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青空のリモナイア

#ブルーアルカディア #お祭り2022 #夏休み #金のコインの #コルディリネ


 今年の水着コンテスト会場は、どこまでも続く冒険の空『ブルーアルカディア』。
 その世界に飛ばされた、デビルキングワールドの東のラスボス『スーパーカオスドラゴン』が、7thKINGである猟兵達に「ピッタリな浮島を見つけてヤったゼぇ!」と親切に声をかけてくれたのがきっかけだったのだが。
「ブルーアルカディアには、他にものんびりできる浮島があるからね」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は、かけていたサングラスをそっとずらすと、にっと笑って見せた。
 夏梅が案内するのは、以前猟兵がオブリビオンから守った島……リモナイア。
 辺境にある平和な浮島は、あの事件以来、また穏やかな日々を送っているから。
 ゆったり夏休みを過ごすにはいいだろう、とのこと。
 リゾート地のような便利さはないが、島民は快く出迎えてくれるし。
 名産品のレモンは夏にピッタリだろう。
 冷たいレモネードや炭酸の入ったレモンスカッシュ、大人ならレモンを使ったお酒も楽しめるし。ゼリーやジェラートなどの涼菓を始め、レモンを使った料理の数々もある。
「さらに今、リモナイアには、オレンジ船が来ていてね」
 それは、オレンジを輸送する飛空艇の通称。新規開拓か、定期航路から外れた商船が、リモナイアに寄港しているらしい。
 上手くオレンジ船の乗組員と出会えれば、名産のレモンだけでなく、輸送されてきたオレンジも楽しめるだろう。
「残念なのは、海がないことだが……その代わりに、温泉が名物でね」
 島の端にある温泉は、流石にマナー違反だが泳げそうなほどには広いし。端に寄れば、眼下に広がる雲海を眺めることもできる。
 混浴なので水着の着用が求められるのも好都合か。
 そして、お湯に浸かりながらレモネードなどの飲み物を楽しむことができるし。軽めなら食べ物も持ち込んで大丈夫そうだ。
 温泉に入らないでも、休憩所が雲海を眺められる位置にあるから。水着でのんびり、青い空と白い雲を眺めて過ごすこともできるだろう。
 それに何より、ここは空の世界だから。
 水着で空を飛んだっていいじゃない!
「レモンとオレンジと温泉。それと水着、か。
 青い空の下で、好きなように楽しんでおいでよ」
 そう言って夏梅は、サングラスの下で笑いかけた。

「シア。島が見えたわよ」
 サルスチアーナがかけてくれた声に、私はオレンジを選別していた手を止めた。
 呼ばれるままに甲板の先へ行き、手招きするその隣に立てば。
 ほら、と進む先を指先が指し示す。
「ええと、何て名前の島でしたっけ?」
「リモナイアよ。レモンと温泉の島だって」
 笑顔で答えてくれたサルスチアーナだけれども、すぐに船縁にその身体を力なくもたれかけさせて。
「あー、初めての航路だったから不安だったけど、何とか着いたわね。
 全く、船長ってば、いい島の話を聞いたから行くぞ! なんて。
 航海士の苦労も知らずに、軽く言ってくれるんだから」
「でも、この辺りの空域の情報は結構もらった、って……」
「そうだけどね。知り合ったばっかりの人の情報をどうしてあんなに信用したんだか。
 飛空艇乗りに悪い奴はいねぇ! なんて言っちゃって」
「……情報、正しくなかったんですか?」
「いーえっ。正確も正確、ものすっごく助かったわ。
 あっちの船長、ちらっと見た感じ、私と同い年くらいだったけど……。
 その年でかなり大型の飛空艇に乗ってたし、やり手なのね。きっと。
 でもそれは結果論なわけでしょ? もし間違ってたらどうするつもりだったのよ。
 だいたい船長はいつもいつも……」
 唇を尖らせてなおもブツブツと文句を言うサルスチアーナが、どこか楽しそうにも見えたから。私はふふっと微笑んで、それから改めて、飛空艇の先に見えた島を見る。
 あまり大きくはない島は、綺麗な緑に覆われているけれど、その一角だけが不思議と白っぽく見える。多分、それが温泉、なのだろう。島の端にあるから、雲海を眺めながら入ることもできそうだ。
 多分、緑は、名産だと聞いたレモンの木だろう。オレンジ輸送でよく訪れるザガラの島も、オレンジの木が多いからこんな感じに見える。
 見知った島との共通点を見つけると、何となく親近感が湧いた。
 ブラッド船長が、いい島だったら、輸送品にオレンジだけでなくレモンも増やそうか、なんて話していたのも思い出す。そうなったら、この島もザガラのように、馴染みの浮島になるのかもしれない。
 そんな未来を想像しながら、わくわくと私は、近づいてくる島を眺める。
 レモンと温泉の島……リモナイアを。


佐和
 こんにちは。サワです。
 昼日中の浮島観光です。

 行動はご自由に。フラグメントの選択肢に縛られる必要はありません。
 リモナイアはレモンが名産で、温泉が名物。
 そして、商船がオレンジを運んできましたので、オレンジも楽しめます。
 空の世界なので、浮島であることそのものを楽しんでも可。
 昼間にできることなら何でもOKです。

 温泉は混浴なので、水着着用必須です。
 湯浴み着の貸し出しもありますが、今回は水着を推奨します。理由は後述。

 小さな島とはいえ、それなりの広さがあります。
 穏やかな村のような感じなので、レモン畑も、温泉や休憩所なども広々してます。
 そのため、指定がない限りはお1人ずつの描写となる予定です。
 ご一緒の描写を希望される場合は、プレイングの冒頭に【相手のお名前(ID)】または【グループ名】の記載をお願いします。
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)はお声がけがあればお邪魔させていただきます。

 また、下記関連シナリオで登場したリモナイアの島民やオレンジ船の乗組員にお声がけいただくことも可能です。
『亡国の箱舟は幼子を探す』
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=40660 (リモナイア島)
『亡国の獄炎は勇士を襲う』
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=41742 (オレンジ船)

 尚、当シナリオには特別なプレイングボーナスが設定されています。
 それに基づく行動をすると判定が有利になります。
 【プレイングボーナス】水着の着用。

 それでは、青空の浮島を、どうぞ。
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第1章 日常 『島観光』

POW   :    島の街や村を観光する。

SPD   :    島の風を感じるために空中散歩

WIZ   :    島の自然を観光する。

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佐伯・晶
水着は着ていくけど
上着を羽織って散歩しようかな
温泉は日が暮れてから入るつもりだよ

レモン畑の風景や空を眺めつつ
ジェラートを食べようか
暑いからさっぱりしたレモン味が美味しいね

そういえばオレンジを運んでいた船が
この村に来ているらしいけど
船員の皆はどうしてるんだろう
荷下ろしや買出ししてるのか
どこかで休んでいるのか
散歩がてら探してみよう

シャムーティ様やサルスチアーナ様は
お元気でしょうか

まあ、迷惑かけないのであれば
分霊を止める必要もないか

広場か船着き場の方なのかな
大きくはないみたいだし
村の様子を眺めつつぶらつくよ

私もジェラート買って来ますの

見かけたら近況を聞いてみようか
オレンジを少し分けて貰うのもいいかな



 レモンの木が並ぶ中を、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は歩いていた。
 遊歩道ですらない、ただの農作業用の小道。ベンチがあるわけでも、展望台があるわけでも、解説板があるわけでもないけれど。
 青々と葉を広げる木。その間に見える黄色い実。
 よく見れば、小さな青い実もあって。それがまた可愛い。
 遠くを見れば、その緑色が果て無く続いているかのよう。
 そして、本当に果て無く続いている青い空との色合いが、眩しいほどに綺麗で。
 晶は、ふっと微笑んだ。
「ぼーっとしてるとジェラートが溶けますの」
「分かってるよ」
 のんびり周囲を眺めていた晶に声をかけたのは、晶と同じ背格好で、同じ金色の髪を揺らし、同じ青い瞳を向けてくる、晶と全く同じ顔をした顔の少女。
 晶の中に居る邪神の分霊である少女は、ゆえに晶と同じ姿をとり。しかし、女性らしくあることに抵抗を覚える晶とは正反対に、可愛い女の子を楽しんでいるから。
 着ている水着にもそれは表れていて。
 シンプルで動きやすい晶と、ふりふりドレスのような装飾過多な分霊は、趣味の違う双子の姉妹のようだった。
 後で温泉にも行きたいからと選んだ服装だけれど、上着を羽織っているからさほど抵抗はないし、何より全身で風を、そしてリモナイアという島を感じられるのが楽しいから。
「暑いからさっぱりしたレモン味が美味しいね」
 名産であると聞いたそれを味覚でも楽しみながら、晶はレモン畑を歩いていく。
 そして、道は畑を抜け、小さな村のような集落が見えてくると共に。
 畑と村の堺に、どこかで見たことのある飛空艇が泊まっているのも見えた。
「そういえば、オレンジを運んでいた船がこの村に来ているらしいね」
 以前乗せてもらった飛空艇だと、話には聞いていたから。
 船員の皆はどうしているんだろう、と気になってみれば。
「シャムーティ様やサルスチアーナ様はお元気でしょうか」
 とととっ、と分霊が晶を置いて先に行く。
 晶と同じ姿をした、その正体は邪神。封印される程の悪しき存在。
 それを思い出し、勝手に動き回るのを止めようと、晶は手を伸ばしかけた。
 けれども。
 走り行くその背中は、無邪気な少女そのもので。
 純粋に友達を探すだけに見えたから。
(「まあ、迷惑かけないのであれば、分霊を止める必要もないか」)
 無害な邪神、という矛盾に戸惑いながらも、晶は苦笑して、好きにさせておいた。
 分霊の後を追い、まずは船着き場へ。村の端、レモン畑近くにあるのは、名産のレモンを商船に積み込みやすくするためだろか。
 今は1隻しか泊まっていない、かつて世話になった船を見上げると。甲板に数人の人影が見えたけれど、それは分霊が探していた相手ではなく。
 とすると、荷下ろしか買い出しか、はたまたどこかで休んでいるのか。
 探す船員の行動を予想する晶の考えをなぞるように、分霊は村の広場に向かっていた。
 道の両側にこじんまりとした家が点在する道を歩いていけば、程なくして辿り着く。
 そこには、小さな店がいくつかあって。もしかすると、島の商店街でもあるのかもしれない。商店街と言うにも小規模だが、村の規模からすると充分なのだろう。
 島の様子が何となく分かって、じゃあ温泉はあっちかな、と考えていると。
「私もジェラート買って来ますの」
 きょろきょろ広場を見回していた分霊が、また勝手に動き出した。
 またか、と晶は苦笑し。でもすぐに、今度は楽し気に、その後を追いかける。
 だって、分霊が向かった先、ジェラートを売る店先には。
「サルスチアーナ様、シャムーティ様、お久しぶりですの」
「あら。いつかの双子ちゃん」
「1人? ……じゃないわね。2人とも、また会えて嬉しいわ」
 会いたいと探していた、オレンジ船の航海士と操縦士が、仲良く2人でジェラートを手にしていたから。
「みんな元気にしてるわよ。相変わらず、トムは食べ過ぎだしナベは飲み過ぎだし」
「船長はまだ商談かしらね」
「技師長が、やることやってから遊べー、ってね。正論正論」
「でも契約取れたら、定期的にこの島に来れるわね」
「ジェラート美味しいから嬉しいわ!」
「私も食べますの!」
 女性2人に分霊も混じって、近況を話しつつのジェラート大会。
 もちろんそこに晶も参加して。冷たくさっぱりしたその酸味を味わいながら、わいわいと話を弾ませる。
(「オレンジも少し分けてもらえるかな」)
 違う期待にも胸を弾ませながら、晶は楽しい一時を過ごしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
オレンジ船といえば、バレンシアやブラッド船長達が乗ってた船か
懐かしいねぇ、みんな元気にしているかな

島のあちこちにレモンを使った飲食物が売られていて心踊る
わぁ、レモンのクレープだって
美味しそうだな~梓も食べてみたくない~?
チェッ、バレたか
今回も梓に奢ってもらう作戦は失敗し、自分でお買い上げ

クレープを食べたあとは温泉へ(黒のサーフパンツ着用
わぁ…雲海を見下ろせる温泉なんて初めてだよ
美しい景色を眺めながら、持ち込んだレモンスカッシュをぐびっ
ぬくもった身体によく効く

あれ?梓が飲んでいるの、俺のレモンスカッシュとちょっと違う?
へぇ、それも美味しそうだね
俺にも一口ちょーだいとぐいぐい手を伸ばす


乱獅子・梓
【不死蝶】
懐かしいと言ってもあれからまだ
3ヶ月くらいしか経ってないんだけどな
また変な連中に狙われていないなら良いんだが

食べたくて仕方ないのはお前の方だろうが!
……ってこのやりとり、ザガラ島でもやった覚えが

温泉では存分に足を伸ばし(黒のサーフパンツ着用
本当に見事な景色だ
この世界だからこそ拝むことが出来る眺めだな
俺も持ち込んだ飲み物をくいっといただく
温泉で飲むのは地酒が定番と思っていたが、これもいいものだな…!

ああ、これはレモンサワーだ
ざっくり言うとレモンスカッシュに酒が入ったものだろうか
ダーメーだ!お前が温泉で酒飲んだら即酔っ払うのが目に見えてる!
ぐいぐいされながら何とかサワーを死守



 島の集落は、島の大きさに比べたら小さめで。街というより村の風情。
 名産品であるレモンの栽培が主産業なのだろう。ほとんどの家が農業を営んでいる、のどかな雰囲気が感じられた。
 そのため、街に比べると、店の規模は小さいし数も少ないけれど。
 そのどれもに、レモンを使った飲食物があったから。
「わぁ。レモンがいっぱいだ」
 灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は心躍らせながら、小さな店を覗いて回る。
 赤色の丸いサングラスの下で、にこにこと細目で笑いながら。
「レモンのクレープだって。
 美味しそうだな~。梓も食べてみたくない~?」
 しっかりした体格のいい大人が、食べ物をねだる子供のように、隣を行く乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の服の袖をぐいぐいと引っ張った。
 しかし、梓は黒色の四角いサングラス越しに睨み付け。
「食べたくて仕方ないのはお前の方だろうが!」
 大きく腕を振って、綾の手を振りほどけば。
「……ってこのやりとり、ザガラ島でもやった覚えが」
 既視感、というにも鮮明過ぎる、オレンジが名産の島での思い出が蘇る。
 梓の両肩に乗った2匹の仔竜、炎竜の焔と氷竜の零が、興味津々なのもあの時と同じ。
 だから、梓は、今回も奢らないぞと自分の財布を守る仕草を見せれば。
「チェッ、バレたか」
 やはり悪びれなく肩を竦めた綾は、作戦失敗、とあっさり引き下がり。
 オレンジクレープの時と同様、ちゃんと自腹で、2人はレモンのクレープを買った。
 しかし、2つのクレープは見た目が全く違うもので。
 綾のは、オレンジのクレープと似た、クリームと一緒にレモンを巻いたもの。早速頬張った綾の口の端にクリームがついているのも、オレンジの島での光景と同じ。
 一方の梓のクレープは、中に何も入っていないのではないかと疑うくらい、ぺちゃんこで。クリームの代わりに、粒が大きめの砂糖を皮にまぶして巻いていた。よく見ると薄く輪切りにしたレモンが1枚だけ入っていたけれど、大きめに果肉がごろごろしている綾のものとは大違い。
 しかし、クレープの皮にはたっぷりのレモン果汁が塗られていて。砂糖の甘さと同時に酸っぱさがやってくる。砂糖のじゃりじゃりした食感も程よいアクセント。
 レモンシュガークレープ、という名前もそのまんまでシンプルなそのクレープの、シンプルゆえの美味しさに驚きながら食べていると。
「梓のもちょーだい」
「……食べ過ぎるなよ」
「大丈夫大丈夫」
 全く違うレモンのクレープに興味津々の綾が、すごく信用ならない軽さで頷いて、梓の手から受け取って食べ始めると。梓の両肩にいた仔竜達も、クレープを追いかけるかのように綾の方へ飛び移り。1人と2匹で舌鼓。
 苦笑を零しながらその様子を見ていた梓だが。
 ふと気付いて、クレープの店を挟んだ道の反対側へ視線を向けた。
 そこにいたのは、2人の女性。
 オレンジ色にも見える長く明るい茶髪をさらりと揺らす、柔らかな物腰の年若いのと。
 男性かと見紛う程に体格のいい、いかにも女戦士といった雰囲気の無表情な強面。
 そんな2人の手にも、綾と梓と同じ、2種類のレモンクレープがあって。
「ベラのは凄くシンプルですね。一口いただいていいですか?」
「ああ」
「ありがとうございます。
 ……わあ! 見た目以上にレモンですね。果汁がすごくしっかりと。
 あ、ベラも私のを食べてみますか? クリームたっぷりも美味しいですよ」
「頂こう」
 仲良く分け合う姿に、梓はサングラスの下の目を細めた。
 ほのぼのとしたやり取りに見惚れたのもあるけれど。
 2人は見覚えのある相手だったから。
「オレンジ船のバレンシアだね。
 懐かしいねぇ。ブラッド船長たちもみんな元気にしているかな」
 綾も気付いたらしく、梓の肩に寄りかかるように腕を置きながら呟く。
「懐かしいと言っても、あれからまだ3ヶ月くらいしか経ってないんだけどな」
 梓はふっと苦笑して。
「また変な連中に狙われていないなら良いんだが……」
 何故かオブリビオンに狙われていたバレンシアを守り戦った時のことを思い出し。心配そうに顔を曇らせるけれども。
 胸元にオレンジの花を刻んだ金のコインのペンダントを揺らし、レモンのクレープを手に笑う姿に憂いはなく。
 オレンジ船と共に在る日々を、楽しく過ごしていそうだったから。
 少しだけ、梓は安堵する。
 そんな小さな変化を感じ取ってか、綾はにっと楽し気に笑いかけ。
「ほら綾、温泉行こうよ温泉。
 折角来たんだから、島の名物は全部楽しまないと」
「ああ……」
 ぐいぐいと、腕を両手で掴んで引っ張り始めた相棒に、梓はまた苦笑した。
 そう。両手で。
「って、俺のクレープは!?」
「美味しかったよねー? 焔、零」
 そして。
 一騒動を経て、レモンに並ぶ名物である温泉へと向かえば。
 その見事な景色に、梓の小さな怒りは完全に吹き散らされて。
「わぁ……雲海を見下ろせる温泉なんて初めてだよ」
「本当に見事な景色だ。この世界だからこそ拝むことが出来る眺めだな」
 赤い蝶と白い竜をそれぞれワンポイントにした揃いの黒いサーフパンツ姿で、のんびりと湯に浸かりながら、綾と梓は、温泉に持ち込んだそれぞれのグラスを傾けた。
 少し白く濁ったお湯は、夏だからかぬるめになっていたけれど。ぬくもった身体には、やっぱり冷たい飲み物が心地いい。
 しかも、グラスの中身は、また名産のレモン。
 しゅわしゅわと炭酸が見えるレモンスカッシュを、綾はぐびっと一気に飲み。
 はぁー、と気の抜けた息を大きく吐いて。
 浮かべた湯桶の中で個人湯を楽しんでいる仔竜も眺めて、笑った。
「やっぱりレモンが美味しいね。おかわり、もらおうかな」
 そして、空になったグラスを揺らしながら、梓に振り向くと。
 こちらはちびちびとゆっくり飲んで、まだまだ半分は残っている様子。
 おかわりは自分だけか、と思った綾だが。
「あれ? 梓が飲んでいるの、俺のレモンスカッシュとちょっと違う?」
「ああ、これはレモンサワーだ。
 ざっくり言うと、レモンスカッシュに酒が入ったもの……だろうか」
 よく似た見た目の小さな差異にようやく気が付いて。
 梓の説明に、興味津々、目を輝かせた。
「へぇ、それも美味しそうだね。俺にも一口ちょーだい」
「ダメだ。お前が温泉で酒飲んだら即酔っ払うのが目に見えてる!」
「ちょーだいちょーだい」
「ダーメーだ!」
「じゃあ、おかわりでもらってくるー」
「ああ、それなら……いいわけないだろ!」
 そしてばしゃばしゃと騒ぎ出す、いい大人の2人。
 その湯の揺れで、浮かんでいた湯桶がぷかぷかと流されていき。
 2匹の仔竜は心地よさそうに目を細め、主たちとは正反対に静かに温泉を楽しんだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、ついこの間来たのに懐かしいですね。
この間はいろいろあってゆっくりできませんでしたしね。
何か、勘違いしているんじゃないかって、視線を感じますが残念なことに合っているんです。
ホント懐かしいですね、この飛空艇の甲板。
そして、アヒルさんが水着を着てこいって、言うから着てきたのになんで、またモップかけをしないといけないんですか?
ふええ、昼に出来ることは昼にやるべきだって、そんなぁ。
オレンジの香りが懐かしいです。
あの、夜は遊んでもいいんですよね。
ちゃんと、モップがけが終わったらって、仕方ありません頑張りましょう。



 緑色の葉を揺らしながら、レモンの木々の間を風が通り抜ける。
 畑を通り抜けたその風が届いたのを感じ、フリル・インレアン(大きな帽子の物語👒 🦆 はまだ終わらない・f19557)は、つばの大きな麦わら帽子を押さえながら顔を上げ、爽やかな心地良さに赤い瞳を細めた。
 仄かにレモンの香りも感じられるのは気のせいだろうか。
 レモンの木に覆われた島、リモナイア。
「ふわぁ、ついこの間来たのに懐かしいですね」
 この島を襲ってきたオブリビオンを迎え撃った猟兵のうちの1人であるフリルは、感慨深げに辺りを見回した。
 遠く近く、視界に必ずと言っていい程入ってくる、レモンの木。青々と茂る中に、時折黄色い実が見える。青い空と白い雲と合わせたその色彩を、また風が撫でていく。
 村と言うべきのどかで小さな集落も、変わらぬ穏やかな日々を紡いでいるようで。
 今いる場所からは見えないけれど、雲海を見ながら浸かれる温泉も、きっと今も変わらず、島民達や商人などの訪れた者達を楽しませているのだろう。
「この間はいろいろあってゆっくりできませんでしたしね」
 以前、フリルがこの場所に立った時は、オブリビオンとの戦いがあった時だから。
 戦いばかりで忙しなかったのは確かだけれど。
 おや? 確か、オブリビオンを倒した後、温泉でゆっくりしていませんでしたかね?
 何か勘違いしている気がするのですが。
 しかし、フリルが佇む場所を正確に見ると、残念ながら合っていました。
「ホント懐かしいですね、この飛空艇の甲板」
 そこは、レモンと温泉の島リモナイア……に停泊しているオレンジ船の上で。
 リモナイアの景色が見渡せるし、リモナイアの風も感じられるけれども。
 ある意味でリモナイアではない場所。
 確かに、オレンジ船がオブリビオンに襲われた時も、フリルは参戦していましたね。
 しかも、戦いの後に船上で宴会が開かれたけれども、唯一、フリルだけはゆっくりできていませんでした。
 その理由は、今と同じ。
「そして、アヒルさん。なんで、またモップかけをしないといけないんですか?」
 フリルの手には、あの宴会の時と同じモップがあり。
 いつも一緒のアヒルちゃん型ガジェットが、監督よろしく目を光らせて。
 手を止めるなと言うかのように、ガア、と鳴く。
「また掃除してくれてるの?」
「よっぽどモップが好きなんだね」
 その様子を見ていた双子の船員も、どこか不思議そうな笑顔でフリルを見つめ。
「せっかく水着も着ているのに」
「温泉に行かないの?」
 揃って同じ方向に首を傾げた。
 確かにフリルは、青空を映したかのような空模様のワンピースな水着を着ていて。長い銀髪も、2つに分けて青い髪留めで束を纏めてある。温泉でも海でもプールでも、水に入って遊べそうな格好をしている。
「そうですよ。アヒルさんが水着を着てこいって言うから着て来たのに……」
 フリル自身も、頑張って、ガジェットに抗議するけれど。
 ガア。
 無情に響く、鳴き声。
「ふええ、昼に出来ることは昼にやるべきだって、そんなぁ」
 温泉行きをあっさり却下され、フリルはモップに寄りかかるようにして項垂れた。
 でも、言われたのは昼間のことだけだということに、遅れて気が付き。
「あの、アヒルさん。夜は遊んでもいいんですよね?」
 期待を込めて確認すれば。
 ガジェットはどこか肩を竦めたような雰囲気で一声鳴く。
「ちゃんと、モップがけが終わったら、って……
 仕方ありません頑張りましょう」
 そしてフリルはモップを握り直し、飛空艇の甲板の掃除を再開した。
 双子の船員は顔を見合わせ、やれやれ、といったように苦笑すると。邪魔をしないように、でも手伝わずに、船内に戻っていく。
 フリルはそんな動きを気にせず、せっせとモップを動かして。
 ふわり、とまた風が通り抜けた。
「オレンジの香りが懐かしいです」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
【月星】

ここがレモンと温泉の島リモナイアね!
あたしレモン大好きなの
たくさん買って帰っちゃおうっと
リゾート気分で水着で観光しちゃいましょうか
もちろん今年の水着よ

ねえ、ジェラートもあるわ
ケーキも食べたいな
うーん、美味しい!
お土産もたくさん買わないとね

あら、ユディトがお世話になった飛空艇の人たちも来てるの?
じゃあ挨拶しないとね
どうせ迷惑かけたんでしょ?

あなたが料理番の子ね
オレンジのサラダとっても美味しかったわ
他にもおすすめのレシピ教えてくれる?
あと、ここで買ったレモンも美味しく食べたいから
レモンのアイデア料理も教えて欲しいわ!

料理話で盛り上がりながらも
年頃の女の子だし恋バナとかも聞けたりしないかしら


ユディト・イェシュア
【月星】

はしゃいでますね…
はい、水着ですね
俺もこの島は初めて訪れるので楽しませてもらいます

冷たいレモネードやレモンスカッシュをいただいて
お酒は試飲して気に入ったのを買って帰りましょう
たくさんお土産を買って…もちろん荷物を持つのは俺ですけど

ちょうど今オレンジ船の皆さんがいらっしゃってるそうです
バレンシアさんたちを見つけたら
エリシャさんを義姉だと紹介して

…ちょっとぐいぐい行きすぎだと思うんですけど
でもエリシャさんにバレンシアさんの料理の話をしたら
ものすごく興味を持って食べたいレシピを知りたいって
ずっと言ってたんです

長くなりそうなので休憩所でゆっくりお話ししてもいいですか?
何か飲み物を買ってきますね



「ここがレモンと温泉の島、リモナイアね!」
 青い空と緑の木々のコントラストに金瞳を細めながら、楽し気に足を弾ませ、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は島を行く。
 リゾート地とは程遠い、普通の農村な島ではあるのだけれども。
「あたしレモン大好きなの。たくさん買って帰っちゃおうっと」
 のんびり温かな雰囲気と、何よりその名産とに、エリシャの心はうきうきだった。
「はしゃいでますね……」
 その浮かれた様子は、後をついて歩くユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)が苦笑を見せる程。
 もうちょっと落ち着いて、とは思うけれども。
「あら、ユディトは観光しないの? せっかく水着を着て来たのに」
「しますよ。俺もこの島は初めて訪れるので、楽しませてもらいます」
 楽しみなのは実はユディトも一緒だから。
 2人は共に、レモンの島を進む。
 ちなみに、温泉もあるというので2人とも水着姿ではあるのですが。
 エリシャは、赤いビキニの上から、太めのレース地で半ば透けて見えるもののハーフトップのボトムを着て、腰からは異国情緒あふれる赤いパレオをロングスカートのように巻き付けている。
 ユディトも、青いサーフパンツ姿だけれども、上から半袖のパーカーを思わせるゆったりとしたラッシュガードを羽織っているから。
 夏の装いとしては、村の中を歩くのにさほど不自然ではない。
 むしろ、レモン畑を抜けてきた爽やかな風に、エリシャの緩く1つにまとめた三つ編みや、ユディトのパーカーのファスナーに飾られた十字架の飾りが揺れて、とても涼し気で心地よく見えた。
 そんな南国リゾートな様相の2人は、点在する小さなお店をあちらこちらと覗いて。
「ねえ、ジェラートがあるわ。あ、ケーキも食べたいな」
 やっぱりレモンばかりの品揃えに、特にエリシャが目を輝かせた。
 繰り返すがリゾート地ではないので、普通の家の中にぽつぽつと店がある程度。それも商店専用の建物よりも、住宅の玄関が広くなっていてそこに店があるような印象のものが断然多い。客はほとんどが顔見知りの島民になるからだろうか、持ち帰り用ばかり。そのまますぐ食べ歩くか、自宅に戻ったり誰かの家に行ったり、後は温泉近くにある休憩所が寄合所のようになっているようだったから、そこに集まるか。そんな感じだった。
 店先に店員がいないこともしばしばで。声をかけるとすぐそこで井戸端会議していたおばちゃんが戻ってきたり、奥から眠りそうな赤ちゃんを抱えてしーっなんて言いながらやってきて無言のままジェスチャーで会計をしたり。
 田舎のような、どこか面倒だけれども温かい雰囲気にユディトは微笑み。
 そしてエリシャも、普通の観光地とは違う交流を楽しみながら。
 ケーキを持ち帰り、ジェラートを早速1口。
「うーん、美味しい!」
 満面の笑顔を眺め、ユディトも冷たいレモネードをそっと口にした。
「お土産もたくさん買わないとね」
「はい。荷物を持つのは俺でしょうけど」
 そして、ユディトが苦笑した通り、どんどんとユディトの手がふさがっていく。
 レモンそのものはもちろん、レモンジャムやレモンピール、ドライレモンにレモンバタークリームといった加工品も選んで。レモンのお酒にもいろいろ目移り。試飲させてもらってお気に入りを選ぶうちに、ほんのりとユディトの頬が赤くなった。
 そんなショッピングも楽しんでいると。
 ふと、道の向こうに見えた2人組に、ユディトの顔が綻んだ。
 店先のレモンを象った小物を興味津々覗き込んでいたエリシャの肩をそっと叩いて。
「ちょうど今、オレンジ船の皆さんがいらっしゃってます」
「ユディトがお世話になった飛空艇の?」
 指し示した先へ、エリシャも振り返る。
 そこには、オレンジ色のような茶髪をさらりと揺らす女性と、男性かと見紛う程に体格のいい無表情で強面な女戦士が、クレープを食べながら歩いていたから。
「じゃあ挨拶しないとね。どうせ迷惑かけたんでしょ?」
 エリシャはぐいっとユディトを引っ張りながら2人の元へ進んでいって。
 気付いた2人に、ユディトを突き出すようにして対面させた。
「こ、こんにちはバレンシアさん、ベラさん」
「……あら、あの時の!」
 慌てて挨拶するユディトに、古びた金のコインのペンダントを胸元に揺らす柔らかな物腰の女性が、思い出してくれたのかぱあっと表情を輝かせ。隣の大女が無言で小さく頷いて見せる。
 その様子を見てから、エリシャは、ほら、とユディトを突いて促し。
「ええと、こちらは義姉のエリシャさんです。
 エリシャさん、オレンジ船のバレンシアさんと、ベラさん」
 紹介させるや否や、エリシャはずいっと茶髪の女性――バレンシアに近寄った。
「あなたが料理番の子ね。オレンジのサラダとっても美味しかったわ」
「宴会で教えていただいたのを、頑張って作ってみたんです」
 バレンシアの手を取り、両手で包み込むように握りしめながら、エリシャは金の瞳をキラキラ輝かせる。その後ろから、ユディトが慌てて説明を補足した。
「他にも、おすすめのオレンジレシピ、教えてくれる?
 あと、ここで買ったレモンも美味しく食べたいから、レモンのアイデア料理も教えて欲しいわ!」
「エリシャさん……ちょっとぐいぐい行きすぎだと思うんですけど……」
 驚いている様子のバレンシアに苦笑しながら、ユディトはエリシャを一度引き戻し。
「でも、エリシャさんにバレンシアさんの料理の話をしたら、ものすごく興味を持って。
 食べたい、レシピを知りたい、ってずっと言ってたんです」
 それでも、よかったら、とバレンシアにお願いを重ねる。
 だが、押し戻されてもエリシャの勢いは止まらず。
「せっかくのブルーアルカディアだし、魔獣肉の料理も知りたいわ。
 あとは……女の子が集まったなら、恋バナよね! ふふっ、聞けたりしないかしら」
「エリシャさん……」
 ユディトも苦笑を零すばかり。
 そんな様子を見ていたバレンシアは、くすくすと楽しそうに微笑んで。
「恋バナ、は話すことがないと思うんですけど……料理の話なら、是非」
 ふんわり嬉しそうに、快く頷いてくれたので。
 やったー、と喜ぶエリシャの横で、ユディトは、ありがとうございます、と少し申し訳なさそうに、でもやっぱり嬉しそうに微笑み返した。
「長くなりそうなので、休憩所でゆっくりお話ししてもいいですか?」
「そうね。それがいいわ。
 さっきレモンケーキを買ったの。一緒に食べながら話しましょ」
 そして早速、バレンシアの手を引いて歩き出すエリシャ。
 その後を追おうとして、ユディトは、そうだ、と思いつき。
「先に行っててください。俺は何か飲み物を買っていきますね」
「なら、荷物を」
 踵を返そうとしたところで、差し出される武骨な手。
 ずっと黙って成り行きを見ていたベラが、ユディトが抱えていた(主にエリシャの)お土産袋を、強引ではなく、でも遠慮をさせない力強さで受け取ってくれたから。
「ありがとうございます、ベラさん。お願いします」
 ユディトはにこっと微笑んで礼を告げると。
 一旦、3人と別れて飲み物を買いに行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
※今年の水着着用

レモンって酸っぱくて苦手っていう人も多いけど
栄養にも美容にも良いし美味しいよね
折角だから九瀬さん、ご一緒にどうですか?
雲海眺めようかと思ってるけど
飛びながらも有りかなぁ

僕はレモネードとゼリーを買ってまずは休憩所に
んー、やっぱりレモン風味って爽やかで美味しい!
ミントとはまた違う清涼感があるよね
ほんのりとした甘みも良いし、目の前には絶景だし…!

九瀬さんって、人間だけど…
乗り物とか使わず、自分の体で空飛んだ経験ってあります?
折角だからちょっと飛んでみましょ!

ゼリーを食べ終わったら【指定UC】で【空中浮遊】を共有
空いた片手を繋いであげながら少しの間空中散歩でも
どう?絶景だよね



 リモナイア名物である温泉の近くには、広い休憩所があった。
 島の中で一番広いその建物は、温泉の更衣室と隣接し、湯浴み着を貸し出したり、温泉内にも持ち込める飲み物を販売したりもしているから、湯上り処としても使われている。というか、そもそもその想定で作られたようで、かなりの人数が座れる普通のテーブル席の他に、リクライニングシートを並べカーテンで個室に仕切った場所や、簡易ベッドも用意されていた。
 飲食物が売られている部分は食堂のような印象もあり。温泉に入らなくても、飲み食いだけに訪れる者もいそうな雰囲気。
 だから栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、そこでレモネードとレモンゼリーを買ってのんびりすることにした。
 室内も綺麗に整備されていて心地よかったけれど、やっぱり晴れているならと選んだのは外に広がるテラス席。温泉側には高い木の壁があるし、休憩所の建物も視界を塞いでいるけれど、それ以外の方角は何も遮るものなく開けているから。どこまでも青く広がる空と、浮島の下の雲海を一望できて。
 さらに、テラス席の一番端、一番眺めがいい席を選んで座った澪は。
 早速、レモンゼリーを口にした。
「んー、やっぱりレモン風味って爽やかで美味しい!」
 口の中に広がる、ミントとはまた違う清涼感に目を細め、嬉しそうに頬を抑えながら。
 続いて、レモネードを引き寄せ今度はストローを銜える。
「ほんのりとした甘みも良いし、目の前には絶景だし……!」
 レモンの味と香りに包まれて。そして開いた琥珀色の瞳に映る一面の青と白。
 リモナイアの魅力を全身で感じ取った澪は、とてもとても幸せそうだったから。
「本当に、いい眺めだね」
 その様子にくくっと笑いながら、誘われて向かいに座っていた九瀬・夏梅(f06453)も澪と同じレモネードを傾けた。
「九瀬さんもレモンは好きですか?」
「ああ、なかなかそのものを食べる機会はないが……これは美味しいね」
 尋ねる澪に、グラスを掲げて笑いかければ、澪の笑顔も広がって。
「よかった。レモンって酸っぱくて苦手、っていう人も多いから。
 でも、栄養にも美容にも良いんですよ」
「それが澪の美しさの秘訣、かい?」
「美しいなんて、そんな……」
 あわあわと慌てる澪だけれど、ほんのり頬を染めながらも、ちょっと嬉しそうにはにかんで、ありがとうございます、と夏梅に告げる。
 その可愛らしい様子に、夏梅の笑みも深くなって。
「今年の水着も似合っているよ」
 真っ白なその姿を改めてまじまじと見つめた。
 形状としてはフレアビキニで、トップスとボトムをフリル状の白布で重ね覆っている。しかし、肩ひもや胸元、腰回りに細かなレースの刺繍が施されているし。パレオと言うよりもスカートに近い、縁に細かな刺繍が施された薄い布地を、腰から長く揺らしていて。腰の両脇には中央に薔薇のコサージュをあしらった白いリボン。さらに、首元には白いレースのチョーカー、手首にも白いフリルが揺れて。太腿の半ばまでを覆う白タイツに、緩く結い上げた髪にも白いリボンが飾られている。
 そして、泳ぐには少し不向きに思える、カジュアルなドレスといった印象すら受けるその水着の色は、澪の背にあるオラトリオの翼と同じ純白。
 ヴェールこそないものの、左手薬指の指輪と合わせれば、ウエディングドレスを想像するのは簡単だったから。
「それで、結婚式はいつなんだい?」
 にやり、と笑って尋ねる夏梅に、あわあわと澪が慌て出し。
「まっ、まだ結婚はしないよ!?
 これは、その、と、友達っ! そう、友達との合わせなだけで……」
「そうか『まだ』か。そりゃ楽しみだね」
「あ、えっと、その……ううう……」
 真っ赤になって俯くその姿が、また可愛らしくて夏梅は微笑んだ。
 そんな微笑ましいものを見るような視線に耐えかねた澪は。
「そっ、それより九瀬さんっ!」
 話を切り替えるように、がばっと席から立ち上がると。
「九瀬さんって、乗り物とか使わず、自分の体で空飛んだ経験ってあります?
 折角だからちょっと飛んでみましょ!」
 ぐいっと夏梅の手を引いて。
 ユーベルコードにより生み出した赤い糸で、自身と夏梅を繋いだ。
 それは澪の技能を強化し、共有する能力。
 そして、澪が選んだ技能は――空中浮遊。
 澪が背中に広げた白い翼で空へと浮かび上がると共に、夏梅も引き上げて。
 手を繋いだまま、2人並んで何もない空中を歩き出す。
 今まで座っていたテラス席も、休憩所の建物も温泉も見下ろして。
 さらにはレモンの木が生い茂る浮島リモナイアそのものを。
 そして、眼下に果て無く広がる白い雲海を、見渡していった。
「どう? 絶景だよね」
「ああ……見事なもんだ……」
 笑顔の澪に、夏梅もどこか懐かしそうに微笑むと。
 胸元で古い金のコインのペンダントを揺らしながら礼を告げる。
「ありがとうよ、栗花落の」
「えへへ。どういたしまして」
 真っ青な空を背景に。
 澪は、結婚式の花嫁のような、幸せいっぱいな満面の笑顔を返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年07月31日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト