The Beast being far from us
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その怪物に悪意はない。
その怪物に敵意はない。
その怪物に害意はない。
だからこそ、その行為に躊躇いはなく。
だからこそ、その行為に我々は共感できない。
怪物は自らの名を持たなかった。だから怪物を知った者はその怪物をこう名付けた。
すなわち
決して分かり合えぬ獣、禁獣『歓喜のデスギガス』と。
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「コミュニケーションにおいて最も恐ろしいのは言葉は同じなのに、意思疎通が出来ないことだと思うのですが、皆さんはどう思われるでしょうか」
未・明(記憶求めの先導者・f28408)は温度のない声でそんなことを言った。
彼の手元では「漫画で分かるコミュニケーション術」なんて軽いタイトルの本が開かれている。
「さて、此度の事件はダークセイヴァー、それもその上層で発生した事件です」
ダークセイヴァー上層。それは昨今の戦いにて発見された従来のダークセイヴァーより上の階層に位置する領域のことだ。上層ではこれまでのダークセイヴァーよりも強大な闇の種族がひしめき合っている。
「そして此度の事件は上層に住まう闇の種族すら恐れる禁獣、歓喜のデスギガスによって引き起こされたものになります」
デスギガスは禁獣領域と呼ばれる場所に居を構えている。禁獣領域にはデスギガス以外にも闇の種族やオブリビオンが存在しており、デスギガスの元に辿り着くには奴らを突破しなければならない。
これまでの闇の種族よりも、オブリビオンよりも強力な脅威たちを、だ。
「まず初めに言っておきます。現状、歓喜のデスギガスを討滅することは不可能です。そのため事件解決にあたってはデスギガスから逃げることを最優先に考えてください」
ダークセイヴァー上層はまだ見つかったばかりで、まだまだ未知の部分が多いということだろう。猟兵にすら手に負えないくらいの脅威が存在していても不思議ではない。
その上で、と未・明は言葉を切ってこう続けた。
「皆さんに行ってもらいたいのはデスギガスに捕らわれている魂人の救出です。デスギガスは魂人を捕らえると善意で改造を施してしまうため、皆さんには魂人が改造される前にデスギガスの下に辿り着き、魂人を救い出してください」
改造。穏やかじゃない言葉が未・明の言葉から飛び出した。言葉通りに受け取ると魂人の肉体を弄繰り回すということだろう。しかも善意で。どうやらデスギガスは我々とは全く異なる価値観の持ち主らしい。
未・明は最後に慇懃に告げる。
「さて、先だっての問題は禁獣領域の門番を気取っている闇の種族でしょう。通常の事件であれば事件の首魁クラスの脅威が皆さんが乗り越えなければならない障害として立ちふさがります。ゆめゆめ警戒を怠らないよう」
ダークセイヴァー、その上層。
世界を渡る猟兵すら知らぬ領域での戦いが今ここに開幕する。
力なき者、覚悟なき者は去るが良い。
これは正真正銘、命を賭した戦いである。
MR2
MR2です。今回はダークセイヴァーでのシナリオをお送りいたします。
今回のコンセプトは『ボスラッシュ』。べらぼうに強い敵との連戦が続くので、バトルが好きな方はぜひこの戦いの攻略に挑んでください。
本シナリオでは全体的に厳しめに判定を行います。ご留意ください。
第1章 ボス戦『リュー・リュイエー』
禁獣領域に侵入する際に相対する敵です。
ボス戦ではありますが、戦況次第で眷属を呼び出して戦いますので、シナリオの進み具合に合わせたプレイングを提出していただけるとより面白いシナリオになるのではないかと考えます。
また『リュー・リュイエー』は対象を発狂させる精神攻撃を得意としますので、それに関する対策をプレイングに入れていただければプレイングボーナスとして加算いたします。
第2章 集団戦
禁獣領域に侵入し、デスギガスの元へ向かう途中で行われる戦闘です。
詳細は間章にてお伝えします。
第3章 ボス戦 『禁獣『歓喜のデスギガス』』
デスギガスの下に到着し、魂人を保護したところから始まります。魂人を保護した猟兵は魂人を取り戻そうと追ってくるデスギガスに攻撃をしかけながら、禁獣領域からの撤退を図ってください。
詳細は間章にてお伝えします。
第1章 ボス戦
『リュー・リュイエー』
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POW : 狂気の絶叫
【精神と正気を破壊する狂気の咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 星辰いと正しき夜
【自身の存在力が最大になる時】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【眷属による結界】で囲まれた内部に【狂乱の精神波】を落とし、極大ダメージを与える。
WIZ : 夢見るままに待ちいたり
【ひび割れた地面】から、戦場全体に「敵味方を識別する【激情の海】」を放ち、ダメージと【一時的発狂】の状態異常を与える。
👑11
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ロバート・ブレイズ
星辰正しき時、貴様等は覚醒し、人類を歓喜の渦に呑み込むと――実に『よくある』展開、常の如くの冒涜性ではないか。故に――俺は貴様の『存在』を既に読み込んでいる
他猟兵に『これは邪神復活の兆し、正しき時が来る』『奴は邪神の住処に過ぎない』『結界を壊せ』と伝え『回避』の術とする。死の器、死の巨人、デスギガス相手よりは真面な代物だ、俺の狂気耐性を剥がす輩は無に等しい
――何
既に狂っている?
今更、愉快な事を――!
眷属どもを鉄塊剣で薙ぎ倒し栞で絡め、奴の脳天を殴りに往こう。いや、真逆
俺の名を知らないとは言わせぬ
俺こそがロバート・ブレイズだ。邪魔だ、門前の『土地』『都市』『非ユークリッド幾何学模様』風情が――!
「おぉぉぉぉ」
リュー・リュイエーは地の底から響くような唸り声を上げた。
ユーベルコード『星辰いと正しき夜』。リュー・リュイエーが最も力を引き出せる位置に星があるときに起動するユーベルコード。
途端に揺れる大地。土地が不自然に沸き立ち、非ユークリッド幾何学的な建築物が聳え立つ。それらはやがて1つのまとまりを見せていく――すなわち都市へと、都市結界へと変化していく。
今ここに、リュー・リュイエーの領域が完成した。領域内ではリュー・リュイエーの眷属――小さなリュー・リュイエーといえるモノ共――が跋扈し、都市結界を支えている。
絶望的状況。だが、それを一笑に付す者がいた。
「星辰正しき時、貴様は覚醒すると――実に『よくある』展開、常の如くの冒涜性ではないか。故に――俺は貴様の『存在』を既に読み込んでいる」
ロバート・ブレイズ(冒涜王・f00135)。
冒涜王の名を関する男は眼前の狂気の在り方を知っている。
ユーベルコード『ビブリオテーク・クルーエル』。「知る」という世界を冒涜する最も原始的な行為をもって、ロバートは異形の怪物を看破する。
「これは邪神復活の前座にすぎず、奴は邪神の住処に過ぎない。取り急ぎ結界を壊す必要があるであろう」
ロバートは落ち着いた口調で周囲の猟兵に告げた。情報の開示、それに伴うユーベルコードの力が他猟兵にも与えられる。リュー・リュイエーの力に対して猟兵たちはある程度の耐性を獲得することが出来た。
「おぉぉぉぉん、おぉぉぉぉん」
まさに筆頭脅威と呼ぶべき存在を前に、リュー・リュイエーは大きな鐘の音を彷彿とさせる声を上げて結界内を震わせた。狂乱の精神波による精神汚染。並みの人間の精神を崩壊させるほどの精神攻撃に、しかしロバートは動じない。
「死の器、死の巨人、デスギガス相手よりは真面な代物だ、俺の狂気耐性を剥がす輩は無に等しい」
ロバートは鉄塊剣を抜く。
どこからか声が聞こえた。
既に狂っている、なんて声が。
それに対して、ロバートは嗤う。
「今更、愉快な事を――!」
都市結界の石床を蹴り飛ばす。
鉄塊剣を手に眷属共の群れにロバートは突貫した。
迎え撃つ眷属たちは鋼鉄の縄と呼べる触手をロバートへと叩きつける。
だが、だが、だが――!
「ふんッ」
ただ一振り。鉄塊剣の一振りで眷属の触手を振り払う。その勢いで眷属が吹き飛ばされてしまうほどの力強さで、だ。
ロバートは眷属を意に介さない。更に迫る触手を鉄塊剣で振り払い、銀糸の栞で眷属を絡めとって、最短距離でリュー・リュイエーの下へ駆ける。
「おぉぉぉぉぉん!」
リュー・リュイエーが眷属を呼ぶ。眼前の脅威に怯え、助けを請う。
だが、遅い。間に合うはずもない。
一歩、長大な剣を持った者が踏み込む。
「真逆、俺の名を知らないとは言わせぬ」
ロバートは敵を前に鉄塊剣を大きく振り上げる。
凄絶な笑みを浮かべ、取るに足らぬ敵に向かって咆哮する。
「俺こそがロバート・ブレイズだ。邪魔だ、門前の既知風情が――!」
ゴウン、と風を裂く音がした。
それはロバートが鉄塊剣を振り下ろした音だった。
ロバートの剣がリュー・リュイエーの脳天を殴りつけ、大きく吹き飛ばしたのだ。
「滅するに至らなかったようだ」
あの手応え、おそらくまだ倒すに至る傷を与えられていないだろう。さすがは上層と言うべきか。やはり易々と乗り越えられる存在ではない。
吹き飛んだリュー・リュイエーを追おうとロバートが吹き飛んだ方向に足を向ける。
すると、わらわらと眷属たちが彼を囲むように集まってきた。
その数は、十、百……いやもっとか?
数えきれないほどの群れの突破にはいくらロバート・ブレイズとて時間がかかりそうだった。
大成功
🔵🔵🔵
ハロ・シエラ
私自身10年以上ダークセイヴァーに住んでいたのに、上がこんな場所であろうとは思いもしませんでした。
どうやらこの世界、どこまで行っても戦わなければならないようですね。
さて、精神波などと言う得体の知れないものを受ければどうなってしまうか正直分かりません。
ならば私に出来る事は一つ、眷属も敵本体も纏めて斬り捨てる事だけです。
私にも【結界術】の心得はありますから、敵が結界で何かをしようとしているなら察知する事も出来るでしょう。
存在力と言うものの事も良く分かりません。
とにかく【ダッシュ】と【軽業】で敵の懐に飛び込み、ユーべルコードで眷属たち諸共【浄化】の力を乗せた炎の【範囲攻撃】で【焼却】してやります。
(私自身10年以上ダークセイヴァーに住んでいたのに、上がこんな場所であろうとは思いもしませんでした)
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は自分の生きていた世界の底知れなさを思い知っていた。
ダークセイヴァー。絶望に覆われたこの世界はどこまで行っても戦わなければならない
運命にあるのだろう。
(さて、一体どうしましょうか)
そう思いながら、ハロは短く、されど深く息を吐く。
先ほど放たれたリュー・リュイエーの狂乱の精神波により、ハロは大きく消耗していた。先の猟兵のユーベルコードによりある程度の耐性を得ていたものの、ダークセイヴァー上層の脅威は借物の力で乗り越えられるほどちゃちなものじゃない。
愛剣を支えにハロは立つ。一度大きく揺さぶられた精神は今もなお彼女を苛んでいる。崩れ落ちてしまそうな予感を抱えながら、少女はなんとか立ち続けていた。
そして、そんなハロの前には無数の眷属たちが群れをなしている。結界の中で現れ出でた小さなリュー・リュイエーと呼ぶべき存在はハロの様子を伺いながら、しかし着実にハロとの距離を詰めていた。
(先ほど弾き飛ばされたリュー・リュイエーとの距離は近い。追撃をしかけるならば、今が好機ですが――)
今の自分に眷属の群れを突破して、リュー・リュイエーの元に辿り着くことが出来るのか。剣士としてのハロが冷静に判断を下す。ここは他猟兵の協力を仰ぎ、戦うべきなのではないか。そんな考えがハロの脳裏をよぎる。
だが、
(いけませんね)
歯を食いしばり、ハロは両の足で立つ。
今のは弱音だ。苦境に流されて、にじみ出た心の弱さだ。ダークセイヴァーで戦ってきた者として、生き残ってきた者として、そんなものは認められない。
精神力を振り絞り、誇りを胸に抱き、それでも足りなければ意地で補った。倒れそうな体を奮い立たせたハロはリトルフォックスを構え、力強く一歩踏み込む。
「――行きます!」
ハロは駆けた。それに応じるように眷属たちも彼女に一斉に襲い掛かる。
迫る眷属の波。彼女はそれをまともに取り合わない。
「――――ッ!」
ハロは軽やかな身のこなしで跳躍すると、押し寄せる眷属の頭を足場にして駆けていく。
彼女が目指す標的は、リュー・リュイエー。結界の主にして、眷属を統べる怪物のみ。
今のハロ・シエラに余裕はない。だからこそ、自分に出来ることを確実にやり遂げる。
いくつもの眷属を踏み越えて、高く跳躍したハロはリュー・リュイエーの真正面に躍り出た。そして愛剣を大きく振りかぶると自らの力を解放する。
「逃げ場はありません、そこは私の間合いです!」
ユーベルコード『フレイム・スローワー』。それは魂まで焼き尽くす炎をまとった斬撃を放つユーベルコード。
引き絞った腕を解き放ち、繰り出した斬撃は炎の槍となってリュー・リュイエーの真正面へと飛んでいく。
「おぉぉん」
リュー・リュイエーは周囲の眷属に号令をかけた。眷属はそれに応じて、ハロとリュー・リュイエーの間に壁を形作る。
故に炎の槍は眷属の壁に直撃した。
「「「「おぉぉぉぉぉぉん」」」」
壁となった無数の眷属が絶叫を上げた。自分自身の全てが焼き尽くされる苦痛に苦しみの声を上げながら、灰になっていく。炎の勢いは止まらず、眷属の群れに広がり、多くの眷属を焼き尽くしていった。
だが、眷属たちの献身は確かに身を結ぶ。ハロが放った渾身の炎の槍はリュー・リュイエーに届かなかったのだ。
「おぉぉぉぉん」
鐘のような声を上げ、リュー・リュイエーはハロから遠ざかっていく。
全てを出し尽くしたハロは成し遂げられなかった無念を胸に抱えながら、しかし気丈に他猟兵に向かって叫んだ。
「あとはお願いします――ッ!」
成功
🔵🔵🔴
備傘・剱
うわぁ…
どっから見ても、かなりアレな奴だ
まぁ、狂気に対する防御もあるし、何とかなるか
呪殺弾、衝撃波、誘導弾、斬撃波、音響弾で弾幕を貼り、結界術で縛って、接近
念動力で触手をさばきつつ、鎧無視攻撃と、二回攻撃と鎧砕きを使いつつ、攻撃してやろう
はは…、よく見れば、こいつ、
海産物じゃないか!
あぁ、そうだ、俺はこいつを
倒しに来たんだっけ?
…さぁ、始めようか、調理開始発動!
オブリビオン、
肉置いてけ!
正気だろうが、狂気だろうが、やる事は変わらねぇ!
俺は
料理人だ…
宝が逃げるなよぉ
はーっはっはっは!
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
リュー・リュイエーとその眷属を備傘・剱(
絶路・f01759)が遠巻きに見ていた。
あれらを視界に収めた彼の感想はこうだ。
(うわぁ……どっから見ても、かなりアレな奴だ)
外見からして冒涜的な存在だとわかる。見ただけで狂気を誘うような、そんな感じだ。
先の猟兵の活躍により、精神攻撃に対するある程度の耐性を得ており、自前の精神安定剤Paradiseも既に服用済み。リュー・リュイエーが誘発する狂気の影響を大きく軽減できる備傘は万全の状態で動けるのだが、さてどうしたものか。
彼の目前に広がるのは火に包まれる眷属の数々と空を往くリュー・リュイエー。眷属は火炎の力によってだいたい半数ほどを削られていた。たったの一撃の戦果としては破格の結果だ。
(なら、このまま眷属を討ちつつ、本丸へと乗り込むとするか)
おそらくまだリュー・リュイエーは倒すには至らないだろう。ならば備傘が目指すべきは後続へと道を繋げること。少しでも損害を与えることが肝要だろう。
だから備傘は混乱の最中にある眷属に奇襲をしかけることにする。
(よし――)
備傘は眷属の群れの前に飛び出した。
眷属の群れは突然現れた襲撃者にも動じず、すぐさまその触手を伸ばす。
「らァ――!」
備傘は呪殺弾を飛ばし、あるいは念動力を当て、その軌道を逸らすことを試みる。あいにくと両者はあまり眷属には効果がないらしく、備傘が想定していたよりも上手く軌道を逸らすことが出来なかった。
「ぐ……!」
打たれる。体が触手に打たれる。
だが、それでも備傘は止まらなかった。
その手にOrthrusを握ると、迫る触手を切り裂いた。
暗色の体液が宙に玉となって散る。それを振り切るように備傘は更に眷属の群れへの距離を詰めた。
愛刀を振るい、斬撃波を飛ばす。眷属の硬い外殻を砕くのはなかなかに難しい。眷属の壁の突破は難しく、備傘は足を止めざるを得なかった。
「だったら、これならどうだ!」
備傘は得物を変える。ワイヤーワークス。鋼鉄製のハンマー。それを横なぎに振るい、彼は外殻を破壊しながら眷属を弾き飛ばす。
「もういっちょッ!」
備傘は更にハンマーを地面に叩きつけ、特大の衝撃波で周囲に群がる眷属たちを粉砕した。
こうして、道が開けた。リュー・リュイエーまでの道のりに障りがなくなった今、備傘は迷うことなく駆ける。
「おぉぉん、おぉぉん」
危険を察知したリュー・リュイエーが眷属たちを呼ぶ。呼応した眷属たちは備傘に飛び掛かる。
だが、今の備傘にはハンマーがある。体を守る鎧を砕き、無意味化するに足る鈍撃を食らわせる獲物が。
備傘が砕く、砕く、砕く。いともたやすく眷属たちは討たれていく。
眷属による防御が意味をなさないと知ったリュー・リュイエーは自らの手札を切った。
「おぉぉぉぉぉぉん!」
ユーベルコード『夢見るままに待ちいたり』。それはひび割れた地面から狂気を誘う激情の海を現出させるユーベルコード。
溢れ出た悍ましき濁流が備傘を飲み込む。一瞬だけ意識が狂気の彼方に飛ぶ。そのせいか、リュー・リュイエーについてこんな考えが正気に戻る前の彼の頭をよぎった。
こいつ、
海産物だな、と。
ビジュアル的にイカやタコに近いな、とそう思ったのだ。
激情の海から歪な建物へと這い上がった備傘は狂気の余韻が残る精神状態で叫んだ。
「
肉置いてけ!」
そして起動するユーベルコード『調理開始』。それは調理に関する技能の力を引き上げるユーベルコード。
Orthrusを握りしめ、備傘は建物を伝い、リュー・リュイエーに肉薄する。
「正気だろうが、狂気だろうが、やる事は変わらねぇ! 俺は
料理人だ……宝《しょくざい》が逃げるなよぉ。はーっはっはっは!」
高笑いながら、備傘はその短刀を振るい、リュー・リュイエーの触手を刈り取ったのだった。
成功
🔵🔵🔴
千束・桜花(サポート)
どうやら強敵が現れたようですねっ!
私が百戦錬磨の将校を名乗るためには避けては通れぬ相手!
幻朧退魔刀を片手に挑ませて頂きます!
本来は対影朧用の剣術ではありますが、別世界のオブリビオンにも有効であることを示しましょう!
クロムキャバリアへ向かうときは専用のキャバリアにてこの剣術を再現します!
さあ、怒りや悲しみに満ちたその荒御魂、鎮めて差し上げましょう!
いざ、いざいざ!
千束・桜花(浪漫櫻の咲く頃に・f22716)は自身の無力さを実感していた。
「くぅぅ……」
肩で息をする。地面に膝をつき、立ち上がることすら、難しい。
ユーベルコード『星辰いと正しき夜』の影響がまだ残っていた。砕かれた精神が千束を苛んでいる。
戦場は佳境へと向かいつつあった。猟兵たちの活躍により、眷属は続々と駆逐され、リュー・リュイエー本体も傷を治しつつも、消耗はしている。強力な猟兵たちが並び立てば討伐は近いだろう。
だが、その強力な猟兵に千束・桜花は入っていない。
自力が、違いすぎた。リュー・リュイエーが仕掛ける精神攻撃。それを自前の力で以て乗り越える者、あるいは耐性を持たなくともこれまでの戦いで練り上げてきた自分自身の気力でねじ伏せる者がいた。
千束はそのどちらでもない。精神への攻撃に対する防御の心得もなければ、気力でねじ伏せるにはまだ未熟だった。千束にとってこの戦場は分不相応で、更に相性が悪い。挑むには最悪と言うべき場所だった。
でも、それでも、
「だとしても……っ」
千束・桜花は猟兵としてここにいる。ならば、立ち向かわなければならない。
彼女は自分自身に向かってくる眷属の一体を視界に収めた。
「はぁぁぁぁ――ッ」
気合の叫びを上げながら、千束は気力を振り絞って立ち上がる。
膝が笑っている。指先がまだ思うように動かせない。そんな至らない自分の情けなさを千束は唇を噛んで飲み込んだ。
そして太ももを叩き、自分自身を律した。
今、己が為すべきことは何か。
決まっている。敵を討つことだ。
「我ら一兵が一騎当千なれば、たとえ世界を相手にしても、負ける道理などありはしない!」
ユーベルコード『大道突貫・ピンキヰパレヱド』。それは義勇心を具現化した桜吹雪を纏うユーベルコード。
桜吹雪の中心に立つ千束は淀んだ瞳に光を宿し、敵を見据えた。幻朧退魔刀『サクラブレェド』を引き抜き、ふらつく体で刀を下段で構える。
鈍い光が刀身で煌く。それを合図に千束は行った。
一歩目は少し覚束なかった。二歩目はいつもの一歩を踏み出せた。だから三歩目はもう揺らがない。
力強く踏み込む。体が迷いなく前へと進む。
恐れはない。ただ目標へ向けて、一人の女は駆けていく。
「――ぁぁぁぁッ!」
裂帛の気勢を上げて、千束は眷属へ肉薄した。
眷属は太い鞭のような触手を千束へと飛ばす。
「弾きますっ!」
桜吹雪が千束の意思に呼応する。千束と触手の間に割り込むと桜吹雪は上部へと触手を受け流す。
続いて迫る触手を千束は弾き落とすと、瞬きの間に眷属の懐に飛び込んだ。
視界の隅で触手が蠢くのが見えた。だが、通す。この一撃だけは――!
「――っ」
浅く息を吐く。それに合わせると同時に左へ大振りに振った刀を躊躇いなく振りぬいた。
未熟な身で届かせた執念の一刀。一念を込めた一撃は間違いなく眷属の体を両断した。
「お、ぉ、ぉ」
眷属が末期の声を上げ、2つに割れた。
活動を停止した眷属を見て、千束は安堵のあまりその場でへたり込む。
「やり……ましたっ」
たった1体、されど1体。千束はこの経験を大きな苦境を乗り越えた1つの成果として胸に刻み込むのだった。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…成る程。この結界都市は"正しい時"で無ければ維持できないのね?
…既に眷属の大半は存在しない。ならば次は、この手で往きましょうか
敵の精神攻撃を他猟兵の援護と自前の狂気耐性で防御して受け流し、
「代行者の羈束・時間王の鏡」を代償に左眼の聖痕の呪詛を限界突破させてUCを発動
時間逆行の神剣を召喚して戦場を時間流のオーラで防御ごと覆い尽くし、
戦場の時間を1日前まで巻き戻して星辰の位置をずらす事で敵UCの無効化を試み、
切断面の時間を逆行させて再生を封じる時の魔力を溜めた斬撃波を放つ時属性攻撃を行う
…来たれ、不変なる時の流れを遡るⅧの剣
…これでお前は天の時、地の利を失った。さあ、夢見るままに滅びるがいい
「……成る程。この都市結界は"正しい時"で無ければ維持できないのね?」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は背の高い家屋の屋根で戦場を俯瞰しながら、状況を冷静に分析していた。
猟兵たちの活躍により、眷属の残数は2割弱と言ったところ。リュー・リュイエーに辿り着けるほどの猛者から主を守りきるには数が足りず、またそうしようとするだけで精一杯というほどの数だ。
であるならば、とリーヴァルディは戦場を動かすべく、とある策を思いつく。
すなわち、
「都市結界の破壊。多分、今ここにいる猟兵の中では私が一番手っ取り早く出来るでしょうね」
都市結界は眷属によって支えられているが、その逆もまたしかり。眷属召喚の起点になっているのは都市結界であり、都市結界すら消滅させてしまえば眷属もまた消える。両者は切っても切り離せない関係性にあると言えた。
都市結界を破壊する正攻法と言えるのは結界を支える眷属の撃滅。けれども、それでは迂遠に過ぎる。リーヴァルディはより簡潔な方法をとることが出来る。
彼方では「おぉぉぉぉん」とリュー・リュイエーが鳴いている。猟兵に追い立てられているのだろう。対抗するように放った狂乱の精神波が再び結界内に鳴り響いた。
当然、リーヴァルディの下にも狂乱に誘う不気味な音は届いている。だが、それを彼女は意に介さない。先の猟兵による援護と自前の狂気耐性で彼女はなんなく受け流す。
「それが通用するほど、やわではないわ」
ダークセイヴァーの上層で戦える者というのは、多かれ少なかれそういう者だろう。たとえ狂気に飲み込まれそうになったとしても、気力でそれを乗り越える。そういう戦士たちが集まっている。
だから、結界が破壊され、眷属がなくなってしまえば、リュー・リュイエーに逆転の目はもうなくなるだろう。
リーヴァルディは左眼に光を湛え、自らの力を解放した。
「……名も無き時の支配者、天の獄に座する異端の神の力を此処に」
それは時を操る王の剣を呼び出す力。
「我、代行者の羈束・時間王の鏡を対価に捧ぐ」
自らが持つ時間王に由来する道具を代償に、それに応じた剣を召喚するユーベルコード。
「我が下に来たれ、不変なる時の流れを遡るⅧの剣」
名を『
代行者の羈束・時間王の神剣』。
リーヴァルディ・カーライルに応えた一振りの神剣がその手に握られる。
左眼に宿る聖痕の呪詛の力を限界突破させ、現れ出でたのは時間逆行を司る剣。
煌々と左眼を光らせて、リーヴァルディは神剣の力を行使した。
つまり、時間逆行の力を。
「都市結界は強大な結界術。だけど、その強大さの裏には繊細な条件がある。都市結界の場合は星辰の正しい位置。だから、都市結界を壊すには星辰の位置をずらしてしまえば良いの」
理論上は確かにそうだ。だが、具体的にそれをどうやって実行するというのだ。いくら強大な猟兵であっても、星の位置を動かせるわけがない。
だからリーヴァルディは星を動かさず、世界の方を動かすことにした。
「――時間を1日前に戻す」
時間逆行の神剣が強大なオーラで結界を、いや世界を侵食し始めた。
やがて神剣の力が満ちると、周囲一帯の時間が完全に1日前へと逆戻りする。
星の位置は1日前のそれに戻り、当然星によって支えられていた都市結界はかき消えていく。
「おぉぉぉぉん」
さしものリュー・リュイエーも動揺の声を上げた。
そんな怪物にまるで断頭台で首切りの斧を振り下ろす処刑人のようにリーヴァルディは告げた。
「これでお前は天の時、地の利を失った。さあ、夢見るままに滅びるがいい」
時間逆行の神剣に再び力が満ちる。
これなるは斬りつけられたモノの時を遡らせる、そのモノの始まりに至らせ、未来への時間の流れを断絶する斬撃。
充足した力で震える神剣を押さえつけ、リーヴァルディは神の力を解き放つ――!
「還れ、その全てが始まった時に」
眩く、暗い赤黒光を纏う神剣をリーヴァルディが振るう。
剣の軌跡に沿って赤黒光の斬撃波が飛んだ。接触部分の時を巻き戻し、生まれる以前のカタチへと還す絶対の一撃が。
リュー・リュイエーにそれを遮る手段はない。怪物は回避を試みるも、もう遅い。
赤黒光の斬撃波はリュー・リュイエーの左上部を間違いなく断ち斬り、大地へと落とした。
時間逆行の力が込められた斬撃で受けた傷が治ることはない。斬撃の残滓が切断面に残っているからだ。常に時を逆行させているため、再生しても再生しても再生する前に戻ってしまう。
故に、最早リュー・リュイエーは虫の息。トドメを刺そうとリーヴァルディが動き出そうとしたその瞬間、1人の猟兵が彼女の傍を駆け抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
下層ですら及ばぬ力などここでは塵芥も同然
まともに戦う事すら危ういでしょう
故に許せぬ。我等が無力、我等が無能
我等が血肉に彼奴等の力を刻み、我等が怨念の糧とする
我等が怨念、いずれ彼奴等を刻む刃とならん
【行動】POW
五感と【第六感+野生の勘】と【戦闘知識+瞬間思考力】を活かして敵攻撃の射線と着弾を【見切り】【残像+フェイント】を囮に接近
【UC+範囲攻撃】の爆破で敵攻撃に対抗し、直接攻撃は【切断+なぎ払い】
全ての攻撃に【怨念の炎】を宿し【焼却+呪詛】の【継続ダメージ】を付与し蝕む
咆哮の発狂は【覚悟+闘争心】と心身に蠢く【殺気+呪詛】を滾らせ毒を以て毒を制し【各耐性+継戦能力】でダメージを堪え戦闘続行
その男は怒りを覚えていた。
この非情なる世界に? あの悍ましき怪物に?
否、否、断じて否。
彼は自分たちの無力さ、自分たちの無能さに怒りを覚えていた。
ダークセイヴァー上層、その禁獣領域を静かな炎を胸に宿して駆けるのは西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)。オブリビオン狩りを至上目的とする西院鬼一門に属する彼はその目的を果たすには力が足りない自分の不甲斐なさに唇を噛む。
(下層ですら及ばぬ力などここでは塵芥も同然。まともに戦う事すら危ういだろう)
西院鬼はその現実を知っている。その現実を正しく受け止めている。
だからこそ、そうだからこそ胸に灯る怒りの炎が消えることはない。
西院鬼はその足を速めた。
彼が標的とするのは禁獣領域の門番、リュー・リュイエー。リュー・リュイエーは既に肉体を大きく削がれており、死にかけだ。あともう少しで討伐できるだろう。
だが、それでもダークセイヴァー上層の住人だ。ただ単に倒されるほどやわじゃない。
「おぉぉぉぉんんん」
苦しみが混じった絶叫があった。
ユーベルコード『狂気の絶叫』。それは精神と正気を粉砕するユーベルコード。
絶叫が西院鬼に直撃する。精神と正気が揺さぶられる。
だが、その衝撃は西院鬼は嚙み潰す。怒りと闘争心、殺気と呪詛に彩られた彼に今さら精神攻撃なぞ通用しない。
むしろそれを糧にして次なる成長へと繋げていく。
「我等が血肉に彼奴等の力を刻み、我等が怨念の糧とする。我等が怨念、いずれ彼奴等を刻む刃とならん」
西院鬼一門としての使命が彼を滾らせている。戦士としての不足は今の彼にない。
疾駆し、迫る西院鬼に恐れをなしたリュー・リュイエーは触手を伸ばす。
しなやかな鞭のように振るわれた触手。しかし、それを西院鬼は紙一重で回避する。
それから一度疾駆の速度を緩めると、続いて迫る触手の着弾点をずらさせ、それを飛び越え、先へ進んだ。
そして闇焔に怨念の炎を纏わせると、リュー・リュイエーに肉薄する。
「おぉぉぉぉぉぉぉん」
自らの滅びを察したリュー・リュイエーは最後の抵抗とばかりに触手をでたらめに振り回す。
西院鬼は殺意と狂気を宿した瞳で、迫る触手を見つめると自らの力を解放した。
「何人たりとも死の影より逃れる事能わず」
ユーベルコード『影面』。それは黒い影を操るユーベルコード。
西院鬼は黒い影を触手へと走らせると、その影で以て触手を爆破させた。
その爆炎を振り切るように西院鬼は駆けると、リュー・リュイエーに向けて跳躍する。
なおも迫る触手を闇焔で断ち斬り、傷口を怨念の炎で焼き潰した。
障害は何もなくなった。西院鬼は怨念の炎を纏った闇焔を大きく振りかぶる。
「これでお前の命運は尽きた。一切を残さず滅びるが良い」
西院鬼が闇焔の刃先をリュー・リュイエーに叩きつける。
瞬間、燃え上がる怨念の炎。怨念の炎は刃先からリュー・リュイエー内部を焼き尽くす。
「おぉぉぉぉぉぉ」
リュー・リュイエーは自分自身の肉体が内側から焼かれる苦痛に苦しむ声を上げる。
けれども炎は止まらない。やがて怨念の炎はリュー・リュイエーを焼き尽くし、この世から痕跡すら残さずに消失させたのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『地獄の亡者』
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POW : 堕落
自身の【欠片ほどに遺されたわずかな正気や人間性】を捨て【紋章の力をさらに引き出した、完全なる亡者】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
SPD : レギオン
【別の亡者】と合体し、攻撃力を増加する【2つ目の紋章】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【亡者弾(肉体の一部を引きちぎったもの)】が使用可能になる。
WIZ : 呼び声
自身が戦闘で瀕死になると【10倍の数のさらなる地獄の亡者】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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(間章、投稿まで今しばらくお待ちください)
禁獣領域の中を彼らはさ迷い続けている。
彼らの名は地獄の亡者。かつて大切な人のために、永劫の地獄へ落ちることを選んだ魂人の成れの果て。
かつての気高さは失われ、邪悪に歪み切った彼らの胸に宿るのは番犬の紋章だ。
最早彼らに理性はなく、ただ目の前のモノを屠るのみ。
歓喜のデスギガスの下へ辿り着きたくば、彼らを退けよ。
さすれば道は開かれん。
※
第1章への参加、ありがとうございました。第2章開始します。
第2章は集団戦です。地獄の亡者の討伐をお願いします。彼らは番犬の紋章の力によって力が底上げされており、白兵戦での戦闘力は通常のボスと相違ない程度の戦闘能力を保有しています。
また地獄の亡者は大切な絆を持つ者に対しては更に強力な力を発揮します。大切な人や大切なモノがある猟兵の不利条件として設定しておりますので、該当する猟兵のプレイングはその不利条件を克服する要素を盛り込んでくだされば、プレイングボーナスとして加算させていただきます。
リーヴァルディ・カーライル
"…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を…"
…それが私が大切な人達から受け継いだ救世の誓い
だけど、どうやらその誓いが気に食わないみたいね?
…貴方達とて同じような意志を、光を抱いて生きていたはずなのに…。
…これ以上、苦しむ姿を見るのは忍びない。葬送してあげるわ、今度こそ永久に…。
第六感に従い「吸血鬼狩りのペルソナ」を自身に降霊する事で敵の弱体化を試み、
積み重ねてきた戦闘知識と経験から敵の殺気を暗視して動作を見切り、
攻撃の死角へと切り込み手にした「炎の精霊結晶」に魔力を溜めUC発動
早業の空中機動を行う炎矢で紋章ごと敵を乱れ撃つ火属性攻撃を放つ
…疑似戦闘人格リーヴァルディ02、限定起動開始
"……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を……"
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は大切な人達から受け継いだ救世の誓いを思い出していた。
「だけど、どうやらその誓いが気に食わないみたいね?」
彼女は群がってきた地獄の亡者を前にそう言い放つ。
地獄の亡者はかつての自分を思い出し、大切な者との絆を持つ者に羨望とかつての己に対する怒りを重ね、激昂した。
「……貴方達とて同じような意志を、光を抱いて生きていたはずなのに……」
リーヴァルディは悲し気に、悔し気に地獄の亡者へと呟いた。
「……これ以上、苦しむ姿を見るのは忍びない。葬送してあげるわ、今度こそ永久に……」
慈悲と憐憫を持って、リーヴァルディは地獄の亡者たちと相対する。
「……疑似戦闘人格リーヴァルディ02、限定起動開始」
吸血鬼狩りのペルソナの降霊。吸血鬼の力を身に降ろした彼女は地獄の亡者たちの殺気を察知しながら、死角へと切り込んだ。
そして懐から炎の精霊結晶を取り出す。
だが、そのワンアクションが大きな隙となった。
「おぁッ
……?!」
リーヴァルディの腹に重たい衝撃が走る。
その理由は言うまでもない。地獄の亡者がその強靭な拳を瞬きの内に――リーヴァルディが反応できないほど素早く――彼女と距離を詰め、打ち込んだのだ。
大きく弧を描き、弾き飛ばされるリーヴァルティ。あまりの肉体に対する衝撃に意識が飛びそうになるが、しかしなんとか堪えた彼女は飛ばされながら、炎の精霊結晶を構えた。
「……我の戦意を以て敵を貫け、力の矢……ッ!」
ユーベルコード『
吸血鬼狩りの業・力矢の型』。それは精霊結晶を触媒に魔力の矢を生成するユーベルコード。
生み出された魔力の矢の数はおよそ650。もはや壁と言える密度で集合した矢をリーヴァルディは指先で操り、地獄の亡者たちへ撃ち放つ。
「燃え、尽きなさい……!」
地面に叩きつけられたものの、受け身を取って衝撃を緩和したリーヴァルディは地獄の亡者へ呪いを吐く。
魔力の矢が着弾し、燃え盛る地獄の亡者たち。その中には番犬の紋章を貫かれ、動きを止める者もいた。
だが炎を立ち昇らせて、動きを止めない者も少なくない。
リーヴァルディ・カーライルは斃れない地獄の亡者たちを見て、呟く。
「そう簡単には行かないわよね」
そうだ。ここはダークセイヴァー上層。戦いは容易に終わりはしない。
成功
🔵🔵🔴
備傘・剱
大切な
絆、ねぇ…
あるっちゃ、あるんだが、な…
なぁ、俺が、なんで、
絶路なんて名乗ってるか、知ってるか?
絶っちゃいけない
路を絶っちまったから、俺には進むべき、路がないんだよ
そりゃ、仲間はいるさ
でもよ、猟兵、やってりゃ、ある日、突然、見かけなくなる事も、あるもんだ
俺にとっての絆ってのは、そんなもんなんだよ
青龍撃、発動、全兵装、完全起動!
呪殺弾、誘導弾、衝撃波、斬撃波、音響弾、ブレス、頭の上の一足りないのダイス攻撃、水弾で敵を吹き飛ばしつつ、接近されたら、爪に鎧無視攻撃と鎧砕きをつけて叩ききる
さ、かかって来いよ、大切なものがあったんだろ?
どっちが、生き残るか、勝負だな
「大切な
絆、ねぇ……あるっちゃ、あるんだが、な……」
備傘・剱(絶路・f01759)は独り言ちる。
「俺が、なんで、
絶路なんて名乗ってるか、知ってるか? 絶っちゃいけない
路を絶っちまったから、俺には進むべき、路がないんだよ」
彼は既に大切なものを失っていた。かけがえのない大切なものを、失っていた。
「そりゃ、仲間はいるさ。でもよ、猟兵、やってりゃ、ある日、突然、見かけなくなる事も、あるもんだ。俺にとっての絆ってのは、そんなもんなんだよ」
だから地獄の亡者と備傘は少しばかり似ているのかもしれない。
彼は自分と似たオブリビオンに向けて宣戦布告する。
「さ、かかって来いよ、大切なものがあったんだろ? どっちが、生き残るか、勝負だな」
地獄の亡者たちは咆哮で応えた。ユーベルコード『レギオン』を用いて、地獄の亡者たちは2体で1体の怪物へと変貌する。
備傘は怪物の肉体が不自然に蠢くのを見た。やがて蠢く肉体は破裂すると、肉の弾丸が放たれた。
「天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり! 踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!」
ユーベルコード『
青龍撃』。それは空気中の水分を凝縮し形成した青龍の爪と牙を纏うユーベルコード。
水の龍爪を振るい、肉の弾丸を弾くと、備傘は疾駆しようとした。
その時だった。
重たい風が彼の顔を打った。
(嘘、だろ?)
風の進行方向に備傘は振り向く。
そこには地獄の亡者が合体した怪物がいた。
胸部に煌々と輝くのは融合した番犬の紋章。爆発的に引き上げられた身体能力が1人と1体の距離を一瞬で埋めるほどの高速移動を可能とした。
怪物は拳を振り上げている。それが振り下ろされる前に、備傘は可能な限りの遠距離攻撃方法による弾幕を張り、目くらましとすると備傘は距離を取った。
「――ったく。とんでもねぇぜ、ダークセイヴァー上層ってのは」
備傘は冷や汗を浮かべながら、そんな風にぼやく。
ダークセイヴァー上層、そこに住まう脅威は未だ健在。容易く滅ぼせるような、そんな敵ではない。
成功
🔵🔵🔴
ハロ・シエラ
なるほど、やはり上層にもこの手のオブリビオンがいますか。
私に出来るのはなるべく苦しまないよう、速やかに倒す事だけです。
ダークセイヴァーの解放を目指す、同郷の大切な友人達のためにも。
さて、その友人の一人から頂いたダガーがあります。
敵が太陽光を苦手とするなら、この剣が放つ彼女の聖なる光も嫌がるかも知れません。
【浄化】の光の【属性攻撃】で【目潰し】を仕掛けましょう。
後は正面から挑んでレイピアで番犬の紋章を狙い、敵の攻撃を回避しながら敵を刺突します。
浅くとも、致命傷で無くとも命中さえすれば構いません。
もう一人の友人から教わった魔術で爆破してしまいましょう。
光と真紅の絆が、きっと私の力になってくれます。
ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は地獄の亡者たちと相対した。
「なるほど、やはり上層にもこの手のオブリビオンがいますか。私に出来るのはなるべく苦しまないよう、速やかに倒す事だけです。ダークセイヴァーの解放を目指す、同郷の大切な友人達のためにも」
友のことを思い出し、ハロは短剣エッジ・オブ・サンクチュアリを引き抜いた。
彼女の戦意と友との絆を察知し、地獄の亡者たちも動き出す。胸元の番犬の紋章がひときわ輝かせると自らの力を引き上げた。
そして瞬発する。瞬きの内に搔き消えた3体の地獄の亡者。
対するハロは握る短剣を輝かせる。エッジ・オブ・サンクチュアリ、その性能の応用。込められている聖なる力を目いっぱい引き出した。
さながら太陽のような輝きに、地獄の亡者たちの目が眩む。
ザンッ、という拳を振りぬく音がハロの耳を打った。目が眩んだ地獄の亡者の空ぶった打撃を紙一重でハロが回避したが故の音だった。
そのままハロは愛剣リトルフォックスを抜くと、地獄の亡者の1体の懐に潜り込む。
「ハァ――!」
一歩、力強く踏み込んだ。同時にレイピアを一呼吸の内に振りぬいた。
地獄の亡者の硬い皮膚がレイピアを拒む。だが、かまわない。命中さえすれば――!
「
陥落!」
爆炎。それがレイピアの先に咲いた。ユーベルコード『陥炎』。それは近接攻撃が命中した相手を魔力で爆破する、もう1人の友から教わったユーベルコード。
爆炎を払うとハロ・シエラは次なる標的へと向かう。
光と真紅の絆。2人の友の力を借りて、彼女は再び強敵へと挑む。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
魂人として囚われた挙句こうも成り果てるとは
地獄に成り果てた身なればその怨念はさぞ強い事でしょう
我等が絆は怨念により結ばれた者
死してなお救いがないのであれば、我等が全て喰らい尽くそう
歪み果てた血肉、解放されぬ魂、悉くを我等が怨念の糧とする
【行動】POW
【五感と第六感+野生の勘】を働かせ【戦闘知識+瞬間思考力】を基に敵味方の動向を把握し敵行動を【見切り】予測
【先制攻撃+UC】に【怨念の炎】を宿し【範囲攻撃】で敵前列を攻撃
炎と【残像+フェイント】で敵反撃と意識を誘導して回り込み【範囲攻撃+なぎ払い+切断】
【怨念の炎】によって蝕みつつ常に前列の体を障害物として利用、乗り越える瞬間を狙って攻撃して行く
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は思う。
「魂人として囚われた挙句こうも成り果てるとは……地獄に成り果てた身なればその怨念はさぞ強い事でしょう」
地獄の亡者とは地獄の苦しみのあまりかつての信念を失った者たち。高潔なものから堕落したものだからこそ、その怨念は深く、暗いモノとなる。
「我等が絆は怨念により結ばれた者。死してなお救いがないのであれば、我等が全て喰らい尽くそう。歪み果てた血肉、解放されぬ魂、悉くを我等が怨念の糧とする」
自らの在り方と胸に、西院鬼は疾駆した。
研ぎ澄ますは戦士としての感覚。西院鬼は地獄の亡者たちと激突する。
地獄の亡者たちは西院鬼に応えるように疾駆した。
西院鬼の左手に地獄の亡者が現れる。闇焔にユーベルコード『殺意の炎』を纏わせて、西院鬼は地獄の亡者の拳を受け止めた。
受け止めるタイミングは間に合った。殺意の炎は触れたものを焼き、地獄の亡者は黒炎に包まれる。だが、それでもその力が減衰されるわけではない。
「ぐ――」
西院鬼は軽く吹き飛ばされた。その間にも次の地獄の亡者が追撃に迫る。
このままでは不味い。そう判断した西院鬼は黒い炎を全方位へ放ち、地獄の亡者たちをけん制する。
体勢を整え、再度闇焔を西院鬼は構えた。
そして呟く。
「やはり強いな。ダークセイヴァー上層のオブリビオンは」
だがしかし、だからこそ、糧にする意義があるというものだ。
成功
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ロバート・ブレイズ
重要視すべきは己の内に存在する、数多の『絆』か。彼等或いは彼女等は私を捕縛するように、抱擁するが如くに微笑み掛けてくる。此れは、貴様、酷く、悪い意味での『絆』だと思わないか? 本来の意味での、悪質な、病的なまでの殺到だ――莫迦々々しい、まったくを否と叩き潰さねばならない
Tick-Tock――貴様の存在を一時、正気に引き摺り込んで魅せよう。ある種の恐怖に、人間に戻してやろう。素晴らしい提案だとは想わないか?
悦ばしい。ひとつでも瀕死にしたならば『悉くを魔物とする』か。貴様には何が視える?
あとはじっくりと一体一体、戯曲の虜と見做すが好い
情報収集だ、奴等の急所を突く
では、貴様、黄の印を見つけたか……?
「重要視すべきは己の内に存在する、数多の『絆』か」
ロバート・ブレイズ(
冒涜王・f00135)は1人ぼやく。
「彼等或いは彼女等は私を捕縛するように、抱擁するが如くに微笑み掛けてくる。此れは、貴様、酷く、悪い意味での『絆』だと思わないか?」
地獄の亡者にそう問いかけたところで答えが返ってくるはずもない。
しかしロバートは答えを期待しているわけではなかった。求道者、彼がそうである故に。
「本来の意味での、悪質な、病的なまでの殺到だ――莫迦々々しい、まったくを否と叩き潰さねばならない」
ロバートは駆けた。応じるように地獄の亡者も疾駆した。
胸元の番犬の紋章を煌々と輝かせ、瞬きの内にロバートへと肉薄する。
地獄の亡者が一歩踏み込み、ロバートに拳を放った。
ロバートはそれを交差させた腕で受け止める。足で地面を擦りながら、弾かれるロバート。だが、その間に彼はTick-Tockを取り出した。
「貴様の存在を一時、正気に引き摺り込んで魅せよう。ある種の恐怖に、人間に戻してやろう。素晴らしい提案だとは想わないか?」
地獄の亡者の時が遡る。地獄の亡者の精神性が地獄の亡者になる前のそれに巻き戻る。
「おぉ、おぉぉぉぉぉぉ!」
地獄の亡者は絶叫した。彼、あるいは彼女は今の自分の在り方とその在り方が為してきた悪行に苛まれているのだ。
そして、その絶叫に応じるように数多の地獄の亡者が召喚される。ユーベルコード『呼び声』。窮地に陥った地獄の亡者が仲間を呼び出すユーベルコード。
「悦ばしい。ひとつでも瀕死にしたならば『悉くを魔物とする』か。貴様には何が視える?」
応じるようにロバートはユーベルコード『ブロッケンの魔物』を起動する。それは恐ろしい魔物の幻影を相手に見せるユーベルコード。
さて、地獄の亡者たちは一体何を見ているのか。地獄の亡者たちの中には泣き喚く者や許しを乞う者がいる。
おそらくは、かつてその身も、その魂も捧げた大切な者の姿を見ているのだろう。もはや正気は失われた。それでも地獄の亡者たちはその面影に恐怖し、苛まれている。
ロバートはそんな地獄の亡者の1人に歩み寄ると問うた。
「では、貴様、黄の印を見つけたか……?」
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『禁獣『歓喜のデスギガス』』
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POW : デスギガス蹂躙
【闇色のオーラ】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[闇色のオーラ]が尽きるまで【腕の振り回しとビルによる踏み潰し】で攻撃し続ける。
SPD : 歓喜の笑い声
戦場全体に【精神を蝕む耳障りな笑い声】を発生させる。レベル分後まで、敵は【精神破壊】の攻撃を、味方は【デスギガスだけは快く感じる笑い声】の回復を受け続ける。
WIZ : 喜ばしき忘却
【デスギガスの漆黒の肉体】に触れた対象の【記憶】を奪ったり、逆に与えたりできる。
👑11
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(間章投稿までお待ちください)
「やぁ、君は一体何を望む? 友達だからぼくがなんでも叶えてあげるよ!」
象鼻の怪物が魂人の少女に問いかける。その顔には喜色満面の、いっそ不気味さを感じさせるほどの笑みが浮かんでいる。
見上げるほどの巨体、ビルの脚とバクの体を持つ異様。ヤツの名は禁獣『歓喜のデスギガス』。ヒトとは全く異なる価値観を持った怪物。
「うんうん、なるほど。君は今ここから逃げたい、死にたくないって思ったね? なら脚を増やしてあげよう! どれだけ走っても苦しくないように心臓をつけよう!」
デスギガスは暗色でグロデスクに彩られた心臓と脚を創造する。
ダークセイヴァー、その上層。そこに住まう猛者の中でもデスギガスは頭1つとびぬけていた。人体部品の創造程度、デスギガスにとっては造作もない。そう言えてしまうほどの力がヤツにはある。
そして人体を傷つけずに生み出した人体部品を着けてしまうことだって。
デスギガスの狂手が魂人の少女に迫る。少女は喉を引きつらせ、声にならない悲鳴を上げた。
ヤツから逃げおおせる力は少女にはない。救いの道は閉ざされた。もはや彼女がまっとうに生き残る術はない。
だがそれは、少女だけならば、だ。
デスギガスが爆発によってよろめいた。その爆風に隠れるようにして、少女を攫う影があった。
「ん~~~~?」
爆発を受けても無傷なデスギガスは煙を振り払うと目の前の少女がいなくなっていることに気が付いた。
「どこに行ったのかなー?」
デスギガスが視線をめぐらすと、そこには少女と少女を救い出した猟兵の姿があった。
「待ってて、今すぐ助けてあげるから!」
象鼻の怪物は吠える。ただそれだけで世界が震えた、そんな気がするくらいの咆哮だった。
デスギガスに悪意はない。
デスギガスに敵意はない。
デスギガスに害意はない。
だからこそデスギガスは心の底から『友達』の力になりたいと思って、その力を振るう。
ヤツの言う『友達』にとって、それがどれほどの悲劇であったとしても。
デスギガスの価値観とヒトの価値観は決して交わることはない。
覆しようがないほどにヤツはヒトにとっての敵なのだ。
我らの間に相互理解は有り得ず、交渉のテーブルの用意はない。
だから。
決して分かり合えぬ獣、禁獣『歓喜のデスギガス』。ダークセイヴァー上層に住まう掛け値なしの怪物から、自らの力を以て魂人の少女を救い出せ。
※
遅くなって申し訳ありません。第3章開始します。
第3章ではデスギガスから魂人の少女を禁獣領域の外まで連れ出す救出任務にあたってもらいます。そのためプレイングではデスギガスの討伐ではなく魂人を禁獣領域の外へ連れ出すことを重視したプレイングを提出してください。
また第3章で戦うことになるデスギガスは討伐不可能な存在ですので、シナリオ終了後も討伐されることはございません。ご了承ください。
プレイングボーナスはありません。ご自由にプレイングを作成してください。
終夜・日明(サポート)
【アドリブ連携歓迎】
「対象を確認。これよりエンゲージします」
○口調
一人称:僕(共通)
仲間や現地住民には二人称:あなた/敬語を使った丁寧口調
敵には二人称:貴様/男性口調(だ、だな、だろう、なのか?)
○技能
攻撃面は【ハッキング/破壊工作/砲撃/制圧射撃/誘導弾/継続ダメージ】、
防御面は【見切り/激痛耐性/継戦能力】を主に使用します。
○立ち回り
SPDかWIZのどちらかで戦闘します。
遠距離主体ですが近距離も可能です、キャバリアに搭乗しての戦闘か生身での戦闘かは敵の規模でご選択ください。
状況に応じて他の猟兵のサポートでも大丈夫です。
戦場は問いませんが、生命体や機械類が相手だとよりお役に立てるかと。
「行きましょう。あれは僕の手に負えない」
終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は早々にデスギガスと自身の間に横たわる彼我の実力差を理解した。
ダークセイヴァー上層に住まう怪物の中でも、更に頭一つ飛びぬけた化け物。戦うという領域にない敵を前にしては逃亡の一手しかない。
「待て! 友達を返せ!」
デスギガスは世界を震わせる声で叫んだ。だが、そんな声にこちらが考慮する道理はない。終夜は魂人の少女の背を押しながら駆け出していく。
「逃がさないからなぁっ」
デスギガスはビルの脚をまるでムカデのようにうねらせて終夜達を追ってきた。
このままじゃ追いつかれる。そう彼は判断した。
「先に進んでください。ここは僕が食い止めます……!」
魂人の少女を先に逃がすと終夜は激昂するデスギガスと相対する。
「友達を攫ったお前からこらしめてやる!」
「やれるものならやって見せるが良い! このデカブツが!!」
終夜は自らの力を解放する。
「世界を護る為だ。潔く死んでくれ――痛みなく楽になりたいのなら……!」
ユーベルコード『《蠱毒》顕現・冥王の柘榴酒』。それは問いかけと応答のユーベルコード。
デスギガスに死を求めた終夜。しかしデスギガスはこれを否定する。
「僕はそう簡単に殺されてやらないからなぁっ」
否定の応答。これにより終夜は激痛耐性と死への恐怖耐性を得た。
得られる耐性は一時的なものに過ぎない。だが、それでも十分だと彼は判断する。先ほどは強くものを言ったが、しかしデスギガスと相対出来るのは一瞬だ、とそういう確信が彼にはあったからだ。
終夜は【Code-Week】Mk-Third《オルトロス》へと乗り込み、デスギガスへと突貫した。
そんな終夜をデスギガスは嗤う。
「そんな玩具で何が出来るんだ?」
ユーベルコード『歓喜の笑い声』。それは聞いた者の精神を破壊するユーベルコード。
「ぐぅお……ッ」
終夜が乗り込んだクロムキャバリアが制御を失い、墜落していく。
禁獣『歓喜のデスギガス』。ヤツの力の前に終夜の力はあまりにも無力だった。つまり『歓喜の笑い声』をまともに食らった彼は精神を砕かれ、意識を失った。落ちたクロムキャバリアは大地へと激突し、無様な姿をさらしている。
デスギガスは嗤う。
「これで邪魔者はいなくなったよ。さぁ、友達を追いかけよう」
デスギガスは進む。魂人の少女へ向けて。
その足を止めることすら、生半可な実力では成しえないのだ。
成功
🔵🔵🔴
隠神・華蘭(サポート)
※えっちなのはよろしくないと思いますぅ。それ以外でしたら割となんでも。
化け狸の華蘭と申しますぅ。
一人称はわたくし、お名前呼びは〇〇様で口調は丁寧語、カタカナ表記の単語は人名以外はひらがなで喋りますよぉ。
化術や逃げ足を駆使して駆け回りながら攻撃は鉈での切断と小判ばらまきや狸火での範囲攻撃をめいんに使っていきますよぉ。
UCは何でもいけますねぇ、『山口霊神』や『怨み狸』辺りはとっておきですので強敵さんに当たってしまったらそれも使用考えましょう。
他の妖怪さんをはじめ、人間以外は優先的にお優しく接しますよぉ。
普通に接するだけで別に人間にきつく当るというわけではないですのでご安心を。
「全て跡形も無く焼き尽くす……これぞ、シンの怨絵巻――っ」
無数の青白い火の玉がデスギガスの目前へと現れる。
「なんだぁ?」
デスギガスはそれに面食らいながらも、ただ手で振り払うだけで火の玉を一蹴した。
その光景を苦々しく見る者が1人。
「これでも通用しませんかぁ」
隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)。青白い火の玉をユーベルコード『深・怨絵巻』で放ったのが彼女だった。
割と全力で、力を絞りつくすくらいでユーベルコードを使ったのだが、しかしデスギガスには通用しないらしい。ダークセイヴァー上層、そこに住まう超越の怪物。猟兵にすら手に負えないことを隠神は思い知る。
もうこうなったら逃げの一手だ。
「はぁい、ごめんなさいねぇ」
魂人の少女に一言断って、彼女を抱きかかえる。
それから脇目も振らず疾駆した。
「なんなんだよ、お前らはー」
デスギガスは自分自身の友達を攫い続ける謎の勢力に苛立ちを覚えていた。逆さまのビルの足なんて奇妙な足を急がせて、ヤツは大地を揺らす。
「その程度の速さ、僕ならすぐ追いつける!」
デスギガスは喜ばし気に笑った。起動するユーベルコード『歓喜の笑い声』。それは聞いた者の精神を破壊するユーベルコード。
「ぐぅ……っ」
隠神は精神を砕かれて、その足をもつれさせた。彼女が抱えていた魂人の少女は投げ出されて、透き通る体に痛々しい擦り傷が出来る。
「ぐぅわっははは、悪は成敗されるんだ」
満足げに笑いながらデスギガスは魂人の少女へ手を伸ばし、その体を掴む。だが――
「さぁ、僕と一緒に行こうね。大丈夫、君の望みはなんでも叶え――っ」
――デスギガスの手の中で、ドロン、と煙を立てて魂人の少女が1枚の葉っぱへと変じたのだ。
●
「作戦は成功したみたいですねぇ」
激昂するデスギガスを隠神は遠くから見ていた。
化け狸としての力、その本質の無理矢理の応用。さっきまでデスギガスに追いかけられていた隠神と魂人の少女は化け狸の力を使って生み出した囮だったのだ。
「とはいえ、です」
デスギガスのユーベルコードの影響を隠神が受けなかったわけではない。非常に広域に影響を及ぼすあの力は間違いなく、隠神にダメージを与えている。おまけに無理な力の行使を行ったためか消耗が激しい。
如何な隠神とはいえ、今の自分では魂人の少女を護衛することは出来そうになかった。
だから、彼女は魂人の少女の身柄を次の猟兵に託す。
去り行く背を見つめながら、隠神は祈った。
「どうか彼女の行く末が良きものでありますように」
成功
🔵🔵🔴
シィエー・スミス(サポート)
ブギーモンスターの魔女×四天王、70歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、嘘をつく時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
鹿(エルク)の魔女。全身を白い布で隠しており、ブギー・ブギーフェイス時以外は極端に脱ぎたがらない。とある神の信者もしくは化身、そのもの。真実は不明
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
シィエー・スミス(エルクの魔女・f31366)は自らの力を解放した。
ユーベルコード『ブギー・ブギーフェイス』及びユーベルコード『
魔獣』。自らの真の姿を解放し、骸魂【這い寄る混沌】との融合を果たした彼女はデスギガスと相対する。
「どいてくれないかな? 僕は友達を追いかけないといけないんだ」
禁獣『歓喜のデスギガス』。ヤツの口調にはシィエーを侮る確かな口調があった。
確かにシィエーの実力はダークセイヴァー上層で戦うには劣る。だが、だとしても誰かを守るために立ち向かわない理由はない。
「行きますよ……っ」
シィエーはその4本の足で大地を蹴った。身に纏う不気味な触腕とかぎ爪を逆立てながら、長く伸び血を啜る肉の槍と化した角でデスギガスの足止めを狙う。
だが、それはデスギガスにとっては好都合だった。
シィエーのかぎ爪と歪んだ角がデスギガスに突き立てられる直前、デスギガスの体が漆黒に染め上がる。
ユーベルコード『喜ばしき忘却』。それは記憶を奪う、あるいは与えるユーベルコード。
「ぁ――」
黒き体に触れたシィエーはデスギガスに捏造された拷問の記憶を与えられ、苦痛の記憶がフラッシュバックした彼女は偽りと言えどその記憶の痛みに呼吸と意識を失った。
体勢を崩す。駆けた勢いのまま投げ出されたシィエーは酷く体を打ち付け、痛みに呻く。
拷問の記憶に苛まれ、苦しむ彼女。もう駄目かと思われた時、シィエーの鹿の瞳は見知った顔を写していた。
成功
🔵🔵🔴
ロバート・ブレイズ
死の器、貴様。私――俺は魂人を逃すべく、貴様との会話を望む。さて、貴様、真逆、俺と謂う友との会話を無碍に扱う筈がない。貴様は俺と謂う友とのお話を問答無用で楽しめる筈だ
――懐かしい事。我々はおそらく、別の世界線、ヨグ=ソトホートの球体が外、尽く戯れたのだろう
忘れたとは言わせない。私はロバート・ブレイズだ
嗚呼、貴様――世の中まったく愉しい事ばかりだとは思わないか。心臓の数、足の数、手の数、スートの輪郭を失くしたワケではない。弄ぶとするならば、お人好しめ
――純粋に魂を改めるが良い。手術台は最早、この上層、世界そのものと解せる
クカカッ――俺は貴様の在り方に郷愁を覚えている
お互いに理解する所以はないが!
魂人の少女は息を切らせて走る。
背後に迫るは巨体の異様、歓喜のデスギガス。大地を揺らしながら、ヤツは少女の元へと迫る。
そんな両者の間に立つ者が1人。
彼の名はロバート・ブレイズ(
冒涜王・f00135)。デスギガスを前にしても威風堂々と立つ彼は、先に倒れた猟兵を一瞥するとデスギガスと会話を試みる。
「死の器、貴様。私――俺は魂人を逃すべく、貴様との会話を望む」
これまで現れた闖入者とは異なる振る舞いにデスギガスは面食らった。
「ん~、なんなの君は?」
「忘れたとは言わせない。私はロバート・ブレイズだ――懐かしい事。我々はおそらく、別の世界線、ヨグ=ソトホートの球体が外、尽く戯れたのだろう」
「ん~~?」
ロバートの物言いにデスギガスは首を傾げるばかりだ。生憎とヤツの記憶にロバートのことはないらしい。
だが、ロバートはそんなことは意に介していない様子だった。
「嗚呼、貴様――世の中まったく愉しい事ばかりだとは思わないか。心臓の数、足の数、手の数、スートの輪郭を失くしたワケではない。弄ぶとするならば、お人好しめ」
ロバートは自らの力を解放する。
「――の戯れは厄介な連中だ。羅列した既知どもの肉と精神を喰い散らかし、遍く愚物を否定せねば成らぬ。悉くが最悪ならば早過ぎる埋葬――」
ユーベルコード『
私はロバート・ブレイズだ。兎角。貴様等、此度――』。それは言葉を壁とするユーベルコード。
ロバートの力によって現出した巨大な壁がデスギガスの行く手を阻む。その壁を鬱陶しそうにデスギガスは殴りつけた。
「邪魔だよ!」
ただの一撃でひび割れる壁。ダークセイヴァー上層、その中でもとびぬけた怪物の前では時間稼ぎにさえもならないということか。
けれどもロバートは臆することなく、鉄塊剣を手に取る。
「――純粋に魂を改めるが良い。手術台は最早、この上層、世界そのものと解せる。クカカッ――俺は貴様の在り方に郷愁を覚えている。お互いに理解する所以はないが!」
ロバートが獰猛な笑みを浮かべると同時にユーベルコードの巨壁が砕かれる。
降り注ぐ破片の中、ロバートはデスギガスへと食って掛かった。
鉄塊剣と巨体の激突は禁獣領域の隅々まで響き渡り、ロバートがその力を使い果たすまで続いていた。
成功
🔵🔵🔴
備傘・剱
うっわぁ…
ちょっと処じゃない位にかかわり合っちゃダメなタイプな奴だな、こりゃ
逃げるが勝ちなら、移動力重視だな
雷獣駆、発動!
少女に結界術、オーラ防御、念動力で急加速によるGと、攻撃から守りつつ、俺は、衝撃波・誘導弾で弾幕を貼り、自分達に似せて作った式神をデコイにしつつ、最大速度で戦線を離脱するぞ
少女の命最優先で、俺自身への損傷、危害は第六感と野生の勘でよけつつ、被害は完全に無視
あの手のどうしようもない
奴には何言っても通じないからな
この速度なら、そうそう、遅れをとるとは思わないが、油断できないのが獣なんだよな
いよいよって時には少女を逃がして足止めに専念する
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
「うっわぁ……ちょっと処じゃない位にかかわり合っちゃダメなタイプな奴だな、こりゃ」
備傘・剱(
絶路・f01759)はデスギガスをそう評した。
ダークセイヴァー上層に居る怪物たちの中でも、更に頭1つ飛びぬけた怪物。相手にするのは容易じゃない。
ここは逃げの一択だ。
「駆けよ雷獣! 森羅万象、万里一空、全ては汝が望むがままに! 理外が己の理であるがの如く!」
ユーベルコード『
雷獣駆』。それは額から生えた麒麟の角より発生した黒い迅雷で全身を覆い、緊急特殊推進ユニットを強制制御するユーベルコード。
速度を出すのに躊躇いはしない。最初から全速力で備傘は飛翔した。
そして、魂人の少女の背を捉えると彼女を抱きかかえ、すぐさま防護用の結界や防御用オーラ、念動力を少女の周りに展開しつつ加速する。
「驚かせて悪い。ただあの手のどうしようもない
奴には何言っても通じないからな。さっさと逃げるに限るんだよ。この速度なら、そうそう遅れをとるとは思わないが、油断できないのが獣だな」
飛び去って行く中で、備傘は背後に視線を向けた。
「僕の友達をどこへ攫う気だ~~~~?」
備傘の視線の先ではデスギガスが怒りに震えている。体からは闇色のオーラが立ち上り、今にもこちらに飛び掛かってきそうな様子だった。
「ほら、言った通りだ……!」
攻撃の予感を感じ取る。備傘は衝撃波と誘導弾の弾幕を張りつつ、式神でデコイを展開しながら、更に速度を上げた。
だが、そんな小細工なぞ通用しない。絶対的な蹂躙が始まる。
「行くぞ~~」
ユーベルコード『デスギガス蹂躙』。それはその巨体でめちゃくちゃに暴れまわるユーベルコード。
デスギガスを覆う闇色のオーラがより一層濃くなると、ヤツは空高く跳び上がった。
そして備傘が飛翔する一帯めがけて、その巨体を堕とす。
「――――っ」
備傘は更に速度を加速させた。
翔ける、翔ける、翔ける。背中のバッテリーが高い熱を持つのを備傘は感じていた。
「間に合えぇぇぇぇ!」
備傘が祈るように叫ぶ。その背後でデスギガスが大地へと激突した。
大地が、世界が比喩抜きで震動する。
舞い上がる土埃と周囲を薙ぎ払う衝撃波から少女を守るように守りを固めると、更に彼は速度を上げた。
だが、それにも限界が来る。
「ぐァ――」
備傘のバッテリーが限界を訴え、爆発したのだ。
制御を失い、失墜する備傘。それでも魂人の少女を傷つけまいとありったけの防御リソースを割り振った。
だから魂人の少女は地面に投げ出されても、無傷のままいることが出来た。
備傘は彼女に向かって告げる。
「行け――!」
もう備傘は少女を守れない。
彼は次の猟兵に少女を託す。
禁獣領域の逃避行。もう中腹を過ぎたところまで来た。
脱出までは後少し、ハッピーエンドまでは後少しだ。
成功
🔵🔵🔴
姫神・咲夜(サポート)
桜の精の死霊術士×悪魔召喚士、女性です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
片思いの人には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
清楚で女流階級風の口調で、お淑やかな性格です。
基本的に平和的な解決を望みますが
戦わざるを得ない時は果敢に戦いに向かう勇敢さを持っています。
あとはおまかせです。よろしくおねがいします!
ダークセイヴァー、その上層。強者と怪物がしのぎを削る世界に淡く、ほのかな優しさを抱く風が吹いた。
現れたのは姫神・咲夜(静桜・f24808)。桜の精の猟兵は魂人の少女とデスギガスの間に立つ。
「1人の少女の危機を、見逃すわけにはいきませんね」
敵は、強大なる禁獣『歓喜のデスギガス』。姫神とて突破できる相手ではなく、戦うことすら厳しい相手だ。
しかし、それでも目の前の少女が弄ばれることは許容できない。
「また邪魔者が来たんだね」
苛立ちを隠さず、デスギガスは言葉を漏らす。
姫神はそんなデスギガスに取り合わずに、自らの力を解放した。
「春は暁を知らず、夢で桜は永遠を知る。桜花に導かれ、微睡みにその身を委ねなさい」
ユーベルコード『桜の癒やし』。それは花吹雪で相手を包み込み、眠りへと誘うユーベルコード。
姫神を中心にして、突如巻き起こる花吹雪。それが奔り、デスギガスを包み込む。
だが――
「――ふんっ」
デスギガスが乱雑に腕を振るうと、その力が発揮される前に花吹雪を散らした。
「な――っ」
驚愕に目を見開く姫神。そんな彼女に追いうちを掛けるようにデスギガスは平手打ちを彼女に食らわせる。
「――――っ」
咄嗟に取った防御体勢に意味はない。
デスギガスの平手に打たれた姫神は肺の中の空気が一気に押し出され、呼吸を忘れた。
歓喜のデスギガス。その足止めは容易ではない。生半可な工作活動では動きを止めることなぞ出来ない。
大地に投げ飛ばされた姫神は、その事実を実感するのだった。
成功
🔵🔵🔴
西院鬼・織久
敵わぬ存在に死山血河を築きながらも牙を研ぎ続け、喰らうに至ったのが我等
奴もいずれ必ず喰らってくれる
今は滾る怨念を翼と変えよう
【行動】POW
【先制攻撃+UC】の【空中戦+空中機動】で敵の意識を少女からなるべく反らす
敵の攻撃や行動を【第六感+野生の勘+瞬間思考力】でいち早く察知し軌道を【見切り】回避しながら次の移動ルートを組み立て
【黒酸漿】に少女の護衛と移動を任せ自身は敵攻撃を【怪力+なぎ払+切断】や【鎧砕き】で威力の分散、軽減を狙う
【黒酸漿】と少女が狙われたら自身は攻撃を凌ぐごとに専念し、黒酸漿に少女を連れて行ってもらう
禁獣領域の逃避行。おぞましい怪物の魔の手から逃げる戦いもいよいよ佳境に入る。
「さぁ、もう少しです。禁獣領域を抜けるまで頑張ってください」
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はそろそろ限界が近づいている少女を励ました。
長々と走っていたため、少女の体力はもう限界を迎えている。だが、デスギガスから逃げ続けていることを考えればここまでよく頑張ってくれたと賞賛されるべきだろう。
「待って~、そこから出ちゃうと僕じゃ助けられないよ」
デスギガスは焦った声を出す。禁獣領域とその外との境界線が見えてきた。かつてリュー・リュイエーと戦った場所を越えれば、この逃避行はおしまいだ。
「――っ。行ってください。私はここでデスギガスを食い止めます」
あともう少し、だというのにデスギガスは2人の近くに迫っていた。
西院鬼は少女を先に行かせ、デスギガスと向き合った。
「邪魔するな!」
デスギガスが激昂する。ただそれだけで空気が震えた。
規格外の怪物に西院鬼は、それでも挑む。
「我等が血に潜む竜よ、天地を遍く狩る竜翼と化せ」
ユーベルコード『怨竜顕現』。それは西院鬼の吸血鬼が血に宿していた竜の力で全身を覆い、殺意と怨念の強さに比例して自らの力を引き上げるユーベルコード。
竜の力を身に纏った西院鬼は飛翔した。
デスギガスはそんな彼を目で追い、少女から目を逸らす。
その隙を見逃さずに西院鬼は自らの下僕、黒酸漿を少女の護衛として派遣した。
「絶対に許さない、許さないからなぁぁ!」
友達を奪われた怒りに目を眩ませたデスギガスは西院鬼の策に気が付かない。闇色のオーラを纏うと、西院鬼を叩き堕とそうと腕をめちゃくちゃに振るう。
ただの一振りだけで嵐のような風が吹き荒れるが、西院鬼はその戦闘センスで見事に回避していく。
「あ、駄目だ!」
翻弄されていたデスギガスはようやく西院鬼が敷いた策に気が付く。
西院鬼を無視して、魂人の少女をデスギガスは襲おうと手を伸ばした。
「甘い――」
デスギガスが伸ばした手を西院鬼は闇焔を用いて弾き飛ばす。
ただそれだけで闇焔が罅割れたが、しかし十分な成果はあった。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
デスギガスが叫ぶ。魂人の少女が禁獣領域を脱したのだ。
決死の逃避行、その終わり。魂人の少女は、それでも足を止めることなく駆けていく。
「お前ら、絶対に、絶対に許さないからなぁぁぁぁ!」
激昂するデスギガスは邪魔者たち――猟兵の1人たる西院鬼にその憎悪の矛先を向けた。
だが、少女が安全圏へ逃げた以上、西院鬼がデスギガスにまともに取り合うわけもない。
躊躇うことなく飛び去りながら西院鬼は呟く。
「敵わぬ存在に死山血河を築きながらも牙を研ぎ続け、喰らうに至ったのが我等。奴もいずれ必ず喰らってくれる。今は滾る怨念を翼と変えよう」
大成功
🔵🔵🔵