The Unbirthday Song
●爆ぜる
焚き火が暗闇の中に揺らめいている。
それを見ているとなんとも言えない気持ちになる。生物である以上、火に対する恐れは本能として備わっている。
だが、ほっともするのだ。
闇を照らす火。
体を温める火。
火とは人が人たらしめるための起因の一つであろう。
故に、揺らめく焚き火を見やり息を吐き出す。
意味のある吐息ではなかった。
ただ、心より吐露された意味のない吐息の一つでしかなかった。焚き火によって温められた空気が上昇していく。
己の心の中にある澱もまた溶けて、体の中から蒸発していくようでもあった。
アスリートアースの忙しない競技場から離れて、ただ山渓の一部になる。
これほどの贅沢はないだろう。
何のしがらみもない。
ただ、心ゆくまで穏やかで緩やかな時間を過ごせばいい。
目の前の熾火は、薪をくべることで強くなる。
そして見上げる。
薪が弾ける音が耳を心地よく打つ。舞い散る火の粉が夜空に浮かぶ星にも負けぬように煌々と上がる。
戦いも、煩わしい雑務も、何もない。時間に追われることもない。
ただ、心から楽しめばいい。
この行いを無為なるものだと言う者だっているかもしれない。
けれど、それでいいのだ。ただ、緩やかな時間を過ごすからこそ、性急なる戦いの日々ににも駆けつけることができるのだから――。
●明日は天気がいい
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)が虚ろな目で手にしたスマートフォンの画面を見ている姿であった。
彼女の目は明らかに疲労から来る疲れた目をしていた。
なんというか、こう、先月が殺伐とした事件ばかりであったからだろう。
いやさ、そもそも猟兵たちがグリモアベースに集まってくる以上、大抵は物騒で殺伐とした事件が予知されるからである。
仕方のないことなのだ。
とは言え、先月の彼女が予知した事件はどれもが救いのないものばかりであった。
だから、ちょっと疲れたのだ。
「――……焚き火っていいですよね」
誰に言うともなしにナイアルテはスマートフォンから視線を外さずにつぶやく。
お、まじでどうしたって困惑する猟兵だっているだろう。
新たに見つかった世界『アスリートアース』。
ユーベルコードを操る『アスリート』達が超人スポーツで競い合う世界。彼らは悪の『ダークリーガー』と戦い続けている。
殺し合いではなく、正々堂々と競技による決着でもって勝敗を決めるこの世界独自の慣習は、オブリビオンである『ダークリーガー』すらも承知していることである。
勝てば、殺伐とした滅ぼし滅ぼされる間柄出会っても、『ダークリーガー』は消滅するのだ。
こんなにも爽やかな世界、これまで在っただろうか?
「……週末のお天気はとても良いらしいですよ。そこで、皆さんおでかけいたしませんか?」
正直、ナイアルテがずーっとスマートフォンの画面を見ているのが気になったが、彼女が言うには今回は事件というわけではないようである。
新たな世界『アスリートアース』。
今日も何処かで『アスリート』と『ダークリーガー』が激突し、爽やかな汗が飛び散るリングやらコースやら、競技場で毛決着を付けているのだ。
しかし、ナイアルテは頭を振る。
「今回は景勝地でキャンプをしていただきます」
なんで?
いやまじでなんで? そう猟兵達が尋ねてもナイアルテは――。
「キャンプです」
譲らない。理由なんて無いのである。
疲れているのである。戦いばっかりの毎日。予知で見るのは凄惨なる光景ばっかり! もうやだー! とダダをこねないところがまだナイアルテの理性がギリギリで残っているせいだろう。
ともかく今は幸せな光景だけを見ていたいのである。
だからキャンプである。猟兵たちがキャンプを楽しみ、思い出を作り、日々の激務やらなんやらを自然に溶かして霧消する。
そんな幸せな日常があったっていいじゃない。
「アスリートアースの山渓にキャンプ場を見つけました。すでにキャンプ場の予約は行っていますし、困ったことがありましたら、キャンプ場の管理者であるというお爺さん……『八雲』さんにお尋ねください」
どうやらナイアルテが予約したキャンプ場は管理者が常駐しており、お爺さんこと『八雲』翁は、なんだかプラスチックの玩具をのんびりといじっているのだという。
基本的に多くを語らぬ老人であるが、尋ねられれば気さくに答えてくれるようであるから、設営の手伝いを頼めば応じてくれる。
そうでなくても、丸一日のオフである。
猟兵達はナイアルテのささくれた心に鉋をかけるように各々がキャンプの一日を楽しまなければならない。
しかし、そんなナイアルテは転移を維持するためにキャンプ場の後方で待機である。でもいいのである。
彼女は猟兵達の楽しげな一日を眺めているだけで幸せなのである。
それはそうとして、さっきから眺めているスマートフォンの画面がちらと見えた。
そこに流れていたのは焚き火動画である。
ヒェッ。
「それでは、キャンプ場での良き一日を」
ナイアルテは微笑み、猟兵たちのなんでも無い一日を満喫してもらうために転移の準備をいそいそとはじめるのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、そういうわけで新たな世界『アスリートアース』でキャンプをするシナリオとなっております。
※このシナリオにオブリビオンである『ダークリーガー』は出現しません。
●第一章
日常です。
まずは景勝地である山渓までの道のりです。
皆さんは転移した後、キャンプ場まで歩くことになります。ですが、寄り道したって構いません。そんなに急いで行く必要はないのです。
そう、今日はオフ!
戦いも仕事も義務感も必要ないのです。
キャンプ場までの道のりには温泉街があります。温泉に浸かってから向かってもいいですし、お土産屋さんで名産品に舌鼓を打つのもいいでしょう。
またここらでキャンプ場で食べるものや飲むものを買い込むのも良いのではないでしょうか。
●第二章
日常です。
キャンプ場に到着しましたら、テントを設営しましょう。
焚き火を起こし、レッツキャンプめしってことです。バーベキューやコンロで料理をしてもいいですし、キャンプ場の炊事場にはピザ窯もあるので、これでオリジナルピザを作っても楽しいのではないでしょうか?
キャンプ場の管理者であるお爺さんこと『八雲』翁も居ますので、困ったことがあれば手伝ってくれるでしょう。
●第三章。
日常です。
すっかり日が沈み、焚き火やランタンの灯りだけが明かりとなるでしょう。
ですが、まだ眠るには早いのです。
なんと言ってもキャンプというものはここからが本番なのです。
星空を見上げ語らうのもいいでしょう。テントの中で寝転がったり、お友達と共に持ち込んだものでゲームをしてもいいでしょう。
焚き火を囲んで歌ったり踊ったりもいいでしょう。
眠くなるまでが今日という一日なのです。
朝日を迎えれば、きっと新たな気持ちで皆さんも戦いに赴くことができるでしょう。
それでは超人アスリートと『ダークリーガー』が爽やかに激突する世界『アスリートアース』での戦い……ではなく、なんでもない日常の一日を過ごす皆さんの物語の一幕となれるよう、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『ちょっと寄り道』
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POW : 体力の続く限り遊ぶ
SPD : 計画的にあちこち回る
WIZ : 美しい景色や美味しい名産品を楽しむ
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猟兵たちが転移した世界『アスリートアース』。
グリモア猟兵が予約したというキャンプ場までは、まだ距離があるようであった。
キャンプ場は山渓にあり、此処からは徒歩で行くもよし、公共の交通機関を使ってもよいということであった。それ以上に猟兵達は己たちの鼻が何処か硫黄の匂いを捉えたことを知るだろう。
そう、キャンプ場の山渓まで至るには、目の前の温泉街を通り抜けねばならない。
いつもならばせわしなく駆け抜けていくのが猟兵の戦いだ。
けれど、今回は違う。
オブリビオンである『ダークリーガー』も出現しない。
本当にただただ、なんでも無い一日を過ごすだけなのだ。なら寄り道だっていいだろう。
幸いにこの温泉街は午前中から温泉施設が開放されているし、足湯だってそこかしこにある。
それに温泉街ということは昔情緒あふれる遊技場もあるし、土産物屋もある。お酒もあるであろうし、名産の食べ物だってある。魚や肉、甘味にお酒。まあ、とりとめもなくあるのである。
大抵のものはあるだろう。
猟兵達はキャンプ場へと向かう前に、まずはここらで一つ自分たちの足で捜査せねばならない。
この温泉街に隠された名産品を!
いや、それもまた一つの自由だ。
温泉に浸かってゆっくりしてもいい。土産物屋の試食コーナーを荒らしたっていい。
なんだっていいのだ。
穏やかな一日を過ごす。
今回はただそれだけが目的なのだから――。
村崎・ゆかり
今日は平和ねー。アヤメも羅睺もそう思うでしょ。
グリモア持ちの彼女も来られたらよかったのにね。
まずは最初に温泉に入ろうか。
ああ、素敵な女の人が沢山で目移りしそう。
もちろん、アヤメが一番よ? 羅睺はスレンダーなところがいいわよね。
お風呂の中で主従のスキンシップを堪能して、湯あたりする前に上がるわ。
温泉の後の牛乳は必須。
さて、道々必要な食料を買い揃えながら歩いて行きましょうか。
やっぱりキャンプならバーベキューよね。お肉屋さんで角切り肉を買って、ついでに焼き肉のタレも調達。野菜もあった方がいいし。タマネギとかピーマンかな。
それから水分補給の飲み物はたっぷりと。
これだけ買えばいいでしょう! 現地へGO!
世界の悲鳴に答えて他世界に駆けつける猟兵にとって、戦いと無縁の日々は多くはないだろう。
だからこそ、今日という意に父が何物にも代え難い。
「今日は平和ねー」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は二人の少女の式神を伴って温泉街へと足を踏み入れる。
今回の目的はキャンプだ。
けれど、その前に温泉に入りたいと思うのは当然の帰結であったのかもしれない。
目の前に広がる温泉街は、とても長閑だ。
観光客もいるにはいるが、誰もが笑顔である。そこには殺伐とした空気もなく、また超人アスリートと『ダークリーガー』との戦いもない。
戦いの気配が一切ないというところが、本当に稀有な時間であることを深く記憶させることだろう。
「アヤメも羅喉もそう思うでしょ」
「ええ、本当に静かで時間がゆっくりと流れていますね」
「あっちには足湯もあるよ」
そんなふうに語らう三人の姿は仲の良い姉妹にも思えたことだろう。その姿は温泉街に別の意味でざわめきを齎すものであったことを彼女たちは気がついただろうか?
見目麗しい女性たちが温泉街を歩く。
適当に良い温泉を見つけて、ゆかりと式神の彼女たちが入っていく。
「ああ、素敵な女の人が沢山で目移りしそう」
「またそんなことを言って」
「しょうがないなー」
もちろん、アヤメが一番であるとか、羅喉がスレンダーで綺麗だとか、ゆかりは言う。とは言え、別に本気で怒っているわけではないのだろう。
恋人同士のスキンシップであると思えばいい。
温泉の泉質だって、省略されていいものではないだろう。
とろみがかったお湯は、ゆかりたちのたまのお肌に染み込んで、その麗しくも艷やかな肌色を桜色に変えていくだろう。
湯気煙る向こう側で、まあ、その、あれである。
恋人ならではのスキンシップが行われていたことは、言うのが野暮というものであろう。
ホカホカの湯気を立てながら三人は温泉から上がると、やっぱりこれだよね、と羅喉が微笑んでビン牛乳を差し出してくる。
「必須よね。温泉の後はやっぱり」
格別だとゆかりは微笑んで、温泉を後にする。
程よく温まった体のまま温泉街の土産屋などを流し見ていく。
本来の目的はキャンプだ。
この先にある山渓のキャンプ場で一晩過ごす。ならば、こういうときはカロリーなど度外視だ。
食べたいものを食べる。
羅喉がアレが食べたいコレが食べたいというのをアヤメがたしなめながら、買い物をしていく。
「お肉!」
「そればっかりね。でも、ああ、良いお肉ね。角切りでお願いできるかしら?」
「へい! 焼き肉のタレならウチの自慢のがありますよ!」
そんなふうに店員と会話をしながらサービスをしてもらったり。
野菜も在ったほうがいいですよね、とアヤメが気を利かせて買いに走り、戻ってくる頃には、道中で補給するための飲み物を携えたゆかりたちと合流する。
「これだけ買えばいいでしょう!」
「ねーねー、これ甘くって冷たいね!」
「ふらぺーちーの、という飲み物なんですね。お茶、のような風味がします」
ゆかりたちは姦しくキャッキャしながらキャンプ場へと歩んでいく。
時間はまだまだお昼前。
本当に時間がゆっくりと流れているような気持ちになりながら、彼女たちは意気揚々とキャンプ場へと、足取り軽く進むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
茜・皐月
「美味しそうなものいっぱい!姉さん、食べてきていい?」
『はいはい、勝手になさい』
お目々キラキラの少女人格にUCで具現化した娘人格は呆れ混じり。
便宜上双子として会話を交わし解散。
少女はさっそく試食試飲の旅に繰り出す。
身体年齢的にはお酒も飲めるし強いので、全部制覇する気持ちで。どれもそれはそれは美味しそうに食べてりゃ売上貢献になるかもしれない。
「これは、お酒と食べたくなる味…!」
ソコソコにレビューも挟みつつ、キャンプで食べるものを吟味して。
一方、自由奔放な少女から解放された娘は、のんびり温泉に浸かる。疲労回復にはもってこい。
『あ、温泉まんじゅうでもお土産に持っていこうかしら』
…お疲れでしたから。
『アスリートアース』の温泉街は平和そのものであった。
この世界もオブリビオン『ダークリーガー』の脅威にさらされていることには違いはない。
けれど、スポーツ精神に則って行われる試合形式の戦いは、他の世界を見ても類を見ないほどに爽やかであった。
とは言え、今回は『ダークリーガー』との戦いは関係ない。
そう、オフである。
猟兵だってたまにはオフがあってもいいっはずである。年がら年中戦っているばかりでは心も摩耗するというものだ。
「美味しそうなものいっぱい! 姉さん、食べてきていい?」
瞳をキラキラさせながら、茜・皐月(自由奔放、天真爛漫な魔女・f05517)はユーベルコード、オルタナティブ・ダブルによって現れたもうひとりの自分、姉さんと呼ぶ娘人格に言うのだ。
少女としての人格を持つ双子のような容姿をした彼女たちは、便宜上は双子として会話をしている。
温泉街の人々に訝しまれることのないようにとの配慮であった。
けれど、少女人格の彼女は、そういう気遣いよりも温泉街の通りに連なる店舗から香る匂いに釣られるように足をすすめる。
『はいはい、好きになさい』
そんな彼女を見送って娘人格の彼女は息を吐き出す。
いつも自由奔放な少女人格の彼女に振り回されているから、こういうオフの日があるのはありがたいのだろう。
『さて、私は……』
娘人格の彼女は周りを見回す。
何処を見ても温泉宿が目につく。骨休めするためには温泉がもってこいである。
泉質は言うまでもない。きっと彼女の疲れた心をも解きほぐす暖かさがあるだろう。めぼしい温泉宿に娘人格の彼女が暖簾を潜って入っていく。
そして、一方、少女人格の彼女は通りに並ぶお店の試食を片っ端から制覇していく。
体の年齢から言えば、彼女はもう大人である。お酒も飲めるし、ちょっとやそっとでは酔わない。嗜むというには、少しばかりお酒に強いのである。
「うんうん、これは美味しいね! キリッとしているね! あっ、あっちのほうにおつまみがある? 本当?」
「ああ、うちの酒と合わせるなんなら、少しばかり塩味の強いのがいいだろうからな」
酒店の店主がそう告げてくれる。
お嬢ちゃん可愛いからサービスだ、と朗らかに笑っている。温泉街の人々は誰も彼もが良い人ばかりだ。
「ありがとう! じゃあ、あっちに行ってみるね!」
そういって彼女はパタパタと告げられたお店に向かう。そこはスナック菓子のお店だった。お酒にスナック菓子? と思わないでもない。
けれど、案外こういうつまめるものがあると嬉しいものである。
いろいろな種類がある。スパイスの効いたものや、ティラミスのようにチーズを組み合わせたもの、ポリポリと食感の楽しいナッツ類やらたくさん。
「試食をどうぞ」
小さな腰の曲がったおばあちゃんが試食を進めてくれる。
口に運んでパリポリすると、たしかに! と目を輝かせる。
「これは、お酒と食べたくなる味……!」
うんうん、と彼女は微笑んで、スナック感覚でつまめるものを選んでいく。いろんな種類のものを購入すれば、随分とかさばってしまうが、たまにはこういう欲張りもいいだろう。
そんな試食試飲の旅に繰り出していた少女人格の彼女とは裏腹に娘人格の彼女は、まったりしっとりとした時間を過ごしていた。
『待ち合わせまではまだあるわね……はぁ、それにしても、いいわね。疲労回復にはもってこい』
湯気立つ温泉の中に身を沈め、息を吐き出す。
体があたたまると同時に身の疲労が溶けて流れていくようでもあった。少しばかりだらしない顔をしていたって大丈夫。周りはみんなそんな感じだし、誰も咎めはしないのだ。
『あ、温泉まんじゅうでもお土産に持っていこうかしら』
温泉宿の入り口にお土産で売っていたのを思い出す。
あの美味しそうなものを持ち寄れば、きっと喜んでくれるだろう。疲れがたまることは、本当に心身共にダメージがたまるものである。
であればこそ、きっと喜んでもらえるとお湯からゆっくりと上がり、娘人格の彼女と待ち合わせに向かうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
わーい、キャンプするですー!
くぬぎ、キャンプ好きですけど、ひとりでキャンプに行くのははじめてです。ソロキャンプって言うですよね!
楽しみですー♪
まずはお買いものですね
バーベキュー、ホットドッグ……食べたいものがいっぱいあって、迷っちゃうです
くぬぎちっちゃいから、たくさんは持っていけないですし、ちょっとずつ買うです
あっ、マシュマロ! マシュマロはぜったい買うですよ
飲み物も買って、準備はバッチリです
キャンプ場に出発です!
……と思ったら、ご当地ソフトクリームを発見してしまったですよ。おいしそうです
食べながら出発ですー!
キャンプというものにルールはない。
けれど、モラルというものがあるし、場所を同じく異なる人々と共有するのであれば、それがなければ成り立たぬ趣味であるともいえるだろう。
三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)は元気いっぱいに薄灰色の体を跳ねさせながら、温泉街へと飛び込んでいく。
「わーい、キャンプするですー!」
くぬぎは、とてもテンションが高い。
アウトドア派ということもあるし、探検するのが大好きなのである。好奇心が小さな体にいっぱい詰まっているのだ。
今日もお花型の虫かごと虫取り網を常備しながら、『アスリートアース』を探検するのだ。
「くぬぎ、キャンプ好きですけど、ひとりでキャンプに行くのははじめてです。こういうのってソロキャンプって言うですよね! 楽しみですー♪」
そう、はじめてのソロキャンプ。
予約してあるキャンプ場には猟兵たちが他にも来訪する。
けれど、誰かと待ち合わせてだとか約束してではない。くぬぎは生まれてはじめて一人でキャンプに挑戦するのだ。
ちょっとのドキドキと、ちょっとワクワク。
それが今、くぬぎの胸の中を占めている。
「まずはお買い物ですねー♪」
跳ねるようにしながら温泉街に漂う香りを嗅ぐ。
彼女の鼻腔をくすぐるのは硫黄の匂いと、美味しそうな匂いであった。通りにはいろいろなお店が立ち並んでいるし、出店もある。
ああ、串焼きにホットドッグ。りんごあめにたこ焼きにたいやき。
素晴らしき買い食いストリートにくぬぎは立ち寄る。食べたいものばっかりだ。
けれど、くぬぎの体はモーラットであるがために小さい。たくさんはもちろん持ってはいけない。
「お、お嬢ちゃんうちに目をつけるとはお目が高いね!」
「はい、一つくださいな! 鈴カステラ……えっと……」
「特別だ。ハーフにしといてやるよ。あったけぇから、一つお食べ」
「お、なんだ少しづつ欲しいんか? ならこっちもハーフにしてやるよ」
「いっぺんに行ったってしょうがないだろう。お嬢ちゃん、こっちにおいで。袋をあげようね」
出店の主人たちがくぬぎに色々親切にしてくれる。
彼女の体が小さいことを気にかけてくれたのだろう。本来ならしないはずのハーフサイズのたこ焼きやらお好み焼きやら、ホットドッグやらが次々と、くぬぎの前に差し出される。
それをパックに詰めれば、楽しいお土産セットになる。
「あっ、マシュマロ!」
「どれくらいいるんだい? へぇ、これからキャンプ。じゃあ、焼きマシュマロも楽しいな。クッキーも買っていきなよ。炙ったマシュマロ挟んで食べると楽しいぜ」
そんなふうにくぬぎはキャンプの食べ物の準備は万端となる。
温泉街の人々の好意によって背負いやすいように荷物をまとめるリュックも用意してもらって、手には飲み物のホルダーも完備。そうしてキャンプ場にくぬぎは向かう。
「あ、みなさんありがとうですー♪」
ほっこりである。
温泉街の皆さんは、くぬぎの愛らしさにすっかり参ってしまっている。帰り道にもよっておくれよーって見送ってくれる。
そんなふうにしてくぬぎはキャンプ場に足を向ける。
だが、その足がピタッと止まるのだ。なんで? まだ買い忘れあった?
「ご当地ソフトクリーム! おいしそうです!」
くぬぎは、目を輝かせながらご当地ソフトクリームにノボリに目を奪われる。
ややあって、くぬぎはソフトクリームをぺろりと舐めながら、ご機嫌にキャンプ場に向かうのだ。
「食べながら出発ですー!」
ゴーゴーキャンプ!
くぬぎのはじめてのソロキャンプは始まったばかり!
きっと今日も良い一日になる。
そんな予感と共にくぬぎはスキップしながら温泉街を後にするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
ナイアルテさんはいつもお疲れ様です
紅茶を置いていくね
さぁ、キャンプ!
飲み物はあたしは紅茶があれば満足だからいいとして
やっぱり食べ物は買っていかなくちゃね
んー、初心者でも焼きやすいお肉かな?
あと、焼いて美味しい野菜 茄子とかピーマン!
ひとりキャンプだから、自分でできるもの買わなくちゃね
温泉は興味があるけれど恥ずかしいから我慢
その代わり、お土産物屋さんで温泉まんじゅうは買うよ
ふかしたてのおまんじゅう!はふはふ、おいしーい!
おまんじゅうもいくつか買っていこう
焼きまんじゅうにしても美味しいし!
のんびり景色を見ながら歩いていくよ
こんなに楽しいお仕事なら毎日でもいいなぁ
アドリブ歓迎です
橘・小雪(Tea For You・f37680)は『アスリートアース』に転移して、足を大地につける。
温泉街にほど近い場所に降り立った彼女は息を吸い込む。
鼻腔を通って灰に満ちるのは硫黄の匂いだった。
周囲を見やれば、どこもかしこも湯気が立っている。かつては湯治場としても有名であったのだろう。
ここを通り抜けて予約してあるというキャンプ場に向かわねばならない。
謂わば、これは寄り道だ。
けれど、それでいいのだ。時間がかかるであろうが、今日は一日オフなのである。誰が咎めるわけでもないし、急ぐ必要なんて無い。
「紅茶を楽しんでね」
転移を維持しているグリモア猟兵に小雪はポットに入れた紅茶を振る舞う。
それに少し驚いたような顔をしているグリモア猟兵の瞳が微笑みの形になるのを見てから、小雪は温泉街へと踏み出す。
今日は楽しいキャンプだ!
そして、小雪は考えるだろう。キャンプ場についたらテントを設営して食事の準備をしなければならない。
段取りを考えると、やっぱり温泉街でなにか食材を買い込んでいくのがいいだろう。
「飲み物は、紅茶があれば満足だからいいとして……」
彼女はサクラミラージュ出身であり、両親が営むカフェー『星月夜』の看板娘である。何よりも紅茶が好きだし、時には珈琲も嗜む。
彼女が好むアッサムの茶葉もミルクも用意してある。
ならば、次はキャンプ飯の食材探しだ。
「焚き火をするだろうから……んー、初心者でも焼きやすいお肉かな? あと、焼いて美味しい野菜……」
そんなふうに考えていると温泉街の通りのお店から声がかかる。
「お嬢さん、どうだい。うちの野菜、買っていかないかい? 無農薬だし、今の時期なら茄子が美味しいよ。トマトにキュウリもあるし、川で冷やしておくといいよ」
そんなふうに八百屋さんであろう主人が声を掛けてくるのだ。
ああ、それはいいかもと小雪は誘われるままにお店の軒先に立ち寄って、並べられている野菜を見やる。
どれもが今日朝もぎってきたものだと店主が言う。
確かにどれもみずみずしい。小雪が欲していた茄子やピーマンだってある。
「じゃあ、これとこれ、もらおうかな」
「あんがとね! これ、おまけしておくから!」
そう言って店主から茄子やピーマン、トマトやきゅうりを受け取る。おまけ、と行ったのは渓流で野菜を冷やしておくためのネットだ。
これがあれば、野菜を水につけておいても流される心配がないだろう。
礼を告げて小雪は温泉街を歩む。
温泉の匂いが、どうしたって気になる。温泉に浸かれば、きっと心地よいだろうと思うのだが、どうしても小雪は恥ずかしさのほうが勝ってしまうので我慢である。
「あ、温泉まんじゅう……」
その代わりと言っては何であるが、温泉宿の前に湯気立つ蒸籠の前に彼女は立ち止まる。
甘い匂いが香ってくる。
温泉水で蒸してあるから温泉まんじゅう。
「うちのはあんこがしっかり詰まっているからね。一つどう?」
温泉宿の前で手売りしている女性がすすめるままに小雪は、頷いて温泉まんじゅうを受け取る。
「はふはふ、おいしーい!」
ふかしたての温泉まんじゅうは得も言われぬ暖かさと食感を教えてくれる。あんこの甘みも上品でいい。甘すぎず、それでいてしつこくない。小豆がしっかりと主張している。
そんな温泉まんじゅうに満足して小雪は、追加注文をする。
「気に入ってくれたかい。嬉しいね。いくつくらい必要だい?」
「3つ……ううん、もう少しもらっておこうかな。焼きまんじゅうにしても美味しいよね?」
「ああ、それは良いアイデアだね。さあ、熱いからね、気をつけて」
小雪は包を受け取ってから、半分に割った温泉まんじゅうの片割れを頬張りながら温泉街の景色を見やりながらキャンプ場へと歩んでいく。
楽しい。
なんでもない光景だ。
猟兵としては、あまり縁のない光景であるかもしれない。こうしたなんでもない日常を護るために小雪たち猟兵は戦っている。
その結実のような光景を今、彼女は見ている。
新たな世界『アスリートアース』には未だ『ダークリーガー』と呼ばれるオブリビオンが跋扈している。
大きな戦いの前には大きな休息があってもいいだろう。
ここで英気を養い、小雪は次なる戦いに備えればいい。と、そんな考えは今は頭の片隅に追いやる。
「こんな楽しいお仕事なら毎日でもいいなぁ」
けれど、きっと小雪は両親の営むカフェーの慌ただしさをすぐに恋しく思うだろう。
こういうオフはたまにあるからいいのだと、そんなふうに思いながら小雪はゆっくりと温泉街の賑やかさを肌で感じながら歩むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
アスリートアース、爽やかでいい世界じゃねえか。
「…しかしこの世界にもオブリビオンの魔の手が及んでいるのですね。」
相棒、今回はオフなんだからそう言う話は無しだぜ。
この世界での戦いに備えてゆっくり羽を伸ばすとしようや。
キャンプにはバーベキューが付き物だぜ。温泉街で必要な物を買っていかねえとなッ!ビールとかッ!
「…お肉にお野菜、あとはお魚?」
おっと相棒、せっかくのキャンプだ。魚は現地調達といこうぜ。
温泉街で釣り道具一式を入手してキャンプ場に向かう途中の山渓の川で魚釣りをするぜ。
クーラーボックスにいっぱい釣ってやろうぜッ!
「…ぼうずだったらどうするの?」
…ま、まあそれも醍醐味よッ!
【アドリブ歓迎】
『アスリートアース、爽やかでいい世界じゃねえか』
そんなふうに神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は転移した世界を見やり、つぶやく。
此処は『アスリートアース』。
新たに見つかった世界であり、超人アスリートとオブリビオン『ダークリーガー』たちが激突し、スポーツの試合の勝敗を持って決する世界である。
オブリビオンのやることはたしかに世界の破滅を目指すものであるが、滅ぼし滅ぼされる間柄であっても、殺さずにオブリビオンを消滅させることができるというのは、他の世界を見ても類を見ないものであった。
だから、赤い鬼面のヒーローマスクである凶津は、感慨深げに呟いたのだ。
けれど、彼の相棒である桜は神妙な顔つきである。
「……しかし、この世界にもオブリビオンの魔の手が及んでいるのですね」
彼女の言う通りであるし、尤もである。
如何にスポーツの勝敗で全てが決まると行っても、オブリビオンのやることである。それは必ず世界の破滅につながる。
だから、彼女の言うこともわかるのだ。
けれど、凶津は鬼面をカタカタ鳴らしながら笑うのだ。
『相棒、今回はオフなんだからそういう話は無しだぜ。この世界のでの戦いに備えてゆっくり羽を伸ばすとしようや』
凶津の言葉に、桜はたどたどしくうなずくだろう。
羽根を伸ばすと言ってもどんなことをすればいいのだろうか。
キャンプと言っても様々なやり方がある。何もしないことをする、と言葉にすれば簡単だが、実行するとなると難しい。
『ま、キャンプと言えばバーベキューがつきものだぜっ!』
「じゃあ、温泉街で必要なものを買っていきましょう……お肉にお野菜……」
『ビールもなッ!』
「……あとはお魚?」
桜が思いつく食材を上げていく。
確かにキャンプと焚き火は切っても切り離せないものであろう。それに食材もそうだ。
牛肉、豚肉、鶏肉。精肉を一つとっても、選ぶ事は楽しいものだ。
温泉街に足を踏み入れた二人は色々と考えるのだ。
凶津はどちらかというとアルコールの方がメインのような気がする。桜は食事のほうに気を取られているかもしれない。
戦いばかりの猟兵としての日々は、こうしたオフの日が少ない。凶津はアルコールで、喉を潤したいと思うし、桜はキャンプ場でゆっくりしたいだろう。
『おっと、相棒。せっかくのキャンプだぜ?』
「……どういうこと?」
『此処は現地調達と行こうぜ。キャンプ場は山渓地なんだろ? なら、釣り道具をさ、手に入れて渓流で釣ろうぜ!』
その言葉に桜はうなずく。
温泉宿にそういうものがあるかわからないが、探してみるのも手だ。
「おねーさん、なにかお探しもの?」
そんなふうにしていると、温泉街の住人であろう少年が桜に声をかけてくる。何かを探しているのかと思ったのだろう。
こういう場所の子供らしく、訪れた者をもてなす心が根付いているようである。
「……釣り道具を探しているのですけれど、何処かで手に入りますか?」
「釣り竿とかだよね、それなら僕のを貸してあげるよ! 待っていて!」
そう言って少年が走り出し、しばらくすると桜と凶津のもとに戻ってくる。手に持っているのは釣り道具一式だ。クーラーボックスも抱えて持ってきてくれている。
「はい、これ。あっ、そうだ。おねーさんたちが行くのってあっちのキャンプ場? なら、よい釣りスポットがあるから教えてあげるよ!」
『おっ、いいのか?』
凶津の鬼面がカタカタなるのを少年は見上げてうなずく。
さっきまで桜と二人でぼうずだったらどうするつもりなのかと相談していた所であったから、その少年の申し出はありがたかったかもしれない。
「よく釣れるよ。僕もそこに釣りに行くしね!」
その言葉が渡りに船であろう。
『よぉーし、クーラーボックスいっぱい釣ってやろうぜッ!』
まあ、仮に釣れなかったとしても、それはそれで醍醐味というやつである。
それに現地の少年がいうスポットなのだ。
きっと間違いはない。
凶津と桜は少年に案内されてキャンプ場に向かう途中の山渓の川での釣りに興じる。
「あっ、かかってるよ! 引いて、引いて!」
『おーっ! でかいぜ、相棒ッ!』
「……待ってください、ちょっと、あ、あっ、あー!」
三人の釣り竿が、魚を引いて跳ねる。冷たい水が跳ね、涼やかな空気の中、釣果は中々なものとなる。
まあ、懸った魚が引く糸に引っ張られて桜が川に落ちて衣服が濡れたりなどのハプニングはあった。けれど、幸いに天気が良いのだ、すぐに乾くし、こうしたハプニングも思い出の一つとなるだろう。
思いがけず楽しい時間を過ごした凶津と桜は、釣果を持ってキャンプ場に向かう。
さあ、ここからがキャンプ本番だ――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
お、お、おキャンプですわ〜!
このわたくしがおキャンプのエンジョイの仕方というものを実践してさしあげますわ
伊達に放浪しておりませんわよ〜!
参りますわよヴリちゃん!
おキャンプ場は山渓なのですわね?
渓流には美味しいおヤマメやおイワナがおりますのよ
なのでアレがご入用ですわ
そう!釣竿ですわ〜!
それとお塩も準備するのですわ
なんですヴリちゃん?釣れなかったらどうすると?
その時はその時ですわ〜!
お買い物が済んだら温泉に入るのですわ
わたくしお風呂が大好きですわ
脚が伸ばせる露天風呂で身体を解しておキャンプ本番に備えるのですわ
はぁ〜生き返りますわ〜
あら体重計が…
ちょっと乗ってみるのですわ
…増えてるのですわ〜!
キャンプ。
その言葉になにか異議を唱える者はいなかっただろう。
むしろ、いいのか……? と首をかしげる者の方が多かったかもしれない。それほどまでに新たな世界である『アスリートアース』での猟兵としての活動は、平和的であった。
オブリビオンである『ダークリーガー』ですら、試合の勝敗をもって消滅する定めとなっているのだ。
滅ぼし、滅ぼされる。
そんな殺伐した空気はない。爽やかである。
しかし、今回はそんなことすらも関係ない。そう、キャンプである。
「お、お、お」
お?
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)の様子が……?
「おキャンプですわ~!」
テンション高くメサイアが声を上げる。甲高い声である。黄色い声のように彼女は温泉街にて盛大にガッツポーズしたかもしれない。
キャンプのエンジョイにかけてはプリンセスであるメサイアをおいて右に出る者はいない。いや、いるかもしれないが、今のメサイアを止める者などいない。
ええ、このメサイア・エルネイジュが教えてやろうというのですわ、キャンプのエンジョイの仕方というものを!
とかなんとかそんな感じにメサイアはキャバリアである『ヴリトラ』と共にキャンプ場へといざ参らんとしている。
「伊達に放浪しておりませんわよ~!」
あっ。そうなのであった。
彼女の高貴な所作で忘れかけていたが、彼女絶賛お国から出奔中なのである。
「参りますわよヴリちゃん!」
というわけでメサイアは早速温泉街で釣り竿を購入しようと歩き回る。とは言え、こういう温泉街の土産物屋に釣り竿なんてあるのだろうか?
「あるよ」
ある!
土産物屋の店主がお店の奥から、釣り竿を持ってきてくれる。なんかこう只者ではない雰囲気が漂う店主。
この方できますわ! とメサイアのアングラーセンサーがビンビンするのであるが、まあ、それは本筋とは関係ないので割愛させて頂く。
ここまでは順調である。
メサイアは釣り竿を手に入れ、次は塩や香辛料を探す。
「おキャンプ場は山渓でしたわね……となれば、渓流には美味しいおヤマメや、おイワナがおりますのよ」
「ああ、たしかにそうだね。水も綺麗だし、大きさも今なら丁度いいんじゃないかな」
土産物屋の店主が釣りスポットをいくつか地図に描いてメサイアに手渡してくれる。
それに礼を告げてメサイアは一通りの買い物を終えて次は……と身支度を始める。
『ヴリトラ』が釣れなかったらどうするのだと訴えているが、メサイアは簡単でシンプルな答えで返すのだ。
「その時はその時ですわ~!」
成り行き任せ!
しかし、それでいいのである。まあ、なんとかなる! その精神こそがキャンプという名のサバイバルには重要なのである。ケ・セラ・セラである!
そんなこんなでメサイアはこれまでの放浪の旅の疲れを癒やすべく温泉宿に入っていく。
「むしろ、ここまで来て温泉に浸からないとか嘘ですわ~!」
そう、メサイアは温泉大好きプリンセスである。
湯気立つ大浴場。
ああ、なんて素敵な! 足が伸ばせる湯船って最高ですわ~! キャンプの前に温泉。なんたる贅沢でありましょうか。
しかし、温泉は命の洗濯とも言います。
ここいらで戦いの日々の疲労を溶かして流して英気を養うのもまた戦う者の努めである。
「はぁ~生き返りますわ~」
メサイアは温泉に肩までしっかりと浸かり、息を吐き出す。
心地よい疲労感が溶けていく感覚にメサイアはうっとりしながら、堪能しのぼせるまえに脱衣所に戻っていく。
火照った体に風が心地よい。
そんな折に彼女は体重計を見やる。目がバチッと合ってしまったのだ。ならば、乗るしかあるまい。この体重計に!
「……」
体重計の針が軋む音が聞こえる。
プライバシーなので、数字は公表しない。断じて。おうおう、メサイア様は一国の皇女やぞ。スリーサイズから体重身長に至るまで国家機密に決まっとるでしょうがってなわけである。
「……増えてるのですわ~!」
なにかの見間違いではなかったかと思うほどであった。
けれど、残念事実である!
メサイアは、まさかの事態に片足で乗ってみたり、あ、長い髪が乾ききっていなかったですわね、とかいろんなことを試してみたが、特に結果が変わるわけもなく。
傾く針を見なかったことにするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
ナイアルテさんが死んだ魚の眼をしています💦
確かに悪意や怨念といった負の想いに満ちた依頼が続くと心が疲れますよね。
そういう時にはデビルキングワールドが効果的ですが、自然もまた良いものです。
私的には晴れた日に清流を眺めるのがお勧めですよ♪
リュックに入れたキャンプ用品を背負って転移。
(五分後)
「山の露天風呂はホッとできて心地良いですよね~♪」
温泉に浸かり、至福の表情を浮かべる詩乃。
猫にチャオチュールくらいの感じで、迷いなく温泉施設に一直線。
手際良く手続きを済ませ、早着替えであっという間にタオル一つだけ持って、幸運にも見晴らし良い場所を確保♪
(尚、名産品はサラダやおひたしに使える山菜を発見しました)
それは正に死んだ魚の眼と表現するのが適当であると思えるほどに疲れ切った瞳であったと大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は理解する。
確かにオブリビオンの齎す事件は悪意や怨念と言った負の想いに満ちたものが多い。
それを予知するグリモア猟兵にとっては、まさに心が疲労するものであったことだろう。
だから、わかるのだ。
辛く悲しいものばかりではなく、誰かの笑顔を見て心癒やされたいと思う気持ちも。
「そういうときはデビルキングワールドが効果的です」
詩乃は、あのハチャメチャな世界の事を思い出す。
とんでもなく強い種族、悪魔たちの世界。
悪魔であれど、彼等は性根が善良であるがゆえに、悲惨な事件はあまり起こらない。オブリビオンより彼等のほうが強いからだ。
わりとトンチキすぎて、別の意味でも心が折れそうな気がしないでもないが、邪神様なりきりセットを持っている詩乃にとっては、デビルキングワールドは、わりと親和性の高い世界であったのかもしれない。
「ですが、自然もまた良いものです。私的には晴れた日に清流を眺めるのがお勧めですよ♪」
そう言ってから詩乃はグリモア猟兵が転移してくれた温泉街に早足で、つったかたーってな具合に背負ったリュックを揺らしてまっしぐらである。
猫にちゅーるくらいの勢いであった。
迷いなどなかった。
温泉街にはいくつかの温泉宿がある。それらの評判を詩乃は下調べし、自分の好みに合致する温泉宿を見定め、転移直後のスタートを決めたのだ。
きれいなフォーム。
乱れぬ息。
されど高鳴る鼓動。
期待は裏切られることはない。
「いらっしゃいま――」
「大人一人お願いいたしますね♪」
「は、はい、では、こちらの浴衣とタオ――」
タオルって言うよりも早く、食い気味に詩乃は微笑んで料金を温泉宿の従業員に手渡す。
神速。
これほどまでに迅速に手続きを済ませた客など、温泉宿が開業して以来であったことだろう。
今の詩乃は温泉に集中する神性の名を欲しいままにしていた。
キラリと輝くのはユーベルコードではない。脱衣所の様子や、その向こう側にある湯気立つ湯浴み場のチェック。
余念などあるわけもない。
ささっとタオルで胸元を隠した詩乃が、ひたりと温泉に歩む。
湯を肩に掛ける所作すら美しい。まとめ上げられた黒髪が温泉の湯気を吸ってしっとりとしている。おくれ毛がまたこう、うなじに張り付いて、ここだけ絵画にしてもらえないだろうかと思うほどだった。
そんな芸術的なまでの詩乃の温泉所作。
ゆっくりと肩まで温泉に浸かれば、蕩けたように詩乃の口から溢れる吐息。
「山の露天風呂はホッとできて心地よいですね~♪」
至福の表情である。
彼女はちゃんと調べ上げていたのだ。山渓地でもある温泉街。
となれば、景色よく見える露天風呂があるであろうことも委細承知なのであった。客数も少なく、騒がしくもなく。
ただただしっとりとした時間の流れる露天。
目の前に広がる自然が詩乃の心を癒やしてくれる。
これは幸運だっただろうか? いや、違う。これが詩乃の普段の行いという名の神力の発露!
彼女は景色と温泉を堪能した後、温泉街にて名産品の山菜を見つけホクホクした顔でキャンプ場へと向かう。
これならば炊事場で下茹でをしたりなどしてサラダやおひたしにもできるだろう。
それに食材も用意できている。
きっと楽しいキャンプめしが食べられるに違いない。
詩乃は温泉で温まった肌に受ける心地よい風を感じながら、軽い足取りでゆっくりと歩む。
なんでもない日を堪能する。
そのためだけにある一日。それを噛みしめるように――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【菜医愛流帝FC】
後方で待機?
だいじょぶ!
日常ならナイアルテさんもいっしょできるはずだし、
行かないなんて選択肢は、アトミックボムだね!
さ、ナイアルテさん、いっしょいこー!
と、サージェさんと両脇からがっしり確保。
ま、まぁどうしても無理っぽいなら、あとで合流でもいいけど!
温泉街では、まず食べ物とか飲み物の調達かな。
キャンプセットは一通り持ってるから、
BBQ用の各種お肉、できればジビエ系と、飲み物はお水に粉のココアがいいな。
キャンプ場があるなら、売ってるところあるよね。
そしてこれが大事の水着!
なんで、って……川があるかもしれないじゃないー♪
ナイアルテさん、見立ててあげるね♪(はぁはぁ)
キャンプの準備が整ったら、温泉にも行ってみよう。
……うわぁ、なんていうかうわぁ。
忍べない、これは忍べないよ。サージェさん、諦めようよ。
そしてこっちもうわぁ。
チョコ(肌)●イとはこのことか!
これがヘブンか!
自分を見るとそこはかとないさみしさもありますが、
幸せが勝るね!
しっかり汗を流したら、キャンプ場にごー、だね!
サージェ・ライト
【菜医愛流帝FC】
お呼び…じゃないですよねー予知した事件に間に合わなかったクノイチなんてーうふふー
焚き火っていいですよねーうふふふー(うつろなめ
いえ、我らがナイアルテさんの疲労を癒すためなら!
クノイチ頑張ります!
ええ、こんなこともあろうかとファンクラブで来ました!
え?誰のってナイアルテさんの。
出来るならナイアルテさんも一緒にいきましょー
いえ、付き従います(キリッ
せっかくですし温泉街も楽しんでいきましょう
理緒さんこっちにいっぱい売ってそうですよー
えーと、猪に鹿に鴨にっと
飲み物はやっぱり炭酸ジュースですよね!
世の忍ぶクノイチですがまだ13歳なので!
そして理緒さんの表情がカメラに映せない感じになっているのですが
水着?水着ナンデ??
しかしナイアルテさんの水着を選ぶのは最高ですね(はぁはぁ
あのチョコ肌に似合う…白かなーシンプルに白いビキニかなー♪
ふぅいい汗かきましたこの流れで温泉は自然な流れですよね?ね?
誰が忍べてないと!?
こんなにクノイチなのに!!
それに存在感ならチョコパイ(比喩)のほうが!!
菜医愛流帝ファンクラブ。
それは非公式なファンクラブである。
まあ、2名位しか在籍してないでしょって思うものであるが、当人たちがそう名乗っているのならば、それはそれでいいのかもしれない。
曖昧な微笑みを浮かべているグリモア猟兵は、なんともまあ押しの強いファンクラブの二人に押されっぱなしであった。
「行かないなんて選択肢はアトミックボムだね!」
そういう菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の朗らかな笑顔を前に、なんで原子爆弾? とか考えてはならない。
考えるな、感じろ!
きのこ雲しか脳裏に浮かばない!
そんな理緒がぐいぐい来る中、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は隅っこでちょっとイジイジしていた。
「および……じゃないですよねー予知した事件に間に合わなかったクノイチなんてーうふふー焚き火っていいですよねーうふふふふー」
虚ろな目をしているサージェ。
ハイライトが家出しているようである。
サージェは先月の事件に駆けつけるのに遅れてしまったことを悔いているようであるが、無事に解決できたので問題なしである。
しかしながら、サージェは立ち上がる。
「いえ、我等が『菜医愛流帝』ファンクラブ、その疲労を癒すためなら! クノイチがんばります!」
いや、だからなんでそんな非公認のファンクラブが存在しているのかというツッコミは野暮というもんどえある。
「ええ、こんなこともあろうかとファンクラブで来ました!」
総勢2名!
数の問題ではない。一緒に行きたいのだ。いや、付き従うのです! とキリっとした顔をされても、ちょっと困ってしまう。
グリモア猟兵は、こういう時、転移を維持しなければならないから後方待機なのだ。自分の集中が乱れて、転移が維持できなくなってしまえば、それこそみんなの楽しむ顔が陰ってしまうことのほうにこそ、グリモア猟兵は心をすり減らしてしまうだろう。
だから、彼女は残念だけれどと言うふうに微笑むしかない。
「んー、なら仕方ないけど。後で合流してもいいよね!」
「ええ、せっかくですから楽しんでもらいたいのです!」
そんなふうに言われては、後方からちょっとずつ着いていく他ない。皆の笑顔が一番の特効薬なのだから。
理緒とサージェは、それならば温泉街を思いっきり楽しもうとキャンプ場に向かう前に食料の調達に走る。
「理緒さん、こっちにいっぱい売ってそうですよー……えーと、猪に鹿に鴨にっと」
サージェが見やるのは温泉街の精肉店だ。
そこには山渓地が近いことも合って、様々な山の動物の精肉が並んでいる。
「朝にしめたものばかりだから、鮮度は抜群よ! どうだい、今ならお嬢ちゃん達綺麗だからサービスしていおくよ」
「ジビエ系にしたいって思っていたから、これはありがたい、ねー。じゃあ、珍しいのをもらっちゃうかな」
そんなふうにしてサージェと理緒は食材を調達していく。
二人はしっかりしているが、まだ未成年だ。
アルコールの類はまだ楽しめない。ジュースとココアで乾杯する予定。世を忍ぶクノイチとは言え、ここだけはしっかり法令遵守しなければならぬ。
「キャンプ場があるなら、売ってる所あるよね」
何が? とサージェは首をかしげる。理緒に釣れられてやってきたのは、スポーツショップ。
え、なんで。
そう、もうすでに季節は梅雨通り越して夏! 暑い! たまらんくらいに暑いのである。ならばやることは唯一つ!
「大事の水着!」
「水着? 水着ナンデ??」
「なんで、って……川があるかもしれないじゃないー♪」
サージェは気がついた。
理緒の表情がカメラに写せない感じのアレな感じになっているのを。そんでもって気がついたのだ。
これはあれである。
こういうことにかこつけて、水着を選ぶ事ができる。ちょっとしたファッションショーが開催できてしまうではないか、と。
二人にその時電流が走る。
「見立ててあげるね♪」
はあはあ、やばい息を荒げながら理緒がグリモア猟兵の分まで選んでいく。
「あのチョコ肌に似合う……白かなーシンプルに白いびきにかなー♪」
理緒もサージェもノリノリである。
やべーぞ! 欲望がただ漏れである。しかし、残念であるが、水着コンテストまで水着お披露目はお預けである。
刮目して待て! 次回!
そんなやり取りが終わった後は、良い汗(?)を流すために温泉にレッツラゴーである。
「この流れで温泉は自然な流れですよね? ね?」
ちっとも自然ではない。不自然の極みであるが、まあ、ここは温泉街であるし。そういうこともあるのではないかなぁって思わないでもない。
だがしかし、理緒は微妙な気分になっていた。
お湯に浮かぶ二つのなんかこう、幸せの象徴のふくらみ。
浮かんでいる。何がとは言わないけど。浮かんでいる。
「……うわぁ、なんていうかうわぁ」
理緒はもう若干引いてるんじゃないかって顔をしている。
「忍べない、これは忍べないよ、サージェさん。諦めようよ」
「誰が忍べてないと!? こんなにクノイチなのに!!」
かしましい。
とってもかしましい!
すごいぞ、リアル温泉回だ!
「それに存在感ならチョコパイのほうが!!」
何の暗喩なのかわからん。いや、わからんってことにしておいて欲しい。サージェの言葉は虚しく温泉の湯気の向こう側に消えていく。
理緒は自分のを見やるとそこはかとない寂しさを覚えてしまうが、それ以上に幸せのほうが勝る。
そう、大きいのも小さいのもどれも良いのです。
貴賤など無い。
ただそこにあるだけで幸せの存在なのが二つの膨らみなのである。
何がとは言わない。
そんなこんなで二人は汗をしっかりと流してキャンプ場に向かう。
お楽しみはこれからだ――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
ルクスと
「ふっ、キャンプならば、数百年の流浪生活で野営を極めたこの我に任せておくがよい!」
『サブジョブがキャンプアスリートになっておりますね、フィア様……』
キャンプとは生きるか死ぬかの極限の戦い!
キャンパーこそ究極のアスリートと言えよう!
「というわけで、ルクスよ、まずは食べられるうちに腹いっぱい食べておくのだ!
土産物屋の試食コーナーを食らい尽くすぞ!」
『フィア様、いくら無一文だからといって、試食コーナーを荒らすのはいかがなものかと……』
ふっ、銃弾飛び交う戦場でもキャンプをおこなうキャンプアスリートにとって、キャンプとは生死をかけた戦い。
そのような些事に構っている場合ではないのだ!
ルクス・アルブス
フィア師匠と
ほんとだ、いつのまにか師匠がキャンパーに。
次回から『勇者パーティ』から『あすキャン△』に改名でしょうか?
って、あなた誰ですか!?師匠の使い魔?
なんですか師匠、浮気ですか?わたしというものがありながら!
ま、あれは焼き鳥にするとして。
やっととっ捕まえた師匠ですし、
いっしょなら、名前とかなんでもいいですけど!
え?師匠?
キャンプの準備って試食コーナー荒しですか!?
……ああ、さすが師匠。
『通り過ぎたあとは鉄板に落ちた肉汁すら残らない』と恐れられたその技、
温泉街でもその神速の試食は健在……。
いえ、試食に出されている量が多い分、パワ-アップしている……!
これで出禁の街がまたひとつ……(とおいめ)
異世界放浪記とも言うべきフィア・シュヴァルツ(宿無しの漆黒の魔女・f31665)の旅は今日も続く。
旅っていうか、逃走劇っていうか。
借金取りから逃げているっていうか。
異世界のあちこちで多大な迷惑を駆けまくっている師匠ことフィアと合流を果たしたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)はなんだかなぁって気持ちを抱かずにはいられなかっただろう。
「ふっ、キャンプならば、数百年の流浪生活で野営を極めた我に任せておくがよい!」
きらっと光る瞳。
不安しか無い。
また火を付けるといって、魔法ぶっぱするんじゃないのって疑いの視線がフィアに突き刺さっているわけであるが、そんなことをいちいち気にするような大器ではないのである。
『サブジョブがキャンプアスリートになっておりますね、フィア様……』
使い魔の『フギン』の言葉にルクスはたしかにってうなずく。
もしかして、次回から『勇者パーティ』から『あすキャン△』に改名しなければならないのではないかとルクスは思ったが、それは色々な権利が被ってきて、どろぬまの訴訟沙汰になりそうな気がするのでやめておいた方がいいのでは、と『フギン』は思ったが、ちょっと黙っておく。
「って、あなた誰ですか!?」
『フィア様の使い魔のフギンと申します』
折り目正しい挨拶。
なんか正妻っぽい。そんな所作にルクスは戦慄する。
「なんですか師匠、浮気ですか? わたしというものがありながら!」
ルクスの糾弾が飛ぶが、フィアはそんなことなどどこ吹く風でキリッとした顔をして温泉街の試食コーナーに突撃していく。
あっ、ごまかされた! とルクスは思ったであろうが、単純に腹の虫のせいである。
「キャンプとは生きるか死ぬかの極限の戦い! キャンパーこそ究極のアスリートといえよう! というわけで、ルクスよ!」
「は、はい!」
「まずは食べられるうちに腹いっぱい食べておくのだ! 土産物屋の試食コーナーを食らい尽くすぞ!」
『フィア様、いくら無一文だからといって試食コーナーを荒らすのはいかがなものかと……』
「そういうツッコミはわたしの役目なんですけど!」
いずれ焼き鳥にしようとルクスは決意しつつ、『フギン』とバチバチである。
そんな二人のバチバチバトルを尻目にフィアは早速土産物屋の試食コーナをかっくらっていく。
見事な試食あらし。
今の所、巻き戻せるか? 恐ろしいほどに早い試食。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「……ああ、さすが師匠。『通り過ぎたあとは鉄板に落ちた肉汁すら残らない』とウィアレたその技、温泉街でもその神速の試食は健在……」
『いえ、試食に出されている量が多い分、パワーアップしておりますよ』
「それわたしのセリフなんですけど!!」
仲いいなぁってフィアは二人の様子を眺めがながらもぐもぐしている。
だがしかし、ここは銃弾飛び交う戦場ではない。
もっとゆっくりしていいんじゃないかなーって思わないでもない。しかしながら、キャンプを行うキャンプアスリートにとって、キャンプとは生死をかけた戦い。
ああいう痴話喧嘩するほど互いの仲が深まっていく。
ほうっておいてもいいだろうとフィアは頷き、試食試飲という名の土産物屋あらしを観光する。
「あ、あの……そろそろ、試食は……」
「些事、小事! 我を止められるもなどいないのだ! これこそがアスリート魂の発露よ!」
そんなふうにして土産物屋の試食コーナーをあらしにあらしまくったフィアは、後にこの温泉街を出禁とされてしまうのだが、それはまた別の話である。
「これで出禁の街がまたひとつ……」
ルクスは遠い目をしていた。
だってそうである。フィアが出禁ってことは、その一行であるルクスもまた出禁である。
パーティの不始末はパーティの不祥事。
一蓮托生とはこのことである。
ああ、とルクスはため息をまた一つつく。けれど、師匠のそばにあるのが弟子のアイデンティティ。
ならばこそ、ルクスは手間のかかる師匠のお世話を仕方なく……いや、仕方なくって顔じゃないな! あれ!
完全に、もう師匠ってば、わたしがいないと駄目なんですからーって、そういう顔だあれ!
そんな二人の様子を俯瞰した位置で眺めることのできる唯一の存在である『フギン』はこれからも二人の珍道中に付き合わなければならないことに、正直諦めの息を吐き出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
温泉を堪能したあと、温泉街でお買い物
少し歩くたびに魅力的なお土産やグルメが目に留まる
温泉といえば温泉まんじゅうだよねぇ
食材を扱っている店に入れば
スーパーと違い、質も値段もお高そうなものがいっぱい
ものすんごい立派なブロック肉を発見
これをシンプルな塩味で焼いて食べたらさぞ美味しいんだろうなぁ~
なんて妄想しながら買い物かごにイン
バーベキューの肉といえばウィンナーやベーコンも定番だよね
羊肉やイノシシ肉だなんてちょっとレアな肉まで売ってある
見つけた肉を次から次へと買い物かごにイン
あとは食後のデザートも外せないよね
スモア用のビスケットやチョコ、マシュマロなども更にイン
ふふ、ご飯の時間が楽しみだね
乱獅子・梓
【不死蝶】
綾、土産を見て回るのもいいが
目的はバーベキューの食材の買い出しだからな
子供のようにあちこち動き回る綾に声をかける
こんなに色々な施設や店があればはしゃぐ気持ちも分かるがな
どれを買ったものか…と品定めをしている間に
ポイポイと買い物かごに何かが追加されていく
見てみれば、肉、肉、肉、菓子、菓子……
まるで小学生のようなチョイス
コラ!偏りすぎだろお前!
ちゃんと野菜も食べなさい!
オカン丸出しなお説教をしたあとに
野菜類やキノコ類を買い物かごに入れていく
おっと、酒も忘れちゃいけないな
最終的に明らかに予算オーバーなくらいに
かごにアレコレ入っているが(大体綾のせい
まぁ今日くらいは贅沢したっていいだろう
温泉街は長閑な場所であったし、賑わってもいた。
湯気がそこかしこに立っているのは、ここが源泉を共有し管理しているからであろう。
土産物屋が通りに立ち並び、観光客を呼び込む街の人々の笑顔が眩しい。
そんな中を灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の二人は温泉で温まった肌をつやつやとさせながら歩いている。
二人はすでに温泉を堪能した後であり、この後に控えているキャンプのための食材を買い出すために温泉街を見て回っているのだ。
しかし、綾は少し歩いては立ち止まり、魅力的なお土産屋グルメに目が引き寄せられてしまうのだ。
「お、お兄ちゃん、うちのを食べていかないかい? 温泉まんじゅう!」
そんなふうに呼び止められてはいちいち綾は立ち食いをしているのだから、買い出しが遅々として進まないのは当然であったのかもしれない。
「温泉と言えば温泉まんじゅうだよねぇ。じゃあ、一つもらおうかな? 梓は食べないのかい?」
「だから、目的はバーベキューの食材の買い出しだからな。見るなとは言わないが、本来の目的を忘れては困るんだよ」
確かに気持ちはわからないでもない。
こうもいろいろな施設や店があれば、はしゃぐ気持ちにもなろうというものである。
他世界とくらべてオブリビオンによる事件は、どれもがスポーツ競技によって勝敗を決するものであるから、生き死に関わることが少ない。
爽やかささえ感じさせる世界であると思えただろう。
「まあまあ、はい、はんぶんこ」
そういって綾が梓の口に半分に割った温泉まんじゅうを押し込めば、もう黙るしかないのである。
梓は仕方ないなと思いつつ、八百屋や精肉店の軒先を眺める。
もごもごと温泉まんじゅうの甘さに嬉しくなりながらも、彼の視線は精肉や野菜の品定めに余念がない。
そこにあったのは職人の眼差しであった。
「こっちの肉は?」
「朝、罠にかかっていた猪の肉だよ。血抜きもしっかりとしているから、固くなっていないし、臭みも少ないよ」
猪の肉はくさみが強いと良く言われるが、処理さえ早くすれば上質な肉なのだ。なるほどな、と梓はこういう土地柄ゆえの食材にうなずく。
けれど、梓は気がついた。
そう、なんかキャンプに持っていく食材を入れているズックが重たくなっているのだ。
「……ん!?」
「あ、バレた」
梓が背後を見やれば、そこにあったのは綾の顔であった。
彼がズックの中に入れていたのはブロック肉。だってすんごい立派なお肉だったんだものって言い訳したのは、まあいい。
よく目利きが効いていると言ってもいい。確かに上質。
けれど、問題はそこではない。
「なんだこれ、肉、肉、肉、菓子、菓子……まるで小学生だろ! コラ! 偏りすぎだろお前!」
ちゃんと野菜も食べなさい! とおかんな梓の言葉に綾はテヘペロでごまかす。
「いや、でもさ。これをシンプルな塩味で食べたらさぞ美味しいんだろうなぁ~ってそう思わない?」
そういいながら、またウィンナーやベーコンをインしていくのだからたちが悪い。
しかたなしに梓は野菜の方を選ぶことにする。
「ったく……しかたないな。こっちは野菜を選ばないとな。おっと、酒も忘れちゃいけないな」
なんだかんだいいながら、梓は綾に甘いのである。
明らかに野菜、お酒まで買うと予算オーバーなのだが、まあ、今日くらいはという気持ちが梓にはあるのだろう。
なんといっても、戦いが一切絡まないのである。
ならばこそ、こうしたなんでもない一日がどれだけ貴重であるかなど言うまでもない。
「食後のデザートも外せないよね。スモア用のビスケットやチョコ、マシュマロ……」
「だから、チョイス!」
そんなふうに二人のやりとりは騒がしくも穏やかに過ぎていく。
ズックがパンパンになって、正直重たすぎる。
「お前も持てよ!」
「わかってるってば~ふふ、ご飯の時間が楽しみだね」
綾が笑う。
そんな顔をされては、梓も笑うしかない。
キャンプ場までまだ距離はある。少しでもお腹を減らしておかなければ、きっと食材を食べきれないだろう。
けれど、それもまた楽しい思い出になる。
そんな予感と共に二人はキャンプ場へとゆっくりと歩んでいくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
佐伯・晶
たまにはこうやってのんびりするのも良いよね
まずは温泉街で食材や飲み物を調達しよう
新鮮な食材なら焼いただけでも美味しいんだよね
お酒も用意しとこうか
気軽に生もの持ってけるのはありがたいね
御利益として感謝しないでもないかな
神域は冷蔵庫ではありませんの
後で片づけるから許してよ
…ああ、アイスも買ってこうか
後で憶えておくと良いですの
準備が終わったら温泉でさっぱりしよう
家族風呂を借りてのんびり過ごすよ
こうしてると生き返るようだね
温まって伸びをすると気持ちいいな
ならその感覚のまま固定してあげますの
永遠にと言いたいところですけど
時間までで勘弁してあげますの
良いオブジェもできましたし
私ものんびり浸かる事にしますの
猟兵としての日々は慌ただしいものばかりである。
片時も休むことができない、というわけではないが、どうしたって戦いの中に身を置くことのほうが多くなる。
そうなれば、殺伐とした空気に頭は麻痺し、弛緩する。
考えるよりも早く行動に移すようになる。
それは戦いというものに肉体が最適化していくようなものであっただろうし、猟兵としての本分を考えた時、生き残るためには必要なものであったことだろう。
しかしだ。
「たまにはこうやってのんびりするのも良いよね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はオブリビオンとの戦いの起こらぬ日常を満喫していた。
温泉街は硫黄の匂いがあちらこちらから漂ってくるし、いろいろな土産物屋や食材を取り扱う店が立ち並んでいる。
出店なんかを見やれば、大抵のものは揃っているし、焼きとうもろこしなんかの香ばしい香りが晶の食欲を刺激するだろう。
「新鮮な食材なら焼いただけでも美味しいんだよね」
「お、よくわかってるじゃあねぇの。準備できたぜ、ほら、楽しんでな」
そう言って精肉店の店主から牛肉を受け取って晶は、身に融合した邪神の領域へと入れる。
『神域は冷蔵庫ではありませんの』
そんなふうに邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)をするつもりはないと言わんばかりに邪神が不満げな顔をしている。
「後で片付けるから許してよ」
『そういう問題ではありませんの。近頃はどうにも敬いの気持ちが薄れているような気がしますの』
最初からそんなにないような気がするけどなぁって思っているが、まあ、神域に放り込んでおけば冷蔵庫のように使えるのはありがたいなぁって思っているので、それはそれで敬いの気持ちには含まれないのだろうかなどと晶は思うだろう。
これもご利益の1つだと晶はのんびりと考えていた。
それがこの後裏目に出るのであるが、それもまた一つの思い出だ。たぶん。
「……ああ、アイスも買ってこうか」
『後で覚えておくと良いですの』
邪神のつぶやきが聞こえてか聞こえずか、晶はこの段においてもまだのんびりとしていたのだ。油断していたと言ってもいい。
そのまま温泉宿になだれ込めば、家族風呂を借り切って邪神の分霊と共に浸かる。
のんびりとした空間。
穏やかな時間。
それは何物にも変え難き時間だろう。
得ようと思って得られるものではない。特に猟兵として生きるのであれば、なおさらだ。
足と背を伸ばして晶は息を吐き出す。
「命の洗濯とは言ったものだね。こうしていると生き返るようだよ。気持ちいいな……」
ほう、と息を吐き出す。
体の芯から温まったがゆえの弛緩。だが、その時を待っていたとばかりに邪神の分霊が晶の体に触れる。
「……? 何?」
『ならその感覚のまま固定してあげますの』
にこりと微笑む邪神の言葉と共に晶の体が固定されてしまう。石像、オブジェと化した晶は内側で何事か喚いたようであるが、それも届かない。
邪神の分霊は意趣返しのように言うのだ。
「このまま永遠にと言いたいところですけど、時間までで勘弁してあげますの」
良いオブジェもできましたし、と邪神の分霊が笑い、のんびりと浸かる。
晶は、こういうところでそういうことしなくてもいいじゃないかと固定されたまま内側で叫ぶ。
けれど、冷蔵庫代わりにされた不遜の代価は、邪神の分霊が温泉に満足する時まで支払わされ続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
ナイアルテ!キミ疲れてるんだよ!
え~歩き~?めんどくさーい!
●一分後
ふんふんふーん♪あるこ~あるこ~♪
ダークセイヴァーを歩くよりはよっぽど楽しいね!
あっちはあっちで刺激的だけれど!
いっしょに地獄ウォーキングをする魂人くんたちの辛気くさいったらないものね~
●温泉
ざっぷ~~ん!
ばしゃばしゃばしゃ
ざぷざぷ
そうそう温泉ならまだいいけれどなんか血の池地獄みたいなところもあってさ~
●ぱくぱく飲んで食べて
そうそう一見こんな感じの大人しそうな魚?魚かな?がさー
めっちゃ大きいのが!ばくーっって襲い掛かってきてー!
丸呑みされちゃうんだ!
あのなんとか回帰ってのがなければ危ないとこだったね!
焚き火は不思議なものである。
例え、目の前で焚き火をしてないくても、画面越しに見える揺らめく炎と木が爆ぜる音を聞くだけで何故か癒やされるものである。
不思議である。
視覚と聴覚だけでもまた焚き火は癒やしを齎してくれるのだ。
現代社会に生きる者にとって、癒やしとは様々な形を持つものである。ぱっとみやばいなぁって思っていても、本人とっては、それが最高の癒やし足り得ることもあるのだ。
「え~歩き~? めんどくさーい!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は早速ぶーたれていた。
だって、転移できるのならば、直でキャンプ場に降り立てばいいのだ。なのに、転移したのはキャンプ場より手前の温泉街である。
ちょっぱやでって言うのがロニの言い分なのであろうが、こうした余暇もまた必要なのである。
何も結果だけが全てではない。
こうしたムダを楽しむこともまた、良いものである。
とは言え、あるき始めて一分後には最初のころの面倒くさがりなロニも鳴りを潜め、歌を歌いながら歩いていくのだ。
「ふんふんふーん♪あるこ~あるこ~♪」
鼻歌まじりであるし、何の歌であるかわからない。
けれど、ごきげんであることには代わりはないだろう。
なにせ、ダークセイヴァーを歩くよりはよっぽど楽しいのだ。
あっちはあっちで刺激的ではあるのだが、まあ、控えめに言って地獄である。ウォーキングのお供である『魂人』たちの辛気臭い顔をロニは思い出したくなかったのだ。
そんでもって温泉宿を抜けてキャンプ場までの道中、ロニは偶然であるが隠された秘湯を見つける。
動物たちの憩いの場なのだろう。
温泉宿のように整地されてはいないが、これはこれで岩に囲まれた天然の湯船は、違った魅力があるだろう。
「ざっぷ~~ん!」
いえーい、とロニは早速飛び込む。
動物たちは、まだこの時間には訪れないのか貸切状態である。ばしゃばしゃざぷざぷと一頻り泳ぎロニは満足する。
とは言え、また思い出すのは他世界のことである。
なんか血の池地獄みたいなところもあったなぁって思い出してしまうのだ。
なんていうか、余暇なのに、思い出すのは離れたいと思っていた仕事のことばかり、とかそんなところにロニは落ち込んでいるのかもしれない。
やることなすこと全部、そっちの記憶に引っ張られてしまうなーって思いながら、ロニは温泉から上がると温泉街の通りで買ったたいやきを加えてキャンプ場までまたあるき出すのだ。
「そうそう一見こんな感じのおとなしい魚? 魚かな? がさーめっちゃ大きいのが! ばくーって襲いかかってきてー!」
丸呑みされちゃうんだよねーってたい焼きを丸呑みしながらロニは笑う。
なんていうか、凄絶すぎて、こう笑いどころがわからん。
いやはや、永劫回帰の力がなければ危ないところだったなーってなんとも道中の談笑には向かない話を続けながら、ロニはダラダラと歩き続ける。
気が紛れることは少ないけれど。
けれど、こんなふうにゆっくりと道を歩くこともまたいいだろう。戦いにおいては特に迅速さが求められるもの。
「でも今日は違うもんねー。お、あれかな、キャンプ場って」
ロニの目の前に開けたのは山渓地。
渓流が流れ、岩場もあれば少し高い芝生が敷かれた場所もある。今日は一日そこで過ごすのだ。
なんでもない一日はここから。
楽しい時間はすぎるのは早い。これはうかうかしていられないぞとロニは腕まくりし、楽しげに跳ねるように走り出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『キャンプめしを食べよう!』
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POW : 出来立てを沢山美味しく食べる
SPD : 現地で何らかの食材を調達してくる
WIZ : キャンプならではの調理法に挑戦する
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猟兵達は各々の準備を終えてキャンプ場にたどり着く。
そこは山渓地らしく渓流が流れ、岩場が広がり、少し小高い場所には芝生が敷かれた土地もある。
この一帯の何処にでもテントを張っていいようである。
「ようこそ。予約の話は聞いている。困ったことがあったのならば、私に声をかけてくれれば、できることならば手伝おう」
そういうのは、この土地の管理者である『八雲』と名乗る老人であった。
彼は猟兵たちがテントを設営する場所から少し離れたロッジにいることを告げる。
「炊事場は共用で、薪は数を用意しているが燃やし過ぎには注意して欲しい。直火もいいのだが、土地が傷んでしまう。私から言うことはこれくらいだ」
良い一日を過ごしてくれ、と『八雲』翁は告げて離れていく。
猟兵達はテント一式を手渡され、それぞれのテントを設営するために動き出すだろう。
テントが設営し終われば、もうお昼時だ。
となれば、次なるは食事の用意だろう。焚き火を起こしてバーベキューや料理をしてもいい。
炊事場には調理器具が用意されているし、ピザ窯だってある。
足りない食材があれば、『八雲』翁に言えば分けてくれるだろう。過不足のないサービスが、このキャンプ場の売りなのだろう。
さあ、なんでもない日の醍醐味。
なんでもない日だけれど、特別な食事。
それを楽しむ時間だ――。
メサイア・エルネイジェ
おテントを建てたら渓流へ参りますのよ〜!
ヴリちゃんはお留守番しておりますのよ
わたくしにはお土産物屋のとっつぁんから頂いた宝の地図があるのですわ
これがあれば勝ったも同然でしてよ!
道中は中々におハードですけど今のわたくしには丁度よろしいですわ…体重が…
ルアーはトラウトが大好きなスプーンを使いますわ
狙うポイントは流れ込みや岩影ですわ
お魚は地形の変化を好むのですわ
釣れたら早速お料理の準備ですわ
ハラワタを引っこ抜いて鱗を取って両面に塩胡椒をばーっと振るのですわ
そしてピザ窯でこんがり焼き上げるのですわ
シンプルイズベストですわ
大自然のお味を感じますわ!
あ、ヴリちゃんには焼きエネルギーインゴットを…いらない?
キャンプ場に辿り着いたら、早速テントの設営である。
これが慣れないと中々難しい作業であるのだが、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は手慣れた手付きで設営を終えてしまう。
お姫様然としているから、きっと手こずるだろうなと思っていたら、そんなことはまったくなかったのである。
伊達に放浪していない。
彼女が王国を出奔してから早何年になろうかというのかは定かではないが、明らかにサバイバル慣れしている。
しかし、今の彼女の気迫はなんだか目をみはるものがあった。
とてつもない決意と共に握りしめた地図がくしゃっているほどである。何が彼女をそんなに駆り立てるのか。
その理由は明らかである。
彼女の小脇に抱えた釣り道具一式。
それは彼女のキャンプめしの主役を釣り上げるための大切な道具なのである。
「ヴリちゃんはお留守番しておりますのよ。というわけで、渓流に参りますのよ~!」
彼女はこれからニジマスを狙って渓流へと向かう。
水が綺麗なのか、日差しを受けてキラキラと輝いている。だが、今メサイアが目指すのはキャンプ場近くの渓流ではない。
「ほう……あそこに行くのかね」
キャンプ場の管理者である『八雲』翁がメサイアの地図を見やりうなずく。多くは語らない。
「はい。お土産屋のとっつぁんから頂いた地図ですわ。これがあれば勝ったも同然でしてよ!」
道はなかなかにおハードである。
しかし、今のメサイアにはちょうどよいのである。何故ならば、太……じゃない、えっと、そのえーと、えっと。
そう! お腹がとても空いているので! 丸々と太ったニジマスがほしいのである! 断じて、ちょっとお体重がおオーバー気味であるとかそういう理由ではない。正解かもしれんが、そういうことにしておいたほうがいいのである。
「それでは参りましてよ~!」
メサイアはポイントにたどり着くまでに色々大変な目にあった。
猪に追いかけられたり、木の根っこにつまづきそうになったり、岩場を乗り越え、草木をかきわけ!
とても大変であった。
けれど、寧ろ喜ばしいことである。今のメサイアにとっては!
「はぁ……はぁ……漸くたどり着きましたわ~! ではいざ!」
彼女の釣り竿に取り付けられているのはルアー。
トラウト……即ちニジマスなどが好むスプーン・ルアーを使用する。金属で出来たスプーンルアーはきれいな水の中でキラキラと輝いて、ニジマスたちの目を引くだろう。
それにメサイアは釣りというものを心得ている。
狙うポイントは水流が流れ込む場所や、岩陰。
そこにルアーを放ち、ゆるりとリールを回す。
「お魚は地形の変化を好むのですわ! あ、それ! おヒットですわ~!」
ふぃーっしゅ!
メサイアのアングラーとしての才能は本物である。
一投目から幸先の良いスタート。
程よく太ったニジマスをゲットし、さらにメサイアは竿をしならせる。流石は土産物屋のとっつぁんの教えてくれたポイントである。
只者ではないと思っていたが、これは大当たりである。
そんなこんなでメサイアはニジマスを食べる分だけゲットしてキャンプ場へと戻ってくる。
「さて、それではお料理の準備ですわ」
メサイアはキャンプ場の炊事場にゆくと、そこでニジマスを捌き始める。ハラワタを引っこ抜き、鱗を取る。
手慣れた手付きで彼女はニジマスを食べられるように調理していく。両面にささーっと塩胡椒を振る。
以外にもシンプル。
けれど、こういうのはシンプルなのが一番いいのである。
「お次はピザ窯……は、一番乗りですわね! 遠慮なく使わせていただきますわ~!」
ピザ窯を温め、そこにニジマスを送り込む。
高い熱で焼き上げていけば、良い香りが漂ってくる。食欲が凄まじい勢いでメサイアの中で渦巻いていく。
ああ、これこそが釣りの醍醐味。
食べるという行い。
人間はそもそも狩猟をしていた生物だ。ならばこそ、釣りをして食べるという行為は、文明を築き上げてもなお、残る本能を刺激する。
熱々のニジマス。
串に刺さったニジマスの表面はぱりぱりで、身はふっくらしている。
「いただきますわ! ぱくっ! んん~! シンプルイズベストですわ! 大自然のお味を感じますわ!」
塩味って素材のお味を最大限に引き出してくれるものですわ!
メサイアは王国の姫であることを忘れさせるような良い笑顔でニジマスをぱくぱくですわ! ってな具合にニコニコしている。
あっ! とそこでメサイアは気がつく。
テントのそばに鎮座する『ヴリトラ』の存在に。
ちょっと、じっと見ている『ヴリトラ』のアイセンサーと目が合う。
考えていなかった。
でもでも、『ヴリトラ』はキャバリアである。ニジマスは流石に食べませんわよねぇってメサイアは考えた末に出した答えは割とシンプルイズベストだった。
「焼きエネルギーインゴットを……あっ、いらない?」
むしろ、焼きエネルギーインゴットとは一体……。
熱を加えたら爆発するんじゃない?
そんな一人と一機の奇妙なやり取りをよそにキャンプ場はゆっくりと日を傾けていく。
メサイアのそばにある焚き火が爆ぜる音が耳に心地よく、そして、穏やかに時間が流れていくのを彼女は堪能する。
「少しは体重落ちましたかしら……――」
大成功
🔵🔵🔵
茜・皐月
引き続き二人でサクサクとテントを張って、バーベキューの準備を…準備…
『待ちなさい、貴女、それはなに?』
「ましゅまろ!!」
『マシュマロ??』
ありがちな食材の中に、おおよそ正気と思えない拳より大きいマシュマロがいくつか。
頭を抱えて混乱状態の娘、ウキウキと焼きマシュマロを作る気満々の少女。
温泉で取れた疲れが速攻で帰ってきて泣きそうな娘をよそに、準備続行。
焚火をおこし、食材を切って串に刺し、飯盒でお米の準備を。処理されていく食材の中に…
『…これは?』
「地酒!」
『キャンプに地酒を一升瓶持ってくるなんてどうかしてるわ…』
温泉街で購入したらしいオツマミと地酒。
娘はツッコミを諦めた。
美味しければいいや…うん。
温泉街からユーベルコードによって分かたれた二人の茜・皐月(自由奔放、天真爛漫な魔女・f05517)がキャンプ場へと到着する。
多重人格者である彼女にとって、別人格は敵対するものではなく協力するものであった。
テントの設営だって二人でやれば難しいものではない。
サクサクとテントを張り終えて、いざバーベキューの準備と意気込んだ娘人格の彼女。
『待ちなさい、貴女、それはなに?』
思わず聞いてしまっていた。
少女人格の彼女が手にしていたのは、なにかこう白いもふもふしているような物体であった。ぱっと見てバーベキューの食材です、とは応えられない大きさ。
実に拳よりも大きいものがいくつも袋の中に入っているのだ。
そんな娘人格の彼女に、少女人格の彼女があっけらかんと応えるのだ。
「ましゅまろ!!」
『マシュマロ??』
正直正気を疑うサイズであった。
温泉街で買ったのだろうことは予想できる。マシュマロを炙るのもわかる。百歩譲って、そこまではいい。
けれど、どう考えたって、そんな大きなサイズを食べ切れるのか。
他の食材だってあるのだ。せっかく買ったのだから無駄にはしたくないと娘人格の彼女は頭を抱えて混乱してしまう。
そんな彼女を尻目に少女人格の彼女はウキウキと焚き火を始める。
『温泉で取れたはずの疲れが速攻で帰ってきた気分よ……』
彼女の心を端的に表現した言葉であった。
涙しそうになったのをこらえたのは、褒められるべきことであっただろう。膝から崩れなかっただけでも褒めてもらいたいが、褒める人はいないのである。
これが現実だ。
そんな様子に少女人格の彼女は、何をうずくまっているのだろうと本気で解らない顔をしている。
とは言え、バーベキューの準備は整っていく。
買ってきた食材を串打ちして、飯盒でお米の準備をするところからして淀みないものであった。
『……これは?』
次から次に処理されていく食材。
その中に一つの瓶が見つかる。なんだろう、調味料か何かかと思って娘人格の彼女が、瓶を引きずり出す。
其処に在ったのは地酒『荒ぶっております』であった。なんだそのネーミングって思わず娘人格の彼女はずっこけそうになる。
「地酒!」
『キャンプに地酒を一升瓶持ってくるなんてどうかしてるわ……』
一升瓶を、ごとっとテーブルの上に置けば、支えを失った荷物を入れたリュックの中で雪崩が起こる。
ああ、もう、と思って中身を並べていけば、それが大量のオツマミであった。スナック菓子やらなんやらかんやら。
もう本当に何処まで自分の予想の斜め上を行けばいいのかと、少女人格に対するツッコミを諦めた彼女は、がっくりうなだれる。
「ほらほら~、焼きマシュマロできたよ~! おっきいね!」
そんなふうに天真爛漫な笑顔で言われてしまってはもうどうだっていい。
こぶし大程もある焼きマシュマロの串を、先にこちらに手渡してくるところが、またいじらしいではないか。
しょうがないわね、と娘人格は串を受け取り蕩け落ちそうなマシュマロを一口。
甘い香りと熱々のマシュマロが舌先で転がされる。
『美味しければいいや……うん』
「ね~美味しいよね! あ、こっちも焼けたみたい!」
少女人格の彼女が自分の分も焼けたと串を手にとって、口を開く。
『ほら、やけどしないようにね』
結局、手のかかる妹のような娘のような彼女に世話を焼くことには代わりはない。けれど、どこか微笑みが溢れる。
どんなに大変なことだって、自分たちがひとりじゃないということが理解できる。
焚き火の爆ぜる音が、二人の微笑みに添えられ、火の明かりが一層キラキラとお互いの人の中で揺らめくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
乱獅子・梓
【不死蝶】
テントは渓流の近くに張ろうか
川で釣った魚をすぐ調理して食べられるしな
おい待て(川に行こうする綾を引っ掴み
テント張りを俺に押し付ける気だろうお前
まずは手伝え!
テント設営を終えたらお楽しみのバーベキュータイム
俺は食材を切ったり焼いたりしていくから
その間に綾にはテーブルや皿の用意をしてもらおう
愛竜の焔と零には火加減の調整を頼む
綾の選んだこのブロック肉はどう焼いたものか…
生焼けになったり固くなったりしないように細心の注意を払わねば
どうせなら最高に美味い状態で食べさせてやりたいしな
己の料理の経験と勘をフル活用して丁寧に調理していく
よし、完成だ!
流石は上質な肉、めちゃくちゃ美味い…!!
灰神楽・綾
【不死蝶】
とれたての魚を焚き火で串焼きとか
いかにもキャンプって感じでいいよね
それじゃあ俺は早速釣りに行ってこようかな~(梓に掴まれ
チェッ、バレたか
梓の指示にはーいと従ってテーブルを設置し
皿や箸を並べて食べる環境を作っていく
準備している間に傍からどんどんいい匂いが…
こっそりとつまみ食いしたい衝動にも駆られたけど我慢我慢
きっと待った分だけ美味しく食べられるはず
待ってました~
一番最初に食べるのはもちろんあのブロック肉
んーっ、すっごい美味しいっ
柔らかくて口の中でとろける
お肉の良さと、梓の料理スキルがあってこそ生み出せる味だね
ひたすら肉ばかり食べてたら梓に注意されたので
その後ちゃんと野菜も食べましたとさ
キャンプ場は渓流に面していて、好きな場所にテントを張ることが許されている。
管理者である老人の言葉通り、様々な場所にテントを張るようにペグの打ち込みやすい部分が整備されている。
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、水の流れる渓流の岩場のそばにテントを張ることにした猟兵の一人であった。
川で釣った魚をすぐに調理して食べられるから、という単純な理由であったが、わりとこれは大事なことであった。
けれど、食材はだいぶ買い込んできた。
別に足りなくなることはないと思うのだが、一応、彼のそばには灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)という自由人かつ、たくさん食べる手のかかる弟のような息子のようなパートナーがいるのだ。
「とれたての魚を焚き火で串焼きとかいかにもキャンプって感じでいいよね。それじゃあ、俺は早速釣りに行ってこようかな~」
もうすでに綾の興味は渓流釣りに移っている。
他の猟兵が釣り竿やらを持ち込んでいるところを見て、俄然やってみたくなったのだろう。
けれど、そんな彼の首根っこを抑えるようにして梓が釘を刺す。
「おい待て。テント張りを俺に押し付ける気だろうお前」
「チェッ、バレたか」
「まずは手伝ってから!」
本当にもうおかんみたいなんだから、と綾は笑いながら梓の言葉に渋々従う。そっちもって、ベグはこっち。天幕を広げるぞ、とまあ、一通りのことをこなした後は、簡易テーブルを組み上げたり、椅子を広げたりと雑事が多いこと。
けれど、これだってキャンプの楽しみの一つだ。
扱う道具一つとっても、多くのことが必要なのだ。これを省いたり、誰かにやってもらうのは、それはそれで楽しみを得るための苦しさを棄てることと同じであろう。
「よし、こんなもんかな」
「テーブルってこれでいいの? あ、もう焚き火起こしてる!」
「ああ、誰かさんがまたデカイ肉を選んでくれたからな。これをうまいこと調理しないとならない」
梓は綾の持ち込んだブロック肉を手にとっている。
スパイスと塩胡椒でもってキャンプ場に向かう前に下処理をしていたのだ。後は焼くだけであるし、ここには愛竜の焔と零がいるから火力だって足りないことはない。
一番の危惧はその大きさだ。
生焼けになったり、焼きすぎて固くなったりしたら、せっかくのお肉が台無しである。
ここは慎重に調理しなければならない。
すでにお肉は常温に戻っている。後は鉄板を熱々にして、熱の伝わりを最大限にりようしなけれあならない。
「よし、そろそろいいか。そのまま火力を維持しておいてくれよ、焔、零」
梓の言葉に二匹がうなずく。
轟々と焔が鉄板を熱し、其処に塊肉をおけば香ばしい匂いが漂ってくる。
「あー……いい匂い……」
綾は思わずつまみ食いをしたい気持ちになる。
いつものことだけれど、やっぱりこうした料理を目の前でされると腹の虫がどうにも収まらないのだ。
先程まで温泉街でしこたま食べていたのだけれど、キャンプ場まで歩いてきたから腹ごなしはすでに終わっている。
だが、此処は我慢である。
我慢に我慢を重ねた分だけ、美味しく食べられる。空腹は最高のスパイスとは言うが、まさに綾は己の自制心をフル活用して、それを行っているのだ。
「片面焼いて、さらにもう片面……ブロック肉だから、側面も焼かないとな……」
高熱で一気に表面を焼き火を内部まで通していく。
だが、それだけでは美味しい肉を焼けたということにはならないだろう。全ての面に焼き目をつけた後、梓が取り出したのはアルミホイル。
それでもって手早くブロック肉をくるみ、肉を休ませる。鉄板の弱火の部分の更に端に避けて、その間に野菜を焼いていくのだ。
「ねー、まだー?」
「まだだって。しっかり肉を休ませないとな。もう少しだから野菜でも……ってこっちはまだか」
そんなやり取りがあって、漸く肉を休ませた時間が終わる。
アルミホイルを取り払えば肉と香辛料の香りがあたりに漂う。二匹の竜たちも小躍りするようにはしゃいでいる。
切り分けて取皿に。
「ほら、完成だ!」
「んーっ、すっごい美味しいっ!」
塊肉だから火がちゃんと通るか心配であったが杞憂であった。二匹の竜にも取り分けて食べさせれば、その瞳の色が変わる。
喜んでいる様子がわかって梓も一安心である。
「柔らかくて口の中でとろける。お肉の良さと梓の料理スキルがあってこそ生み出せる味だね」
ぱくぱくとひたすらにお肉を放り込んでいく綾。
「だから、野菜も食べろよ!」
「わかってるってばー!」
「しかし、流石は上質な肉、めちゃくちゃ美味いな
……!!」
二人は焚き火を囲んで食材の美味しさを引き出していく。
肉汁を損なうことなく封じ込めた上質なお肉は塊肉だから出来たことであろう。
二人と二匹の朗らかな笑顔と声が焚き火の爆ぜる音に溶けていく。
日が傾き、徐々に夜の帳が降りてくるだろう。
けれど、その夜の暗ささえも忘れるほどに梓と綾は、キャンプめしに夢中になるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
キャンプ場ね。管理人さん、三名到着。よろしく。
さて、テントは『自分で』立つのが一番よね。
器物覚醒。テントを構成する物資道具類全部に式を宿らせ、自動でテントを張らせる。
見てるだけもなんだし、料理の準備に入りましょう。
道中買ってきた肉や野菜でバーベキューよ。
こういうのは、アヤメが得意でしょ。羅睺もいけるわね。
石積みの竈を用意して、焼き網置いて、串刺しの食材を乗せて。時々裏返し。
あ、ご飯のこと考えてなかったな。
ん、何、アヤメ?
あ、これって忍者秘伝の携帯食料、兵糧丸! ご飯の代わりには難しいけど、お腹にたまりそう。
羅睺、焼き加減はどう? そろそろ焼き上がったんじゃないの?
少々生焼けくらいで丁度いいわ。
キャンプ場に到着した村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)と式神の二人は、その渓流の開けた景色と整備された様子に笑みを浮かべる。
予約してくれていたキャンプ場はアスリートアースにおいても、良い場所であることがわかるだろう。
「管理人さん、三名到着。よろしく」
ゆかりは管理者である老人『八雲』翁に挨拶をして、テント用品の一式を受け取る。
「ああ、聞き及んでいる。炊事場などは先程言ったとおりだ。薪も自由に使っていい」
そう告げる『八雲』翁の言葉にゆかりはテントを抱えてしばし考える。
確かに三人であればテントを張ることも簡単であろう。
しかし、ここで縁は考える。式神使いとしての自分であればどうするか。
「さて、テントは『自分で』立つのが一番よね」
ペグ打ちや天幕を張るなどと言ったやり方は、それなりに慣れないといけない。キャンプ初心者が一番躓くのはテントの設営であるからだ。
「急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし!」
器物覚醒(キブツカクセイ)によって式神が憑依したテント用品たちが独りでに立ち上がって組み上がっていく。
謂わば自動自律のテントというわけである。
見事な式神の使い方に二人の式神も歓声を上げる。
「さ、見てるだけもなんだし、料理の準備に入りましょう」
温泉街で買ってきた肉や野菜。
それらで行うバーベキューだ。二人の式神ならば、こうした食材の下処理も得意だろう。
「ええ、任せておいてください。私が食材を切り分けるので、そちらは串打ちを」
「うん、わかったよー!」
「じゃあ、あたしは石積みのかまどを用意しましょ」
三人が各々己のできることをしていく。
役割分担というやつであるが、こうしたことも普段なら煩わしいと思うだろう。自宅に戻れば、食材は冷蔵庫に入っているし、調理器具も揃っている。
火をおこすのだってガスコンロや電磁調理器があれば簡単だ。けれど、時として、こういう煩雑さ、不便さを楽しむことがキャンプの楽しさの一つでもある。
ふぅ、と息を吐き出す。
その吐息一つとっても楽しいという感情が湧き上がってくるだろう。
「これって結構火力がいるのね……焼き網ってこういう扱いでよかったかしら?」
ゆかりは串打ちされた食材を受け取り、焼き並べていく。
時折裏返して焼き目が付いているのかを確認する。思った以上にバーベキューって大変だと思っていると、アヤメから素っ頓狂な声が上がる。
「え、どうしたの?」
「ね、お米って買ってきたっけ?」
「そうなんです。バーベキューってことしか頭になくって……」
「あ、ごはんのこと考えてなかったな」
ゆかりはちょっと困ったと思っただろう。けれど、アヤメが手のひらに乗せたものを見て思わず笑ってしまう。
「これって忍者秘伝の携帯食料、兵糧丸!」
「えー、これー?」
「もしかしたらって思って持ってきていたんですけど……」
「ふふふ、ご飯の代わりには難しいけど、お腹には溜まりそうね」
こうした失敗の一つだって愛おしいと思える。それがキャンプの魅力なのかも知れない。いつでも成功するとは限らない。失敗も不安要素もまるごと飲み込むしかない。
それがキャンプというものであるのならば、ゆかりたちは正しくキャンプを楽しんでいるのだ。
「そっちの焼き加減どう? そろそろじゃない?」
「うん、でももうちょっと焼いた方がいいかも」
「もう食べたくて仕方ないって感じですね。もう少し待ちましょう?」
そんな二人の反応にゆかりは笑っていうのだ。
「少々生焼けくらいで丁度いいわ。豚肉鶏肉は生焼けだと困るけど、牛肉だったら、大丈夫よ」
それにその程度で倒れるような軟さではないのだ。
ゆかりとアヤメたちは笑い合いながら、和気あいあいと焚き火の爆ぜる音を聞く。
緩やかな時間。
夜の帳が降りることだけが時間の経過を教えてくれる。
そんな不自由さの中でこそ、ゆかりたちは楽しさを覚え、焚き火を取り囲んだ今日というなんでもない日を、きっとこれからも記憶に刻むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
うわぁ、綺麗なところ!川の水がこんなに綺麗なんて!
何処にテントを張ろうかな……
うん、芝生のあたりにしよう
テントを張るのは初めてだから、説明書をよく読んで
難しいところは八雲さんに教えてもらうつもりだよ
テントを張り終えたら、川に野菜を冷やしに行こう
それから、炊事場をお借りして材料を食べやすい大きさに切って
テントの前で焚き火を起こしてバーベキュー!
火加減が難しいけど、失敗してもキャンプは楽しい!
焦げかけのお肉とお野菜、と冷たい野菜、紅茶をあわせて幸せー!
食べ過ぎちゃいそう
後片付けものんびりでいいのがいいよね
紅茶を飲んでくつろぎながら
後で川遊びしようかな、なんて
アドリブ歓迎です
「うわぁ、綺麗なところ! 川の水がこんなに綺麗なんて!」
温泉街を抜けて山渓地へと足を踏み入れた橘・小雪(Tea For You・f37680)がキャンプ場へと辿り着いた時、見た光景はまさに彼女の言葉通りの場所であった。
渓流を流れる水は比較的穏やかで、陽の光を受けてキラキラと輝いている。
水が綺麗でなければ、きっとこんなふうにはならないだろうということがわかるし、キャンプ場はしっかりと管理がされ、手入れがされている。
これも管理人である老人の『八雲』翁が日々手を加えているからだ。
とは言え、小雪は受け取ったテント一式と説明書を見やり、少し悩む。
ペグを打つだとかテントの骨組みを組むだとか、天幕がどうだとか、どうにも初めての彼女にとっては煩雑なものが多い。
けれど、何事にも、誰にも初めてというものはある。
失敗したっていい。
挑戦しないことのほうが恐れるべきことであった。
「うん、芝生のあたりにしよう」
小雪はテント一式を抱えて芝生の方へと歩いていく。山渓地にあって此処は謂わばテントを設営しやすい場所であるといえるだろう。
小高い丘のようになっていて、川の流れを見下ろすような形になっている。炊事場が比較的近い場所にあるのもよかった。
「ふんふん……えっと、まずは……」
小雪は苦戦しながらテントを設営していく。少し難しいと感じるところもパスしながら、四苦八苦しながら進めていくのだ。
けれど、それは失敗なんかではない。苦戦し、工夫しながらやることが最も大切なことだ。彼女は手にとった道具の使い方がわからなくなれば、『八雲』翁に聞きに走る。
「これはこうやって使うといい。初めてにしては良く此処まで自分で組み上げられたものだ。後は天幕を張れば終いだ」
「ありがとうございます。これがあたしのテントなんだね……」
一箇所だけ組み上げられなかった部分が在ったものの、全てと言っていい部分を一人で組み上げた小雪は、すくならず満足感を得ただろう。
「さ、それじゃあ川にお野菜を冷やしに行こう」
温泉街で購入した野菜。
それをネットに入れて、渓流を歩く。穏やかな時間だ。ゆっくりとしている。心地よい風が、初夏の訪れを教えてくれるし、テントの設営で汗ばんだ頬をなでてくれる。
川の流れに任せるように野菜を入れたネットを浸せば、思いがけず跳ねた水が手に触れて、その冷たさを教えてくれるだろう。
「次は焚き火だね。バーベキュー……やってみよう!」
火を起こすのが少し難しかったが、これも『八雲』翁のアドバイスもあってなんとか火が育っていく。
薪をくべるというのは、火を育てること。
それがなんとも新しい体験で小雪は自然と笑みが溢れるだろう。火加減が難しいのはしかたない。
けれど、それでもいいのだ。
失敗も苦労も、楽しさのうちだ。
「あっ、これ焦げちゃってる……って、そうだ、お野菜も引き上げないと!」
あわあわと慌ただしくしながら小雪は渓流やテントを何回も往復する。
焦げたお肉の苦さも、冷たい野菜の爽やかさも、何もかもが小雪の心を豊かにしてくれるだろう。
ことことと焚き火に掛けたケトルの蓋が音を立てる。
お湯が湧いたのだ。
「それじゃあ、そろそろ……」
小雪は紅茶が好きだ。戦うよりも紅茶が好きだし、何よりもそれを振る舞うのも好きだ。
至極普通の女の子。
猟兵であることを省けば、そういうところが際立つだろう。
茶葉を蒸らす。香りが僅かに立ち上ってきて、渓流のせせらぎの中に薪の爆ぜる音が混ざり、なんとも言えない音色となる。
そんな中仕上がっていく紅茶の色合い。
お野菜もお肉も美味しかった。思わず食べ過ぎじゃないかなと小雪は思ったが、今日はキャンプ場まで歩いてきたのだ。きっと普段よりも食べていても、過剰になることはないだろう。
普段なら両親の営むカフェーで慌ただしくしているところだ。
食器を下げたり、洗ったり。また次の注文の準備をしたり。けれど、今は違う。片付けも後回しでいい。
「のんびりできていいな……そうだ、日が完全に落ちる前に川遊び、したいな」
そんなことを紅茶を注いだカップを傾けながら考える。
椅子に腰を落ち着け、自然の音、香り、暖かさや涼しさを小雪は堪能するだろう。
カフェーの賑やかさも好きだ。
けれど、こうした耳に障ることのない音に包まれた静かさもまた小雪は大切にしたいと思うだろう。
日が暮れる中、焚き火の爆ぜる音が小雪の心を溶かしていく。くゆる香り。いつも知っている香り出会っても、周囲の環境が異なる。
それがひとつまみの魔法となって、紅茶にエッセンスを加えることを小雪は喜ばしく思えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
よーし、テントの組み立てがんばるです。もきゅ!
くぬぎ、この真ん中にポールを立てるテントがすきです。さんかくでかわいいですよ
えっと、まずはペグをじめんにうつですね
もきゅ……ハンマー重いです……石でもいいですかね。えいっ
それからポールを立てるです。うんしょ、うんしょ
やったです、ひとりで組み立てられたですよ
くぬぎのテントです!
お昼ごはんのじかんですね
買ってきたホットドッグと鈴カステラをアルミホイルで包んで、たき火で温めて食べるですよ
お店のひとたち、とっても親切だったですー
鈴カステラにチョコレートも乗せちゃうです
あったかくてあまくておいしいですー♪
くぬぎ、ひとりでちゃんとキャンプできてるです!
キャンプにおいてテント選びというものには、目的以上にキャンプをする者の個性が出るものである。
一口にテントと言っても様々な種類がある。
オーソドックスなドームテントや、外幕があるロジドームテント。
そして、三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)が選んだワンポールテントなどがある。
くぬぎが選んだテントは支柱一本で支える円錐型のテントだ。
その外見がとんがり帽子のようで、くぬぎもまた好ましく思っているのだろう。
「よーし、テントの組み立てがんばるです。もきゅ!」
モーラットの小さな体でベグを地面に打ち込む。
ハンマーが重たくて、一回振り上げるだけでぜーぜー言ってしまう。流石に叩く回数を増やさなければならないが、ベグ打ちは石でも構わないだろう。
かんかんとやっていると、その音を聞きつけたのか、他の猟兵のもとに手伝いに言っていた管理者の『八雲』翁がやってきて、くぬぎがテントに苦戦している姿を見やる。
けれど、請われない限りは手を出すことはしない。
何故なら、これはくぬぎのキャンプであり、テントだからだ。彼女が助けを求めない以上、彼にできることは多くはない。
「うんしょ、うんしょ」
小さな体をフルに活用してポールを立てる。
重たくてしんどいって何度も思ったことだろう。苦しくて、きつくて、それでも。そう、それでも自分ひとりで、くぬぎは立ててみたいと思ったのだ。
その意志は硬い。
それを見やる『八雲』翁は一つ頷いてその場を離れるだろう。
危ういところもあったが、テントの設営という山場は超えたようであった。
「やったです、ひとりで組み立てられたですよ。くぬぎのテントです!」
喜びの声をあげる、くぬぎの目の前にあるのは三角帽子の可愛いテント。小さな体でも、しっかりとテントを張る事ができたのだ。
そうしているとお昼の時間だ。
温泉街で買い込んできた食べ物がいっぱいある。
ハーフサイズに殆どのものをしてもらったから、色々食べられる。
まずは焚き火の用意だ。
乾いた薪を運んで、火を灯す。小さな口でフーフーと空気を送り込みながら焚き火の火を大きくしていく。
ぱちぱちとささくれた薪の繊維が弾けていく音を聞いただろう。
「わ、じゃあ次は……」
ホットドッグと鈴カステラをアルミホイルで包み、焚き火のそばに置く。しばらくすれば、温められるであろう。
少し休憩とばかりに、くぬぎは焚き火の傍らに座って温泉街の人々のことを思い出す。
彼等は誰も彼もが親切だった。
彼女の体の小ささを慮ってハーフサイズにしてくれたし、色んなものが食べたいという彼女の希望にも沿ってくれた。
「とっても親切だったですー」
これからも、くぬぎの冒険は続いていくだろう。
何度も今回のように優しい人たちと巡り合うこともないかもしれない。けれど、この一回の出会いが、きっとこれからも、くぬぎの心の中で優しさとして育っていく。
時に、その優しさが他の誰かに分け与えられることもあるだろう。
こうやって少しずつ世界が良い方向に進んでいけばいい。
そんなふうに思いながら、くぬぎは鈴カステラのアルミホイルの包みを解いていく。湯気立つ鈴カステラはホカホカで直に触ってしまうとお手玉してしまいそうになる。
そこにチョコレートを乗せて蕩け落ちる姿と甘い香りに、くぬぎはお腹を鳴らしながら頬張る。
「あったかくてあまくておいしいですー♪」
プレーンな鈴カステラの味にチョコのアクセント。
他の買い込んだ食べ物もどれもが美味しい。焚き火で温めながら、くぬぎはこれまでの道中にすかせたお腹にどんどん入れていくのだ。
幸せなまん丸いお腹をさすりながら、くぬぎは三角帽子のテントを背にして、焚き火を眺める。
心地よい疲労感。
歩いてきたのも疲れたけれど、テントの設営も大変だった。
けれど、満足感があるのだ。不便さや苦労があったから、この喜びを感じることができる。
それ以上に嬉しかったのは、やっぱり、これに尽きるだろう。
「くぬぎ、ひとりでちゃんとキャンプできてるです!」
夕闇がやってきて、くぬぎはまた空を見上げる。
橙色と紺色が空を染めていく。
夜と夕方の狭間。変わりゆくグラデーションを見上げ、彼女は、薪が爆ぜる音に気がついて、また一つ薪をくべる。
きっと優しさもこうやって篝火となるのだと思うように、くぬぎは目を細めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
キャンプのメイン、焚き火を起こして網の上でバーベキューだぜッ!
温泉街で買ったお高めの牛、豚、鳥の肉や野菜、さっき釣った魚、そしてビールッ!完璧かよ。
相棒、まだ焼けねえのか?これとかいけそうじゃね?
「…まだ、落ち着いて待ってて。」
ヒュー、相棒の料理技能が冴え渡る。最高の焼き加減を見切って皿に移してるぜ。
輝いて見えるようだぜバーベキュー。そこに温泉街で買っといたこだわりの醤油を数滴、香ばしさが更にアップッ!いっただっきま~すッ!
「…ん、美味しい。」
大自然で食う飯と酒は最高だなッ!
せっかくだから八雲の爺さんにもお裾分けするかッ!
【アドリブ歓迎】
キャンプ場に来るまでに乾いた巫女服を揺らしながら、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の相棒である桜は、渓流を眺める。
釣り場を教えてくれた少年と別れてから、二人はキャンプ場へと足を運んだのだ。
広がる景色は見事なものであったし、よく手入れされたキャンプ場は管理者の豆な性格が透けて見えるようであった。
テントの設営を終えた二人は、焚き火を起こして網を掛ける。
『キャンプのメイン! バーベキューだぜッ!』
赤い鬼面がカタカタとテンション高く叫ぶ。
釣り場で得た釣果や、温泉街で購入したお高めの牛、豚、鳥の肉、野菜。
そしてビールであるッ!
『完璧かよ』
凶津はすっかりアルコールをグイグイやって出来上がりつつある。もとが赤い色をしている鬼面だから、顔色からは判別がつかないけれど。
それでも大変にご機嫌状態なのだ。
『相棒、まだ焼けねえのか? これとかいけそうじゃね?』
凶津はもうビールでバーベキューの肉の油や野菜を流し込みたくて仕方ないといったふうにカタカタ揺れている。
それを静かに制したのが桜である。
「……まだ、落ち着いて待ってて」
彼女の料理スキルは、かなりのものである。
料理は火加減とはよく言ったものである。
彼女を前にして焚き火の火もまた、さして大した問題ではない。揺らめく火と対話するように桜は焼き加減を見切るのだ。
「……今」
『ヒュー、相棒の焼き奉行! 冴え渡ってるねぇ!』
凶津の言葉に皿にもられた牛肉がきらめく。
彼の言葉通り、桜の目が見極めた焼き加減は素晴らしいものであった。肉汁が落ちきらないギリギリを見極め、一瞬で更に移したのだ。
『輝いて見えるようだぜ、バーベキュー。お、魚も絶妙だなッ!』
「……あの子が教えてくれたおかげ。温泉街で買ったお醤油を数滴垂らせば……」
『香ばしさアップッ! いっただっきま~すッ!』
がぶりと食らいつけば、その味が口の中に広がる。
清流に住まうからこそ、引き出される魚の風味。それに醤油がアクセントとなって口腔の中を駆け抜けていくのだ。
正直に言ってたまらん。
桜も自分で釣った魚の美味しさに目を見開く。
「……ん、美味しい」
ほっとする味だ。あの少年は何事もなく家に帰れただろうか。借り受けたクーラーボックスを返しに行く際には、また会える。そう思って、桜は凶津と共にバーベキューを堪能する。
それにしたって今回の釣果は多すぎるほどであった。
出来すぎなくらいに連れてしまったから、二人で消費しきれるかあやしい。
『大自然で食う飯と酒は最高だなッ! せっかくだから、『八雲』の爺さんにもおすそ分けするかッ!』
なっ! 相棒っ! と凶津が笑う。
アルコールが入って良い気分なのだろう。桜もまた同様だ。このキャンプ地の管理は大変だろう。
そう思えば、差し入れの一つも届けようと思うのだ。
「……それじゃあ、これ持っていきますね」
桜が焼けた魚を数匹持ってロッジを尋ねる。『八雲』翁は、その申し出に喜んで受け取り、お返しとばかりに桜にお茶を振る舞ってくれる。
心地よい疲労感。
そして、香りのあるお茶に桜の頬も緩むだろう。暫く桜はお茶を頂き『八雲』翁と談笑する。
「思いがけずごちそうにありつけた。ありがたく頂戴する。君の連れ合いにもよろしくと言っておいてくれ」
『八雲』翁のロッジから桜は辞して、もらったお茶を凶津のもとに運ぶ。
「……これ、『八雲』さんが」
『おっ! 茶か! ポットに入れてくれているのがありがてぇなッ! 明日の朝にでもいただこうぜッ!』
ゆっくりと夜の帳が降りてくる。
二人は、焚き火の爆ぜる音を聞きながら、まだまだ続くささやかな宴に酔いしれる。
見上げる先にあるのは星々。
まだ今日という日は終わらない。凶津と桜はきっと今日見上げた空を忘れないだろう。
楽しかった思い出は、心を育てる。
豊かな思い出があればこそ、世界を守る戦いにまた身を投じることができる。頬を撫でる風が涼しげで、いつまでもこうしていたいと思わせるほどだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
(キャンプに適した長袖長ズボンに帽子姿で)爽快な場所ですね~♪
八雲さんからの説明に忠実にテントをきちんと設営。
炊事場に調理器具があるのでしたら、色々と作れますね。
バーベキューに挑戦する方は多そうですから、ここはカレーに挑戦しましょう。
まずはお米を飯盒で炊きましょう。おこげが少し有る方が良いですね。
家(神社)から持ってきた野菜の半分は大きくざく切りにして炭火焼に。
残り半分の野菜は細かく切って、温泉街で購入した合いびき肉や山菜と一緒に炒めて、カレー粉とルーを入れて・・・キーマカレー完成です。
この上に野菜の炭火焼を載せて彩りよく。
山菜入りのサラダも作ります。
多めに作って皆さんにお裾分けしますよ~。
軽快に山渓地を歩く。
それは簡単なようで居て、簡単なものではない。
歩くペースが乱れれば、それだけ体力が消耗されるものであるし、何より足元がおぼつかなければケガをする恐れだってあるのだ。
けれど、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)はキャンプ場への道のりをなんなく歩いていく。
長袖長ズボン。帽子を完備した、トレッキングに適した装いでもって詩乃はキャンプ場へとたどり着く。
「爽快な場所ですね~♪」
植物と活力を司る女神である彼女から見ても、このキャンプ場はよく手入れされたものであることがわかるだろう。
キャンプ場の管理人である『八雲』翁の佇まいからもそれが感じ取れるだろう。
テント一式を受け取って、詩乃は解らないところは『八雲』翁に尋ね、テントをきちんと設営していく。
「これでよし、ですね。炊事場に調理器具があるのでしたら、色々と作れますね」
彼女は温泉街で購入した山菜の類を見やる。
周囲を見回せば、ほとんどの猟兵がバーベキューをする様子が見て取れる。
ならば、詩乃は何を作ろうかと思案する……までもない。
こういう時、そう、キャンプと言えば、バーベキューと並んで定番の料理がある。
「カレーに挑戦しましょう」
カレー。
アースという名のつく世界の日本という土地に生まれたのならば、一度は食べたことがあるであろう料理。
簡単ながらも奥深い料理であることで知られるカレー。カレーされど、カレーである。
詩乃は飯盒でお米を炊き、炊事場で薪をくべる。
おこげが少し出るくらいが丁度良いのだ。詩乃は空気を送り込みながら飯盒の蓋の隙間から泡が吹き出すのを見届けてから、家から持ってきた野菜の半分を大きくざく切りにして炭火で焼いていく。
残りの半分は鍋に放り込み、温泉街で購入した合いびき肉や山菜と一緒に炒めるのだ。
鍋の底で野菜が炒められ、色合いが変わっていく。
あとはカレー粉とルーを入れ、さらに炒めていく。あ、オーソドックスなカレーライスではないのだ。
そう、彼女が作っているのはキーマカレー。
だから合いびき肉を用意していたのだ。山菜と野菜にカレー粉が絡まって、薄茶色に染まっていく。
スパイスの香りが炊事場から渓流に流れ込んでいけば、否応なく食欲を唆られることだろう。
「ほう、スパイスで炒めたものか。良い香りがする」
そんな詩乃の見事なキーマカレーに管理者である『八雲』翁も釣られたようである。
「ふふ、ここに野菜の炭火焼きも添えて彩り良く致しましたよ」
微笑んで詩乃は、余った食材で山菜のサラダを一品追加するのだ。慣れた手際。詩乃の女子力ならぬ、嫁力の高まりを感じる出来栄えである。
「よかったら、どうぞ。お食べになってください」
「よいのかね。しかし、君の分が……」
「いえ、皆さんにおすそ分けしようと思って多めに作っているのです。食べていただけると嬉しいです」
なんとも出来た女神である。
素晴らしい出来栄えに『八雲』翁も頷いて、恭しく受け取るのだ。
詩乃は、それを見やり、他の猟兵たちにも進めて回る。今日という日に同じキャンプ場に集った仲間たちだ。
連帯感というか、仲間意識というか、そういうものが生まれるのである。
互いに持ち寄った品々を交換しあい、笑い合う。
焚き火の爆ぜる音が夜の帳が降りつつある空に溶けていく。
「本当に良い場所ですね……」
周囲にある植物も活力が漲っているようである。人が自然の中にお邪魔させてもらっている。互いを活かし合うことを忘れていないからこそ、生み出された場所でもあるように詩乃は感じられただろう。
詩乃はスパイスの香りを楽しみつつ、山の恵をいっぱいに詰め込んだキーマカレーを頬張り、眦を下げる。
美味しいと思い、そしてまた此処に来たいと思わせる魅力が此処には詰まっている。
静かに流れる時間の中、詩乃はなんでもない一日を満喫するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
ルクス様と
『やれやれ、フィア様の暴走にも困ったものでございますね。
ルクス様もご苦労なされているのではございませんか?』
フィア様が八雲老から食料を強奪……もとい、分けてもらいに行っている間、わたくしはルクス様と夕飯の準備でございます。
『って、ルクス様!?
わたくしを捕まえて何をなさるのです!?』
フィア様が熾した焚き火(八雲老からの注意を無視した地獄の業火)が、わたくしの羽を今にも焼き尽くさんとしたとき。
間一髪、フィア様が戻ってきてくださいました!
危機一髪でございました。
『って、フィア様?
何故、わたくしを見ながら涎を垂らしておられるのですか!?』
必死に羽ばたき、お二人から逃げ出したのでございます。
ルクス・アルブス
フィア師匠と
なんとかキャンプ場までこられましたね、師匠。
もう街には戻れませんが。
とはいえ、あの視線に晒され続けるよりはマシですね。
胸より顔が厚い師匠が羨ましいです。
あ、師匠、火起こしお願いしていいですか?
得意ですよね、火起こし。
わたしはお料理の準備しますので!
師匠が食材を分けてもらいにいったのを確認すると、
フギンさんを捕まえて……。
今日のメニュー焼き鳥の予定なので。
焼き鳥美味しいですから。師匠もお肉好きですし。
正妻っぽい言動するのがイラっとするとかじゃないですよ。
ダメですか?
なら何に……肉?ですよねー。
それじゃウサギに……って、師匠、なんで怯えるんですか?
ダイジョウブデスオイシイデスヨ(エヘ)
温泉街の人々の痛い視線を受けながら、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)とフィア・シュヴァルツ(宿無しの漆黒の魔女・f31665)はキャンプ場へと辿り着いていた。
道中、ずーっとあの暴飲暴食の限りを尽くしたフィアに対する温泉街の人々の強烈な目をどうしたって忘れることができかったのだ。
ルクスは、ふぅ、と息を吐き出す。
それと同時にフィアの使い魔である『フギン』もまた同じように息を吐き出した。
似た者同士のシンパシーというべきであろうか。
二人はフィアに対して同じ感情を抱いているようでもあった。
「なんとかキャンプ場までこられましたね、師匠。もう街には戻れませんが」
いやもうホントである。
あの温泉街の人々の視線。
突き刺そうような視線を背にこうしてキャンプ場へとやってきたのだが、むしろよく無事だったなと思うべきであった。
なにせ、フィアの暴飲暴食は今に始まったことではない。
けれど、試食試飲だからといってやりすぎたのである。
根こそぎ食べるような試食があろうか?
いやない。
『やれやれ、フィア様の暴走にも困ったものでございますね。ルクス様もご苦労されているのではございませんか?』
『フギン』の言葉にルクスは肩をすくめる。
「あの視線にさらされ続けるよりはマシですね。胸より顔が厚い師匠が羨ましいです」
いや、ルクスさん、そこに師匠に対する敬愛はないのかなってなくらいにガンガン言う。
しかし、フィアはそんなことにかまっていなかった。
「そんなことより食料の確保だ! 困ったことがあれば、あの老人に言えばいいと聞いた。なら、早速食料の強奪……いや、分けてもらいに行こう」
「あ、師匠、火起こしお願いしていいですか? 得意ですよね、火起こし。わたしはお料理の準備しますので!」
「ふむ。なあらば煉獄の炎(キャンプ・ファイヤー)で」
『フィア様、直火は駄目だとおっしゃられていたではないですか! 焚き火台です、焚き火台!』
「細かいことを……まあ、よい。ほれ」
ひょいーってユーベルコードで薪に火を付けるフィア。便利だなぁって思いつつも、それはそれでどうなんだと思わないでもない。
けれど、フィアはもうこの道中、試食試飲だけではどうにも賄えない空腹に耐えかねていたのだ。
一刻も早く食料を手に入れなければならないと一直線に管理者である『八雲』翁のロッジへと走るのだ。
そんな彼女を見送った『フギン』とルクス。
にこやかに送った後、ルクスが『フギン』を鷲掴みにする。え、なんで?
『ルクス様!? 私を捕まえて何をなさるのです!?』
「今日のメニュー焼き鳥の予定なので」
え、こわ。
ルクスの目が完全にすわっている。
ハイライトも消えているし、なんかこう、え、まじで勇者? ってなるくらいの顔である。
「焼き鳥美味しいですから。師匠もお肉好きですし」
『おやめください、ルクス様。例え、メニューが焼き鳥でも、わたくし一人ではルクス様のお腹などふくれようはずもございません! そうではないですか!?』
「そういうところなんですよねー。正妻っぽい言動するのがイラッとする……とかじゃないですよ」
にこり。
完全に正気を失っている感じのルクスに『フギン』が青ざめる。
とてもじゃないが話を聞いてもらえる雰囲気ではない。燃え盛る焚き火。ぱちぱち爆ぜる薪が、はーれるやーはーれるやー! な感じで『フギン』の羽を燃やそうとしている。
「もどったぞ! やー『八雲』翁は良いやつだな! 山で罠に掛かった猪とうさぎの肉をくれたぞ!」
間一髪。
炎にくべられそうになっていた『フギン』とルクスの前に分けてもらったお肉を持ったフィアがご機嫌でもどってきたのだ。
「……」
だが、フィアの目は焚き火にくべられようとしている『フギン』に釘付けである。
「とりにく……」
『ってフィア様!? 何故わたくしを見ながらヨダレを垂らしてお荒れるのですか!?』
『フギン』は目一杯羽ばたいてルクスの手から逃れる。
まじでひどい目にあった。
ルクスの目にハイライトがない。まじでちょっと怖い。
「鶏肉が駄目なら、何に……お肉料理がいいんですよね? あ、それならウサギ肉があるから……」
「い、いや、それはやめておこう! な、ルクス! 我、猪の肉がたべたぁいな!」
フィアの脳裏に浮かぶトラウマ。
アルミラージだったかなんだか、あの撲殺勇者が思い出されるのである。
いやまあ、それ以上にあの料理もちょっとなーって感じであった。
「ダイジョウブデスオイシイデスヨ」
なんで片言になるのかな?
エヘって笑えばごまかされると思ったら大間違いだぞ! フィアは収集のつかなくなったルクスの笑顔に戦慄し、薪の爆ぜる音を聞くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【菜医愛流帝FC】
キャンプといえば焚き火とキャンプ飯!
ということで、ここからが本番だね。
キャンプ地は、少し奥まったところを選ぶよ。
ナイアルテさんのそばにいたいしね!
場所を決めてテントを設営したら、さっそく火起こし。
直火NGだし、焚き火台を使おう。
お料理もこっちでしたいかな!
火種はメタルマッチに頼っちゃうけど、
大事に大事に火を育てて、しっかり焚き火に成長させたら、
サージェさんと2人でしばし火を見つ、めて……。
あぶない、ハイライト家出するところだった。
気を取り直して、鉄板でお肉を焼いていこう。
鹿のローストをメインに、鴨と猪のソテーを付け合わせにしよう。
うん、これぞキャンプ飯。
ジビエの魅力ばっちりだね!
これを木を切って作ったお皿に盛り付けたら、
ちょっと離れたところにある切り株の上に置いて、
木のつっかえ棒とザルの罠を仕掛けてー……。
これで準備はバッチリだね!
ナイアルテさんがお肉に惹かれてやってきたら、
ザル罠で捕まえて、水着に着替えさせちゃおう♪
そしたらわたしたちも水着に着替えないと、ねー!
サージェ・ライト
【菜医愛流帝FC】
ふーやっとキャンプ場ですね!
キャンプと言えば焚き火!
しかしまだ時間が早いのでまずはご飯ですね!
腹が減っては戦ができぬ
キャンプとは戦なのです!
おっとナイアルテさんは後方待機でしたね?
じゃあ私たちも後方へ下がりましょう!
護衛大事(こくこく
というわけでここからはクノイチ……の出番無くない??
女子(キャンプ)力とは……!
ここは理緒さんの指示に従っていきます
お料理は切るくらいしかできませんね!(ちぇすとー
くつくつ炊いている間はぽけーっと火を見ています
ふふふ、やっぱり火は落ち着きますね
ゆらゆらと、それでいて静かな火……ふふふ、ふふふ(意味深だけど意味は無い
理緒さんの声とお肉の美味しそうな匂いに誘われてクノイチ正常に戻りました!
はふー♪ おいしー♪
これは是非ともナイアルテさんにあーんを……
って罠?!罠ナンデ?!
くっこんな罠にナイアルテさんが
引っかかるわけないじゃないですか!(デジカメ構えて録画態勢)
せっかく買ってきた水着も着たいところです
ここが!この地が水着コンテストだ!!(無茶振り
菜医愛流帝ファンクラブ(非公認)の二人は、キャンプ場に辿り着いた後、テント一式を受け取ってから周囲を見回す。
山渓地だけあって、渓流や自然が豊かだ。
けれど、この豊かさはただ自然のままにしておけば手に入れられるものではないことは言うまでもない。
管理者である『八雲』翁がしっかりと手入れをしているからこそ得られるものであるとわかっただろう。
「キャンプといえば」
「焚き火!」
「とキャンプ飯!」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は息ぴったりに声を上げる。
いえーいってハイタッチしてそうな勢いであったし、事実テンションが高い。
やっぱりキャンプ場にたどり着けば、気持ちも変わってくるものであるし、高まりを感じれば声を上げたく鳴るものである。
「サージェさん、テントはこっちの少し奥まったところを選ぼうよ。後方待機しているだろうから、少しでもそばにいたいと思わない!?」
「ええ、私達も後方へ下がりましょう! 護衛大事」
こくこくとサージェと理緒がうなずきあう。
いやまあ、今回オブリビオンである『ダークリーガー』の出現は、まったく予知されていないので、特別警戒する必要はないのであるが。
しかしまあ、それも方便ってやつである。
サージェと理緒は、転移を維持しているグリモア猟兵だけがキャンプを楽しめないのを憂いているのだ。うっ、やさし。
「じゃあ、此処で! テントを設営しよう。直火は駄目ってことだったから、焚き火台を使おう」
「腹が減ったは戦ができぬ。キャンプとは戦なのです! さあ、理緒さんなんなりとご指示を!」
サージェははりきっている。
しかし、ここにきてクノイチ的な出番はないのである。
いやまあ、たしかにクノイチって忍びであるから、こういう野営って得意なのであるはずなのだが、理緒の手際のほうがそれを勝っている。
火起こしだってメタルマッチを使ってさっさと付けてしまうし、テントの設営だって、マニュアルに目を通せば、あっという間に立ててしまうのだ。
「女子(きゃんぷ)力とは……!」
「えー、これくらいは簡単にできるよー……」
と、理緒は己が育てた焚き火に目を奪われる。サージェと二人でしばし、焚き火の揺らめく姿を見ているとハイライトが家出する。
なんで!?
なんか嫌なこと思い出した?
「ふふふ、やっぱり火は落ち着きますね。ゆらゆらと、それでいて静かな火……ふふふ、ふふふのふ」
意味深な笑み。
いや、特に意味はない。なんとなくそれっぽいことやってみたかっただけである。
「おっと、危ない。ハイライト家出するところだった。サージェさん、具材を切ってもらっていい?」
「はい、おまかせください! ちぇすとー!」
流石クノイチである。
刃物の扱いには手慣れたものだ。さくさくさくーって具材を切り刻んで、サージェは理緒に手渡す。
焚き火台の上に乗せた鉄板。その上に理緒は具材を焼いていく。鹿のローストをメインにして、鴨と猪のソテー。
肉から溢れた油が跳ねて、良い香りが漂っていく。
「はっ……! これがジビエ!」
「うん、これぞキャンプめし。ジビエの魅力バッチリだね!」
野性味溢れる料理と言うべきだろうか。
塩を振り、香辛料や香草などで香り付けすれば、それだけでごちそうなのだ。
じゃあ、味見。はいあーんってサージェに差し出せば、ひな鳥のようにサージェは口を開けてイノシシ肉を頬張る。
豚と牛の中間とも言うべき味。
しっかりとした下処理の施された猪の肉は、血が臭いだとかそういうことはなく、どことなくミルキーな脂の味わいが楽しめるだろう。
「はふー♪ おいしー♪ これはぜひとも、あーんを……」
そんなサージェをよそに理緒は木皿にこれを盛り付けて、ちょっと離れたところにある切り株の上において、木のつっかえ棒とザルの罠を仕掛ける。
なんで?
「って、罠!? 罠ナンデ?!」
「これで準備はバッチリだね! お肉に惹かれてやってきたら、ザル罠で捕まえて、水着に着替えさせちゃおう♪」
なるほど、わからん。
「くっ、こんな罠に引っかかるわけないじゃないですか!」
そんなこと言って、サージェはデジカメを構えて録画体勢である。何だこの二人。
サージェは煩悩ただ漏れであった。
せっかく買った水着も着たい。そんでもって水着姿もみたい。どちらも両立させるためには、ザル罠しかないのである。あるかそんなこと。
「そしたらわたしたちも水着に着替えないと、ねー!」
そんなことあるか。
「ここが! この地が水着コンテストだ!!」
だから、待て、水着コンテストの日!
そんなことを言っても欲求に素直な二人が止まるわけもなく。
ジビエをはふはふいただきながら、理緒とサージェはザル罠の仕掛けを見つめ続ける。
しかし、悲しいかな。
後方待機していたグリモア猟兵は、そんな彼女たちの背中を見ていた。
彼女たちが仕掛けた罠も、何を目論んでいるのかもお見通しなのである。しかし、お見通しだからといって、彼女たちがなんでそんなに罠仕掛けたがっているのかを理解するのとは別問題である。
よくわからないなぁって、そんな視線を送られているとも露知らず、サージェと理緒は薪の爆ぜる音を聞きながら、罠にかかる哀れなる水着を今か今かと待ちわびている。
いや、そんなことあるわけないので、残念ながら一足早い水着コンテストはお預けとなるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
そう…考えてみるとやっぱりあれはあれでけっこう楽しかったのではないか?
人の幸せと苦痛に寄り添う的なものとして、なんかあの子が疲れてるので合わせて考えてみたけれど…
やっぱああいうのも楽しいよね!
あの子には今度もっと耐性ができるようにクソ映画マニア友達の子たち垂涎のクソグロホラーの詰め合わせを贈ってあげよう!
●などと考えつつキャンプ場を遊びまわって
いやむしろ今みんなに観せてあげるのがよいでのは?と思い至り
みんなそう思わな!?とUC『神心』でクソ映画好きアスリートアース民70億人に語り掛けその助力を以って…
キャンプ場野外シアターをドドーン!と顕現させよう!
みんな楽しんでね!
多くの苦しみがあった。
それを見てきた。
けれど、苦しみがあるから楽しさがある。
人の感情というのは千差万別であり、大小があるものである。楽しさは苦しみがなければ成り立つものではない。また逆も然りである。
そのゆらめきこそが人という生命の本質であったのならば、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、あの苦難に満ちた道程は、やっぱりあれはあれで結構楽しかったのではないかと思うのであった。
このキャンプ場への道のりだってそうだ。
苦しい苦しいと思いながらも、開けた先にあった山渓地は見事なものであった。
グリモア猟兵はなんともまあ、人の幸せと苦痛に寄り添う的な存在として、なんか疲れている様子であったのでロニなりに合わせて考えてみたものの……。
「やっぱりあいいうのも楽しいよね!」
それ全部ひっくるめて人の生き死にであると、神性らしい考えのもとに思考を行き着かせる。
うんうん、とうなずきキャンプ場を一頻りロニは駆け回る。
自然が沢山ということは遊び場が多いということだ。管理者である老人が手入れをしているおかげで、ここの自然は植生も動物も程よい距離感を保って循環しているように思えただろう。
「うーん、あの子には今度もっと耐性ができるようにクソ映画マニア友達の子たち垂涎のクソグロホラーの詰め合わせを贈ってあげよう!」
うん、それはやめておいたほうがいいのだけれど。
けれど、そんなことおかまいなしなのがロニという神性であった。
神とは試練を与えるもの。
なれば、疲れ果てたグリモア猟兵にさらなる試練を追い打ちして耐性を上げることをこそ、贈り物だと考えるのだ。
わりと、その、そういうのは勘弁して頂きたいなぁという声が聞こえたか聞こえなかった。
「いやむしろ今みんなに見せてあげるのがよいのでは?」
ぴこんと思いつきでロニはキャンブ場の外に野外シアターをドドーンと顕現させる。
いや、ユーベルコードの使い方が間違っているような気がしないでもない。
神心(ゴッドウィル)まじでわからん。
人の心とかないのか? いや、神様だったわ。
「みんな楽しんでね!」
煌々と野外シアターの光がキャンプ場を照らす。
夜の帳が落ちかけた今をおいて、野外シアターの魅力を余すことなく発揮する時間はないだろう。
正直に言えば、クソグロホラーでなければ、の話である。
「ひゅー、見てよ、あのチープさ! 笑っちゃうよね!」
けたけた笑いながら、ロニは野外シアターの前に陣取って、ご機嫌にジュースとポップコーンを頬張る。
自由すぎる。
そんな彼の野外シアターは、クソグロホラー一本で幕を閉じる。
流石に音がうるさい。
そんなふうに『八雲』翁とグリモア猟兵二人から注意されつつ、ロニは次はどんなことをしようかなとお小言を右から左に受け流しながら考える。
周囲では他の猟兵たちが起こした焚き火の爆ぜる音が響く。
喧騒のような騒々しさも悪くはない。
けれど、こういう静けさだって一つの楽しみだ。
ロニは今も尚耳元に届くお小言にわかっているのかわかっていないのか、曖昧な笑顔のままうなずき。
「うん、わかったよ!」
これまたわかっているのかわかっていないのか、判別つけがたい笑顔を浮かべるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
八雲さんに挨拶したらテントサイトにいこう
空や景色がよく見える場所を選ぶよ
分霊は双子という事にしておこう
サマードレスっぽい服にしてるから
この場に合わせる気はあるみたいだし
温泉では酷い目にあったけど今回はキャンプがメインだから
切り替えてテントやターフを設営していくよ
これも楽しい作業だね
少しは懲りて欲しいですの
…アイス食べながら座ってますの
机や椅子、焚火台を置いたら
バーベキューといこうか
良い肉や野菜が手に入ったから楽しみだよ
私も頂きますの
神域に供えられたなら私のものですの
えらく俗な神饌だなぁ
二人分あるから大丈夫だけどね
というか聞きかじった日本の風習を
適当に言ってるだけだよね
まあ、今は食事を楽しもうか
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、キャンプ場の空と景色が見える芝生の上にテント一式を抱えて立っていた。
見晴らしの良い小高い丘のようなテントサイトは、晶が望むロケーションの全てが詰まっていた。
渓流のせせらぎが聞こえ、木々が開けているので空も見える。
それに地面は柔らかい芝生に覆われているから、寝心地もいいだろう。
「それじゃあ、此処でよろしくおねがいします」
「ああ、なにか困ったことがあったらロッジに伝えに来てくれ」
管理者である『八雲』翁を見送り、晶は改めてキャンプサイトを見回す。サマードレスっぽい服を来ている、邪神の分霊と共にテントの設営をしようとしたが、まあ、分霊が手伝ってくれるわけではない。
そもそも格好がキャンプをしようって感じではないし、温泉でのひどい目にあったことが晶にとって未だ心のしこりであったのだ。
しかし、切り替えなければならない。
というより、テントの設営をしていれば、自然と忘れてしまうものだ。
「これも楽しい作業だね」
手慣れていると言ってもいい手付きで晶はテントを組み上げていく。ペグを打って、支柱を建てる。
天幕を張れば、もうこれで慣性だ。
「少しは懲りてほしいですの」
邪神の分霊はというと、簡易椅子に腰掛けてアイスをペロペロしている。
「さて、次は焚き火台に、と……」
そんな邪神の分霊の小言を無視するようにして晶は焚き火を起こしていく。これも手慣れたものだ。道具を使えば簡単に火を起こせる。コツを掴めば、すぐだ。
さっさと空気を送って焚き火を大きくしたら、網を乗せる。
脂をさっと網目にまとわせれば、次はバーベキューだ。
「良い肉や野菜が手に入ったから楽しみだよ」
「私も頂きますの。神域に供えられたなら私のものですの」
邪神の分霊は、まだ神域を冷蔵庫代わりに使われたことを根に持っているようであった。
そういうところがなんとなく神様っぽくなくて晶は逆に好感を覚えるものであるが、分霊からしたら、なんとも雑に扱われているようでたまらないようすでもある。
「えらく俗な神饌だなぁ」
「誰がなんと言うおうと、これは私のものですの」
つーんってしている分霊に晶は苦笑いする。どうせ、どこかで聞きかじった日本の風習を適当に言っているだけだよね、と笑う。
そんな晶の様子にますますもって分霊は腹を立てるようであったが、晶は取り合わない。
だって、今日はキャンプだ。
いがみ合っていてもしかたないし、例え神域に捧げられたものであったとしても、そのままでは美味しくない。
網の上に乗せたバーベキューの串。
肉や野菜を串打ち舌だけのものであるし、味付けはシンプルに塩胡椒ばかりだ。
けれど、自分で火をおこし、自然の空気によって立ち上る炎によって焼かれた食材は、環境そのものがスパイスとなって晶と分霊の鼻腔をくすぐるだろう。
「さ、焼けたよ。今は食事を楽しもうか」
「当たり前ですの。ほら、もっとよこすですの」
分霊がいかにも俗っぽいことを言うので、晶はこれまた苦笑しながら食材を網の上で焼いていく。
これで彼女の機嫌が戻ればいいし、戻らないなら戻らないでなにか別の手立てを考えるだけだ。
焚き火の爆ぜる音を聞きながら、晶はそよぐ風の心地よさに目を細め、落ちる夜の帳に目を向ける。
なんでもない日。
言葉にすればなんとも無為なことだろう。
けれど、晶はこんな日をこそ望むのだ。誰にも脅かされることのない日。ただ穏やかに過ごす日々をこそ尊ぶのならばこそ、今日という日を晶はしっかりと堪能するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC常時継続
同行
フィア(f37659
ナイアルテはキャンプに随分拘りがあるようですね?
「キャンプが大好きみたいだねご主人サマ☆」
僕からすれば普通に家があってご飯が食べられればいい気はしますが
「でもキャンプは楽しいよ☆」
テントを張るのによい場所を確認
…こうして道具があるのはいい事です
水とかの確保も本当に大変でしたし?
「ご、ご主人サマ?」
物心つく前に森に捨てられてましたからね
焼くって発想もなかったし
まぁ…キャンプグッズって便利(てきぱきテント作り
っとフィアはキャンプは経験あります?
ええ、安全なのは良い事です
そういう意味ではこのキャンプは良い
【料理】
今回はシチュー
香辛料しっかり
火も薪から
良く煮込む
フィア・フルミネ
カシム(f12217)と参加
夜営か。では私は周囲を警戒する……しなくていいの? 敵はいない。襲撃の恐れもない。その上カシムもメルシーも他の人もイキイキしている。その輪の中に私も入れるかな。緊張するよ
私は屋根のあるところで寝た経験よりも鉄格子の中で寝た回数の方が多いかな。野宿の時は枕槍が欠かせない。何かあったらカシムを守るよ。心配しても何もない? 調子が狂ってしまうね……
自分一人で何かするよりも、設営や料理を一緒にやる方が心が晴れやかね。なんとか楽しい話題を提供できるよう努める。
あれは、食べられる野草……食べなくていい? そう
キャンプ場は猟兵たちの訪れに寄って賑やかなものであった。
けれど、街中の喧騒のような騒がしさではない。どこか好ましいものであるように思えただろう。
人の善意を以ってなされる場所。
それは殺伐とした世界に生きてきた者にとって、理解の及ばぬものであったのかもしれない。
「キャンプが大好きみたいだね、ご主人サマ☆」
そんなふうにカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は銀髪の少女と、フィア・フルミネ(痺れ姫・f37659)を伴ってキャンプ場を訪れていた。
「僕からすれば普通に家があってご飯が食べられればいい気がしますが」
あえて不便を楽しむ。
苦労を得る。
それは生きることに全力を尽くす世界に生まれたものたちにとっては、理解に苦しむものであったことだろう。
利便性があるのならば、それを使わないという選択肢はない。
だからこそ、フィアもまたキャンプと夜営をイコールで結びつけてしまう。無理なからぬことだ。
彼女が生きてきた世界は、あまりにも厳しすぎたから。
魂人として転生しても、それは続く。だからこそ、アスリートアースというオブリビオンがいたとしても、生死に関わるのではなく勝敗で全てを決する理が支配する世界は、奇異なるものに映っただろう。
「でも、キャンプは楽しいよ☆」
『メルシー』は乗り気である。彼女に釣れられるようにしてカシムとフィアはテント道具を抱えて、テントを春場所を選ぶ。
「……こうして道具があるのはいいことです」
水の確保も本当に大変だったとカシムは昔を懐かしむような瞳になる。
物心が付く前に森に捨てられていたし、獲物を焼くという発想もなかった。
フィアも同様なのかもしれない。
「夜営か。では私は周囲を警戒する……」
「いやいや、しなくていいよ☆」
『メルシー』の言葉にフィアは首をかしげる。
「……しなくていいの? 敵はいない。襲撃の恐れもない……」
なんだか本当のことだろうかとフィアは未だに信じられない気持ちでいっぱいであった。
それにフィアは未だ不安であったし、緊張していた。
カシムも『メルシー』も生き生きとしている。生命に溢れた二人の行動力というものに、その輪の中に自分も足を踏み入れていいのかとフィアはためらうようであった。
だって、彼女は屋根のある場所よりも鉄格子の中で寝た回数のほうが多いからだ。
握りしめた枕槍を『メルシー』はそっと手に取る。
「心配ないよ☆」
「……調子が狂ってしまうね」
なにかあったらカシムたちを守ろうと思っていたフィアにとって、それは拍子抜けするものであったし、調子の狂うものでもあった。
「まあ、……キャンプグッズって便利。フィアはキャンプの経験あります?」
「……夜営なら。でも、こういうのは……」
ないのだろう。
カシムは朗らかに笑って、準備を始めていく。
テントが立ち上がれば、焚き火の準備だ。
次は料理。何を作ろうかと考えるよりも早く手が動く。今回はシチュー。焚き火と相性もいいし、煮込むだけでいい。
香辛料はしっかりと。
「……」
フィアはそんな様子を見やりながら、テントの設営を手伝っていく。
何もかもが一人でする事が多かったから、誰かと一緒に何かをすることが新鮮でしかたがないのだろう。それに心が晴れやかになる気がする。
「ご主人サマ、食材ってこれくらいの大きさでいーい?」
「ああ、それくらい。後は香辛料ちょっと取ってくれ」
「……」
フィアは、なんとか自分も楽しい話題を提供できるようにと奮起する。香辛料。よくわからないが、食事に利用できるものと認識して、きょろきょろとキャンプ場を見回す。
あ、と気がついたのだ。
「あれは食べられる野草……」
「草? あれって食べられるのか?」
「……食べなくていい?」
フィアは取ってきた野草を手に所在なさそうにしている。その様子にカシムと『メルシー』はあっけにとられていたが、漸くにして笑う。
その笑顔にフィアは、なんで笑ってくれたのか解らないという顔のまま立っている。それがまたおかしくて、カシムたちは笑うのだ。
「じゃあ、それも入れよう。渓流の水で洗ってきてさ」
「わかった」
フィアは、なんとなく心の中に暖かな思い出が宿るのを感じただろう。自分もあの笑顔の輪の中に入れた気がした。
足取りは軽い。
来てよかったと思える。ならばこそ、遠くで弾ける焚き火の音を聞き、夜の帳が降りたキャンプ場で、フィアは本人にもわからないほど薄く微笑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『キャンプの夜を楽しもう』
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POW : ゲームやお喋りに興じる
SPD : 歌やダンスで盛り上がる
WIZ : 満天の星空を眺める
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キャンプ場に夜の帳が降りる。
すっかり日は沈み、焚き火やランタンの明かりだけが周囲の明かりとなった。焚き火に惹かれてやってきた小さな羽虫や蛾が飛び交う中、焚き火が爆ぜて火の粉が舞い上がる。
普段であれば、まだまだ街中の明かりが煌々としており、人の行き来も多い時間帯だ。
けれど、一度自然の中に身を置けば、周囲に在るのは闇。
こんなにも明かりがなければ暗く見通しが効かないものであるのかと思い知るであろう。
だが、キャンプとはここからが本番だ。
食事で膨れたお腹を擦ることもあるだろう。空を見上げれば、星々が一層強く輝いているように見えるだろう。
共に語らうのもいい。
テントの中で寝転がったり、友達と遊ぶのもいいだろう。
焚き火を見やり、物思いにふけってもいい。
各々の時間の使い方は自由だ。
今日という日は、眠るまでが今日。日付は関係ない。どれだけ起きていてもいい。眠れないのならば、『八雲』翁が話し相手になってくれるだろうし、暗闇に気をつけながら渓流でぼんやりするのもいい。
思いがけない出会いもあるかもしれない。
朝日を迎えれば、きっと新しい一日が始まる。
なんでもない日は、明日も続くとは限らない。
けれど、それでも得難き一日を得た猟兵たちは、今日という思い出を以って明日を生きていく――。
村崎・ゆかり
夜も更けてきたわね。
キャンプファイアやってるところもあるみたいだけど、後始末が大変だし。
あたし達は星空を見上げてのんびり過ごしましょ。
降るような星空っていいわねぇ。世界によって星の配置は違うから、見慣れた夜空が一番。そういえば、あなたたちにとっては、この星空の方が見慣れないものよね。
陰陽師の所掌は暦道と天文。二十八宿の星々がしっかり見えるのは気分がいいわ。
西洋の星座体系も知ってはいるし、神話もメジャーなところは知ってるけどね。やっぱり東洋占星術で星占いをするなら、抑えるべきものは抑えなくちゃ。
そろそろ休む時間ね。テントへ入りましょ。
朝まで寝かせないわよ、二人とも。これからが本番だから。
自然に囲まれた山渓地は、夜の帳が下りるのが早い。
空はすでに星々をまたたかせるための舞台となっている。きらめく星の輝きは、他の何物にも代え難いものであったことだろう。
周囲に人工の明かりはない。
あるのは他のキャンプをしている猟兵たちの焚き火やランタンだけだ。
地上に在って、その光はか細いものであったとあろう。
文明の光が照らす闇夜など、ここには関係がないように思えた。
それほどまでに美しい星空であったと村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は語るであろう。
盛大に巻きをくべて炎を大きくしてもよかったかもしれないが、後始末のことを考えれば、その気も失せる。
最後まで楽しみたいと思うゆかりであれば、それは選択肢には入らなかった。
「こうして空を見上げてのんびりするのもどれくらいぶりでしょうか」
「今年も花火あるのかなー」
そんなふうにアヤメと羅喉がつぶやく。
見上げた空は、綺麗なものであったが、ゆかりはそれよりも二人の式神のほうが綺麗だと思ったことだろう。
恋人であることを贔屓目にしても、彼女らは美しい。
「どうしました?」
星空に照らされて見る瞳は吸い込まれそうだった。
だからというわけではないが、ゆかりは微笑んで言うのだ。
「振るような星空っていいわねぇ」
世界によって星の配置は違う。
他世界を征く猟兵であればこその感想だろう。月は変わらず其処にあるのだとしても、配置が異なるように思えるのだ。
見慣れた星空のが一番んだと縁は笑った。
「でも、逆に私達にとっては、見慣れないものですよ」
アヤメの出身世界を考えればそうなのかもしれない。
それもそうか、とゆかりは納得する。陰陽師としては暦に天文というのは必修科目のようなものだ。
二十八宿の星々がしっかり見えるのは気分がいいものである。
陰陽師としての勉強がてら西洋の星座の体系も頭に入っている。神話もメジャーな所は抑えている。
「やっぱり東洋占星術で星占いするなら、抑えるべきものは抑えなくちゃ」
「世界が違えばまた勉強しなおしっていうのも大変だよねー」
世界が異なれば神々も異なる。
似通った部分があっても、それは本質的は異なる神々であろうから。逸話も散逸しているものを含めれば、それこそ人の一生で全てを知ることができるかあやしいものである。
けれど、ゆかりは微笑む。
例え、それが人の一生に勝るものであったとしても。
「そろそろ休む時間ね。テントに入りましょ」
今この時間が最も大切な時間である事に変わりはない。二人を伴って、ゆかりはテントの中に入っていく。
これからが本番なのだと微笑む。
「朝まで寝かせないっていうんでしょー」
「ふふ、あたり。これからが本番だから」
そう言ってゆかりと二人の恋人は仲睦まじい時間を過ごすだろう。
ゆっくりと溶け合うような。
互いの境界線がなくなるような。
そんな心地よい時間。頬に朝日が差し込むその時まで、情熱的な夜は終わらない。
ゆかりは、心地よい疲労感と共に二人の式神からの愛を感じるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
焚き火の前でお紅茶を飲むのですわ
因みに100パック500円位で売られてるお紅茶ですわ
意識は低くてもコスパはお高いのですわ
揺れる火を見ていると落ち着きますわねぇ
火…火力…パワー…
やはり力はわたくしを満たしてくれますわ
お星様も綺麗ですわ
お虫の声がよく聞こえる闇夜というのも…お虫!
蚊!蛾!アブ!お虫多いですわね!
致し方ありませんわ
アブだらけという事はお水が綺麗な証拠ですわ
さて、良い子のわたくしはそろそろお休みするのですわ
火の番と見張りはヴリちゃんにお願いするのですわ
蛇に猪に熊ちゃん…夜のおキャンプは危険がいっぱいなのですわ
安全に終えてこそ充実したおキャンプでしてよ!
朝には起こしてくださいましね!
夜の帳が降りたキャンプ場にあるのは、猟兵たちの憩いの声と焚き火が奏でる音、そして虫の声であった。
優雅さとは程遠いかもしれない。
王宮の中のような清潔さや設えた家具もない。
ただ地面があり、岩が在り、木々がある。
それだけだった。
けれど、メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)にとって、ここは得難い場所であるように思えたことだろう。
焚き火に掛けたケトルが音を立てている。
お湯が湧いたのだとわかれば、メサイアはステンレスのカップを手にとって、そこにティーパックを落とす。
彼女がこれまでの半生で得てきた紅茶とは趣の異なるものであった。
人によっては眉根をしかめるようなものであったかもしれない。
「意識は低くてもコスパはお高いのですわ」
彼女の言葉通り、ティーパックは100パック500円ほどのものだ。
お世辞にも良い茶葉を使っているとは言えない。けれど、それでいいのだ。誰が咎めるというのだろうか。
ゆったりと流れる時間は、そんな煩わしささえも押し流していくだろう。
十分に蒸らしたティーパックをのけて、メサイアは温かい紅茶を口に含む。ほぅ、と息を吐き出す。
アンニュイな姫君の姿は焚き火の前でも画になる。出奔してからこの方、彼女は王宮での所作を忘れたことはなかったかも知れないが、それでもサバイバルを繰り広げるうちに身についたものがある。
そんな彼女は今、焚き火を前に目を細めた。
目の前の揺れる焚き火を見ていると心が落ち着く。
「火……火力……パワー……やはり力はわたくしを満たしてくれますわ」
力があればなんでもできる。
一、ニ、三、わっしょーい! てな具合に。
「お星さまもそう言っておりますわ~……こう、お虫の声がよく聞こえる闇夜というのも……」
焚き火の明かりに群がる虫。
羽虫、蛾、蚊、アブ!
「お虫! お虫多いですわね!?」
あんまりにもメサイアの周りを飛び回り続ける虫たち。
正直それどころではない。とは言え、メサイアは知っているのだ。アブが多いということは水が綺麗だということを。
清流たる渓流がどれだけの努力の上に成り立っているのかをしる彼女にとって、それは喜ばしいことであるが、正直、この虫には辟易してしまう。
「さて、良い子のわたくしはそろそろお休みするのですわ。火の番と見張りはヴリちゃんにお願いするのですわ……万が一! そう、万が一にも蛇に猪に熊ちゃん……夜のキャンプには危険がいっぱいなのですわ」
メサイアはなんでか熊だけにはちゃん付けしている。
とはいえ、此処は『アスリートアース』である。超人アスリートたちならば熊と遭遇しても、こうなんとなりそうな気がしないでもない。
けれど、メサイアは安全にこそ気を配る。
「というわけでお願いいたしますわ! おやすみなさいませ~! 朝には起こしてくださいましね!」
メサイアは『ヴリトラ』の鎮座する直ぐ側のテントで眠りに落ちる。
一国の姫君がこんな場所でテントの中ですぴすぴお休みだとは誰も思わないだろう。
けれど、紛れもない事実である。
メサイアは出奔した姫。
世界に戦乱を巻き起こすオブリビオンを討つことを使命とした戦姫でもある。
今日はなんでもない日。
ささやかで穏やかな一日。
それを終えるメサイアは、満足げに眠りに落ちる。あれだけいっぱい動いたのだから、きっと体重計の針はもとに戻っているだろう。
だが油断してはならない。
あの体重の針というやつは、忘れた頃にひょっこりまた右に傾くのだ。
戦え、メサイア姫!
君の体重が何者か(カロリー)に増幅されているかもしれない――!
大成功
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茜・皐月
遊び疲れて先にテント内でおやすみした少女人格。
娘人格は外で星空をぼんやり眺める。
『せっかくのオフなのに結局疲れましたわ…』
心地よい疲れではあったけれど。
飲酒でほのかに火照る体を夜風に晒し、自然の音に耳を傾け、きらめく星空に心を洗う。
穏やかで平和な日…こんな日々を守るために、きっと明日も戦うのだ。
そう己の中で再確認。
『あの子が楽しく笑えるのなら、それに勝るものはないものね』
僅かに残ったお酒で静かな晩酌でもしながら、夜明けを待とう。
きっと、今日という日に差し込む朝日は眩しくて当たりを輝かせてくれるから。
オヤスミ、この先も共にに頑張りましょうね。眠る貴女へ囁く夜。朝には元気なおはようを聞きたい。
穏やかな日々は、人の心の拠り所でもあったことだろう。
時として人は、それを寄す処にして活きる力を得る。苛烈なる日々を過ごす猟兵たちにとって、かけがえのない思い出を今日手に入れたのかも知れない。
茜・皐月(自由奔放、天真爛漫な魔女・f05517)は多重人格者である。彼女の中にある人格の一つ、少女の人格を司る彼女は、遊び疲れたのかテントの中で静かな寝息を立てている。
すぅ、すぅ、と規則正しい音が聞こえることに、娘人格は今日一日を振り返りながら星空を見上げていた。
『せっかくのオフなのに結局疲れましたわ……』
少女人格の彼女に振り回されっぱなしだった。
温泉街では一時ばかり離れては居たが、結局は同じであった。それにキャンプ場に辿り着いてからは、離れていた分を取り戻すかのように少女人格の彼女ははしゃぎ倒していた。
それを微笑ましいと思わないわけではない。
だって、今、娘人格の彼女の体を包み込んでいるのは心地よい疲れであったからだ。
ふぅ、と息を吐き出す。
少しアルコールの香りがする。少女人格の彼女が持ってきた地酒が、思った以上に彼女の体を巡っているのだろう。
仄かに火照った肌を冷ますように夜風に当たりながら、星空を見上げ続ける。
こんなにも穏やかな日が訪れるとは思っても見なかっただろう。
猟兵とは世界の悲鳴に応えて駆けつける戦士である。彼女のまた、それから漏れることはない。
いつだって猟兵の戦場というのは過酷な運命が待ち受けている。
『穏やかで平和な日……』
星空が彼女の心を洗うようであった。自然の中にありて、自身もまた自然の一部である事を知る。
かすかな音も良く聞こえる。
こんな日々を護るために、きっと明日も戦うのだ。己の心の中で娘人格の彼女はうなずく。
何も間違ってはいない。
その決意は、確かなものであった。けれど、結局の所猟兵が戦うのは世界のためだけではない。
彼女にとって戦う理由というのは、至極単純なものであった。
『あの子が楽しく笑えるのなら、それに勝るものはないものね』
彼女を包む心地よい疲れは、結局そういうことなのだ。少女人格のためにこそ彼女は戦う。
手にした杯の中に僅かに残ったお酒をゆっくりと、ちびり、ちびりと彼女は飲んでいく。
少し少ない晩酌かもしれない。
けれど、それでいいのだ。
今はまだ今日という一日を終えたくはない。
夜明けを待つつもりで彼女は星空を見上げていた。星が流れていく。変わらぬ日々というものが、なんでもない日というのが、こんなにも尊いと感じる。
『オヤスミ、この先も共に頑張りましょうね』
テントで眠る少女人格の寝顔を見やり、彼女は微笑む。
眠っている彼女には、この囁きが届かないかもしれない。
夢の中で聞いているのかもしれないし、そうであったらいいかもとも思う。けれど、彼女も、眠る彼女も、
同じ一つの肉体という器に宿る者だ。
分かたれることはない。
けれど、同じ器に宿るからといって、何もかもがわかっているわけではない。
時に喧嘩だってするだろう。
時に行き違いをすることもあるだろう。
だから、言葉をかわすのだ。同じ器にありても、他者と同じようにわかりあうために言葉を紡ぐ。
『……そうよね』
空が白く染まっていく。
ミッドナイトブルーは僅かな時に溶かしたように空に広がり、そして彼女は聞くだろう。
彼女が聞きたいと願った言葉を。
「――おはよう!」
それが聞きたいと願った。
今日も変わらず。そして明日も変わらないことを証明するかのような元気な声。
共にある貴女から告げる一日の始まりの言葉に、微笑みが溶ける――。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】
満天の星を眺めていると、不意にお腹がグーと鳴る
梓ぁ、何だか小腹が空いてきたよ
梓の美味しい手料理を食べながら
綺麗な星空を眺める時間は最高だろうなぁ~
焔と零だって食べたいよねー?
おねだり成功してしめしめ
うんうん、やっぱりこれだよね
マシュマロを串に刺してスモア作り
外はカリッ、中はふわトロ食感がたまらない
焔と零の分も作って差し出す
熱いから気を付けてね。少しずつ食べるんだよ
梓が作ってくれたスイーツもいただきまーす
焼きりんごも焼きチョコバナナも甘みが強くてすっごく美味しい
焼くと普段とは全然違う食感や味わいになるね
絶品スイーツを食べながら空を見上げる
…あっ、流れ星
本当に最高の時間になったね
乱獅子・梓
【不死蝶】
昼飯も夕飯もあんなに食べたのにまだ腹に入るのかお前は…
ねだる綾をスルーして寝ようかと思ったが
焔と零まで一緒になっておねだりしてきた
クッ、そんな目で見つめられたら断れないじゃないか…!
仕方ない、焚き火を使って何かスイーツでも作ろうか
こんな夜更けに甘いものだなんて我ながらワルだな…
まぁ今日ぐらいはいいだろう
まずはキャンプ定番のスモア
これなら綾でも自分で作れるだろう
その間に俺は果物を使って別のスイーツ作り
芯をくり抜いた林檎に砂糖・バター・シナモンを入れて焼き林檎
切れ込みを入れたバナナにチョコを挟んで焼きチョコバナナ
幸せそうに食べる綾や仔竜たちを眺めながら
温泉街で買った美味い酒をいただく
空を見上げれば星。
瞬く光は、そのどれもが異なる色合いを持つものであった。
大きな星もあれば、小さな星もある。
けれど、その大きさは本来の大きさではない。小さな星も、遠く離れているだけで、巨大な光を放っているかもしれないのだ。
そんな星々を見上げていた灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が不意に、グーと鳴る。
その音に乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は嘘だろって顔をする。
なにせ、今に至るまでに様々な肉やら野菜やらを食べていたのだ。どうあっても満腹のはずなのだ。
「梓ぁ」
「昼飯も夕飯もあんなに食べたのにまだ腹に入るのかお前は……」
綾の目を見ればわかる。
ていうか、顔に描いてある。
『小腹が空いた』
冗談かと思っているが、彼と共に過ごしていれば、嫌でもわかることだ。あれは本気で小腹が空いていると訴えている顔である。
「梓の美味しい手料理を食べながら綺麗な星空を眺める時間は最高だろうなぁ~」
わりと見え透いた言葉である。
梓もまたそれを理解している。だから、スルーしようとして梓は己の袖に食いつく二匹の竜の姿に絶句するのだ。
「焔と零だって食べたいよねー?」
綾は巧みに二匹を使っておねだりするのだ。綾はともかく二匹の竜のキラキラした瞳で見上げられては、さしもの梓も弱いのである。
「クッ……そんな目で見られたら断れないじゃないか……!」
どうしたものかと思いながらも、『もう少し欲しい』と言うような彼等を前に思い出す。
仕方ない、と言いながらもなんだかんだでやってくれる梓に綾はガッツポーズする。
「焚き火を使ったスイーツでも作るか……しかし、こんな夜更けに甘いものだなんて我ながらワルだな……まぁ、今日ぐらいはいいだろう」
「ねーねー何するの?」
「そうだな『もう少し欲しい』と言うお前たちにぴったりのがあるんだよ」
そう言って手渡すのは串とマシュマロ。
「『some more』――スモアだよ」
「ああ、なるほど。やっぱりこれだよね」
串にマシュマロをさして綾が焚き火で炙る。表面が焦げ付くギリギリまでを狙えば、外のカリッとした食感が楽しくなる。
そこにチョコレートとクラッカーを挟めば、定番のスモアの出来上がりだ。
『some more』、即ち『もう少し欲しい』。
いつから言葉を略すようになったのかは定かではないけれど。それでも、長い時を経てキャンプの定番になったのは、これがお手軽で美味しいからだろう。
「カリッ、ふわとろ食感がたまらないよね。ほら、焔と零も」
そう言って綾ができたてのスモアを二匹の口元に運ぶ。スモアはできたてが一番美味しいのだ。
やけどに注意するんだよ、と綾は微笑む。
そんな綾のもとに梓が持ってくるのは、果物を使ったスイーツを作り始める。
「芯をくり抜いたりんごに砂糖、バター、シナモンを入れて、と」
「なになに? 何してるの?」
「ふっ、当てて見ろよ」
そういう梓はさらにバナナに切れ込みを入れていく。そこにチョコレートを挟んでいくのだ。
二つはこれで完成ではない。
そこからさらに焚き火で炙るのだ。そうすると出来上がるのは焼きリンゴと焼きチョコバナナ。
とろける味わいは、どちらもたまらないものが在るだろう。
「あー、絶品!」
綾と二匹の竜たちが甘さにはしゃいでいる。本来ならこの時間に甘いものを与えることはない。
だから、というわけではないだろうけれど、その背徳感もスパイスになっているのかもしれない。
幸せそうな彼等を見て梓も笑みが溢れる。笑顔を肴にした酒の味は格別だ。
「……あっ、流れ星」
「え、あ、おい、そういうのはもうちょっと早く……!」
どこだ、と梓が空を見回す。
もう流れ星は消えてしまったけれど、綾は微笑む。本当に最高の時間になったね、と。
誰もが今日というなんでもない日を甘受する。
特別ではないと思う一日も、見方を変えれば、いつだって最高の日にすることができる。
空が白く染まりゆく頃、綾と梓は椅子を並べ、語り合い、眠る二匹を見やりながらとりとめもない話に花を咲かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三上・くぬぎ
今日はテントを組み立てたり、たき火をおこしたりがんばったですから、夜はローチェアに座って、たき火の前でのんびりするです
やっぱり、夜になるとすずしくなるですね
たき火あったかいですー♪
そうだ、マシュマロわすれちゃダメですね。マシュマロ焼くです
焦げすぎないように気をつけて(串をクルクル)……んー、これくらいですかね、いただきますです
もきゅっ、カリカリでトロトロです!
お店のひとがクッキーにはさんでもいいって言ってたですね。ためしてみるですよ!
ソロキャンプ、つかれたですけど、とってもたのしかったです
また来たいです!
三上・くぬぎ(アウトドア派・f35607)は今日という一日を振り返る。
温泉街から始まって、キャンプ場でテントを立てた。
焚き火を起こして、食事を温めて食べた。
どれもがいつもの探検の延長線上にあるものだ。
とてもがんばったと、くぬぎは胸を張っていえることだろう。食べすぎてまんまるになったお腹をさすりながら、ローチェアに身を沈めさせる。
「くぬぎ、がんばったです」
一日を振り返ってみても、本当によくがんばっていた。
道中は長く、山渓地らしくアップダウンが激しいものだった。虫取り網で珍しい虫を捕まえたりもできただろうし、知らない草花を見ることもできた。
揺らめく目の前の焚き火が、まるで記憶を見せるようにくぬぎの記憶の形を作るようでもあった。
「やっぱり、夜になると涼しくなるですね。焚き火あったかいですー♪」
日中は汗ばむほどであったけれど、夜は涼しく冷え込んでいく。
焚き火があってちょうどよいくらいだ。ぱちぱちと薪が弾けている。その音が奏でるのは、くぬぎのBGM。
うつらうつらと船をこぐ、くぬぎ。
眠ってしまおうかな、と思っていたが、ふと思い出す。
そう、温泉街の一太刀が言っていたことを思い出したのだ。
「そうだ、マシュマロ忘れちゃダメですね。マシュマロ焼くです」
ぱっとローチェアから飛び降りて、くぬぎはテントの中にあった荷物からいそいそとマシュマロの袋を取り出す。
あ、それに串も、ときょろきょろ探せば、出店で買ったフランクフルトの串があったことを思い出す。
「これに、これをこうしてー……焦げすぎないように気をつけて……」
焚き火に炙るマシュマロは、火に近づけすぎると一気に焦げて落ちてしまう。ここは慎重にやらなければならない。
串をくるくると回し、ゆっくりと白いマシュマロに焦げ目が入っていくのを見極め、くぬぎはさっと取り上げる。
「……んー、これくらいですかね? いただきますです」
ぱくーと口に焼きマシュマロを運べば、外のカリカリ具合と中のとろとろふわふわの食感に楽しい気持ちになってくる。
そして、お店の人が言っていたクッキーを挟む……即ち、此処にチョコレートを加えれば、スモアと呼ばれるキャンプ定番のスイーツの出来上がりである。
「ためしてみるですよ!」
さて、もう一個とマシュマロをあぶり出す。
『もう少し欲しい』が、炙ったマシュマロとチョコレートをクラッカーで挟んだ『スモア』と呼ばれるスーツの興りだと言われている。
『スモア』――『some more』。言葉を短縮して、そう呼ばれるようになったらしい。
けれど、くぬぎに今それは必要のないことだった。
目の前の全てに集中している。
いつの時代に誰がどうやって、という事は関係ない。
彼女が今、それを楽しんでいるということが全てだ。とろけるマシュマロとチョコレート。それを挟むクッキーがくぬぎの小さな口の中で渾然一体となって混ざり合っていく。
甘さと甘さのハーモニー。
さくっとした食感。とろっとした食感。カリッとした食感。
いくつもの食感が重なり合う。楽しい。そんなふうに思えて、くぬぎは一人微笑んでしまう。
ソロキャンプは、とても疲れることの連続であった。
けれど、楽しかったのだ。
「また来たいです!」
ローチェアにすわって、くぬぎは一人、スモアの味わいに体を揺らす。美味しいものを食べた時、人はどうしたって笑いを堪えられない。
他の誰かにも教えてあげたいと思うだろうし、今日という日を語りたい。
くぬぎは、心地よい疲労感と共にテントの中に潜り込めば、安らかな寝息を立てるだろう。
楽しさは苦しさを得てこそ得られるもの。
テントも、道のりも、くぬぎは小さな体で人一倍がんばった。
だからこそ得られた楽しさがある。
その思い出が、いつか、くぬぎをさらに前進させるだろう。その時がいつの日になるのかはまだ誰も知らない。
けれど、それでいいのだ。
なにせ、今日はなんでもない日。
このなんでもない日を特別な日に変えることができるは、いつだって、くぬぎ自身であるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
橘・小雪
焚き火で昼間、食べ残ったおまんじゅうを焼きながら
もちろん、かたわらには紅茶
おまんじゅうと紅茶は意外と素敵なマリアージュ
食い気を満たしながらも自然を堪能するのも忘れないよ
耳をすませば虫の声
空を見上げれば満天の星空
空気はひんやりと水の香りがして
あたしは猟兵になって日が浅くって
まだこれが「当たり前の生活」で
でも次第にこの「何気ない夜」が貴重になっていくのかな
いや、今晩は特別な夜ではあるんだけどね
きっと忘れない
優しくしてくれたお店の人たちや八雲さん
渓谷の景色に美味しかったキャンプのご飯
あたしの淹れる紅茶で
こんな和やかな時間を提供できるようになりたい
ナイアルテさん、ご案内ありがとう
静かなものだと橘・小雪(Tea For You・f37680)は思っただろう。
キャンプ場には多くの猟兵たちが訪れていた。
一人で訪れる者、友人と訪れる者。
皆が一様に楽しんでいることが空気から伝わるようでもあった。そして、小雪もまたその一人だ。
なんでもない日。
ただ、日常が流れていくだけ。
目の前の焚き火に薪をくべる。
ぱちぱちと弾ける音は、まるで今の自分に賞賛を送られているような気持ちにも鳴るだろう。
「うん、おまんじゅうと紅茶は意外と素敵なマリアージュ」
昼間に食べた温泉まんじゅう。それをいくつか残しておいて、小雪は紅茶を堪能している。
思いがけず、組み合わせとして合うことを発見できたことは喜ばしいことであった。お腹が膨れてくれば、とりとめもないことばかりを考えてしまう。
瞳を伏せれば、耳に入ってくる虫の声が大きく聞こえる。
伏せてい瞳を開き、空を見上げれば満天の星空。
空気は渓流に面しているからか、水の香りとひんやりとした空気が肌に触れてくる。
どれもが好ましいものであった。
「星が遠いなぁ……でも、数が多い。街中で見るよりずっと……」
小雪は彼女の故郷であるサクラミラージュで見上げる星空よりも、此処の星空が数多の星に囲まれているように思えただろう。
彼女の住まう街中は、人工の明かりが周囲に点在している。
人の文明は夜から闇を取り払っている。それは喜ばしいことであるし、否定すべきことではない。
「まだこれが『当たり前の生活』なんだよね」
小雪は猟兵になって日が浅い一人だ。
サクラミラージュでの日々は穏やかそのものだ。影朧が現れることはあっても、大抵のことはユーベルコヲド使いがなんとかしてくれる。
だから、まだ彼女は『当たり前の生活』の延長にいる。
猟兵として活動していくにつれて、この『何気ない夜』が貴重になっていくのかも知れない。
「ううん、今晩は特別な夜ではあるんだけどね」
見上げた空の高さを知る。
星々の輝きの間にさらに煌く星があることを知った。
きっと忘れない。
彼女は今日の一日を脳裏で振り返る。
優しくしてくれたお店の人たちや、管理者の『八雲』。
渓谷の景色に美味しかったキャンプのご飯。
どれもが、なんでもないけれど、特別なこと。
小雪の中で生まれた感情は、どんどんと輪郭を帯びていくだろう。それまでなんとなくでしかイメージ出来ていなかったものが、はっきりと像を結ぶ。
自分が何をしたいか。
どうするべきなのか。
それがはっきりと今、彼女の中に言葉となって生まれる。
「あたし、あたしの淹れる紅茶で、こんな和やかな時間を提供できるようになりたい」
戦うよりも、そうありたいと彼女は願うのだ。
ともすれば、戦うよりも難しいことかもしれない。けれど、いつだって正しいのは困難であり、険しく厳しい道だ。
だからこそ、彼女は前に進むだろう。
「ご案内ありがとう」
小雪はグリモア猟兵に礼を告げる。またいつもの日常に戻っていく最中、彼女は感謝する。
なんでもない日は、それをなんでもない日にする人たちがいるから成り立つことを小雪は胸に抱く。
誰かのためになりますようにと願う心があれば、その祈りはいつの日にか万人に届くことだろう。
かすかに芽吹き始めた心は、もう小雪の中で花開く瞬間を待っている――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
腹も膨れたから腹ごなしに『式神【ヤタ】』を灯代わりに連れて渓流まで散歩に来たぜ。
すっかり暗くなって星空が綺麗なこって。
「…夜風が気持ちいいです。」
他にも誰かいるかねぇ?
キャンプの夜と言ったら肝試しってイメージだが、まあ俺達は年中魑魅魍魎の相手をしてるからオフの時くらい勘弁だがなッ!
「…せっかくですからここでデザートの『おはぎ』食べましょうか。」
いいねぇ、相棒。
川の流れる音、周りから聞こえる虫の音色、頬張るおはぎ、正に風流って感じだぜッ!
こういうのんびりした時間も悪くねえなッ!
いい時間になったらテントに戻るか。
「…英気を養って明日からまた頑張りましょう。」
【アドリブ歓迎】
霊光を灯す式神『ヤタ』の輝きがゆらゆらと揺れる。
それは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)たちが腹ごなしに渓流へと散策している姿であった。
暗闇が辺り一帯を支配している。
清流に沿えば、涼やかな空気と共に水気が凶津や相棒である桜の肌を湿らせるだろう。とは言え、不快感があるわけではない。
むしろ、爽やかささえ感じさせるものであった。
見上げると、そこにあるのは星空。
街中に在るときには見られない小さな星の輝きさえも、ここではまばゆく見えるのだ。
『星空が綺麗なこって』
凶津は赤い鬼面をカタカタ揺らしながら、相棒である桜に同意を求める。
確かにそうだ。
今まで彼等は多くのオブリビオンや魑魅魍魎の類と戦ってきた。このような日常を送るよりも、戦いの日々のほうが多かったはずだろう。
「……夜風が気持ちいいです」
桜もオブリビオンの関係のない、なんでもない日を堪能しているようである。
今日一日を取ってみても多くの思い出がある。
釣りに、キャンプ、焚き火。
釣り場を教えてくれた少年に、お茶をごちそうしてくれた『八雲』翁。
出会いがあるから別れが在るのは言うまでもない。けれど、その別れは、また出会うための通過点に過ぎないのだ。
『キャンプの夜と言ったら肝試しってイメージだが……』
仮に催されていたとしても、凶津や桜にはあまり効果的ではないだろう。先程も述べたが、彼等は常に魍魎跋扈する戦いの中に生きている。
こういうオフの時くらいは、そういうのは勘弁して欲しいと思っても仕方のないことであった。
他に誰かいるかもしれないと思っていたが、どうやら他の猟兵たちも皆、テントでのんびりしているようだ。
この渓流の散策は、今、凶津と桜によって独占されていると言ってもいいだろう。
何を咎められるわけでもない。
「……せっかくですから、ここでデザートの『おはぎ』を食べましょうか」
桜は神代家直伝の製法によって拵えられた絶品のおはぎを手に微笑んでいる。
時間が時間なだけに、少しの罪悪感があるが、それもまたスパイスになると言っていいだろう。
『いいねぇ、相棒』
凶津もニヤリと笑う。
たまには、こんなワルなこともいい。むしろ、可愛いくらいのワルなのである。
川の流れる音。
虫の音色。
そして、二人で頬張るおはぎ。
『正に風流って感じだぜッ! こういうのんびりした時間も悪くねえなッ!』
「……あんまり大声出してはいけませんよ」
桜はしー、と指を立てる。
夜の帳は降りている。
キャンプ場から少し離れているとは言え、騒々しくするのはマナー違反だし、眠っている者たちを起こすのは忍びない。
おっと、そうだな、と凶津はカタカタ鬼面を揺らしながら、おはぎを頬張り続ける。
「……また来たいですね」
桜が薄く微笑んでいる。本当にそう思っているのだろう。穏やかな日々を護るために戦う彼女であるからこそ、今日という日はとても大切な思い出になる。
「……英気を養って明日からまた頑張りましょう」
桜は立ち上がり、明けていく空を見つめる。
今日という日はなんでもない日かもしれない。オブリビオンの脅威もなければ、誰かが涙することもない。
本当になんでもない日。
けれど、それが如何に大切なものであるのかを、二人は見つめ直したことだろう。
これを護るために戦う。
誇らしさもあるだろう。それ以上に、かけがえのない思い出から得られる力のみなぎりも感じる。
今日は良い一日だった。ならば、明日もきっと良い一日になる。
そう思い、二人はテントの中で安らかな寝息を立てるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
綺麗な星空ですね♪
今日は温泉に始まり、キャンプ設営や普段と違う料理作りも面白かったです。
神としての務めを果たす、神職として働く、ヒーロー又は猟兵として戦う、が日常なので、こういう完全オフの日は久しぶりでとても楽しかったです♪
この機会をくれたナイアルテさんとキャンプ場を運営して手伝ってくれた八雲さんに感謝を、そして共に戦う猟兵仲間さん達への労いを。
響月を取り出し、気持ちを籠めて楽器演奏します。
この星空に相応しい、綺麗で優しい旋律を。
聴きながら雰囲気に浸るのも良いですし、そのまま安らかな睡眠に入るのも良いと思います。
この一日が皆さんにとって素敵な形で終われますようにと祈りを籠めて吹奏いたしますよ。
得難き一日を得た者は、一日の終りに幸福を思うだろう。
きっとそれは、どんなことにも負けない幸福であっったことだろう。星空を見上げる大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の心の中にあるのは、今日という一日の振り返りであった。
あの星々を見るたびに思い出す。
温泉に始まり、キャンプの設営や普段と違う料理を作った。
どれもが面白いと思うことであり、神性である彼女にとっては新鮮なことであった。
神としての務めを果たす、神職として働く、ヒーロー又は猟兵として戦う。
それが詩乃の在り方であった。
辛いと思ったこともあるだろう。苦しいと思ったことも在るだろう。
けれど、こうも思うのだ。その辛さ、苦しさがなければ、今日という日の楽しさは覚えることはできなかったであろうと。
「とても楽しかったです♪」
誰に告げるともなし、詩乃は感謝する。
神なる身として、身を投じる事に疑念はない。けれど、こうしたなんでもない日を自分自身が味わうとは思っても居なかったのかも知れない。
かけがえのない時間だ。
思い出と言ってもいい。
感謝ばかりが詩乃の心の中を満たしていく。グリモア猟兵が案内し、キャンプ場を管理してくれている老人がいる。
そして、ともに戦う猟兵の仲間たち。
彼等への労いを。
詩乃は龍笛を手にし、音を奏でる。
静かな音色が渓流に溶けていく。また木々の中に仕込んでいく。虫の音色は、それに沿うように共に奏でられる。
今まさに詩乃は一人の存在として此処にある。
天にある星。
その星の瞬きが見せる光景に相応しい、優しくも壮麗なる旋律。
願うことは唯一つ。
そう、今日という日を安らかな日とするために。今も他の猟兵たちは各々の時間を過ごしていることだろう。
安らかな睡眠に入るのもよし。この音色の雰囲気に浸るのもよい。
どちらを選んでも、選ばなくても。
この音色に込めた気持ちだけは色褪せることはない。
「この一日が皆さんにとって素敵な形で終われますように」
その願いを込めた旋律が終わり遂げた時、いつからか其処に居たのか、『八雲』翁が手を叩いて微笑んでいる。
素晴らしい演奏だったと告げ、恭しく一礼して去っていく。
人の悪意は伝播する。
けれど、人の善意もまた伝わっていくのだ。例え、悪意ほど早く伝わることがないのだとしても、ゆっくりと染み込んで、誰しもがもつ善性に届く。
「こうしていつしかなんでもない日がいつまでも続くことを夢見るのですね」
詩乃は微笑み、龍笛を収める。
彼女が願うのは、いつだって平和だ。
自分が大切に思う人たちが穏やかに過ごせること。
誰もが笑って過ごせること。
健やかなる生命を咲かすこと。
植物と活力を司る神性だからではない。ただ一人、詩乃という存在を持って、そうあってほしいと願う祈りだ。
星空の瞬きの下、詩乃は微笑み瞳を伏せる。
今日という一日は終わり。
輝かしい未来も、一足飛びで訪れることはない。今日という日から地続きに連なるものであると知るからこそ、詩乃は、なんてことのない一日を終え、新たなる明日へと一歩を踏み出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
フィア師匠と
採ってきた野草を煎って作った野草茶を淹れ、
焚き火のまわりに座ってお話したいですね。
茶葉?
そんな贅沢品買えません。
……美味しい草選びましたから、だいじょぶです。
師匠としばらく離れていたので、
2人……1匹増えてますが……とゆっくりするのも久しぶりです。
やっと見つけた師匠は、いつもどおりすぎて、
安心でもあり、さみしくもあり……。
つつーっと師匠の隣に寄っていったら、
少し甘えるようにくっついちゃいます。
フギンさんはなぜか痙攣してますけど、どうしたんでしょう。
お茶が合わなかったのでしょうか?
……盛ってないですよ。たぶん。
でもこれで、今夜は師匠と2人きりですね。
次からは逃げるならいっしょですよ?
フィア・シュヴァルツ
ルクスと
「よし、飯も食ったし、ルクスの淹れてくれた茶も飲んだし……
ここからがキャンプアスリートの本領発揮よ!」
ふむ、なにやらフギンがピクピクしていて、いつものツッコミが来ないし、ルクスは寒いからか、くっついてきているが、まあいい。
「さあ、ルクスよ!
今こそキャンプアスリートとして野山で特訓だ!」
そう、キャンプアスリートとは!
どんな過酷な環境でも生き延び、生存競争に勝つ存在!
これからサバイバルゾーンに変わるこの山で、我の魔術による攻撃を一晩耐えてみせるがいい!
「ふははは!
この程度の火球の魔法も避けられないのでは、勇者の名が泣くぞ!」
『こうして、キャンプ場を出禁になる一同でございました』
結論から先に告げるとしよう。
此処からはフィア・シュヴァルツ(宿無しの漆黒の魔女・f31665)の使い魔である『フギン』の言葉で綴られる。
『お二方はキャンプ場を出禁と相成りました』
キャンプアスリート編、完ッ!!
と言っては出落ちがすぎるので、語ることとしよう。
星空が瞬く空は美しく、街中に在りては見ることの出来ない光景であった。
静かな山渓の中では、虫の声さえよく響く。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる自称『光の勇者』・f32689)は採ってきた野草を煎じて作った野草茶を入れ、焚き火をフィアと共に囲んでお茶を啜る。
流石に野草を煎じて飲むお茶は、苦味も渋みもすんごいことになっているのであるが、彼女たちに茶葉を買おうという選択肢はない。
だって、贅沢品であるから。
とにもかくにも彼女たちにはお金がない。金欠街道まっしぐらなのである。
何故って問われても、まあ、フィアとかフィアとか、フィアとか……のせいであろう。たぶん、きっと、めいびー。
『……』
ビクビクしているのは『フギン』である。
流石に彼女には野草茶はダメであったようである。もうツッコミが出来ないので暫くビクビクしている。痙攣しているとも言えるが、まあ、ルクスにとてはどうでもいいことであった。
師匠であるフィアと暫く離れていたのだが、二人……一匹増えているが、まあ、ゆっくりおしゃべりできるのも久しぶりである。
だから、ルクスはちょっぴりアンニュイであった。
やっと見つけた師匠は、いつもどおり過ぎているし、それが安心できるやら寂しいやら。
複雑な感情を抱いていた。
もっとこう感動の再会シーンになると思っていただけに、がっかりである。つつーってフィアの隣に甘えるようにくっついていても、フィアは、なんだ寒いんか? くらいにしか思っていないのである。
うーん、この。
「よし、飯も食ったし、ルクスの淹れてくれた茶も飲んだし……ここからがキャンプアスリートの本領発揮よ!」
がばりんちょ、とフィアが立ち上がる。
なんで?
ルクスは目を白黒させている。何をするつもりなのだろうか。『フギン』はまだ痙攣し続けているし、ツッコミが間に合わない。
いやまあ、ルクスが何か盛ったせいであろうけど、きっと彼女は何も盛ってないって言うだろうし、不慮の事故で何かが混じっていたとしても、多分って感じなので、証拠不十分不起訴! ってなるのである。
しかしながら、フィアはそんなことお構いなしである。
「さあ、ルクスよ! 今こそキャンプアスリートとして野山で特訓だ!」
なんで?
ルクスもそう思っている。そもそもキャンプアスリートってなんだ。
「キャンプアスリート……?」
「そう、キャンプアスリートとは!」
うんたらかんたらあぶらかたぶらにんにくおおめやさいましましめんかため。
ではない。
説明しよう! キャンプアスリートとは!
どんな過酷な環境でも生き延び、生存競争に勝つ存在! 以上!
「これからサバイバルゾーンに変わるこの山で、我の魔術に寄る攻撃を一晩耐えて見せるがいい!」
「え、え、え……えええええ!?」
ルクスとしては、ぴっとりくっついて、甘えるように師匠にあっぴるするつもりだったのだ。
これから逃げるのなら一緒ですよ、とかなんとか! きゃー! ってな具合で。
けれど、そんな希望は淡いものであった。見事にぶち壊された。
ルクスに迫る火球。
本気である。
「ふははは! この程度の火球の魔法も避けられないのでは、勇者の名が泣くぞ!」
「ちょ、ちょっとまってください、師匠! 違う、違います! こんな予定じゃなかったんです!」
乱れ打たれる魔法。
おいおいおい。あいつ出禁になるわ。
ほう、火球魔法ですか、大したものですねとはならんである。
そんでもって冒頭に戻る。
『フギン』の痙攣が漸くもとに戻った頃には、フィアとルクスは仲良く正座させられていた。
騒がしくしたというか、それ以上に森で火球魔法使うなと『八雲』翁に補足されていたのだ。
まじでわけわからん感じでいつのまにか二人は正座させられ、出禁をいいわたされる。
征く先々で出禁になる女、フィア。
そして出禁勇者、ルクス。
なんかこう、不名誉な称号がたくさん尾ひれにはひれ。背びれにってな具合に追加されていく二人。
勇者パーティの明日はどっちだ!
多分、明後日の方角に突っ走っていくのだろうけれど、それもまた……ヨシッ。
『ヨシッ、ではございませんよ――!?』
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィア・フルミネ
カシム(f12217)と
いい夜だね。カシム、メルシー。……先ほどはご馳走様。あれほど素晴らしい夕餉は経験したことがなかった。香辛料、あれはいいね
何を焼いているの? なるほど。火傷しないようにね。せっかくのいい夜に怪我は無用だから
素朴な味わいも皆で分け合うとまた違った深みを感じるよ。好物に加えたいね
テント。三人で寝るには多少手狭な気もする。するけど、無粋なことは言わないよ。カシム、寂しくはない? 甘えてもいいよ
なんでもない日の、なんでもない夜に祝福を。この夜が耐え難く愛おしく思う未来もあるはず
もう寝てしまった? それとも起こしてしまったかな。もう少し話をしていたいの。うん。夜はまだ長いんだから
カシム・ディーン
UC常時
同行
フィア(f37659
ええ、香辛料とは最高の分化です
臭みのある物もあれでどうにかなりますから
「食はあらゆる世界の分化だよ☆」
焚火ってのも良い物です
火は恐ろしいがとても便利です
「火は文化の象徴ともいえるからね☆」
うん?焼くというよりは…UDCアースで見た美味しそうなのがありましてね?
(チーズの塊を焚火であぶり融けかけた所でパンに乗せ
「ハ〇ジのあれだ!」
うんうん、フィアの言う通り実に美味しいですね(むふー
テント
ははは、狭いからこそいいんですよこれは
そして甘えていいのです?(胸元に埋まり堪能しながらもふもふ
「ご主人サマー?」(後ろからむぎゅってる
起きてます
何、夜は長いし語るとしますか
フィア・フルミネ(痺れ姫・f37659)はおそらく最も過酷な世界を生きていた猟兵の一人であろう。
だからこそ、今日という一日はかけがえのない暖かな思い出であると胸を張って言える。
「いい夜だね、カシム、メルシー」
焚き火が暗闇を取り払うように爆ぜながらフィアの頬を照らしている。ほんのりと微笑みの形になっていることをカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と『メルシー』は知るだろう。
彼女を此処に連れてきて正解だったと思ったかも知れない。
彼女の生い立ちを詳しく聞くことは、それだけでトラウマの如き記憶を掘り返す事にほかならない。
永劫回帰の力は凄まじいが、そのたびに暖かな記憶を失い、トラウマへと変えてしまう。
だからこそ、今日という一日がいずれトラウマへと変わるのだとしても。
それでも暖かな記憶というものは彼女を活かし続けるだろう。
「……先程はごちそうさま。あれほど素晴らしい夕餉は経験したことがなかった。香辛料、あれはいいね」
「ええ、香辛料は最高の文化です。臭みのあるものはあれでどうにかなりますから」
そう言ってカシムは薪を焚き火にくべる。
弾ける薪の音を聞きながら、フィアに大抵のくさみはネギと生姜でどうにかできるのだという。
『食はあらゆる世界の文化だよ☆』
「焚き火ってのも良いものです。火は恐ろしいが、とても便利です」
『火は文化の象徴ともいえるからね☆』
互いを理科するのに言葉は最も適したものである。
けれど、無理に語る必要がないこともまた道理であったことだろう。
「何を焼いているの?」
「うん? 焼くというよりは……」
カシムはUDCアースで見た美味しそうなものを再現しているつもりなのだ。チーズの塊を串にさして、カシムは溶けかけたそれをパンに乗せる。
『それってあれ!』
『メルシー』がはしゃぎ倒している。
あれって言えばあれである。名前を出したら、ちょっと拙いやつなので、あえて濁しているが、まあ、あれである。
「なるほど」
なるほど!? フィアはわかっているのかわかっていないのか。それよりもカシムがやけどしないことのほうが気になるのだ。
だって、やけどをしてしまったら、せっくのいい夜が台無しになってしまう。
パンにのったチーズを受け取って口に運ぶ。
「素朴な味わいでもみんなで分け合うとまた違った深みを感じるよ。好物に加えたいね」
伸びるチーズに慌てるフィアを見やり、カシムは笑むだろう。
少しでも彼女に暖かな記憶を与える事ができたのならば、少し自惚れてもいいだろうとさえおもたはずだ。
そんなふうに三人は過ごし、テントの中に入る。
川の字だ。
少し狭いと思うかも知れない。フィアが手狭だと思っていても、それは言わない。無粋なことだと思ったからだ。
『せまーい☆』
「ははは、狭いからこそいいんですよこれは」
そんなカシムの言葉にフィアは首を傾げて言うのだ。こういうのがいいのだろうかと。
身を寄せ合うこと。それを望むということは。
「カシム、寂しくはない? 甘えてもいいよ」
「甘えていいのです?」
「うん、なんでもない日のなんでもない夜に祝福を」
きっとこの夜が耐え難く愛おしく思う未来もあるはずだから。カシムとフィアが抱き合う形になって、テントの中で暖かな空気が流れ始める。
『ご主人サマー?』
『メルシー』のこと忘れてなーい? とカシムをフィアとサンドイッチにする。少しも寂しいとは思わないだろう。
でもカシムは寝たふりをするかもしれない。
静かな空間。
それにフィアは、ささやく。
「もう寝てしまった?」
「起きてます」
「起こしてしまったかな。もう少し話をしていたいの」
「何、夜は長いし語るとしますか」
カシムはフィアの瞳を見るだろう。そこにある感情の色を探ることはしなくていい。互いに言葉を持っている。
互いが発する言葉だけが今は全てだ。
ならば、この日の思い出がいつの日にか喪わなければならないものになるのだとしても。
共に語らおう。
「うん。夜はまだ長いんだから――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
佐伯・晶
キャンプと言えば焚火だよね
炎を見ながら虫の声を聞きつつ
ちびちびとお酒を飲んでのんびりしてよう
夜風が気持ちいいね
何もしないのも時には大事だと思うよ
戦い続けてると摩耗してくるしね
あら、永遠となれば問題になりませんのに
それはごめん被るかな
悪意が無いのが厄介だけど
議論しても平行線だし流しておこう
夜が更けたら焚火の後始末をして星空を眺めよう
この世界の星々はどんな感じだろうね
UDCアースなら天の川が天頂に見えるかな
綺麗に見えたらカメラを取り出して撮影してみようか
この瞬間を永遠にする訳にはいかないけど
この景色を画像に留めるくらいならできるからね
美しいものを留めるのなら
加護を授けるのもやぶさかではありませんの
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はキャンプというものを一言で現すのならば、焚き火であると思っていた。
炎を見ながら虫の声を聞く。
ちびちびとお酒を飲んで、揺らめく炎の熱を肌に感じる。
ゆったりと流れる時間に、時折涼し気な風が頬を撫でて、晶は笑むだろう。
「夜風が気持ちいいね」
何もしないことをする。
言葉にすれば、これほど簡素なものもないだろう。
それが時には大事なのだと晶は知っている。
意味在ることを追い求めれば、即ち無意味に行き当たる。
それを知っているからこそ、戦い続けている自分が摩耗することもわかるのだ。永遠に戦い続けることは出来ない。
自分が人間であることを自覚しているからこそ、それが到底無理であることを知る。
「あら、永遠と成れば問題になりませんのに」
邪神の分霊がそう告げる。
それはまさに邪神らしい考え方であると言えただろう。人の理を超えた存在。ならば、人の世の常識など通用するはずがない。
仮に邪神がこちらに寄り添っているように思えていたのだとしても、それはきっと気の所為だ。
だから、晶は言う。
「それは御免被るかな」
悪意が邪神の分霊にないことはわかっている。
けれど、これは議論にならない。どんなに言葉を尽くしたところで、理解しがたき者というのはどんな存在にもつきものである。
平行線になるだけだから、晶は受け流す。
杯は空に。
酒の水面は消え、晶は焚き火の始末をする。あたりに明かりは何一つ無い。
見上げた空は、焚き火が在った頃よりさらに闇を濃く溶かしている。そこに瞬く星の輝きはさらに強烈に晶の瞳を照らすだろう。
アスリートアース。
UDCアースや、ヒーローズアースと同じく『アース』の名を持つ世界。
そこに意味があるのか、それともないのか。
未だわからぬことであるが、それでも晶はUDCアースのことを思い出す。天の川。それが今なら天頂に見えるのかも知れない。
世界が違っても、星空が美しいことに変わりはない。
「……」
静かに晶はカメラを取り出して、星空を写す。
「この瞬間を永遠にするわけにはいかないけど、この景色を画像に留めるくらいならできるね」
神ならざる身であったとしても。
人は人の身のまま、永遠を切り取る事ができる。けれど、それも完璧ではない。データは欠損するし、写真は色あせていく。
けれど、それすらも晶は愛おしいと思うだろう。
「美しいものを留めるのなら、加護を授けるのもやぶさかではありませんの」
邪神の分霊がそう告げる。
けれど、晶はそれを頭を持って制するだろう。
「いいんだよ。色褪せたものも、それを含めた美しさの完成なんだから。僕がそう思うんだ。だから」
今はこれでいい。
記憶の中に残る今日という一日も、いつの日にか崩れ、摩耗していくだろう。
けれど、それでもいい。
玉は磨くから美しく輝く。
ならばこそ、今という時は、きっと流れることにこそ意味がある。留めることに意味を見いだせないのならばこそ、晶はきっと今日という日の宝石を胸にいだいて、明日を歩むだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎
●突然人類の脳裏に響くアンケート(UC)
アスリートアースのみんなへ
夏の夜といえば?
1.花火っしょ?
2.キャンプファイヤーを囲んでマイムマイム!
3.ラブっしょ?ラヴ!
4.パリピ!お祭り騒ぎ!
よーし!その願い(?)聞き入れたー!
まずは全天へ向けて花火ナイアガラストーーームッ!
え、ダメ?そっかー
●古く古く父無く母無く
火の中にはいろんなものが詰まってる
こうやって覗くと…昔が見えるんだよ?
失礼しちゃうな ボクだって昔のことは(少しは)覚えてるよ!
最初に降った雨の一粒のことも、海が一握りの塩水だったことだってね!
あのとき産まれた、海を知らないこどもたちのことも…
うん、思い出してきた
アスリートアースの人類全てに突如響き渡るのは、ユーベルコードという名のアンケート。
「アスリートアースのみんなへ」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の声が呼びかけるは、人の無意識であった。
あまりにも唐突な神心(ゴッドウィル)に人々の無意識は混乱するかもしれない。
「夏の夜と言えば?」
だが、ロニはそんな混乱など意に介さない。
だって神様であるわけで。
「1、花火っしょ?」
「2、キャンプファイヤーを囲んでマイムマイム!」
「3、ラブっしょ、ラヴ!」
「4、パリピ! お祭り騒ぎ!」
そんな選択肢アンケートが、ぽこーんって飛び出す。
やりたい放題である。そんでもって、その選択肢がよくわからんと思う生命もあったはずだが、ロニは構わなかった。
だって、どの選択肢を選んだとしても――。
「よーし! その願い聞き入れたー!」
ロニを前にしては全てが当価値。
多かろうが、少なかろうが、マイノリティーだろうが、マジョリティーだろうが、そんなことはどうだっていいのだ。
どれも等しく叶えるべきものとロニは解釈し、そのユーベルコードの輝きを持って、フィーバーナイトなのだから。
「まずは全天に向けて花火のナイアガラスト―――ムッ!!」
だがしかし、それはダメである。
ダメだってば、とロニは止められる。いや、やっぱりかーって思わないでもなかったが、素直にすんなり言うことを聞いてくれる所は、まともになったと思うべきか。
せっかく用意した花火のナイアガラストームは不発に終わる。
んもー、とロニはいつものように膨れながらも、おとなしく焚き火の炎を見つめる。
揺らめく炎。
一つとして同じ形の炎はなく。
ゆらめきの中に何を見出すか。
「火の中にはいろんなものが詰まってる。こうやって覗くと……」
昔が見えるのだとロニは嘯く。
けれど、それはロニにとっては失礼なことだ。そんなに覚えているのかと言われるかも知れない。
失礼な話である。
ロニだって昔のことは覚えているのだ。
「最初に降った雨の一粒のことも、海が一握りの塩水だったことだってね!」
覚えているのだ。
あの時産まれた、海を知らないこどもたちのことも。
思い出してきたのだ。
炎は、哀愁を誘うのかも知れない。そもそも哀愁という感情ですらなかったのかもしれない。
神性の胸の内を探ることは敵わず。
もしも、あるのだとすれば、目の前に見つめる焚き火の炎の中にこそ存在している。
誰も彼もが思い出を胸に宿して生きている。
多かれ少なかれ、それは傷となって残っているものもあれば、かけがえのない宝物として大事にしまわれているものでもあるかもしれない。
ロニにだってあるのかもしれない。
誰にも触れさせたくない、触れてはならないものが。
「ボクは両手を広げていた」
誰に、どうして。
その問いかけは意味がない。ロニはゆっくりと瞳を伏せる。
思い出の中に沈むように。
炎のゆらめきから、何もかもを思い出さぬように。
ゆっくりと、けれど静かに穏やかな暗闇の中に身を浸すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【菜医愛流帝FC】
すっかり夜も更けたね。
焚き火の炎が届かないところは、ちょっと涼しいくらい。
もう明日は帰らないといけないのがさみしいね。
ナイアルテさんもそろそろ大丈夫じゃないかなー?
ココア飲みながら、いっしょに女子会しようよ!
なにか特別話したいことがある、ってわけじゃない……。
ううん、ただ普通に話したいかな、依頼とか関係なくね!
って、なんでみんなそんなに意外そうなのかな!?
わたしだって、はぁはぁしてるばっかりじゃないんだよー!
好きじゃない人には、はぁはぁなんてしないからね!
依頼の思い出から話し始めて、
ファンクラブのこれからの展望とかをお話ししながら、
すこーしずつ雑談にシフト。
あ、そうだ。
帰るときって、もういちど街に寄る時間はあるかな?
ジビエのBBQ美味しかったから、
帰ったらナイアルテさんにも作るね!
自然の中で食べるのとはちょっと違うかもだけど、
わたしたちのキャンプごはん、味わって欲しいな。
……そんな不安そうにしないでー!
味付けはサージェさんも食べられたから、そんなに辛くないと思うよ!
サージェ・ライト
【菜医愛流帝FC】
うーん、星がとっても綺麗ですねー
そして夜になって焚き火がまた綺麗になりましたねーうふふふ
ナイアルテさんナイアルテさん一緒に見ましょうー?(猫招きクノイチ
そしてナイアルテさんをガン見しましょう
脳内水着コンテストならまだ可能性が!(ただの妄想
ぐへへへ……(女の子がしちゃダメな顔
え?視線が怖い?そんなことありません
ほーら可愛い白猫又ですよー?
お疲れにはもふもふがとても効くと聞きました!
ナイアルテさんも是非もふもふしてください!
猫と戯れているナイアルテさんを見守りつつ
ばっちりナイアルテさんのチョコパイ(?)を見ます
その後あがめます
いえ、神聖なものに捧げる感じの方です
こうやって3人になるのはアポヘルのマザー以来です?
いやー懐かしい
理緒さんが完全に不審者ムーブ
逆に私は完璧に忍んでました
え?事実の誤認がある?またまたー
今日だって私忍べてましたよね?
理緒さんのジビエはとっても美味しかったです!
なのでナイアルテさんもぜひぜひ
あ、あーんをご所望ですか?それならいつでもうわなにをするー?!
「うーん、星がとっても綺麗ですねー」
「すっかり夜も更けたね。焚き火の炎が届かないところは、ちょっと涼しいくらい」
「でも焚き火が綺麗ですよねうふふ」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)と菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の二人が焚き火を囲んでいる。
此処だけ切り取ってみたら、仲良し二人組で大変微笑ましいのであるが、まあなんていうか菜医愛流帝FCという非公認のグループとしてやってきていることを思い出すと、なんとなく不穏だなーってグリモア猟兵は思っていた。
猫招きしているサージェの姿も、普通にしていたら愛らしいクノイチなんだけどなぁって思うし、理緒も気遣いのできる優しい女の子なのである。
ただまあ、温泉街からこっち、奇行が目立つ過ぎて印象が、ね?
悪意があるわけではないので、それは別に構わない。奇行なんてものは、見るものによって変わるものであるから。
「ココア飲みながら一緒に女子会しようよ!」
理緒がマグにココアを淹れて配る。
こういう気遣いができる所だけきりとってみたらなぁって思わないでもない。しかし、サージェの視線が痛い。
ガン見である。
誰にはばかることなくガン見である。
脳内で行われている水着コンテストの模様をダイジェストでお届けしたいくらいにたくましく。
「ぐへへへ……」
おおよそ女の子がしていてはダメな顔をしている。
完全に、あれである。やべーやつである。
「視線が怖いなんて、そんなことありません。ほーら可愛い白猫又ですよーってぎにゃぁぁぁ!?」
ばりぃって白猫又にされながらサージェはグリモア猟兵にもふもふ白猫を手渡す。これ悪意があるわけじゃないんだよなぁって。
ただ疲れている様子をあんじてくれているだけなのである。受け取った白猫又はふかふかで、いつもばりぃってやっていることを感じさせない大人しさである。
それはそれで、ちょっと寂しい気がするが、サージェが転げ回っているのを見ると、まあ、因果応報かなーって思う。
そんな二人を見やりつつ、理緒は微笑んでいる。
特別話したいことがあるというわけではないようであった。ただ、普通に話をしたいだけなのだ。
猟兵としてではなく、ただ一人の女の子として。
「……」
「……ってなんでそんなに意外そうなのかな!? わたしだって、はぁはぁしてるばっかりじゃないんだよー!」
そうかな?
そうだったかも? と思っていると。
「好きじゃない人には、はぁはぁなんてしないからね!」
ツンデレっぽく言っているが、いいのかな、それってわりとこうアウトだと思うんだけど。
グリモア猟兵はふにゃふにゃと白猫又とじゃれている。
あ、そんなに気にしてないんだなって理緒は思った。悪意には過敏に反応するだろうが、それがなければ微笑みで返すものである。
「……」
そんでもってサージェはそんな様子をガン見である。もうはばかることなんてなにもない。
いや、崇めていると言っても過言ではない。
神性なものに捧げる感じ。邪心一切なし。たぶん。
サージェはサージェで、理緒が完全に不審者ムーヴをかましていると思っているし、自分は完全に忍んでたって言い張っている。
いやいや、それは無理がある。
「ファンクラブのこれからとか!」
こうしたあーしたい。いや、非公認だから。そういうのは、グリモア猟兵にとって黒歴史である。
寧ろ、忘れて欲しい。蒸し返されては、顔が熱くなるのを自覚するのである。
「え?事実誤認がある? またまたー今日だって私忍べてましたよね?」
「それはないよ」
「え!?」
無理がある。
忍びとは、クノイチとは……って哲学になるくらいには忍べていなかった。悪目立ちするのが本業ですって言ったほうがマシなレベルで忍べてなかった。
「ええー?!」
「あ、そうだ。帰る時って、もう一度街に寄る時間はあるかな? ジビエのバーベキュー美味しかったから、帰る前にもう一度作りたいなって思って」
理緒はさっくりサージェの言葉をぶった斬って、告げる。
自然の中で食べるものとは違うかも知れないけれど、グリモア猟兵に自分の手料理を味わってほしかったのだろう。
それならば、時間の許す限りは可能であろう。
その申し出に微笑みが返され、サージェがはいはい! って手を上げる。
「理緒さんのジビエはとっても美味しかったです! なのでぜひぜひ! あ、あーんをご所望ですか? それなら」
いつでもどんとこーい! とサージェが言う。
けれど、その様子に若干不安そうな顔をしたのを理緒は見逃さなかった。
「うわなにをするー?!」
ばりぃっていつものがサージェを襲う。
理緒は苦笑いしながら、二人のやり取りを見やり、今日から続く明日もきっと良い一日になることを確信するだろう。
なんでもない日は、惜しまれつつも終わる。
今日は明日に。明日はさらに向こうに。
それが時の流れというのならば、物悲しい。どんなに楽しくても、それが終わるから。
けれど、今日得たことは、明日にもつながっている。
ならば、なにも悲しむことはない。
サージェと理緒は、そんな一日を手に、明日をまた生きていく。
例え、どんなに辛い別れがきたって、本当に出逢った者には別れが来ないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵