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星海に散る

#スペースシップワールド




 薄暗く狭い室内を、時折飛び散る火花が照らす。
 酷く荒れたその室内に拵えられた意匠を見るに、ここは宇宙船の内部か何処かだろうか。

「何だよ……オレが一体何したって言うんだよっ……!」

 自身の身に降りかかった災難に耐え兼ねたのか、ぎょろぎょろとした目つきの男が半狂乱になりながら、か細く甲高い声を漏らした。
 もう限界だ、といった様子で、男は宇宙船の一室から廊下へと飛び出す。彼は逃げ道を探すようにして辺りを見回し──その視界の端に黒光りする二足歩行戦車の姿を認め、慌てて元いた部屋へと舞い戻った。

 男は部屋の片隅へと視線を向ける。己が何とかここへと持ち込んだ携帯宇宙食の、その残骸が散らばる一角を眺め、彼の心はささくれ立った。
 ……食料が尽きたのは、何日前だっただろうか。
 己が搭乗していた回収船が何者かに撃墜され、命からがら何とか辿り着いたこの廃戦艦の中に閉じ込められてから、一体何日が経過したのだろうか。
 日数を数えるために壁に傷を刻むことを止めたのは──生きる希望を捨ててしまったのは、一体どれ程前のことだっただろうか。

「ああ、でも……やっぱり、死にたくねえなあ……」

 皺くちゃの顔に絶望に満ちた表情を浮かべつつ、男は小さく呟いた。



『回収船ゲマインシャフト号、R-6帯にて墜つ』
『帝国軍の関与か?  墜落原因の謎、深まる』

 ……そんな見出しが踊るニュース記事を板状のホログラムに載せて空中に表示させつつ、マスクをした少女が説明を始めた。
「スペースシップワールドによく行く人はもしかしたらニュースとか見て知ってるかもだけど、この前小型回収船の墜落事件があってさ」
 滔々と語る彼女の名前は、一郷・亞衿(奇譚綴り・f00351)。人間の探索者にしてグリモア猟兵だ。

「“R-6”って呼ばれてるアステロイド帯に、昔起こった戦争の時に墜落してそのまま放棄されたっていう戦艦の残骸があるらしいんだけどね? そこから色々なものを回収する任に就いてた宇宙船が、この前墜落しちゃったみたいでさ」
 ニュース記事の表示を拡大したりしつつ、彼女は続ける。
「戦艦の中には旧時代に作られたコアマシンがあるらしいって話だったから、もしかしたら銀河帝国軍が墜落の原因に絡んでるかも知れない、って、大騒ぎになってるっぽいよ」
 あそこの世界もいろいろ大変そうだよね、と、彼女はぼやくようにして呟く。

 宇宙船の動力機械であるコアマシンは、スペースシップワールド内ではとても貴重なものとして扱われている。その原理が失われてしまっているため、量産が困難であるからだ。
 それで無くとも、すべての居住可能惑星が破壊されてしまっているスペースシップワールドにおいては、他の世界よりも各種資源の重要性が比較的高い。廃戦艦に残された各種資源やその他諸々の機材等についても、回収しないまま放っておく訳にはいかないのだろう──そんなことを余談として話しつつ、彼女は猟兵たちの方へと向き直った。

「で、ここからがあたしたち猟兵にとっての本題。“銀河帝国軍が絡んでるかも”、じゃなくて、“絡んでた”んだよね……予知、見ちゃってさ」

 亞衿はタブレットデバイスを取り出すと、それをすいすいと操作し始めた──と、空中に投影されていたホログラムはその姿を変え、次々と別の形状をしたものへと切り替わっていく。
 程なくして、薄くなりかけている頭とギョロっとした目、歯並びの悪い口元に顔中皺だらけ、といった特徴的な容姿をしている男の立体ホログラムが、空中に出現した。

「あたしが予知で見た人……スティーブンスさん、って名前らしいんだけどね。この人、件の回収船に技師として乗ってたみたいでさ」
 うー、と軽く唸るようにしつつ、彼女は続ける。
「ほら、こう、一度見たら忘れらんない顔してるしさあ……何か気になっちゃって。ま、予知見ちゃった以上はどのみち放っとく訳にもいかないんだけどね」

 彼女は個性的な顔立ちをした男のホログラムを消し、今度は激しく損壊して真っ二つにへし折れたかのような形になってしまっている戦艦らしきもののホログラム映像を出現させた。話の筋からすると、これが先の話に出た廃戦艦なのだろう。
「予知で見た光景の途中で、銀河帝国軍の自立歩行戦車っぽいのが見えたんだよね。だから、オブリビオンが回収船の墜落に関与してることについては間違いないと思う。多分だけど、奴らもあそこにコアマシンの回収をしに行ってたのかな? それで、近くを通りかかった回収船を撃墜した──みたいな。推測だけどね」

 このまま放っておけば、銀河帝国軍にコアマシンが奪われ、戦力を増強されてしまう。
 手遅れになる前に廃棄戦艦へと乗り込み、現在その場所を制圧しているらしき帝国軍の兵器を殲滅し、コアマシンを回収してきて貰いたい──亞衿の話を要約すると、概ねそのような依頼内容であるらしい。

「一応、コアマシンの回収が最大目標ではあるけど……出来るだけ戦艦内にある資源を回収してきて欲しくもあってさ。物的資源と情報資源、両方ともね」
 かつて存在した帝国の兵器等についての情報が解れば、今後オブリビオンと化した銀河帝国軍と戦う際に対策を取ることが出来るかも知れない。猟兵たちにとっても、それは悪い話ではないだろう。



 大体の説明を終えると、亞衿はタブレットデバイスを仕舞いこみつつ、そのマスクの下で神妙な面持ちを浮かべた。
 彼女は軽くかぶりを振るようにした後、最後にひとつだけ、と、小さく呟くように言葉を発する。何処を見ているのかいまひとつ判然としないその眼差しには、何か遠い所を見つめているかのような印象が滲んでいた。

「……スティーブンスさんが無事だったら、助けてあげて。予知で見た限りではまだ生きてるみたいだったし、技師の人だからコアマシンが何処にあるかとか、その扱い方とか運び方とかについて知ってると思うしさ。それに……死なれたりしたら、寝覚めが悪いからね」
 あたしからのお願い、と付け加えてから、彼女は姿勢を正してしっかりと猟兵たちの方へと向き直る。

「それじゃみんな、『長寿と繁栄を』。あたしは現地に送ることしか出来ないからさ、みんなの健闘──と、無事を祈らせて貰うよ」

 広げた指で何かサインらしきものを形作りつつ、彼女はひらひらと手のひらを振った。


生倉かたな
 初めましての方は初めまして。生倉かたなと申します。
 SF映画、お好きですか? 私は好きです。果てしなく広がる大宇宙を舞台にした冒険活劇もいいものですけど、宇宙船を舞台にした閉塞感のある作品とかもいいですよね……。
 ……という訳で、廃戦艦を舞台としたシナリオを作成させて頂きました。探索→救出→戦闘という章立てのシナリオとなっておりますので、ご興味がございましたら是非よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『廃棄された墜落戦艦』

POW   :    戦艦のパーツやスパコンなどの重量物を運び出す。

SPD   :    資源物資を取捨選択し、有用な物資を数多く運び出す。

WIZ   :    記録を見つけ、戦艦がどんな敵と戦ったかの情報を得る。

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 アステロイド帯、“R-6”。
 かつての戦争で破壊された惑星の残骸が漂うその地帯には、銀河帝国軍と解放軍が苛烈に火花を散らしていたその当時の残滓が、今もなお数多く残されている。
 戦艦の墓場、といった様相を呈しているこの場所の片隅に、その廃戦艦は儚く佇むようにして存在していた。

 今となってはその名の記録すらも失われてしまった、まるで真っ二つにへし折れたかのように激しく損壊した旧き戦艦。
 そのすぐ付近、周囲に散らばるデブリにより光学的にも電波的にも身を隠しやすくなっている地点に自身たちが搭乗していた小型の宇宙艇を隠した後、猟兵たちは廃棄された戦艦がある方へ向かい、闇の中を静かに遊泳する──

 ──程無く後。
 船首付近に空いた、実弾兵器の直撃を受けた跡らしき大きな穴の縁へと降り立った猟兵達は、辺りの様子を観察する。

 激しく損壊してはいるものの、壁面から剥き出しになった何かのコードらしきものが時折火花を散らす様子、そして人工的に発生した擬似重力が自身たちをこの場へと留めているさまを見るに、この場所にはまだ電気が通っているようだ──そしてそれは、宇宙船の航行に必要な各種エネルギーを生成する動力機械であるコアマシンが、まだこの廃戦艦から取り外され持ち去られてはいないということを意味している。

 戦艦内部の機密性がどうなっているのかについては解らないが、猟兵たちをこの場へと送り込んだグリモア猟兵の少女──亞衿が予知した光景には、少なくともこの廃戦艦の内部で人が数日生存していたらしき様子が見受けられたらしい。ならば、船内にはある程度の空気が存在するのだろう。
 周囲の酸素濃度について気を配る必要はあるかも知れないが、ひとまずこの先に進むにおいて過度に心配しなければならないようなことは無いかも知れない──ただし、オブリビオンと化して蘇った銀河帝国軍がこの廃戦艦内の何処かに存在しているであろうことについては、常に注意しておかねばならないが。

 戦艦内部の壁面に備え付けられた制御端末を操作し、幾枚かの隔壁を段階的に開閉することにより擬似的なエアロックのようなものとして作動させたりしつつ、猟兵たちは廃戦艦の中へと歩を進める。

ユリ・アップルヤード
「イエス!レッツジャンク漁り!!そっちの得にならなさそうな機械の残骸とか機能停止してるロボットはもらってっていいよね!?」

機械巨人リアンを召喚して、重そうなものは運んでもらうよ。
私とリアンは仕事するしかないから、その間に足元にあるような細かいジャンクはお掃除ロボットクリーングリーンに回収してもらおう。
とはいえ、何が起こるかわからないからね。
クリーングリーンには索敵機能もつけてあるから、偵察ロボットのコロマルと一緒に、一応私の周りに気を付けてもらおう。
もしかしたら、何か反応があるかもしれないし。
コアマシンはあるってことは動力は生きてるわけだし、開かない扉とかも直せば反応するかな。試してみよう。


ハンニバル・エルバッキー
ほほーん、資源回収は得意分野なんぬ(特別そういう技能ないけど)
要るもの要らんもの取り分けて運べるだけ運んどくとしましょかぬ。
(ついでになんかめっけもんあったら勝手に貰っちゃいますかぬー。ぬっぬっぬっ)
宇宙船の広さによるけれど、ここは【ゴッドスピードライド】で加速した方がよりスムーズに物資を運べるかぬう。
情報については得意な人に任せて、お仕事にかかりますかぬっと。


伊美砂・アクアノート
あらあら、まあまあ。これが「SF」ってヤツなのね!ステキ! …こほん、ともあれ。先ずは下準備だ。【SPD】で、こっそり潜入、周囲を索敵警戒。金目のモノ…もとい、資源物資をパチって持っていくぞ。…別に疚しいコトをしてるワケではないのだけれど、妙な罪悪感が無くもないな。火事場泥棒の気分だ…。 ま、今回のオレは遊撃要員っつーか、ヘルプだからな。宇宙とか機械だとかは、詳しいヒトたちに任せたいですの。その代わり、私は2本の足と2本の腕で、単純明快に動かさせて貰いますのよ。無重力空間だろうと、気合と根性さえあれば何とかなるじゃろ…。さあ、次行きましょ次ー。金になりそうなモノは優先的に運びやしょうぜ。



「イエス! レッツジャンク漁り!!」
 満面喜色の笑みを浮かべ、ユリ・アップルヤード(パーツ屋「アップルガレージ」・f00153)が辺りの様子を見回す。
 かつては多数の小型戦闘機が立ち並ぶようにしていたであろうと推測される、無機質かつ剛健な造りをしたハンガー・ベイの中を行ったり来たりしながら、彼女は周囲に転がる機械や小型のタレット、片腕を外され配線が剥き出しになっている自立戦闘用ロボット等の姿を眺め、その赤い瞳を輝かせた。
「あっ! そっちの得にならなさそうな機械の残骸とか、機能停止してるロボットとかはもらってっていいよね!?」

 ユリは先程から行動を共にしていた二人の猟兵──黒い毛並みに金の瞳を持つケットシーのハンニバル・エルバッキー(キャプテン・ユニバース・f02423)と、白い髪を二つのシニョンに纏め少しあどけない顔立ちをした女猟兵の伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)の方へと向き直ると、一応、といった様子で確認を取る。

「いや、ぬに訊かれても困るんぬ……アンタ、本来の仕事忘れてないかぬ?」
 やれやれ、といった様子で、ハンニバルがユリへと言葉を返した。
「いやいやいや、大丈夫だよ。大きい機械とかはさっき召喚したリアンに運んで貰ってるし、細かいジャンクはクリーングリーンに回収して貰ってるからねぇ。だからさ、ね? こっちのは持って帰ってもいいよね!?」

 ユリの背後で、一人乗りの攻撃艇をむんず、と掴む、背丈3mを越そうかという蒸気駆動式の機械巨人──彼女が言うところの“リアン”と、その付近をちょろちょろと動き回る元帝国製らしき掃除ロボット“クリーングリーン”の姿を眺め、伊美砂が呟くように言葉を紡いだ。
「まあ、この周りには帝国軍の方々らしき敵影は見当らなかったし、別にいいんですけれど……」
 彼女はそう言いつつ、同行している二人の姿を密かに見定めるようにする。
 見るからに機械の類に詳しそうなユリと、普段は宇宙船で暮らしているというハンニバル。機械や宇宙には馴染みのない自分にとっては、心強い味方であるには違いないのだが──そんなことを考えていた彼女だったが、突然彼女はすっ、と二人へ向けていた視線を逸らすようにしたかと思うと、先程までの話の流れをかなぐり捨てるかのようにしてすたすたと部屋の片隅へと向かって歩き出していってしまった。

 そんな伊美砂の様子を見、再び肩を竦めるようにしたハンニバルだったが──伊美砂がある程度離れていったのを見るや否や、彼はユリの傍へと少しこそこそとしたような足取りで近付いていく。
「まあ、アンタの好きにするといいんぬ。もしちょっぴりレアめなのをかっぱらったりしてたとしても、ぬは告げ口とかはしないでおくんぬ……その代わり、ぬにもいい目を見せて貰えないかぬ?」
「と、仰いますと?」

 畏まるように姿勢を正すと、ハンニバルの口元へとユリが頭を寄せる。それに応じるかのようにして、ぬっぬっぬ、と笑うような声を漏らしつつ、その口元に何か企んでいるかのような味わいのある笑みを浮かべながら、ハンニバルはユリに耳打ちした。
「……ぶっちゃけた話、なんかめっけもんがあったらぬにも回して欲しいんぬ」
「オッケー。さすがキャップさん、話が分かるぅ! よーしよしよし、よーし」
 猫をあやすようにしてハンニバルの黒い毛並みを撫でるユリであったが、それに対しては大分鬱陶しげにしてハンニバルは身を捩らせる。
「ぬぁああ! ぬのセクシーボディに油がつくからやめるんぬ! それはそうと早速相談なんぬが──」

「……もしもし、そこのお二人」
 突然声を掛けられ、びくっ、と反応する二人。ぎぎぎ、と音を立てるようにして振り返ると、そこには伊美砂が立っていた。
「ぬぁっ!?」
「い、いや、これは違くて──」
 弁明を始めようとする二人の様子に、伊美砂はふぅ、と軽く息を吐くようにし──突如彼女はその背を勢い良く曲げ、屈んでいた二人を至近で覗き込むような態勢をとり、そして凶暴な笑みを浮かべた。

「──何か楽しそうな話してンじゃねぇか? オレも混ぜてくれよ?」

 鮫のように笑いながらそう言うと、急にその姿勢と表情を何処か老成した雰囲気を漂わせるものへと変化させた彼女は、しかし何事も起こっていないかのような調子で普通に話を続ける。
「細々とした金目のもののひとつやふたつくらいなら、勝手に貰ってしまっても構わぬやも知れん。然乍(だが)、火事場泥棒ではないんじゃぞ? 本来の目的、資源回収作業が疎かになってしまってはいかんじゃろ」
 かぶりを振るようにした後、今度は目元に手を添え、いつの間にか掛けていたらしき伊達メガネをくぃっ、とあげるようにする伊美砂。
「……ここの周辺には何者もいない──我々以外は、だが。『観測されないものは存在しない』とはよく言ったものの、今この場、この密閉された空間において猫の姿をしたキミが存在していることをこの己が身で視認している以上は、存在しないことにしてしまう訳にはいかないな……」
 彼女はその表情、そして立ち振る舞いをくるくると変えつつ、捲し立てるように弁舌を振るう──

 ──伊美砂・アクアノートは、多重人格者だ。
 ひとつの肉体に複数の人格を有するという一種の超人類である彼女は、その所持している全ての人格の主張が激しいためか、このようにして口調が激しく変動する。
 共に行動し始めた直後から時折こんな風にして別人のように──というより、実際に別の人格ではあるのだが──口調をころころと変えていた彼女のことには半ば慣れかけてはいたものの、疚しい話し合いの最中だったため変に気を張ってしまっていた二人はまるで硬直してしまったかのように体を強張らせ続ける。

「……こほん。要するに、猟兵としての本分を果たしましょう、といったところかしら。手早く済ませてしまいましょう?」
 しばし後、咳ばらいをすると同時にその口調を基底人格のものへと戻した伊美砂の様子を見、ユリとハンニバルはようやく解放された、とばかりに安堵の息を同時に漏らした。



 それから更にしばらく後。

「ハンニバル君。この荷物なんだが、先程までと同じく……こほん、あの小型艇に載せておけばいいのかしら?」
「万事オッケーなんぬ。ぬのご自慢のクルーザーなら、小型強襲艇の一台や二台程度は楽勝で引っ張れるんぬ。まあ単に引っ張るんじゃなくてユーベルコードを使わせて貰うんぬけども」
「二人ともー! ちょっとこっち来て手伝ってよー! 多分これでハッチが直ったと思うんだけど、試しに誰かスイッチ押してみてー!」

 細々とした資源や部品等をせっせかと運び、エンジンを抜かれた状態でここに放棄されていた小型強襲艇へとそれらを積み込んだ後、猟兵たちは修理により開閉が可能となったハンガー・ベイのハッチを開ける。
 そして、オープンカー型のスペースクルーザーと、それにより牽引出来るようにするために無理くり連結された二台の強襲艇は、先程猟兵たちが小型宇宙艇を隠したデブリ地帯の方へと向かって静かに飛び立っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鈴鳴・藜
さてと。どれを運び出せばいいんだか。
見てたら必要そうなもんばかりに思えてくるぜ…。
とりあえずここらのパーツやスパコン運べばいいのかねぇ…。

一緒向かった仲間には重そうなもんがあれば遠慮なく言ってくれよ、と一声かけておこう
時間も有限ではねぇが雑に扱えば壊れるかもしれねぇし運ぶときは最低限注意しておくぞ

スティーブンス、だったか。できれば助け出したいが…。
なにか手掛かりみたいなものを作業中に見つけたら持って行けそうであれば拾っておくか。


レッグ・ワート
【POW】真っ二つ艦の艦橋側に人命と資材探しに行くぜ。艦橋までのざっくり地図作り。状態がマシな部品やら機材、真新しい痕跡があれば、落ち着いてる時にその位置や特徴も書いとくよ。先に帝国っぽい目印や準備があった場合はこっそり除いたり潰しようぜ。後はマップを亞衿か他のメンバーに渡して伝達頼んで、俺自身は「怪力」や鉄骨てこにしたりして、重いのから慎重に運んでいくさ。

もし他に物音がした時は、道中の部屋とかまで引き返して隠れ「迷彩」でやり過ごす。遮蔽物があるなら更に良し。何か話してたら覚えておきたいトコだよな。目立ちたかないけど、敵に見つかったら鉄骨でぶん殴るよ。普通に猟兵だったら、まあ進捗情報交換かな。



「荒れ放題だな、これは」
「だな……まあ、一目見て必要そうなモンがねぇってのが判る分、ある意味ありがたいが……」
 機械然とした外見を持つウォーマシンのレッグ・ワート(其は脚・f02517)、通称レグの呟きに、剣豪といった風体をした鈴鳴・藜(宵暁・f00576)が感想を交えて同意する。

 レグの提案により、彼らはこの廃戦艦の艦橋にあたる場所へと向かっていた。
 だが当然と言うべきか、この半分に折れかかるようにして壊れている艦の司令塔であったその場所の近辺は、他の場所とは比べ物にならない程に損傷の程度が酷い。
 壁面が破壊され部屋と廊下の境界が曖昧になっている箇所も多く、酷い所では壁に空いた穴の向こうにぽっかりと闇が広がっていたりすらしていた。力自慢かつ厳しい環境に耐えうる装備を持っていた二人で無ければ、ここまで進んでくることすらままならなかったかも知れない。

 とは言え、この惨状である。瓦礫で通路が埋まっている光景を眺め、二人の猟兵はうんざりとしたような態度を見せる。このような光景を見たのは何度目だっただろうか。
「……どっかの通路に空いてる大穴辺りから外に出て、甲板経由で向かった方が早いんじゃねぇか?」
「同感だ。少し戻った辺りにメンテナンスハッチがあったはずだから、そこから外へ出るとするか」
 艦橋までの地図を道すがらに作成していたレグがその場所を示し、藜はそれに再び同意してみせた。



 船外作業用の装備を整え、二人の猟兵は廃戦艦の外へと繰り出す。船内よりも少しだけ重力の効きが弱い甲板に降り立ち、藜は辺りを見回した。

「こっちはこっちで酷ぇな……」
 無数の瓦礫が甲板に突き刺さるようにして立ち並んでいる光景が広がっているのを眺め、今度は藜が呟くようにする。
 敵と遭遇した際には身を隠しやすいという点については便利かも知れないが、進むのには邪魔だ。最悪乗り越えていけばいい分、普通に通路を進むよりはまだマシかも知れないが──

「にしても、何が様子が変じゃねぇか? まるで甲板に吸い寄せられたみたいに見えるぜ……」
「みたい、じゃなく、恐らくは実際に吸い寄せられたのさ。旧時代の戦艦らしいからな……大方、重力発生機が故障した際のバグで過重力が発生したりしたんだろうよ」
 かつて帝国軍の戦闘機械であった経験に依るものなのかどうかは解らないが、この手の現象に見覚えがあったレグがそう解説する。
「詳しいな、アンタ。その手の知識はあんまり持ってねぇから助かる──あ? 何だあれ?」

 視界の端に映った、この古びた廃戦艦の中にあるものにしては比較的新しいもののようにも見える“それ”の傍へと、藜はゆっくり進んでいく。
「……何だこりゃ。ジェットパックか何かみてぇに見えるが……何でこんな所に?」
 半ば瓦礫に埋もれていた“それ”──帝国製のものではない、先程自身たちが小型艇からこの廃戦艦へと乗り込む際に使用したものと良く似た形状をしたジェットパックを、藜は軽く掲げて見せた。
「いや、待て。底部に何か書いてある……ははあ、なるほどな。どうやらそのジェットパック、件の要救助対象が使っていたものらしいぜ」

 レグが示したその部分には、『備品・ゲマインシャフト号/緊急時用』という刻印が為されていた。ゲマインシャフト号とは、レグが言う所の要救助対象──スティーブンスが搭乗していたとされる回収船の名だ。撃墜された回収船から脱出した後、このジェットパックを用いてこの廃戦艦へと辿り着くに至ったのだろう──彼はそう推測し、藜へと説明を続ける。
「見たところ、燃料切れらしい。今となっては無用の長物だし、捨てていこう。邪魔になる」
「いや、ちょっと待ってくれ。何か手掛かりみたいなもんがあるかも知れねぇし、詳しく調べてから──おっ?」
 ジェットパックの側面、小物入れのようになっているその部分が膨らんでいるのに気付いた藜が、中身を確認する。

 そこには、小型の通信端末のようなものが入っていた。背面を見ると、そこには氏名が記されたシールが貼付されている──その氏名は、“ブーチョ・スティーブンス”。どうやらこのジェットパックは、間違いなくスティーブンスが使用していたものらしい。
 藜が試しに通信端末の電源を点けてみると、特に目立った外傷のないその端末は普通に起動した──が、電波環境を示す表示を見た所、この端末は現在何処とも通信出来ない状態になってしまっているらしい。故障だろうか?

「……鈴鳴、隠れろっ!」
 端末の状態を確認していた藜に向け、突然レグが警告の言葉を発した。
 藜は素早く身を隠し、目立たぬよう周囲の瓦礫を利用した迷彩を直前に身に纏ったらしきレグへと視線を飛ばす。

(──敵か?)
(恐らく。やり過ごす方針で行く)

 ハンドサインや視線でそう合図し合い、猟兵たちは息を潜める──程無く後、銀河帝国軍の無人巡回機らしきロボットが二人の傍へと近付いてきた。
 二人には気付く様子も無く、ロボットは規定の動き通りに周囲の様子を確認する。しばらく後、ロボットが船尾の方へと向かって去って行くのを見送り、十分に警戒しながら二人は物陰から姿を現した。

「……あっちの方に帝国軍が居を構えてる、ってことか」
「らしいな……しかし、わざわざこんな場所を警戒していた理由がいまいち解らん。少し、この辺りを探してみようぜ」



 それから少し後。
 甲板の片隅に仕掛けられていた何かの機械らしきものを発見し、藜はレグを呼ぶ。

「何の機械か知ってるか? 帝国軍のやつっぽい雰囲気がしなくもねぇんだが……」
「いや、知らん。別に俺は、帝国軍の兵器に特別詳しいって訳でも無いからな……昔の話はあまり覚えていないんでね」
 ふむ、と腕を組むようにし、レグは辺りの様子を伺うようにすると、再び言葉を紡ぐ。
「これが何なのかは解らんが、とりあえず潰しておこうぜ。敵に察知されたらその時はその時だ」
「なら、任せてくれ。堅いもんを壊すのは結構得意だ……ふっ!」

 彼はそう言うと帯刀していた刀を黒漆の鞘から抜き放ち、仄かに紫色を帯びた刀身による一撃を謎の機械へと叩き付けた。
 鎧砕きの要領で放たれたそれをまともに受け、帝国製らしき機械は激しく損傷したその機体から火花を散らし、虚空へと吹っ飛んでいく。

「お見事。しかし、一体あの機械は何の目的で──」

 レグがそう言いかけた時。
 先程藜が拾い、そして仕舞いこんでいた通信端末が仄かに光り、そして振動した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

麻生・大地
「闇雲に探しても効率が悪いですね。まずはアタリをつけてみましょう」

【情報収集】【メカニック】

多目的ドローンを飛ばし、まずは大雑把な艦内見取り図をデータにして、共有できるようにしましょう。

その過程で、まだ生きている情報端末の探索。

【ハッキング】

使えそうな端末があれば、ハッキングをかけてみましょう。

欲しい情報は、

『艦内の物資集積状況』
『艦内の生体反応』
『艦内の敵性反応の有無』
『艦内の酸素残量含むライフラインの状況』

この辺りでしょうか。

あまり欲張るのもあれですが、
安全確保は大事ですからね。


フラウ・ミスカトーネ
WIZ
貴重な情報資源を逃すわけにはいかないな
密やかに回収しようか

良ければ私が先陣を切ろう
……別に廃戦艦探索にわくわくしているわけじゃあ、ないぞ
こんな戦艦を撃ち落とすだけの脅威、気にならないわけがない
ブラックタールの身体を生かし壁や残骸に身を伸縮させながら先へと進む
部屋の扉を見つけた時は薄く開けて必ず中をのぞいておく
私とて生存者を助けたい気持ちはあるからな
適宜仲間に対して情報共有

情報資源を確保出来た時は電脳ゴーグル起動して自身でも撮影、記録


黒木・摩那
【WIZ】
墜落して細かくなったとはいえ、戦艦は大きいですね。
自分がどこにいるんだか、全然わかりません。

こういう施設はやみくもに歩き回っても疲れるだけ。
重要な施設は広い廊下が通じていて、太い配線が集まるところです。
特に両開きの扉やセンサーがたくさん付いた場所は怪しいですね。
こういうことには勘が効くんです(第六感)。

電気がまだ生きてればいいんですが、
マニュアルみたいな紙書類は、この時代にまだあるのかな?(ごそごそ)。

戦艦を沈めるぐらいですから、よほど強力な敵と遭遇したんでしょうね。

敵と遭遇したら、サイキックブラストで一撃して逃げます。


ロクガツ・クロッカス
【SPDを使用】

スティーブンスさんのことは気になるけど……、まずはとにかく物資だよね! コアマシンなんか帝国に取られたらシャレにならないよ!

小さいけど重要度の高いエネルギーコアとか、そんな感じのを優先して運び出すよ。
移動には【空間凝固装置】(空中に一瞬だけ足場を作って多段ジャンプを可能にする感じの装置)を使って、ショートカットできる部分はガンガンしてこう。
帝国相手に残しといてやるもんなんか無いよ!

輸送中は帝国の自立歩行戦車との戦闘は全力で避ける。
スティーブンスさんの痕跡らしきものを見つけたら他の人と情報共有しときたいな。
私もこの世界で傭兵やってるし、他人事には思えないんだよね……。


アイシア・オブリオン
一応メカニックの端くれだから情報収集といきたいけど……その手の人員は結構いる気がするね。
ここはジョニーの巨体とパワーを活用して、有用かつ重量物な代物を運び出す方向でいこうかな。
幸いにもメカニックだからね、その手の目利きは出来るはず。
よし、それだ。そのスパコンとか性能良さそうだよ。
あとそっちのよく分かんない機械も使えるね、それ。
ジョニー、纏めて運び出しちゃえ!


夜桜・雪風
探索するならステルスしながらでしょうか。
もし内部に監視しているカメラとかあっても、透明姿なら見つけにくいと思うんです。
それに潜入してる感があってワクワクしますし。

【世界知識】で船内構造を考えつつ【情報収集】活動を頑張ります。
コアマシンまでの経路を【第六感】に頼りつつ探しましょう。

ただ、スティーブンスさんの安否確認が最優先でしょうか。
【第六感】で気配を探りたいですね。
船内にいて生きているなら何かしら痕跡を残しているはずです。
スティーブンスさんがどんな状況に置かれているか分からないので、食料と水だけは最低限用意していきましょう。
宇宙食ですけどないよりいいはずです。

探索方針はこんなところでしょうね。


玖篠・迅
【WIZ】俺に資源物資の選別はちょっと難しいから、この戦艦の記録を探してみるかな。紙ならいいんだけど、やっぱでーただよなあ…。

資料室とか生きてる端末。あとスティーブンスの痕跡がないか探しながら館内を移動。
生きてる端末があれば電脳ゴーグルとつないで情報と船の生体情報を探れないか試してみる。
無理なら場所を覚えておいて、他の詳しそうな猟兵に調べてもらうな。


鈴鳴・藜
? さっき拾ったもんが反応してるな。
通信端末って言ってるぐらいだ。
もしかしたらスティーブンスの仲間とか親類からか…?
不用意に出てもいいか少し迷うが…俺の「第六感」とやらを信じてみるか。

仲間が傍にいるなら念のため確認をとっておくぜ
敵がウロウロしてるって分かったしな、
周りの警戒もお願いしたいところだ。

反応が途絶える前に操作してみるか
通信だったら相手の名前とかスティーブンスとの関係も聞ければいいが。
動画や写真の類であればしっかりと詳細を焼きつけておこう。

それが良いものであれ悪いものであれ。
一字一句、見たものを忘れないように。



「墜落して細かくなったとはいえ、やはり戦艦は大きいですね……」
 廃戦艦内の比較的広い廊下を進む、四人の猟兵。
 そのうちの一人、黒髪を揺らして周りの様子を見回しすようにしていた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)、軽く息を吐くようにしながら言葉を紡いだ。
「ええ。闇雲に探しても効率が悪いですし、黒木さんの方針に従って正解だったかも知れませんね」
 それに応じつつ、細目が印象的な男猟兵の麻生・大地(スチームハート・f05083)は、自身たちが居る通路から枝葉のようにして伸びる小道の先へと多目的ドローンを飛ばす。

「今の所、さっきの監視カメラがあった辺り以外には目立った障害も無いですしね。麻生さんのおかげで事前に気付けて良かったです」
 話し合う二人から少し後ろ、ほんの僅かに遅れるようにして歩を進めていた金髪碧眼の精霊術師、夜桜・雪風(まったりデイズ・f00936)が、ほんの少しだけ疲れたようにしていた顔を明るいものへと変えつつ声を掛ける。
 ここまでの道のりで大雑把な見取り図を作成していた大地の働きもあり、猟兵たちは特に大きな障害に行き当たることも無く進むに至っていた。先に彼女が発言した監視カメラについては、念のため雪風のユーベルコードである『光妖精の悪戯(ステルスマギカ)』を使用し透明になることによって隠れながら先へと進むことに成功した──ただ、自身と【手で触れている】対象“一体”を透明にするというその性質上、同じ通路を行き来しながら数回その術を使用する必要があった雪風は少しだけ疲労してしまっていた。強いて言うなら、被害はそれくらいのものであろう。

 そんなことを話し合っている三人の先、少しだけ先行するようにしていたブラックタールのフラウ・ミスカトーネ(電脳に棲む縞瑪瑙・f08734)が、その黒い身体を軽く伸縮させて道すがらにある部屋の扉の隙間を覗きながら、中性的な口調で呟いた。
「ここにも居ない、か……」
 救出対象のスティーブンス、あるいは他の生存者がもしかすると居るかも知れない、と、フラウはここまで見かけた部屋の全ての中を確認して回っている。ただ、少なくとも一見した限りではそのような人影も無く、部屋の中にも大したものは残されていない様子だった。期待が外れたかな、と思案する彼女に対し、二人の猟兵に追いつくようにして並んだ雪風が言葉をかける。
「……なんだか、少し残念そうな感じですね? 確かにここまで順調そのものですし、潜入してるって感じもあんまりしませんからね……」

 先程透明化した際に少しだけ楽しそうにしていた彼女の方を振り返りつつ、フラウは少しだけ濁すようにして言葉を返した。
「私は……その、何だ。別に廃戦艦探索にわくわくしているわけじゃあ、ないぞ。こんな戦艦を撃ち落とすだけの脅威、気にならないわけがない。ただ、それだけだ」
「確かに、私もそれは気になります。戦艦を沈めるぐらいですから、よほど強力な敵と遭遇したんでしょうね」
 摩那がそれに同意して見せつつ、通路の先へと視線を飛ばす──と、通路の奥に鎮座するようにして一際大きい扉が存在していることに、彼女は気付いた。
「……あそこの両開きの扉、怪しいですね。私、こういうことには勘が効くんです」

 他の三人の猟兵は摩那のそんな言葉に応じ、その扉の付近へと近寄っていく──



 ──所変わって、廃戦艦の一区画。
 かつて小規模ながらも兵器開発層として使用されていたらしきその場所の一角で、二人の女猟兵が資源回収に勤しんでいた。
 
「アイシアさーん。そこのエネルギーコア、運んで貰えるかな? 壊れかけてはいるけど、修理すれば使えるかも知れないからね」
 スペースノイドのロクガツ・クロッカス(光線銃とクロッカス・f06933)がドクロマークの描かれた大きな二足歩行機械へと向かってそう呼びかけると、呼びかけを受けた人物──アイシア・オブリオン(メタライズ・f05786)が、その二足歩行機械の操縦席からひょこっと顔を出した。

「わかった。ロクガツさん、宇宙船の設備に詳しくて助かるよ。ありがとう!」
「いやいや、お互い様だよ。大きいものは私じゃ運べないからね」
 そんなことを話し合いつつ、アイシアとロクガツは重要度が高そうなエネルギーコア等を中心にてきぱきと物資を集めていく。

 アイシアの愛機である“ジョリー・ロジャー”の背に背負わせた運搬用カーゴへ物資を積み込み、そろそろ満杯になろうかという頃、ロジャーの上に乗り辺りを見回すようにしていたアイシアが声を上げた。
「……あれ?あっちの壁の上、何かが動いたような……」
「どうしたの、アイシアさん?」
「さっき近くを通った、階段が崩れて上に登れなくなってた所って覚えてる? あそこの上にある通路の先で、人影っぽいものが動いたような気がして……気のせいかも知れないけどね」

 ここでの作業を概ね終えた後、一応、といった様子で、猟兵たちは壁面へと近付いていく。
 穴の直下にあたる、崩落した金属製の階段がうず高く積まれるようになっていたその場所に立ち、彼女たちは上を見上げた。割と高い位置にある通路口を眺め、どうしたものか、と思案する二人。

「うーん……頑張れば行けなくは無いけど、私の気のせいかも知れないしなあ……」
「私も気になるから、ちょっと見てこようかな? その子の頭の上に乗らせて貰っていいなら、だけどね」
 ロクガツはそう言うと、アイシアの同意を得た後に蓋を閉じたロジャーの頭頂部へと登る。
「何するの? ロジャーでジャンプとかした方がいいかな?」
「大丈夫──というか、逆になるべく動かないで貰った方がありがたいかも。これ、タイミングにコツがいるんだよね……っ!」

 直後、ロクガツは上の方に空いた穴へと向け、強く踏み切るようにしてジャンプした──が、通路口までの距離はかなり足りず、彼女はそのまま落下する……かのように思われた、次の瞬間。
 空中に発生した空気の塊のようなものを踏み台にし、彼女は二度、三度とジャンプを繰り返す。自身の持つ『空間凝固装置』──ユーベルコードの秘蹟を利用した機械を用い、何度目かの跳躍で彼女は通路口へと到達した。
「よいしょっ、と……ちょっと見てくるから、アイシアさんはそこで待っててね!」
 もしかすると、アイシアが見かけたのはスティーブンスの姿だったのかも知れない。普段危険な傭兵稼業を営んでいるロクガツにとって、危険区域での回収作業という過酷な環境で働くスティーブンスのことは他人事のように思えなかった。だからこそ、彼女は斥候を申し出たのだ。
 ロクガツはほんの僅かに期待を込め、十分に注意を払いながら、素早く通路の先の様子を確認しに向かう──

 ──しばし後、ほんの少しだけ気落ちするようにして通路口へと戻ってきたロクガツは、下で不安げに見上げていたアイシアへと向かって呼びかけた。
「他の猟兵の人たちだったよ。少し困ってるみたいだったから手伝ってあげたいんだけど、アイシアさんも上に登って来られるかな?」
「あっ、じゃあ私もそっちに行くね! ……『コール・スペシャルパーツ』! 合体だよ、ロジャー!」

 ロジャーから飛び出したアイシアが高らかにそう宣言すると、彼女の愛機たる“ジョリー・ロジャー”専用武装が次々と彼女の周囲へと召喚された。
 それらは次々と合体していき──数秒後、ジェットパックのような武装が追加されたロジャーに乗り込んだアイシアは、通路口へと向かって十数秒間の飛翔を開始する──



 ──四人居たところに二人合流し、大所帯となった猟兵たちは、電源が切れているらしき両開きの大扉の前にて集合する。
 辺りの様子は薄暗く、この扉の付近の通路には電気が通っていないらしい様子が見受けられた。それ故に、先に到着していた四人は扉の先へと進むことが出来ず困っていたのだ。

「……っと。繋ぎはしたけど……これでいいかな?」
 ロジャーの背に積んでいた壊れかけのエネルギーコアを下ろし、無理やり引き剥がした壁面から伸びるコードにそれを接続した後、アイシアは先程合流した細目の男猟兵──大地の方を向いて確認を取った。
「ええ。端末は恐らくまだ使えるでしょうから……スピード勝負です。黒木さん、お願いします」
「わかりました。少々乱暴な手段ですが、試してみる価値はありそうですからね……!」

 サイキッカーである摩那がそう言い、自らの掌をエネルギーコアへと翳す。直後、彼女の両掌から発生した高圧電流が壊れかけのエネルギーコアを包み込んだ。
 実際の所、これはかなりの賭けではあった──しかし幸いと言うべきか、通電は成し遂げられたらしい。通路の壁面に備え付けられた電灯が弱弱しく明滅し始めたのに合わせるかのようにして、大地は壁面に備え付けられた端末──扉の開閉機能を担うそれに、素早くハッキングを仕掛ける。

「……っ!? 摩那さん、危ないっ!」

 少し離れた場所で様子を伺っていた雪風が、エネルギーコアが煙を吐き出したことに気付いて警告の声を発した。
 摩那のすぐ後ろで控えていたフラウがその身体を伸ばして摩那を引き寄せ──その瞬間、エネルギーコアは小さな爆発を起こし、その動きを停止してしまう。

「大丈夫だったか?」
「え、ええ……ありがとうございます。その……扉の方は?」

 二人が扉の方へと視線を向けると、辛うじて隙間が開いている、という状態になった大扉の姿がそこにはあった。同じくそれを眺めていたロクガツが、残念そうに言う。
「惜しい所だったね……一応、他にもエネルギーコアを持ってはいるけど……」
「いえ、ひとまずはこれで構いません──ですよね、フラウさん?」
 大地はそう言うとフラウの方へと向き直り、お願いします、と軽く頭を下げた。
「任せてくれ。それくらいの隙間があれば、私は入り込めるからな……もし何かあれば、そちらに協力を仰ぐことになるかも知れない。そうなったら、宜しく頼むぞ」
 ロジャーに乗るアイシアへとそう呼びかけ、フラウは両扉の隙間から電気の点いた部屋の中へと忍び込む──



 ──バキバキバキッ!

「う、うおおおおっ!?」

 廃戦艦の一室、会議室らしきその場所にて、大きなディスプレイ端末へ向き合って何か細々とした作業をしていた二人の男猟兵のうちその片方──手毬のヤドリガミである玖篠・迅(白龍爪花・f03758)が、焦ったようにして振り返りながら素っ頓狂な声をあげた。
 もう片方の男猟兵、先程甲板にて通信端末を発見した人物でもある鈴鳴・藜は、突然音を立てて壊れた扉──二人が入ってきた所とは別の扉だ──の方へと向かい、抜刀の構えを取る。

「……ごめんごめん、驚かせちゃったかな?」

 強引に破壊した片扉を投げ捨てるようにした後、ドクロマークの描かれた二足歩行機械の頂点からアイシアがひょこっと顔を覗かせた。
 こじ開けられた入口からぞろぞろと猟兵仲間らしき人影が姿を現したのを見、二人は胸を撫で下ろす。迅は被っていた電脳ゴーグルを外し、入ってきた猟兵の一団の方へと話しかけた。
「あ、ああ……なんだ、あんたらも猟兵か。てっきり敵が襲ってきたもんだとばかり……」
「どうやら他のルートからここへと辿り着いた猟兵の方々のようですが……あなた方は、ここで一体何を?」
 大地がそう問いかけると、そうだ聞いてくれよ、と、迅は軽く伸びをしてから事情の説明を始めた。

「さっき、この──鈴鳴、だったか? こいつが通信端末を拾ったらしいんだよ」
「ああ。最初は故障しているみてぇに見えたんだが、甲板に遠距離通信を邪魔する装置……ジャミングだか何だか、とにかくそれが仕掛けられていたせいで通信が出来ないようになっていたらしくてな。装置をぶっ壊したら、こんなメッセージが送られて来たんだが……」
「俺もこいつも、機械の類にはそんなに強い方じゃなくってさあ。ここに来るまでの間、記録を探しがてら色々調べたりはしてたんだけど……くそ、紙のマニュアルでもついてればな……」

 悔しそうにする迅を少し気遣うようにしつつ、藜はごちゃごちゃとしたケーブルに繋がれた通信端末を軽く掲げるようにして示す。その小さな端末の画面には、こんな文章が表示されていた。

[Stevens: これを拾った、帝国軍の奴ら以外の誰か。メインコンピュータにこれを繋いでくれ]

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『協力員を救出せよ』

POW   :    正面から監禁場所を襲撃する

SPD   :    監禁場所に忍び込む

WIZ   :    場所の情報を得る、見張りを陽動で追い払う

👑11
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 電脳ゴーグルを経由して大きなディスプレイと接続された通信端末が、再び仄かに光る。
 直後、通信端末越しに送信されてきたらしき何処かの部屋の映像が、ディスプレイに大写しになった。

 部屋の片隅で力なく横たわる、薄くなりかけた頭髪を持つ男。
 彼はのろのろとした動きで寝返りを打ち──その視線の先にあったカメラが何処かへ通信をし始めたことに気付いたのか、ギョロっとした目を見開きながらカメラの傍へと駆け寄ってきた。

「な、何だ!? あの端末を誰かが拾ったのか!?」
 皺だらけの顔を画面いっぱいに大写しにし、男はからからになったその歯並びの悪い口を大きく開くようにしながらカメラへと呼びかける──個性的な顔立ちをしたこの男こそ、グリモア猟兵の亞衿が予知で見たという男、スティーブンスだ。

「ああ、クソっ!こんなことなら受信も出来るようにしときゃ良かった──なあ、おい! これを見ている誰か! アンタが何の目的でここに来たのかは知らねぇが、オレの話を聞いてくれ!」
 彼はそう言うと、少し姿勢を正すようにしてカメラの前へと座り直し、静かに話を始めた。

「オレの名前はブーチョ・スティーブンス。しがない回収船の整備技師だ……もしかしたらニュースとかにもなってるかも知れねぇが、オレの乗っていた回収船……ゲマインシャフト号は、帝国軍の奴らのモノらしき敵性宇宙船に撃墜された。生存者は……オレ一人だ。他の奴らは、ギリギリの所で、間に合わなかった……」
 苦しげに顔を歪め、搾り出すかのようにして一滴の涙を落とすと、目元を軽く拭ったスティーブンスは話を続ける。
「この廃戦艦に辿り着けたのは、偶然だ。だから、オレも詳しくは知らないんだが……どうやらここには今、帝国軍の奴らがいるらしい。恐らくはここに残されているコアマシンを回収しに来たって所なんだろうが……」

 彼はそこまで言って、口を噤む。
 少し思い悩むようにした後、突然激昂するかのようにしてカメラの目前へと近付き、彼は大きな声を上げた。

「……正直、今のオレにとっちゃそんなことどうでもいい! 今のオレにとって問題なのは、奴らのせいでオレはこの部屋に釘付けにされて、閉じ込められてるってことだけなんだよ! 一体何日ここに居るのかすらもう判らねえし、そもそもこの通信が誰かに届いてる保証だって──」

 突然びくり、と身を縮こまらせ、彼は部屋の扉の方を恐る恐るといった様子で伺うようにし始める。通信越しには伝わって来なかったが、恐らくは部屋の外を巡回する兵士の足音か何かを聞きつけたのだろう。
 しばらく後、怯えるようにしていた彼はか細く息を吐き出した。落ち着きを取り戻したらしい彼は、再びカメラの方へと向き直った。

「──悪い、この通信を受けているアンタにあたっても仕方ないよな……さっきのは、オレの勝手な事情だ。ただ……ただ、アンタさえ良ければ……」
 彼は少し俯いた後、懇願するような表情をその皺くちゃの顔に浮かべながら、カメラの先に誰かが存在していることを心の底から願いながら、喉の奥から滲み出させるかのようにして言葉を紡いだ。

「……お願いだ、オレを助けてくれ。オレはこの艦の船尾付近、物置に使われてたらしい一室に隠れて、ずっと帝国軍の奴らをやり過ごし続けてきた……が、もう限界だ。もし助けてくれたのなら、絶対に恩は返す。オレは宇宙船技師だ。もしもアンタがコアマシン目当てにここに来たのなら、協力してやれることがあるかも知れない──いや、絶対に協力する! 協力、するから……だから……誰でも良い、オレを助けてくれよ……」

 そこまで言い、項垂れるようにして彼は話すのを止めた。
 カメラの傍から離れていった彼は、部屋の片隅に隠れるようにしながら力無く横たわる──その姿には、絶望の感情が色濃く漂っていた。

玖篠・迅
【WIZ】年齢どうあれ、あんな笑うのもできない状態なら助けるのみだ。
このでかい画面がメインコンピュータだろうし、それなら艦内の見取り図あるはず
「第六感」を信じて「ハッキング」でスティーブンスの映ってるカメラがどこにあるか、大まかな位置でも割り出してみる
…帝国軍がスティーブンスを狙ってるとも思えないし、船尾を巡回してるって事はコアマシンもそのへんのどっかにあるのかな

助けるためには陽動役を頑張るか
スティーブンスの部屋の近くで姿だして、他の猟兵が近づきやすくなるように敵を引っ張ってく
ある程度離したり数が来たら迎撃で

他の猟兵と通信できればいいんだけどなあ
電脳ゴーグルでなんとかできないかいじってみよ



「……年齢どうあれ、あんな笑うのもできない状態なら助けるのみ、だ」

 メインコンピュータと繋がっている大きなディスプレイと向き合い、手毬のヤドリガミである猟兵──迅が、その顔に装着した眼鏡状の電脳ゴーグルを駆使しながら情報を検索する。
 技術支援、兼陽動役として救出班に加わっても良かったのだが、現地では複雑なハッキングを素早く行わなければならない場面に多々出くわすことが想定されたというのもあり、彼は会議室らしきこの一室に残って他の猟兵たちを支援するべく、在りし日の戦艦内の見取り図の検索やスティーブンスが隠れている部屋の場所についての捜索を続けていた。
 幸い、甲板に仕掛けられていた遠距離通信妨害用のジャミング装置も無効化されている。情報が判明し次第、他の猟兵たちと連絡を取り合うことは問題なく行える状態だ。

 部屋の出入口付近に警戒用として飛ばした小型戦闘用機械兵器の様子に時折注意を向けつつ、戦艦内、特に船尾~甲板付近のフロアマップを簡易的に纏めた迅は、それを他の猟兵たちへと送信して共有する。
 続いて、彼はスティーブンスの居場所を探すべく各所の監視カメラにハッキングを仕掛け始めた。

「帝国軍がスティーブンスを狙ってるとも思えないし、船尾を巡回してるって事はコアマシンもそのへんのどっかにあるのかな。ついでに探しておこうか……」
 鋭く勘を働かせつつ、彼は船尾付近の部屋のカメラの映像を次々と切り替えるようにして各部屋の様子を伺い──その途中、彼はとあることに気付く。

「ここ、食料倉庫みたいだけど……」
 監視カメラの映像に目を凝らし、彼は部屋の様子を注意深く観察した。
 倉庫の一角に積まれている、何年前のものかは解らないものの日持ちしそうな備蓄用宇宙食らしきものが入った箱の包装が、乱雑に破かれている──記憶によれば、自身たちをここへと送り込んだグリモア猟兵の少女は予知で見た光景の中で“銀河帝国軍の自立歩行戦車”らしきものの存在が確認出来たと言っていた。だが、銀河帝国軍らしき“人物”についての報告は無かったはずだ。ただ単に予知の光景に映っていなかっただけという可能性はあるものの、仮に生身の帝国軍兵士がこの場所に存在したにせよ元々この廃棄戦艦内に放置されていた食料にわざわざ手を出す必要は無い。
 と、いうことは。恐らく、この備蓄食料を持ち出したのはスティーブンスだろう。もしかすると、この区画の付近に彼が隠れているのかも知れない。

「……適当な所で切り上げて、俺も船尾の方行った方が良さそうかな。とりあえず情報共有、っと」
 彼は電脳ゴーグルから伸びたケーブルの先に繋がった小型の通信端末を手に取り、ぽちぽちと文章を入力し始める──

成功 🔵​🔵​🔴​

レッグ・ワート
【SPD】巡回機の跡辿ったら船尾側の中入れるか?先ずは音や振動で様子見。ザル気味なら即、少なくとも数減った時狙いで潜入するぜ。出くわした連中は鉄骨で殴る。奇襲で応援呼ばれる前に伸したいね。損傷誤魔化せるなら、見張りはカーボン糸で壁に引っ掛けて警備中に見せとくよ。他は適当な部屋に隠す。部屋前や角は要注意で、騒がれるまで隠れながら慎重に。伝令逃がしたらまあ今までと逆で。
帝国連中、運び出しどこまで進めてんのかね。落ち着けたら、鈴鳴が見つけた端末に連絡して進捗聞くか。小声で宜しく。
要救助対象や作戦話が聞けりゃ話は早い。俺も逃がしに行くよ。さて今までで倉庫に繋がってそうな昇降機跡やら広い道あったっけな。





 ──所は変わり、激しく荒れた甲板の上。

「……帝国連中、運び出しどこまで進めてんのかねえ」
 小さくそうぼやくようにしつつ、先程から帝国軍の無人巡回機の様子を伺っていた巨大なウォーマシンの猟兵、通称レグことレッグ・ワートの元に、艦内の情報を調べていた男猟兵からのメッセージが送られてくる。
 先程甲板にて小型の通信端末を発見した際、念のため、と、レグはそれと直接通信を行えるように手筈を整えていた。
 文章媒体ならば、巡回機に通信の声を聞きつけられることも無い──ちなみに完全に余談になるのだが、ここの宇宙では音が聞こえる。解っているとは思うが、念のため。

 レグがメッセージを確認すると、そこには件の要救助対象──スティーブンスが、船尾付近のとある一角に隠れている可能性がある、との旨が記されていた。
 同時に送信されてきた船尾付近の艦内見取り図の、その更に範囲を狭めた一区画の詳細地図を眺め、レグは再び呟くようにして言葉を紡ぐ。
「巡回機の跡辿ったら、船尾側の中入れるか……?」
 彼は物陰に潜みつつ、無人巡回機の様子を注意深く観察する。

「ザル気味、って訳でもねえが……特別警戒されてる、って感じでも無さそうだ。今の所、まだ誰も見つかって無いらしいな」
 ある程度慎重に動く必要はあるかも知れないが、無人巡回機の単純な動きは読みやすい。彼は愛用の鉄骨を片手に、辺りをうろつく巡回機のあとを尾けるようにして、荒れ果てた甲板の上を進んで行く。

「……あそこに居る奴、邪魔だな。適当に潰しておくか──」
 前方で辺りを見回すようにして首を振っている固定砲台めいた警戒機の姿を見やり、レグはそろそろと歩を進め──その途中、瓦礫の下から不意に現れた平べったい巡回機が、彼の姿を視認した。
「──マズいっ!」

 武装を所持していないらしきその巡回機はレグから逃げるようにして移動速度を上げると、ががが、と音を立てた。
 直後、先程レグが破壊を目論んでいた固定式の警戒機──機体の両側に銃座を備えたそれが、レグが潜んでいた付近に向け実体弾による射撃を仕掛けて来る。

 自身の存在がどの程度の範囲までバレたのかは解らない。解らないが、少なくともあの二機については排除する必要がある──レグはそう判断すると、即座に行動を開始した。
 スターライダーである彼はユーベルコード『ゴッドスピードライト』を使用する。すると、その巨体に装備していたらしき宇宙バイクががしゃがしゃと音を立てて変形して行き──彼はそれに搭乗するや否や逃げ出していく巡回機へと突撃し、そのままそれを撥ね飛ばした。
 彼は体を反転させ、自身に向け銃を乱射している固定式警戒機の方へとバイクの進行方向を変えると、スロットルを全開にする。
「潰れろっ!」
 彼は猛然とした勢いで警戒機の方へと迫り──それとすれ違うようにしてバイクを駆り、そしてすれ違いざまに鉄骨による強烈な一撃を叩き込んだ。

 外殻がひしゃげた銃座付きの警戒機がその動きを停止したのを確認しつつ、バイクから飛び降りたレグは再び物陰へと隠れる。
 そのまましばらく待ったが、新手が現れる様子は無い。ただ、だからと言ってこのまま進んでも大丈夫なものだろうか。
「……念には念を入れて、ここからは船内を移動しておくか。ここまでで昇降機跡やら広い道あったっけな……」
 破壊した警戒機をカーボン糸で吊り下げるようにして見かけ上の偽装工作を施した後、レグはこの甲板上から去るべく再び行動を開始した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

鈴鳴・藜
…かなり弱ってるようだな。
通信から読み取れたのは生に執着する姿。
此処で見捨てる、なんて選択肢は俺にはなくてな。
救出対象者は「艦の船尾付近にある物置部屋」とのことだったか?

時間がとにかく惜しい…が、
逸る心は大切なものを見落とすことにつながる布石にだってなりえる。
一呼吸し落ち着こう。大丈夫だ、冷静さを見失うな。

とりあえず艦の船尾に向かうか。
どうしても避けられない戦闘以外は穏便やり過ごしたいところだが。
いつでも刀は抜けられるよう手に添えつつ、
戦闘では増援が来ないうちに『剣刃一閃』で素早く対処していきたいところ。
自身の「第六感」を信じたり、
足音を極力響かせないよう「忍び足」を屈指して足早に移動。


黒木・摩那
★スティーブンスを救出するため、隠れ場所周辺の情報を集める

【WIZ】

宇宙で遭難したら助け合うのが筋ってものです。
謝礼とかは気にしなくてもいいです。
どうやら隠れるのも限界が来ているようです。
一刻も早く助けなくては。

まずは例の隠れ場所に急行するとして。
周辺では帝国軍が彼を探しているようです。
『影の追跡者の召喚』を出して、
帝国軍の配置を確認します。

仲間達がスティーブンスと接触する間も
周辺を警戒。帝国軍が近づいてきたら、
警告を発します(情報収集/第六感)。

「奴らが来たわ。早く逃げましょう」


フラウ・ミスカトーネ
SPD
私は船尾の物置を目指す。忍び足ならぬ忍びタール、という訳だ
物陰と自身の身体を合わせるように伸縮
バウンドボディで船内の天井近くや床すれすれを低空飛行。見張りの目を欺きながら進む狙い

扉の隙間からするりと侵入
小声で名前を呼びながら探索
タールで端末を模した物体を作りとんとん、と指差しつつ落ち着かせるように笑った口元を作る
あなたの声は確かに届いた。
だから私たちは此処に来たんだ、あなたを必ず生きて帰すと誓おう。
それとなく扉側に立ちいつでもスティーブンスをかばえるように警戒は怠らず

私たちの最終目的はコアマシンの回収だ。コアマシンの事、廃船艦にいる帝国軍の事…知っている事があればすべて教えて欲しい。


ロクガツ・クロッカス
スティーブンスさん、無事だったんだね!
すぐにでも助けに行きたいけど、こういう時こそ慎重に行動しなきゃ

【SPDを使用】
巡回を物陰や使われていない部屋に隠れてやり過ごしながら、接敵を避けて進むよ。他の猟兵の皆が陽動を仕掛けてくれるなら、それに合わせたいな。
もしも1人だけで行動してる不用心な敵がいるようなら、【クイックドロウ+だまし討ちⅡ】で他の敵に連絡される前に始末する。
死体は使われてない部屋にでも放り込んでおくよ

スティーブンスさんを見つけたら、他の皆に場所を連絡して、敵をそこから遠ざけるように陽動してもらえないかな?
スティーブンスさんは衰弱してるみたいだし、戦いながら移動するのは厳しいと思うんだ





 船尾付近のとある一室。
 かつて誰かの私室として使われていたらしきその場所で、ロクガツは即座に光線銃を抜けるよう身構えながら物陰に隠れ、廊下を行きかうようにしている二足歩行の巡回ロボットたちの様子を伺っていた。
 
(……巡回の動きが少し変わった?)
 薄暗い部屋の中で内心そう独りごち、彼女はなおも部屋の中に潜みつつ暗視ゴーグル越しに廊下の様子を伺う。彼女が観察する限り、先程から巡回ロボットは一定の周期で彼女が潜む部屋の出入口の前を右から左、左から右へと横切るようにして行き交っていた──それが、今は右から左に横切るのみとなっていた。
 外見上の違いはほとんど無かったものの、猟兵の傍ら傭兵業を営むロクガツはこの手の無人兵器を見慣れていた。そのためもあってか、彼女は部屋の周囲を巡回していたらしきロボットの数が二体から一体に減ったことを察する。

「チャンス、かな。よし……」

 彼女は愛用の光線銃へと手を伸ばしながら出入口の傍へと近寄り、適当な遮蔽に身を隠して息を潜めた。そして、再び巡回ロボットが扉の前を通り過ぎるのをじっと待つ。
 そのまま一分程経とうかという頃、再び現れたロボットは規定の動き通りに部屋の前を通り過ぎる──その瞬間、ロクガツは廊下へと飛び出すようにしながら目にも留まらぬ速さで銘の削れた光線銃を抜き撃った。

 短く息を吐くようにしながら光線銃から放たれた光弾は、寸分の違いも無くロボット兵の機関部を破壊し、その動きを停止させる。
 行く手を邪魔していた巡回兵を上手く排除出来たことを確認し、ロクガツはそれを自身が先程まで潜んでいた部屋の中へと引きずり放り込んだ。そして、部屋の片隅に隠れていた黒い人影のようなものへと合図を送ると、彼女は他の猟兵たちと合流するべく廊下を進んでいく──



 ──その部屋から程近い廊下の一角にて。

「……ロクガツさんが敵を片付けたみたいね。急ぎましょう」
 先程の光景を『影の追跡者の召喚』により呼び出した“影の追跡者(シャドウチェイサー)”経由で視認していた女猟兵──摩那が、自身の傍らで控えていた男猟兵──藜へと状況を報告した。
 その顔に真剣な表情を浮かべつつ、藜はそれに応じる。
「ああ、今は時間がとにかく惜しい……かなり、弱っていたようだしな」

 彼、そして彼女たちは、スティーブンスの居場所を捜索していた。時には警備をやり過ごし、そして時には排除しながら、猟兵たちは送信されてきたフロアマップ情報を元に各部屋を総浚いするようにして調査していた。だが今の所、その成果はあまり芳しくない。
 小さな声で話し合いつつ、二人は急ぎつつも慎重な足取りで廊下を進み──程無くしてロクガツと摩那、そして藜は合流を果たした。ひとまず、といった調子で、猟兵たちは現状を確かめ合う。

「このフロアは、概ね捜索し終わったわね……」
「それらしい場所は無かったみたいだし、もしかすると下のフロアに居るのかな?」
「かも知れないな……が、結論を急ぐのはまだ早い。逸る心は大切なものを見落とすことに繋がる布石にだってなり得る……大丈夫だ、冷静さを見失うな」
「だね、こういう時こそ慎重に行動しなきゃ。あとは、確認しに行って貰ってるあっちの方の状況が判れば……」

 己自身に言い聞かせるような響きが篭った藜の言葉に、ロクガツが同意を返す──と、丁度その発言が終わったのと同時に、もう一人の猟兵が姿を現した。
 自身の身体を“バウンドモード”から元の状態へと戻しつつ、先程まで潜むようにしていた天井付近から床へと降り立ったフラウが、三人へと声を掛ける。

「すまない、遅くなった。丁度今、向こうの話をしていたようだが……ちょっと来てくれないか」
 先行して周囲の様子を調べていたフラウの案内のもと、猟兵たちはまだ捜索を行っていなかったフロアの一角へと向かう──



 ──とある部屋の前に少し頑丈そうな外殻を身に纏った警備ロボットが見張りのようにして立っているのを確認し、猟兵たちは話し始めた。

「今の所、あそこにいる奴以外には周囲に敵はいないみたいだけれど……」
 ここに来る途中に見かけた巡回ロボットへと向けて放った“影の追跡者”と五感を共有し、周囲の様子に気を配っていた摩那が他の三人へ告げる。
「スティーブンス氏は“隠れてやり過ごし続けている”と言っていたから、恐らくはまだ帝国軍側にその存在を捕捉されてはいないだろう。だが……あの一室、少し気にならないか?」
「まあ、気にはなるよね……それに、あそこに居座られてるとちょっと邪魔かもね。結構頑丈そうだけど、一撃で倒せるかな……」
「今度は俺が行こう。もしもの時は、援護を頼む」

 そう方策を立てた後、藜は敵の様子を伺いながら静かに、そして素早く移動する。
 見る間に件の警備ロボットの傍へと駆け寄った彼は、その走る勢いを殺さぬまま腰に帯びた黒漆の鞘から日本刀を抜き放つ──『剣刃一閃』。剣豪である彼はそのユーベルコードを用い、彼の方を振り返りつつあった警備ロボットをその手に持ったサブマシンガンめいた光線銃ごと真っ二つに切断した。

「……周りの状況に変わりは無いか?」
 刀を鞘へと納めつつそう訊ねた彼に、ちょっと待って、と、摩那が片手を小さく挙げるようにする。
「それを倒したのとは無関係かも知れないけれど、巡回兵が近付いて来てるみたいよ。特に問題が無さそうなら、一旦その部屋の中に隠れましょう」

 四人の猟兵は警備の居なくなった一室へと駆け込み、部屋の外の様子──と、その中の様子を伺った。
 見た所、ここは物置のようだ。スティーブンスが飛ばしてきた映像で見た部屋の様子ともかなり似ていたが、残念ながら彼の姿はここには無かった。もしかすると、この上か下のフロアの同じような場所に彼は隠れているのかも知れない。
 そう考え、部屋の様子を隅々まで確認していたフラウは今一度思案する。

「鈴鳴。先程の技……もう一度、使っては貰えないか?」



 物置らしき部屋の片隅で、何かを希うようにしてぶつぶつと呟きながら、隠れる様にして男が蹲っている。

 突然、とんとん、という音が室内に響き、男は飛び起きた。怯えるようにしながら彼は周りを見回し──その視界の端で、見慣れない“何か”の存在を捉えた。
「……スティーブンス氏、か?」
 その黒いタール状の“何か”からは、そんな小さな音が聞こえて来る。
 部屋に隠れていた男──宇宙船技師のスティーブンスは、突然起こったこの事態に反射的に悲鳴を上げそうになった。

「静かに。あなたの声は確かに届いた……だから、私たちは此処に来たんだ」
 天井から滴り落ちるようにして床へと舞い降りた“何か”──その正体であったブラックタールの女猟兵フラウ・ミスカトーネは、あくまでも静かに、敵ではない、と伝えるようにして彼へと声を掛ける。
 藜の刀術によって亀裂を入れた床面を経由して半ば強引な形で下階へとやってきた彼女は、掲げた腕を変化させて端末を模した形状にして見せつつ、スティーブンスを落ち着かせるべく笑った口元を作ってみせた。

 言葉に詰まったようにするスティーブンスに、そのまま口を開かなくとも大丈夫だ、とジェスチャーを送り、彼女は続ける。
「詳しい事情は後で話させて貰う。だが……あなたを必ず生きて帰すと誓おう。もう少しだけ、辛抱してくれ」
 彼女はそう言うと、自身の現在位置──スティーブンスが潜んでいる部屋の場所を、他の猟兵たちへと知らせた。

 この部屋の周囲、そしてこのフロア内にはまだ帝国軍の無人巡回機等の存在があり、衰弱したスティーブンスを連れてここから逃げるのはかなり厳しい。だから、スティーブンスの居場所が判明した場合は他の皆と連携を取り、敵をそこから遠ざけるように陽動して貰った方が良い──
 ──先程ロクガツがそう提案したのを思い出すようにしつつ、フラウは部屋の扉の傍ら、何かが起こった際には即座にスティーブンスを庇えるような位置に陣取る。

 事情をまだ把握し切れていない様子のスティーブンスに、心配ない、と再び静かに告げ、なおも扉の外を警戒しつつフラウは言葉を続けた。
「私たちの最終目的はコアマシンの回収だ。コアマシンの事、廃戦艦にいる帝国軍の事……知っている事があれば、すべて教えて欲しい」

 しばらくすれば、他の猟兵たちによる陽動作戦が開始されるだろう。それまでの間、彼の心の支えにならなくては──そんなことを考えつつ、彼女は彼との対話をゆっくりと始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ハンニバル・エルバッキー
ここは【WIZ】で行くぬ
キャッツは荷物運んでる途中で思い出したんぬ。
そういや亞衿に出来れば助けろって言われたんぬ。
スティーブ……なんだか言ったっけぬ。せっかくだから回収しておくかぬ。
(ぬーん、これで恩を売っときゃ将来的に役立つかもぬー❤)
【存在感】、【おびき寄せ】、【挑発】……どれでもいいや。
帝国連中をぬに釘付けにしておいて、その間にスティーブだったか助けてもらうぬ。
ぬのミュージックプレイヤーからはゴキゲン音楽が流せるからぬ、
注目はこっちにぐんぐん寄るんぬ。


ユリ・アップルヤード
「お、よしよし、そこか。そいじゃ、パパっと表の連中片付けちゃいますか!」

Code:Genocide、リアンとコロマル、ルーのリミッターを外して蹴散らしてもらおう。
リアンは鉄柱で薙ぎ払い、叩き潰し、必要に応じて大楯でカバーとカウンターを狙ってもらうよ。
コロマルとルーはそこに一斉射。細かい狙いはひとまず良し、敵のうごきを妨害しよう。
戦闘用機械兵ヒューズにはリミッターを外さず、専用の狙撃用ビームライフルで逃げる敵、こちらを避けようとする敵をガンガン撃ち落としてもらおう。
私を狙ってくるなら、ヒューズにライフルの銃剣で相手をさせよう。
それでも敵が漏れるなら、私自身が解体工具で殴り飛ばすさ。





 でんでででーんでーん、でんでででーんでーん、でんでででーんでーん、でんでででーん。

 突然、廃戦艦内の廊下に勇壮な音楽が響き渡った。
 唐突に流れ出したそれに反応し、付近を巡回していたロボットたちはまるで戸惑うかのように──無論ごく単純な構造をしている無人兵器は感情を持ち合わせてはいないため、傍から見ればそのように見える、と言うだけの話ではあるのだが、ともあれ巡回ロボットたちは急に聞こえてきた音の発生源の方へと向かう。

 ロボット兵たちが向かうその先には、オープンカーめいた外見をした小型のスペースクルーザーからにょっきりとスピーカーらしきものを生やし、そこに接続したミュージックプレイヤーを鼻歌交じりに操作している謎のケットシー──“キャプテン・ユニバース”こと、ハンニバル・エルバッキーの姿があった。

「いやあ、普通に忘れかけてたんぬ。資源回収だけじゃなくって、出来れば予知で見た人も助けろって言われてたんぬ。うっかりうっかり」
 他の猟兵たちからスティーブンスの居場所が判明したとの通信を受け、遅ればせながらハンニバルもこうして馳せ参じた──までは良かったものの、先程まで荷物運びに夢中だった彼は事態をあまり把握していない状態にあった。なので、彼は陽動役に徹することにしたのだ。

「帝国連中をぬに釘付けにしてる間に、スティーブ──なんだっけ。スティーブ……何とかさんは、みんなに助けて貰うぬーん」
 俄かに周囲の様子が騒がしくなり始めたのに応じ、彼は廊下の幅の半分程度の大きさをしたスペースクルーザーを発進させた。広い廊下に姿を現し始めた敵影を挑発するかのようにして、少し落とし気味の速度で彼は廊下を驀進する。

「あ、撃ってきたんぬ」
 威嚇なのか狙われているのかいまいち判然としない辺りに小口径ビームライフルの光弾らしきものが飛んで来たのに気づき、ハンニバルはハンドルを握り直した。
「ぬーっぬっぬ、そんなヘナチョコ弾がぬに当たる訳無いんぬー❤」
 余裕綽々、といった様子でハンニバルはそう呟く──が、時間が経つにつれ廊下には続々と敵が現れ、そしてハンニバルへと放たれる光弾の量もそれに比例するかのようにして増え、ちょっとした弾幕のような状態と化した辺りでさしもの彼も焦り始めた。

「ぬあああ! めっちゃ敵来たんぬぅーっ!?」
 急いでエンジンをふかし、彼は光弾の雨から逃れるようにしながら、廃戦艦のとある一角へと向かう──かつて開発層として使われていたらしき、そして今となっては猟兵たちによりめぼしい資材が概ね持ち去られた、視界の開けたその場所へと。



 追ってくるロボット兵たちを何とか引き離しつつ、ハンニバルは元開発層の開け放たれた出入口へと突入する。
「ふー、ここまで来れば大丈夫なん──」
 彼がそんな死亡フラグのような台詞を口にした瞬間、どさり、と、彼の乗るスペースクルーザーのちょうど助手席を目掛けるようにして何かが落下してきた。後続集団とはまた別のルートで彼を追ってきたらしきそのロボット兵はシートから起き上がると、ハンニバルの姿を正面から見据える。

「──ぬ、ぬわぁーっ!?」
 驚いた彼はハンドルを切り、何とかそれを振り落とそうとする。だがその甲斐虚しく、禍々しい刃を生やした巡回ロボットの凶手が彼の首へと伸び──

「伏せてっ!」

 ──慌てて彼がシートに深く沈むようにした瞬間、彼の頭上を太い棒のようなものが通り過ぎた。
 その謎の棒状の何かに弾き飛ばされたロボット兵はあらぬ方向へと吹っ飛び、そしてそのまま壁に激突して動かなくなる。

「お、おぉう……ナイスタイミング。助かったんぬ、ユリ」
「どういたしまして。さっきちょっとお目こぼしして貰ったお礼、ってことにしておくね」

 半ば横転しかけのクルーザーからひょっこり姿を現したハンニバルへ、先の資源回収の際にも成り行きで行動を共にしていた女猟兵のユリ・アップルヤードが、その尖った歯を見せるようにして笑ってみせた。
 先程その腕に抱えた鉄柱にてロボットを薙ぎ払った、彼女の愛機たる蒸気駆動の機械巨人“リアン”へと近付くようにしながら、ユリは起き上がるハンニバルへと手を伸ばしつつ少し冗談めかして問いかける。
「まだまだリアンも私も動き足りないんだけど、追っ手はさっきの奴で終わりなのかーい?」
「いや、今からもっとどばっと来るんぬ。ほらあっちの方」

 ハンニバルが元いた方向を指し示すと、そこにはわらわらと姿を現わすロボット兵たちの姿。
 ユリはうわぁ、と少し引いたような声を漏らしたものの、気を取り直したようにして敵影の方へと向き直った。

「……まあ、あれくらいはいないと張り合いが無いよねぇ!」
 少し楽しげに彼女はそう言い、ユーベルコード『Code:Genocide』を使用する。
「解除コード転送──リアン、コロマル、ルー。何も気にせず暴れておいで。私が見たいのは貴方達の躍動だけ!」
 蒸気機械巨人“リアン”、同じく蒸気機関式の偵察ロボット“コロマル”、そして元帝国製の万能型ドローン“ルー”。その三機のリミッターを解放すると同時に、彼女はお手製の戦闘用機械兵“ヒューズ”を傍らへ控えさせるようにしながら、ちらり、とハンニバルの方を見やる。
「キャップも手伝えそうなら手伝ってね。それと──折角だし、ノリの良いBGMでもお願いしておこうかな!」
「お安い御用なんぬ。そんじゃま、いっちょ音楽でもいってみるんぬ──っと」

 ハンニバルが先程も操作していたミュージックプレイヤーの再生ボタンをぽちり、と押すと、スピーカーから激しいグラム・ロックのナンバーが流れ出した。

「おっ、いいねぇ! そいじゃ、パパっと片付けちゃいますか──みんな、行っておいで!」
 ユリが腕を翳すようにすると、鉄柱を掲げたリアンが蒸気を噴き出しながら前方へ向けて発進し──そしてコロマル、ルーがそれを補佐するようにして、各種内蔵兵器の一斉掃射を開始した。
 彼女の傍ら、狙撃用ビームライフルを構えて立つヒューズに並ぶようにしつつ、ハンニバルもチープな見た目の光線銃を懐から取り出す。

 蒸気巨人により叩き潰され、そして薙ぎ払われる無数の敵の様子を眺め、ハンニバルがぼやいた。
「陽動、っていうか、普通に殲滅戦っぽくなってるんぬ……」
「キャップ、少し目立ちすぎたかもねぇ。まあ私としては全然構わないんだけど! 貰えるジャンクの数も増えるからね!」

 うきうきした様子のユリに少し肩をすくめて見せつつ、ハンニバルは他の猟兵たちへと現状報告を行う──

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夜桜・雪風
【同旅団の麻生大地さんと協調行動】

私は見張りにわざと見つかって追いかけられてみましょう。

陽動の作戦は、まず大地さんから【多目的ドローン】を預かり、
頭の上に浮かべて大地さんに状況が逐一伝わるようにします。
私は頑張って見張りに追いかけられながら、
見張りを隔壁のある地点まで誘い出します。
そこまで誘い出せたら、
ユーベルコードを使って私と【多目的ドローン】を透明にして相手から姿を隠します。
後は大地さんがハッキングで隔壁を操作して見張りと分断してくれるのを待ちましょう。

とてもスリルがありますね。
スティーブンスさんのためにも頑張ります。
私は大地さんを信頼しているので、全力で見張りを引きつけましょう。


麻生・大地
【同旅団の夜桜・雪風さんと協調行動】

あらかじめ雪風さんに、僕の【多目的ドローン】を預けておきます

「お気をつけて、雪風さん」

【忍び足】【ハッキング】【情報収集】【暗視】

見取り図を参照し、スティーブンスさんの潜伏場所からある程度離れた安全な場所近辺の、潜入に使える通気ダクトより侵入

ダクトに入るまでは【ハイドクローク】で姿を隠す

ドローンからの情報で敵の誘い出し成功を確認したら、ハッキングで隔壁を遠隔操作して敵兵を隔離し、雪風さんの安全を確保

部屋にたどり着けたら、【軍用糧食エナジーバー】をスティーブンスさんに手渡して

「ひとまずこれを。軍用ですので味はまあまあですが、品質は保障しますよ」と軽く笑いながら


伊美砂・アクアノート
【SPD】・・・映像が一区切りした瞬間、ボクも頭を切り替えていくよ。現時点で対象の生存を確認、場所もおおまかにだが理解った。……どうやら、この場には十分な数の猟兵が居るようだし、連携を提案するよ。 ボクたち潜入班は、「船尾付近物置に所在の、ブーチョ・スティーブンス氏の発見・保護」を目的に動こうと思う…。とりあえず、携行簡易食料や外傷の手当てを行う医療キットなどは持っていきたいな…。 正面から襲撃する陽動班、詳しい所在位置を集める情報班とは、無線か何かで連絡できればいいんだが。・・・貴方がスティーブンスさんですね。もう、大丈夫です…。私たちは猟兵、貴方を救出に来ました。……よく頑張りましたね。





 ──それから少し後。何処かから軽快な音楽、そして激しい破壊音が響いてくる廃戦艦の艦内、船尾付近の一角にて。

 術士然とした格好をした金髪の女猟兵が多目的ドローンを伴いながら、少し狭い通路を走っていた。
 数体の警備ロボットがその後を追い、時折ライフル型の光線銃を構えて彼女に向かって発砲する。

 先程曲がった曲がり角の壁面を光弾が掠めるのを見、近くにあった部屋に飛び込んで物陰に隠れるようにした彼女──夜桜・雪風は、小さく呟く。
「……とても、スリルがありますね」
 少し楽しくなってきつつはあったものの、この後のことを考えるとあまり体力を消耗してはいられない。彼女は少し息を整えると再び警備兵たちの前へと姿を現し、そしてそれらを“ある地点”へと誘導するようにして逃げ出した。
 ごく単純なルーチンで動作しているらしき無人兵器機は一切迷う様子を見せず、そんな彼女を追い続ける──



 ──雪風を追う道すがらで何機かその数を増やした警備ロボットたちは、船尾から少し離れた一区画の曲がり角を曲がる。
 直後、ロボットたちは急に立ち止まった。先程まで追っていた侵入者の姿を、急に見失ったからだ。

 ゆっくりと歩を進めるようにしながら、ロボットたちは周囲を警戒する。侵入者がその傍に浮かべていたドローンの飛行音も今は聞こえず、何処か遠くから響く破砕音以外には特に異常も検知されていない。
 一機のロボットが自身に内蔵されているカメラを切り替え、光学的に取得した映像を検知するモードから熱源を探知するモードへと移行した。ロボットは今一度確認するようにしてぐるりと辺りの様子を見回す──と、丁度自身たちが侵入者を見失った曲がり角の付近に、何かを抱えるようにしながらうずくまる人型の物体が存在していることを発見した。
 ……しかし、時既に遅し。
 『光妖精の悪戯(ステルスマギカ)』により姿を隠していた雪風へとロボット兵たちが銃を向けようとした瞬間、周囲にあった隔壁が唐突に作動する。瞬時に出現したそれにロボット兵たちは反応出来ず、そのまま小さな個室のような状態と化した廃戦艦の一区画に閉じ込められる羽目になった。

 自身とロボットたちの群れを分断するようにして出現した隔壁の強度を軽く確かめるようにした後、雪風は抱えていたドローンを再び傍らに浮かべると、それに向かって深々と礼をするようにして頭を下げた。
 そして、彼女は元居た区画──スティーブンスが隠れている一室が存在する場所へと向かい、再び廊下を駆け出す。



 多目的ドローンの本来の持ち主であった細目の男猟兵、麻生・大地は、旧知の仲であり共に信頼しあう雪風が無事作戦を成功させ、そして彼女自身にも特段被害は出なかったらしきことを映像越しに確認すると、ほっと胸を撫で下ろした。
 隔壁を落とすためのハッキングの手がもう少し遅れていたら危なかったかも知れない──ともあれ、これで当面の脅威は去った。サイボーグである彼はその頭部に内蔵したハッキングツールの操作をひとまず止め、傍らで待機していたもう一人の猟兵──伊美砂・アクアノートへと語りかける。

「……これで、スティーブンスさんが居る部屋の近辺の警備兵は片付きましたね」
「ああ。これでボクたちも先程のように狭いダクトの中で窮屈な思いをしたりせずに済む訳だ……ともあれ、他の班にはボクの方から連絡を入れておくよ。キミも疲れているだろうからね」
 基底人格のものでは無い、しかし若干安定した様子の口調でそう告げつつ、伊美砂は他の猟兵たちに作戦成功の報告をする。

 概ねの連絡を終えた彼女は、こほん、と咳払いをした後、確認を取るようにして大地へと話しかけた。
「スティーブンスさんのことが心配です。このまま部屋へ直行する、ということで構わないかしら?」
「ええ、雪風さんの身の安全は確保しましたから。僕のドローンで部屋までの最短ルートを案内しておきますので、ご心配なく」

 二人の猟兵は一応警戒するようにしつつも件の部屋への道を急ぎ、そして途中で合流を果たしつつ、程無くして一つの扉の前に辿り着いた。

 スティーブンスが隠れ、そして数日を過ごしていたらしい部屋の前に立ち、伊美砂は少し特徴的なリズムで扉を叩く。
 念のため、と事前に決めていたその合図に対し、先に部屋へ侵入して以降ずっとスティーブンスの護衛兼話相手を務めていた猟兵が返事をし、中から掛けられていた部屋の扉の鍵を開けた。

 部屋の壁にもたれ掛かるようにし、出入口から差し込む光に手を翳し少し眩しそうにしている、薄くなりかけの頭をした男──スティーブンス。
 酷く痩せこけ弱々しい、そんな彼の様子を気遣うようにしながら、伊美砂は話しかける。

「……貴方がスティーブンスさんですね。もう、大丈夫です……私たちは猟兵。貴方を救出に来ました」

 からからに乾いた身体から水分を搾り出すかのようにしてその目を潤ませた彼に、猟兵たちは静かに言葉を続けた。
「よく頑張りましたね。何処か、お怪我はありませんか?」
「飲まず食わすだった様子ですし、ひとまずこれを。軍用ですので味はまあまあですが、品質は保障しますよ」

 そう言って軽く笑いかけた大地から軍用糧食を、そしてその背後から姿を現した雪風から水の入った容器を受け取ると、スティーブンスはそれを一気に貪るようにして食らい──そして、堰を切ったように泣きながら、猟兵たちへと向かって頭を下げる。
「……ぐっ、あ……すまねぇ、本当、その……ありがとう、助かった……!」



 救護対象の保護は為された。あとは、コアマシンを回収するだけだ──そう安堵しかけた、次の瞬間。

 救出・潜入班の猟兵たち、そして廃戦艦内の各所に点在していた他の猟兵たちは、突然の停電に見舞われた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『二足歩行戦車』

POW   :    一斉砲撃
【機体各所に搭載した火器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    レジェンダリーソルジャー
【伝説的な戦車兵を再現したAI】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    胴体下部可動式ビームキャノン
【砲門】を向けた対象に、【ビームの連射】でダメージを与える。命中率が高い。
👑17
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 廃戦艦内の全域を、突然の停電が襲う。
 その停電現象自体はあまり長くは続かず、数秒もしないうちに復旧した──少なくとも、見かけ上は。

 通路のライトが再び点灯したのを見、ほんの少しだけ呆けるようにしていたスティーブンスが、あっ、と声を上げる。

「ま、まずいっ! コアマシンが取り外されちまったかも知れねえっ!!」



 何とか動けるようになったスティーブンスを合流した仲間たちと共に補佐するようにしつつ、猟兵たちは船尾の一角──かつてハンガー・ベイとして使用されていたらしいその場所へと向かっていた。

 先程の停電は、この戦艦から電力発生源であるコアマシンが取り外されたために起こった可能性が高い──過去に似たような廃戦艦からコアマシンの回収を行った際に先程と同じような現象が発生したのを体験したことがある、電気が再び点いたのは非常用電源に切り替わったからだろう、と、スティーブンスは言う。

「仮にオレの推測通りさっきのタイミングで取り外されちまっていたとしても、コアマシンは何かとデリケートな代物だ……運ぶのには時間が掛かるし、まだここから持ち去られるまでには余裕がある! 帝国軍の奴ら……と言っても、ここに居るのは無人兵器ばかりのようだが……とっ、とにかく急げばまだ間に合うはずだ!」

 スティーブンス曰く、この廃戦艦に辿り着いた直後に各所を確認して回っていた際、戦艦後部に存在する大型船用のハンガー・ベイに帝国軍の船が碇泊しているのを見たとのこと。
 取り外されたコアマシンが運び込まれるとすればそこだ、との彼の発言を信じ、離れた場所にいた仲間たちにもその情報を共有しつつ、猟兵の一団は戦艦後部のハンガー・ベイへと急ぐ。

 ハンガー・ベイに繋がる扉を通り抜け、船首側にあったものよりもさらに剛健なつくりをしたその広い部屋の中を進む道すがら、スティーブンスは猟兵たちへと語りかけた。
「なあ、アンタら……途中で帝国の奴らとやり合ってたりもしてたみたいだが、誰かあのバカでかい甲殻類みたいな──その、ヘルメットにも見えるような、そんなデカブツと戦ったって奴はいるか……?」
 少なくとも、ここに来てから猟兵たちはそのような相手と会敵した覚えは無いはずだ。猟兵たちがそれを伝えると、スティーブンスは不安げな表情をその皺くちゃの顔に浮かべる。
「……オレが帝国軍の船を見かけた時、そんな奴が船の近くに聳え立っていたのを見たんだよ。オレがあの部屋に隠れた後、部屋の側を時折そいつの影が横切るのを何度か見た覚えもあったから、もしかするともう交戦した後かもな、と思ったんだが……そうか、まだだったか……」
 段々とその顔に浮かべた不安の色が濃くなっていくのを振り払うように、彼はかぶりを振る。

「……いや、もしかするともうアイツは既にここから居なくなっているのかも知れねぇな、うん。そうさ、きっとそう……だといいんだが──あっ、あそこだ! あそこにある黒っぽくて尖ってる奴が帝国軍の宇宙船だ!」
 なおも不安げな様子のスティーブンスと共に、猟兵たちはその宇宙船へと近づいていき──

 ──嫌な予感が的中した、というべきか。
 そこには、碇泊している船を守るようにして立ちはだかる、滑らかで頑丈そうな半球状の外装を持つ帝国軍の完全自立型二足歩行戦車の姿があった。



 猟兵たちの存在に気づいたらしき二足歩行戦車はそのカメラアイから橙色の光を漏らしつつ、ぶぅん、と鈍い音を鳴らした。
『……前方、脅威存在を確認。敵影、多数。排除します』
 悲鳴を上げながら手頃な物陰へと逃げ込むスティーブンスには傍目もくれず、ターゲットを絞り猟兵たちのみを狙うようにしながら、全高4m程もある巨大な二足歩行戦車は唸りを上げ始める──

 ──周囲の様子を見る限り、コアマシンはまだあの宇宙船へと運び込まれてはいないようだ。だが、時間の問題かも知れない。
 宇宙船を破壊するにせよ、あるいはこの戦艦内にいる帝国軍の無人兵器をすべて倒すにせよ、まずはこの二足歩行戦車をどうにかする必要があるだろう。この戦いからは逃げられない。そう覚悟を決め、猟兵たちは各々戦闘態勢を取り始める。

 一段と大きく唸りを上げ、二足歩行戦車は胴体下部から生やしたビームキャノンを発射し──そして、戦闘が始まった。
玖篠・迅
スティーブンスは無事。コアマシンはまだこの中にある
なら、あとはこいつ倒してから考えればいいわけだ!

単身で向かっても的にされるだけだろうし、他の猟兵と連携とりつつだな
近接組が近寄りやすいように、あの橙色の目っぽい部分にたくさん霊符投げて視界の邪魔で「時間稼ぎ」狙い
熱感知とかしてきたら火行込めた符も混ぜて嫌がらせな
あいつの攻撃防いだり、こっちから仕掛ける時に「野生の勘」で何か感じたらそれに従って行動で
朱夏で「武器受け」「なぎ払い」狙ったりな

「第六感」でやばそうな感じしたら、合間に仕掛けてた護符で「七星七縛符」かけて邪魔をする
我慢比べはー…さすがにちょっと勝てそうにないな
後はできたら早めに頼むなー!


伊美砂・アクアノート
ビームとか何それズルい! わたくし、そんなに便利な武器を持ってないのに! …と叫びつつ、遮蔽物の影に飛び込む。ちっ、どいつもこいつも、SFな科学マシンとかファンタジーなマジカルパワー使えて羨ましいな、ちくしょー!? 叫びつつ、砲撃が止んだ瞬間に飛び出して、【羅漢銭・須臾打】で射撃し応戦。コンマ秒以下で、隠し持っていたコインを銃弾の如く撃ち出すよっ。…オレっちには、これくらいの手品が精一杯でね…。装甲をブチ抜くには火力不足かもだが、敵のカメラアイとかを狙ってみるぜ。周りの攻勢に合わせて、あえて身を晒して挑発したり、常に射撃ポイントを移動して撃ち返すなど、小狡く立ち回ろう。


ロクガツ・クロッカス
敵の戦艦は壊したくない! コアマシンがもう戦艦に積まれてたら、私たちの寄る辺の一つが永遠に失われちゃう!
……だから、敵を殲滅する。
猶予がない。迅速に。

【POWを使用】
二足歩行戦車との戦闘が避けられないと認識した瞬間、【バトル・インテリジェンス】を発動
戦術ドローンと自分の体を臨時接続して、普段の動体視力・運動能力の限界を超えた動きで敵の初手のビームを避ける
その後は【空間凝固装置+空中戦1+残像1+フェイント1】の立体機動で攻撃を躱しつつ接近
敵に取り付いたら装甲の薄そうな場所を中心に、自分の攻撃手段を片端からぶちこむつもり
これなら自分に攻撃の余裕がなくても囮になれる

効率よく敵を壊すことだけ、考える





 放たれたビームキャノンの一撃に、いち早く反応した一人の女猟兵──ロクガツ・クロッカスは、直ちに『バトル・インテリジェンス』を使用する。
 戦術ドローンとの臨時接続を行った彼女は身体能力の限界を超えた動きでビームを避けると、その勢いのままに二足歩行戦車の方へと飛び出していく。

(万が一コアマシンがもうあの船に積まれてたら、私たちの寄る辺の一つが永遠に失われちゃう──だから、敵の宇宙船は壊したくない!)

 内心でそう考えつつ、彼女は機体各所に搭載した武装を展開しつつある二足歩行戦車の注意を自身へと向けさせるべく、ゴム弾を込めた鎮圧用対人武装のトリガーを引く。
 その狙いが功を奏したのか、戦車は展開した火器の銃口を一斉に彼女へと向けると、ビーム光弾の一斉掃射を行い始めた。ロクガツはその攻撃を躱しつつ、戦車を帝国の船から離れた位置へと少しずつ誘導する。
 今の所は自分に攻撃する余裕は無いが、囮になることは出来る。仲間が隙を作り次第機体に取り付き、攻撃を片端からぶち込んでやる──傭兵然とした思考で冷静にそう考えながら、彼女は攻撃を避け続ける。



 自身たちから離れた場所の物陰に隠れたスティーブンスは無事。そして少なくとも、コアマシンはまだこの廃戦艦の中にある。

「なら、あとはこいつ倒してから考えればいいわけだ……!」
 周囲に放置されていた小型宇宙艇らしきものの陰へと飛び込みつつ、迅が霊符を掲げた。
「びっ、ビームとか何それズルい! わたくしそんなに便利な武器を持ってないのに!」
 同じく遮蔽の陰へと飛び込んだ伊美砂は少し可愛らしくも悪態を吐き、砲撃の隙を突かんとすべく二足歩行戦車の様子を物陰から伺う。
 現在、二足歩行戦車は機体各所に搭載した火器をがしゃがしゃと鳴らすようにしながら、それら全てを一人飛び出してきた猟兵──ロクガツへと向け、銃撃の雨嵐を見舞っていた。時折『空間凝固装置』の利用により空中を蹴るようにして移動するロクガツの動きに戦車は翻弄されている様子ではあったものの、このままやり合っていれば先に体力が尽きるのは人の身たる彼女の方だろう。

 迅はその様子を見やり、少し悪戯っぽく笑いながら構えていた霊符を二足歩行戦車へと投げ放つ。
「食らえ! 俺渾身の嫌がらせっ!」
 真っ直ぐ飛んでいく霊符はその途中でまるで分身するかのようにして数を増やし、銃撃を避け続けるロクガツの傍らを通り過ぎた辺りで一斉に宙に展開した。直後、宙に浮いた符は戦車のカメラアイが覗く装甲の隙間を塞ぐようにして次々べたべたと張り付き始める。

 カメラからの映像を取得出来なくなったらしき二足歩行戦車は、まるで首を振るように、そして各所から生やした銃撃用アームを用いて目をこするようにしながら、張り付いた霊符を引き剥がさんとする。
 攻撃の手が一瞬途切れたその隙を見逃さず、すかさず伊美砂は物陰から飛び出した──が、先程の丁寧な物腰の人格から別の人格へと切り替わったらしい彼女は何処か憎々しげな表情をその顔に浮かべていた。
「どいつもこいつも、SFな科学マシンとかファンタジーなマジカルパワー使えて羨ましいな、ちくしょー!?」
 小さく舌打ちをしながら半ばやけっぱちといった調子でそう叫び、彼女は敵影へと少しだけ駆け寄るようにしつつ、いつの間にかその手に隠し持っていたコインを素早く構える。
 『羅漢銭・須臾打』。彼女がいう所の“SFな科学マシンとかファンタジーなマジカルパワー”では無い、指先の僅かな動きでコインを弾き飛ばすだけの純粋な射撃技術による攻撃──しかしその同時発射されるコインの数は限りなく多いという、歴としたユーベルコードの秘蹟の一種であるその術理を、彼女は二足歩行戦車へと向けて放った。

 迅の霊符を何とか振り払った二足歩行戦車の胴体各所に無数のコインが突き刺さり、厚い装甲に小さな皹を入れる。放たれたコインの一枚が橙色の光を鈍く放つカメラアイを直撃したものの、小さなコインによる一撃はレンズを防護していたガラス状の部品を破壊して弾き飛ばす程度に止まった。
 だが、ひとまずはこれくらいの被害を与えられれば十分以上だ。再び人格が切り替わったのか、伊美砂は不敵な笑みをその口元に浮かべてみせる──すると突然、機械的な音声が戦車から発された。

『──視界不良。自動追尾実体弾による攻撃を行います。僚機および随伴兵は本機体より離れ、判別用ビーコンの作動を願います』
 そう言うが早いか、戦車は蹲るようにしながらその滑らかな装甲の背の辺りを開き、先程までとは趣の異なった武装を機体から覗かせ始めた。恐らくは自動追尾機能の付いたミサイル弾か何かを発射しようとしているのだろう。

 二足歩行戦車が発射の準備を終え、巨大なミサイル弾──発射された後展開する、いわゆる多弾頭ミサイルの一種であるそれが、巨大な戦車から放たれる──かと思われた、その瞬間。
 戦車の周囲に浮かんでいた符のいくつかが戦車へと張り付き、そして光を放った。それに合わせ、二足歩行戦車はミサイルの発射を止め、まるで痙攣するかのようにしてその動きを止める──何かやばい、と気付いた迅が、先程飛ばした霊符と共に放っていた護符を用いて『七星七縛符』を発動したのだ。

「我慢比べは……さすがにちょっと勝てそうにないな……!」
 何とか間に合ったことに少し胸を撫で下ろしつつも、術を行使する彼は苦しげに呻く。相手のユーベルコードを封じる強力無比な効果を持つこの技は、しかし使用し続けている限り使用者の寿命を削る。長くは保たない。

「ありがとう! 後は私がっ!」
 少し離れた場所にいる彼、そして攻撃を放った後別の物陰へと再び隠れるようにした伊美砂の姿を横目でちらりと見やり、ロクガツは地と空を蹴り一時的に動きを止めている二足歩行戦車へと飛び乗った。
 先のコインで入った皹に軍用の短刀を突き刺し、それを用いて揺れる機体の上に踏ん張るようにしながら、彼女はミサイルが顔を覗かせる発射口へと愛用の光線銃を突きつけ──そして、ほぼ零距離でそれを発射する。
 突き刺したナイフを抜き再び空を蹴って戦車の付近から離脱する彼女の後方で、発射を阻止された上に発射口で破壊されたミサイルの爆散する光、そして爆炎が立ち上った。

「……やったかッ!」

 物陰から顔を覗かせ、何処か粗野な雰囲気を漂わせる表情をした伊美砂が小さく歓喜の声をあげる──しかしさすがと言うべきか、この廃戦艦内で猟兵たちが遭遇してきた敵とこの二足歩行戦車は一味も二味も違う。
 装甲の何割かを破損し、そして破壊されたミサイルの発射口から煙を吐き出しつつも、二足歩行戦車はその動きを止めない。

『自動追尾実体弾、使用不能。再度、通常火器による攻撃を行います』

 冷酷な響きすら感じられる機械的な音声を発しつつ、蹲るようにしていた二足歩行戦車は立ち上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

麻生・大地
【同旅団の夜桜・雪風さんと協調行動】

今回も、あらかじめ雪風さんに多目的ドローンを預けておきます

「多少無茶をします、後ろは任せますよ雪風さん」

【騎乗】【見切り】【盾受け】

可変試作型バイク【レグルス】に騎乗、敵眼前に肉薄し、
【レグルス・タイタンフォーム】起動

【怪力】【時間稼ぎ】【かばう】【情報収集】【盾受け】【メカニック】

巨体には巨体を。敵を抑え込みつつ、他の仲間に攻撃が行かないように
盾になりながら、敵の情報を集めます

搭載武装は?有効射程は?装甲の薄いところは?
集められるだけの情報を集め精査し、ドローン経由で皆に情報送信します

「しばらくの間、僕との力比べに付き合ってもらいますよ…!」


夜桜・雪風
【同旅団の麻生大地さんと協調行動】

見るからに強敵ですね。
私はこういう相手を探して戦場を渡り歩いているので、
とても幸運を感じてしまいます。素敵ですね。

大地さんから【多目的ドローン】を預かって、
私のすぐ近くに飛んでいてもらいます。
大地さんから敵の情報が【多目的ドローン】に逐次送られてくるそうなので、
私は情報をもとに【戦闘知識】を使って敵に有効打となるように攻めましょう。

【高速詠唱】でユーベルコードを放ち【全力魔法】で魔導書たちを鈴蘭の花びらにして攻撃します。
敵の防御力を下げる狙いで【鎧砕き】をしつつ、
確実にダメージを与えるために【鎧無視攻撃】を【2回攻撃】しますね。

生き残るために全力で頑張りますね


レッグ・ワート
【POW】皆と合流できたと思ったらこういう。でも例の人が悲鳴上げるだけの元気貰ってるみたいで良かったわ。
そんじゃ俺は前行くか。遮蔽物があればそれ辿りながら、広かったら宇宙バイクで距離詰める。狭けりゃこっちのラインが上がるまで「無敵城塞」の即席遮蔽物やるよ。
近づけたら体勢崩し狙い。堅物に強い奴もいるしな?とまれ声かけや他の妨害勢の狙いには乗る。戦車の駆動音聞いたり状態見て、警告や「かばう」、「見切り」や「武器受け」に活かしたいトコだ。それで間に合わないなら「無敵城塞」でしのぐよ。脚部回転盤や皆の攻撃で傷んだ装甲の隙間に鉄骨噛ませて、梃子の感じで思いっきり力かけたらちょい止まったり割れたりしない?





 機体から煙を立ち上らせつつも、それなりにしっかりとした足取りで二足歩行戦車は立ち上がる──無論、それを黙って見ている猟兵たちでは無い。

「多少無茶をします。後ろは任せますよ、雪風さん!」
 大地は戦友にして旧知の仲たる女猟兵、雪風へとそう言い残しながら、バイクに搭乗して戦車へと向かい突っ込んで行く。
「はい! 私も全力で頑張ります!」
 強敵の出現に何処か嬉しげにする雪風はそれに応じ、強力な一撃を見舞うべく複雑な魔術式を構築するための詠唱を始めた。

『損傷、中程度。作戦行動の遂行に問題はありません──』

 尚も機械音声を鳴らす二足歩行戦車へと向かう大地は、先の爆発で吹き飛んだ拉げた装甲の一部を踏み台にして宙へと飛び上がり──その瞬間、彼はユーベルコード『レグルス・タイタンフォーム』を使用する。
「プログラム・ドライブ──レグルス・タイタンフォーム!」
 大地がそう宣言したのに呼応し、彼の愛機たる可変試作型バイク“レグルス”は展開するようにしてその形状を変え、そしてサイボーグである大地の身体と合体した。
 一瞬で3m超の機械巨人の姿と化した大地は、バイクで疾走して来た勢いをそのままに体勢を整えつつあった二足歩行戦車へ覆い被さるようにして体当たりを見舞う。

 軽く吹き飛ばされ倒れこんだ巨大な二足歩行戦車を力任せに押さえつけながら、大地は眼前の敵の解析を始めた。
「しばらくの間、僕との力比べに付き合ってもらいますよ……!」
 剛健な作りをしたハンガー・ベイの床へ脚部に内蔵したパイルバンカーを打ち込み、それをアンカーボルト代わりにして踏ん張りつつ、戦車の触腕めいたビームキャノンによる殴打を防ぎながら、大地はこの敵の情報を探るべく注意深く観察する。
 現状使用可能な搭載武装、各武装の有効射程、先の影響を受け装甲が薄くなっている部分。豊富な機械知識を生かしてそれらを纏め、彼は自身のドローンへ逐次その情報を飛ばす──先程雪風に預け、そして今も彼女が周囲に侍らせている、そのドローンへと。

「……闇雲に攻撃を加えても効果は薄そうですね。そして、装甲の各部に裂傷。それなら……!」
 逐次送信されてくる情報を他の猟兵たちと共有しつつ、雪風は自身の戦闘知識を生かして有効な術式を練り上げて行く。そろそろ準備が完了する、念のため彼へ伝えた方が良いだろうか──彼女がそんなことを考えていると、二足歩行戦車が再び音を発した。

『敵影、尚も多数。当機陣営に属する個体、周囲に反応無し。全方位に向け、一斉射撃を行います』

 周囲に随伴兵が存在した場合のための最終警告らしき機械音声を戦車が発した直後、がしゃん、と、周囲に大きな音が響き渡った。
 一体どのようにして格納されていたのか、あるいはオブリビオンたるこの敵のユーベルコードの効果により物理法則を無視して瞬間的に出現したのか──その原理は不明ではあるものの、大地に押さえつけられたままの二足歩行戦車はその本体下部からにょきにょきとビームキャノン付きの触腕を、そして本体の各部を開き小型ミサイルの発射口を出現させる。

「……っ!? まずいっ!!」

 雪風、そして他の猟兵たちの盾となるようにして自身が戦車の前に立ちはだかっている以上、彼女たちの元へ届きそうな攻撃は小型の誘導弾程度のものだろう。そしてその程度の攻撃であれば、他の仲間を含め猟兵たちならば事も無く撃墜なり回避なりを行うことは出来る──
 ──ただ、一般人たるスティーブンスはどうだろうか。彼は現在物陰に隠れているとは言え、万が一、ということはあり得るかも知れない。
 かと言って、盾となっている自身がここから離れる訳にはいかない。彼は素早く他の猟兵たちへと通達をし──その直後、二足歩行戦車は先の宣告通りに武装の一斉発射を実施した。



 天井の高いハング・ベイの中を、小型の誘導弾が舞う。
 猟兵たちから見て、戦車の後方へと向けて放たれたその誘導弾──生物らしき熱源を感知し自動的に追尾する機能を持つごく小さなミサイルは空中で姿勢を変え、猟兵たち──と、少し離れた位置で隠れていたスティーブンスへと目掛けて再加速する。
 大地の警告を受け、猟兵たちは飛来する誘導弾を銃撃その他の手段により撃墜して行く。が、如何せんその数は多く、全て撃墜するには至らなかった。

 打ち漏らした一発が、スティーブンス目掛けて飛んでいく。
 物陰に隠れていた彼もそれに気付いたらしく、悲鳴をあげながら姿勢を低くして対爆防御姿勢を取り──

「丁度良いタイミングで合流できたみたいだなっ!」

 ──射線を遮るようにして飛び出した巨大な影がミサイルの直撃を受け、爆風の余波がスティーブンスの薄い髪を揺らした。
 姿勢を低くして半ば悲鳴交じりの大声を上げていた彼は、何が起こったのか理解し切れていない様子でぎょろぎょろした目を瞬かせ──そして、自身を護った人物の姿を見つける。

 一見すると帝国軍のロボットのようにも見える、機械然とした巨大な体躯を持つ一人の猟兵──レッグ・ワートの姿が、そこにはあった。

「……悲鳴上げるだけの元気あるみたいで良かったぜ。もう暫く、そこで待っててくれよ!」
 彼はスティーブンスへと向けてそう言うと、着弾の瞬間に『無敵城砦』を発動することにより“超防御モード”となっていた自身の身体を元へと戻し、宇宙バイクに跨り大地に押さえ込まれ続ける二足歩行戦車へと突貫していく。



 一連の顛末を見、雪風は安心したようにして小さく息を吐いた。
「……でも、これで心置きなくっ!」
 準備は整った。他の猟兵たちの頑張りに応えるべく、彼女は装備した魔導書を自身の周囲に展開する。
 直後、彼女の周囲に浮かんだ魔導書はその姿を無数の鈴蘭の花びらへと変えていく──『鈴蘭の嵐』。彼女の秘めたる暴力性を象徴するかのようなその仄白い暴風は、指示を待つかのようにして雪風の周囲を舞う。
「攻撃、行きます! 大地さん、気をつけてくださいね……っ!」

 巨大な戦車を押さえつけていた大地が巻き込まれぬようその身を少し引いたのを見、雪風はその手に持った杖を掲げた。
 花弁の嵐は一斉に敵へと襲いかかり、見る間に敵を包み込む。先程大量に放たれたコインにより各所に入ったひび割れから二足歩行戦車の装甲内部へと入り込んだ白い花びらは、装甲を支持している部分を内側から破壊し、幾つかの外装を剥がし落としていく。
「……まだまだ、行きますよ?」
 少し嗜虐的にも見えなくも無いような表情をその顔に浮かべつつ、雪風は再び杖を掲げる。
 それに呼応するかのようにして花びらの嵐は再び勢いを増し、今度は戦車の電子回路をずたずたにするべく荒れ狂い始めた。

『……損傷、甚大。機体内部に異物の侵入あり。緊急回避シークェンスを実施します』
 ノイズ交じりの機械音声が流れ、二足歩行戦車は展開していた火器類を仕舞い込むと、大きな唸りを上げながらその場で小刻みに振動し始めた。
 直後、戦車は脱落した装甲の各所から黒煙を上げ始める。その様子は一見すると故障したかのようにも見えなくは無かったが、しかしこれは故障でも動作の不具合でも無い。
 それは、本体内部を無理やり過熱することにより内部に入り込んだ小型生命体やその他の異物を焼却除去するという非常に乱暴な、しかしある程度の効率を持つ行動であった──だが、異物の除去に専念するためか、戦車はその動きを完全に停止していた。

 その不具合めいた様子に一切惑わされることも無く、バイクに騎乗したレグが二足歩行戦車へと近付いていき──飛び降りざま、彼は装甲が脱落し剥き出しになった戦車の機体へ、愛用の鉄骨による強烈な一撃を見舞う。
 再び体勢を崩し、今度は不具合による煙を上げ始めた二足歩行戦車の脚部に取り付くと、レグはその手に持った強化鉄骨を戦車の脚部回転盤──膝にあたるその部分の隙間へと、乱暴に捩じ込んだ。
「そら、よっ!」
 彼はその2m半程もある体躯を圧し掛からせるようにして、梃子の要領で全体重を鉄骨に乗せる──そして。

 ばきん、と、二足歩行戦車の片足の関節が破壊される音が、ハンガー・ベイの中に響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ユリ・アップルヤード
「さて、二脚戦車のパーツを頂いて行くとしようか! キャップ、それ以外は私興味ないから好きにしていいよ!」

何度かこいつとはやりあってるからね、火力がとんでもないのはよく知ってるよ。
というわけで機械巨人リアンは大楯でガードしつつ、二脚戦車に張り付いて他の人の盾役に。
隙さえあれば、カウンターにショルダータックル叩き込んでいこう。
偵察ロボットコロマルと万能型ドローンルーは、二脚戦車のカメラ部分に向かって斉射。小型の機動力を生かして、飛び回りながら射撃していこう。
戦闘用機械兵ヒューズは狙撃態勢を維持。ここぞの瞬間まで研ぎ澄まし、カメラ部分を狙撃してShoot&Bombを発動させるよ。


黒木・摩那
★戦車の撃破を図る

帝国の歩行戦車はいかにも堅そう。
でも、ここを突破しないとコアマシンは持ち去られてしまうし。

幸い、仲間はたくさんいるから、やるしかないわね。

=====
戦車は一見無敵のように見えますが、
実は死角が多いし、小回りが利かないものです。
歩兵のいない戦車はいい鴨です。

ユーベルコード「風舞雷花」でルーンソードを帯電させます。
味方の攻撃で動いてきた戦車の死角から一撃噛まします(属性攻撃)。
=====
戦車といえどメカだから、電撃が効くとよいのだけれど。


ハンニバル・エルバッキー
Rock On!デカブツのお出ましなんぬ!
【SPD】で装備の「トラップツールズ」も使って戦うんぬ。
スペースクルーザーを遮蔽にし、狙えるようなら【マヒ攻撃】を狙いたいぬ。
遮蔽を取りマヒトラップを投げながらも、
前線で戦う人たちを応援するために両手の光線銃「ポワワ銃」と「ジグザグ光線銃」で【援護射撃】ぬ!
奴さんは鈍重かもしれないけど、手こずるようならUCの【高重力毛玉】も遮蔽から後ろ手に放って一時的に動きを止めるんぬ。
もののついで、ミュージックプレイヤーからバトルにふさわしい軽快なロックンロールでもかけてみんなを【鼓舞】するんぬ。
なんかの縁だし、ここまで同行したユリと彼女のおともを援護したいぬ!





 戦車の脚部が破壊されたのを皮切りに、誘導弾の撃墜に専念していた猟兵たちは一斉に攻勢へと転じる。

「さて、二脚戦車のパーツを頂いて行くとしようか! キャップ、それ以外は私興味ないから好きにしていいよ!」
 ユリは所有するロボットを一斉に展開して必殺の陣形を構えながら、傍らでおもちゃのような外見の銃からジグザグした光線を放ち誘導弾を狙い撃っていた“キャップ”こと、ケットシーのハンニバルへと声を掛ける。
「オッケー、ユリ! 一気に行くんぬ! Rock'n'Roll!!」
 ユリの呼びかけに応じ、ハンニバルは彼女が召喚した蒸気機械巨人リアンの背に隠れるようにしながら愛機たるスペースクルーザーにひょいと飛び乗ると、クルーザーのスピーカーに接続したミュージックプレイヤーを操作して軽快なBGMを流し始めた。

 殺風景なハンガー・ベイの中に突如流れ出した軽妙快活な音楽に、二足歩行戦車は少し戸惑ったかのようにしてその動きを強張らせる。
 装甲の各所および片足を破壊された戦車はこの窮地に対応するべく、数多の厳しい戦場を生き抜いてきた伝説的な戦車兵を再現したAIをその内部で展開していた。だが残念ながら、シリアス一辺倒の戦場を渡り歩いてきた兵士の戦術AIには今のような事態に対応出来るだけの柔軟性は無かったようだ──そして、この手の敵と過去に何度か交戦した経験のあるユリがその隙を見逃すはずは無かった。

 大楯を構えたリアン、そして他数名の猟兵と共に戦車へと向かう、ユリの後方。
 身を屈めるようにして狙撃態勢を取っていた一体の機械兵──アップルガレージ製戦闘用ロボット“ヒューズ”が、念動銃剣が付随した狙撃用ビームライフルのトリガーを引いた。
 放たれたビームは、動きを一瞬止めていた二足歩行戦車のカメラアイへと一直線に進み──そして、対光学兵器対策として嵌め込まれていたガラスカバーを既に失っていたその部分を、光弾は見事に射抜く。

「ヒューズの目からは逃げられない──そしてっ!」

 メインカメラを失い半ば横たわっていた体勢を更に大きく崩した二足歩行戦車へと急接近したリアンは、その構えた大楯を敵へと叩きつけるようにして投げ放った。
 機体各所からサブカメラらしきものの姿を出現させつつあった戦車はもたれ掛かってきた大楯により視界を塞がれ、身を揺するようにして何とかその遮蔽を振り払う──が、何もかもが遅い。

「リアンのパワーは、誰にも止められない!!」
 先程ヒューズが狙い撃ったカメラアイが存在する辺りを目掛け、組んだ両手を高く掲げたリアンがその腕を振り下ろした。
 ごしゃっ、と破砕の音が響き、先程から猟兵たちの攻撃を受け続けていた戦車の頭頂部辺りが拉げる。

『損傷、甚大。再び、全方位への一斉射撃を行います──』
「おっと、それはもうさっき見たんぬぅーっ!」
 ノイズ交じりの音声と共に二足歩行戦車がまだ無事な砲塔から再び誘導弾を放つのに合わせ、ハンニバルが少し得意げにしながら巨大な毛玉のようなものを戦車の後方、空中へと向けて投げる。
 半ば苦し紛れのようにして発射された熱減探知式の小型ミサイルは、しかし先程のように空中で方向を転換を果たすこと無く、あらぬ方向へすっ飛んでいく──ハンニバルが投げた『高重力毛玉(グラヴィティボール)』により、周囲の重力場が激しく乱されたためだ。

「そろそろフィニッシュと行くんぬ! ぬとユリ、他のみんなで抑えるから──キッツイの、お見舞いしてやるんぬ!!」
 彼は二足歩行戦車の動きを抑えるべく再び高重力毛玉を、そしてごちゃごちゃとしたトラップツールを戦車の足元へと投げ放ちながら、自身と共にリアンの陰に隠れて戦車への肉薄を果たしたもう一人の女猟兵へと、その黒い毛並みを逆立たせるようにしながら告げる。
 ハンニバルの言葉に応じるようにして頷くと、その女猟兵は片手に構えていたルーン文字の刻み込まれた魔法剣へと、自身の力を篭め始める──

「ウロボロス起動……励起。昇圧、集束を確認……帯電完了!」

 ──ユーベルコード、『風舞雷花(フルール・デ・フルール)』。それは、サイキッカーでありマジックナイトでもある黒髪の女猟兵、黒木・摩那の必殺技。
 自身のサイキックエナジーを電撃の形として刃に纏わせた彼女は、万華鏡のように煌く魔法剣を振りかざす。

「……いくら外装が堅かろうと、これなら効くわよねっ!」
 摩那は他の猟兵たちに抑え付けられ身動きが取れなくなっている二足歩行戦車の上へと飛び乗ると、先程の攻撃で出来た戦車頭頂部の装甲の隙間を狙い、刺し穿つような鋭い突きの一撃を繰り出した。
 深々と突き刺さったその剣を通じ、彼女の掌から放たれた電撃の奔流が巨大な戦車へと流れ込んでいく──



 ──猟兵たちと二足歩行戦車の明暗を分けた要因は、ごく単純に言えば偏にその人数差によるものであっただろう。
 いくら優秀なAIを積んでいようとも、所詮は単機。強力な火器をいくら揃えていようが、周囲に随伴兵の居ない戦車等、戦闘に慣れた者たちにとっては恐るるに足らず。

 仲間たちの協力により必殺の一撃を見舞うことに成功した摩那は、自身の足元で小さな爆発が起こり始めたのに合わせて突き刺した剣を抜き、無残に変形した二足歩行戦車の装甲を強く蹴り大きく飛び退った。
 すかさず再び大楯を構えたリアンが、そして他の巨体を持つ猟兵たちが、段々その規模と激しさを増す爆発の余波から彼女を含む生身の猟兵たちを護らんとするべく、戦車を取り囲むようにして防御姿勢を取り──そして。

 帝国軍製の二足歩行戦車はついに大爆発を起こし、ハンガー・ベイの一角に黒々とした焦げ跡を刻み込んだ。

 巨大な敵の討伐を成し遂げたことを喜びあう者、派手に破損した戦車の姿を少し残念そうに眺める者、最終目標であるコアマシンの回収へ向け迅速に行動を再開した者──多種多様な反応を見せる、猟兵たちの姿。
 そんな猟兵たちの様子を、この広い宇宙の中ではごくちっぽけな存在の、しがない宇宙船技師である男が、感動したようにして物陰から見守っていた──







 ──それから、数週間後。
 銀河の片隅に存在する、とある酒場にて。

 付近の造船所にて先日回収されたコアマシンを再利用した巨大宇宙船が新たに建造されていることもあってか、その酒場は連日賑わいを見せていた。
 そんな酒場の一角で、薄くなりかけている頭とギョロっとした目、歯並びの悪い口元に顔中皺だらけ、といった特徴的な容姿をした男はカウンターに座り、近くの席に偶然居合わせたらしき他の人々に向け、その歯並びの悪い口元から泡を飛ばしながら捲くし立てるかようにして何かを熱心に語る。

「──もうダメだ、やられる! そう思って、思わずオレは目を覆った! 大きな爆発音が辺りに鳴り響き、空気が振動して、そして…………」
「……そして?」
「…………あー、悪い。喉が渇いちまった。誰かビールを奢ってくれねぇか?」

 そんな調子で皺くちゃの顔にへらへらとした笑みを浮かべると、男はバーテンダーへとジョッキを差し出す。

「病み上がりなんだろ? 無理すんなよ、また吐かれちゃァ掃除が大変だ」
「うるせえ、ほっとけ。酒くらい好きに飲ませろ。で……そうそう、話の続きだ。この手で目を覆っていたオレが、手を除けて目の前を見ると──」

 その男の話を、あるものは酒の肴の与太話として、あるものは九死に一生を得た男の体験談として聞き──男の話も概ね終わろうかという頃、何度目かのビールのお代わりをジョッキへと注いでいたバーテンダーが、感慨深げにしてその男へと話しかけた。

「へェ……この宇宙にも、まだそんな骨のある奴らが居たんだなァ。いい話じゃァねェか……もっとも、オマエの話が本当なら、だけどな!」
 半信半疑、といった様子でバーテンダーが豪快に笑うと、カウンターに居合わせた人々もそれに応じるようにして笑う。
 少しばかり嘲笑の意を込められて自身が語った話を笑われた男は、しかしその挑発めいた発言に激しく反発するそぶりも見せず、静かに、そして真剣に言葉を返した。

「いや、本当の話さ……きっと、アイツらは伝説の解放軍だったんだよ。少なくとも、オレにはそう見えた──この宇宙の未来は、アイツらみたいな奴らに託されてるのかも知れねぇな」

 しがない宇宙船技師であるその男は、バーテンダーから受け渡されたビールを一気に飲み干し──その麦芽の香りが若干水増しされて薄くなっていたことを喉の奥で感じたのか、その皺くちゃの顔を顰めてさらに皺くちゃな面構えとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月31日


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#スペースシップワールド


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
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 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト