドアの構造などを観察しはじめた。
「未来の四次元エネルギーで動いてるわけじゃない。仕組みを考えれば解ける、解ける・・・ここがこうつながって、ふんふん・・・」
目に見えない部分は、サーマルスキャナで形状を観察したり、あとは、予想と想像で補う。



すでに蒸気が通った一本の導管を、阿紫花・スミコはサーマルスキャナで観察していた。

「こういうのは得意なんだ……まずはよく観察することさ」

 内部の様子を熱を通して観察していると、スミコは一つの違和感に気づく。確かに蒸気が導管の中をとおってはいるのだが、扉の機構に届くまでにロスがある。

「……ちょっと失礼。もしかしてこいつも関係あるのかな?」

 既に役目を果たしたと思われる赤と青のバルブではなく、黄色のバルブにスミコは手をかけた。黄色のバルブはどうやら開く方向に回ってしまっているようだったので、閉める側に回す。
 すると、蒸気の流れが変わったのか、扉の近くまで熱源が広がっていったのが確認できた。

「なるほど、必要な色のバルブを開けたら蒸気が送られて、不要な色があいてたらそれが阻害される……って事かな?」

 バルブそのものの違いは色しかない。バルブの形状で開け閉めが変わるということはなさそうだが、今回の例を考えるとバルブが開いているのか閉まっているのかは直接触らないとわからなさそうだ。

「機構のほとんどが壁の中というのは意地が悪いな。とはいえ、謎は単純そうだし一つづつやれば……あれ?」

 スミコは、バルブの中を移動する蒸気が徐々に弱まっていっていることに気づいた。
 先ほど閉めたばかりの黄色のバルブはまだいいが、じっと見ていると赤と青のバルブがゆっくりと閉まる方向に回っている。

「なるほど、一気に解いてしまわないと仕掛けを作動させるための蒸気が足りなくなるのか。謎自体は解けたも同然だろうけど、人手を使って一気にやってしまった方がよさそうだね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルノーン・プライジエ
「ふむ、こういったものは解体や破壊するのは得意なんですが。解除は専門外なんですがね」
辺りを見回し、目立ったトラップの観察している。
「お、こんなところにパーツがありますね。前通った方が通っていかれた方が、置いて行かれたんですかね。」

前回同様ギミックに使われているパーツ回収を行いつつ、解除解体を行います。
パズルトラップ解除は観察をして解除できそうなものを行い、
そうでないものは、総当たりで解除に挑みます。
ただパズルトラップを見る目は鍵開けを解除ではなく、
根こそぎ解体をしようとしているようにも見える。


阿紫花・スミコ
プライヤさんが見つけてくれたバルブと蒸気の関係、ボクが見つけた、バルブの仕組み、それらを生かしながら、最後の仕上げだ。
引き続きサーマルスキャナで蒸気の流れなどを調べながら、一気に正解を探る。できれば、手伝ってくれる人がいればいいけど・・・?
ドアが開けば戦闘があるかもしれない。人形は常に準備しておこう。もしも戦闘になったらスチームエンジンで人形を強化だ。


ティティモルモ・モルル
うー……。
時間制限付き、ゆっくり解けねーとはモルにとって大変やっかいな仕掛けにごぜーます……。
まーでも、要は開け閉めどっちが必要なバルブなのかが分かれば、あとはせーので回すだけなんでごぜーますね……。
(うつらうつらしながらもまだ不明な色のバルブに近付いて)

こっちも回して蒸気の動きを見てみましょー……忘れたらやり直しなので、しっかりメモも取っておくですよ……。
あとで皆さんの情報と照らし合わせれば、きっと上手くいくでごぜーますね……。
(だからそれまでは寝ていても大丈夫だろうと、こっくりこっくり)



「ふむ、こういったものは解体や破壊をするのは得意なんですが」
「ゆっくり解けねーとは、モルにとって大変厄介な仕掛けにごぜーます」

 それぞれの理由で目の前のパズルが得手ではないルノーン・プライジエとティティモルモ・モルルは、一先ず手を付けようとそれぞれ別の導管へ向かった。
 その様子を見て、引き続き観察を続けていたスミコが声を掛ける。

「ボクも手伝うよ。蒸気がキチンととおっているかどうかをサーマルスキャナで見れるからそれで答え合わせしながらやっていこう。3人も居れば一気に正解までたどり着けると思うんだ」
「ええ、よろしくおねがいします。私は総当たりでやっていきますので、その中に正解があるかの判断を頼めるでしょうか?」
「もちろん」

 スミコはティティモルモの方にも答え合わせが必要か尋ねる。ティティモルモは、スミコはルノーンと行動するように促した。

「モルはモルなりに正解をさがすことにするでごぜーます。全部の正解がわかったら、それみてせーので回すだけとはいえ、そこまでは分担も大事でごぜーます。答えあわせのためにあっち行きこっち行きじゃー大変でごぜーますよ」

 そういってから、ティティモルモは黄青桃とならんだバルブの方に向かった。集中のためにひとつ深呼吸をしてみてから、バルブの状態を試すため軽く左右にひねってみる。

「……青だけしまっていて……黄色が桃はあいているでごぜーますね?これが基本の形として……あったかくはねーですし、蒸気はこれだと通っていない?」

 紫色に必要な色である青のバルブを開ける前に、ティティモルモは別の導管でも不要だった黄色のバルブを閉める。中の音を聞くと、わずかに風が流れる音が聞こえる。

「ふむ?桃色も赤系統だから紫の仲間って事でごぜーますかね?でもなんだかつめたいし、青の方もあけちまいましょう」

 青のバルブを開ける方向に回すと、周囲がじわりと暖かくなったのを感じた。しかし、どうにも気になってしまいティティモルモは桃色のバルブを閉める。蒸気による熱が、先ほどよりも大きくなった。
 桃色のバルブはあけていると、導管内の蒸気を吸い出す仕掛けだったようだ。内部の空気の動きには違いないため、風のような音が聞こえたのだろう。

「……なるほど、桃色は微妙な色で惑わせるやつでしたか。この導管は、これで正解のはず……ふぁぁ……あっちの方も作業に夢中でごぜーますし……ちょっと寝ても……」

 ティティモルモはメモを残すと、あくびとともにしばし思考を夢の中に飛ばした。

 一方、ルノーンは紫のバルブがついている導管が互いに近くにあるため、一気にバルブの開閉を試していた。一先ず紫のバルブを両方開けてみると、周囲が温かくなってくるのがわかる。
 続いて、白のバルブを開けるがそれを見たスミコは首を横に振る。彼女の反応を見て、ルノーンは白のバルブを閉めなおした。

「緑もしめるとして……赤や青は開けるので間違いないですか?」
「そうだね。やはり混ぜた時に紫になる色を開いて、それ以外を閉じていくみたいだ。紫と一緒に赤や青を開くと勢いは強くなるけど」
「なるほど、ではあとわからない色は黒だけという事ですな。あちらもやってみましょう」
「そうだね、ちょっと高い位置にあるしキミに任せるよ」

 ルノーンは頷くと、白黄黒のバルブが並ぶ導管に手を伸ばした。

「……おや?既に中に蒸気が通っているみたいですよ?」
「ちょっとまってね、熱源チェックするから……あれ?ホントだ。一応回してみてもらっていい?多分色的には全部閉めるのが正解だと思うんだけど」
「……どのバルブも開いているようですね。全部閉めてみます」

 ルノーンが全てのバルブをしめると、導管の中の熱が徐々に消えていくのがわかる。不審に思ったスミコは、全体の熱源を検索したことでその意味に気づいた。
 この導管に関しては、蒸気を送るのではなく逃がすことが役目だったようだ。この導管のバルブを閉めてから、他の導管で蒸気を蒸気機関に送り出すことで扉があくという内容だったらしい。

「では、ここは導管ごと取り外してしまって、つなぎ目は塞いでおけばそもそも操作の必要もなくなるとみていいのでしょうか?」
「……ちゃんと塞ぐなら大丈夫じゃないかな?」
「なるほど、それなら私の得意分野です」

 ルノーンはそういうと、不要と見た仕掛けの一部を手早く解体していく。どうやら彼にとっては、もともとこのトラップは素材の宝庫に見えていたようだ。
 楽しげに解体を進めるルノーンが作業を終える頃には、スミコと目覚めたティティモルモがすべての導管のバルブの開閉を確認し終えていた。

「よし、じゃあやろうか」

 頷きあい、赤青紫のバルブを全て明け、それ以外のバルブを閉めてゆく。
 扉を開けるための仕掛けに十分な量の蒸気が送られ、そして重い音を響かせながら両引きの扉がゆっくりと開いていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ミミックロボット』

POW   :    トレジャーロボット
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【貨幣もしくは宝石】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    ゴーレムフォース
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【小型ゴーレム】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    フルスチームグラップル
【フルパワーでの掴みかかり】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
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両開きの扉が開ききると、隙間から見えていたとおりに大量の宝箱があった。
 その中の一つが猟兵達の気配を感じて変形し、車輪と人型の上半身で構成されたようなオブリビオンとして姿を現した。

「あれは……ミミックロボット!グリモア猟兵に情報が届けられていたオブリビオンの一つで、宝箱の姿で油断した侵入者を狙う存在です!」

 無機物を取り込むミミックロボットと、迷宮の宝箱の組み合わせは下手を打てば相手がいくらでも強力になっていくことを示している。
 しかし、ここに至るまでにトラップを乗り越えてきた猟兵達だ。思考でも力押しでも、相手に状況を利用させない術はいくらでもある。

「皆さん、戦闘開始です!オブリビオンことミミックロボットの討伐を、お願いします!」
ティティモルモ・モルル
お宝を食べて強くなるオブリビオン、でごぜーますか。
それはまた、嫌なところに嫌な相手がいたもんでごぜーますね……。
(居眠りできなさそうな状況にげんなりしつつ)

それじゃーモルは、あれに取られるより先にお宝回収にいくですよ。
小さなものをモルの体に埋め込めば、全部抱えるよりはたぶん楽に運べそーです。
(敵が見ていない隙を狙い、箱の中身は体に埋め、軽くなった空箱は重ね、運ぶ)

これだけだとあんまり貢献できてねーでしょーか……。
怪我した人がいたら【シンフォニック・キュア】で治療するんで、こっちに来てくだせー。
(のんびりしたテンポの歌をゆったりと歌う。技能:歌唱)


阿紫花・スミコ
「やっとお目見えか・・・いくよ!ダグザ!!」
巨大な棍棒を持つからくり人形「ダグザ」をスーツケースから取り出すと、十指の指にからくり糸を取り付ける。

できれば、宝箱からは敵を遠ざけたい。
「合体されるとちょっとやっかいそうだ。」
よく相手の動きを見て、敵の直接攻撃(掴みかかり)には十分気をつける。スピードで敵をかく乱しつつ、宝箱から引き離すよう、人形による牽制攻撃を続ける。
攻撃のチャンスを見極め、必殺の一撃を放つ。
「くらえ!!」
ダグザの棍棒による一撃ヘヴィストライクをお見舞いする・・・!


ルノーン・プライジエ
ミミックロボットを発見すると、これまでのうっぷんを晴らすように大きく体を動かします。
「ここまで体が動かせませんでしたからね。」
すっと撫でるように各種装備を点検しする。

ミミックロボットの動きを観察しつつ、照準を合わせ
「では、はじめから全力でいかせていただきますね」
敵前へと突貫する。

パワーとスピードを活かし、敵へと挑みます。
状況を見て強化合体を行い敵の破壊を図ります。


ペンチ・プライヤ
火力は自信無いし、妨害中心かな
錬成カミヤドリでペンチを複製
14本のペンチでいろんな事をするけど割り振りは臨機応変に

貨幣や宝石を吸収しようとしてたら先にペンチで回収。できれば燃やしたい。火気が無いのが痛いな。誰か持ってない??

見た感じ、関節がむき出しになってる。関節の隙間にペンチをぶっさして可動を妨害をする。パワーありそうだし完全には止められないだろうけど、少し止めれば誰かがやってくれるはず

もし可能ならば、ボルトとかナットをペンチで取り外しバラす

作るよりバラす方が簡単なんだよ!!

自分の素早さには自信無いので、狙われたら複数のペンチで自分の服を掴んで引っ張って3次元移動回避。ちょっと酔う。「うげ」



最初に動いたのはルノーン・プライジエだった。

「はじめから全力で行かせていただきましょう」

 照準をあわせ、ルノーンは敵前へと突貫する。今まで動けなかった分と言わんばかりに大きく前へ駆けながら、装備する銃火器による攻撃をミミックロボットにふるう。
 火薬の匂いに硝煙、発砲時の小さな閃光と激しい音が戦場を支配し、自然とミミックロボットをルノーンにひきつけた。
 ミミックロボットは下層からここまで登ってきた間にも宝物を取り込んでいたのだろうかと思うほど装甲が硬く、ルノーンの装備を一気に叩きつけても凹みはすれど穴をあけるには至らない。
 彼の動きにあわせて、半自動戦闘ガジェットである強襲用強化機体も補助射撃を開始する。せめて装甲内部に弾丸がもぐりこめばダメージが入りそうだが、ミミックロボットの方も姿勢を変えつつ対応してくる。

「なるほど、耐えますか。私一人であれば良くて膠着、そうでなければダメージを前提に強化にはしる……ということになっていたかもしれませんね。しかし、この場ではそうはいきません」

 ルノーンは、ミミックロボットではなくその背後にいる何者かとアイコンタクトをとり、小さくうなづいた。
 一度狙いをずらしミミックロボットの防御姿勢を変えさせ、そして再度狙いを変える。ミミックロボットは当然のようにそれに対応しようとしたのだが、しかしガチリと不自然に関節のうごきが止まった。
 弱点にもなり得る関節部分は、銃撃からは確かに守られていた。なのに今、その一つが1本のペンチを噛まされて悲鳴を上げている。

「俺は火力には自信が無いんだ。だからここは、しっかりジャマさせてもらう」

 ミミックロボットの動きをとめたのは、ペンチ・プライヤが錬成ヤドリガミで複製した自身の複製だった。関節にかまされた一つだけではない。ルノーンの動きに合わせ他にも数本がミミックロボットの内部にもぐりこんでいる。
 動かせる部位で未だ襲い来る銃撃をいなすミミックロボットだが、その最中にもペンチの召喚した複製は装甲と本体、可動部と腕部、あらゆる部位を取り外しにかかっていた。
 ミミックロボットは状況の因果関係を理解したらしく、十数体の小型ゴーレムを召喚した。その半数はルノーンの側に展開されるが、そこに彼は違和感を抱いた。

「む?力押しで返さない?……!!ペンチ殿、奴はあなたを狙っています!」

 オブリビオンの大半は、向かう対象の行動に呼応する。火力で押してくるルノーンに対応するのであれば、同じく力押しの行動のはず。
 そうでないという事は、現在ミミックロボットが優先して排除しようとしているのは行動の邪魔をしたペンチであるということだ。
 そしてそれを裏付けるように、規則正しく積まれた宝箱の陰にいたペンチに小型ゴーレムが襲いかかろうとしていた。

「飛び道具は無さそうだな!?それなら……!!」

 総計14本の複製ペンチのうち、4本はミミックロボットに割いたがそれ以外はペンチの周囲で行動していた。自身のそばにある複製をあやつることで、服をひっかけて3次元的な動きで小型ゴーレムの攻撃を回避する。
 小型ゴーレムの幾つかはペンチの回避先に向けて方向転換しかけたものの、そのタイミングを狙ったように何かが叩きつけられバラバラに砕け散った。
 その衝撃は、銃撃とは別種のもっと原始的な巨大な棍棒による攻撃。阿紫花・スミコの指につながる10の糸で忠実に働く人形、ダグザがその力を見せつけたのだ。

「ボクだってこの時を待っていたんだからね。ようやくのお目見えだ……行くよ!ダグザ!!」

 ダグザはペンチの代わりにと攻撃を仕掛けてきた小型ゴーレムを破壊し、壁際の宝箱に向かおうとするミミックロボットに棍棒を振り回して牽制する。
 そのまま、スミコは人形遣いとしての技量を総動員する。棍棒の重さを感じさせぬ素早さでダグザを動かして壁際から部屋の中央側へと追いやっていく。
 ミミックロボットが万全ならばダグザを押し退ける事も出来たが、既にそういうわけにもいかなかった。
 装甲越しとはいえ雨のような銃撃による衝撃は内部機関を揺さぶった。内部に入り込んだペンチの複製を引き抜いたあとも、緩められたボルトや強引に動いたことで軋んだ関節では万全の力を発揮出来るはずがないのだ。

「そこにもう一つ、喰らわせるよ!」

 ダグザの棍棒が、ミミックロボットを捉える。悲鳴のように金属がひしゃげる音が響いた。

「小型ゴーレムで隙を作って、その間に強化をもくろんだんだろうけど残念だったね。まあ、たどり着いてもうまくはいかなかったんだけど」

 ミミックゴーレムは攻撃への対応で気づいていなかったが……戦闘が始まってすぐ、ルノーンによる初撃の直後からこの戦場では密かに行動していた者が居た。
 戦場の操作を行うことで敵の有利を消そうと、ティティモルモ・モルルが宝箱やその中にある宝石の回収を行っていたのだ。
 武器や防具が残った宝箱は積み上げられて戦場内に点在するバリケードとして使用されているため、戦場内に宝箱自体は残っているが……仮にミミックゴーレムが宝箱を回収しても、最大の効果を発揮することはもうなくなっていた。

「うげ……ちょっと酔った」

 ミミックロボットがダグザの牽制に対応している隙に、複製で宙を振り回されていたペンチは床に戻り、ルノーンは小型ゴーレムで消費した分のリロードを行う。

「大丈夫でしょうか?ティティモルモ殿も後方に下がっているようです、一旦休まれては?」
「いや、俺を警戒してくれるならまだ妨害のしようがあるからな。それに、歌も聞こえてるし酔いも一瞬だった。まだやれる」

 そう、猟兵達には歌が聞こえている。襲われて宝物を回収されないように後方へと移動しているが、ティティモルモは歌唱力を生かして、共感した者すべてを癒す歌で支援を続けているのだ。
 戦いの場には似つかわしくない、のんびりとしたテンポに、ゆったりとした歌声。しかしそれは戦いに呑まれないように猟兵達の思考を引き戻す導でもあった。

「調整完了、スミコ殿!大きい一撃を入れてやりましょう!」
「ああ!!ボクもそうしたいんだけど、ちょっと準備させてくれないかい?!」

 スミコの声にこたえて、再装填した銃弾がミミックロボットを襲う。ミミックロボットが銃撃側に装甲を向けようとしたところに、複製されたペンチの残りが飛びかかり、ミミックロボットは内部に入れまいと巨大な爪で振り払う。
 ダグザが棍棒を構え、ルノーンは銃器をおろし展開していた強襲用強化機体を呼び戻す。

「自機強化プロトコルを開始します。強化合体!」
「さあて、やろうか!これでもくらえ!!」

 強襲用強化機体を取り込み巨大化したルノーンの拳と、ダグザの全力の一撃が同時にミミックロボットの頭上から降りそそぐ。
 強大な力をぶつけられた衝撃で、ミミックゴーレムを中心に仕掛け扉の奥にあった一室の床が音を立てて沈み込んだ。

「……あれ、大丈夫なんでごぜーましょうか?」

 ネオンのいる後方まで下がっていたティティモルモは、あまりの激しさに様子をうかがう。
 ひび割れ沈み込んだが、下層に抜けることはなかったらしい。部屋に残っていた猟兵達の姿は変わらずそこにあった。
 ミミックロボットの姿は見えないが……奴がまだ戦意を失っていない事を、ピリピリと張りつめる空気が猟兵達に伝えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

阿紫花・スミコ
「く・・・まだ、動けるのか!?」
いったん、ダグザを手元へ呼び戻し、再び、戦闘態勢を取る。
フルスチームグラップルを警戒しながら、スピードを生かし、ヒットアンドウェイで、慎重に攻撃を重ねる。
「・・・いい加減、壊れろーーー!!!」
人形は回転を始め、巨大な棍棒も同様に高速回転を始める。
スピニング・スイープ・・・超高速の連続攻撃で勝負を挑む・・・!


ペンチ・プライヤ
もう一押しだ!!畳み掛けるぞ!!

とは言っても、やれる事は変わらない。出来る事を淡々と熟すのが職人
ペンチを使っての関節の可動妨害、ボルトを回して解体そして引っ張って回避。回避は他の猟兵にも対応できる。

そうだ、一つ出来る事が増えてた。
俺のペイントブキであり新ガジェット、超高輝度プロジェクター(ハンドガンタイプ)!!

俺の塗料は光速だ!!

とはいえ、通常出来る事は相手の顔??に光をあてて目くらましをするくらい。今回の相手はロボだし、視覚に頼ってるかわからないので効果あるかわからないけど使ってみたくなるのがガジェッティア。目くらましできたらラッキー。

今だやれっ!!

・・・あの鍵穴気になるんだよなぁ。



猟兵達が埋まったまま出てこないミミックロボットをみて態勢を整えだした時を狙い、それは唐突に床だった瓦礫を吹き飛ばしながら部屋の中央に現れた。
 継ぎ目は緩み、関節も軋み、装甲も曲がりきっていて宝箱の姿を再びとることはできない。しかし、ミミックロボットを動かす小型蒸気機関はまだ健在だった。内部機構に蒸気を回し、瓦礫の寄せ集めとなった床を車輪と巨大な爪を使って駆け出したのだ。

「くっ……まだこんなに動けるのか!?」

 その時部屋に残っていたのは、スミコだけだった。
 このミミックロボットは、猟兵達が力を合わせた時の厄介さをここまでで十分に味わっている。オブリビオンとて学習しないわけではない、周囲の気配が少なくなるまで、扉の奥の気配すら可能な限り途切れるまで、このミミックロボットは待っていたのだ。
 猟兵達も敵の復帰を考えていなかったわけではない。スミコだけではなく、誰しもが自分一人だとしてもコイツを仕留める気でいた。ミミックロボットは、未だ手こずらせそうな雰囲気を醸し出しているが、引く気はひとつもなかった。

「ダグザ、行くよ!」

 手元に戻していた戦闘人形のダグザを、再びミミックロボットに向かわせる。この状況で取れる戦法は、ヒット&アウェイだ。どこにも向かわせず、相手の行動を受ける前に離れる。
 未だ残る巨大な爪による掴み係を警戒しながら、スミコは部屋の中にミミックロボットを縫い付けつづける。
 しかし、このままでは戦闘開始初期と同じだ。猟兵が一人で相手をしつづけるのであれば良くて膠着状態、敵の判断によっては逃がすきっかけを与えかねない。

「大技を出したいけど……このままじゃ避けられてしまうかな?」
「ってことは、俺の出番だよね?……もう一押しだ!!畳み掛けるぞ!!」
「ああ、キミの足止めなら実績がある!頼むよ!」

 戦場に舞い戻ったペンチは、すぐに自身の複製を開始した。先ほどまでの戦闘でコツをつかんだのか本数が増えた複製が、猟兵の周囲に展開してから敵へと向かっていく。
 ミミックロボットがその巨大な爪を飛び来る複製への対応へと使い始めた隙に、ペンチは用意してきたガジェットを構える。ペイントブキでありガジェットであるそれは、光で色を塗るという独特な発想のものだった。殺傷力はまだ期待できないけれど目くらましには最適なそれが、ミミックロボットに効くかはわからない。それでも。

「効果あるかはわからなくっても、使ってみたくなるのがガジェッティアだ!さあくらえ、俺の塗料は光速だ!」

 ペンチはミミックロボットの頭部と思わしき場所についている鍵穴を狙い、ハンドガンタイプの超高光度プロジェクターを照射した。
 一点に集中する閃光が、ミミックロボットのセンサーに直接叩きつけられる。これまでの戦いによる損害もあり、情報の混乱に耐えきれずミミックロボットに数刻ほどのフリーズが発生した。

「よしっ!!……いい加減っ!壊れろーーーーーっ!!!」

 スミコが発動させたのは人形による超高速の連続攻撃、スピニング・スイープ。ダグザが棍棒を振り回すように回転をはじめ、その攻撃はミミックロボットをしたたかに捉える。遠心力が乗り威力も回数も桁違いとなった打撃は、一度発動すれば止まらない。
 ミミックロボットは吹き飛ぶ間もなく、装甲がひしゃげ、内部機構が破壊されてゆく。そして、その内部にしぶとく循環しつづけていた蒸気が、断末魔の悲鳴のように弾けて散った。
 猟兵達は、迷宮に隠れ潜む脅威に打ち勝ったのだ!

「……終わったな」
「そうだね。いや、思ったよりもしぶとかった。帰ってゆっくり休ませてもらおうじゃないか」
「ああ。俺も武器を取りに行って帰って、って感じだったからなー」

 猟兵達は、戦闘から日常に戻ろうとするかのように話しながら、戦場を立ち去る。
 その声と足取りは激戦の直後でありながらも軽く、一つの平和にふさわしい姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月19日


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#アルダワ魔法学園


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト