弾丸列車風桜と晴桜、時々影朧
●狙われた皇族
大正も七百年余りを超えれば、何とも素晴らしい品が生まれることは数多く。そう、例えば空を征く船、飛行船だとか。海を征く豪華客船だとか。今まさに、皇族の一人が乗るという弾丸列車だとか。
弾丸列車、風桜と銘打たれたそれは帝都から地方までをほんの数時間で移動できるという。政府の要人が公務での移動にも早く移動できる、内装も上質で食事やサービスも良い、とあって評判も悪くない。今回は皇族の一人である晴桜宮(はれさくらのみや)、名を優仁がそれを用いるという。
彼にはもちろん護衛も侍従もついている。それなのにこのままでは凶行が行われてしまう。恨みを抱いた影朧は密やかに車内へと潜入し、叶うならば直接その手で、叶わぬならば車内に罠を張り巡らせ、晴桜宮を殺そうとしているのだ。
それは許されるべきではない。
●皇族と行く弾丸列車の旅
「と、言うわけでー……桜學府にも話がついていますので、弾丸列車に乗る皇族の方を、護衛していただきたいのです」
そう、寧宮・澪は猟兵達へと呼びかける。
謎に包まれた不死なる帝、その血筋に連なる皇族。総数も不明な半ば伝説の存在だ。彼らも不死ではないか、と噂されるほど。
けれどそんな彼らの一人が、影朧の犠牲になるという予知を澪は見たのだ。それを防ぐために超弩級戦力の権限を利用して強引に皇族との面会を取り付け、その旅程に同行することになっているのだ。
今回猟兵に守ってほしい皇族は晴桜宮という男性だ。見た目は桜の精と似ており、年の頃は二十数歳。だが、実際の齢は百五十は有に過ぎている。これでも皇族としては若い方だと思われる。物腰柔らかな、気のいい青年だ。
「晴桜宮が、何をしに行くのか、教えてはもらえませんが……今回、私達は彼を守るのが第一ですので。全く気にしなくて大丈夫です」
顔合わせで晴桜宮に面会し、その後は列車の乗客――晴桜宮の侍従だとか、乗り合わせた華族のボンボンやお嬢様だとか、裕福な帝都民だとかに扮し、怪しい人物を探ってほしい。潜んだ影朧は、皇族を狙う影朧は巧妙に人間になりすましているようで、それこそ侍従や乗組員にまぎれているから。列車内の乗客を秘密裏に調査して、影朧に勘づかれないように正体へ迫ってほしい。
「正体に近づいたら、影朧は、こっそり暗殺するのではなく、車内に危険な罠を仕掛けます」
ドアを開くと呪いのかかった石像が倒れ込んで押しつぶしてきたり、食事に呪いのかかった毒を仕込んだり、使用するものに呪いをかけてきたり。想定しないような罠が仕掛けられているかもしれない。いずれも死に至る危険なものばかり。そういった罠から晴桜宮を守ってほしい。
「罠もくぐり抜け、追い詰められた影朧は、正体を表して襲いかかってきますので……撃退しちゃってください」
重要人物である皇族を狙うテロル行為も、影朧による殺人も見過ごしてはならない。弾丸列車での戦闘だが、車両内でも猟兵はうまく戦えるだろうし、屋根に登ったり壁を走ったりもできるだろう。
晴桜宮は帝の血族のたしなみとしてユーベルコヲドを含めたある程度の戦闘能力を保持している。影朧を圧倒できるほどではないが、彼の言葉に共感したものを強化したり、桜吹雪で敵には雷撃を、味方には傷の癒やしを与えて援護できる。協力してもらうのもいいだろう。
「優雅な旅路、とはなりませんが……皇族と仲良くなる、その足がかりになれば、いいですね……」
そう澪は言いながら頭を下げ、よろしくお願いします、と弾丸列車へ乗る駅へと猟兵を導くのだった。
霧野
移動する密室陸上版。霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
サクラミラージュでも謎の多い重要人物、皇族。その一人を移動する密室である弾丸列車内で護衛するシナリオです。
侍従や乗客に扮して怪しい人物を探し出し、死の罠をかいくぐり、追い詰められ襲い掛かってくる影朧を撃退してください。
●複数人で参加される方へ
どなたかとご一緒に参加される場合や、グループ参加を希望の場合は【グループ名】もしくは【お相手の呼び方(ID)】を最初にご記入いただけると、助かります。
●アドリブ・絡みの有無について
以下の記号を文頭に入れていただければ、他の猟兵と絡んだり、アドリブ多めに入れたりさせていただきます。なければできるだけ忠実に作成します。
良ければ文字数節約に使ってください。
◎:アドリブ歓迎。
○:他のグループや猟兵とも絡み歓迎。
〆:負傷OK。 (血や傷の表現が出ます)
第1章 日常
『容疑者を探せ』
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POW : 乗り物内をくまなく歩き回り、怪しい人物を探す
SPD : 目星をつけた人物の持ち物を掠め取り、証拠品を探す
WIZ : 人々の会話に耳を澄まし、違和感のある部分を探す
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●晴れたる桜の宮
枝に桜の咲いた角、長い黒髪を一つに束ね、洋装の出で立ちの二十数歳の青年は、列車の客席の一つに座っていた。周囲には侍従や護衛の人員がついている。
柔らかな面差しの青年――晴桜宮は猟兵に気づくと笑みを浮かべて席を立つ。
「君達が噂の超弩級戦力だね。此度は私助力してくれるとのこと、感謝する」
鷹揚に頷き、晴桜宮は猟兵を歓迎する。
「侍従に扮すると言うならば制服を、乗客として乗るならば切符を用意してある。車内サァビスも利用可能だ。大いに役立てて貰えれば嬉しい。君達の指示にもできる限り従おう。侍従や護衛、乗組員にも可能な範囲で協力するよう要請している」
彼なりに誠意を見せて、晴桜宮は僅かに笑みを深めた。
「超弩級戦力、その活躍。楽しみにしているよ」
面会から少し時間をおいて、乗客皆が乗り込むと弾丸列車は出発した。名の通り速度を上げて風の如く、目的地へと向かっている。
ゴトンゴトンと規則正しく音が鳴り、僅かながらも揺れる車内。乗客は思い思いに過ごしているようだ。
――無論、影朧も。
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・車内サービスには食堂車や展望車、売店があります。利用しながら、もしくは乗組員として働きながら、車内の侍従や乗組員を探ることが可能です。
御園・桜花
◎◯
(見た目は桜の精なのに、不死の一族…?)
まじまじ顔を見てしまってから、慌てて頭を下げる
(乗務員が怪しいと思うけれど、不死の一族に相応しくないと思う方も居るかもしれません。積極的に飲食をしていない方を中心に、言葉遣いと所作の違和感を探しましょう)
旅に浮かれた客装い
乗務員には
「後どの位で着くでしょう」
「食堂車のお勧めは」
「お土産販売あります」
から選択
受答えと姿勢と歩き方見る
乗客には
「どちらへ行かれるんです?」
「始めて乗った列車が楽しくて。貴方は乗り慣れてらっしゃるんですね」
「お勧めの見所はあります?」
から適宜選択
相手の服装に合った所作口調か確認
違和感が有った者全員をUCの蜜蜂に追跡させ動向確認
●ある皇族に戸惑いながらも、桜の精は乗客を探る
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、つい晴桜宮をまじまじと見てしまう。
(見た目は桜の精なのに、不死の一族……?)
不死の帝は人外の何か、神の転生体かと思っていただけに、その血族が桜の精のような見かけをしていて桜花は戸惑うばかりだ。人によっては不躾に感じる程に熱心に見つめられて、晴桜宮は笑みを浮かべた。
「何かおかしな所でもあるかな?」
「いえ、そういうわけではないのです……その、失礼いたしました」
桜花は慌てて頭を下げる。晴桜宮は気にした様子はなく首を振ってみせた。
「別に構わない。それに此度、助力をしてもらうのはこちらの方だ」
「もったいないお言葉です」
そっと目を伏せて桜花は言葉を受け取り、晴桜宮の前を辞した。
弾丸列車に乗車した桜花は乗客に扮し、旅に浮かれた風を装って車両を歩く。
(乗務員が怪しいと思うけれど、晴桜宮の姿が不死の一族に相応しくないと思う華族の方も乗客として居るかもしれません。積極的に飲食をしていない方を中心に、言葉遣いと所作の違和感を探しましょう)
まず目についたのは、客席の中でも一人で座り、ぼんやりと車外を見る若い男性だった。高価な弾丸列車には似合わないくたびれた服装にクマの浮いた顔。桜花はそっと彼に声をかけてみる。
「あの、どちらへ行かれるんです?」
「はえ!? いや、この列車の終着駅の、京都までデス、はい」
「京都、良いところですよね。お勧めの見所はあります?」「やっぱり神社仏閣かと」
「そうなんですか。私、始めて乗った列車が楽しくて、つい目移りしてしまって。貴方は乗り慣れてらっしゃるんですね」
「いや、とんでもない。こんな高価な列車、乗ったのは初めてで……取材でなければ、経験しなかったでしょう」
曰く彼は記者だという。弾丸列車の記事を書くために乗り込んだが、今朝ギリギリまで寝ずに別の記事を書いていた。少し休んでから設備や車両を見るという。
「お食事はどうなさるのですか?」
「食堂車はちっと高ぇんで、売店で何か菓子でもつまもうかと」
そういう彼に人外の様子は見られない。桜花は一つ頷いて、礼を言って彼の前から去っていく。あたりを観察しながら歩く桜花に、とん、とぶつかる人がいた。
「おっと、失礼しました」
「いいえ、こちらこそ。車掌さん、ですか?」
「はい。何か御用で?」
初老の車掌は軽く頭を下げ、桜花の声に応じる。
「あと後どの位で京都に着くでしょう」
「おそらく予定時刻通りかと」
「そうですか。食堂車のお勧めはありますか?」
「車両に行きますと、コックやボーイがおりますので、そちらに確認していただければ」
「そう……おみやげの販売はあります?」
「売店がございます。そちらにあるのでは?」
「わかりました。ありがとうございます」
「ええ。失礼いたします」
幾度か質問をして、桜花は車掌と別れ行く。彼の背中にそっと蜜蜂を送りながら。
(答えはすべて曖昧。そもそもこんな広い通路でぶつかるなんて、車掌らしくないですね)
食堂車や物品に関して曖昧でもまあ、いいだろう。けれど予定時刻をはっきり明言せず、曖昧にするのは何とも車掌らしくなかったから。
大成功
🔵🔵🔵
ファファ・メーリィ
◎
ワタシの見目なら乗客の方が自然かしらネ
久々の遠出にはしゃいでしまっているどこぞの令嬢、みたいなキャラ付けでどうカシラ
洋風の仕立てに和柄や和小物を合わせたドレス姿で、
弾丸列車の前から後ろまで、好奇心でキラキラしながら闊歩するワ
もしかしたら車両の間で物が倒れたり落ちてくる罠を潰せるかもしれないシ
ついでに見かけた乗客や乗組員には積極的に話しかけ
ざっくり人柄や顔を把握したり態度を見たりしておくわネ
不自然に言い淀んだり曖昧だったりしたら特に覚えておくワ
「わたくし親戚の慶事で久々のお出掛けですの! 貴方はどんなお出掛け?」
「まあ!初めて見ましたわ! 此処ではどんなお仕事をなさっているんですの?」
●おめかし令嬢、列車を舞い歩く
(ワタシの見目なら乗客の方が自然かしらネ)
そう考えたファファ・メーリィ(ゴーストアップル・f37551)はひらりと後ろが膨らんだバッスルスタイルのドレスの裾をひらめかせ、車両を辿る。
(久々の遠出にはしゃいでしまっているどこぞの令嬢、みたいなキャラ付けでどうカシラ )
特別車両となった晴桜宮のいる先頭車両から、目指すは最後尾の展望車。華やかな牡丹と金のラインの染め柄のドレスに巾着を持って足取りも軽く。和洋合わせた日本文化に憧れる外国の令嬢さながらの姿で、輝く金の瞳を好奇心で染め上げて、ファファはゆったり巡りゆく。
その姿はまさに遠出にはしゃぐ令嬢だ。口うるさいお供を置き去りに車両を巡るのだろう、と言うように周囲には見えているだろう。
足取り軽く、ファファが一等車両を抜けるとき、ちょうど通路を歩く洋装の老紳士に相見える。
「おや、お嬢さん。はしゃいでおられるようだが、何やら楽しい旅行かな?」
「こんにちは、わたくし親戚の慶事で久々のお出掛けですの! 貴方はどんなお出掛け?」
そうファファが問い掛ければ紳士は穏やかに笑い。
「めでたいことか、それはいい! 私は商談の帰りでね、いい契約が結べたんだ」
すらすらと言葉も紡がれ、怪しい素振りも特に見えず。この紳士は大丈夫だと判断できる。
「それはよかったですわ。短くとも良い旅行になりますように」
「ああ、お嬢さんも。素敵な旅になりますように!」
ひらりとお互い挨拶を交わし、乗客同士の会話は終わる。ファファはドレスの裾を軽く引いて礼をして、紳士は軽く頷いて。お互い穏やかにすれ違い、ファファはまた最後尾目指して歩き出した。
(今の方は問題なさそうネ)
彼の受け答えに動揺はなく、表情も身のこなしも自然だった。
あとは車両と車両の間に何か倒れそうな物が仕掛けられていることも、食堂車に怪しい気配もない。今の所は影朧も何も仕掛けていないということか。
穏やかな笑顔を浮かべたまま警戒しつつ、ちょうど食堂車の中程に通りかかったとき、ファファの向かいから車掌のお仕着せを着た初老の男性がやってきた。ふわりと笑顔を浮かべて、ファファは男性に話しかける。
「まあ! 車掌さん、私初めて見ましたわ! 素敵な制服、お似合いです。此処ではどんなお仕事をなさっているんですの?」
「はは、それは光栄です。ええ、そうですね……皆様が楽しい旅路を過ぎせますよう、努めております」
「そう、そうですの! 素敵ですわ!」
それではこれで、と去っていく男性の面差しを、身のこなしをファファは化粧師として、トータルコーディネーターとしての目で観察する。
(曖昧な業務内容はまあいいですノ。若い女性には通じぬと思った可能性もありマス。けれど、視線が、動作が)
どうにも怪しい。ここに至るまで見かけた他の車掌とは違い、まるで獲物を狙うかのようだ。
ファファは観察して掴んだその人物の特徴を、他の猟兵にも伝えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
高天原・光明
◎○
弾丸列車は完全な密室、逃げ場がないのは影朧とて同じこと。晴桜宮殿下に指一本触れさせやしないさ。
【POW:乗り物内をくまなく歩き回り、怪しい人物を探す】ことにしよう。服を〈早着替え〉して、車掌に〈変装〉して捜索するぞ。列車の先頭から最後尾まで、切符を確認しながら進もう。罠の仕掛けやすい連結部で妙な動きをしていたり、殿下と侍従の動きを伺うような奴には声を掛けよう。
切符を拝見させていただいてもよろしいでしょうか、お客様。何か、お困り事は御座いませんか。最近は物騒ですから、不審に思われたことなどありましたら、何なりとお申し付けくださいませ。まぁ、何もないに越したことはありませんがね。
●射抜く者、車掌として巡る弾丸列車
高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)は車掌のお仕着せに身を包み、何物も逃さぬ眼光でもって乗客を観察する。老若男女、家族連れ、二人連れ、一人旅。乗務員も等しく観察し、光明は車掌帽の下から見て回る。
(弾丸列車は完全な密室、逃げ場がないのは影朧とて同じこと。晴桜宮殿下に指一本触れさせやしないさ)
本当にいるかも不確かだった皇族、それに出会う機会があるとは思っても見なかった。これまで顔を合わせた皇族は彼らなりに誠意をつくしていたようだし、晴桜宮も彼の身分に許される態度で歓待しようとしていたようだ。
皇族の助力もあって、猟兵もこの列車に乗っているとあらば。怪しい人物を見逃すことなくありえない。
まず、光明は車掌として先頭の特別車両から後部の展覧車まで、車内の様子をくまなく見て巡ることにする。最初に見えた乗客に声をかけ、その行動を見定める。
「失礼、切符を拝見させていただいてもよろしいでしょうか、お客様」
「あら、車掌さん。はいどうぞ」
「お仕事ご苦労様です」
穏やかな老夫婦が切符を差し出した。行き先は弾丸列車の向かう駅であり、偽造された様子はない。
「何か、お困り事は御座いませんか。最近は物騒ですから、不審に思われたことなどありましたら、何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとう、そうねぇ、今は大丈夫ですよ」
「こういう風に気遣ってもらえてありがたいねぇ」
礼を言いながら穏やかに水筒のお茶を飲み、持ち込んだ菓子をつまむ様子は仲睦まじい裕福な夫婦にしか見えなかった。光明は僅かに笑み、彼らに切符を丁寧に返す。
「はい、確認しました。良いご旅行を」
「ありがとう」
それからも車掌らしく光明は乗客の切符を確認し、車両の連結部や設備に何か仕掛けをしているものはいないか、先頭車両に用もなく近づくもの、侍従に怪しい動きを仕掛けようとするものがいないか、目を光らせる。
「今の所罠もなし、乗客に、怪しいものもいない……まぁ、何もないに越したことはありませんがね」
光明がそう呟きながら更に後ろに歩いていくと、同じように車掌の制服を着たものが歩いてくる。光明は初老の車掌を観察し、違和感に目を細めた。第六感が、呪詛耐性が、この車掌はおかしいと告げてくる。足取りが視線の取り方が。いわゆる車掌としては違和感がありすぎた。獲物を狙うかのような視線や足取りがどうにも気にかかる。
互いに頭を下げ、すれ違うが、どう見ても怪しい。蜜蜂もその背を追いかけている。先程回ってきた怪しい人物の情報でも、そう、こういう容貌に足取りをしていたのだ、と。
「――なるほど」
くるりと向きを変えて光明は先程の車掌を一度追い抜いて、前へと急ぐ。
護衛や侍従、晴桜宮本人にその存在を伝え、警戒するために。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎
【侍従として】
ぼくの本懐はパーラーメイドだけど、侍従だってこなしてみせるさ。
晴桜宮様の護衛と、怪しい影朧の調査だね。
調査の為の超機械は設置済、ぼくの意思と連動して動く、隠密迷彩通信文鳥の情報を、ぼくの眼に装着したレンズ型電脳に映せば逐次報告されるはず!
皇族の方って、本当にいらっしゃるんだ。
よし!この時のための礼儀作法じゃないか!
ご安心していただけるように、侍従として付き添いして、連携できるようなら、他の人との情報共有も忘れずに、異変があったら、即座に動けるように、各種武装類の取り出しは必ずチェックしておこう、暴徒、影朧の鎮圧もパーラーメイドの役割だもんね!
●パーラーメイド、侍従として宮の側に
国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)はパーラーメイドである。彼女の作るスヰーツは絶品で、天才パテシエイルでもある。
そんな彼女は侍従だってこなしてみせるのだ。
「晴桜宮様の護衛と、怪しい影朧の調査だね」
貸し出された侍従のお仕着せを身に纏い、鈴鹿は一つ気合を入れた。桜の花びらと陽の光の文様の刺繍が裾に入ったお仕着せをきちんと着て、楚々とした佇まいで晴桜宮の側に控える。
そして乗車と同時に各所に備えた超機械、鈴鹿の意思に連動して動く隠密迷彩通信文鳥との通信を開始、情報は逐一レンズ形電脳へと映していく。車内の他の猟兵への伝達も報告も、その気になれば文鳥を介して行えそうだ。数ある情報も電脳で整理し、優先度の高いものを特に目立たせるように表示する。
情報を収集しつつ、侍従らしい仕事をしようと他の侍従と一緒にお茶の用意をしながら、鈴鹿はそっと晴桜宮の様子をうかがう。ゆったりと構えるその人は、不安を見せず、何やら書類を読んでいるようだった。
まさか皇族を自身の目で見るとは、更には顔を合わせるとは。鈴鹿は不思議な心地になってしまう。
(皇族の方って、本当にいらっしゃるんだ)
謎多きサクラミラージュの不死たる帝、その血族である皇族。まことしやかな伝説とばかり聞いていたその人が、今現実に鈴鹿の目の前にいる。
(よし! この時のための礼儀作法じゃないか!)
パーラーメイドとして鍛えた礼儀作法の中には、貴人に仕えるに当たっての心構えや行い、動作などもある。幅広い客層に対応できる完璧なパーラーメイドには必須の知識・技能であった。
学んだ全てを活かし、指先まで優雅にさり気なく、振る舞いも完璧に。そっと茶を給仕する鈴鹿に晴桜宮は柔らかに笑みを浮かべた。
「ありがとう」
「いいえ! 何かご不便などありませんか?」
「いや。君達が力を尽してくれるから、何もない。安心した心地でいられる」
「もったいないお言葉です」
そっと目を伏せる鈴鹿に、晴桜宮は尋ねる。
「状況はどうかな。乗客に不安や危険は」
「はい、何も問題はなく。騒ぎも起きておりません」
「目的の人物は」
「もうすぐ特定されるかと」
車内にいる他の猟兵からの情報も集約し、鈴鹿とレンズ形の電脳は一人の人物をピックアップする。
周囲の侍従や護衛も大丈夫、乗客も今の所OK。時折報告にある、違和感を感じる初老の車掌が怪しい、と。
彼が追い詰められ、騒ぎを起こすその時にすぐに飛び出していけるよう、鈴鹿は並行して各種武装類もチェックする。騒ぎが起こる、影朧が牙を向く、その時にいつでも取り出せるように、即座に動けるように。
(暴徒、影朧の鎮圧もパーラーメイドの役割だもんね!)
きりりといつもの笑顔の向こうで鈴鹿は気を引き締め、晴桜宮の側で控えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
◎○
皇族が本当に存在したのか、なんて事は間違っても口に出せないが
実際、会った事がある人はどれだけいるのやら……だ
今回は護衛を装わせてもらおうか。制服は借りて、刀は持ったまま
元軍学校の出身だし、侍従よりはそれらしく見えるだろう
着替えた所で、他の護衛や侍従の中に影朧が紛れ込んでいないかを探しにいく
さて、どうやって不審者を探し出すかだが……護衛である事を利用しよう
バレないように一人ずつ、侍従の服装などに難癖をつけて様子を窺おうか。
本物の侍従なら、恐らく俺の言ってる事を嘘だと看破するだろうが、姿を真似ているだけの偽物ならそうはいかないだろう
大多数の無関係な人を騙すのは少々心苦しいが、これも仕事だ
●道を探す者、護衛として見て巡る
(皇族が本当に存在したのか)
幻の一族とも言える不死の帝の血族。その彼らが実在したことに夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は内心わずかに驚いていた。そんな思いを口には出せないが、実際に会ったことがある者はどれだけいるだろうか、とも同時に思う。何せ総数も不明な半ば伝説の存在なのだから。
鏡介は護衛として動くことにする。軍学校を卒業した身の上だ、侍従よりはそれらしく見えるだろうという判断のもと、陽の光を思わせる金糸の縫取りと、桜の花びら刺繍が襟元に飾られた黒地の制服を借り、帯刀したまま車両を巡ることにする。
(さて、どうやって不審者を探し出すかだが……護衛である事を利用しよう)
鏡介は入れ替わり立ち替わる侍従達や、側に控える護衛達を観察する。列車に乗った時から側に仕えている者は除外してもいいだろう。そうして一度離れたその者達に焦点を当てる。
侍従も護衛もヒトなのだから休憩や食事、所用を済ませる必要がある。命じられて別の車両に赴くこともある。故に離れることは問題ではない。
離れたその先で、影朧に取って変わられていないことを確認するのが重要なのだ。
一人、侍従の女性が列車の中を移動していた。鏡介は早速声をかけてみる。
「失礼、そちらの方」
「はい? ああ、護衛の方ですか。何かありましたか」
「あなたの帯の着付け、何かおかしくはないですか?」
侍従のお仕着せの着方にわざと難癖をつけ、鏡介は侍従の反応を観察する。
(本物の侍従なら、恐らく俺の言ってる事を嘘だと看破するだろうが、姿を真似ているだけの偽物ならそうはいかないだろう)
偽物ならば慌てて取り繕うか、はたまた逃げ出すか。そういった派手な反応でなくとも、本質を見抜くことができればいいのだ。
(大多数の無関係な人を騙すのは少々心苦しいが、これも仕事だ)
今回の侍従は僅かに首を傾げただけ。何を言われているんだろう、と言わんばかりの表情だ。観の目で見極めても何も違和感はない。突飛なことを言われて戸惑うばかりの顔だった。
「いえ、規定通りの着付けですが……何か問題でも?」
「……いえ、私の気のせいだったようです。お時間ありがとう、呼び止めてすみません」
「いいえ。護衛の方の職務ですもの、気にしておりません。では失礼します」
そう言って侍従は去っていく。
鏡介はそのまま後方車両へと歩き、同様に侍従や護衛にわざと難癖をつけて彼らを確認した。その中に違和感を生じるものも、怪しい素振りを見せるものも確認されなかった。
「この分だと、侍従や護衛には紛れていなそうか……?」
このあと入れ替わるつもりかもしれないが、現状心配はなさそうだ。鏡介は護衛らしく、晴桜宮のいる先頭車両へと戻る。
その最中、ずっと観察していた神経に引っかかるものを感じて、該当の人物を見つめ直す。
そこにいたのは初老の車掌。その足取りに、視線の動きに。まるで獲物を狙うかのような本質を察し。
鏡介は警戒を強め、他の猟兵にも情報を流すのだった。
大成功
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蒼月山・翡翠
◎〇
影朧が政府御用達の列車に紛れ込んでいると。しかも皇族に恨みを…。
ならば、尚更助けなければなりませんね。
弾丸列車には乗客として乗車します。
まず展望車で景色を眺めつつ、周囲の乗客の言動も観察していきます。
次に晴桜宮殿下とお茶をして、ご本人からも証言を得ます。
そしてそこで得られたすべての情報をまとめていきます。
●翡翠の學徒兵、茶を味わう
蒼月山・翡翠(恋焦がれし翡翠桜の娘・f25306)は流れゆく景色を最後尾の展望車で眺めていた。弾丸列車の名の通り、風を切り走る列車はとても速く、辺りの景色も見る間に後ろに流れゆく。
翡翠と同じように展望車で眺める乗客の様子も確認しながら、翡翠は一つ決意を固めていた。
(影朧が政府御用達の列車に紛れ込んでいると。しかも皇族に恨みを……)
幻の一族とも言われる、半ば伝説ともなっている皇族。不死の帝の血族たる彼らもまた不死ではないか、と囁かれるほど。実際、先程顔を合わせた晴桜宮も若い青年のようだったが、実年齢は百五十を超えているという話だ。その長い生の中で、恨みを抱かれるようなことがあってもおかしくはないだろう。
(だからといって害されるなどあってはならないのです。常人のテロル行為ならば常につく護衛でも対応できるでしょうが、影朧が関わっているならば、尚更助けなければなりませんね)
流れる景色を見ているふりをしながら、入れ替わる乗客を観察し、時には会話に耳を傾けて、怪しいものがいないかを確認する。
老婦人や家族連れ、裕福な服装の紳士淑女、若干くたびれた様子の労働者。様々な人物が思い思いの時間、展望車で景色を眺め、十人十色の反応をしていたが、特に怪しい者はついぞおらず。
翡翠は観察を止めて、晴桜宮のいる先頭車両へと向かう。その道中も行き交う人や着席している乗客、乗務員を観察していた。
一人、気になる人物を見つけ、心に留めながら翡翠は晴桜宮のいる先頭車両へと到着した。侍従に取り次ぎを頼めば、護衛に囲まれながらも晴桜宮の元まで通される。
先程顔を合わせた桜の枝角を生やした青年が、座ったまま翡翠を笑顔で出迎えた。
「やあ。君は確か、蒼月山殿、だったか。何か情報を?」
「はい。整理するためにこちらに参りました」
頷いた晴桜宮は侍従に命じて茶を用意させる。注がれた薫り高い緑茶の香りを、ほのかな甘みすら感じる味を味わってから翡翠は口を開いた。
「乗客に気になる方はおりませんでした。侍従や護衛の方も大丈夫でしょう。乗務員の中で、一人気になる方が」
侍従に扮した猟兵や護衛としてついた猟兵も思い浮かべ、翡翠は晴桜宮へと報告する。
「そうか。他の方からも同様の報告を受けている」
「宮様は何か心当たりはございますか」
「周囲に控える侍従や護衛はないだろう。私も違和感を覚えぬし、貴方方がついている」
「では、やはり」
翡翠は確信を持って怪しい人物を口に出す。
「初老の車掌。彼が怪しいと思います」
大成功
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第2章 冒険
『容疑者最後の罠』
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POW : 狙われた皇族を身を挺して守る
SPD : 仕掛けられた罠を発見し、解除する
WIZ : 焦った敵の残した痕跡から、正体を推理する
👑7
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●追い詰められた影朧は如何に逆転を計るのか
猟兵達の行動に、影朧は追い詰められていた。
先頭車両に行こうにも、その先の扉を潜るには目がありすぎる。車掌に化けて乗ったはいいが、その後他の乗客や侍従や護衛に入れ替わることもできやしない。
もう旅程の半分も過ぎた、これでは晴桜宮を殺すどころか自分が捕まるだけではないか。
「ふむ、ならばこそ仕掛けを動かすときですかな」
車掌に化けた利点は、乗客より先に乗り込めることだ。事前に弾丸列車の見回りと嘯いて、呪いの品を各所に配置してある。先頭車両に仕掛けた罠はいくつもある。座席が勝手に動いて晴桜宮を押しつぶすなり、備え付けの器具のボトルが外れて落ちてくるなり。如何様にも不幸を呼び起こせるよう、呪いの品を潜めておいた。運ぶ食事や飲み物にに毒味をされても問題ない、食器自体が呪われているのだから。
あちらこちらに監視の目はあるけれど、自分は遠くから呪いを呼び起こすだけである。一瞬、呪いの品々の主人として縁を結んで起こすだけ。
もしも晴桜宮が先頭車両から出てきたら、他の車両にも仕掛けた同様の罠を発動させるだけだ。他の乗客が巻き込まれても関係ない。むしろそれで影朧が増えればいいとも思える。
そうすれば彼はより金儲けを進められるのだから。
「さてはて、猟兵諸氏に晴桜宮。貴方方は呪いの品による罠を如何様に躱し、あるいは跳ね除けますかな?」
遠く最後尾の車両で器具を点検する振りをした影朧は、にやりと笑った。
呪いの品は起こされるまで封じられて、弾丸列車のあちこちに潜んでいる。
そして、影朧がその封印を解く。
呪いの品々は、晴桜宮の命を奪おうと列車の設備を動かしだした。
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎
【護衛作戦開始!】
ぼくが必ずお守りします。
きこやん、結界術で晴桜宮様をお守りして、ぼくは厭穢欣浄パラダヰムシフトで、呪いの品を改変していくよ。
影朧の痕跡が必ず残っているはず、発動する為の鍵があるなら、識別は可能、戦場は列車全体に及んでいるけど、罠を解除するだけなら、必要以上に改変しなくても良いはず。
ここまですれば、もう罠は使えないはず、そろそろ直接手段に出る頃じゃないかな?
索敵圏内に敵の動きがあれば、奇襲に警戒、制圧準備!
特級パーラーメイドとして、腕の見せどころだよ!
●罠を解いて迎え撃つは特級パーラーメイド
晴桜宮のいる先頭車両、そこに用意された備品がガタガタと動き出す。鈴鹿はすぐさま警戒態勢を取り、彼女に宿る稲荷狐、きこやんを呼び出した。
「ぼくが必ずお守りします」
「頼もしい。お願いするよ」
「はい。きこやん、結界術で晴桜宮様をお守りして」
彼女の意を受けたきこやんはコン、と鳴いたか鳴かないか、そんな一時の間に晴桜宮を守る結界を張り巡らせる。侍従や護衛達も晴桜宮を守るよう周囲を取り囲んだ。皇族として戦う力をつけている晴桜宮は、結界の様子に感心したように目を細めている。
鈴鹿自身はボルトが外れて飛んでくる座席や棚へと指先を向けて宣言した。
「ここはぼくの領域、さぁ、君の魂をあるべき姿へ」
戦場、そこは全て鈴鹿の理想世界。改変された現実は、棚も座席も元に戻し、潜んでいた呪いの品――目立たぬように注意書きのプレートの下に隠された札や、呪詛を込めた小さなピン、禍々しい針金などを改変して罠を解き放っていく。
鮮やかなまでの世界改変、しかも影響は最小限。晴桜宮は頷きながらその腕を褒め称える。
「見事。さすが、と言うべきか」
「えへへ、ありがとうございます!」
呪詛の残る品々を一点に集めるよう改変された世界で、鈴鹿はそれらをしっかりと見る。
「浄化が必要かな?」
「あとで必要ですが、今はここから痕跡を辿ります」
晴桜宮の言葉に首を振り、鈴鹿は残った影朧の痕跡を辿っていく。設備を動かす呪いを解いただけで影朧との繋がりは消えていない。ほんの一瞬だったとしても、その痕跡は残っている。
列車全体に及ぶ騒ぎの中、鈴鹿は配置された文鳥達の情報も集約しても痕跡を追いかける。一人、慌てながらも罠をすり抜けてやってくる車掌を捉えながら。
飛び交う設備や物品を他の乗客にも被害無いように改変しながら、呪いの品々の設備を動かす呪詛だけを改変し、解き放つ。そうすれば影朧の操れる品もなくなり、間接的な手段は全て潰したはずだ。
「ここまですれば、もう罠は使えないはず、そろそろ直接手段に出る頃じゃないかな?」
「ふむ、つまり乗り込んでくると」
「はい、おそらく」
そう、初老の車掌がもうすぐここにやってくる。鈴鹿は不敵な笑みを浮かべ、警戒、制圧準備と工房の武装を取り出した。
「さあ、特級パーラーメイドとして、腕の見せどころだよ!」
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
◎◯
「壊した物品の請求先は晴桜宮様に行くのでしょうか、其れとも」
怖い考えを首振って追い出し
UC「シルフの召喚」
自分も高速・多重詠唱で桜鋼扇に破魔と浄化の属性付与
「呪いの力が物に籠められない状態、呪いを保っていられない状態になれば呪いは解けると思います」
動き出した動かない筈の物(=呪いの品)を召喚したシルフにばんばん両断して貰いつつ桜鋼扇で殴って浄化
呪いの力を文字通り粉砕しながら最後尾に向かう
物の大きさによっては盾受けしてカウンターでシールドバッシュして弾き飛ばす
「晴桜宮様には直衛した人が居た筈ですから。私は人的被害を抑えるのを優先します!…その分列車の物的被害は甚大な気もしますけど」
目を逸らす
●全部壊して受け止めて
影朧の罠によって設備や物品が動き出した車内で、桜花は困ったように眉を下げ、視線を正面からそらし、呟いた。
「壊した物品の請求先は晴桜宮様に行くのでしょうか、其れとも」
壊した当人――例えば、桜花が壊したならば桜花個人へと請求されるのだろうか。そんな怖い考えを首を横に振って追い出し、桜花は風の精霊をこの場へと呼び出す。
ひらりと森を思わせる香りと共に現れた精霊は、飛んできた座席を風で切り裂き、小さくして周囲への被害を抑えている。その間に桜花自身は桜鋼扇へと破魔と浄化を付与しておく。
「呪いの力が物に籠められない状態、呪いを保っていられない状態になれば呪いは解けると思います。そう、浄化や破魔の力で叩くとか」
ボルトが外れて落ちてきた荷物置きの棚をシルフが粉砕する。砕けて散らばるその破片の中、混じっていた呪いの札を桜花は桜鋼扇で打ち据えて、呪いを浄化した。同時に飛んできた座席は後ろにいた乗客に行かぬよう受け止めて弾き返し、シルフが切り裂いたところを、形作るネジに込められた呪いを叩いて消し去った。
「晴桜宮様には直衛した人が居た筈ですから。私は人的被害を抑えるのを優先します! ……その分列車の物的被害は甚大な気もしますけど」
端的に呪いの品だけを叩ければいいが、そんな余裕があるはずもなく。大きなものはシルフに切り裂いてもらい、その中に紛れるネジや札を叩き落とす。食器や備品のような小さなものは風で受け止め、扇で直接叩き払う。
どんどん破片や残骸ができていくその光景をどうにも真っ直ぐを見られず、困ったように視線をそらし、桜花は次に見つけた呪いの札を叩き落とす。怯える乗客を庇うようにシルフが飛んでくる設備や物品を切り裂くその様に、また視線をうろつかせた。
「本当に、請求されないといいのですけど……」
ひらりひらりと飛んでくる品を的確に破壊し、呪いの品を撃ち落としながら、桜花は小さく呟くのだった。
後の話ではあるが、設備は他の猟兵がユーベルコードのより直っていったため、桜花が心配したような請求は特になかったという。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
◎○
列車の各所に呪具の罠、か
仮にも要人や富裕層が使う列車だというのに、よくも改造したというか……
まあ、今はまだ被害は出ていない。出る前にきっちり無力化してやるさ
今は一応護衛に扮しているので、基本的には晴桜宮氏の周辺を警戒していく
呪術的な罠の探知はそこまで得意じゃないので、銀羽根を取り出して各所にそれをかざしていく
魔除けの性質を持つこれなら、呪力に何かしらの反応を示すだろう
物理的に取り外しが可能ならば外して、適当な場所に纏めておいておこう
或いはわざと敢えて発動させてから、それに対処する形で無力化
完全にどうしようもなさそうなら、神刀で叩き切る。あまり壊したくないが、背に腹は代えられないものな
蒼月山・翡翠
◎〇
宮様、ここは私にお任せを!
晴桜宮殿下が触れるであろう物に狙いを定めます。
とはいえ呪いの品もこの列車の備品ですので、『強制改心刀』で呪いの力のみを消していきます。
必ずやあなたをお守りします。
●翡翠桜は閃き、探道者は魔を祓う
晴桜宮のいる先頭車両。その中ではポルターガイストの如く設備や物品が飛び始める。
騒動が起き始めた時はちょうど翡翠と晴桜宮が茶を飲み終えた頃合いでもある。後ほど片付けられる予定だった食器や、車両の座席、棚などの備え付けの器具もかたかたと揺れ動く。
即座に反応した翡翠は素早く席から立ち上がり、それらが動き出す前に翠玉椛をすらりと抜く。
「宮様、ここは私にお任せを!」
まずは先程飲んだ茶の器が浮かび上がったところを一閃、もみじの装飾の刀は銀の輝きと共に切り落としたかに見えた。しかし用意された机に落ちたそれらは元の形のまま。翡翠はその技を持って込められた呪いだけを切り伏せたのだ。
残心を決めながら周囲へと気を配り、張り詰める翡翠に晴桜宮は鷹揚に目を細めた。
「素晴らしい腕前」
「必ずやあなたをお守りします」
晴桜宮の賞賛を背に受けながら、翡翠は新たな飛来物に向き直る。菓子を乗せていた皿が飛んでくるのを切り払い、ボルトを緩めた棚が落ちてくるのを払い除け。名の通りの美しい髪を閃かせ、しなやかに飛び交う品々を切り祓う。呪われたとはいえこれらも列車の備品には違いない。壊すことなく祓えるものは祓うべきだと、邪なる気配だけを清水と神鋼を鍛えた刀にて祓っていく。飛んできた座席を祓い、浮かび上がるポットの湯が飛び跳ねる前に弾いて遠くへとやりながら勢いを殺し、周囲の護衛や侍従も守りながらポットが割れるのも防いでみせた。
同じ場で護衛として動く鏡介は、揺れ出した棚に一片の銀羽根をかざし動かし、一際強く震える戸棚を開く。その中の札を銀羽根を当てることで浄化して棚の動作を止めた。同時に後ろから飛んできた盆を鞘に入れたままの鉄刀で打ち払う。
時にふわりと、時に風を切るように、小さな品から大きな設備まで、ガタガタ動き出しては晴桜宮の命を狙って飛んでくるのだ。これと同じことが列車中で起きていると言うのだから、鏡介は眉根を寄せた。
(列車の各所に呪具の罠、か)
新たにボルトを外して飛んでくる座席を鉄刀の鞘で払い、床に落ちながら揺れるそれを足で押さえて銀羽根を当てて呪いを祓えば、呪術を込められたネジがポトリと落ちて動きを止めた。
こんな小さな部品に呪いを込めて動かすと言うのだから、件の影朧は相当手をかけたのだろう。
(仮にも要人や富裕層が使う列車だというのに、よくも改造したというか……まあ、今はまだ被害は出ていない。出る前にきっちり無力化してやるさ)
晴桜宮目掛けて飛んでいくフォークを捕まえてさっと祓い、一箇所にまとめておく。翡翠も切り払った後、同じように集めていった。後で痕跡を辿って犯人をつかまえればいい。
翡翠は晴桜宮を庇うように前に立って目前に飛びこんでくる品々を切り祓い、鏡介は鉄刀を鞘に入れたまま構え、飛び込んでくる物達に順序を決め、効率良く最小限の力で打ち払う。
動きやすい護衛のお仕着せのまま、飛び交う品々をさっと捕まえ、揺れ動く設備を押さえては魔除けの銀羽根で祓う姿は勇ましくも鮮やかだ。
斯様に手早く対応する鏡介を見ていた晴桜宮は感心している。皇族として戦う力を身に着けている彼には、鏡介の動きに武の道を見た。それに戦場を俯瞰するような位置取りは将としての視点だ。
「鏡介殿は武人とお見受けする。良い腕だ」
「光栄です」
礼を言いながらも鏡介の目は飛び交う品や設備を見据えて隙がない。今もできるだけ壊さぬように飛んできた椅子を受け流し、呪いを解いて落ちた品を受け止める。護衛や侍従の間を縫って飛んできたナイフを弾き落とした。
皆の視点の隙を庇うように、護衛らしく。晴桜宮の護りとして。他の車両は他の者に任せて、己の役分をきっちりと果たす。
呪いが強すぎる場合には神刀で叩き切る心構えをしつつ。鏡介は一層気を引き締め、呪いの品を払うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
高天原・光明
◎○
あらゆるものが呪いの罠になりうる今、晴桜宮殿下を無闇に移動させるのは危険だな。だが、いつまでも此処に留まっていては奴の思うつぼ。ならば、先に車両の安全を確保しておくとしようか。
【UC:強制改心刀】(POW)を発動。先頭車両から後方へ移動し、道中見つけた罠を無力化していくぞ。落下してくる器具や飛んでくる食器等には霊力を込めたナイフの〈投擲〉をお見舞いし、圧し潰そうとしてくる座席や車内販売のカート等の重量物には退魔刀による〈切断〉を食らわせて呪いを払っていこう。
影朧め、一体どれほどの罠を仕掛けたんだ。この様子なら、十や二十じゃないだろう。大きな被害が出る前に、片づけていかなければな。
ファファ・メーリィ
◎◯
その場にいなくても遠隔で攻撃してくるのは厄介よネ
ひとまずワタシは呪いの品無力化を狙っていきマショ
解呪とか浄化とか、そういうのには縁がないシ、
あくまでワタシなりのやり方にはなるケド
令嬢姿のままだシ、あくまで優雅にネ
取り出したるは愛用の裁縫道具、って言ってもフツーのものじゃないのだケド
コレであやしいものをその場に縫い付けていくワ
何があやしいかだケド、飛んだり落ちたりが危ないモノは勿論
なんか嫌な感じがしたらその感覚も大事にしマショ
全体を見ておいたのが活きるといいわネ
目の届く範囲で危険が起きたら
おっきいまち針を沢山投げて呪いの品をピン留めして時間を稼ぐワ
そうしてる間にも、敵を追い込めるでしょうカラ
●射抜くものと幽遠の林檎、車内を鎮圧する
光明とファファ、二人の猟兵は先頭車両へと戻っていた。
「あらゆるものが呪いの罠になりうる今、晴桜宮殿下を無闇に移動させるのは危険だな」
「そうネ、この様々な物が飛び出しそうな車内、一般人と同時に護衛するのもちょっと気が進まないワ」
先頭車両の扉を背にした光明の琥珀の目とファファの金の目が、客車内で浮かび上がり揺れ動く品々を見据えていた。二人は己の得意な道具を構えて、混乱に陥る車内へと向かっていく。
「だが、いつまでも此処に留まっていては奴の思うつぼ。ならば、先に車両の安全を確保しておくとしようか」
「そうしまショウ。ひとまずワタシは呪いの品無力化を狙っていきマショ」
ファファがドレスと揃えた巾着から取り出したのは裁縫道具。ファファの羊角を飾る金の薔薇、それと揃えた意匠が精密に施された縫い針へ糸を通す。優美に袖のフリルを揺らして、すいっと宙を縫うその仕草で、浮かびだそうとしていた座席や棚が動きを止める。彼女の縫った見えない糸で床や壁に縫い止められたのだ。解呪や浄化を得手としない、死化粧師のファファなりの対策である。
その縫い目を掻い潜るように飛んできたナイフや鋭い針は風斬り飛んでいくナイフが叩き落としていく。光明が霊力を込めた投げナイフは小さな危険物も見逃さず、的確に撃ち落として浄化するのだ。その目が呪物を逃すことはない。
「随分と数の多い。影朧め、一体どれほどの罠を仕掛けたんだ。この様子なら、十や二十じゃないだろう」
「本当に。すぐに対応していきマショウ」
「ああ。大きな被害が出る前に、片づけていかなければな」
光明の視線の先には未だに動く設備や物品。一般人に構うことなく浮かび上がるそれらを祓うためにナイフを投擲し、刀に手をかけながら狭い通路を駆け出した。がたつく物を縫い止めながら、ファファが声を上げる。
「動き出しがゆっくりなモノはワタシが縫いますワ」
「了解した。こちらは素早いものを優先しよう」
ファファは先程回った時に目にし列車の様子から大物の位置を把握している。そういったものや、動き出していないものでも嫌な感じがしたならばすぐに縫い止め進む。
光明は縫われる前から飛んでいたり、急に飛びだす呪物をナイフで叩き落とし、一歩先へ後部車両へと向かっていく。
●
老夫婦が揺れ動く車内で己の身を守ろうとしている。
「この、寄るでない! しっしっ!」
「あなた、後ろです!」
「おう、助かる! お前も気をつけてな」
夫が飛び交う小物から妻を庇い、妻は夫の補助をする。けれど彼らの向こうから、勢い良く車内販売のカートが迫ってくる。避けようもないその重い物体から、互いに互いを庇う老夫婦が目をつぶった。
そのすぐ側を風が吹き抜けた。力強くも清浄な一撃はカートを浄化しながら吹き飛ばす。すぐに聞こえるのは、老夫婦には聞き覚えのある声だ。
「怪我はないだろうか」
「あなたは、先程の車掌さん」
退魔刀を抜き放ち、その一閃で呪いを切断した光明を見て夫婦が目を見開いた。けれどすぐに得心したように頷いてみせる。
「おかげで無事ですとも。ありがとうございます」
「すぐにこの列車は鎮圧される。この車両も勿論、もうすぐに。それまで気をつけていてほしい」
「はい、はい。あなたもどうかご無事で」
すぐに飛び交う呪物に向かって走る光明の背に、二人は感謝すべく頭を下げていた。
●
老紳士が飛び交う食器を杖で落とす。けれど、浮かび上がって飛んで来る座席は叩き落とせそうにない。せめて頭を庇うように腕を上げ、目を閉じて耐えようとする。
「……?」
覚悟していた衝撃は来ない。彼が目を開けると、大きなまち針が座席を囲うように突き刺さり、その動きを押さえていた。
「大丈夫カシラ」
「おや……これは、お嬢さんのおかげかな?」
先程挨拶をかわした老紳士にすっと裾を持ち上げ、令嬢らしく優雅に礼をしたファファは微笑んだ。
「お怪我がないようで何よりネ。もう少しでこちらの車両は安全になるカラ、それまでお気をつけテ。もうすぐですのヨ」
「ああ、無事騒動が終わったらお礼をさせていただけるかな。超弩級戦力のお嬢さん」
ぱちりと助けられた礼に器用に片目を瞑り、頭を軽く下げる老紳士にファファは笑みを浮かべて頷いた。
「ええ。勿論デスワ、楽しみにしてマス」
二人、最後尾まで鎮圧するまで被害者も出ることなく。すぐに取って返して影朧の迫る先頭車両まで、戻って行くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『不可思議骨董商『灰原・錦』』
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POW : それはもう、幅広く取り扱っておりますとも
いま戦っている対象に有効な【呪いのかかった商品】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : さて、今回の売り上げは如何ほどになりますかな
【算盤で売り上げを計算する】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ : その不思議、買い取り致しましょう
対象のユーベルコードを防御すると、それを【差し押さえの札が貼られた自分の商品に変え】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
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●怪しき骨董商、遂に姿を表して
晴桜宮に近づけず、仕掛けた呪物の罠も潰されて。もはや逃げ場もなくかくなる上は、と初老車掌――いや、彼に扮した影朧の皮を被ったオブリビオンは偽るのを止めた。
手近な窓を破って屋根を走り、先頭車両の前、運転席の窓を破る。中にいる運転手の首元に呪いの掛け軸を巻きつけながら、先頭車両のドアを開け。
にやりと笑みを浮かべた不可思議骨董商『灰原・錦』は晴桜宮をその手で殺そうと口上を述べる。
「仕入れに来たこの世界の商品、影朧を減らそうと志すお優しい宮様ならば、この状況がまずいのはおわかりですな?」
この運転手を殺されたくないなら、自分の側に来いと誘っているのだ。
ざわつく侍従や護衛を手で抑え、晴桜宮は言う。
「私がこの地位にある上で、帝都臣民に心を配るのは義務であり、権利である。勿論、その運転手も、乗客も。仕える彼らもその内だ」
けれど晴桜宮は動かない。
「同時にその心を無駄にしてはいけないとも思う。故にお前の要求は飲むことはできない」
「ならば列車ごと死なれますかな?」
灰原の言葉に晴桜宮は穏やかに微笑んだ。
「その必要もないだろう。お前そ追い詰めた存在がここには集っているのだから」
そう、ここには猟兵がいるのだ。
====
・運転手は戦闘が始まれば、灰原から開放されますので気にしなくても大丈夫です。乗客も安全です。
・戦場は先頭車両以外にも動けます。側面や屋根を走るアクションも難なくこなせるでしょう。有利な場で戦っていただければと思います。
・晴桜宮は猟兵の皆さんの邪魔にならないように動きます。指示があれば従います。大人しくしてろと言われれば、その通りに。彼はサウンド・オブ・パワーに似た力で仲間を強化したり、ヘヴンリィ・シルバー・ストームに似た力で攻撃と仲間の回復を行えます。
夜刀神・鏡介
大局を見て自身の命を優先するとは。晴桜宮様もなかなか見上げたもの……というより流石は皇族らしい判断というべきか?
神刀を手に灰原と晴桜宮様の間に割り込み
晴桜宮様は自身の安全を最優先にしてもらえれば良し
まだ何か罠が残っている可能性もあるし、一応は先頭車両に残ってもらう方が良いか?
紫色の神気を纏って、参の秘剣【紫電閃】を発動
自身の思考・行動速度を引き上げて踏み込み
車内なので全速力は出せないかもしれないが、それでも十分だろう
敵が余計な事をする時間の余裕は与えずに、呪具を叩き壊しつつ灰原に攻撃
可能な限り列車自体にも被害が出ないように注意……とはいえ命には代えられないので、必要ならば被害を容認する方向
●道を探す者、紫電の如し
「神刀解放」
晴桜宮の判断に鏡介はすぐに飛び出した。神刀【無仭】を抜き放ち、紫の神気を纏って灰原と晴桜宮の間へと一足で踏み入って。無仭を抜きざまに近くの掛け軸を両断する。
(大局を見て自身の命を優先するとは。晴桜宮様もなかなか見上げたもの……というより流石は皇族らしい判断というべきか?)
常よりも九倍の速度で回る思考でちらりとそんなことを思いながら、返す刀で現れた奇妙な像を切り払い。残心解かぬままに目前の妖刀を上から押し切り、くるりと無仭を手の中で反転させて切れ味鋭く呪符を纏めて切り裂いた。黒い髪が視界の端で踊る。
鏡介は紫の神気の軌跡を残しながら、周囲に浮かぶ呪具を晴桜宮に届かぬように一つ残らず切り捨てる。同時に晴桜宮をどう行動させるかも考えた。
鎮圧した車内とはいえ、まだ何か罠が残っている可能性もある。何より晴桜宮の見の安全を最優先にするならば、侍従や護衛のいるこの車両に留まってもらい、不確定要素を減らすほうがいいだろう。ここには最大戦力の猟兵も集まっている。
戦場を俯瞰した将の視点から、鏡介判断した。
「晴桜宮様は自身の安全を最優先に。どうぞこの車内に留まっていただければ」
「承知した」
未だ全速は出せずとも、十二分に素早い刀の軌跡。それを振るいながら鏡介は晴桜宮に指示を出す。同意した晴桜宮視界の隅で確認し、鏡介は一段速度を上げた。
車体を傷つけぬように刀の軌道を計算し、再現なく取り出されようとする呪具を全て払う。
溢れるほどに呪物を取り出してはけしかける灰原は、その様子に顎を撫でながら呟いた。
「ふむふむ。なかなかの使い手の御様子。これは不利ですな」
そう言いながら呪物と同時に何をするというのか、禍々しいそろばんを取り出した灰原。けれど鏡介は何をさせるつもりもない。
もう一つ、速度を上げる。全速を出せぬ狭い車内だが十分だ。瞬くより速く灰原に迫り、指が珠を弾くより先に刀が届く。
「我が刃は刹那にて瞬く――参の秘剣【紫電閃】」
名の通り、紫の雷光の如き一閃が灰原をそろばんごと切り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
◎
【フュウネラル・バレットパレヱド】
無駄な抵抗はやめて人質を解放するんだ。(数発UCを撃ち込む、もちろん人質には無害)
あんまり軽く見ないでもらいたいね、暴徒、影朧、テロリスト、都市を脅かす何人たりと対処するのも即応戦力たる特級パーラーメイドの役目だからね。
呪物なら、ぼくも対応可能だよ、お友達のくれた贈り物のお陰で、呪術を祓うのはぼくの手の内にある、破魔と浄化の力と射撃術の数々にどこまで対応できるかな?
対弾性に優れた呪物でも、属性を切り替えたレーザーや電撃で貫通を狙ってみよう。
悪いけど、ぼくがいる限り、この帝都で悪事は働かないことだよ。
強い相手ならいくらでも経験しているからね。
●特級パーラーメイドが披露するは浄化と破魔のバレットパレヱド
「無駄な抵抗はやめて人質を解放するんだ」
鈴鹿は双式機関銃ナアサテイヤと双式機関銃ダスラを両手に構え、運転手を捕らえる灰原へと発砲した。幾つも音を立てて打ち出される弾丸は運転手を蜂の巣にすることはなく、彼を捕まえる掛け軸の呪いを破るのみ。超攻葬送掃射乱舞で邪な呪いを破ったのだ。
「おや、思い切りのいいお嬢様で」
たらりと垂れ下がる掛け軸に嗤いながらそんな台詞を言う灰原に、鈴鹿は機関銃を突きつける。解放された運転手が逃げるのを追いかける呪符を過たず撃ち抜いた。
「あんまり軽く見ないでもらいたいね、暴徒、影朧、テロリスト、都市を脅かす何人たりと対処するのも即応戦力たる特級パーラーメイドの役目だからね」
友のくれた白鈴晶燈の灯りが鈴鹿の弾丸にいっそうの浄化と破魔の力を宿す。侍従のお仕着せを翻し、鈴鹿は二丁の機関銃を構え、湧き出す呪物達へと斉射した。幾つも幾つも飛び出す邪を祓うのみの弾丸が飛び出ては呪物を祓い清めていく。同時に灰原の足元を狙い牽制した弾丸は、狙い通りに灰原の動きを止めていた。
銃弾のパレヱドの向こうでは、幾つも呪符や掛け軸、刀や鎌が呼び出される。けれど鈴鹿の迷いない射撃術はそれらを逃すことなく、呪いのみを撃ち抜いた。勝利の凱歌を告げるかのような銃音に重なり、凛としたパーラーメイドの声が戦場へと通っていく。
「悪いけど、ぼくがいる限り、この帝都で悪事は働かないことだよ。強い相手ならいくらでも経験しているからね」
どんな世界のどんな強敵でも諦めず立ち向かい。様々な経験と宝物を得て鈴鹿はこの場に至る。
目の前の灰原がどんなに強いオブリビオンであっても同じこと。特級パーラーメイドの役目を果たして明日へと歩いていくのみだ。
如何に邪悪な骨董商でも、車内に呪物を使ったあと。補給もできず、再利用しようにも祓われてしまっては使いづらい。幾つも撃ち込まれる弾丸が浄化と破魔を宿しているために余計にだ。
そのような状況で無限に湧き出るはずもなく、灰原の呪物の波が尽きた一瞬、鈴鹿の一斉掃射が灰原の形を穿ち、その力を祓うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
高天原・光明
◎○
姿を現したな影朧。潜入、呪いの罠と続いて今度は人質か。運転手を解放させないと、事故を起こすのも時間の問題だろうが、そう上手くはやらせないさ。この一発、防げるものならば防いでみるがいい。
【UC:死角より来たる魔弾】(WIZ)を発動、まずは運転手から離れて貰うぞ。桜學府謹製の〈呪殺弾〉を装填した小銃を1発、纏わせた霊気で弾道を変え、首に巻かれた掛け軸を断ち切ろう。勢いそのまま弾丸を操り〈追撃〉、奴を車両の屋根へ追い立てるぞ。相対したなら、〈早業〉の一撃を食らわせてやろう。
骨董商、貴様の終着は此処だ。殿下も乗客も、これ以上貴様の謀に付き合わせない。貴様の相手は、俺たち猟兵だ。
蒼月山・翡翠
◎〇
殿下には指一本触れさせません!
灰原が算盤を取り出したところをはたき落とし、【ロープワーク】で拘束します。
晴桜宮殿下に強化していただいた上で、算盤を再び手に取る前に【破魔】の力を籠めた斬撃を叩きつけます。
宮様も流石です!
御園・桜花
◎◯〆
「随分怪しそうな事を仰っていらっしゃいましたけど…貴方も影朧ですよね?」
首傾げ
「此の世界…元は何方の方です?」
「貴方の願いが数々の品の蒐集なら。お手持ちの品と貴方、全てを切り刻んで差し上げます。更なる蒐集を願い、人に転生していらっしゃい」
UC「シルフの召喚」
品ごと敵を切り裂き一気に敵に肉薄
桜鋼扇でぶん殴り続ける
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
シルフには商品が無くなる迄切り裂くよう頼んでおく
「宮様を狙ったのは、恨みと言うより品として手に入れたかったからではないですか?貴方の技は、人の命を元に、その方が最も心を残した品として人の魂を蒐集する技に見えますもの」
戦闘後は全ての転生願い鎮魂歌歌う
ファファ・メーリィ
◎◯
宮様は勿論のこと、人質も無事のようネ
ワタシも加勢致しマショ
うふふ、下手な演技だったワネ
変装して潜り込むならもっと変装する対象を勉強しなくちゃネ
業を煮やして軽率に姿を現しちゃう所も向いてないんじゃないカシラ
攻撃力は然程ではなくても鬱陶しい戦い方なら得意ヨ
縫い針であちこちに縫い付けては邪魔をして、
まち針でちくちくと刺してしまうノ
ワタシの力を真似てみるならそれも一興ネ
彼が一体どんな格好を思い描くのか、ちょっとだけ興味があるワ
ええ、ちょっとだけ
ワタシも含めて幾重の護り、今更加速だけで突破はさせないシ
もし万一飛行で外に逃げられてモ
宮様が強化してくれれば追いつけそうだもノ
万一の際は宜しくお願いしますワ
●かくして猟兵は邪なる骨董商を撃破する
「姿を現したな影朧。潜入、呪いの罠と続いて今度は人質か。随分品が豊富なようだ」
「褒めていただき感謝の極みでございます。何か気に入った商品はございましたかな?」
小銃を構える光明の言に、運転手を抱えたままで骨董商は慇懃無礼な態度で頭を下げた。
そんな彼に、品を仕入れに来たと不可思議なことをいう灰原に桜花は首を傾げる。
「随分怪しそうな事を仰っていらっしゃいましたけど……貴方も影朧ですよね?」
「さて、この世界ではそう言われているのでしょうなぁ」
「此の世界…元は何方の方です?」
「さてはて。商売人としては情報も商品の一つ。もし知りたいのでしたらお代を頂戴しなくては」
そう言う灰原の周囲には、幾つもの呪物が浮かび上がる。それらが猟兵へと向けられ、灰原本人は算盤を取り出して手の中でじゃらりと鳴らす。
「お代はそちらの宮様のお命で十分にございます」
「宮様には指一本触れさせません! 宮様、お力を!」
灰原の指が算盤を弾く前、びゅんっと伸びた紫水晶の蔦が算盤を弾き飛ばす。そのまま蔦はくるりと灰原を拘束した。同時に響いた翡翠の声に応え、晴桜宮の落ち着いた声が通る。
「力僅かな私ではあるが、君達に願う。どうかこの列車を、私を、臣民を守ってほしい。想いを運ぶ列車が悲劇の舞台にならぬよう、民が心安く過ごせるよう。心より願っている」
落ちついた声が猟兵達へと届く。その言葉には共感できる、なぜなら猟兵は晴桜宮を守り、そして乗客も守りにきたのだから。
「余計なことをされますなぁ。素直に宮様が死んで下されば、乗客も侍従も護衛も猟兵も、皆様無事にすみましたものを」
「アラ、よく回るお口デスノネ。最初から乗客の方も狙っていたのでショウ?」
くすくすと口元を手で覆い、上品に笑いながらファファは金の目で灰原を見据えた。そのまま余裕の表情の灰原へと語りかける。
「うふふ、下手な演技だったワネ。目線も足取りも車掌らしくなかったモノ。変装して潜り込むならもっと変装する対象を勉強しなくちゃネ。業を煮やして軽率に姿を現しちゃう所も向いてないんじゃないカシラ」
「はは、これは手厳しいですな。ならば結果良ければ全て良しとさせていただきましょう。ここまで使用した品々の経費は回収したく存じます」
「抜かせ。この一発、防げるものならば防いでみるがいい」
このまま運転手を確保されていると、事故を起こすのも時間の問題。それも灰原の狙いなのかもしれないが、光明が許すはずもなく。運転手をさらに拘束しようと伸びる掛け軸に狙いを定め、光明は狩人の小銃を引き放つ。
「殿下も乗客も、これ以上貴様の謀に付き合わせない。貴様の相手は、俺たち猟兵だ」
一発の弾丸が飛びゆく直線から曲がって軌道を変え、運転手の喉元に絡みつく掛け軸を断ち切った。勢いを落とさぬ弾丸は、拘束された灰原の足元や体を狙い、そのまま窓の方へと追い立てる。
灰原が蔦を引きちぎり、このまま落ちて逃げを打つか、と考えるも下から弾丸が迫り、側面を辛うじて掴めば斜め下から追いかけてくる。百を超えて曲がる弾丸に追いたてられ、灰原は上に逃げるしかなくなった。
車両の上に膝をついて着地した灰原に先回りして屋根に上がった光明の早業が唸る。相対した瞬間に放たれた弾丸は灰原の腹部を過たず撃ち抜いた。さらに翡翠と薄紅、二色の桜が迫る。
翡翠は翠玉椛を瞬時に抜き放ち灰原に切りつけ、桜花は桜鋼扇で一直線に殴りつけた。吹き飛びながらも展開された呪物には、桜花が呼び出したシルフが対応する。掛け軸も呪符も呪いの刀も風の刃が切り裂いて、はるか後方へと小さな破片が散るばかり。
「貴方の願いが数々の品の蒐集なら。お手持ちの品と貴方、全てを切り刻んで差し上げます。更なる蒐集を願い、人に転生していらっしゃい」
風の刃が灰原を切り刻むその最中、桜花は桜鋼扇を構えながらふと尋ねる。桜葉色の瞳が眇められた。
「宮様を狙ったのは、恨みと言うより品として手に入れたかったからではないですか? 貴方の技は、人の命を元に、その方が最も心を残した品として人の魂を蒐集する技に見えますもの」
「ふふ、そう見えますかな? ですがそれは結果論。私は呪物を収集し商うモノでございます。ただ恨み辛み、呪いの篭った品にはそれが多いというもの。狙ったのは先に言ったとおり、晴桜宮の行動が影朧を仕入れる邪魔になったと判断したまでのこと」
切り刻まれながらも灰原は差し押さえの札を取り出した。ふわりと和柄ドレスに店頭ポスターのような多色刷りの背景を背負ったファファに札が飛ぶ。ぺたりとくっついた途端、灰原の破れた衣服がさらに上等な仕立てに変わり、様々な呪物の詰まった商店が背景となって現れ、その足が浮かんだ。ファファの未実装Inspirationを写し取ったのだ。
「ほう、これは便利。では失礼いたします」
「アラ、まだ貴方の出番は終わってなくテヨ」
飛翔して移動しようとする灰原の動きが止まる。既に彼の服の裾は、ファファの糸によって車両に縫い付けられていたのだ。同時に大きくなったまち針が灰原の体を突き刺していく。翡翠の紫水晶豆の蔦も巻き付いて、その動きは封じられた。
「宮様の元には行かせません!」
「アナタの終幕はこれからデスノヨ」
「ああ。骨董商、貴様の終着は此処だ」
新たに湧き出す呪物も命を受けたシルフが切り裂く。動けず守りも得られず、ファファのコードのコピーで服は直ったように見えても、今までの傷が癒えることはなく。灰原は光明の小銃から放たれた弾丸の一撃でその存在を保てず消えた。
風を切る車両の上、桜花の鎮魂歌が流れゆく。呪われた品の、骨董商の、すべての転生を願う、歌だった。
●晴たる桜の宮
弾丸列車は猟兵の活躍もあり、無事に終着駅へと到着した。晴桜宮はもちろん乗客も乗務員も無事、侍従や護衛にも怪我はなく。
晴桜宮は猟兵に軽く頭を下げた。
「貴殿らのおかげで無事にたどり着くことができた。感謝する。それぞれの力、とても頼もしく思う。またいずれ縁があれば、その時はどうか助力頂けるとありがたい」
そう言う晴桜宮は、名前の通り晴れ晴れした笑顔を浮かべていた。
大成功
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