紫煙群塔と死の黄金
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「恵まれない子供たちのために、寄付をお願いします……」
機械仕掛けの煙突からたなびく煙が特徴的な、遺跡と紫煙の都市国家、紫煙群塔ラッドシティ。
その中層、多くの人でにぎわう街角で、質素な服に身を包んだ女性が通行人に呼びかけていた。
「1ダルクでも良いのです。どうか……」
「悪いね、急いでいるんだ」
彼女の呼びかけに応えてくれる人間は少ない。手に持った籠の中に入っている金貨もほんの数枚。
この女性には、どうしても金が必要な理由があった。自分のためではなく、庇護を必要としている大勢の子供たちを、養わなくてはいけないという責任が。
「どうしましょう……これでは、もう今月の生活費すら……」
既に切り詰められる所は限界まで切り詰めている。自分自身の身の回りの費用まで含めて。
それでも足りない。まるで足りない。帰りを待つ子供たちを、飢えさせる訳にはいかないのに。
「なんとかしないと……でも、どうしたら……」
『――金銭が必要なのですね? ならば叶えましょう、その願い』
追い詰められた女性の前に現れたのは、真紅の光と黄金の輝き。
無垢な生命を救いたいという慈愛の祈りが呼び寄せたのは、禍々しき万能の魔神であった――。
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「エンドブレイカーの世界にある都市国家の1つ、『紫煙群塔ラッドシティ』が、エリクシルによって滅亡する未来を予知しました」
悪しき終焉を破壊する者、エンドブレイカー達の故郷であるかの世界にある都市国家の1つ、ラッドシティは古代遺跡の機械と「紫煙」と呼ばれるエネルギーを活用した独自のテクノロジーを発達させた都市であり、他の都市にはない独自の文化を築いている。
「事件の発端となるのは、ラッドシティ下層で孤児院を営んでいるエレノアという女性です。彼女の日課は院の運営と子供たちの生活資金のために、街角で寄付をつのることでした」
都市国家の中にも格差はある。上層に豊かな生活を送る貴族がいる一方で、下層には貧困に悩まされる人達がいる。もともとラッドシティはそうした明暗が顕著に見えやすい都市国家でもあった。是正を試みる人間もいるにはいるが、この手の社会問題は簡単にはなくならないものだ。
「エレノアさんは上層の出身でしたが、身寄りのない下層の子供たちのために私財を投じて孤児院を開いた方です。ですが寄付の呼びかけはあまり上手くいっていないようで、院の運営は火の車となっています」
慈愛の心や奉仕の精神だけでは腹が膨れないのが現実だ。多くの孤児達を養うにはそれだけ多くの資金が必要になる。孤児院を潰さないためにエレノアが金策の方法を考えていた時――万能の魔神『エリクシル』が姿を現した。
「エレノアさんに接触したエリクシルは、彼女の願いの力を利用して、かつてラッドシティにいた『黄金マスカレイド』を復活させました」
この黄金マスカレイドはエンドブレイカー世界の通貨である、ダルク金貨を偽造する能力を持っている。
贋金といっても精巧なもので、しかも大量に製造することができる。この偽造されたダルク金貨を巡って過去のラッドシティでは大きな事件も起こった。
「この偽ダルク金貨の最大の問題は、『人間の死体を材料にしている』事です。黄金マスカレイドは密かに人間を殺し、死体を贋金に変えていたのです」
カネのために誰かを殺す、人間の歪んだ欲望を具現化したようなマスカレイド。だが、この力があれば孤児院は潰れずに済むかもしれない。子供たちを救いたいという責任感につけ込まれ、エレノアはエリクシルに洗脳されてしまった。
「黄金マスカレイドとエリクシルの力によってラッドシティの世界法則は改変され、『人が死ぬとダルク金貨になる』というルールが作られました」
この法則は老若男女を問わず、死因も問わない。事故死、病死、自殺、そして他殺、何であれ死んだ人間の死体は金貨になる。そんな異常極まる世界法則がラッドシティ全土を支配しているのだ。エレノアの願いを歪めて「願いの力」を手に入れたエリクシルは、これほどの魔力を発揮するのである。
「悪いことに、この新たな法則に最初に気がついたのは、ラッドシティに潜む犯罪者でした。自分の欲望のためなら他人を傷つけることを厭わない、凶悪な札つき達です」
彼らはこの現象を誰が、何のために起こしたかなど考えず、ただ自分のために人を殺して金貨を集めようとするだろう。そうなれば被害と混乱は加速度的に広がっていき、ラッドシティの治安と経済は崩壊する。ひとりの市民の罪なき願いが、都市国家を滅びに導こうとしているのだ。
「事態収拾のために、まずは暗躍している犯罪者達を捕縛しなければなりません」
彼らはただの人間だが、訓練によって「アビリティ」と呼ばれる特殊な戦闘技能を身に着けており、おまけに悪巧みが得意でずる賢い連中だ。戦っても負けはすまいが、捕らえるのは一筋縄ではいかないだろう。
「犯罪者達の多くはラッドシティ下層に拠点を構えています。その辺りから情報を集め、都市の治安組織と協力して、金貨目当ての殺人を未然に阻止してください」
今のうちに犯罪者を捕らえることができれば、ダルク金貨を求めて都市中で殺し合いが起きるような最悪の事態は防げるだろう。事件の拡大を防いだのち、元凶であるエリクシルと黄金マスカレイドを倒すのだ。
「エリクシルはより直接的にダルク金貨を集めるために、モンスターの大群を呼び出して虐殺を起こそうとも企んでいます。黄金マスカレイドの元に向かう道中では、必ず衝突することになるでしょう」
犯罪者達を捕らえてもこちらのモンスターを放置すれば、ラッドシティ市民の犠牲は甚大なものとなる。
敵は『ミミック』と呼ばれる宝箱に擬態する能力を持ったモンスターで、擬態で油断した人間を不意打ちするだけでなく、純粋な戦闘能力も高い。猟兵達も警戒は怠らないほうが良いだろう。
「ですが、やはり最大の脅威となるのは黄金マスカレイドです。エレノアさんの『願いの力』をエリクシルから移植された彼女は、生前よりも遥かに強大な力を得ています」
強欲で金に執着する性格はそのままに、欲望やカネを力に変えるユーベルコードを操る強敵である。
正直なところ猟兵でも正面から挑むのは分が悪い。しかし黄金マスカレイド、ひいてはエリクシルの力は願いの主がいてこそ発揮されるという点が、連中の弱点になる。
「洗脳されたエレノアさんを説得し、目を覚まさせる事ができれば、勝機はあります」
恵まれない子供たちのために純粋な善意から寄付を求めていたエレノアが、こんな事態を望んでいたはずがない。彼女が正気に戻りさえすればエリクシルの「願いの力」は失われ、敵は一気に弱体化するだろう。
「黄金マスカレイドを倒せばラッドシティの世界法則も正され、事態は収束します。どうか皆様の力をお貸しください」
そう言って説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、ラッドシティへの道を開く。
万能の魔神の力によって、黄金の欲望に蝕まれようとしている紫煙群塔を、猟兵達は救い出せるのか。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはエンドブレイカーの世界にて、都市国家を崩壊させようとするエリクシルの企てを阻止する依頼です。
舞台は紫煙群塔ラッドシティ。過去作にも登場した都市国家ですが、オープニングを一読いただければそれ以上の知識は今回のシナリオでは必要ありません。
現在のラッドシティはエリクシルの力で『死んだ人間の死体がダルク金貨に変わる』という世界法則に支配されています。
1章ではこの法則を利用してひと儲けを企んでいる犯罪者達の捕縛に向かいます。
エリクシルの手下という訳ではありませんが、自分の欲望のためなら殺人すら躊躇わない凶悪犯達です。彼らが金貨目当ての犯罪を起こす前に追いかけて捕まえてください。
2章はエリクシルに呼び出された『ミミック』の群れとの集団戦です。
ラッドシティの市民を無差別に殺害し、ダルク金貨を集めるようにと命令されたモンスターです。ある意味犯罪者以上に話の通じない相手なので、遠慮なく撃破してください。
3章はエリクシルの力で復活した『黄金マスカレイド』との決戦です。
過去にラッドシティで活動していた頃よりも大幅にパワーアップしています。正攻法で倒すのは難しい相手ですが、エリクシルに移植された「願いの力」が失われると大幅に弱体化します。
今回エリクシルの標的となったエレノアという女性は、貧困に苦しむ子供たちのために私財をなげうって孤児院を開設した慈愛の人です。
しかし現在は運営のための資金難に悩まされており、寄付も思うように集まらず追い詰められていたところを魔神に魅入られてしまいました。
現在は洗脳されて正気を失っていますが、呼びかけによっては目を覚まさせる事は可能です。それがエリクシルと黄金マスカレイドを倒すカギになるでしょう。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『賞金首を追え』
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POW : 犯罪者に真っ向から立ち向かい、制圧する
SPD : 逃走する犯罪者を追跡し、追い詰める
WIZ : 犯罪者の情報を集め、包囲網を敷く
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セリカ・ハーミッシュ
人間を金貨にするなんて事が続けばラッドシティに
人が居なくなってしまうから必ず阻止しないといけないね。
ラッドシティも久しぶりだから気を引き締めて挑むよ。
犯罪者達の捕縛に動くよ。
中には仕方なくという人もいるのかもしれないけど
それでも止めさせないとだね。
不意打ちや罠には十分に注意して行動するよ。
抵抗が激しいようなら手裏剣投げによる影縫いで
犯罪者達の動きを封じるね。
決して命は奪わずに丁重にかな。
聞き出せるなら他の犯罪者たちの居場所も
確認して次の行動に役立てるよ。
決して悪いようにはしないと約束はするね。
「やっぱり侮れない所だね」
「もう人殺しなんてさせるつもりはないよ」
「人間を金貨にするなんて事が続けばラッドシティに人が居なくなってしまうから、必ず阻止しないといけないね」
エリクシルと黄金マスカレイドの力で歪められた世界法則。それが紫煙群塔にもたらすであろう未来をセリカ・ハーミッシュ(氷月の双舞・f38988)は想像し、危惧していた。カネを得るために人が人を殺す、そんな事が当たり前になった都市国家に誰が住もうと思うのか。
「ラッドシティも久しぶりだから気を引き締めて挑むよ」
マスカレイドとの戦いが終わってから15年――本人の時間感覚においては7年間、彼女は様々な世界を渡り歩いて見聞を広めてきた。だが、故郷たるこの世界が再び危機に晒されていると聞いて放ってはおけない。猟兵として、エンドブレイカーとして、彼女は今一度剣を取る。
「まずは犯罪者達の捕縛に動こうか」
セリカが最初に向かったのはラッドシティの下層区域。総じて治安の悪く、犯罪者の根城となっていることも多い場所だ。文字通りに都市国家の暗部であり、薄汚れた街並みで明日を知れぬ暮らしを送っている者も多い。
(中には仕方なくという人もいるのかもしれないけど、それでも止めさせないとだね)
貧窮のあまりカネが欲しかったのだとしても、それで人殺しに手を染めてしまっては明るい未来などない。
既に世界法則の変化はある程度の人間には知られているとみて、彼女は不意打ちや罠に十分注意しながら調査を進める――。
「……おっと」
ふと見れば、ちょうど足首の高さに細い糸が張られているのに気付く。引っ掛かればおそらくトラップが作動する仕掛けだろう。よくよく観察すればすぐに分かる簡単な罠だが、油断していると危なかったかもしれない。
「ちっ、バレたか」「構わねえ、やっちまえ!」
セリカが立ち止まったのを見て、近くの物陰に潜んでいた連中が飛び出してくる。まだ何も知らない通行人を罠にかけて殺し、死体を黄金に変えようと目論んでいたのだろう。手には近接戦闘用の武器や、装填済みの紫煙銃を構えている。
「やっぱり侮れない所だね」
セリカはアイスレイピアとムーンブレイドの二刀流の構えを取り、犯罪者達の襲撃を迎え撃つ。アビリティによる高度な戦闘技術を有した連中を舐めてかかるつもりはない。逆に言うなら、油断を除いて彼女がこいつらに後れを取る要素もなかった。
「少し大人しくしてもらおうか」
「ぐおっ!」「なに
……!?」
双剣を巧みに振るって攻撃をいなし、腰から素早く【手裏剣投げ】を放つ。狙うのは標的の足元にある影――影縛りによって、身動きを封じる。人数でも状況でも優位に立っていたはずの犯罪者達が、1人残らず動けなくなるまで大した時間はかからなかった。
「もう人殺しなんてさせるつもりはないよ」
「ち、畜生、放せよっ」
決して命は奪わずに丁重に捕縛した上で、セリカは剣を納める。彼女の目的は犯罪を阻止する事であって犯罪者の抹殺ではない。それに下層の事情に詳しい彼らであれば、他の犯罪者の居場所も聞き出せるかもしれない。
「協力してくれれば決して悪いようにはしない」
セリカはそう約束した上でポケットからダルク金貨を見せる。もちろん死体から作った贋金ではない、本物の金貨だ。彼らが人の皮を被った悪魔でなければ、利害によって懐柔する事も可能だろう。誠実で嘘のない言葉を尽くして、彼女は犯罪者の説得を試みる。
「……本当に、約束だな?」
「うん。必ず守るよ」
その結果、全員ではないものの犯罪者の一部はセリカとの交渉に応じ、現在の下層について知る事を語った。
セリカはその情報を元にして次の行動方針を決め、犯罪者の追跡と捕縛を続ける。紫煙烟るラッドシティの闇は深く、だが氷月の光は着実に闇を照らしていく――。
大成功
🔵🔵🔵
ワタツミ・ラジアータ
キャバリアは待機
人を金にですか、異なる世界でも似た様な事をする方はいらっしゃるものですね。
金のみ、という所が勿体ないとは思いますけれど。
治安組織と共に犯罪者が多い区画に囮兼駆除装置として乗り込む
ところで犯罪者の方々の命はどのように扱えば?
生死不問:
街一帯に浸食粒子をばらまき、犯罪者に該当する者を資源化する
捕縛優先
街一帯に浸食粒子をばらまき、悪さが出来ない程度の資源化によるダメージを与える
未知の技術を終わらされてはジャンク屋としては困りますので邪魔をさせていただきますね。
今は猟兵なので現地民には気を使う
死ねば金になる。
孤児院の経営がつらいと子供の命も大変でしょうね。
…邪推に過ぎますかね?
「人を金にですか、異なる世界でも似た様な事をする方はいらっしゃるものですね」
人によっては悍ましさに震えるであろう歪んだ世界法則を耳にしても、特に驚いたふうもなくワタツミ・ラジアータ(Radiation ScrapSea・f31308)はそう言った。レプリカントである彼女は外部から取り込んだ金属を自分の構成部品や武装として再構成する機能と、そのために他者を「資源化」する権能を有していた。
「金のみ、という所が勿体ないとは思いますけれど」
彼女に言わせてみれば金貨にしかならないのは資源として用途の幅が狭い。経済的価値と資源的価値のどちらに重きを置くかの違いだろうが――それはさておき、猟兵としてはこの事態を見過ごす訳にもいかないだろう。
「ところで犯罪者の方々の命はどのように扱えば?」
現地の治安組織と共にラッドシティ下層区域に降り立ったワタツミは、まずは方針を定めるために質問する。
自分は犯罪者をおびき寄せるための囮兼駆除装置となるつもりではあるが、その際相手の生死をどの程度重視するかによって対処法も変わってくる。
「どのように、とは?」
「例えば生死不問なら、街一帯に浸食粒子をばらまき、犯罪者に該当する者を資源化する事もできますが」
ごく自然に淡々と語られた内容は、治安組織の騎士達を思わずゾッとさせるものだった。冗談で言っている訳ではなく、彼女はそれを現実にできる。ユーベルコードの力を行使すれば、生物・無生物・地形問わずあらゆる物質の資源化が可能だ。
「犯罪者と言えども人間だ。無闇に殺害せず、できる限り生きて捕らえてほしい」
「承知しました」
治安組織としては真っ当な要請に、ワタツミは素直に頷いた。今は猟兵として活動しているので、現地民の意向には気を遣う方針だ。自分でも手を焼くほどの強敵が出てくればまた話は別だが、腕利きでも一般人の犯罪者相手に不測の事態は起きないだろう。
「では始めましょう」
活動方針が定まったところで、彼女は治安組織と共に犯罪者が多い区画に乗り込む。戦闘用の乗機にして外装であるキャバリアは待機させてある。無機的で人形のように整った容姿の娘が下層を歩く姿は、すぐに良からぬ者達の注目を集めた。
「お嬢さん、こんな所になにしに来たんだ?」「ヘヘッ、運が悪かったな」
凶器を手にした悪漢共が、若い娘をぐるりと取り囲む。傍から見れば絶体絶命の窮地だろう。しかしワタツミの表情は変わらない。標的が集まってきたのを確認して、【デウス・エクス・マキナ《プラネットイーター》】を起動する。
「未知の技術を終わらされてはジャンク屋としては困りますので邪魔をさせていただきますね」
「なにを言ってやが……ッ
!!?」「ひっ?! お、俺の身体がぁっ!!」
彼女の身体から放出された不可視の異星系侵蝕粒子は、たちまち区画全体に広がり、犯罪者達の肉体を部分的に無機物や金属に変えていく。現地民の意向は「捕縛優先」との事だったので、資源化するのは四肢の一部などに留め、これ以上悪さができないようにする程度だ。それでも相手に与えたダメージは大きかっただろうが。
「捕縛完了です。後はお任せします」
「あ、ああ……感謝する」
同行していた騎士達は凄まじき超常現象に目を見張りながらも、動けなくなった犯罪者達を連行していく。
連中が今後どのような裁きを受けるかについてはワタツミの関与する所ではない。少なくとも、これで彼らがカネ目当てで人を殺し、死体を材料にした金貨が都市にばらまかれる事態は防げただろう。
「死ねば金になる。孤児院の経営がつらいと子供の命も大変でしょうね」
粒子の放出を停止し、犯罪者の連行を見届けながら、ワタツミはこの事件の発端となった者について考える。
仮にだが、現状で孤児院の運営を改善する最も合理的な方法は、院にいる子供を「間引き」して金に変える事だろう。食い扶持が減った上で資金は増える、倫理を無視すれば良いこと尽くめだ。
「……邪推に過ぎますかね?」
いささか手段と目的が逆転し過ぎているような気もするし、恵まれない子供のために孤児院を興した女性が、そこまで堕ちてしまったとはあまり考えたくない。だが、エリクシルは生命体の願望を歪んだ形で叶えるという――その悪意が、どこまでこの状況を見通していたかは、まだワタツミにも分からぬ事であった。
大成功
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カシム・ディーン
【情報収集・戦闘知識】
犯罪者達の情報を集める…
ってなんで此処の住人は協力的なんだ…?つか何故僕を法務大臣と呼ぶ…?
僕この都市なんぞ知らねーんですが(実はEB世界のカシムが居たりする。現在は留守中! http://t-walker.jp/eb/status/?chrid=c31419
「ご主人サマ☆沢山いる悪い人達を捕まえるにはいい方法があるぞ☆」(にこにこしている銀髪少女
うっがぁぁぁぁ!!!(絶望
UC発動
10師団
主を護衛
残り
「「ひゃっはー☆悪い子はいねがー☆」」
圧倒的物量の幼女達が犯罪者に襲い掛かり捕まえちゃうぞ☆
【盗み攻撃・盗み】
犯罪者は容赦なく身包み剥ぎつつ懲罰騎士達に突き出す
「まずは犯罪者達の情報を集めないとな……」
紫煙群塔ラッドシティにやって来たカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、金貨化の法則を悪用しようとする連中の情報収集を始めた。円滑にそれを行うためにも、まずは現地の住民や治安組織の協力を仰ぎたいところだが――。
「ってなんで此処の住人は協力的なんだ……? つか何故僕を法務大臣と呼ぶ……?」
「? どうかされましたか、カシム大臣?」
僕この都市なんぞ知らねーんですが、と困惑するカシムと対照的に、ラッドシティの人々は彼の顔と名前を知ると率先して協力を申し出てくれた。実はこの世界には彼とは違う別の「カシム・ディーン」がおり、この都市国家の議会で立法を担当していたのだが――現在は留守中という事もあり、人違いをされているようだ。
(まあ人違いでも今は協力してもらうか)
事は一刻を争う以上、誤解であってもここは割り切る事にしたカシム。ラッドシティの暗部に詳しい治安組織の協力を得られるのは事実として大きく、危険な犯罪者達のいる区画はすぐに絞り込むことができた。後はどうやって連中を一斉逮捕するかだが。
「ご主人サマ☆沢山いる悪い人達を捕まえるにはいい方法があるぞ☆」
「うっがぁぁぁぁ!!!」
にこにこしながら提案するのは銀髪少女の「メルシー」。彼女が何を考えているのか、相棒としての付き合いで理解してしまったカシムは、思わず絶望の叫びを上げた。そこまで拒否反応を示すほどイヤな「いい方法」とは一体――。
「ご主人サマ! 依り代お願い!」
「しょーがねーな! その分しっかり働けよ!」
「「もっちろーん☆」」
【対軍撃滅機構『戦争と死の神』】。それはメルシーを幼くした見た目の分身を、師団規模で大量に召喚するユーベルコード。都市国家のあちこちに潜んでいる犯罪者を纏めてとっ捕まえるには、人海戦術が一番シンプルな解決策だった。
「「ひゃっはー☆悪い子はいねがー☆」」
「うおぉっ?!」「なんだこのガキども?!」
10個師団を主の護衛に残して、残りの幼女メルシーは圧倒的物量をもって犯罪者達に襲い掛かる。全員が同じ見た目の幼女が剣や鎌などの武器を持って迫ってくるさまは、ちょっとした悪夢めいた光景だった。カシムがこれを使用する気が進まなかったのも理解はできる。
「くっ、舐めんなよ、俺達がこんなガキどもにぐわぁぁぁぁ
!?!!」
「「つーかまーえたー☆」」
見た目は幼女でもメルシーは神機『メルクリウス』の化身である。相手もアビリティを使いこなす手練れとはいえ、数の暴力が覆るほどの力の差はない。津波のごとく押し寄せる幼女祭りに呑み込まれて、犯罪者達は次々に捕らえられていった。
「それじゃ、後はよろしく」
「はっ! 了解しました!」
捕まえた犯罪者は容赦なく身包みを剥いでから、ラッドシティの治安組織で最精鋭にあたる「懲罰騎士団」に突き出す。さりげなくカシム自身が利益を得ているのが、抜け目のない盗賊らしいと言うか――ともあれ、彼とメルシーの働きのおかげで、大きな事件が未然に防がれたのは事実だった。
大成功
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エリュファシオン・アルティウス
ふーんふーん♪
『オォォー♪』
私はオーさんと路地裏を楽しそうに歩いていると…
突如犯罪者達に囲まれてしまった!
な…何だい?君達は?
『オォォー!』
オーさんは威嚇している
わ…私を殺す?や…止めてくれ!私はまだ死にたくない!お金ならあげるから…命だけは!
しかし彼らは私達に襲いかかり
うわぁぁぁぁぁ!
断末魔の悲鳴が聞こえたのだった…
犯人達のだが…
戦闘パート
視力で敵の動きを見て殴り飛ばす(属性攻撃で時間逆行属性)相手は子供にまで戻す。
念動力で相手を浮かし違う敵にぶつける
オーさんに乗り相手に突撃して攻撃
ごらぁぁ!
急所に当てて気絶させた
ここまで簡単にかかるなんて…余程お金に飢えているらしいね…行こう
『オォォー!』
「ふーんふーん♪」
『オォォー♪』
オオサンショウウオ型の生きたバイク『オーさん』を連れて、ラッドシティを行くひとりの少女。ずいぶんと楽しそうに、まるで観光にでも来たかのように、エリュファシオン・アルティウス(“やんきー”を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208)は崩壊の迫る都市国家を歩いていた。
「ヘッヘッヘ……よう嬢ちゃん」「1人でこんな所を歩いてると危ないぜぇ?」
だが、散歩気分は長くは続かない。路地裏に入ったところで、彼女とオーさんはガラの悪い連中に取り囲まれてしまった。彼らはエリクシルの改変した「死者が金貨になる」法則を知る犯罪者達。なにも知らない通行人を殺して、死体をカネに変えるつもりだ。
「な……何だい? 君達は?」
『オォォー!』
困惑するエリュファシオンを守るように、オーさんが犯罪者達を威嚇する。だが相手は下衆な笑みを浮かべたまま、これ見よがしに凶器をちらつかせている。この程度で怯むようならそもそも襲撃など仕掛けないだろう。
「ヒヒッ、悪く思うなよぉ」「テメェを殺せば、オレ達の懐があったまるのさ」
「わ……私を殺す? や……止めてくれ!」
不穏な気配に危機感が募ってきたエリュファシオンは、迫真の表情で叫ぶ。だが聞く耳を持つ者などいない。
相手はか弱い娘によく分からないペットが1頭。まとめて血祭りにあげて、
死体は山分けという寸法だ。
「私はまだ死にたくない! お金ならあげるから……命だけは!」
「バーカ、両方もらうに決まってるだろうが!」
エリュファシオンの命乞いも虚しく、犯罪者共はエリュファシオン達に襲いかかる。素人相手だろうと彼らは一切情けをかけない。アビリティによる一斉攻撃が放たれ、路地裏から断末魔の悲鳴が聞こえたのだった――。
「うわぁぁぁぁぁ!」
――ただし、それは犯罪者達の悲鳴だが。何が起きたのかも分からない一瞬のうちに、彼らは全員地面に這いつくばっていた。パンパンと両掌をはたいてそれを見下ろすのは、オーさんに跨るエリュファシオンである。
「かかったね」
時を僅かに戻して、犯罪者達が襲いかかってくる瞬間。エリュファシオンは鋭い眼力で敵の動きを見切ると、カウンターの拳を繰り出した。吸い込まれるように顔面に叩き込まれた【一撃必殺】の拳は、相手を吹っ飛ばして地面にキスさせる。
「ぐへぇっ?! な、なにしやが……っ、なんだこりゃぁ!?」
起き上がろうとした犯罪者は、自分の身体が縮んでいるのに気付く。時を操る旅人の「時間逆行」能力を込めた打撃を受けたことで、肉体年齢を子供にまで戻されてしまったのだ。鍛えた戦闘技術もアビリティの扱いも、これでは十分に発揮できまい。
「調子に乗りすぎだ、ごらぁ!」
エリュファシオンは子供にした犯罪者の身体を念動力で宙に浮かべ、他の犯罪者にぶつける。仲間同士で衝突して「うぎゃっ?!」ともつれあっている間に、彼女はオーさんに乗ってエンジン(?)をフルスロットルに。そして本人はヤンキーっぽいと思っている恫喝の叫びと共にアクセルを踏む。
「ごらぁぁ!」
「「うわぁぁぁぁぁ!」」
猛スピードで突撃するオオサンショウウオ型バイクに撥ね飛ばされ、愚かな犯罪者達は一人残らず気絶した。
最初の油断しきった態度も、怯えた命乞いも、全ては敵をおびき寄せるための策だったと彼らが気付くことは最後まで無かった。
「ここまで簡単にかかるなんて……余程お金に飢えているらしいね……行こう」
『オォォー!』
見事な演技と実力で犯罪者達を一網打尽にしたエリュファシオンは、オーさんに乗って次の現場へと向かう。
こうした金の亡者共にまで情報が広まっているとなると大変だ。一刻も早く元凶を倒し、ラッドシティを正常に戻さなければ――。
大成功
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シン・コーエン
(ラッドシティのリーベフリード出身者)
もともと問題の多い都市国家で、だからこそ両親もこの都市に住んで問題解決の為に働くようになった訳だが、そのようなエレノアさんを含めた人々の努力をふいにはさせない!
犯罪者を捕縛して殺人を防がないと。
捜索系のUCは持っていないので、ここは天賦の才を使って成功率底上げする。
空中浮遊・空中戦・ダッシュ・ジャンプを組み合わせて縦横無尽に下層を駆け巡り、第六感・幸運・瞬間思考力で犯罪が行われる前の現場に居合わせ、念動力・捕縛・範囲攻撃で纏めて動きを封じて捕える。
戦闘になれば灼星剣と村正の二刀流(2回攻撃)・衝撃波・マヒ攻撃・範囲攻撃で纏めて吹き飛ばし、無力化して捕える。
「まさか故郷がこんな事になっているとはな」
エリクシルに世界法則を歪められたラッドシティの街角で、シン・コーエン(灼閃・f13886)は独り言つ。
彼の出身はこの都市国家にあるリーベフリード領で、領主と騎士団長を務めるエンドブレイカーの両親と共にそこで育った。故にラッドシティの長所も、その裏にある陰もよく知っている。
「もともと問題の多い都市国家で、だからこそ両親もこの都市に住んで問題解決の為に働くようになった訳だが、そのようなエレノアさんを含めた人々の努力をふいにはさせない!」
立場や方法は異なれど、都市の未来を良くしたいと思う人の願い。それを歪めたエリクシルとマスカレイドを絶対に許すつもりはない。両親から受け継いだ想いを闘志と決意に変えて、彼はいざ事件解決へと乗り出した。
「犯罪者を捕縛して殺人を防がないと」
これ以上の被害と治安悪化の拡大を防ぐために、まずはそれが急務である。しかし下層だけに範囲を絞ってもラッドシティは巨大であり、またシンは捜索系のユーベルコードを持っていない。ここは【天賦の才】を使って調査の成功率を底上げする事にした。
「怪しいのはこの辺りか?」
サイキックによる浮遊にジャンプやダッシュを組み合わせ、スカイランナーばりの軽やかな空中機動で縦横無尽に下層を駆け巡る。知識と推測に基づいて犯罪が起こりそうな場所に目星を付けたら、あとは第六感に導かれるまま。様々な世界を渡り歩いてきた彼の直感は、ただのカンなどと馬鹿にはできない。
「ヒヒッ、悪く思うなよ」
「い、イヤっ、誰か……!」
天賦の才と幸運の助けもあって、シンは今まさに犯罪が行われる直前の現場に居合わせる事ができた。カネや利益のためなら平気で人も殺す、ラッドシティの犯罪者でも底辺の輩が、ガンナイフをちらつかせて無辜の市民に迫っている。
「やらせるか!」
「ぐえっ?!」「何だこりゃ……う、動けねえ!」
シンはすぐさま念動力を見えざる手のように伸ばし、犯罪者達の動きを纏めて封じる。不意をつかれた連中は抵抗する間もなく捕らえられ、もがきながら喚き散らす。が、彼のサイキックパワーはびくともしなかった。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございますっ」
襲われていた市民に怪我がないのを確認してから、シンは捕縛した犯罪者達を気絶させて次の現場へ。時間の経過とともに世界法則の異常に気付く人間は増えており、それに伴うトラブルや事件はあちこちで起きていた。
「なんだぁテメェは!」「邪魔するなら先に殺してやるよぉ!」
時には先手を打って捕縛できず、犯罪者達と戦闘になるケースもあった。彼らはいずれもアビリティを修得した手練れだが、しかしシンも遅れをとるつもりはない。サイキックエナジーで創造した愛刀「灼星剣」と、銘刀「村正」の二刀流で彼らを迎え撃つ。
「大人しくしていろ!」
「「うぎゃぁぁっ?!」」
さっと戦場を薙いだ深紅と白銀の斬撃波が、犯罪者達を纏めて吹き飛ばす。稲妻に打たれたように連中の体は痺れ、悲鳴を上げてばたばたと地面に突っ伏し、あっという間に路地裏に立っている者はシンただ1人となる。
この調子ならどうにか被害の拡大は防げそうだ。下層のあちこちで犯罪者を捕らえながら、彼は徐々に元凶であるエリクシルと黄金マスカレイドの元に迫っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
マジョリカ・フォーマルハウト
これはまた見た事のない都市形態じゃな
しかし人命を媒体にした錬金術とは
考えてもやらぬことをようも抜け抜けと…
其処まで堕ちてはおらんわ
地元の治安組織に協力をこぎつけ
下層の空き家を借りて闇医者でも開業するか
やれあそこは訳ありの客だけを格安で治療しているだの
一滴食事に混ぜるだけで対象が自然死する毒薬を扱っているだの
そういった噂を街に流布しておけば
労せずとも犯罪者共が鼠取りという訳よ
治安組織の者達は業者や職員に変装して出入りしてもらう
犯罪に加担する気は無い
実際に怪しい客が来たらUCを使用
眠っている間に捕縛し組織へ引き渡す
もし罪なき者が来たら余程必死なのであろう
汚れた金など要らぬわ
出世払いで治療してやるぞ
「これはまた見た事のない都市形態じゃな」
巨大な歯車仕掛けの機械を基盤にして、塔や城のように建築を重ねた積層構造の超巨大都市。都市国家ラッドシティの独特な景観を、マジョリカ・フォーマルハウト(みなみのくにの・f29300)は興味深く眺めていた。本当はもっと観光する暇があれば良かったのだが、残念ながら今はその余裕は無いらしい。
「しかし人命を媒体にした錬金術とは、考えてもやらぬことをようも抜け抜けと……」
金にがめつい魔女として巷で噂される彼女でも、其処まで堕ちてはおらんわと呆れたように呟く。エリクシルというものは余程人の願いを悪辣に曲解するのが好みらしい。放っておけばこの都市国家が血なまぐさい金貨の山に埋もれるのも時間の問題だろう。
「ここは闇医者でも開業するか」
マジョリカは地元の治安組織の協力をこぎつけ、適当な下層の空き家を借りることができた。もちろん本気で商売をするつもりはない――彼女の魔術と薬学の腕前なら出来なくもないだろうが。これは金貨狙いの犯罪者を見つけ出すための作戦である。
『あそこの医者は訳ありの客だけを格安で治療している』
『一滴食事に混ぜるだけで対象が自然死する毒薬を扱っている』
彼女が治療院を構えてから程なくして、下層に怪しげな噂が流れるようになる。どれも脛に傷持つ連中や、これから殺しをやろうと企んでいる連中の興味を引くような話ばかり。言うまでもなく噂を流しているのはマジョリカ本人だった。
(そういった噂を街に流布しておけば、労せずとも犯罪者共が鼠取りという訳よ)
ばら撒いた釣り餌に獲物が掛かるのを待っていると、開業から半日もしないうちに怪しい男がマジョリカの元にやって来た。妙に周りの視線を気にした態度と含みのある薄ら笑いが、いかにも何か企んでいそうな様子だ。
「ヒヒッ……なあ、ここで"特別な薬"を扱ってると聞いたんだが。ひとつ都合しちゃくれねぇか」
「ほう、耳が早いのう」
その客が言っているのは噂の毒薬の事か。労せずして人を殺めて金貨に変え、一儲けを企んでいるのだろう。
確かに毒と薬は表裏一体、マジョリカがその気になればそうした毒も作れなくはないかもしれない。だが魔女にも守るべき倫理や矜持がある。節操なしになんでも作ってくれると思ったら大間違いだ。
「犯罪に加担する気は無い」
「なっ、話が違うじゃねえか!」
すげない態度でぴしゃりと断られると、男は逆上して拳を振り上げる。が、暴力沙汰になる前にマジョリカは【ねむれぬよるに】を使用、眠りをもたらす美しい流星群を降らせる。魔女の魔法の効き目は抜群で、あっという間に犯罪者は深い夢の世界に落ちていった。
「もうよいぞ、出てきても」
「はっ。ご協力感謝します」
彼女が声をかけると、治療院の職員や業者に変装した治安組織の者達が出てきて、眠った犯罪者を捕縛する。
後のことは彼らに任せておけば、しかるべき法の裁きにかけてくれるだろう。事件を阻止できれば、その辺りの事で魔女の関与する余地はない。
「あ、あのぅ……」
犯罪者が連行されてから程なくして、次の客がやって来る。だが今度の相手はさっきの男とは様子が違った。
下層で暮らす住人全てが犯罪者というわけでは無い。貧困にあえぎながらも善良さを失わぬ者もいる。そんな罪なき者が怪しい噂の立つここに来たのなら、余程必死なのであろう。
「すみません、お金……あんまり無いんですけど。この子の咳が止まらなくって」
「汚れた金など要らぬわ。出世払いで治療してやるぞ」
こうした客ならマジョリカは看板通りの闇医者として振る舞い、気前のいいところを見せて治療と薬をやる。
悪党には縄を、善人には癒しを。下層の片隅でひっそりと営む治療院は、都市の混沌の予防薬となっていた。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
貧すれば何とやら…だねぇ
キレイ事ばっか言うつもりはないけれど、かといって人の命が掛かってるなら斜に構えてもいられない
単純に、根っからお人好しの私は、金の為に人を殺すなんて輩はどーにも相容れないのさ
「移色──」
《移色は謐か》を発動
【空中浮遊】と【推力移動】で滞空時間を稼ぎつつ空から街を見下ろす
犯罪者共からしても、ただでさえ殺人、しかも死体が金になるという事実を他の人に教えたくはないだろうし
いつも以上に計画的に、人目につかないように行動するに違いないから…
犯行に都合の良さそうな場所を上から見ていくつかピックアップしつつ
UCで成功率を上げるのは、ずばり『どの場所で犯行が行われるかの推理』
推理で先読みできれば…ま、私一人でも敵わない相手ではないだろうけど
都市の治安組織と協力してねって言われてるし、何よりラッドシティといえば、懲罰騎士団がいるもんね!
エンドブレイカーだって言えば信用は十分だろうから、騎士団にタレコミ入れて犯行が予想される各所に人海戦術してもらおう
もちろん私も大捕物に参加するよ!
「貧すれば何とやら……だねぇ」
生活が苦しくなれば心にも余裕がなくなり、判断が鈍って悪い奴らに付け込まれやすくなる――ありふれてはいるが、それでもイヤな話だとキャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)はため息を吐いた。この場合はエリクシルの誘惑が強烈だったと言うべきか、エレノアという女性のひたむきさが仇となったと言うべきか。
「キレイ事ばっか言うつもりはないけれど、かといって人の命が掛かってるなら斜に構えてもいられない」
今はとにかく、崩壊しつつあるラッドシティで悪さを企んでいる犯罪者をどうにかしないといけない。道理や人倫より単純に、根っからのお人好しである彼女は、金の為に人を殺すなんて輩とはどうにも相容れないのだ。
「移色──」
【移色は謐か】を発動したキャスパーは、足底から「ウィルゴー」と呼ばれる透明な風のオーラを発して空中に浮かび上がり、街を見下ろせる高度で滞空する。ここからなら周辺の地形を一望した上で犯罪者達が取りうる行動を推理できる。
(犯罪者共からしても、ただでさえ殺人、しかも死体が金になるという事実を他の人に教えたくはないだろうし、いつも以上に計画的に、人目につかないように行動するに違いないから……)
犯行に都合の良さそうな場所を上から見ていくつかピックアップしつつ、『どの場所で犯行が行われるか』を推理する。空とともに在る感覚は彼女の思考力を活性化させ、知性やひらめきさえも強化する。【移色は謐か】は、そうして滞空時間に比例して行動の成功率を高めるユーベルコードだ。
「……読めた。きっとあそこだ」
地形を始めとする様々な情報を多角的に判断した結果、名探偵キャスパーは直近で事件が起こるであろう候補を順番に絞り込む。確信を得た彼女は一旦地上に降りると、直接現場に向かう前に「ある者達」を呼びに行く。
「推理で先読みできれば……ま、私一人でも敵わない相手ではないだろうけど。都市の治安組織と協力してねって言われてるし、何よりラッドシティといえば、懲罰騎士団がいるもんね!」
ラッドシティの治安を守る警察組織でも、元々は綱紀粛正の為に設立された精鋭集団、それが懲罰騎士団だ。
悪人を捕らえ、罰を下すために独自の技を伝えてきた彼らの実力はキャスパーも知っている。彼らの協力を得られれば、万に一つも犯人を取り逃す心配はないだろう。
「情報によれば、ここで事件が起こるそうですが……」「しっ。誰か来たぞ」
かつて世界を救ったエンドブレイカーの勇名はラッドシティにも轟いている。その1人から事件のタレコミが入ったのなら信用するには十分だろう。懲罰騎士団は犯行が予想される各所に人員を配置し、張り込みを行う。
「ヘッヘッヘ……迂闊だったなぁ、お嬢さん」
「えっ。ど、どういうことですかっ」
恐らくは騙されて連れて来られたのだろう、まだ若い少女が怪しい男と共に人気のない路地裏に入ってくる。
場所はもちろん凡その犯行時間に至るまで、キャスパーの推理はズバリ的中していた。不安な顔をする少女に、男が無骨なガンナイフを振りかざす――。
「動くな! 懲罰騎士団だ!」
「ゲッ?! なんで騎士がこんな所に!」
待機していた騎士達は犯行を確認するとすぐさま飛び出し、犯罪者の取り押さえにかかる。相手もアビリティを使える実力者だが、所詮は腕の立つゴロツキの枠を出ない。数でも練度でも勝る懲罰騎士の敵ではなかった。
「罪を認めて神妙にお縄につけ! なんてね!」
作戦立案者であるキャスパーも、もちろん捕物には参加している。まるで背中に羽が付いているような素早い身のこなしで距離を詰め、円運動を要とした独特のモーションからキックを繰り出せば、爪先がアゴにクリーンヒット。敵は「ぐべっ?!」と汚い悲鳴を上げて白目を剥き、路地裏にバタリとぶっ倒れた。
「まずは1人目! 他の所は?」
「伝令によれば、順調との事です」
キャスパーがいる現場以外でも、下層の各地に配置された懲罰騎士団は着実に成果を挙げているようだ。犯行予測地点で事件を起こそうとしていた人物ないし集団を捕らえたという報せが次々に寄せられる。人海戦術の効果は抜群だったが、それも正確な事前情報があっての成果だろう。
「情報提供に感謝します。流石はエンドブレイカーだ」
「こっちこそ助かったよ。協力してくれてありがとね」
近年のラッドシティ事件簿でも指折りになるであろう大捕物は、かくして未然に惨劇を防ぐことに成功した。
世界法則の異常による混乱は徐々に収束されつつある。まだ予断を許さない状況ではあるが、ラッドシティを滅ぼさんとするエリクシルと黄金マスカレイドの計画が、大きく狂いだしているのは間違いなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ミミック』
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POW : ドリルクロー
【機械の爪】を高速回転し続ける事で、威力増加・回転武器受け・レベル×5km/hでの飛翔を可能とする。
SPD : ミミックビーム
自身の【宝箱(頭部)の中】から極大威力の【破壊光線】を放つ。使用後は【擬態解除】状態となり、一定時間行動できない。
WIZ : 擬態からの不意打ち
【宝箱に擬態していた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
👑11
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死んだ人間の死体が金貨になる――ラッドシティ中で発生した異変に乗じ、悪さを働こうとする犯罪者達を、猟兵は現地の治安組織と協力しつつ捕らえる事に成功した。
本来なら都市国家を崩壊させるレベルだった混乱と被害規模は、予想よりもはるかに小さく留められている。これはエリクシルと黄金マスカレイドにとって予想外の展開だろう。
「……ん? こんな所になんで宝箱が?」
だが、ラッドシティを襲う異変はまだ終わらない。住民達は都市のあちこちで見慣れない宝箱を発見する。
それは誰かが近付くのを察知すると、ガチャガチャと音を立てて変形し――機械仕掛けの昆虫にも似たモンスターの正体を現した。
『ギギ、ギギギッ』
「うわぁ?! ミミックだぁ!!」
それはダンジョンの内部などで稀に見かけられる、宝箱への完全変形能力を持つ戦闘型ゴーレムの一種だ。
擬態からの不意打ちという戦法を常套手段にする一方で、搭載した殺戮兵器による高い戦闘力を持つ。熟練の冒険者であっても危険なモンスターである。
なぜ突然ラッドシティのあちこちにミミックが出没したのか、それはエリクシルの仕業としか考えられない。
住民同士を殺し合わせる方法が上手くいかないと感じた敵は、より直接的に住民を殺戮して金貨を集める手段として、このモンスター達を呼び出したのだ。
見過ごす訳にもいくまいが、この状況は言い換えれば敵の「焦り」とも考えられる。
ミミックの群れを退治しつつ出現地点の中心へと向かえば、そこにエリクシルと黄金マスカレイドがいる。
エリクシルに唆された女性――エレノアも、きっと一緒にいるだろう。
『ギギ、ギギギィ!』
与えられた命令のままにラッドシティの民を殺戮せんとするミミックの群れ。
心なき機械の魔物から人々の命を守るために、猟兵達は戦闘態勢を取った。
エリュファシオン・アルティウス
「待ってくれ!君は猟兵だろ!」
こんにちは、私に何かご用ですか?
『オォォー!』
オーさんは威嚇している
この人は敵じゃないよ
「話を聞いてくれてありがとう。私はマック・カルジェルだ」
世界を股にかけるカルジェル・カンパニーの社長さんだね。どうしてここに?
「奴が私の恩人の願いを利用しようとしているから止めに来たんだ…」
はい!力を貸しましょう!
戦闘パート
社長とは一旦別れました
さあ、行こうか!
敵の攻撃をオーラ防御で受け止めた後に念動力で機械の爪を曲げてから電撃を浴びせる(念動力で伝達力をあげる)
UC発動
パラドックス・ゾーンに触れた敵は力の根源と思考能力を奪い次々と消えていく
止めにオーさんに乗り敵を吹き飛ばした
「待ってくれ! 君は猟兵だろ!」
「うん?」
それはミミックが市街に出没するようになる少し前。犯罪者の逮捕のため奔走していたエリュファシオンを、見知らぬ誰かが呼び止める。振り返ればそこにいたのは恰幅の良い男性。発言からしてどうやら彼女ら猟兵のことを知る者のようだが――。
「こんにちは、私に何かご用ですか?」
『オォォー!』
不審者だと思ったのか、バイクのオーさんはエンジン音で威嚇している。しかし向こうに敵意がないのを感じ取ったエリュファシオンは、「この人は敵じゃないよ」と宥めてから、その男に話を聞いてみようと尋ねた。
「話を聞いてくれてありがとう。私はマック・カルジェルだ」
「世界を股にかけるカルジェル・カンパニーの社長さんだね。どうしてここに?」
どうやらこの男はこの都市の住人で、なおかつ有名な商人のようだ。この世界は都市国家の外に危険地帯が広がり、人の行き来も交易も難しくなっている。昔よりも改善は試みられているものの、それでも「世界を股にかける」とは並大抵の者ではない証だった。
「奴が私の恩人の願いを利用しようとしているから止めに来たんだ……」
そして彼はエリクシルに唆された女性、エレノアと面識があるらしい。猟兵でない人物が一体どうやってこの事を知ったのか疑問はあるが、恩人を助けたいと語る彼の目は真剣で、嘘を吐いているようには見えなかった。
「はい! 力を貸しましょう!」
「本当か! ありがたい!」
目的は一致しているとみたエリュファシオンは、マックの協力に応じることにした。具体的な方針や作戦を話し合ってから、二人は各々のやるべき事のために一旦別れる。件の人物を救い出すためには、まずエリクシルの元まで辿り着かなければ。
「さあ、行こうか!」
時を同じくしてラッドシティに現れだしたミミックの群れ。これを撃破すべくエリュファシオンはオーさんに跨って気合を入れる。相手はすでに宝箱への擬態を解除し、昆虫めいた脚に鋭い機械の爪をギラつかせていた。
『ギギ、ギギギギ……』
ミミック達に与えられた命令はラッドシティ市民の虐殺。それは居合わせた猟兵も含まれるようで、高速回転する【ドリルクロー】を振りかざして襲い掛かってきた。迎え撃つエリュファシオンは「万能時間覇気」を全身に纏ってガードの構えを取る。
「えいっ!」
ガキンッと鈍い音がした直後、念動力で力を込める。すると機械の爪は見えない力にねじ曲げられて、使い物にならなくなった。さらに彼女は念を電気の通り道として、のこのこ近付いてきたミミックに電撃を浴びせる。
『ギギィ?!』
感電したミミックの群れは痺れて悲鳴を上げ、この隙にエリュファシオンは【時間逆行闘技の檻】を発動。
パラドックス・ゾーンと呼ばれる特殊な結界を展開し、それに触れた敵から力の根源と思考能力を奪い取る。
「さあ! パラドックスバトル開始だ! 私はやんきーだから強いよ? ごらぁ! なんてね!」
凄みをきかせる彼女の周りで、力を奪われたミミックはまるで蜃気楼のように次々と消えていく。過去と未来に由来する全ての力を失えば、いかなる者も存在することはできない。時間逆行の力を利用した恐るべきユーベルコードであった。
「止めだ!」
『ギギィーーーッ!!!』
最後にエリュファシオンはオーさんに乗って、フルスロットルの突撃で残ったミミックどもを吹き飛ばす。
バラバラに飛び散った機械の残骸を後目に、彼女はそのまま敵の出てきた方角に――エリクシルの居るであろう場所まで一目散に駆けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ワタツミ・ラジアータ
実は朝から何も食べていなかった
あちらから食事を提供してくださるとは嬉しい話でございますが、
この姿のままでは少し面倒ですわね。
外装を装着したキャバリアを呼ぶ
自身のコアへの直撃以外のダメージ、損壊は許容しつつ光線は回避する
止まったミミックは食べる
キャバリア自体にも普段は隠れているが捕食用の顎は形成されているので降りて食べる必要はない
それを資材にキャバリアに砲塔を増やし他のミミックも食べやすくする
また、自身の破損した所もミミックを資材に応急処置的に直す
人はダメなそうですけれども、君達相手なら気を使う必要もありませんよね?
砕かれ再利用されるのは何時か来る末路なのですし、早いか遅いかだけですわ。
「実は朝から何も食べていなかったんです」
ラッドシティに忽然と現れだしたミミックの群れを見て、ぽつりと呟いたのはワタツミ。この都市に来てからずっと犯罪者の無力化と捕獲に追われて食事をとる暇もなかった。殺してはいけない制約がなければ「資源化」して補給も兼ねられたのだが。
「あちらから食事を提供してくださるとは嬉しい話でございますが、この姿のままでは少し面倒ですわね」
壊しても誰から文句を言われない機械のモンスターは、今の彼女から見ればまさに葱を背負ったカモである。
とはいえ敵戦力を低く見積もるつもりも無く、外装を装着したキャバリアを呼んで戦闘形態に。"Heart of GearOrgan"と呼称されるソレは、手足の大きな白亜のボディに鈍色の外装パーツを装着した、他のキャバリアとは一線を画すデザインの機体であった。
『ギギ、ギギギーー!!』
宝箱の姿で待機していたミミックは、ワタツミが近付くといきなり【ミミックビーム】を撃ってきた。膨大なエネルギーを集束させた破壊光線、無傷で凌ぐのは難しいか――コアへの直撃以外のダメージと損壊は許容する方針で、"Heart of GearOrgan"が回避機動を取る。
「なかなかの出力です」
極大威力の閃光が機体をかすめ、外装と本体装甲の一部が吹き飛ぶ。しかしパイロットにしてこのキャバリアの「本体」であるワタツミは無事だ。出所不明の技術体系にて創られた異星の機神は、有機生命体にも劣らない滑らかな動きで獲物に近付いていく。
『ギ、ギ……』
先制攻撃のビームでエネルギーを使い切ったミミックは、擬態解除状態となって一定時間行動できなくなる。
この間に悠々と距離を詰めたワタツミは【Dinner of GarbageCrusher】を発動。動きの止まったミミックを捕食し、自らの糧とする。
「人はダメなそうですけれども、君達相手なら気を使う必要もありませんよね?」
『ギィッ!?』
キャバリアの頭部から普段は隠れている捕食用の顎が開き、がぶりと獲物に喰らいつく。糧になるなら贅沢は言わない、由来は何であれ食べてしまえばみな同じだ。獲得した資材を用いて彼女は機体各部に砲塔を生やし、周辺にいる他のミミックをロックオンする。
「砕かれ再利用されるのは何時か来る末路なのですし、早いか遅いかだけですわ」
『ギ、ギギィー!!?』
淡々とした物言いとともに全砲塔が火を噴き、狼狽するミミックの群れを撃ち抜く。即席の武装とは言え威力は十二分にあり、一撃で仕留められなくても脚を吹き飛ばせば動きが鈍って食べやすくなる。この隙にまたワタツミは近付いて、一匹一匹獲物を捕食するのだ。
「ご心配なく、君達からの御馳走は無駄には致しませんわ」
喰らった資材は余すところなく、武装の強化や破損箇所の応急処置にあてる。ビームの命中で損壊した装甲がみるみるうちに修復され、砲塔の本数が増えていく。あらゆる金属または無機物を取り込んで己を強化し続ける彼女は、ミミックのような機械系のモンスターには天敵に等しかった。
「御馳走様でした」
ほどなくして周辺にいたミミック全てを喰らい付くしたワタツミは、キャバリアの中で満足げに目を細める。
辺りには敵が居たことを示す残骸の欠片さえも残っていない。エリクシル戦に向けて十分な補給を終えた彼女は、そのまま先に進んでいく――。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
「っ、ストップ!」
同行してた懲罰騎士団へ、咄嗟に静止の合図
ミミック…!?
本来都市部なんかに現れる筈のない敵。彼らにとっては不慣れだろうし
まして大勢で一斉にかかろうとしたら…かえってビームの餌食だ
懲罰騎士団を信用してないわけじゃないけれど、分が悪いね
「皆は住民の避難と護衛を急いで!私が対処する!」
騎士団へ指示を出しつつ敵の動きを確認
このミミック達、どう見ても狙いは住民だ…!
「擬態する気ゼロかよっ…瑠璃色!」
上空へ飛び、ミミック達を【視力】を凝らして視認し
《瑠璃色は清か》を発動
住民に襲いかかろうとする動きを風圧で止めつつ、風の刃で攻撃!
これで敵の攻撃行動まで防げればいいけれど
もしもやけくそでビームを放とうとするミミックがいれば【推力移動】の【ダッシュ】で接近し
「葡萄色、ッ!」
同時使用可能なUC《葡萄色は秘やか》で【体勢を崩す】!
ビームは空に向かって撃たせちゃえば問題無いからね、すっ転ばせるよ!
動きを止め、攻撃に対処し、破壊する
その傍らでミミックの出処をやはり空から探ってみよう
元凶は何処だ…!
「っ、ストップ!」
下層での犯罪者捕縛作戦も一段落しようかという頃、キャスパーは同行していた懲罰騎士団へ咄嗟に停止の合図を出す。これまでとは違った緊迫感のある声音に、騎士達が「どうされましたか?」と視線の先を見やると。
「ミミック
……!?」
「なっ、こんな場所に?!」
道端に落ちているのは一見何の変哲もない宝箱。だが、それがこんな場所にあること自体の違和感と、エンドブレイカーとしての経験から、彼女は即座にそれの正体を見抜いた。ダンジョンなどで欲張った迂闊な冒険者を餌食にする、厄介なモンスターの一種である。
(本来都市部なんかに現れる筈のない敵。彼らにとっては不慣れだろうし、まして大勢で一斉にかかろうとしたら……かえってビームの餌食だ)
キャスパーはミミックを刺激しないよう距離を保ったまま、後ろにいる懲罰騎士団をちらりと見やる。彼らは確かに手練れだが、あくまで人間の悪党や犯罪者を相手に訓練や実戦を積んできた集団。ダンジョンに生息するモンスターに関する知識や実戦経験は少なく、それが命取りになる恐れもある。
(信用してないわけじゃないけれど、分が悪いね)
ミミックが擬態しか能がないモンスターではないことを知っているキャスパーは、この戦いに彼らを巻き込むとかえって被害が出る恐れがあると判断した。だが馬鹿正直に「危険だから逃げて」と言っても、職務と誇りにかけて素直に引き下がりはしないだろう。
「皆は住民の避難と護衛を急いで! 私が対処する!」
「りょ、了解しました!」「お気をつけて!」
騎士の職責にかなう形で指示を出せば、彼らは速やかに住民の元へと向かい、この場をキャスパーに任せた。
今のは単なる方便というわけでもない。擬態中の敵の動きを見ていたキャスパーは、連中がじりじりと人の多い場所に移動しようとしているのに気付いていた。
「このミミック達、どう見ても狙いは住民だ……!」
住民を虐殺し大量のダルク金貨を生み出す。このタイミングで市街地にモンスターが湧いた理由などそれしか考えられない。ミミックの知識を持たない一般人がもし興味本位で宝箱を開けようとしたら――起こりうる惨劇のエンディングに彼女は顔をしかめた。
『ギ、ギギ……』
いつまでもキャスパーが警戒を解かないのをみたミミック達は、これ以上擬態を続けても無駄と判断したか。
ガタガタと機械音を立てて正体を現すとともに【ミミックビーム】の発射体勢に入る。ターゲットにしているのは目の前の女だけでなく、射程内にいる全ての人間だ。
「擬態する気ゼロかよっ……瑠璃色!」
キャスパーはたんっと地を蹴って上空に飛ぶと、動き出したミミック達の数と配置を視力を凝らして捕捉し、【瑠璃色は清か】を発動。大きく渦を描くように回転させた体から、竜巻のように荒れ狂う突風を解き放った。
『『ギ、ギィ
……!』』
四方八方から吹き付ける突風の圧と、鋭く研ぎ澄まされた風の刃を受けたミミック達は、虫のような悲鳴を上げて動きを止める。これで連中の攻撃行動まで防げれば良かったのだが、一部の個体はそれでも強引にビームを放とうとしていた。
「やけくそかよ……!」
あんな威力の光線を市民に向かって撃たせるわけにはいかない。キャスパーは大気を蹴るようにして推進力を発生させ、空中をダッシュ。自らが起こした風に乗って一目散に接近すると、くるりと身体を半回転させ――。
「葡萄色、ッ!」
死角から繰り出される【葡萄色は秘やか】の蹴りが、敵群の体勢を崩す。発射の寸前で脚部を払い飛ばされてすっ転んだミミック達は、そのままビームを放ち――極大威力の破壊光線が、都市国家の天井に風穴を開けた。
「ビームは空に向かって撃たせちゃえば問題無いからね!」
後でちょっと修繕する必要はあるかもしれないが、これで人的被害はゼロ。そしてビームを放った後のミミックは一定時間行動不能になる。連中が起き上がるまでのんびり待ってやる義理は、もちろんキャスパーにない。
「隙を見せちゃあいけませんなぁ?」
動けなくなった者から順番に、二度と暴れないよう徒手空拳でぶち壊していくキャスパー。動きを止め、攻撃に対処し、破壊する、一連のパターンを確立させた彼女は、その傍らでミミックの出処を空から探ってもいた。
(元凶は何処だ……!)
こいつらを発生させた大元――エリクシルを叩かなければ、ラッドシティの危機にいつまでも終わりはない。
懲罰騎士団による避難と警護のほうは順調で、まだ住民に犠牲者は出ていない。モンスターの騒乱から人々が退避していく一方で、キャスパーは逆に騒乱の中心へと駆けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
セリカ・ハーミッシュ
都市国家の中にミミックを出現させるなんて
やっぱりエリクシルの力は侮れないね
住人達に被害が出る前に倒せないとだね
人が集まっている所を狙って来るだろうから
避難させつつ倒して回っていくね
擬態に惑わされないよう箱を見かけたら
ミミックだと思って攻撃するよ
住人達にも箱には近づかないよう注意して回るね
ソード・ミラージュで自分の分身を作り出してからの
氷刃乱舞で凍らせて動きを封じるね
ビームによる反撃にも注意かな
エリクシルとエレノアさんの居場所も特定したいから
ミミックの出現地点から推測出来ればかな
逃げるミミックがいるようなら慎重に追跡するよ
「直接襲ってくる方がやりやすくはあるよね」
「動けなければただの箱だね!」
「都市国家の中にミミックを出現させるなんて、やっぱりエリクシルの力は侮れないね」
一難去ってまた一難。都市国家に危機をもたらし続ける万能の魔神の脅威を、セリカは改めて実感していた。
市街地のあちこちに現れた謎の宝箱。それが騙された人間を殺戮する恐ろしいモンスターだとは、一般市民に知る由もあるまい。
「住人達に被害が出る前に倒せないとだね」
連中の目的がより多くのダルク金貨を生み出すことなら、人が集まっている所を狙ってくるだろう。その前に先んじて住民を避難させるために、彼女はラッドシティを奔走する。その手に愛用の二振り――アイスレイピアとナイフを握りしめて。
「あの箱、怪しいね」
擬態に惑わされないように、セリカは箱を見かけたらミミックだと思って即座に攻撃する。仕掛けるのは【ソード・ミラージュ】で作り出した自分の残像分身と一緒に繰り出す【氷刃乱舞】。氷の魔剣から放たれる氷の刃が、敵にダメージと凍結をもたらす。
「この氷の刃からは逃げられないよ」
『ギ、ギッ!?』
先手を取られたミミックは擬態を解除して【ミミックビーム】を撃とうとするが、氷に動きを封じられて照準を合わせられない。その隙に氷月の剣士は消えゆく分身の中から飛び出して、ゴーレムの核めがけて一突き――目のように発光する部位を貫いて、ビームの反撃を阻止する。
「動けなければただの箱だね!」
『ギィーッ!!』
溶けない凍結に囚われたまま、ミミックは全体をバラバラに刻まれて機能停止する。擬態して獲物を待つという性質をうまく逆手に取れれば、このように一方的に撃破することも出来る。無論それはセリカ自身に相応の腕が備わっているからこその話だが。
「皆はこういった箱を見かけたら近づかないよう注意して。この辺りはまだ危険だから」
「は、はいっ」「わかりましたっ」
市街地にいる住民に注意喚起と避難誘導を行いつつ、彼女はまた次のミミックを探しに行く。それと合わせてエリクシルとエレノアの居場所の特定も。この騒動の大元を叩かなければ、いつまで経ってもラッドシティの危機は終わらない。
(ミミックの出現地点から推測出来ればかな)
都市国家のあちこちにいるミミックと戦いながら、その配置と動向を頭の中でマッピングするセリカ。連中の中には市街地での不慣れな擬態よりも直接住民を殺すべく、人を見れば率先して襲い掛かってくる個体もいた。
「直接襲ってくる方がやりやすくはあるよね」
この場合でも注意すべきはミミックビーム。極大威力の光線にだけは当たらないよう慎重に避けて、直後に敵が行動不能になるタイミングを狙って反撃する。再び放たれた【ソード・ミラージュ】と【氷刃乱舞】のコンボが、ミミックを容赦なく斬り刻んだ。
『ギ、ギギィー!!』
大きな深手を負ったミミックは虫のような悲鳴を上げて、ヨタヨタとどこかへ逃げていく。この状況で奴らがどこに逃げるかなんて、創造主であるエリクシルの元しか考えられない――セリカはあえてトドメを刺さずに、慎重に追跡することにした。
(上手くいけばエリクシルとエレノアさんの所に連れて行ってくれるかも)
一刻も早くラッドシティに本来の秩序を取り戻すため、息をひそめ、足音を隠し、彼女は事件の核心に迫る。
万能の魔神と黄金マスカレイド、そして惑わされた願いの主と対峙する時は遠くないと、直感が告げていた。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC継続(絶望
ミミックだぁ…?あの盗賊泣かせの詐欺宝箱だとぉ!
「でもご主人サマ!ああいうミミックって…集めるとお得なアイテムとかきっと隠し持ってるぞ☆」
…その可能性があったな!ならばやる事は一つ…!
「「強奪だー☆」」
【情報収集・視力・戦闘知識】
展開されたミミックの補足
そして戦術的に有効な出現位置を想定
引き続き10師団を主の護衛に
残りは…
「「盗賊の夢を壊す悪い箱はお仕置きだー☆」」
【念動力・空中戦・属性攻撃】
無数の幼女達が飛び回りミミックを見つければ襲い掛かり念動光弾で動きを封じて凍結光線で凍らせ無力化
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
更に鎌剣で切り刻みちゃんと隠し持ってるのもあれば強奪祭り!!
「ミミックだぁ……? あの盗賊泣かせの詐欺宝箱だとぉ!」
お宝だと思って喜んだらモンスターでした。骨折り損のくたびれ儲けを体現するような、ダンジョンの悪意を感じずにはいられない、あいつらに苦い思いをさせられた経験はカシムにもあった。こと盗賊や冒険者といった山師稼業の人間にとっては、天敵ともいえるモンスターだろう。
「でもご主人サマ! ああいうミミックって……集めるとお得なアイテムとかきっと隠し持ってるぞ☆」
「……その可能性があったな! ならばやる事は一つ……!」
しかしメルシーからの助言が彼にやる気を取り戻させる。一度にこんなに大量のミミックが出てくる事など、それこそエリクシルの仕業でもなければ滅多に無いことだ。だったら彼女の言う事もあながち根拠のない予想とも言えない――。
「「強奪だー☆」」
魔術盗賊とその相棒は、意気揚々とミミック狩りに乗り出した。まずは持ち前の目利きやモンスターに関する知識、情報収集の腕前を活かして、ラッドシティのあちこちに展開された連中の捕捉。そして戦術的に有効な出現位置を想定する。
「この辺に出てきそうだな」
「「おっけー☆」」
犯罪者狩りに奔走していた時から引き続き、【対軍撃滅機構『戦争と死の神』】で召喚した幼女メルシー師団のうち10師団はカシムの護衛に。残る師団が各所に分散して擬態するミミックの捜索、及び撃滅を担当する。
「「盗賊の夢を壊す悪い箱はお仕置きだー☆」」
空を飛び回る無数の幼女は、道端に置いてある怪しい宝箱を見つければ、ニコニコ笑顔で一斉に襲い掛かる。
ミミックの【擬態からの不意打ち】は、宝箱に擬態していた時間に応じて成功率が上昇する。なので発見次第先手を取ってぶっ叩くのは、勢い任せに見えて最適解だった。
『ギギッ?!』
幼女メルシーの放つ念動光弾の雨が、敵を拘束し自由を奪う。擬態を解こうにも解けなくなったミミックは、宝箱の姿のままガタガタと揺れる。なにも知らない一般人をカモにするならともかく、ミミックの生態に詳しいカシム達に目をつけられたのが、この連中の運の尽きだった。
「やっちまえ!」
「「はーい☆」」
続けて幼女メルシー軍団が放った凍結光線が、ミミック達を凍らせて完全に無力化する。結局そのスペックを発揮する機会の一切ないまま、連中は物言わぬ氷像と化した。念入りに中身までガチガチに凍らせてあるのは、盗賊としての日頃の怨みだろうか。
「おっと、ちゃんと隠し持ってるものがないか確認しないとな」
「分かってるってー☆」
さらにメルシーはカシムの指示の元、鎌剣「ハルペー」で機能停止したミミックを切り刻み、解体してドロップアイテムを探しだす。流石に金貨や財宝のような分かりやすい価値のある物品は持っていないようだが――。
「こんなのがあったよー」
メルシーが見つけたのは小指の爪先くらいのサイズの、小さな赤い宝石。このミミック達がエリクシルの力で呼び出されたものだと示すものだろうか? 願望宝石としての力は無いが、まだそれなりに強い魔力を感じる。
「悪くないな。よし次だ!」
「「はーい、ご主人サマ☆」」
コイツをかき集めればある程度の値になりそうだし、魔力を辿って大元となるエリクシルの居場所が特定できるかもしれない。何よりタダ働きにならずに済むと分かったカシム達は、ますますテンションを上げて強奪祭りを続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
次はミミックか、こいつらには手加減無用、全力で打ち倒して進むまでだ!
破壊光線を初めとする各種攻撃は侮れない。
まずは攻撃能力を削いでから確実に倒していこう。
UC:灼星炎渦を使用し、状態異常をミミック達に与える。
ミミックの攻撃は第六感で読んで、瞬間思考力・見切りで躱す。
オーラ防御も展開。
右手の灼星剣と左手の村正に炎の属性攻撃を宿し、斬撃波を放ちつつの2回攻撃・鎧無視攻撃で焼いて斬って倒していく。
住民を殺戮しようとするミミックがいれば念動力・捕縛で動きを封じて手出しを止めさせ、次の瞬間に斬り倒す。
まったく、エレノアさんのような人がこんな事を望むはずないだろう。
質の悪い魔神とマスカレイドは必ず倒す!
「次はミミックか、こいつらには手加減無用、全力で打ち倒して進むまでだ!」
犯罪者の捕縛が一段落してから間を置かずして、ラッドシティに現れだしたミミックの群れ。これまでは悪人とはいえ人間相手のため、殺さずに手加減して捕まえてきたが――エリクシルに呼び出されたゴーレムが相手なら、遠慮は無用だ。
『ギギ、ギ……』
相手は既にこちらを標的と見定めているらしく、擬態したままの宝箱から殺気を感じる。無論、それが分かるのは優れた第六感を持つ彼だからこそだろうが。あの形態から不意打ちで放つ【ミミックビーム】を始めとする各種攻撃は侮れないことも、彼はよく知っていた。
「まずは攻撃能力を削いでから確実に倒していこう」
そう判断したシンは灼星剣を構えて【灼星炎渦】を発動。剣から紅く煌く炎を放ち、戦場を包み込んでいく。
その熱量は並大抵の火ではなく、恒星が生み出す膨大な炎の奔流――プロミネンスを連想させるものだった。
「我が剣よ、フォースによりて生み出せし
星炎の渦でこの地を満たし、我が敵を殲滅せよ」
『ギ、ギギィ!!?』
星炎の渦に巻き込まれたミミック達は、たまらず悲鳴を上げて正体を露わにする。一度彼らについた炎は地面を転げ回っても消火できず、鉄をも溶かす熱気が搭載された武装を融解させていく。これらの状態異常による敵戦力の低下こそが、シンの最大の狙いだった。
『ギギギー!!』
消えない炎に焼かれながら、ミミック達は反撃の【ミミックビーム】を撃つ。だが、発射口が融解した状態で放つそれは本来の威力を発揮できておらず、命中精度も落ちている。戦いに際して瞬間思考力を研ぎ澄ませていたシンならば、反応できない攻撃では無かった。
「……見えた!」
射線を見切って回避運動を取り、フォースオーラを展開して光線を逸らす。一度ビームを撃った後、ミミックは擬態解除状態となって一定時間行動不能になる。この機を逃さず踏み込んだ彼の手には、炎を宿した灼星剣と村正があった。
「お前達はここで燃え尽きていけ!」
『『ギギャーーーッ
!!!』』
斬撃波を伴った双剣の連続攻撃が、容赦なく敵を溶断する。焼き斬られたミミック達は断末魔の悲鳴を上げながら星炎の渦に呑み込まれ、塵も残さずに散っていった。
この場にいた脅威はひとまず一掃できたか――しかし、ラッドシティ全体の危機はまだ終わっていない。
「だ、誰か、助けてーっ!」
都市国家の各地ではまだ、住民を殺戮しようと暴れまわるミミックが大勢いる。シンは人々の悲鳴を聞いてその現場に駆けつけると、フォースの念動力を使って動きを封じる。この手が届く限り、自分の目が届くところで犠牲など出させはしない。
「今のうちに避難を!」
「は、はいっ! 助かりました!」
感謝を伝えて逃げていく住民を背に、シンは動きを止めたミミックを一瞬で斬り倒す。紅い光が目にも留まらぬ速さで閃いたと思った直後には敵が真っ二つになっている、そんなレベルの早業だ。動いている敵が他に居ないことを確認すると、彼はふうとため息を吐く。
「まったく、エレノアさんのような人がこんな事を望むはずないだろう」
かの女性はただ、孤児院で暮らす恵まれない子供たちのための資金を欲しただけだ。誰かを殺め、都市国家を崩壊させてまで富を求めたわけでは無い。願いの本質を理解していないのか、理解した上でこうなのか、いずれにせよソレを曲解したエリクシルの所行は邪悪としか言いようがなかった。
「質の悪い魔神とマスカレイドは必ず倒す!」
この事件の元凶達の怒りを滾らせながら、シンはその走狗どもを斬り捨て、騒動の中心地へと向かっていく。
両親も守らんとしたこの都市国家に、こんな形で
終焉を迎えさせないために。彼の視線は進むべき方角をしかと見据えていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
カビパンお姉ちゃん(ユーベルコード)と一緒に参加。
宝箱!宝箱だわ!お姉ちゃんいつも貧乏とか言ってるし持って帰ったらお金にならない!?中身あんなだけど!
思いついたわ。旅団の天井にせてぃんぐしてお料理を真上から運んでくれるクレーンに……え?めんどくさい?
とりあえず持ち帰るだけ持ち帰るね。
戦闘は出来ないけど、梱包ならできるはず。
お姉ちゃんを囮にしつつ
【アート】で作った氷の鎖を、宝箱に擬態してる間に後ろからこっそり
【怪力】でぐるぐる巻き付けて、開かない様にしていくのよ!
どんどん巻いていくけど抵抗されたら打つ手がないから……
だ、誰か攻撃役お願い!(ラッドシティのお方々に救援要請)
「宝箱! 宝箱だわ!」
「宝箱ね」
市街地のあちこちに置かれている謎の宝箱を見つけて、楽しそうに叫ぶのはポーラリア・ベル(冬告精・f06947)。一緒にいるのは【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で召喚した「カビパンお姉ちゃん」こと、悪霊雪女のカビパン・カピパンである。
「お姉ちゃんいつも貧乏とか言ってるし持って帰ったらお金にならない!? 中身あんなだけど!」
もちろんポーラリアもアレの正体に気付かずに喜んでいるわけではない。欲にかられてノコノコとやって来た冒険者などを不意打ちで抹殺する擬態モンスター、ミミック。財宝としての金銭的価値はゼロだが、使い方によっては何かしら利益を生むかもしれない。
「思いついたわ。旅団の天井にせってぃんぐしてお料理を真上から運んでくれるクレーンに……え? めんどくさい?」
「だって重そうじゃないアレ」
ミミックをお店の設備として活用しようとするポーラリアの提案は、面倒くさがり屋のカビパン店長によって却下された。実現すればちょっと面白い店になっただろうが、その為の工費もろもろは確かに大変そうである。
「とりあえず持ち帰るだけ持ち帰るね」
まあ他にも良いアイデアが思いつくかもしれないと、とりあえず捕まえてから考えることにしたポーラリア。
カビパンに「ちょっとここで待ってて」とミミックの前に突っ立たせておき、自分はフェアリーの体の小ささを活かして姿をくらませた。
(戦闘は出来ないけど、梱包ならできるはず)
戦いではまるで置物同然のカビパンを囮にして、ミミックの注目が逸れている間にポーラリアは背後に回る。
【擬態からの不意打ち】を確実に成功させるために、彼らはギリギリまで宝箱の擬態を解かない。この習性を利用すれば、逆に奇襲を仕掛けることもできた。
「つーかまーえたっ!」
『ギギギッ?!』
こっそり近付くのに成功したポーラリアは、冬の妖精の力と持ち前のアート技能を活かして作った氷の鎖を、後ろからぐるぐると巻きつける。不意を突かれたミミックは虫のような声を上げて騒ぎだすが――擬態を解く前に開閉部までがっちりと縛られてしまい、元の姿に戻れなくなってしまった。
「これでもう開かないのよ!」
『ギギ、ギーッ』
見た目より頑丈な氷の鎖と、ポーラリアの意外な怪力によって梱包されたミミックは、宝箱のままジタバタともがいている。ここまでは上手くいったが、旅団にコレを持ち帰るにはもう少し大人しくさせないといけない。しかし必死に抵抗されたら、縛るので手一杯の彼女には打つ手がないのが困り所――。
「だ、誰か攻撃役お願い!」
「お? なんだオイ、ミミックじゃねえか」「よし任せろ!」
そこでポーラリアがラッドシティのお方々に救援要請を出すと、近くにいた冒険者など腕に覚えのある人間が来てくれた。いくら凶暴なモンスターとはいえ、既に縛られて満足に動けない相手をボコボコにするくらい訳はない。壊れない程度に叩きのめされたミミックは、ほどなくしてヤドカリのように大人しくなったのだった。
「ありがとう! 助かったわ!」
「いいってことよ。楽な仕事だ」
親切なラッドシティの人達にお礼を言いつつ、ポーラリアはこの調子でどんどんミミックに鎖を巻いていく。
ここで梱包された宝箱魔物が、彼女らの旅団でどのような役に立つのか、それはまた別の話――ひとまずは、市民に被害が出る前に危険なモンスターを捕獲してみせた手腕を称賛すべきだろう。
大成功
🔵🔵🔵
マジョリカ・フォーマルハウト
怪しい…怪しすぎる
道端に突然宝箱が落ちておる訳がなかろうが!
引っかかる方も引っかかる方ではあるが
気持ちはまあ解らぬでもない
何ゆえあの箱はああも開けたくなる形状なのであろうな
兎も角このままでは拙いか
ウィザードブルームエイに乗って空中から街を観察
敵が何処から出現しているか見当をつける
その後UCを使用し魔法深海魚に弾幕の技能を付与
ミミック一体につき深海魚一体を向かわせ
遠距離から弾幕を集中連射
不意打ちの隙を与えず各個撃破していくぞ
中心部へ向かおうとしておる民を見つけたら
この先でごろつき同士の戦闘が起きているとでも言い
巻き込まれる前に追い返しておくか
黄金マスカレイドとやら…
倒したら宝でも落とさねば許さぬ
「怪しい……怪しすぎる。道端に突然宝箱が落ちておる訳がなかろうが!」
開けて下さいと言わんばかりの形状と佇まいで、道端にでんと鎮座している宝箱を見て、マジョリカは思わずツッコミを入れた。欲望にかられた人間を騙すにしても、もう少し工夫は無いものか。だが、この大量発生したミミックの群れによって、既に各地で騒ぎが起きているのは事実だった。
「引っかかる方も引っかかる方ではあるが、気持ちはまあ解らぬでもない。何ゆえあの箱はああも開けたくなる形状なのであろうな」
マジョリカも宝箱を見ていると中身がどうなっているのか気になる。もはやアレにはそういう魔力が掛かっているのかもしれない。「押すな」「開けるな」と言われると人は逆に手を出したくなるというが、それとは似て非なる心理だろうか。
「兎も角このままでは拙いか」
これ以上引っかかる人間が増えないうちにと、マジョリカは「ウィザードブルームエイ」に乗って空中から街を観察する。高いところから見渡せば、敵が何処から出現しているか見当もつくだろう。それを知らずに闇雲に対処しても埒が明かない。
「ふむ。向こうの方から湧いて来ておるようだの」
索敵の結果、彼女が怪しいと睨んだのはラッドシティ下層にある放棄領域。都市国家内でも何らかの理由から治安が行き届かなくなった地域で、真っ当な人間なら近付かない――そして凶悪なモンスターが根城にするにはうってつけの場所だ。
「すべて我が手の内よ」
観察を終えたマジョリカは指先で虚空に星座を描き、【ほしぞらはぼくのうみ】を発動。かわいくてちょっと不気味な魔法深海魚の群れを召喚し、ミミック一体につき一匹を向かわせる。ぴかぴか光りながら都市国家の空を泳ぐ魚たちの姿は、まるでおとぎ話のように幻想的だった。
『ギギ……?』
【擬態からの不意打ち】を仕掛けるために宝箱に化けていたミミック達も、魔法深海魚の接近に気付く。だが射程において優位に立つのは魚達の方だった。マジョリカから弾幕を放つ技能を付与されていた彼らは、ビームや爪の届かない間合いから先制攻撃を仕掛ける。
『ギギィーッ?!』
空から降り注ぐ弾幕の雨を受け、ミミック達の悲鳴がほうぼうで木霊する。宝箱型の外殻には装甲としてそれなりの強度もあったようだが、魔法深海魚達の集中連射はそれを貫通して風穴を開ける。不意打ちを仕掛ける隙も与えられぬまま、敵はまたたく間に各個撃破されていった。
「うむ。その調子で頼むぞ」
マジョリカ本人はエイの背中の上から深海魚の指揮を執り、戦闘地域に一般人が巻き込まれぬよう気を配る。
なにも知らずに騒動の中心部へ向かおうとしている民を見つけたら、大事になる前に追い返してやるためだ。罪なき者が無知ゆえに怪物の餌食になるのは、見ていて面白いものでもない。
「この先でごろつき同士の戦闘が起きておる。あまり近付かぬほうが良いぞ」
「えっ、そうなんですか。今日は騒がしいと思ったら……」「教えてくださって、ありがとうございます」
まだ現状の危機をよく知らないラッドシティの民たちは、マジョリカの助言に従って素直に行き先を変える。
その間も深海魚達は順調にミミックの駆除を続けており、この分なら被害を広げずに事を収められそうだ――にしても、街中を巻き込んだこの大騒動のせいで、こちらも随分手間を取らされているが。
「黄金マスカレイドとやら……倒したら宝でも落とさねば許さぬ」
この苦労に見合った報酬の要求を、やや恨み節のこもった調子で呟くマジョリカ。その期待が果たして叶えられるかどうかはさておき、ミミックの群れもほぼ一掃された今、元凶と対峙する時は間近に迫りつつあった。
大成功
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第3章 ボス戦
『黄金マスカレイド』
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POW : 金色の巨人
全身を【ダルク金貨で構築した】装甲で覆い、身長・武器サイズ・攻撃力・防御力3倍の【黄金巨人】に変身する。腕や脚の増加も可能。
SPD : 金色の欲望
全身を【輝く黄金の光】で覆い、自身の【欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : 無限の金色
【手の平から】から無限に供給される【ダルク金貨】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。
👑11
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ラッドシティに湧いたミミックの群れを一掃した猟兵達は、ついにこの事件の元凶達の居場所を突き止める。
そこは都市国家下層にある放棄領域のひとつ。星霊建築の効果も弱まり、薄暗く淀んだ空気に包まれた人気のない区画に、場違いなほどきらびやかな輝きをまとう人物が立っている。
「あら……? 誰よ、あんた達は」
髪の毛から爪先まで全身黄金色に染まり、成金趣味的な服飾に身を包んだ、高飛車な態度の女。
もはや考えるまでもなく一目で分かるだろう。コイツがラッドシティの法則を歪め、死者が金貨になる世界に作り変えた元凶――『黄金マスカレイド』だ。
「そう。あんた達がさっきからあたし達の邪魔をしてたのね。まったく余計な事を」
「…………」
猟兵達を睨みつける黄金マスカレイドの隣には、対照的に質素で慎ましい身なりをした若い女性がいる。
彼女が今回の事件の発端となってしまった女性、エレノアだろう。その瞳はどんよりとして虚ろで、明らかに正気の様子ではない。
「自分達が正義の味方のつもり? あたしはただ、この女の願いを叶えてやってるだけよ。孤児院のガキどもを養うカネが欲しいって、こいつは確かに願ったんだから」
高慢な態度で言い放つ黄金マスカレイドの胸元には、金とは異なる深紅の輝き――エリクシルが宿っている。
あの万能の魔神と復活したマスカレイドの力がひとつとなって、エレノアの願いを歪めた。本当なら慎ましく暮らす事ができれば十分なくらいの金銭欲を、都市国家全体を崩壊させる規模まで曲解して。
「ほらエレノア、あんたからも言ってやりなさいよ」
「……もう……これしか、ない……あの子たちを、救うためには……」
エレノアの心はエリクシルとマスカレイドに洗脳され、他に方法はないと思い込まされているようだ。
彼女がこのまま願い続ける限り、敵は絶大な「願いの力」を発揮できる。ヤツの力を弱めるためには、何とかエレノアを説得して正気に戻さなければならない。
「こいつの『願い』は、もうあたしのモノ。あんた達もブッ殺して、あたしのカネに変えてやるわ!」
恵まれない子供らを守るという責任感を利用され、切実な願いを貶められた女性に、どんな言葉が届くのか。
強欲と悪性を隠そうともしないエリクシルの使徒、黄金マスカレイドを前に、猟兵達は決戦の大舞台に挑む。
キャスパー・クロス
ひゅー、マスカレイドの癖にいい女じゃん?
ま、外見は良くても中身は屑みたいだけどね!
「エレノアさん!エレノアさんは、子供達が好きっ!?」
【大声】で呼びかけ
「だよね、きっと子供達もエレノアさんのことが大好きだよ!エレノアさんは、子供達にとってヒーローなんだから!」
孤児院の皆のために奔走する彼女は、きっと子供達の目にはそう映るだろうから
「だからさ、これからも子供達のヒーローでいてよ、大好きな子供達に胸を張れる自分でいてよ!」
尚も言葉はエレノアさんへ
「そうすれば必ず……エレノアさんにとってのヒーローが助けてくれる」
「──そう、私とか!!」
【勝者のカリスマ】のもと、はっきりと言い放ち、マスカレイドに対峙する!
「呂色ッ」
小さく鋭く囁いて、《呂色は詳らか》を発動
どんな速度で飛び回られようが、視界に捉えられるなら1/100秒よりも尚疾く背後を取る──それが呂色!
飛翔速度が早ければ早いほど、急に背後に来られたら対応できないでしょう
機先を制したらこっちのもの、あとは【連続コンボ】で一気に叩きのめす!
「ひゅー、マスカレイドの癖にいい女じゃん? ま、外見は良くても中身は屑みたいだけどね!」
軟派な調子で軽口を叩きながらも、拳は固く握りしめたままのキャスパー。彼女の視線の先には今回の事件の元凶である「黄金マスカレイド」がいる。外見上はなるほど美女の範疇に含まれなくはないが、黄金で塗り固めた外面の内側には、邪悪な欲望が渦巻いているのが一目でわかる。
「あら、ご挨拶ね。あたしはこの女の願いを叶えようろしてるだけだって、さっきも言ったでしょう?」
対して黄金マスカレイドは微塵も悪びれることなく、隣にいるエレノアに責任を擦り付けた。「願いの力」をエリクシルに捧げてしまった彼女は虚ろな表情で「こうするしか無かった……」と呟くばかり。慈愛と責任感の強さを悪い方向に歪められ、正常な判断が出来なくなっているようだ。
「エレノアさん! エレノアさんは、子供達が好きっ!?」
キャスパーはそのエレノアに向かって、大きな声で問いかけた。洗脳されてしまった彼女が、今もなお執着を残しているであろう事を。それを聞いた相手はぼんやりとした目つきのまま、微かにだがこちらのほうを見た。
「子供たちは……好きです。愛しくて、大切で、だから護らなければと……」
「だよね、きっと子供達もエレノアさんのことが大好きだよ! エレノアさんは、子供達にとってヒーローなんだから!」
孤児院の皆のために奔走する彼女は、きっと子供達の目にはそう映るだろうから。確信をもってキャスパーは語った。身寄りのない下層の孤児達にとって、エレノアという人間は唯一の頼れる「大人」であり、きっと――母親代わりのような存在なのだろうと、思うから。
「だからさ、これからも子供達のヒーローでいてよ、大好きな子供達に胸を張れる自分でいてよ!」
エレノアがこんな悪事に手を染めることを、きっと誰も望んだりしない。食べ物も、着る物も、住む所だって幾らでも手に入るほどの大金があったって、子供達が一番大切に思っているものは違うだろうから。エレノアというヒーローの存在は、お金では買えない心の支えだから。それを、こんな形で辞めてほしくない。
「そうすれば必ず……エレノアさんにとってのヒーローが助けてくれる」
「フン。一体誰が助けてくれるっていうの?」
なおも呼びかけるキャスパーの言葉を、バカバカしいと黄金マスカレイドが遮る。既にエリクシルの力によりラッドシティの崩壊は始まった。今さら誰が彼女を助けられると言うのか? この土壇場で都合の良いヒーローなど現れるはずがない。現実とはそういうものだと邪悪は嘲笑うが――。
「──そう、私とか!!」
キャスパーははっきりとそう言い放ち、マスカレイドに対峙する。彼女の放つ勝利のカリスマは、有無を言わさぬ説得力をもって、この場にいる誰もの心を打った。エリクシルに囚われているはずのエレノアの心さえも。
「……助け、て……あの子、たちを……」
虚ろな瞳からこぼれ落ちる一筋の涙。それを見たキャスパーは「わかってるよ」と、ただ頷いた。こんな終焉を望んだ人間なんて誰も居やしない。ただ、救いたいという願いを歪められただけ。罪なき者が涙し、悪しき者が笑う時――ヒーローは見参する。いつだって、きっと、必ず。
「洗脳が……? チッ。綺麗事なんて1ダルクの稼ぎにもなりゃしないのよ……!」
これ以上話をさせるのは不味いと感じたか、黄金マスカレイドは舌打ちしながら全身を【金色の欲望】の光で覆い、猛スピードでキャスパーの元に向かってくる。自らの欲望を力に還元するユーベルコードと、エリクシルから移植された願いの力。この二つを操る彼女が都市国家を滅ぼしうる強敵である事は間違いない。
「呂色ッ」
だがキャスパーは小さく鋭く囁いて、【呂色は詳らか】を発動。敵の攻撃を叩きつけられる前に、刹那の早業で身を躱す。黄金マスカレイドにはその動きを捉えることは愚か、動きだす瞬間を見ることさえ叶わなかった。
「なっ……速い?!」
金色の欲望で飛翔能力を得た黄金マスカレイドのスピードは、常人の反応速度を遥かに上回っていたはずだ。
にも関わらずキャスパーはその速さを上回ってみせた。まばたきする間もない一瞬を経て、彼女は敵の背後にいる。
「どんな速度で飛び回られようが、視界に捉えられるなら1/100秒よりも尚疾く背後を取る──それが呂色!」
同時に放つのは足刀が生み出す斬撃波。飛翔速度が早ければ早いほど、急に背後に回られれば対応できない。
無防備なマスカレイドの背中を風の刃がざっくりと切り裂き、黄金の破片と真っ赤な血飛沫が飛び散った。
「ぎゃっ?!」
無様な悲鳴をあげて体勢を崩す黄金マスカレイド。立ち直る間を与えずに、キャスパーは追撃へと移行する。
機先を制したら後はこっちのものだ。得意とする体術の型――廻転の動作から繰り出される拳打や蹴撃の連続コンボが、息つく間もなく敵を叩きのめす。
「捉えた!!」
「がっ、ぐっ、げほ、ぎゃぁッ
!!?!」
つま先、かかと、膝、肘、拳。流れるように連動する打撃技の数々は、まるで踊っているかのように美しく。
悪しき黄金はその力の前に打ちのめされ、無様な悲鳴を上げて地に伏せる。エレノアにかけた言葉の効果が、歪んだ「願いの力」の弱体化として現れているのを、キャスパーはその手応えから感じ取っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ワタツミ・ラジアータ
お金は確かに大事ですけれど、金だけではお腹は膨れないでしょう?
そちらの女性や子供達は。
私達の様になれば話は別でしょうけれど。
そのままでは貴女も子供達もそちらの金色や私の様な存在になってしまうかもしれませんよ?
あと、お金が溢れてはこちらも商売がやりづらくなりますし?
心はあっても理解不足のため説得は苦手
真の姿
金魚型端末を回遊させる赤いドレス姿の機械仕掛けの女神
既に同じ姿をしたリサイクルショップ店主がこの世界にいるかもしれない
金色の手足をみると気分が悪くなるので早々に破壊させていただきますね。
周囲の残骸を取り込み自身を強化するが暴走の恐れもあり長時間活動不可
まともに動けなくなった所でソレがやってくる
…好き嫌いはいけませんよ。
まぁ、私も貴女には色々思う所はありますが。
二体の堕ちた機神によるSong of SteelBorneと鉄骨抄の連携
神殺しの重力にて威力を増加した超質量の砲撃を行う
あと未来の客を壊されても困りますし。
貴女にとって子供達は金と比較できる程度の物でございませんでしょう?
「お金は確かに大事ですけれど、金だけではお腹は膨れないでしょう? そちらの女性や子供達は」
金銭を至上の価値とする黄金マスカレイドに、ワタツミは淡々とした調子で事実を指摘した。人はカネのみに生きるにあらず――このままラッドシティが死体の金貨に埋め尽くされてしまえば、通常の有機生命体は生存の糧を失う。至極当然の問題点だ。
「私達の様になれば話は別でしょうけれど。そのままでは貴女も子供達もそちらの金色や私の様な存在になってしまうかもしれませんよ?」
歪んだ願いの果てに人を辞めることになっても良いのかと、彼女はエレノアに問いかける。これが彼女なりの精一杯の説得だった。心はあっても理解が不足している異星の機神には、細やかな機微や感情に訴えかけるのは苦手だ。ゆえに合理的に対象が被るであろうリスクを中心にして訴えかける。
「……私は、どうなってもいい……けど、あの子たちは……」
エレノアの心にまだ微かに残っていた理性が、ワタツミの言葉に反応する。エリクシルに洗脳されていても、孤児院の子供達に害を為すことだけは許せない――それが彼女の決して譲れない信念、あるいは執念であった。
「と、仰っていますが?」
「フンッ。カネさえあればそのくらい、後からどうとでもなるのよ!」
余計な口出しはするなとワタツミを睨み付け、黄金マスカレイドはそれ以上の説得を遮った。折角手に入れた願いの力を失うことを恐れたのだろう。だが逆に言えばその反応は効き目があったという証左でもある。あとは全力でコイツを抹殺すれば良いだけだ。
「あと、お金が溢れてはこちらも商売がやりづらくなりますし?」
ジャンク屋としての本音をぽつりと漏らしつつ、ワタツミは変形を始める。キャバリアという外装を装着した時とも違う、それは赤いドレスを纏った女神の姿。降臨を称える眷属のように、金魚型の端末が周囲を回遊する――これが異星の機神としての彼女の真の姿なのだ。
「金色の手足をみると気分が悪くなるので早々に破壊させていただきますね」
ひょっとすれば既にこの世界にも、同じ姿をしたリサイクルショップの店主がいるかもしれない。悪趣味な金色に塗れた黄金マスカレイドの姿に、嫌いな姉妹機の事を思い出した彼女は、珍しく嫌悪感を滲ませて告げた。
「姿が変わった程度であたしに勝てるつもり? 調子に乗るんじゃないわよ!」
黄金マスカレイドは負けじとダルク金貨の装甲で全身を覆い、【金色の巨人】に変身を遂げる。ギラギラ目が痛いほどの金ピカぶりだが、その威容は決して虚仮威しではない。リーチ・威力ともに強化された剛腕を、彼女は目障りな邪魔者めがけて振り下ろした。
「戦い方まで似ているとは奇遇ですね」
ワタツミも周囲の残骸を取り込み自身を強化しながら応戦。即席の増加装甲で攻撃を防ぎ、金魚型端末を操作して反撃を行う。その力は決して黄金の巨人にも劣ってはいないだろう――ただ、彼女がこの形態で戦えるのにはタイムリミットがあった。
(暴走の恐れもありますし、長時間活動は不可ですね)
真の姿と力を解放すればするほど、彼女は本来の心なき侵略機海に戻っていく。もしタガが外れてしまえば、ラッドシティを滅ぼす存在はエリクシルから彼女に取って代わるだろう。故に力をセーブしつつ戦わなければならないことが、常に全力を発揮できる敵との明暗を分けた。
「ハッ! 口ほどにも無いわね!」
黄金の巨人が機械仕掛けの女神を打ちのめす。装甲の隙間から黄金マスカレイドの勝ち誇った笑みが見えた。
反撃しようにもこれ以上続ければ本当に暴走してしまう――まともに動けなくなったワタツミだが、とどめを刺される間際、1機のレプリカントが忽然とやってくる。
「――なッ?! なによあんた!」
黄金の腕で巨人の拳を受け止めたそのレプリカントは、ワタツミの危機的状況に反応して起動した【異界祭文・錆びた真鍮歯車】で召喚された姉妹機。彼女は黄金マスカレイドの驚愕を無視して、悠然とした顔で「妹」に言った。
「正式仕様の後継機と聞きましたが、あまり良い状態ではありませんね。奇妙な夢ですが、貴女を助けるのも姉の役目ですかね」
「……大きなお世話ですが」
不本意そうに答えたワタツミであったが、共闘を拒むほど状況が見えていない訳ではない。「心」を持つ二体の堕ちた機神は、自らの身体を再構成して武器に変換すると、まったく同じタイミングで敵に反撃を仕掛けた。
「ちょっ、いきなり動きが変わった
……?!」
姉妹機ゆえの完璧な連携攻撃を受けて、黄金マスカレイドは防戦に回らされる。並の凶器よりも強靭かつ鋭い鉄骨抄と、【Song of SteelBorne】で変換された砲台によるコンビネーション。生半可なパワーや防御力だけで凌ぎ切れるものではない。
「あたしが欲しいのはカネで、鉄クズには興味ないのよ!」
「……好き嫌いはいけませんよ。まぁ、私も貴女には色々思う所はありますが」
焦りを声ににじませる敵に向かって、ワタツミは全力の一撃を。姉妹機が発する神殺しの
重力にて威力を増加した、超質量の砲撃が放たれる。大地が揺れるほどの反動と衝撃が戦場に轟き――黄金巨人の装甲が吹き飛んだ。
「な、がぁ……ッ
!!?!」
黄金巨人の内部から弾き出された黄金マスカレイドは、その勢いのまま壁面に叩きつけられて血反吐を吐く。
それを見やりながらワタツミは使い捨ての砲身を躯体から外し、散らばった金貨を使って次の武装の再構築に入る。類似能力を持つからこそ脅威となりうる商売敵を相手に、容赦する理由は欠片もない。
「あと未来の客を壊されても困りますし。貴女にとって子供達は金と比較できる程度の物でございませんでしょう?」
「……はいっ」
確認のためにもう一度エレノアに向かって問えば、彼女はさっきよりもはっきりと意志のある様子で頷いた。
敵の「待っ――」という叫びは砲声によってかき消され。機械仕掛けの女神が、エリクシルとマスカレイドの悪意を蹂躙する。
大成功
🔵🔵🔵
セリカ・ハーミッシュ
エレノアさんは洗脳されてしまっているんだね…
尚更、急がないとだね。
もう人の命で黄金を輝かせたりなんかはしないよ。
氷刃乱舞で戦場を解けない氷で凍り付かせて、
散らばっているであろう黄金の輝きを奪っていくね。
力の源を奪われ黄金マスカレイドが苛立ってきた所で
アイスレイピアで急所を突いていきたいかな。
黄金の輝きが弱まった所でエレノアさんに呼びかけて、
正気を取り戻してもらうよ。
人を救うのは人の心なのだという事を思い出してもらうね。
裕福を願うのは悪い事ではないけれど、
このままじゃ、願いはかなうどころか、子供達まで黄金になってしまうからね。
「エリクシルは願いは叶えない。奪って都合のいいように利用するだけだよ」
「エレノアさんは洗脳されてしまっているんだね……尚更、急がないとだね」
黄金マスカレイドの隣にいる女性を悲しげな目で見つめ、セリカはぽつりと呟く。もしラッドシティに甚大な被害が出てから正気に戻れば、彼女はきっと後悔するだろう。全ての元凶はエリクシルとマスカレイドにある、ただ孤児院の皆の幸せを願っただけのエレノアに罪を背負わせる訳にはいかない。
「もう人の命で黄金を輝かせたりなんかはしないよ」
「あんた達もしつこいわね……邪魔すんなって言ってんのよ!」
凛然とした気魄と共にアイスレイピアを突きつければ、黄金マスカレイドは逆上し、【金色の欲望】の光を身に纏う。都市国家中の人間を金貨に変えようとする欲望の力は底知れず、未だ尽きる気配を見せていなかった。
「死ねえッ!!」
黄金マスカレイドは強化された戦闘力と飛翔能力に物を言わせて、正面から猛スピードで殴り掛かってくる。
迎え撃つセリカは【氷刃乱舞】を発動。距離を詰められる前に氷の魔剣をかざし、無数の氷の刃を戦場全体に解き放つ。
「この氷の刃からは逃げられないよ」
「フンッ、こんなもの……!」
降り注ぐ氷刃に敵は怯みもせず、黄金マスカレイドはそれを手で払いのける。流石にただの犯罪者やミミックとは格が違うようで、大したダメージは与えられていない。しかしセリカの狙いは直接的な攻撃よりも、戦場の環境を変化させることにあった。
「よく見てみなよ、自分の周りを」
「なに? ……あっ! あたしの黄金!」
セリカの指摘でようやく敵は気付く。黄金マスカレイドがこれまでにかき集めてきたのだろう、辺りに散らばっていたダルク金貨。それが溶けない氷の刃を浴びてカチコチに凍りついている。歪んだ「願いの力」に並ぶ、敵の力の源を奪うことが彼女の目的だったのだ。
「よくもあたしのカネに手を出し……ッ!」
「遅いよ」
敵が苛立ちを見せた隙を狙って、セリカは自分から間合いを詰め、アイスレイピアで急所を一突き。研ぎ澄まされた零度の切っ先が黄金の肌を穿ち、輝きを色褪せさせる。「ぐぅっ?!」と敵が痛みでうずくまり、その力が弱まったタイミングを見計らって、彼女は声を張り上げた。
「思い出して。人を救うのは人の心だよ」
呼びかける相手はエレノア。悪しき存在の囁きに耳を傾けてしまった彼女を正気に戻すために、真剣な想いをこめて語る。自らの心を明け渡して他者に願いを委ねても、それが望み通りに叶う保障などなにも無いのだと。
「裕福を願うのは悪い事ではないけれど、このままじゃ、願いはかなうどころか、子供達まで黄金になってしまうよ」
「……あの子たちが……それは、だめ……」
孤児院の子供達について言及した瞬間、エレノアから反応が返ってきた。このままではいけないという事に、本人も心の奥底では気付き始めているのではないか。そう感じたセリカはもう一度力強い調子で呼びかける。
「エリクシルは願いは叶えない。奪って都合のいいように利用するだけだよ」
「ッ、黙りなさい……!」
黄金マスカレイドが口を封じようとするが、もう遅い。黄金の輝きと共に敵の力は明らかに弱まっている。
それはセリカの説得が功を奏し、エリクシルの「願いの力」も弱体化しつつある証だろう。彼女はふっと笑みを浮かべながらアイスレイピアを構え直し――鋭い刺突が、邪なる黄金を再び貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
シン・コーエン
エレノアさんが本来の自分を取り戻せるよう呼びかける。
「エレノアさん、このままでは孤児院の子供達も殺されて金貨にされてしまう。金貨は子供達を守らない、守るのは貴女の意志だ。
俺も援助する。だからそんな魔神とは縁を切るんだ!。」
相手の攻撃は第六感で読み、残像を生み出しつつダッシュを繰り返して幻惑し、見切りで躱す(オーラ防御も展開)。
大きくて攻撃力と手数は多いが、当たらなければどうという事もない。
UC:万物両断を使用。
天誓騎士として灼星剣に風の属性攻撃を纏い、斬撃波・衝撃波を放ちつつの2回攻撃(斬り下げからの斬り上げ)で相手を叩き斬る!
解決後は自身の報酬の中からエレノアさんに定期的に援助します。
「エレノアさん、このままでは孤児院の子供達も殺されて金貨にされてしまう」
エリクシルに洗脳されてしまったエレノアが本来の自分を取り戻せるよう、真剣な顔で呼びかけるのはシン。
たとえ正気を失っていても、子供たちへの愛情や守りたいという想いまで忘れてしまった訳ではないだろう。子供たちが真に必要としているのは、黄金ではなくその想いだ。
「金貨は子供達を守らない、守るのは貴女の意志だ」
「私の……意志……」
彼の言葉に反応して、エレノアの瞳に微かな光が宿る。ままならない運営の苦しさ故にエリクシルの囁きに耳を傾けてしまったが、彼女は決して金に執着する人間では無かったはず。説得の効果は確実に現れだしていた。
「俺も援助する。だからそんな魔神とは縁を切るんだ!」
「チッ。あんたに口出しする権利なんてないでしょうが!」
事件解決後は自身の報酬の中から定期的な援助も約束して、シンはエレノアに正気に戻るよう呼びかける。
そうなれば面白くないのは黄金マスカレイドだ。これ以上余計な事を吹き込まれる前に口を封じるつもりか、手元にあるダルク金貨をかき集めて【金色の巨人】を発動。金貨で構築した装甲で全身を覆い、力任せに殴りかかってきた。
「あんたも金貨に変えてやるわ!」
膂力、質量ともに大幅に増した重量級の一撃。第六感でその動きを先読みしたシンは、ダッシュでその場から飛び退く。直前まで彼のいた場所に黄金の拳が叩きつけられ、戦場が揺れるほどの衝撃が地面を陥没させた。
「逃げるんじゃないわよ!」
黄金マスカレイドは巨人の装甲から追加の腕を生やし、連続で殴りかかってくる。一発でも当たればダメージは折り紙つき――しかし、シンは残像を生み出しつつ戦場を走り回り、相手を幻惑して攻撃の的を絞らせない。
「大きくて攻撃力と手数は多いが、当たらなければどうという事もない」
巨体ゆえの大振りな打撃は、彼からすれば見切るのは難しくなかった。十分な「願いの力」があれば話はまた違っていたのかもしれないが、説得の効果で黄金マスカレイドの力も弱まってきている。金貨の腕をどれだけ振り回しても、扇風機のようにブンブンと空を切るばかりで、標的がまとうオーラにさえ触れられなかった。
「はぁっ、はぁっ……この……っ!」
「そろそろ反撃といこうか」
無益な攻撃のすえに敵が息切れし始めると、シンは灼星剣を手に攻勢へ転じた。サイキックエナジーを具現化した深紅の刀身に、天誓騎士の力で烈風を纏わせ。稲妻のようなステップで黄金巨人の懐に飛び込むと、必殺の【万物両断】を繰り出す。
「灼光の刃よ全てを両断せよ!」
「な……ッ!!!」
斬撃の衝撃波を伴った上段からの斬り下ろしが、ダルク金貨の装甲を真っ二つに切り裂く。その中から驚愕の表情をした黄金マスカレイドが姿を現すと、彼は即座に返す刀で追撃を仕掛け――初撃にも勝る勢いで灼星剣を斬り上げた。
「覚悟しろ!」
「がは……ぁッ!!?」
持てる技と力の全てをこめたシンの連撃が、黄金マスカレイドを叩き斬る。金貨と共に真っ赤な血飛沫を撒き散らしながら、敵はどうと背中から倒れ伏した。まだ息はあるようだが、その負傷は見るからに深手であった。
紫煙群塔と死の黄金を巡る戦いにエンディングが迫りつつあることを直感的に感じつつ、灼閃の剣士はその時まで油断する事なく、剣を構え直すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ポーラリア・ベル
自然に還った人をお金に変えるだなんて!
紋章の貧乏悪霊、カビパンお姉ちゃん(ユーベルコード)は許してくれないわ!
余った余分なお金のはけ口を自分とこに持ってこようとしてくるわ!
というわけで徴収の為、お姉ちゃんちょっと着物借りるね!【略奪】
マスカレイドさんの無限なダルク弾幕攻撃を、お姉ちゃんの上で、着物を【怪力】でいっぱいに広げて受け止め【略奪】るの!
たくさんたくさんー!ごめんねちょっと寒さでだるくなるけど(ダルクだけに)、我慢して危ない所隠してて。
射撃が途切れたら受け止めた金貨を包んで【怪力】で運んで、落とすわ!
汚いお金は汚い所へだよお姉ちゃん!
貴女の頭上に、ゴールドのゴール、どう?(落下)
「自然に還った人をお金に変えるだなんて! 紋章の貧乏悪霊、カビパンお姉ちゃんは許してくれないわ!」
世の摂理を歪めるエリクシルとマスカレイドの所業を、真っ向から糾弾するのはポーラリア。引き続き【冬を告げに来たよ(ねぇよ)】で召喚中のカビパンのほうは、言うほど怒っているようには見えないが――彼女が貧乏で割りとちゃっかりした所があるのは事実だった。
「余った余分なお金のはけ口を自分とこに持ってこようとしてくるわ!」
「……いや、それはなんかちょっとズルくない?」
その発言には思わず黄金マスカレイドもツッコミを入れるが、元より両者は相容れることのない敵同士。遠慮なんて無用という事だろうか。そっちがその気ならこっちも容赦は(最初から)するつもりは無いと、敵は手の平にダルク金貨を握りしめた。
「このカネは全部あたしのもの。1ダルクだってやらないわよ!」
強欲極まる発言とともに、手の平からあふれ出る【無限の金色】を弾丸のように射出する黄金マスカレイド。
ピカピカした金色の弾幕は見ている分には綺麗だが、当たれば痛いでは済まない。あわやピンチかと思われたポーラリア達だが、彼女は逆にこれを徴収のチャンスと捉えた。
「お姉ちゃんちょっと着物借りるね!」
「え?」
緊急時ゆえ相手の了解を得ずに、ポーラリアはカビパンの着物を強奪し、弾幕攻撃の前でいっぱいに広げる。
どうもソレは見た目以上に頑丈だったらしく、受け止められたダルク金貨は布地を貫通せずに中に収まった。
「たくさんたくさんー!」
「あっ、ちょっと返しなさいよ!」
黄金マスカレイドは慌てて射撃速度を上げるが、ポーラリアはその全てを着物一枚で受け止め、金貨を我が物としていく。敵がかなり弱ってきているのもあるのだろうが、それでも鉄壁の防御力だ。引き換えに割りを食っているのは下にいるカビパンだが。
「ごめんねお姉ちゃん、ちょっと寒さでだるくなるけど(ダルクだけに)、我慢して危ない所隠してて」
「仕方ないわね……」
冷え性で寒がりな悪霊雪女に、この季節の外気は冷たい。それでも大して文句を言わないのは信頼関係があるからこそか。「ちゃんと返してよね」と文句は言いつつも、カビパンは身を縮こまらせてダラダラしていた。
「くっ……このガキ、よくも……」
長い膠着状態の末に、先に音を上げたのは黄金マスカレイドだった。弾丸となる金貨は無限に供給されても、彼女自身のユーベルコードは無制限というわけでは無い。一定時間の攻撃後は射撃が途切れる制約があった。
「チャンスだわ!」
この時を待っていたポーラリアは、受け止めた金貨を着物で包み、パンパンに膨らんだ風呂敷のようにして敵の元まで運ぶ。「え、返しちゃうの?」とそれを見たカビパンは首を傾げたが、彼女は最初からそうするつもりだったのだ。
「汚いお金は汚い所へだよお姉ちゃん!」
体積で言えば自分の何倍もありそうな金貨の包み袋を持って、悠々と敵の頭の上まで飛んでいくポーラリア。
ここまで来れば彼女が何をするつもりか皆分かっただろう。黄金マスカレイドは慌てて逃げ出そうとしたが、もう遅い。
「貴女の頭上に、ゴールドのゴール、どう?」
「ちょ、待っ……ぎゃぶゥッ
!!?!」
溜めに溜めた大量の金貨の自由落下。その純粋な質量が黄金マスカレイドを押し潰す。金の亡者が金に倒されるのはある意味因果応報の末路とも言えよう――冬の妖精のさりげないシャレにツッコミを入れる余裕もなく、敵は無様な悲鳴を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
マジョリカ・フォーマルハウト
死体がダルク金貨になる…
まさか此奴は例外ではなかろうな
人を呪わば穴二つと申すであろう
さてエレノアとやら
この都市での暮らしは過酷だな
そんな中貴様の志は輝いておった
何を隠そうわしは光るものが大好物
貴様のような女には喜んで力を貸そう
敵の攻撃には此方も光の弾幕を撃ち相殺
掌へ向かう誘導弾を射出し続け防御しながら
奴への攻撃は別途UCで行う
そこまで金が好きならば
貴様自身を最も美しきもの…金塊へと変えてやろう!
錬金術で美しさを与え敵の体を変質させつつ粉砕
しめしめ…この金はわしの物よ
…ではなくエレノアにくれてやる
貴様の心の美しさに免じ
願いはわしが叶えてやる
二度と道を間違えぬ事だ
でなければ…次は貴様がこうなるぞ?
「死体がダルク金貨になる……まさか此奴は例外ではなかろうな」
よもやそんな筈はあるまいと、冷たい眼差しで黄金マスカレイドを睨めつけるはマジョリカ。ラッドシティの法則を歪め、死者が金貨になる世界を創り出した張本人が、自分だけは特別など余りに都合が良すぎるだろう。
「人を呪わば穴二つと申すであろう」
「ッ……なに考えてんのよ、あんたッ?!」
嫌な予感がした黄金マスカレイドは後ずさるが、今さら逃げ場もありはすまい。余裕ぶった態度の鍍金が剥がれれば、こいつは所詮金の亡者に過ぎない。重ねに重ねた強欲のツケを我が身で支払う時が来ただけのことだ。
「さてエレノアとやら。この都市での暮らしは過酷だな」
怯むマスカレイドから視線を外し、マジョリカはその隣にいる女性に呼びかける。闇医者に扮してこの都市を見てきたが、事件の影響を差し引いてもラッドシティ――特に下層の生活は楽ではないのが良く分かった。貧困と治安の悪さの中では誰もが自分のために必死で、弱者は真っ先に食い物にされる社会。
「そんな中貴様の志は輝いておった」
一から孤児院を立ち上げ身寄りのない子供を保護するのは、並大抵の信念でできる事ではない。下層において黄金よりも貴重な慈愛と献身の心は、魔女の目から見ても特別な光を放っていた。暗い海底から見上げても輝く星のような、そんな光にこそ彼女は焦がれる。
「何を隠そうわしは光るものが大好物。貴様のような女には喜んで力を貸そう」
「助けて……くださるの、ですか……?」
優しく朗らかなマジョリカの言葉に、エレノアがぴくりと反応を示す。困窮したところに差し伸べられる救いの手。状況だけを見ればエリクシルと同じ様だが、この魔女は自分が気に入った光り者をいたずらに破滅させはすまい。
「ッ……勝手に話を進めてるんじゃないわよ! その女の"願い"は、あたしが頂いたんだから!」
このままでは不味いと察した黄金マスカレイドは、手のひらから生み出した【無限の金色】の金貨を、邪魔者に向かって射出する。対するマジョリカもその攻撃に即座に反応、背後に浮遊している「星のかけら」から光の弾幕を撃ち、黄金の弾幕を相殺する。
「この女の願いがあれば、ラッドシティ中の人間をカネに変えられる……手放すわけないでしょうが!」
強欲塗れの暴言と共に、足を止めて金貨の高速射出を続ける黄金マスカレイド。しかしマジョリカとて一歩も譲る様子はなく、敵の手のひらへと向かう光の誘導弾を射出し続け、弾幕を防ぎきっている。それだけでなく、彼女は並行してユーベルコードによる反撃も仕掛けていた。
「そこまで金が好きならば、貴様自身を最も美しきもの……金塊へと変えてやろう!」
魔女の怒りに触れた者は呪われる。それは古くから語り継がれる伝承の通り。マジョリカの【げきおこののろい】は対象の若さや美しさを操作するユーベルコードだ。奪うだけではなく与えることも可能――例えそれが、ヒトの容姿の意味での"美しさ"でなかったとしても。
「あ、あたしの身体が……ひぃぃぃっ!?」
金貨を撃ち出す手のひらから徐々に、マスカレイドの体が変質していく。肌の色だけではなく肉や骨までもが完全な黄金に。その呪いはあっという間に肩まで広がると、金塊と化した腕はバキンと音を立てて砕け折れた。
「しめしめ……この金はわしの物よ……ではなくエレノアにくれてやる」
悲鳴を上げるマスカレイドとは対照的に、マジョリカは悪どそうな笑みを浮かべて金塊の腕を拾い上げると、エレノアにそれを渡した。この一部位だけでも換金すれば当座の孤児院の運営資金としては十分すぎるだろう。受け取った相手も目を丸くして驚いている。
「よろしいの……ですか?」
「貴様の心の美しさに免じ、願いはわしが叶えてやる」
正気に戻りつつあるエレノアに、マジョリカは魔女らしい威厳ある態度で応える。今回の件はこれまでの本人の行いや心がけに対する報いだと思えばよい。苦界にあっても善良さを失わぬ者には善き報いが与えられる――御伽噺のお約束のように。
「二度と道を間違えぬ事だ。でなければ……次は貴様がこうなるぞ?」
「……はい」
悪しき行いには悪しき報いを。それもまたお約束の内。強欲の果てに身を滅ぼした者の末路は、眼の前にいるマスカレイドが嫌というほど教えてくれよう。半身を黄金と砕かれた女は「ひいいぃっ」と無様な悲鳴を上げ、地べたに這いつくばっていた。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
……あー…説得…そうか…(苦悶に満ちた表情
「ご、ご主人サマ…本当に…!?」
事前
【情報収集】
エレノアの生活状況と大勢の子供達を養うのに必要な金銭
現行における就職口
ラッドシティにおける法制度と福利厚生状況
…なぜか妙に分かりやすいな
「この法制度作った人はご主人サマと思考回路が近いのかもね☆」
説得
金が回るには人が必要だ
買い物も人との取引なんだから人が死んだら意味がねー
そして今の孤児院が回るのに必要な金額は…これで足りるな?(金貨の山どどん
そいつが生み出す偽物じゃなく本物だ…此奴をやる(血涙
後…おめー一人で如何にかなるわけねーだろ
ちゃんと有志を呼べ
子供達も働ける歳の奴はいるだろうからちゃんと頼れ
全部自分でこなそうとするなばっきゃろー
「信頼できる働き口も教えてもらったぞ☆」(しゅたとリスト提示
はぁ…本来ならてめーから身包み剥ぎてぇが…碌な物じゃなさそうだな
「メルシーだって体の中で黄金を錬成出来るぞ☆」
てめーは黄金のう◎こじゃねーか!
UC発動
技能を駆使し飛び回って念動光弾を撃ち込み
鎌剣と短剣で切り刻む
「……あー……説得……そうか……」
黄金マスカレイドとの決戦が始まる少し前。エリクシルに洗脳された女性を説得するにはどうすれば良いか、カシムは首を捻っていた。案自体はもう頭の中にある。だがそれは、彼が苦悶に満ちた表情を浮かべるくらい、不本意なものらしかった。
「ご、ご主人サマ……本当に
……!?」
その内容は相方であるメルシーまでもが驚くほどらしいが、ラッドシティ崩壊の危機を救うためには迷ってもいられない。決心を固めた彼らは決戦の舞台に向かう前に、少しだけ「寄り道」をしていく事にする。
「ようはエレノアの生活状況と大勢の子供達を養うのに必要な金銭があれば良いんだろ」
現行における就職口とラッドシティにおける法制度と福利厚生状況。カシムがまず知りたいのはその二点だ。
行政関係の施設で尋ねればその辺りはすぐに分かる。ラッドシティは他の都市国家よりも比較的、統治機構が一元化されているのも助かった。
「……なぜか妙に分かりやすいな」
「この法制度作った人はご主人サマと思考回路が近いのかもね☆」
カシムが見間違えられた法務大臣とやらが、この件にも一枚噛んでいるのかもしれない。必要な情報をさっと頭に叩き込んだ彼は、要点をメルシーにまとめさせた後、いよいよ当初の目的地に向かう。多少時間は取られてしまったが、まだ間に合うはずだ――。
「いたよ、ご主人サマ☆」
「だな。おいおめー、聞こえるか!」
カシム達が現地に到着する頃には、戦いは佳境に入っていた。全身に黄金を纏った手負いのマスカレイドと、対照的に質素な身なりをした若い女性――あれがエレノアだと察した彼は、こっちを向けと声を張り上げる。
「金が回るには人が必要だ。買い物も人との取引なんだから人が死んだら意味がねー」
無人の廃墟と化した都市に金貨の山だけが残っても、売り買いする相手がいなければ無価値なのは自明の理。
カシムも大概強欲なたちだが、だからこそヒトとヒトの繋がりが価値を生むことを理解している。願いと一緒に正気までエリクシルに奪われたせいで分からないのだろうが、こんな真似では孤児院の子供達は救えない。
「そして今の孤児院が回るのに必要な金額は……これで足りるな?」
「……!」「それは……ッ!」
カシムはおもむろに自分の荷物袋を開き、金貨の山をどんと地面に積み上げる。眩いほどキラキラした黄金の輝きに、エレノアは無言で目を丸くし、マスカレイドは驚愕の顔を見せる。当座の孤児院の運営資金としては、十分過ぎるほどの額である。
「そいつが生み出す偽物じゃなく本物だ……此奴をやる」
「本当に……よろしいのですか?」
そう言ったカシムの表情は血涙を流さんばかりであったが、決心は変わらないようだ。ひいてはラッドシティを救うためとはいえ、盗賊が自らカネを手放すという決断をするのは並々ならぬ苦悩があっただろう。その気迫は相手にも伝わったのか、エレノアの瞳に光が戻ってくる。
「後……おめー一人で如何にかなるわけねーだろ。ちゃんと有志を呼べ、子供達も働ける歳の奴はいるだろうからちゃんと頼れ。全部自分でこなそうとするなばっきゃろー」
どんなに立派なヤツでも人間1人でできる事などしょせん限られている。カシムの言い方はぶっきらぼうではあったが、要するに自分だけで抱え込むなという事だ。もっと視野を広げてみれば、このラッドシティにも当てにできる福利厚生の制度はある。
「信頼できる働き口も教えてもらったぞ☆」
調べてきたリストをしゅたっと提示するのはメルシー。きちんとした仕事先があれば、カシムに貰った金貨がなくなった後も孤児院を続けられるだろう。善意の寄付に頼るよりかはずっと安定した暮らしを、子供達に送らせてやれるはずだ。
「ありがとう……ございますっ」
初対面の自分に対する過分なまでの厚意に、エレノアは深々と頭を下げる。重ねての説得により彼女の洗脳はほぼ解かれ、それに伴ってエリクシルの「願いの力」も大きく弱体化しているようだ。黄金マスカレイドはまだ健在だが、気魄も魔力も出現当初とは比べるまでもない。
「そのカネ……あたしに寄越しなさいよッ!」
今、彼女が考えているのは目の前にある金貨を自分のモノにすることだけだ。底知れぬ執念を【金色の欲望】の輝きに変え、飢えた獣のように猛然と襲い掛かる。その盗賊顔負けの厚かましさには、カシムも思わずため息が漏れた。
「はぁ……本来ならてめーから身包み剥ぎてぇが……碌な物じゃなさそうだな」
こいつから盗る価値のあるものはない。カシムは【メルシー&カシム『ロバーズランペイジ』】を発動して、メルシーと思考と魔力をリンクさせる。これにより神機の膨大なパワーを得た彼は、生身での高機動飛翔能力を獲得する。
「メルシーだって体の中で黄金を錬成出来るぞ☆」
「てめーは黄金のう◎こじゃねーか!」
相棒と漫才じみたやり取りを交わしながらも、驚異的なスピードで戦場を飛び回る彼らに黄金マスカレイドは追いつけない。「ふざけんな……ッ!」と激昂する敵に浴びせられるのは、二人分の念動光弾の弾幕であった。
「合わせろメルシー!」
「ラジャったよご主人サマ♪」
「ッ、やめ……ぎゃぁぁぁッ
!!?!」
神機の娘とその主はさらに3倍の速さに加速して、神速の域に達した鎌剣と短剣でマスカレイドを切り刻む。
目で追うことさえ叶わない、無数の斬撃の乱舞。耳をつんざくような悲鳴と共に、血飛沫と黄金の破片が戦場に撒き散らされた――。
大成功
🔵🔵🔵
エリュファシオン・アルティウス
最後にリプレイ希望
欺瞞だね…エレノアさんとの約束を守るつもりは無かった
そうですよね?
『お久しぶりです。エレノアさん…』眼鏡を外し髪型を崩した
彼女は気づいたようだ
『俺を助けてくれた貴女の事を忘れた事は無かった』
聞いた話では社長は昔、下層で暮らしていたらしい…荒れに荒れていたけど彼女に救われた事で何とか彼女に恩返しがしたいという事で会社を作ったらしい
『私の社員達を予め孤児院に待機させていなかったら…危なかった』スマホで孤児院にミミックがいる所を見せる
(社員と社長は猟兵です)
元からそのつもりだったか…虫酸が走る
『俺の恩人の大切な場所を…覚悟しろ…』
攻撃はオーラ防御に念動力で振動させて刃物の様に切り裂く
『…死ね』
社長は銃を撃つ…正確に敵に当てていた
地形を利用し敵の背後を取りナイフで切り裂く
社長は足払いで転ばせ怪力で殴り飛ばす
社長!オーさん!
『覚悟しろ!クソ野郎!』
UC発動
ナイフを敵に当てて総攻撃をかけた
社長はどうしてここに?
『孤児院の援助に来たんだ…まさかこんな事になるとはおもわなかったがね…』
「クソッ、クソッ、クソッ……なぜ邪魔をする?! あたしはただ、この女の願いを叶えようと……!」
「欺瞞だね……エレノアさんとの約束を守るつもりは無かった」
激戦のすえに絶体絶命の窮地まで追い詰められた黄金マスカレイドは、見苦しい暴言と言い訳を喚き散らす。
それを遮ったエリュファシオンは、怒りの籠もった鋭い眼光を向ける。こいつはエレノアの願いを利用しただけで、本人の意志を尊重するつもりなど欠片もなかったのだと。
「そうですよね?」
彼女がそう言うと、背後から1人の男性が姿を現す。異変解決の最中に下層で出会った商家の社長――名前はマック・カルジェルと言ったか。彼はエレノアを見ると懐かしそうに目を細め、穏やかな調子で声をかけた。
「お久しぶりです。エレノアさん……」
「あなたは……」
マックが眼鏡を外し髪型を崩すと、エレノアも彼のことに気付いたようだ。エリュファシオンが聞いた話によると、この男はかつて下層で暮らしていたらしい。貧しさのせいで荒れに荒れていたところを、エレノアに救われて心を入れ替えたそうだ。
「何とか彼女に恩返しがしたいという事で、会社を作ったらしいよ」
かつての下層の荒くれ者がここまで立派になるとは、当時のエレノアも想像できなかっただろう。彼女が下層の人々に対して捧げた慈愛と献身は、巡り巡って彼女の元に返ってきた。時にはバカにされようとも、彼女が行ってきた事は決して無意味では無かったのだ。
「これを見て」
エリュファシオンはスマホの画面を起動し、エレノアが運営している孤児院の画像を見せる。ここに来る前に撮影してきたものだ――そこには、建物の中に押し入ろうとするミミックの姿がはっきりと映し出されていた。
「私の社員達を予め孤児院に待機させていなかったら……危なかった」
マックの根回しのお陰で阻止されたものの、それは黄金マスカレイドがエレノアの大切なものに危害を加えようとした動かぬ証拠だった。そもそもの世界法則の改変にエリクシルが「例外」をわざわざ用意するはずもない。猟兵達の介入がなければ、ラッドシティの住人は孤児達を含めて一人残らず金貨になる予定だったのだ。
「あの子達に……手を出したのですか
……?!」
「そっ……それが何よ! あんたの願いは『カネが欲しい』でしょ!? ガキをカネに変えて何が悪いのよ!」
生命体の願いを表面的にしか捉えず、本質を無視して曲解する。まさにエリクシルらしい邪悪な所業を、この期に及んでも黄金マスカレイドは言い訳する。愛しい子供たちに手を出されたことが最後の切っ掛けとなって、エレノアの洗脳は完全に解けたようだ。
「元からそのつもりだったか……虫酸が走る」
「俺の恩人の大切な場所を……覚悟しろ……」
もはや弁明の余地もない悪行と醜態に、エリュファシオンとマックの怒りも頂点に達していた。「願いの力」も失われた今、敵の実力は単なるいちマスカレイドのレベルまで落ちている。これ以上戦いを長引かせる理由もない――決着をつける時だ。
「くっ……来るなッ!!」
敵は【金色の欲望】の光を纏って金貨を飛ばしてくるが、エリュファシオンは念動力のオーラでそれを防ぐ。
微細な高周波の振動を発するオーラは、刃物のように触れるものを切り裂き、敵の攻撃を寄せ付けなかった。
「……死ね」
直後にマックが紫煙銃を撃つ。猟兵であるエリュファシオンには及ばないものの、彼もこの都市国家で揉まれてきた腕利きだ。凝縮された紫煙のエネルギーは紫色の光線となって、正確に黄金マスカレイドを撃ち抜いた。
「ぎゃッ?!」
痛みでマスカレイドが金貨を取り落とした一瞬のうちに、エリュファシオンは下層の壁と天井を蹴って走る。
地形を利用してまんまと背後を取った彼女は、黒塗りの「シャドウナイフ」で敵の背中を斬り裂いた。黄金に塗られた肌が裂け、真っ赤な血潮が刃を濡らす。
「社長! オーさん!」
「覚悟しろ! クソ野郎!」「オォォー!」
間髪入れずにエリュファシオンは【逆行奥義・総攻撃】を宣言。仲間達と呼吸を合わせた総攻撃を仕掛ける。
マックが足払いで黄金マスカレイドを転ばせ、力任せに殴り飛ばし。地面に倒れたところをオーさんが全速力で轢き飛ばし。壁に激突してボールのようにバウンドした先で、待っているのは漆黒の刃――。
「ひっ、やめ……やめて、許して、幾ら払えば……ぎゃあぁぁぁぁぁッ
!!!!!?!」
最期の最期まで金に頼った命乞いを遺して、黄金マスカレイドは心臓を貫かれ、絶命する。
その骸は彼女自身がもたらした世界法則によって金貨の山に変わり――紛れていた紅いエリクシルが砕ける。
ラッドシティを崩壊に誘わんとした万能の魔神の陰謀は、ここに
終焉を迎えたのだ。
「社長はどうしてここに?」
「孤児院の援助に来たんだ……まさかこんな事になるとはおもわなかったがね……」
戦いを終えたエリュファシオンとマックは、ふうと一息ついて互いの健闘を労う。未曾有の危機ではあったがラッドシティもじきに元の平穏を取り戻すだろう。この一件で結果的に多くの危険な犯罪者が逮捕された事が、下層の治安改善に繋がれば良いが。都市自体が抱える闇も、少しずつ良くなっていく事を願うばかりだ。
「私の過ちから都市を救ってくださり……本当に、本当にありがとうございます。この恩は一生、忘れません」
無事に正気を取り戻したエレノアは、猟兵ひとりひとりに対して何度も、心からの感謝とお礼を伝えていく。
この後、援助を行った猟兵達のお陰もあり、孤児院の運営は無事持ち直し、子供達の生活も安定したという。
死の黄金に滅ぼされようとしていた紫煙群塔。猟兵達の活躍によって守られた未来は、こうした子供達の手で紡がれていくのだろう――。
大成功
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