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安寧を謳う樹

#エンドブレイカー!


 原生的な湿地帯に霧が立ち込める。湿った空気の向こう側から、水のせせらぎや小さな生き物達の息遣い。そして、風が背の高い草を撫でる音だけが聴こえてくる。
 ぱしゃ、と軽い音と共に水が弾ける。小さな生き物が、何処かから捕まえてきたのであろう小魚を抱え、小走りで湿地を通り抜けてゆく。
 人間の子供ほどのサイズのそれは全身が薄い桃色をしており、まぁるい頭につやつやの黒い瞳を持つ。外耳は見当たらないが、代わりに花弁のような鰭が走る度にいくつも揺れていた。知識のある者が見れば、それを二足歩行のウーパールーパーだと称するだろう。
 その小さな生き物はやがて、小さな洞窟へと辿り着く。そう深くはない洞窟だが、外の天気が曇り気味なせいか異様に影が落ちた空間だった。小さな生き物は構わず奥へ歩みを進め、そして〝それ〟の目の前へとやって来る。
 それは木のようにも見えた。光源の少ないこの空間において輝く樹皮は、まるで鉱石のようだ。目の前には木を削って作られた台座が設けられていて、小さな生き物はそこに抱えていた小魚を並べる。他にも花や、壺に溜められた水などが並べられており、拙いながらもそれは祭壇のようにも見えた。
 全ての小魚を並べ終えた小さな生き物は改めて、祭壇の前に座り込み、その小さな両手を合わせて祈った。

「どうか、村がいつまでも平和でありますように」



 新たな世界が発見されて暫く経つ。これまでとは少々異なり、無数の小さな世界が集まる……謂わば世界の群体のような場所なのだと聞く。オブリビオンの脅威に晒されていない代わりに、また別の敵との戦いを余儀なくされている世界なのだと、猟兵達は把握していた。
「エンドブレイカーと名乗る連中と合流して少し経つが……まあ、世界の造りがちょっとばかり特殊なだけで、俺達がやることはいつもと変わらない」
 杜・泰然(停滞者・f38325)は集まった猟兵達を、常と変わらず光を通さない黒い瞳で見渡しながら話を始める。彼が見た予兆によると、そのエンドブレイカー達の世界で不穏な動きを見せる者が現れたという。
「バルバやピュアリィと呼ばれるやつらは都市国家で暮らす者もいるが、獣人の性質もあってかまだ森や洞窟で暮らしているやつらも多い。今回、あんた達には都市から離れた湿地帯で暮らす、とある一族の集落へ向かってほしい」
 そこで、水棲生物の姿をしたバルバ達が静かに暮らしている〝筈だ〟と泰然は語る。
 彼が断定できないのには勿論、理由があった。近頃その集落で、獣神と呼ばれる存在が崇められるようになったらしい。信仰そのものをとやかく言うつもりは無いし、害が無いのであればそれで話は終わる。
 だが、その獣神がバルバ達の信仰を集め始めた頃、集落の様子が途端に変わってしまったのだという。穏やかな気性で平和を愛する民族である彼らが闘争を始め、より強い者が弱い者を支配・管理するような構図が完成しつつある。異常事態であるということは明白だった。
「十中八九、原因はその獣神だ。大方、エリクシルだかマスカレイドだかがそいつの正体だろうな」
 その可能性が高いことを、この場の誰もが確信する。人々の願いを歪んだ形で叶えるとされるエリクシル、そしてその配下とされたマスカレイド。おそらく、住民の誰かの願いを聞き届け、叶えた結果がそれなのだろう。

「そういうわけで、今回の仕事はその獣神とやらの討伐だ。だが、たぶん最初に相手にするのは現地のバルバ達になる」
 彼らは獣神の力の影響で理性を失っている。同族内での闘争を繰り返していることから、説得で落ち着かせることは難しい。となれば、まずは彼らと戦い、自分達の方が強者であると認めさせるしかないだろう。そうすれば説得の余地はいくらでも出てくるし、倒した時点で獣神の支配から抜け出せる者も出てくる筈だ。
「本来は穏やかで、人にも好意的な種族らしい。協力を取り付けることができれば獣神との戦いも多少は楽になる。だからバルバ達は間違っても殺すなよ」
 念押しに猟兵達が頷くのを確認して、泰然は転移へと移行する。猟兵達が瞬きをする、その一瞬の間に周囲の光景は大きく変わっていた。

 空が曇っているのか辺りは薄暗い。湿気を含んだ空気が漂い、足下は薄く水が張っている。背の高い草が生い茂っているが、普通の人間ほどの大きさがある者や浮遊できる者であれば遠くを見渡すのは容易い。やや霧が出ているが、行動を大きく制限されるほどではなかった。だが足踏みをすれば地面は柔らかく、巨体の者は足を取られそうな泥濘になっている。

 ぱしゃ。微かな水音を察知して、猟兵達は振り返る。いつの間に猟兵達を見つけたのか、そこには小さな生き物の群れが現れていた。人間の子供ほどのサイズのそれらは全身は薄い桃色で、まぁるい頭をしている。側頭部の鰭はひらひらと揺れ、つやつやの黒い瞳はキッと吊り上がっていた。普段はつぶらな瞳をしているのであろう、水棲生物型のバルバ達は一斉に猟兵達へと襲い掛かった。


マシロウ
 閲覧ありがとうございます、マシロウと申します。
 今回はエンドブレイカー!世界での事件をお届けいたします。「獣神として崇められるエリクシルを討伐し、理性を奪われたバルバ達の集落に平和を取り戻す」のが目的となります。参加をご検討いただく際、MSページもご一読ください。
 当方、過去作は未履修のため第六猟兵およびエンドブレイカー!のサイト内で確認できる以上の情報はリプレイに反映できません。ご注意ください。

●第一章
 獣神によって理性を失ったバルバ達を相手にした集団戦です。彼らは速攻で倒せば理性を取り戻し、猟兵達に対して協力的になります。

●第二章
 バルバ達が獣神と崇めていた存在はエリクシルでした。住民達の願いを歪めて叶えようとするエリクシルとのボス戦です。

●第三章
 エリクシルを倒すと、穏やかな性質を取り戻したバルバ達からとても感謝され、リヴァイアサン大祭(クリスマスのお祭)へと招かれます。平和になった集落でお祭を楽しんでください。原始的な生活をしているバルバ達なので都市部のような派手なお祭ではありませんが、それっぽい範囲内で自由にプレイングしてください。
 時期的にギリギリなため、リアル新年を迎えた後になったら申し訳ないです。

 オープニング公開直後からプレイング受付を開始いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ウーパーイーター』

POW   :    ウーパーウイング
【ウーパーの翼】を生やし、レベル×5km/hの飛翔能力と、レベル×5本の【魅了光線】を放つ能力を得る。
SPD   :    ウーパーオーラ
体内から常に【ピンクのオーラ】が放出され、自身の体調に応じて、周囲の全員に【絶望的な無気力】もしくは【制御不能の食欲】の感情を与える。
WIZ   :    ウーパークラッシュ
自身の【額】を【超硬質】化して攻撃し、ダメージと【スタン】の状態異常を与える。
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キャスパー・クロス
おっと、危ない危ない。かなり足場が悪いね
泥濘を避けてスマートに【空中浮遊】し、浮いたままバルバ達を見やり…

「うっひー、かわいい~~」

怒った小動物みたいな愛くるしさに、今からこれと戦うのかぁ…って、困ったような変な笑顔になっちゃう
ま、でも切り替えていきましょう

可愛いは良いんだけど、あの身体から出てるピンクいのは…
私はエンドブレイカー、【世界知識】はあるつもり。あれは確か、食欲と無気力のオーラ!
要するに触れたら不味いやつ…だね

相手は空は飛べないだろうから、【空中戦】でいくよ
風を繰り、得意の【推力移動】【空中機動】をもって宙空で身体を捻り、回転し

「瑠璃色っ……!」

《瑠璃色は清か》を発動!
相手のオーラが届かない安全地帯から、戦場全体のバルバ達へ烈風を叩き付けるように攻撃!
四方八方からの暴風で動きを止め、オーラが飛散しないよう封じ込める
最後は【体勢を崩す】ように風で足元を掬って

「ごめんね!」

あの身体を転ばせたなら、そのまま頭と地面がごっつんこでしょう
死にゃしないと思うけど…正気に戻ってくれるかな?



 空中浮遊で泥濘から足を離した矢先の襲撃で、キャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)は多少の驚きを見せる。けれど、襲撃者の姿が予想よりもずっと愛らしかったものだから、思わず気の抜けた声を上げてしまった。

「うっひー、かわいい~~」

 水棲バルバ達がどれだけ厳めしい表情をしていようと、小さな体の丸いフォルムまでは変わりようが無い。小動物の群れというのは、どうしても可愛く見えてしまう。例えそれが、獰猛な生物であったとしてもだ。
 竹槍のような武器を構える者、素手で立ち向かう者、個体によって戦闘スタイルは異なるらしい。「みゃー!」とも聞こえる雄叫びを上げながら、複数のバルバ達は一斉にキャスパーを取り囲んだ。バルバ達の体から、その体色に似た色のオーラが昇るのをキャスパーは見逃さない。

「あれは……触れたら不味いやつ、だね」

 未だ攻撃行動こそ取ってきてはいないが、既に戦闘は始まっている。バルバ達のオーラの正体が何であるか理解したキャスパーは、地から少し離れる程度だった高度を更に上げた。4mも上がれば、体の小さな彼らの攻撃は殆ど届かなくなる。だが、更に強いオーラや投擲武器等を持ち込まれる前に勝負をつける必要があった。
 薄曇りの湿地帯に蒼穹は見えない。それでも、風は何処からでも生むことができる。キャスパーが宙で大きく体を捻ると、その回転に巻き取られるように空気がうねり、強い風が生まれた。

「瑠璃色っ……!」

 ユーベルコードの発動と同時にキャスパーが生み出した風は、その体術に呼応するようにバルバ達目掛けて吹き荒れ、叩き付けられる。敵味方を識別する風は、バルバ達だけを確実に狙って襲い掛かった。彼女にとってはダンスに等しくとも、対峙した者からすれば嵐のようなもの。日頃から強い風に煽られることに慣れていないのであろうバルバ達は逃げ惑い、ある者は風に直撃してぽよんとゴム鞠のように地面へ転がってしまった。
 風は衰えることなく周囲に吹き荒れる。その場を離脱しようとするバルバ達を一匹残らず捕らえれば、その体から放たれるオーラも殆ど封じることができた。
 群れで捕らえられたバルバ達は、見えない力に抗うように手足をジタバタさせている。これ以上のダメージを与える必要は無い。だが、冷静になってもらうためにもう一撃。キャスパーは両手を合わせ、眉尻を下げて苦笑した。

「ごめんね!」

 謝罪の言葉と共に、人差し指でくるりと円を描く。その動きに合わせて一陣の風が吹いたかと思えば、それは捕らえたバルバ達の足を掬って次々と転倒させていった。地面に頭をぶつける者や、同族同士でぶつかり合う者。それぞれが暫し、目を回したようにふらふらと頭を揺らしている。

「……う?」

 内一匹が、ぱちくりと黒い瞳を瞬かせる。先程までのような敵意は感じられず、本来の姿なのであろう愛らしい表情で周囲をきょろきょろと見渡した。

「ぼくたち、どしてこんなとこに?」
「わ! 頭にタンコブできてるよー」
「みてみて、お空にひとがいる」

 わちゃわちゃと騒ぎだすバルバ達は空から様子を窺っていたキャスパーに気付くと、手を振りながら「おーい」と呑気な声を掛けてくる。既に誰も武器を手にしていない。どうやら、自分達が今まで何をしていたのかすらはっきりと覚えてはいないようだ。どのように説明して、どのように協力を仰ぐか、悩むところではあるが……。

「それはそれとして、やっぱりかわいい~~~」

 獣神との決戦までの短い時間、とりあえずこの水棲バルバ達を愛でるべくキャスパーは一旦地上へと舞い戻ったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上野・修介
※アドリブ連携歓迎
正直なところ、遣り辛い。(状況的にも、相手の見た目的にも)
とはいえ、四の五の云って場合でも無し。
「さて、どうしたモノか……」

調息と脱力、己と場と氣の流れを観据える。
バルバ達の数と配置、周囲の地形状況を確認。

UC起動で自身の行動力を底上げ。
同時に敵の『氣』の流れを阻害し行動を鈍化。

姿勢は低く、時折草むらに隠れる等しながら常に動き回って撹乱。
瞬間的に足裏から氣を放出しそれを足場にすることで泥濘による機動力低下を回避。

また石を拾い、手の中で砕いて礫を精製。
指弾の要領で飛ばし、動きを牽制、或いは額と羽根に当てて昏倒させる。
直接攻撃は極力避けるか、やむを得ない場合は十分に手加減する。


御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

みずべ いのち
屍も宝石も、不似合いなれば…

地形を利用し水属性魔力を増幅
先制水雷属性UC最大範囲展開
強化効果を味方にも付与

足場習熟悪路走破残像迷彩フェイント忍び足
音もなくゆるゆると接敵

射程に入り次第念動怪力衝撃波水雷属性UC
フェイント二回攻撃を交え範囲ごと吹き飛ばす
マヒ目潰し捕縛
閃光と感電で無力化

敵の攻撃を落ち着いて見切り
躱せるなら足場習熟残像迷彩陽動フェイント忍び足
最低限の動きで躱し
さもなくば念動怪力衝撃波オーラ防御等で受け流す

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃追撃

うん いい
黙って立っているだけで、向こうから来てくれる

少し、落ち着いて…ね♪

おやすみなさい
おやすみなさい



 上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は遣り辛さを感じていた。湿地帯というロケーションは勿論のこと、小動物と呼んで遜色ない生物を相手取らなければならない現状に。だが、修介の内心などお構いなしに、水棲バルバ達はじりじりと距離を詰めてくる。

「さて、どうしたモノか……」

 誰に聞かせるでもない呟きと共に呼吸を整え、自身の姿勢を最適なものへ。氣の流れは既に見えている。迫ってくるバルバ達の数がやや多いようだが、決して対応できないほどではない。
 それを確かめたところで、周囲の氣を操作する。バルバ達も見えない〝何か〟の動きを感じたのか、慌てたようにキョロキョロと辺りを見渡していた。気付いたのならちょうどいいと言わんばかりに、修介はバルバ達を覆う氣の流れを重く鈍くさせる。この時点で、既に数体のバルバは戦意を失っているかのように見えた。
 すると、氣の流れに抵抗しようと暴れる個体が「むー!」と声を上げる。ただの檄ではない。その雄叫びと同時に頭部で揺れる鰭が徐々に肥大化し、大きな翼のような形を取ってゆく。

「飛行形態か? ますます遣り辛い……」

 翼と化した鰭を羽ばたかせるバルバを前に、修介が苦虫を嚙み潰したように呟く。が、彼のすぐそばでその様子を観察していた多腕の少女造形、御堂・伽藍(がらんどう・f33020)はひどく落ち着いていた。柘榴色の瞳は、飛行形態のバルバから視線を外すことはない。

「大丈夫。あれなら高く飛べない」

 彼女も既にユーベルコードを発動しており、小さな体を守護するように八つの紫電の剣が示現していた。
 それを宣戦布告と取ったのか、翼を得たバルバが二人へ襲い掛かる。確かに伽藍が言う通り、あまり高く飛ぶことはできないようだ。その上、飛ぶこと自体に慣れていないのか動きもたどたどしい。的が大きくなっただけ逆にやり易くなったのかもしれない。
 修介は上空からの攻撃を回避すると、背の高い草の陰に身を隠す。足下に転がる小石を掴んで粉々にすると、相手の死角からそれを礫として放った。
 隠れての攪乱に徹する修介に反して、伽藍は音も無く泥濘の上を歩く。確かに歩いている彼女の足下には僅かな波紋すら広がることは無い。まるで、そこに存在していないかのような気配の遮断。バルバ達は伽藍が残した残像でも見ているのだろうか、明後日な方向へ向けて威嚇している。だから、至近距離までの接近を許してしまうのだ。

「八柱の死神、我等の守護に降り臨む」

 伽藍の幼い声が薄暗い湿地帯にいやに響く。放たれるのを今か今かと待っている八つの剣の切っ先が、バルバ達へと向けられる。辺りの氣に電流のような痺れが走るのを、身を隠している修介の方でも感じられた。

「やくもたつ、いずも」

 その声を合図に剣から紫電が走る。水場や宙を龍のように這うそれは、器用にバルバ達だけを狙って瞬いた。当たればどうなるのか想像がついたのか、バルバ達は慌てふためいて逃げ惑うが、速度は紫電の方が上だ。そのまま囚われた個体は感電したのか「み"っ!」と声を上げて湿地帯に倒れ伏す。これでもかなり加減した方なのだろう。それでも、迸る電流に次々と倒れてゆく彼らの姿は少し哀れだ。
 だが、哀れむ時間もそう長くはない。運よく紫電から逃れた個体が数匹、伽藍の方へ突撃しようとしているのを修介は見逃さなかった。

「これで正気に戻ってくれたら有難いが」

 拳の中で砕いた石を指弾の要領で連射すれば、ちょうど修介に背を向ける形で走っていたバルバ達の後頭部へ全弾が直撃する。氣の巡りを利用しているとはいえ、こちらもかなり手加減をしている。痛くはあるだろうが、命を奪うほどではない筈だ。

「痛そう」
「感電よりは良いですよ。……いや、気を失えるなら感電の方が良いのか?」

 伽藍のコメントに真面目に返すものの、修介はまたもや真面目に考え直す。そんな悠長な会話ができるぐらいには、戦況は落ち着いている。周囲のバルバ達も、気絶する者や転んで難儀している者ばかりだ。
 やがて、修介の礫で目を回していたバルバが我に返る。先程まで厳しく吊り上げていた瞳はくるりと丸く開き、少し腫れてしまった頭を小さな手でさすりながら修介と伽藍を見上げた。

「だれ?」

 きょとん、と首を傾げて尋ねるバルバの表情どころか、その全身から既に敵意は喪失している。どうやらダメージを受けたショックで獣神の呪縛から解放されたらしい。

「どうやらもう正気、みたいですね」
「うん、良かった。ほかの子達も、目が覚めたらきっと元通り」

 未だ状況が飲み込めていないバルバをよそに、二人は最後の警戒を解く。奇襲の心配も今は無さそうだ。修介は戦闘態勢を解く代わりに、足下に佇んでいるバルバに目線を合わせるよう屈む。

「俺達は猟兵です。あなた方を操っていた存在を倒しに来ました。できれば、協力をお願いしたいのですが……」
「いいよー!」
「即答だな」

 あまりの話の早さに修介は戸惑う。だが、恐らく獣神は彼らのこの純粋さに付け入ったのだろう。それを思えば、やはり放置できる問題ではなさそうだ。

「眠ってる子達、どうするの?」
「運んでやりたいところですけど、集落も今は荒れているという話ですからね」

 伽藍と修介で相談した末に、気絶しているバルバ達は外敵に見つかりづらいであろう物陰で寝かせておくことにした。目が覚めればきっと、異変に気付いて集落に戻るなり加勢に来るなりしてくれるだろう。それまでは彼らの身の安全が優先だ。

「おやすみなさい、おやすみなさい」

 運び終えたバルバ達に、伽藍が子守歌のように囁く。揺り籠と呼ぶにはあまりに硬い岩陰だけれど、偽りの神の支配から逃れた彼らにとっては、きっと何よりも安心できる寝床だろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハリー・オッター
初の依頼だし、一人で行ってみるかな??
うーん、シッチャカメッチャカじゃん。
コレをどうにかしないといけないってことでいいんか??
時間かからなければいいけど。

カワウソ、そのまま突っ込もうとするが、仲間内で乱闘する図を見て、考えを変える。
「やめやめ、仲間内で喧嘩なんてやめるじゃん!!」
「こうなったら、武装パーツ6番、喰らえバスタービーム!!」
空飛んでビーム出しても、撃ち返して撃墜させる。
「原因あるなら、これからどうにかするじゃん…」



 目的の湿地帯へ転送完了されるや否や、ハリー・オッター(カワウソ・f39388)は件の水棲バルバ達が暮らすという集落へと走った。幸い、この辺りは背の高い草が生い茂っており、四つ足で走ればハリーの姿を完全に隠してくれる。そのおかげで、集落の外を見回るバルバ達に見つかることなく目的地へ辿り着くことに成功した。
 集落の様子は〝悲惨〟の一言に尽きる。強い個体が弱い個体を徹底管理し、それに反発しようものなら酷い折檻が加えられる。本来であれば平和な群れを築く種族だと聞いていただけあって、そのギャップは受け入れ難いものだった。

「うーん、シッチャカメッチャカじゃん。コレをどうにかしないといけないってことでいいんか??」

 物陰から集落の様子を窺っていたハリーは頭を悩ませた。彼と同じく真っ先に集落を目指した猟兵達も何名か待機している。制圧しろ、ということであれば話は早いが、今回はそうではない。あまり手荒な手段ではなく、尚且つ説得の余地が出てくる程度に力を示す……となると難しい。

「でも結局、今のアイツらって強さが全てなんだろ? じゃあ正面から突っ込んでも良い気が……」

 ハリーはそこまで言い掛けて、言葉を止める。集落が何やら騒がしい。遠目に様子を見れば、どうやら管理される側だった若い個体が、不満を爆発させて暴れているようだ。

「村の和をみだす反乱ブンシ!」
「はいじょだ!」

 管理側のバルバ達が武器を持ち出し、それに応戦する。騒ぎは徐々に大きくなり、集落全体に混乱が伝播していった。それを見て黙っていられるほど、ハリーも非情ではない。

「やめやめ、仲間内で喧嘩なんてやめるじゃん!!」

 作戦、という言葉は一瞬で頭から消え失せた。愛用の重武装を展開すると、大きな土台で安定させた固定砲台へと姿を変える。大きな発射口にエネルギーが集束する速度は、バルバ達がその異変に気付くよりもずっと速かった。

「こうなったら、武装パーツ6番、喰らえバスタービーム!!」

 ハリーの声を合図に、集束したエネルギーは一束の光線となり集落へ向けて発射される。どの個体を狙ったものでもない。内輪揉めを止めさせる、威嚇射撃のようなものだ。バスタービームは一部地面を抉り焦がしはしたが、先程までの内紛は狙い通りに収まったようだ。その分、バルバ達の意識はこちらに向いてしまったわけだが。

「シンニュウ者だ!」
「やっつけろ!」

 声を上げるバルバ達がその頭部の鰭を大きな翼へと変形させて向かって来るが、こちらは飛び道具。間髪入れず用意された次弾は、先程よりも大幅に威力を下げたものだ。それを飛行形態をとるバルバ達目掛けて発射し、一匹一匹を撃ち落としてゆく。「わー!」と気の抜けた叫び声を上げながら落下し、地面に転がったバルバ達の何匹かは正気を取り戻しているようだった。
 勢いでやってしまったことではあるが、彼らの一部だけでも獣神の力から解放できたのなら結果オーライなのだろう。

「原因あるなら、これからどうにかするじゃん……」

 ハリーは武装を解除し、倒したバルバの中でも手近な者に手を貸しに向かう。彼らの正気を取り戻したのならば、あとひと息。彼らの協力の下、獣神を打倒するだけである。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜彩・ユコ(サポート)
こんにちは、桜とお茶の時間が大好きな錬金術士のユコです

パンやお菓子なんかも自分で作ってるよ!
おいしいお茶とおいしいお菓子があればみんな幸せ、そんな世の中であればいいと思いません?

ゆるゆるっといこうよ 焦ってもいいことなんてないよ

ほらほら席について、おいしいお茶が冷めちゃうよ?
ふふっユコお手製のジャムも出しちゃおっと
ユコのおすすめは桃
おいしくできたんだよ

ユコは、指定したユーベルコードをどれでも使用するよ
他の猟兵に迷惑をかける行為と公序良俗に反する行動は一切しないよ
ユーベルコード、略してユコ(思案顔)…なんちゃってなんちゃって

あとはおまかせします
よろしくおねがいします



 水棲バルバの集落は混乱を極めていた。同族間の争いを止めるための砲撃を皮切りに猟兵達が集落へとなだれ込み、バルバ達を獣神の支配から解放しようと奮起している。桜彩・ユコ(桜彩る錬金術士・f38931)の姿も、まさにその渦中にあった。

「大変なことになっちゃった……でも、バルバさん達を正気に戻せば良いんだよね?」

 荒事をあまり好まない彼女からすれば、この状況はとても不利だ。けれど、今こうして戦っているバルバ達も元々は穏やかな種族だと聞く。元通りになればきっと仲良くお茶もできる相手だと分かっているのに、それを見捨てて離脱することなど到底できなかった。
 武器でもあるモートスプーンを握る手に力を込め、ユーベルコードを発動する。ユコの体は淡い光を放ち、その光のおかげでユコ自身も周囲の気配に敏感になれる。戦うことはできずとも、怯えて身を隠している個体等いれば助けられるかもしれない。そんな一縷の望みから、力が及ぶ範囲に五感を巡らせた。

「みゃー! シンニュウ者!」

 声を上げ、額を硬質化させたバルバがユコ目掛けて頭突きの構えで襲い掛かる。咄嗟のことではあったが、ユーベルコードの効果でユコは一拍早く動くことができた。

「えい!」

 バルバの攻撃を回避し、モートスプーンを横一閃に振る。当てるつもりは無い。これで相手が迂闊に近寄れなくなれば良い、その程度だった。だが、そんな思惑とは裏腹にモートスプーンの先端は、襲撃者であるバルバの顔に綺麗にヒットしてしまった。

「おぶっ」

 間の抜けた声を上げ、バルバは鞠のようにぽよんと地面に転がる。当てるつもりの無かった攻撃が当たってしまい、ユコは思わず警戒を解いてバルバのもとへ駆け寄った。

「ご、ごめんね! 大丈夫?」
「う……?」

 起き上がったバルバは、大きな黒い瞳の目尻を少し下げてしぱしぱと瞬きをする。獣神の支配が解けたようだが、まだ少し混乱しているらしい。
 ユコは自身の荷物から水筒を取り出した。本当はティーポットで淹れるのが望ましいが、こうして外に出る時は保温ができる水筒にお茶を淹れてくることもある。カップとしても使える蓋に中のお茶を注げば、温かな湯気と共にほのかな桜の香りが辺りを漂った。

「はい、これ。傷の治りが良くなるお茶だよ、飲める?」

 ユコが差し出したお茶に、バルバは始めこそ首を傾げていたもののやがてその小さな手でカップを受け取る。すぐに飲むのではなく、お茶の香りに興味があるらしくルビー色の小さな湖面に顔を近づけた。

「おはなのにおい」
「そうだよ、桜って知ってる? そのお花を使ったお茶なの」

 さくら、とユコの言葉を反芻したバルバは、お茶を冷ますため湯気にふぅふぅと息を吹きかける。何度か繰り返したところでカップに口をつけ、そして黒い瞳を輝かせた。普段から笑っているような曲線を描く口元を、更に緩めた上でユコへ告げた。

「おいしー!」
「本当? 良かった、まだたくさんあるからね!」

 手製のお茶に素直な感想をくれるバルバに、ユコも顔を綻ばせる。焼き菓子を持って来ることができなかったのは残念だが、それは獣神が倒された後にでも叶うことだろう。おいしいおいしいと嬉しそうに繰り返しながらお茶を飲むバルバの周囲には、いつの間にか他の個体が集まって来ていた。

「いいにおい」
「いいなー、おいしそ」

 目の前のバルバに意識を向けていたユコが周囲を見渡す。どうやら正気を取り戻したバルバの数が多くなってきたようで、いつの間にか集落の騒ぎは治まりつつあった。
 荒れ果てた水辺の集落に桜の芳香が巡る。それは対獣神戦までの短い時間、猟兵やバルバ達の心身を癒す、姿無き彩だった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『世界平和の樹』

POW   :    平和を乱す者には罰を
【主枝の一撃】が命中した敵を【鋭利な葉が茂る梢】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[鋭利な葉が茂る梢]で受け止め[主枝の一撃]で反撃する。
SPD   :    力を合わせて平和を守りましょう
【支配下にある生物】から無限に供給される【かのような】生命力を代償に、【爆発する実】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。
WIZ   :    皆の願いが実を結ぶように
【宝石と化した花】から、物質を透過し敵に【魅了】または【宝石化】の状態異常を与える【紫色に煙る花粉】を放つ。
👑11
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 バルバ達の案内で辿り着いたのは、集落から少し歩いた先にある洞窟だった。中へ足を踏み入れると薄暗く、外に負けず劣らず湿っぽい。岩の天井から、静かに雫が滴る音が聴こえた。意外なほどの広さがあることから、多少の荒事になっても崩落せずに耐えてくれそうな印象だ。
 一歩、一歩と先へ進む。奥へ進んでいる筈なのに、何処からか硬質のものが光を反射するような煌めきが視界にちらついた。

 洞窟の最奥、その空間に鎮座するのは樹だった。あのバルバ達の体格で見れば大樹だと称しても遜色ないだろう。青と赤、紫に緑、様々な色を湛えて煌めくそれは鉱石でできているようにも見える。太い幹からいくつか伸びた細い枝先には、小さな花が塊のように咲き乱れていた。見ているだけで心が洗われるような美しさでありながら、胸のどこかで不安が煽られる。間違いなく、これは〝存在してはいけないもの〟だ。

 樹は、まるで猟兵達がやって来たことを察知したかのように一度、強い光を放つ。言葉を話すわけでもない、何か働きかけてくるわけでもない。願わない限りは無害なのかもしれない。だが、今この時ばかりは明らかに、猟兵達へ確かな敵意を向けていることが分かった。

 邪魔者を住処から排除しようとするかのように、美しい枝葉が伸ばされてきた。

.
ハリー・オッター
獣神…獣神??
違う、こいつは木だ…しかも、石でできた木だ!!
奴が感知して攻撃仕掛けてきたってことか!!
言わせておけば!!
武装パーツNo.12、M.B.Lメガ・バズーカ・ランチャー!!
奴が何かしようとも、遠距離から爆発を伴う攻撃を加え続ければ、折れるだろうじゃん!!
エリクシルって、下手なことしてくれるものだな。さっさと消えるじゃん!!

終わるまでは気が抜けん!!



 獣神。そう呼称されるからには獣の姿をしているのだろう、という先入観があったのは確かだ。猟兵達の前に聳え立つその樹は、鉱石の妖しい輝きを以て生物に畏敬の念を抱かせる。ハリー・オッター(カワウソ・f39388)は倒すべき敵の思わぬ姿に舌を巻く思いをするが、相手はその驚嘆が和らぐのを待ってはくれない。
 煌めく枝葉が、攻撃の意思を持って伸ばされる。一本一本が独立した生き物のように動くそれは、勿論ハリーの方へも向かってきた。

『平和を乱す者には罰を』

 発声器官を持たない……そもそも、言語を必要としない形をした存在の声。耳ではなく、頭が直接聴き取ったようなその声は、年齢性別も判断できないような奇妙な、けれども美しい音をしていた。
 猟兵でもない限りは、この声に惑わされてしまうのだろう。けれど、ハリーから見ればはじめに平和を乱した者は他でもない獣神……エリクシルだった。

「言わせておけば!!」

 舌打ちしたハリーが武装を展開する。屋外とは異なり、洞窟の中では固定砲台は使えない。今回は砲身に引き金を取り付けたような形状の、ロケット弾発射器バズーカ砲が現れる。重さがあるとはいえ、ハリーの小さな体でも肩に担いで移動ができるサイズだ。
 ハリーは向かってきた枝葉をその砲身で叩き落とすと、すかさず発射の構えを取る。その照準が狙うのは、エリクシルの武器でもある枝葉の根元だ。

「戦車が吹っ飛ぶ弾だ! 耐えられるもんなら耐えてみろ!」

 引き金を引くのと同時に爆音が響き渡る。バズーカの発射口から放たれた弾は一瞬で狙った箇所に着弾し、爆発した。人智を超えた存在とはいえ、物理的な体を持つ以上ダメージは避けられない。現に風塵の中から姿を見せたエリクシルは一部の枝葉が粉々に砕け、爆発の衝撃が大きかったのかその他の箇所にも損壊が見られた。
 ふと、枝葉を失った辺りから涼やかな音が鳴る。ビキビキと結晶が固まるようなその音と共に、確かに破壊した筈の枝がじわりじわりと再生を始めていた。

「エリクシルって、下手なことしてくれるものだな。さっさと消えるじゃん!!」

 往生際が悪い、と吐き捨ててハリーはバズーカを担ぎ直す。再生してくるのであれば、再生できなくなるまで粉々にするだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

上野・修介
※アドリブ連携歓迎
調息と脱力、己と戦場と氣の流れを観据える。
敵の大きさと周囲の地形状況を確認。

バルバさん達には流れ弾が当ったり、また魅入られたりしないように下がっていてもらう。

「推して参る」

先ずは氣を錬りながら、敵の間合いと攻撃速度を確認するように洞窟内を動き回る。
本命を気取らないように、幹を狙うかのような突貫と離脱を繰り返しながら『下』を探る。

地中にあり樹に向かうある種の流れ――即ち『根』を地中の氣の流れから探り、その『根』の中で一番太く樹と繋がっている物を狙う。
UCを用いて四股を踏むように足裏から練り上げた氣を、『根』に走る氣の流れに叩き込みを内側からの爆破でそれを破壊する。



 獣神の御座所は、この洞窟の中でも特に広い空間だった。その中央に根差す鉱石の樹の神々しさを目の前にすれば、なるほど見る者が見れば「これこそ神に違いない」と思うだろう。そう納得できる存在感が、この樹には確かにあった。上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は案内役のバルバ達を背に庇い、安全な場所にまで下がっているよう促した。
 その間も、修介の視線は獣神と称されるエリクシルと、これから戦場になるこの空間から外れることは無い。かつてバルバ達が整えたのか、地面は思っていた以上に平坦だ。障害らしい障害も無い。この空間内の移動は容易いが、身を隠す場所は皆無とも言えるだろう。であるならば、常に動き回る戦い方が求められる場面となりそうだ。呼吸を整え、体の力を抜く。相手が仕掛けてくるタイミングが自ずと見えてきた。

「推して参る」

 エリクシルの輝く枝葉が伸び、槍のようにこちらを狙ってくる。修介はそれらが追いついてくるよりも先に走り出した。氣を錬り、いつでも力や速度を操作できるよう準備をしながらエリクシルの様子を窺う。
 鉱石の枝葉は触手ように蠢きながらも、誰もいない地を穿つそれはやはり硬い。如何な猟兵といえど、当たれば相応のダメージを受けることは目に見えていた。

(それに、いくら枝葉を折ったところで恐らく意味は無い)

 狙うべきは本体。あれが樹だというのなら、土に根差す〝何か〟がある筈。修介の目にも、エリクシルの根元で揺れる氣の奔流が見える。そこに流れる氣を乱し、そして破壊することが、今の修介に成せる最大限だろう。
 向かってくる枝の切っ先を避け、拳で叩き割る。一瞬だけ出来た隙を逃さず幹に接近すると、そこから次々と再生する枝葉を間近に見た。幸いにも、遠距離攻撃で次々と枝葉を落としている猟兵がいてくれるおかげで、修介はこれらをまともに相手取る必要は無さそうだ。太い幹へのヒットアンドアウェイを繰り返しながら、その根元の氣をよく〝視る〟。

「あそこか」

 大きな力の流れ、そのほんの一部。地脈を流れる氣を一気に吸い上げるような動きが視えた。確信するよりも早く、修介は自身を包む氣を脚に集中させて加速する。目指すはエリクシルの根……その最も大きな一筋。狙った位置に辿り着くや否や、修介は地に大きく踏み込む。脚に集中させていた氣をそこから一気に放出すると、大きな爆発のような衝撃が地中を走った。
 エリクシルは衝撃から根を逃がすように地中から這い出してくる。枝葉と異なり即時再生はできないようで、大きくひび割れた根が姿を見せた。
 修介は両の拳を握り、近接戦の構えを取る。砕くべきものの姿が目の前にあるならば、もはや小細工など必要は無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

ああ やっぱりがらくた
その玉枝、剪定させて戴く

残像陽動迷彩フェイント忍び足でゆるゆると接敵

射程に入り次第念動怪力衝撃波闇空属性鎧無視部位破壊UC
フェイント二回攻撃を交え範囲ごと破壊する

敵の攻撃を落ち着いて見切り
咄嗟にカウンター念動怪力衝撃波闇空属性鎧無視部位破壊UC
反撃の枝を更に破砕

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃追撃

わたしはがらくた がらんどう
だがよもや、我等以上の我楽多が在るとは…!

だいじょうぶ まかせて
世界の平和は、我々「猟兵」が実らせよう
あなたは おやすみ
疾く速く休め。枯れ果てて

みなそこへ みなそこへ
鎮め沈め骸の海へ
さようなら
さようなら
御然らば
御然らば



「ああ、やっぱりがらくた」

 鈴のような声で呟く御堂・伽藍(がらんどう・f33020)の言葉を聞いた者は、果たしてその場にいただろうか。全てを受け入れるがらくたなれど、これは違う、と彼女は言う。
 伽藍の多腕に握られたのは刃、針、武器として彼女のもとに集まった数多のがらくた達。目の前に立つ鉱石が入る余地など何処にも無い。

「その玉枝、剪定させて戴く」

 エリクシルの枝葉が確かな敵意を持って、伽藍の小さな体を刺し穿とうと迫ってくる。蛇よりも素早いそれは確かに当たった筈だというのに、そこには既に少女造形の姿は無い。おおよそ生物が感知できる気配を断ち切って移動する伽藍を、エリクシルは捉えることができなかった。
 他の猟兵を狙う枝葉も見えない刃に弾かれる。伽藍の武器は彼女の体も同然。気配を断つ彼女の供をするように、それらもまた暗い洞窟の風景の中に溶け込んでいる。

 途端、エリクシルの枝葉の一部が地面へと叩き付けられる。否、叩き付けられるというよりも、押し付けられたと表現すべきだろう。いつの間にか、伽藍は念動を用いて洞窟の天井付近へ移動している。そこから加えられた〝見えない大きな力〟で枝葉が潰されようとしていた。

「わたしはがらくた、がらんどう。だがよもや、我等以上の我楽多が在るとは……!」

 伽藍の言葉に込められた感情が何であるのか。憤怒か、歓喜か、それとも悲哀か。それを推し量ることができる者はいない。
 枝葉を抑えつける力が徐々に強くなる。重力そのもののような負荷に、エリクシルの枝葉どころかそこに繋がる幹、そして地面までもがミシミシと不穏な音を立て始めた。粉砕されるのも時間の問題だろう。

「だいじょうぶ、まかせて。世界の平和は、我々「猟兵」が実らせよう」

 だから、あなたはおやすみ。と、子守歌のように告げる。その直後、エリクシルの直下が強い震動で隆起した。他の猟兵の攻撃を受けて、エリクシルの根が地中から這い出てきたようだ。まるでそのタイミングを待っていたかのように、伽藍は枝葉へ掛けていた負荷を強くする。

「みなそこへ、みなそこへ。鎮め沈め骸の海へ」

 ともすれば、歌のようにも聴こえる声はひどく優しい。けれど、それはこの妖しく輝く鉱石の樹を、これからがらくたの欠片に変えてしまう者の声だ。
 悲鳴を上げることもないがらくた。硝子が砕けるような音だけが真実だ。重力子塊による負荷で多くの枝葉や幹の一部が砕かれ、その衝撃に任せて地面が抉れる。這い出た根が逃げる場所は、もう何処にも残っていない。

「さようなら、さようなら。御然らば、御然らば」

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャスパー・クロス
「よし、ありがと!それじゃあ君達は下がっててね。覗いちゃダメだよ」
案内してくれたバルバ達へ、にこやかにお礼を言って避難させてから

スッと意識と表情を切り替えて、戦闘態勢へ
バルバ相手に手加減していたときとは違う
こいつは、一片の容赦も無く倒す

【推力移動】で一気に【切り込み】、【先制攻撃】
移動の勢いを殺さないまま一回転して蹴撃による【斬撃波】で強襲、意識を此方に向けるように【挑発】したら
即座に畳み掛ける‪!

「‪──‬白練色ッ‪!!」

UC《白練色は礼やか》を発動!
風の【オーラ防御】を伴った回転運動で、射出される実を【見切り】つつ【受け流し】
私の攻防一体のUCで、実を後方へいなして爆発させてやろう
爆発の直撃さえ避けられれば、爆風だけならそれこそ私の風のオーラで逸らせるからね

さあ、根を張ったその身体で逃げられるものなら逃げてみろ。何度でも何度でも執拗に同部位を、【傷口をえぐる】ように乱打し続けてやる
私の【継戦能力】が続くだけ、ひたすら【連続コンボ】を叩き込んで
雨垂れが石を穿つように鉱石の樹を破壊する!



 獣神の御座所へ辿り着く頃、キャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)は、すっかり打ち解けたバルバ達と目線を合わせるよう屈んでその頭を撫でる。水棲生物型だからか、意外としっとりした触り心地だ。

「よし、ありがと! それじゃあ君達は下がっててね。覗いちゃダメだよ」

 ここから始まるのは決戦だ。今回の事件の被害者である彼らを、これ以上巻き込む道理は無い。キャスパーを含む猟兵達のそんな思いを察したのか、バルバ達は素直にその言葉に従った。「きをつけてね」とその場を去るバルバ達を、キャスパーは笑顔で見送る。
 その背中が見えなくなった頃、振り返った先には獣神の姿が在った。不穏な輝きを放つ鉱石の樹。神々しさこそあるが、キャスパーはこれが歪んだ万能の魔神であると確信を持って言えた。
 洞窟の中にも関わらず何処からか風が吹き込む。キャスパーにとって鎧であり、武器であり、そして体の一部でもある。鋭く冷たく研ぎ澄まされたそれは、バルバ達との戦いで用いたものとは明らかに異なる。

「こいつは、一片の容赦も無く倒す」

 風を纏っての爆発的な加速は容易に捉えられるものではない。キャスパーはその一瞬の移動のさなか、エリクシルの枝葉が自身のすぐ横を掠めていったことだけど認識した。

「遅い!!」

 移動で生まれた推進力に任せて体を捻り、枝の根元を連続で蹴り上げる。太い枝が一本また一本と折れて、地に落ちてゆく。その回転の勢いのまま幹に一撃を入れると、大きな樹が僅かに傾いだ。
 エリクシルも、枝葉を逃れて一瞬で至近距離に入ってきたキャスパーの存在を認識している。四方八方に伸ばしていた枝のいくらかをキャスパーへ差し向けようとするが、それは他の猟兵達が許さなかった。
 外側からの攻撃で次々と枝が折られてゆくのに痺れを切らしたのか、エリクシルはその花の中から数多の実を落としてくる。物質に触れた瞬間に爆発するそれは、ひとつひとつの威力こそ小さいが如何せん数が多い。一度に受ければ相応のダメージを負うだろう。だが、キャスパーは回避はしない。

「‪──‬白練色ッ‪!!」

 ユーベルコードの発動と共に、キャスパーを中心とした小さな竜巻が発生する。それに合わせて回転するキャスパーはその勢いと体術を以て、襲い掛かる実の悉くを弾き飛ばしていった。弾かれた実は爆発こそするが、分散することで威力は相当に落ちている。いくらか強い爆発もあったようだが、その爆風をもキャスパーの風が呑み込み、より回転を強いものにしていった。

「さあ、根を張ったその身体で逃げられるものなら逃げてみろ!」

 強い風による回転から繰り出される乱打は繰り返し繰り返し、エリクシルの幹の最も太い箇所に打ち込まれる。高い硬度を持つのか、簡単にひび割れるようなことは無い。だが、キャスパーとてそんなことは百も承知だった。そして、それは決して攻撃の手を緩める理由にはならない。雨垂れとて、石に落ち続けることでその身を穿つのだから。事実、幹の一部がキャスパーの蹴りによって徐々に削れてゆく様子が見て取れた。
 ふと、地面が大きく震えたかと思うとエリクシルの根が這い出てくる。更に、他の猟兵の攻撃によって反対側の幹が大破したようだ。このチャンスは逃せない。

「これで終わりッ!」

 キャスパーはその一瞬で、エリクシルの体で最も薄くなっている箇所を見極め、そこに渾身の一撃を叩き込んだ。その瞬間に伝わってきたのは、鉱石が砕ける衝撃だけではない。エリクシルが周囲の動植物やバルバ達から回収していたのであろう生命力が、元の地脈に逆流してゆくような感覚。視界では砕け散った鉱石の樹の欠片が、言い様の無い煌めきを放ちながら雨のように降り注いでいた。
 涼やかな音を立てて地面へ落ちた欠片はすぐに黒ずみ、やがて砂のようにさらさらと消え失せてしまう。その瞬間から、獣神を騙る樹が安寧を謳うことはもう無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『リヴァイアサン大祭ムード一色!』

POW   :    リヴァイアサン大祭のお手伝い!

SPD   :    お祭りの景色を見て回る

WIZ   :    お祭りの食事を食べ歩き!

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「りょーへーさん、ありがと!」

 エリクシル討伐を終えて洞窟を出ると、たくさんのバルバ達に出迎えられる。集落全ての住民が正気を取り戻したようで、一言礼を言おうと全員がここまでやって来たようだ。

「お礼、なにがいいかなってみんなでいってたの」
「おまつりするの。いっしょに遊ぼ!」

 方々から口々に話し掛けてくるので要領を得るのが難しい。彼らの話を総括すると、どうやらこの時期はリヴァイアサン大祭という祭を催すものらしい。クリスマスに近いもののようだが、ここのバルバ達はそこまで難しいイベントはしない。みんなでご馳走を食べて、歌って踊る。ただそれだけのシンプルな祭だ。けれど、今年は彼らの精一杯の感謝を込めた祭になる。

「いっぱい食べて、いっぱい踊ってね。ぼくたちのありがとう、いっぱい歌うよ!」

 ぴょこぴょこ。羽のような鰭をひらひらさせて、バルバ達は嬉しそうにそう言った。

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上野・修介
※アドリブ連携歓迎

仕事として来ている身であるが、折角の好意を無下にするのも申し訳ない。
「ありがとうございます。では少しお邪魔させてもらいます」

とはいえ、準備に時間がかかるだろう。
その間に洞窟や戦闘になった箇所とその周囲を見回り、残敵やまだ気を失っているバルバさん等がいないか確認。
見回りが終わったら何か手を貸せることがあればお祭りの準備を手伝う。

お祭りが始まったら(念の為、場の雰囲気を崩さない程度に密かに周囲を警戒しつつ)出されたご馳走を少しを食べながら遠巻きに様子を眺めて祭を楽しむ。
(出された物は基本何でも食べるが、酒の類は断る。かなり下戸なので)



 あくまでも、この戦いに身を投じたのは猟兵としての役割を果たすためだ。エリクシルを倒した時点で自分達の仕事は完遂。本来であればグリモアベースに帰還すべき頃合いだった。
 けれど、礼がしたいというバルバ達の申し出を無下にするほど冷淡ではないつもりだ。他の猟兵達も誘いに応じている様子を見て、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)も頷いた。

「ありがとうございます。では、少しお邪魔させてもらいます」

 修介の返答に、バルバ達は嬉しそうにぴょこんと跳ねる。こっちだよ、と集落に向けて走り出すその背中を追うのに走る必要は無い。歩幅が全く違うのだ。修介はいつもより少しだけ大股で歩くだけで案内役を追いかけることができた。
 その道すがらも周囲の様子に目を配る。敵意のある者がいればすぐに察知できるが、幸いこの辺りにその気配は無かった。他集落のバルバの姿等も見当たらない。異変の影響で遠ざかってしまったのかもしれない。エリクシルを討伐したことで、きっと彼らも戻って来るだろう。
 念のために気絶したバルバ達を隠した岩陰も覗く。既にひとりも残っていない殺風景な様子に、今回ばかりは安堵した。
 集落ではバルバ達が忙しそうに走り回っている。先程の戦いの後始末をする者、それから祭の準備を整える者の二手に分かれているようだ。

「手伝います。力仕事とか、何かできることはありますか?」

 招かれた側とはいえ、黙って待っているのは性に合わない修介が近くを通りかかったバルバに声を掛ける。きらきら輝く飾りがたくさん入った大きな籠を抱えていたバルバは、嬉しそうにその籠を修介へと差し出した。

「ありがとー! じゃあ、あの木にいっぱいおほしさまつけて!」

 バルバが指した先を見れば、広場の一画に木が立っている。先程のエリクシルとは異なる、何の変哲もない低木だ。この地域では珍しい種類だが、リヴァイアサン大祭のために苗を植えて、皆で頑張って育てたのだという。
 渡された籠の中に詰まっていた飾りは木製のオーナメントのようだ。様々な色や形が揃っているが、その中でも特に星型が多い。

(なるほど、クリスマスツリーのようなものか)

 飾り付けを引き受けた修介は、黙々と星を木に取り付けてゆく。2m程度の高さなので小さな踏み台でもあれば難なくこなせる作業だが、確かにここの小柄なバルバ達には大変な仕事だ。自分に飾り付けのセンスはあるだろうか……と半ば疑問には思いつつも、これで彼らの手間を少しでも減らせているのなら良い。
 最後の星をちょうど木の頂点に取り付けたところで、別の作業を終えたバルバが駆けてくる。飾り付けられた木を見上げ、その丸くて黒い瞳も飾りに負けない輝きを見せた。

「わあ、きれいー!」

 彼らは嘘がつけるほど器用ではない。素直な感想を聞いて、修介はひとまず安心した。
 日も暮れる頃、何処からか音楽が聴こえてくる。どうやら手製の楽器を使って、バルバ達が祭の音楽を奏で始めたようだ。それを聴くや否や集落中のバルバ達が踊り出した。

「りょーへーさん、ありがと」
「たのしいおまつり。いっぱいたべて、いっぱいおどってね」

 既にこの集落に、先程までの殺伐とした空気は微塵も無い。いつでも動けるよう祭に水を差さない程度に氣を纏ってはいるものの、完全に脅威は去ったことが窺える。警戒を解く……とまでは言わずとも、その後は比較的リラックスしながら、踊る面々の輪を遠目に眺めて過ごした。
 勧められた川魚の串焼きを齧る。身から上った湯気が空気に溶ける。湿地帯に流れる空気は相変わらず湿っぽい。けれど、そこにあるのは正体の分からない不気味さではなく、小さな命が寄り添い合って平和に生きる気配だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャスパー・クロス
「よーし、みんなで踊ろうか!」
明るい笑顔で遠慮無く申し出を受け入れ、お祭りに参加するよ
お祭りは頭空っぽにして楽しむのが一番だからね!

ちっこい手足をぴょこぴょこさせるバルバ達のダンスに合わせて、最初は私も小さな動きで踊ろう
んふふ、やっぱりかわいい~~!!!
お遊戯会で子供達と一緒に踊ってるみたいな感覚で、微笑ましさで胸が一杯になってにこにこしちゃう
これが……母性……?

楽しげに響き渡るバルバ達の歌もすっごく可愛らしいもんだから
なんだか次第に陽気な気分が高まってきて……
「よっし、見ててよっ!」
歌に合わせて、今度は私らしく全身を大きく使ったダンス!
戦闘中にも垣間見せたような、ぐるんぐるん大振りに動く(カポエイラに似た)派手なモーションでバルバ達の歓声に応えちゃおう

一通り楽しい時間を過ごしたら、もうすっかり愛着が湧いちゃって
祭りの終わり、別れ際に皆へ
「ね、また遊びに来てもいいかな?」



 ぴょこぴょこと跳ねながら祭へ誘うバルバ達に連れられて、キャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)は集落の中心までやって来た。オーナメントのような飾りをたくさん下げた低木が見える。そのすぐそばの広場に集まったバルバ達が、木を削って作ったのであろう楽器を奏でては不思議な動きをしていた。手足の短さゆえに一瞬、彼らが何をしているのか判断に迷うところだが、その楽しそうな表情から踊っているのだということが窺えた。

「よーし、みんなで踊ろうか!」

 そうと分かれば、とキャスパーもその輪へ加わる。流れる音楽はこの彼ら独自のものなのだろうか。独特の節で奏でられているが、決して乗れないリズムではない。理屈よりも感覚で、好きなように踊る音楽。縛りの無い自由な踊りは、キャスパーも好ましく思えるものだった。
 バルバ達に合わせた踊りも楽しいものだ。小さめの振りで体を揺らしたり、つま先立ちでぴょこんと低くジャンプをしたり。キャスパーにとっては小さな動きでも、バルバ達からすれば全身を使った激しい踊りなのかもしれない。そう思うだけで、キャスパーは頬が緩んでしまった。

「んふふ、やっぱりかわいい~~!!!」

 一緒に踊りながら、隠すつもりも無い本音が口から零れた。楽しんでもらえているのが分かるのか、バルバ達もキャスパーにつられて嬉しそうな笑顔を見せる。その愛らしさに、キャスパーは胸に充足感すら感じられた。もしや、これが世間で言う母性というものなのか……などと思ってしまうほどに。
 都市部で催されるような大きな祭でもない。珍しい品々やイベントが見られるわけでもない。けれど、ここはそれらに劣らない輝きに満ちている。

「よっし、見ててよっ!」

 音楽に合わせ、今度は大きく体を捻る。軸足を中心に回転をしながら、ハイキックの要領で高く脚を上げる。自分達ではできない、ともすればバレエのようにも見える大きな動きを見て、バルバ達は歓声を上げた。

「空とぶひと、すごーい!」
「もっとやって! もっとやって!」

 素直な賛辞を贈りながらバルバ達がはしゃぐ。もっと色んな動きが見たいとせがまれると、キャスパーは持ち前の体術を駆使して更に大きく回転した。戦う相手さえいれば格闘技として充分に通用する動きだが、今はその必要も無い。体重と遠心力を乗せた蹴りをお見舞いするのではなく、守り通した隣人達の心に応える踊りとして昇華するのだ。
 歓声と共に、たくさんの小さな手による拍手の音が集落に響く。時には手近なバルバを抱えてくるくると踊る。特別なことは何も無いけれど、確かに尊いと言える時間だった。
 ひとしきり踊ったところでキャスパーは、ずっと尋ねたかったことを口にした。

「ね、また遊びに来てもいいかな?」

 バルバ達の大きくてつやつやの黒い瞳に、キャスパーの姿が映る。彼女の問いを受けてその瞳の輝きが増したのは、きっと気のせいではない筈だ。

「うん! またあそびにきてね、空とぶひと!」

 バルバ達の快い返事を聞いて、キャスパーは思わず満面の笑みを浮かべた。そして、小さな友人達へ自身の小指を向ける。

「ありがとう、きっと来るね。約束!」

 キャスパーの細い小指と、バルバの小さな小指が結ばれる。些細な約束だ。ありふれた日常の延長だ。けれど、戦いが終わる気配の無い今だからこそ、この約束には何よりも大きな価値があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハリー・オッター
お、歓迎のお祭りってことか。
なら、乗らないことはないな。
ここが水辺ってことは、間違いなく魚が出てくるだろうし。
だから、比較的大きい魚はオレにとってのご馳走になるんだぜ。

拙くても今回は問題ないだろう。
この世界にオブリビオンが侵入しないことを願うのみだぜ。



「お、歓迎のお祭ってことか。なら、乗らないことはないな」

 バルバ達からの誘いを、ハリー・オッター(カワウソ・f39388)は上機嫌で受け入れる。何せここは湿地帯。すぐ近くに大きな川が流れていることも確認済みだ。きっと、ここでは立派な魚が獲れる。好物が供されるとあっては無視できない……無視する理由が見当たらない申し出だった。
 集落はすっかり落ち着きを取り戻していた。先程までの内乱など嘘のように、全ての住民が協力して祭の支度を進めている。これが、この集落本来の形なのだ。無用な争いが消えた光景を前に、ハリーは満足気に頷いた。
 そして、会場である広場に音楽が流れだす頃。ハリーの鼻が、あるにおいを拾ってひくりと動く。

「このにおい……間違いない!」

 期待に胸を膨らませるハリーに応えるように、においの元が近づいてくる。数人のバルバが川魚をたくさん抱えて広場へやって来る姿を見て、予想は確信に変わった。

「やったぜ! しっかし、本当にあんな大きなアユを食って良いのか?」

 バルバ達が獲ってきたばかりのアユを、調理場そばの岩場に下ろす。未だ生きているアユはびちびちと跳ね回っているが、彼らが帰る川はもう遠ざかってしまった。ハリーは調理場まで駆けて行き、エプロンのような前掛けを着けたバルバへと声を掛ける。

「なあ、そのアユって今から料理するのか?」
「そだよー。くしを刺してね、焼くの」

 なるほど、シンプルな調理法だ。素材の味が活きて良いと思う。だが、ハリーはその前に別のものも味わっておきたかった。

「一匹さあ、生で貰えないか? 俺、魚が好きだから生でも食いたいんだよ」

 カワウソという生き物に生まれたゆえの性質だ。人間に近い猟兵ばかりの中、こんな頼み事をするのも気が引けないわけではない。だが、調理担当のバルバは嫌な顔ひとつせず「いいよー!」と快諾してくれた。
 岩場に並べられた生きたアユを目の前に、どれでも好きなものを選んで良いと言われて目移りもしたが、やがて「これだ!」と思える一匹を手に取る。何匹も並ぶアユの中で、最も太っていたものだった。

 広場の端に設けられた、丸太の椅子に腰掛ける。踊る面々の様子を遠目に眺めながら、調理場で貰ったアユにかぶりついた。新鮮で身が詰まり、脂もほどよく乗ったアユの味わいにハリーはその太い尾を振って歓喜を表す。

「美味い! やっぱ川の魚は最高だな!」

 厳しい管理社会と化していた集落のままだったら、こんなに良い魚は食べられなかっただろう。それだけでも、体を張ってエリクシルを倒した甲斐があったというものだ。

「まあ、あとはこの世界にオブリビオンが侵入しないことを願うのみだぜ」

 こればかりは自分達の意思ではどうにもならないけれど、それでも願うこと自体は無駄ではないと思いたい。今度こそ、この願いが歪むことなく叶えられるように。そのために、ハリー達は戦っているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎

おどる うたう
歌には音を、踊りには彩りを♪

楽器演奏優しさダンス水光癒属性アートUC

竜たちが空に虹を描き、天気雨の小雨霧雨をサラサラ降らせる

優しさダンス楽器江演奏団体行動お誘い
踊り歌いながらバルバ達を誘い込んで一緒に踊り歌う

みんなで うたう
みんなで おどる
踊って楽しむ?見て楽しむ?
楽しむんなら!踊らにゃ損々♪

一対の腕で竜琴を鳴らし、他の二対で時折手をつないで更にお誘い
念動力でハンドベル「リーリエ・ガブリエル」を鳴らし更に多重詠唱

おまつり おまつり
みんなで たのしむ
さあさあ!みんないらっしゃい♪

嫌がられない限り、猟兵の人も呼び込んでどんどん踊り歌う♪



 ぽこぽこ。独特の響きを持つバルバ達の音楽で広場が満たされる。御堂・伽藍(がらんどう・f33020)はその音を耳の内、その体を形作るがらくたの中に拾い集めながら、小さな脚で軽やかなステップを踏んだ。
 いつの間にか傍らに現れていた竜琴の弦を爪弾くと、不思議とバルバ達の音楽と調和する優しい音が奏でられる。その音色に誘われたのか、日も落ちた夜空からさらさらと小雨が降り注いだ。傘やテントも用意はされているが、この集落のバルバ達はそもそも水棲生物だ。恵みの雨だとばかりに、小雨の中をくるくると踊り続けていた。
 七色の竜が泳ぎ、その鱗の輝きを空に残してゆく。夜に見る虹は昼間に見るものとは違った美しさを湛えて揺らぎ、オーロラのようにリヴァイアサン大祭の夜を彩った。

「みんなで うたう みんなで おどる」

 上機嫌でステップを踏みながら歌う伽藍は、広場から少し離れた場所で踊りを見守っているバルバに目が留まる。踊ることも歌うこともやめないまま近づけば、内気なのかそのバルバは少しだけ戸惑う様子を見せた。

「踊って楽しむ? 見て楽しむ?」
「えと……ぼく、おどるのへたなの」

 伽藍の問いに、バルバは控えめに答える。得手不得手があるのはどの生物でも変わらない。各々の得意分野で補い合うことが共生だ。きっと、この集落もそうやって回っている。
 けれど、それはそれとして。こんなに盛り上がっているのに踊らないのは勿体ない、と伽藍は思うのだ。この場における踊りに上手いも下手も関係無い。ここにいる全ての者が心から楽しむことが肝要なのだ、と。

「楽しむんなら! 踊らにゃ損々♪」

 バルバの手を取って、その勢いに任せてくるくると回る。バルバは始めこそ「わー!」と驚いたような声を上げていたが、徐々に不思議な音楽に乗せられて拙いステップを踏むようになった。バルバ達の音楽と、伽藍の竜琴。そこに、ふわりと浮かび上がったハンドベル「リーリエ・ガブリエル」の音色が重なってくる。音と音が互いを響かせ合い、集落の中だけでなく湿地帯の一帯に音楽と笑い声が広がっていった。

「おまつり おまつり みんなでたのしむ。さあさあ! みんないらっしゃい♪」

 伽藍の中でも、その楽しげな声は優しく響く。これまでに受け入れたがらくた達が、心を躍らせるように震えている。真の平和は未だ遠くともそのひとつを守ったことに、〝彼ら〟も歓喜しているようだった。

 リヴァイアサン大祭の夜は更けてゆく。無垢で小さな隣人達の願いは今、果たされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月06日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は待鳥・鎬です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト