イルリーガル・クリニカル・トライアル
●とある地下施設
さながらサナトリウムの様なその施設。老朽化した建物や古びた壁の色に反し、備品やベッドは異様に新しく綺麗であり、周囲の機器も最新鋭の物が用いられていた。
ベッドに横たわる人々は全員点滴チューブより薬液を投じられ、心拍数や呼吸状態を逐一監視計測する機器に繋がれており――各々意識が混濁した様に虚ろな目をしていた。
無機質な機械音と僅かな呼吸音のみが響くその施設の中……暗闇の廊下を監視カメラの合間を縫って外を目指す二人の男がいた。
「くそ……話が違うじゃねぇか。金に釣られたオレ達も馬鹿だったけどなっ」
「このままじゃ間違い無く殺されちまう。動けなくなる前に……」
『動けなくなる前に、どうするつもりかな?』
二人の後ろから声がした。前に照明が点く。照らされた其処に見えたのは、サイボーグの女達が銃を向けて二人を待ち構えて立ち並ぶ姿。
『最初にサインを頂いた契約書には守秘義務の文面があったんだけどね。読み飛ばしてしまわれたかな』
コツンコツンと男達の後ろより歩む男は、目を瞑ったままそう告げる。
『まだ治験は終わっていないよ。外出を許可した記憶は無いし……君達のお喋り、俺には全部聞こえていた』
機械化された耳を指で示しながら白衣の男はそう微笑み言い、銃を手にした女達も逃亡未遂者達を嘲り笑う。
『監視カメラからは上手く逃れてたみたいですけどねー』
『ドクターの耳は地獄耳ですからー。決して逃れられないんですよー』
銃声が響き、男達の身が穿たれる。倒れる音の後、その奥に聞こえる音の方を向いた白衣の男は目を静かに開き、女達に命ずる。
『殺さずに済ませられたね、上手上手。さて彼らの心音が止まる前に連れて行ってくれるかな』
銃弾で殺すなんて勿体無い。新薬の開発には彼らの協力が不可欠だ。その結果で命を落としてしまった分は問題無いし想定内。名誉ある献身と讃えるだけの話。
クライアントが求める薬を作るには、まだまだ多くの治験が必要なのだから――。
●違法薬物治験
「違法薬物とは言え、簡単に顧客に死なれる様な危険なブツを流通させる訳には行かねぇだろうから、な」
未丘・柘良(天眼・f36659)は煙管から紫煙を揺らめかせながら集まった猟兵達に告げる。
「サキセルカ・コンフェクショナリー。表向きは製菓会社だが、裏じゃ非合法な薬品などを扱っている巨大企業群。その子会社でもある研究所で違法薬物の治験と言う名の人体実験が行われてやがる」
通常、薬品開発には最終段階において人体治験を行う事が常であり、協力者には謝礼金が渡されるものだ。そんな名目で集められた低賃金労働者達は違法薬物研究の為に様々な薬を投与され、時に命を落とす者もいるらしい。
「死ねば謝礼金も払う必要は無い、と。貧乏人が使い捨てのモルモット代わりにされてる訳よ」
そうして完成した違法な薬物は高値で取引される。お得意様からは常習性によって金を汲み上げるだけの話。
「んな訳で。その研究所潰すぞ」
余りにもドストレートに柘良は言った。
「場所は此処。郊外の廃病院だった建物だ。周囲に特に見張りらしき連中は見えねぇが、近づけば黒服のヤクザ者が地上階に詰めてるのが"視"える」
額のサイバーアイからホログラムを投射しながら柘良は件の研究所の場所と潜入について告げていく。
「まずはカチコミから。最初は雑魚だ。蹴散らしながら地下への入り口を探せ」
そして地下に侵入すれば、病棟にも似た地下施設に入り込める。ベッドには多くの人々が薬で寝かせられており、それを見張る様に配置されている『サキセルカ』の女性型強化サイボーグが立ち塞がるだろう。無論、彼女達はオブリビオン。容赦無く殲滅させて構わない。
彼女達を退けたら、この研究所の責任者である男が現れるだろう。
「そいつもオブリビオンだ。一筋縄じゃいかねぇだろうが、嗚呼、遠慮無く――ぶちのめせ」
柘良は煙管の火を落とし、目を静かに閉じてから続ける。
「地上階より気を付けて欲しい事が一つ。その責任者の男は超聴力の持ち主だ。所謂地獄耳と言うかな」
音を介してその男は侵入者を捉え、探る事が出来る。カチコミ開始から女性サイボーグとの戦闘の間、全ての会話や音声は筒抜けとなるだろう。その代わりに地上に監視カメラは少ない。
上手くやれば襲撃人数や規模を誤認させる事も出来るかも知れないし、逆に勘付かれて最適な配置と布陣を用意するかも知れない。
「カチコミの段階から向こうの親玉との戦いは始まってる。気張って行けよ」
そう告げて柘良はグリモアの光を描き、猟兵達を送り出すのだった。
天宮朱那
天宮です。
タイトルの意味は
違法治験。
安全なやべークスリを作る為の人体実験に多くの人が騙されて集められてる研究所へカチコミからの殲滅。
割とシンプルではありますが、ちょっとしたギミックとして前章での行動が次章に少なからず影響を与えます。
敵のボスである責任者の男は建物内全ての音を把握します。なので音声全てが敵に筒抜けになる、と。聴覚情報を元に二章の敵を配置したり、三章での登場時に何か仕掛けてくるかもです。
余りにも音が重なったりする等で多少誤認させる事も可能。無論小細工無しでカチコミもOK。
一章:敵本拠地にストレートに殴り込み。地上階の黒服サイバーヤクザは雑魚です。ぶちのめしつつ地下への通路を探して下さい。
二章:女性型の強化サイボーグ達。メイド姿なのは気にするな。
三章:白衣の工学者然とした男。彼を倒せばクリア。
浚われた一般人達は敵もなるべく殺すの避けたいので構わずとも大丈夫ですが、救出活動なさる分には問題無く。余程で無ければ不利になる事はありません。
各章、断章追記予定。ゆっくり進行。
マスターページやTwitter(@Amamiya_syuna)、タグなどでも随時告知をします。
適度に人数集まったら〆切目安の告知予定。
プレの内容と話の展開都合等で再送お願いする事も多々有ります事、ご容赦の上参加願います。
複数合わせは迷子防止に相手の名前(ID)かグループ名記載を。最大2人組まで。
技能の『』【】等のカッコ書きは不要。技能名並べたのみで具体的な使用方法の記述が無いものは描写も薄くなります、ご了承を。
第1章 冒険
『カチコミ』
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POW : 力任せに正面突破!
SPD : 騒ぎを大きくして敵を混乱させる。
WIZ : ハッキングや狙撃等で遠隔攻撃。
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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サイバーザナドゥの郊外とは放棄領域と紙一重。
メカとデジタルに囲まれた都会中心部に対し、ネオンの灯りも電源ライトも輝きが見えない。再開発が行われるまで其処はアナログ時代の遺跡なのだろう。
だが、そんな場所にも出入りする者はいる。今日もエージェントらしき者にスラムから連れられてきた低賃金労働者がその廃病院の建物にやってきた。
入口で取り次いだ黒服の男と短いやり取りをしたのち……労働者は建物に入り、エージェントは来た道を戻っていく。
あれを追わなくて良いのか、と去っていく男の車を見つめる者もいたが、今回の任務は此処にある研究施設の壊滅だ。証拠を抑えれば流石に腐敗した警察も重い腰を上げざるを得ないだろう。
尤も『サキセルカ』は子会社のしたこととトカゲの尻尾切りをするだろうが……。
建物の入口は三カ所。正面玄関、裏玄関、職員通用口。後者ほど横幅は狭くなる。
二階建ての古びた建物。既に博愛の象徴たるマークも掻き消えて久しいが、ガラス窓は全て強化ガラスに変えられており、厳重に閉めたカーテンで中の様子は窺えない。
どこから殴り込むかは各々の裁量に任される。サイバーヤクザどもはオブリビオンでは無いが、その処遇については好きにしろとの事。
さて。楽しいカチコミの開始だ。
ドラッヘ・パンツァー
【SPD】
全ての音を把握するか……機械の我が駆動音を抑えるのは難しい。
ならば警戒される役は我が担おう、修理が効く存在故な。
"大型筐体"に換装し、他の者が動き易くなるよう正面玄関から攻め込む。
"ハイスピードモーター"出力全開、ダッシュ開始……派手に駆動音を立て、機竜の襲来を知らしめよう!
侵入成功後、"疑似感情機構"をオフ……思考りそーすヲ探索、及ビ戦闘ニ特化。
"サーチカメラアイ"ニヨリ視界でーたヲ分析……建物ノ構造でーたヲ情報検索シ、地下ニ繋ガルるーとヲ算出。
戦闘時ハゆーべるこーど及ビ、射撃兵装ヲ不使用。攻撃手段ノ秘匿ニ務メマス。
脚部・尾部格闘機構ヲ使用、モーター出力最大……近接戦闘ヲ行イマス。
郊外の廃病院。メガコーポの実験施設が秘されたその建物を見据えながら、蒼き雌竜は一人ごちる。
「全ての音を把握する、か……」
あの建物の中に入れば、全ての声や音は管理者たる存在に筒抜けになると聞いた。
生き物ならばこくりと唾呑む音を鳴らした所であろうが。ドラッヘ・パンツァー(西洋竜型試作頭脳戦車・f38372)のドラゴンの如き姿はあくまで外装。その口からは合成音声、頭脳は電算機の機械竜なのだ。
(「……機械の我が駆動音を抑えるのは難しい。ならば」)
それでも人間じみた思考を与えられたドラッヘは決意する。警戒される役目は我が担おう、と。修理が効く己の存在だからこそ、最前線に立つには適しているのだから。
「あ、あれはなんだ……?」
「どこかの組のサイバードラゴンか
……!?」
黒服のサイバーヤクザ達が"それ"を見て思わず声を上げる。
それもそのはず。大型筐体に換装したドラッヘは、正面玄関より堂々と殴り込みをかけたのだから。
ハイスピードモーター出力全開。わざと派手な駆動音を響かせながらドラッヘは動揺しているヤクザ達に向けて吶喊していく!
「くそ、近付くんじゃねぇ!」
「撃て、撃てぇ!」
黒服達の放つ銃弾もなんのその。鉛玉を恐れる竜など何処にいようか。ものともせず蹴散らし、彼女は正面突破にてヤクザ達を力尽くでねじ伏せ倒して行く。
これだけ解りやすく暴れれば、他の者も動きやすいだろう。そして敵に知らしめたであろう、機竜の襲来を!
(「さて……」)
建物の中に入った先は黒服共もすぐにはやって来ない。所詮雇われヤクザ、見目から得体の知れぬ竜に命懸けで挑みかかる程の度胸も持ち合わせてはいないらしい。
ならば探索に徹すべき、とドラッヘは己の疑似感情機構をOFFに切り替える。人間じみた所作や感情に費やしていた思考リソース全てを探索・戦闘に特化する為。
彼女の電脳が演算を開始する。それに伴う排気ファンの回る音は静かなものだが、それすらも敵には聞こえているのだろうか。
(「サーチカメラアイ、起動――視界でーた分析、建物構造でーた検索……地下侵入るーとヲ算出シマス」)
得た情報を元に分析を終えると、ドラッヘは一気に算出した結果に基づいて地下に向かう通路目指し動き出す。
「動き出しやがった!?」
「こっち来るぞ、近づけんな!!」
黒服達が必死にバリケードを設置し、道を塞ごうとするもドラッヘの尻尾がそれらを紙屑の様に吹き飛ばし、獰猛な爪有した四肢で切り裂き退ける。
ユーベルコードも射撃兵装も今は不要。いや、敢えて使わぬのだ。こちらの攻撃手段を音で悟られぬ様に。
モーター出力だけを最大に、ドラッヘは地下への道目指して勇猛に駆け抜けて行くのだった。
成功
🔵🔵🔴
新田・にこたま
契約書をきちんと読ませた上にサインは強制ではない…メガコーポにしては労働者に誠実な部類ではありますね。こんなのでもそう評さざるを得ないぐらい、他が酷すぎるという話でもありますが。
しかし、誠意があろうが違法は違法。叩き潰すのに否やはありません。
こちとら警察官です。後ろ暗いことは一切ないので正面から突入しますよ。UCで研究所の前に超武装機動警察署を出現させ、そこから出てきたサイボーグポリス武装機動隊と共に正面突破です。
数も大きさもどんどん倍になっていく機動隊を施設中に展開すれば敵もどこを守ればいいか困るかもしれませんね。
まあ、見切られたら見切られたで、それでもいいです。
どうせ全員殺すんですから。
「ふむ……」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は今回潰すべきメガコーポの詳細を改めて確認し、肩を竦めた。
「契約書をきちんと読ませた上にサインは強制ではない。……メガコーポにしては労働者に誠実な部類ではありますね」
褒める場所かよそこ、と行きがけにツッコまれたが。にこたまは至極真面目に頷き返すのだ。
「こんなのでもそう評さざるを得ないぐらい、他が酷すぎるという話でもありますが」
そう、労働者の人権など奴らメガコーポにとっては意味を成さないケースが殆どだ。虫ケラの様に人としての尊厳と命を踏み躙る――そんな連中を彼女は多く見てきた。そして目に付いた所から潰してきた。だから――。
「誠意があろうが違法は違法。叩き潰すのに否やはありません」
揺るがぬ意志。悪は潰す――シンプルな話である。
そして件の研究所を前にしたにこたまは、その真っ直ぐな瞳を正面玄関に向けて立っていた。
警察官である自分が違法治験が行われていると言う情報を元に強制捜査に入る――後ろ暗い事なぞ一切なければ、こそこそと裏口から入る必要なども無い。
「なんだ――
警察かあいつ?」
黒服達が彼女の存在に気が付き、追い払おうと入り口から数人出て来た。それを認めると、にこたまは取り出した警察手帳を宙に放り投げて叫ぶ!!
「Ωジャスティス・リアライズ! サイボーグポリス、出動しなさい!」
警察手帳が目映く輝いたかと思ったその刹那。ずどんと研究所の目の前に出現したのは『超武装機動警察署Ωジャスティス』!!
「は???」
……いきなりお隣に警察署が建った事実に思わず黒服ヤクザ達は口をポカンと開けて固まった。
その間にも警察署の扉がバァン!と開き、武装警察隊がぞろぞろと現れると正面玄関目掛けて波の様に押し寄せていく!
「どわぁぁぁ
!!??」
次から次にやってくるサイボーグポリス達を前に黒服達も思わず身を退き逃げ出す始末。どんどん増えるポリス総出で地下施設への場所及び、地上階にある分の違法実験の証拠をガサ入れ開始。
施設中に展開する機動隊の足音や捜査に伴う音は敵を充分に迷わせるだろう。大軍が押し寄せた思ってくれれば、どこを守れば良いか困り果てるに違いない。
(「まあ、見切られたら見切られたで、それでもいいです」)
声だけは出さずに、にこたまはそんな事を思うのだ。だって――
(「どうせ全員殺すんですから」)
――と。
成功
🔵🔵🔴
沙・碧海
この手のは引っかかったやつの自己責任……って言いたいけど
報酬が貰えるなら働くよ
仕事の時間だ
まずは通用口から入ろうか
近くに次元扉を忍ばせておいて
騒ぎは起こさないようにこっそりとね
ある程度進んだら物陰にも次元扉を設置
これを使って入り口まで戻るよ
そうしたら今度は正面玄関から入ろう
今度は騒ぎを起こすよ
おらーっ!カチコミだー!
たちきり片手に暫く暴れよう
こいつらオブリビオンじゃないけど、死なせちゃったらその時はその時で
なるべく殺さないようには努力するけどね
ある程度暴れたら敢えて逃げて隠れる
手近なところに3つ目の扉を設置して通用口の内部まで戻ろう
陽動としてはこんなものかな?
あとは慎重に進んでいくよ
ふわりゆらりと尻尾を揺らし、その少年――沙・碧海(ストレイウルフ・f39142)は建物の裏手側より忍び足で近づいて行く。幸い表玄関の方で他の猟兵達が騒ぎを起こしたせいか、此方側に人の気配は殆ど感じられない。
(「この手のは引っかかったやつの自己責任……って言いたいけど」)
彼が普段身を置く封神武侠界は九龍城砦と、この世界はある意味似ている。力と金が秩序である混沌とした社会。己の身を守るものは己自身。いや、九龍の方がまだ温かみがあるやも知れない。
無骨な刃を肩に担ぎ直し、碧海は心の中で呟く。
(「報酬が貰えるなら働くよ――仕事の時間だ」)
声は出さぬ。仕事は既に始まっており、独り言すら敵の親玉に聞こえるだろうから。
裏の通用口からは思った以上にあっさり侵入出来た。監視カメラも見当たらない辺り、余程『音』による感知に自信が有るのだろう。それも侵入者や脱走者を油断させる為か。
入り口近くに次元扉をそっと作成。正面玄関が賑やかな分、こちらは至って落ち着いたものだ。更に進んだ所で物陰にもう一つ次元扉を作るとささっと潜って最初の場所――即ち建物の通用口まで戻る。
(「さて、準備は上々」)
次に碧海が向かった先は――ぐるっと回って正面玄関。手にした刃の名は『たちきり』。くるりと軽々片手で振り翳しながら、碧海は腹の底から声を上げて突っ込んだ。
「おらーっ! カチコミだーっ!!」
「な、またか?」
「さっきの連中で終わりじゃないのかよ!?」
先の襲撃を運良く免れた黒服ヤクザ達は再び慌てふためいた。今度はガキ一人……と見くびる前に、その明らかに物騒すぎる得物を見るや、餌食になってはなるかと片付けもほっぽり出して逃げ惑う。
「ほらほらほら! 死なせちゃったらゴメンよっ!!」
「ひいぃぃ!!?」
転がる調度品を叩き斬り、向けられたドスソードも刃の先から切り飛ばす。
オブリビオンではないタダのサイバーヤクザ共である彼らを殺める必要は無い。なるべく殺さぬ様に努力はするが、死なせたらそれはそれ。いずれにしても彼らはメガコーポに加担する悪党ならば、慈悲は――無い。
正面玄関を滅茶苦茶にぶち壊し暴れた所で一つ息をつけば。銃を構えた黒服達が廊下の向こうから一斉に碧海の事を狙うのが見えた。
(「そろそろ潮時かな?」)
たっと床を蹴って銃口から逃げる様に脇の通路に逃げ込むと、さっと設置したのは三番目の最後の扉。
素早く飛び込み、通用口の奥に進んだ二つ目の扉から顔を覗かせれば殆どの人員を正面玄関に回したようで人っ子一人見当たらない。
(「陽動としては、こんなものかな?」)
あとは慎重に進んで行くのみ。足音をなるべく殺しながら、碧海は地下への階段を探して進むのであった。
成功
🔵🔵🔴
ロジャー・カニンガム
おっと、玄関口は大分賑やかですね
もうパーティは始まっていたようです
遅れた私は職員用の通用口からこっそりお邪魔するとしましょう
「ああ、落ち着いてください!私は敵ではありません
追加の防衛戦力として派遣された頭脳戦車です
地下へ向かうよう指示されたので、通していただけないでしょうか?」
まあ非常事態ですから、このルートでもヤクザに出くわすでしょう
味方の増援を装いここを通すよう要求しますが、
この
交渉の目的は相手の判断力を奪い先制攻撃を行うこと
拒否されるのは織り込み済みです
あとは隙が出来たヤクザ共をガトリング砲で掃討しつつ、地下を目指します
それにしても通路が狭い分、的が絞りやすくて助かりますね!
「おっと、玄関口は大分賑やかですね」
寂れた郊外、廃病院の裏手にぴょこんと現れたシルエットはまるで兎の様であったが。生憎兎にしては大きすぎるし人間の言葉を解する筈も無く。
ロジャー・カニンガム(兎型歩行戦車RIT-17/S・f36800)はその単眼のカメラアイを職員通用口に向け、集音スピーカーたる兎耳を正面玄関のある方に傾ける。
「もうパーティは始まっていましたか」
電子音じみた声は音を為さぬ音。遅れてきた己はあの裏口からこっそりお邪魔する事にしよう、とロジャーの電子頭脳は告げる。あれだけ派手な陽動がなされていれば、裏口の方なぞ手薄に違いない――そう見込んでの事だ。
「ああ、落ち着いてください! 私は敵ではありません。追加の防衛戦力として派遣された頭脳戦車です」
入って中をあちこち探索していれば、流石に黒服ヤクザ達に出くわした。何せ非常事態である。どんなルートを通った所でエンカウント無しと言う事は難しいだろう。
「追加の……な?」
「なぁ、お前聞いてたか?」
「地下へ向かうよう指示されたので、通していただけないでしょうか?」
ロジャーは目の前のヤクザ達に要求する。男達は知らない、その言葉そのものが既にロジャーのユーベルコードである事など。
「ああ、通ってイイぞ」
「いや良くないだろ、本当にこいつ味方なのか??」
「ああ、もうお前等落ち着け、俺のアタマじゃ訳分からねぇ」
――揉めだした。通すと言った者は論理的思考力を失い、否定した者は冷静な判断力を失う。ロジャーの処遇一つにまともな思考すら出来なくなったヤクザ達は全く以て隙だらけにも程がある。
その間に彼らに向けられたのはガトリング砲。その銃口が鈍く光る事すら彼らは気が付かず――連続して火を噴けば、一瞬で蜂の巣となりm掃討完了。
「通路が狭い分、的が絞りやすくて助かりますね!」
さて、と物言わぬ黒服達を尻目にロジャーは更に探索を進める。目指すは地下にあると言う研究施設。
成功
🔵🔵🔴
堂島・アキラ
ほーん、オレのクスリEDENもそうやって作られてんのか?
だからなんだっつー話だがな。底辺の生き死にに興味はねえし。
オレが興味あるのは気持ちよく暴れられるかどうかだけだ。
敵の親玉はコソコソ聞き耳立ててやがるんだったな?
そんなに聞きたきゃ聞かせてやるよ。オレが大暴れするのを爆音でな!
ユーベルコードを発動して目に見えるもの片っ端からロケランで吹っ飛ばす!
扉も!バリケードも!ザコ共もみんな木っ端微塵だぜ!ハッハッハ!
っと、あんまりやり過ぎると建物が崩れちまう。地下への道は……黒服に案内させるか。
おいお前。コイツで吹き飛ばされたくなけりゃ道案内しな。
「ほーん、
オレのクスリもそうやって作られてんのか?」
堂島・アキラ(
Cyber×
Kawaii・f36538)は製菓会社の裏の顔を聞いた時、そんな事を曰った。彼女――いや、彼の可憐な姿はガワだけでその唯一の生体部分である脳髄はがっつりクスリに侵されているらしく。
サイケにハッピーな気分にさせるクスリとやらも、使って今のところ何とも無いのは企業の涙ぐましい人体実験あっての事――なのだろう。
「だからなんだっつー話だがな。底辺の生き死にに興味はねえし」
這いつくばって生きてる連中はどうだって良い。正義の為とかそんな崇高な使命なぞ知らぬ。
「オレが興味あるのは――気持ちよく暴れられるかどうかだけだ」
ニヤッとアキラはそう告げながら今回の現場に向かったのだ。
そして彼は件の廃病院を前にロケットランチャー片手に立つ。
「敵の親玉はコソコソ聞き耳立ててやがるんだったな?」
わざとアキラは声に出す。聞こえてンだろ?とせせら笑う様に告げる。明らかな挑発。
「そんなに聞きたきゃ聞かせてやるよ。オレが大暴れするのを爆音でな!」
ランチャーの砲口を建物に向けると容赦無く発射開始。歩く火薬庫たる彼の銃器は弾切れと言う腑抜けた終わりは無い。彼が満足行くまで火薬を弾けさせ、弾を吐き出す事が出来るのだ。
着弾地点から爆音が立て続けに響く。吹っ飛ばされる壁にドアにバリケード、そして黒服共。雑魚共が右往左往するその様子にアキラは狂喜じみた笑い声を高らかに上げるのだ。
「みんな、みぃんな木っ端微塵だぜ! ハッハッハ!!」
とは言え。あまりこの調子でやり過ぎると建物が崩れてしまう。目的は研究施設を潰す事であり、建物の物理的倒壊では無い。入り口に近づき、為す術も無く崩れたコンクリの下敷きになっている黒服一人の首根っこ掴んでアキラは笑って言った。
「おいお前。コイツで吹き飛ばされたくなけりゃ道案内しな」
「ひぎぃぃ……は、はい
……!!」
顎の下にロケットランチャー突きつけられた黒服ヤクザは悲鳴を上げながら、アキラを奥にある地下施設入り口まで案内するのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ポッピンメイド』
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POW : とっておきです!
【バスケットや鞄に仕込んだ銃火器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 人気商品ですよ!
【お菓子や違法薬物】を給仕している間、戦場にいるお菓子や違法薬物を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : たっぷり味わって下さいね!
自身が装備する【銃火器】から【特製の甘い毒の雨】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【毒】の状態異常を与える。
👑11
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『――――っ』
地下研究施設の奥、管制室で白衣の男は思わず機械化耳を押さえた。
地上の建物より襲撃者。それはこの施設を任された以上は予見すべき事だし仕方無い。
だが事態はある意味予測を遙かに超えていた。
『上の建物をも破壊する気か』
良すぎる聴覚も考え物だと舌打ち一つ。数多くの銃声に足音、轟音。余りにノイズが多すぎて正確な数が把握しにくい上に、微かに感じられた気配も突然消えたり移動したりする。
『厄介だね……侵入経路は最終的には一つになる訳だし、そこに防衛を集中させようか』
たとえ大軍だったとしてもそこまで広くない通路を通れる数は限られる。
ならば、防衛ラインは最下階に向かう唯一の階段一歩手前に敷く事にしよう。
『――と言う事で皆はそこまで退いてくれるかな』
『『はーい、ドクター!!』』
そして。
猟兵達は地下施設の階段を駆け下り、中のフロアには薬で寝かされ機械で繋がれた被験者達を見つける。
下手に機械を弄ると何が起きるか分からない。まずは最奥にいる責任者の所まで行き、証拠を抹消されたり万が一の自爆などをされぬ様に抑えるのが先決。
通路は入り組んでいたが、下に行くにつれて道幅は狭まり、一本道になるのが分かる。
幾つかの階を降りた先。階段前の広いスペースに彼女達はいた。
『ようこそ、襲撃者の皆様』
『あら、もっと大勢いるのではなかったんです?』
『おやおや、ドクターも見誤り……いえ、聞き誤りましたかねぇ?』
強化サイボーグであるポッピンメイド達は首を傾げながらも、各々銃火器を手に立ち塞がる。
『どちらにしてもお持てなし致しましょう』
『さぁさぁ、お帰り頂くか死んで頂くか、お選び下さいませ!』
『運良く死ななかったらドクターが治験に加えて下さるかも知れませんよ!!』
新田・にこたま
(サイボーグポリスたちに攻略を任せている間にしれっと真の姿に着替え)
別にここも大勢で突破してもいいんですけどね。
ただ、それだと道が狭くなって私としても煩わしいですし…悠々と一人で突破させてもらいますよ。
というわけで…ホールド・アップです。動くな。それがあなたたちにできる唯一のオモテナシです。
UCを発動し大声で勧告します。
勧告後は私の姿を見た敵は動いた瞬間にずんばらりんです。
極まった正義によるホールド・アップは悪の身体まで半減…両断するんですよ。
それでも動ける敵は撃ち抜いておきましょう。私は優しいのでちゃんとトドメを差します。
逃げるか死ぬか、選ばせてあげます。
まあ、私は悪は決して逃がしませんが。
「別に……ここも大勢で突破してもいいんですけどね」
と、新田・にこたまはあっけらかんと呟いた。それだと道が狭くなって煩わしいことこの上ないが故に、にこたまは一人で悠々とこの最下層にやってきた訳で。
そんな彼女が身に纏う制服は漆黒のテールコート。サイボーグポリスによる攻略の間にしれっと着替えてきたこの衣装こそ彼女の真の姿――悪を成敗する時に相応しき礼装と言っても過言ではあるまい。
『え、ポリスです?』
『サツには上が別のお菓子渡してるって聞いてますのにー』
「――それはさぞかし黄金色に輝いているんでしょうね」
賄賂と言う名の菓子の事だろう。上部腐敗には慣れたものだ。だが彼女は己の正義を貫く為に此処にいる。上がどうしようと知った事では無い。
「というわけで……ホールド・アップです、動くな!!」
にこたまは大声でサイボーグメイド達に勧告を放つ。無論、ただの言葉では無い。その命令はユーベルコードの力を篭めた絶対無比のものとなる。
『は? 動くなってナニサマのつもりです?』
「無論、見ての通り警察官です」
小馬鹿にする様に口元歪めたメイドの挑発に、にこたまもまた笑みで返してやり。そして言葉続ける。
「勧告はしました、動くなと。それがあなたたちにできる唯一のオモテナシです」
『いえいえワタシたちのオモテナシはこれから――……え?』
鞄に仕込んだ銃火器の砲口をにこたまに向けようとしたメイド達は、思いがけぬ身の異変に変な声を漏らした。
動いた瞬間、そのメイドの身体が正中線からスライドしたのだから。
「言ったでしょう、動くなと」
真っ二つに左右に分かれて床に倒れる敵の姿を見降ろし、にこたまはわざとらしく肩を竦めた。
極まりし正義によるホールド・アップ。それは悪の力を有する存在そのものを半減――即ち物理的に両断半減させるもの。
『この、何を――……がっ』
『え、どう言うこ――……うぐっ』
仲間の倒れる姿に思わず銃を構えたメイド達は次々と命令違反としてその身を真っ二つに処されていく。横一文字であったり袈裟懸けであったりするものの、真っ二つと言うのは全て等しい。
『う、ぐぐ……』
頭部が無事だった個体は身じろぎしながらも銃口をにこたまに向ける、も。
「そんなになっても動けるんですね、サキセルカのメイドサイボーグは」
タン、タン、と響く銃声は慈悲有る警官の放ったもの。
「私は優しいので。ちゃんとトドメを差してあげますよ」
屍を見下ろしていた視線を幸運にも命令を遵守していたメイド達に向け、銃をも向けて彼女は告げるのだ。
「――逃げるか死ぬか、選ばせてあげます」
ただし、たった一つの条件付きではあるけれど。
「まあ、私は悪は決して逃がしませんが」
つまり実質突きつけた選択肢は一つ――彼女達には死あるのみなのだと。
大成功
🔵🔵🔵
ドラッヘ・パンツァー
残念だが、機械の我に治験は無意味である。
"擬似感情機構"オフ……戦闘もーどニ移行シマス。
"サーチカメラアイ"作動、『賢竜の予知』発動。瞬間思考力ニヨル行動ぱたーん予測……完了シマシタ。
敵所持品ハ菓子類、及ビ違法薬物ト推察。
当機ハ生体ぱーつヲ非搭載、中毒ノ危険無ク摂取ガ可能デス。
給仕サレタ菓子類ヲ摂取後、口腔部センサーニヨル成分分析ヲ開始……合成甘味料、合成香料ヲ検知。
ソノ他幻覚物質、中毒性物質等ノ非合法成分ヲ多数検知。
違法薬物ノ所持ハ推奨サレマセン、脚部格闘機構ニヨル近接戦闘ヲ実行。重量攻撃ニヨル破砕ヲ行イマス。
大型筐体ノ当機ハ回避困難……各部損傷ヲ許容。検知えらーヲ無視シテ戦闘ヲ続行シマス。
「残念だが……」
ドラゴンがサイボーグメイド達の前に進み出る。蒼竜ドラッヘ・パンツァーは重厚な口振りで彼女達に告げた。
「機械の我に治験は無意味である」
『えー、生き物じゃないんですかー?』
『すごいすごい、よく出来てますね!』
ポッピンメイドは無邪気な笑み浮かべてはしゃぐ様に言い、銃口をドラッヘに向けた。
『面白そうだし、バラしてしまうのもアリでしょうか!』
『ドクター、本職はサイバネ工学ですし喜んで解体研究しそうです!』
その様子に軽く呆れながらも、ドラッヘは己の疑似感情機構をオフにして戦闘モードへと移行。何を言われようとこの先、機械的に判断処理しかしない――いや、出来ないのは都合が良かった。
彼女のサーチカメラアイが作動し、ポッピンメイド達を視界に捉える。高速で電脳が演算を開始。
賢竜の予知は相手の全ての行動パターンを予測し回避行動まで叩き出す……!
(「敵所持品ハ菓子類、及ビ違法薬物ト推察。当機ハ生体ぱーつヲ非搭載、中毒ノ危険無ク摂取ガ可能デス」)
ならば、メイド達の毒菓子給仕を敢えて受けても不利は無い。
「……完了シマシタ」
電子音の如き抑揚の無い声で彼女は告げる。
「ソノ菓子類、給仕願イマス」
『あれ、機械って仰いましたけどお菓子食べられます?』
『まぁ良いんじゃないでしょうかねー!』
メイド達は一気に距離を詰め、ドラッヘの口に向けてえいやっとお菓子を放り込む。見た目は西洋のブルードラゴンそのものの、牙並ぶ口の中に投げ込まれた菓子類はキャンディにマシュマロ、チョコにマフィンと様々。
「口腔部センサーニヨル成分分析ヲ開始……合成甘味料、合成香料ヲ検知」
『そうそう、お砂糖使って無いから虫歯になりにくいんですよ★』
「ソノ他幻覚物質、中毒性物質等ノ非合法成分ヲ多数検知」
『あれ、そこまで分析しちゃうんですか!?』
頬を膨らませて文句を言うメイド達。だがこの軽いノリもそこまでだった。
ドラッヘの後ろ脚が突然メイド達の足を掬う様に薙ぎ払われ、倒れた所を勢い良く踏み潰す。
『キャアッ!?』
「違法薬物ノ所持ハ推奨サレマセン、脚部格闘機構ニヨル近接戦闘ヲ実行――」
次にその重い尻尾を軽快に振り回せば、メイド達の腕から銃器やバスケットが叩き落とされ、前脚で全体重を篭めて飛びかかれば悲鳴とスパーク音が響き渡る。
「重量攻撃ニヨル破砕ヲ行イマス。大型筐体ノ当機ハ回避困難……」
『ちょ、突然暴れるとかヒドいです!』
『止まらないと撃ちますよ!!』
放たれる弾丸も何のその。この機体の損傷は今は厭わない。身体中に弾痕を刻まれながらも機竜は目の前の敵を蹂躙していくのみなのだ。
「各部損傷ヲ許容。検知えらーヲ無視シテ戦闘ヲ続行シマス」
機能停止に陥ったサイボーグ達を尻目に、尚も蒼き竜の暴嵐は止まらない。
大成功
🔵🔵🔵
沙・碧海
あれ?
こういう施設ってナースがいるもんじゃないの?
びっくりしただけでやることは変わらないんだけどね
エアシューズで走り、飛び上がり、床や壁も利用して縦横無尽に立ち回ろう
相手は銃火器を使うみたいだけど
めちゃくちゃなレーザー銃とかではなさそうだ
だから囲まれないように気を付ければとんでもない不意打ちとかは来ない……はず!
スペース的に隠れられる位置も限られてるからね
良い位置に陣取ってくれてありがとう
敵に接近できたらUCで積極的に攻撃
部位切断の技術で銃を持つ手を狙ったり足を止められるように狙ってみる
武器持ちのヒト型である以上四肢を封じられるのは痛いはず
飛んで跳ねて
いっぱい音を立てて暴れよう
よーく聞いとけよ
ロジャー・カニンガム
おやおや、メイドさんのお出迎えとは素敵な歓待ですね!
―ああ、気づかれてしまいましたか。
お察しの通り、私の後ろには多数の火力支援部隊が控えています
こうしてあなた方にターゲットマーカーを撃ち込めば、派手な花火がたくさん打ち上がるという寸法ですね
砲撃音でドンパチ賑やかにする事で、この先に控えるボスの聴覚にもダメージを与えられればいいですね。
そういえば、我々を治験に活用する可能性に言及していましたが、
私のような頭脳戦車は役立てるんですかね?
ははは、もちろんジョークですよ!
「おやおや、メイドさんのお出迎えとは素敵な歓待ですね!」
ロジャー・カニンガムは目の前のポッピンメイド達をその単眼で見回すと、ウサギ耳の様な集音機関をピコピコさせた。頭脳戦車と言うメカであれど、可愛い女の子が出迎えてくれると言うのは悪くないと思考する。
「あれ……?」
一方、沙・碧海は目の前のメイド達に何となく違和感を覚えていた。
「こういう施設ってナースがいるもんじゃないの?」
『ふふ、メイドもナースもご奉仕する点では一緒ですよー!』
『そもそも看護は必要無いですし!』
そう、被害者たる治験者達は患者では無い。元々は多少の差あれど健康体なのだ。段々薬剤投与によって衰弱させられている可能性は高い訳であるが、そこからの回復をさせるつもりは彼らには毛頭無い。
「成る程、つまりはここの責任者の助手でしか無いのですね」
「まぁ、びっくりしただけでやることは変わらないんだけどね」
納得したと頷くロジャーに対し、碧海は肩に担いだ段平を降ろしながら薄らと笑う。
「オレ達はお前達を一人残らず潰す、ただそれだけだよ」
そう告げて、碧海はタンッと床を蹴って飛び上がると間近にいたメイドに跳び蹴りを叩き込んだ。
『きゃっ!?』
「さて、さくっと済ませよ?」
一つ目の攻撃が決まった先から碧海は壁を蹴り、手にしたたちきりを横に振るう。肉を骨を断つ感触が武器越しに伝わる。当たった、と言うその感触は次の攻撃のスタートでもある。
そう――
舞う狼は何度でも何度でも、相手にダメージを与えればその刃を拳を脚を喰らい付かせる。
『くっ、迎撃しますよ!』
『撃て撃て撃っちゃえー!!』
メイド達は軽々動き回る碧海に向けて銃を向け発砲する。だがひとところに留まらない彼の動きに翻弄され、鉛玉の一つも当たる事は無く。代わりに銃を持つ腕を刃で絶たれ、身を支える足を払われて倒れるメイド達。
(「レーザー銃ではなさそうだし」)
線で撃つそれと違って点で襲い来る得物なら、囲まれなければとんでもない不意打ちは来ない……筈だ。
ダンッと強く床を蹴り、メイド達に急接近からの攻撃を連続して行う碧海。途切れぬ猛攻に対し、メイド達も隠れる場所が無い中では狙撃も不意打ちも出来ない。実に良い位置に陣取ってくれた、と少年は笑みを零す。
一方、頭脳戦車を前にしたメイド達はジリジリと距離を計って銃火器をそれに向けていた。
『まさかこれで全部って訳じゃないですよね、襲撃者の皆様?』
「――ああ、気付かれてしまいましたか」
『え?』
「お察しの通り、私の後ろには多数の火力支援部隊が控えています」
ロジャーは機械合成音声で淡々と告げる。半分はハッタリだが半分は真実。
ウサギが身を屈める様にすれば、彼の背中の砲台がメイド達の方を向いた。
ずどん。なかなか響く砲撃音で女達のド真ん中に一撃叩き込み。流石に強化サイボーグ達はその一撃で破壊される事は無かった様だが。
「こうしてあなた方にターゲットマーカーを撃ち込めば、派手な花火がたくさん打ち上がるという寸法ですね」
『花火……ですって??』
砲撃の中心、虫の息で倒れるメイドに刻まれたマーカー。そこを狙い撃つ様に、ロジャーの背後には百を優に超える頭脳戦車隊が彼同様に大砲をメイド達に向けていたのだ。
「標的を設定。
火力支援部隊による追撃を実行します」
その言葉から刹那、幾多もの砲台より叩き込まれる砲弾の雨。いや、雨と言うには多少大きすぎるか。
悲鳴が上がり、一方的な蹂躙。辛うじて撃たれる銃火器の甘い甘い毒も、機械であるロジャーには無意味。
「うわぁ、そっちも派手だねぇ」
飛んで跳ねてと暴れていた碧海はヒュウっと口笛鳴らす。いっぱい音を立てて次に控えるボスの聴覚に影響を与えようと言う考えは一致していたらしい。
「ええ、賑やかにして差し上げなくてはね」
「だね。ドクターとやら、よーく聞いとけよ」
砲撃から逃れたメイドの四肢を狙って碧海は迎撃しつつ、姿見えぬ敵に告げる。彼の後ろには四肢にダメージ負って動けぬメイド達。武器持ちのヒト型である以上、手足を封じればほぼ無力化出来るのだ。
「ところで…私達を治験に活用する可能性に言及していましたが」
ぴょこん、と倒れ伏すメイド達に向けてロジャーは問う。
「私のような頭脳戦車は役立てるんですかね? ――ははは、もちろんジョークですよ!」
返事すら待たず、追撃された砲弾にて残るメイドを一掃した。オブリビオンである以上、残す必要は無い。
全ては骸の海に還すのみ。そう、この向こうに控える存在もまた。
大成功
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第3章 ボス戦
『『天耳の工学者』未丘・春真』
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POW : 宸碧玉
自身と武装を【光学迷彩結界】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[光学迷彩結界]に触れた敵からは【視力と戦闘意欲】を奪う。
SPD : 国士無双
レベルm半径内に【火風水地電氷毒樹鋼光闇無の十二属性の鉱石】を放ち、命中した敵から【ダメージと共に運と活動エネルギー】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 天衣無縫
自身の【機械内耳に仕込まれた音響兵器システム】から【脳を揺さぶる程の超高周波音】を放出し、戦場内全ての【生物に大ダメージを与え一時的に聴力と発音】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
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ポッピンメイド達を退け、猟兵達は最後の部屋に繋がる扉のスイッチを押した。
左右に開く自動ドア。その奥は随分と薄暗く、非常用ランプや様々な機器が放つ灯り、モニタの光しか見えない。
幸い、部屋に入ってすぐの壁を手探りで探ればすぐに部屋の灯りのスイッチに触れられた。
突然明るくなったその室内に、猟兵達は目を慣らすのに僅かに時間を要したが。
奥の椅子に座った男は急な光に目を細める事すらしないのだ。
『――ようこそ、招かれざるお客さん』
白衣の男は此方を見ずにそう告げた。
その揺れた朱の髪色が多少の既視感を与えるかどうかはそれぞれあろうが。
『俺はここの責任者を押しつけられ――任されてる、未丘・春真と言う者だ。名刺交換はご遠慮しとくよ。どうせ使い捨ての身なものでね、用意してないんだ』
自嘲気味に春真は告げた。緩やかな笑み、目は笑ってないのか見えてないのか光は乏しい。
『随分と派手に、そして迅速に来てくれたからさ……ここの文書資料やデータの転送・消去は全然間に合ってないんだよね』
独り言の様に告げながら白衣の男は立ち上がるとその両手に銃を構える。その周囲には幾多もの鉱石が半実体で浮かび上がった。
『この施設はもう終わり。証拠抹消が今の俺の最後の仕事。紙の書類もまだ燃して無いしね。時間稼ぎ、させてもらうよ』
己が使い捨ての駒と認識した上で男は告げる。オブリビオンとは過去から蘇る事で補充が効く、実に使い勝手の良い人材であるのだと示すかの様に。
『それとさ』
春真は銃を天井に向けて一発撃つ。電灯が一つ射貫かれ、部屋がその分暗くなる。
『眩しいと思うんだよね。俺、暗い方が好きだな』
――視力より聴覚を頼りにするこの男にとって、暗所は己の領域。
それに灯りを全て破壊されたらその隙に逃げられる可能性もあるだろう。
施設の違法性を証明する為、データの消去が完了する前に――この男を倒し、骸の海に叩き落とせ。
沙・碧海
あ、あんたが責任者?
じゃあ長々と話す必要はないよね
狩らせてもらうよー
とりあえず鉱石に対応しないとね
オレに当てられるのも嫌だけど、あれで灯りを壊されるのも嫌だな
エアシューズを履いた足で飛んで跳ねて、片っ端から落としてくしかないか射出された鉱石は出来るだけ追跡して、たちきりでぶん殴って破壊していくよ
最悪数発は身体で受け止めるくらいの覚悟で
九龍生まれでここまで生き延びてこれたんだ
運の余裕はあると信じて
ある程度攻撃に対処すれば反撃のチャンスを探る
なるべく相手には接近したいな
耳がいいから難しいかもしれないけど……
でもその分このUCは効き目がありそう
オレの咆哮、あんたのよく聞こえる耳に叩き込んでやるよ
「あ。あんたが責任者?」
沙・碧海は今ほど名乗ったその相手に確認する様に軽く首を傾げれば、白衣の男は肩を竦めて頷いた。
『そう、不本意ながら、ね』
「じゃあ長々と話す必要はないよね」
碧海は手にした"たちきり"を手の中でくるりと回した。狼の尻尾がゆるりと揺れ、その物騒な得物が薄明かりに鈍く光る。そして少年は口角を上げて一言告げた。
「狩らせてもらうよー」
それは実にゆるっとした、宣戦布告。
応じる様に春真の周囲に浮かんだ鉱石達が動き出す。狙いは碧海か天井の灯りか。
(「当てられるのも嫌だけど、灯りを壊されるのも嫌だな」)
エアシューズを履いたその動きは軽快だ。飛んで跳ねてと野性味溢れた動きで放たれた石をかわし、出来るだけ動きを追跡した上で得物であるたちきりの腹で殴りつけ叩き落とす。
『――君か。さっきも随分と跳ね回っていたのは』
春真はその動く音を聞き、光薄い瞳で碧海の方を向くと両手の銃も其方に向けた。
「覚えててくれて嬉しいね? ってそっちも使うの!?」
消音器を介した銃声は小さく。向けられた銃口から弾はかわしたが代わりに鉱石が身に当たる。
「――チッ」
当たった箇所から急激に力が抜けるのを感じる。奪われる活動エネルギーと――所謂運気、か。
戦いの場において、運とは時に命の有無をも左右する。ほんの僅かな幸運で生き残り、そして死ぬのは九龍生まれだからこそ碧海は識っている。
(「ここまで生き延びてこられたんだ」)
自分はツイているのだから。多少の運を奪われた所で幸運に恵まれた自分には影響無いと信じて彼は足を止めずに跳ねる様に動き、銃撃も鉱石も捉えさせない。
『幾つか当たったよ、ね?』
春真が問う。見てた筈では、と碧海は思うも。
「あんた、目が良くないだろ?」
この男、視覚では捉えきれないのだと気が付いた。ならば、と碧海は壁を蹴り――たちきりを鉱石の方に叩き付ける様にぶん投げ、自身は反対側……春真に飛びかかる様に跳んだ。
回転しながら鉱石が刃に当たる高い音。そこより急激に向かってくる心音を聴き、春真は咄嗟に銃口を向ける。
碧海の身を穿った弾丸は急所を大きく外して貫いた。良かった、運はまだ充分残されていると痛みに確信しながらも、少年は大きく息を吸い込んだ。
「ーーーーッッ!!!」
それは声にならぬ声。人狼の激しい咆吼。常人の耳すら破壊するそれは、闘争心溢れる叫び声にして攻撃。
『――ッガアァ!?』
常人を遙かに超える聴覚有した相手にはまさに致命的だろう。耳を押さえ蹲った春真の姿に、碧海は確信する。
「やっぱり効き目あったみたいだね」
撃たれた箇所を抑えながら少年はしたり顔で呟いた。
「オレの咆吼、あんたの良く聞こえる耳にはさぞかし響いただろ?」
たちきりを拾い上げ、肩に担いで碧海は白衣の男に笑いかけるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドラッヘ・パンツァー
オブリビオンと機械。替えが効くという点で共通するとは、中々にわからぬものであるな。
みすみすアドバンテージを渡すつもりはないが、我も暗視機能の準備をしておこう。
さて、それでは……疑似感情機構停止、戦闘もーど移行。
最終局面ト判断、各部火器及ビゆーべるこーどノ使用ヲ解禁。
敵耳部ニ音響兵器ヲ確認、性能ヲ簡易分析……完了シマシタ。
当機ハ非生命体、影響は聴覚せんさーヘノ一定だめーじノミト予測。
角部電子攻撃装置ヲ起動、『賢竜の命』ヲ実行……敵音響兵器ヘノはっきんぐヲ開始。
しすてむ掌握及ビ、敵ヘノ音波逆流ヲ試ミマス。
当機ヘノ命令ハ敵ノ殲滅デス、製品寿命ヘノ影響ヲ無視。はっきんぐヲ限界時間マデ続行シマス。
ロジャー・カニンガム
いやはや、どこの企業も末端は大変ですね
ですが、あなたの最後の仕事をやり遂げさせるわけにはいきません
ここにある宝の山はそのまま置いて行って貰いますよ
…おや、成程。
聴覚のアドバンテージを活かす為に、視覚に頼れない状況を作る作戦ですか
しかし人間には有効でも、頭脳戦車私のカメラ目は暗視モードに切り替える事で、暗闇の影響はほぼありません。
お返しに私イチオシのロックを音響弾としてバラ撒きます
よく聴こえる耳には少し刺激が強いかもしれませんね!
おっと、敵も音響兵器を搭載していましたか
私は生物でないので効果は限定的ですが、味方の被害は無視できません
スタンワイヤーの高圧電流で破壊してしまいましょう
施設最奥部に到達し、責任者たる男と対峙した二機の頭脳戦車は各々相手の言葉に感想を抱いていた。
「いやはや、どこの企業も末端は大変ですね」
ロジャー・カニンガムは兎耳型集音機構をピコピコと動かしながら肩竦めるような仕草すら見せた。傭兵でありカンパニーマンでもある彼は企業の歯車たるやを知るのだろう。
「オブリビオンと機械。替えが効くという点で共通するとは、中々にわからぬものであるな」
青竜の一際大きな外装を有したドラッヘ・パンツァーもまた、そんな事を呟いた。結局、ヒトも機械もオブリビオンも使い捨てにするのが究極のブラック企業たるメガコーポたる所以か。そうなると即戦力をタダ同然で補充出来るオブリビオンは何と使い勝手の良い人材か。
『そう。骸の海の過剰投与でオブリビオンにしてしまえば、それは過去の存在になる。何度でも骸の海から蘇る事が出来る様になる――と』
自嘲気味に春真は告げる。だから死ぬのは別に構わないと。悟った様に男は告げた。
「ですが、あなたの最後の仕事をやり遂げさせるわけにはいきません」
ロジャーは淡々と事務的に告げる。
「ここにある宝の山はそのまま置いて行って貰いますよ」
『おやおや、お二方ともそんなに睨まなくても』
持ち上げられる銃口は天井の灯りに向けて。数発の弾丸が当たる都度、部屋の明度が落ちていく。
「……おや、成程。聴覚のアドバンテージを活かす為に、視覚に頼れない状況を作る作戦ですか」
「みすみすアドバンテージを渡すつもりはないがな。我も暗視機能の準備はある」
「ええ、人間には有効でも……私達頭脳戦車のカメラ目には暗闇の影響はほぼありません」
『ああ、やっぱり? それを確認したかったんだよね』
見えているか否かで対応も変わる、と。春真は二体の頭部に銃口を向けて引き金に指をかけた。
『耳障りなモーター音とディスク音、どっちから消されたい?』
タン、タンと消音器を介した銃声。左右に分かれて二体は素早く回避し、ロジャーは手始めにと音響弾を春真に向けて放った。
「お返しに私イチオシのロックをお聞かせ致しましょう――よく聴こえる耳には少し刺激が強いかもしれませんね!」
『ぐっ
……!?』
耳に突き刺さる音響に白衣の男は足を止め、顔を顰めて耳を押さえた。強すぎる音はやはり弱点、らしい。
「さて、それでは……疑似感情機構停止、戦闘もーど移行」
その間にもドラッヘは電脳を戦闘モードに切り替え。遮断した感情の元で機械的に戦況を分析開始。
「最終局面ト判断、各部火器及ビゆーべるこーどノ使用ヲ解禁。敵耳部ニ音響兵器ヲ確認、性能ヲ簡易分析……完了シマシタ」
「おっと、敵も音響兵器を搭載していましたか」
ロジャーは春真の銃撃を引き付けながらもドラッヘの分析結果を聞いてコクリと頷いた。
「対生物仕様ト判断。当機及ビ弊機ハ非生命体、影響は聴覚せんさーヘノ一定だめーじノミト予測」
「ふむ、私は生物でないので効果は限定的ですが――被害は無視できませんね」
二機のやり取りを聞きながら、春真はおやおやと苦笑い浮かべて告げた。
『困るな、勝手に俺の事を分析するなんてさ。それに……明らかに生き物じゃない君達には使わないよ? 俺自身負担が大きいからね、あれ』
「使用者ノ脳髄ニモだめーじヲ与エルものト推測――角部電子攻撃装置ヲ起動」
ドラッヘは頭部の角を前に向ける前傾姿勢を取り、ユーベルコードたる攻撃プログラムを起動した。
「『
賢竜の命』ヲ実行……敵音響兵器ヘノはっきんぐヲ開始」
『……!! させるか
……!!』
抑揚無き電子音声に対し、焦る様な春真の声。己の能力が諸刃の剣たる事を知るが故に、反動ダメージのみを受ける訳には行かないから使わぬと彼は告げていたのだ。
両手の銃をドラッヘに向ける春真。だがそれを阻害する様にロジャーのボディからスタンワイヤーが発射され、男の機械腕にアンカーが突き刺さる。
「先に壊してしまうのもアリでしょうかね」
高圧電流がワイヤーを伝って走る。それは男の機械化された四肢の配線をズタズタに焼き、生体部分との繋ぎ目でショートを起こして小さな爆発を生み出した。
『ぐはっ
……!!』
その間にもドラッヘによるシステム掌握は完了し、音響兵器の逆流が開始された。
『――――!!』
響くは超高周音と呼ばれる音域の外にある振動。脳を揺さぶるようなそれに、男は膝を着き蹲り、その顔色を蒼白とさせている。
『や、やめろ……苦しい、止め、ああああっっ
……!!』
「おや、死ぬのは怖くない様子でしたのにね」
脳を揺さぶる責め苦に悲鳴を上げる男の様子にロジャーは皮肉を込めて首傾げ。
「当機ヘノ命令ハ敵ノ殲滅デス――製品寿命ヘノ影響ヲ無視。はっきんぐヲ限界時間マデ続行シマス」
「そちらも、あまり無理なさらないで下さいよ?」
人間じみた抑揚でロジャーの電子音声は告げるも、ドラッヘは己の電脳の限界ギリギリまで白衣の男へ攻撃を続けるのであった。
大成功
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新田・にこたま
…似てますね。いえ、大した問題ではありませんか。
一度位置を補足した、部屋の形も見た、敵の形状も把握した…これで見失うわけがありません。
UCを発動しゾーンに入れば暗かろうと部屋の形状を完全に把握した状態で動くことが可能。敵が攻撃を仕掛けてくるなら視聴嗅覚を封じられていても殺気を感知し回避とカウンターを返すことは可能。敵を視聴嗅覚で感知できなくとも敵が動いた時の空気の流れは私のサイバーアイなら見切ることは可能。
…なので、敵の頭をボールであると認識し、奪い取りましょう。
知り合いと似た顔を殺すなんて楽しい経験、中々できることではありませんからね。その体験をさせてくれたことには感謝しておきますよ。
「……似てますね」
責任者を名乗った男の顔を見、その名を聞き、新田・にこたまは小さく口に出した。
「――いえ、大した問題ではありませんか」
来る前に、もう一人の未丘は言ってたのだから。遠慮無く――ぶちのめせ、と。
『へぇ……?』
聞こえていたのだろう。既に猟兵達の攻撃を身に受け、機械部品をあちこちショートさせながらも春真は辛うじて銃を握りしめた。
『あれが、警察官のお嬢さんと。そう……面白いや』
男は笑みを浮かべた。皮肉では無く、素直な笑み。
『じゃあ俺の残る全力を以て行かせて貰うよ。失礼の無い様にね』
そう告げれば春真の姿が溶ける様に消えていく。光学迷彩結界を発動したのだろう。視聴嗅覚による感知は不可能――にこたまは咄嗟にそう判断する。現に彼女の視聴覚センサーからは検出不能になっていたから。
けれども。彼女は冷静に部屋の空気そのものを読む。一度位置は捕捉した。部屋の形も見た。敵の形状も、負傷具合も把握した――これで見失う訳が無い。
「既に奇跡の
領域は展開済みですから……!」
視覚も聴覚も要らない。ジェノサイドボールの選手に必要なのは気配そのものを読む事――感知すべきは殺気、そして空気の流れそのもの。動きは喩え迷彩で隠れても隠しようが無い……!
「そこ……!」
聞こえぬ銃声から飛んできた銃弾を回避する。そのまま弾道の開始地点に向けて飛びかかり、特殊警棒を振り抜いた。
『うぐっ!?』
一瞬聞こえた相手の悲鳴。確かに感じた手応え。無論、結界に触れたからには戦闘意欲が奪われていくのを感じるが、それでにこたまが闘志の炎を絶やす事は有り得ない。何故なら。
「誰にも、私を止められません!!」
無尽蔵に湧き出るは正義の心。全ての悪に正義の鉄槌を下し滅するまで、彼女の戦闘意欲が消え去る事は無い!
空気を震わせる弾丸は警棒で逸らし、身を捩って回避する。命を奪うが如く多くの敵が向かってくるジェノサイドボールの試合と比べれば温くすら感じる。
「
頭は……そこですっ!!」
サイバーアイ越しの空気の流れ。リバウンドしたボールを奪いに行く様に床を蹴り、その片手で掴み取る――春真の顔面に手をかけ、そのまま叩き付ける様に勢い良く押し倒すとホールド体勢に移行した。
「知り合いと似た顔を殺すなんて楽しい経験、中々できることではありませんからね」
迷彩も解け、再び顕わになった春真の首をボールの様に抱え込み、にこたまは口角を上げて相手の顔を見る。間近で見れば……やはり似てる、が、別人だとハッキリ認識出来た。彼が誰であるか、今はどうでも良い事。
「その体験をさせてくれたことには感謝しておきますよ」
『――感謝の代わりに、一個だけ聞かせてくれる? どうせ今の俺は君に殺られるんだし』
彼女の手を両手で押さえて必死に抗ってはいるものの、既にダメージは限界を迎えているのだろう。口振りは最早これまでと悟ったかの様で、春真は彼女に問うた。
『俺に似てるって君の知り合いさ……元気にしてる、かな?』
「……ええ。先日も派手に懐を空にする程度には」
『――そっか――』
なら、良かった……と小さく零し。答えに安堵したかの様に、男はそこで抵抗を止めた。
同時に。にこたまの強靱な腕力は頸椎からその頭を引き千切った。まるでボールを対戦相手から奪い取るかの様に。
「ゲームセット。そして任務完了ですね」
立ち上がり、鈍い音を立てて床にバウンドしたそれを見下ろしたのは一瞬。首も身体も砂の様に消えて行くオブリビオンの最期を見届け、にこたまは奥にあった端末を手早く操作してデータ消去を停止した。
証拠が揃っている以上、警察も重い腰をあげざるを得ず。被験者達は救助され、この施設を運営していた子会社は最早摘発されるのみだろう。
メガコーポ傘下にあると言う証拠も見つかるが、まだ其方に切り込むには早い。子会社のした事と切り捨てられるのがオチだろう。
――けれども猟兵達は抗うのだ。いずれは盤石たる支配を瓦解させるその時まで。
大成功
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