アルカディア争奪戦⑨〜虹の雫
●スーパーよいこの決意
「僕は、決めたのでございます」
まだ幼い少年が、人々の前で宣言する。
声音に怯えはなく、瞳は強く輝き、背筋は真っ直ぐに伸びていた。
「僕は……マグナ聖帝国との戦いに出立するのでございます!」
わあ、と歓声が上がった。
●グリモアベース
「マグナ聖帝国の侵攻を受けている浮遊大陸に向かってくれ。そこには、スーパーよいこランドのきのこを食べて育った、『スーパーよいこ』たちが暮らしてる。彼らはよいこだが、猟兵に匹敵する強さとユーベルコードを持ってるぜ」
宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は、口元に笑みを浮かべながら語る。
「そんなスーパーよいこの一人が、よいことしてマグナ聖帝国の侵攻に抗う戦いに出立する決意を固めたみたいだぜ。町では、出立を祝う盛大な壮行パレードが開催されてるから、皆も、スーパーよいこが勇士になれるよう応援してあげてくれ。皆よいこだから、知らないお客さんも大歓迎してくれるぜ」
出立するスーパーよいこの名前は、アルクス。12歳の少年だ、と拓未は語る。
「この地域には、きのこの他に、『レインボードロップ』って名前の特産品がある。これは、スノードロップの白い花びらが、淡い虹色に染まったような花だ」
パレードの際は、楽隊やダンサーの行列の最後尾を歩むアルクスへ向けて、道の両脇に陣取った人々がレインボードロップの花びらを降り注がせるんだ、と彼は言う。
レインボードロップには、スノードロップと同じ『希望』という花言葉がある。その花のシャワーこそが、出立するよいこへの祝福となるのだ。
「パレードの観客には、レインボードロップの花びらがいっぱい入った花かごを渡してもらえるから、じゃんじゃん花を撒いてやってくれ。もしくは、観客ではなく行進をする側に回ってもいいしな。アルクスに何か言葉を投げかけてやるのもいいと思うぜ」
パレードが終わっても、壮行の祭りはまだ終わらない。
「町には、レインボードロップの花を使った商品の屋台がいっぱい出てるぜ」
生花の束を売る屋台もあれば、ハーバリウムや押し花を売る屋台もある。
ハーバリウムには、制作体験ができる店もあるようだ。プリザーブドフラワーにしたレインボードロップが花材として用意されているので、それをガラスの小瓶に入れ、オイルを注いで完成だ。
また、レインボードロップの生花を中に閉じ込めた、棒つき飴もある。『虹花飴』と呼ばれるその飴は、中の花まで食べることが可能だ。希望のパワーを自らの内に取り込めると言われる、縁起物である。
「パレードの後にそれらを楽しんでいってもいいし、パレードだけ参加してもいい。大事なのは、アルクスの出立を応援する気持ちだ!」
朗らかに拓未は笑うと、グリモアを空中に出現させる。
「それじゃ、行ってきてくれ。頼んだぜ!」
グリモアが光り輝き、猟兵たちをブルーアルカディアへと送り出した。
地斬理々亜
地斬です。
よろしくお願いします。
●プレイングボーナス
『よいこが勇士になれるよう応援する』
●特記事項
プレイング冒頭に「🍄猟兵化希望」の記載があった場合、この記載を行ったシナリオ参加者から1人を指名し、「このスーパーよいこを猟兵にする権利」を差し上げます(シナリオ完結時に、リプレイの最終行で「この人に権利をあげます」と告知します)。
●スーパーよいこについて
名前は『アルクス』。12歳の少年。
『ございます、ございましょう、ございますか』といった、やたらと丁寧な口調が特徴です。
●プレイングについて
パレードのみ参加、屋台のみ参加、パレードも屋台も両方参加、いずれも可能です。
●プレイング受付期間
9月7日(水)8:31〜9月9日(金)8:00までとします。
それでは、楽しい壮行会を!
第1章 日常
『触れてみよう、その島の特産品』
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POW : 特産品の手作り体験に挑戦してみる
SPD : 特産品を市場などで買ってみる
WIZ : 特産品をより詳しく調べてみる
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馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
おやまあ、花撒き。ふふ、では混じりましょうかねー。
ええ、あなたの行き先に、幸あれと。
…ところで陰海月。食欲旺盛ですから、珍しい食べ物の方にいくかと思ったら、ハーバリウムの方に。
やっぱり、まずは物を作る方を優先するんですねー。物作り、好きなんですねー、陰海月。
※
陰海月、ハーバリウムに挑戦!
「ぷきゅー。ぷっぷぷぷきゅ!
「一度やってみたかった。きっと綺麗なのが作れるよ!)」
わりと慎重に花材を入れる。オイル入れは手伝われつつ、綺麗にできた!
霹靂は、陰海月の側でドキドキしながら見ている。
「クエクエ(友の作るのは全部綺麗)」
●四悪霊と海月と幻獣の日常
四人で一人の複合型悪霊、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が町をゆく。
現在、表に出ているのは、第一の悪霊『疾き者』である。
「おやまあ」
彼はおっとりとした笑顔を浮かべた。前方では、道を歩む少年に向けて、人々が花を撒いている。
「ふふ、では混じりましょうかねー」
花かごを手にした義透は人々の中に紛れ、花をつかんで撒いた。
「あなたの行き先に、幸あれ」
「ありがとうございます!」
アルクスは瞳を輝かせ、礼を述べた。
「……ところで陰海月」
「ぷきゅ?」
空中に浮いた、大きなミズクラゲが鳴く。
「食欲旺盛ですから、珍しい食べ物の方に行くかと思ったら……」
陰海月の向かおうとしていた先には、ハーバリウムの制作体験ができる店があった。
「やっぱり、まずは物を作る方を優先するんですねー。物作り、好きなんですねー、陰海月」
「ぷきゅ!」
肯定するかのような鳴き声を上げて、陰海月はゆらゆらと、店の方へ進んだ。
こうして、陰海月によるハーバリウム制作が始まる。傍では、ヒポグリフの霹靂が見守っていた。
「ぷきゅー。ぷっぷぷぷきゅ!(一度やってみたかった。きっと綺麗なのが作れるよ!)」
「クエクエ(友の作るのは全部綺麗)」
陰海月と霹靂の間で、会話が交わされて。
陰海月は渡された小瓶に触手を巻き付け、別の触手でピンセットを受け取った。
ピンセットを持つ触手をぎゅっと締め付け、花材を挟んで、慎重に小瓶に入れていく。
「ぷぷきゅ……ぷきゅー」
そっと、そーっと。
「……ぷきゅ!」
良い感じに入れられた!
「クエエ!」
ドキドキしながら見ていた霹靂も、安堵と祝福の鳴き声を上げた。
「ぷきゅ」
「はいはい、オイル入れですねー。お手伝いしますよー」
陰海月に呼ばれた義透が、オイルをそっと注いで蓋を閉め、ハーバリウムの完成だ。
小瓶を軽く揺すれば、透明なオイルの中で、虹色の花が揺れる。
「綺麗ですねー」
「ぷっきゅ!」
義透の一言に対し、陰海月は、自慢げに胸を張るような仕草をしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱雀・慧華
【氷華】
あっ、神様仲間!
一緒にお祝いしない?
せーだいに、ねっ、スミス…さん?
えへへ、私敬語まだよくわかんなくって
お花ほんとに虹色だ
あ、ねぇ私良い事思いついた!
上から撒こうよ!
着いて来て!
★ローラーシューズでパレードの上を駆け
魔力で実体化された虹のアーチを生成
二人アーチの上に並んで花を撒くね!
もう少し盛り上げ役が欲しいかな?
描いたものを実体化する、空をそのまま映した魔法の絵筆
★七色空描筆で空間に動物や魚達を描けば
【アート】達は空を泳ぎながら共に花を撒いたり
アルクスの背中をそっと後押し
だいじょーぶ、神様にだって得意不得意はあるよぅ
アルクスがんばれー!
私虹花飴食べたいなー
スミスー、後で買ってもいい?
スミス・ガランティア
【氷華】
スノードロップに似た花か。
我の技にもスノードロップの花弁を放つものがあるがなるほど、希望と言う意味もあるのか。
おや、こんな所で同族と出会うとは。これも何かの縁だ。よろしく頼む。
何、我も堅苦しいのは苦手だから気にするな(同じ神には素で話す
そうだな、盛大に……とはいえどうしたものか。花を撒こうとは考えているのだが……ん? 上から?
ほう、これなら確かに盛大に出来るな。というかこんなに描けるの凄いな?!
いやその、我、神の癖に創る方面はからっきしだから……ホント凄いな……
(咳払いして)さて、彼の旅路が良きものになるよう、【祈り】を込めて花を撒こう。
飴?
後でなら良いぞ。綺麗だし熱くないしな。
●虹、架かる
(「スノードロップに似た花か」)
スミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)は、町の人間から受け取った花かごに視線を落とす。
(「我の技にもスノードロップの花弁を放つものがあるが」)
それゆえに、スミスにとっては見慣れた形状の花だ。違いは、花びらの色だけである。
花言葉も同じ、『希望』。
(「なるほど、希望という意味もあるのか」)
良いことを知れた、とスミスはほんのり笑顔を浮かべる。
「あっ、神様仲間!」
少女の声と、スミスの方へ駆け寄ってくる足音が聞こえた。その主は、朱雀・慧華(純真天使・f17361)である。
「おや、こんな所で同族と出会うとは」
「えへへ」
互いに、相手が自身と同じ『神である』ということが、一目で分かった。
「これも何かの縁だ。我はスミスだ、よろしく頼む」
「慧華だよ、よろしく! ね、一緒にお祝いしない? せーだいに、ねっ、スミス……さん?」
呼び捨てしそうになった慧華は、取って付けたような敬称を付け加える。
少し間があってから、慧華は笑った。
「えへへ、私敬語まだよくわかんなくって」
「何、我も堅苦しいのは苦手だから気にするな」
スミスの今の喋り方は、自然体である。友好的に装うことをせず、肩肘張らずに話せているのだ。相手が、同じ神であるから。
「ふむ。そうだな、盛大に……とはいえどうしたものか。花を撒こうとは考えているのだが……」
「うん。このお花だよね。ほんとに、虹色なんだね」
慧華も、花かごの中身を改めてじっくり見た。淡い虹色に色づいた花々が、そこにある。
「あ、私良い事思いついた! 上から撒こうよ!」
「ん? 上から?」
「うん! ついて来て!」
笑顔で言った慧華は、空色のローラーシューズに魔力を込める。
パレードの上の空中を、慧華は、飛び越えるように駆け抜けた。
その軌跡として、魔力によって実体化した虹のアーチが残る。
周囲の人々が、驚きの声と歓声を上げた。
慧華はアーチの中央に陣取り、スミスを手招く。
「ほう」
感嘆したスミスも、虹を上り、慧華の隣に座った。
「もう少し盛り上げ役が欲しいかな?」
慧華が構えたのは、魔法の絵筆。描いたものに命を与える力を持つ、空映す七色空描筆だ。
空間に描くのは、リスに猫、兎といった動物たちや、魚たち。
「これなら確かに盛大に出来るな。というかこんなに描けるの凄いな?!」
思わず仰天したスミスに、慧華の視線が向く。
「いやその、我、神の癖に創る方面はからっきしだから……ホント凄いな……」
「だいじょーぶ、神様にだって得意不得意はあるよぅ」
スミスを慧華は励ます。
「そ、そうだな」
一つ咳払いをしたスミスは、改めて、下を見下ろす。ちょうど、アルクスが通るところだった。
「彼の旅路が良きものになるよう、祈りを込めて花を撒こう」
「うん! アルクスがんばれー!」
大きな虹の上から、スミスと慧花が撒いているレインボードロップの花々が、ひらひらと降り注ぐ。
慧華が描いたアートである動物たちは、花を撒きながらアルクスの傍らを歩む。彼を勇気づけ、後押しするように。
空には、魚たちが泳いでいる。
「ありがとうございます! 僕、頑張るのでございます! ……あれ」
感極まったアルクスの頬を、一筋涙が伝った。
すぐに拭い、アルクスは笑顔を浮かべる。
「本当に、本当に、ありがとうございます……!」
「行っちゃったね」
「そうだな」
二柱の神は、アルクスの背を見送る。
もうこのアーチの上から降りてもいいのだが、もう少しの間、この眺めを楽しんでいたいと思ったのかもしれない。
「私、虹花飴食べたいなー」
「飴?」
両脚をぶらぶらさせながら言った慧花の顔を、スミスが見た。
「スミスー、後で買ってもいい?」
「後でなら良いぞ。綺麗だし熱くないしな」
熱い食べ物は苦手だがな、とスミスはこぼして。
「やった!」
甘い物が好きな少女神は、弾けるように笑った。空に虹が架かるが如く。
大成功
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