【不思議な魔法店】フェアリーランドの収穫祭【前編】
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フェアリーランドには不思議な魔法店がある。
秋の収穫祭の日だけ、フェアリー達の小さなサイズに合った衣装やいたずらグッズを売りに開かれるのだ。
そんな魔法店のおじさんは、麦の名前からライと呼ばれている。
今年の収穫祭でフェアリー達は、いたずらのグッズを水鉄砲や雪玉を買う予定。
当てたりして互いにいたずら合戦をするらしい。
たくさんのフェアリー達が、魔法店を訪ねて、新しいおもちゃを買っていくようだった。
そんな、魔法店のお手伝いを募集しているぞ。
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「フェアリーランドの魔法店から、お仕事の依頼なのら」
ノラは、水で空まで舞い上がるブービークッションをてでぷにぷにしながら猟兵達を見た。
「フェアリーランドで行われる収穫祭でいたずらパーティーが開かれてるのら」
フェアリー達は、自然に準じているから収穫したり実りの季節には敏感なのだろう。
「といっても、農耕をしているわけじゃないから、実り豊かな時期が来たことのお祝いなのら」
フェアリーランドは、一年中実っているような場所もあるが、この時期は一斉に豊かになるに違いない。
「いたずらや、おしゃれを楽しみ、最後にお菓子をたべる」
ノラは舌をちろちろとだして、おいしげに言った。
「フェアリーランドの早めのハロウィンって感じなのら」
フェアリーランドのハロウィン。怖さはなく、ただキラキラしたものを楽しむだけのお祭り。
時間の概念があいまいそうなフェアリーでも、秋が来た感動を分かち合うのかもしれない。
「一番面白いいたずらを考え付いたフェアリーは、今年の森の姫に選ばれるらしいので大分競争率が上がっているみたいなのら」
ノラは、絵本の一ページを見せる。白い花に白いドレス姿のフェアリーがちょこんと座っている。
「姫は森の王子とよばれる麦でできた人形と結婚するのら」
もう一ページをめくると、可愛らしい麦の王子がマントと杖をもって座っていた。
「最後は皆で王子を燃やして湖に流す、そして来年の収穫を祝うパーティーをして終わるのら」
何故王子を燃やすのだろう? 次の大地へと帰る、麦たちの精霊の象徴なのかもしれない。
「不思議だけれど、どこか歴史を感じるフェアリー達のお祭りなのら。カボチャは出てこないのら」
おどろおどろしさはない、フェアリー達のハロウィン……収穫祭。ちょっと覗いてみようか。
「うんうん、前置きが長くなったのら。魔法店の手伝いで何をするかを教えるのら」
ノラは絵本を閉じると、業務のプリントを配った。
「大きく三つ。一つは、積み荷降ろし。もう一つは宅配、最後の一つは鑑定」
すべて魔法の物品を扱う工程だ、事故は多そうに思えた。
「積み荷は生きている道具も扱うから、気を付けるのら。梱包に使われている縄は魔法の言葉で解けるようになってるらしいのら」
さすが魔法店。縄も魔法生物らしい。
「力がある子がやるのがいいと思うのら。えーっと、次は宅配なのら」
ノラはプリントをめくる。
「宅配は、フェアリー達の住処は小さな家が多いのら。見つけるのが困難だから、探すのが得意な子がやったほうがいいのらね。キノコ屋根とか、積み木屋根とか、可愛らしいのが特徴なのら」
フェアリーは奔放なので、集合住宅にはやっぱり住まないのだろう。
「住所も曖昧に書いてあるから、頑張って届けてあげてほしいのら」
プリントには湖の上とか、空のあっちとかアバウトにしか書いていない。
ノラはさらにプリントをめくる。
「鑑定は魔法店に入ってきたおもちゃがちゃんと動くか試しに使ってみたりする感じなのら」
プリントには、春の匂いがするグミ、空の星を増やすこんぺいとう、海の幻影を見せるライト。
ちょっとしたユーベルコードになりそうなグッズが盛りだくさんである。
「最後に、金銭のやりとりなのら。金銭は妖精の粉というもので払われているらしいのら」
妖精に金銭はあまり使わないのだろう。物々交換でやっているようであった。
「妖精の粉は、フェアリーランドで妖精が心動かされた石を、月夜に照らすとできると言われている粉なのら」
妖精が感動するものには、何か魔法の力があるに違いないと思えた。
「お金の代わりに取引に使われているから、妖精がピンとくるのは珍しいから数がちょっと少ないのら」
そもそも貯めるという事が難しいかもしれない。これは妖精にとっては難しい。
「数が少ないことで、ちょっと揉めてたりするかもしれないのらね」
ちょっと、苦笑いをしてノラは続ける。
「といっても、かわいい喧嘩だから見かけたら優しくなだめてあげてほしいのら」
妖精さんは悪意のない喧嘩をして、危なっかしいことになるかもしれない。気を付けなければ。
ノラはプリントと絵本を片付けると、皆に向き直っていった。
「準備はいいのら?魔法店の品で遊ぶくらいの気持ちで行ってきてほしいのら」
ノラが壺を猟兵の方にむけると、君たちの方向感覚がずれ始める。
未知の感覚にぐるぐると目が奪われると、きれいな青空の下に青い屋根の魔法店が建っているのが見えた。
はるかず
●こんにちは、はるかずです。
収穫祭ですねー。秋の豊穣を祝うのはきっと精霊や妖精は敏感に感じ取っていそうだなと思うシナリオです。
●1章
妖精さんのアコ&ナコの二名が「どっちが多めに妖精の粉を出すか?」でもめています。
どっちが出しても物はちゃんと買えるのですが、半分半分より多めに出したくてたまらないようです。
魔法店のドアの前で、ひっちゃかめっちゃ買喧嘩をしていて、他のフェアリー達も困ってます。
通り過ぎてもいいですが、仲良くしてくれると次の章でフェアリー達が手伝ってくれるでしょう。
●2章
魔法店の手伝いです。
いたずらのおもちゃはユーベルコードみたいに魔法の力を持っています。
書いてある通り、宅配で妖精さんはだいたいの位置しかおしえてくれなかったり、魔法の器具にはちゃんと作動しないものもあったりします。荷運びはパワーが勿論いります。
でも、何か困ったら、おじさんのライさんがサポートしてくれるでしょう。
●次章について
次章はフェアリーのいたずらのイベントに参加して、最後に収穫祭を祝うだけになっております。
ほのぼのするためのシナリオですので、ゆるゆると行きましょう。
第1章 冒険
『喧嘩大乱闘』
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POW : 喧嘩に乱入して、収めてしまう。
SPD : 速さで、喧嘩をすりぬける。
WIZ : 人だかりを利用して、誘導する。
👑7
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魔法店に近づいてみると、フェアリーの人だかりができていた。
真ん中のドアの真ん前で、ぽこぽこと妖精二人が喧嘩している。
どうやら、妖精の粉をどっちが多めに出すかで揉めているらしい。
「もー!アコのあんぽんたん!だいたいでいいじゃない!」
「ふーんだ!ナコのすかぽんたん!たっくさんほしいのよ!」
二人はもめあって、コロコロ転がりながらドアを行ったり来たり。
どっちにしろ、このドアをくぐらねば店の中には入れない。
さて……どうしようか?」
沙川・円匙
はるかずマスターにおまかせします。かっこいい沙川・円匙をお願いします!
クラウソラスのファンガス共生者×キャンプ好き、43歳の男です。
普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、暗いところでは「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
和照葉・英莉莎白
はるかずマスターにおまかせします。かっこいい和照葉・英莉莎白をお願いします!
貴種ヴァンパイアの星のエアライダー×グランプリレーサー、11歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、苦しい時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
富良裳・アール(サポート)
「えっと、ぁぅぁぅ…こ、こんにちは…」
赤くなったり青くなったりよく顔色が変わり、基本もじもじしています。
かわいいものが好きで、甘いお菓子も好き。
お化けは怖いし、大きな声にもびっくりする。
一般的な感覚を持った、人見知り気味の、普通の女の子です(本人談)。
普通の女の子なので、戦闘になると
「きゃー!」「うわー!」「こないでくださいっ」
等、よく涙目で叫んでいます。
そして叫んでいる限りは的確に、それはもう的確に
武器、ユーベルコードを使用します。
戦える、普通の女の子だからです。
なので依頼は頑張ってこなそうとしますし、
非戦闘員は守ります。
でもやっぱり、平和な依頼がいちばん好き。
ティエン・ファン(サポート)
シルバーレイン出身の除霊建築士です。
明るく善良な人間で、できることがあるならば、できる限りを全うしようとします。
除霊建築士というジョブに拘りがあるため、その知識や技術が活かせそうな場面では、積極的にそれらを使って問題解決に取り組みます。
戦闘時は主武器のT定規と副武器の浄銭貫を用いて、近距離戦も遠距離戦も行います。
キャバリアが有効な場面では、『蚩尤』を使用します。
『蚩尤』は普段イグニッションカードに収納しています。
ユーベルコードは『蚩尤』搭乗時は”蚩尤”とついたものを、そうでないときはその他のものを状況に応じて使用します。
以上を基本として、シナリオに合わせて思うままに動かして頂ければと思います。
「お、いい自然の景色だ」
原っぱが広がるところに、ちょこんと建つ青い屋根の魔法店は、自然に囲まれて気持ちの良い景色であった。
ふらりふらりと、キャンプ旅をするダーナの神々である沙川・円匙(クラウソラスのコミックマスター・f38416)にとってフェアリー達は下位の神的な存在。
いわば兄妹にも近い存在である。
そんなフェアリー達が通う店に彼は足を運びに来た。
さわわ……と風がなびいて、草が揺れる丘を彼は下り、列ができている魔法店の前まで来た。
すると、喧嘩の騒動の音がするではないか。
「もー!アコのあんぽんたん!だいたいでいいじゃない!」
「ふーんだ!ナコのすかぽんたん!たっくさんほしいのよ!」
妖精二人が、ごろごろ転がりながらドアの前を行ったり来たりしている。
「ありゃあ……」
頭を少し掻いて、困った風を装う。
しかし、ほおってはおけない気持ちを持つ沙川は、隣の人に事情を聴いてみる事にした。
先に着いていた、富良裳・アール(普通の女の子・f36268)がフェアリーの人だかりの中で説明を始めた。
「ええっと、あぅぅぅ……それが、お金にあたる妖精の粉をどっちが出すか、言い合いっこしているみたいで。それでもらえる品が変わるわけじゃないらしいのですけれど……」
おろおろとその喧嘩の状態に少し青ざめて、彼女は言う。
「銭に綺麗も汚いも、多いも少ないもないとおもう、けど!こればっかりは、気持ちの問題なんだろね」
隣で見ていた褐色肌のティエン・ファン(除霊建築学フィールドワーカー・f36098)は補足を入れる。
「なるほどなるほど、片一方が多くお金をだしたいってわけだな」
ひょうひょうと、沙川は喧嘩の中に足を進めて行く。
「えぇぇ……!喧嘩危ないですよ~!」
止めようと富良裳は、ワタワタと静止の声をかけて、バタバタと手招きした。
「まあ、見とけよ」
にかっと柔らかい笑顔を浮かべながら、沙川は富良裳に手を振った。
コロコロ転がりながら喧嘩していたアコとナコの前に出て、
「なあに?私たち喧嘩してるの!」
「見たらわかるでしょ!ぷんぷんなのよ!」
怒りながら、フェアリー二人は沙川に訴える。
沙川は目線をフェアリーのアコとナコに合わせると、口元を指さしてこう言った。
「落ち着け嬢ちゃん達。こういうときは、息を使うといいぜ」
「「息?」」
小首をかしげて、アコとナコ含めた他の妖精さん達も首を傾げた。
「鼻で息を吸って5秒止めて。それから、ゆっくり口から3秒かけて吐き出すんだ」
妖精たちは頷くと、皆がす~~は~~と息を吐き始めた。
「なるほど、呼吸法ってやつね」
ティエンは日本古来に伝わる知識でその方法を思い出した。
「あうぅ……わたしも、なんだか落ち着いてきました」
富良裳はホッと顔を和ませて、手を胸において自分の息遣いを聞いている。
場はゆったりとした雰囲気となり落ち着きを取り戻した。
「じゃあ、二人の意見を聞きたいぜ」
喧嘩をやめたアコとナコは事情を話すとこういう。
「私、たっくさん妖精の粉をお店の人に出してあげたいの。でも足りないの」
「そうか、そいつは難しいな……」
うーんと、立派なもみあげを摩って、思案を巡らせる沙川。
「事情はきいたのよ!」
ざっと、フェアリー達の列が割れて、ばばーんと現れた存在がいた。
「わあ、また大きい人だ!なんでこんなところにー?」
突如あたらわれた、新しいフェアリーより大きい人の到来にアコとナコはめをぱちくりさせる。
「妖精に大きいって言われた!」
きゃあと、喜ぶ和照葉。
「よね?私、おおきいよね?」
「おおきい!おおきい!」
調子に乗って喜ぶ和照葉に喜んで、フェアリー達は喝さいを浴びせる。
「聞いた?私の背の高さ?」
和照葉は進み出て、沙川に意見を求めた。
「そりゃ、よかったなぁ……」
しみじみと、突如出てきた娘をめでるように見る43歳の沙川であった。
「ありゃりゃ、調子に乗っちゃってるよ!」
ティエンは元気に突っ込みを入れる。
「ここは私のユーベルコードにお任せて!」
和照葉は体を回転させると、金色の髪をなびかせて発動させる。
《スターライト・エアリアル》によって、空が夜景となり星々が落ちてくる。
彼女の、召喚した【ティンクルスター】であった。
……わぁ!
と、歓声がフェアリー達から上がる。
キラキラとクッションの星が幻想的に、青い屋根の真央法典に降り注いだ。
妖精たちは、抱きしめて遊んだり。飛び跳ねて遊んだりして、大喜びである。
「あぅあぅ、たくさん振ってくるのですよ~!」
富良裳はティンクルスターに埋もれてしまっていた。
その中の星の一つを見つめて、アコが何かに気づく。
「あ、これキラキラしてる……もしかして!」
アコが、一つのふわふわティンクルスターを抱きしめる。
そして、それを夜景となった空の月にかざした。
すると――!どうだろうか!
石でもあるティンクルスターは、キラキラと妖精の粉に代わったのだ!
ティエンが驚いて、和照葉に聞く。
「あなた!もしかして、これを見越していたの!?」
「も、もちろんよ!!」
元気になってほしい気持ちで降らせたものであったが、偶然にも奇跡を起こしてしまった。
「私にかかれば当然よ!」
きらっと、調子よさげに胸を張る和照葉。
「おお!すごいぜ。嬢ちゃん!」
「はわわ!天才ですぅ!」
沙川と富良裳もほめの言葉をかける。
ナコとアコが、4人に寄ってくる。
「ありがとう、大きなおねえさん、おにいさん。これでたっくさん出せるわ!」
にこやかな表情で、頭を下げて礼をされる。
「いいのよ。仲良くね」
「ああ、よかったな」
和照葉と沙川がフェアリーに声をかけ、互いに顔を見合わせて、幸せを喜んだ。
「一緒に入りましょう!用があるんでしょ!」
アコとナコは扉を開いて、がんばった猟兵達を店の中に招待した。
猟兵達は、遠慮せず入ることにする。
アコとナコは、たくさんおもちゃを買えたことだろう。
これにて一件落着である。
成功
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第2章 日常
『魔法店でお手伝い』
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POW : 積み荷を降ろしてお手伝いする
SPD : 品物の宅配をお手伝いする。
WIZ : 魔法の知識で入荷の品を鑑定してお手伝いする。
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御堂・伽藍
【金剛胎蔵】
アドリブ、即席連携歓迎
落ち着き礼儀作法
ごあいさつ
ともだち つれてきた
召喚術でティティスを呼び出し紹介
念動怪力優しさ礼儀作法詰め込み運搬ロープワークUC
念動力で範囲の荷物を一度に動かす
揚げ降ろしは飽くまで丁寧に
詰む時もギチギチに、ではなく整然と詰める
多重詠唱(?)
店長さんや道具さん達と話しつつ、キチンと作業を進める
あなたはあっち あなたはこっち
何とも賑やか、物の巷よ
あ ちょっとまって
先に此方を置いてから、彼方を乗せて…
いろんなこが いるね
我等の如き我楽多にも、優しい物が多い…
ティティ おつかれさま
次はこれと、これをお願い
こわれもの あんぜんうんてん
てんてこ舞いでもせっせと働く
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
【金剛胎蔵】伽藍/f33020と協力
「伽藍、召喚に応じた」と言って姿を現わします。
話しを聞いて「状況・対応を理解した」と答えて『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』で最適化に応じたトランスフォームを行ない、同時に可能な範囲でのファンネルビットを創造して展開し“積み荷降ろし”“品物の配達”“魔術鑑定”と必要なファンネルビットを創造しながらティティス自身も伽藍やノラの要望や応対に答えながら、より迅速かつ的確に物事を素早く手早く進めて、フェアリィたちが物珍しそうに見ていて笑顔で手を出したら「準備する」と答えて乗り物や動物などに型状のファンネルに乗せます。
カラン、カランと、喧嘩騒動が収まって店が開く。
わぁ~!!と、たくさんの妖精さんが、店内に雪崩れ込んできた。
子供たちが過ぎ去った後、一人の女の子のお人形がちょこんと立っていた。
店長のおじさんであるライが、おや?とその子を見る。
彼女はスカートのすそをつまんで上げると、小さくお辞儀した。
「お手伝いに来ました おじゃまします」
落ち着いた雰囲気でご挨拶をしたその子は、御堂・伽藍(がらんどう・f33020)であった。
「伽藍ちゃん。伽藍ちゃんなんだね」
おじさんのライは腰を落とし手で伽藍の腰を持つ。
そのまま、伽藍を抱き上げて頭をなでる。
「おじ……さん……?」
「ああ、あの時のおじさんだよ。今日は妖精さん達に魔法店の出張さ」
帝竜祭以来だろうか。以前の事件で会った彼はレジスタンスとして邪教徒退治に出ていた。伽藍は見知ったおじさんに暖かい懐かしさを覚えた。
「ともだち つれてきた」
伽藍は指で円を描くと、円は光となって床に定着した。
床に召喚陣が現れ、金色の長い髪に肩に巨大な固い砲を付けた女性。
ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)の姿が召喚された。
「伽藍、召喚に応じた」
「こちらは ティティ ともだち」
「友達かい? これはまたとってもべっぴんさんだねえ」
すらりと立つ、ティティスにライおじさんは目を細めて喜ぶ。
「対応を教えて欲しい」
そう命令を待つ彼女の周りを、水鉄砲で相手のお尻に水をかける妖精さんがいた。
何人かの妖精さんはティティスの周りをぐるぐると回り始めていた。
合戦場となった、ティティスの周りでのにらみ合い。
彼女は同じように、ファンネルビットを水鉄砲型に変形させ、水でチュンッチュンッとお尻を狙って妖精さんを驚かせる。
「やられた!うあー!」
との声と共に、水による戦死者がパタリと、床に落ちて騒動は収まる。
その様子を見ていたライおじさん。
「妖精さんのお世話は、彼女が一番かねえ」
「ティティ、妖精さんの姉妹がいるの」
伽藍は乗ったライおじさんの腕の上で説明した。
「そりゃ扱いにたけてるわけだねえ」
目をハの字になごませて、ライおじさんは二人に仕事を任せることにした。
<①荷下ろし>
ライおじさんは、ティティスに指示を出す。
「まずは荷物を下ろして。中身を出すとこから……ほどき終わった荷物は、棚に並べてほしいね。汚れているのは教えてね」
「状況・対応を理解した」
ティティスは、『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』で、店内の上空に、ロープのような作業場を作る。
これは、ファンネルビットがロープに荷物をひっかけると、おじさんの前まで運んでくる荷物が乗るロープウェイのようなものだ。
その、荷物の経路に、中身の汚れチェック、荷物を閉めているロープのカット、魔術の量測定をしてくれるファンネルビットを配置した。
一方、店の裏手の馬車前。
伽藍は、荷馬車の前に立って、木箱を見遣る。
すると、ティティスのファンネルビットが椅子型に変形して、伽藍をのせて荷馬車の荷物の近くまで浮遊してやってきた。
伽藍の耳には多様な荷物の声が聞こえてくる。
『あたし、取れない彩色ペイント!顔に書いたら、1日は絶対取れない!』
『肌に着ける恥ずかしいスタンプはどう? 相手につけたら顔真っ赤間違いなし!』
『僕、いたずら上手い賞の缶バッチ。相手を褒めるもよし、裏にいたずら書きしてもよし』
『俺は30m先まで聞こえるブーブークッションさ。座りごごちもいいんだぜ』
とりあえず、全員を【念動力】で持ち上げる。
持ち上げられると、浮遊するファンネルビットがやってきて吸盤で吸い付くように、キュッと箱をつまみ上げる。
そのまま、伽藍の後ろに四角形に列をなして並ぶ。
奥が見えるようになって、伽藍はまた【念動力】で手前の荷物を浮かばせる。
それを繰り返して、箱のサイコロ状の列が出来上がった。
そのファンネルビット達は、ティティスが作った先ほどのロープの上に、荷物を引っ掛ける。
更にファンネルビット達は、検品を行い、汚れがあるものを仕分けたりしている。
頭上を、荷箱がロープをカットされたり、レーダーで検品されているのが見えた。
「こりゃ凄い、騎士の行軍みたいだ」
ライおじさんは自動でより分けられる姿に、目を真ん丸と見開いた。
<②検品>
荷ほどきが終わり、流れ着いた箱の中身を取り出す作業に入った。
ライおじさんは、ファンネルビットが検知した魔力の量を見ながら、品物の品名と説明文を書いている。
すると、妖精さんが奥の部屋まで飛んできて「なにこれなにこれ」と聞いてくる。
ティティスは、邪魔にならないように「準備する」と一言話し。
動物の乗り物のファンネルを作り出し、宙に浮かせて、妖精さんの乗り物にしてしまった。
きゃいきゃいと、子供のような遊び声。
妖精さんと動物のベットメリーが、作業場の上に出来上がっていた。
その妖精さんがまた一人、入ってはベットメリーに乗るのを眺めつつ。
伽藍は積み荷の声を聴いていた。
彼らはあーだこーだと、場所の位置を指定してくる。
『あっちは、せまい』
『こっちは、おおきすぎる』
『あのこと、いっしょがいい』
色んな、道具の話を聞きながら、《業の糸は比類なき強さ》で、遠距離にある棚の上へと並べていく。
「あなたはあっち あなたはこっち
何とも賑やか、物の巷よ」
『ありがとう、伽藍』
そう、物達の感謝の声を聴きながら。
その中の棚の一つに、なにやら伽藍は不思議な道具を一つ見つける。
それは、箱がずっと閉めてあるような、オルゴールの姿であった。
興味を示した伽藍は、商品の汚れをふき取るライおじさんに聞いてみる。
「おじさん あのオルゴール 話さない」
「そのオルゴールはね、持ち主が存命じゃないと、鳴らないんだ」
「そのひと いなくなってしまったの?」
「伝説では、そうなってるね……私は信じたくないんだがね」
ライおじさんは、遠くの記憶を見るかのようにどこか懐かしげに言った。
伽藍は不思議と、その話さないオルゴールを眺めていた。
しかし、次の作業がまっているため、てんてこまいになりながらせっせと働きに戻った。
「いろんなこが いるね
我等の如き我楽多にも、優しい物が多い…」
そんな魔法店内を眺めて、いろんなもの達と触れ合う伽藍だった。
<③配達>
検品された一部の道具たちは、プレゼントとなって籠に入れられた。
「具体的な住所は書かれてないから、その場所まで飛んで行ったら妖精さんが勝手に取ってくれるはずだからね。よろしく頼むよ」
ライおじさんがそういうと、ティティスの方を見遣る。
「把握した」
ティティスは、ファンネルビットに指示を出すと、宅配の形で吊るせるようになったファンネルビットが、籠を持って外へと飛んでいく。
とてとてと、伽藍がやってきて新しい籠をテーブルに乗せる。
「ティティ おつかれさま
次はこれと、これをお願い」
新しいプレゼントが入った籠。
それについている、位置を示す札を伽藍は読み上げる。
すると、一人の妖精さんがやってきた。
「あ、僕の家の近くだ!ねえ、この動物さんにのせてってよ!」
先ほどまで、遊んでいた妖精さんはファンネルビットのことを動物と呼び、頼み込んでくる。
「了解した」
ティティスが頷く。
「あ ちょっとまって
先に妖精さんを置いてから、彼方を乗せて…」
ちょこんと、妖精さんを籠の中に入れると、カバーが多重にかかった道具を入れた。
「わぁーい!宅配されてくぞー!」
妖精は、宅配のファンネルビットがぶら下げる籠の荷物に乗った。
そのまま、空へと舞い上がり、ファンネルビットと共に自宅の近くへと帰っていく。
「こわれもの あんぜんうんてん」
「安全運転だ」
二人は妖精さんごと運んでいく、ファンネルビットを空高いところを眺めながら。
今日の仕事の達成感を味わっていた。
ライが見送る二人に声をかける。
「ありがとう、まだまだあるけれど、少しお菓子を食べてって。妖精さんからの魔法の粉もいくらか上げよう。これは、おいしい料理の素材になるんだよ」
伽藍は微笑み、お辞儀をし。
ティティスは、会釈して、二人は仕事場へと戻る。
まだまだ、お仕事は続きそうだ。
大成功
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