3

タイトル「金よりも大切なもの」

作者：バロ

●映画撮影に大切なもの
「カーーーーット！！だめ、全然ダメよ！」
　低い声で女口調の厳つめの男性映画監督は頭を悩ませていた。映画「金より大切なもの」をワンシーンで悪徳議員に詰め寄るヒーローで行き詰まってる様子だった。
「こう、なんていうの？迫力よね！それが足らないと思うのヒーローの力とか駆使して脅しにかかるでもいいんだろうけど…一般の俳優のあなたにはそれは無理なんでしょうけど…」
　そこにこの映画に出てくる悪の親玉のオブリビオン役の「ゴールドラスト」の俳優が提案してきた。
「あの、猟兵に頼んでみてはどうでしょう？彼らならそれが可能なはずですし…」
　っと発言した瞬間、強面監督はゴールドラスト役の頭をひっぱたいて「それよー！」っと目を輝かせていた。
「早速、呼び寄せてちょうだい！スタッフー！今すぐ走ってー！」
「ひ、人使いが荒いぜー！」

●グリモアベース
「といった依頼が予知されました。どうやら特に被害のない事件ではないですが、どうやら映画撮影の協力者を求めている様子ですね。」
　バホ・トス（砂と魂の守護神・f36061）はグリモアベースで猟兵たちに語りかける。
「なのであなた達には映画の撮影に出てもらえるようにお願いしに来ました。タイトルは……」
　バホはちらっとメモを見る。
「金より大切なもの、ですね。詳しい内容は現地の映画監督に聞いてください。ではよろしくお願いします。」
（公開されたら見に行きましょうか…。）
　っと心の中で呟いて猟兵たちを現地に転送させた。

第1章 冒険 『腐敗した議員』

POW   :    本人から自白するまで脅す。 SPD   :    悪者との繋がりを暴く。 WIZ   :    汚職を見つけて告発。 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　猟兵たちが現地に到着すると映画スタッフたちは行き詰まった例のワンシーンの打ち合わせやら小道具の準備をしていた。

　猟兵たちに気づいたら映画監督は猟兵たちにワンシーンの説明をした。

「このシーンはゴールドラストの部下である悪徳議員に詰め寄るシーンよ。この悪徳議員はゴールドラストの居場所を知ってる唯一の人物ってわけ。それと映画の内容だけど。」

　映画監督は台本をペラペラっとめくっていって猟兵たちに見せる。

「この街の金を搾り取ってるゴールドラストに金だけでは世を覆すことは出来ないとわからせる映画よ。その大切なものっていうのは猟兵のあんたたちに任せるわ、愛でも友情でもなんでもいいわ。とにかく迫力よ！迫力！それがほしいの！頼んだわよ！あーたたちの演技力に期待してるわ！撮影開始よー！」

　映画スタッフたちはせっせと撮り直しの準備をしている。


「それじゃあワンシーンを撮るわよー！ゴールドラストと繋がってる悪徳議員に問い詰めるところから始めるわ！準備いいわね！？」

　予知によって…もとい依頼を受けた猟兵たちはヒーローズアースの撮影現場に転送されて監督にオーディション込みでワンシーンの撮影をしようとしていた。

　フラーウム・ティラメイト（因果獣と因果を喰らう者『オベイ』を宿す探究者・f38982）は緊張をほぐそうと深呼吸してハッキリ元気よく返事を返した。映画監督は指でカウントをしたあとカチンコが音を鳴らす。

「残念ですが…貴方の悪事は分かっています。」

　フラーウムは用意されていたゴールドラストの違法な物的証拠を見せる。だが、それも映画のためのダミーの道具だ。悪徳議員役はセリフを言おうとしたが突如に因果獣の杖が因果獣ベルフェゴールに変身しボディビルのようなポーズをしてアドリブを入れだした。

『金…確かに大切だ、だが俺は愛！情熱！筋肉！』

「ちょ！！」

　勝手に現れては好きにやりだし早口だがギリ聞き取れる喋り方のベルフェゴールに目をまん丸にして止めようとしたが、さらにゲストは増えた。

　因果獣のスマートフォンが因果獣王イルミリアと変わり、聞き取りやすい早口でアドリブを入れる。

『人には違う価値観がある…君もお金が大切なように俺は妻と筋肉を愛している！』

『だがお金のみに執着していれば大切な物が見えなくなる…周りを見て行動するべきだったな…』

　フラーウムの装備している因果獣の物が次々と変身してもはや魑魅魍魎のような撮影現場になってしまった。

「と、とにかくお金が全てではありません！観念してください！」

　目をぐるぐるしながら自棄気味に悪徳議員役に指をさして引きつった笑顔でアドリブを言ったフラーウム。正直正気度がギリギリの悪徳議員役、だがプロ魂で演技をしてワンシーンを終えた。

「…うん！やっぱり迫力が違うわ！」

　映画監督の目はキラキラしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　次々と撮影に参加していく中で水心子・真峰（ヤドリガミの剣豪・f05970）の番が回ってきた。人助け程度にと緊張感を出していなかった水心子、悪徳議員役と映画監督、そして水心子と3人でワンシーンの打ち合わせをしたあと配置に着く。

「じゃあ行くわよー！」

（相手を敵と思って大将の居所を吐かせる気持ちでやればいいのだな？）

　そして映画撮影の道具であるカチンコの音が鳴ると悪徳議員役のセリフが始まる。だが、水心子はアドリブを入れようと悪徳議員役のセリフが言い終わる前に刀を抜いて悪徳議員役の真横の壁に突き刺す。

「ひぃ！！」

「御託を並べるな…お前らの悪徳の証拠を掴んでいる。頭の居所を吐かぬなら切り捨てようか。」

「しゃ、しゃべる！しゃべるから殺さないでくれー！（は、迫力がやべぇ〜…す、少しチビったぜ……。）」

「カーット！！すごい緊迫があって迫力満点よ！あなた最高だわ！」

「ふぅ、すまなかった。演技とはいえやり過ぎたかもしれない。」

　刀を鞘に納めて悪徳議員役に頭を下げた水心子。

成功 🔵​🔵​🔴​

「はぁ、めんどくせぇ。けど…」

　撮影現場に転送された猟兵のひとりの青原・理仁（青天の雷霆・f03611）は控え室のソファーで仰向けに寝転び気だるそうにしていた。だが心の奥ではどのように演じようかイメージトレーニングをしていた。

（ただ正義のヒーローっぽくやるのもだるいな…そうだな…。）

「本番でーす！」

「……よし。」

　どうせなら俺流で敵を脅すところを見せつけるのも悪くねぇだろっと密かに気合を入れる青原。撮影現場では映画監督と悪徳議員役の俳優が打ち合わせをして、監督が青原に気づいて「こっちよー！」っと手を振って歓迎する。

「それじゃ！いっちょド派手な演技をよろしくね！本番！」

「ド派手でいいんだなぁ？」

　ニヤッと笑って撮影開始の合図と共に青原は悪徳議員役の胸ぐらを掴んで壁に押付けた。

「ひぃ！」

「おい、さっさと大元の頭の居場所吐けよ…さもねぇと二度と動けねぇ体にすっぞ？」

　ドスの効いた声に冷たい眼光。その迫力に思わず悪徳議員役の俳優の足は震えてやや早口でセリフを言う。

「カーット！素敵な迫力ねぇ！痺れるわぁ〜！」

「なら俺は次のシーンまで楽屋で寝とくぜ？」

　悪徳議員役の胸ぐらを話して手を挙げながら戻っていく青原。

成功 🔵​🔵​🔴​

第2章 ボス戦 『ゴールドラスト』

POW   :    ゴールドラッシュ 【豪腕から繰り出す連撃】および【極短距離の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【金に物を言わせて雇った傭兵ヴィラン軍団】の協力があれば威力が倍増する。 SPD   :    「見るがいい！これが金の力だ！！」 【金に物を言わせて手に入れた便利な発明品】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 WIZ   :    イミテイション・ゴールド 合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【紙幣や金塊】を作った場合のみ極めて精巧になる。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

「次のシーンはいよいよゴールドラストを追い詰めて逮捕するシーンよ！」

　ゴールドラスト役の服の下には特殊繊維出できた防護チョッキ、さらに来ている服は耐衝撃に強い繊維で作られている。

「ゴールドラストに攻撃が当たっちゃっても構わないわ！うちの俳優は頑丈だから♪」

「不安しかないっす……。」

　ゴールドラスト役は人遣いの荒い監督に小さな声で。

「あんたがオブリビオンだよ…。」

「何か言ったかしら♪」

「なんでもないでーす！配置につきまーす！」

　そして映画のセットが着々と進んでいった。


「それじゃあ次のシーンよ！いよいよ悪の親玉「ゴールドラスト」との最終決戦よぉ！」

　ゴールドラスト役の俳優と映画監督が話し合ってるところにエリュファシオン・アルティウス（“やんきー”を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208）がかなり張り切っていた。憧れていた己の『やんきー』。それを夢見て今までの成果を映画として残るからであろう。

「本番入りまーす！！」

（キタァー！）

　用意された舞台は社長室のような広い部屋のセット「金で雇われたヴィラン軍団」役の配置も完了してゴールドラストも準備万端だったが心の中では不安がっていた。

（手加減してくれよぉ？猟兵〜…。）

　そしてカチンコが鳴らされて撮影が始まる。

「君は悪しき実業家だったらしいね…」

『オォォー』

　中性的で優雅な雰囲気を漂わせて髪をかきあげてセリフを言う。これにはオーさんと呼ばれる人物も歓声の声。

「本当にお金が全てであろうか？お金があれば病院に行ける。美味しい物を食べれる。好きな物が手に入るはずなのに君は満たされていない…なぜだろう？何でも簡単に手に入ってしまうからだ。つまらない、それが答えだ。」

「何を言うか！満たされんから何もかも金と｜権力《ちから》で奪い続けているんだよぉ！ワシの欲が消えぬ限り庶民共から何もかも奪ってやるわ！」

「君が実業家になる前は？辛かっただろう？挫けそうになっただろう？でもなりたい自分になれた時…嬉しかったはずだ！私が長年の夢『やんきー』になれたようにね！」

「ハッ！「くだらん！」あんな汚れたハイエナどもになりたいとは程度が知れた神だなぁ！ガハハハ！」

　演技とはいえ少しカチンときたエリュファシオン。優雅な雰囲気が一気に消えた瞬間だった。

「じゃあパラドックスバトルだ！パラドックスバトル！これに負けたら私の夢をくだらないと言った事を謝罪してもらおう！」

　時間逆行矛盾の結界(パラドックスゾーン)を部屋の中に覆い、念動力を拳にまとった。

「（余計なアドリブ入れちまったぁ！）お前たちやれー！」

　心の中で後悔したゴールドラスト役だがここで撮影を終わらせるわけにもいかない。ヴィラン軍団はゴールドラスト役とともに突進攻撃を仕掛けようとするが。

「ごらぁ！ごらぁ！ごらぁ！次は君だ！ゴールドラスト！ごらぁぁぁ！」

「えっ、ちょ、まっ！」

　ヴィラン軍団役がなぎ倒され、念動力と属性の纏った拳がゴールドラスト役の頬を捉える。

（顔面は無防備だー！！）

　ゴールドラスト役が吹っ飛んで壁にめり込み、エリュファシオンは拳を天に掲げた。

「パラドックスバトルは私の勝ちだ！ごらぁ！なんてね！」

『オォォー！』

　これにはオーさんもまた歓声の声を上げて喜ぶ。

「……いいのが撮れたわ！」

　映画監督は目をきらきらして涙を流していたという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「次のシーンは……」

　映画監督と「ゴールドラスト」役の2人は次のシーンのやり取りをしていた。小道具の設置やカメラの調整などをしてどうやら周りもやる気のようだ。

　春夏秋冬・ちよ（旅する老猫・f19400）はその様子を茶を啜りながら微笑ましくその様子を見ていた。

「今の映画はとても本格的ね。昔とは大違い。」

「まぁどうでもいいが、あんたは出ないのか？」

　マホルニア・ストブルフ（欠けた年代記・f29723）が春夏秋冬に問いをなげかけてそれに笑顔を向ける春夏秋冬。

「私はもう歳なので。」

「私も今回は見てるサイドだな…代わりにあの猟兵が出るらしいが。」

　桜色の髪を持ち頭に桜の枝が生えている桜の精、雪代・桜花（桜仙・f23148）が映画監督とやり取りをしていた。

「わかりました、じゃあその通りに沿って細かいところはアドリブって感じですね？フフッ、国民的スタアみたいで心が踊ります。」

「それじゃ本番に入ってちょうだい！」

　映画監督の指示の元で配置に着く雪代。そして合図とともに撮影が開始されてカメラが回る。

「貴方の陰謀もここまでです。街を金の力で支配なんかさせません！」

「馬鹿なことを言え！全ては金の力で解決するものよ！」

「ほほほっ。とても迫力があるわね「ゴールドラスト」役の方は。」

　撮影を見学していた春夏秋冬は楽しそうに笑いながらまた茶を啜った。マホルニアも「へぇ」っと少し興味なさげだがその演技力には関心が着いていた。

　そしてシーンの掛け合いも終わり銃の打ち合いへと発展していく戦闘シーンへと代わる。雪代は軽機関銃で「ゴールドラスト」役に当たらないように上手くスレスレで制圧射撃の要領で弾を撃っていく手下も防弾チョッキを着ていて当たっても安全なため上手く倒される演技をする。

　用意された小道具や背景はボロボロになっていき、ゴールドラスト役も弾切れの演技を見せる。雪代は近づいて軽機関銃をゴールドラスト役の頭に突きつける。

「もう手は尽きましたよ。観念してください！」

「ぐっ…金の力で優秀な駒も用意したのに…くそ！」

「カーット！よかったわよアータたち！」

　っと映画の終盤シーンを終えてスタッフや映画監督は拍手を送り、ゴールドラスト役はヒヤヒヤしたのかひたいの汗を拭っていた。春夏秋冬も拍手をしていた。

「とても迫力ある演技だったねぇ。胸がワクワクしたわよ」

「まぁ…よかったと思う」

　春夏秋冬は絶賛、マホルニアは静かに拍手とそれぞれの反応から見るに楽しくて満足気だった。

「みなさんお疲れ様でした！」
（本当に国民的スタアになったみたいです！）

　雪代は目をキラキラさせながら国民的スタアのような雰囲気を味わいながら手を振っていた。

「さ！打ち上げいくわよ！アータたちもどう？」

　映画監督は春夏秋冬とマホルニアに手を振って打ち上げの誘いをする。

「ふふ、じゃあせっかくだしお言葉に甘えようかしら。」

「ノリのいい映画監督だな…。」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　ローズ・ベルシュタイン（夕焼けの薔薇騎士・f04715）は控え室にて台本を読み返していた。映画撮影なんてあまりやってこなかったものの演技とパフォーマンスには自信がある方だと自覚はしていた。

　ローズは1度台本のセリフを口にしてみる。内容の記憶は大丈夫なもののやはり納得いかなかったのか立ち上がって演技を含めつつもう一度セリフを読む。すると、映画スタッフが控え室に訪れてローズに本番だと伝える。

「はい、わかりました。」

　ローズは軽く返事をして深呼吸をした後、映画撮影の現場に赴いた。

　そこに映画監督が出迎えてこれからのアクションシーンと台本の内容に問題ないかとローズに聞く。ローズは静かに頷いたあと「はい。」っと応えた。

　そしてゴールドラスト役の俳優が発明品の兵器の小道具のチェックをしたあと本番に入る。

「くっはは！金の力は偉大なり！お前たちはここでくたばるのだぁ！」

「そうはさせませんわ！金の力だけでは人の心を掴めぬことを教えて差し上げますわ！」

　ローズは俳優に当たらないように銃弾をスレスレで狙って発砲して行く。ローズは撮影とは言えど猟兵特有の緊迫感を醸し出してラストシーンでゴールドラスト役の防弾チョッキに弾を当てて撮影は終了させた。

　映画監督はスタンディングオベーションをしてこの映画の撮影は無事に済ませた。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2022年12月21日