●
「漸(ようや)く此処まで辿り着いたな」
男の安堵の吐息の後に言葉が続いた。
小規模の隊商(キャラバン)が辺境の土地を人目を避けながら進んでいた。
蒼褪(あおざ)めた月光が荷馬車の列を洗っていた。
荒涼とした原野に無数の砂岩が転がっていた。
“びゅう”という音をたてながら荒野を渡る風が砂塵を巻きあげていた。
乾燥した大気に枯草の臭気が凝(こご)っていた。
「もう少しだ。腹を空かせた子供たちが待っているぞ」
御者の手綱を握る手にも力が籠った。
辺境の土地で飢えに苦しむ子供たちの喜ぶ顔が脳裏を過(よぎ)った。
あと少しで長旅の苦労が報われるのだと思った。
その時だ。
「おい。何か聞こえないか」
隊商の護衛を務める戦士が油断なく武器を構えた。
一行の間に緊張と恐怖が蔓延した。
「やめてくださいよ。旦那。本当なら二日の道程(みちのり)を、わざわざ十日も掛けたんですよ。スリーズの険峻を越えてね。おっかない吸血鬼(ヴァンパイア)の領地を徹底的に避けたんだ。此処まで来て……嫌ですよ。私は。旦那の空耳ですよ。そうでなきゃ狼の遠吠えか梟(ふくろう)の夜鳴きか何かですよ」
「いや。確かに聞こえるぞ。音楽だ。楽器の音色だ!」
男たちの悲鳴に擦弦楽器(チェロ)の低音が重なった。
何時の間にか美貌の女が隊商の進路を塞いでいた。
女の長い髪が緩やかに波うっていた。
手にした透明な擦弦楽器が題名のない鎮魂歌(レクイエム)を奏でていた。
「ごきげんよう。わたくしの知る限り此の辺りに人里は存在していない筈ですけれども。さて。貴方たちはその積荷を何処へと運んでいるのでしょうか」
女が演奏の手をとめて隊商へと視線をむけた。
透明な擦弦楽器を握る女の手の甲には禿鷹の眼の紋章が刻まれていた。
女の唇の端が“にぃ”と歪(いびつ)な三日月のように引きあげられた。
蛇を前にした蛙のように行商人たちが身を竦めた。
護衛の戦士が勇気を奮いたたせて前に進みでた。
「ほほほ。このような辺境の地に隠れ家を構えるなどと姑息なことを。ことごとくを狩りたてて我が主への供物にして差しあげますわ。貴方たちが先触れです。地獄に仲間たちの席をとっておきなさいませ」
「死ぬのは貴様だ! 闇の救済者(ダークセイヴァー)の剣を侮るな!」
擦弦楽器の演奏者は戦士の振るう剣を前にしても身を翻そうとさえしなかった。
表情に嘲笑を貼りつけたまま海原を思わせる紺碧の瞳を僅かに細めた。
「ぐ、あぁ
……!?」
それだけで剣を振りあげた護衛の戦士も、行商人の一行も、突如として見えない縄で首を絞められているかのように藻掻(もが)きだした。
自らの首を掻き毟る男たちの口から“ごぼごぼ”という音をたてて多量の水が溢れだした。
「ほほほ。わたくしが奏でる鎮魂歌を聴いたのです。貴方たちはすでに水底へと沈んでいたのですわ」
女は陸地にいながら溺れる者たちの苦悶の唱和に聞き惚れた。
やがて荒野に倒れ伏した者たちの身体から心臓の鼓動が絶えたことを確認すると、透明な擦弦楽器が再び妙なる旋律を奏でた。
溺死した男たちの亡骸が“どろどろ”と溶解して骨さえも残さずに消滅した。
かわりに襤褸(ぼろ)を纏う亡霊たちが鎮魂歌を奏でる女の周囲に出現した。
「苦シイ……助ケテ……」
「息ガ出来ナイ……冷タイ……」
「水ダ……水ノ音ガ……嫌ダ……アノ曲ヲ止メテクレ……」
女は亡霊たちの苦痛に満ちた懇願に陶然(とうぜん)と酔い痴れた。
「さあ。わたくしを貴方たちの根城へと案内しなさい。わたくしを次なる聴衆のもとへと導くのです」
女は亡霊たちに先導されながら荒野を進軍した。
●
そこは荒野に朽ち果てるままに遺されていた古代の神殿だ。
風雨と年月に削られた石造りの建物の其処彼処(そこかしこ)が木材で補強されていた。
粗末な造りの物見櫓(ものみやぐら)では見張りの兵が空腹を紛らわせるために木の根を齧(かじ)っていた。
傷病人の看護をしている修道女の隣で、痩せた子供の腹が“くう”という可愛らしい音をたてた。
「お腹が空きましたか? 御免なさいね。もう食べるものが何も遺っていないの。でも、もう少しの我慢ですよ。きっと今日にでも美味しい御馳走が届きますからね」
「本当に? シスター。ご飯を食べたら妹の怪我も治るの? 元気になるの?」
「ええ。きっと良くなりますよ。私が嘘をついたことなんて一度だってないでしょう?」
「うん。そうだよね。皆もすぐに元気になるよね。そうしたら妹とまた一緒に遊ぶんだ」
子供の無邪気な声に、修道女は努めて明るい微笑みを返した。
邪悪な吸血鬼(ヴァンパイア)の支配から逃れて辺境に隠れ潜んだ抵抗者(レジスタンス)の食料はすでに尽きていた。
危険を冒して近くの街まで食糧を買いつけに行った仲間が戻ってくる気配はなかった。
抵抗者たちの胸中には焦燥と最悪の予感とが首を擡(もた)げていた。
彼らが縋る一縷(いちる)の希望は時を置かずして絶望に塗り潰される運命にあった。
亡霊を従えた鎮魂歌(レクイエム)の演奏者が間近にまで迫っていた。
●
「闇の救済者(ダークセイヴァー)の身に危難が迫っておる」
葛葉・御前(千年狐狸精・f36990)は未来を予知した。
白毛白面の妖狐の化身は歴戦の猟兵(イェーガー)たちをグリモアベースに参集させた。
「闇の救済者とはいうものの実態は幼子と傷病兵を抱えた小規模の集団じゃ。吸血鬼(ヴァンパイア)の眼を逃れて辺境に隠れ潜んでおる。どうやら食料が尽きたことで調達のために幾人かが危険を冒して拠点の外にでたようじゃの。そこを補足されたようじゃ」
葛葉御前が事件を予知した時にはすでに犠牲者がでていた。
腕利きの戦士が護衛として同行したようだが、相手は紋章に寄生された強化型オブリビオンだ。
猟兵であっても苦戦を免れない強敵だ。
戦士や行商人の魂は死後も続く永遠の苦悶に捕らわれたまま、そのオブリビオンに使役されていた。
「敵は水死を操る死響楽団、ヴィオローネ・チェロ。水葬のチェロを奏でることにより旱魃(かんばつ)の地でも聴衆を溺死させるオブリビオンじゃ。自らが溺死させた者たちの亡霊を引き連れて闇の救済者が隠れ潜む拠点に迫っておる。この者の手の甲には寄生型オブリビオンである禿鷹の眼の紋章が刻まれておるの。対象の肉体ごとユーベルコードを捕食するという厄介な紋章じゃ」
猟兵たちはヴィオローネ・チェロに囚われた亡霊たちを解放するとともに、紋章で強化されたオブリビオンを倒して、闇の救済者を護らなくてはいけないのだ。
「ヴィオローネ・チェロが闇の救済者の拠点を襲撃するまで幾許かの時がある。拠点に残っておる戦士たちは今も飢えに苦しんでおるようじゃ。育ち盛りの子供や傷病人もおる。腹が減っては碌な戦働(いくさばたら)きは望めぬじゃろう。御主たちが精のつく料理でも振る舞ってやるがよいじゃろう」
幸いなことに葛葉御前のテレポートであれば十分な量の炊き出しを行えるだけの食料を持ち込むことも可能だ。
葛葉御前の掌中にあるグリモアが霊験あらたかな光輝を放ち、周囲を照らしあげた。
「征くぞ。猟兵たち。過去が奏でる鎮魂歌(レクイエム)に終止符を打つのじゃ」
能登葉月
能登葉月です。
よろしく御願い致します。
エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)様。
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)様。
幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)様。
3名のフラグメントを採用させて頂きました。
この場を御借りして御礼を申し上げます。
皆様の御参加を御待ちしております。
第1章 日常
『パンがないなら…』
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POW : 肉を食え!
SPD : 野菜を食べよう
WIZ : お菓子を食べれば?
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ソルドイラ・アイルー
最初に申しておきましょう。吾輩の料理スキルは壊滅、とまではいかずともまあ低い! 低いです。鍋なんて余裕で噴き零します。ですがそんな吾輩でもレシピがあればきっと恐らくできるでしょうきっと!
吾輩は野菜たっぷり肉団子スープのレシピを知り合いから授かりました。鍋を使った煮込み料理がいいんじゃないかと勧められたのでね。食材は土人形を使って運べるだけ持ってきましたとも
しかし、まあ。ええとですね。紙面に記された文字は読めるのですがね……? 吾輩が調味料を一つまみすると、手に取る量が多い気がしまして。……この場合は一体どうすれば!?
……すみませんシスター!! 炊き出しを手伝ってくださると吾輩とても助かります!
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土塊で肉体を構成したバイオモンスターが辺境の土地に転移した。
ソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)は荒涼とした大地に打ち捨てられた神殿の跡地を見上げた。
物見に従事していた闇の救済者(ダークセイヴァー)の戦士が前触れもなく出現したソルドイラの姿に警戒を強めた。
「敵ではないであります。吾輩は猟兵(イェーガー)。ソルドイラ・アイルー。皆様のために食料を持参いたしました。開門を願います」
ソルドイラの周囲では勤勉な土人形たちが食料の詰め込まれた樽や木箱を運んでいた。
敵ではないという言葉に安堵した物見の兵は急ごしらえの門を開いて、ソルドイラを本拠地の中へと招き入れてくれた。
食料が到着したという報告を聞いて、戦士たちや傷病人の看護にあたっていた修道女、それに子供たちが次々に顔を見せた。
「吾輩は精のつく野菜と肉団子のスープの調理法と材料を持参してきました。しかしです。最初に申しておきましょう。肝心の吾輩に料理の心得がありませぬ」
男らしく胸を張るソルドイラの言葉に修道女のひとりが目を瞬(しばたい)いた。
「ソルドイラ様でしたか。それでは、そのスープの調理法をご教授いただけますでしょうか。わたくしどもで調理は担当させて頂きます」
「それはかたじけない。吾輩も鍋の番くらいはさせて頂きましょう。噴き零さぬという自信はありませぬが、きっと、大丈夫でしょう」
「い、いいえ。そんな。食料を運んでくれただけでも有り難いのです。このうえは、そこまでソルドイラ様のお手を煩わせるわけにはいきませんわ」
辺境の荒野では食料もそうだが水はそれ以上に貴重な資源だ。
出来れば一滴でも無駄にはしたくないという本音を、しかし心優しい修道女は言葉にすることができなかった。
「じゃあ、おっきなおじちゃん。ボクと一緒にお鍋の番する? ボクいつもシスターの料理を手伝っているから得意だよ」
「おお。それは偉いですな。それでは一緒にシスターのお手伝いをしましょう」
ソルドイラは幼い子供の申しでを快諾した。
修道女たちは久しぶりの料理だと張りきって手際よく調理の支度をした。
ソルドイラも子供たちと鍋の番をしながら、スープの具材である馬鈴薯(ばれいしょ)の皮剥きという大役を仰せつかった。
「むぅ。吾輩の手には包丁が小さすぎてですな」
「おじちゃん不器用だねー。ほら。こうするんだよ」
「おお。すごいですな。少年は将来、立派な料理人になれますぞ」
辺境の荒野に久方ぶりに子供たちの朗らかな声が響いた。
やがて野菜と肉団子のスープの香(かぐわ)しい香りが漂いだすと、誰もが空腹を満たすために大鍋の周囲へと集まりだした。
「美味しい! これ。この馬鈴薯。ボクとおじちゃんが皮剥きしたんだよ!」
「ははは。恥ずかしくも形が不揃いなのが吾輩のほうでして。いや。包丁の扱いでは、まるで敵いませんでしたな」
頭を掻くソルドイラの横で、少年が誇らしげに胸を張っていた。
子供たちの笑顔と栄養満点のスープが、飢えに苦しんでいた闇の救済者たちの心を満たした。
大成功
🔵🔵🔵
厄病衆・仁形
【SPD】
なんやえらい痩せこけた、まるで野良犬のような子ぉばかりやね。
せやけど、くふふ。迫る死(きょうふ)に抗うその目付き、嫌いにはなれへんなぁ。
せやけど残念。妾も料理なんてやったことあらへん、包丁なんて握ったら怪我するんがオチやわ。
教えられるんは…そうやねぇ、食べれる草の見分け方くらいやろか。
近くに生えてる植物を妾が食べて【毒耐性】【激痛耐性】で毒の有無や薬草になり得るものを子供に教えるんよ。
くふふ、いわゆる毒味役(いけにえ)やね。
これやったらすぐには腹いっぱいにはならんけど、少しは永く生きられるさかい覚えておいて損はあらへんよ。
●
艶(なま)めかしく着物を着崩した童女の周囲には痩せ細った子供たちが集まっていた。
厄病衆・仁形(旧き神・f20312)は粗末な衣服を纏う子供たちの姿を見回してから蠱惑的(こわくてき)な微笑みを浮かべた。
「くふふ。まるで野良犬のような子ぉばかりやね。せやけど。迫る死(きょうふ)に抗おうとする眼は好みやわぁ。可愛らしいなぁ」
仁形の赤い瞳に見詰められた少年が、その深い色合いに魅せられたように頬を朱色に染めていた。
「本当に食べられるものを教えてくれるの?」
少年は疎らに雑草が生えるだけの荒野を見回してから困惑したような表情を浮かべた。
「勿論や。幾らでも教えたるよ。たとえば。この足元の草。茎は固ぁくて食べられへんけど。新芽のとこは柔らかいんよ。毒もないし。根っこは乾燥させたら薬湯(やくとう)にも使える。便利なもんやろ」
仁形の指先が先端の新芽を摘みあげて“ぷつり”と千切ると、それを口許へと運んだ。
子供たちも見様見真似で草の新芽を口にした。
「んっ。食べられるけど。あんまり美味しくない、かも……」
「そらねぇ。何も料理しとらへんし。食べられるいうだけで、美味しいもんでもないからなぁ。けど。食べられるいうんが判るだけでも随分と違うもんやからね。覚えておいても損はあらへんよ」
「じゃあ、料理をすれば美味しく食べられる?」
「さぁ。妾は料理とかやったことあらへんしね。坊(ぼん)が色々と試してみたらええんやない。これなら簡単に採れるやろし」
「そうなんだ。じゃあ僕が美味しく料理して、お姉ちゃんにご馳走してあげるね」
仁形は子供の無邪気な申し出に“くすくす”と微笑んだ。
「それは愉しみやわぁ。そやね。もしも坊が本当に美味しいもん食べさせてくれたら。その時は、妾がおかえしにええことしたげよか」
「いいこと?」
「くふふ。そう。ええこと。蕩(とろ)けてしまうかもしれへんことや」
仁形の柔らかな掌が少年の頬を撫でた。
妖艶な眼差しに少年の鼓動が早鐘のように高鳴った。
少年は着崩れた着物から覗く白肌に吸い込まれそうになる視線を慌てて彷徨わせた。
「可愛らしいなぁ。その目。曇らせることなく大きくなるんよ。妾は、その時が来るんを愉しみにしとるからね」
仁形の無垢な少年たちを虜(とりこ)とする妖艶な微笑みを、蒼褪めた月光が照らしだしていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『その地に縛り付けられた亡霊』
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POW : 頭に鳴り響く止まない悲鳴
対象の攻撃を軽減する【霞のような身体が、呪いそのもの】に変身しつつ、【壁や床から突如現れ、取り憑くこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 呪われた言葉と過去
【呪詛のような呟き声を聞き入ってしまった】【対象に、亡霊自らが体験した凄惨な過去を】【幻覚にて体験させる精神攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 繰り返される怨嗟
自身が戦闘で瀕死になると【姿が消え、再び同じ亡霊】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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厄病衆・仁形
【SPD】
飢えた亡者共がぞろぞろと。
復讐も成仏も出来ずに唯々嘆くばかり。
可哀想。嗚呼カアイソウ。
その恨み憎しみ、いったいどんな味(なかみ)なんやろか。出涸らしは最後まで愉しまんとなぁ。
SPDの攻撃を敢えて受けて【呪詛耐性】と【狂気耐性】で軽減させる。
苦痛(いたみ)も、幻覚(くるしみ)も月並み程度。本当の呪詛(ことば)の重みを教えてあげよか。
【現解・無間地獄誘言霊】にて「焼死」と言葉にする。
怨念の込めた言霊は火となり、受け取った亡霊を炎に包む。
其れを成し得たとき、少女はにたりと笑って答えるだろう。
「くふ、これで水の音が恋しゅうなるやろ。」
アドリブ歓迎
●
「敵襲!」
物見櫓(ものみやぐら)の兵が緊張に張り詰めた声をあげた。
戦士たちが慌てて武器を手にとると、それぞれの持ち場へと散っていった。
「傷病者と子供たちを奥へ! 必ず死守するぞ!」
俄(にわ)かに慌ただしさに包まれた闇の救済者(ダークセイヴァー)たちの砦を、オブリビオンの大勢が包囲していた。
苦悶の声をあげる亡霊たちを麗しい擦弦楽器(チェロ)の音色が従えていた。
「ほほほ。おいきなさい。憐れなる聴衆たち。我が主に歯向かう愚か者どもを、わたくしの前に引き摺りだすのです」
透明な擦弦楽器を奏でる女の言葉に、亡霊たちが進軍を開始した。
「苦シイ……援ケテ……援ケテ……」
闇の救済者たちも決死の覚悟で剣や弓をとって闘うも、亡者の群れを相手に苦戦を強いられている様子だった。
闇の救済者とオブリビオンが争う戦場に、鮮やかな着物を、しどけなく着崩した童女が舞い降りた。
厄病衆・仁形(旧き神・f20312)は“くすくす”と微笑みながら亡霊が譫言(うわごと)のように繰り返す怨嗟の呟きに身を投じた。
「くふふ。飢えた亡者どもがぞろぞろと。復讐も成仏もかなわずに嘆き続けるばかり。可哀そうやね。嗚呼。カワイソウやわぁ」
童女の姿をした仁形の纏う底知れぬ闇の気配を前にして、亡霊たちが動きを止めた。
「その恨み。その憎しみ。その味(なかみ)はどれほどやろか。最後まで愉しまんとな。勿体ないわぁ」
仁形の血色の瞳に見詰められた亡霊が末期の苦悶を声なき声へと変えて、その呪詛を周囲一帯に撒き散らした。
自らの死を強制的に体験させるという精神を蝕む亡霊たちの呪言。それに身を委ねた仁形は冷たく暗い底なしの水の中へと沈んでいった。
「冷タイ……深イ……暗イ……何処マデモ沈ミ続ケル……」
呼吸さえできずに、体温は一秒ごとに奪われていく。水中の牢獄の虜囚となってなおも、仁形は嫣然と微笑んでいた。
「なんや。やっぱり出涸らしやなぁ。苦痛(いたみ)も幻覚(くるしみ)も月並み程度。妾が本当の呪詛(ことば)の重みを教えてあげよか」
仁形の言葉と同時に光のない水中を鮮やかな炎の色が染めあげた。
揺らめく炎は次第に勢いを増して火炎に、そして業火へと成長を遂げた。
「もう水死にも飽いたやろ。妾から『焼死』の贈り物や。安心して逝くとええよ」
仁形の唇の端が“にたり”とつりあがり、酷薄な笑みを形作った。
「嗚呼ァ……熱イ……! 燃エル、燃エル……! 此レデモウ、水、カラハ……」
荒れ狂う灼熱の渦が亡者たちの怨嗟を焼き払った。
仁形が水底の幻影から現実へと帰還すると、その周囲には、堆(うずたか)く積もった灰が幾つもの人型を形成していた。
荒野を渡る無慈悲な風が、人型の灰の山を吹き散らした。
「くふ、これで水の音が恋しゅうなるやろ」
大成功
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ソルドイラ・アイルー
荒れた土地でなくとも水とは貴重な資源。その救いになるはずの水に襲われ、苦しめられればさぞ銷魂でありましょう
しかし、闇の救済者たちまで巻き込むのはやめなさい。命じられ意志を奪われても、お互い求めるのは清い水でありなさい
まあ吾輩砂しか吐けませぬが。いやはや無力を痛感しますね! せめてもの施しです。亡霊の言葉を聞き入れましょうか、自然体で。攻撃の意志を持たず弛緩としましょう
さてさて封じるが先か無効が先か。此方が先なら土人形が排出されますが、出てこぬなら吾輩一人で剣を振り翳せばよい事。決定打には欠けるでしょうが、ならば何度でも剣を叩きつけるまで
日頃団体行動を命じている身、団体戦は得意のつもりであります
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亡者の群れが、自らの無念を怨嗟と共に吐きだしながら荒野を徘徊していた。
ソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)は沈痛な面差しで、その姿を見詰めていた。
「水は貴重な資源。それは、この荒れた土地では猶更のこと。だというのに、救いとなるはずの水に襲われて、苦しめられ続けるとは。さぞかし無念でありましょう」
乾いた土塊の皮膚をもつバイオモンスターであるソルドイラに、亡者の嘆きを鎮める手段はない。
ただ己の無力を痛感するばかりだ。
「せてもの施しです。我輩が、貴方たちの無念を聞き届けましょう!」
ソルドイラは闇の救済者たちを襲う亡者の群れに立ち塞がると、構えを解いて、その嘆きを受けいれるかのように腕を広げた。
「莫迦か! 何をやっているんだ! そいつらは亡霊だ。もう俺たちの声は届かない! はやく武器を構えろ!」
無防備な姿を晒すソルドイラを、剣を手にした戦士が叱りつけた。
「此方の声が届かないことは、彼らの嘆きに耳を塞ぐ理由とはなりませんな。我輩には、貴方たちの無念がどれほどのものかは判りませぬ。ですから。せめて聞かせて頂きたい。そして。願わくば、かつては同じ旗と志しのもとに肩を並べた者たちが争うことのないように」
怪物として想像されたソルドイラの面(おもて)に慈愛の微笑が浮かぶのを、闇の救済者と、亡者たちは確かに見た。
「苦シイ……助ケテ……水ガ……冷タイ……」
亡者の嘆きが精神を刻む死神の刃とかして無防備なソルドイラの魂を斬りつけた。
突如として水底へと投げだされる感覚とともに身体中の酸素が奪われる。
肺の奥まで冷たい水に満たされて、溺死する苦しさと恐怖に精神が支配される。
しかし。
「嗚呼……嫌ダ……水ハ……溺レルノハ、モウ……」
ソルドイラが目を開くと、そこは乾いた風が渡る荒野の只中だった。
冷たく暗い水底の夢は何処かへと消え失せていた。
闇の救済者たちが、呆然と、臨死の幻影から帰還したバイオモンスターの姿を見つめていた。
その周囲には呪詛を吐きだすことを止めた亡者の群れが立ち尽くしていた。
亡者の姿が陽炎のように揺らめいて、月光に溶けるように消えていく。
亡霊が姿を消した場所に、“どさり”という音をたてて、乾いた土の塊が転がり落ちた。
「貴方たちの安らかな眠りが今度こそ誰にも荒らされることのない様に。我輩、心から祈りますぞ」
ソルドイラの鎮魂の祈りが荒野の風に乗せられた。
大成功
🔵🔵🔵
イスラ・ピノス(サポート)
セイレーンの冒険商人×ゴーストキャプテン、16歳の女です。
普段の口調は(僕、あなた、~さん、だね、~だよ、~の?)、
商売とか交渉でのお仕事向きは(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
ユーベルコードは使えそうなものはどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
損得勘定や意識は強いので『全体の被害を減らすこと>より大きな結果を出すこと』の優先度で出来る限り頑張ります!
基本現地の人や敵性でない動植物・建造物は大事にします
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
セイレーンの冒険商人が荒野を駆け抜けた。
イスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)は不死鳥のオーラを放ち、呪詛に満ちた嘆きを繰り返す亡者たちを魔炎に包みこんでいく。
「可哀そうだけど、こうなったら仕方がないよね。少しでも早く解放してあげるね!」
豊かな青い水髪をうちふるいながら、闇の救済者へと襲い掛かる亡霊の前に立ち塞がった。
「大丈夫? まだまだ来るよ。油断しないでね」
「ああ。助かったぜ。そっちもな、お嬢ちゃん」
全身に、軽やかに弾けるソーダのオーラを纏う快活な笑顔は、戦場にあっても共に轡(くつわ)を並べて戦う仲間たちに活力を齎した。
「オォ……オオォ……」
亡霊たちの身体が呪詛そのものと呼べる冷たい霧に転じて、荒野を駆け回るイスラを捕えようとして殺到した。
それは捕らえた者を亡者と同じ苦しみへと引き摺り込む臨死体験への招待状である。
溺死の苦しみを嘆く亡霊たちが誘うものは、暗く冷たい水の底だ。
「残念。僕は溺れないよ。セイレーンにとって水は故郷だからね。貴方も、もう安らかに眠る時だよ」
放たれた不死鳥の翼が、行き場のない亡者の怨念を焼灼する魔炎に包み込んだ。
イスラは、炎の中に崩れる亡者の魂が、温かな不死鳥の翼に抱かれて、天に昇っていく姿を見たような気がしていた。
成功
🔵🔵🔴
徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!
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「死者の無念を弄ぶとは。この家光。悪の所業は決して見過ごせぬ!」
静かな怒りに燃える徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)の愛刀、大天狗政宗の閃きが、彷徨う亡者を、その嘆き諸共に斬り裂いた。
蒼褪めた月明りに美しく濡れた名刀の刃は、亡者の呪詛に塗れても曇ることはない。
一太刀ごとに自らの死の恐怖に捕らわれた亡霊たちが解放されていく。
闇の救済者と群れなす亡者たちが激突する最前線で、我が身も顧みずに刃を振るう家光の姿は血を求める修羅か、さもなくば、供に轡を並べる勇者たちを鼓舞する将軍であるかのようだった。
「おい。若いの。前に出過ぎだ。それじゃあ命が幾つあっても足りないぞ!」
肉を斬らせて骨を断つ捨て身の戦法を得意とする家光に、闇の救済者の歴戦の勇士が声をかける。
「僕は大丈夫です! それよりも。彼らも憐れな犠牲者です。一刻も早く解放してあげないと!」
家光の振るう太刀が、またひとつ、呪われた魂を無念を軛から解き放つ。
「あと少し! 勝利は目前です! 皆さん、頑張りましょう!」
傷つきながらも戦意を失わずに声を上げて味方を勇気づける家光の姿に、闇の救済者たちは永き戦いの中にあっても、希望という名の光明を確かに見出していた。
成功
🔵🔵🔴
館野・敬輔(サポート)
※アドリブ、他者連携、派手な負傷描写OK
※NG:恋愛、性的要素、敵との交渉を含む依頼
『吸血鬼をこの世界から駆逐する。例外なく骸の海に還れ!』
ダークセイヴァー出身の、青赤オッドアイの青年黒騎士です。
吸血鬼に家族と故郷を奪われたため、吸血鬼やオブリビオンに強い憎悪を抱いており、敵からの交渉には応じず、憎悪を以て敵を冷酷に斬り捨てます。
直情な性格ですので、黒剣1本だけで真正面から叩き潰す戦術を好みます。
集団戦では衝撃波で一気に複数の敵をなぎ払ったり、誰かを庇ったりもします。
ユーベルコードは指定されたものをどれでも使用。
迷惑行為や公序良俗に反する行動は、依頼成功のためであっても行いません。
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縦横無尽に振るわれる漆黒の剣身が、亡霊が跋扈する戦場を斬り裂いていく。
館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は青き瞳に冷徹を、赤き瞳に激情を宿しながら、携えた黒剣と共に戦場を縦断する。
「死者の魂を弄ぶとはな。外道め。許せ。俺には、こうしてやることしか出来ん」
平時にあっては温厚な口調の青年も、オブリビオンの無慈悲な所業を前にしては、憎悪のもとに復讐を誓う騎士の仮面で心を鎧う。
「オォ……オォォ……冷タイ……貴様モ我ラノ仲間ニ……」
「お断りだ。俺は、まだ旅を終えるわけにはいかない」
敬輔は異端の血を啜る呪われた剣身に宿る魂の力を開放した。
数多の血を流して、死を積み重ねながらも無数な戦場を踏破してきた敬輔の一撃が、大地さえも両断する衝撃破と化して亡者の群れを木端も同然に消し飛ばしていく。
その鍛えられた武技と無双の武具とが合一となった一撃を前に、無念と妄執に縛りつけられるだけの亡者が抵抗できる道理もない。
耳にするものを溺死へと誘う呪詛の嘆き諸共に断ち切られて、荒野を舞う風塵と散った。
「さあ。これで手勢は総て消え失せたぞ。次は貴様の番だ」
敬輔は携えた黒剣を首魁たるオブリビオンへと突きつけた。
敬輔
成功
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第3章 ボス戦
『『死響楽団』ヴィオローネ・チェロ』
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POW : アクア・ヴェール・ドレスコード
【戦場に適した水のドレスを纏った姿 】に変身し、武器「【水葬のチェロ】」の威力増強と、【空中を水中のように泳ぐこと】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD : ウォーター・バーリオル・ドルフィン
【武器「水葬のチェロ」を水のイルカ 】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【生命力を奪う水飛沫】を放ち続ける。
WIZ : ディープ・シー・リサイタル
【武器「水葬のチェロ」を用いた演奏 】を披露した指定の全対象に【本当に息が詰まってしまう程の緊張の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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荒野を埋め尽くすかと思われた亡者の群れは、闇の救済者と、猟兵たちの奮戦により撃退された。
手の甲に禿鷹の眼の紋章を宿すオブリビオン、『死響楽団』ヴィオローネ・チェロは、その美しい顔を怒りに歪ませていた。
「役立たずども。所詮は人間たちの搾りかすに過ぎないわね。良いわ。わたくしが特別に貴方たちのための鎮魂歌を奏でてさしあげましょう。大人しく亡者の仲間いりをしていた方が、まだ救いもあったでしょうに。愚昧な輩は、これだから嫌いなのよ」
オブリビオンの激情に呼応するかのように“ざぁざぁ”という水の音が荒野に響く。
「骨まで凍てつく極北の湖。何人も知らぬ地底の大河。生命を拒絶し圧し潰す深海の檻。さぁ。貴方たちは、どの水に抱かれて眠るのかしらね?」
星川・杏梨(サポート)
『この剣に、私の誓いを込めて』
人間のスーパーヒーロー×剣豪、女の子です。
普段の口調は「聖なる剣士(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
時々「落ち着いた感じ(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで凛とした雰囲気です。
常に冷静さを念頭に置く様に努めており、
取り乱さない様に気を付けています。
戦闘は、剣・銃・魔法と一通りこなせます。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
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「ほほほ。さあ。溺れると良いわ」
ヴィオローネ・チェロが悍ましくも優美な鎮魂歌を奏で始めた。
戦場を支配する擦弦楽器(チェロ)の低音が重々しい水の帳と化して周囲の空気を奪っていく。
星川・杏梨(聖炎の剣士・f17737)は流星の聖剣を高々と掲げると、その清かなる星光をもって暗い水底を幻視させる水死の旋律を振り払った。
「機械人形たちよ。私の指揮に従いなさい!」
号令一下、剣と猟銃で武装した機械の人形たちが杏梨のもとに集結する。
機械仕掛けの騎士たちの冷たい体が蒼褪めた月光を照り返した。
オブリビオンが奏でる水死の旋律を意にも介さずに放たれた銃撃と剣戟の合唱が、ヴィオローネ・チェロの演奏を遮る騒音にかわる。
「小娘には、わたくしの演奏の高尚さは理解できないようね。無粋な絡繰りを従える貴女に、真の美が如何なるものかを教授してさしあげましょう」
「結構よ。私と貴女とでは絶望的なまでに音楽の趣味が乖離しているようだから。攻撃の手を休めないで。これ以上、あの耳障りな音を奏でさせては駄目よ」
杏梨が命令を受諾した機械人形の剣と猟銃による波状攻撃が、オブリビオンに、得意とする水死の旋律を奏でさせる猶予を奪い去っていく。
「忌々しい小娘。わたくしの演奏の邪魔をしたお前は許さないわ。惨たらしく殺してあげる」
「出来るものならね。この誓いの剣は貴女なんかに穢させはしないわ」
成功
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ソルドイラ・アイルー
あらまーーー! 事前に知ってはいましたが、なんともまあ水水しい御方!! や~~怖い、吾輩水が弱点ですからうーわ怖い怖いであります
ふざけて挑発しているように見えるでしょう? 実際弱点なのは変わりないので吾輩ピンチでありまーす!
さて泥試合と参りましょう。彼方が水遊びをするなら吾輩は土遊びを。城も道も築かずに、土人形に吾輩を庇わせて時間稼ぎを致しましょう。泥になるついでに引っ掛けてやりなさい
時が経てば経つほど人形の数は減って不利へと向かいます。しかし、相手も泥を被ることでしょう
その重みでどこまで飛べますかねえ。それとも付いた泥を洗い流しますか? その隙に槍投げするかのように杖をぶん投げるであります!
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「事前に知ってはいましたが、何ともまあ水水しい御方! 吾輩、水が弱点でありますからして、まー怖い! 怖い怖いであります!」
ソルドイラ・アイルー(土塊怪獣・f19468)の狼狽を前にしたヴィオローネ・チェロが冷めた感情を視線に宿した。
「ふざけているのかしら? それとも大仰に騒いで攪乱のおつもり? わたくしが、そのように見え透いた企みに乗ると思っているのかしらね」
「いやいや。吾輩は見た通りの土塊の怪獣でありますれば。実際に水が弱点なのでピンチでありまーす! と素直に白状してみたわけでして」
「あら。そう。自らの弱みを声高に喧伝するなんて。わたくしには道化の考えは理解できないわね。水に溺れたいというのであれば、望み通りに暗い水底へと誘ってさしあげましょう」
ヴィオローネ・チェロが鎮魂歌を奏でるべく擦弦楽器を構えた瞬間、ソルドイラの周囲に竜を象った無数の土人形が召喚された。
「いやいや。ただ苦手なものに溺れるだけというのは御免被りますな。ですから吾輩との土遊びに付き合っていただきます。不夜城『神無月』」
ソルドイラを庇う様に人垣を築く無数の土人形を前にしてヴィオローネ・チェロの唇が酷薄な笑みの形に歪んだ。
「ほほほ。土人形風情で、わたくしの演奏を阻めるとでも?」
ヴィオローネ・チェロは優美なる水のドレスを翻して、泳ぐように宙を舞う。
その恐るべき旋律が戦場に響き渡れば、ソルドイラの土人形たちが水に飲まれて泥の塊へと変わっていく。
泥の飛沫を撒き散らしながら闘う土人形たちを前にして、ヴィオローネ・チェロの表情に不快の二文字が刻み込まれた。
美しい水のドレスが、時間とともに泥で汚されていく。
「わたくしの舞台衣装に汚れをつける! これだから不潔な輩は嫌いなのよ!」
その潔癖な性質が災いしたのか、ヴィオローネ・チェロがたまらずに衣装についた汚れを洗い落とそうと試みる。
その瞬間。
「今であります!」
ソルドイラが土人形を指揮するために携えていた愛用の杖剣を投げ槍のごとくに放り投げた。
汚れた衣装に気を散らされ、泥の重さで動きを鈍らされたヴィオローネ・チェロに、意識の外から飛来した杖の一撃を避ける手段は存在しない。
強かに打ち据えられて、荒野へと墜落する。
「きゃあっ! よくも、このわたくしに土をつけてくれたわね。泥遊びは終わりよ。わたくしの演奏が遊びではないと思い知らせて差しあげるわ」
大成功
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風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携可
約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
【世界知識】ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも【情報収集】の伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。
戦闘は剣士の動きだ。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。
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風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)の纏う黒衣が荒野の風に翻る。
その手に携えた鉄塊のごとき鎧砕きの刀による一閃が宙を裂いた。
ヴィオローネ・チェロは寸前のところで身を翻して、顕吉の刃を躱すと、水葬のチェロを構えた。
「汚らわしい混ざり物のダンピール風情が。わたくしに刃を向けるなどと。許されることではないわ」
「俺も、お前たちを許す心算はない。特にお前のような他者の生命と尊厳を弄ぶ外道の輩はな」
顕吉の手に握られた白刃が蒼褪めた月光を照り返し、神速で振るわれる刃の閃きが、確実にオブリビオンを追い詰めていく。
「おのれ! 何という慮外者でしょう。水底に沈み、己の罪の重さを悔いるが良いわ!」
優美に、しかして冷酷に奏でられる擦弦楽器の旋律が顕吉を捉えて、深い水底の牢獄に捕えようとする。
呼吸を奪い、体温を低下させる水葬の鎮魂歌。その音色を耳にして、顕吉の足が止まる。
「ほほほ。さぁ。無様に溺れると良いわ」
「生憎と。水葬というのは趣味じゃない」
顕吉の双眸が深紅の輝きを放った。
紅い虹彩に秘められた魔力がヴィオローネ・チェロの奏でる擦弦楽器を捕える。
オブリビオンが愛用する水葬のチェロが、持ち主の意に反する音を奏で始めた。
「わたくしの楽器が! そんな。これでは鎮魂歌を奏でられない!」
「閉幕の時間ということだ。誰もお前の独り善がりな演奏を望んでなどいない」
ヴィオローネ・チェロの一瞬の動揺を見逃さず、神速の踏み込みで間合いに飛び込んだ顕吉の刃が、オブリビオンの身体を斬り裂いた。
成功
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雛里・かすみ(サポート)
バーチャルキャラクターの戦巫女×UDCメカニックの女性です。
普段の口調は「明るく朗らか(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
寝起きは「元気ない時もある(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
明るく朗らかな性格の為、
男女分け隔てなくフレンドリーに会話を楽しみます。
どんな状況でも、真面目に取り組み
逆境にも屈しない前向きな性格です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
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雛里・かすみ(幻想の案内人・f24096)が黒髪を靡かせながら荒野を疾駆する。
ヴィオローネ・チェロの愛器たる水葬のチェロが変化したイルカが水飛沫を撒き散らしながら、かすみの後を追い掛けた。
「ほほほ。姑息な。何時まで逃げ切れるかしらね」
イルカが撒き散らす冷たい水飛沫は、容赦なく周囲の温度を略取していく。
猟兵たちと轡を並べる闇の救済者たちも、凍えるように身を震わせて、その動きを緩慢なものとしていた。
「陰湿な技! あなたにぴったりね!」
かすみの言葉に、ヴィオローネ・チェロの口もとに張り付いた笑みが歪な形に変化する。
「醜き者の遠吠えは、何時聞いても心地良いわね。さぁ。そろそろ諦めなさい。わたくしの可愛らしい僕が、貴女を水底へと誘ってあげるわ」
オブリビオンが腕を振り上げると、イルカのたくましい尾鰭が宙を蹴りつけた。
弾丸の如き速度で空中を泳ぎながら、かすみへと突撃する。
「あきらめる? 冗談。この程度の危難、何度だって乗り越えてきたわ。それは、これからもよ」
かすみの身体から不意に力が抜けると、自身を打ち抜こうとするイルカの突撃を避けるのでもなく、防ぐのでもなく、むしろ進んで受け入れるかのように腕を広げた。
冷たい水を纏うイルカの突進は、かすみの身体を跳ね飛ばすことはない。
濁流の如き衝撃は、そのまま、かすみが携えた巨大な薙刀の刃へと宿る。
「そんな、馬鹿な! わたくしのユーベルコードがっ!?」
「どんな時だって、諦めなければ、必ず活路は見いだせるわ。オペラツィオン・マカブル!」
「ぐっ、あぁぁぁっ!?」
敵の得意とする技の威力を、そのまま上乗せした薙刀の一閃が、ヴィオローネ・チェロの肉体を切り裂いた。
成功
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ベイメリア・ミハイロフ(サポート)
メイン参加者さまのお邪魔にならぬようにしつつ
状況を見て行動を行おうと思います
日常では、まったりのんびり楽しみたいと思います
探索が必要であれば、情報収集・聞き耳を活用し
さりげなく目立ちすぎない程度に行動を
戦闘での行動は、絶望の福音又は第六感・見切りにて相手の攻撃を予見し回避又はオーラ防御・武器受けからのカウンターを狙いつつ
広範囲に敵がいます場合にはRed typhoonを
1体に対してはジャッジメント・クルセイドにて攻撃をいたします
チャンスがあれば早業・高速詠唱からの2回攻撃を
回復が必要なら、この身を削ることになろうとも、生まれながらの光を使用いたします
呼び方ファーストネーム+さま
一人称:わたくし
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猟兵の一撃を受けて、鮮血を飛沫かせるヴィオローネ・チェロ。
その優美な衣装が朱色に染まる中、蒼褪めた月光を、ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)の紅い法衣が切り裂いた。
「今です! 主よ。呪わしき者に浄罪の裁きを。聖華の洗礼を!」
彼女が携えるものは† curtana †――慈悲の剣を意味する聖槌である。
聖者の信仰の祈りが切っ先のない剣の形を模したメイスを無数の真紅の薔薇の花びらへと変える。
乱舞する薔薇の吹雪に飲み込まれながら、ヴィオローネ・チェロが赫怒の咆哮を放つ。
「おのれ猟兵。よくもわたくしに、このような仕打ちを! 皆、沈めてあげるわ! 暗く冷たい水底に!」
「いいえ。貴方様の演奏は、これにて終幕です。弄ばれ、苦しめられた方々のために。わたくしは心から祈りましょう。救いあれと」
「あ、あぁぁぁっ! あ、主様ぁっ!」
ベイメリアの真紅の聖華が、憐れなるオブリビオンの魂を、その肉体ごと浄化していく。
断末魔の叫びが消え失せた時、そこには元の静寂を取り戻した荒涼たる原野が広がっていた。
「勝った……のか……? 助かったのか、俺たちは……」
疲労の色が濃く宿る吐息を吐き出しながら、闇の救済者たちが、信じらないものを見たような表情で周囲の仲間たちの無事を確認しあっている。
「はい。主の御加護が、たしかに、わたくしたちにありました。これは皆様の勝利です」
ベイメリアの言葉に、闇の救済者たちの間に歓喜の感情が充満して、一斉に爆発した。
かくして猟兵たちの活躍により、闇の救済者たちは、オブリビオンの魔の手から逃れることが出来たのである。
成功
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