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崩落迷宮からの救出

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●迷宮の崩落
「あーもう、なんでこんなことに! 俺ら何もしてないよな!?」
「うるさいわね! 愚痴れる余裕があるなら走りなさいよ!」
「最初から全力で走ってるよ!」
 アルダワ魔法学園、地下迷宮。二人の男女が叫びで会話を交わしながら、石の回廊を駆け抜ける。出口までのルートは、普段からはあり得ないほど鮮明に思い出すことができた。これも非常時だからなのか、と男子生徒は頭の片隅で考えた。
 そうやってうっかり気を抜いた瞬間だった。高い天井から巨大な金属製の歯車が彼の頭上へと落下したのは。
「アダム、上!」
 女子生徒の声にはっとなって、男子生徒――アダムは前へ転がり込んだ。後ろで起こった衝撃音に冷や汗が垂れる。
「サンキューな、シェリー!」
「お礼はいいから! 早く行くわよ!」
 女子生徒――シェリーが再び走り出し、アダムもそれに続く。
 止まらぬ地震、突然降ってくる落下物。それらに妨害されることなく走り続けていると、二人は橋へと出た。離れた迷宮同士をつなぐ謎めいた機構であり、さっきも通った道だ。揺られて谷底へ落ちないよう注意しつつ、出口へと急ぐ。
 橋を半分ほど渡ったときだった。先行するシェリーと後に続くアダムを裂くように、橋に割れ目が入った。
「あ……!」
 アダムがうろたえ、足を竦ませる。シェリーはそれを捉えると、咄嗟に彼の腕を掴み、回転して場所を入れ替えてからアダムを突き飛ばす。そして自身も向こうへ渡ろうとしたとき、彼女の足元が崩れた。
「シェリー……!」
「いいから行って! 誰か助けを――!」
 シェリーの声を掻き消すように、橋は続けて崩落する。彼女の安否を確認する暇もなく、アダムは脚を動かした。魔法を使うことすら忘れるほど頭をパニックが埋めていた。
 橋を渡り切ってなお、先を急ぐ。この先も橋と吹き抜けが続き、同様のことが起こるかもしれないからだ。その前に、アダムは後方をちらりと振り返った。
 陥落し切った橋の反対側にシェリーのような人影があった。だが、それを碧い炎が包むのがちょうど見えた。悔しさを殺して場を去る以外に、彼にできることはなかった。

●グリモアベース
 思い悩む顔をした木鳩・基(完成途上・f01075)に、猟兵の一人がわけを尋ねた。彼女は慌てて取り繕うと、ぱちんと手で両頬を叩いて気を切り替えてから説明を始める。
「事件ですね。アルダワ魔法学園の地下迷宮の一区画が崩落したみたいで、そこに運悪く二人の生徒が巻き込まれてしまったようです」
 男子生徒はアダム、女子生徒はシェリー。ともに十六歳で、アルダワ魔法学園世界で生まれ育った学生だ。
「アダムさんはなんとか安全地帯まで辿り着けたものの、シェリーさんは迷宮内に取り残されました。みなさんには、シェリーさんの救出をお願いしたいです」
 話は変わりますが、と基は顎に手を添えて思案する顔をした。
「アルダワの迷宮が独りでに崩れるとは思えないんです。予知にも不自然な炎が見えましたし……オブリビオンが関わってるんじゃないかと。救出途中でそれっぽいのを見つけたら、遠慮なくとっちめてください」
 そこまで話すと手帳をぱらぱら捲り、迷宮の構造が書かれたページをペンで示す。
「今回の迷宮のは塔同士を橋でつないだみたいな、吹き抜けの空間が基本になってます。下は見えないくらい底なしらしく、落ちたらひとたまりもないですね……。橋の幅は大きいので、気をつけてたら落ちることはないと思いますけど……」
 続きを言いにくそうに渋ったが、彼女はため息をついてから説明を再開する。
「みなさんが向かう迷宮は今も崩壊の真っ最中です。罠のパーツだった大きい部品とか、壁の一部とかが落ちてくるかも……?」
 目視では見えないほど高い天井から、人間を十分に押し潰せるサイズの落下物。猟兵とて、不用心に直撃すればただごとではない。まして、ぶつかった衝撃で奈落に落ちる危険すらある。警戒は必要だろう。
 また、崩落は迷宮自体にも影響を生じさせている。建物は崩れやすく、常に軽い振動が付きまとう。落下物も上手くやれば何かに利用できるかもしれない。
 そうにおわせたところで、基は話題を転換させた。
「シェリーさんとはぐれた地点まではアダムさんが案内してくれるでしょう。……言ったところで退かなさそうですし、むしろ力になってもらいましょう。あとは魔法で軽いサポートとかもしてくれそうですね」
 彼が使うのは『被弾したものを浮遊させる魔弾』。落下に対して対策を持たない猟兵が落ちたときなどに役立つだろう。ただ、今回頼られているのは猟兵たちだ。彼や学園の者だけでは女生徒を助け出すことはできない。しっかりと彼らの期待に応えてほしい、と基は付け加える。
 必須事項を言い終えると帽子を被り直し、猟兵たちに向き直る。
「いつも通り危険な感じはしますが……きっちり、シェリーさんを助け出してください。応援してますから!」
 胸の前で拳を握り、基は猟兵たちを鼓舞するように笑顔をつくった。


堀戸珈琲
 どうも、掘戸珈琲です。
 遺跡冒険のラストといえば遺跡の崩壊と脱出ですよね。

●最終目的
 女子生徒『シェリー』の救出、および元凶となるオブリビオンの討伐。

●第一章について
 落下物を避け、迷宮を進みます。直線状の道に目視では確認できない高所から危険物が落下します。対策を取らずに直撃すると橋から投げ出されます。

●全体の進行について
 第一章、第二章の冒険フラグメントの後、第三章でボス戦となります。

●場面状況について
 今回冒険する迷宮は「塔+巨大な橋」が基本構造で、猟兵たちは橋の上を進みます。下は奈落ですが、上下の空間は活用できます。勝手に落ちることはありません。
 また、シナリオを通して「地震」「建物の脆弱化」「落下物」などが想定されます。しかし、雰囲気づくり程度ですので、(第一章での「落下物」を除き)プレイングで対策しなくともリプレイには影響しません。ただし、利用は可能です。

●NPCについて
 今回、シナリオを通して男子生徒『アダム』が同行します。
 アダムはアルダワ魔法学園での一般的な生徒で、迷宮の案内役を務めます。自分のミスでシェリーを救えなかったことを悔しがっているようです。
 技能として『被弾したものを浮遊させる魔弾』を放ち、冒険フラグメントでの失敗判定時の救済措置にはこれを適応します。なお、この魔弾はボスには効きません。落下物などのギミック、猟兵とそのアイテムやユーベルコードにのみ効果があります。救済措置に関係なく、彼の支援を冒険や戦闘で受けることは可能です。
 また、参加者が想定したアクシデントの餌食になることもありますが、プレイングで言及されない限り、参加者の登場するリプレイには登場しません。

 それては、みなさまのプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『天井からの恐怖!』

POW   :    体力や気合で耐える/仲間を庇う

SPD   :    素早く避ける/落下物を防ぐ工夫をする

WIZ   :    落下するタイミングを見抜く/安全なルートを見つける

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●いざ崩落迷宮へ
 転移した猟兵たちの目の前に、蒼白な顔をした男子生徒――アダムは立っていた。
 混乱する彼をなだめるついでにわけを話すと、彼は自ら案内役を志願した。
「……俺のせいでシェリーが危険な目に遭ってしまったんです。みなさんの手伝いくらいはさせてください!」
 強い宣言を聞きながら、猟兵たちは行く先を覗いた。
 幅のある橋が見えた。堅強そうな石橋はまっすぐに伸び、下方に広がる暗闇に飲まれることなく役割を果たしている。同様の機構が続き、かなり向こうまで一気に見通せた。
 そこに、結構な頻度で落下物が降りかかる。主に落ちてきているのは蒸気機械の部品だったかもしれない金属類や、天井から剥がれたらしい迷宮の一部だろう。次々と降っては橋に当たって砕け、衝撃で跳ね上がってから闇に溶けるように落ちていく。
 様子を推し量る猟兵たちの体を微かな振動が揺らす。この場所は崩壊の真っ最中だ。切羽詰まった状況である以上、落ち着くまで待つことは許されない。
 意を決し、猟兵たちは崩落する迷宮へと足を踏み入れた。
シュトフテア・ラルカ
崩落中の遺跡からの救出ですか。
あれこれ考えてても間に合わなくなるですし、早くいくです。
UCを発動し、足を確保。ある程度の飛行能力はあるですし足元の崩落に対してはこれで大丈夫でしょう。
一気に救出対象まで駆け抜けるです。

落下してくる瓦礫に対しては【クイックドロウ】抜き撃ち【スナイパー】です。
完全に崩せなくても通る隙間を作れれば問題ないのです。
穴は【ジャンプ】で飛び越し【空中戦】の要領で瓦礫をすり抜けるです。
オブリビオンを一人で相手してる可能性もあるですし一刻も早く助けるですよ。


メンカル・プルモーサ
……んー、危ないな……意思を持ってこっちに来ないだけましかな…?
…崩落しきる前にシェリーを見つけて助けないと……

…まず、落ちると危ないから飛行式箒【リントブルム】に乗って飛ぶ…
あとは【不思議な追跡者】で猫を出して頭の上に載せて…猫には上方を監視させる……
これで落下物は早期に察知出来るから落下物を回避しつつ先を目指す……
回避出来そうにないものは【煌めき踊る銀の月】で落下物を寸断する……

…あとは余裕が出来たら【面影映す虚構の宴】を使って落下物の落下予測地点を地面に表示させて後続の人達のサポートしよう……



●一点突破
 眉を僅かに動かし、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は厄介そうに正面を見据えた。
「……んー、危ないな……。意思を持ってこっちに来ないだけましかな……?」
 この迷宮が崩れ切る前にシェリーを見つけ、助け出さなければ。漠然とした気持ちの中には少し焦りが紛れ込む。
 隣に立つシュトフテア・ラルカ(伽藍洞の機械人形・f02512)も彼女と同じく、顎に手を添えて機を伺っていた。しかし、あまり時間を置かずして息をついた。
「確かに、かなり酷い状態です……が、あれこれ考えてても間に合わなくなるですし、早く行くです」
 シュトフテアの視線は自身の肩に留まらせたフクロウ型ガジェットに移る。
「くろうくん、お願いするです」
 指示を受けて肩から飛び降り、くろうくんは空中での分離変形を開始する。瞬間的にくろうくんが移動用ガジェットに変形するのを見届けてから、シュトフテアはそれに騎乗した。
「さぁ、一気に救出対象まで駆け抜けるです」
 彼女の言葉とともに機械の脚が動き出す。震える空気を切り、安全地帯から飛び出していった。
 シュトフテアを横目に、メンカルも粛々と準備を進める。飛行式箒【リントブルム】を地面に倒して置いてから足元に猫を召喚し、それをひょいと持ち上げて慎重に頭の上に座らせた。
「……頼んだからね」
 にゃあという鳴き声を聞き流し、メンカルは片脚を突き出して箒へ横向きに乗る。刻まれた飛行術式により、【リントブルム】はふわりと浮かび上がった。そのままメンカルが重心を前に傾けると箒は発進し、瓦礫の降る空へ飛んだ。
 猫の役割は視界の補助だ。自身と視界を共有する猫に上方を監視させれば落下物の察知は容易になる。部品やら石壁やらが落ちるのを見てから飛行ルートを編み出し、接触することなく安定した飛行を続ける。
 ふと、橋を見下ろした。無駄なく礫を躱して駆けるシュトフテアの姿が見て取れた。支援のため、猫に彼女の上方を見させてから詠唱する。地面には円形の霧に似た影が現れた。
 シュトフテアは中空を見上げ、落ちてくる瓦礫類の位置とメンカルの頷きを確認する。それから、彼女は再び前を見据えた。
「なるほど。助かるですね」
 搭乗しているガジェットの速度をさらに上げる。殴りかかるように飛来した巨大鉄柱を斜め前に跳んで回避し、その後も降り注ぐガラクタの雨を飄々と避けて走った。
 途中、陥落した橋の部分を前方に認識すると、その一点に向かって全速力を出して直前で踏み切る。大きく跳躍し、何のことはないという素振りで着地してからまた走り出す。
 直後、上空でがこんという何かが外れる物音がした。
 橋の倍の直径をした歯車が、橋の中央へと落下する。倒れる方向によっては、空を往くメンカルも巻き込まれかねない。
「……また危ないものが。結構硬そう……崩し切れるかな……?」
 愛用の杖を掲げつつも、不安は拭えない。
 そんな彼女を呼ぶ声があった。
「メンカルさん、攻撃するなら歯車の片側を狙ってもらえるですか?」
 呼びかけたのはシュトフテアだ。くろうくんは駆動させたまま、熱線銃ガジェットを手にしていた。
 意図を理解してメンカルは首を縦に動かし、再度進行方向へ向き直った。
「我が愛杖よ、舞え、踊れ。汝は銀閃、汝は飛刃。魔女が望むは月の舞い散る花嵐」
 詠唱を終えると、杖は先端から花びらとなって散っていく。空中に放たれるや否や、花びらは歯車の右半分を狙って舞い、その表面を執拗に引っ掻く。可憐さと残忍さを備えた花が、古びた金属を食うように抉る。
 その最中、シュトフテアがガジェットから身を乗り出して銃を構えた。ある一点へと照準を定め、トリガーに指をかけた。
「そこなのです」
 狙い定めたのは、メンカルの攻撃により特に激しく損傷した部分だ。撃ち出された灼熱は軌跡に線を形成し、その一点を貫いた。
 スナイプを決められると、歯車の片側は徐々に砕けて細かな瓦礫に身を堕とす。猟兵たちは一斉にその片側に寄って通り抜け、事なきを得た。
 崩落の進む迷宮の中、一行は先を急ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペーナァ・キャットハウス
アダム君、うちらに任せときーや
必ず助けたるやん!

たしかにこの先は色々注意せな危ないね
目が二つだけやとちょっと大変かもや
…あ、せや、じゃあ四つの目で見たらええやん!

使うのはオルタナティブ・ダブル

クラお姉ちゃんを呼び出して二人でいくで
うちは地面や前方注意
クラお姉ちゃんはうちの少し後からついてきてもらって
主に上から落下物が落ちてけえへんか見てもらうよ
落下物に気付いたら八方に躱す様に「逃げ足」で避ける
さあ一気に駆け抜けるで!

◇別人格「クラおねえちゃん」
第二口調で喋ります
落下物が落ちてきたらペナに注意喚起「おい、危ねえぞ」
また、手に持った鉄パイプから「衝撃波」を放って落下物の破壊や軌道の変更を試みます


茅原・紫九
案内は恋人とはぐれた地点までだったか
一応一般人だし可能な限りオブリビオンとの戦闘には巻き込みたくねえがさて……

UC【最適強化】を使用、観測用の疑似精霊を頭上に飛ばす。
落下物が回避可能な大きさや速度なら素直に回避。
回避不可だと判断したら間に合うかは分からねえが即座に精霊を魔力リソースとして使い防御、耐える方針で行く

橋に当たって反射してきた落下物については……頑張ってなんとかする。
第六感とか見切りとかなんかこう……できるだろ多分!
なんともならないならせめて落ちない方向に吹き飛ぶか、頑張っても無理な時は無理だからな



●勇者と魔王、流浪人と疑似精霊
「アダムくん、うちらに任せときーや。シェリーちゃんは必ず助けたるやん!」
 ペーナァ・キャットハウス(お外でゴロゴロ・f05485)の快活な声が響く。後に続くアダムは猟兵たちに合わせるので手一杯なようで、返事を返せずにいた。
 茅原・紫九(風に流され来たる紫煙・f04064)も後方を振り返り、彼の様子をそれとなく気にかけた。
「無理すんなよ、一応一般人なんだし。できれば戦闘にも巻き込みたくねぇし。案内は恋人とはぐれた地点までだったか」
 紫九が発した恋人という単語に、彼は顔を赤くする。しかし、紫九がタイミング悪く前を向いたために雑に流されてしまう。反論を企てるも、結局ペーナァによって発声は遮られた。
「確かに、これは目が二つだけやとちょっと大変かもしれへんな……。守ったるから、道は頼むわ!」
 親指を上向きに立てた手を後方へ見せる。その後、自慢げな笑みを彼女は浮かべた。
「ま、今のうちには四つ、目があるけどな。せやろ、クラお姉ちゃん!」
「ペナ! いい加減、ちゃんと前見て走りな!」
「……はーい」
 自分と瓜二つのもう一人のペーナァに叱られ、彼女は渋々は前へ向き直った。
 ペーナァの少し後ろを行くのは、『オルタナティブ・ダブル』で呼び出した実体のある別人格だ。ペーナァ自身は前と足元を、『クラ』と呼ぶ別人格はペーナァの頭上を、という具合に役割を分けてこの地帯の突破を試みている。
「変わった姉妹だな……。けど、役割分担って意味じゃあ俺もそんな変わらんか」
 浅い興味で二人のペーナァを眺める紫九の頭の上で、精霊に似せた存在が瞬く。その様子を受け、彼女は少しだけ走るスピードを速めた。
 直後、大人の頭程度の岩が背後に落下し、破壊音とともにいくつかの破片に分かれた。
「危ねぇ! 結構ギリギリだったぞ!?」
 目が点になった紫九の頬に汗が流れる。避けることができたのは頭上に配置した観測用の疑似精霊のおかげだ。彼女に迫る危険物に関する情報を収集させ、その感知に役立っている。
 次いで紫九は安堵の息を吐く。だが、その瞬間に疑似精霊はまたもや反応する。先ほどよりも激しく瞬き、薄々感じていた悪い予感の的中を示していた。
「おいペナ! 危ないぞ!」
 クラの注意が飛んだのは直後のこと。群となった落下物が一度に猟兵たちに降りかかった。
「わかった! ありがとう!」
 落下してくる瓦礫へ対処する指示をもらいながら、ペーナァはその中を駆けていく。一つは加速で逃げ切り、またある一つへは減速して待つ。小さな体を器用に使って踊るように躱し続ける。
「ただの石っころにオレらの邪魔はさせねぇ!」
 鉄パイプを振りかぶると、クラはペーナァの頭上を強く意識してそれを振るう。ぶんという音がした後で衝撃波が空気を裂いて放たれ、やがてそれは岩の一つを粉砕した。
 瓦礫群が迫ったのは紫九も同様だ。ちっという舌打ちが軽い焦りの現れだった。
「間に合うかはわからんがやってやるぜ!」
 浮遊させた疑似精霊に使われている魔力を元手に、手持ちの『マジックソード』を臨時的に強化させる。使用した魔力が同じだからか、刀身は疑似精霊と同じ色に輝いた。
 ヤケクソ気味に頭上へ剣を振りかざす。顔の前に迫った球状の金属部品はその一振りにより弾かれ、橋の下へ落ちた。観測により集約した情報から導き出したエンチャントが刀身には施されていた。
 直撃を凌ぎ切っても油断はできない。付近に落下した壁の欠片は跳弾のような軌道を取り、紫九へ跳ねた。
 これに関して明確な対策は用意していない。
「……頑張ってなんとかするしかねぇ!」
 歯を食いしばり、礫を凝視する。体はほとんど感覚的に動き、無意識に横に倒れて躱し切った。礫はそのまま橋から転げ落ちていく。
「すごいいっぱい落ちてきたなぁ……。クラお姉ちゃん、改めてありがとうな!」
「別にいいって。それより早いとこ行った方がたぶんいいぞ?」
「そうやな! じゃあ、一気に行こか!」
 軽いやり取りの後、二人はまた駆けていく。
「元気いっぱいって感じか。ちょっと羨ましいかも……いや、俺には似合わんな」
 土を払いつつ立ち上がり、紫九も追いかけるように走り出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビードット・ワイワイ
仲間を助けるために我らに同行せんとする意思
素晴らしき、輝かしいものかな
ならば我らも少しばかりの手助けをしよう

UCにて加速装置を作成
素早く【ダッシュ】し【オーラ防御】にて落下物を防ごう
補助として【念動力】【吹き飛ばし】を使いて落下物の防御

この程度の障害など我が巨躯の前には無意味
我を止めたければこの倍は持ってくることを提案しよう
…唯一の心配事があるならば我が巨躯の重みに
この橋が耐えられるかどうかであろうか


峰谷・恵
「事態が事態だから、先を急がないとね」

【POW】で挑戦。
ダークミストシールドを頭上に掲げて落下物を警戒しながら先を急ぐ。橋を通るときは中央を歩く。
少々の落下物は盾で防ぎ(盾受け、怪力)、防ぎきれないほど大きな物が落ちてきたらぶつかる前にアームドフォートとMCフォートの砲撃で破壊してさっさと進む。一気に大量の大型落下物が降ってきたらアームドフォートとMCフォートによるフルバースト・マキシマムで可能な限り落下物を破壊する

「オブリビオンは何が目的だろうね?迷宮崩したら地上に侵攻しにくいし、崩落って異変を起こしたら調査が入って潜伏するにも不都合がありそうなものだけど」


セシリア・サヴェージ
予想以上に崩落が激しいですね…直撃したらひとたまりもないでしょう。
シェリーさんの安否が心配ですが、私まで不安な様子を見せたらアダムさんまで不安になってしまうでしょうし、ここは【勇気】を出して自若とした態度で臨みましょう。

【第六感】を働かせ警戒しながら進み、落下物は『暗黒』を使った【念動力】や【オーラ防御】を駆使して防いだりこちらに落ちてこないようコントロールします。

仲間に落下物が当たりそうなときは【かばう】で間に入り防御。『暗黒』の展開が間に合わない咄嗟の状況ならば剣の【武器受け】で防ぎます。…衝撃で飛ばされないことを祈りますが。



●積もりゆく疑念
 これまでの道のりを終え、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)はぽつりと零した。
「それにしても……予想以上に崩落が激しいですね。いつ全体が崩れてもおかしくなさそうです」
 この瞬間にもセシリアの頭を目がけて機械部品が落ちる。第六感でそれを捉えた彼女は自身が操る力『暗黒』を唸らせ、空中で横薙ぎに払い除けた。強大な力を張り巡らしつつ、周囲を見回して迷宮の状態を再度確認する。
「事態が事態だから、先を急がないとね」
 セシリアに続いたのは峰谷・恵(神葬騎・f03180)だ。
 手袋に取り付けられた菱形が青く輝く。エネルギーシールドが正しく展開されていることを示しており、事実彼女の頭上には黒い霧状の膜が張られていた。橋の中央を往き、何かを思案するような顔で風景を眺めた。
 彼女らの背後ではビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)がキャラピラを駆動させて走行する。
「シェリーという娘が無事でいればいいが……なんにせよ、我らに同行すると言い切った少年の輝かしき意思を無碍にはしたくないものだ」
 小石程度の落下物であれば、彼のボディには傷一つ与えない。むしろ、その巨躯の重みに脆弱化した橋が耐久できるのかが不安の種ではあった。しかし、依然としてそれが原因で橋が抜けたことはない。心配事が減るのはいいが、それはそれで不自然なようにも思えた。
「えぇ。彼女の安否は気になりますが、我々が怖気づいている場合ではありませんし。とにかく引き続き、落下物に気をつけて――」
 セシリアの言葉を遮り、揺れの激しい地震が猟兵たちを襲った。揺れに伴い、大小さまざまな瓦礫が行く手を塞ぐように降り注いだ。
「これは……走りながら迎撃した方が賢明だね」
 バランスを保ってその場に踏みとどまってから、恵は体に取り付けたアームドフォートとMCフォートを展開して瓦礫群へと突っ込んだ。蓄積される障害物を飛び越え、固定砲台の狙いをそれぞれの礫へと定める。瞬く間に砲台のすべてが火を噴き、弾丸は礫を容赦なく砕く。反動も気に留めず、混沌とした空間を突破した。
「援護します!」
 後続のセシリアも結った銀髪をなびかせて迎撃に加入する。不安を見せない慄然とした表情で、前方から頭上の範囲へと『暗黒』を送り込む。過剰に働かせないよう注意しつつ、恵が撃ち漏らした対象に向かって力を放つ。
「前は頼む。……我は後に続く者たちに道を形成しよう」
 礫が累積する橋を三つのオレンジランプの目で捉えたビードットは『ガジェットショータイム』を発動。装甲車風の加速装置の召喚に成功すると、脚部や背面へ器用にそれを取り付けていく。エンジンを震わせ、ブーストにより生まれた速力でガラクタの山を弾き飛ばしながら推進する。
 瓦礫の落下は継続しているが、これも彼には小石同然だ。オーラによる防御を施し、降りかかる落下物を念力も加えて吹き飛ばす。
「この程度の障害など我が巨躯の前には無意味。我を止めたければ、この倍は持ってくることを提案しよう」
 静かな余裕を見せ、減速もなく瓦礫を跳ね除ける。しかし、新たに生じた物音で停止を余儀なくされた。
 前方に真空管に似たデザインの筒が、猟兵を潰さんとして落下する。まるでビードットの意に応えたかのように、これまでの瓦礫に比べ倍くらいの大きさだ。
 妙な感覚に包まれたが、やることは変わらない。
「破壊します」
「切り抜けるにはそれしかないしね」
 アームドフォートとMCフォートを向け、真空管の一点へ恵が砲撃。MCフォートの砲身が軋む音を立てて回転し、ガラスの管にまばらな穴を開ける。
 そこへセシリアの『暗黒』が穴を一つに纏めるように貫いた。力は旧式パーツを串刺しにして、また彼女の周辺へと戻る。
 大穴が開いた真空管はその傷から全体にヒビを走らせ、数秒経たずしてガラスは飛散する。細かな牙に似た形状を取り、防御術を持たない猟兵にガラスの粒が飛来する――が、セシリアはその前に割り込み、大剣を掲げて盾となった。ぱらぱらとひとしきり音を聞き、彼女はようやく剣を下ろす。
「随分と応用性のあるものが落ちてきましたね……」
 セシリアが天井を睨む一方、雹のように積もったガラスを眺めるビードットが呟いた。
「地震のせいか落下物も埒が明かなそうだ。すぐに離れよう」
 落下物を防御できない者を何人か脚の機構に載せ、彼は加速装置を点火する。
 恵はシールドを活用しつつ、独り考えを発した。
「……オブリビオンは何が目的だろう? 迷宮を崩したら地上に侵攻しにくいし、崩落って異変を起こしたら調査が入って潜伏するにも不都合がありそうなものだけど」
 加え、ウォーマシンや大型瓦礫が載っても陥落しない橋や、こちらに反応したかのような落下物。不自然な点として捉えればいくらでも数え上げられる。
 何人かの猟兵は不可解な思いを抱きつつ、次の橋へ移動する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

乙雪・柚佳
キギ、ナミルと同行 アドリブ歓迎

焦る気持ちも分かるけど、アダムさんも同じような目に合ってしまったらシェリーさんも悲しむからね。安全第一に行動しようね!

あまり悠長にしてられないから最初からエンジン全開で!
ユーベルコード...蜘糸(イト)ここはフクロウ強めにして、天井から降ってくる音に集中…。
足場も危ないんだったね、崩れない…よね?足場も含め周囲の音を聞き分けるよー!

降ってくる物を軽い足取りで避けつつ、周りに落下物の危険があった場合伝えて安全に動くよ!


ナミル・タグイール
柚佳とキギと同行
迷宮があったら探索したくなるにゃ。わかるにゃー。
色々落ちてきてるにゃ。金ぴかなお宝とかも混じってたりしないかにゃ!

落ちてくるものをチラチラチェックしながらダッシュにゃ!
【野生の勘】で周囲を警戒 暗闇でも輝く猫目にゃ!
危ないものは回避、避けきれならそうなら【グラウンドクラッシャー】でドッカン破壊にゃ
金ピカに光るものがあったら飛び込んでゲットにゃー!最優先にゃ!
斧とパワーさえあればこんなの余裕にゃ。怖がらなければ大丈夫デスにゃ!


キギ・レインメーカー
【行動方針】
Wiz 落下するタイミングを見抜く/安全なルートを見つける
アダム君の案内を聞きながら進もうか、そんな無茶しないだろうけど思い詰めてるようなら「コミュ力」で多少ケアしてあげられるといいな
橋は落下物に気を付けながら渡ってこうか、ナミルちゃんも柚佳もそれぞれ対策してるからほっといても大丈夫かな
万が一、落下物に当たって落下しそうな場合(もしくは味方落下しそうな場合)は「手をつなぐ」とフック付きワイヤーで助けに周ろうか
俺だったらオラトリオの翼で飛べるから多少ならカバー効くしね
【その他】
ナミル、柚佳と同行。連携、アドリブ歓迎です。



●橋の外へ
「たぶん、ここにお宝はないんじゃないかな……」
「柚佳、それはヘンケンだにゃ。どんな迷宮でもお宝はあるものにゃ」
「……そっちの方が偏見っぽくない?」
 前を駆けるナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)に乙雪・柚佳(シトロンスカイ・f01966)は苦笑いを浮かべる。
 現在、柚佳の頭にはフクロウの頭のような羽が生えていた。鋭い猛禽の聴覚は彼女にほんの僅かな空気振動をはっきりと伝えさせる。天井に集中し、余力で足元と周囲の音を拾うのに気をつける。自身に降りかかってくるものは軽く避けつつ、仲間のサポートをこなす役回りだ。
 あまり悠長にしてられないから、最初からエンジン全開で! やれることはやってから望もうという気合の表れだ。彼女は胸の前で隠すようにして、拳をぐっと握った。
 すると、常時表出している彼女の狐の耳がぴくりと立った。
「ナミルちゃん、気をつけて!」
 柚佳の声でナミルは上空をばっと向き、身に着けた装飾品の数々がじゃらんと音を立てる。
「ナミルの猫目にかかれば、どんな暗闇でもお見通しだにゃ!」
 ふっと軽口を言って位置をずらす。それまでナミルが走っていた地点には壁の塊が降り、直後に衝撃で粉々になった。
 切り替えて前を向こうとしたが、彼女はその地点を結局二度見した。
 壁の中に埋め込まれていたらしき金貨が跳ね、空中で光を放つ。橋の外へ落ちていこうとするそれを見て、ナミルは目を輝かせた。
「最優先事項だにゃ!」
「あ、待ってナミルちゃん!? 早まらないで!?」
 橋から身を乗り出してナミルは金貨をキャッチし、危うく落ちかけたナミルを柚佳が掴んだ。ずるずるとナミルを引き上げてから、柚佳は安堵の息を吐いた。
 てんやわんやの彼女らを遠巻きに眺め、キギ・レインメーカー(オラトリオの探索者・f02371)は硬い微笑をつくる。
「……うん。ナミルちゃんも柚佳もそれぞれ対策してるから、ほっといても大丈夫……かな? まぁ、カバーはし合ってるみたいだし」
 どことなく自分を納得させるように頷きながら、彼の視線は隣を歩く案内人・アダムへと移る。
 これまで少々話して顔を見た限り、ときどき表情に陰りが見えた。隠し切れない部分が現れていたのだろう、とキギは考える。
 落下物のタイミングを図りつつ、彼はアダムに声をかける。
「アダム君。君がシェリーさんとはぐれた地点には、あとどれぐらいで着きそうかな?」
「もう少しだと思います……」
 消えかける語尾。何か労う言葉を考えていた最中、アダムが口を開いた。
「俺があのときもっとちゃんとしてれば……俺がダメなばっかりに。そもそも、俺が軽い気持ちで迷宮探索なんて誘わなかったら――」
「悪いけど、起きたことを考えてても何にもならないよ」
 飄々とした雰囲気のあるキギから発せられた少し厳しい言葉に、彼は顔を上げた。
「今できることを探さないと。俺たちが君らの言う災厄と戦う理由もそうだ。未来は現在からじゃないと変えられないからね。その点、君が俺たちに同行してるのはそういった行動に当てはまると思うよ」
 暗い顔を見せるアダムに、話を耳にした柚佳が後押しする。
「何をするにも、前向きじゃないとね。でも、焦りは禁物だよ! アダムさんも同じような目に遭っちゃったらシェリーさんも悲しむし、安全第一……うん、安全第一に」
 目線をそれとなく逸らした柚佳の脇で、ナミルがコインをトスした。
「迷宮はあったら探索したくなるの、わかるにゃー。アンラッキーが起きたのはアダムのせいじゃないにゃあ」
 呑気に金ピカを見つめ、彼女はにぃっと口角を上げた。
 猟兵たちに励まされ、アダムの表情は若干柔らかなものに変わる。
 彼が礼を言いかけたそのとき、柚佳の顔つきが何かを悟ったものに変わり、再び狐耳がピンと立った。
「みんな、上! しかも結構大きいよ!」
 真っ先に柚佳が上空を見上げ、他の者もそれに続く。声質は勇ましいものだった。
 どこかの支柱だったらしい鉄の柱の断片が落下してくる。大きさは柱の幅と同程度くらいだろうか。
 柚佳の呼びかけに応えるかのように、ナミルが迷うことなく飛び出した。
「怖がらなければ大丈夫デスにゃ! ドッカン破壊にゃ!」
 地面を蹴り、多量の装飾が施された斧を叩きつける。錆びた鉄は打撃を受けて砕け、空中で解体される。
「斧とパワーさえあれば、こんなの余裕にゃ!」
 誇らしげにナミルは笑う。これで潰される危険はなくなった。
 ただ、その欠片ですらもかなりの大きさを保っていた。そのうちの一つがアダムに飛来し、すぐそばで衝撃を生じさせた。直撃は免れたものの、踏み込みの足りなかったアダムは橋の外へと放り出された。
「アダム君!」
 キギは橋から身を投げるように飛び出し、彼よりも早い速度で奈落へと落ちる。闇の中で白の翼を展開すると自由に滑空し、落下するアダムを先回りして彼を受け止めた。アダムの体重で失墜しかけながらも即座に立て直し、橋の欄干にフック付きワイヤーを投げつける。フックが確かにかかったことを確かめてからキギはそれを辿って翼を羽ばたかせた。 
「今は俺たち猟兵が君の味方だ。だから、安心していて欲しい」
 優しく語りかける声に、アダムは安らぐような顔をした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『爆走魔導トロッコ』

POW   :    気合でトロッコにしがみ付く

SPD   :    トロッコと並走し跳び移る

WIZ   :    走行ルートを割り出し待ちぶせる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●崩落迷宮のトロッコ駅
 瓦礫の降る橋を渡り、猟兵たちは完全に崩落し切った橋の跡地へと到達する。アダムがシェリーとはぐれた地点でもあった。
 振動が弱まったのを感じた何人かが後ろを振り向く。落下物は先ほどと比べ格段に数量が減少傾向にあった。これで必要以上に警戒せずとも済みそうだ。
 ゆっくりとアダムが崖際に寄る。崖下を覗き込み、怪訝そうに口許を歪ませた。
「トロッコ?」
 何もない空間の上を、車輪の軋む音と一緒にトロッコがけたたましく通過していく。碧い閃光が軌跡として宙に平行線を描き、それは反対側の塔の向こうへ続く。軌跡はしばらくすると消失し、後を追うことはできなさそうだ。
 大人の人間が五人相乗りしてもまだ余裕がありそうな、かなり大型のサイズ。そのトロッコが重力に逆らって奈落から垂直にやってきては、かくんと直角に曲がって前へ進む。速力はそれなりにあるようで、普通に走っても追いつけはしなさそうだ。
 猟兵たちも下方を望む。橋の跡から一段下に、急ごしらえのホームのような足場がある。融合した瓦礫同士が塔に接合させられており、無音でそこにたたずんでいた。助走をつけるには問題ないだろう。
「……乗れってことか?」
 行く先はシェリーが碧い炎に包まれた塔のさらにその向こう側。彼女を探す上でトロッコに乗るのは必須かもしれない。……誘導されているような薄気味悪さも感じるが。
 アダムが一歩、前に出た。
「止まらずに行きましょう。もしかしたら、この先にいるかもしれませんし。……俺も行きます!」
 止めたところで退かなさそうな勢いだ。だが、早とちりをしでかすような不安さは幾らか消えかけていた。
 スピードを緩めることのない一瞬の通過。爆発的な速度で宙を駆け、碧の火花を巻き散らすトロッコに向かって彼らは走り出す。
メンカル・プルモーサ
【WIZ使用・連携、アドリブ歓迎】
(トロッコを見つつ)……どういう仕組みなんだろう、あれ……特にあの軌跡…
まず、タイミングが一定かどうか計ってみるかな……
一定ならトロッコの周期を、一定じゃなければトロッコが出現してからこっちに来るまでの時間を計測……
箒に乗ってタイミングを合わせて…箒を圧縮術式に収納してトロッコに「落ちる」ようにしてトロッコに乗り込む…垂直にやってくるときに乗れるとそれが一番楽なんだけど……

…なんにせよ……運動あんまり得意じゃないから…走って乗るより…こっちの方が確実……
乗れたら行先に注目……あとこれ…終点でちゃんと止まるのかな……?
私は飛んで脱出できるけど……


シュトフテア・ラルカ
この先はこのトロッコに乗っていくですか。
またいかにもな遺跡ギミックなのです…。
とにかく、彼が彼女のもとに行けるよう、露払いはしっかりしてあげなければ。
渡り終えた場所にいなかったのは不安ではありますが、先を急ぐしかないのです。

トロッコに乗り込んだらUCを展開。周囲を守るように随伴させるです。
サーチドローンも展開し、先行させて周囲の罠などの警戒を行うです。
【第六感】で危険を感知したらできれば罠などが発動する前に撃ち抜くです。
発動させてしまったとしても【二回攻撃】で確実に。
石橋を叩いて渡るくらいの気持ちでよいのです。急ぐのは確かですが、焦りも禁物。
確実に行くですよ。
※アドリブ、絡み歓迎



●塔から飛び立ちて
「この先はこのトロッコに乗っていくですか。またいかにもな遺跡ギミックなのです……」
 虚空の上を往くトロッコを見下ろし、シュトフテア・ラルカ(伽藍洞の機械人形・f02512)は呟いた。音を立てて直線状に走り去っていくそれの一台を見送ると、視線は滑らかに向こう側の塔の入口に移る。
「……先を急ぐしかないのです」
 ここまで来てもシェリーは発見できなかった。その不安を掻き消すように、彼女は意識してトロッコを見つめ直す。
 同様に、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)も奇妙な車両を眺めていた。依然として飛行式箒【リントブルム】に横乗りしたまま、唇を一文字に結ぶ。
「……どういう仕組みなんだろう、あれ……。特にあの軌跡……」
 研究家としての技術への興味からか、あるいは単に納得がいかないからなのか、車両に感じる思いは尽きそうにない。車輪が残した線の碧い色が眼鏡に映った。
「さて……どうやって乗るかだね」
 頭を振って気を取り直してから、トロッコの発生源を探る。
 塔に接合されたホームの奥、ちょうど今居る塔の真横からそれはやって来ていた。奈落の底に碧い光が見え、激しい音とともに空間を縦に走行している。所定の高さに達すると曲がるらしい。
「……まずは、いろいろ測らないと」
 ぐっと眼鏡を押し込む。情報収集の機能を持つ『アルゴスの眼』は距離や光度、果てはトロッコの速度を示す情報をレンズ上に投影し、青緑の文字がそのたびに瞬く。
 メンカルが最も気になっているのはトロッコの出現タイミングだ。飛び移るにしても、周期が存在するならいくらかやりやすい。存在しないと判明しても、それならそうと対応できるだけましだろう。
「観察ですか。私も手伝うです」
 下方を覗き込む彼女の脇にシュトフテアが歩み出た。メンカルが何気なく見つめる中、シュトフテアが学園服に付随する外套を翻す。
 蜂型のガジェット群が彼女の手の甲から飛び立ち、一度に降下していく。
「あべいゆちゃん、お任せするです」
 普段は周辺を警戒する際に使用しているが、出現を感知するなら十分役立つはずと思っての支援だった。蜂型ガジェットは出現地点付近を周回して飛び回った。

 結論として、トロッコの出現には周期があった。一台が塔の向こうへ見えなくなってから一定時間の後、再び奈落に碧が現れていた。
 後はタイミングを計って乗り込むだけだ。そう意気込むとメンカルは箒の操縦を再確認し、純白のローブの袖口を引っ張った。
 同刻、シュトフテアが適度に後退してから身構えた。
 トロッコの進路を一瞥する。一台が走り去ったのを見届けてから、心の中で時間を数えた。彼女らが想定した数を数え終えると、下方で車輪が軋み、碧い火花が散る音が生じた。
「……今だね」
 静かな呟きと同じくして箒が飛び出し、メンカルを敢えて下へと連れていく。風に煽られながらも重心を前に傾け、トロッコを見ながら調整をかける。
 同時にシュトフテアも地面を駆けてから崖を蹴って宙へと躍り出た。外套を巻くようにして回収すると背面に取り付けた機械翼が露わになり、姿勢制御をものにして滑空する。
 狙うはトロッコが垂直面を上り、前進のために曲がる瞬間だ。下手に加速されるより早く乗り込めるのならそれが一番楽というメンカルの発案だった。
 風を切って進み、やがてメンカルはトロッコのちょうど真上の空間を沿うように確保する。咄嗟にローブの袖口に指を入れ、術式の一つを発動する。
 車両が大きく角度を転換したそのとき、箒の近くに歪みが生まれ、箒は吸い込まれるように消えた。足場を失ったメンカルは重力に従い、落ちるようにしてトロッコに乗り込んだ。運動は元々得意ではないから、走って乗るよりは確実。思惑通り、そのまま宙に放り出されることなく乗車できた。
「いてて……」
 落下時に打ち付けた箇所を摩りつつ、上空を見た。目を見開くと、慌てて起き上がって車両の端へ寄る。
 直後、滑空するシュトフテアがトロッコへと転がり込んだ。
「なんとか乗車には成功しましたね」
 そう彼女が言うや否や、トロッコは急加速を始め、虚無空間を進み出す。振り返れば、小さくなるホームと輝く軌跡のみが見えた。
 ホームにアダムの姿を確かめながら、シュトフテアは自身の銃型武器を複製して展開する。
「彼が彼女のもとに行けるよう、露払いはしっかりしてあげなければ。……確実に行くですよ」
 付け加えるようにして、蜂型ガジェットも解き放つ。石橋を叩いて渡るくらいの気持ちでいい。急ぐのは確かだが、焦りも禁物だ。
 周辺を警戒する彼女の隣で、メンカルは空虚な前方を望む。落下物やそびえ立つ塔があちこちに見られるが、行き先は不明のままだ。
「これ……終点でちゃんと止まるのかな……?」
 自身は箒で脱出できるが、果たして。彼女の不安な面持ちの中、トロッコは速度を緩めず突っ走る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ビードット・ワイワイ
UCにて加速装置を作成
これにて並走し【ダッシュ】しながら乗りけり
されど我の巨躯でも乗れるであろうか?
サイズ的に乗れなければトロッコに掴まりて目的地まで走ろう

【第六感】にて軌道を読み【念動力】【ロープワーク】にて姿勢制御を試みけり

ところで我らは帰れるのであろうか
迷宮がどれほどもつのか分からぬが急いだ方が良いであろう


峰谷・恵
「なんていうか、迷宮をアスレチックに作り変えてない?」

【POW】で挑戦。
トロッコが来るタイミングにあわせ、トロッコの進行方向に向かって【ダッシュ】で助走を着けて【ジャンプ】、そのままトロッコにしがみつき【怪力】でトロッコ内に這い上がる。
トロッコに乗ったらそのまま乗っていたら危険な地点か他のホーム状地点がきたら飛び降りる。それまで邪魔になる落下物障害物はアームドフォートとMCフォートで破壊して進む。

「単にアスレチック迷宮作りたいわけでも無いだろうし、何がしたいんだろうね」


ペーナァ・キャットハウス
色々落ちてくるゾーンの次は空飛ぶトロッコ?
ええね、それでこそアルダワのダンジョンやん!

初めて乗るトロッコに興味津々な様子
POW判定であまり考えず飛び乗ります

でも怪我したくないし…せや、あれ使ってもらお!

一度クラお姉ちゃんに変わってもらってトリニティ・エンハンスを起動
詠唱は“水よ、我が許へ集え"
【水の魔力】で防御力を強化

準備出来たらタイミングを見計らいトロッコにしがみつきます
保険にフック付きワイヤーも咄嗟に使える様にしておきいざという時はトロッコに向かって撃ち込む予定

無事乗れたら爆走しながらシェリーちゃんを助けに行きます

アドリブ歓迎です



●爆走トロッコ
「いろいろ落ちてくるゾーンの次は空飛ぶトロッコ?」
 視界を猛スピードで横切るトロッコに、ペーナァ・キャットハウス(お外でゴロゴロ・f05485)は目を輝かせた。
「ええね、それでこそアルダワのダンジョンやん!」
 トロッコに興味津々といった様子で肩が揺れ、通過するそれを逃さずに目で追いかける。乗るのはこれが初めてだった。
 興奮を隠し切れない彼女の後方で、どしんという音と揺れが起こる。
「されど、我の巨躯でも乗れるであろうか?」
 橙の目で複数の車両を捉えながら、ビードット・ワイワイ(根源的破滅招来者・f02622)が前進する。脚部に備わったホイールは凹凸ある地面で回転し、彼の体を振動させる。このホームも陥落する危険はなさそうだ。
 しかし、未だに地響きらしい音は続いている。微かな喧騒を聞き流しつつ、峰谷・恵(神葬騎・f03180)は全体構造を見回した。
「なんていうか、迷宮をアスレチックに作り変えてない?」
 落下物まみれの橋の次は、ご丁寧に造られたトロッコ乗り場。まるで遊技場を形成する最中であるかのようだ。アームドフォートとMCフォートを展開して変化を警戒するも、現状は何も起きそうにない。今は先に進むのを、変化の発生原因も望んでいるということか。
「なるほどね。それじゃ、遠慮なく誘いを受けようか」
 朧にホームの外を眺め、奈落から車両が現れるのを今か今かと待つ。金属で覆われた箱の塊が視界に映った瞬間、恵は目を見開く。真紅に染まった瞳が虚空を見つめていた。
 ホームと同高度に到達すると、トロッコは急加速する。それを捉え、恵が地面を蹴った。
 ヴァンパイアの血統に覚醒した彼女の身体能力は著しい向上を見せ、爆速で走るトロッコに追いつくところだった。助走としては必要十分。勢いを保ちながらホームの端へ寄り、宙へ飛び出した。
 トロッコへと肉薄した彼女は空を掻くようにしてその縁に両手をかけ、化け物じみた握力で手を握り込む。怪力により腕の力だけで車両にしがみつくと、一気に全身を持ち上げて内側に這い上がった。
 大きく息を吐き、恵は覚醒を解く。再び固定砲台を構えて落下物や障害物に備える。相変わらずの虚空を見つめ、彼女は疑念を口にした。
「単にアスレチック迷宮作りたいわけでも無いだろうし、何がしたいんだろうね」
 本当にそんな目的ならこんな大掛かりなことはしない上、学生にも気を払うはずだ。不可解な現象が頭を悩ませるが、やはり真相はまだ掴めそうにない。冷静にそう結論付け、恵はアームドフォートの砲台を降りかかる微かな礫へと向けた。

 一連を見届けたビードットもまた、トロッコに飛び移る準備に取り掛かっていた。
「迷宮がどれほど持つのか分からぬ……が、急いだ方が良いのは確かであろう」
 倒壊に巻き込まれる危険性は残っている。緊急時にはグリモア猟兵のテレポートが発動できないことを考えると、やはり原因をさっさと討伐してしまうに越したことはない。
 ユーベルコードにより、ビードットは先ほどと同じく加速装置を召喚する。同様の手順を取り、効果のある箇所にそれらを装備していく。
 装置の点火は新たなトロッコの出現を待ってからだった。もう既に追跡可能な速力を出す方法は得ていたが、実際来る車両を目視しなければその進路は予測できない。
 やがて視界の端で一台が飛び出したとき、彼は第六感を頼りにホイールの可動部を動かして発進する。加速装置が熱を帯びる中、事前に予測した軌道に沿ってトロッコは走行した。
 ビードットがトロッコと並走し、次第に両者の距離は縮んでいく。それを見計らって、彼の重厚なアームが箱の縁に振り下ろされた。激しい振動と摩擦熱が彼を襲うが、最大限の速度で並走できたことで負担は軽減されていた。
 複数のアームで箱を掴むと同時に脚部の一部を中へと押し込み、実質的にビードットはトロッコに乗車する。さすがに入り切りはしなかったが、念動力による姿勢制御も合わせれば十分に安定するはずだ。
 橙の目を動かしつつ、ビードットは前方を確認した。

「よーし、うちも行くで! でもやっぱり、怪我したくないんよなぁ……」
 入念な準備体操を終え、いざペーナァもトロッコへ飛び出していこうとする。かなりの速度の物体に自分から当たりに行くことをふと思い返し、腕を組んで思い悩んだ。
 数秒して、ペーナァはあっと発し、手の平をパンと合わせた。
「せや、あれ使ってもらお! クラお姉ちゃん、ちょっと頼むわ」
 言うと同時に、彼女の目の色は藍から紫に切り替わる。別人格『クラ』はオーダーを認識し、ぶつくさ言いながらも『トリニティ・エンハンス』の発動に取り掛かった。
「水よ、我が許へ集え」
 一言そう呟くと、淡い水の魔力がペーナァの肉体を優しく包み込んだ。
 水の加護を与え、クラは彼女の内部へとまた戻っていく。ペーナァの瞳がまた藍色を取り戻してから、彼女は自信満々の笑みを浮かべた。
 出現したトロッコが通過する一点で待ち構え、ペーナァは身構える。やがてトロッコが差し掛かると、タイミングを合わせて彼女は飛びかかった。
 何回か体を車体にぶつけるが、彼女を保護する魔力により軽減される。
 だが、予想以上に突風が激しい。トロッコにしがみついた状態では満足に耐えられそうにない。
 手が滑り、トロッコからペーナァの体が離れる。だが、諦めて落っこちるわけにもいかなかった。
「こんなこともあろうかとや!」
 即座にフック付きワイヤーを取り、くるりと投げてフックを車両に引っ掛ける。確かな手ごたえを感じると、ワイヤーを手繰ってそこへと向かっていく。
 最終的に、ペーナァは潜り込むようにトロッコへと乗り込んだ。
「だいじょうぶやね……シェリーちゃん、助けに行くでー!」
 爆走するトロッコに乗り込み、猟兵たちはそれぞれ進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

乙雪・柚佳
キギ、ナミルと同行 アドリブ歓迎

うっわー!トロッコだ!洞窟探検に来たみたい!
っと、それどころじゃなかったね。シェリーちゃんを一刻も早く救い出さなきゃ。

垂直にトロッコがやってくるならその真上で待ち構えて曲がる瞬間に飛び乗れないかな?
UC蜘蛛の力で糸を出してトロッコのスピードを落すか、私の足の速さとバネブーツ、跳んだ後に羽を広げれば距離もスピードも稼げるね!

でもこれ一人で乗ってもダメだよねぇ…私じゃ他の人を担げないし。
ナミルちゃんキギさんの道具とかUCで私を繋いでくれたら、私が乗った後にどうとでもなりそうだけどなぁ…。


ナミル・タグイール
柚佳とキギと同行
トロッコにゃ!楽しそうにゃー乗りたいにゃ!
トレジャーハント感ありマスにゃー!
…でもどうやって乗ればいいにゃ?
二人になにか作戦ないかにゃーって聞きながら自分はトロッコをみてうずうずうろうろ
早く乗りたいにゃー 頑張ってジャンプで乗り込めないかにゃー
いい案が出るまでは暇そうに【黄金の鎖】で下からくるトロッコに鎖付きの錠前をポイポイ、外れたら回収
当たらないかにゃー(当たったら鎖でつながって引っ張られて消える猫)

なにかいい案がでたなら乗るにゃ!力仕事が必要なら任せろデスにゃ!
最終手段はジャンプチャレンジにゃー!【野生の勘】を信じるにゃ!


キギ・レインメーカー
どういう原理で浮き上がってるんだ?あのトロッコ…何はともあれどうにかあれに乗らないとね
【行動方針】
柚佳やナミルちゃんがトロッコに乗る算段があるみたいだから乗るのはそれぞれに任せようかな。
どうやって一緒に乗るかだけど「鍍金の鍵」で別空間に一旦移動してから運んでもらおうかな。
アダム君も必要なら一緒にどうかな?快適とは言えないけどね
トロッコに乗ってから「鍍金の鍵」から出てシェリーちゃんを探しに行こうか
【その他】
ナミル、柚佳と同行。連携、アドリブ歓迎です。



●虚空に向かって
「うっわー! トロッコだ! 洞窟探検に来たみたい!」
「楽しそうにゃー乗りたいにゃ! トレジャーハント感ありマスにゃー!」
 疾走する車両を塔から眺め、乙雪・柚佳(シトロンスカイ・f01966)とナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が歓声に似た声を上げたのはほぼ同時だった。それぞれの尾がぴんと立ったり左右に振れたりして喜びを示していた。
「どういう原理で浮き上がってるんだ? あのトロッコ……」
 それらしいギミックの登場に沸き立つ二人の近くで訝し気な視線を送るのはキギ・レインメーカー(オラトリオの探索者・f02371)だ。車両の形状やそれが残す軌跡をしばらく見つめ、適当に見切りをつけて言葉を零す。
「何はともあれ、どうにかあれに乗らないとね」
「あっ……確かに、それどころじゃなかったね。シェリーちゃんを一刻も早く救い出さなきゃ」
 キギの発言で柚佳は襟を正す。そんな二人に、ナミルは若干困り顔で尋ねた。
「でも、どうやって乗ればいいにゃ?」
 ナミルの問いにより、場は沈黙に帰る。
 うーんと考え込んだ二人をよそに、ナミル自身はトロッコをちらちらと見る。足は自然に動き、そわそわと落ち着きなくそれを見つめた。
「作戦が思いついたら教えて欲しいにゃ。……早く乗りたいにゃー。頑張ってジャンプで乗り込めないかにゃー」
 うろうろと動き回りつつ、元々の性格から我慢の限界はすぐに訪れた。黄金でできた鎖をカウボーイみたくくるくる振り回しては、トロッコに向かって錠前の付いた先端部を投げつけていく。
 だが、なかなか命中しない。距離が離れている上、例え命中しても外装に弾かれてしまい、上手く引っ掛からない。当たらないかにゃー、というもどかしさを含んだ声が虚空に響いた。
 目を細めて考えていた柚佳の視線は次第にトロッコの発生地点に移っていた。
「垂直にトロッコがやってくるなら……その真上で待ち構えて、曲がる瞬間に飛び乗れないかな?」
「方法としてはかなりいいんじゃない? 誰かが確実に乗れるなら、それでもいいと思うけどね」
「うん、私だったらたぶん行けるんじゃないかな、とは思うんだけど……」
 ユーベルコードとアイテムの併用で想定した場合、柚佳にとっては意外にも現実的な案だった。ただ、懸念点は別にあった。
「でもこれ、一人で乗ってもダメだよねぇ……私じゃ他の人を担げないし」
「それにホームからじゃなく塔から直接乗り込む以上、失敗したら余計カバーしにくそうだね。最低二人は欲しいかもしれない」
「んー……キギさん、私ともう一人をつなぐ道具とかユーベルコードってない? それなら私が乗った後にどうとでもなるはず――」
 言葉を言いかけたとき、柚佳の視界にナミルが回す黄金の鎖が映った。
「それだー!」
 ぱあっと明るい表情をつくり、柚佳は一気に駆け寄ってナミルの手を取った。
「ねぇナミルちゃん、その鎖って私の体に巻けないかな?」
「このジャラジャラかにゃ? たぶんできると思うデスにゃー」
「いいね! じゃあ早速試してみよう!」

 柚佳がナミルを捲し立てるのを、キギは後方から眺めた。一応フック付きワイヤーが手許にはあるが、ナミルが使い慣れた品ならそちらの方がいいだろう。一声かけて万一のために手渡しておき、自身の方針を二人に伝えておく。
「トロッコに乗る算段は固まったみたいだし、乗るのは君たちに任せるよ。俺はこれで運んでもらおうと思ってる」
 手のひらにかざしたのは、鍍金で覆われた小さな鍵。二人が承諾したのを確認してから、遠くで猟兵たちを見守る彼へと声をかける。
「アダム君! よかったら一緒にどうかな?」
「あ、ありがとうございます! ……それは?」
「触った人を安全な空間に送る鍵、ってところかな。決して快適とは言えないけどね」
「快適とは言えない……?」
 キギが付け足すように言ったその一文に疑問を抱きつつも、アダムは鍵に手で触れた。
 鍵に吸い込まれた後で目を開く。周囲は明るく幸せな雰囲気で厚塗りされているように見えたが、どこかそれは嘘っぽく、胡散臭い気もした。形容するなら、例えば――。
「安っぽい夢みたいな空間、ってところだよ。言ったろ、快適ではないって」
 転移してきたキギにアダムは腰を抜かした。

 キギとアダムの移動が完了した頃、同時に柚佳とナミルの準備も完了していた。
 崖際に立った柚佳はトロッコが昇ってくるのを待つ。背後でナミルが暇を持て余して鎖にじゃれついていた。
 やがてその姿が確認できると、彼女は大きく息を吸い込む。しっかり目標を目に捉え、駆け出して崖を蹴る。靴底に仕込まれたバネが一気に彼女を飛び出させた。
 空中で手をトロッコへ向ける。指先からは蜘蛛の糸が放たれ、それはぱしゅっと車両の側面にくっついた。
 同じくして展開するのはフクロウの能力。両腕に柔らかな羽が現れると、柚佳は空中で姿勢を取り直してから一直線に車両へと向かう。まっすぐに張った糸で最短距離を測り、フクロウ特有の無音飛行で距離感を掴む。曲がる瞬間を予測すると、体を傾けて内側へ突っ込んだ。
 即座に柚佳は腰に巻かれた鎖を揺らした。
「ナミルちゃん! 跳んで!」
「ジャンプチャレンジにゃー! こういう無茶は任せろデスにゃ!」
 恐れることなくナミルは塔から飛び出した。鎖を手繰って勢いを付加しつつ、重力も伴って加速度的にその中へ落ちた。
 直後、トロッコが急発進。凧のような状態にされる前になんとか乗り込めたが、本人は危機感を覚えていないようだった。
 発進してすぐに、キギとアダムがトロッコの内側に現れる。
「二人とも、無事に乗れたみたいだね」
「うん! 結構ギリギリだったかもしれないけど、まぁなんとかなったよ!」
「スリル満点だったにゃ! これぞ冒険って感じがするにゃ!」
 元気よく返事する二人に微笑み返して、キギは前を望んだ。
「それじゃ、シェリーちゃんを探しに行こうか」
 このトロッコが果たして彼女に続いているのかは定かではない。だが、まだまだ冒険は続くことははっきり決まっている。
 風を切り、彼らはまた前進する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

茅原・紫九
トロッコに追い付くだけの純粋な速度か、苦手だがやるしかねえな

踏み切り地点に塗料を塗り、素の自己強化も使って準備万端。
全速力で走ってホップステップ!いや三段跳びでなく普通に踏み切るけども。

もちろん空気抵抗やらをしっかり考えて空を飛ぶ(比喩なので飛んでません)
小手先の技量でなんとか出来る部分は全部やらねえとな



●用済みの駅
 茅原・紫九(風に流され来たる紫煙・f04064)は気だるげに後ろ頭を掻きながら、ため息をついた。
「トロッコに追い付くだけの純粋な速度か……」
 運動神経を必要とする直球勝負。ぼんやりした視界の端を車両の一台が過ぎていく。
「苦手だが、やるしかねえな」
 不得手ではあるが、先に進むために立ち止まるわけにはいかない。
 地面に落とすように呟いてから手に取ったのは身長の三分の二ほどの大きな筆だ。それを肩に担ぐと、トロッコの位置を確認しつつホームを駆ける。
「たぶんここだろ!」
 最接近するだろうという箇所を把握し、筆を床へ振り下ろす。先端に付着している塗料がぶち撒けられて花火みたく飛び散った。その後も数回塗料を塗りつけ、踏み切りの予定地をカラフルに染め上げる。自己強化の一つだ。
「小手先の技量でなんとか出来る部分は全部やらねえとな」
 最初から苦手とわかっていてそのまま挑むほど無策ではない。苦々しい事柄ならば少しでも手持ちのカードで軽減する方がまだ安心できる。
 踏み切り地点から歩いて離れる間も余念を欠かさない。
『トリニティ・エンハンス』を発動し、自身に風の魔力を纏う。状態異常力という名前の速力を付与し、自己強化を徹底させる。
 前へと向き直り新たなトロッコが来るのを待つ。ここから全速力で走ってホップステップで踏み切り、最後にはそこへ乗っかる。イメージ構築も完了だ。さすがに三段跳びでなく普通に踏み切りはするが。
 しかしそのとき、紫九は足裏に振動を感じ取った。良くない想像が頭を過ぎり、顔が引きつるのが分かった。
「……まさか、な?」
 そのまさかだった。
 揺れは次第に強くなり、しっかり堪えていないと倒れそうになる。先ほどまで異変のなかったホームに亀裂が走って今にも崩れそうな気配を漂わせていた。
 視界にトロッコが現れ、加速して進み出たのも同刻だ。助かった、と言おうと地震の中で足を突き出した矢先、塔との接合部が割れる。より激しい振動を伴ってホームが奈落に沈み始める。
「あーもう! ツキがねぇなオイ!」
 思わず出たやり場のない怒り。それとは別に、傾く地面を蹴って前に進む。不安定極まりない足場の上で紫九は脚を動かす。地響きと自分の足音が同時に聞こえた。ぐらつきながらも、彼女は着実に鮮やかな色彩へと迫る。
「間に合――ったぁ!」
 踏み切り地点に到達し、片脚に力を入れて大きく跳ねる。目の前には横切りかけたトロッコが口を開いていた。
 受け身を取って乗り込み、紫九は即座に後方を振り返った。轟音とともにホームは部分に崩れ、他の落下物同様に暗闇に消えた。
「死ぬかと思った……けど、ギリなんとかなったか……」
 息を切らしながら、彼女は胸に手をやった。
 トロッコはしばしの小休憩を紫九に与え、それでも到着地点に向かって走り続ける。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『初代『碧き魔女』ナタリー・アナスタシア』

POW   :    トライスペル
【詠唱短縮の為、初、中、上級の連続した魔法】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    世界終焉の日
【大規模殲滅魔法】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    碧き魔女の加護
【碧色の火炎弾】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎のような魔力領域で覆い】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠カスミ・アナスタシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●碧き魔女
 トロッコに身を委ねて数分、前方を警戒していた猟兵が状況の変化を報告する。
 先を覗けば、闇から出でたる柱に似た塔が見えた。この迷宮の基本構造だが、猟兵たちの居る方面の橋のみが崩れ、奥に位置する機構は健在だ。心なしか、床の面積が今までと比べ大きく感じる。
 空間内には二つの人影があった。待ちぼうけを喰らったかのように立ち尽くしているのが一人。もう一人は床に突っ伏していた。
 詳細を視認できる距離に入る。凝視し叫んだのはアダムだった。
「シェリー……!」
 途端にすべてのトロッコがその塔に吸い寄せられる。新たに生じた引力の仕業にも思える、強制的な力によるものだ。最後には車両から投げ出されるようにして、全員がそこへ集結させられた。
 各々の対策を取って着地する猟兵たちをよそに、アダムは倒れている彼女へと駆け寄った。全身に魔弾を受けた痕跡が痛々しいが、まだ息はある。ひとまず一息吐いて、それから憎悪を込めた目でその人物を見上げる。
 妖艶な魔女帽子とドレスで着飾ったオブリビオン――『初代『碧き魔女』ナタリー・アナスタシア』はその視線を無視し、猟兵を無感情に眺めた。
「お疲れ様、あなた方の力はよく見させてもらったわ。……やはり、弱者を餌に釣るのが効果的みたいね」
 アダムとシェリーを一瞥。冷酷な目にアダムは怯んだが、決して退くことはなかった。
「二者を分裂させるように迷宮を崩すのは骨が折れたわ……でも、これだけ集められたなら甲斐があったものよ。一方を捕らえ、もう一方を引き込む動機にさせる……直前で立場が入れ替わったのは想定外だったけど」
 それも誤差の範囲、と一蹴した後、再びナタリーは猟兵たちを見据える。
「私が求めるのは猟兵、あなた方の命とそれに応対したという経験。どうせ地上に向かうなら、知識を備えていっても損はないもの。ここまでの消耗と制限された空間で、どれだけ抵抗できるかしら?」
 杖を床に向けると、碧色の火炎が一帯を包んだ。延焼はなさそうだが、自然と消えることもなさそうだ。
「俺らは眼中に無しかよ、ナタリー・アナスタシア。小さい頃から昔話で聞いてたけど……あんた、本当に性格が悪いのな」
 シェリーを肩に担ぎつつ、アダムが呟く。しかし、一般学生の直接攻撃が無力なのは理解している。後ろ歩きをしながら、彼は猟兵たちに頼み込んだ。
「……お願いします。俺にできそうなことなら全部やります。だから、あいつをぶっ飛ばしてください……!」
 健気な声を受け、猟兵たちは前へと歩み出る。
 卑劣な魔女は杖を構え、碧き波動を空気に散らした。
峰谷・恵
「消耗?あれで?魔女はコメディも嗜むようだね」

血統覚醒で吸血ゾンビと嫌っているヴァンパイアの力を引き出して戦う。
MCフォートの連射で敵に圧力をかけながらアームドフォートの砲撃(範囲攻撃、2回攻撃)にヴァンパイアの力を乗せて碧色の炎へ放ち、敵の魔力領域を乱して敵の戦闘力強化打ち消しを図る。敵の魔力領域が消えたら全射撃武器で敵に一斉射撃(一斉発射、鎧砕き、誘導弾、鎧無視攻撃、2回攻撃)を仕掛け、他の猟兵が攻撃を仕掛ける隙を作る。
敵の攻撃は極力回避。かわしきれない場合ダークミストシールド(盾受け)とマント、空間活動用改造ナノマシン、コード【神を穿つもの】、喰精紋の4重防具(オーラ防御)で耐える。


ペーナァ・キャットハウス
ペナ、こいつムカつくからオレにやらせろ
え、こういう悪い魔女をやっつけるのが“ゆうしゃ"の役目だって?
あー…細かい事はいいんだよ!
今回はオレが相手になってやるぜ

魔女が撃ってくる火炎弾は見切りで避ける
こいつは戦闘が始まる前に一度その魔法を使ってみせた
その時の挙動や炎の速度等を思い出し逃げ足等も使っていく

オレが使うのは闇属性の破壊光線
火炎弾と勝負だ
今のオレが撃てる光線の数は95発
内25発を「誘導弾」で奴が撃った火炎弾の着弾地点に向けて撃ってみる
恐らく何かの領域になっているだろうし地面ごと魔法効果を打ち消せるか試す
残り70発は魔女に向けて撃つぜ
アダムとシェリーの分まで残弾ありったけブチこんでやるよ


シュトフテア・ラルカ
はい、私達に任せるです。
魔女だかなんだか知らないですが、オブリビオンである限り、倒すだけなのです。
知識と経験を得てからというのは考えているようですが…。
この程度で消耗させたと見て出てくるには、猟兵のことを少し甘く見すぎなのですよ。

UCを展開、【念動力】で魔女の周囲にと自身の周りに複製した銃を配置
自身の周りの物は追随させ援護するです。
【武器落とし】を狙い【スナイパー】で杖を狙い撃ち、敵の行動を阻害。
周囲に配置した銃からの【援護射撃】をもらいながら、【二回攻撃】で手数の暴力で押し切るです。
足と攻撃の手を止めている隙に彼女の救出をお願いするですよ。

※アドリブ、絡み歓迎



●碧い火炎
 碧を纏ったナタリーに対し、嘲笑を飛ばしたのは峰谷・恵(神葬騎・f03180)だった。
「消耗? あれで?」
 俯き、口許を手で隠す。指の隙間からは鋭い口角が覗いていた。
 ひとしきりわざとらしく馬鹿にしてから、ようやく顔を上げる。
 恵はもう笑っていない。紅い瞳でナタリーを睨み、積もりに積もった殺気を晒す。口許は侮蔑に歪んでいた。
「魔女はコメディも嗜むようだね」
 ヴァンパイアなど普段は耽美趣味なだけの吸血ゾンビとしか思わない。けれど、その血は確かに継承している。忘れたいほどの自分の性質だが、舐め腐った相手に出し惜しみはしない。
「全くですね。この程度で消耗させたと見て出てくるには、猟兵のことを少し甘く見すぎなのですよ」
 同調し、シュトフテア・ラルカ(伽藍洞の機械人形・f02512)が前に進み出た。
 敵を視界内に捉え、その近距離にいるアダムとシェリーを見る。じりじりと退きつつあるが、まだ巻き込まれる危険は残されている。まずは彼らを下がらせなければ大規模な攻撃はできない。
「……私たちに任せるです」
 お願いしますと頼まれれば期待に応えねばなるまい。
 静かな決意とともに、シュトフテアは再び敵へ目を向けた。地上へは知識と経験を得てからという考えには頷けるが、それだけ巧妙という危険も含んでいるかもしれない。
「魔女だかなんだか知らないですが、オブリビオンである限り、倒すだけなのです」
 瞬時に展開される二十数個もの試作銃器。全ての銃口は敵に突きつけられていた。
 ナタリーが半身下がるより早く弾丸が放たれる。同時に半数の銃がナタリーを取り囲むように動いた。念動力を巧みに操り、自身も適切な位置へと馳せる。
 文字通りトリガーは引かれた。
 各々が戦闘態勢を整える。ペーナァ・キャットハウス(お外でゴロゴロ・f05485)もそれに応じて身構える中、内なる声が頭に響いた。クラの声だ。
(ペナ、こいつムカつくからオレにやらせろ)
「え、こういう悪い魔女をやっつけるのが『ゆうしゃ』の役目と違うん?」
(あー……細かい事はいいんだよ!)
 半ば強引に説得し、クラはペーナァと入れ替わる。瞳は紫の彩を放つ。黒のパーカーを民族衣装の上に通してから、彼女は猫耳の付いたフードを被った。
「今回はオレが相手になってやるぜ!」
 気合を入れて声を張り、ナタリーへ向き直る。
 シュトフテアが囲ませた銃器を薙ぎ払うようにして火炎弾が飛ぶ。煌々と燃える碧は操作者である彼女自身に襲来する。地面に落ちた銃を一度引き寄せつつ後方へ退避。回避には成功したものの、炎に似た魔力領域は確実に侵食を進める。
「そちらこそ、私を侮らないことね」
 冷え切った表情で杖を構える。宝玉に眩い炎が灯った。
 その光景に既視感を覚え、クラは目を見開いた。
「来るぞ!」
 クラが短く発した直後、火炎弾が連続して横薙ぎに放たれる。発動手順は戦闘前に使った魔術の挙動と同一だった。
 来ると知っていて躱し切れないほど強大な攻撃ではない。研ぎ澄まされた警戒心で、猟兵たちは滅多矢鱈な魔弾群を避け続ける。しかし、碧い炎は着弾地点を次々と焼く。
「うわぁっ!?」
 悲鳴を上げたのはアダムだ。自力では動けないシェリーを担ぐ彼のすぐそばを火炎が過ぎた。それだけではなく、燃え盛る火の手が邪魔をして退路を塞いでいた。
 気が付けば、周囲は彼女の魔力領域で囲まれている。悠然と領域上を歩き、ナタリーは見下すように前景を眺めた。
「威勢が良くても、足場を奪われては何もできないでしょう?」
「なら、取り戻せば問題ねぇな!」
 破砕音と同時に、炎上箇所を破って土煙が上がる。
 煙からはクラが飛び出す。領域の一点へ、そちらを見ないまま手を開いた。
「黒き光よ、地獄より来たれ!」
 色彩を跳ね除ける暗黒が手のひらで起こる。闇に属する破壊の光。それは線となって空中で湾曲し、突き刺さるに似た軌道で地面を抉る。誘導の特性が込められていた。
 地形破壊が領域の破壊に結び付くことを目の端で捉え、クラはしたり顔で次の炎に手を向ける。
 当然、敵もそれを黙って見ていられるはずもない。眉一つも動かさず、ナタリーはクラを見据えて杖の宝玉を差し向ける。
 直後、半身を撫でるような銃撃がナタリーを襲う。初動に遅れて数発に貫かれるも、片腕で魔力の壁を生じさせて耐久する。
「そんな手だけでボクらが引っ込むと考えてるなら、あまり賢くはないね」
 無間の銃撃にやっと区切りが来て、魔女は声のした方面を見返した。
 紅の瞳を輝かせながら、炎を払って恵が躍り出る。肉体から伸びる極太の機関砲が稼働し、複数もの銃口でナタリーを狙う。射出される幾多の銃弾は圧力となってその動きを封じる。
 好機を見逃さず、アームドフォートが駆動する。全身に備えられた砲台で、アダムを囲む広域の火炎に砲撃を放つ。そこにはヴァンパイアの力が加算されている。魔を穿たんとする魔の力により、着弾した弾丸を起点として炎は消滅する。
 一瞬、アダムが恵を振り返った。彼女が無言で下がるよう指示するとアダムは頷き、シェリーを連れて猟兵たちの後方へと逃げる。
 それを見届けてから、恵はナタリーに鋭い視線を向けた。
「さて、お遊びなしでいこうか」
 言葉の裏には明確な殺意が潜む。
 ナタリーの足元に広がる魔力領域は未だ健在。照準を定めてアームドフォートの砲台が動くと、数秒後には火を噴いていた。
 回転砲身の振動も止まっていない今、ナタリーに対抗策は立てられない。血統のエネルギーが領域を乱し、伴って魔術作用も消え失せる。
「ボクも聞いてみようか……どれだけ抵抗できるかな?」
 アームドフォートの狙いを切り替え、装備兵器は総じてナタリーへ構える。発砲音は絶えず響き、怒涛の連続砲撃が続行される。
 継続してナタリーは防御障壁の展開に注力する。
 そんな状態では、背後を取るのも容易だった。
 宙に浮かんだ銃器の群れが彼女の周囲を取り囲む。銃口は頭部を確実に狙っていた。
「振り払われようと、何度でも繰り返すのみです」
 シュトフテアの呟きと銃器の一斉射はほぼ同時だった。ナタリーは殺気に勘付いて体をずらす。だが、弾丸の多くはそのまま肉体を撃ち抜いた。
 あくまで顔つきは崩さずに、彼女は自身を狙う銃器を睨む。恵の連撃も止まず、次第に防戦一方へ追い込まれる。
 その様子を捕捉し、シュトフテアはナタリーに沿うように地を駆けた。自身の周囲に残した銃器を操作し、機を伺う。
 策略を感じ取ったナタリーが彼女と視線をかち合わせた。二方向からの攻撃に耐えながら、ナタリーは反撃に出ようとシュトフテアに杖を向ける。
 シュトフテアが待ち望んだ瞬間だった。
 携行させた銃をくるりと回転させ、軽やかに射撃に転ずる。照準はナタリーの手許――杖に向けられていた。
「本命はこっちなのですよ」
 狙い撃たれた弾丸が白い手の甲を貫き、ナタリーは杖を取り落とした。
 展開されていた防御障壁は瞬時に解け、これまで防がれていた攻撃が次々と被弾する。
 好機以外の何物でもない。クラは手の内に魔力を込めながら、ナタリーの正面へ駆けた。
 やがて魔女の顔がよく見える位置に立つと、片腕をまっすぐそちらに向けた。
「オレが今撃てる光線の数は九十五発。うち使ったのは二十五発」
 主な使用用途は領域の打ち消しに限っていた。
 確実に当てられるタイミングを計った方が、沸々と煮え立つ怒りも伝わるからだ。
「残り七十発……アダムとシェリーの分まで、残弾ありったけブチこんでやるよ!」
 何の罪もなく振り回された二人。具体的な思いを述べるには語彙が足りないが、間違いなく巻き込んだ彼女にはムカついていた。
 差し出された手からは破壊光線の一群が慈悲なく放たれる。炎の煌めきを摘み取って宙を走り、無防備になったナタリーを喰らう。一連は獲物に齧り付く獣に似て、挟み込むようにして着弾する。逃れる術など残されていなかった。
「火炎弾との勝負……オレらの勝ちだな」
 破壊光線群が命中する瞬間、クラはナタリーの表情が崩れるのを初めて目に収めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

メンカル・プルモーサ
…ふーん…そっちが初代魔女ならこっちも初代魔女…
…私の力が知りたいのなら……その身をもって教えてあげる……
【愚者の黄金】を発動……黄金の柱を幾つも立てる……トライスペルや世界終焉の日に対する盾に使えるように……
(トライスペルは初級が柱に当たってる間に退避する)
逆にナタリーが柱を盾にしようとしたら容赦なく柱を消す……
碧き魔女の加護で地形を魔力領域で覆ったら…【尽きる事なき暴食の大火】をぶつけて地形と魔力を燃やす…
戦闘の間にナタリーの魔術の癖を分析……【崩壊せし邪悪なる符号】で
ナタリーのUCを相殺する……特にと世界終焉の日が危険だから…重点的に…相殺……そのまま妨害する…


茅原・紫九
つまり俺達でレベリングがしたかったと言う話か
それ自体は納得だが、勝率100%のところで稼がねえとお陀仏だろ

戦闘は中距離での弾の打ち合いを主とする。
魔術師は近距離に弱いなんざ向こうも折り込み済みだろうし対策しているはずだ。
それなら負けねえように相対して相手の魔力切れやスタミナ切れを狙う。

撃ち合いは回避に重きを置いて、無理はせず確実に攻撃していく。
たとえ相手が底無しの体力だとしても、長期間の戦闘で隙がないなんてあり得ねえ。精神的動揺、味方の一撃、戦況が動いたら素早く対応する

まとめると攻撃を混ぜながらの回避を続け、隙が出たら叩く形になるか



●観測、分析、突破
「ナタリー・アナスタシア……遥か昔から受継がれる魔女の系譜の始祖にして、魔術の達人……。うん、アルダワの伝承上の存在と同一だね……」
 学園内で学んだ知識を遡り、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は呟いた。眼鏡を通して情報を照らし合わせてみたが、やはり合致する点が多い。
「生前は知識に執着があったみたい……性格悪いのも同じみたいだけど……」
「知識か……確かにそれっぽいこと言ってたな。俺らでレベリングがしたかった、みたいな話」
 彼女に応じるのは茅原・紫九(風に流され来たる紫煙・f04064)だ。相槌を打ちつつ、正面への警戒は怠らない。
「それ自体は納得だが、勝率百パーセントのところで稼がねぇとお陀仏だろうに」
 自分の実力を過信しているのか、もしくは仕方なしにこの手を打ったのか。おそらくは前者だろうと結論付け、適度に脱力して前を見据える。
「……来る」
 メンカルが短く発した。
 後ろへ倒れかかったナタリーは魔術で姿勢を補助し、最終的には再び地に足を降ろす。猟兵の攻撃を受けてもなお、涼しい顔でこちらを睨んだ。
「どうやら悠長な方法はあまり適さないようね」
 杖の先端に取り付けられた碧い宝玉を撫で、それを猟兵たちへと差し向ける。
「力のある人たちね……容赦はしないわ」
「最初からそうしてりゃ良かったんじゃないのか?」
 煽るような紫九の言葉にも目立った反応はない。ただ神経を研ぎ澄まし、彼女は武器を持った腕を奥へと引いた。
「……そっちが初代魔女なら、こっちも初代魔女……」
 相手の動きに合わせ、メンカルも杖を構える。
「……私の力が知りたいのなら……その身をもって教えてあげる……」
 水色の鎖の装飾がしゃらりと揺れた。
 ナタリーは目を見開き、宝玉から淡い黄色の玉を振るう。内部で火花散らす音を立てながら、それは不安定に空中を駆けた。
 メンカルと紫九にも同様の攻撃が迫る。紫九がメンカルを連れて退避しようとしたとき、メンカルは詠唱する。
「世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金――!」
 杖を地面に打ち立てる。すると黄金が地面から伸びて柱となり、玉に対し盾となった。着弾後、魔術の弾丸はナタリーの力により威力と規模を増していく。上級魔法の域に達したとき、柱は粉々に粉砕される。その前に二人は別の地点へ移動していたが。
 轟きとともに黄金の柱はいたるところから隆起する。幾多もの黄金柱は戦場である塔内部の様相を大きく変え、ナタリーの魔術の射線を一方的に塞ぐ形となった。
「さてと、俺も適当にやらせてもらいますかね」
 フランクに言い切ってから、紫九はメンカルの傍を離れて走り出す。彼女はナタリーを指して腕を突き出した。
 指の先端から放たれたのは特殊な感情を基にした魔弾。対象に向かって飛び、速度を増しながらナタリーを包むように拡散する。ある種の好意を原型とするこの術に深い思考は必要ない。フィーリングで構わなかった。
 気配を感じ取り、ナタリーが魔弾へと振り返る。降りかからんとするそれらに魔法障壁を展開するも、一部が潜り抜けて彼女を殴りつけた。
 ドレスを翻して傷口を隠し、ナタリーは術の使役者を見据えて杖を構える。次の瞬間にはもう既に、紫九が立つ地点に魔法が撃ち出されていた。
 気怠そうな目で術の発動を観測した紫九が反射的に後方へ跳び退く。直後、爆音と同時に地面が砕ける。再度視界に捉えた魔弾は破壊と力の増幅を続けていた。
「危ねぇー……予兆が見えてよかったよかった」
 即座に切り替え、彼女も攻撃に転じる。魔弾を放ち、相手に休む暇を与えない。
 攻撃が防がれた後、紫九はナタリーの観察に集中。魔術の予兆である杖を構える動きを超速で切り取り、方向などを読んで回避に移る。
 狙うのは相手の魔力切れやスタミナ切れ。例え相手が底なしの体力だったとしても、何かのきっかけを待ってから攻めればいい。それまでは回避中心の戦法が有効だ。
 紫九が耐久戦を仕掛ける一方で、メンカルは支援と分析に徹する。黄金柱の生成により盾を創り出しつつ、敵の一挙一動を見逃さない。
 情報が書き連ねられていくレンズ越しに、ナタリーが杖を掲げるのが見えた。新たな行動。メンカルの脳裏を嫌な予測が過ぎる。
「……離れて!」
 彼女が叫んだ直後、ナタリーを中心として爆炎が生じる。白い半球状のドームは爆ぜながら周囲を飲み込み、景色を光の中に消し去ってしまう。
 『アルゴスの眼』で魔術の解析を進めるメンカルの元にも爆炎は迫る。ドームが最接近するまで、視界内に文字列を綴るのを中断しない。
 いよいよ飲まれるというとき、彼女は四方と上方を囲むようにして黄金を創造し、箱に閉じこもった。
 空気の揺れが収まったのを確認し、黄金を自壊させて外に出る。辺りの地面は一段階剥げ、隆起させた柱も酷く傷ついていた。
 猟兵はメンカルの一声で退避できたが、果たして巻き込まれて無事でいられただろうか。その効果を把握し、ナタリーは再度杖を掲げた。
「悪いけど、特に代償があるわけじゃないの。思いのままに発動できる」
「……させない!」
 レンズへの記述がぴたりと止んだ。解析完了のサインだった。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理――!」
 詠唱を終え、傾けた杖から魔術を繰り出す。眩い光に対し、縛るように取り付いて構成要素を分解し始めた。特定魔術の発生を阻害する術に、ナタリーは呆気に取られた。
「こんなことが……!」
「隙だらけだぞ、いいのか?」
 好機と判断し、紫九が一気に彼女へ肉薄する。拡散する魔弾を撃ちながらマジックソードを抜刀すると、刀身がぎらりと妖しく煌めいた。身体強化と魔力エンチャントを済ませた状態。持てる力の全てを叩き込む準備はできていた。
 僅かな抵抗として、ナタリーが身を硬く寄せる。
 しかし、紫九にはそれも観測によりお見通しだ。
 防御の薄い部分を数点、紫九は斬り刻む。距離を取ってから振り返れば、魔女は赤い血を散らして地面に膝をつけていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キギ・レインメーカー
いやー随分と性格悪いみたいだね。知識云々については概ね同意だけど看過はできないかな。
【行動方針】
まずはアダム君とシェリーちゃんの安全優先で「逃げ足」を基に危険な場合の逃げ道を伝えとくよ
性格の悪いやつだから追い詰められたら何するかわからないしね

戦闘についてはナミルちゃんと柚佳がそれぞれ好き放題戦えるように俺は戦いやすい場所を作ろうか
「零れる雨」で一帯の蒼い炎をなんとかしようか
「属性攻撃」で炎「属性」を「攻撃」する雨に強化
この程度の炎で動きを封じてるつもりなら大したことなさそうだねって感じで「挑発」して
その隙に二人にとどめを指してもらおうかな

【その他】
ナミル、柚佳と同行。連携、アドリブ歓迎です


ナミル・タグイール
柚佳とキギと同行
じゃらじゃらキラキラにゃ!でも青は駄目にゃー弱そうにゃー
金ぴかじゃらじゃらのほうが綺麗で強いってことをわからせてやるマスにゃ!
・行動
突撃にゃパワーにゃー!
トライスペルな技が見えたら【捨て身の一撃】にゃ突撃にゃー!
中級魔法くらいまでは食らう覚悟で行くにゃ。上級撃たれる前にザックリして潰してやるデスにゃ!
近づけたら【呪詛】纏わせた黄金の斧で【グラウンドクラッシャー】でどっかーんにゃ!
金ぴか呪いパワーで魔法の妨害とかできないかにゃー。

周りに魔力領域が作られてたらそれも【グラウンドクラッシャー】で地形ごとどっかん
破壊なら任せろデスにゃ!
何でも歓迎


乙雪・柚佳
シェリーさんが見つかってよかった…。
ふぅ、弱者を餌に?そんな性格の悪い事をする奴が私たちに勝てるとでも?
もー、怒ったからね!絶対に許さないよ!

UCスピード重視で変態、芽衣乃刀を握りしめ一直線に敵めがけて突っ込む。
狭い洞窟だとしても私はぴょんぴょん飛び回れるからね、あなただけの領域ではないのだよ!
刀を振る際パワー重視で虎形態、手数重視で蜘蛛形態と使い分けるよ。私の融けるような形態裁きをくらえ!

無事戦闘終了後、アダムとシェリーにブランケットをかけてあげる。



●崩落迷宮からの救出
「これが、猟兵の力……」
 これまでを受け、ナタリーが零す。
 その言葉を逃すことなく聞き取り、狐の耳はぴくりと動く。尾で威嚇を示し、乙雪・柚佳(シトロンスカイ・f01966)が声を飛ばした。
「性格の悪いことをする奴が私たちに勝てるとでも? 弱者を餌にだなんて……!」
 シェリーを発見できたのは喜ばしい。だが、あの傷を見て黙ってはいられない。加え、一般人の学生を危険な目に遭わせたことに彼女は怒り心頭だった。
 敵意を強め、抜刀した名刀『芽衣乃刀』の柄を握り締める。この刀を握るのは本気で守りたいものがあるときだけだ。
「もー、怒ったからね! 今更謝ったって、絶対に許さないよ!」
 刀身をナタリーに向ける柚佳の隣で、キギ・レインメーカー(オラトリオの探索者・f02371)も彼女の言葉に頷いてみせた。
「うん、随分と性格悪いみたいだね。知識云々については概ね同意だけど、看過はできないかな」
 一理あるとはいえ、負けてやる義理はない。むしろそれに気付いて実行してしまっている相手ほど潰しておかねばなるまい。
 ナタリーが他の猟兵に気を取られている隙を突き、キギは後方でシェリーの治療に徹するアダムを顧た。
「アダム君、危険だと思ったらまずシェリーちゃんを連れて君たちで逃げてくれ」
「えっ、いいんですか?」
「君たちの安全が最優先だ。あいつは追い詰められてて、何をするかわかったものじゃないからね。ほら、卑怯な手も好んで使いそうだろ」
「なるほど……。でもどうやって逃げれば……?」
「そうだね……迂回するルートを通ってあの橋から出ていけばいい。まぁ、これ以上危険な目に遭わせないよう尽力するよ」
 キギが示したルートとは、戦場になっている塔の中央を避けて残っている一方の橋から抜けるというもの。グリモア猟兵のテレポートで安全地帯まで転移できればいいが、生憎猟兵以外を転送することはできない。本当に非常時なら自ら手を貸してくれるかもしれないが、グリモア猟兵は猟兵にも重要なため、下手に負傷されても困る。不安の残る避難指示ではあったが、アダムはキギの最後の一言に感嘆としていた。
 キギがアダムと話す一方で、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)はナタリーに見惚れていた。正確には、彼女の腰に巻かれたベルトの飾りに。けれど、普段のような沸き立つ興奮はない。
「じゃらじゃらキラキラにゃ! でも碧は駄目にゃー、弱そうにゃー……」
 やはりお宝は金ぴかに限る。そっちの方が強いに決まっているから。根拠はない。けれど、纏わせた宝飾品の数々が自分を強くしているのもまた事実。
 ナミルは黄金が煌めく巨大斧を肩へ担ぐ。柄の末端から垂れる鎖がじゃらじゃらと音を立て、塔内部の光で彫られたルーン文字に輝きが灯った。
 根拠がないなら、実際に証明してしまった方が早い。
「金ぴかじゃらじゃらのほうが綺麗で強いってことをわからせてやるマスにゃ!」
 口角を上げて歯を覗かせ、ナタリーへと一直線に駆け出していく。
「突撃にゃー! パワーにゃー!」
 猪突猛進する巨大なネコ科はあっという間に間合いを詰め、腰元に携えた斧を勢いのままに振り上げた。
 戦闘開始時とは異なり、ナタリーに毅然と振る舞う余裕は残されていない。ナミルのスピードに彼女は目を見張った。
「速い――けれど、それだけじゃ通らないわ」
 斧の軌道を読んで障壁を展開。硬い空気の層と黄金の斧が競り合う中、別方向から飛来する影をナミルは感知した。影を見やり、彼女はにぃっと笑う。
「あなたの相手はこっちにもいるよ!」
 柚佳の声だ。
 蜘蛛と梟を体に表出させ、素早く距離を縮める。行く先に飛ばした糸をぐっと引けば速度はさらに上昇。ナタリーを挟み込むように接近し、彼女は改めて刀を引いた。
 意識の散った状況で防御術の展開が間に合うはずもない。ナタリーが杖を振りかざす直前、柚佳はその懐に飛び込んだ。
 最接近が叶った瞬間、柚佳に蜘蛛の部位が現れる。
「私の融けるような形態裁きを食らえ!」
 秒単位での攻撃回数を増幅させ、魔女の胴に複数の傷を刻む。ナタリーの体が小刻みに揺れた。
 そこに暇なく訪れる第二撃。防いでいた斧が叩きつけられ、ナタリーは仰向けに吹き飛ばされた。装飾に付与された呪いも密かに彼女へと染み付く。
「ナミルちゃん! このまま押し切るよ!」
「はいデスにゃ! ガンガンいきマスにゃ!」
 息を整え、気合十分で足並みを揃える。
 だが、それは瞬く碧により遮られる。
「二人とも下がれ! 炎が来る!」
 後方で戦場を見渡していたキギが叫ぶ。視界の奥で光った碧――火炎弾の前兆だった。
 キギの呼びかけに応じて二人はバックステップを踏む。先ほどまで立っていた地点が焼き尽くされ、妖艶な炎が燃え上がった。
 炎の放射はそれだけでは終わらない。杖が中空へと傾けられ、射出される弾丸は放物線を描いて出鱈目に落下する。あちこちで火の手が立ち、猟兵たちの足場を奪っていく。
 見渡す限り碧き火の海。最後に自分の足元を燃やし、ナタリーはその光景を見回した。
「……狙い放題ね」
 こうなっては、猟兵たちも黙ってはいられない。
「炎くらい壊せばなんとかなりマスにゃ! 破壊なら任せろデスにゃ!」
 斧を振り下ろし地面を崩し、着々と鎮火を進める。ナミルの方法も間違いではないが、範囲が広大では切りがない。
 炙られた空気による熱気を浴びつつ、キギは炎の向こうのナタリーを凝視する。
「火で取り囲んで動きを制限し、自分は狙撃……確かだけど、やっぱり性根が腐ってるな」
 火炎が広がっていては、近接主体の猟兵が攻撃に加入できない。柚佳やナミルがそれぞれ好き放題戦えるよう、場の形成は肝要だ。
「これは俺の仕事かな」
 呟けば、頭上に雲が浮かび上がる。途切れ途切れだったそれは次第に纏まった暗雲に姿を変えた。そこからぱらりと落ちるは雨の雫。燃え広がった碧の一帯に垂れれば、炎はじゅっと濡れて消滅した。
 炎に対し攻撃的な雨。しばらく降り注ぐと、広がっていた火炎はみるみるうちに小さくなっていった。
「この程度の炎で動きを封じてるつもりなら、大したことなさそうだね」
 敢えて声を張ったのは、冷淡な顔をした魔女に聞こえるようにするためだ。
 飛び来る魔弾を寸でのところで躱し、キギは横方向へ走り出す。相手もまんまと挑発に乗ったというよりは、脅威となり得る技の排除が目的だろう。が、誘えたならそれでいい。
「やってやるにゃ!」
 ナタリーがキギに気を取られている隙にナミルが地を馳せ、すぐそこまで接近する。ナタリーは焦りの表情を見せたが、体を回転させると彼女へ向き、キギに放つはずだった魔術を撃ち出した。
 咄嗟の切り返しに、回避行動は取れそうにない。しかしナミルは怯む様子を見せず、むしろ魔術へと突っ込んだ。
「何のこれしきデスにゃー!」
 頭からぶつかっていく。初級から中級に進化し威力が増すも、彼女自身の勢いは衰えない。持ち前のタフさで耐え、目標に向かって足を踏み出す。
 ナタリーは魔術に送る力を強めようと試みる。そのとき、金縛りに似た感覚が彼女を硬直させた。染み付いた呪詛がナミルの接近により働いたのだ。
「どっかーんにゃ!」
 魔術が上級に達する前に、再び斧は振り上げられた。
 重い斬撃で宙に浮き、ナタリーの体には深い傷が残る。
「こうなったら、全員纏めて――!」
 吹き飛ばされながらも、彼女は杖を掲げた。その先端は白い光に溢れている。大規模殲滅魔法の前触れだ。
 限界値までの全ての力を捧げる渾身の魔法。それが発せられるタイミングで彼女の額に柔らかい物体――魔導書のページの一枚がぶつかった。
 するとナタリーはまたも動けなくなり、空中を無力に漂った。彼女は紙が来た方向を目で辿った。
 そこには書物からページを破り取ったキギが静かに立っている。発生させた突風に乗せ、捕縛作用の媒体としている魔導書のページを命中させた張本人だった。
「今だ!」
 キギが短く叫ぶ。
 誰よりも早く柚佳が反応し、一目散に駆けていく。狭い洞窟であろうと跳び回り、思うがままに行動できる能力。そこに仲間の協力が合わされば、敵が支配する領域など存在しない。
 蜘蛛と梟の力を発揮し、瞬時にナタリーの目の前まで肉薄する。
 碧き魔女へ迫る瞬間、刀を持つ手が虎に変貌する。橙と黒の縞模様が腕に走り、太刀筋はより一層鋭さを増した。
「これが私の力だよ!」
 知識を求めた敵に与える、多彩な応用から成る攻撃。それはナタリーの体を大きく薙ぎ、返し刀で中心を斬り抜ける。
 増強された二連撃に魔女は目を剥き、沈黙のまま地面と衝突した。やがて彼女の肉体は碧い靄に変化し、崩落しかけた迷宮に溶けていった。

 原因である魔女が討たれ、絶えず起きていた振動はしばらくして止んだ。
「終わったのか……?」
 座って辺りを見渡すアダムに布が被さる。柔らかな感触が手に伝わった。
「お疲れさま。……うん、終わったよ」
 大型のもこもこブランケットでアダムとシェリーを包んでから、柚佳は彼に笑いかけた。そう、終わったのだ。
 ブランケットの温もりに包まれたからだろうか。あまり時間を置かずして、昏倒していたシェリーが目を覚ます。アダムが「助かった」と伝えると、彼女は安堵の笑みを浮かべた。それを見てアダムも笑い返し、やがて笑顔は猟兵たちにも伝播する。
 こうして、崩落迷宮からの救出は完了したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月17日


挿絵イラスト