アルカディア争奪戦㉖~紅霧に身を委ね
●それは予知
そこは戦場。猟兵たちが、思い思いの武器を手に今こそ戦いを始めようとしている。
その時だった。彼らの脳内に一様に響いたのは、魔力に満ちた少女の声。
「――私は、もう待ちません。必ず会いに行きますから、今はこれで持ちこたえて……!」
その声を聞き届けた猟兵たちの身に、変化が起こる。
ある者は牙持つ獣の姿に。あるものは無限の魔力溢れる王の姿に。あるものは姿こそ変わらずとも、その身の内側から力溢れている。それは、生命の埒外たる彼らの、「真の姿」。
そしてそんなバラバラの姿の彼らに共通していたのは、赤い霧の翼が背に生えていることであった――。
●そして、現実
「これが、僕が見た予知となります。……皆様方、遅れましたがお越しいただきありがとうございます」
フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は、緑色の右目を悪戯めいて煌めかせると、自らが見た予知を説明した後で己が呼びかけに応じた猟兵に礼を述べた。
「皆様が戦っていただくこととなるのは、帝竜『大空を覆うもの』。「エンドブレイカー」、と呼ばれる世界において大気を司っていた魔竜であるとのこと。詳しいことは当該の世界が未発見ですので判りかねますが、大気や気象に由来する様々な現象を操る他、数十kmもの巨大さを持ち、変幻する肉体は、超高速と圧倒的な耐久力を持つようですね」
戦場はアルカディアの玉座に繋がる空中庭園のひとつ。そこに凄まじく濃密な大気が凝縮しており、猟兵たちが近づくことによってそれは帝竜「大空を覆うもの」へと変形するようだ。
「『大空を覆うもの』の正体は「ブルーアルカディアの大気」そのもの。ゆえに、ブルーアルカディアから全ての大気を消滅させなければ倒すことができません。すなわち『絶対に倒せない』系の敵なのですが……この凝縮した大気さえ散らすことができれば、一時的に顕現を妨げることが可能です」
そして、接敵時に猟兵たちは脳内に少女の声を聴くことになるだろう、と少年は言った。
「皆様方は自動的に真の姿となって戦うことになるでしょう。ですが、その真の姿には必ず『赤い霧の翼』が生えている様子。この力によって、大気である「大空を覆うもの」を「物理的に破壊する」能力が得られることになるようです」
ですが、どうか無理はなさらないよう、と少年は厳しい目で告げる。
「この力はあまりにも強大。長時間使用し続ければ、猟兵といえども身体が保ちません。真の姿を晒して戦っている上に、その上に赤い霧の翼というブーストが駆けられているがゆえでしょうか」
ゆえに、真の姿への変身と共に最大最強の一撃を繰り出し、素早く撤退してほしいのだと。そう、少年は言った。
「戦場である空中庭園への転移は僕が受け持ちましょう」
どうぞ、準備の整いました方から、僕にお声がけくださいませ――。
遊津
遊津です。ブルーアルカディアの戦争シナリオをお届けします。
ボス戦一章構成、難易度はやや難となっております。
当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
※プレイングボーナス:「赤き翼の真の姿」に変身し、最大最強の一撃を放つ。
「戦場について」
アルカディアの玉座に通じる空中庭園で、「大空を覆うもの」が存在できるだけの広大な広さがあります。
その広大さゆえに拓けており、空中戦も可能です。(敵も空中に浮かんでいます)
太陽が出ており、暗闇ではありません。戦闘の邪魔になるものはありませんが、利用できるものも特にありません。
それでも何かを利用して戦うという方は、必ず「何を」「どうやって」利用するのか明記してください。
リプレイ開始時点で既に真の姿は晒され、戦闘は開始されているため、何かをあらかじめ準備しておくということは出来ません。何らかの準備行動には戦闘と並行して行うこととなります。
「真の姿について」
真の姿がある方は、キャラクターページを確認の上で公開されている真の姿になっているものとして描写いたします。
真の姿イラストがまだない方でも、ご自分がどのような真の姿になるのかプレイングに明記くだされば描写いたします。また複数真の姿がある方は、今回どの姿を取るのかを書いていただけると嬉しく思います。
逆に、特に外見の変更がない方は記述していただかなくて構いません。(真の姿になっても外見の変更がない、という場合でも、必ず赤い霧の翼は生えることになります)
「ボス敵・大空を覆うものについて」
ブルーアルカディアの大気そのものであり、大気全てをなくさなければ倒せない、「絶対倒せない」タイプの敵です。
が、赤い霧の翼の力と真の姿を晒すことで大気である大空を覆う者に物理的なダメージを与えることが可能になっています。
大空を覆うものは指定ユーベルコードの他、飛行能力を有しています。
猟兵がユーベルコードを指定せず戦う場合でも、何らかの攻撃はしてくるものと考えてください。やられっぱなしにはなりません。
当シナリオのプレイング受付は9/25(日)朝8:31~となっております。
シナリオ公開の時間によっては上部タグ・マスターページにプレイング受付中の文字が出ていないことがありますが、その状態でもプレイングを送ってくださってかまいません。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
また、送られてきたプレイングの数によっては全員採用をお約束できない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※戦争中の所為か、マスターページ、この欄などを読まない方のプレイングが多く見受けられます。必ずマスターページとこの欄は一読ください。読んでいないと判断したプレイングは執行まで流させて頂いております。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜『大空を覆うもの』』
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POW : 雷災体現
自身の肉体を「稲妻の【渦巻く漆黒の雲】」に変える。変身中、雷鳴電撃・物理攻撃無効・通電物質内移動の能力を得る。
SPD : 災害竜招来
自身の【肉体を構成する雲海】を代償に、1〜12体の【様々な災害を具現化したドラゴン】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ : 魔竜真空波
全身を【触れたものを破壊する真空の波】で覆い、自身の【大きさ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
👑11
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桐島院・師走
僕の真の姿は堕落した使徒。怒りと悲しみに支配された存在。赤い翼がお似合いだね。
僕は今凄く機嫌が悪いんだ。僕の邪魔をしないでほしいな。
庭園から羽を使って跳躍、そのまま落下してサマーソルトの要領で敵を脚で蹴りつける。指定UCは攻撃力重視。一撃で叩き込むよ。
もしかしたら、攻撃の負荷に耐え切れなくて身体が多少壊れるかもしれないけど、構わないよ。
それよりも今は、戦えることが楽しくて仕方ないんだ。
※アドリブ歓迎です!
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「ああ、この姿は……」
桐島院・師走(シザーレッグズ・f20989)は曝け出された自らの真の姿を見下ろして、物憂げにため息をついた。
それは堕落した使徒。怒りと悲しみに支配された存在。黒と赤に染められた装束から伸びる鋼鉄の両腕が抱くのは、一体誰のされこうべか――。
(この赤い翼も、この姿にならばお似合いだね)
皮肉めいたことを考えながら、彼の鋏の脚は空中庭園の土を踏みしめる。霧で出来ているはずの赤い翼が、まるで風にはためくように揺れた。
凝縮された大気の中では植物はまっとうに育たない。故にこの空中庭園には、まともな草花など生えてはいない。凝縮された大気にそれでも順応しようと努力した種が、それでも枯れかけ伸びることも出来ずに赤茶けた色を晒している。
紅い翼を羽ばたかせて大空へと高く高く跳躍し、飛翔しながら師走は眼下に巨大な帝竜「大空を覆うもの」を見下ろす。
「今の僕は機嫌が悪い。僕の邪魔をしないでほしいな……!」
一度滞空し、そこで発動させた【ヴァリアブル・ウェポン】の効果は、師走の鋏の攻撃力を幾倍、幾十倍、幾百倍にもブーストさせる。そのまま急速落下し、鋏の足でサマーソルトキックを繰り出すように「大空を覆うもの」を蹴りつける。赤い霧の力で物理攻撃が通るようになった「大空を覆うもの」の体は、極低温で凍らされた水風船が斬りつけられたように、凝った大気のそこだけが削れ破れた。
「く、ぅぅぅぅううううっ……!」
けれど師走も無事ではいられなかった。ユーベルコードによって幾百倍の力を発揮させ、体に負荷をかけすぎた師走の鋏の脚、その付け根に激痛が走る。鋼鉄の身体であるがゆえに血は流れないが、武器となるべき足が軋むような痛みに襲われていた。けれど師走はそれを何一つ構わない。鋏の脚で「大空を覆うもの」の上をスケートでもするように滑り、走ってゆく。果物の皮を湯剥きするように「大空を覆うもの」の体表ともいえる部分が裂けて、つるりつるりと剥けた。
――ああ、この体が壊れようとも一向に構うものか。
――今は、戦えることが楽しくて仕方ないんだ!
戦いの高揚で薄い笑みを浮かべ、師走の鋏の脚は「大空を覆うもの」の体を斬り裂き、刻んでゆく。されど相手は帝竜、やられっぱなしというわけには行かない。自身の体が「傷つけられている」という状況を飲み込んだ「大空を覆うもの」は反撃を開始する。
台風の様な風音を立て、「大空を覆うもの」の姿が
変貌ってゆく。雷鳴渦巻く漆黒の雲となった「大空を覆うもの」は、全身から放電を始めた。稲妻が幾度も師走を追う。そして厄介であったのは、この姿となった「大空を覆うもの」には物理攻撃が通用しない、という点であった。
(これ以上の攻撃は不可能。ならば撤退のし時というわけだね……)
再び赤い翼によって飛翔する師走は、そのまま「大空を覆うもの」の攻撃圏内から脱出していくのであった……。
大成功
🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
絶対倒せない、と言われるといっそ清々しいね。
あの声は気になるけどこの不思議な力、使わせて貰おう…これ長時間は無理だ。
急がないと!
オーラ防御で体を覆い結界術で補強、周囲大気を風属性で圧縮し空気のバリア作り真空の波に対処。
向こうは速度と巨体活かして突っ込んでくるだろう、それを見切りカウンターを狙う。
感覚研ぎ澄ませ突撃に合わせ念動力と空中浮遊、空中機動で直撃回避。
やり過ごした直後赤霧の翼で物理化させUC起動、銀槍を騎士に革命剣を聖女に渡す。
聖女の強化術を受けた騎士は無敵…竜だろうと滅多切りにできる位にね!
ダメージ十分刻んだら離脱するね。
※アドリブ絡み等お任せ
真の姿は服装のみ変化、令嬢のような黒ドレス
●
「ふふ、『絶対倒せない』か。そう言われるといっそ清々しいね」
クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は、荒れ果てた空中庭園に立ちながら、帝竜「大空を覆うもの」を見やる。クーナの背には赤い霧の翼がはためき、そして真の姿を晒した彼女の出で立ちは騎士然とした男装から令嬢らしき漆黒のドレスに変わっていた。
「先ほど聞こえてきた少女の声……気になるけれど、今はこの不思議な力を使わせて貰おう。……これは確かに長時間使い続けるのは無理な力だ。急がないと!」
クーナはオーラの防護膜で全身を覆うと、それを結界の魔術によって強く強く補強する。周囲の大気を風属性魔法で圧縮し、空気のバリアを作成した。
彼女に気付いた「大空を覆うもの」は台風の時の強風がごとき唸り声をあげると、自らの全身を触れたものすべて破壊する真空の波で覆った。その力は自らの大きさに比例した戦闘力の増強と、最速で時速128キロメートルに及ぶ飛翔力を得ることをクーナは前もった情報によって知っている。それゆえの防護だ。凝縮されたブルーアルカディアの大気そのものである「大空を覆うもの」の大きさは、まさに広大のひとことに尽きる。その全てが戦闘力に換算されるとなれば、それはもはや大気の暴力性の権化と呼んで良い。
「大空を覆うもの」はびゅうびゅうと唸りながらクーナへと突撃してくる。それをクーナは背中の毛を逆立たせて全身の感覚を鋭敏にする。
(やはり、巨体と速度に物を言わせて突っ込んできたか……!)
「大空を覆うもの」の巨体とそのスピードをもってすれば、クーナなど紙風船のようにぽぉんと吹き飛ばされてしまうだろう。それを見越しての空気のバリアだ。ごうごうと音を立てて近寄ってくる「大空を覆うもの」、その接敵の瞬間にクーナは空へと飛んだ。念動力によって自分自身を操りながら、浮遊能力と培った機動力によって直撃を回避し、風の流れに流されてしまいそうな自身の小さな体を意念により操作して、赤い霧の翼の力でもってユーベルコードを発動させる。それは【
騎士猫の憧憬】。クーナから白雪と白百合の銀槍「ヴァン・フルール」を受け取った、黒き毛並みも美しいケットシーの騎士が、そして同じく彼女から聖女が掲げた細剣「オラクル」を手渡された白き毛並みの輝くケットシーの聖女が現れる。聖女の強化術を受けた騎士は無敵だ。そう、竜でさえも滅多切りに出来るほどに!!
聖女は祈り、銀槍を手にした騎士は果敢に帝竜へと突きかかっていく。クーナに施された赤き霧の翼の力によって、騎士の槍は帝竜を、「大空を覆うもの」を突き、斬り裂いて、深く深くまで穿ち抜いていく。「大空を覆うもの」が幾度振り落とそうともがき、足掻き、身を捩って暴れようとも、既に騎士はそこにいる。このユーベルコードの弱点はクーナ自身が戦えないことと、クーナが傷を受けてしまえば聖女と騎士どちらもが消えてしまうことにあるが、それゆえにクーナは自身に念の入った防御を施して大空を覆うものの攻撃範囲から脱出している。故に、騎士は無敵だ。傍らに祈る聖女いる限り、騎士の銀槍は振るわれ続け、帝竜「大空を覆うもの」を貫き続ける!
「さて、もっと弱らせてやりたいのはやまやまだが、そろそろこの力を使い続けるのも限界の様だね」
くらりとした眩暈と共に喉の奥から鉄の味が広がってくる。それが赤い霧の翼を使い続けた代償と察したクーナは、そのまま空を駆けながら戦場を離脱していった――。
大成功
🔵🔵🔵
メルヒオール・ツァーベル
おー、飛べる飛べる。
流石に俺でも翼とか生やせんからこういう戦場助かるわ~。
そんで大気ぶっぱすりゃええんやろ?
こんぐらい俺のブリッツシュラークが一気に吹っ飛ばしたる!
ショットガンはギリギリまで近づいてから撃つのがええからな。
まずは敵さんまでガッツリ近づいてブリッツシュラークに力を込める。
そんで弾け飛ぶ瞬間、UC【捻じれ曲がれの狙撃手】を発動。
散弾銃やからな、弾けた全部の銃弾を勢い落とさずに曲げに曲げてやらぁ!
至近距離で打たれた勢いが落ちないってことは、そのままの威力保った状態で大気を吹っ飛ばせるんやで!
あー、でも待って肩痛いなこれ。
飛ぶのバリしんど。
魔法力で浮くとかなら楽やったかもなぁ。はぁ……
●
「おおおおお、飛べる!飛べる飛べる!すっごいやん!」
メルヒオール・ツァーベル(トリック&スピードスター・f36178)は己の背中に生えた赤い霧の羽をはためかせ、上機嫌で空中庭園の空を飛んでいた。
「いや~、さすがに俺でも翼とか生やせんから、こういう戦場マジで助かるわー!!そんで? 大気? ぶっぱすりゃええんやろ? 楽勝!任しとけや!こんぐらい俺のブリッツシュラークが一気に吹っ飛ばしたる!」
凝縮された大気は植物にとって毒になる。故にこの空中庭園にまともな植物は育たず、丈の短い芝の様な草がそれでも赤茶色に変色しながらかろうじて生えている状態だった。それらをざわりと乱しながら、帝竜「大空を覆うもの」は台風の様な唸り声をあげた。メルヒオールを「自身を害する存在」だと認識したのだ。
ごうごうと周囲の空気を乱し、「大空を覆うもの」は自身の全身を「触れたものを破壊する真空の波」で覆う。そして自身の大きさに比例した戦闘力と、時速102キロメートルもの超高速の飛翔能力を得て、メルヒオールをその真空の波で破壊しようと俊敏に動き回る!
「おっと、動くなや、近づかせろ!」
ショットガンはギリギリまで近づいてから撃つのが最良だ。故にメルヒオールは避けるのではなく、逆に「大空を覆うもの」へと向かって近づいていく。真空の波がメルヒオールを襲い、彼の周囲でぱぁん、ぱぁんと風船がはじけるような音がする。それは真空がメルヒオールの肉体を破壊する音。頭がくらくらする。割られた額から血が流れ出て、目に入る。視界が真っ赤になる。内臓が傷ついて、腹の奥底から酸っぱい胃液の味と同時に鉄錆の味が喉元へと広がってくる。それを無理矢理に飲み下し。メルヒオールはニヤリと笑った。彼はトリック&スピードスター。全身を血に塗れさせようとも、それでもメルヒオールは止まらない!
ショットガン「ブリッツシュラーク」の銃口を「大空を覆うもの」の表皮ギリギリに突きつけて、
引き金にかけた指に力を籠める。弾丸が発射されて弾け飛ぶ瞬間に、ユーベルコード【
捻じれ曲がれの狙撃手】を発動させる――
「……銃弾がなァ、まっすぐ飛ぶと思ったら、大間違いやで?」
それは自身が発射した銃弾の軌道を、速度を落とすことなく102回ぶん曲げることができる能力。散弾とは、発射されれば薬莢に込められた多数の細かい鉛の弾丸が銃口から散らばって出るように作られた銃弾。 銃口から吐き出されていく散弾の全てが、勢いを落とすことのないまま曲がる、曲がる、曲がる曲がる曲がる曲がる曲がる――至近距離で撃たれた銃弾の勢いが落ちないということは、そのままの威力を保ったままということ。赤い霧の翼の力によって物理的に大気を破壊できるようになった散弾の前に、「大空を覆うもの」は巨大な獲物同然。その全身をずたずたに引き裂かれて、軋んだ声が苦悶の声のように上がった。
「あー楽しっ!けど待って、肩痛いわコレ。飛ぶのバリしんど。えー、魔法力で浮くとかなら楽やったかもなぁ、はぁ……」
メルヒオールは肩をおじいちゃんにしながら撤退していったが、一つここで彼の勘違いについて指摘しておきたい。彼の背に生えているのは赤い「霧の」翼だ。物理的な翼ではない。故に肩に負担がかかることはない筈であり、これが魔法力的なモノでなくて何であろうかと思う。肩がおじいちゃんになっているのも多分翼の力を使い続けた代償なのであろうが、そういうことはメルヒオールは気づかないまま撤退していったのであった――。
大成功
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ミュー・ティフィア
アドリブ歓迎
赤い霧の翼……貴女は誰なんですか?!ううん、訊いてる場合じゃない。時間がないから急がなきゃ。
精霊転身・光の歌姫は真の姿になった直後に発動済み。
スピリトーゾで空中を舞って戦闘知識と第六感を頼りに帝竜や彼が召喚するドラゴンの動きを推測。
理想は帝竜がユーベルコードを使う前に素早くこちらのユーベルコードで仕留めること。
それが叶いそうになければ守護結界や空中機動でドラゴンを躱しながら帝竜に目標を定めます!
精霊達、力を貸して!
狙いはただ一点、帝竜本体!そこに万象を形作る八百万の精霊達の光の魔力を全て全力でぶつけ、帝竜を浄化して破壊します!
のんびりしてちゃ駄目!すぐに離脱しなきゃ!
●
“――私は、もう待ちません。必ず会いに行きますから、今はこれで持ちこたえて……!”
その声を聞き届けたミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)の姿が変わってゆく。白と水色の和装めいたドレスに纏う羽衣のごとき織衣。その装束に負けぬほど、露出した肩は絹のように細やかで乳のように白い。そして、その背には赤い霧の翼が生えていた。
「貴女は……貴女は誰なんですか?!」
少女の声に思わず問うミュー。しかし、それに応じる声はなく、ミューもすぐに頭を振る。
「……ううん、訊いてる場合じゃない、この力、長くは使い続けられない!時間がないから、急がなきゃ!」
真の姿を晒した直後に、ミューのユーベルコード【
精霊転身・光の歌姫】は発動している。太陽に照らされた空中庭園には生憎月は出ていない、ゆえに制限時間は125秒しかない。赤い霧の翼に重ねるように「光翼・スピリトーゾ」を展開し、ミューは空中を舞う。
ミューを自身を害する敵と認めた帝竜「大空を覆うもの」が台風の様な唸り声をあげた。自身の肉体を構成する雲海を自ら削りながら、燃えさかりすべてを焼き尽くす炎の災害を具現化したドラゴンを作り出していく。
(……行動が早い……!理想は、帝竜がユーベルコードを使う前に素早くこちらのユーベルコードで仕留める事だったけれど……!)
歯を食いしばり、ミューは炎災の竜、炎のドラゴンの動きをこれまで培ってきた戦闘での知識と第六感をもとにして瞬時に計算し、ドラゴンが吐き出す炎のブレスを軌道を読み切って空中機動力を活かして避ける。
(いまので二十秒!あと百秒とちょっと……早く、ケリをつけないと……!)
守護の結界を幾重にも張り巡らせ、ドラゴンを作り出した代償に先ほどの半分ほどに縮んだ帝竜「大空を覆うもの」へと急速接近していくミュー。炎のドラゴンに構っている余裕は時間的にも体力的にもない。故に狙うはただ一点、帝竜「大空を覆うもの」本体。
「精霊たち、力を貸して!!――“我が身に命を吹き込みし大いなる御霊達よ!八百万の光宿せし我との絆を以て、此処に、具現せよ……!”」
万象を形作る八百万の精霊たち。彼らの力の集合体である光の魔力をすべてぶつけ、帝竜「大空を覆うもの」の浄化と破壊を試みるミュー。
嵐とラジオノイズをでたらめに混ぜ合わせたかのような騒音が帝竜「大空を覆うもの」から苦悶の声として上がる。しかし、まだ、まだだ。帝竜たる「大空を覆うもの」のその力は大きく削がれた、けれど完全な消滅にはまだ至っていない――
「のんびりしてちゃ駄目、もう一撃っ……んうっ!?」
叫ぼうとした喉の奥から鉄錆の味がする。赤い霧の翼による肉体のブーストの代償がやってきたのだ。視界がちかちかと明滅し、末端の神経が切れる音が頭の中で聞こえてくる。これではとても第二撃を叩き込むことは不可能、発射できたとしても命中をつけられないと判断し、ミューは撤退を決断した。
(――すぐに、離脱しなきゃ!)
そうしてミューは迅速に、戦場から離脱していったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サリー・オーガスティン
※真の姿補足
宇宙バイクのカウルをモーフィングさせて甲冑化、のイメージです
■POW
少女の声を聴いて
「風が吹いた、生きようとしなければ!(Le vent se lève, il faut tenter de vivre!)」
というフレーズを思わずつぶやいてしまう。
「……はて?この言葉は一体??記憶が混乱してきたか、な?」
(赤い翼を見て)
「なるほど。バイクに羽根のエンブレムはつきもの!……お借りしますね、まだ見ぬ異世界の女神様!……間違えてたらごめんなさい」
■戦闘
ジェイクと共に【UC】で対抗しよう
「風には、風さ!風に対抗し使いこなせないライダーなんて、脆くてどうしょうもないからね」
[操縦、追跡、騎乗、対空戦闘]で雷撃を避ける!([迷彩、オーラ防御]も保険で使う)
[武器改造]でアームドフォートからチャフをばらまいて雷撃を分散させてからの、全ての戦闘技能のせて銃の一撃!
「嵐には逆らえない?ボクこそが、その嵐だよ!」
※連携・アドリブ共歓迎
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“――私は、もう待ちません。必ず会いに行きますから、今はこれで持ちこたえて……!”
サリー・オーガスティン(鉄馬の半身・f02199)の脳内に、少女の声が響き渡る。それを聞いて、サリーの唇は知らず言葉を紡いでいた。
「
Le vent se lève, il faut tenter de vivre!」
それはサリーにさえも意図しない言葉であった。自身が紡いだ言葉を聞いて、はて、と首をかしげる。
「……この言葉は一体?? 記憶が混乱してきた……か、な?」
そう言い終えた時には、サリーの姿は既に変貌を追えていた。彼の相棒たる宇宙バイクであるジェイクのカウルがサリーの全身を甲冑のように覆っている。そしてその背中からは、赤い霧の翼が生えていた。それを認めて、サリーはぱっとヘルメットの下で顔をほころばせる。
「なるほど!バイクに羽根のエンブレムはつきもの!……お借りしますね、まだ見ぬ異世界の女神様!……あー、間違えてたらごめんなさい!」
暫定女神様に礼を述べると、サリーは新たに生えた赤い翼を羽ばたかせ、空中庭園のはるか上空へと跳躍した。
眼下に見える帝竜「大空を覆うもの」は他の猟兵たちとの交戦の結果か、かなりその規模を小さくしている。そして今、サリーの姿を認めた「大空を覆うもの」は台風の様な唸り声をあげると、サリーを「自身を害する敵」と認識したのだろう、その姿を変貌させてゆく。
――それは、稲妻の渦巻く漆黒の雲。雷鳴がごろごろと鳴り、その身のあちこちで放電している。その姿を見たサリーは悟る。今の姿の「大空を覆うもの」には物理攻撃は通用しないと。
「ならば――風には、風さ!風に対抗し使いこなせないライダーなんて、脆くてどうしょうもないからね!」
相棒たるジェイクを身に纏い、ユーベルコード【
Super Sonic】でもって「大空を覆うもの」へとむかって衝撃波を放つサリー。
「さあ、空をも斬り裂こう!この、速さで!」
自身の体に迷彩を纏い、オーラによる防護膜を張ると、自身と一体化したジェイクを操縦しながら放電する雷を避け、赤い翼で空を駆けるサリー。相棒ジェイクに包まれている今、彼らはまさに人機一体となり、衝撃波を発しながら空中を疾走した。甲冑に固定された固定砲台アームドフォートを即興で改造し、銀色に光るチャフをバラまいて雷撃を分散させ、衝撃波を直撃させて竜巻に包めば黒雲と化した「大空を覆うもの」から雷雲が離れる。狙うはその一点。銃を構えたサリーはしかし、今の「大空を覆うもの」に物理攻撃が聞かないことを思い出し、新たに極大の衝撃波を放つ!
「――嵐には逆らえない? ボクこそが、その嵐だよ!」
衝撃波によって黒雲はずたずたに引き裂かれ、竜巻によって千々に乱され、ブルーアルカディアの大気そのものであった「大空を覆うもの」の顕現はほどけるように消えてゆく。
サリーは翼の力の限界を感じて即座に撤退する。しかし彼は、確実な勝利を確信していた。
そしてまごうごとなく、猟兵たちは「絶対に倒せない」とされた帝竜「大空を覆うもの」を霧散させることに成功したのである――!
大成功
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