●Shaaaaaaaark!!
満天の星空や虹のかかる青空、ソーダ水の海、光を放つ植物や蝶々……そんなものは無かった。
「Shaaaaak!!」
夏の海に襲い掛かるサメ!
泳いでいても船に乗っていても、砂浜で城を作ってもヤツは襲ってくる!
陸地……何を考えている、死にたいのか!?
竜巻と共にサメがやってくるぞ!!
とにかく水分を媒介にヤツは来る。
その牙を人々に突き立てるために。
ここはサメの国。
サメに殺される夢が続く国。
ちなみに地獄かというとそうでもない。
ここの住人はサメに殺されることを楽しんでいるのだから。
もうどんなふうに死んでいくかを競っている。
死んでもすぐに元通りなのだから。
だったら楽しんでみよう。
サメの夢の国を。
●夏の夢はサメだった
「……という夢の国がアリスラビリンスで見つかったので、みんな行ってみません?」
グリモア猟兵、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)の目はなんか死んでいた。
「いや、俺もね。こういう予知をするポジションとは思わなかったわけですよ。十年以上前の若かりし頃なら別なんですが」
目が死んでいた理由はなんかそんな感じの自分の立ち位置を守りたかっただけだったのだろう。
咳払いのあと、今度は目を輝かせて説明を始めた。
「それじゃ、改めて。今回、俺が予知したのはサメの夢の国。何をどうやっても最後はサメに食べられて夢が終わる国。電気でも酸素ボンベでもチェーンソーでも倒せそうで倒せない」
言葉にするとひどいものだった。
「まあ実際に死ぬわけじゃないので住人の中には慣れた人もいて、変わった死に方を目指したり、誰かに対して警告という名の死亡フラグを押し付けたりして楽しんだりしてますね……どうしてこうなった」
補足したけど、やっぱりひどいものだった。
「というわけで、ですね。みんなでサメにやられに行きませんか? 大丈夫、夢だから死んだと思ったらそれで終わり。後は俺が回収します、グリモア猟兵だし」
さり気なく自分は行かないぞとアピールしつつ影郎は
風車を投げた。
グリモアの門が開けれれば、やってくる空気は夏の匂いとちょっとだけ混ざった血と潮の臭い。
ようこそ、アリスラビリンスワンダーランドへ。
みんなで楽しく死んでみよう。
みなさわ
どうしてこうなった?
こんにちは、みなさわです。
今日はサメに食われて死にましょう。
●今回は夏休みシナリオです
分かっているとは思いますが、ネタ依頼です。
みんなで楽しく、サメに殺されるプレイングを書きましょう。
例えばフラグメントの通りだと、水遊びをしているとサメに殺される、貝殻を集めていたらサメに噛まれる、海の絵を描いているとそこからサメが出てきて食われてしまう。
そんな感じの依頼です。
多少の理不尽と無茶は気にしない。
だって夢の国ですし。
死に方に困ったらMSに投げてもらっても構いません、何か考えて殺します。
ちなみにグリモア猟兵は呼べば来ますが、まあモブ程度に考えていただければ。
●プレイングボーナス
水着の着用……なのですが、そこは空気を読んで!
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
では、皆様。
楽しく死んでいきましょう!
第1章 日常
『夏の夢の国』
|
POW : 湖や海に入り、水泳や水遊びを楽しむ。
SPD : 花や貝殻を集め、お土産にする。
WIZ : 美しい景色を絵や詩、日記に残す。
|
●断章なんてものは無くて、テンプレートがあるだけだった。
「こんなところ、居られるか! 俺は自分の部屋に戻る!」
海岸にある一つのコテージ。
室内の空気は険悪だった。
なにせ、外に死体が転がっているのだから。
「落ち着いて、トニー! ここはみんなで協力して!」
「みんなで協力したって、この結果なんだ! だったら安全な所にいた方がいい!」
男を引き留める女。
だが男はそれを振り払い、ドアを開け。
「Shaaaaak!」
「ぐぁあああああああああああああっ!」
そして死んだ。
そりゃそうだ、ドア開けたら外なんだもの。
ここはサメの国。
うっかりしたら雑に死ぬ。
とりあえず、このシチュだとリプレイが短いのは確かだった。
メアリー・ベスレム
なぁにそれ、つまんないの!
だって、(本当には)死なないし殺せないんでしょう?
それじゃ復讐のし甲斐がないったら!
そうぶちぶちと文句を言って
そもそも来る前にちゃんと説明を聞かなかったのが悪い
なんて事実はもちろん棚上げ
すっかり興味を失ってもう帰r
がぶりと
下半身を喰い千切られて
浮かんだ
上半身が空を見る
・
・
・
殺すわ。お約束なんて知ったこっちゃないんだから!
何度喰われても繰り返し
それでもサメは殺せません
それも当然。だって……
態度の悪いヤツ、無暗にエロいやつ
そういうヤツはすぐ死んでしまうのがお約束なんですから!
だから知ったこっちゃないってば!
もう、次来た時は絶対に殺してやるんだから!
●メアリー・ベスレムすぐ死ぬ
波打ち際のコテージ。
そのリビングでメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)は不機嫌をまき散らしていた。
「なぁにそれ、つまんないの!」
メアリーはアリスラビリンスの女の子。
「だって、死なないし殺せないんでしょう?」
いつも夢の国で追いかけまわされて。
「それじゃ復讐のし甲斐がないったら!」
逆にオウガを食い殺す、人狼病の少女。
被虐と加虐、両方が満たせないこの国はメアリーにとっては不満足。
「まあまあ、落ち着いてくださいお嬢さん」
コテージの管理人(死亡歴450回)がなだめるように彼女の身長に合わせて視線を落とす。
こうやって迷い込んできた人間を落ち着かせて、馴染んでもらうのが彼の役目、ついでに死ぬけど。
「もう帰る!」
「ああっ!? 待つんだメアリーさん!!」
興味を失った少女はコテージのドアノブに手をかけるのを管理人が止める。
だが、もう時既に遅し。
コテージのドアが開くと……。
穏やかな凪の海のど真ん中でメアリの上半身がぷかぷかと浮いていた。
…………。
「殺すわ。お約束なんて知ったこっちゃないんだから!」
肉切り包丁を片手に少女が叫んだ。
ちなみになんで彼女がここにいるかと言うと、話をよく聞かずにやってきたからである。
そして今更、こういう説明をしている理由はと言いますと。
もう喰われているんですよ。
……頭から。
チャームポイントの
下半身を残して。
「速くない!?」
「速いですねえ」
メアリーの不満を管理人が受け流す。
下手な言葉は死を招く知ってるのだろう。
「もういいわ、シャワー浴びて来る」
即死して不機嫌なメアリーさんはシャワールームに入って栓を開いた。
湯が溢れ、零れるバスタブ。
けれど湯は赤く染まり、シャワーを浴びてるのは少女の頭だけ。
赤い海となったバスタブの中ではサイズに合わない背びれだけが回遊していた。
お判りでしょうか?
メアリー・ベスレムがすぐ死ぬ事に。
それは当然の事。
態度の悪いヤツと無暗にエロいやつはすぐ死ぬのがお約束なのだから。
「だから知ったこっちゃないってば!」
そんなことは関係ないとばかりに今度は何かでっかい刃物を持ってきたメアリー。
「もう、次来た時は絶対に殺してやるんだか――」
「Shaaaaak!」
彼女の決意すら容赦なく喰い殺すのがこの国のサメだった。
大成功
🔵🔵🔵
久遠寺・絢音
(水着姿でやってきて)
楽しいサメの国!
……フカヒレ食べ放題とかはんぺん食べ放題とかある?あるよね?
電気でもチェーンソーでも倒せないサメとかヤバすぎるじゃない
まー、蜘蛛の妖怪の言えたことじゃないけどさぁ……
(指先から糸出しつつ)
どうせ死ぬならなるべく楽しんで死にましょうか
とりあえずはんぺんをワサビ醤油でビールをいっぱ……
(缶ビールをプシュッとした瞬間にはんぺんがアオザメとヨシキリザメに戻って襲われる。レトルトのフカヒレスープもウバザメになって襲ってくる)
楽しんで死ねないじゃない!!
おのれ流茶野影郎〜〜!!覚えてろよ〜!!
(響き渡る断末魔。グリモアベースまで届くといいな)
●久遠寺・絢音の最後の晩餐
波打ち際の魔女とは彼女の姿を言うのだろう。
黒いビキニを覆うシースルーのレースとパレオ。
裏地に花をあしらった帽子を被り、夕暮れの海岸を歩く女の名は久遠寺・絢音(銀糸絢爛・f37130)。
「楽しいサメの国!」
この一言で最初のイメージの半分は崩壊した。
残念だが、現代社会に生きている魔女に神秘性を求めてはいけない。
「……フカヒレ食べ放題とかはんぺん食べ放題とかある? あるよね?」
その発想は無かった。
夜も更ける町の中。
ちょっとしたオープンテラスと言えば聞こえがいいが、実際はただの外飲みが出来る居酒屋。
焼きたてのはんぺんと缶ビール、ついでに枝豆とFUKAHIREスープをテーブルに並べた絢音がふと溜息をつき、指の先から土蜘蛛たる証たる糸を出す。
「電気でもチェーンソーでも倒せないサメとかヤバすぎるじゃない」
そこにはわずかながらの諦観と。
「まー、蜘蛛の妖怪の言えたことじゃないけどさぁ……」
自分が人でないという事を笑う諧謔さがあった。
これはいけないと深呼吸をする絢音。
「どうせ死ぬならなるべく楽しんで死にましょうか」
死ぬなら最後の晩餐を迎えて死のうと考えていたようだ。
はんぺんにワサビ醤油を添えて、最後の一杯とばかりに缶ビールを開ける女。
「Shaaaaak!」
そこにビールの泡が弾ける音に潜んだサメが缶ビールからエントリー!
久遠寺・絢音の頭を呑み込んだ!
華麗なほどのヘッドショットシャークだ!!
「……楽しんで死ねないじゃない!!」
「お若いの、まだまだじゃな」
不満をぶちまけて席に戻ってきた絢音に老人(死亡歴5回)がジョッキを渡す。
「大丈夫、サメは出てこない。サーバーから出てきて店員を食い殺したあとのビールじゃからな」
「それも何か嫌よね、でもありがと! 今度こそ……かんぱーい!!」
労働? のあとの一杯はやはり美味い。
ラガーののど越しと苦みをはんぺんが打ち消してくれる。
旨味が舌に残る中、今度はフカヒレスープにスプーンを落としたところで……絢音の手首から先が消えた。
「……あれ?」
「ReShaaaaak!」
今度はFUKAHIREから形を成してサメになったよ!
肩口から噛みついたシャークが空中に跳びあがって回転!
久遠寺・絢音を振り回す!!
「おのれ流茶野影郎〜〜!! 覚えてろよ〜!!」
「……知りませんがな」
断末魔聞こえる中、グリモア猟兵は板わさとルートビアで一息つきながらグリモアを維持していた。
大成功
🔵🔵🔵
ルシル・フューラー
何この面白そうな夢の国
最後はサメに食べられて夢が終わる国で
自分が鮫になったらどうなるんだろう
それでも最後は死んでしまうのか
鮫魔術師の端くれとして、身体を張って検証しに来た
鮫魔術:鮫怪獣
巨大鮫になって鮫魔王ムーブでもしてみよう
混ざれそうならバレるまで鮫側に混ざってカオスを振りまくとしよう
フハハハ! 鮫魔王である! さあいけ、サメ達!
まあ鮫になっても他の人を齧る趣味はないけど、適当に鮫ビーム撃ったりしてれば鮫っぽくなるだろう
鮫がビーム吐くのは普通だよ?
さあ、サメの夢の国の鮫達よ
鮫魔王はサメにどう殺されるのか、楽しみにしているぞ
(死に方お任せ、アドリブご自由にの意)
あ、サメ肌は水着みたいなもんだよね
●ルシル・フューラーのわくわくシャークランド
サメの国。
そして我々は忘れてはいけない。
世界には鮫の魔法があることを。
「何この面白そうな夢の国」
鮫魔術に手を出した挙句、ノリで魔王になったルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)にとっては天国であったろう。
そして興味深くもあった。
「最後はサメに食べられて夢が終わる国で自分が鮫になったらどうなるんだろう」
……と。
鮫になってもやはり死んでしまうのだろうか?
それを知るために、ルシルはやってきた。
鮫魔術師の端くれとして……。
大海原を一匹の鮫が泳ぐ。
それも普通の鮫ではない。
そこはかとなく魔王っぽい巨大な鮫だ。
妙に表現が奥ゆかしいのはユーベルコードのせいか、それとも本人の性格か。
だが魔王鮫は泳いでいる。
名はルシル・フューラー。
そう、彼が変身しているのだ。
鮫魔術:鮫怪獣
ちなみに全長は年齢に比例するので今は54m。
そんな巨大な鮫の周りを小さな鮫が回遊する。
大きな同胞を珍しいと、そして遊ぼうと言わんばかりに。
鮫同士が鼻先をつつき合い、ふれあいは始まる。
ヒレを交え、ともに海上へと高く跳ね上がり、照り付ける太陽の下ビームを放つ。
そこはサメのワンダーランド。
さしずめアリス・イン・ザ・テーマシャークと言った所か。
鮫になれば、一緒にコミュニケーションが取れるんだ。
ルシルが身体を張った検証は予想外の結果を生んだ……と思われた。
だが事故はふとした切欠で起こる。
海中の中、沈む船の残骸に魔王鮫の身体が引っかかり赤いものが零れる。
それはサメたちの鼻腔を刺激し大きなトモダチを獲物へと――変えた!
「Shaaaaak!」
一匹のサメが血の味を堪能するために嚙みついたのを機に次々とサメが襲い掛かる。
それはピラニアが大きな獲物を集団で食いつくさんとする光景に似ていた。
ルシルが鮫ビームを放つも、相手は小さすぎる。
自分の大きさが仇になり懐に潜り込まれたというか、中に入り込まれ
内臓を喰い破られている
身体をうねらせ、逃げようにも時すでに遅し。
海面を波打っていた魔王鮫は沈んでいき、広がる赤い花。
そして……何も残らなかった。
だって軟骨魚類だしね。
かくしてルシル・フューラーの身体を張った検証は血によって証明された。
大成功
🔵🔵🔵
安寧・肆号
【お茶会の国】
まあ、まあ!活きのいい魚ばかりだこと。
こんな国まであるなんて、やっぱり不思議な世界ね。
お洋服は去年仕立ててもらった水着……だけど。嫌だわ、左腕を食べられちゃった!
いきなりお洋服を汚すだなんて、失礼ね。
問題は どうやって食べられるか、よね。
そうよ、血がなくなっちゃう前に決めなくちゃ。
もし、そこの方!お勧めの食べられ方はある?
スミン。あなた、マウスサイズだと、本当に餌みたいね。
投げればいいの?
それじゃあ、さようなら!
綺麗に丸呑みされたかしら。
あたしもそろそろ夢から覚めなくちゃ。
(UCの使用・食べられ方おまかせ)
スミンテウス・マウスドール
【お茶会の国】
去年つくってもらった水着きた。
トンデモなルールな国があったもんだよ。えぇ?暑さで頭がイカレちまってるにちがいない。
隣はいきなり片腕がない。
イカれた国だよ。
どうやってもなにも、アンネそのままだと失血だよ。面白くない終わりだね。
どうだい、そこのユー。この夏オススメの喰われかたおしえて。
聞いといてなんだけどね。
夢とはいえ寝覚めが悪い。スミンはとっとといくよ。
UCでマウスになる。アンネ投げて。
バーイ、シャークランド。
ダイブ。
鮫の腹の中って狭いね。
おや、アンネの片腕だ。奇遇だね。
持参の紅茶で乾杯。
これは本当に夢かな。
●シャークティーパーティー
「まあ、まあ! 活きのいい魚ばかりだこと」
安寧・肆号(
Little Duchess・f18025)は波打ち際から海水浴客に襲い掛かってるサメの姿に驚きを隠せない。
「こんな国まであるなんて、やっぱり不思議な世界ね」
「ああ、きっと暑さで頭がイカレちまってるにちがいない。」
幸いと言うかなんというか、傍らにいるスミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)は今のところ常識を保っていた。
「トンデモなルールな国があったもんだよ」
多分、この国の異常さにドン引きしているせいでもあろう。
そんな二人にも容赦なくサメは襲い掛かり、早速アンネの左腕を食いちぎった。
「嫌だわ、左腕を食べられちゃった!」
ピンクが可愛らしい少女性をアピールした水着。
「いきなりお洋服を汚すだなんて、失礼ね」
それが今、赤で彩られていた。
「隣はいきなり片腕がない」
自律人形の言葉にスミンが呟く。
「イカれた国だよ」
「問題は どうやって食べられるか、よね」
アンネは適応が速いおにんぎょう。
「どうやってもなにも、アンネそのままだと失血だよ。面白くない終わりだね」
さすがに愉快な仲間であるスミンも言葉に皮肉と言うシナモンを効かせざるを得ない。
「そうよ、血がなくなっちゃう前に決めなくちゃ」
けれど女の子は砂糖とスパイスで出来ているもの。
そんな皮肉も耳に留め、受け流すだけ。
「もし、そこの方! お勧めの食べられ方はある?」
そして問いかけるのだ、海水浴に来たすぐに死にそうなカップル(死亡歴880回)に。
「どうだい、そこのユー。この夏オススメの喰われかたおしえて」
愉快なネズミもそれに続く。
「そうだなあ……折角だから、沖に出たらどうだい? あそこにヨットあるし」
カップルが指さす先には一艇のヨットが。
ちなみに持ち主はさっき死んだ。
「彼らに聞いといてなんだけどね」
沖合を漂うヨットの上でスミンが口を開いた。
「夢とはいえ寝覚めが悪い。スミンはとっとといくよ」
なんだかんだでネズミも気分屋であった。
眠気を誘うような空気の中、スミンは真の姿――お茶会の眠りネズミに姿を変える。
「アンネ投げて」
「スミン。あなた、マウスサイズだと、本当に餌みたいね。ええ、投げればいいのね?」
答えを聞く前にアンネはスミンを放り投げた。
「バーイ、シャークランド」
「それじゃあ、さようなら!」
眠そうなネズミが世界に終わりを告げ。
自律人形が自らの夢のかけらに別れを告げた時。
海中から跳びあがったサメにスミンは呑み込まれた。
丸呑みにされたせいか、まだネズミは生きている。
「鮫の腹の中って狭いね」
胃袋へとごろんごろん転がる中、出会うのは
「おや、アンネの片腕だ。奇遇だね」
自分の夢のひとかけら。
彼女の腕にティーカップを手渡すと
「乾杯」
自分のカップをぶつけて、乾いた音を鳴らした。
「綺麗に丸呑みされたかしら」
穏やかな海。
聞こえるのは遠くよりやってくる波の音。
ゆらゆらとヨットに揺られつつアンネも立ちあがる。
「あたしもそろそろ夢から覚めなくち――」
「Shaaaaak!」
サメは空気を読まない。
台詞の途中で飛んできて、おにんぎょうさんもそのまま丸呑み海の底。
「ごきげんよう、スミン」
「……やあ、アンネ」
夢は覚めないらしい。
胃袋の中でアンネとスミンがご対面。
偶然も良いところ。
「アンネも紅茶飲むかい?」
「いいわね、シャークティーパーティー! 夢だとしたら嬉しいわ。あなたと一緒なのだもの!」
眠そうな眼を向けてネズミがティーカップを差し出すと自律人形もそれを受け取る。
アンネとスミンとアンネの右腕、三つのティーカップが乾杯とばかりに音を立てる。
「これは本当に夢かな」
眠りネズミが呟いた。
答えは分からない。
けれど、この後目が覚めるのはグリモアベースなのは確かだろう。
これは夢の話。
サメの国の話はサメの中でのお茶会で終わる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミーシャ・アレクセア
【白薔薇酒場】
跡形もなく食ってほしい、そんな今日この頃。
お残しはいけませんよ!
ここはそう、立ってたら地面から生えてきたサメに食われるんですよ。
え、ない?
だって土壌にだって水分は含まれますし!
まぁ、そんな顔しないで、双葉。
水着良く似合ってますよー。
来年は私が選んだの着ましょう?
一応隠すべきところは隠れるのにしますから。
変態は褒め言葉。私知ってる。
私の水着は良いんですよ。見せたい人も居ません、義手や義足が見えちゃうと、父上がまた落ち込みますから。
まぁ、着ないなら着ないで、俺のせいでファッションの一つも楽しめなくなったとか、思ってそうですけど。
ほーぉらそんな湿っぽい顔してると食われま(ばくっ)
満月・双葉
【白薔薇酒場】
去年の水着。今年は新調しそこねた。
ブラックな仕事させる師匠のせいだ。文句言ってくれよ、ミーシャ。お前の父親だろ。
お前なんで水着着ないの。いいじゃん、義手足でも着てる人いっぱいいるよ?猟兵なら珍しくないって。
師匠は隙あらば俺のせいでーって落ち込むからなー…あの方向性間違った責任感なんとかしたい。
ミーシャ、そんなことより雑に食われるのやめようね。地面からサメ生えたりしねぇから。怖い鮫だね。何処でB級映画見てきたの?
こう、塩コショウちゃんとして、ソテーにして美味しく頂いて貰おうって。
夢の中とはいえ、僕だったら美味しく食べたいもん?
だから雑ぅ!
絶対グリモア猟兵さんが半笑いしてr(ばくっ)
●ラストシーンは雑な幕下ろしで
「跡形もなく食ってほしい、そんな今日この頃。お残しはいけませんよ!」
「お前は何を言っているんだ」
ミーシャ・アレクセア(戦神の娘・f08032)の言葉に満月・双葉(時に紡がれた忌むべき人喰星・f01681)がツッコんだ。
「ここはそう、立ってたら地面から生えてきたサメに食われるんですよ」
ミーシャの台詞に双葉は首を振る。
「え、ない?」
「ないない」
溺愛する父親の弟子のツッコみに戦神の娘は不満そう。
「だって土壌にだって水分は含まれますし!」
「そこで雑なフラグを立てない!」
ミーシャと双葉の漫才はここで一区切り。
「まぁ、そんな顔しないで、双葉。水着良く似合ってますよー」
「今年は新調しそこねた」
戦神の娘の言葉に弟子は皮肉を呟く。
「ブラックな仕事させる師匠のせいだ。文句言ってくれよ、ミーシャ。お前の父親だろ」
ついでに師に苦情を伝える役を押し付けたって許されるはず。
「来年は私が選んだの着ましょう? 一応隠すべきところは隠れるのにしますから」
「いや、普通のにしてくれ」
あの父親にして娘ありだったのか……それは二人だけの秘密だろう。
少なくともそれが分かるのは戦神の娘と弟子をよく知ったもののみ。
「変態は褒め言葉。私知ってる」
前言撤回。
どうやら
紳士だ。
「それより、お前なんで水着着ないの。いいじゃん、義手足でも着てる人いっぱいいるよ? 猟兵なら珍しくないって」
今度は双葉の番。
師の娘がどのような道を歩んできたか、気づかないほど鈍感でもない。
でも言葉にしない伝わらないものだってある。
「私の水着は良いんですよ。見せたい人も居ません、義手や義足が見えちゃうと、父上がまた落ち込みますから」
人並みに動く仮初の指を見せてミーシャが笑う。
「師匠は隙あらば俺のせいでーって落ち込むからなー…あの方向性間違った責任感なんとかしたい」
「まぁ、着ないなら着ないで、俺のせいでファッションの一つも楽しめなくなったとか、思ってそうですけど」
双葉の言葉に答え、父親を肴代わりにしつつ戦神の娘は近くにあったワインを手に取って傾けた。
「ほーぉらそんな湿っぽい顔してると食われま――」
「Shaaaaak!」
ワインからエントリーしたサメがミーシャの身体を雑に真っ二つ!
彼女の中から現れるとそのまま戦神の娘を喰らいつくす
「……ミーシャ、そんなことより雑に食われるのやめようね。地面からサメ生えたりしねぇから。怖い鮫だね。何処でB級映画見てきたの?」
咀嚼音が響く中、もう答えが返ってこない戦神の娘に対して、双葉は出来るだけ台詞を選んで口にした。
「こう、塩コショウちゃんとして、ソテーにして美味しく頂いて貰おうって」
だが答えは返ってこない。
もう今日の同行者はサメの胃袋の中に入ってしまったから。
「夢の中とはいえ、僕だったら美味しく食べたいもん?」
「ReShaaaaak!」
希望はかなわず双葉の左腕が持っていた大根ごと食いちぎられる。
そういえば、血に染まってたね大根。
「だから雑ぅ!」
そんな双葉の言葉むなしく、空中で捻りを加えてターンして戻ってくるサメ。
背びれが空気抵抗を受けてあげる音は何かの悲鳴の様だった。
「そんな所だけ格好良くしても、絶対グリモア猟兵さんが半笑いしてr」
悲痛な叫びはサメの口の中に納まるとくぐもるように聞こえなくなり、そして双葉も消えた。
夢は終わる。
生き残った者は誰も居ない。
何故なら夢には終わりがあり、目覚める時が訪れるから。
彼らがみんな死んでいき、元の世界に帰るのは当然の事。
過去と戦う猟兵が、過去の記憶から紡ぎだされる夢という物に囚われるわけがないから。
……そう、ここにいる
人々と違って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵