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黒き殺意〜お姫様の船旅にて〜

#サクラミラージュ #皇族


●お姫様の旅路
 サクラミラージュに存在する「不死の帝」。その血族の1人である、歳若き娘――とはいえ実年齢は悠に100歳は超えているようだ――がとある豪華客船に乗っていた。広い船の中の一室、最上級の客室の窓から、初夏の瑞々しい自然を鑑賞し、楽しんでいる。
「たまにはこうして公務から離れて、のんびり無為に時を過ごすのも良いものですね」
 彼女の名は、風花(ふうか)。皇族としての公務からしばし離れ、今は極わずかな侍女たちや使用人を連れるのみで、一般人に紛れて風光明媚な景色を愛でているようだ。

 ……が、不意に彼女の室内に黒い靄が滲出してきた。侍従たちが即座に臨戦態勢を取り、風花自身も花の香りを放つユーベルコヲドで後方支援に当たる。
 されど、その黒い靄は強烈な悪意をもって瞬く間に全員の精神状態を汚染し、抵抗も虚しく為す術を無くしたところへトドメを刺し、もれなく全員を血の海へ沈めてしまった。

●グリモアベースにて
「皆さん、この度もお集まりくださり誠にありがとうございます。ご無沙汰しておりました皆さんともお目にかかることができ、光栄に存じます」
 周囲の猟兵たちへ優雅な所作で挨拶をした土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)は、早速予知した悲劇について映像の投影と共に解説した。
「……と、かような次第でよもやの悲劇が起ころうとしております。皆さんには今回、この皇族のお姫様たる風花様をお守りいただき、惨劇を未然に防いでいただきたいのです」
 ちなみに、この黒い靄が如何にして「伝説の存在」である皇族に怨恨の念を抱いたのかは不明である。風花の罷り知らぬところで、何か恨みを買ったのだろう。高貴な身分にはありがちな話だ。

「皆さんには、先ずは豪華客船に『何も知らずに乗り込んでいた』高貴な身分の人の1人や、新進気鋭の乗組員、見習い従者などの1人として乗り込んでいただきます。そして容疑者の候補を絞り込んでください」
 とはいえ、影朧である黒い靄も既に乗組員の1人として比較的精度の高い人間の姿に偽り、豪華客船内に乗り込んでいるという。ゆえにいきなり察知されることがないように必要に応じて上手く演技や作戦立案を、とのこと。
 不幸中の幸いは、猟兵たちが現地に到着した時にはまだ影朧は風花たちの客室へは辿り着けていないことと、影朧が慎重に身を隠していることで突然鉢合わせる危険は比較的少ないことか。

「黒い靄の影朧は、自身の正体に気付かれたと悟ると焦燥感に駆られ、邪魔な猟兵ごと皇族を殺さんと『罠』を仕掛けてきます。例えば密かに食事に即効性の高い毒を盛ったり、誰も頼んでいないのにサービスと称して猟兵や風花様にエステを施術しようとしたりして、暗殺を謀ります」
 だがそれらを切り抜け、黒い靄が確かに皇族である風花を殺害しようとしている証を集めて突きつければ、影朧は本来の姿を現し、ユーベルコヲドにて積極的攻勢に出てくる。これを確実に撃破し、風花の旅路の安全を確保しなければならない。
「なかなか手間のかかる依頼なのは百も承知です。ですがどうか、サクラミラージュの世界のためにも、かけがえ無い命を護るためにも、お力をお貸しください。……では、お支度の整いました方から順に豪華客船の中へ転送致します。どうか、ご武運を」


月影左京
 初めまして、または長らくご無沙汰しております。月影左京です。

 ※私のシナリオに初参加なさる方は、MSページを1度お目通しいただきますようお願い致します。

 今回はサクラミラージュでの依頼です。
 本来なら不死の帝の一族である風花さんもまた不死なのですが、それでもこんな惨劇が起こる……油断大敵ですね。

 今回のシナリオは3章構成です。
 以下、各章の補足説明です。

●第1章「容疑者を探せ」(日常)
 豪華客船に【たまたま乗り込んでいた人(貴族のご令息、見習い乗組員など)】を装って乗り込み、影朧が擬態している乗組員を特定してください。

●第2章「容疑者最後の罠」(日常)
 正体に気付かれたと悟った影朧は、焦燥感に駆られて猟兵ごと風花を殺そうと様々な罠を仕掛けてきます。
 ※罠に直接何らかの対処をなさる場合は、プレイング中に「発見した罠」と、どう対処したのかをお書きくださいませ。

●第3章「黒霞の思念体」(ボス戦)
 風花に強い害意を抱き、抹殺を目論む影朧です。ただ撃破しても構いませんし、戦闘勝利後に転生へ導いてあげるのも良いでしょう。とにかく勝って、風花の旅路の安全を確保してあげてください。
 ちなみに風花は攻撃力強化や防御力強化といった支援系のユーベルコヲド使いです(ただしボスの影朧を圧倒できるほどの練度ではありません)。皆さんの交戦中、密かに皆さんを支援してくれます。

 第1章のプレイング受付は、オープニング公開後から随時行います。第2章以降は断章を挟んでからMSページとタグにてお知らせ致しますので、その後より受け付けます。

 ※最近の私は往々にして遅筆がちの為、お急ぎの方には長くお待たせしてしまうかも知れません。誠に申し訳ありませんが、何卒ご容赦ください。

 久しぶりのシナリオ、精一杯皆さんのご活躍を描写させていただきます!
 よろしくお願い致します。
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第1章 日常 『容疑者を探せ』

POW   :    乗り物内をくまなく歩き回り、怪しい人物を探す

SPD   :    目星をつけた人物の持ち物を掠め取り、証拠品を探す

WIZ   :    人々の会話に耳を澄まし、違和感のある部分を探す

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フレスベルク・メリアグレース
これは人手が多い方がよろしい依頼ですね
わたくしはイタリア方面の貴族として豪華客船に乗り込みましょう
UCでクロムキャバリアから呼び寄せた騎士達はわたくしの従者だけでなく乗組員や他の乗客とその従者、客船で披露される娯楽に由来する料理人や歌手等様々な立場の者に満遍なく潜入させてもらいましょう
ここまで幅広くあらゆる層に潜入しているのは幻朧も予想外の筈
故にそこを逆手にとってわたくしは最上級の次に高いクラスの客室から我が騎士へと指示を出し、調査を行っていきます
あらゆる層に潜入させた我が騎士達、それは間違いなく多くの情報をわたくしに齎してくれることでしょう



 最上級からワンランクだけ下のグレードの客室に、1人の上品な女性が数名の従者を従えて乗船していた。彼女は、皇族と交流のある某国の貴族――を装った猟兵、フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)だ。
 彼女が猟兵であるということは、その従者も常人ではない。彼らはフレスベルクがユーベルコード【界渡りし我が至高なる聖騎士達(シャルジュ・オルドル・ス・バートル)】を用いて召喚した皇国直属の騎士たちである。
 正確にはその総勢は120人にものぼり、船の乗組員に限らず他の乗船客とその連れや従者、極上のフルコースやビュッフェを提供する料理人、船上で様々な催しや芸を披露して観客を湧かせるパフォーマー集団などに扮して船内に広く混ざりこみ、密かに、だが確実にフレスベルクとの影朧の潜入調査を進めていた。

(「ここまで幅広くあらゆる層に潜入しているのは、影朧も予想外の筈……」)
 フレスベルクは落ち着いて、得た結果を元に次なる指令を出していく。未だ確定した居場所や扮装の結果は得られていないが、「ここにはいない」「この中には混ざっていない」という報告が積み重なり、着実に影朧の存在可能性がある範囲を絞り込みつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「乗組員が総勢何人かとか乗組員の名簿を見せて下さいとかの質問は…不可ですよね」
肩を落とした

「操舵手ではないと思うのです。素人に船の操縦は出来ませんし、あっという間に座礁して沈没しそうですもの。それ以外は船長含め誰に成り代わってもおかしくないとは思いますけれど、客室担当か給仕係が1番被害者に接触できそうな気がするのです。
だから其処から調査を始めて、見当たらなければ貨物担当や機関室担当へ調査を広げていこうかと思います」

UC「蜜蜂の召喚」使用
船内見取図等から船員専用区間に蜜蜂を送り込む
早目に1度全乗組員の顔を把握してから客室担当や給仕で全く休憩を取らないもの、船員同士で会話しないものを絞り込む



「乗組員が総勢何人かとか乗組員の名簿を見せて下さいとかの質問は…不可ですよね」
 そうこぼして、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は肩を落とした。確かにそれができるなら手っ取り早いのだろうが、逆に言えばその段階から猟兵に介入してもらう必要は無いわけで……。
 桜花にとって、この皇族に関する依頼は一際思い入れがある。幻朧桜から生まれる桜の精ならば、この大正の世を愛し、今上の帝の役に立ちたいと願うのは自然なことなのではないかと、桜花は信じているのだ。だからこそ、今回の調査にも十分な用意をして臨む。

「まず、操舵手ということは無いと思うのです」
 豪華客船の操舵手ともなれば熟達した操船技術が求められる。であれば、ぽっと出の誰かに安易に任せることは無いはずだし、そもそも素人知識でこなせば早々に座礁していることだろう。
 だが、それ以外の存在であれば、幾らかの付け焼き刃な知識と見よう見まねで何とかなる。もしかしたらこの客船の船長に扮していてもおかしくは無い。
 とはいえ、豪華客船の中にいる操舵手以外の人員を調べるとなると範囲が広すぎる。幾らかは先の貴族を装った猟兵などから連携して情報共有してもらえるとしても、それでも限度はあろう。だから桜花はさらに狙いを絞った。
「客室担当か給仕係が1番被害者に接触できそうな気がするのです。まずはそこから着手してみましょう」
 他の猟兵と調査結果を共有しながら、客室担当および給仕係から調べ始め、次第に貨物担当や機関室担当へと調査範囲を移していく……。考えがまとまったところで桜花は【蜜蜂の召喚(ミツバチノショウカン)】を発動させた。
 桜花は仕事中以外もパーラーメイドらしい装いをしているため、その姿で船内を移動しても新人教育中の見習いパーラーメイドのような姿だ。そこでまずは船内見取図を探し出し、それに基づいて船員専用区画に蜜蜂を送り込んでいった。

 その後の桜花本人はといえば、すれ違っていく船員を含めて蜜蜂がもたらす船員たちの顔を何としてももれなく覚え、全員分ひと通り把握するように努めていた。
 ここにはいない、この中にはいない……という調査結果と照らしながら、船内の人間という人間に、慎重に目を光らせる。

 人間には疲労感が付き物だ。心身の疲労を癒す為には休憩が欠かせない。またスムーズな業務遂行の為にも、必ずや他の船員との連絡は何らかの形でなされる。だがもし、一切それらをする素振りを見せない船員がいるなら、それは……。
(「あの人が、どうやら……ですね」)
 桜花は、客室担当の中に遂に見つけ出した。ベッドメイキングやゴミ始末などの重労働が続く職務でありながら休みを取らず、他の船員とも話そうとしないで黙々とひたすら業務をこなす者。
 桜花は船内に乗り込んでいる猟兵へと調査結果を共有し、蜜蜂を呼び寄せた。

――次は、事前情報によれば焦った影朧が「罠」を仕掛けて排除行動に出るという。まだ油断はできない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『容疑者最後の罠』

POW   :    狙われた皇族を身を挺して守る

SPD   :    仕掛けられた罠を発見し、解除する

WIZ   :    焦った敵の残した痕跡から、正体を推理する

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 野生のものでは無さそうな蜜蜂、乗船時には居なかったはずの様々な乗客、スタッフ、パフォーマー……。
 影朧がそれに気付いた時、同時に一般人でもターゲットでも無い者が乗り込んでいることにも気付いた。

 なればそやつらは邪魔者であろう。そして既に正体を感づかれた可能性が大きい。
 なぜなら……蜜蜂も見覚えのない乗客たちも、「この世の生命体」とは異なる気配を纏っていた。そしてそんなものを操れるのは、「生命体の埒外」たる猟兵たちくらいのものだ。猟兵の探りがあちこちに及んでいるのなら――。

 憎き皇族を討つ邪魔をするのなら、相手が誰であれ容赦しない。
 影朧は客室担当の仕事をこなしながらも密かに「罠」を仕掛けていく。皇族ごと猟兵たちを抹殺せんと、焦燥感に駆られながら業務の合間に、または業務中に。
 当然、焦って仕掛けた罠には落ち度がある。探せば影朧のものと思しき「黒い霞」や、粗末な処理痕が見つかるだろう。

 皇族を守りながら自らも守り、さらには影朧を追い詰める……猟兵たちと影朧との知恵比べ、力比べの戦いが始まろうとしていた。
フレスベルク・メリアグレース
我が騎士たちよ
わたくしがこれより宣託を告げます

人目につかない客船の上空や機関室などにドローンを飛ばし、情報収集を開始
そこから得られた未来予測図を元に先程のUCの効果で召喚され、客船内にて活動する騎士達に指示を出していく

未来は騎士達がわたくしの指示を受けて行動する度移り変わる為、アンサーヒューマンとしての瞬間思考力も用いて随時迅速に、的確な指示を出して影朧を追い詰めていく

これが組織というものです
己だけで生きられる存在などいなく、ならば出来る限り良き繋がりを以て悪縁を立つのは道理というものでしょう


御園・桜花
「…此れ、絶対人手が必要な事態です」

「吃水線より下に穴が開いたら船が沈んでしまいますし、爆風は基本上に抜けるので風花様の下の部屋が爆発するのも不味いです。あの人がベッドメイキングした部屋とダストボックス、全て確認して爆弾を海に捨てましょう」
部屋に手軽に仕掛けられて大ダメージを与えられるのは時限爆弾だろうとUC「ノームの召喚」使用
「流石に振動感知はついてないと思いたいです…」
ノーム達と手分けして影朧(仮)が整備した部屋とゴミ集積場所総当たり
部屋を探して爆弾(?)が出てきたらどんどん回収し船のスクリューが巻き込まないよう斜め後方の海に遠投

「此れが終わったら、直ぐ風花様の所に行かないと」
船内走り回る


カミーユ・ヒューズマン
「ぬはははははっ! 同じお姫さんのピンチと聞いては黙っている訳にもいかんのう」
(同じお姫さんであることを利用して影武者でもしようかと思っておったんじゃが、ままならんのう)
容姿を変えず衣装だけ変える雑な影武者を一度見せてからの肉体を変えられるセイレーンの種族特性とUCを活かした9200LV相当の変装で本気の偽装を行います(が気配で見破られるようですのでこれもフェイク)
犯人は客室担当の仕事の合間に罠を仕掛けるようなので強化した奉仕技能で仕事をなぞるように作業箇所を見て回り、罠を見つけたらオーラで防御しつつ拳で破壊、罠を発見した場所の作業担当者の名を聞き影武者変装したまま会いに行って反応で確かめる



「ぬはははははっ! 同じお姫さんのピンチと聞いては黙っている訳にもいかんのう」
 そう豪快に宣言するのは、セイレーンのプリンセスにして海賊であるカミーユ・ヒューズマン(セイレーンのプリンセス・f26887)。
 同じ「お姫様」として風花の影武者をしようとしたようだが、今の出で立ちは……隆々たる体格のまま衣装だけを皇族の姫のものに似せただけ。流石にこれでは影武者は務まらないだろう。
(「ぬーん、ままならんのう……」)
 カミーユ本人も自覚があるらしく、次の手に出た。
 セイレーンの種族特性を活かした体格の変化、そしてユーベルコード【チャイナドレスアップ・お姫さん】の効果によって9200レベルにまで高められた各種技能を駆使し、今度こそ皇族の風花そっくりの影武者へ変身した。
 とはいえ、それでも不完全ではある。今回の影朧は、どうやら気配で相手が一般人か皇族か、はたまた敵である猟兵か……そうした違いを察知できるらしいからだ。
 それでも、カミーユにはこの姿で影朧を決定的に追い詰める策があった。

 さて、既に船内の至るところへ自らの専属騎士たちを配備した上に、今は新たに【白き起源の宣託告げし機械天使(ホワイトアンサー・フラッシュフォワード)】を用いて白騎士のドローンを人目につかぬところへ飛ばしながら情報収集を行うのはフレスベルク。
 彼女はそこから得られる未来予想図を基に騎士たちに指示を飛ばすだけでなく、カミーユにも桜花にも情報を共有していた。
 未来は、騎士たちやカミーユ、桜花たちが行動する毎に描き変わって行く。だからフレスベルクは自らがアンサーヒューマンであることをも活かし、瞬間思考力を最大限に効率よく用いて次々と、そして迅速に情報提供や指示を行っていた。
(「これが組織というものです。己だけで生きられる存在などいなく、ならば出来る限り良き繋がりを以て悪縁を立つのは道理というものでしょう」)
 1人より大勢のほうが有利になるのは当然のこと。そしてその大勢が一定の条件下で連携しあう「組織」となれば、優位に立つのは容易くなっていく。フレスベルクは皇国という組織の中で高位に立つが故に、そのことをよく理解しているのだ。

「流石に振動感知はついてないようですね……」
 桜花は、【ノームの召喚】によって召喚したノームたちと、凄まじく強化された奉仕の技能を駆使するカミーユと手分けをしながら、影朧が客室担当として業務に当たった部屋を片っ端から調べていた。
 桜花が考えたのは、時限爆弾という罠の危険性。手軽に仕掛けられる上に大ダメージを与えやすい時限爆弾なら、業務の合間や業務中にさえ、容易く仕込むことができるだろう……という推理だ。
(「吃水線より下に穴が開いたら船が沈んでしまいますし、爆風は基本上に抜けるので風花様の下の部屋が爆発するのも不味いです」)
 果たして、桜花やノームたちは、推測通りに時限爆弾を見つけて処理に当たっていた。
 部屋の死角から、ごみ箱の中から、そしてごみ集積場から……よくもまぁこんなに仕掛けたものだという量を回収しては船のスクリューが巻き込んで事故を起こすことの無いように、斜め後方の海へ遠投していく。できる限り遠くへ。
「此れが終わったら、直ぐ風花様の所に行かないと」
 これ程に仕掛けたということは、やはり並々ならぬ殺意が潜んでいるということ。であれば、影朧が皇族の風花の元へ至ってしまう前にその安全確保にでなければ……!
 桜花は使命を胸に、一心に船内を駆け回る。

 一方、カミーユもまた様々な罠を見つけてはオーラによる防御で身を守りつつ拳で破壊していった。
 破壊がまずい時限爆弾は桜花とそのノームたちが担当してくれているので、彼が対処しているのは家具や調度品にさり気なく設置された毒針や仕込み刃、存在を感知することで発動する何らかの術式の要となる呪物……といった代物だ。
 そして処理した時には必ず、その部屋を担当した客室担当の名前を確かめる。
 やがて……
(「ぬははははっ! 遂に見つけたぞい!」)
 カミーユは風花にそっくりの似姿で、影武者としてその名前を記した名札の客室担当の元へ向かった。
 あらゆる調査に徹していたフレスベルクに最終確認をとっても、この人物で間違いは無い。

「……っ!?」
 その人物は、カミーユ扮する風花を目の当たりにすると、まるで躍動感のある彫刻作品のような有様で固まった。されど、それからまもなく、目の前にいるのは風花ではなく猟兵であることを悟ったか、次の行動に出た。
「……お客様、お部屋はこちらでは無いはずですよ?」
 明らかに殺意を醸し出しながらも、ここで即座に戦闘行為に出れば風花たち皇族に瞬時に知られることを理解しているからか、影朧は敢えてすぐにはカミーユに危害を加えなかった。
 平静を装う努力をしつつ、部屋へ案内するという名目で、まっすぐにカミーユを連れて風花の部屋へと向かっていく。

「……おのれ、猟兵め。憎き皇族の姫共々、あの部屋を墓場にしてやる……!」
 声量は小さくも荒々しい、棘を含んだ声音で、影朧は毒づいた。
 されど既に猟兵たちの風花護衛のための対処は万全である。そのことを、影朧はまだ知らなかった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒霞の思念体』

POW   :    黒キ声
【聞き入った者を眷属化する、精神を蝕む言葉】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【心的外傷や精神的な弱点】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    黒キ顎
自身の【影の口】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[影の口]から何度でも発動できる。
WIZ   :    黒キ波
対象の【心】に【底知れぬ悪意】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[心]を自在に操作できる。
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 風花の客室にて、猟兵たちが臨戦態勢を整え終えるのと、影朧が到着するのとはほぼ同時であった。
 影朧は人の姿を解いてモヤモヤとした気色悪い見た目の黒い霧に姿を変え、部屋へ侵入してきた。
「オノレ……憎キ皇族諸共、ココデ皆殺シダ。ココガオ前タチ全員ノ墓場ニ、今日ガオ前タチ全員ノ命日ニナル……!」
 殺意を隠すことも無く、黒霧の思念体は猟兵と風花たち皇族の皆を狙って襲いかからんと迫ってくる……!
カミーユ・ヒューズマン
「ほう、命日とな? それはよろしくないのう」
「そういう訳でお前さんの歪んだ性根、このお姫さんが叩き直してやるわ!」
臨戦態勢を整えられるようなのでUCで能力強化からの9600LV相当の先制攻撃
怪力に任せた鎧無視の二回攻撃に気絶攻撃をのせ
操られる前に殴り倒して行動させないが基本方針ですが、呪詛と狂気の耐性と覚悟、自己への催眠で操られそうになった時の備えはしておきます
「そも、凶行に出たり他者を操ろうなんぞと考える時点で自身の行動が正しくないと言ってるようなもんじゃ」
催眠術や言いくるめ、精神攻撃で皇族を狙う動機を否定し、眷属化や他者の心を操りづらい流れにもってゆき操られるのを防ぐ
「覚悟はいいかのう?」



「ほう、命日とな? それはよろしくないのう」
 まず始めに行動に出たのは、セイレーンのプリンセス、カミーユだ。黒霧の化け物が体勢を整える前にユーベルコード【チャイナドレスアップ・お姫さん】を手早く発動、豪華絢爛なチャイナドレスの姫に変わると同時に自身の持つ技能をすべてLv9600相当へ引き上げた。
「そういう訳でお前さんの歪んだ性根、このお姫さんが叩き直してやるわ!」
 先手必勝。カミーユは影朧が自身に狙いを定めて行動に出る前に持ち前の怪力に任せた2回攻撃を見舞う。
「グゥ……オノレ、許サヌ!」
 カウンターとばかりに、黒霧が伸ばしたのは黒キ波。カミーユの全身を瞬く間に覆い尽くしその心へ底知れぬ悪意を植え付けて戦闘力を増強させた。その上で自らの手駒とし、同士討ちを誘発させようという魂胆だ。

 だが、そんな目論見を見抜けないようなカミーユでは無い。呪詛と狂気に対する耐性と、並々ならぬ覚悟とをもって抗い、操られるよりも早く影朧を叩きのめす。
「そも、凶行に出たり他者を操ろうなんぞと考える時点で自身の行動が正しくないと言ってるようなもんじゃ」
「……ダカラ何ダ? 千ノ言葉が通ジナイナラ1発ノ圧倒的ナ攻撃。運命ヲ変エルノハ力ダ。……イツダッテソウダ。正義ガ勝ツノデハ無イ。勝ッタモノガ正義。ダカラ皇族共はコウシテノウノウト生キテイル……」
 カミーユとの攻防の手を休めることなく、敵は激しい憎悪のままに挑み続ける。
カミーユはその言葉によって尚もしつこく心を支配しようとしてくる力に強靭な精神力で抗いながら、言葉を返した。先程の能力強化効果により、開戦時よりも各能力が鍛えられているために、痛烈な一撃がカウンターとして返る。
「……それでお前さんは悲しみの思いを抱き影朧となったのじゃろう? なれば成すべきことはこうではないのか?」
 すなわち、自身でその怨恨の連鎖を終わらせる為に、戦い以外の道を模索すべきということ。復讐が呼ぶのは次なる復讐。そうなれば、皇族と彼等を憎悪嫌悪する影朧との戦いに終わりは無くなる。

 催眠術や言いくるめ、精神攻撃を得手とするカミーユの訴えは、影朧の心を幾らかゆずぶったようだ。一瞬だが動きが鈍り、わずかに隙が生まれる。
「さぁ、覚悟はいいかのう?」
 その言葉と共に、カミーユの怪力を載せた殴打が強かに敵を打ち据える。
 これで、他の猟兵たちがカミーユに次いで畳み掛ける準備は整った。影朧が体勢を立て直すまでにそう悠長に構えている余裕は無いものの、戦況の趨勢は猟兵側に有利となっている。
 さらにどこからか幻想的な花が待った。皇族の1人である風花によるユーベルコードだ。物静かで多くを語らない彼女ではあったが、自らを護ろうとしてくれる猟兵へは加護を与えようとしている様子だ。これなら、多少であれば無茶をしても即致命傷を負うことはないだろう。
 その時、カミーユに続いて新たな猟兵が体勢を整えて戦列に加わって来た。

成功 🔵​🔵​🔴​

御園・桜花
「殴ってダメージを与えられる場所が、ずいぶん少なそうです」
敵をじっくり眺め

「なら、殴り易い状態に致しましょう」
UC「幻朧桜召喚・桜死」
部屋内側の壁際の全周に幻朧桜出現
転生願わず生命力・思考能力・行動速度が半減した敵に接敵
高速・多重詠唱で破魔と炎の属性付与した桜鋼扇で敵の目や歯をバンバンぶっ叩く
「形状の違う場所の方が打撃が通りそうでしたから。歯なんて特に固そうです」
敵の物理的な攻撃は第六感や見切りで躱す
敵の言葉は聞かないよう鎮魂歌を歌い続ける

「貴方が誅された皇族なのか華族なのかは知りませんが。此の儘骸の海に還るのが嫌なら、其の想いを果たすべく転生していらっしゃい」

戦闘後は風花の客室片付け手伝う


フレスベルク・メリアグレース
さて、わたくしも本領を発揮しますか
影の口が捕食したUCをコピーするユーベルコードですか

ならば、影の口以外の部分を凍結させましょう
瞬間『Ain』なる無が影の口以外の部分を精神や意志ごと凍り付かせ、凍結させて制止させていく

これこそ精神凍結能力
想念で動く存在に対して特攻と言えるUCでしょう
影の口以外が凍結され、動けなくなった所にヴォーパルソードを取り出し、影の口の中に切っ先を突き刺していく
この剣はUCに非ず
故にコピーする事は出来ませんよ

そう言いながら影の口以外の部分を凍結させ、影の口はヴォーパルソードで攻撃していきます



「殴ってダメージを与えられる場所が、ずいぶん少なそうです」
 桜花は敵をじっくり眺めて観察した結果、そんな感想を漏らした。
 確かに霞状の存在を物理的に殴るのは、いくら猟兵でもなかなかの難題だ。
 されど猟兵にはユーベルコードがある。桜花はにっこりと笑って宣言した。
「なら、殴り易い状態に致しましょう」
 刹那、ぶわっと客室内を桜吹雪が舞い飛んだ。
「幻朧桜と私の願いが貴方を磨り潰す……ごめんなさい。私を恨んで下さい、せめて貴方に善き転生が訪れますよう――幻朧桜召喚・桜死」
 客室内の壁に沿ってぐるりと出現した幻朧桜は、黒霞の思念体の逃げ場を奪う。
 しかもそれだけでは無い。
「グ、ヌゥ……!?」
 桜花は、影朧に穏やかな来世を願って転生して欲しいと望む。その願いが命令として込められたこのユーベルコードに抗えば、生命力と思考能力、行動速度が半減してしまうのだが……敵はそれでも転生を望まない。
「誰ガ、コンナ憎キ皇族ノ世界に生マレ変ワッテ生キタイト思ウカ……ッ!」
 黒キ声をもって、敵は桜花へ精神攻撃を挑む。が、桜花はそれを鎮魂歌で相殺した。呪詛を紡ぎ、心を蝕む声は桜花にも誰の心にも届かない。
「さて、わたくしも本領を発揮しますか」
 一方でフレスベルクもまた敵を観察したことで突くべき弱点を見抜いていた。
「凍てつき静止するは罪人の魂魄。罪深き魂の叫びは凍結されて届かない。並ばこそ、奈落にて贖罪の罰を受けるが良い―― 星幽界凍てつかせし絶対零度」
 皇族を憎悪してやまない敵の心よりもなお冷たい、容赦のない凍結が黒霧の身体を襲う。それでいてフレスベルクは的確に敵の口だけはその対象から外していた。何故ならその口はユーベルコードをコピーする能力があるからだ。
(「これこそ精神凍結能力。想念で動く存在に対して特攻」)
 計算通りに事が運んだのを確かめると、フレスベルクはその手にヴォーパルソード・ブルースカイを握る。桜花の術で動きが鈍り、思考も単純化しつつある敵が相手ならば、ピンポイントで口を狙うことも容易い上、この剣はユーベルコード製では無いから突き立てたところでコピーされる恐れもない。
 そこへひと足早く、桜花が踏み込んだ。 可憐な桜の意匠が施された鉄扇、桜鋼扇が強烈な音を立てて敵の歯をへし折る。
「形状の違う場所の方が打撃が通りそうでしたから。歯なんて特に固そうです」
 自らの準備に加えて霞の身体を凍結してくれたフレスベルクへ手短に礼を述べて、桜花は尚も敵の歯を、目を、物理的に殴れる場所を、容赦なく扇でぶん殴っていく。
 硬質な部位がメキョメキョと粉砕されていく音が立て続けに響いた。
「……グ、キ、貴様……ッ!?」
 尚も悪態をつこうとする思念体は、黒キ顎をもって襲おうとしたが、それ以上ものを言うことを許されず。気がついた時には口を貫通して奥まで、フレスベルクの剣が差し込まれていた。
「この剣はユーベルコヲドに非ず。ゆえにコピーすることはできませんよ?」
「貴方が誅された皇族なのか華族なのかは知りませんが。此の儘骸の海に還るのが嫌なら、其の想いを果たすべく転生していらっしゃい」
 ふたつの女声が重なり、黒霞の思念体を包む。その憎悪を砕いて絶望を与える言葉と、わずかでも希望を与えたいと願う言葉。果たして敵の心にはどのようなものとして届いたのだろうか。
「……」
 フレスベルクと桜花の後方から、さらに新たな花弁が舞う。それは先程も発動された皇族たる風花の癒しの術。その1枚1枚は、彼女たち猟兵が負ったわずかなかすり傷さえもたちどころに癒していった。

 されどまだ、黒霞の思念体は絶命に至らず。生命力を大きく削がれ、思考能力も低下し、思念体のあらゆる部分を凍結されていてもなお踏ん張るということは、それだけ皇族へ向ける感情が激しく強いことの証左であろう……。
 フレスベルクは新たに現れる思念体の霞を凍結させてはその口へ剣を突き入れ、桜花が呼び出した幻朧桜からの桜吹雪も止むことを知らない。まだ戦いが終わる気配は見えてこないのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

練・玲琳
「これは―――――」

偶然、その場に居合わせた玲琳は、咄嗟に、その手に武器「白華」(変形自在の薙刀)を出現させた

瞬間、ふわりと風が舞い彼女の銀色の髪が揺れる

敵は凍結により身体を拘束されていて、かつ思考など考えられない様な状態の様だった
ならば――――と、玲琳は瞬時にUC発動し対象の攻撃を軽減する神霊体へとその身体を変化させると、回避率が上昇する【空中浮遊】状態でまるで「舞」を舞う様に白華を振るった

しゃん・・・・・! という音共に、白華がその刃を鋭く変化させる
この状態ならば――――とそのまま白華を振り下ろした
刹那、風の音共に幾つもの衝撃波と【なぎ払い】が繰り出された



「これは―――――」
 風花の客室の入口にて。グリモア猟兵の依頼を引き受けたものの、これまでは密かに単独調査を行っていた新米猟兵の女性、練・玲琳(白雪の舞姫)は思わず小さな声に出した。
 幸い、交戦中の味方のみならず敵も、誰もまだ玲琳に気がついてはいないようだ。
 玲琳はおもむろに愛用の薙刀「白華(パイファ)」を手中に具現化させる。瞬間、ふわりと風が舞い、彼女の銀色の髪が揺れた。

 玲琳は息を殺し、気配を絶って敵の様子を探る。
 ここまでにある程度交戦していることで敵の黒霞の幾らかは凍結させられており、口元からは砕かれ折れた歯や牙が覗く。
 思考も単純化しているのか、鈍臭い動きのまま、ただただ皇族への憎悪の念だけに駆られて何やら口走っている様子だ。

(「ならば――」)
 玲琳が発動させたのは【巫覡戴霊の舞】。
 自らを神霊体に変化させることで攻撃によるダメージ軽減を図りつつ、空中浮遊をも活用することで回避率の強化も試みた。発動中は毎秒寿命を削るという対価を要するユーベルコードではあるが、今の玲琳にとってそんなことは取るに足らない。
 まるで薙刀舞を披露するかのように繰り出された玲琳の斬撃をもって、敵も加勢が来たことを悟る。
「クソガ……何人束ニナロウトモ、皇族諸共殺シテヤル! ココガオ前ニトッテモ墓場ダ!」
 黒霞の思念体は、荒々しい力と激しい憎悪をもって、身動きを制限されながらも黒キ波を玲琳へ放つ。それは玲琳の心へ憎悪を植え付けるユーベルコードの波。
 玲琳は、これが初陣だとは思えぬ身のこなしで直撃を免れる……が、心へ憎悪を植え付けるユーベルコードまでは完全には防ぐことができなかった。
 しかしそれで窮地に立たされたのは、玲琳ではなく黒霞の思念体だ。
 その「底知れぬ憎悪」はなんと、義憤となって玲琳の闘志に火をつけることとなったのだ。
「私は、曲がったことも、そんなことをする誰かも、嫌いなんです……!!」

 しゅん……と空を切る音が鳴り、薙刀の刃先がより鋭く光る。刹那、風の音と共に無数の衝撃波となぎ払いとが繰り出された。
 黒霞の思念体は流石に駆け出しの玲琳より強い為に実力差から幾らかは回避してしまうものの、先の猟兵たちが仕掛けた攻撃や凍結によってその多くをまともに食らうこととなった。
 種々の苦痛に呻きながらも、敵は未だ戦意を失ってはいない。なおも鋭い眼光で猟兵たちを見渡し、反撃し、形勢逆転と皇族殺しの時を虎視眈々と狙っている。
 それでも、あと1度か2度、攻撃を受ければ……弱体化している黒霞の思念体を打倒することは可能であろう。さらに、守られる側の皇族の風花も、休むことなく、そして品よく優雅に、回復技のユーベルコヲドを玲琳たちへ繰り出し続けてれている。

 戦いの終わりまで、あと一息だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャロル・キャロライン
旅行中にこんな事件に出くわすなんて思わなかったわ

あの影朧の底知れない恨み
いざとなれば、この船ごと沈めることすらやりかねない
そんなことになる前に終わらせるわ

右手の《指輪》の力を発現してオーラを強化
結界を構築し、敵の逃亡や船体へのダメージを阻止

敵の攻撃は《バリア》や《防護刻印》で防御
指先から《魔弾》を撃ち出し口を潰していく
敵が弱ったなら《邪眼》で束縛

私に貴方を癒すことはできない
そして貴方は、生まれ変わりなんて二度と望まないわよね

だから骸の海に還したりなんかしない
貴方の全て、私が貰ってあげるわ

掌に現出させた《刻印》で吸収・融合する

UC取得:結界術、逃亡阻止。呪詛耐性。呪殺弾、誘導弾。捕縛



「旅行中にこんな事件に出くわすなんて思わなかったわ」
 奇しくも一般の乗客としてクルージングを楽しんでいたはずが、あっという間に船内にざわめきが起こり、やがては最上級の客室で何か良からぬことが起こり始めている。今はオフの旅行中だからと関わらないようにしてはいたが、それでも猟兵である以上これ以上看過している訳にはいかなかった。

 帝都に暮らす探偵として影朧の起こしてきた事態に関わりながら、歴史の闇に潜む影朧を密かに処断してきた魔法使いの末裔であるキャロル・キャロライン(処断者・f27877)。今回の影朧の事件もまた彼女の守備範囲の中の事件だ。
 キャロルは、速やかに戦場となっている風花たちの部屋へ駆けつけた。
 部屋へ向かうほどにひしひしと感じられる、あの影朧の底知れない恨み。いざとなれば、この船ごと沈めることすらやりかねないだろう。
「そんなことになる前に終わらせるわ」

 キャロルは既に交戦中の現場に着くと、即座にユーベルコード【発現】を発動させた。そして右手の指輪「エンハンスリング」を媒介にしてオーラによる防御結界を展開、船体等へのダメージ軽減を図りつつ、同時に敵の退路をも断つ。
「クゥ……小賢シイ真似ヲ!」
 黒霞の思念体は、自らの不利を悟ってなお戦闘意欲を増す。そのかたちの多くを抑えていた氷結を振り切り、欠け落ちた牙や歯で唸るような威嚇を見せた。
「オノレェ……!」
 敵は黒キ声をキャロルへ向かって放つ。それは聞いたものの精神を蝕み、眷属化してしまう闇の声。
 だが……それは虚しくもキャロルのバリアオーラや防御結界に阻まれて彼女の耳には届かない。そもそも声とは空気の振動によって届くものだ。バリアオーラや結界でその振動を吸収されてしまえば効果は激減する。
 一方のキャロルは、敵の口が弱点であることを悟ると、その口へと容赦なく指先から魔弾「オーラブリット」を撃ち込んで行く。
 たとえキャロルを狙う敵の攻撃が彼女の身を裂こうとも、それは即座に風花のユーベルコヲドで癒された。
「……!!」
 敵は最早あらゆる口を破壊され、まともな言葉を紡ぐことが叶わない。声を出そうにもやかましい唸り声にしかならなかった。増幅する一方の憎悪や嫌悪ばかりが、辺り一帯を包み込んでいく。

「私に貴方を癒すことはできない。そして貴方は、生まれ変わりなんて……二度と望まないわよね」
 キャロルは、相手の返答を要しない問い掛けを投げる。最後の口を魔弾で潰して使い物にならなくした後、続けて告げた。
「だから骸の海に還したりなんかしない。……貴方の全て、私が貰ってあげるわ」
 すっかり衰弱しきった影朧へ、キャロルは右手をのべる。その中に出現させた「刻印」によって、黒霞の思念体を吸収・融合しようとしたのだ。

 だが、これぞ火事場の馬鹿力というのか、はたまた窮鼠猫を噛むというのか……黒霞の思念体はそれを拒むように足掻く。
「情ケナンザ……ッ! ドイツモコイツモ、絶対許サネェ……この恨ミ、死セドも転生シヨウトモ、消エルコトハネェ……!」
 ありったけの力を振り絞っての、最期の叫び。それは既に限界まで消耗していた影朧の身体にはあまりにも大きな力となり、やがて影朧は自滅。雲散霧消し、室内には戦闘の痕跡だけが交戦の激しさや怨恨の激しさを物語るように生々しく残された。

「……結局、あの影朧はどうして皇族を恨んでたんだ?」
 戦いに勝利した後。誰からともなく零れた疑問は、ここに駆けつけた猟兵の多くの心情を端的に表していたかも知れない。だが、その答えの真相にはもう辿り着くことはできない。皇族の風花を見遣る者もいたが、彼女もまた黙秘権を行使して答えようとしなかった。助太刀へのお礼だけは、伝えてくれたが……。

 サクラミラージユの皇族は、何も風花だけではない。そうであれば、まだ他の皇族もなお、この瞬間にも命を狙われている危険性がある。
 猟兵たちは次の危機や新たな事態に備えて、戦闘で荒れた船内をある程度修復した後、グリモアベースへと帰還していったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年07月21日


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#サクラミラージュ
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#皇族


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
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 苦戦🔵🔴🔴
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 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は夜刀神・鏡介です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト