●空の柩
——この部屋が、空になった日のことを覚えている。
「……」
少し出かけてくると言っただけの弟は青い瞳を細めて笑ったのだ。
『たまには、僕が先に行っても良いでしょう。兄さんは、いつも先に行くんですから』
小さく笑う姿は、いつかと変わらない。少しばかり生意気になった弟は、その日、いつもより早く出かけて——そうして、帰ってこなかった。出かけた先で、其処で何が起きるか知っていたかのように。
「……」
擦れた声は、また弟の名前を呼べないまま。血が繋がっている訳じゃ無い、兄弟のように過ごしてきたから、少しだけ生まれが早かったからだけの兄でも、あいつを守るのは俺で、あいつを救うのも俺だと思っていたのに。
強く握る拳が音を鳴らす。何度目かの吐息が空っぽの、あの日の侭の部屋に落ちて——外から、ガシャンと派手な音が響いた。
「……? 外の様子が……」
「逃げろ! 早く」
「急げ、身を隠すんだ!」
気が付けば、集落に火の手が上がっていた。轟音と共に小屋が崩れる。ちいさな畑が踏み荒らされ——血が、舞う。
「あれ、は……」
「奴らだよ! 奴らが「花嫁」を探しに来た! 連れて行かれるぞ! アイン、お前も早く隠れて……」
「はは、そうか。来たんだな」
一歩、前に出る。右で小屋が崩れた。左で通りに血溜まりができる。奴らが、笑っている。
「アイン! 逃げろ、お前の目は……!」
叫ぶ声が遠く掠れ、カチカチと歯を鳴らすようにして「それ」は迫ってきていた。
あの日、俺の家族を奪ったものが。
「明けの明星に告げナサイ」
「希有な瞳を」
「色彩は天にあるのだから」
●果ての青に告ぐ
「——占の結果が出た。ダークセイヴァー上層部、闇の種族が動き出したようだ」
いちど、伏せた瞳をゆっくりと開くようにして告げたのは春・鷙呂(春宵・f32995)であった。
「彼奴は、ある魂人だけを狩り集め己の館に連れ去ろうとしている。己が花嫁としてな」
花嫁と言っても、婚儀を求めてのことではない。
「己が行う儀式の贄だ。永遠の生贄として、青い瞳を持つ元オラトリオの魂人を集めている」
連れ去りを命じた闇の種族にとっては、それが希有であり、貴重なのだ。
「己が「羽化」の式と告げ、神へ嫁ぐには羽根を隠して来いとも言う。花嫁のヴェールは、災禍から守るためにあったものであろうにな」
そう言って息を吐くと、鷙呂は集まった猟兵達を見た。
「首魁は蛇王ペイヴァルアスプ。今から向かえば、集落で魂人が襲われるところに割り込むことができるだろう」
襲撃を命じられたのはシャドウダンサー達だ。四肢を戦闘用に換装した殺戮の貴婦人は、収穫の為に、それ以外の邪魔者は全て消し去ろうとするだろう。
「彼奴らが探す「花嫁」に選定されるのは、青い瞳をした男、元オラトリオの魂人だ。放っておけば、自ら戦いかねん」
因果はあるようだが、と鷙呂は視線を上げた。
「暴れ馬にも近い。名はアイン。気にかけておいてくれ」
それと、と鷙呂は告げる。
「シャドウダンサー達だが、腐食の紋章を身に着けている。通常の攻撃で、こちらの動きを鈍らせてくる」
攻撃の速度を鈍らせられれば、手数の多い相手の方が有利になるだろう。
「完全に防ぐことは難しいだろうが、分かっている分、対処は可能だ。まずは、警戒を」
そう言って、鷙呂は猟兵達を見た。
「闇の種族は極めて強大な存在だが、羽化の儀式中の今であれば、倒すことができる筈だ」
より強大なオブリビオンへと「羽化」する為の儀式中である今だからこそ、機がある。
「——刻限だ。武運を」
短くひとつ鷙呂は告げる。淡く灯った金色の光が、路を作った。
秋月諒
秋月諒です。
どうぞよろしくお願い致します。
●各章
第一章:シャドウダンサー
腐食の紋章を装備。
→攻撃速度が落ちる。
青い目をした、元オラトリオの魂人を狩り集めようとしている
第二章:移動。詳細は不明
第三章:ボス戦
1章で集落で襲撃者を撃破、連れ去られそうな魂人を救出。
2章で闇の種族の館へ移動、3章でボス戦になります。
各章、導入追加後、プレイング受付告知致します。
プレイング受付期間はこの依頼ページ、マスターページでご案内いたします。
受付前のプレイングは全てお返しします。
状況にもよりますが全員の採用はお約束できません。
また、戦闘に関しては負傷描写が入ります。血とか苦手で……という場合は苦手な雰囲気になるかもです。
*魂人 アイン
青い目をした元オラトリオの魂人。暗めの青の目をしている。
過去に、兄弟のように育った青い目をした弟が連れ去られている。
●お二人以上の参加について
シナリオの仕様上、三人以上の参加は採用が難しくなる可能性がございます。
お二人以上で参加の場合は、迷子防止の為、お名前or合言葉+IDの表記をお願いいたします。
二章以降、続けてご参加の場合は、最初の章以降はIDの表記はなしでOKです。
プレイングの送信日は統一をお願い致します。
失効日がバラバラだと、採用が難しい場合がございます。
それでは皆様、ご武運を。
第1章 集団戦
『シャドウダンサー』
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POW : ダブル・グントー・ブレード
自身の【貴婦人の瞳】が輝く間、【腕部にマウントした軍刀と脚部仕込みナイフ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : クナイ・ダート・シューター
レベル分の1秒で【手首内臓のクナイ・ダート・シューター】を発射できる。
WIZ : ゴシック・サイバネティクス
自身の【身体能力が常人の9倍】になり、【四肢の戦闘用義体をフル稼働する】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●希有なりし天の瞳
一振りで小屋が倒れ、二振りで小さな畑が荒れた。逃げ惑う人々の声など気にならないのか——或いは、彼らは最初から眼中に無いのか。シャドウダンサー達は微笑みを浮かべたままに、集落を進んでいた。
「明けの明星に告げナサイ」
「夜明けに相応しき色彩を」
「希有な瞳を」
「探しなさい」
カチカチと鳴るのは人形のような間接か、刃か。分かっているのは——それが、異様であるという事実だ。踊るように振るわれる手も、軽やかな歩みも、その全てが不気味であった。
「色彩は天にあるのだから」
「……そうかよ」
襲撃者たちがどれ程異質でも異様であっても、青年にとっては関係に無いことだった。ゆらり、と彼は立つ。長く振るってはいなかった武器を手に襲撃者達を見据える。
「青い目が珍しいから? 貴重だってだけで俺の弟は奪われたのか」
お前達が、と青年——アインは大鎌を手に冷えた瞳でシャドウダンサー達を見据えた。
「お前達が奪ったのなら、暴れきってやるよ」
◆―――――――――――――――――――――◆
マスターより
ご参加ありがとうございます。
第一章受付期間:10月8日 8:31〜
●リプレイについて
集落内、シャドウダンサーと接敵したタイミングからスタート。
腐食の紋章:通常攻撃に乗ってきます。相手の攻撃速度を下げる。
●魂人・アインについて
武器:大鎌
ある程度の戦闘能力を持っている。必要ならば猟兵達に「永劫回帰」を使うこともためらわない。
それでは皆様、ご武運を。
◆―――――――――――――――――――――◆
上野・修介
※アドリブ連携歓迎
調息、脱力、己(内)と戦場(外)を観据える。
UCを起動し自身を加速させ行動力を上昇。接近しながら守護対象と敵の数・配置関係、周囲の状況を確認。
先ずは守護対象の壁になるように敵の前に突貫。
「果たして、出来損ないの人形風情が俺と踊れるか?」
UC範囲内の敵の『氣』の流れを阻害し行動を鈍化。
体勢は低く、フェイントと挑発を交えつつ、近くの敵を遮蔽、もしくは殴る・蹴る・ぶん投げる等で投擲物として利用し、敵の得物の間合いを殺すように懐に入り、関節・接合部等の構造的に脆い箇所、或いは生身の部分を攻め迅速に殲滅。
保護対象を巻き込まないように立ち位置と射線に注意。
状況次第では身を盾にする。
●境界
——そこは、正しく死地であった。
「……」
この地に住まう者にとって、紛うこと無き死地であった。悲鳴は怒声に変わり、血溜まりを踏むようにして地面を蹴ったひとりを、村の中から誰かが呼ぶ。
「待て、アイン!」
「……」
青い瞳をした彼が前に出れば、シャドウダンサー達が群れを成して襲い来る。それもまた、彼に——アインにとっては本望なのだろう。
——だからこそ、青年は踏みこむ。地を蹴る。一気に身を前に倒すように一気に、敵の前へと踏みこんだ。
「——まぁ」
ザン、と重く響く斬撃と共に、アインへと振り下ろされるはずであった刃が、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)の腕に沈んでいた。しとどに流れた血に、ゆるり、と修介の姿に気が付いたシャドウダンサー達が、笑う。
「まぁ」
「まぁまぁ」
カタカタと、歯を鳴らす笑いと共に真横からも刃が来た。
「——」
その刃に、修介は足を引く。一拍、身体の動きが鈍る。遅いか、とひとつ落とした言葉。ふ、と息を吐き、片腕を守りに使いながら——息を、吸う。
「……」
調息、脱力、己(内)と戦場(外)を観据える。
(「――氣を満たし――氣を呑む」)
腹の底へと息を落とし、丹田に力を入れる。拳はきつくは握らない。ゆるく、基本を忘れることなくゆっくりと足を引き——追撃の刃を、躱す。
「——まぁ」
シャドウダンサーの声が、ふいに低くなった。あの刃が通ると思っていたのだろう。腐食の紋章の影響。速度を落とした筈の相手が素速く——最初の踏みこみより早く動けば、不服と同時に相手の警戒もくる。
「な……ッあんた、どうして。それに、その腕……!」
慌てた様子のアインに、修介は軽く振り返って問うた。
「……怪我は」
「無い、けど」
「なら、良いです」
返す言葉は短くあった。安堵を視線で告げることは無く——そも、変化の乏しい表情でこそあったが、上野修介は穏やかな性格の青年だ。争いごとは好まず——されど、この拳で、この身ひとつで、出来ることがあるのを、知っている。
「踊りましょウ」
貴婦人の瞳が妖しげに瞬く。纏う気配が変わる。するり、踊るように滑らされた足が——次の瞬間、瞬発の加速へと変わった。
「危ない!」
アインの——魂人の警戒を告げる声が、耳に届いた。だが、加速と共に来た刃は、懐深く、一気に踏みこんできた人形が振り上げた剣は——空を、切った。
「——!」
「……」
斬り上げる刃は、修介の眼前で切れた。腰を沈め、瞬く瞳と共に上がった攻撃速度で空を切った一撃に続く一撃を人形は重ねる——筈だった。
「果たして、出来損ないの人形風情が俺と踊れるか?」
だが、その腕を修介が掴む。青年の踏みこみは、連撃の間を縫うように——掴んだ刃を封じる。一拍、その一瞬を使いきるように残る手で拳を叩き込む。
「ナ
……!?」
「右か」
一体、吹き飛ばした先に、足を引く。引いた足を軸に叩き込んだ回し蹴りは最初の踏みこみより早くあった。
『氣』の流を、あとひとつ活性化させたのだ。そして、敵の『氣』の流れを阻害させることで鈍らせた。相手の得物の間合いを、理解してしまえば——腐食の紋章があろうが、対応も対処もできる。
「……次だ」
短く、そう告げて修介は拳を握り直す。打ち倒した2体の向こう、警戒するように立つ人形達にフェイントを入れるように地を、蹴った。
大成功
🔵🔵🔵
グルナ・エタンセル
わー、この娘たち、オジサンのこと狙ってこない?
気のせい?
絶対モテ期ではない殺気!
花嫁ってキャラでもないし、間違いなのはすぐ気付くだろうけど。
人違いでも、まぁ、いっか。
義足から、大地にアンカーを。
元々移動速度は捨てる技だ。
鮫剣の刀身を限界まで拡大して、一気に薙ぎ払わせてもらおうかな。
物騒なダンスは、同じく剣で対応。
どうせアンカー打ってて、回避できないからね。
オジサンの年の功を活かすさ。
ま、生傷はいつものことだし。
オジサンは説教できるような身の上じゃないからねぇ。
精々、青年が死なないようにフォローしよう。
奪われ続けるのが、この世界の常だろうけど。
生きるために幸せな記憶を失うのは、悲しいからね。
●guiding principle
歯車の回る音と、破砕の音が戦場に響いていた。賑やかと言えば良いか、バラエティーに富んでいると言えば良いのか。
「派手だねぇ」
いやぁ、流石。と軽く肩を竦めた先、ぱち、とグルナ・エタンセル(soldat・f36653)は瞬いた。
「――まぁ」
「まぁ、まぁ」
シャドウダンサー達の視線が、こちらを向いていたのだ。カチカチ、と歯車が不吉な音を鳴らす。シャドウダンサー達はひたり、とグルナを見据え――来た。
「探しなさい」
踏みこみと共に、笑うようにその手が伸ばされたのだ。
「わー、この娘たち、オジサンのこと狙ってこない?」
ひゅん、と伸ばされた両の手は、抱きしめるようでいて首を刈るようでもあった。軽く身を沈め、グルナはその刃を頭上に躱す。
「気のせい? 絶対モテ期ではない殺気!」
ひゅん、なんて音と共に揺れた髪がちょっと持ってかれた気はするが――、数本を憂うより先に、次の刃が来る。
「天にある瞳よ」
「花嫁に相応しき瞳よ」
告げる人形にグルナは軽く肩を竦め――後ろに大きく跳ぶ。とりあえずの間合いだ。どうも、随分と『この目』を気に入っているようだ。
――曰く、青い瞳を闇の種族は求めているという。青い瞳をした元オラトリオの魂人を。
(「花嫁ってキャラでもないし、間違いなのはすぐ気付くだろうけど」)
ふ、と息を吐く。2度目の跳躍、今度は少しばかり大きく間合いを取る。分かりやすく追ってきた娘さん達に、グルナは肩を竦めるようにして笑って見せた。
「人違いでも、まぁ、いっか」
オジサンも仕事しましょ、ってことで。
「やるときはやるんだよ、オジサンもね」
カツン、と義足から大地にアンカーを打つ。地を捉えるように靴音を鳴らし、はた、と揺れる上着をそのままに、グルナは元々緩んでいたネクタイをあと少し、緩める。
「いこうか」
鮫剣を引き抜く。するり、と鞘から落ちた刃が一振りと共に――伸びる。長く影を残す。海中を駆ける鮫のように。ひゅん、と限界まで刀身を拡大すると――ふ、とグルナは笑った。
「オジサンも、仕事の時間みたいだからね」
一閃、薙ぎ払う。
ひゅ、と鋭く振るわれた刃は弧を描くようにしてシャドウダンサー達に食い込んだ。
「瞳を、この手
……!?」
手にするのか、手に入れるのか。
刃と共に手を伸ばした人形達は牙に引っかかるようにして撃ち砕かれる。破砕の向こう、飛び散った歯車を躱すように、低くシャドウダンサーが来る。
「――さぁ」
踏みこみは、早い。速度を上げてきたか。
「おっと」
瞬く瞳に、薙ぎ払った刃を持つ手を引く。軽く、手の中、柄を放して握り直せば、ギン、と刀身で一撃を受け止めた。
「物騒なダンスだね」
アンカーは打ってる。元から回避は出来ない。生かすべきはオジサンの年の功ってやつなのだが――まぁ、手を取って踊るよりは、受け止めるのが年の功だ。多分。
「ま、生傷はいつものことだし」
ひゅん、とシャドウダンサーの仕込みナイフが迫る。肩口、沈んだ刃に――だが、その事実と共にグルナは僅か身を倒すようにして己の刃を上げる。
「踊ろうか、なんてね?」
斬り上げるように、一気に腕を上げる。ふ、とひとつ笑うようにして至近の一体を斬り払い――続く一体に、大きく刃を振るう。
ザン、と一閃、打ち崩せば、その破片の向こうに大鎌を振るう青年の姿が見えていた。
「――散れ!」
その戦い方は良い意味で勢いがあって、オジサン的に言えば――……。
「オジサンは説教できるような身の上じゃないからねぇ」
肩を竦める。傷の痛みを置くように。精々、死なないようにフォローしよう、とグルナは思った。
「奪われ続けるのが、この世界の常だろうけど。生きるために幸せな記憶を失うのは、悲しいからね」
大成功
🔵🔵🔵
コッペリウス・ソムヌス
——青い瞳、
蒼穹とか永遠の色とか云うよねぇ
だからと言って奪われていいものなんて無いだろうから
集落を助けに行くとしようか
大鎌もってる魂人がアインだっけ
生贄になるところあんまり見たくないので
一先ずはオレたち猟兵に任せてほしいなぁ
なんて言っても止まらなそうな相手なら
敵の攻撃から庇うくらいはしておこう
大事なモノへの憤りも多少はわかるよ
腐食の紋章ってのも厄介だよね
振るう刃に触れたら遅くなる、なら
炎で燃やせば如何なるんだろうか
くべる文字の頁はまだまだ在るから
存分に踊る様を見せておくれよ
負傷・アドリブ歓迎
●青
斬撃に破砕の音が重なった。砕け散った人形の、その破片さえ飛び越すようにシャドウダンサー達が踏みこんだ。
「——探しなさい」
「天にある瞳を」
己が破砕より、彼女達は命じられた花嫁の確保が優先されるのだろう。血を蹴り、振るう刃に花嫁と言われた魂人の青年が大鎌を振るう。
「——は、誰が簡単に探されてやるかよ!」
薙ぎ払い返す刃は衝撃波に変わる。元オラトリオの魂人こそが、探されている花嫁——儀式の贄であった。
「——青い瞳、蒼穹とか永遠の色とか云うよねぇ」
ほう、とコッペリウス・ソムヌス(Sandmann・f30787)は息を吐く。件の青い瞳の青年は、他の猟兵達の動きもあって今のところ無事なようだ。
「……」
その青い目は爛々と光るようにシャドウダンサー達を見据えていた。猟兵達の存在には気が付いているのだろうが——彼にとって重要なのはそこではないのだろう。
青い瞳の元オラトリオの魂人。
その条件を満たしている存在であるからこその怒りか。
「だからと言って奪われていいものなんて無いだろうから、助けに行くとしようか」
たん、と地を蹴る。身を前に出すようにして駆け出せば、大鎌を手にシャドウダンサーの群れへと踏みこもうとする魂人の姿が見えた。
「……あれは、止まってくれないかもなぁ」
小さく息をひとつ吐いて、次の一歩を大きく入れる。彼の前に——煮えたる花嫁の踏みこみに歓喜するシャドウダンサーの射線へと。
「希有なる瞳ヲ」
「——よ、と」
ザン、と滑るように刃が来た。庇うように立った先、沈む刃と共に魂人の青年が驚いたような声を上げた。
「あんた、なんで」
「生贄になるところあんまり見たくないので、一先ずはオレたち猟兵に任せてほしいなぁ」
「……、庇って貰って悪いがそいつはできない相談だ。俺は、こいつらをボコさないといけないんだよ」
怪我をさせたのは悪ぃんだけど、と眉を寄せた魂人の青年・アインにコッペリウスは軽く肩を竦めた。
「大事なモノへの憤りも多少はわかるよ」
だからまぁ気にしないでいてくれれば。
そう言い添えて、前を見る。一歩、間合いを取り直す。払うように振るった腕が、随分と重かった。
「腐食の紋章ってのも厄介だよね」
体の重さは、さっきアインを庇って受けた傷の所為だろう。動きが鈍るような感覚に、やれとコッペリウスは息をついた。
(「なら炎で燃やせば如何なるんだろうか」)
ゆるり、とひとつコッペリウスは笑う。ぱたぱたと落ちる血も、腕を伝い落ちる傷の痛みも今はおいて。その手の中に一冊の本を、落とす。
「うまれては消える輝きよ」
音もなく手の中に落ちた本は、ぺらぺらとその頁を捲りだし——触れた神の指先で紅蓮に燃える。
「陽炎」
かげろひ、と彼は言う。僅かに伏せた瞳に炎の影が落ちる。ぶわり、と燃え上がった頁が、踏みこんできたシャドウダンサーの腕に触れた。
「——!」
「あぁ、これは触れても構わないみたいだね」
剣に、腕にコッペリウスの炎が触れてもこちらに腐食の紋章の影響はない。ただ、燃え落ちた人形の向こう、続く一体が踏みこんでくる。その姿に、ふ、と笑ってコッペリウスは次の頁を引き裂いた。
「くべる文字の頁はまだまだ在るから、存分に踊る様を見せておくれよ」
綴られし文字の炎が踊る。一度だけ鈍った体を、己が感覚の中に落としこんでコッペリウスは続く人形達へと頁を踊らせた。次の一体が軋む。集落にやってきたシャドウダンサーの姿は確実に減ってきていた。
大成功
🔵🔵🔵
未丘・柘良
地獄の先が地獄たぁやるせねぇな…
うちの世界がマシに見えやがる
サイバネ忍者に似た趣向に思わず肩竦め脇差を手に対峙
この手合いは慣れっこよ
目ん玉が欲しいなら俺様のスペア眼でもくれてやるぜ
生憎、緑色だがな
俺様、視力だけは自信ある
攻撃来る方向見据え、左の義肢にて受け
腐食か…はっ、元より錆びついた身体だ
待ち構える方が向いてる
敵が集まる方向目掛けUC発動
13枚一組、八方に撃つ
どんなに早くとも向かってくる奴等は流石に視える
テンパって精細さを欠いた所を牌を礫に撃ち、刃で斬り伏せる
魂人の兄ちゃんも無理すんじゃねぇぞ?
俺様も兄貴を奪われ失った身でな、解らねぇ訳じゃねぇ
カチコミするんなら俺様達にも付き合わせろ…な?
●干戈
「地獄の先が地獄たぁやるせねぇな……」
その戦場に、ひとつ足音を落とす。やれ、と吐いた息ひとつ、煙管から零す紫煙がゆるり、と揺れる。
「うちの世界がマシに見えやがる」
剣戟と炎が踊る戦場にて、悠然と男はそう告げた。血濡れの地面も、ひとつふたつと崩れて転がる人形の手指にも別段驚くようなことも無い。未丘・柘良(天眼・f36659)の住む世界とて、真っ当などとはお世辞にも言えず――だが、比べれば、ハッピーでサイコな騒がしい街とも言えなくもないのか。
「――ま、うちの話よりは、こっちのことか。お客さん」
煙管を手にゆるり、と柘良は振り返る。音も無く踏みこんできたシャドウダンサー達が静かに笑う。
「希有なる瞳を」
「明けの明星に告げる為に」
「……」
どうにも似た趣向を知っているというか。思わず肩を竦めると柘良は脇差しを抜いた。ま、この手合いは慣れっこだ。
「目ん玉が欲しいなら俺様のスペア眼でもくれてやるぜ。生憎、緑色だがな」
口の端、僅かに上げるようにして笑い告げれば、シャドウダンサー達が地を蹴った。
「――希有なるを」
「我らは探すのであれば」
ひゅん、と一撃、振るう刃が先に来た。予想より間合いひとつ早く来るのか。
「お呼びじゃねぇってか?」
一歩、一足。相手の動きを読み取るように柘良は己の足を運ぶ。踏みこみだけであれば敵の方が動きは速い。――だが。
(「俺様、視力だけは自信ある」)
その動きを、読む事は出来る。
振り下ろす一撃を、柘良は受ける。腰より下、払うようにきた刃が体の左に沈み――そこで、止まる。
「オマエ」
「驚いたか?」
は、と息を吐き、ゆるりと柘良は笑う。剣を受け止めたのは左の義足だ。敵の刃が沈みきらない。尤も、体は紋章の影響で重くはなるか。
「腐食か……はっ、元より錆びついた身体だ。待ち構える方が向いてる」
目の端、義足に沈んだ刃を引き抜くようにしてシャドウダンサーが後ろに飛ぶ。間合いひとつ取り直すのか。
(「――違うか」)
そいつを選ぶには、巡りが悪い。
「俺様にも、てめぇにもな」
「希有なるでなければ」
宣告と共にシャドウダンサーが身を沈め――地を蹴った。
「散りなさい」
「――はっ」
ひとつ柘良は笑う。随分とあの人形達は早い。瞬発の加速。低く飛ぶように来るのは、戦闘用義体をフルで動かしているからか。ヒュン、と突き出すようにして刃が来た。
「速いじゃねぇか。ま、だが」
一撃、刃は柘良の体に沈む。先の一撃、義足で受けた分の警戒だろう。肩口、斬り裂くようにしてそのままフル稼働した義体でサイボーグのこの身体を砕くつもりか。
(「死地だなぁ」)
は、と柘良は笑う。軋む身体を、鈍く響く音を聞きながら、手の中に牌を落とす。
「さて、哭くのはどちらだ?」
13枚一組、八方に撃つ。眼前の相手を含め、左右、一気に踏みこんで来ようとしていた人形達が――不意に、止まる。
「――ぁ」
「ぁああ、ぁ」
「あぁあああああああああああああ!」
それは狂気とも狂乱とも言える声であった。掠れ軋み、獣めいた音さえ響かせながらシャドウダンサー達が叫ぶ。
「蛇が」
「花嫁を、花嫁を探さなければ……はやく、目をも……!」
「……」
持っていくと、でも言おうとしたのか。その先の言葉を封じるように柘良は刃を振るう。テンパったシャドウダンサー達の動きは精細さを欠いた。速度があろうとも、存分に捉えられる。牌を磔に撃ち、刃を以て切り伏せれば、ガシャン、と破砕の音の向こうに魂人の青年の姿が見えた。
「――もっと」
ふぅ、ふぅ、と肩で息をする。鈍く光る瞳には強い怒りが宿っていた。
「魂人の兄ちゃんも無理すんじゃねぇぞ?」
だからこそ、柘良はそう告げる。止めるのではなく、呼吸のタイミングを与えるように。
「俺様も兄貴を奪われ失った身でな、解らねぇ訳じゃねぇ」
「――あんた」
「カチコミするんなら俺様達にも付き合わせろ……な?」
緩く首を傾ぐ。柘良の言葉に、ひとつ息を吸うようにして魂人の青年・アインは頷いた。
「……、あぁ」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『偽りの星が魅せる夢』
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POW : 敢えて自身に痛みを与え続ける!
SPD : 眠ってしまう前に走り抜ける!
WIZ : 魔術的な防御で影響を減らす!
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●色彩は天にありて
カン、と硬い音と共に刃が落ちる。破砕の音が地を叩くより先に最後のシャドウダンサーが光の中に消えていく。
「……」
訪れた静寂に、土の匂いが混ざった。小さな畑が荒らされたからだろう。崩れおちた小屋で燻る火を消す為に避難した人々が戻ってくる。彼らにとっては、こうして集落を荒らされるのは然程珍しいことではないのだろう。1度の避難の後も、静寂を確認するようにして戻ってくる。此処以外に、生きていく場所など無いのだから。
「……猟兵、だったよな。ありがとな」
そう、声をかけてきたのは魂人・アインだった。大鎌を手にした青年は、青い瞳を猟兵達に向けた。
「あんたたちは、あの人形の出所に向かうのか? なら、俺も連れて行ってくれ」
真っ直ぐに向けられた視線に、最初に出会った時のような危うさはない。ただ、確かに怒りはあった。静かな怒りをその身に抱きながらアインは告げた。
「あの日、弟を奪われたんだ。花嫁だとか言ってさ。儀式に使われる為だけに、生贄につれていかれた」
あの日、とアインは言う。
自分は間に合わなかったのだ、と。
「気が付くこともできなかった。だから、せめて知りてぇんだよ。花嫁だとかほざいた奴が、どんな顔してんのか」
1度くらいな、とアインは静かに言った。
●星屑の夜
ひとつの森を抜ければ、最初に猟兵達の目に見えたのは古ぼけた礼拝堂であった。鐘楼も無く——だが、遠く何かが鳴る音がする。ひとりでに開いた門の中、一歩、足を踏み入れればそれまで見えていた景色が一瞬にして——変わった。
「……これは、星空か?」
猟兵のひとりが呟く。
頭上にはやけに綺麗な星空が広がっていた。そう、随分と綺麗で——だからこそ、おかしい、と思う。美しくて、目が離せなくて、いつまでも見ていたくなるような感覚がそこにはあった。吸い込まれるような感覚と共に襲ってくるのは強烈な睡魔だ。
「眠いって……笑ってられるやつでもないな」
「おちそうだ、意識が……」
根刮ぎ奪うような——奪われるような感覚に唇を噛む。頭上の星空を見ないようにと俯いても、この星空の下にいるだけでも少しずつ睡魔が襲いかかってくる。
ここで、足を止めるための陣か。或いは贄の足しにでもする気か。
今はこの眠気をどうにかして、前に進まなければ。
——さぁ、どうやって進む?
◆―――――――――――――――――――――◆
マスターより
ご参加ありがとうございます。
第二章受付:10月23日 8:31〜
●魂人アインについて
同行を希望しています。同行理由は導入にあるとおり。
同行を断っても構いませんが、ある程度自分の身は自分で守れます。
同行OKの方が多かった場合、同行します。
●リプレイについて
不可解な星空の下、眠気を耐えながらどうやって進むか。
PSWはご参考までに。
それでは皆様、ご武運を。
◆―――――――――――――――――――――◆
上野・修介
※アドリブ連携歓迎
「申し訳ないですが、同行させるわけにはいきません」
青年の同行には反対する。
羽化の為に弱体化しているとは云え敵は強く、守り切れるという保証はない。
彼の怒りと悲しみは理解できるが、だが万が一彼が生贄として捧げられてしまえば、また同じ悲劇を負う人を増やすことになる。
猟兵として、人間としてそれだけは阻止しなけばならない。
・対『星空』
何にせよ余り時間はかけられない。
呼吸を整え、意識を礼拝堂まで駆け抜けることのみに傾け、眠気に囚われ切る前に速攻での踏破を試みる。
UCによる自身の氣を活性化で行動速度を底上げ。
それでも間に合わなければ、左二の腕の神経部にアサルトペンを突き立て痛みで耐える。
●星降
「申し訳ないですが、同行させるわけにはいきません」
静かにそう、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は告げた。羽化の為に弱体化しているとは云え敵は強く、守り切れるという保証はない。
(「彼の怒りと悲しみは理解できるが、だが万が一彼が生贄として捧げられてしまえば、また同じ悲劇を負う人を増やすことになる」)
猟兵として、人間としてそれだけは阻止しなけばならない。
例え、彼が永劫回帰を使えるとしても。その、覚悟があるとしても。
否を告げた先で、ふいに風が吹いた。軽く一度、二度目に強く風が吹けば空が晴れる。
「……」
この『ダークセイヴァー』において、空が、夜空がそこにはあった。煌めく星に、深い藍の空。鏤められた星々がキラキラと輝き——綺麗なものだな、とひとつ思ったところで修介は拳を握った。
「……これは」
強く握る。拳を握るという、その行動を自分が取っていることを自覚する。叩き込む。引き摺られかけていた感覚を取り戻すように深く、息を吸った。
(「呪術か、それともこの場そのものにかけられた仕掛けか」)
呼吸を整え、修介は真っ直ぐに前を見た。遠くには古びた礼拝堂。建物の左右は木々が生い茂っており——だが、あれでは空は防げまい。
「……」
一度、前へとやった視線が空に惹かれる。引き摺られる。目が離せなくなるような感覚と同時に、ひどい眠気が修介を誘っていた。見続けたいという感覚と、叩き落とすような眠気で意識がひどく揺らぐ。ぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような、そんな感覚に——息を吐く。
(「――氣を満たし――氣を呑む」)
己の周囲に留めている『氣』で身を覆う。息を吸い、吐き、鍛錬と共に己に馴染ませた感覚で身体を整えていく。
「何にせよ余り時間はかけられない」
眠気に囚われきる前に、速効で駆け抜けるのみ。は、と大きく息を吐き、修介は一歩、己の足を前に出す。土を踏みしめる感覚を足裏で掴み——前を、向かうべき地を見据えた。
「——進む」
前へ、前へ。
駆け抜ける意志を己に叩き込むように、修介は身を前に跳ばした。纏う氣が進む身体を加速させる。地を蹴るように、たん、と大きく一歩を入れる。ぐん、と身を前に跳ばした先、瓦礫さえ跳び越えて、修介は眠気に囚われきる前に一気に礼拝堂まで駆け抜けた。
大成功
🔵🔵🔵
グルナ・エタンセル
アイン青年はそうだね、好きにするといいよ。
どのみち悔いと恨みを残して生きるなら、危険でも納得のいく選択を応援するよ。
でも、オジサンとしては……青年には長く生きて、弟くんが見られなかった景色を見てほしいね。
眠気はUCで耐えて、さくさくと進もう。なるべく駆け足で。
さくさくってのが大事だ。
だってほら、目に見えるような見えないような大事なものが目減りしていくからね……
青年も同行するなら都度声をかけて起こすか、最悪抱えて走るかな?
もっと良いアイデア持ってるなら人がいるなら任せるよ。
それにしても、なんだっけ、正気度とか減っていきそうな空だ。
あれに焦がれて、花嫁選んでるとかじゃないよねぇ、くわばらくわばら。
●瀝青
生温い風が、血の匂いを運んでいた。パサついた髪を揺らす魂人・アインには血を拭う気は無いらしい。彼の中では怪我の内に入らないのか——或いは、それ以上の何かが彼の心を占めているのだろう。
『なら、俺も連れて行ってくれ』
怒りを隠す事無く告げられた言葉であった。その熱に少しばかり瞳を細め——吐く息の代わりに、グルナ・エタンセル(soldat・f36653)は軽く肩を竦めて見せた。
「アイン青年はそうだね、好きにするといいよ。
どのみち悔いと恨みを残して生きるなら、危険でも納得のいく選択を応援するよ」
でも、とグルナはひとつ言葉を切る。先の立ち回りで乱れた髪をそのままにゆるり、と視線を向けた。
「オジサンとしては……青年には長く生きて、弟くんが見られなかった景色を見てほしいね」
「……、ありがとな。おっさん」
「……オッサンはいきなりじゃない?」
え、そんな感じなの? アイン青年って。
思わず漏れた言葉に「図太くはあるけどな」と笑った青年は、同行の許可への感謝を唇に乗せた。
(「ま、実際、生真面目なところもあるんだろうから」)
突っ走りだした時が、オジサンとしては心配ではあるけどね。命がどうであれ、痛いものは痛いから。
そうして、一歩踏み出した先、妙な星空はその色を濃くしていた。
「……」
煌めく星に、濃い青の夜の空。星々の輝きはビルの明かりが無ければここまで明るく見えるのか——それとも、此処だからか。
「空、ねぇ」
この世界にしては、明るすぎる。
視線を投げた先、くらり、と視界が歪む。引き摺られるような感覚はひどい眠気に似ていた。寝落ちる感覚よりは、意識そのものを引きずり落とそうとするように——目の前で、扉が閉まっていくような感覚になるのは『この星空』だからか。
「さくさくと進もうか」
は、と息を吐いて顔を上げる。落ちかけた意識をひとつ引き戻すように髪を荒く耳にかける。
「さて、運にかけよっか……大切なものが減ってる気がするけど……」
とん、と進める一歩を駆け足に。ゆっくりと歩いて行くには、不向きな場所だ。足早に進み、ひたすらに前を目指す。体が動き続けている間は、眠気はあれど意識を落とされることは無い。そう、さくさく進めば問題は無い訳で。それなら——まぁ、ここまで駆け足である必要も無いのだが。
「だってほら、目に見えるような見えないような大事なものが目減りしていくからね……」
ひとつ使った手段がある。捧げた代償がある。さぁどうぞ、と天秤に乗せたそれが、有給であったか貯蓄であったか知るののは、次に財布を持ち上げた時かお家に帰った時なのだが——……。
「それにしても、なんだっけ、正気度とか減っていきそうな空だ」
美しくも鮮やかに、艶やかに映る星空。夜と闇に覆われたこの地に現れた星空は、この世界にあり得るものなのか。
「あれに焦がれて、花嫁選んでるとかじゃないよねぇ、くわばらくわばら」
軽く首を竦めるようにして、グルナは駆け足で奇妙な星空の下を進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
未丘・柘良
男の選択に口を出すなぞ野暮な真似はしたくねぇ
もし行くってんなら、俺様達を頼れ
犬死にだけはするな…それだけは約束しろ
俺が、止められる訳ねぇ――なら目につく所にいた方がマシだ
進んだ先の星空
ガキの頃に行ったプラネタリウム思い出してる場合じゃねぇ、か
義眼からの視覚機能を一時的にオフ
機械的に通常視覚無くし、星の光を完全遮断
礼拝堂に入ってすぐに内部配置をサーチ確認済みだし方向や障害物はまぁ平気だ
…それだけで眠気覚めるたぁ流石に思ってもないが
流石に三徹麻雀でもここまで眠くはならないぜ?
煙管を口にし、ニコチンの覚醒効果に頼るのは雀荘でもやってる常の手段
それでも眠いなら吸い殻を右手の甲に落としセルフ根性焼きかね
●一向聴
風が、僅かに熱を残していた。常人であれば、暑いと感じるのか——それとも熱い、と炎の名残を感じるのか。頬に、腕に、残した傷をそのままに真っ直ぐな視線をこちらに向けた青年に、未丘・柘良(天眼・f36659)は、ふ、と笑った。
「男の選択に口を出すなぞ野暮な真似はしたくねぇ」
薫る煙管の煙が風に揺れる。紫煙を眺め見て、吐息一つ零すようにして柘良は視線を上げた。
「もし行くってんなら、俺様達を頼れ」
「……頼れ?」
ぱち、と瞬いた魂人・アインに柘良は静かにひとつ息をついた。
「犬死にだけはするな……それだけは約束しろ」
ひたり、と緑の瞳がアインを捉える。その冷えた色彩は未丘・柘良という男がサイボーグであるからか、或いはその裡にある過去が理由か。
「俺が、止められる訳ねぇ――なら目につく所にいた方がマシだ」
薫る紫煙が弧を描く。ゆらり、ゆるり、と煙管を手にした指先が煙を追い——やがて、一度目を伏せて柘良は言の葉を切った。後はただ、応えを待つようにあった沈黙に魂人・アインの呼吸の音が重なった。
「……、あんたも色々大変なんだな」
「あぁ?」
思わず眉を寄せた柘良に、いやだからさ、とアインは顔を上げた。
「意外と人が良いってことだよ。……分かった。間違っても犬死にだけはしねぇ」
空のように青い瞳に触れ、アインは深く息を吸い——大鎌を持ち直した。
「……俺の命は、あいつが、弟が守ったもんなんだ」
「……」
言葉ひとつ返す事無く、だが沈黙を以て柘良は示した。情に厚い男は、先に一歩を刻む。歩き出したその場所はさっきまでの戦場とは違い、晴れ渡った夜の空には美しい星が見えていた。
この世界には、凡そ不釣り合いなほどに美しい星空。
「また、随分と……」
ゆるり、見上げた先、僅かに視界が揺らぐ。義眼のシステムに干渉があった訳じゃない。もっと奥——神経を撫でるような感覚に柘良は息を吐いた。
「ガキの頃に行ったプラネタリウム思い出してる場合じゃねぇ、か」
一度目を伏せる。義眼の視覚機能を落とす。機械的に視覚情報を落とせば『見えている星空』は無くなる。星の光を完全に遮断するようにして、足はゆっくりと進める。
(「礼拝堂に入ってすぐに内部配置をサーチ確認済みだし方向や障害物はまぁ平気だ」)
ここで石ころにでも足を引っかけて転ぶようなら——まぁ、今日明日は勝負運が無いってことだろう。確率は収束する。勝つときは勝って負ける時は次に勝つ時だって話じゃぁあるが——……。
「……」
くらり、と揺らぐ。意識を引きずり落とすようなそれは正しく眠気であった。膝をつく程では無いが——……まぁ、正直放置はできない。
「……あれだけで眠気覚めるたぁ流石に思ってもないが、流石に三徹麻雀でもここまで眠くはならないぜ?」
オカルト麻雀でも始まったのかよ、と息を吐き煙管に口をつける。ニコチンの覚醒効果に頼るのは雀荘でもやっている常套手段。
「効いてる内に進むとするか」
は、と息を吐く。一歩、進めた足がカツン、と床を叩く。血の混じった風が紫煙に変わり、ひゅう、と一度強く吹いた。
「……出口か」
それか、到着ってやつかね、と柘良は顔を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『蛇王ペイヴァルアスプ』
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POW : 一万の蛇の王
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【大蛇】が出現し、指定の敵だけを【巻き付き締め付け】と【毒牙】で攻撃する。
SPD : ヴァイパースマイト
自身の【胸に埋め込まれた『偽りの太陽』】が輝く間、【蛇鞭状の両腕】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 有翼の蛇龍
召喚したレベル×1体の【大蛇】に【龍翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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●曳裂
空にあった夜空は、尾を引くように途切れた。ふつり、と星の光は潰え、常の暗がりが戻る。灯りを必要とするほどでは無かったが——それでも、足元に残る影はその濃さを変えていた。
「……ここが」
薄闇が生んだ沈黙を破いたのは、魂人・アインであった。鈍色の巨大な門がその言葉に応えるように開く。ぎぃいい、と軋む音と共に両開きの扉が、外界と中を繋ぐ。そう感じたのは、開いた扉の向こう、一歩足を踏み入れた瞬間に『館の内側』へと入り込んでいたからだろう。振り返れば、そこにあるのは廊下だ。長く、長く続く赤い絨毯の敷かれた廊下には調度品がいつくか並び、その何れもが青の色をしていた。
「面倒な趣味しやがって。……つーか、これ……黴びてるとかじゃねぇ、よな」
アインが眉を寄せたのは、壁に、床に、蜘蛛の糸のようについた『もの』を見たからだ。粘膜の糸は館の内部を覆い、足を進めるほどにその不快感を増していた。見目か、音か。幸い匂いらしい匂いは無く、ぬちゃり、と足元の不快感はあれど足が動きにくいというほどのことは無い。
——だが。
「——あれは」
その光景は唐突に訪れた。無数の扉が一気に開いたような感覚と共に、長く続いていた廊下が巨大な広間に変わる。円形の天井からだらりと垂れた無数の粘膜の糸が『それ』に絡みついていた。
「——ほウ」
それは、ゆっくりと目を開く。瞳を開いたことによって猟兵たちは『それ』の目の位置を知る。
「来客ヲ許しタつもりハ無カったガ」
瞳を開けば瞳の位置を知り、言葉を聞けば口の位置を知る。それほどまでに眼前の者は——闇の種族は異様であった。無数の毒蛇が集まるようにして作り上げられた身体には、太陽を思わせる光を放つ球体が中央にある。
「猟兵ヨ」
その身の一部は破れていた。骨を晒すように崩れた蛇が一角、腹にある。受けた傷ではなく羽化の為に『破れている』のだろう。晒す中身は無く、ただぐたりとした蛇があり——その周囲には、羽根が、落ちていた。
「——ッ」
ひゅ、とアインが息を飲む。踏みこみかけた、声を上げかけた青年を猟兵達が一歩前に出ることで止める。
そこには、黒い繭に捕らわれた魂人達の姿があった。元オラトリオの青い瞳をした魂人たち。羽根は壁に打ち付けられ、両の手は繭に捕らわれた彼らの瞳に光は無く——だが、浅い呼吸が彼らが死にきっていない事実を示していた。
「これハ、我が糧ダ。永劫回帰にハ、ソれダけの意味がアる。色彩は天にアり、我ハその希有ヲ飲み干スに相応しイ」
我が名は、と闇の種族が一柱は告げる。
「蛇王ペイヴァルアスプ。我ガ羽化に相応しき供物とナれ、猟兵よ。ソして——希有な瞳ヨ」
◆―――――――――――――――――――――◆
マスターより
ご参加ありがとうございます。
第三章:11月8日 8:31〜
●リプレイについて
粘膜の糸に覆われた館の広間にて、蛇王ペイヴァルアスプと戦うところからスタート。
●捕らわれている魂人について
強制的に永劫回帰を使わされ、闇の種族の死を打ち消し続けている魂人達。
「闇の種族」は極めて強大な存在ですが、今は羽化中で十分な力を発揮できないため撃破可能です。
「魂人を全員救出」すれば、闇の種族は羽化中に幾度も訪れる「死の瞬間」を打ち消すことができず、無様に消滅します。
*捕らわれている魂人の中に、アインの弟はいません。
●魂人・アインについて
武器:大鎌
ある程度の戦闘能力を持っている。必要ならば猟兵達に「永劫回帰」を使うこともためらわない。
猟兵達の指示には従います。
アインの死亡により、シナリオが失敗することはありません。シナリオの不利になる行動もとりません。
それでは皆様、ご武運を。
◆―――――――――――――――――――――◆
上野・修介
※アド連携歓迎
調息、脱力、己と戦場を観据える。
周囲の地形状況、敵と味方、青年と救出対象の位置関係を確認。
――為すべきことを定め、水鏡に入る
自身の能力は徒手格闘に特化していて『手数』があまりない。
下手に救出に回るよりも、敵の抑えに注力すべきだろう。
UCを起動し自身の行動力を底上げ。
同時に敵の『氣』の流れを阻害し行動を鈍化。
初動から足を止めず、体幹と重心操作による移動方向偽装や周囲の地形・建物を足場や遮蔽として利用、散乱物投擲による牽制と陽動で初撃を含め被弾を極力回避しつつ挑発・攪乱しながら、敵からの攻撃を迎撃しつつ急所を狙うように動いてヘイトを集める。
救出対象に攻撃が及ばないよう身を盾にする。
●或いは厄を祓うでなく討つために
——血の、匂いがしていた。
「……」
しとどに零れた血の匂いだ。零れる赤に、晒す肉に、骨に、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)が危機を感じたのは己に対してではない。
「——れ、は」
「……」
魂人・アインに対してだ。
僅かに一歩、身を前に出して作った影は彼を隠すのではなく踏みこむ一歩を——その射線を封じていた。
(「……彼が本気であれば飛び越えていくこともできたでしょうが」)
それを選ばなかった以上、無茶をすることも無いだろう。少なくとも自分達が負けるようなことさえ無ければ。
(「蛇王ペイヴァルアスプか」)
無数に蠢く蛇が形を作った闇の種族は、クツクツと喉を鳴らすように蛇たちに蠢かせる。
「猟兵ヨ、立つカ。我が羽化のタめに。贄にハ合わぬゾ」
「……アンタの考えは知らないが、元から贄には合わない」
俺は、と修介は息を吐く。為すべきことを定め、水鏡に入る。己の能力は徒手格闘に特化していて『手数』があまりない。
(「下手に救出に回るよりも、敵の抑えに注力すべきだろう」)
息を吸う。ひとつ。己を整えるように。
己を氣で覆い、引き上げる。腹の底、溜めた息を吐き出すように細く息を吐くと修介は顔を上げ——地を蹴った。
「——羽化の儀式も、これまでだ」
言葉ひとつ、真っ直ぐにそう告げて蛇王ペイヴァルアスプの間合いへと踏みこむ。だん、と荒く、踏みこみの音を響かせたのは前に出る、とそう分かりやすく相手に示す為だ。儀式の最中にある蛇王ペイヴァルアスプにとって、分かりやすく動いた邪魔者は排除対象だろう。
「猟兵ガ、我の邪魔とナるか」
ぐん、と拳が突き出される。シャァアと同時に蛇の声が修介の耳に届いた。ひゅん、と食らい付くように来た蛇の動きに、身を逸らす。腰を沈め、足を払うようにして避ければ眼前の蛇の動きが——食らい付くための牙が『そこ』に入った瞬間、鈍る。
修介の間合いに入ったのだ。
氣を満たし、氣を呑む。——即ち、蛇王の氣を捉えたのだ。食らい付く蛇の牙が鈍ったその意味に気が付いたのだろう。蛇王が唸るように声を上げた。
「我に干渉するカ! この一万の蛇の王ニ!」
「——」
それは獣の咆吼とも鳥の叫び声とも似ていた。異形の咆吼と同時に、無数の大蛇が修介へと牙を剥いた。ひゅん、と腕を捉えるように来た大蛇に身を横に飛ばす。回避は大きく——だが、救出対象や青年を巻きこむことはないように、修介は身を横に振った。
「ただ、その氣を呑んだだけだ」
着地と同時に、片足で床を捉える。言葉を出して前を見るのは——奴の気を引くためだ。この身は陽動。その為に随分と戦場で言葉を躱している。お喋りな方では無いが、別に喋りながら戦いたい訳でも無く——だが、これが、挑発が有効なのは十分分かっている。
(「——だからこそ」)
腕に噛みついた蛇を払う。じくじくと痛む身体を、侵す熱を今は置いて——前に、出た。
「喰らい尽くせ、我が蛇ヨ!」
「——」
シャァア! と来た大蛇を、その氣を乱す。一拍、鈍らせた動きと共に首を狙ってきた牙を腕に受け——払う。最後の一歩は、荒く、蛇王の影へと修介は踏みこんだ。
「穿つ」
握る拳は、構えは出来ている。腰を沈め、食らい付く蛇の毒に濡れた拳を光り輝く蛇王の胸へと叩き込んだ。
「グ、ァアアアア!?」
異形の咆吼と同時に、キン、と何かが軋む。闇の種族が飲み込んだ偽りの太陽に罅が入っていた。
「貴様ァアアアア!」
「——」
怒りに満ちた咆吼と共に蛇王ペイヴァルアスプが修介を見る。引きつけは十分。あとは時間を稼ぎきる為に青年は拳を握った。
守り抜く為に。
大成功
🔵🔵🔵
七星・龍厳(サポート)
『俺に挑むには10年早いな。』
羅刹の魔法戦士。
普段の口調は男性的、仲間にはフレンドリー
行動の基準は戦闘が楽しめるか又は興味を持った事柄に積極的に関わる。
パッと見た印象では自信過剰に見えるかもしれないが戦場を渡り歩いてきた経験からの発言
戦闘は戦場で技術を覚えて自身が扱えるものに昇華させるため戦場を探してる竜殺し。
戦場では弱肉強食、故に弱者に手を差し伸べる者への優しさと敬意は無くしていない。
力押しから技術比べまで多彩な戦闘スタイル。
多彩な戦闘スタイルを理屈でも説明できる。
猟兵の妻と二人の娘がいる。
怪我は厭わず行動します。
依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。
●蛇王に挑むは
水を踏む音が戦場に響いた。ぱしゃん、と聞こえたそれは血溜まりの音だ。しとどに流す血に構わず、踏みこんだ猟兵の拳が異形の胸に沈んでいた。
「ク、ハ、ハハ。我が身ガ軋もうとモ、我が糧ガ血肉とナリ、羽化に至ル」
偽物の太陽に、罅が入っていた。蛇を束ねたような異形——闇の種族・蛇王ペイヴァルアスプは崩れおちた蛇を誇るように笑って見せた。
「我ハ至る。羽化へと。貴様ラも素晴らしキ贄とナるガいい」
「——贄、か。食べ応えはまだしも、そんな大層なもんにはならないぜ?」
俺は、と薄く笑うようにして男は告げる。儀式の地、館の中は奇妙な粘膜に覆われていた。足元は随分と悪そうだが——動き回るには問題は無いようだ。感触の話をすれば悪いが、品行方正な戦場の方が少ない。
「羽化を前にした闇の種族か。興味深い戦いであるのは間違い無いな」
龍厳にとって戦場は、技術を覚え、自身が扱えるように昇華する場だ。己を鍛え、研ぎ澄ます為に竜殺しは剣を構える。低く、腰を落とすようにして——前を、見た。魂人達の姿を視界に、彼らを守るためにも。
「この戦場、七星・龍厳が切り開く」
床を、蹴った。だん、と荒く。粘つく地面も感触だけだ。一気に距離を詰めるように踏みこめば、ハ、と異形の王が嗤う。
「我ハ一万の蛇の王ゾ」
蛇王ペイヴァルアスプの咆吼と共に、しゅるり、とその身を形成する蛇たちが蠢いた。来る、と龍厳は思う。影に身を潜めるようにして消えた蛇たちに気配は無くとも戦場に受ける殺意を、龍厳は感じ取る。
(「正面は無い。左か、後ろ……、随分と動き回るもんだな」)
なら、と男は息を吐く。だん、と踏みこむ一歩を荒く入れて——剣を低く構えたまま跳んだ。
「仕掛けさせてもらう」
間合い深く、その影の下へと入るように龍厳は行った。ひゅん、と眼前、詰める距離から払うように穿たれた拳に剣を振り上げる。
——ギン、と重い音がした。剣が火花を散らしながら蛇王の拳とぶつかる。
「ク、ハハハハ。我が拳、貴様の剣デ裂くことナド……」
「できないってか? まぁ、見とけ」
ひとつ、と龍厳は告げる。ぶつかったままの剣に、力を込める。一撃は浅く——されど、これは基点だ。奴の間合い、伸ばされた腕。拳のひとつが前に出ていれば胴は、ガラ空きだ。
「ふたーつ! みーっつ!」
蛇王の拳の上を、刃が滑る。浅い振り下ろしの一撃を基点に、龍厳は続けざまに刃を振るった。一撃、一撃、踏みこみと共に行けば、核が眼前に迫る。
「——」
その瞬間、背後から『何か』が来た。
「キシャァアアア!」
大蛇だ。あの時、蛇王が放った蛇たちがその身を束ね、大蛇となって食らい付いてきた。「——だが」
来ると、分かっていたものに驚きはしない。首を狙ってきた相手に龍厳は振り返る。片足を軸に、薙ぎ払うように蛇を——その牙を片腕で受け止めた。
「俺に挑むには10年早いな」
口の端を上げて竜殺しは笑う。血濡れの腕に噛みついた大蛇を刃で払うと、唸るように声を上げる蛇王へと薙ぎ払う刃と共に視線を向けた。
成功
🔵🔵🔴
グルナ・エタンセル
見事な怪物のお出ましだ。
うーん、完全体なんかと戦いたくはないねえ。
ということで利害の一致だ、魂人くん達も助けてあげよう。
此所での得物は、ディスクガンだ。
視線で描いた軌道通りに光線が出るはずだよ。
オジサンの視界に映るもの、全部破壊させてもらおうか。
勿論、助けられるよう繭の糸を切ることに集中させてもらうから、アイン青年は前に出ないように。
あ、声で敵の動きを知らせてくれると助かるけど!
偽りの太陽は直視しないように。
蛇鞭状の両腕は回避するんじゃなくて、光線で退路を焼いて、潜り抜ける。
あーあ、割にあわないね。
怪物退治手当も出ないし、怪我しても労災おりないし。
八つ当たりも籠めて、念入りに焼いとくさ。
●罪苦を贖へ
しゅるしゅると蛇の蠢く音と、軋むような声が戦場となった部屋に響いていた。
「クハ、ハハハハ! 我ヲ再び軋マせるカ。ダガ、幾ら触れよウとモ、終末は変ワらヌ」
しゅるり、と這う蛇たちを見ながら闇の種族・蛇王ペイヴァルアスプは嗤った。
「貴様等も、その糧と招こウ」
「見事な怪物のお出ましだ。うーん、完全体なんかと戦いたくはないねえ」
靴の底で感じた床の感触はお世辞にも良いとはいえない。足を取られないのは——まぁ良かったが。本日の仕事着が無事にマイホームに帰れるかどうかは、後の働きにかかっている、というところだろう。うん。さすがにオジサン転ぶ予定も無いし。
「ということで利害の一致だ、魂人くん達も助けてあげよう」
「……おっさん、手はあるのか」
「無かったら口にしないよ。オジサンとしても」
軽く肩を竦めるようにして笑うと、グルナは顔を上げた。
「アイン青年は前に出ないように」
大鎌を持つ手に、僅か力を入れた魂人・アインを目の端にグルナは静かにディスクガンを持ち上げた。銃口は前に、ゆらり立つ男の手が真っ直ぐに、視線が戦場にある凡てを捉える。
「じゃ、行こうか」
青い海のような瞳は弧を描くと、男は撃鉄を引いた。銃声の代わりに響いたのは、ギャァという人に似た叫び声であった。ディスクガンの光線に焼きつくされた蛇が落ちる。
「なんで、そっちに光線が……」
「言ったでしょ? オジサンにも色んな手があるからね」
これは視線による制御だ。グルナの視線で描いた通りに光りは行く。銃口ひとつ見ているだけで敵が避けれるようなものじゃない。
「——貴様カ」
異常に気が付いたか。こちらに視線を向けた蛇王がゆっくりのその手を持ち上げるのを見ながら、グルナは戦場を己が視界に収める。
「目に物見やがれ、って感じかな」
光りを、描く為に。
焼きつくす光線が、戦場を駆けた。壁の粘液などに止められることなく床を焼き、一瞬の内に射線は上に向く。
「クハ、その程度で我ガ玉体にハ届カ——!」
「そうね」
口の端を静かに上げるようにしてグルナは告げる。蛇王がいる場所とは違う。グルナの光線が焼いたのは魂人達を捉えていた繭の糸だ。
闇の種族は羽化の最中に幾度も訪れる「死の瞬間」を打ち消すために、彼らを捕らえていた。魂人達を全員失えば、蛇王は「死の瞬間」に飲み込まれる。この、戦いにおいても。
「助けられるよう繭の糸を切ることに集中させてもらうからね。あ、声で敵の動きを知らせてくれると助かるけど!」
「分かった。任せとけっておっさん」
「おっさんは決定なんだね」
今さらだけど、と肩を竦めた男と魂人の前、蛇王の気配が変わった。
「貴様ァアアアア!」
「右だ!」
蛇王の怒号と、アインの警告が響いたのは同時であった。滑るように銃口を向ければ、蛇王の胸に埋め込まれていた偽りの太陽が瞬く。その異様にグルナは回避の為に引いていた足で床を捕らえる。
「我ガ苗床としてくれル!」
ひゅん、と蛇鞭状の両腕が振り下ろされた。影が、落ちる。グルナを飲み込み、押し潰すように。目を焼くような光りと同時に生まれた影に、男は銃口を持ち上げる。偽りの太陽は直視することが無いように、ただ眼前のモノを捕らえて——撃つ。
薙ぎ払うように振るった腕が、銃口を蛇の腕突きつける。カチ、と鋼は異形と出会ったか。次の瞬間、焼きつくすほどの光が戦場を走った。
「ナ……!」
「よっと」
退路を、焼いたのだ。落ちる影を踏むようにして潜り抜けた先、ひっかくように身体に残った傷にグルナは息をついた。
「あーあ、割にあわないね。怪物退治手当も出ないし、怪我しても労災おりないし」
お相手の怪物ときたらひとりで怒り狂っている。現場の環境も最悪ですときたら、お給料はもうちょっと上がっても良さそうではあるのだが。
「八つ当たりも籠めて、念入りに焼いとくさ」
走る光が魂人達を捕らえる繭の糸を焼く。蛇王ペイヴァルアスプの羽化の儀式は、崩れ去ろうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
未丘・柘良
他の奴があの蛇野郎に仕掛けている間から俺様は動いている、としたら?
光学迷彩結界で身を覆った俺様を捕捉するなぞ至難の業よ
そうでなくても戦闘中でそれどころじゃあねぇだろうしな
気付かれぬ様に脇差携えて囚われの魂人達の元へ
繭の糸を絶ち、磔状態から下ろす
丁寧に降ろすこたぁ期待しないでくれ
放っといて命がねぇなら助かる可能性に少しでも賭けさせろ
さて、仲間の攻撃が一通り済んだ所で気がつくか、永劫回帰の恩恵が尽きている事に
雀牌の礫を放てば流石に俺様の位置は割れるが
てめぇが大技ぶっ放す寸前まで付き合ってやる
大蛇が来ると思った瞬間、額の目より最高出力レーザー放ち
それがアインへの攻撃の合図
仇討ちの止めはお前のモンだぜ
●果ての青
異形が、吼える。己が儀式を崩す者達に。奇っ怪な叫び声と共に、粘膜に覆われていた壁が震えた。ただの声にではなく——呼応だろう。
「大層なことだな」
緑の瞳を細め、未丘・柘良(天眼・f36659)は戦場を眺め見た。空間そのものが奴の羽化の為の儀式場である以上、奴の気分に左様される部分もあるのだろう。
(「さぁて、この機どう打つか」)
蛇王ペイヴァルアスプの羽化の間合いには、猟兵達が踏みこんでいた。穿つ拳に、斬り込む刃。歯がねと鋼がぶつかり合うような音が響く中、一人の男が警戒に魂人を繋ぐ糸を切っていた。
(「他の奴があの蛇野郎に仕掛けている間から俺様は動いている、としたら?」)
煙管に口をつける。フ、と笑うように紫煙を燻らせると柘良は一度、その瞳を伏せた。
「義眼内システム、プログラム起動――光学迷彩結界展開」
即ち、ステルス結界。
蛇王が己だけの儀式場を此の地に作り上げたように、柘良はそこに介入する光学迷彩結界で己を覆ったのだ。知覚をひとつ、ずらすように。感覚のひとつ外に置くように。展開した結界は、未丘柘良という男を感知を不可能とする。
「光学迷彩結界で身を覆った俺様を捕捉するなぞ至難の業よ。そうでなくても戦闘中でそれどころじゃあねぇだろうしな」
ひっそりと、口の中言葉を落として、柘良は一歩を踏み出す。粘着いた地面は随分と感触が悪いが——足を取るようなものでも無い。気が付かれないように向かったのは、囚われていた魂人達のところだ。
「……ぁ」
「……しぃ。ひとまず、俺様に任せな」
浅く息を吐くだけの魂人に柘良はそう言って己の唇に指を当ててみせる。脇差しで繭の糸を断てば、ぐらりと細い身体が崩れおちてきた。
「丁寧に降ろすこたぁ期待しないでくれ」
「やっぱり、あんた人が良いって言われんだろ」
受け止めた一人を、床に座らせる柘良にアインが告げる。応急手当程度なら出来る、と朽ちにした青年に柘良は息をついた。
「放っといて命がねぇなら助かる可能性に少しでも賭けさせろ」
それが、柘良の決めた手だったのだ。この戦場、この状況に置いて雀鬼が選んだ一手。
それは、この盤上に最期に打ち込まれる手となる。
「……傷ガ、我ガ太陽ガ! 羽化の儀式ヲ、貴様等、我ガ贄を奪ったカ!」
「……」
口の端をゆるり、と柘良は上げた。そう、囚われていた魂人達を凡て解放すれば、永劫回帰の恩恵は蛇王ペイヴァルアスプの手から零れ落ちる。残るのは、羽化の儀式の代償と猟兵達が踏みこみ、与えた傷。その事実を、柘良は打つ。
「ようやく気がついたみてぇだな」
ひゅん、と放った雀牌が蛇王へと届いた。その一撃で、束ねた蛇の腕が弾ける。
「——ッ何処かラ……! 貴様、今まで何処ニ……まさか、我が目を奪ったカ!」
「自分の手を明らかにする奴がいると思うか?」
ゆるり、と柘良は笑う。戦場にあって、臆することなど無く——ただこの盤上にある指し手として。
「てめぇが大技ぶっ放す寸前まで付き合ってやる」
「貴様、我が儀式を穢し、贄を奪ったカ。貴様ガァアア!」
怒号と共に、蛇王ペイヴァルアスプが柘良を見た。見られた、という感覚と同時に蛇王の残った腕から蛇たちが動き出す。しゅるり、と零れる音は一度だけに。戦場の空気が、異様な気配を濃くしていく。
「我ハ一万の蛇の王ゾ」
「——は、そうだな」
咆吼と同時に感じた圧。瞬間、柘良の視界が暗くなったのは眼前に巨大な蛇が現れたからだ。食らい付くように大口を開けたそれに、鋼の身ごと絡みつきくだこうとする姿に柘良が静かに笑い、緩く髪を振った。
「知ってるぜ?」
次の瞬間、第三の眼から最高出力レーザーが放たれた。ナ、と驚愕の声ひとつ落とす蛇王に笑い、柘良は見る。その目に、視界に収める。視るというその事実が、光りを届かせるが故に。
駆け抜けた光が、大蛇を焼く。ぽっかりと穴があいたように出来た空間を視界に柘良は隣に立つ青年へと声をかけた。
「仇討ちの止めはお前のモンだぜ」
これは、アインへの攻撃の合図。
『カチコミするんなら俺様達にも付き合わせろ……な?』
あの時、そう告げた言葉の先。応えとして、柘良は、た、と踏みこんだアインの背を見送る。
「——ありがとう」
短く魂人・アインは告げる。構えた大鎌に鈍い光が帯びる。
「驚いただろう。大暴れに来たぜ? 蛇王」
これで、とアインは叫ぶ。力の限り、己の凡てを以て青い瞳の青年は蛇王ペイヴァルアスプへと最期の一撃を叩き込んだ。
「終わりだ!」
「グァア、アア、ァアアアアアアア!」
絶叫と共に闇の種族が崩れおちる。羽化の儀式場となった空間が緩やかに崩れていく。
「……」
風が、久方ぶりに優しく猟兵達の頬を撫でていた。戦いの終わりを告げるように。
大成功
🔵🔵🔵