ティタニウム・マキアの雷動
●ニンジャVSヤクザ
争いとは常に激突する前から始まっているものである。
最終的に武力を使わなければ解決できぬところまで追い詰められても、その勝敗を決するのはいつだって情報であった。
「巨大企業群『ティタニウム・マキア』の尖兵が迫っている? それを私達に信じろというのか」
サイバーニンジャ・クランに所属するサイバーニンジャの一人『イェラキ』は目の前の男の言葉を訝しむ。
それも当然であった。
彼らにとって情報とは常に最新を集めるものであるからだ。
だが、サイバーニンジャ・クランに集まった情報はいずれも自分たちを脅かすものではなかったからだ。
「だーら、それが間違いだっていってんだって。その情報自体がさ。あんたらヤクザ事務所の『
嬢香亜寿』とことを構えるつもりだろう」
目の前の男がそう告げた瞬間サイバーニンジャ『イェラキ』は一瞬で彼の喉元にフォトンセイバーの光の粒子で形作られた刃の切っ先を突きつける。
男は肩をすくめていた。
反応できている。
目の前の男がサイバーニンジャたる己の刃を見ながらも、己を殺すつもりはないと理解するからこそ反撃することも防御することもしなかったことを悟る。
「あんたらが連中のことを快く思っていないこともわかっているよ。連中、めちゃくちゃだからな。
薬は当然のこと
売春や誘拐、強盗……まあ、悪事という悪事をコンプリートしてやろうって勢いだ」
「そうだ。奴らは無軌道すぎる。警察と横のつながりが在るのは当然としても、あまりにも目立つ過ぎる。まるでヤケクソのようにさえ思えてしまう。刹那主義と言ってしまえばそれまでだが」
刹那に泡沫となって消えていくのだとしてもあまりにも不可解。
だがヤクザ事務所『
嬢香亜寿』は巨大企業群『ティタニウム・マキア』の傘下だ。かの巨大企業群の傘下であるというのならば、必ず目的があるはずなのだ。
そのために『
嬢香亜寿』は叩かねばならない。
「かといって、奴らは木っ端のはず。いつでも切り捨てられる存在だ。私達が奴らと激突しても、『ティタニウム・マキア』が介入する理由が……」
「あるんだよ。そういう手段が。あんたらサイバーニンジャ・クランは警察で裁けぬ連中を裁く。謂わば、白と黒でいうところの灰色。グレーゾーンの存在。灰色の人間は居てもいなくていいし、自分たちの商売の材料っていうのが、巨大企業群が覇権を競うこの世界にあってはまかり通る」
男はフォトンセイバーの刃の切っ先を喉元に突きつけられながら、首を傾ける。
「あんたらはすでに情報戦で『ティタニウム・マキア』に出し抜かれてるってことだよ。あんたらが『
嬢香亜寿』をやろうって考えているなら、それを利用してやろうってのが、『ティタニウム・マキア』さ」
「仮にそうだとして、お前は何を望む」
「……強いて言えば」
男は亜麻色の髪をかきあげ、その黒い瞳を持って『イェラキ』を見つめる。
「ひとまず身の安全かな!」
瞬間、そこは瓦礫の山と化す。
飛び込んできたのは、肉塊。否、異常に肥大化した筋肉をもとサイボーグ。ただ一体だけではない。
次々と打ち込まれるようにして飛び込んでくる『アナボリック・ジャイアント』たちはサイバーニンジャ・クランの拠点に強襲を仕掛けたのだ。
「マッ――」
「――スル!」
「一足遅かったって感じだよな! 解る! でもさ、俺じゃないってば! なあ!」
「うるさい。どう考えたってお前が呼び水になっているじゃあないか!」
咆哮する『アナボリック・ジャイアント』たちから距離を取るようにサイバーニンジャ『イェラキ』と亜麻色の髪の男が瓦礫と化した拠点の上に立つ。
だが、『イェラキ』のフォトンセイバーの切っ先は未だ男に向けられていた。
「証明できないよな。それ! なあ、頼むよ筋肉だるま。お前たちも、なんとかいって――ってあっぶね!?」
『アナボリック・ジャイアント』から放たれるガトリングガンの斉射を躱しながら亜麻色の髪の男は走る。
足がガクガクしていた。
「お前、名は! 覚えておく!」
「え、なんて!? あ、うそうそ!『メリサ』!『メリサ』って――」
そこに叩き込まれるは『アナボリック・ジャイアント』のはなったロケットアーム。砲弾のように放たれたそれが『イェラキ』と『メリサ』と名乗った男の間に放たれ瓦礫が舞う――。
●ティタニウム・マキア
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の予知はサイバーザナドゥのサイバースペースにおける事件です」
彼女は両手の人差し指立てる。
「サイバーザナドゥには巨大企業群もそうですが、サイバーニンジャ・クランやヤクザ事務所といった多くの組織が存在しています。カルト教団もその一つです。今回事件の予知は、そのうちの二つ」
そう、サイバーニンジャ・クランとヤクザ事務所の激突が予知されたのだという。
だが、それだけでは猟兵が介入する必要はない。
そもそも、ニンジャとヤクザの抗争はさほど珍しくない。よくあることなのだ。
「ですが、ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』は巨大企業群『ティタニウム・マキア』の息がかかった集団であり、サイバーニンジャ・クランを皆殺しにし、その地域の勢力を大きく増してしまおうとしているのです」
恐らくサイバーニンジャ・クランが巨大企業群『ティタニウム・マキア』にとって不都合な情報を握っているのだろう。
巨大企業群の息が掛かったヤクザ事務所『
嬢香亜寿』をのさばらせるわけにはいなかいというわけだ。
「そのとおりです。サイバーニンジャ・クランはすでに『
嬢香亜寿』と戦闘状態に入っています。幸いなことに敵襲を受けたサイバーニンジャ・クランには人員の多くが出払っていて、人的損害はまだありません。ですが、拠点を失ってしまえば、結果的に『
嬢香亜寿』の勢力が拡大することは自明の理」
これを打倒しなければならない。
そして、ナイアルテは予知で見た『
嬢香亜寿』を率いる強力なオブリビオンの存在を告げる。
「『
嬢香亜寿』は『ムクロマンサー』と呼ばれるオブリビオンがトップにおり、彼女は配下に『骸の海』を注入し洗脳して強化、従わせているのです。彼女を止めなければ、このままサイバーニンジャ・クランは拠点を失い、各個撃破されてしまうでしょう」
地域の均衡を守るためには、これをなさねばならない。
猟兵たちを送り出し、ナイアルテは頭を下げるのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
サイバーザナドゥのある地域においてサイバーニンジャ・クランとヤクザ事務所が激突する抗争に介入します。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』の息が掛かっているヤクザ事務所『
嬢香亜寿』がサイバーニンジャ・クランを滅ぼしてしまうと、この地域における勢力図が一気に『ティタニウム・マキア』に傾いてしまいます。
そうなってはオブリビオンの思いのまま。この地域は恐らくひどい状況に陥ることでしょう。これを阻止するシナリオとなっております。
●第一章
集団戦です。
抗争の現場はサイバーニンジャ・クランの拠点です。
すでに人間砲弾のように飛来した多数の『アナボリック・ジャイアント』によって一部が破壊されていますが、多くのサイバーニンジャは出払っており、『イェラキ』と呼ばれるサイバーニンジャしかいません。
『アナボリック・ジャイアント』を速やかに排除しましょう。
●第二章
ボス戦です。
ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』を率いているオブリビオン、『ムクロマンサー』との戦いになります。
前章でサイバーニンジャ『イェラキ』の信用を得ていれば、可能な範囲で彼が皆さんの援護をしてくれるでしょう。
●第三章
日常です。
戦いに勝利した皆さんは、サイバーニンジャ『イェラキ』はサイバースペースにある彼らの隠れ家的スペースに招き入れるでしょう。
そのままサイバスペースを楽しんでもいいでしょう。お代は『イェラキ』がきっともってくれます。
さらに『イェラキ』の信用を獲得するのもいいかもしれません。
それでは、『巨大企業群(メガコーポ)』、『ティタニウム・マキア』と戦いを繰り広げる皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『アナボリック・ジャイアント』
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POW : ギガンティック・オーバードーズ
【大量の違法薬物】を使用する事で、【体からガトリングガン】を生やした、自身の身長の3倍の【サイボーグ巨人】に変身する。
SPD : ガイデッド・ロケットアーム
【人工頭脳のコントロール】によって、自身の装備する【飛翔式ロケットアーム】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ : ポリューション・アトモスフィア
自身の【肉体】から【気化した大量の違法薬物】を放出し、戦場内全ての【近接攻撃】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
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「『メリサ
』……!? お前があの殺し屋『メリサ』だというのか!?」
サイバーニンジャ『イェラキ』は目を見開く。
彼にとってそれは驚愕そのものであった。けれど、それを信じるに値する情報はどこにもない。『メリサ』は『メリサ』でも別の存在であるかもしれないからだ。
だからこそ、『イェラキ』は亜麻色の髪の男……『メリサ』の言うことを未だ完全に信用できていなかった。
『アナボリック・ジャイアント』の放つロケットアームやガトリングガンの斉射が襲い来る。
瓦礫を盾にしているが、そう長く保つことはないだろう。
「名乗れって言ったからね!? 名乗っただけでね!? そんな、あっ、やめろって! 俺を盾にしようとするなってば!」
「お前が引き入れたのではないのか!」
「だったら俺、今此処であんたをどうこうして……あ、冗談冗談! 言葉のあやってやつ!」
「ぶんぶんと随分うるさい、『
メリサ』というのは、そのためか!」
あ、言ったなこいつ、と『メリサ』と名乗った男は眉根を上げる。だが、それも長くは続かない。打ち込まれるガトリングガンの弾丸に瓦礫の影で黙るしかなかったからだ。
「本当はあんたらに情報を売って金を貰おうって思っていただけなんだってば!」
「忌々しいサイバーニンジャ・クランのみなさーん。もう全滅してますかぁ? もしまだ生きていましたらお手を上げてくださいな。すぐに洗脳して差し上げますからぁ」
亜麻色の髪の男『メリサ』が弁明しようとした瞬間、『アナボリック・ジャイアント』の背後から声が聞こえる。
そこにあったのはオブリビオン『ムクロマンサー』の姿であった。
彼女はヤクザ事務所『
嬢香亜寿』を率いるオブリビオン。『骸の海』を注入することによって洗脳し、『アナボリック・ジャイアント』たちを己の尖兵に仕立て上げ、巨大企業群『ティタニウム・マキア』の勢力の拡大を担う存在である。
「情報屋から、此処がサイバーニンジャさんの拠点だと伺いましてぇ。こうして殲滅にまいった次第です。生きたいなぁって思われる方は、一緒に働きましょう。勿論、洗脳してからではありますがぁ」
その言葉に『イェラキ』はフォトンセイバーを突きつけていた亜麻色の髪の男『メリサ』を見る。
だが、すでにそこには男の姿はなかった。
いや、瓦礫の山を飛び越えてさっそうと逃げようとしている背中があった。
「お前――! やはりこちらの情報も売っているではないか!」
「あ、バレた? ごめんごめん。でもさ、一方に情報をやるのはフェアじゃないなーって俺は思ったんだよ。金をもらうのは、ほら、副産物みたいなもので……と、まあ、生きていたらまた会おうぜ! じゃなー!」
すたこらさっさと逃げ去った男を追いかけたくとも『イェラキ』は今や絶体絶命である。
周囲には『アナボリック・ジャイアント』。そしてそれらを率いている『ムクロマンサー』がいる。
「くそ……もうどうにもならないのか……」
諦観が身を支配しようとする。だが、それはまだ早いと、次々とこの戦場に転移してくる者たちがいた――。
村崎・ゆかり
はい、この
抗争、あたしが買った。
このデカブツを殲滅すれば、ニンジャの人も少しは信用してもらえるかしら?
「結界術」「全力魔法」虚無の「属性攻撃」「精神攻撃」「レーザー射撃」「弾幕」で落魂陣。
ガタイはいいけど、精神の方はどうかしら?
大判呪符から放たれる光線で、敵が初手を撃つ前にサイボーグ達を圧倒する。
ここは既に絶陣の中。進むも引くも出来ないと心得なさい。
私に向けられたガトリングガンは、「オーラ防御」で対抗する。
更に大きくなったところで、大男、総身に知恵は回りかね。的が大きくなっただけよ。
本当に、数だけは多いわね! いくらでも来るといいわ。あたしの呪力がもつ限り、相手してあげる。
他者からの信用を得るために必要なものはなんであろうか。
相対する者のバックボーンを理解することは当然のことであろうが、人の姿からバックボーンまで透けて見えることはない。だからこそ、人は言葉というコミュニケーションツールでもって互いを知ろうとするのだ。
だが、その言葉を交わす時間がないのならば、信用は行動でもって得られるものである。
「はい、この
抗争、あたしが買った」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は戦場となったサイバーニンジャ・クランの拠点……もはや瓦礫となったそこへ降り立つ。
「マッ――」
「――スル!!」
『アナボリック・ジャイアント』たちは一斉に己の肉体に打ち込まれた大量の薬物に寄ってガトリングガンを生成する。
薬物の大量投与によって生み出されるガトリングガン、そこから雨のような弾丸を放とうとしているのだ。
「ガタイはいいけど、精神の方はどうかしら?」
ゆかりは手にした大判呪符を手に取り、弾丸が放たれるより早く無数の光線を『アナボリック・ジャイアント』たちに放つ。
初手を封じる。
「落魂陣(ラッコンジン)――魂魄を吹き飛ばす呪詛……その精神が脆弱ならば、耐えられる理由などないと知りなさいな!」
「――……っ!!」
彼らはオブリビオン『ムクロマンサー』によって『骸の海』を投与され洗脳されてる存在だ。
そんな彼らの精神が肉体と同じく強大であるわけがない。
光線によって魂魄に打撃を受けた『アナボリック・ジャイアント』たちが次々と膝をつく。
「援軍……! いや、誰だ、あれは……?」
サイバーニンジャである『イェラキ』はゆかりの登場に訝しむだろう。
また罠か、と疑うのも無理なからぬこと。
ゆかりは言葉を交わす暇がないと判断し、敵の敵は味方であることを示すように呪符から放つ光線でもって『アナボリック・ジャイアント』たちを打倒する。
放たれるガトリングガンの弾丸をオーラで弾きながら、戦場を走る。
「大きくなったところで、大男、総身に知恵は回りかね。的が大きくなっただけよ」
だが、数の多さは変わらない。
オブリビオン『ムクロマンサー』に洗脳支配された者たちがどれだけ多いのかを、この戦場が示している。
危惧されたとおりだ。
このままサイバーニンジャ・クランが壊滅すれば、この地域は巨大企業群『ティタニウム・マキア』の勢力をさらに増すことになる。
そうなれば、彼らの支配はこのサイバーザナドゥに生きる者たちの多くに及ぶことになってしまう。そうなれば、オブリビオンが実質のトップに君臨するがゆえに、対抗することは難しくなるだろう。
「本当に、数だけは多いわね!」
ゆかりは辟易する。
しかし、泣き言は言っていられないのだ。放つ光線と共にサイバーニンジャである『イェラキ』のフォトンセイバーが『アナボリック・ジャイアント』を叩き切る。
「助力は感謝する……だが、お前たちが何者かは、また後で問いただす!」
「ええ、そうしてちょうだい」
いくらでも来るといいわ、とゆかりは笑う。
これで信用を僅かでも得られるのならば、己の呪力が続く限り戦う。
放つ光線とフォトンセイバーの閃光が戦場に煌めき、迫る『アナボリック・ジャイアント』の侵攻を瓦礫と化した拠点において防ぎ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
まあねえ、この世界のニンジャに思うところはありますのでー。同業ではありますしー。
ふふ、なれば手助けいたしましょう。
そのガトリングガンは、四天霊障による結界+押し潰しで遮りましてー。
数が多くて的が大きいというのなら、好都合というもの。
UC+風属性攻撃つきの漆黒風を投擲していきましょう。その大きさであれば…足を破壊されてバランス崩すこともありましょう。
そこへ、二回攻撃による再びのUCですよー。
ふふふー、私たちは一人にあらず。数多あると知りなさいなー。
体内に取り込んだ薬物のオーバードーズ。
それによる『アナボリック・ジャイアント』たちの肉体から生まれるのは無数のガトリングガンであった。
「マッ――」
「――スル!」
咆哮と共に彼らは弾丸を撒き散らす。
サイバーニンジャ・クランの拠点を襲撃したヤクザ事務所『
嬢香亜寿』は一気呵成に攻め立てる。
彼らの放つ弾丸は一体一体であっても脅威であったが、数を揃えられれば、さらなる驚異になる。
ここにサイバーニンジャが出払っており、『イェラキ』だけであったのは不幸中の幸いであったかもしれない。
しかし、この拠点そのものが叩き潰されてしまえば、サイバーニンジャたちは戦力を分散せざるを得ない。
となれば、後は散発的な攻撃しか加えられなくなる。
『
嬢香亜寿』は労せずしてサイバーニンジャたちを各個撃破することができるというわけだ。
「援軍らしき……者たちが着ているようだが、一体どこの……!」
『イェラキ』の疑問も尤もである。
「まあねえ、この世界のニンジャに思うところもありますのでー」
そうつぶやきながら馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は言う。
四柱の中で唯一の忍び。
隠密に優れたる『疾き者』の展開する霊障が結界となって『イェラキ』を襲う弾丸を遮る。
「――同業のようだな」
「厳密には違いますがー。手助けいたしましょう」
霊障が『アナボリック・ジャイアント』たちに迫るようにして膨れ上がっていく。弾丸を撒き散らし続ける彼らを相手にするにはいささか数の利があちらに傾いているといえるだろう。
だが、巨大化した肉体を保つ『アナボリック・ジャイアント』であるというのならば、『疾き者』にとっては好都合だった。
「肉体が大きいということは的が大きいということ。ならば、好都合というもの」
煌めくユーベルコードの輝きがある。
それは四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)。
放つ漆黒の棒手裏剣が旋風のように宙を走り抜け、『アナボリック・ジャイアント』たちの肉体に突き刺さる。
いや、狙い打たれたのは足だ。
その巨体を支える足。その足を放たれた棒手裏剣が一撃の元に破壊する。
「マッ――!?」
膝を砕かれた巨体が崩れるようにして倒れ込む。そこに『イェラキ』のフォトンセイバーは走る。
「関節を一撃で砕くか……!」
「さてー、参りましょうかー」
さらに『疾き者』は黒き棒手裏剣を投げ放つ。
刹那に放たれた棒手裏剣は二つ。
一つは体勢を崩す足を狙う一撃。もう一つは崩された体勢に打ち込む致命の一撃。
「ふふふー、私たちは一人にあらず」
見事な早業で次々と『アナボリック・ジャイアント』たちを下していく。その手際の良さに『イェラキ』も感心するようであった。
だが、敵の数は未だ残っている。感心している暇はないと『疾き者』は即座に棒手裏剣を構えるだろう。
「数多あると知りなさいなー」
ばら撒かれる棒手裏剣。
それらの全てにユーベルコードの輝きが宿っている。小さき一撃であっても、『アナボリック・ジャイアント』たちを打ち崩す一撃は、着実に『
嬢香亜寿』の戦力を削り取っていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
んん、久々に出歩いたら
なかなかに派手な場所の派手な抗争に出会ってもたなあ
ま、これも縁やろね
と言うわけで、ちょっかい出させてもらおか
賑やかし……もとい、敵の敵な助っ人参上ってね?
WIZ
変な薬品に入れる資金あるんなら
美味しいええお酒つくって欲しいもんや
敵攻撃と違法薬物は、オーラ防御・毒耐性・結界術・浄化で対抗しつつ
範囲攻撃・吹き飛ばしで薬物は一掃や
でもって、近接攻撃無効?
イヤやわ、か弱い乙女が近接でぶん殴れるわけはないやろ?
にっこり笑って雷公鞭『雷花繚乱』からマヒ攻撃・毒使いつきの【霹雷炎獄陣】
まあ、薬物が吹き散らされたり燃え尽きたりすれば
普通に雷公鞭で殴るんやけどね?
クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は風の吹くまま気の向くままに世界を渡る猟兵である。
極度の方向音痴であるがために迷子そのもの。旅人と呼ぶにはあまりにも迷い出ることが多い。
しかし、風の吹くままに足を踏み出すのならば、それは風の気まぐれであったことだろう。
骸の海が雨として降り注ぐ世界。サイバーザナドゥ。人の身のままでは生きていけず、緩やかな滅びの中に人々は生きている。だが巨大企業群は、それすら構わずに覇権を争うように次々と己の領域を広げようとしていた。
「んん、久々に出歩いたら、中々に派手な場所の――」
クルルが見たのはサイバーニンジャ『イェラキ』が弾丸荒ぶ崩落した拠点でヤクザ事務所『
嬢香亜寿』の巨漢たる『アナボリック・ジャイアント』と戦う姿であった。
「――派手な抗争に出会ってもたなあ」
まあ、これも一つの縁であろうと彼女は戦場に飛び込んでいく。
それはちょっかいを出す、という言葉と同義であったが、クルルにとっては些細なことであった。
「また援軍か、それとも敵か!」
『イェラキ』のフォトンセイバーの切っ先がクルルに向けられる。
そのような対応になってしまうのも無理なからぬ状況である。だからこそクルルはわかりやすく言うのだ。
「賑やかし……もとい、敵の敵な助っ人参上ってね?」
その言葉と同時に『アナボリック・ジャイアント』たちの肉体から蒸気のように立ち上るのは気化した大量の違法薬物。
それを吸い込めばどうなるかなど言うまでもない。
「吸うな! あれを吸えばお前たちもアレと同じになる。『
嬢香亜寿』のやり口だ!」
『イェラキ』の言葉にクルルはうなずく。
オーラと共に張り巡らされる結界術。浄化しきれなくても、振るう槍の一撃で気化した違法薬物を吹き飛ばす。
だが、『アナボリック・ジャイアント』の肉体から気化し続けるものだけはどうしようもない。即ち、近接攻撃ができないということだ。
「マッ――!」
「――スル!」
咆哮とともにクルルを取り囲むように突撃してくる『アナボリック・ジャイアント』たち。その鉄塊の如き肉体がクルルに迫る。
止めようがなく、そして、物理的に弾かれればクルルの細い体はへし折れてしまうだろう。
「イヤやわ、か弱い乙女をぶん殴ろうってわけ?」
クルルは、しかしてにっこりと微笑む。
手にしたのは、宝貝『雷公鞭』。一度震えば狂奔する雷霆と火焔の嵐が走る。
これ即ち、霹雷炎獄陣(ヘキライエンゴクジン)。
「きたれ霹靂、きたれ炎獄――此処を敵の奈落となさん――」
打ち込まれる雷霆と火焔。
それらが迫る『アナボリック・ジャイアント』たちを穿ち、その身を感電させ、熱傷にて苛むのだ。
「……すさまじいな……義体化していないとうのに、これか……!」
「ま、薬物さえなければ」
クルルは雷霆と火焔によって焼き尽くされた気化した薬物を振り払うように『アナボリック・ジャイアント』の巨体に迫る。
その手にした宝貝が純白の花弁を撒き散らすように雷を迸らせながら、巨体を打ち据える。
その歌は灼滅の凱歌。
「こうしてぶっ叩いてやるんや。それに変な薬品に入れる資金あるんなら、美味しいええお酒作って欲しいもんや」
旅は出会い。
一期一会だというのならば、クルルは己の楽しみ、すなわち酒にこそ惜しむべきではないと『アナボリック・ジャイアント』を蹴散らし、白き花弁の如き雷霆と共に笑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
はいはーい★何でも屋のシルキーちゃんにお任せ★
義じゃないけど助太刀しちゃうぞ★
今のシルキーちゃんは小柄だからね、瓦礫とかに身を隠して動くよ★
更にロボットビースト達にも物陰から陽動と遊撃(視覚や関節を狙わせるね★)をさせて、
ホログラムが目立つように走って前に出て敵の反応を見るね★
相手が釣られたなら物陰から「Ku-9」を脚の関節部位を狙い爆破、その間にホログラムが近づいて。
釣られないなら無視を良い事にそのまま接触、UCを使って非実体の光の刃で直接電脳や神経回路を焼き切っちゃうぞ★(《鎧無視・データ攻撃》)これなら体格も義体の性能も関係ないよね★
お礼はいいよー★これもお仕事だもん★
箱型の奇妙な頭脳戦車が戦場に転移する。
サイバーニンジャ・クランの拠点は半壊していた。ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』のはなった『アナボリック・ジャイアント』たちによる襲撃に寄って、それがなされたのだ。
脚部を展開した箱型の頭脳戦車、シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は軽快にホログラムを空中に投影する。
「はいはーい★ 何でも屋のシルキーちゃんにおまかせ★義じゃないけど助太刀しちゃうぞ★」
投影されたホログラムは美少女の姿をしていた。
あまりにも場違いな声と姿にサイバーニンジャ『イェラキ』は目を丸くしていた。
「なんだ、どういう……」
「まあまあ、任せておいてよ★ 今のシルキーちゃんは小柄だからね。そいじゃ、また後でね★」
箱型の頭脳戦車がサイバーニンジャ『イェラキ』の元から離れて、拠点の瓦礫の中を走っていく。
小さな体躯は瓦礫の影を這うのにうってつけであった。
また自身よりさらに小型のロボットビーストたちを使って『アナボリック・ジャイアント』たちを走らせる。
「はいはーい★こっちこっち★」
シルキーはあえてホログラムを目立たせるようにしながら走る。
そのホログラムを認識した『アナボリック・ジャイアント』たちは次々と体内からガトリングガンを生成し、雨のような弾丸を放ってくる。
銃声がけたたましく響き渡り、瓦礫を吹き飛ばしていく。
「わー、直情的ー★」
「マッ――スル!!」
咆哮が轟く。『アナボリック・ジャイアント』たちにとって、動くものは全て敵だ。オブリビオンによって洗脳された躯体は、ただ敵を滅ぼすためだけに大量の違法薬物を投与されている。
自分たちで考えるよりも、誰かからの命令を実行することを優先しているのだ。
だからこそ、シルキーは理解する。ロボットビーストたちを使った遊撃、そしてホログラムによる視線誘導。
「どんなに薬物に漬けこまれていても――目で追うのなら★」
放つのはスプレッドダガー。
その投射刃は『アナボリック・ジャイアント』たちの膝関節や眼球を狙う。ただそれだけでは彼らの薬物に寄って強化された肉体は破壊できないだろう。
ぶつかった衝撃で組成変化によって爆薬となっても、足りない。
「マッ
……!!」
「これでもタリアにならさ★ シルキーちゃんと踊ろ★」
頭脳戦者のホログラムを投射するカメラアイがユーベルコードに輝く。
投射されるのは無数のシルキーのホログラム。彼女らが放つのはエネルギー刃。非実体の刃は、直接『アナボリック・ジャイアント』たちの電脳や神経回路を焼き切る。
「これなら体格も義体の性能のも関係ないよね★ これぞ、ぶんしん・さっぽー★(ファントムブレードダンス)」
ホログラムが乱舞する。
彼女の言葉通りであった。
どれだけ『アナボリック・ジャイアント』が薬物によって義体の性能を底上げしているのだとしても、無数のホログラムによる乱舞を全て躱すことなどできはしないのだ。
次々と焼き切られていく神経回路。
もはや、そこにあったのはウドの大木そのもの。サイバーニンジャ『イェラキ』はそのその戦いぶりに敬意を評するだろう。
「最初はどうしたものかと思ったが……中々どうして。感謝を。そして非礼を詫びる」
「御礼はいいよー★これもお仕事だもん★」
シルキーはホログラムを投射しながら、いつものように笑う。
だってこれは猟兵の領分だ。
そして、
巨大企業群の陰謀でこうなった自分という人間であるという自己認識は、彼らのやり方を否定する。
例え、それがバックアップ用人格を不完全に読み込んだ、正しくはない結果なのだとしても。
なんでも屋として、大好きなお金稼ぎのために仕事、即ち破壊活動をするのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
極道が先んじて襲撃を仕掛けられる程に情報を売りつける時間に差があったなら公平も何もないんですよね…ここから逃げたあの男、いずれ機会があったら首を貰っておきましょう。メガコーポの悪徳に利する者には死あるのみです。
まあ、まずは目の前の危機から片付けるとしましょう。
一体一体の攻撃力が高いサイボーグ集団はこのUCの鴨です。
戦場に強烈な光を放つことで戦場全体に目潰しをしつつデータ攻撃を仕掛け、サイボーグたちが同士討ちするように動きを操作します。勿論、ニンジャさんは操作しませんよ。目潰しはしてしまうかもしれませんが…申し訳ありません。技を使う前に声をかけることも考えましたが、敵に警戒されたくなかったので。
サイバーニンジャ・クランはヤクザ事務所『
嬢香亜寿』の強襲を受け、その拠点を半壊させられた。
幸いなことにサイバーニンジャ『イェラキ』しか拠点にいなかったがゆえに強襲の意味は半減している。だが、拠点が完全に破壊されてしまえば、この地域でサイバーニンジャ・クランは勢力を大きく分散させられるだろう。
そうなれば『
嬢香亜寿』の勢力は増し、彼らが上位組織である巨大企業群『ティタニウム・マキア』はさらなる躍進を遂げるだろう。
「極道が先んじて襲撃を仕掛けられるほどに情報を売りつける時間に差があったなら公平もなにもないんですよね……ここから逃げたあの男」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は頭を振る。
彼女は武装警官である。警察と癒着している『
嬢香亜寿』にとって、彼女の存在は警察の不義理を意味する。
だが、そんなことは関係ない。
お互いに関係ないのだ。
『アナボリック・ジャイアント』たちが咆哮する。
「いずれ機会があったら首をもらっておきましょう」
「マッ――スル!!」
吹き荒れるは気化した大量の違法薬物。『アナボリック・ジャイアント』の肉体に充填されていた薬物がばら撒かれれば、誰も彼もが彼らのようにオブリビオンに洗脳されてしまう。
だからこそ、近づけない。
サイバーニンジャ『イェラキ』も同様であった。
「また気化した薬物か……! 近づけん……!」
「関係ありません。メガコーポの悪徳に利する者には死あるのみです」
にこたまは、警察手帳を掲げて開く。
瞬間、輝くのは強烈な光。
「――!?」
その場にいた誰もが目を覆う。だが、強烈な光は、鼓膜すら突き抜けて『アナボリック・ジャイアント』の義眼にハッキングする。
そう、その光はハッキングプログラムを仕込まれている。にこたまの手にした警察手帳から放たれた光はユーベルコード。
「これが正義の威光です!」
桜の代紋フラッシュ(サクラノダイモンフラッシュ)。彼女のユーベルコードは短時間であれどハッキングプログラムを仕込まれた光を浴びた『アナボリック・ジャイアント』たちの肉体を操る。
気化した大量の薬物によって接近できなくても関係ない。
彼女のハッキングプログラムは『アナボリック・ジャイアント』たちの義眼を操り、認識阻害によって互いを敵と認識している。
手にしたガトリングガンが味方と知らずに向けられ、引き金を引く。
弾丸が同士討ちを引き起こすのに時間はさして必要ではなかった。そう、一体一体の攻撃力が高いサイボーグ集団は、彼女の手にした正義の威光の前に鴨でしかない。
「……――な、何が……」
サイバーニンジャ『イェラキ』は目をみはる。
強烈な光によって目潰しをされていた僅かな間に目の前の『アナボリック・ジャイアント』たちは同士討ちによって瓦礫の上に倒れ伏している。
信じられない光景であったことだろう。圧倒的な数の利を逆手に取るかのように一瞬でにこたまは『アナボリック・ジャイアント』たちを制圧しているのだ。
「……申し訳ありません。使う前に声を掛けることも考えましたが、敵に警戒されたくなかったので」
しかし、にこたまは別に悪いと思っていないだろう。
彼女にとって正義の執行こそが最優先されること。それはサイバーニンジャ『イェラキ』にも理解できることだろう。
「わかっている。お前は警官のはずだ……連中と繋がりがあるはずではないのか」
「いいえ。『正義の執行』の前にそれとこれとは別ですよね?」
こともなげに言う、にこたまに『イェラキ』はうなずく。
同じく腐敗した悪徳飛び交うサイバーザナドゥにおいて、闇夜を飛ぶサイバーニンジャもまた、にこたまと同じ志を持っている。
瓦礫を押しのけてさらに『アナボリック・ジャイアント』たちが迫る。
それをみやり、にこたまは声高らかに告げるのだ。
「正義の名の下にホールド・アップです――!」
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
いきなりのピンチだね。
ここはまずは体勢の立て直しからかな。
一度は反撃して、相手の勢いを止めたら、その後に『イェラキ』さんたちは撤退。これがいいと思うんだ。
さすがサージェさん、忍ばないことに関しては超一流だね!
でも……慎ましい(辞書引き)
そんな意味はない。QED
っと、まずは攻撃を防がないとだね。
【偽りの丘】で相手の攻撃を一時的に無効化。
その間に『イェラキ』さんたちに立ち直ってもらおう。
こちらの体勢が整ったら、偽りの丘を解除。
防御がなくなってとみて突っ込んできた敵が、サージェさんに足止めされたところを、
【M.P.M.S】と【D.U.S.S】を全力稼働させて殲滅していくね!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば……あ(察した)
ワタシハクノイチアヤシイモノジャナイデスヨー
と注意を引き付けつつ、理緒さんの意見と作戦に賛同です
かく乱ならお任せあれ!
【かげぶんしんの術】でいっぱいの私がお相手しますよ!
近接攻撃がダメならクナイ投げ
『漆黒竜ノ牙』をしゅばばっと投げつつ
おらーかかってこいやー!
いえうそですすみません(脱兎)
くっ、この世界だと私みたいに慎ましいクノイチは目立ってしまう!
なんでツッコミ!? 忍んでますから!
それはいいから理緒さんはやくー!!
戦場を引っ掻き回しつつ
理緒さんにタイミングを合わせて
【VR忍術】影縛りの術です!
アナボリック・ジャイアントの動きを止めて支援をしますね
戦場となった半壊したサイバーニンジャ・クランの拠点。
そこに迫るは巨大な悪漢たち。義体と薬物に寄って強化された『アナボリック・ジャイアント』たちが拠点を完全に叩き潰そうと迫る。
体内からは大量に投与された違法薬物が気化して周囲に蒸気として充満している。
あの蒸気に触れてしまえば、彼らがそうであったようにオブリビオンに洗脳されてしまう。それを避けるには接近戦を行わないこと。いや、接近戦を封じられたと言ってもいい。
「……厄介だ」
サイバーニンジャ『イェラキ』は歯噛みする。
彼にとって接近戦こそが戦場であったからだ。手にしたフォトンセイバーの刀身ではどうあっても接近しなければならず、『アナボリック・ジャイアント』たちはそれをせせら笑うように押し迫るのだ。
「お呼びとあらば……あ」
何かを察したかのようにサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は前口上をキャンセルした。
だって、サイバーニンジャがいるのだ。
ニンジャの本場。
そんな忍びに忍んでいるサイバーニンジャを前にして敵に姿を晒す忍べていないクノイチスタイルを見せたら、確実に似非呼ばわりされることはわかりきっていた。
「ワタシハクノイチアヤシイモノジャナイデスヨー」
「逆に怪しくないわけがないきがするのだが」
『イェラキ』の言葉は尤もであった。怪しい。どう見たって怪しい。
「さすがサージェさん、忍ばないことに関しては超一流だね!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の瞳がユーベルコードに輝く。
偽りの丘(イツワリノオカ)が広がっていく。
それは彼女の心象世界。迫る『アナボリック・ジャイアント』たちの脅威な点は尽きることなく肉体から気化している大量の違法薬物だ。
あれがあるかぎり接近戦は封じられる。
だからこそ、理緒は心象世界でそれを一度受け止めてから、反射し相殺する。この心象世界の如き結界の中にあって攻撃は無意味であった。
「一度反撃して、相手の勢いを止めたら、そのあとに『イェラキ』さんたちは撤退。これがいいと思うんだ」
「私も理緒さんの意見と作戦に賛成です。撹乱ならお任せあれ!
サージェは理緒の生み出した結界の中に飛び込んでいく。
かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によって一気に増えた分身たちと共にクナイの投擲が始まる。
彼女こそ目立つことにかけては右に出る者がいないのだ。
『アナボリック・ジャイアント』たちの注意を惹きつけたサージェは、此処ぞとばかりに結界の中を飛び跳ねる。
それが無数にいるものだから『アナボリック・ジャイアント』たちは困惑する。
「おらーかかってこいやー!」
おうおう筋肉だるまがビビってる! とかそんな具合にサージェが挑発すれば、彼らも理解するのだ。どれだけ数が多かろうが弾丸を打ち込めばいいのだと。
放たれるガトリングガンの乱射にサージェは目をまんまるくして、大慌てである。
「あー! いえうそですすみません!」
脱兎のごとくサージェたちは逃げ惑う。
「くっ、この世界だと私みたいに慎ましいクノイチは目立ってしまう!」
「慎ましい……」
「……慎ましい」
理緒と『イェラキ』の視線がサージェに刺さる。慎ましい……?
「そんな意味はない。QED」
証明終了。慈悲もなにもあったもんじゃない。けれど、それがまあ正しい。
冗談みたいなやり取りである。
「なんでツッコミ!? 忍んでますから! それはいいから理緒さんはやくー!!」
戦場を引っ掻き回すだけ引っ掻き回したサージェは、へるぷみー! と叫ぶ。迫る『アナボリック・ジャイアント』たちはサージェに狙いを付けている。
「もう立ち直ったかなー?」
「ああ、余力は在る。いつでも行ける」
フォトンセイバーを構えた『イェラキ』の姿に理緒は頷き、ユーベルコードを解除する。結界の中で『アナボリック・ジャイアント』たちは身に宿した違法薬物の蒸気を失っている。
その瞬間こそが最大の好機。
「じゃあ、いくよー!」
理緒が結界を説いた瞬間、打ち込まれるのは全力かどうの超音波とミサイルランチャーより放たれるミサイルの乱舞。
『アナボリック・ジャイアント』たちを巻き込む一撃。
さらにサージェの影縛りの術が彼らの足を止める。爆風が荒び『アナボリック・ジャイアント』たちの巨体が傾ぐ。
其処に走り込む『イェラキ』のフォトンセイバー。
さらにサージェのクナイが今日一番のクノイチムーヴでもって仕留めるのだ。
「ほらー! やればできるんですよ、私ってば!」
「サージェさん、いいから次ー」
「もっと見てくれません!?」
クノイチとしてそれはどうなのかと半眼な『イェラキ』の視線。
二人はそんなやり取りをしながら、『アナボリック・ジャイアント』たちを駆逐していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
ステラさん、やべーも極まって、
だんだんオブリビオンじみてくる気が……。
って、落ち着いてください!? ステイ、ステイです!
エイルさんに逃げられてるのなんて、いつものことじゃないですか!
あと『猟兵の到着』ではなくて『ステラさんの到着』じゃないかなーって思うのは、
わたしの気のせいでしょうか?
あれ? わたし行くんですか?
ああいう繊細さのかけらもなさそうなのは、
演奏聴いてくれないから苦手なんですが……。
わかりました、わかりましたから!
マシンガンこっちに向けないでください!?
ステラさんの援護があれば、これでいけそうですね!
バイオリンを振りまわして【カプリス】で無双していきますよー!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
エイル様の!香りがします!
いえ、なんというか髪と瞳の色だけなんですが
しかし、私の
メイドレーダーに何かがひっかかるのです
ええ、この世界のエイル様はメリサ様という可能性もあるわけで
ならば私は見極めねば!
というわけでエイル様!
あなたのメイドが、あっれーー?!(もういなかった
この猟兵の到着を待たない感じ…『セラフィム』なのでは?(錯乱している
ええい!邪魔です!!
私の
エイル様追っかけを邪魔するのでしたら
ぶっ飛ばします
というわけでルクス様出番です
え?私ですか?
きちんと支援しますよ
【テールム・アルカ】起動!
人型サイズのパルスマシンガンで制圧射撃と行きましょう!
「
『エイル』様の! 香りがします!」
それは開口一番叫ばれた言葉であった。
サイバーニンジャ・クランの半壊した拠点。その瓦礫の中心でステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は叫んでいた。
その姿をもう何度見たかわからないルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わずつぶやいていた。
「ステラさん、やべーも極まって、だんだんオブリビオンじみてくる気が……」
「いえ、なんというか髪と瞳の色だけなんですが! しかし、私の
メイドレーダーになにかがひかっかるのです」
ステラは目を見開く。
それは目を皿にするかのようであった。この瓦礫の何処かに彼女の追い求める存在がいるかもしれないと、ちょっと、いや、かなり、怖いなぁって顔をしていた。
彼女にとって
『エイル』こそが全てにして至高。世界を跨ぐなんてお茶の子さいさいなのである。ちょっくらご近所まで買い物に、くらいのノリで典子てくるのである。
「ならば、私は見極めねば!」
くわっ! とステラの瞳がさらに開かれる。
「というわけで『エイル』様! あなたのメイドが、あっれ――?!」
すでに『メリサ』と名乗った男の姿は其処にはなかった。颯爽と逃げていた。惚れ惚れする逃げ足であった。
まじで何処に逃げたんだというくらい姿がない。くんくんかしても匂いさえ辿れれない。
「この猟兵の到着を待たない感じ……『セラフィム』なのでは?」
ちょっとステラは錯乱している!
「って、落ち着いてください!? ステイ、ステイです!『エイル』さんに逃げられるのなんて、いつものことじゃないですか!」
ルクスの言葉は会心の一撃であった。致命的一撃であったかもしれない。
ステラの膝ががっくり落ちそうになっている。
ルクスはそれに思ったのだ。『猟兵の到着』ではなく『ステラさんの到着』でhなあいのかと。自分の気の所為だったらいいなーって思っていたが、真実は定かではない。というか、あれ、もしかして、今の叫びで私達って『アナボリック・ジャイアント』たちに注目されてます? と其処まで思考した瞬間、飛んでくるのは銃弾の雨である。
「ええい! 邪魔です!!」
ステラは崩れ落ちそうな膝に耐えて踏み出す。
そこだけ切り取ってみたらかっこいいんだけどなぁってルクスは思わないでもなかった。
「私の
『エイル』様おっかけを邪魔するのでしたらぶっ飛ばします。というわけでルクス様出番です」
「あれ? わたしいくんですか?」
ルクスはキョトンとしていた。今の今までつきあわされまくっていたのだ。もうそろそろお役御免ではないかと思っていた。というか、マシンガンに囲まれている状況で逃げるもなにもない。戦わなければならないのだ。
「ああいう繊細さの欠片もなさそうなのは、演奏聴いてくれないから苦手なんですが……」
「テールム・アルカ起動! 武装、転送」
ステラの瞳がユーベルコードに輝き、転送されてきたキャバリア武装が人間サイズにリサイズされる。
背中にあたるマシンガンの銃口。
にこやかなルクスの顔があった。有無を言わさぬ顔であった。
「わかりました、わかりましたから! こっちにそれ向けないでください!?」
ルクスは必死で首を縦にふる。
ステラの顔は怖かった。まじで怖かった。あれは首を横に振った瞬間、引き金を引き顔であった。
ああいう顔するから逃げられんじゃないかなぁって思わないでもない。しかし、それを口にする勇気はなかった。
「きちんと支援しますよ」
「本当ですからね!?」
ルクスは巨大バイオリンを掲げ振り回す。力を溜めるように、その一撃を持って相対する全てを薙ぎ払うように。
ステラの道行きを阻むということはルクスに累が及ぶということである。だからこそ、ルクスは全力の一撃を放つ準備を始めるのだ。
パルスマシンガンの制圧射撃が『アナボリック・ジャイアント』たちを打ち据え、その巨体をのけぞらせる。
どれだけ薬物に寄って強化された義体であったとしても、人間の形をしているのならば、のけぞった瞬間硬直する。のけぞりから回復しようとして、その筋繊維をこわばらせるからだ。
ルクスは、その一瞬を見逃さない。
「必殺の一撃です!」
Caprice No.24(カプリスダイニジュウヨンバン)。
巨大なバイオリンを振り上げるルクス。それは隙だらけの一撃であったことだろう。けれど、ステラの援護によって硬直した『アナボリック・ジャイアント』たちは今のルクスにとっては案山子も同然であった。
振れば当たる。
放たれたバイオリンの一撃が『アナボリック・ジャイアント』の巨体を地面にめり込ませる。まるで釘打ちのように叩き込む一撃が『アナボリック・ジャイアント』たちを次々と地面にめり込ませるのだ。
「これってあれですよね」
「ええ、もぐらたたきですね――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
うーんフリーの情報屋としては実に正しい蝙蝠ムーブ。…まあ、やりすぎると採算度外視で連合組まれて潰されるワケなんだけど。
うっわ
薬物かぁ…まあ元からあんなの相手に近接戦なんてする気はなかったけれど。
まずは
エオローに
孔雀明王印で〇毒耐性のオーラ防御を展開、さらに●黙殺を起動。
描くのは
遅延のルーン三種に
帝釈天印、
烏枢沙摩明王印に
迦楼羅天印。相手が数で圧すなら、こっちも手数で対抗しましょ。
勢力図だのにはさほど興味はないけれど…少なくとも、連中よりは多少なりともマシそうだもの。助太刀するわよぉ、ニンジャサン?
『メリサ』という男のやり方は確かに情報屋として正しいものであった。
どちらかに与するのではなく、どちらにも情報を与える。一つの情報で二重取り出来るのだから、それが本来の正しい姿であったのかもしれない。
「うーんフリーの情報屋としては実に正しい蝙蝠ムーブ」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、それをそう評する。
だが、『メリサ』という男に誤算があったのだとすれば、ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』の動きが早すぎたという点にあるのだろう。
本来ならばもっと余裕をもってサイバーニンジャ・クランと交渉することもできたはずだ。言ってしまえば『
嬢香亜寿』のオブリビオンが先走りすぎたということでもある。
「……まあ、やりすぎると採算度外視で連合組まれて潰されるワケなんだけど」
恐らく彼の素性をオブリビオンは知ったのだろう。
殺し屋『メリサ』。
蜂の名を冠する殺し屋は、ある界隈においては有名であった。だからこそ、オブリビオンはサイバーニンジャ・クランを潰すついでに殺し屋も始末しようとしたのかもしれない。
とは言え、真実を今確かめようがない。
ティオレンシアは、己に迫る『アナボリック・ジャイアント』たちの威容を見やる。
肥大化するように巨大化した肉塊の如き体。
そこから噴出するのは気化した大量の違法薬物であった。あれに振れてしまえば、彼らと同じようにオブリビオンの傀儡にされてしまうだろう。
「うっわ
薬物かぁ……」
これでは接近することができない。とは言え、ティオレンシアは最初から彼らに肉薄するつもりななどなかった。
魔術文字によって結界を生み出し、さらにオーラを重ねて気化した違法薬物を阻む。
だが、それだけでは強化された『アナボリック・ジャイアント』たちの膂力を防ぎきれるものではない。
「まともにやるつもりわないわねぇ」
黄水晶が宙に描く軌跡。
それはユーベルコードの輝き。
「あたし、魔道の才能は本気で絶無だもの。お願いねぇ、ゴールドシーン」
黄水晶のついたペンの形をした鉱物生命体がティオレンシアの言葉に相槌を打つかのように力を発露する。
それは幾何学模様を描き複雑に飛翔する魔力の矢と刃。
魔術文字から飛び出すそれは、『アナボリック・ジャイアント』を包囲する。
「魔術文字……!」
サイバーニンジャ『イェラキ』は宙に描かれたそれに目を見張る。
遅滞のルーン。
阻害・停滞・束縛、雷、焼滅に覆滅。
力在る印が描かれた端から放たれる矢と刃が『アナボリック・ジャイアント』たちを穿ち、切り裂いていく。
「勢力図だのにさほど興味はないけれど……少なくとも連中よりは」
ティオレンシアは胡散臭い微笑み浮かべて『イェラキ』に告げる。
互いにその匂いを嗅ぎ取ったのかも知れない。
裏社会で生きてきた者同士のシンパシーにも似た感覚。互いに『アナボリック・ジャイアント』とオブリビオンよりはマシだと理解するのだ。
「多少なりとも、というわけだな」
「ええ、助太刀するわよぉ、ニンジャサン?」
ティオレンシアは微笑み、前を向く。隣りにあるサイバーニンジャを疑う必要はない。今は、少なくとも、という意味ではある。
放たれる矢の合間を縫うようにしてサイバーニンジャ『イェラキ』のはなったクナイが飛ぶ。
さらに刃が斬りつけ、迫りくる『アナボリック・ジャイアント』の脅威を振り払い続け、二人はニンジャとバーテンダーという奇妙な共闘を繰り広げるのでった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み関係!
イヤーッ!
イヤーッ!
これはアレだね!何事も暴力で解決するのが一番ってやつ!
わーいそういうの大好き!
ガトリングはカッチョイイ!
カッチョイイけどそんな雑な狙いじゃボクには当たらないねー!
とカッコイイボクの【第六感】すぱすぱ避けてUC『神撃』でドーーーーンッ!!
気を付けて!キミたちは狙われている!!
え、そんなの言われるまでもないって?
んもー
こういうのは大事なのは雰囲気だよ!雰囲気!
何をしに来ただって?
恩を売って信用を買いに来たのさ!ブツブツ交換!
今なら30%くらいのディスカウント付きでお徳だよ!
オンライン決済もポイント払いも可!
「イヤーッ!」
裂帛の気合がサイバーザナドゥに響き渡る。
「イヤーッ!」
また響く。
流石に無視でない声であったがために、『アナボリック・ジャイアント』は体内から生成されたガトリングガンでもって気合の声響き渡る箇所に弾丸を打ち込む。
硝煙が立ち上る銃口の先にあったのは瓦礫。
だが、そこには何もなかった。
義体の義眼に映るサーモグラフィーには人体反応がなかったのである。『アナボリック・ジャイアント』は首をかしげる。
確かにそこから声が聞こえていたのだ。
「ガトリングはカッチョイイ!」
その声が聞こえた瞬間、『アナボリック・ジャイアント』の体内から生成されたガトリングガンをキラキラした瞳で見るロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)を彼らは漸くにして認識しただろう。
弾丸の雨はたしかに奇声じみた声を発する彼を狙ったはずだった。
けれど、それのどれもが彼に当たらなかったのである。
「あんな雑な狙いじゃボクには当たらないねー!」
振るう一撃は神撃(ゴッドブロー)。
単純に重たい一撃が少年の体躯から放たれ『アナボリック・ジャイアント』の巨体が吹き飛ぶ。
あまりにも現実離れした光景であったことだろう。
「やっぱり何事も暴力で解決するのが一番ってやつ! わーいそういうの大好き!」
そういってロニは次々と『アナボリック・ジャイアント』たちをふっとばしていく。
瓦礫とかした拠点の中で好き勝手に暴れまわりながら、ロニはサイバーニンジャ『イェラキ』の前にしゅたっと降り立つ。
カッコイイ自分は、登場の仕方もかっこよくなければならないのだと言うかのようだった。
「気をつけて! キミたちは狙われている!!」
「……この状況で?」
『イェラキ』は半眼になっていた。
この状況で狙われていないと思えるのならば、それはあまりにも能天気というか、流石に頭を疑うものであった。
しかし、ロニは、んもーって雰囲気わかってないなぁ、と『イェラキ』の不理解を咎める様子さえあったのだ。更に困惑が広がってしまう。
「こういうのは大事なの。雰囲気だよ! 雰囲気!」
「で、お前たちは何を――」
「何しに来ただって? 簡単さ。恩を売って信用を買いに来たのさ! ブツブツ交換!」
その言葉に『イェラキ』はわかりやすいし、最初からそう言えばいいのにと思った。
だが、その言葉を口から発する前にマシンガンのようにロニが告げる。
「今なら30%くらいのディスカウント付きでお得だよ! オンライン決済もポイント払いも可!」
まるでセールストークである。
ロニの言葉に『イェラキ』はまた半眼になってしまう。
余計なことを言わなければ、彼もうなずくタイミングもあっただろう。けれど、マシンガントークでその隙間すら見つけられなかったのだ。
「マッ――」
「――スル!!」
其処に飛び込んでくる『アナボリック・ジャイアント』たち。猟兵と『イェラキ』との同盟を結ぶのを阻害したわけではない。
ただ滅ぼすためだけに彼らは突進してきているのだ。ロニはそんな彼らの様子に不満げな顔をしながら、その手にユーベルコードの輝きを宿す。
「もう! 話の途中でしょ! 邪魔しないでよー!!」
放つ一撃は『アナボリック・ジャイアント』たちを尽く吹き飛ばし、やっぱり『イェラキ』は言葉を挟む暇もないなと、半眼のままややけだるげにうなずくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ムクロマンサー』
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POW : サービス残業? 愛社精神ですけど
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【含む敵や無機物を洗脳・再起動し、手下】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD : みんなしっかり稼いでます
非戦闘行為に没頭している間、自身の【骸の海を注入した手下ども】が【自身を守りながら一生懸命戦う為】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 闇営業? ただのネゴシエイションですが何か
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【洗脳】、否定したら【このユーベルコードを再び使用し】、理解不能なら【意識】を奪う。
👑11
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『アナボリック・ジャイアント』たちが次々と瓦礫の上に倒れ伏していく。
その光景をヤクザ事務所『
嬢香亜寿』を巨大企業群『ティタニウム・マキア』から任されているオブリビオン『ムクロマンサー』は涼し気な表情で見ていた。
確かに手勢である『アナボリック・ジャイアント』たちが尽く倒されてしまったことは誤算であった。
少々の損失はあると思っていたのだ。
如何にサイバーニンジャ・クランを強襲できたとしても、サイバーニンジャたちの抵抗は激しいはずだった。
少なくとも、あの亜麻色の髪の男『メリサ』はそう言っていた。
「抵抗が少なすぎますねぇ……あれに見えるはサイバーニンジャというよりはぁ……」
猟兵。
己が滅ぼさなければならないと本能的に理解できる存在。サイバーニンジャはあの中でもたった一人だ。
このサイバーニンジャ・クランには少なくとも十数人のサイバーニンジャがいるはずだったのだ。それが一人?
『ムクロマンサー』は違和感を覚える。
サイバーニンジャがこちらの動向を察知した様子はなかった。違和感が膨れ上がっていく。
「……この絵図を描いた人がいるってわけですよねぇ? 猟兵たちがそうしたわけじゃなくってぇ。こういう事態になることを望んだ者がいるってことですよねぇ?」
『ムクロマンサー』は次々とその義体脚部に備えられた針のごとき部位を戦場に転がる『アナボリック・ジャイアント』たちに突き立てていく。
しゃなり、しゃなりと優雅に歩く彼女は、首をかしげる。
そう、この絵図を描いた存在。順当に考えれば『ティタニウム・マキア』と争っている他の巨大企業群。
だが、それにしては猟兵の存在が異物として際立ち過ぎている。
「まあ、どちらでもいいですよぉ。どのみちあの情報屋も洗脳するつもりでしたしぃ。みなさんもまだ生きていたいですよねぇ。なら、任せてください。洗脳は大の得意なんですぅ」
『ムクロマンサー』は可愛らしく微笑みながら、優雅に一礼するのであった――。
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
洗脳ねぇ。それだけで拒否するには充分なんですがー。
再度言われたとして理解不能…なので意識が奪われますかー。
まあ、『私』の意識はね。
※交代※
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
属性:氷雪
全く、彼は無理をしすぎなのです。しばらく休ませます。
…言いましたよね、『我ら』は一人にあらず、と。
早業によるUC使用。雷に加えて氷雪もありますから、もう要求は聞こえませんし…何より、『一度効果を発揮した』のは事実ですからね。
ええ、ですから…冷徹に参りましょう。
ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』のトップであるオブリビオン『ムクロマンサー』はゆっくりと戦場となった瓦礫の山を歩く。
そこかしこに倒された『アナボリック・ジャイアント』たちの躯体が転がっている。彼らの躯体は最早動かないはずだった。
けれど、彼女の脚部。その棘の如き義体が鋭き動き、針を躯体に打ち込む。
痙攣するように『アナボリック・ジャイアント』であった者たちがゆっくりと立ち上がっていく。
「みなさぁん、労働のお時間ですよぉ。働くことはとっても有意義なこと。時間とは有限。ならぁ、しっかり働いてじゃんじゃんばりばり稼いでしまいましょうねぇ」
彼女はたおやかに微笑んでいる。
あら、と『ムクロマンサー』は相対する猟兵たちを見やる。
「あなたも働きたいですかぁ?『
嬢香亜寿』は歓迎いたしますよぉ? あぁ、そうですね。お賃金の話がまだでしたね。時間給が良いですか? それとも日給?」
その言葉にめまいのようなものを馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は覚えただろう。
意味がわからない。
猟兵である己たちを滅ぼそうとせず、己たちを雇おうとしている。
これが『ムクロマンサー』のユーベルコード、ネゴシエーション。交渉という名を関していたとしても、それは結局の所洗脳でしかなかった。
頭の中に広がっていく『ムクロマンサー』の声。
それが『疾き者』の脳を揺さぶる。
「あなたがオブリビオンであるというだけで拒否するには充分なんですがー……」
「そうですかぁ。でもでもぉ、どっちにしてもあなたの意識は……」
がくり、と『疾き者』は己の意識が暗転するのを理解しただろう。
膝が落ちる。
意識は奪われ、その体は無防備な状態になる。そうなれば、『ムクロマンサー』は脚部の針を打ち込み、直接骸の海を流し込んで洗脳するだけだ。
「はぁい、おやすみなさぁい。次目覚めるときはぁ……――!?」
彼女の勝ちであった。
ただ一人であったのならば。しかし、彼らは違う。彼らは四つの魂でもって一つとなさしめられている悪霊。
複合型の悪霊である。ならばこそ、彼らの一つが意識を奪われたとて、問題はないのである。
針を打ち込もうと近づいてきた『ムクロマンサー』の足元に打ち込まれる霊力の矢。
それは雷を迸らせながら、周囲を氷雪に凍らせていく。
「――どういうことですかぁ? 私のユーベルコード、たしかにネゴシエーションしたはずなのですけどぉ?」
「……いいましたよね、『我等』は一人にあらず、と」
『静かなる者』の意識が表層に現れた姿。
彼らは束ねられた者。
一人に見えたとしても、それは正しくはない。瞬時につがえた霊力の矢を引き絞る。弓から放たれる四更・雷(シコウ・ライ)は、『ムクロマンサー』を追いすがるように宙を飛ぶ。
「全く、彼は無理をしすぎなのです。しばらく休ませます」
「あらぁ、有給を取るなんて、とんだ不良社員。採用しなくてよかったですぅ」
「一度効果を発揮したのなら、もはや私達にそれは通用しない。ええ、ですから……」
放たれる矢を『アナボリック・ジャイアント』たちの骸が壁となって防ごうとする。
だが、放たれた霊力の矢は、呪詛の矢。
そして追尾し続けるのだ。
「冷徹に参りましょう。ええ、逃さぬと言ったのです。悪霊が逃さぬと言ったのですから……絶えていただきますよ」
空中で壁たる『アナボリック・ジャイアント』たちの巨躯をかいくぐり、『ムクロマンサー』に迫る霊力矢。
「なんでぇ!?」
「無駄ですよ」
空中を自在に走る矢が『ムクロマンサー』の肩に突き刺さる。雷が躯体を走り抜け、氷雪が凍りつかせる。
さらに呪詛が彼女の生命力を吸収する。
『ムクロマンサー』がよろめくようにして瓦礫の影に消える中、『静かなる者』は一時の休みを得た『疾き者』をいたわるように番えた矢を、さらに撃ち放ち『ムクロマンサー』を追い詰めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
随分と余裕そうね、組長さん。あなたもすぐに討滅してあげる。それで、ここでの騒動は一区切りよ。
討滅した連中が起き上がってくるか。屍使いが上手だこと。
でも、ただの屍体にやられるはずもないでしょう。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」で不動明王火界咒を放って、雑魚を一掃。
そうして障害物を突破して、本命相手に「衝撃波」をまとった薙刀で攻撃を仕掛ける。
「斬撃波」で「なぎ払い」、「貫通攻撃」で「串刺し」にして、ムクロマンサーを直接攻撃するわ。
白兵戦に持ち込めば、こちらが有利。生き残ってる屍体の妨害には注意して。
さあ、あなたも静かにお眠りなさい!
射掛けられた矢を引き抜いて『ムクロマンサー』は毒づくまでもなく、その脚部の針の如き棘でもって『アナボリック・ジャイアント』たちの躯体に骸の海を注入する。
そうすることによって倒された『アナボリック・ジャイアント』たちは彼女の忠実なしもべとなって戦うのだ。
ただ、難点を一つ上げるのだとすれば、骸の海によって洗脳していたときのほうが戦闘能力が高い、ということだろう。
骸となった躯体では、身体能力を十全に発揮することができない。
「とは言え、数は力ですしぃ?」
幸いに周囲には此処まで引き連れてきた配下たちが倒されたとは言え、躯体を残している。
「なんとかなりますよねぇ。これまでなんとかなってきたのですしぃ」
「随分と余裕そうね、組長さん。あなたもすぐに討滅してあげる。それでここでの騒動は一区切りよ」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、この事件の首謀者であるオブリビオン『ムクロマンサー』へと走る。
『アナボリック・ジャイアント』たちは猟兵たちが倒したはずだ。
だが、躯体が残っている限り、『ムクロマンサー』はそれを手駒としてこちらにけしかけてくる。
たった一体の敵を倒すだけだというのに、肉壁の如き躯体が残っているのだ。
「油断するな!」
フォトンセイバーの閃光が輝き『ムクロマンサー』の操る躯体を切り裂くサイバーニンジャ『イェラキ』。
その援護を受けてゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「ただの屍体にやられるはずもないでしょう」
手にした白紙のトランプが投げ放たれる。
そのカードから噴出するのは炎。放たれた不浄を灼く炎は、次々と『アナボリック・ジャイアント』たちの体を焼滅していく。
もはや、ゆかりにとって躯体は障害物でしかなかった。
手にした薙刀の刀身が煌めく。
「簡単にはやらせませんよぉ」
操られた躯体が『ムクロマンサー』を守るように壁となって、ゆかりの道行きを阻む。
それを薙刀の一閃が切り払うも、さらに湧き上がるようにして『アナボリック・ジャイアント』たちの躯体が襲いかかる。
例え、動きが鈍重であって精彩を欠くものであったしても、やはり数は力だ。
圧倒的な数でゆかりを押しつぶすように迫る『ムクロマンサー』の手駒たち。だが、それを切り裂くのが『イェラキ』のフォトンセイバーだった。
「白兵戦に持ち込め!」
「ええ、これだけ手駒を操る屍使いだっていうのなら!」
ゆかりはフォトンセイバーの閃光が切り開いた道へと飛び込む。
猶予はなかった。
時間をかければそれだけ『ムクロマンサー』を取り逃がすことに繋がる。だからこそ、ゆかりは飛び込む。
薙刀が放つ衝撃波が『ムクロマンサー』の体をしたたかに打ち付けるだろう。
「グッ、ハァ――……痛い、ですよぉ!」
続けて振り下ろされた薙刀の一閃を脚部の棘が十字に交差して弾き飛ばす。弾かれる薙刀。手が痺れる。もう振り下ろすことはできない。
ならば、とゆかりは振り上げられた薙刀を空中で逆手に持ち変える。
「屍は屍らしく――」
投擲される薙刀の一閃。
それは矢のように走る一撃であった。
瓦礫にもたれかかっていた『ムクロマンサー』を腹部を貫く薙刀。
逃走を許さぬように釘付けにする一撃。
まるで標本ピンのように打ち込まれた薙刀。『ムクロマンサー』の忌々しげな表情をゆかりは見ただろう。
そして悠然と告げるのだ。
「さあ、あなたも静かにお眠りなさい――!」
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
ふーん…てっきり人を誘い出して拠点が手薄になったところをどかーん★
って作戦かと思ったけど、その口ぶりだと違うのかな★
……じゃあ、誘い出したのは誰で、誘い出されたのは誰なんだろうね?
ところでシルキーちゃんも働くのは大好きだよ★
例えば、お金の取り立てとか★
という訳でUCだよ★よく知ってると思うけど、この世界で「お金にならないものはない」。だから転がってる部下とか武器弾薬、あなた達の「持ち物」全部、今回の修繕費・慰謝料・その他経費として徴収させてもらうよ★
(武器弾薬を失い)稼げなくなっちゃったら仕方ないからKu-9やデスブレイドで一人ずつバラしてその義体もお金にしていくね★
それじゃ頑張って稼いでね★
サイバーニンジャ・クランの拠点を襲ったのはヤクザ事務所『
嬢香亜寿』だった。
しかし、そのトップであるオブリビオン『ムクロマンサー』の思い描いていた展開にはならなかった。
此処には十数人のサイバーニンジャがいるはずだったのだ。
彼らに骸の海を注入し洗脳する。そうして新たな手駒を手に入れるつもりだったのだ。情報屋の情報より迅速にことを運ばせたのは、そのためであったのだ。
だが、『ムクロマンサー』もまた何者かの手のひらの上で踊らされている。
「ふーん……てっきり人を誘い出して拠点が手薄になったところをどかーん★」
箱型の頭脳戦車が跳ねるように車体を揺らしながら戦場となった拠点の瓦礫の合間を縫うようにして走る。
シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)、彼女は猟兵である。
確かにこれまで得られた情報から推察するにそのような作戦が本来の『ムクロマンサー』たちのなそうとしていたことなのだろう。
だが、そうはならなかった。
サイバーニンジャ『イェラキ』しか拠点には存在しておらず、さらに言えば猟兵という不確定要素がこちらに抵抗してきているのだ。
「ええ、そのつもりだったんですけどぉ。どうやら不手際? があったみたいですねぃ」
己を串刺しにした薙刀を抜き払って『ムクロマンサー』は首をかしげる。
躯体に痛みはない。
けれど、不快ではあった。彼女はこれまで骸の海を注入してきた『アナボリック・ジャイアント』たちを壁に後ろに下がる。
「その口ぶりだと違うのかな★ ……じゃあ、誘い出したのは誰で、誘い出されたのは誰なんだろうね?」
「さあ? 私も知りたいですよぉ、それ。私を罠にはめようと、手のひらで転がそうっていう人はぁ、洗脳したっていらないですもん。それより私の手駒になって働きません? 今なら疲れ知らずで働けますよぉ」
その言葉は骸の海の注入を意味する。
洗脳。それによって『ムクロマンサー』は多くの人々を操ってきたのだろう。そうすることが上位組織である『ティタニウム・マキア』の利益になると信じて。
だが、勿論。
シルキーの返答は簡単なものであった。
「シルキーちゃんも働くのは大好きだよ★ 例えば――」
そう、お金の取り立てとかね、と彼女は微笑んだようであった。
彼女の単眼が煌めく。
ユーベルコードの輝き。
箱型の躯体に内蔵された治安維持機構。その一つである、罰金強制徴収機構が開放される。
それは戦場にある換金可能な全財産、所持品、武器弾薬。
ありとあらゆる『金になるもの』を徴収し、シルキーに幸運を齎す。いいや、言い換えるのなら、今回の修繕費と慰謝料、その他経費諸々として徴収される。
「お金は天下の回り物★(ファイン・コレクター)っていうしね★」
シルキーのユーベルコードは恐るべきことに、あらゆるものを換金する。周囲に転がっている『アナボリック・ジャイアント』たちの躯体さえも彼女は換金する。
奪って不幸にする。
そして、奪った不幸に応じた幸運を得るのだ。
そんな彼女に対して骸の海を注入して洗脳した『アナボリック・ジャイアント』たちをけしかけたところで無意味だ。
彼女の稼ぎを増やすだけになってしまう。
「なんて面倒な……そういうのはヤクザ事務所のしごとですぅ!」
「やーだよ★ だって、言ったじゃない。シルキーチャンも働くの大好きだよって★」
箱型の頭脳戦車、シルキーの脚部が巨大な機械剣へと変貌し、スプレットダガーが乱舞する。
『ムクロマンサー』の周囲にあった『アナボリック・ジャイアント』という肉壁を次々と彼女は解体し、換金していく。
彼女は稼ぐと言ったら稼ぐのだ。
『アナボリック・ジャイアント』たちの義体は余さず全てお金に変えていく。シルキーは笑う。
「それじゃ頑張って稼いでね★」
もうきっと『ムクロマンサー』は、稼ぐこともできないだろう。
今日此処で、彼女のヤクザ事務所を運営するという稼業は終いとなる。そのためにシルキーはやってきたのだから。
そして、この戦いにかかった経費の諸々を改修するために凄まじい勢いで『アナボリック・ジャイアント』の義体を切り刻み『ムクロマンサー』を守る盾を奪うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
あらら、早速組長さんがお出ましなん?
カチコミゆうたら、こう、もっと鉄砲玉やらがわいわいとドンパチとするもんとちゃうんやろか?
WIZ
ま、組長さんはオブリビオン、初回はそれだけで当然拒否やね
で、再度の交渉には……んん、組長さんが直接に勧誘?
よほど小さい組なんか、『人財』がおらへんのんか……ああ、両方なんやねえ
そりゃ、労働条件もアレやし、そもそも組長さんがTOPなんやったら、そりゃねえ……
とまあ、『理解』してまうわあ
理解してもたら、もうこっちのターンやね?と満面の笑みで眼差しを向け【幽明審判】展開
ブラック企業はんたーい!
違法薬物つくるんならまともな美味しい良い酒つくれー!
ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』の手勢は猟兵たちによって打倒された。
だがトップであるオブリビオン『ムクロマンサー』にとって、それは手勢を失ったということを意味しない。
彼女の脚部義体に存在する棘。
それを倒れた『アナボリック・ジャイアント』たちに次々と突き立てていく。骸の海を注入しているのだ。
彼女は骸の海によって彼らを洗脳し、また操り人形のように扱う。
「まったくぅ。手を焼かせてくれますよねぇ」
傷を負いながらも義体であるがゆえに痛みを感じることなく『ムクロマンサー』は首をかしげる。
だが、その可愛らしい仕草と裏腹に、その評定を作る顔面はひきつっていた。
ここまで自分の計画が上手くいかないことが腹立たしくて仕方がないのだろう。
「あらら、早速組長さんがお出ましなん?」
クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は、手にした槍を振るって同じように首をかしげる。
「カチコミゆうたら、こう、もっと鉄砲玉やらがわいわいとドンパチとするもんとちゃうんやろか?」
少なくともクルルの理解ではそうだ。
任侠映画でも、もう少し派手だ。けれど、『ムクロマンサー』は青筋立てながら表情筋をビキビキと音を立てさせる。
腹立たしさも此処に頂点に達している。
「そういうのはぁ、やっぱりぃ波風立ちますからぁ? どうです? 大人しく洗脳されてくれます? そうしたら無駄な労力使わなくてすみますしぃ」
「ま、組長さん。あんたがオブリビオンである時点で交渉なんて成り立つわけないやろ? というか、そうでなくても当然拒否やわ」
クルルはばっさりと切り捨てる。
言葉とともに迫る『アナボリック・ジャイアント』たちの躯体を串刺しにし、投げ放つ。
その言葉に『ムクロマンサー』は再びユーベルコードに瞳を輝かせる。
意識を奪おうとしているのだ。
「んん、組長さん。よほど小さい組なんか、『人財』がおらへんのか……ああ、療法なんやねぇ」
クルルは笑いながら瞳をユーベルコードに輝かせる。
彼女に洗脳は無意味。
理解。
そう、理解したのだ。『
嬢香亜寿』は謂わば、『ムクロマンサー』のマンパワーだけで成り立っているヤクザ事務所だ。
骸の海で洗脳できるのならば面接もなにもあったものではない。骸の海を注入すれば洗脳完了であるというのならば、彼女に特別のスキルは必要ないのだ。
無論、これもネゴシエーションですらない。
「そりゃ、労働条件もアレやし、そもそも組長さんがトップなんやったら、そりゃねぇ……」
まあ、理解やわぁ、とクルルは呆れながら、輝く瞳を『ムクロマンサー』に向ける。
それは、幽明審判(ユウメイシンパン)。
視線を向けた瞬間、天より降り注ぐのは光焔。
まばゆいばかりの光が『ムクロマンサー』を照らす。いや、照らすのではない。光が彼女の義体の表面を灼く。
それだけではない。
地の底より這い出る常闇が彼女の足を絡め取り、身動きを封じる。
「何を勝手に理解してるんですかぁ! 骸の海をちゅっとやれば、みんな睡眠も披露も感じなくなるのにぃ。どうしてそれがわからないんです!」
「わかるわけないやろ! そんなブラック企業! はんたーい! 違法薬物つるくんなら、まともな美味しい良い酒つくれー!」
最後はクルルの願望でしかなかった。
けれど、クルルは光焔満ちる戦場へと駆け出す。
敵はブラック企業。いやさ、オブリビオン。手にした槍が常闇をまとって槍の穂先を巨大化する。
その一撃が『ムクロマンサー』の片腕を跳ね飛ばす。
「酒は百薬の長というやんね。だから、どうせならお酒のほうが実入りもいいんちゃう。ついでにカタギにもなれるやし、どう?」
クルルは跳ね飛ばした義体の腕に槍を突き立て、問いかける。当然、答えは拒否。ネゴシエーションにもなりはしないと、クルルは肩をすくめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
わたしたちに洗脳なんて効果はないよ。
なぜなら、もうすでに洗脳されてるようなものだからね!
(あえて『菜医愛流帝に』とは言わないむーぶ)
それに
布教しなきゃいけないのはわたしたちだしね!
ということで!
サージェさん、今回は全力でいくよ。
どうやらこの子、わたしたちの布教の敵みたいだからね!
サージェさんも、心ゆくまま忍んでいいからね。
さぁ、忍んで! どんどん忍んで! もっと! もっともっと!
そう! やればでき……ないねやっぱり。
その二連装幸せ球、存在感ありすぎ!
しかたない。
【リフレクションマリス】で【ムクロマンサー】を洗脳して、
わたしたちの布教に使わせてもらっちゃいますか。
サージェ・ライト
【理緒さんと】
くっ、これが洗脳……!
嬢香亜寿なんて名前を付けるヤンキーみたいなのに
屈服するなんて……嫌です!
私は、私は『にゃいあるて』を見るまで死ねないんですーーー!!
ふっ、やはり『菜医愛流帝』は最強
そのFCである私たちにそんな小賢しい手段は通じないのです!
ええ、理緒さん
全力で
布教しましょう!!
そんなに忍べと言われましても
私はいつも忍んでるので?
ですがクノイチっぽいところを見せていきましょう
【かげぶんしんの術】でごーごーごー!
って、何ですかその二連装幸せ球って!?
よく見てください、ムクロマンサーも大きいです
つまり私はセーフ戦力外
ささ、理緒さんの出番ですよ!
はね飛ぶ義体の腕。
それはオブリビオン『ムクロマンサー』のものであった。猟兵の放った一撃がついに『ムクロマンサー』の腕を奪う。
だが、彼女の本領は骸の海による洗脳である。
義体であるが故に痛みは感じず。けれど、彼女の表情を作り出す義体の顔面を引き攣っていた。
そう、ここまで彼女が追い込まれることはなかったのだ。
これまで配下たちを全面に押し出して彼らを盾にして己は後方で悠然と構えていればよかった。骸の海を注入してさえいえればよかったのだ。
巨大企業群の中でもそうして、イージーモードで今の地位にまで登ってきたのだ。
「こんなことぉ、想定していないんですけどぉ。でもでもぉ、イヤじゃないですかぁ? 生身の体。睡眠も食欲も、諸々大変じゃないですかぁ。骸の海を注入すれば、まるっと解決ですよぉ?」
彼女の言葉にサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、くっ……! と表情を曇らせる。
バーチャルキャラクターである彼女にとって、そのどれもが必要ないものであったが、何故にそんな顔をスルのだろうか。
「くっ、これが洗脳……!」
とてもじゃないが洗脳されている感じがしないのはッキの成果。
「『
嬢香亜寿』なんて名前をつけるヤンキーみたいなのに屈服するなんて……いやです!」
「それは今別によくないですぅ!?」
「私は、私は……」
サージェは叫ぶ。サイバーザナドゥで叫ぶ。
「私は、『にゃいあるて』を見るまで死ねないんです――!!」
じゃあ、ずっと死ねない。ある意味不死である。不老不死システムの完成である。
そんなサージェの咆哮する姿を見て菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はうなずく。
何を見て今うなずいたのだろうか。納得いくシーンあったかな。
「わたしたちに洗脳はなんて効果はないよ。なぜなら!」
理緒は得意気にうなずく。だからなんで得意げなの。
「もうすでに洗脳されているゆなものだからね!」
「だからなににぃ!?」
『ムクロマンサー』も思わずツッコミしてしまうほどのガバ理論。しかし、理緒はふるふると頭を振る。
これ以上の問答は無意味と言っているかのようであった。
「それに
布教しなきゃいけないのはわたしたちだしね!」
「ふっ、やはり『菜医愛流帝』は最強。そのファンクラブである私達にそんな小賢しい手段は通じないのです!」
「サージェさん、今回は全力でいくよ。どうやらこの子、わたしたちの布教の敵みたいだからね!」
「ええ、理緒さん。全力で
布教しましょう!!」
二人の会話は噛み合っているようでかみあっていないけれど、オブリビオンをぶっ飛ばすという点においては共通している。根っこが共有されているのならば、それでいいのである。
「私の方が意味分かんないんですけどぉ!?」
『ムクロマンサー』の脚部義体の棘によって骸の海を注入された『アナボリック・ジャイアント』たちの躯体がのろのろと壁になる。
どう考えてもあれらを自分に近づけさせてはならないと直感的に理解したのだ。
「心ゆくまで忍んでいいからね。さぁ、忍んで! どんどん忍んで!」
「そんなに忍べと言われましても、私いつも忍んでるので?」
それはない。
「もっと! もっともっと! そう! やればでき……ないね、やっぱり」
「いや、できてますけど!?」
それならば、とサージェは瞳をユーベルコードに輝かせる。
かげぶんしんの術(イッパイフエルクノイチ)によってサージェは分身を生み出して、れっつらごー!
バンバン増えるワカメのように増えたサージェの分身たちが『アナボリック・ジャイアント』たちに組み付いてぶん投げたり、関節技を決めたり、それはもう大乱闘じみた光景が戦場に満ちていく。
サイバーニンジャ『イェラキ』はちょっとどうしたものかなと、休憩しながら戦場を俯瞰していた。
「忍びの概念がちょっとおかしいな、連中」
ぼそっとそんなことをつぶやいていた。
「その二連装幸せ球、存在感ありすぎ!」
「って、なんですかその二連装幸せ球って!? よく見てください、『ムクロマンサー』も大きいです。つまり私はセーフ戦力外」
そんな理屈が通るものか。
「今さらっと私、ディスってません?」
「しかたない」
理緒はリフレクションマリスで洗脳のネゴシエーションを跳ね返す。
「さあ、洗脳……じゃないや、布教に使わせてもらっちゃうよー。何をとは言わないけど、素晴らしさを徹底的にその躰に叩き込もうねー」
みょんみょん。
なんだかよくわからない手の動きをしながら理緒はユーベルコードによって『ムクロマンサー』を洗脳しようとする。
「いやぁ!? なんかわかんないけど、身の危険を感じるんですけどぉ!」
そんなわちゃわちゃした戦場をサイバーニンジャ『イェラキ』は自分の出る幕はまったくないなぁって思いながら、一息つくのであった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
洗脳……?
いえ、ステラさんならすでに
エイルさんのメイドですので、
上書きは難しいと思いますが……。
やべーレベルがカンストしてますからね!
はっ!
わたしですか!?
ぴゅあっぴゅあなわたしが狙いですか!
そ、そんなことはさせません!
それをしていいのは師匠だけです!
いえ、そうではなくて、逆にわたしが魅了しちゃいますよ!
【ルジェッリ】を構えて【Canon】を……。
あーっ!?さっき殴ってたのでチューニングが狂ってますー!?
ま、まぁユーベルコードですしなんとか、って、
誰ですか、いつもの演奏よりマシっぽいとか言ったの。
オールナイトでリサイタル開催しますよ?
……ステラさんは参加確定で。
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
なるほど
エイル様(じゃない)を洗脳しようと?
とりあえず死刑で…いえ、地獄を見せましょう
誰が
やべーメイドですか!
私は愛に生きる
メイドなだけです!
ぴゅあ、ぴゅあ……?
あ、邪念の別称ですか?
最近この光の勇者、ちょっと闇属性が入ってきてる気がするのですが
まぁ私に害はないので放っておきましょう
……えーとここは後方メイド待機でしょうか
音が届くと死ぬ……あれ?いつもより音が清らかなような?
はっ!?チューニングがおかしい?
なるほど、マイナス×マイナスがプラスになるような
いえ何でもありません
とりあえずルクス様にお任せしましょう
え?支援いりますか?私死にたくないのですが
「いやぁ! もうほんとに猟兵ってこんな人たちばっかりなんですぅ!?」
『ムクロマンサー』は叫んでいた。
洗脳しようとして洗脳しかけられていた。なんかよくわからん情報が頭の中に流し込まれる恐怖。
それはある意味で骸の海を注入して洗脳していた彼女の所業を鏡返しにしたかのようなものであった。
けれど、彼女は省みない。
なぜならオブリビオンであるからだ。過去の化身。停滞した存在。歪み果てた存在。そんな彼女が変わることなどないのである。
これまでも。これからも。
「だからぁ、意味分かんないんでぇ! さっさと洗脳されちゃってくださよぉ!」
「なるほど」
何がなるほどなのか。
どんな理解をしたのか、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はうなずいていた。後方メイド面でうなずいていた。どんな顔してるんだ。
「
『エイル』様を洗脳しようと?」
「言ってませんけどぉ!? あ、でも全人類洗脳するなら、その『エイル』さん? も洗脳しますけどぉ」
「とりあえず死刑で、いえ地獄を見せましょう」
人には振れてはならぬ場所がある。今、オブリビオン『ムクロマンサー』はステラの振れてはならぬ場所に触れたのだ。
「いえ、ステラさんならすでに
『エイル』さんのメイドですので、上書きは難しいと思いますが……」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)が熱い風評被害をもたらしている。
やべーレベルがカンストしているのがステラである。
だからこそ、ルクスは此処まで引っ張り回されているのである。悲しいかな。それはある意味で事実であったのかもしれない。
勝手に洗脳されているという意味では!
「誰が
やべーメイドですか! 私は愛に生きる
メイドなだけです!」
それってメイド道的にはどうなんだろうなぁって思わないでもないのだけれど、そこのところ解説のステラさんどうでしょう。
「はっ! わたしですか!? ぴゅあっぴゅあなわたしが狙いですか!」
言ってない。
言ってないし、ピュアとは……? と概念に首を傾げたく鳴る。しかし、ステラもそう思っていた。それって邪念のタグ位じゃないかなぁって。
っていうか、最近光の勇者っていうか闇属性入ってきているような気がしないでもない。でもま、自分には害がないからいっか! というざっくりとした思考でステラはのんびりしていた。
いや、ご主人さま以外のことは本気でわりとどうでもいと思っていそうなところが本当にやべーメイド足り得る所以であったのかも知れない。
「……えぇ……」
「……えぇ……」
二つの声が奇しくも重なっていた。
サイバーニンジャ『イェラキ』は休憩中であったし、『ムクロマンサー』は己のネゴシエーションが全く通じないどころか、こっちが理解不能なことをのたまうルクスに若干引いていた。
「そ、そんなことさせません! それをしていいのは師匠だけです! いえ、そうでなくて、逆にわたしが魅了しちゃいますよ!」
巨大バイオリンを振り上げるルクス。
しかし、ルクスはCanon(カノン)を演奏しようとして気がつく。先程の『アナボリック・ジャイアント』との戦いでチューニングが狂っていることに。
最初の音が外れている、とルクスは感じたのだ。
そのことにステラは後方メイド面して気がついていた。
察していた。チューニングがおかしいなーって。絶対バイオリンでボコスカやったらチューニングが狂うに決まってるよなーって。
でもでも、音が届くと死んじゃうよなーって思っていた。
だがしかし、ルクスの瞳がユーベルコードに輝く。
そう!
ルクスは勇者である。闇属性が混じっても、やっぱり勇者なのである。ならばこそ、これくらいの逆境ははねのけていかねばならない。そうしてきたのだ! だからこそ、彼女は意を決して奏でる。
「きまよ……!」
「……!」
二人は顔を見合わせた。
『ムクロマンサー』は、はてな顔であった。なんで意外そうな顔をしているのだろうかとさえ思ったのだ。
だって、綺麗な旋律が紡がれているのだ。
ルクスの演奏で!
「こ、これは……なるほど、マイナスとマイナスをかけ合わせることによってプラスに転じるような。いえなんでもありません」
「今更取り繕っても遅いですよ!? いつもの演奏よりマシっぽいとか言ったでしょ! オールナイトでリサイタル開催しますよ!」
今の状態ならオッケーなのではと思うなどした謎の声でしたまる。
「いえ、とりあえずルクス様におまかせしましょう」
押しかけメイドの本気(マワリトノニンシキノチガイ)の仕事は愛を叫ぶ時点でおしまいなのである。店じまいなのである閉店ガラガラーシャッターがしゃーんである。
「……ステラさんは参加確定で」
なんかのフラグを踏み抜いたステラとルクスは奏でる見事な旋律の生み出す流麗な破壊魔法でもって『ネクロマンサー』を雑にぶっ飛ばすのであった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
んー…あたしたち猟兵まで込々で絵図面描いた奴がいるってことかぁ…
現状利益を得てるのはこっちとはいえ、あんまり気持ちのいいもんじゃないわねぇ…
実質無尽蔵の肉壁とか勘弁してほしいわねぇ…
こんなロクでもない奴逃したら、次にどんなトンデモカマすかわかりゃしないわぁ。
…さっきまでのは曲がりなりにも自律行動してたけど、再起動して操りなおしてる以上認識は操作者に依存するはず。適切な操作ができなきゃ案山子と変わらないわよねぇ?
●圧殺起動、煙幕・閃光弾・パルスグレネードで全力でイヤガラセして肉壁を○目潰しと足止め。一気に本丸に○切り込みかけるわよぉ。
この絵図を描いたものがいる。
それはこの場におらず、オブリビオンである『ムクロマンサー』すらも手のひらの上にしている。
サイバーザナドゥは巨大企業群がひしめく世界である。
世界の覇権を望むように苛烈な争いを水面下で繰り広げている。ならば、『ティタニウム・マキア』と敵対する巨大企業群であろうか。
それとも。
「んー……あたしたち猟兵まで込み込みで絵図を描いた奴がいるってことかぁ……」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は考える。
『ムクロマンサー』の目的は一つ。
ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』をもってサイバーニンジャ・クランを壊滅させ、骸の海を注入してサイバーニンジャを傀儡とすること。
ならば、それが叶わぬ状況になり、さらには猟兵の介入まで許したのならば。
「現状利益を得てるのはこっちとは言え、あんまり気持ちのいいもんじゃないわねぇ……」
ティオレンシアは己たちもまた何者かの手のひらの上で転がされている感覚に不快感を顕にする。当然のことだろう。
だからこそ、この状況をなんとかしなければならない。
迫る『アナボリック・ジャイアント』たちは先程まで猟兵達によって打倒された躯体だ。もはや動かぬはずであったが『ムクロマンサー』は、その脚部義体の棘によって再び彼らを傀儡として肉壁にしているのだ。
「ほんとにぃ、猟兵って人たちはまったく話の通じない人たちばかりですねぇ!」
『ムクロマンサー』は、その顔面の表情を作り出す人工筋肉を引き攣らせながら『アナボリック・ジャイアント』たちを操る。
未だ数の利を失っていない。
圧倒的な数ですりつぶせばいいのだ。
「実質無尽蔵の肉壁とか勘弁して欲しいわねぇ……」
ろくでもない能力を持っているとティオレンシアは理解する。
骸の海さえ注入してしまえば洗脳できてしまう存在。これを野放しにすれば、次にどんな事件を起こすかわからない。
だからこそ、ティオレンシアは此処で倒すと決める。
「だがどうする。実際、連中は数という勢いを失っていない……」
サイバーニンジャ『イェラキ』が迫りくる『アナボリック・ジャイアント』をフォトンセイバーで斬りつけながらティオレンシアに言う。
「さっきまでのは曲りなりにも自律行動していたけど、再起動して操り直してる以上、認識は操作者に依存するはずでしょぉ?」
なら、とティオレンシアの瞳がユーベルコードに輝く。
くるりと彼女の手のひらで回転するように引き抜かれた愛用のシングルアクション式リボルバーが収まる。
「圧殺(アレスト)起動」
六連装のシリンダーに装填されたのはルーンを刻んだ銃弾。
弾丸に籠められたのは催涙。そして閃光。謂わば弾丸で放つグレネード。
引き金に欠けた指は軽く。
羽のように軽く引く。ただそれだけで巨大な肉塊の如き『アナボリック・ジャイアント』とティオレンシアの膂力の差は帳消しにされる。
放たれる弾丸は閃光を解き放ち、煙幕を解き放つ。
「これはぁ……! 煙幕……目潰しでぇ!」
「適切な操作ができなきゃ、案山子と変わらないわよねぇ?」
煙幕の中をティオレンシアは走る。
迫る『アナボリック・ジャイアント』は『イェラキ』のフォトンセイバーの一撃が切り裂く。
さらに道を切り拓くように彼のはなったクナイが『アナボリック・ジャイアント』を排除する。
「行け!」
「ええ、本丸に切り込み掛けるわよぉ」
ティオレンシアは煙幕の中から『ムクロマンサー』に迫る。
「――っ! こんな、こんな子供だましみたいな、のでぇ!」
「安心していいわよぉ、よっぽど運が悪くなければたぶん死にはしないから……死には、ね?」
ティオレンシアの瞳がユーベルコードに輝く。
ルーンを刻み込んだ銃弾がリボルバーの銃口から放たれる。
それは閃光。
解き放たれた弾丸が開放する光が『ムクロマンサー』の瞳を焼く。視界が明滅することによって『ムクロマンサー』のたぐる『アナボリック・ジャイアント』たちは動きを止めるだろう。
さらに彼女も視界を失う。
「その子供だましにやられるのよぉ?」
放つグリップの一撃が『ムクロマンサー』の頭部をしたたかに打ち据え、吹き飛ばす――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
時給?一億兆ロニ
$だよ!
払って!さあ払って!
なんかキミしかいないなあおかしいなあって話になってるねー
あ、キミなんかクランのみんなに嫌われてるとか?
あいつにぜんぶおしつけよーぜ!とか!
ほら!あそこのカメラで企業の鉄砲玉とイェラキをぶつけてみた!実況配信とか!
いやいや人間はそーいうことあるよー
ボクが言うんだから間違いない!
大丈夫!ちゃんと生き残ってこのあと確かめよう!
そこのなんとかいう情報屋ちゃんも付き合って!
ガトリングの精度が落ちている!なおさら当たらないね!
再生怪人は弱い法則!
【第六感】回避からのUC『神撃』でまとめてドーーーンッ!
あそれっ!ドーーーーンッ!
交渉というのは条件を押し付けるものである。
労働と金銭。
時にはそれ以外のものもあるだろう。だからこそ、人は言葉を持って己の有利な状況を生み出そうとする。
だが『ムクロマンサー』は違う。
その脚部義体に備えられた棘。それによって骸の海を打ち込み、洗脳する。交渉という概念すら彼女の中にはなかったのかもしれない。
あったとしても、自分に都合のいいだけの言葉しか存在していなかったのだ。
「だからってぇ、そんなにふっかけますぅ?」
その言葉はロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)に向けられていた。
「時給? 一億兆ロニ
$だよ! 払って! さあ払って!」
「そんなに払う馬鹿いませんよぉ!」
骸の海を注入することによって、先程たおした『アナボリック・ジャイアント』たちが性能は劣化したとはいえ大挙してロニに襲い来る。
サイバーニンジャ『イェラキ』に同様であった。
「これだけの数をまだ……!」
「なんかキミしかいないなあおかしいなって話になるよねーあ、キミなんかクランのみんなに嫌われてるとか?」
ロニはサイバーニンジャ・クランに『イェラキ』一人しかいなかったことを訝しむ。
出払っていたといってもタイミングがよすぎるのだ。
これはもうドッキリを疑うしかない。
「そんなことはない!」
「あいつにぜんぶおしつけよーぜ! とか! ほら! あそこのカメラで企業の鉄砲玉と『イェラキ』をぶつけてみた! 実況配信とか!」
「あるわけないだろう、こんなときに!」
「いやいや人間はそーいうとこあるよー」
ロニの言葉に『イェラキ』は徐々にそうなのかも……と思い始めていた。だが、それは違うはずだ。
なぜなら、サイバーニンジャ・クランは巨大企業群『ティタニウム・マキア』を追っている。
安心安全を売るという大企業。
それが『ティタニウム・マキア』である。
清廉潔白なイメージを掲げながら、その実、下位組織では犯罪そのものがまかり通っている。警察との癒着も当然のように行われている。
「ボクが言うんだから間違いない! 大丈夫! ちゃんと生き残ってこのあと確かめよう!」
「いや、まったくもって違うからな!?」
「ごちゃごちゃとぉ、うるさいんですよぉ!」
『アナボリック・ジャイアント』たちが肉体から生成したガトリングガンの銃口から弾丸が放たれる。
だが、それは先程までの勢いと変わらぬものであったが、狙いが荒いと言わざるを得ない。
「精度が落ちている! なおさら当たらないね!」
ロニは笑って『アナボリック・ジャイアント』に飛び込む。瞳に輝くユーベルコード。
握りしめた拳が唸りを上げる。
「再生怪人は弱い法則!」
神撃(ゴッドブロー)が振り抜かれ、『アナボリック・ジャイアント』もろとも『ムクロマンサー』を吹き飛ばす。
その一撃は拠点をさらに崩壊に導くものであったが、ロニには関係なかった。
「あそれっ! ド――ンッ!」
愉快そうに笑いながらロニの一撃がオブリビオンの企みごと吹き飛ばしていく。
容赦なんてない。
何一つない。
ただ、一億兆ロニ$が払えないのならば用はない。それだけを伝える拳の一撃が盛大に花火でも打ち上げるように『アナボリック・ジャイアント』と『ムクロマンサー』を空にふっとばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
『どちらでもいい』という意見には同意ですね。あなたはどの道ここで殺しますし、この絵図を描いた存在についても、その者が悪であるならば、いずれ裁きを下す機会もあるでしょう。この世の全ての悪を殺し尽くすとまでは無謀すぎて言えませんが、大半は殺してから死にたいと思っていますので。私は。
などとつらつら語りながら特殊警棒にエネルギー充填しUCを発動しておきます。
そしてフォトンセイバーと化した特殊警棒の刀身をムクロマンサーのいる距離まで伸ばしながら薙ぎ払う範囲攻撃で目の前の敵たちを纏めて切断。
スクラップ共がいくら復活しようと大元は1人。あれを倒せば解決なのですから多少の食い残しは気にせず雑に切り捨てますよ。
己の欲望を満たすためには『どちらでもいい』。
それが『ムクロマンサー』の答えであった。例え、己を手のひらで転がす存在がいたのだとしても、それをどうにかできるだけの力を己は持っていると思っていた。
骸の海を打ち込んで洗脳する。
それが彼女の力であり、『ティタニウム・マキア』という巨大企業群の組織の中で重要なポストに着くために欠かせぬ力であった。
この力さえあればイージーモードだったのだ。
立身出世。
ただそれだけなのだ。楽して生きていたい。自分だけが得をするように生きていたい。他の誰かがどうなろうとどうでもいい。
「だからぁ、『どうでもいい』んですよぉ。過程なんてぇ」
猟兵たちの打撃に寄って隻腕となり、串刺しにされ、さらには頭部さえも損傷しながら義体たる体は痛みを感じず。
己が追い込まれているとい事実に表情を作り出す義体の人工筋肉はひきつる。ビキビキと音を立てながら、笑顔を作り出す。
だが、その内側に秘めたのは苛立ちであったことだろう。
「『どちらでもいい』という意見には同意見ですね。あなたはどの道ここで殺しますし」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は、はっきりとそう告げた。
『ムクロマンサー』のやりたいことと、自分の『正義』は相容れない。
交わることはあっても同じ一本の道に重なることなどないのである。交わることとは即ち、互いの死を持って決別することと同義。
「この絵図を描いた存在についても、その者が悪であるのならば、いずれ裁きを下す機会もあるでしょう」
「そんなものなんてぇ、ないですよぉ!」
骸の海を注入した『アナボリック・ジャイアント』たちがにこたまに迫る。
大挙する彼らの肉塊のごとき突進は、彼女の小さな体躯を容易に弾き飛ばすだろう。
だが、にこたまの瞳に怯えはなかった。
循環系に接続された特殊警棒。
己の義体の中にある炉心が出力を上昇させていく。手にした特殊警棒がバチバチと火花を散らせるよにエネルギーを充填していく。
特殊警棒の棒身が展開され、現れるはブレードのフィールド。
彼女の手にあったのは、特殊警棒ではなくなっていた。その本来の姿とも言うべき『サイバー猫丸』。
「この世の全ての悪を殺し尽くすまでは無謀すぎて言えませんが」
「いいや、言うべきだ。お前の心に、炉心に『正義』があるのならば」
サイバーニンジャ『イェラキ】のフォトンセイバーの一閃がにこたまに迫る『アナボリック・ジャイアント』を切り裂く。
だが、それでも『ムクロマンサー』の操る『アナボリック・ジャイアント』たちは、一斉に飛びかかるだろう。
さばききれない。
『イェラキ』はそう思った。
これだけの数を薙ぎ払うには、己のフォトンセイバーは出力が足りない。
されど、にこたまの瞳に輝くのはユーベルコード。
悪を断じる正義のこころが彼女の炉心に燃えている!
「大半は殺してから死にたいと思っていますので。私は」
フォトンセイバー、『サイバー猫丸』の刀身が伸びる。それはあまりにも荒唐無稽なる光景だった。
あまりにも尋常ではない出力。
炉心の出力はすでに最大を超えている。
フォトン・ジェネレーターはすでに全身のエネルギーをフォトンセイバーと化した特殊警棒に注ぎ込まれている。
「スクラップ共がいくら復活しようと大元は一人」
『ムクロマンサー』。
彼女を切り捨てれば解決なのだ。ならばこそ、長大な刀身を作り上げる。
それは天を衝くかのごとき威容。
「そんな、馬鹿みたいなぁ
……!?」
「サイバー猫丸! 抜刀!!」
迸るフォトンセイバーの一撃が『アナボリック・ジャイアント』もろとも『ムクロマンサー』を切り裂く。
横一閃の一撃。
一文字に振るわれたサイバー猫丸の一撃はあらゆるものを根切にするかのように半壊した拠点ごとぶった切る。
「そん、な、私ぃ、ここで……終わる、なんて……」
「多少の食い残しは気にしないでください」
これも正義のため。
ただその一点において、にこたまは『ムクロマンサー』を切り捨て、廃墟と化した拠点に己の『正義の執行』を示すように高らかに警察手帳を輝かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『サイバースペースの休日』
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POW : 広い空間でスポーツやアクティビティを楽しむ
SPD : 超高性能かつリアルな電子ゲームで遊ぶ
WIZ : 空中飛行や異世界旅行の気分を味わえる、体験型のアトラクションで遊ぶ
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戦いを終えた猟兵たちはサイバースペースにいた。
そこはサイバースペースの一角に設けられたサイバーニンジャ・クランの隠れ家。謂わば、隠し拠点であった。
とは言え、他のサイバースペースと隣接しているため、そのまま遊びに出かけることもできたであろう。
「……助力感謝する。今回のこと、どのように礼を尽くしていいかわからない」
だから、今日のサイバースペースでの娯楽を楽しむのは、彼のクレジットから精算されるとサイバーニンジャ『イェラキ』は言う。
未だ他のサイバーニンジャ・クランの同胞たちは戻ってきていないようである。
ここに居るのは『イェラキ』だけだ。
「あの『メリサ』と名乗った男……業界屈指の殺し屋『メリサ』であるのかどうかはわからないが」
あの逃げ足の速さ、そして情報を手に入れてくる手腕。
どれもが精度の高さを思わせるものであり、実力を裏付けるものであった。あながち業界屈指の名も嘘ではないと『イェラキ』は言う。
「ともあれ、今日は楽しんでくれ。俺が答えられる範囲で情報も渡す。表の拠点はもう使い物にならないだろうが、サイバースペースの拠点が残っているのあらば、あの地域をヤクザ事務所に好きにさせることもない」
そう言って『イェラキ』は猟兵たちに頭を下げる。
猟兵たちはこのままサイバースペースを楽しんでもいい。また、『イェラキ』と交流し、さらなる信用を得るのも良いのかも知れない。
巨大企業群『ティタニウム・マキア』の全容は未だ知れず。
いつか必ずかの巨大企業群と激突する日が来る。その時のために味方は一人でも多い方が良いはずだから――。
村崎・ゆかり
ふぅ、お疲れ様。『イェラキ』だっけ。それじゃありがたくこのエリアで遊ばせてもらうわ。
アヤメと羅睺を召喚。費用が二人分増えても大丈夫よね?
それじゃリゾート施設を検索して、あ、スーパー銭湯がある。ここ行きましょ。
操作一つで服を水着に切り替えられるのは楽ねぇ。今日は白のビキニで。
二人も水着似合ってるわよ。
さて、お湯に浸かったら、二人をぎゅっと抱きしめましょ。キスの交換もしあって。
身体をまさぐるのはどれが誰の手だか。
うーん、水着越しだとやっぱりもどかしいな。とりあえず、身体を動かしてからホテルにしけ込みましょ。
そこからが本番よ。楽しみでしょ?
ヤクザ事務所『
嬢香亜寿』との激しい戦いを終えた猟兵たちに与えられたのはサイバースペースにおける休息であった。
サイバーニンジャのサイバースペースにおける拠点。
周囲のスペースから隔絶されたそこはすぐに隣接するスペースに移動することができる。ここから彼らはサイバースペース内にある巨大企業群の情報を集め、彼らの悪事を暴き、また強襲をかけるのだろう。
そうした事情を抜きにして考えれば、ここから様々な娯楽スペースに飛ぶことができるのはありがたいことであった。
「ふぅ、お疲れさま。『イェラキ』だっけ」
「ああ、そう名乗ることにしている。助力感謝する。ここのスペースの利用代金は、このクレジットで払うようにしておいてくれ」
そういってカードのようなパスをサイバーニンジャ『イェラキ』は村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)に手渡す。
残高を確認すれば、それは今回の戦いの報酬と呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
「そう? それじゃありがたくこのエリアで遊ばせてもらうわ」
そう言ってゆかりのユーベルコード、愛奴召喚(アイドショウカン)によって二人の式神がサイバースペースに呼び出される。
「……?!」
「費用が二人分増えても大丈夫よね?」
『アヤメ』と『羅喉』の二人を両脇に抱えての両手に花状態のゆかりがイタズラっぽく笑う。
『イェラキ』はこの代金を出すと決めた以上、それを取り下げることはできない。少々出費がかさむかも知れないが、仕方のないことだ。
「わかった。生命を救われたのだからな。楽しんでくるといい」
そういって、ゆかりは見送られスペースの中へと飛ぶ。
サイバースペースは生身とは異なり、移動も一瞬である。サイバーザナドゥの人々がサイバースペースでの娯楽に興じるのもわかるものであった。
「ふむふむ。ねえ、こっちにリゾート施設があるみたいだよ。スーパー銭湯? 何がスーパーなんだろう?」
羅喉がサイバースペース内で検索したワードに興味を示したようである。
「ああ、それはね。ただの公衆浴場ってわけじゃなくって、他にも色々設備が付いているからスーパーってついているのよ」
ゆかりは笑ってサイバースペース内の操作を続ける。
すると彼女の姿が瞬時に切り替わる。それは白のビキニ姿眩しい艶姿であった。『アヤメ』が、その一瞬の早着替えに忍術でも使ったのかと驚いている。
「二人も、それっ」
ゆかりは笑って更に『アヤメ』と『羅喉』の姿を水着姿に変える。
おそろいにしてもいいし、色を変えてもいい。
まるでゲームのチュートリアルのように二人の姿を変えて、ゆかりはしばし簡易的な水着ショーを楽しむ。
「もうっ、遊んでないでいきましょう。温泉じゃないんですよね?」
「そういうところも在るみたいだけど……」
ゆかりと二人はスペース内のスーパー銭湯に向かう。
そこに広がっていたのは、ビビットなカラーリングの複合浴場施設であった。お湯は無色透明ではなく、蛍光カラー。
ちょっと落ち着くには目がチカチカする。
「あ、こっちはレトロ風だって。こっちにしようよ」
「流石はサイバーザナドゥね……蛍光カラーが目に優しくはないわ」
そういって二人と共にゆかりは昭和の風情漂う浴場で身を温める。戦いの疲れが溶けていくようであったし、隣にいる二人をぎゅっと抱き寄せれば、それはそれは極上であった。
ついばむみたいに口づけを交わせばすっかり気分も出来上がってくる。
「こーら、体を弄っているのはどれが誰の手なのかしら?」
「えへへー」
「ふふ……」
お互いに何も言わなくてもわかっているとばかりの含み笑い。
そんな二人の雰囲気を見やれば、なんだかおかしい。体がぽかぽかしている。よく見ると注意書きに血行促進大! という文字がデカデカと書かれている。
これはもう水着だともどかしくてしかたないとばかりにゆかりは意を決したように二人を抱えて湯船から上がる。
「ここからが本番よ。楽しみでしょ?」
そういってゆかりはサイバースペース内にある宿泊施設にしけこむ。
そこから先は恋人の時間。
桃色の雰囲気が漂うことだけは決定事項。サイバースペース内の出来事ではあれど、ゆかりの頭に刻まれた思い出は違えることなく。
一夜の情事は、誰にも知られることなく進んでいくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
『疾き者』には、休み続けてもらいます。ええ、強制休暇ですが?
疾「そんなー…」
あなたは常日頃、無茶をしますからね。
さて、興味を示しているのは陰海月なんですよね。
なんでも、ボルダリングをしてみたい、と。常に浮いてますが、サイバースペースだと関係ないので。
…いつも思うのですが。器用ですよね、陰海月って。
(三人とも同意)
※
陰海月「ぷきゅ!」
霹靂「クエ!」
そうだそうだ!びゅーびゅーおじーちゃん(『疾き者』)は無茶しすぎ!
陰海月、念願のボルダリング!触手で器用に突起つかむ。ぷきゅーきゅ!?(最近食べすぎたかな!?)
霹靂、友の楽しみを眺めている。友は器用だな…。
戦いの後には休息が必要である。
戦士には特にそうであるように新たな戦いに臨むというのならば尚のことであった。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は唯一の忍びのものであったからか、些かワーカーホリックの気質があったのかもしれない。
故に『静かなる者』はこれが良い機会であるというように強制休暇を言い渡すのだ。
「そんなー……」
己の役目を心得ているからこそ、『疾き者』は不眠不休なる働きをしようとするだろう。
けれど、それが限度を超えてしまえば時として意味をなさないものとなる。
だからこそ、休むこともまた役目の一つであると『静かなる者』はいうのだ。そうだそうだと言うように陰の中から『陰海月』や『霹靂』の声が聞こえる。
彼らもまた『疾き者』がむちゃばかりしていることを憂いていたのだ。
「あなたは常日頃、無茶をしますからね」
そういって『静かなる者』は『疾き者』を休ませると己は表層に出てサイバースペース内部を見回す。
己の影にいる巨大海月である『陰海月』がサイバースペース内部に興味津々である。
いろいろなものに興味を示すことは良いことだ。
彼にとって多くの刺激は、多くの経験となって活きるだろう。
「ぷきゅ!」
そんな『陰海月』があれはなんだろうかと指差す。
『静かなる者』は示された先にあるサイバーボルダリングの壁面を見やる。多くの突起が備えられていたり、くぼんだ箇所がマーキングされていたりする。
見上げる程にそそり立つ壁。
これを登っていくのがサイバーボルダリングである。
見てみれば、通常のボルダリングとは異なるようだ。プロジェクションマッピングでボルダリングのウォールに指示が出たり、次にホールドすべき場所を提示してくれたりするようだった。
これはサイバースペースならではであろう。
「とはいえ、常に浮いていますが此処では関係ないですね」
『静かなる者』は『陰海月』に促す。
「ぷっきゅ!」
念願のボルダリングに心踊るように『陰海月』の触腕が壁のくぼみや突起をホールドする。
プロジェクションによって照らされる壁面。
スタートの文字が浮かび上がるとタイムトライアルが始まる。経過時間が壁に映し出されるだけでなく、ホールドする突起が次々とランダムに変わっていくのだ。
通常のウォールではありえない機能。
これが電脳空間であるサイバースペースならではのボルダリングであることをしめしていた。
「ぷきゅー……」
触腕で器用に突起を掴まえながらゆらゆらと『陰海月』がウォールを登っていく。
「いつも思うのですが。器用ですよね、『陰海月』って」
ここがサイバースペースであってもそうでなくても、そう思う。
中の三柱も同意するところであった。
「クエ!」
『霹靂』の応援に応えるように『陰海月』が突起を掴んで壁を駆け上がっていく。
最近食べ過ぎたせいか、少し体が重いと感じる。しかし、やってやれないことはない。素早く突起を掴んで、さらにランダムに変化する突起の場所をいち早く察知して飛び乗っていくのだ。
『霹靂』は友達の楽しみを眺めている。
翼がある彼にとって壁を昇る必要はない。けれど、楽しげに壁を登っていく『陰海月』を見ていたら、そういう楽しさもあるのだと理解できる。
「ぷーきゅ!」
ウォールの上まで登りきった『陰海月』が頂上で手を振っている。
壁いっぱいに広がるプロジェクションの紙吹雪と登頂を成功させたことによる祝いのメッセージ。
その姿を下から眺め『静かなる者』は戦いの後に訪れる一時の休息をのんびりと謳歌するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルキー・アマミヤ
(あえて言うなら……【POW】?)
それじゃあまずはロボットビースト達も呼び出してお片付けだね★
うーん……やっぱりお片付けに加えて他のスキルも磨いた方がよさそう?
そっちの方がお仕事のバリエーション増やせるもんね★
あ、それとさっき回収した修繕費と慰謝料も渡しておかないとね★
気にしなくていいんだぞ★そのためのお金なんだし★
それにお金稼ぐ(=お仕事)のは好きでも今のこの体じゃ経費以外に使い道も使う必要もあんまりないからね★
後はそうだねー、情報の共有とかそういうとこかな★
“猟兵”についてどのくらい知ってるかとか★まあ、程々にはしておくね★
簡単に手の内を全部晒すわけにいかないもんね★……お互いに
サイバーニンジャ・クランの拠点は壊滅的な打撃を受けてはいたが、それでも人員の不足が起こることなかったのは幸いであったのかもしれない。
都合がよすぎるきらいがあるが、それでも誰一人欠けることなくヤクザ事務所『
嬢香亜寿』を撃退できたことは大きい。
しかしながら、シルキー・アマミヤ(何でも屋のシルキーちゃんだゾ★・f36571)は戦いの痕を片し始める。
「ロボットビーストのみんな★ お片付けの時間だよ★」
シルキーの箱型の躯体が揺れるとロボットビーストたちが拠点の残骸を回収しはじめる。
新たな拠点を見つけるにしても、拠点の中にあった資材を無駄にすることはないだろう。だからこそ、彼女は拠点の痕を片付け始めたのだ。
「うーん……やっぱりお片付けに加えて他のスキルを磨いたほうが良さそう?」
そのほうが今後のお仕事のバリエーションが増やせるというものである。
猟兵の戦いは多岐に渡る。
今後のことを考えるのならば、そうした方がいいのかもしれないとシルキーは考える。他の猟兵たちはサイバースペースに向かったようであるが、シルキーは諸々を片付けてからサイバーニンジャ『イェラキ』に指定されたサイバースペース内部の隠れ拠点に向かう。
「後処理を任せてしまってすまないな。これは報酬だ」
『イェラキ』が開口一番に言い放ったのは、報酬の話であった。
サイバーザナドゥにおいて金とは唯一信用のおけるものだ。誰も彼もが金を手に入れるために時に非合法な仕事にも手を出す。
ならばこそ、労働の対価は必ず支払われなければならない。
金でなくても義体のパーツなども対価となるだろう。けれど、シルキーは逆に『イェラキ』にクレジットを振り込む。
「……!? なんだ、これは?!」
「え、さっき回収した修繕費と慰謝料★ 気にしなくていいんだぞ★ そのためのお金なんだし★」
戸惑うのは『イェラキ』の方であった。
後処理を任せてしまっただけでなく、逆に資金を手渡されたのだから。困惑するのもわからないでもなかった。
けれど、シルキーにとって、それは当然のことであったのかもしれない。
「だって、お金を稼ぐのは好きでも、今のこの体じゃ経費以外に使い道も使う必要もないからね★」
シルキーは自分の箱型の頭脳戦車としての姿を見せる。
「いや、しかし……」
そう渋る『イェラキ』にシルキーは名案を思いついたとばかりに脚部を持ち上げる。
「それならさ、情報の今共有ってどうかな★ 情報もお金になるでしょ。なら、その情報を頂戴よ★」
そういってシルキーは笑ったように躯体を揺らす。
それならば問題ないはずだと難しい顔をしている『イェラキ』に告げる。どうあっても金は受け取ってもうつもりだったシルキーは先手とばかりに質問する。
「“猟兵”についてどのくらい知ってるのかな★」
「……仕方ない。その名前というよりは、お前のように金や物品ではなく、義……正義のために働く者がいる、ということくらいだ。お前たちが何者で如何なる組織に所属しているかまではわからない」
そもそも、猟兵という組織はない。
個人で動くことが多いからであり、また世界に猟兵は選ばれるのだ。オブリビオンが関与する事件だけしか動くことはできないが、世界に活きる猟兵ではない者たちにとってすれば、不可解な存在だろう。
ある事柄には介入し、或る事柄には介入しない。
どちらも人死にや重大な事件が起こるのだとしても、オブリビオンが介在していないのならば猟兵たちはやってこないからだ。
「ふーん★ そういう認識なんだね★」
とは言え、それが全て真実であるとは限らないだろう。
シルキーは理解している。手の内を簡単に全て晒すわけにはいかないのだ。
それはサイバーニンジャも、猟兵であるシルキーも同じこと。だからこそ、彼女は今はそれでいいのだと言うように軽く頭脳戦車の脚部を振って、再び見えるその時まで、と軽快にサイバースペースを去るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
クルル・ハンドゥーレ
アドリブ連携歓迎
イェラキさんやったけ、ほんまお疲れ様でした!
何はともあれ、アレなヤクザなカチコミ受けた割には、大した損害なくめでたい!
と言うわけで、祝杯あげまくろ?
ええ酒呑みまくろ?
え、払いは全部そちら?
おお、太っ腹やねえ、では遠慮なく!
(イェラキが拒否しなければ、共に
美味しそうな酒で乾杯
まあアレや、『ティタニウム・マキア』やったっけ、
ヤクザさんはそれの尖兵っぽいねえ
それに関するネタ持ってるから、ここに襲撃あったんかねえ……と
【情報収集】【コミュ力】で探りを入れる
言わなければ無理強いしない
酔いに任せて情報盛らしてくれるフリしてくれるなら幸い
こちらも半分酔ってよう覚えてない風を装う
「『イェラキ』さんやったけ、ほんまお疲れさまでした!」
クルル・ハンドゥーレ(逆しまノスタルジア・f04053)は、サイバースペースの一角、バーカウンターにサイバーニンジャ『イェラキ』に連れられてやってきていた。
良い酒が飲みたい。
仕事の報酬になにかがもらえるというのならば、そうしたものがいいと彼女がリクエストしたのだ。
バーカウンターを隔てた向こう側には色とりどりの液体が収められたビンが立ち並ぶ。
どれをとっても現実には存在しないかのような色合いばかりであった。言ってしまえば、ビビットカラーのもの、といえるのかもしれない。
蛍光色強いギラギラとした色合いはサイバーザナドゥ特有であると思えただろう。
「あ、あ、助かった……」
『イェラキ』はクルルのテンションの高さに少し戸惑っているようであった。
彼女は嬉しいのだ。
酒が飲めるのも嬉しい。さらに言えばただ酒が飲めるとあっては、上がらぬテンションなど存在しないのであろう。
「何はともあれ、アレなヤクザなカチコミ受けた割には、大した損害なくめでたい! というわけで、祝杯あげまくろ? ええ酒呑みまくろ?」
「いや、その」
「払いは全部そちらなんやろ? 太っ腹なんだから、こっちも遠慮なく呑みたいやん? なら一緒に呑もうや」
ぐいぐい来る。
『イェラキ』は戸惑いながらも、カウンターの上を滑ってくるグラスを手に取る。
蛍光カラーの飲料は初見の人間にとってはびっくりするような色合いであったが、それでもクルルはそれがアルコール、お酒であると認識できればそれでよかったのである。
「それじゃあ、乾杯!」
グラスの音がサイバースペースに響く。
口に含めば、アルコールの香りより先に果実のようなフレーバーが鼻腔をくすぐる。更に言えば、そこから甘いような、それでいてコクのあるような味わいが広がってくる。
複雑な味だ。
これが電脳空間で、人の脳を刺激するものであると理解できただろう。
現実の酒では雑味も味の内であるが、ここではそうした雑味が入り込む余地はない。クルルは、こういう酒もあるのか、と唇を舐める。
「あ、そうや。『ティタニウム・マキア』やったっけ? ヤクザさんはそれの尖兵っぽいねえ」
「ああ。安心安全を売る巨大企業『ティタニウム・マキア』。俺達が持っている情報が奴らにとっては邪魔だったのだろう」
探りを入れるようにクルルはグラスを鳴らす。
無理強いをするつもりはなかった。そういうのは酒の味を濁らせるからだ。
「酔に任せて情報漏らしてくれるフリしてくれるなら嬉しんやけど?」
「……これは俺達の戦いでもあるからな……」
「今なら酔ってるから、よう覚えてない風を装ってもええんやけど」
そう言って首をかしげる。
『イェラキ』はそう言われてしまっては、どうしようもない。恩もある。だが、それは酒で返したつもりであったが、それ以上の窮地を救ってくれたのだ。
ならば、それを隠し立てるのも彼の気質を考えれば無理な話であった。
「……殺し屋という連中がいる。この界隈に入れば自ずと耳にするものであるが。『ティタニウム・マキア』はどうやら殺し屋を雇っている、という話がある。何故雇うのかというと、まあ、俺達のような存在を消すため、なのだろうが」
ここからは独り言だというように『イェラキ』は呟く。
「『ケートス』、『アイレオ』、『ミルミギ』……加えて、『クヌピ』。そう呼ばれる業界屈指の殺し屋たちを使って何かを排除しようとしているのだと」
それは『ティタニウム・マキア』という巨大企業群としての性質を考えれば、少しばかり異様であったようである。
少なくともサイバーニンジャたちにとっては。
「業界最高峰の殺し屋『メリサ』。そいつも雇われているのではないかと、と」
それが決定打となって今回の襲撃が行われたのかと問われれば、それもまだわからぬことである。
けれど、クルルは酔ったようにカウンターに突っ伏してから、顔を上げる。
「お会計、よろしくや」
これ以上は彼も語らないだろう。そして、それは聞かなかったことになっている。
上げられた殺し屋の名前。
それをふわふわとした酔の中に刻み、クルルはサイバースペースでの善き酒の思い出にひたるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
ふぅ…とりあえずは一段落、ってとこかしらぁ?
次がいつあるかは分からないけれど、さすがに今日明日どうこうってのはないでしょ。
…ってことで、お仕事お手伝いするわよぉ。あくまで隠し拠点なんだし、設備拡充は急務でしょぉ?
当然必要な○プログラミングにハッキング、普段使いの〇情報収集と迷彩、いざという時のための〇データ攻撃による破壊工作と結界術による拠点防御。
あたしは別にそこまで得意なワケじゃないけれど…あたし「たち」はスペシャリストよぉ?
マン(自分自身)を核に●忙殺・写身を起動。好き放題恩を押し売りして貸しをドカ盛りにできるんだもの、多少の労力くらいは必要経費よねぇ。
サイバーニンジャ・クランの表の拠点は半壊した。
激しい戦いであったのだから当然と言えば当然である。だが、同時にこうした事態を想定していないわけでもない。
電脳空間サイバースペース。
そこにこそ裏の拠点が存在していたのだ。
「ふぅ……とりあえず一段落、ってとこかしらぁ?」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は戦いの後、一息つくように軽く居住まいを正す。
埃を払ってゆっくり周囲を見回す。
サイバースペースに招かれたとはいえ、やるべきことは多く存在している。
「ああ、おかげで助かった。この恩は必ず報いたいと思っている」
とりあえず、このサイバースペースに滞在している間は金に困らせることはないと『イェラキ』が告げる。
だが、意外にもティオレンシアが告げた言葉は報酬の要求ではなかった。
「次がいつあるかわからないけれど、さすがに今日明日どうこうってのはないでしょ……ってことで、お仕事のお手伝いするわよぉ」
「いや、しかし」
『イェラキ』はこうした事態に慣れていないのだろう。彼女からの提案に戸惑っているようであった。
「あくまで隠し拠点なんだし、設備拡充は急務でしょぉ?」
そう言われてしまっては『イェラキ』は押し黙るしかなかった。正論であったからだ。生命の恩を受けて、さらには手伝いまで買って出られては、無碍に断ることもできない。
そういう性分なのだ。
「……頼む」
「頼まれたわぁ」
ティオレンシアは即座にプログラムにハッキングを行う。
普段使っている情報収集と迷彩、そしていざという時のためのデータ攻撃に寄る破壊耕作と結界術による隠し拠点の防護を厚くしていく。
「大したものだな」
「別にそこまで得意なワケじゃないけれど……あたし『たち』はスペシャリストよぉ?」
彼女の細まった瞳の奥でユーベルコードが輝いている。
忙殺・写身(インスタント・アルターエゴ)。
それは宙に描いた魔術文字によって具現化した『願い』から、己の幻影を生み出す力。
この場合、サイバーニンジャの拠点を強化したいという願い。
それによって彼女の生み出した幻影は即座に動き出していたのだ。
だが、それは相当な負担を彼女の強いるものであったことあだろう。
けれど、ティオレンシアは笑うのだ。
「だって、好き放題恩を押し売りして貸しをドカ盛りにできるんだもの、多少の労力くらいは必要経費よねぇ」
「……お手柔らかに頼む」
ティオレンシアの細まった瞳がまた笑う。
どうあっても『イェラキ』は、サイバーニンジャ・クランは彼女に大きな借りを作ってしまったのだ。
ならばもうそれは諦めなければならないことである。
どのみち生命を救ってもらった恩は返す。それほどに義理堅い性格であれば、ティオレンシアの言うところの押し売りなど関係なかったのかもしれない。
けれど、時として大人はそうした建前を用意しなければならない局面もあるのだ。
「例え、それが本心でなくたってねぇ」
巨大企業群『ティタニウム・マキア』はオブリビオンを筆頭に据えていることだろう。ならば、これからも『ティタニウム・マキア』の起こす事件にはオブリビオンが関与する。
そうした時、猟兵たちは戦いに赴く。
その時にサイバーニンジャ・クランの一つがバックアップに回ってくれるのならば。
「それは頼もしいってことよねぇ」
だから、これはただの必要経費。
徒に滅ぼされぬように。
骸の海の雨が降る、緩やかな終わりへと向かっている世界であったとしても。
ティオレンシアは、サイバースペースの隠し拠点の強化を推し進めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
布教相手がいないのはどうしようもないね。
サージェさんは忍者の特訓なんだ。見学させてもらおうかな。
ばかな。
サージェさんが忍んでいる!?
あ、ちがう。
これ『イェラキ』さんが忍んでるから、それっぽく見えるだけだね。
サージェさん一人になったとたんに、バツグンの存在感!
どの世界でもあのハッピーバルーンはどうしようもないよね。
んー、見てるだけもなんだし、
わたしも【アイリス・ギア】使って忍んでみよう。
どうどう? わたしも忍べてる? サージェさんよりいけてるよね。
って、ぺったんとかそういう意味じゃないんだけど!?
サージェさんの胸からでてるの、
クノイチパワーとはちがう、別のナニカだよね!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
サイバースペースとて私たちのやることはただひとつ!
『菜医愛流帝』の布教……って布教する相手がいない……だと
仕方ありませんね
イェラキさんに『菜医愛流帝』印のお饅頭を渡しつつ
さてと
せっかくなのでクノイチパワーを鍛えたいと思います
世界が変わればクノイチも変わる
つまり私もこの世界のクノイチに順応しないとこの先が危ない気がします!
ええ、忍んでいるだけでは対応でき無さそうなので
というわけでサイバーニンジャ的な手合わせなど!
よろしくお願いしまーす!
ふっやはり私のクノイチパワーに慄いて……
あれ?ちがう?なんで?
あの、私のクノイチパワーは胸から出ているわけではないのですが??
胸関係ないですよね?
布教というのは相手がいなければ成り立たぬものである。
教えたい、知ってほしい。
その時本当に必要なのは、伝えるべきことではなく、伝える相手なのだ。
だからこそ、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はサイバースペースでやるべきことを見定めていた。
そう、『菜医愛流帝』の布教である。どうして。
「ですが……布教する相手がいない……だと」
全てが電脳空間での出来事である。布教したくても、他の人たちは電脳空間が見せる現実ではありえない光景やアクティビティに夢中なのである。
というか、基本的に接触すらない。
ぽつねん、とサージェは立っていた。えぇ……と思いながらもサージェはサイバーニンジャ『イェラキ』に『菜医愛流帝』印のおまんじゅうを手渡す。
「……これは?」
「これからもがんばってくださいってことです!」
わからん。何一つわからん、という顔で『イェラキ』は首を傾げていた。
「布教相手がいないのはどうしようもないね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、仕方ないね、とうなずいていた。ならば何をしようか。
色々考えているのではあるが、理緒にとってサイバースペースは電脳空間と同じ。どちらかと言えば、こちらの方がホームであると言えるだろう。
「せっかくなのでクノイチパワーを鍛えたいと思います。世界が変わればクノイチモ変わる。つまり私もこの世界のクノイチに順応しないとこの先が危ない気がします!」
ずっと危ない感じのタイトロープでやってきていたような気がするけど、気の所為であろうか。気のせいだね。
「……はぁ……」
『イェラキ』はサージェの語る言葉を何一つ理解できていなかった。クノイチとは、という顔をしていた。
むしろ、あれなのだろうか。
自分ももしかして、サージェと同じカテゴライズされているのだろうかと不安を覚えていた。
「というわけでサイバーニンジャ的な手合わせなど!よろしくお願いしまーす!」
「あ、ああ……」
困惑しながらも『イェラキ』は瞬時にサイバースペースから姿を消す。消えた。いや、違う。ものすごい速度で空中を蹴って飛んでいるのだ。
まさに『
隼』の名を保つ存在としてふさわしい忍び具合であった。いや、それはそれでなんかイヤだな、と『イェラキ』は思った。
「ばかな。サージェさんが忍んでいる!?」
理緒は驚愕した。
二人のサイバーニンジャ的手合わせは、本当にニンジャっぽかったのである。
だがしかし、理緒は目を見開く。
「あ、ちがう」
え、何が?
「これ『イェラキ』さんが忍んでるから、それっぽく見えるだけだねうん。だって、ほら、サージェさんが一人になった途端、抜群の存在感!」
くわわっ! と理緒が見ているのは、サージェのハッピーバルーン。たゆったゆっとするあれである! ハッピーセットじゃねーんだぞ! ふたつもあるんだ! すごい!
「どの世界でもあのハッピーバルーンはどうしようもないよね」
うんうん、と理緒はうなずく。感心した様子の彼女にサージェは得意げになっているが、完全にディスられているがいいのだろうか。
「ふっ、やっぱり私のクノイチパワーにおののいて……」
振るわれるフォトンセイバーの一撃を威風堂々(シノベテナイクノイチ)はカタールで受け止めている。
すごい戦いであることには代わりはない。
けれど、理緒の解説でちょっとアレな方向に向かっているだけである。
「んー、観てるだけでもなんだし」
理緒の手にあるのは小さな歯車。軽く握ることによって彼女の姿が無色透明になっていく。まるでカメレオンの擬態のように周囲の光景に溶け込んでいく理緒の姿。
「……!? な、なんだと……私より、忍んでいる……だと?」
「どうどう? わたしも忍べてる? サージェさんよりいけてるよね?」
「確かに周囲の風景と同化しているな。完全に。不可視のプログラムかなにかだろうか」
『イェラキ』からすれば、理緒の方が立派に忍んでいる。
むしろ、反対じゃない? とも思ったのである。
サージェは目立つ。目立ちすぎである。クノイチという意味ではある意味正しいのかもしれないが、それにしたって目立つ。
「あの、私のクノイチパワーは胸から出ているわけではないのですが??」
『イェラキ』の視線が何処に向かっているのかをサージェは察する。
わかっていたことだけど、理不尽である。
クノイチパワーとは一体。
「わたしがぺったんとかそういう意味!?」
「ち、違う……!」
「それにサージェさんの胸からでてるの、クノイチパワーとは違う別のナニカだよね!」
「胸関係ないですよね?」
いや、多分出てる。
たくさん出てると思う。しかし、『イェラキ』は言えなかった。だって、それを言ったらさぁ! ってなるのである。
仕方のないことなのである。
だから、あえて此処で言おう。
それは絶対クノイチパワーではない!
これまでのシリアスな雰囲気であった『イェラキ』は暫定クノイチパワーによってコメディに巻き込まれ、サージェと理緒は互いの忍び具合について仲良く言い合いし続け、決着を見ないまま時間切れとなるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
何をしてもいいってなると……。
『イェラキ』さんに『メリサ』さんのこと聞きますよね。
って、ステラさん落ち着いて!?
そのテンションと圧は素人さんには厳しいです!
エイルさん専用って、いつのまにそんなの作ったんですか?
っていうか、勝手に作っていいんです?
ステラさんが落ち着いてくれたら、
わたしはリサイタルの準備にかかりましょう。
もちろん本気ですよ。
さっきはおかしかったチューニングもばっちり直しましたし、って、
死人とかどういう……あ、なるほど。
サイバースペースだと、精神を直接揺さぶるので、
興奮で失神しちゃうとかですね!
あと闇勇者ってなんですか!?
地の文も!いっしょにリサイタル混ぜますよ!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
ふむ
|エイル様≪主人様≫の香りを察知した気でいたのですが
ちょっとわからなくなりましたね
こういう時は理性的に攻めましょう
というわけで『メリサ』のことを教えていただきましょう
他に呼び名などあるとかないとかありませんか?
相方がいるとか?
あとはメイドが好きとか好きとか好きとか?
得られた情報はエイル様フォルダに収めまして
え?他と混ざっては困りますし
ルクス様リサイタルするんですか?
チューニングしてないですよね?しない方が素敵だとえっしちゃった?本当ですか?死人出ますよ勇者闇属性育てる気ですか?
いえ、私は生きます
対ルクス(以下略)を改造済
私以外が触れば電撃でのマヒ罠が発動します
さぁこい勇者!
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はサイバーザナドゥの電脳空間、サイバースペースにおいて少し考えていた。
このサイバースペース、サイバーニンジャ・クランの隠し拠点であるスペースに招かれたのはいい。
そして、何をしてもいいと言われたのだ。
クレジットはサイバーニンジャ『イェラキ』が持つ、と。
ある意味やりたい放題でもある。けれど、そんなふうにルクスが考えるより先に、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)として、『イェラキ』に詰め寄っていた。
あーやっぱり。
何してもいいってなるとそりゃそうなりますよね、とルクスは思っていた。
「『メリサ』のことを教えていただきましょう。他に呼び名などあるとかないとかありませんか? 相方がいるとか? あとはメイドが好きとか好きとか好きとか?」
わっ! と一気に質問を浴びせないで欲しい。
情報の大洪水が起こっている。『イェラキ』も詰め寄られて困惑している。むしろ困っているし、怖がってもいる。
まじでやべーメイドきたな、とも思っている。
「って、ステラさん落ち着いて!? そのテンションと圧は素人さんには厳しいです!」
素人じゃなくてもきつい。
「……こほん。いえ、
『エイル』の香りを察知した気でいたのですが、ちょっとわからなくなりまして。ええ、理性的に攻めようと思った次第です」
「ちっとも理性的でないと思うんですけど」
確かに。
「『メリサ』は、業界最高峰の殺し屋の名だ。渾名と言ってもいい。
『蜂』と呼ばれている……働き蜂なのか、それとも女王蜂なのか。目撃情報で差がありすぎるから、そう呼ばれているんだ」
続きがあるならどうぞ、とステラが促す。
眼鏡を掛けて理知的な雰囲気出した所でやべー雰囲気は隠せていないけど。
「……時には圧殺。時には電脳攻撃による電脳死。時には集団で襲われたかのようでもあり、また時には死因さえ特定できない殺しをやる。だが確実なことは狙われたものは必ず殺される。成功率100%である、ということだ」
それ以外はわからない、と彼は告げる。
今回の事件においてサイバーニンジャ・クランとヤクザ事務所両方に情報を売りつけようとしていた男がそうであるのかは真偽は定かではない。
偽名であるのかもしれないし、たまたまそう名乗っていただけなのかもしれない。
あとメイドが好きとかいう情報はない。
「そこが一番大事でしょうに!!」
「あの~……そろそろいいです? わたしそろそろリサイタルの準備したいんですよ」
ステラの様子にルクスがもういいかなって頃合いを見て告げる。
そう、サイバースペースで何をしてもいいとなったのならば、ルクスはリサイタルをするのである。
先程の戦いでおかしかったチューニングもばっちりし直しているのである。
ステラが集めた情報を謎の専用フォルダに収めている間に、である。ステラが本当に過ちを犯したのだとしたら、今この時の判断を誤ったのである。
専用フォルダに情報をまとめているのではなく、その場から逃げ去ることをしなければならなかったのだ。
「え……ルクス様リサイタルするんですか? チューニングしてないですよね? しないほうがすてきだとえしっちゃったほんとうですか?死人がでますよ勇者闇属性育てる気ですか?」
思わず早口になってしまった。
それほどまでの脅威なのだ。
だが、そんなステラの言葉にルクスは自信満々である。
「勿論本気ですよ。さっきはおかしかったですけど、ばっちりです。ああ、死人とかどういう……っていうのは、なるほど」
にっこりとルクスが微笑む。
あ、これはマジの顔であるとステラは思っただろう。
「サイバースペースだと、精神を直接揺さぶるので、興奮で失神しちゃうとかですね!」
それは違うと思う。
完璧に違うと思う。どう考えてもそうはならんやろって言うやつである。しかしながら、ルクスは意気揚々としている。
その間にステラは『イェラキ』にこのスペースから人々を逃すように告げるのだ。もう遅いかもだけど。
「お前はどうする。このままでは……!」
「いえ、私は生きます。『対ルクス様専用イヤープラグ』があります。改造済みです。闇勇者の相手は私が務めましょう。これも情報頂いた御礼です」
「しかし……!」
悲壮感漂うフラグたっぷりな演出。
本当にこれ、ヴァイオリンリサイタルに臨もうかという者の醸し出していい雰囲気なのだろうか。
絶望に立ち向かう時のテンションである。
「私以外が触れれば電撃での麻痺罠が発動します。ですから」
「……必ず生きて来いよ!」
「あの、闇勇者ってなんですか!?」
ルクスが吼える。絵面はもう完全に打ち切り漫画の最後のまくりあげである。
これはもう巻き巻きである。
「さぁこい勇者!」
普通逆だよね。
「一緒にリサイタルに混ぜますよ!」
地の文も! とルクスが叫んでいるが、何のことかわからない。これは謂わば天の声なので。地の文ではないので。
サイバースペースに響き渡る不協和音。
それは聞く者の耳を破壊し、サイバースペースでの現実では体感しようのない経験を、別の意味で実感させる。
サイバースペースリサイタル事件。
それは深く、深く、サイバースペース史に刻まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ペロペロ
これは120億兆ロニ
$は価値があるね!
と約1680万色に(正確には16777216色)に発光するゲーミングアイス(イェラキの奢り)をペロペロ
え?結局無かったの?実況配信でアフィリエイトでぼろ儲け投稿!
そっかー
よかったね!いや残念だった?
あティタなんとかについて聞かせてよー
視聴者のみんなは知りたいだろうからね!
ペロペロ
ふーん
ペロペロ
そうなんだー?
ビリッ バリバリ(新品開封)
へー
ペロペロ
すごいねー
ペロペロ
なるほど、
よく分かったよ!
大丈夫大丈夫!後で解説動画見るから!
つまり…この世界は狙われている!!
ってことだね!
サイバースペースは電脳空間である。
現実世界では起こり得ないことが実現する夢のような空間。だからこそ、サイバーザナドゥの人々はサイバースペースに集う。
現実は緩やかな滅びに向かっている。
今すぐに滅びることがないのだならば、今という瞬間を悦楽のために生きることこそが正しいとばかりに人々は金を稼ぎ、サイバースペースで生を謳歌する。
ある意味ですでに終わっているのかもしれないと言われても、仕方のないことであったのかもしれない。
それほどまでにサイバースペースでの体験は魅力的だったのだ。
「ぺろぺろ」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、そんなサイバースペースで1680万色に(正確には16777216色)に発光するゲーミングアイスをペロペロしていた。
むろん、『イェラキ』のおごりである。
「うん、これは120億兆ロニ
$は価値があるね!」
味のフレーバーも16777216種類が一気に一つのアイスに籠められているのである。ぺろっと一舐めすれば、それら全てが一気に脳に襲ってくるのである。
下手を打てば廃人まっしぐらであるが、その味に人々は病みつきになって群がるのである。
「特にドッキリではなかったようだが」
『イェラキ』はロニの語っていたドッキリ配信が真実かどうかを他のサイバーニンジャ・クランの同僚たちに尋ねていた。
周囲にあった監視カメラをハッキングして調べてみたけど、そういう事実もなかった。
「え? 結局なかったの? 実況配信でアフェリエイトでボロ儲け投稿!」
「リスクのほうが高い」
「そっかーよかったね! いや残念だった?」
いや、残念ってどういうことなのだと『イェラキ』は困惑する。どう考えてもよかった、の一択であろうと。
「あ、ティタ何とかについて聞かせてよー。視聴者のみんなは知りたいだろうからね!」
視聴者?
え、なにこれ配信されてる……ってこと!?
いや、そんな痕跡はない。ただ言っているだけなのだ。
「巨大企業群『ティタニウム・マキア』は、其処に見える看板にもあるように安心安全を売る巨大企業だ」
『イェラキ』の示す先にはネオンカラーの宣伝看板がある。
そこに『ティタニウム・マキア』の社名が描かれている。安心安全を売る。それは多くの場合、義体の安心安全であったり、生活の安心安全であったりと、様々な解釈が生まれることだろう。
すなわち、何を扱っているかはわからない。
けれど、安心安全を謳っている。どこにも根拠はない。押し付けるような安心安全という字面の良さだけを押し出して、ただ巨大企業として膨れ上がっていっているのである。
そんな説明を受けながら、ロニは生返事ばかりしていた。
ペロペロするのに忙しかったからである。
ゲーミングアイスの味は目まぐるしく変わる。チョコから抹茶、抹茶から檸檬、檸檬から梨、ミント、なんちゃらかんちゃらまで。
それはもう忙しいのである。
ぺろっと食べ終わってしまえば、新品を開封してまたペロペロである。
すごいねー、へー、そうなんだー? ふーん。
せめて、さしすせそを守って欲しい。流石ですね~知らなかった~すご~いセンスいい~そうなんだ~位はやってほしいところである。
「なるほど、
よくわかったよ!」
そのロニの言葉に『イェラキ』はそう思った。絶対わかってないなこいつって思ったが、口には出さなかった。
何故なら曲がりなりにも生命を救われたからである。
そんな相手にそんな態度をすることは、彼の性分からしてできようもなかったからである。
「大丈夫大丈夫! 後で解説動画見るから!」
そんなもんないのである。
「つまり……この世界は狙われている!! ってことだね!」
それはそう。
ロニは新しいゲーミングアイスをペロペロするのに忙しいのである。ともあれ、今はそれでいいのかもしれない。
巨大企業群がどれだけ蠢くのだとしても、猟兵に出来ることは一つ一つの積み重ねだけだ。
ならば、ロニは急ぐ必要なんてないじゃ~ん、とまたペロペロに忙しく、目まぐるしく変わる味わいに目を白黒させる。
ゲーミングアイスは一本で充分なのである――。
大成功
🔵🔵🔵