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月をも焦がす

#アックス&ウィザーズ



 夜空を赤々と照らしながら、月をも焦がさんとばかりに炎が燃え盛る。
 それは弔いの炎だ。死者を火葬するためのものではなく、炎そのものを弔う祭りなのだ。
 デーエルンは、主にドワーフたちが住まう鍛冶の村である。彼らは年の終わりに、村の生業を支えてくれた鍛冶火に感謝を込めて、その年最後の満月の夜に、盛大な送り火を焚くのが習わしだった。
 頑固で気難しい職人気質が多いデーエルンの村人だが、この祭りの夜だけは特別だ。普段の慎ましい生活を忘れて、大火を囲みながら倒れるまで肉を食らい、酔いつぶれるまで酒を呑み、動けなくなるまで踊り明かす。それが、彼らにとって最も大切な儀式で、最も大切な楽しみなのだ。
 しかし、人々の感謝と祈りが込められた神聖な大火は、あろうことか凶々しき存在を招いてしまう。
 炎の熱に引き寄せられたのか、それとも村人たちの用意した食べ物の匂いを嗅ぎつけたのか……大火よりもなお猛々しき炎を纏った魔獣が、その夜、数多の山賊どもを引き連れてデーエルンの村を襲撃したのである。

「ひどい有様だ。急ぎ働きをする盗賊だって、もう少し情のある”仕事”をする。だが、奴らは……山賊どもは、人の命や尊厳なんてもの、気にしやしねえ」
 灰の瞳を険しく細めた羅刹の娘が忌々しげに吐き捨てた。彼女は手にしたリンゴを皮ごと丸かじりすると、眉間にシワを寄せたまま「だが幸いにも、その事件はまだ起きる前の話だ」と付け加える。
 彼女の名は、グリモア猟兵のショコラッタ・ハロー。グリモアの術で視得た光景を、猟兵たちに伝える役目を負った娘。
「話は単純だ。村に行って、守りを固めて、襲ってくる山賊を一人残らずブッ殺せ。村は祭りの準備の最中だから、出来るかぎり村のなかに入れずに終わらせて欲しい。山賊どもの血で、大切な祭りを穢すわけにはいかないだろ?」
 ショコラッタの注文に、集まった猟兵たちはうなずき返す。そのなかの一人が、質問を投げかけた。
 村の周囲はどんな環境なのか。
 そして、山賊たちを引き連れる魔獣とは何者なのか、と。
 その問いに、ショコラッタはグリモアを介して遠視をしながら答える。
「村の周辺こそ伐採されて開けているが、辺りは森と山に囲まれている。森に隠れながら山賊どもは忍び寄ってくるだろうから、ある程度村への接近を許しちまうのは仕方ないな。森に突っ込んでヤツらを蹴散らすか、村周辺の見晴らしのいい場所で迎え撃つかは、おまえたちに任せる。それと……」
 その炎を纏う魔獣はオブリビオンだ、とショコラッタは付け加えた。
 名は、“紅蓮侯”マルコシアス。数多の戦場を渡ってきた炎狼にして歴戦の勇士。その二つ名の通り、炎を操る力を得意とするようだ。
「山賊どもを倒しただけでは意味がない。コイツを始末しなければ、おれたちの勝利とは言えないだろう。骨の折れる相手だが、間違いなく始末してくれ」
 そう言い切ると、ショコラッタは食べかけのリンゴを皿に戻して、唇の端をにやりと上げた。
「面倒な仕事だが、見返りは大きいぞ。襲撃を防げば、おまえたちは村の英雄だ。祭りの主役はおまえたちだ。メシも酒も食い放題飲み放題、弔いの炎が燃え尽きるまで歌い踊り明かして、最高の夜になること間違いなしだ。若い兄ちゃんなんて、村のキレイどころが寝かせてくれねーんじゃねえの? はっはっは」
 ショコラッタは自分自身の冗談に豪快な笑い声をあげていたが、しばらくして再び表情を険しいものに変えた。
「何もかも、全てが上手く行ったら、の話だけどな。征こう、猟の時間だ。おれたちの手で、オトシマエをつけてやろうじゃないか」


扇谷きいち
 こんにちは、扇谷きいちです。

●補足1
 戦闘がすべて成功した場合、デーエルンの祭りに参加できます。
 歌ったり踊ったり飲み食いしたり、大騒ぎするのもよし。
 神聖な炎を囲みながら静かに過ごすのもよし。お好きにどうぞ。
 ただし、未成年者や、未成年に見える人の飲酒喫煙は一切描写いたしません。

●補足2
 第一章の開始時刻は日没直後。
 天候は晴れ。

 以上、皆様の健闘をお祈りしております。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
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八坂・操
お祭り浮かれた若人を惨殺♪ スプラッタ映画じゃ十八番とも言える展開だね!
だからこそ、現実でB級映画はお呼びじゃあないんだよ。おっと、操ちゃんクールダウンクールダウン☆

とりあえず、【SPD】に任せて【レプリカクラフト】で森の中に仕掛け罠を大量に仕掛けよっか。流石にお祭りがスプラッタになるのはいけないからねー。『忍び足』と『目立たない』で見つからないよう気を付けよう!
今時の映画だって、被害枠も化物を撃退する時代サ! ……まさか自分達だけ絶対に安全とは、思っちゃあいないだろう?




 火を弔う炎は夜空と地を結ぶ柱のように、高々と明々と、燃え盛っていた。
 村からそれなりに距離を置いたにも関わらず、炎は八坂・操の濡羽色の髪を赤く照らし、放たれる熱気は彼女の白い肌を火照らせるほどだった。
 ――お祭り浮かれた若人を惨殺♪ スプラッタ映画じゃ十八番とも言える展開だね!
 炎も月明かりも照らさぬ暗き森に踏み入れた操は、自身が踏み込んだシチュエーションを見渡して笑みを浮かべる。それは、冗談で浮かんだ笑みではない。B級ホラー映画のような展開を蹴散らすべく固めた決意ゆえの笑みだ。
 もっとも、何も知らぬ者が目にしたならば、怪異を絵に書いたような姿の操こそが”敵”だと思われそうだが……幸いにも、いまこの森にいるのは彼女ただひとりである。
 操は森を彷徨う幽鬼がごとく、落ち葉を踏む音すら立たさず森のなかに仕掛け罠を設置していく。祭がスプラッタになっては困るから、主に非殺傷系のトラップだ。
 やがてこの森にやってくるであろう山賊どもの末路を思って、操はますます笑みを深める。
「……まさか自分達だけ絶対に安全とは、思っちゃあいないだろう?」

成功 🔵​🔵​🔴​

御手洗・そそぎ
山賊ごときに遅れはとれまいぞ!
このあとには大物が控えて居るようじゃし、ここで消耗するわけにはいかん

わしは仲間の後方から戦場をみて、傷を負った者を生まれながらの光で癒そう
特に盾になる者や、敵に狙われて危険な者を優先じゃ

賊は森に紛れ村に迫るじゃろう
賊の動きを仲間に知らせ、一匹たりとも村には入れぬぞ!

もし、仲間の守りを抜けてきたら……わしも
なぎ払いで応戦じゃ!

賊が連携し守りを抜こうとする等の危機で、味方も満身創痍ならば……複数同時の高速治療じゃな
これは最後の切り札じゃ

おっと、時折は村の中や賊が向かってきた方向以外にも気を配り、別動隊等が村に入り込まぬよう警戒じゃ

妙な事があれば村人に教えてもらうように



「現れたようじゃな」
 森の奥の闇がざわつき始めた。招かれざる客がこの地に訪れたことを知り、御手洗・そそぎは閉じていた瞼を上げて夜闇の向こうを見やる。
 耳に届くものは悲鳴ではない。山賊たちの焦燥と恐慌の声だ。それは仲間の猟兵たちが、なんらかの形で山賊にアプローチをしたものの、まだ戦闘に至るまでではない状況だ、とそそぎは分析する。
 ――搦め手が利いたならば、療術の出番はまだ先であろう。ならば、わしは偵察と警戒に動かせてもらうとするか。
 大火の熱も届かぬ森のなかで、体の芯まで冷えきっても微動だにせずいたそそぎは、山賊どもの動向を探るべく森のなかを進んでいく。
「ふむ、思ったより数が少ないな。こやつらは偵察で、まだ後続がいると見て間違いないじゃろう」
 そそぎは巧みに闇に紛れながら山賊たちの戦力や動向を探っていく。時おりこちらの気配を相手に悟られることもあったが、そそぎは冷静になぎなたの一振りで賊を一体ずつ闇のなかに葬り去っていく。
 ――ふん、山賊ごときに遅れをとるわしではないわ。
 音もなく賊の胸を刃で貫いたそそぎは、敵の人数をおおよそ把握した段階で、仲間たちへ情報を届けるべく駆け出した。山賊どもを従えている大物の存在を思えば、無意味に動き続けて消耗するわけにはいかなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイクス・ライアー
さて、村に接近する前に、ここで戦力をまびいておこう。…静かに、確実に。

【POW】
必殺仕事人・スタイリッシュな戦闘スタイル
闇に溶け込む黒い服。
森の木の上で忍び待ち、【暗殺】スキルを使用。躊躇なく【長さ1メートルほどの有刺鉄線状の棘のついたワイヤー】を巻きつけ首の骨を折る。
待ち伏せし一体ずつ確実に仕留めたいが、地上戦になった場合は【ベルトのバックルに偽装したナイフ】を取り出し近接戦。

連携・サポート・アドリブ歓迎




 先行する仲間からもたらされた山賊たちの情報を元に、ジェイクス・ライアーは森の奥へと進んでいく。彼が身につけた黒い装束は闇に溶け込み、その姿は目を凝らさねば草木の影と見間違えてしまうほど。
 ――さて、村に接近する前に、ここで戦力をまびいておこう。
 山賊どもの気配を察知したジェイクスは、森のなかにおいてもどこか品を感じさせる所作で樹上に上がると、有刺鉄線のついたワイヤーを手中に備えた。
 山賊どもは集団行動を取っているというのに、仲間との連携や助け合うという意識が欠けているらしい。自分が一番最初に村のお宝を手にすることで頭がいっぱいなのか、罠にかかった仲間はそのままに、我先にと森の中を進んでくる。
 そんな山賊の一人を、ジェイクスは何の苦労もなく始末した。
 樹下を通りかかった賊の首に音もなくワイヤーを回すと、一息で引き絞る。締め上げて窒息死させる、などとまどろっこいしいことはしない。頚椎を一撃でへし折り、悲鳴すら上げさせずに事をなす
「見られてしまったのなら、そのまま行かすわけにはいかないな」
 後続の賊はその様子をたしかに目撃していたのだが、あまりの早業になにが起こったのかわからなかったらしい。うろたえているその賊を、ジェイクスは樹上から飛び降りざまにナイフで貫いた。
「これで二体……静かに、確実に」
 まだ熱を残す亡骸を適当な茂みに放り込むと、ジェイクスは闇に紛れながら次の獲物を探して進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒蛇・宵蔭
こういう、良心の痛まぬ相手は楽ですね。
酒が呑みたいならば、勤労に勤しめばいいのです。
略奪も勤労だというのなら、しかたがありません、こちらも仕事をしましょう。

探索に骨が折れるかもしれませんが、極力森で、人数が活かせぬ環境で仕掛け、分断を狙いたいところです。
木の影などから、酒瓶でも転がして気を引いてみましょう。

血界檻鎖で召喚するのは全身を捕らえる棘つきの籠。
悲鳴はご自由に、こちら側に気が引けるなら、狙い通りですから。

他に仲間がいるなら可能な限り戦闘続行し、単独なら撹乱しつつ退きます。




 命を奪っても良心の痛まぬ者を相手にするのは楽だと、黒蛇・宵蔭は思う。
 森の木々を震わさんばかりに悲鳴をあげて絶命した山賊を、炎よりも赤く、氷よりも冷たい輝きの瞳で、宵蔭は見送った。
 仲間の偵察と罠、そして暗殺が功を奏し、思いのほか敵を探し出すことに苦労がかからなかったことを、宵蔭は安堵する。
 ――彼らにとって略奪が勤労だというのなら、こちらにとってはこれが仕事。骨を折らずに遂行できるのなら、それに越したことはありません。
 喚き散らし、あるいは怒声をあげながら森を突破しようとする山賊どもは、宵蔭にとってはただの的だ。わざと物音を立ててみせれば、動物のように簡単に意識をそちらに向けてくれる。
「悲鳴はご自由に」
 もうひとり、宵蔭は賊を血にまみれた悍ましい檻のなかに閉じ込める。咎人を殺すために特化した彼の力は、まさに山賊のような相手に振るわれるべく生み出されたものなのだろう。
 無数のトゲに全身を貫かれ、生きながらに血を抜かれていく感覚を味わうことになった山賊は、檻のなかで暴れることもかなわず息絶えた。
「次の生ではどうぞ、まっとうな勤労で酒を呑んでください」
 宵蔭は誰に言うでもなくつぶやくと、山賊どもを分断すべく次の行動に移るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アストリーゼ・レギンレイヴ
――汚いわね。
オブリビオンに与する下卑た奴ら。
他から奪うを躊躇いもしない、その傲慢は目に余る。

【見晴らしのいい場所で迎え撃つ】
既に森の中で何人かが一戦を交えている可能性はあるけれど
討ち漏らしがないとも限らないわ
森を抜けてきたやつらを捕捉して交戦しましょう

待ち受けている間に意識を集中
力を溜めておくわ
森を抜けてきた刹那
出会い頭に鼻っ柱を叩くように黒剣で迎撃
そのまま最前線で敵の攻撃を引き付けるわ
周りに他の猟兵がいれば連携
そちらへ攻撃が向くようなら「かばう」
……悪いけど、簡単に抜けられると思わないで

悪心にはそれなりの応報がある。
最期に理解できてよかったわね?




 後背で燃える炎に照らされて、アストリーゼ・レギンレイヴの影法師が地に長々と横たわっていた。村と森の境界たる草地に佇む彼女は、足元から伸びる己の影と対峙しながら、その時を待ち続ける。
 オブリビオンの威を借りて他者から奪うことしか知らない、卑劣で傲慢な山賊ども。まだ姿を見せぬ敵の存在を、アストリーゼは心の底から軽蔑する。それは人として、戦士として、真っ当な感情であると同時に、彼女が内に秘めた”憎悪”がもたらす感情でもあった。
 すでに戦いが始まっていることは森から響く悲鳴と怒号で察している。アストリーゼはその場から動かず、肉体に力を溜め込み、心に情動を抑え込みながら、その時が来るのを待ち続ける。
 ――悪心にはそれなりの応報がある。最後に理解できてよかったわね?
 いざ賊を征した暁には、そんな言葉を投げかけてやろうとアストリーゼは心中で決めていた。しかし、残念ながら彼女のあては外れてしまった。そんな悠長な時間は、彼女には残されていなかったのである。
「……」
 アストリーゼの黒の一太刀は、あまりにも強烈すぎた。
 姿を見せたと思った次の瞬間には、彼女の黒剣は賊の命を叩き潰していた。
 掛ける言葉も、駆け引きもない。
 ただただ、その力が忌むべき者を屠っていく。
 その光景だけが、影絵のように炎に照らされていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャハル・アルムリフ
村の盾として防衛

宴の飯というものは格別だ、失うわけにはゆかぬ故な

村に効果範囲が及ばぬ位置で
近づいてくる山賊から【竜墜】で片付ける
できればついでに地形破壊で隠れ場所も潰しておく
行儀も知らん者共など丸裸にしてやろう
倒木を掴み、振り回せば思い通りには進めまい
当たれば殴り飛ばしてやってもよいが

来い、肴にしてくれよう
貴様らの罪は重いぞ

喧しい、汚い声で叫ぶな




 かつて戦場を共にした黒騎士の娘の後ろ姿を見遣りながら、ジャハル・アルムリフはゴキリと音を鳴らして肩を大きく回す。
 村を守る盾として、ジャハルはその身を使う心算だ。無粋な山賊も、炎狼も、一体たりとも自身の背より後ろに進めさせるつもりはない。
 麦穂に集る飛蝗のごとく押し寄せる賊どもを、ジャハルは至って落ち着いた様相で出迎える。武器はしまっている。徒手だ。
「来い、肴にしてくれよう」
 鈍く光るダンビラを振りかざして突進してきた山賊に向けて、ジャハルは一歩踏み込む。ごく短く発せられた言葉を言い終わらぬうちに、彼に流れる血が顕現させた竜の拳が、山賊の顔面を打ち砕いていた。
 そのまま腕を力任せに振り抜けば、竜をも墜とす膂力は山賊のみならず大地をも粉砕せしめる。
 轟音が夜の空気を震わせ、大火の煙よりも濃い土埃が辺りを覆った。ジャハルは手にこびりついた肉片を無造作に払うと、地に穿たれた大穴を前に腰を抜かしている山賊どもを睨みつけながら、言い放った。
「喧しい、汚い声で叫ぶな」
 祭りを汚すことも、宴の飯を邪魔することも、ジャハルにとっては大罪だ。行儀知らずの賊どもを片付けるため、ジャハルは今度は自ら押し迫る。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
年の終わりの一大行事に水を差すとは度し難い。
だがこの花盛乙女が戦場に立つ限り、奴らの目論見は果たさせんぞ。

私は見晴らしの良い村の入り口が周辺に陣取る。森では得物を充分に振るえぬからな。
構えるは二刀、短刀【乙女】に極悪刀【黒椿】。
作戦は簡単に見敵必殺、目に映る山賊共を切り伏せる。
二本の刀の長短を活かし、首と足を狙う。
首はいわずもがな事切れれば先の心配はない。
足を狙えば、目を盗んで走ることも出来まい。

今回は人を相手とはいえ不殺の必要がない。
不運だったな、山賊共。私は貴様らに情けをかけるほど優しくない。
殺す気で村に来たのだろう?なら私に殺されても、怨み辛みは受け付けんぞ。




 森のなかで仕留められた山賊どもの数は決して少なくなかったが、それでも多くの山賊どもが森を抜けて村へと迫ってきた。
 花盛・乙女は、両手に構えた二振りの刃の柄を強く握り込む。己の名を与えた誇りある短刀と、一族の業を背負った醜い悪刀。その二刀は来歴も見た目も大きく異なるが、秘める力は等しく彼女に勝利をもたらしてくれる。
「不運だったな」
 猟兵である自分と、その仲間に出会ってしまったことに。乙女は目に映る山賊どものなかから、最も近くにいる者を容赦なく切り刻んでいく。
 足の腱を裂いて動きを奪い、首を貫いて命を奪う。乙女の太刀筋に躊躇はない。いま彼女が相手取っているのは、人の皮をかぶったケモノ同然だ。不殺を心がける必要はなく、ましてや情けをかける必要など皆無に等しい。
「殺す気で村に来たのだろう? なら私に殺されても、怨み辛みは受け付けんぞ」
 乙女に目掛けて斧を振り下ろそうとしていた賊に、彼女はごく平坦で乾いた声で囁きかける。そして、交差していた腕を強引に広げれば、二振りの刃は山賊の首を地の上に転がり落とすことに成功した。
 さしもの山賊どもも、乙女の凄烈な殺しの所作を目にすれば、進行の足が鈍くなってしまう。そのチャンスを、彼女は決して逃さなかった。
 夜色の艶髪を朱に燃える風になびかせて、乙女は何も遮るもののない戦場で刃を舞わせる。彼女がこの地に立ち続ける限り、山賊どもの浅はかな欲望はなに一つたりとも、果たされることはないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リアーナ・シルヴァネール
◎下卑た笑み、嬲るような視線、私は大嫌い
ああいう男共には虫酸が走る、1人足りとも生かして帰す気はないわ。

◎地べたを這いながら私を見上げなさい、今生に見る最後のオンナよ
スカイステッパーで華麗に空を舞いながら、山賊共に二回攻撃を可能にする二丁拳銃を用いた弾丸の嵐を浴びせる。
見切りで石つぶてを躱して、弾丸を降らせて、着地点は味方の側。
跳躍、滞空攻撃、離脱を繰り返して敵を殲滅。
「一方的に嬲られる気持ち、少しは理解出来た?」

◎仲間がいるなら協力するわ
他の猟兵が来てるなら、そのフォローも欠かさない。
空からの支援は何より頼もしいはずだから。



薄闇のなかでもそれとわかるほど、大地は山賊どもが流す血で赤く染まっていた。立ち昇る鉄錆びた臭気に、リアーナ・シルヴァネールはその端整な顔を不快感に歪めることを隠そうとしない。
 ――下卑た笑み、嬲るような視線、私は大嫌い。
 地を這いずる山賊ども見下ろすリアーナの瞳は、文字通り虫けらを見下ろすかのように冷え切っている。彼女が両手に構えた二丁拳銃の銃口は、狙い違わず山賊の頭部に向けられていた。
 銃声が夜の空を切り裂き、一拍遅れて響くものは賊が漏らした断末魔の悲鳴。獲物を仕留めたリアーナが流麗な体捌きで虚空を蹴れば、彼女のしなやかな肢体は舞い踊るがごとく再び空へと戻っていく。
 死に物狂いで山賊が投げてきた石つぶても、熟達した冒険者でもあるリアーナの前では児戯同然だ。複雑な軌道を描きながら体を宙空でひねり、つぶてを避けると同時に彼女は引き金を四度引く。
 ――今生に見る最期のオンナよ。絶望と共に脳裏に焼き付けてゆきなさい。
 銃弾の嵐を巻き起こしたあと、ようやくリアーナの足が地を踏んだ。
 残された者は、数多の山賊の亡骸と虫の息で這いずる敗残兵のみ。かつて忌むべきものとされたリアーナの異色の双眸が、最後の山賊に向けられる。
 そして、なんの躊躇もなく銃弾を浴びせた。
「一方的に嬲られる気持ち、少しは理解出来た?」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『マルコシアス』

POW   :    業火転命
【短剣から放たれた「地獄の炎」 】が命中した対象を燃やす。放たれた【転生誘う紅蓮の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    虚空断絶
【呪詛を乗せた短剣 】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    炎鎖爆滅
【鞭のようにしなる炎】が命中した対象を爆破し、更に互いを【灼熱の鎖】で繋ぐ。
👑17
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 狂騒とも呼べる猟兵と山賊との戦いが終わりを迎えたころ。森と村を見渡すことの出来る高台に立ち、戦の趨勢を見守っていた炎纏う魔獣は、炎の息吹を吐いて頭を振った。
 一言も発さぬが、それは愚かな山賊どもの失態に呆れているようであり、あるいは、猟兵たちの見事な戦いぶりに感嘆しているようでもあった。
 “紅蓮侯”マルコシアスは鞘から愛刀を抜くと、地を蹴って高台から森へと飛び降りた。
 そして、空を貫く矢のように森を駆け抜けていく。戦場はきっと、森と村の狭間の地となるだろう。
 いまだかつてない強敵……猟兵たちとの戦いに昂ぶりを覚えているのだろうか。大きく裂けた炎狼の口元は、笑みを浮かべているかのように釣り上がっていた。
花盛・乙女
後ろで隠れていた割には随分と早いご到着だな、犬っころ。マルコ何某といったか?
まだ刀の血も乾いておらぬというのにせっかちな奴だ。
…これほど血に塗れる戦場は初めてだ。私も昂ぶりが隠せん、未熟なものだ。
さて、貴様のその炎でも切って、濡れた刃を乾かすとしようか!

警戒すべきはあの短剣だ。
一切を切断せしめるという邪気を感じる。刀で受けるのも避けたほうがよいか。
であれば簡単だ。剣戟の暇も与えず、ただ斬るのみだ。
炎を恐れると思っているかもしれんが、貴様も全く不運だな。
既に我が心、炎など恐れるに値せん。貴様を切るという昂ぶりを抑えられんのだ。

我が剣刃の一閃、冥土の山賊共への土産話に受け取るが良い!




 鼻をつく血の匂いは、悪い酒のように花盛・乙女の心身を酔わせていた。その身の奥底で滾る熱もまた、戦の高揚がもたらしたものであろうか。彼女は頬を伝い落ちる血の一滴を親指で拭い去ると、火照りを冷ますために深々と息を吐き出した。
「後ろで隠れていた割には随分と早いご到着だな、犬っころ。マルコ何某といったか?」
 森の木々を薙ぎ倒さんばかりの勢いで眼前に躍り出てきたマルコシアスに、乙女は常よりもいささか高揚した調子で挑発する。
 マルコシアスは何も答えない。しかし、血を滴らせる二刀を構えた乙女が配下の山賊どもを屠った存在であり、油断ならない使い手であることはすぐにわかったようだ。
 身の毛もよだつ雄叫びを上げながら猛突進してくるマルコシアスに、乙女は腰を低く構えて相対する。乾いた唇を舌で湿す仕草は彼女の昂ぶりを如実に現し、それは戦に喜ぶ羅刹の一面であると同時に、血に悦ぶ艶めかしい一面でもあった。
 マルコシアスの炎纏う刃をかいくぐるように回避した乙女は、そのまま一息で敵の懐のなかへと飛び込んでいく。
 ――貴様も全く不運だな。既に我が心、炎など恐れるに値せん。
 炎よりもなお燃え盛る昂ぶりが、乙女の血肉を焦がしていた。だから、何も恐れない。何も躊躇しない。
 ただ、斬るのみ。
「我が剣刃の一閃、冥土の山賊共への土産話に受け取るが良い!」
 閃く二刀がマルコシアスの胴を払い抜けると、新たな血が乙女の肌を赤く染め、身を苛む炎に薪をくべた。
 彼女の濡れた刃は未だ乾くことを許されず、滾る熱もまた収まることを知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アストリーゼ・レギンレイヴ
呆気ない相手だったわ
随分頼もしい配下をお持ちのようね、獣野郎

……お前は少しは骨があるんでしょうね
勿論、そうでなきゃ詰まらないわ

最前線へ出るわ
共に前線を担う味方があれば連携
見知った顔もいた気がするわ
積極的に協働しましょう

黒剣を握り締め、剣戟をできるだけ間断なく繰り出す
此方が主に担うのは防御・誘引
「殺気」を向けできるだけ相手の気を引き
他への攻撃も可能な限り「かばう」わ
炎の命中した装備は躊躇わず投げ捨てる
短剣の一撃は武器でいなすなど
大きな損傷を避けながら戦いましょう

僅かでも隙を見せたならユーベルコードを発動
出来れば脚を狙い、殺傷と同時に動きを制限
――何処へ行くの? まだダンスは終わっていないわよ




 猟兵と魔獣との雌雄を決する戦いの火蓋が切って落とされるなり、アストリーゼ・レギンレイヴの剣はいま再び黒き暴風と化した。
 縦横無尽に繰り出されるアストリーゼの剣戟は苛烈の一言で、強大な力を誇るマルコシアスすら防御に専念せざるを得ないほどだ。
 アストリーゼの紅い瞳が、炎の輝きを映して妖しく光る。宿す殺気はその強い輝きとは真逆の、凍てついた氷嵐。魂の奥底から引きずり出した憎悪を刃に乗せて、彼女は死の剣舞を踊り続ける。
「少しは骨があるみたいね、獣野郎。そうでなきゃ、つまらないわ」
 繰り出されたマルコシアスの炎の奔流は、アストリーゼの猛攻を退けるためだけに放たれた勢いに劣るものだった。それでも、その火力は恐るべきものがある。
 だが、炎に巻かれて焼け崩れた装備を投げ捨てるなり、アストリーゼは火勢に怯むこと無くマルコシアスに肉薄していく。
 己の身を囮と成して、アストリーゼは対峙する敵の意識を引きつける心づもりだった。それゆえに、彼女の猛攻はとどまることを知らない。マルコシアスの一太刀を防ぎきれず、骨に達するほどの裂傷を負っても、煌めく月色の瞳は陰るばかりか、ますます輝きを増す。
「徒花のように潰えなさい」
 放たれた力はアストリーゼの足元で、血色の茨にその姿を変える。それはもしかしたら、彼女の魂のカタチそのものなのかもしれない。
 殺意を糧に急伸する刃影の茨に貫かれたマルコシアスの血は花となり、アストリーゼの目の前で薄汚く咲き乱れた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ジル・クラレット
村と森の狭間、戦場へ向かうわ

華やかなドレスが好きだけれど
戦場には相応しくないものね
だから、この黒づくめの服は貴方の為
ねぇ、私もお相手してくださらない?

動きは躍るようにしなやかに
けれど相手の動きを良く観察して
【火炎耐性】の髪飾りをお守りに
攻撃は【第六感】も併用して回避を試みつつ
隙があればそれもついて、すかさず反撃へ転じるわ

重ね着してた黒を脱ぎ捨て、身軽になって
真紅のライダースーツで間合いを詰めて
【シーブズ・ギャンビット】で狙うのは勿論、その喉笛

まぁ、貴方にも綺麗な赤が流れてるのね

嬉しくてつい微笑してしまうわ




「ねぇ、私もお相手してくださらない?」
 黒衣に身を包んだ女は、凄惨な戦の場にはいささか不似合いな声音で囁いた。その声を一言で現すならば、豊麗と言うべきだろうか。聞く者の耳を酔わす、ある種の魔性を帯びた声だった。
 黒衣の女、ジル・クラレットは、彼女の声に応じて見舞われたマルコシアスの炎の鞭打を、まるで予知していたかのように難なくかわしてみせる。その名に込められた意味とよく似た、深い葡萄酒色の髪を炎風になびかせながら。
「本当はドレスでお相手して差し上げたかったけれど、そうはいかないものね。だから、よくご覧になって。この黒尽くめの服は、貴方のために用立てたものなのよ」
 二度、三度と、ジルはマルコシアスの攻撃を軽やかに避けていく。反面、募る苛立ちからか、炎狼が振るう剣筋は加速度的に荒々しくなっていく。
 マルコシアスを軸とした円舞の輪は徐々に狭まり、ジルが手に携えたダガーがその間合いに炎狼を捉えんとした頃。彼女は身に纏っていた黒衣を勢いよく脱ぎ捨てた。
 黒薔薇の花びらを思わせる黒衣が戦場に散ると、なかから現れたのは目にも鮮やかな真紅のライダースーツに身を包んだジルの肢体。彼女の舞はますます冴え渡り、その様は炎をパートナーとした舞踏を思わせる。
「まぁ、貴方にも綺麗な赤が流れてるのね」
 ジルが逆手に持ったダガーがマルコシアスの首筋を迷いなく貫いて、ダンスは終演の瞬間を迎える。
 炎に炙られて煮える血雫を目にしたジルは、パートナーを務めた獣に微笑みを向けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リアーナ・シルヴァネール
◎これが本命…濃厚な殺気ね
けれど狩り甲斐があるわ、生と死の狭間を踊るには丁度いい。
地を這う狼に魅せてあげる、空を駆ける私の舞を。

◎私を捉える事は出来ない、地へ降ろす事も
スカイステッパーで空を舞いながら二丁拳銃で弾丸の雨を降らせる。
位置取りには注意しながら空を跳躍、回避と射撃のバランスに気をつけて。
スカイステッパーの跳躍限界で一度着地する際は、常に炎狼を【踏みつけ】て、彼を踏み台に再度跳躍しスカイステッパーを発動するわ。

◎踏まれて気持ちいい?こういうのを悦ぶ男もいたのよ?
踏みつけては空を舞い射撃、これを繰り返して常に頭上の有利を崩さない。
上を制した者が勝つ、それだけは絶対の真理と信じて。




 マルコシアスが放つ怒気と殺意は、時を追うごとに濃密なものへと変じていく。経験の浅い冒険者であれば、この戦場に立っていることすら敵わないだろう。だが、リアーナ・シルヴァネールはこの戦いに恐れを抱くどころか、これこそが自身が舞うに相応しい戦場だと信じていた。
 相手が山賊だろうとオブリビオンだろうと、リアーナが取るべき戦術は変わらない。空を駆け、地を這う者どもに死をもたらす驟雨を注ぐのみ。
 彼方で燃え盛る弔いの大火の熱風に、その身を委ねているかのようにも見える。リアーナの跳躍はそれほどまでに軽快で、そして残酷なほど美しかった。
「踏まれて気持ちいい? こういうのを悦ぶ男もいたのよ?」
 山賊たちの死臭で穢れた地には、決して足をつけない。リアーナが踏みつけるものは、大胆不敵にもマルコシアスそのものだ。
 リアーナの蹴撃と挑発の言葉を受けて、マルコシアスは怒り、猛り狂う。炎狼の地獄の業火が幾度か彼女の体を巻き込んだが、常に間合いを取り続ける戦術のおかげか致命的な打撃とはなり得ない。
 空へと舞い戻ったリアーナは上昇運動の頂点で身を翻すと、銀の三編みを宙になびかせながら、魔銃の弾丸を無数に撃ち放つ。
 マルコシアスの肩が、耳が、太腿が、斉射された魔弾の雨に削られていった。その一つ一つの欠片は、すなわち命の欠片そのものだ。
 ――上を制したものが、戦を制する。
 リアーナが歩んできた過酷な人生のなかで掴んだその真理は、たしかにこの戦場を彼女のものにしていた。されど、その表情が優位を感じてほころぶことは、一瞬たりともなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒蛇・宵蔭
高みの見物はお終い、ですか。
私は少しでもマルコシアスの一手を削ぐよう仕掛けます。
森側から極力気配を殺して接近、咎力封じによる無力化を狙います。
他にしかける方の補助になれば幸いです。

私は直接斬り結んだりはしませんが、弱点をいたぶるのは得意なんですよ?
相手の嫌なタイミングを見極め、ひとつずつ確実に枷を施したいところ。
ついでに鎧砕きが発動すれば、皆さんのお役に立てるでしょうか。

貴方の血は、一体どんな味がするのでしょうか。
いずれにせよ……祭りで味わう酒に勝るものではなさそうなので、私は遠慮しておきますね。
代わりに鉄錆、よく味わうと良いですよ。




 猛攻に連なる仲間たちの姿を見遣りながら、黒蛇・宵蔭もまた、己の本分を果たすために戦列に連なる。
 もっとも宵蔭は、自分が最前線で得物を振るうタイプではないことを心得ていた。少なくともこの戦場では、彼は自分の成すべき務めが別にあることを知っていた。
「なにしろ、弱点をいたぶるのが得意なものでして」
 胡乱げな笑みを浮かべて告げると、マルコシアスが猟兵の攻撃を避けようと膝を曲げた一瞬を狙って、宵蔭は大仰な所作で片腕を払った。
 暗色の外套の内より放たれたものは、咎人の力を封じ込める枷だ。マルコシアスの全てを封じるまでには至らないが、拘束縄が炎狼の足を地に繋ぎ止めることに成功する。
 驚愕に目を見開いたマルコシアスに、猟兵たちの攻撃が津波のように殺到する。宵蔭もまた、その流れに身を投じた。取り出した武器は、彼が得意とする力と同様に、見る者に恐怖心を与える代物だった。
「よく味わうと良いですよ」
 有刺鉄線状の鞭が、それ自体がなんらかの生き物のように空中を走って、マルコシアスの体を打ち据えた。鉄錆、と名付けられた宵蔭の得物は、炎狼の血を吸い上げて瞬く間に紅色に染まっていく。
 芳醇な血の香りにダンピールとしての本能がくすぐられ、宵蔭は小さく喉を鳴らした。だが、そんなちっぽけな誘惑に惑わされはしない。彼は間合いを取りざまに鉄錆を振るって、吸い上げた血を払い飛ばす。
「どんなに美味な血を持っていたとしても、祭りで味わう酒に勝るものではないでしょう。貴方の血は私には不要です」

成功 🔵​🔵​🔴​

御手洗・そそぎ
さあ、大物のお出座しかの?
火を纏って居るようじゃな

村に入り込んで、家々を焼き討ちされては厄介じゃ
奴を村に入れてはならぬぞ!

わしは後方から、生まれながらの光で傷付いた仲間を癒し、仲間が誰一人欠けぬよう
かといって、わしが動けぬようになっては足手まとい故、あと一撃受けたら危険な者や、仲間の壁になる者、敵に集中的に狙われる者を優先し回復じゃ

いよいよ仲間が傷ついて、敵に守りを抜かれそうなら……生まれながらの光で複数同時の高速治療じゃ!

その後の隙を敵が狙うならなぎ払いで牽制

敵の動きを注視し、手薄な場所や弱った仲間を狙うなら、他の者に支援を頼んだり、敵の大技の素振りがあれば、仲間に警戒を促し被害を最小限にの




 閃く刃の嵐に、銃弾の雨。飛び散る血に、焼け焦げる肉。怒声、呻き、裂帛の気合。戦の凄惨さはいや増すばかりで、これがもし村のなかで行われていたとしたら、祭りは拭いきれない穢れにまみれていただろう。
 ならばこそ、生命を賭してでもかの炎狼をこの場で葬り去らねばならない。御手洗・そそぎは揺るがぬ決意を胸に懐き、前線で戦う仲間たちの背中を支えていく。
「炎狼、恐るるに足りん! おぬしらの苦痛は、このわしが引き受けようぞ!」
 敵の攻撃はなるほど、熾烈を極める。しかし、炎狼もまた血肉を備えた存在であることに変わりはない。そそぎは戦場全体を見渡して、マルコシアスが戦いのさなかに見せる大振りな攻撃や、攻め気によって生じた死角を逐次猟兵たちに伝えていく。
 ――戦いは、かろうじてこちらが有利に運んでおる。だが、持ちこたえられるじゃろうか……?
 何度目かの癒やしの光が、戦場に忍び寄る死の影を祓った。その直後、そそぎは人知れず片膝を地につけてしまう。
 猟兵たちのなかで、療術とサポートに注力するものはそそぎ唯一人のみ。彼女に掛かる負担は前線で敵と相対する者たちと同等か、それ以上のものがあった。
 だが、そそぎは血が滲むほど唇を噛み締めて立ち上がる。
 いまここで倒れるわけにはいかない。己が倒れることは、この戦場に立つ者全てが倒れることと同義であった。
「足手まといにはならぬわ。それに、誰一人として仲間を欠かしたりはせぬ!」
 最も小さき者は、誰よりも強く、そして大きかった。
 その身が果てるその一瞬まで、きっとそそぎは、奇跡の光を齎し続けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
POW、及び<怪力>を活かし切り込み
【竜墜】で足元の地形を破壊することで体勢を崩し
虚空断絶での追撃を避ける
または狼の体を蹴って跳躍、距離を取る

<生命力吸収>で体力を補いながら戦闘を継続する

随分と餓えていたのか知らんが愉快そうだな、獣よ
――俺も、なかなか悪くないと思っているがな

鞭と伸びてくる炎に気付けば先制攻撃
どうせ捕われるのならば
同質の【ドラゴニアン・チェイン】で此方からも狙ってくれよう
喰らってしまった爆破、炎は<激痛耐性>も利用し耐え凌ぐ

近くに切断攻撃に倒れた者あらば抱え、退避

燃やされようが斬られようが
此処で立ち止まる理由には成り得んのでな




 そのとき戦場に広がった療術の恵みがなければ、ジャハル・アルムリフは意識を保つことができていなかっただろう。それほどまでに、彼がマルコシアスから受けた一太刀は致命的なものだった。
 ――だが、俺の脚は俺を支え続けている。まだだ。
 互いの生を喰らい合う、泥と血にまみれた戦いだった。
 その気になればジャハルとて、他の猟兵と同様に器用に立ち回ることも出来ただろう。だが、彼はそうしない。絶えず炎狼の前面に推し立ち、隙を生じさせる代わりに地形を豪腕で崩し、身に受ける怪我は体力を奪う術で補う。
 不器用で、泥臭い、ともすれば非効率的にも見えるジャハルの戦い。だが、彼が拳を振るうたびにマルコシアスの表情は歪み、彼が一歩踏み出すたびにマルコシアスの足が下がる。
 ジャハルの獰猛な気迫は、確かに強大なオブリビオンに恐怖という名の毒をもたらしていたのだ。
「愉快じゃないか、獣よ。お前がそうであるように、俺もコイツを悪くないと思っているぞ」
 その言葉は、当事者たるジャハルとマルコシアスにしか聞き取れない。放たれた爆炎の鎖に臓腑を焼かれながらも、彼は苦痛をどこかに置き忘れてしまったかのように、すかさず竜鎖を以って互いの体を繋ぎ止める。マルコシアスが、苦痛に絶叫した。ジャハルが、口の端を歪めた。
 退かず、逃さず、ただただ喰らう。
 燃やされようが、斬られようが、ジャハルにとってそんなものは此処で立ち止まる理由には成り得ないのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

華切・ウカ
現れましたね、紅蓮侯さん。
ウカのお相手も、願います。

あなたの炎と、ウカを生んだ炎の熱。
どちらが熱いものでしょうか。もちろん、屈する気などないのですけれど。

攻撃は花鋏を周囲にできる限り生み出して応戦。
刃での攻撃うけるなら、花鋏で受ける。ひとつで無理ならふたつ、みっつと重ねて。
攻撃は守りに徹した以外の、残る自身の分け身ともいえる物を使って。
攻撃を受けるのは覚悟の上。攻撃を外さぬために懐に、確実に攻撃を当てられる距離までつめます。
狙うのは、愛刀持つ腕のほうを。
痛み生まれれば攻撃も鈍るでしょう?

他の猟兵さんともできるなら協力を。
ちょっとでもほかの方の助けになれれば幸い。




 誰も彼もが疲弊していた。
 最前線の一角を担い続けていた華切・ウカも、そうだった。愛らしいかんばせの半分は、幾度となく巻き起こった炎の嵐に無残に焼けただれ、片腕は腱一本でかろうじて繋がっているだけの有様だ。
「ウカのお相手も、願います」
 そんな体だというのに、ウカは前の猟兵の一手に立ち代わって名乗りを上げると、かつて自身がモノだったころの分身たる花鋏を浮かべ、マルコシアスとの決戦に挑んでいく。
 炎狼の呪詛を込めた剣の一振りで、一度に三挺の花鋏が砕け散った。構わない。そうなることは幾度も刃を交わしてきた相手だから、とうにわかっている。だからウカは、魂の奥底に眠る古き記憶を呼び覚まし、精神力が続く限り花鋏を生み出し続ける。
「要らぬでしょう」
 刀よりも切れ味は劣るだろう。剣よりも断つ力は劣るだろう。
 だが、"断ち切る"という行為において、鋏に勝る刃は存在しない。
 もはや要らぬとウカは告げ、その通りになった。マルコシアスの防御力を飽和した断ち切りの嵐が、彼の者の利き腕を落としたのだ。
 いま再びの絶叫が、地と天を激震させた。マルコシアスが手当たり次第に焼き払っていく業火の海のなか、ウカは間合いも取らずに一呼吸で肉薄する。
「あなたの炎と、ウカを生んだ炎の熱。どちらが熱いものだったのか、答えがわかった気がします」
 業火に灼かれて赤熱した最後の花鋏を手にし、ウカは駆けた勢いそのままにマルコシアスの胴を鋏み断つ。一拍置いて、炎よりもなお熱を帯びた血流が、ウカの体と大地を赤く染め上げた。
 断末魔の雄叫びは、上がらなかった。“紅蓮侯”マルコシアスに、もはやそれだけの力は残されていなかったのだろう。
 二つに分かれた炎狼の体躯が、背後でゆっくりと崩れ落ちていく。ウカは強敵の最期を一瞥したあと、刃に映した己の変わり果てた顔を見て、そっと溜息をつくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『荒野の大宴会』

POW   :    たらふく喰ってたらふく飲む

SPD   :    巧みな芸を披露する

WIZ   :    料理を準備する、冒険を歌にする

👑11
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 凄烈を極めた猟兵とオブリビオンたちの戦いは終わり、辺りは夜の静けさが戻ってきた……ということにはならなかった。
 家のなかに隠れているようにという注意を守らず、こっそり猟兵――この世界では冒険者と呼ばれるが――たちの戦いぶりを覗き見していた村人たちが、マルコシアスが倒れた瞬間に、村から飛び出してきて大歓声を上げたのだ。
 それからは、もはや山賊やマルコシアスとの戦い以上の大騒ぎだった。
 戦いのさなか顔色一つ変えなかった戦士たちですら、彼らの勇姿をこれ以上ない言葉で褒め称え、感謝を伝える村人たちの勢いにたじろいだほど。
 猟兵たちが治癒や身支度を整えるあいだも、村人たちは彼らが指一本動かす手間も与えぬほど甲斐甲斐しく尽くしてくれた。
 グリモア猟兵が冗談めかして言った通り……いや、ソレ以上の歓迎をもって、猟兵たちは村の祭りへと招かれたのである。
リアーナ・シルヴァネール
◎アナタ達の為に戦ったんじゃないわ、勘違いしないで
私はただ私の生きる意味を求めて戦っているだけ、誰かの為に戦う様な女じゃないの。
まぁ…悪い気はしないけど。

◎何か見たいのね、なら特別に魅せてあげる
不機嫌な顔してるだけじゃ雰囲気に水を刺すって?
なら私はスカイステッパーで空の舞を披露してあげる。
銃を使わない代わりに、身体を大きく使って軽やかにダンス。
私の舞に見惚れなさい。

◎ふぅ…妙な感じね、私が歓迎されるなんて
つい乗せられて芸まで見せちゃった、後は端っこでゆっくり飲ませてもらうわよ。
ま、何にせよ私の力が少しでも役に立ったなら…私が生きてる意味もあるのかもね。




 村の外で戦っていたときも強い熱気を感じていたが、実際に火を弔う炎の側へ近づいてみると、その熱と眩しさは目を開けているのも苦労するほどだった。
 戦場において華麗な空中戦を披露していたリアーナ・シルヴァネールは、猟兵たちのなかでも取り分け村人たちの目を引いたようだった。
 静かに酒の一杯でも飲むつもりだったが、彼女はすぐに人に囲まれて場の中心に据えられてしまう。
「アナタ達の為に戦ったんじゃないわ、勘違いしないで」
 過酷な生い立ちを経て戦士となったリアーナは、戦いのなかで己の生きる意味を模索していた。彼女にとって、戦とは自分自身のために行うものなのだ。
 けれども、村人たちは口々に言う。「あんたがどう思っていても、俺たちにとってあんたは命の恩人だ」と。
 まっすぐに向けられる言葉が、少しだけ、面映ゆかったのかもしれない。
 リアーナは「なにか舞を披露してくれ」というリクエストに素直に応えることにした。この場に座っていたら、お酒よりも先に称賛の嵐に酔ってしまいそうだったから。
 リアーナは再び空を自在に跳ねる舞を村人たちの前で披露する。無論、銃は使わない。空を泳ぐ銀魚のような優美な姿に、素朴な村人たちは口をぽかんと開けて見惚れるばかり。
 空中舞踏を終えて地に降り立つなり、リアーナに向けて惜しみない賛辞と拍手が贈られた。ここまでの歓迎を受けたことは彼女の記憶のなかでもそう多くはなく、不思議な心持ちのまま酒宴の片隅に戻っていく。
「……私が生きている意味、か」
 いまだ続く祭の喧騒を見つめながら、リアーナは独り言ちた。村人たちの姿を見つめる彼女の瞳が、常よりも幾らか和らいで見えたのは、気の所為だったろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

華切・ウカ
えへへ、こういうお祭りはとっても良いですね!
この大火好きです。弔いの炎というけれど、ウカを生んだ炎みたいな……うぅん、やっぱりちょっと違うかな。でも、あったかさを感じます。
感謝と祈りがこめられているからでしょうか。
ウカも人々の想い受ける大火、あなたと出会えた事に感謝を。
感謝…今こうしていられるのも、共に戦った猟兵さん皆のおかげ。それぞれにお礼を言うのは難しそうなので、この大火への祈りに添えて。
ありがとう、と。

と、ずっと見ているのも飽きてきました。
踊りの輪に加わってきます!
踊りってどんな感じです? 特に決まりなく?
ウカも動けなくなるまで、踊ります! 最後まで頑張ってのこっちゃいますよ!




 村の広場に焚かれた火を弔う炎の側には、鍛冶火に感謝と祈りを捧げる祭壇が設けられている。その周囲を祭の余興や踊りで盛り上がる村人の輪が取り囲み、さらにその周囲をご馳走が振る舞われている長机が囲んでいた。

 戦場の炎と変わらないくらいの火勢を誇る、火を弔う炎。華切・ウカは、キレイに元通りになった顔をほころばせながら、大火の側に設けられた祭壇に近寄っていく。
「この大火好きです。弔いの炎というけれど、ウカを生んだ炎みたいな……」
 彼女の言葉が耳に入ったのだろう。祈り捧げていた老年のドワーフが、大きく頷いた。いわく、「鍛冶で生計を立てているこの村の者にとって、火こそが命の源」なのだという。
 文字通り炎から生み出されたヤドリガミであるウカとは、少しだけニュアンスが違う。だが、命を生み出し育んでいくという意味において、根底は変わらないものに思えた。
 手を差し伸べれば、ヤケドしそうなくらい熱いけれど、そこには物理的な熱とはまた違った温もりが宿っている……ウカには、そう思えたのだ。
「よければ、ウカにも祈らせてください」
 いまこうして無事にこの場に立っていられるのも、たくさんの仲間達のおかげだ。これまでも、これからも、その繋がりが自分と数多の人の命を守り繋いでいくのだろう。
 真っ直ぐな想いを乗せて、ウカは火を弔う炎に感謝を捧げる。
 不意に、背後から声をかけられた。仲間や村人たちが、一緒に踊ろうと誘ってくれたのだ。
 まだまだ若いウカは、ずっと炎を見つめて過ごせるほど落ち着いてはいない。彼女は喜んでみんなの輪に加わり、気のむくまま踊り明かすことにした。
 その前に一度だけ、ウカは大火を振り返った。
 あなたと出会えたことに感謝を、と。心のなかで炎に告げるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御手洗・そそぎ
疲れた……わしは年的に酒も飲めぬし、食べる量も人並み以下じゃて、きれーなおねーさんの膝枕でゆるりとするかの

贅沢を言えば、風呂に入りたいところじゃが……祭に水を差す訳にもいかぬ
郷に従えと言うものじゃ

ところで、それは村の祭の装束かえ?
汗で服もべたつく故……よければ、わしもそれを着てみたいのじゃが

勿論、貸して貰うだけで十分じゃ

ちゅうても……胸元がガバガバじゃー
上から覗き見るでないぞ?

出された料理は少しずつ皿に盛り、一通り味わおうかの
ほほう……このチーズは匂いは癖があるが、味は絶品じゃな

こちらの葡萄は程よい酸味と芳醇な香りじゃし、甘いばかりでないのがいい

食器や杯は適度にまとめ、後で片付けやすいようにの




「やっぱりサイズが合わんの……」
 御手洗・そそぎは、しきりに胸元を抑えては溜息をついていた。
 彼女が今身につけているものは、湯浴みのあとで村から提供してもらった祭祀用の装束だ。ドワーフ用では小さすぎるため、数少ない別種族のものを用立ててもらったのだが、これがなかなか大胆に胸元が開いたデザインで、スレンダーなそそぎには少々落ち着かない代物だったのである。
「上から覗き見るでないぞ?」
 と、そそぎは視線を上に上げて唇を尖らせた。
 いまそそぎは、広場の長椅子に横たわって祭の騒ぎを眺めている。と言っても、ただ横たわっているだけではない。ドワーフが多い村人のなかでは珍しい、美しいエルフの娘が彼女のために膝枕をしたいと名乗り出てくれたので、お言葉にも物理的にも甘えている最中だった。
「うーむ、極楽極楽。とんでもない戦いじゃったが、苦労が報われるのう」
 人間よりも小さなドワーフたちにとって、小柄なそそぎには親近感が湧くのかも知れない。小さな体で激戦を戦い抜いた彼女の姿に勇気づけられた者は、少なくないようだ。皆一様に、そそぎを労うために心尽くしのおもてなしをしてくれる。
「うむ、うむ、このチーズは匂いに癖があるが、いい味をしておるのう。あーん……、ぱくっ。ほほう、こっちの葡萄も味も香りもたまらん。持って帰りたいくらいじゃ」
 エルフのおねーさんの膝枕でまったりしつつ、かわいい女の子たちが差し出してくれる食べ物を楽しむそそぎ。元々は少食な彼女だが、まるで王侯貴族のような待遇に、ついつい満腹で動けなくなる直前まで食が進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
師父アルバを祭に連れて。

村人は随分と抑圧されていたのだろうな
まるで栓が抜けたようだ

手には串焼き、前には料理、横には杯
食べ終えた皿は几帳面に脇へ積み重ねて粛々と食事を

祭の風景を見渡せば
実に有意義な一戦であったと答え
…光栄に。

まだ五分目といったところだが?
師父こそもう喰わんのか、余計縮むぞ

…ふむ、此処まで持て成されてはな。芸の一つも披露せねば

――といって俺の役目は師父の髪越し、洋燈を掲げるだけ
普段は非常用の照明代わりとは言わずにおくべきだろうか
宝石で出来た硝子灯のように輝きを散らすさまは、我が師ながら美しく映り
容易く目を奪われる

歌われる英雄が何処の誰かは存ぜぬが
飯も進むというものだ


アルバ・アルフライラ
【WIZ】
ジジ(f00995)と
全く、私がいないからと無茶をしおって
口開けば愚痴ばかり零すも
…心躍る戦いであったか?
ならば良い、許す
今宵は英雄を饗す為の祭だ
お前も良く食べ、精を付けるが良い
――大儀であったぞ、我が従者

にしても…お前良く食べるな
それで未だ五分等冗談…否、お前ならば言いかねん
ええい背が高いが故の余裕と嫌味かそれは

ほう、芸とな?
好奇心を胸に従者を見るも
握られた洋燈に察しついた
お前…最近主使いが荒くないか?
光帯び煌めく宝石の下
集まる人々の視線が痛い
…此の侭何もせぬ置物になるのも癪だ

――ならば、私は歌でも紡ぎましょう
星の守り手たる、不器用な英雄の冒険の歌を
従者を一瞥してはふふんと微笑んで




 卓に盛られた料理の数々を、ジャハル・アルムリフは最初の一口から全く変わらないペースで平らげていく。
 片手の指には三本の串焼きをはさみ、戦いの時には見せなかった器用さで一本ずつ食らっていく。その合間にも、目の前の煮込みや蒸し魚、酒で満たした杯を次々と腹の中に収めていく。
「にしても……お前良く食べるな」
「まだ五分目といったところだが? 師父こそもう喰わんのか、余計縮むぞ」
 ジャハルのあまりの健啖ぶりに呆れるやら感心するやら、複雑な表情を浮かべているのはアルバ・アルフライラだ。彼は従者の軽口になにか言い返そうとしたが、溜息のあとに労いの言葉を口にする。
「まあいい、今宵は英雄を饗す為の祭だ。今ばかりはお前の嫌味も大目に見てやろう。ただし、今ばかりだぞ? やれやれ――大儀であった、我が従者」
「……光栄に。実に有意義な一戦だった。戦もそうだが、齎された結果も悪くない。惜しむらくは、師父にあの炎狼を見せてやれなかったことくらいか」
 ジャハルはそう答えると、料理の山越しに視線を遠くにやる。火を弔う炎を囲み、エールのジョッキを片手に踊る村人たちは、心底幸せそうだ。
 彼の視線につられてその様を見遣ったアルバは、赤い炎の光に照らされた顔をほころばせると、「ああ、悪くない」と応じた。全ての猟兵の力を合わせてこその結果だが、平和を掴みとった腕の一つが己の従者と思えば、誇らしい気持ちになる。
「代わりと言うのもなんだが、師父。此処まで持て成されては、芸の一つも披露せねば。そうだろう?」
「お前……最近主使いが荒くないか? ええい、細かいことは今日は無しと決めたばかりだ。それに、此の侭何もせぬ置物になるのも癪だしな」
 二人に給仕をしていた陽気なドワーフたちが、彼らが余興について話していることを耳ざとく知ると、二人が何か言う前に「おい、英雄方がなにか珍しい余興を披露してくださるようだぞ」と皆に知らせてしまったのだ。
 集まる期待の眼差しに背を押されるように、ジャハルとアルバは大火からやや離れた暗闇を背に立った。
 ジャハルは洋燈を掲げると、アルバの背後から煌めく光を散らしていく。火を弔う炎が太陽だとすれば、洋燈が零す静謐な輝きは、さながら宙に広がる星の海原だろうか。
 アルバが紡ぐものは、星の守り手たる不器用な英雄の歌だ。
 彼の美声に酔い痴れる聴衆は村人たちだけではない。ジャハルもまた、詩を朗々と歌い上げる師の姿と声に心奪われている一人だった。
 もっとも、意味深にこちらに向けられるアルバの視線も、歌われる英雄が何者なのかも、ジャハルはまだ気がついていない。あるいは、気がついていないフリをしているだけなのかもしれないが。
 そればかりは、ジャハル自身にしかわからないことだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジル・クラレット
もし居るのならショコラッタ(f02208)と
いなければドワーフのおじさまをお相手に

この村のとっておきはあるかしら?
あればそれを頂ける?
なければそうね…赤の葡萄酒を

普段はのんびりとお酒を愉しむ事が多いけれど
今日は村の習慣に則って、私も賑やかに
あなた、好きな食べものは?
じゃあ、それもう1皿…ううん、10皿いっちゃいましょ♪
私のお酒も追加ね!じゃんじゃん持ってきて!

ころころと笑っていた口元をふと閉じて、夜空に還る炎を眺めて
…こんな赤も悪くないわね
酔いに微睡みながら、この炎を歌にしてそっと口ずさむわ
忘れないように
憶えておく為に




「この村のとっておきはあるかしら? あればそれを頂ける?」
 隣にいる者の声を聞き取るのも難儀するほど、祭は大いに盛り上がっていた。ジル・クラレットは声をかけたショコラッタ・ハローと共に料理の並ぶ卓につくと、給仕にいそしむ村の娘にさっそくお酒を頼んだ。間を置かずに出されたのは、質素な木製ジョッキに波々と注がれたダークエールだ。
「おれは酒は飲めないし、白湯でいい。それと肉だな、肉。なにはともあれ肉だ」
「ええ、たくさん働いて体力使ってしまったものね。それをもう一皿……ううん、十皿いっちゃいましょ♪」
 ジルが景気よく注文するなり、世話を焼きたがりな村人たちがこぞってオススメ料理を運んでくるものだから、二人の目の前はあっという間にご馳走の山が築かれてしまう。その様を見て、ジルとショコラッタは声を上げて笑い合った。
 普段はゆったりとお酒を愉しむことが多いジルだが、郷に入っては郷に従えという言葉通り、村人たちに進められるまま、求められるまま、賑やかな酒宴で話に花を咲かせていく。
 呑みっぷり器量も良いジルはすぐにドワーフの男衆たちに気に入られ、まるで女神かマドンナのような扱いだ。彼女がエールを飲み干し、料理を平らげるたびにやんややんやの喝采が起きていた。
 夜がふけて、祭の熱気に村人たちのなかにも疲れが見え始めたころ、ジルは夜空に向かって揺らめく炎を見上げながら、火を弔う炎を歌にして口ずさみ始めた。
 ――こんな赤も悪くないわね。
 そんな思いを心中で呟きながら、ジルはこの記憶を魂に刻み込むように奏で続ける。いずれ、いま見ている光景も炎の熱も忘れる時が来るだろう。
 けれど、自分が抱いた想いだけは忘れぬように。憶えておくために。
 ジルは炎が揺れる音と共に歌い続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒蛇・宵蔭
私はこちらで酒精をいただくことだけを楽しみに、働いたといっても過言ではありません。
色々な世界での飲み比べが楽しみなだけで、あまり強いわけではないのですが。
あ、肉をいただけるなら確り焼いたやつでお願いしますね。
血が滴るようなのはちょっと気分が悪く……。

炎に関わる良い思い出はあまりないのですが……。
人々に崇められる火の、なんと美しいものか。

喜び歌い踊るドワーフ達を見つめていると、素直に嬉しく思います。
これでひとつ善行を積めたか、それともまた罪を重ねたか。
赤く燃える月に献杯しつつ、神聖な炎を眺め、静かに過ごします。




 エールを片手に祭の様子を眺めながら、黒蛇・宵蔭は静かな時を過ごしていた。そうアルコールに強いわけではないが、その土地その土地ごとに全く別の顔を持つ酒というものが、彼は好きだった。
「良いものですね。私はこちらで酒精をいただくことだけを楽しみに、働いたといっても過言ではありませんから……おっとっと」
 新たに注がれた酒がこぼれそうになり、宵蔭は慌てて口のほうをグラスに寄せていく。血がしたたるものが苦手な彼のために用意された肉料理は、香草と果物の果汁で風味付けされており、舌も胃袋も満足させてくれた。
 最初は宵蔭の怪しげな風体に戸惑っていた村人たちも、すぐに彼の物腰柔らかな態度にほだされて、気さくに話しかけてくるようになった。
 外の世界の風景に、彼が見聞きした巷の話。あまり過去を語ることのない宵蔭だが、猟兵ならば誰もが知っている何てことのない話題も、アックス&ウィザーズの辺境に暮らす村人たちは、胸躍る未知の物語として喜んでくれる。
「炎に関わる良い思い出はあまりないのですが……。人々に崇められる火の、なんと美しいものか」
 盃に口をつけるペースも落ちてきたころ、いまだ宴もたけなわと言った様子で火を囲んで踊る村人たちを遠くから見つめながら、宵蔭は小さな声でつぶやいた。それから、自分の眼前に掲げた手を数度開け閉めする。
 果たして、今宵の戦いで自分は善行を積めたことになるのか。それとも、罪を重ねたことになったのか……火を弔う炎を見つめていても、その答えはついぞ宵蔭の頭には浮かんでこない。
 ただ、喜びを体いっぱいに表現するドワーフたちを見ていれば、素直に嬉しさが胸のなかに広がっていく。
「今はまだ、それだけでいいのでしょう。きっと」
 宵蔭は、炎の舌先に舐められて赤々と輝く月を見上げ、手にした杯を掲げた。
 もしかしたら、あの月に尋ねたら答えを教えてくれるかもしれない。そんな夢想に、小さくかぶりを振りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月23日
宿敵 『マルコシアス』 を撃破!


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#アックス&ウィザーズ


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ライヴァルト・ナトゥアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト