【戦後】薄明の蓮の宴
●仙女、蓮の池での宴を考える
桃花が咲き誇る場所、桃源郷ではよく宴や祭りが開かれる。
それはこの美しい土地の姿や霊力を保つためのものであり、そこを訪れたものには皆誘われ、幸せな一時を過ごせる夢のような時間だ。
今日もまた、一人の仙女が宴を開く。
「薄明の頃を楽しむ宴にいたしましょう」
蓮の池を管理する、
蓮玉娘々はそうおっとり呟いた。
「夕暮れ時から初めて、池を見ていただき。夜は星と料理を。そして朝のほの明るい姿を」
彼女の池の蓮は、訪れた者の心を悟り咲かせる花。色も柔らかに様々に、ふわりと柔らかく清らかな香りは心安らぐだけでなく、優しい幻を見せてくれる不可思議な現象も起こることがある。
幻が見れるかが訪れた人次第だが、穏やかな風と花の香りを楽しみながら薄明の時間を思い思いに過ごしてほしい、と蓮玉娘々は願うのだ。
●猟兵、宴の話を聞かされる
「と、いう話がありまして……行ってみませんか?」
寧宮・澪は気分転換にどうだろうか、と猟兵達へと声をかけた。別に肩肘張った宴ではなく、少し美味しいものを食べて蓮の池を楽しんで、というものらしい。
蓮玉娘々はおっとりとした清楚な印象の、妙齢の見た目の仙女である。彼女は自分の管理する不思議な蓮の咲く池での宴を開く予定だ。
そこはのんびり過ごすにはとてもいい場所で、薄明の頃は一層美しい。思い思いに穏やかに過ごすのがおすすめである。
蓮の香り不思議な現象を起こすこともある。安らかな香りを楽しむうちに、穏やかで優しい幻を見ることもあるのだ。
見れるかも、どんな幻かもその人次第。ただその人の好む優しい幻だ。活発に動いたり、戦うような幻ではない。昼寝してのんびりするような、日向ぼっこするような優しい心地の幻だという話だ。
ただ、桃源郷へと辿るまでにはちょっとした障害がある。
「今回はですね……
宝貝の材料を探してください」
桃源郷に向かう道すがらでいい、目についた鉱石や植物などの中からこれ、と言うものを選んで持っていけば、桃源郷への侵入を阻む結界を通れるようになるのだ。
「心を込めて選んだものならば、きっと良い品にしてくだだいますよ……」
もしよろしければぜひ、と澪は頭を下げて道を開くのだった。
霧野
蓮の池のほとりでゆったりした宴を。霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
封神武侠界の戦後シナリオです。
宝貝になりそうな材料を持って桃源郷を訪ね、のんびりと宴を楽しんでください。戦闘はありません。
●複数人で参加される方へ
どなたかとご一緒に参加される場合や、グループ参加を希望の場合は【グループ名】もしくは【お相手の呼び方(ID)】を最初にご記入いただけると、助かります。
●アドリブ・絡みの有無について
以下の記号を各章の文頭に入れていただければ他の猟兵と絡んだり、アドリブ多めに入れたりさせていただきます。なければできるだけ忠実に作成します。
良ければ文字数節約に使ってください。
◎:アドリブ歓迎。
○:他のグループや猟兵とも絡み歓迎。
〆:負傷OK。 (血や傷の表現が出ます)
第1章 冒険
『宝貝の材料探し!』
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POW : 鉱物とか重たいものを集めよう!
SPD : 量を集めるために駆け巡れ!
WIZ : 希少で珍しいものを探そう!
👑7
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●仙界への道は近くであり、遠くであり
示された道は何の変哲もない田舎道だ。遠くを見れば山に続くただの道に見える。
辺りに人家もなく、明かりもない。今は日の高い昼だからいいが、夕方になれば日も落ちて道も朧になるかもしれない。
けれど、少し歩けば、正しい道だとすぐにわかるだろう。
行く先には見えない結界が張られているのだと。只の人には気づけないその結界の先に、桃源郷はあるのだと。
結界を解く鍵は宝貝の素材になるもの、ということだった。さて、何を土産にしようか。
道の傍らのきれいな形の石ころもいいかもしれない。そばに咲く花もきれいだろう。柔らかな葉も、枯れた枝も、何かに変わるだろうか。
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・桃源郷への道行きです。何か一つでもいいので、宝貝の材料になりそうなものを集めてください。辺りの石ころや邪魔そうな岩でもいいですし、草花もいいでしょう。気楽に宝探しの気分で大丈夫です。
紅石・砕斗
とりあえず、何か珍しい何かを探せばいいんだよな?鉱石とかキラキラした石は好きだから俄然興味が湧いてくるな!できれば他の誰かがいれば一緒に手伝ってやったり(逆もあり)したいところなんだよなー
もちろんアドリブ大歓迎だぜ!オレ、実際に任務挑むの初めてだしな・・・・
今回は相棒の獄丸は呼ばないつもりだ。アイツはオブリビオンマシンだから安易に呼べないんだよ。
●
何の変哲もなさそうな田舎道を歩きながら、紅石・砕斗(紅き魔水晶に選ばれし者・f36367)は考える。
「とりあえず、何か珍しい何かを探せばいいんだよな?」
仙人の過ごす場所、桃花咲き乱れる桃源郷。そんな場所へと続く道のりだから、よくよく探せば何か珍しい物があるかもしれない。綺麗な鉱石や、輝く石などが見られないか、と砕斗ぼ心もうきうき沸き立ち始めた。
(鉱石とかキラキラした石は好きだから俄然興味が湧いてくるな!)
どんな石があるだろう、硬い鉄や柔らかな銅を含んだ石は珍しくもないかもしれない。翡翠や水晶は見つけやすいだろうか。それ以外の輝石も、もしかしたら地上に露出しているかも。
初めての任務への緊張と興奮に加えて、まだ見ぬ石との出会いに砕斗の赤い瞳はきらきらと輝き、足取りも楽しく弾むようだった。
今回はオブリビオンマシンの獄丸は呼ばないからこそ、己の目が一番の頼りである。
(アイツはオブリビオンマシンだから安易に呼べないんだよ)
戦いともなれば頼もしい相棒だが、今この時は砕斗自身の力で土産物を見つけなければ。ぎゅっと拳を握りしめ、砕斗は周囲をしっかり見渡していった。
しばらく歩いて、岩肌の露出した斜面を見つけた。そこに沿って歩いてみれば、斜面の一部、地面に接した部分に手ぐらいなら余裕で入りそうな、ちょっと窪んだ箇所がある。
気になった砕斗がしゃがんでそこを覗いてみると、僅かに差し込んだ日光を反射する硬質な輝きが見えた。
ゆっくりと手を入れて、指に触れた硬い物を取り出してみれば、それは砕斗の瞳に負けないくらい、赤い色をした鉱石だった。
「珍しいな」
おそらく偶然にできたのだろう。封神武侠界風に言うなら、天地の気が凝った結晶のようなものだ。
土産にはちょうどよさそうだ、と砕斗は見つけた石を手に、桃源郷へと進むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
花色衣・香鈴
◎
指定無しは初めてなれど、元々ある竜神さんに採取した物を買い取って頂いていた身には馴染んだこと
「何に、…いえ」
植物と共に生きる病を持ったわたしなのだから選ぶべきは決まっている
無理に探し回ることはしない
道すがら、目に留まったのは一本のヒイラギ
けれど何故か一枝折れかかっていて
「ごめんなさい、頂きます」
頭を下げて完全に折り取った
「素敵な宴へのお招き有難う御座います。香鈴と申します。魔除けの枝をお持ちいたしました」
戦巫女として神仙たる方に礼を尽くすのは当然の事だけれど
「近々この封神武侠界へ静養の為移住する者でございまして、ご挨拶致したく」
今日はご挨拶の方が主目的
発作で迷惑をおかけしない様長居は避けよう
●
花色衣・香鈴(Calling・f28512)は桃源郷へと続く道で土産物について、少しだけ考えた。
(指定無しは初めてなれど、元々ある竜神さんに採取した物を買い取って頂いていた身には馴染んだこと)
何でもいいから宝貝の材料になりそうなものを、と探すのが慣れ親しんだ行いに近いものである。ぱちりと金木犀色の瞳を瞬かせ、一つ呟いた。
「何に、……いえ」
その身に植物を宿し、共に生きる病を持った香鈴。ならば選ぶべきは決まっている、と心定めて歩く。無理に野山に押し入って探し回りはしない、田舎道を辿りながら周囲へ目を投げかけた。
すると僅かに一本の枝が折れかかったヒイラギが目に留まる。風や鳥によって撓んだ際に、こうなったのかもしれない。
香鈴はそっとヒイラギに頭を下げる。
「ごめんなさい、頂きます」
それからそっと手を伸ばし、完全にその枝を折り取った。
ヒイラギの枝を手に田舎道を進む。ふと気づけば蓮の咲く池の側へと立っていた。周囲には桃の花も咲いており、桃源郷へとたどり着いたことを知る。
「いらっしゃい」
すぐそこにはたおやかな仙女が立っていた。蓮の拵えを身に着けた彼女が、蓮玉娘々だろう。
すっと香鈴は頭を下げ、謝辞を述べる。
「素敵な宴へのお招き有難う御座います。香鈴と申します。魔除けの枝をお持ちいたしました」
差し出すのは先程のヒイラギの枝、蓮玉娘々は嬉しげに微笑んでそれを受け取る。
「良い枝です。心尽くし、ありがとう存じます」
「いいえ。招かれた者としても当然ですし」
戦巫女である香鈴としても神仙たる方に礼を尽くすのも当然である。それに加えて言うならば、もう一つ事情があった。
「近々この封神武侠界へ静養の為移住する者でございまして、ご挨拶致したく」
香鈴のその身の病が進み、芳しくない状態のため、大切な犬神と移住するから、という挨拶が主目的でもある。
「まあ、それは嬉しいお話です。歓迎いたしますよ」
もし負担でなければ後でいらしてくださいね、と蓮玉娘々は言い添えて香鈴を宴の行われる家へと誘う。
発作で迷惑をかけない様、長居は避けるつもりの香鈴である。自身の体調を考え、この後の予定を立てるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
また桃源郷に行くわ行くわ。わーい♪わーい♪
その前に材料を探さなくちゃいけないのよねー。
うーん。直感でいいみたいだけど…何かないかしら。
それにしても綺麗な場所ね。桃源郷はもっと凄いのかしら。
あ!そうだわ。そうよ。川の水って材料になるかしら?
え?どうやって持っていくつもりだ?…うーん…。ダメね。
じゃあじゃあこの新鮮な空気を…あ。これも水と同じよね。
レーちゃんはどんなのを材料として見つけるのかしら。
そうだわ。
妲己さんに対抗する時の宝貝作りの材料はお花だったわね。
だったらお花の花弁を探して材料にできないかしら。
可愛い花弁で…果物のお花の方がいいかしらね。柑橘系とか。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
桃源郷は二度目だが…今度はでのんびり過ごすのもいいな。
その前に材料を探さないといけないのか。何がいいかな…。
ふむ。桃の花弁は魔除けの宝貝の材料になっていた。
なら鉱石を材料にしたらどんな効力を有する宝貝になるだろう。
力ある石なら強力なものができそうだ。
問題は探す手段だな。天然の鉱石が落ちているわけはないしな。
…。
露の質問に応えながら石を探そう。なるべく鉱石がいいな。
相変わらず露の発想は斬新だな。水や空気を材料にするとは。
「…流石に、元素は宝貝の材料にはならないと思うぞ…」
私が探す材料をしつこくしつこく露が聞いて来てうっとおしい。
「私か? …ふむ。石だな」
いや。君は材料にしない。
●
桃源郷へと向かう田舎道を、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)とシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は辿る。
「桃源郷は二度目だが……今度はのんびり過ごすのもいいな」
「わーい♪ わーい♪」
シビラはいつも通りのクールな佇まいで、露は再びの桃源郷への訪れに踊るような足取りで。
ただ、桃源郷へと入るには何か宝貝の材料を手土産にする必要がある。二人は何を持っていくか、決めかねていた。
「何がいいかな……」
「うーん。直感でいいみたいだけど……何かないかしら」
露がゆっくり辺りを見回せば、封神武侠界の雄大な自然が広がっている。人の手の入らない自然がここには広がっていた。桃源郷に思いを馳せながら露とシビラは歩みを続ける。
「それにしても綺麗な場所ね。桃源郷はもっと凄いのかしら」
「かもしれないな」
進む道は緑が溢れ、山へと続く道には木々も見える。草の香りに花の香りも深呼吸をすればよく香る。近くには川も流れているようで、さやさやと涼やかな音が聞こえてきた。
水音に露はひらめいた、というように手を打つ。シビラ視線を向ければ意気揚々と話しだした。
「あ! そうだわ。そうよ。川の水って材料になるかしら?」
「どうやって持っていくつもりだ?」
シビラの冷静な答えに露は首を傾げた。手元に器になるようなものはなく、運ぶにも苦労するだろう。
「え? ……うーん……。ダメね。じゃあじゃあこの新鮮な空気を……あ。これも水と同じよね」
「……流石に、元素は宝貝の材料にはならないと思うぞ……」
シビラも、元素や液体、気体を土産にしようとする露の斬新な発想には感心するが、さすがの仙人も酸素や窒素をもらっても困るのではないだろうか。
かくいうシビラが探しているのは鉱石だ。以前、作成した宝貝の材料は、魔除けの力を持つ桃の花弁。では鉱石を材料にしたらどのような効力を有するのか興味がある。
(力ある石なら強力なものができそうだ)
天然の原石がそこらに落ちている可能性は少なそうだが、どうやって探そうか悩み、地面や岩を見つめるシビラに露は問いかける。
「ねえ、レーちゃんはどんなのを材料にするの? ねえ」
何度もしつこく聞いてくる露にだんだんシビラもうっとおしくなってきた。眉を顰めて露を眇めた目で見据え、考えを告げれば大人しくなるかと言うことにする。
「私か? ……ふむ。石だな」
「石? あたし?」
「いや。君は材料にしない」
露の本体は月光を浴び続けたブルームーンストーン、ヤドリガミが宿るほど長い時を過ごした鉱石である。確かに力ある鉱石かもしれないが、友人を宝貝の材料にするシビラではなかった。
冷たい目で露を見たあと、すたすたと進むシビラを追いかけながら、露は再び土産物に思いを馳せる。
(そうだわ。妲己さんに対抗する時の宝貝作りの材料はお花だったわね)
露も以前の経験から、どんな材料がいいかを思い浮かべていた。
(だったらお花の花弁を探して材料にできないかしら。可愛い花弁で……果物のお花の方がいいかしらね。柑橘系とか)
山に近い土地だ、見つかるかもしれない。爽やかな香りはどんな効果を齎すのだろうか。
じっくり見定めるシビラと軽やかに探す露。2人ともそれぞれに考えて、これがいい、と定めたものを手にして道を歩いていけば、無事に桃源郷へと辿り着くのだった。
大成功
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第2章 日常
『薄明逍遥』
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POW : 周囲を散策して過ごす
SPD : 花を愛でながら過ごす
WIZ : 東屋でのんびりと過ごす
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●薄明の蓮の宴
招かれた先は、日も沈みかけ薄明かりの中に蓮の花が浮かぶ池だった。
近くの庵は池が見やすいよう、戸や窓が大きく開かれている。薄明かりの中に、柔らかな形の蕾が見えた。
「この蓮は、見るものの心を写すのです」
蓮玉娘々の指した先で、花がぽんと開く。色はほのかに桃や黄、青に紫も混じるだろうか。穏やかな香りに包まれていると、心もどこか緩んだ心地になってくるかもしれない。
桃源郷の茶や食事なども用意されており、のんびりと花を見ながら食事もできる。
さあ、宴の始まりだ。
神坂・露
レーちゃん(f14377)
親友よりも庵へ先に行って蓮の池をみてるわね♪
わー。わー。凄いわ。蓮で水面があまり見えない。
あ!そーいえば見る人の心を写す蓮だったっけ。
蓮玉さんの説明を思い出して改めて蓮を見つめるわ。
どーやって映すのかしら。どきどきだわ。だわ♪
…?…!おー…。これは素敵ね。素敵ね♪
結果はレーちゃんに報告するわ。凄いのよって。
「あのねあのね。蓮に写ったあたしの心は…」
報告しに行ったらレーちゃんはお茶飲んでたわ。
「…わー…」
レーちゃんはどこでも何しても絵になるけど。
蓮を後ろにお茶飲む姿はまるで仏様みたいで。
…。何て名前の仏様だっけ?えーっと…?
「そうそう。その仏様、仏様!!」
レーちゃんって仏様の名前まで知ってるのね。
流石本の虫なことはあるわよね。うん。
レーちゃんの隣の席に座ってお茶を楽しむわ。
お料理もできるの?桃源郷の料理って解らないけど。
なるほど。面白い料理が多いわね。軽食ってどれだろ?
「あたしは何にしようかしら♪ どれも美味しそうだし」
出てきたお料理はどれも珍しくって美味しそう。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
うきうきと速足で先に庵へ向かった露を見守る。
歩き疲れた私は後からゆっくりと庵へ向うぞ。
いい景色だ。急ぐこともないだろうに。
桃源郷の素晴らしい風景を堪能する。
「…ん。心が落ち着く」
「…ん。よい香りにいい味…♪」
庵に到着したら茶を用意して貰おうか。
露は勝手にあの子のほうから現れるだろう。
私は桃源郷のお茶を堪能する。これは旨い。
『もう見つかったか…やれやれ』
暫く静かに茶を飲んでいたが急に喧しくなる。
興奮しているのは例の蓮の影響のようだ。
心を写す蓮で露自身の心をみた…らしい。
説明に一生懸命なのは解るが今一的を得ない。
「……そうか。不思議な体験をしたんだな」
露の分の茶の用意を頼んで…何?食事もしたい?
やれやれ。そんなに慌てなくてもいいだろうに。
料理は茶を飲んた後で出して貰うようにお願いした。
「ふむ。二人分の料理も頼めるだろうか?」
食事中も心を写すという蓮の話題だった。
蓮には興味がある。どう心を写すのか気になる。
が。露のフィルターを通すとな。よくわからん。
食事の後に観てもいいな。
●
露はシビラより庵へと先に行き、まっすぐ蓮の池へと向かう。
「わー。わー。凄いわ。蓮で水面があまり見えない」
一面に広がる蓮の花は、開いたものもあればまだつぼみのものもあった。薄明の頃の庭で幽玄な美しさを見せている。
「あ! そーいえば見る人の心を写す蓮だったっけ」
露は蓮玉娘々の説明を思い出し、改めて蓮を見つめる。
「どーやって映すのかしら。どきどきだわ。だわ♪」
ぽん、と見つめる蓮が咲いた。淡い白の花びらに銀を刷花から豊かな香りが露の鼻に届く。日だまりのような明るくて甘く、けれどときに月光のような涼やかな香り。露の心を映した蓮の花だ。
そして、その香りに自分の心が見えてくる。
「……? ……! おー……。これは素敵ね。素敵ね♪」
ふわりと夢を見るような心地よさ。ゆったり微睡むような柔らかな気持ちの中、露は己の心を見る。それは素敵なものだった。
長いような幻が終われば、現に露は戻ってくる。素敵なものを見た興奮のまま、露は庵へと駆け出していた。
●
一方のシビラはうきうき早足で先に向かう露を気にもせず、のんびりと桃源郷の景色を楽しみながら歩いていた。
「いい景色だ。急ぐこともないだろうに」
周囲は既に桃源郷、歩き疲れた気持ちを和らげるような自然や幻想的な光景だ。ゆっくり逍遥していけば、目にも心にも染み入るような素晴らしさ。
「……ん。心が落ち着く」
庵に到着して案内された部屋に入れば、薫り高いお茶が用意された。薄い陶磁器に入った澄んだ色の茶を一口飲めば、柔らかに風味が広がっていく。
「……ん。よい香りにいい味……♪」
露は勝手にやってくると知っているシビラは、風景を堪能しつつ、悠々と桃源郷の茶の香りと味を楽しんでいた。時折風に乗って香るのは蓮の香りかもしれない。薄明りにぼんやりt光って見える、蓮の花は美しいだろう。
幽玄な桃源郷を楽しむシビラ。そこに軽快な足音が聞こえてくる。
(もう見つかったか……やれやれ)
静かな場が急に賑わしくなってくる。シビラは今から駆け込んで来るだろう露の分のお茶の用意を頼んでおいた。
「レーちゃん、凄いのよ。あのねあのね。蓮に写ったあたしの心は……」
駆け込んできた露は、見つけたシビラの元に一直線に向かう。蓮に心を映した興奮のまま、説明に一生懸命だ。それはシビラにも解るが、今一的を得ない。
「…………そうか。不思議な体験をしたんだな」
「そうなの、それで……わー……」
少し落ち着いたのか、露改めてシビラを見る。蓮の花を後ろにお茶を飲む姿は、まるで仏のようにも見えたのだ。
(レーちゃんはどこでも何しても絵になるけど)
「蓮の上の、あの……。何て名前の仏様だっけ?えーっと……?」
「うん?」
シビラは露の言葉に、有名な幾つかの仏の名を挙げる。確か蓮花座に座る仏像もあったはずだ。
「そうそう。その仏様、仏様!!」
さすが本の虫、仏の名前まで知っているなんて、と露はこくこく頷いていた。
露が落ち着いた頃を見計らい、お茶が饗される。露はシビラの隣の席で、温かいお茶を楽しんだ。それから料理について尋ねられ、ぱちりと目を瞬かせる。
「お料理もできるの? 桃源郷の料理って解らないけど食べてみたいわ」
「ふむ。二人分の料理も頼めるだろうか?」
少し慌ただしい露に、シビラはゆっくりしてからでもいいだろう、と今ある茶を飲みきってから出してもらうよう、依頼した。
よろしければ、と仙女が置いていったのは用意できる食事の一覧。すでに大皿に盛って宴の参加者用に並んでいるものもあれば、できたてを出せるものもあるそうだ。
普段は目にしない料理名に、露は目を輝かせた。名前の横に添えられた絵や説明で何となくはわかる。
「あたしは何にしようかしら♪ どれも美味しそうだし」
「ふむ」
二人であれこれ頼みつつ、仙界の料理人によって料理された品を堪能する。馴染み深い料理も一味工夫がされていたり、仙界の品を作った料理はまた新しい味であった。
もちろん、露の食事中の話題は心を移すという蓮のこと。
シビラもどう心を映すのか気にはなっているが、露というフィルターを通すとよくわからないことになってしまう。
楽しそうに話しながら食事をする露を見て、シビラは食事の後に確かめるのもいいか、と自身も箸を進めるのだった。
大成功
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