●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - ある小規模な「試練の洞窟」
千葉県に突き刺さった小さめの紫色の結晶体の前に二人の帯刀した女性が並び立つ。帯刀しており、長髪の黒髪でスーツ姿と二人の特徴はよく似ていた。片方は宮内庁の所属であることを示す職員徽章をつけており、それが二人の差だった。
小さめと言っても3階建てのマンション程度の大きさはあるそれを二人は見上げる。
「先行偵察を開始しましょう、アンジェ。あの魔女の用意した転移のルーンは持っていますね?」
二人のうち片割れ、宮内庁の職員徽章をつけている女性、中島・碧(宮内庁対霊害対策課戦闘員)が、もう一人に話しかける。
「はい。二人で行けるところまで突っ切って、危なくなればこのルーンで逃げる、で、いいですよね?」
もう片割れ、如月・アンジェ(退魔師)がポケットからラミネートカードを取り出し、振って見せる。そこには彼らの仲間である英国の魔女(高速記述者)が用意した転移効果のあるルーン文字が刻まれている。事前に刻んだ場所に転移するだけの簡単なものだが、緊急避難には最適だ。
「では、行きましょう」
二人は頷きあい、刀に手をかけながら結晶にぽっかりと開いた黒い穴の中に足を踏み入れる。
「内部は土の壁で囲われた洞窟そのものですね」
碧が壁に触れて環境を確認する。「試練の洞窟」は洞窟と名がついているものの、内部の構造は様々だ。土の壁で囲われた文字通りの洞窟のような洞窟もあれば、青空広がる町にしか見えない場所もあったりする。
今回はシンプルな土の壁で囲われた洞窟の見た目をしているようだ。
「そして、早速お出ましのようです」
アンジェが示した先から、一つ目のコウモリのようなクリーチャーが飛び出してきた。それも一体や二体ではない。
「飛翔する瞳、とでも呼びましょうか」
それに対して碧が最初に行ったのはネーミングだった。
「それで行きましょう」
アンジェはその提案に頷き、同時に抜刀して駆け出す。碧もまた抜刀し、これに続く。
飛翔する瞳と呼ばれたクリーチャーはこれに対し、距離を取りつつ目から赤い光線を放つ。
「くっ、熱……」
被弾したアンジェが思わず呟く。光線は文字通り光の速さで迫り、アンジェの回避を許さなかった。
しかもそれが絶え間なく発射されてくる。恐るべき連射速度だ。
アンジェは咄嗟に自身の持つ特殊能力である如月家の血の力を解放し、自身を白い粒子で覆ってこれを受け止める。
碧はそのアンジェの防御を頼り、一気に飛翔する瞳へ距離を詰める。
アンジェを追い抜き、一気に飛翔する瞳に刀を振るう。
数体の飛翔する瞳が弾け飛ぶが、そこに周囲の飛翔する瞳達は超音波を発し始める。
「しまっ」
それは催眠術が込められており、アンジェと碧に眠気を誘発させる。
その隙を逃さず、飛翔する瞳達は竜巻をまとって突進を仕掛ける。それは眠気で動きを止めてしまっていた二人に殺到し、二人を一気に後退させ、洞窟の外へと押し出した。
●現代神秘世界 - アジア - 日本 - 千葉県 - 如月討魔事務所
「よく集まってくれました、「試練の探求者」の皆さん」
世界中に舞い降りた未知のダンジョン「試練の洞窟」。その攻略のために結成されたアライアンス「試練の探求者」、その面々が最初に集められたのは、日本の対霊害組織「討魔組」の代表を務める如月・アンジェが保有する個人事務所だった。表向きは探偵事務所ということになっている。
「今回、まずは小規模な試練の洞窟の攻略を目指すようにと、国連から通達がありました」
アンジェが集まった面々に説明する。
「試練の洞窟」内部に侵入して探索魔術を使って内部の広さを測って洞窟を出て、を繰り返して分析した結果、「試練の洞窟」は外部から見た大きさ通りの規模を持っているらしいと判明している。
そこで、国連はまず、「試練の洞窟」を攻略すると何が起きるのか……。例えば、宝物が再充填されて再び攻略することを求められるのか、空っぽのまま放置されるのか、あわよくば消えてくれたりしないか、といったことを調査することを決定したのだ。その結果次第で、今後の「試練の探求者」の方針は大きく変わることになるだろう。
「そこで今回、首都の近郊に存在するという事情なども鑑み、この日本の千葉県に落下した小規模な試練の洞窟を攻略する事が決まりました」
先行偵察の結果、洞窟の入り口には飛翔する瞳と呼ばれるコウモリ型のクリーチャーが生息していることが明らかになっている。
彼らは数が多い上、その数を生かして、熱光線や催眠術で動きを封じ、竜巻をまとった突進で洞窟から追い出そうと画策してくる。
「ですが、何度か挑戦した結果、彼らには個々の役割があるようで、例えば竜巻を纏った飛翔する瞳は竜巻を纏っての突進をする役割のみを果たすようです」
と、アンジェ。
「つまり、私達が十分な数で突入し、飛翔する瞳を分断するように戦えば、それぞれの使ってくる技に対策するだけで十分に対処可能なはずです」
そう言うとアンジェはホワイトボードに簡単な図を書き始める。
「これが洞窟に入ってすぐのエントランスエリアです。迎撃用のクリーチャーである飛翔する瞳との戦闘エリアとなることを想定しているのか、かなり広めのエリアになっています」
アンジェはA,B,Cと記述した三つのマグネットをホワイトボードにとりつけてみせる。
「我々は部隊を三つに分け、洞窟に侵入すると同時に、広く拡散、それぞれ事前に決めておいた集団に攻撃を仕掛け、戦闘に突入します」
A班は竜巻を纏った突進を仕掛けてくる飛翔する瞳と、B班は熱光線を連射してくる飛翔する瞳と、C班は催眠術を使ってくる飛翔する瞳と対処することになるらしい。
ちなみに、C班の飛翔する瞳はB班ほどの発射レートではないなりに熱光線も撃ってくるらしい。催眠術で眠らせてくるだけだから安心、とはいかないようだ。
「また、私と碧は、遊撃部隊として三つの班をそれぞれ必要に応じて支援します」
ちなみに、碧は今は件の「試練の洞窟」の前でクリーチャーが外に出てこないか警戒しているらしい。
これまでそのような事例は発生していないが、念の為である。
「作戦の説明は以上です。それでは、「試練の洞窟」に向かい、碧と合流の後、「試練の洞窟」に突入します」
メリーさんのアモル
こんばんは、『試練の洞窟-The Cave of Ordeal-』へようこそ。
マスターを努めます、メリーさんのアモルです。
皆さんには早速「試練の洞窟」へ突入して頂きます。
最初のシナリオですので、簡単に遊び方を説明させて頂きます。
このゲームの能力はPOW、SPD、WIZの三つに分けられており、皆さんのキャラクターが持つマナ現象もPOW、SPD、WIZの三つのいずれかに分類されています。
そして、敵もPOW、SPD、WIZにそれぞれ一つずつのマナ現象を持ちます。
皆さんはシナリオに参加する時、一つのマナ現象を一つ選ぶことになります。すると、敵はあなたが選んだマナ現象と同じ能力(POWならPOW、SPDならSPD、WIZならWIZ)のマナ現象で反撃してきます。
今回の場合、敵の攻撃手段に応じて班分けされている設定なので、POWのマナ現象を使うならA班、SPDのマナ現象を使うならB班、WIZのマナ現象を使うならC班に所属することになります。
自身のマナ現象やアイテム、技能などを駆使し、相手のマナ現象に対策しつつ、自身の攻撃を命中させ敵を攻撃するように、プレイングを記述すると良いでしょう。
マナ現象を使わない場合は、プレイングの頭に「●POW」のようにどの能力に対処するのか宣言してください。
肝心の飛翔する瞳が各能力値でどのような攻撃を使ってくるかは下記リンクを参照して下さい。
●飛翔する瞳
https://www.anotherworlds06.com/coo/creature.html#wingeye
また今回のシナリオではアンジェと碧が同行します。
二人は下記のリンク先で見ることの出来るそれぞれ三つのマナ現象を持っています。協力を依頼すればあなたの能力と同じ能力(POWならPOW、SPDならSPD、WIZならWIZ)のマナ現象を使って支援してくれます。
必要に応じてプレイングに組み込んでください。
●如月・アンジェ(退魔師)
https://www.anotherworlds06.com/coo/npc_anje.html
●中島・碧(宮内庁対霊害対策課戦闘員)
https://www.anotherworlds06.com/coo/npc_aoi.html
それでは、健闘を期待しております。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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天星・雲雀
◎
洞窟ですか、道中や底がどうなってるかワクワクしますね!
退魔師の方と、霊害対策課の方、はじめまして!自分は狐火(オトモ)使い(?)の雲雀といいます。よろしくお願いします!
洞窟は、地層・材質・強度・天然構造・人工物によって、探索の仕方が変わってきます。
今回は、消し飛ばしても大丈夫という類の魔穴なので、退路以外は粉砕上等です!
入り口から行ける所まで一気に潜りますよ!オトモと牛さん!道中の物は蹴散らしながら突撃です!分かれ道では風の流れが強い方に進んでください。
ダンジョンというくらいなのだから崩落の心配は無いでしょうし。
マナ現象は、牡牛座落花彗星(POW)で、ゴーゴーです!
「洞窟ですか、道中や底がどうなってるかワクワクしますね!」
千葉県の「試練の洞窟」、その入り口の前で興味深そうにテンション高く喋るのは、ツインテールの和服猫耳幼女の見た目をした、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)だ。左眉から鎖骨まで続く刀傷が否応なしに目を引く。
「退魔師の方と、霊害対策課の方、はじめまして! 自分は狐火(オトモ)使い(?)の雲雀といいます。よろしくお願いします!」
雲雀は集団の代表を務める、アンジェと碧に近づき、自身の使役する狐火『オトモ』を連れながら挨拶する。
「えぇ、よろしくお願いします」
テンションの高い雲雀の挨拶にやや驚きながら、アンジェがまずこれに応じる。
「その、耳と尻尾、伊那(いな)さんのものに似ていますね。妖狐(フーヤオ)ですか」
一方、碧はやってきた雲雀を興味深く見つめる。
伊那さんこと、伊那・香里(かおり)さんは「試練の洞窟」以前にこの世界に迷い込み、宮内庁に保護されている妖狐だ。
「「試練の洞窟」出現以降、この世界に迷い込んだ異種族が霊害となるケースも増えています。皆が皆、あなたのように人類に友好的であれば良いのですが」
碧が嘆息する。
「碧さん、挨拶されているんですよ」
「あぁ、失礼しました。よろしくお願いしますね、雲雀さん」
アンジェに嗜められ、碧が慌てて、お辞儀する。
「いえいえ、大丈夫です。お仕事、お疲れ様です!」
考察好きの雲雀は、「試練の洞窟」により同時に発生したと言う人間以外の種族が出現する現象の頻発に対して、日本の討魔師を統括しているらしい宮内庁はその対処に苦労しているのだろうな、と思った。
「ありがとうございます。さて、そろそろいきましょうか」
碧が気を取り直し、試練の探求者の面々に向き直る。
いよいよ、「試練の洞窟」に突入するのだ。
三班が同時に「試練の洞窟」に踏み込んだ時、飛翔する瞳達が最初に敢行してきたのは、竜巻を纏っての突進だった。
「なっ、いきなり!?」
驚愕する碧。
これまで何度かの先行偵察では、飛翔する瞳は、必ず熱光線→催眠術→突進の順に行動してきた。
それゆえ、部隊はB班をやや先行させ防御の構えを取らせた状態で「試練の洞窟」に突入していた。
このままでは、一気にB班が洞窟の外に押し出されてしまう。
「ここはお任せ下さい!」
その危機にあって、堂々とB班の前に飛び出したのはA班の雲雀だ。
——洞窟は、地層・材質・強度・天然構造・人工物によって、探索の仕方が変わってきますが……
接近する飛翔する瞳を前に、雲雀は冷静に分析する。
——今回は、消し飛ばしても大丈夫という類の魔穴( ダンジョン)なので、退路以外は粉砕上等です!
故に。
「入り口から行ける所まで一気に潜りますよ! オトモと牛さん! 道中の物は蹴散らしながら突撃です!」
マナ現象、牡牛座落花彗星が発動する。
角が目立つ牡牛型の狐火を正面に出現し、さらに他のオトモ達もそれを援護するように出現する。
「力こそパワー、推進力の一点集突破です!」
そして、飛翔する瞳の突進に対抗するように、牡牛型の狐火とオトモ達が一斉に突進を開始する。
やがて、衝突する二つの群れの突進。
お互いダメージを与え、お互いに後退させ合う。
一見、拮抗するかに見えたその一進一退は、しかし、すぐさま崩壊し、飛翔する瞳が押され始める。
なにせ飛翔する瞳は自分自身が突進しているのに対し、雲雀の側はマナ現象により生まれた狐火をぶつけているに過ぎない。
その差は時間が経つほどに如実に現れ、最初に突進を敢行してきた飛翔する瞳の群れは雲雀により、どんどんと押されていった。
「今です、散開!」
その隙を逃さず、碧が号令し、三つの班が綺麗に分散する。
そして雲雀は、突撃を続ける牡牛の狐火を連れて、そのまま一気にダンジョンを降り始めた。
「分かれ道では風の流れが強い方に進んでください!」
「あ……」
その鋭い進撃を、止められるものなどいるはずもない。
「今回は、このエントランスエリアの制圧が主任務のつもりだったのですが……」
碧がポツリと呟く。
とはいえ、飛翔する瞳を一気に減らすことが出来たのは確か。
また、雲雀が戻れば、このエントランスエリアを制圧した後の作戦を決めるための役立つ情報が手に入るかもしれない。
今は、雲雀の帰還を信じて、この場の制圧を優先するのみだ。
大成功
🔵🔵🔵
天見・瑠衣
◎
「実戦を積ませたいのです 大丈夫 役には立ちます それに死ぬことはありませんから
弱音は無視してあげてくださいね」
そう、瞼を閉じ涙を流す女性から預かった少女 天見 瑠衣
配属はB班 死を憂う瞳(SPD)で挑戦
「視えてても無理なモノは無理ですぅぅ!?」
「こんな! 弾幕ゲー! 聞いてないもん!!」
「嗚呼、また一回死んじゃったよぅ……」
その瞳に己の死を何度も見せつけられ泣き喚きながら戦う天見 瑠衣
「n回……現実にならなくてよかったよぉぉぉ!」
「うぅ……また実戦だよぉ……」
少し時間を巻き戻して、突入前、洞窟の前で一人びくびくしているのは、討魔師の天見・瑠衣(泣き虫の刀使い・f37969)だ。外から何も知らず見ている分には、剣術と符術を操る平均的な討魔師に見える。戦士と言うには明らかに武者震いではなく恐怖で怯えている風だが、齢14歳と考えればこれくらい臆病でもおかしくはない。
そんな瑠衣の脳裏にまた浮かんでくるのは、自分がもっと小さかった頃の朧気な記憶。
「実戦を積ませたいのです。大丈夫、役には立ちます。それに死ぬことはありませんから、弱音は無視してあげてくださいね」
跡継ぎの生まれなかった討魔師の家である天見家に自身が預けられた時の恐らくは本当の母親の声。
自身を養ってくれた母曰く、瞼を閉じ涙を流す女性だったと言う。
つまり、自身が戦わされているのは、母親のせいなのだ、と瑠衣は思っている。
……とはいえ、それすらも、討魔師の世界ではありふれた話にすぎないのだが。
「さて、そろそろいきましょうか」
碧がその言葉を口にし、ついに部隊の突入が始まる。
「危ない!!」
「試練の洞窟」に突入した直後、突入への恐怖から思わず溢れた瑠衣の涙に、瑠衣はある光景を目にする。
それは、竜巻を纏って突入してくる飛翔する瞳の姿。
これこそが、瑠衣の血の力と目される能力で、本物の母親と目される女性が「それに死ぬことはありませんから」と言い切った根拠である。
涙に堪えた時、その瞳に未来を映し出す能力。
次の瞬間、それは現実となりかけ、そして、それを遮るように一人の猟兵が打って出たのは、ここまで読んでいる読者ならご存知のとおりだ。
「今です、散開!」
碧の号令に合わせて、瑠衣もまた、B班として、特定の飛翔する瞳群の前に姿を晒す。
直後、瑠衣の涙に、またしてもある光景が映し出される。
「視えてても無理なモノは無理ですぅぅ!?」
思わず叫んだ。
見えた光景は、飛翔する瞳から膨大な量の熱光線が放たれる光景だったのだ。
複数体の飛翔する瞳から放たれる1/10秒に一回の発射レートで放たれる超速の熱光線連射、その軌道の全てが瑠衣には見えていたが、あまりに回避は困難。
視界の中の自分は既に数十回死んでいた。
しかし、だからといって、死にたくない瑠衣である。
どれだけ回避が困難でも、避けるしか無いのだ。
「こんな! 弾幕ゲー! 聞いてないもん!!」
泣き言が洞窟内に響く。
しかし、見るが良い。B班の中で、この熱光線の弾幕を完全に回避した者が、瑠衣以外に何人いるだろうか。
生きるために無我夢中な瑠衣は瞳に映る予知をひたすら頼って攻撃を回避していく。
「嗚呼、また一回死んじゃったよぅ……」
死ぬ度に悲しみに苛まれ、涙はより溢れる。そして、涙が目から溢れれば溢れるほど、瑠衣の予知はそのパターンを増し、研ぎ澄まされていく。
結局、瑠衣は"現実には"一撃も負うことなく、自身を狙う飛翔する瞳を殲滅しきった。
「八十一回……現実にならなくてよかったよぉぉぉ!」
しかし、その安堵は一瞬の事でしか無い。
すぐさま再び、自身を狙う飛翔する瞳が現れ、熱光線が"自身"を殺す光景を目にすることになるのだから。
成功
🔵🔵🔴
徳川・翠
◎
「如月に中島。あの娘たちの手を借りたら実家がうるさそうね」
溜息まじりにぼやき、独力で戦うことを決意
「あの風力、1カ月2カ月じゃ足りなそうね」
【UC】を使用。3カ月分を代償に一反木綿を召喚し、乗る
千代田区一等地2DK3カ月分の店賃パワーは伊達じゃない
一反木綿は代償に比例する圧倒的パワーで飛行して竜巻を突破、翠は【破魔1】の力を持つ【大幣(おおぬさ)】で攻撃
遠くの敵は東照大権現の神性属性による【属性攻撃1】の【斬撃波1】で攻撃し、数を減らす
「これで当面は収入源ね……」
実家の顔を立てる煩わしさに思わず愚痴をこぼす
「如月に中島。あの娘たちの手を借りたら実家がうるさそうね」
「試練の洞窟」に突入し、A班に割り当てられた一人の女性。
その飛翔する瞳の数に遊撃隊の援護を頼むか、一瞬逡巡するが、ため息と一緒に迷いを吐き出す。
彼女、徳川・翠の属する徳川家は如月・アンジェが代表を務める討魔組とも、中島・碧の母である中島・美琴が率いる宮内庁対霊害対策課とも異なる独自の対霊害組織を形成している。
そうは言っても、日本の対霊害組織である以上は基本的には宮内庁対霊害対策課からの紹介で討魔をしてはいるのだが、とはいえ、別組織というプライドは高く、安易に協力したなどという事実を残したくない、というのが基本的に徳川家の人々の考えだった。
実家と可能な限り距離をおいている「妖怪アパートの大家」にすぎない翠とて、その影響力から逃れることは許されず、自然、彼女達の助けを借りるなど許されることではなかった。
さて、改めて翠は敵対し、今現在こちらに突進しつつある飛翔する瞳に視線を向ける。
「あの風力、一カ月二カ月じゃ足りなそうね」
その目は冷静に戦力差を見極め、そして、自身のマナ現象を発動させる。
「店賃を三カ月分免除してあげるわ……。行きなさい」
その言葉に呼応するように、約一反の木綿のようなものが召喚される。鹿児島県のある町に伝わるとされる妖怪、一反木綿である。
妖怪が住まう妖怪アパートの大家である翠。彼女は、自身のアパートの住人を店賃を免除してあげる代わりに召喚し、その妖力を借り受けるというマナ現象を発現させていた。
現れた一反木綿、その布の体の上に飛び乗る翠。
此度支払った代償は店賃三ヶ月分。たった三ヶ月と侮るなかれ、妖怪アパートは千代田区一等地の2DK。その三ヶ月分は伊達ではない。
一反木綿はその妖力を遺憾無く発揮し、こちらに突撃してくる飛翔する瞳が纏う竜巻を突き破って、一気に飛翔する瞳に接敵する。
破魔の力を持った大幣を、飛翔する瞳に向けて振るう。ぶつけるわけではなく周囲に振るイメージだ。本来、現代神秘世界における分類上の"魔"ではない飛翔する瞳は大幣とそこに宿った破魔の力など意に介する事はない。
しかし、この洞窟に漂うマナはそれを攻撃行為として認識し、小規模な「マナ現象」として、大幣の破魔を再現した。
結果、飛翔する瞳達は浄化され白い粒子へと変換されていく。
縦横無尽に飛び回る一反木綿に乗りながら飛翔する瞳を撃ち落としていく翠。
「近距離の敵を撃ち落とすだけじゃ埒があかないね」
故に、もう一つの力を解放する。
それは、徳川家の血の力。本来、徳川家の当主しか発動できないはずが、何故か翠にも受け継がれているそれは、東照大権現、即ち神に至ったと定義した徳川家康の神性を用いるもの。
大幣から神性を纏った衝撃波が放たれ、遠距離の飛翔する瞳が撃墜されていく。
縦横無尽に飛び回り、近接と遠隔の両方で飛翔する瞳を排除していく翠は、まさに戦場の一角を制圧していたと言っても過言ではない。
「これで当面は収入減ね……」
しかし、その代償は大きく、翠は嘆息するのだった。
実家のことさえなければ、竜巻の防御はアンジェ辺りに任せて遠距離から衝撃波を撃つだけでも良かったのだから。
せめて、この洞窟を攻略する中で得られる報酬が、店賃を補填するものであることを祈るばかりである。
大成功
🔵🔵🔵
宮藤・貴志
◎
「うへぇ、なんだあの目玉!」鞘に納めた刀を手に振るえながら入場。素人丸出しで碧たちに呆れられる。
怯えてるところに熱線一閃、驚き顔の貴志を貫く
しかしこれは【残像】。離れた位置に現れる
「ヤレヤレ……世話が焼ける同居人ダゼ!」
いつの間にか身体を則った【妖刀・緋雨】が高速移動で避けていた。
【UC】で無数の目玉に微細な傷をつける
「低硬度の辰砂の剣じゃ碌に斬れネェと思ったカ? 馬鹿メ、かすり傷ひとつつけリャ、お前は死ヌんだヨ!」
斬撃による衝撃波に混じり、刀身から放出された水銀(どく)が傷口から浸みて目玉たちを蝕む(【毒使い】)
ひと段落して意識を取り戻す
「何とか勝てたぁ。翠さん、誉めてくれるかな……?」
「うへぇ、なんだあの目玉!」
「試練の洞窟」に入るなり、飛翔する瞳のビジュアルに驚愕するのは、鞘に納めた刀を手に震えている宮藤・貴志(“見える人”・f37981)だ。
その震え方は尋常ではなく、敵を前にして構えも不十分と、率直に言って、素人丸出しの状態だった。
「試練の探求者」は実力者を歓迎する。逆に言えば、実力も伴わない人間は「試練の探求者」に入ることは叶わないはずだ。
という事は、貴志とて何かしらの技能を持つものであると思われるのだが、傍から見ていてそう信じられる人間は少なく、遊撃を担う碧やアンジェもいつでも彼をフォロー出来るようにと注視していた。
そして、怯えるばかりの無防備な貴志に向けて、熱光線の連射が放たれる。
「危ない!」
アンジェはこれに対し、自身の血の力をマナ現象として再現した「退魔纏い」を発動。自身を白い粒子で纏い、飛躍的に自身の移動速度を向上させ、高速移動により、貴志と飛翔する瞳の間に割り込む。
そして、そのままアンジェを纏う白い粒子はマナで構成された飛翔する瞳の放つ熱光線を分解し、貴志への攻撃を防ぐ。
「っ」
強力な能力だが、纏った白い粒子は「魔」そのものであるアンジェ本人をも蝕むため、極めて危険な能力でもある。
そして、その反動に意識を取られた、その一瞬、飛翔する瞳の一体がアンジェの防御をすり抜け、貴志に向けて熱光線を放つ。
「しまっ」
驚き顔の貴志を熱光線が貫く。命中箇所は顔。即ち一撃必殺で、貴志は死亡した。
かに、思われた。
「ヤレヤレ……世話が焼ける同居人ダゼ!」
その声の主を見よ、貴志である。熱光線が貫通した貴志は残像。本当の貴志はやや離れた場所に立っていた。
最初にアンジェによって庇われた時、貴志もただ何も出来ず棒立ちしていたわけではない。攻撃され、庇われた事を理解した貴志は慌てて刀を抜いたのだ。
赤褐色をしたのが特徴的のその刀の名は妖刀・緋雨。
刀の見た目をしているが、その本質は強力なロアであり、独自の人格を持つ。普段は特殊な鞘に収められることで封印されているが、抜刀すれば即座にその妖力が発揮される。
そして、抜刀直後に訪れたのは、頭部を狙った恐るべし熱光線の一撃。
緋雨は即座にその妖力を発揮し、 自身の怨念を貴志に纏わせ、貴志の体を乗っ取り、身体能力を無理矢理向上させて、瞬間移動に等しい速度でこれを回避した。
「先程までと佇まいが随分違いますね、多重人格……、いえ、その刀に秘密が……?」
妖刀・緋雨は辰砂で出来た刀だ。普通、現代神秘世界の刀はタマハガネブレードと呼ばれ、玉鋼で出来ている。これは玉鋼の持つ特殊な能力がその刀を神秘武器にするからだが、逆に言えば、玉鋼で出来ているわけでもないのに、明らかに神秘を帯びたその武器は明らかに異常な武器であるとすぐさま分かるわけだ。
「へッ、どうダロうナ」
「そうですね、詮索は「試練の探求者」では褒められた行為ではありませんでした」
アンジェは自身に攻撃してくる飛翔する瞳を白い粒子の放射で消し去りつつ、貴志に背を向けた。
「では、もう大丈夫なようですので、後はお任せします」
そして、アンジェは高速移動で去っていく。
「じゃ、始めるカナ」
そして、緋雨は自身を構えた。
放たれるは無数の斬撃による衝撃波。
先に説明した通り、玉鋼製ではない妖刀・緋雨は本来の日本刀が持つ神秘強度やオリジナルから継承される神秘プライオリティを持たない。それゆえ、単純な切れ味は日本刀には劣るようだ。勿論、妖力を纏わせて神秘強度とすれば話は別だろうが、緋雨はあえてそれをしていない。
結果、無数の衝撃波は飛翔する瞳達の表面に薄く傷をつけるのみに留まった。
「低硬度の辰砂の剣じゃ碌に斬れネェと思ったカ? 馬鹿メ、かすり傷ひとつつけリャ、お前は死ヌんだヨ!」
しかし、それでいいのだ、と緋雨は笑う。
直後、どういうわけか、飛翔する瞳達は徐々にバタバタと倒れていくではないか。
それは、放射した衝撃波に紛れていたある毒物……辰砂の主成分である硫化水銀に含まれる水銀の効果であった。
それは衝撃波によって傷つけられた傷口から飛翔する瞳の体内に侵入し、その肉体を犯し、殺害せしめたのであった。
結果、貴志の周りには表面に薄い傷があるだけの死体が大量に転がる事になった。
そして、満足した緋雨はその怨念とともに刀に戻っていき、貴志が意識を取り戻す。
「何とか凌げたぁ。翠さん、誉めてくれるかな……?」
翠、それは先程、A班で戦っていた女性の名前。
そう、彼は翠の持つ妖怪アパート「グリーンヴェルデ翠」に住む唯一の人間だったのだ。
ところで、彼の属する徳川家が討魔組や宮内庁とは距離をおいた組織であることは先に説明したとおりである。
そして、翠のアパートに住む彼は、翠に手を貸す他の妖怪達と同じように、翠の旗下にあるものと見られている。
そして、彼は討魔組の長たるアンジェの助力を借りてしまった。
これについて翠が本家から苦言を呈されることは疑う余地がなく、それを受けてなお、翠が彼を褒めるかどうかは、やや疑問が残るところとなっただろう。
成功
🔵🔵🔴
禁史・木実
内部の環境が実に興味深い
動植物、神秘、気になるがまぁ、先に仕事だな
「お二人とも、今日はよろしく願います。頼りにしていますよ」
挨拶もほどほどに始めよう
催眠持ちを相手に単独は危険。それと互いの射線には注意だ
「飛翔せよ・炎・連続」
ウィザード・ミサイルによる【属性攻撃】を行う。飛翔する瞳の視線を塞ぐように放ち、催眠術の邪魔をする
当たらずとも翼を焼いて【部位破壊】できれば、落下した後にトドメをさせばいい
光線は少なければ杖剣で防御したいが、回避が優先
迂闊にも接近してくるならば、剣に変形した杖剣で叩き落としてやろう
「目玉、皮膜……切り取れば、残るだろうか」
今直ぐはやらない。しかし、よい素材になりそうなんだが
「内部の環境が実に興味深い。動植物、神秘、気になるがまぁ、先に仕事だな」
「試練の洞窟」に降り立つなり、その環境に興味を奪われかけるのはまるで何かを隠すように極端に露出の少ない服装をしたC班の禁史・木実(菌糸人間の古い魔術師・f38034)だ。
日本の登録魔術師であり、討魔師であり、そして薬師やフィールドワーカーさえ兼任する彼は、この神秘とはまた異なる不思議で構成されたこの空間に興味関心が尽きないらしい。
「お二人とも、今日はよろしく願います。頼りにしていますよ」
討魔師であるため、討魔組の長であるアンジェや、討魔組とのやりとりを担当する宮内庁の碧とは既に顔見知り。簡単に挨拶を済ませる。
――挨拶もほどほどに始めよう。催眠持ちを相手に単独は危険。それと互いの射線には注意だ。
しっかりと頭を戦闘用の思考に切り替えて、石の直剣に根を絡ませた樹木の杖である木石の杖剣を構える。
「飛翔せよ・炎・連続」
優れた古術使いである木実。実に短い詠唱で、五本の炎の矢を出現させ、対峙する飛翔する瞳に向けて放つ。
飛翔する瞳達もこれに対し、瞳から超音波を放ち、その動きを封じようとするが、ここからが木実の魔術制御の妙技。炎の矢は巧みに飛翔する瞳の視線を遮るように飛翔し、催眠術を放たせない。
そして、短い詠唱で魔術を放てる分、さらに炎の矢を放っていく。
それらは「視線を遮る」事を優先しているがゆえに、命中率は悪い。
――当たらずとも翼を焼いて部位破壊できれば、落下した後にトドメをさせばいい。
しかし、命中率が悪くなるなりに、策はある。目玉本体を狙えないなりに、せめて翼に命中させ、飛翔する瞳の飛行能力を奪う。
落下した飛翔する瞳はせめてもの抵抗として熱光線を放ってくるが、B班の対峙している飛翔する瞳ほどの連射レートではない。容易に回避可能だ。時折、回避困難な角度から飛んでくることもあったが、木石の杖剣でガードすることで事なきを得た。
ならば、と考えたのかは分からないが、飛翔する瞳達は炎の矢をかいくぐって接近してくる作戦に出た。至近距離なら炎の矢に視線を遮られる事はない。防ぐもののない催眠術が、木実に向けて放たれる……!
……事はなかった。
「変形せよ・根・剣」
再び短き詠唱。木石の杖剣を纏う根が変形していき、剣へと変化する。
それは鋭い切れ味を発揮し、見事に接近する飛翔する瞳を切り捨てた。
遠距離には炎の矢、接近するなら木石の杖剣。
どの距離にも隙はなく、あれだけ多くいた飛翔する瞳が嘘のように、木実の周囲から消えていった。
ザクリ、と地面に墜ちた飛翔する瞳に剣を差し込む。これが最後の一体。
「目玉、皮膜……切り取れば、残るだろうか」
いい素材になりそう、という期待。
しかし、切断さえ命を失った飛翔する瞳は、速やかに粒子のように消えていった。
それをしっかりと観測した木実はそれがマナに還っていく様子だと分かった。
「なるほど。「洞窟」のクリーチャーは、マナで構成されているのか」
それが分かっただけでも、此度は収穫としよう。
かくして、洞窟入ってすぐのエントランスエリアで行われた戦闘は終わりを告げた。
成功
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