7thKING WAR㉖〜Roots of Evil!
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「――デビルキングワールドでの戦い、お疲れ様です。遂にここまで来ましたね」
グリモアベースの片隅で、集まった猟兵達を前に、クララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)は頭を下げる。
「いよいよ、オブリビオン・フォーミュラとの戦いです。彼についての情報を、少し伝えます……ね」
7代目のデビルキングに名乗りを上げた伝説の『魔王ガチデビル』は、恐るべき『悪魔契約書』で悪魔達を他世界に輸出しようとしている。
この世界の悪魔達は強者揃い、もし輸出などされてしまえば、カタストロフに繋がる大事件が撒き散らされてしまうだろう。
ガチデビルは善良揃いのデビルキングワールドで唯一、生まれながらに「邪悪さ」を備えていたという。
そして次々と計画を打ち破られ、今や敗北寸前に陥ったガチデビルは、猟兵達の猛攻を凌ぐべく、廃城で待ち構えている。
「ガチデビルは幾枚かの『悪魔契約書』を持っています。それをばら撒き、あわよくば逃げおおせる算段でしょう」
原初の悪にして、最後に倒すべき悪の源。それが魔王ガチデビルだ。
戦場は石造りの、広い玉座の間。
「現在、ガチデビルは召喚形態を取っています。契約魔法で束縛したデビルキングワールドの悪魔をユーベルコードで召喚し、戦わせて来るでしょう」
使用するユーべルコードは以下の3つ。
『強欲』で呼び出すのは古代の悪魔軍――全員、西洋甲冑とトゲ付きのモーニングスターに身を固めており、集団で攻撃を仕掛けて来る。ついでに陣地も作る。
『憤怒』で呼び出すのは狼のような姿の憤怒獣――闇色の炎の治癒を受けつつ、粘り強く喉元を狙って来る強敵だ。
『嫉妬』は悪魔契約書から魔術鎖を飛ばし――己と相手に不死を確約する。
総じて防御的なラインナップと言える。
ガチデビルは必ずユーベルコードで先制を取って来るため、まずはこれへの対象が必要だろう。
そしてガチデビルの奥の手は、己の後にデビルキングとなった5名の能力を解明した『KING宝珠』である。
「5つの『宝珠』はガチデビルの周囲を飛び回り、彼に有利な効果を送り続けています」
宝珠の効果は以下の通り。
2ndKING『魔王ビストログルメ』の宝珠:様々な料理を作って食べさせ、所有者を回復する。
3rdKING『堕天使エンケロニエル』の宝珠:所収者に従う「植物怪獣軍団」を召喚し続ける。時間経過でねずみ算式に増える。
4thKING『キング・ブレイン』の宝珠:新たな知識を脳内に流し続け、戦闘時間に比例して所有者を強くする。
5thKING『勇者リリリリ』の宝珠:宝珠自身が盾のオーラを放出しながら飛び回り、所有者を護る。
6thKING『ビームスプリッター』の宝珠:所有者は通常のユーベルコードと同時に「腹からビーム」を撃てるようになる。命中精度・ダメージ共に大。
「……以上です。上から赤、緑、黒、青、白と判別出来るので、狙い撃ちは可能かと」
これらは一定のダメージを与えると猟兵の味方になり、その効果を猟兵に使ってくれるようになる。
ユーベルコードと宝珠、双方の対策が必要な厳しい戦いとなる以上、積極的に利用し、勝機を引き寄せる事が肝心――と言うよりも、必須だろう。
「かのデビルキング法も、ガチデビルを倒す為に作られたそうです」
絶滅の回避は勿論、様々な形でガチデビルからの防波堤となる筈だったデビルキング法。だが今回の悪魔輸出計画を阻止するには十分ではない。どうしても猟兵達の介入が必要となる。
「厳しい戦いになると思います。ですが、どうか無事に成功させて下さい。魔界の悪魔達の為に。そして、改めて平和なデビルキング争奪戦が開催出来るように――」
白妙
●概要
宜しくお願いします。
オブリビオン・フォーミュラ『魔王ガチデビル』との戦いです。
●戦争シナリオ
これは戦争シナリオです。一章で完結します。
●オブリビオン・フォーミュラ
『魔王ガチデビル』はオブリビオン・フォーミュラです。
戦力が0になれば、戦争に勝利します。
●難易度
『やや難』となります。判定方法はマスタールールに準拠します。
●先制攻撃ユーベルコード
この敵は猟兵に対し、必ずユーベルコードで先制を取ります。
●ガチデビル【召喚形態】
初代デビルキングの戦闘形態の一つ。
大罪形態との差異は使用ユーベルコードとなります。
また、周囲に5つの『KING宝珠』が飛び回っており、ガチデビルに有利な効果をもたらしています。
しかし一定のダメージを与えると、その効果を猟兵に使ってくれるようになります。
(宝珠はガチデビルを倒すと消えます)
●プレイングボーナス
『敵の先制攻撃に対処する/「KING宝珠」を味方にする』です。
(片方だけクリアした場合、ボーナスは無しとなります)
●備考
執筆速度の関係でシナリオ完結が終戦に間に合わない可能性が高いです。その点ご了承下さいませ。
第1章 ボス戦
『1stKING魔王ガチデビル召喚形態』
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POW : 『強欲』
レベル×1体の【配下の古代悪魔軍】を召喚する。[配下の古代悪魔軍]は【邪悪】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 『憤怒』
戦場全体に【ガチデビルの魔力が具現化した闇色の炎】を発生させる。レベル分後まで、敵は【炎から現れる『憤怒獣』】の攻撃を、味方は【闇色の炎による治癒】の回復を受け続ける。
WIZ : 『嫉妬』
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【悪魔契約書による契約の魔術鎖】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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相馬・雷光
生まれながらの邪悪ねぇ
敵にも悲惨な過去が、なんてない方が気軽にぶっ飛ばせるわ
いや、まぁ、一筋縄どころじゃない強敵だけど
先制召喚で手駒を増やしながら、同時にビーム攻撃?
ガチじゃん、ガチデビルの名前に偽りなしじゃん
【フェイント】を織り交ぜながら【ダッシュ】でビーム回避!
【電撃】弾の【弾幕】で悪魔軍を蹴散らす!
ビームの宝珠を潰さないと回避に手間を取られるわ
爆弾(爆破)で悪魔軍の足止め(時間稼ぎ)と【目潰し】をしておいて、宝珠を狙撃!(スナイパー)
宝珠を全部落とすのは無理か……一気にカタを付けるわ!
【リミッター解除】! フルパワーの【帝釈天降魔砲】!
悪魔軍も宝珠も巻き込んで! ぶっ飛べー!
フェイントを織り交ぜた銃撃で、至近距離からモーニングスターの重撃を捌く。
目の前を通過していく鉄球を追って放たれたのは、閃光目映い電撃弾の速射。
「うおお!?」
痺れに耐え切れず転倒する悪魔達。入れ替わりに浸透する植物怪獣達に銃口を向けた次の瞬間、相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)は地面を蹴っていた。
「っ!」
『どうした、その程度か』
腹部から放たれたガチデビルのビームが、雷光の体を掠めていく。彼女の身体能力をもってすれば回避は可能だ。
問題なのは敵の手数が豊富な事だ。対応を迫られる度に怪獣達は増殖を続け、ビームの精度も高まっていく。
(「ガチじゃん! ガチデビルの名前に偽りなしじゃん!」)
敵は追い詰められているとは言え、最強と名高いオブリビオン・フォーミュラだ。ほんの僅かな手心さえ加える余裕すら無い。
「……でもまぁ、敵にも悲惨な過去が、なんてない方が気軽にぶっ飛ばせるわ!!」
中距離から振るわれた鉄球を跳躍と共に回避。そのままくるりと後方宙返り。
宙ではためく紅のマフラーから、軍勢に向けて何かが飛んだ。
「?」
キャッチした悪魔の表情が驚きに染まった瞬間、凄まじい閃光と煙が辺りを包み込む。
それは、爆弾だった。足止めと目潰しに特化した大爆発は、悪魔達の大軍を一気に機能不全に追い込む。
混乱の外で雷光は唇を引き結び、双銃を構える。
この戦場に降り立ち初めてまともに得た銃撃の機会。こちらを睥睨するガチデビルに向けて、雷光は連続で引金を引いた。
『――』
数度瞬く閃光。やがて煙が晴れた時、姿を現した雷光の周囲には、白と青の宝珠が浮かんでいた。
「全部落とすのは無理かぁ……まぁ良いわ! 一気にカタを付ける!」
残念そうな声を漏らす雷光だが、すぐさま次弾を装填。
現状一番厄介な宝珠がビームである事は雷光にもわかっている。それを封じた事に変わりは無い。
殺到する攻撃群を盾のオーラが防ぎ止める中、二丁拳銃の銃口に光が収束していく。
「因陀羅耶莎訶! 帝釈天降魔砲!! ぶっとべー!!」
そしてフルパワーの充填が終わるや否や、先程とは比べ物にならない規模の雷撃弾が弾き出された。
爆ぜる雷鳴はガチデビルと悪魔軍、そして宝珠すらも呑み込み――戦局を一変させるのだった。
成功
🔵🔵🔴
鬼門・掃
魔女・f36229と ◎ 呪言以外しゃべりませんが魔女はわかります
ラスボス退治なのだという
自分は参加していないが、
過去の戦争に比べると早い気がする
しかし大きい敵だ
腹の割けた女性よりも大きい
まあ、やりようはあるだろう
そうだな、相棒
全力でやろう
先制攻撃対策
強欲の悪魔:羅刹紋が浮かぶほど練気で身体能力を上げ、首を切る
または三匹の大狼を召喚して襲ったり、呪言で同士打ちさせる
宝珠は魔女に任せる
その後もやることは同じ
魔女に時間を作る
悪魔は頑丈でなかなか死なないというが、
UCに昇華した私の剣撃ならば切れる
手でも足でも、なんなら戦意でも切り捨てる
魔女の魔法が完成すれば、私たちの勝ちだ
灯篭城・燈子
鬼門・f36273と ◎
ラスボス退治だってさ、掃。
あいつを倒したら、この戦争も終わり。
そ、早いよねー。
うわ、あの羽っぽいの、爪生えてる
指みたいな関節もある きもちわるぅ
さて、力は抜けた?
行こうぜ、相棒
本気でやろう
先制攻撃対策
ビーム対処:こちらへの認識に干渉して『いる場所』をずらす
植物怪獣:炎属性攻撃で燃やす
知識強化:認識干渉で忘れさす
強欲の悪魔:掃に任す!
悪魔軍の相手は掃に任せて、私は準備
魔力封印解除
サイコエナジーと魔力を合成し出力アップ
魔眼と魔法の杖で魔術精度上昇
大魔法の杖と魔導書でブースト
最高最大火力の炎で、宝珠もボスも焼き尽くす
地獄の業火なんて生ぬるいわ
地獄ごと燃やしてやるよ
『ほう……来たか。やはりそうでなくてはな』
荒れ果てた大広間。その最奥の玉座に、魔王ガチデビルはその巨体を鎮座させていた。
まるで猟兵達の存在を待っていたかのように。
「……」
数で勝る悪魔の軍勢を前に、鬼門・掃(狩人・f36273)は太刀に手をかける。
その瞳は、ガチデビルの腹の口に注がれていた。
『だが我が悪魔軍団に適うまい。大人しく討ち取られるが良い』
巨大な口、滴る唾液。そこから垂れさがる舌。
悪を体現したかのようなガチデビル達の見た目は、これまで目にして来たラスボス達以上におぞましい。
そして何よりも大きい。相対して来たどの悪魔達よりも。
「ラスボス退治だってさ、掃」
そんな掃の後ろから軽い溜息交じりに声を掛けたのは、灯篭城・燈子(魔女・f36229)だった。
「あいつを倒したら、この戦争も終わり」
「……」
「そ、早いよねー」
掃に軽く返す燈子だが、猟兵側の進軍が早かったのは確かだ。
掃も過去の大戦に参加こそしていないものの、体感で言えば相当に早かった気もする。
『行け、悪魔軍団達よ。契約に基づき、奴らを仕留めよ』
「うわ、あの羽っぽいの、爪生えてる。指みたいな関節もある きもちわるぅ」
「……」
確かにガチデビルの背負う羽根は手のような形をしており、その先端を指のようにわきわきと蠢かせていた。
「さて、力は抜けた?」
「……」
弛緩する空気。燈子の一言が場の緊張を振り払ったのは事実だろう。
掃は肩を落としていたが、発散される威圧感は少し和らいでいた。
『随分と殊勝な事よ。だがこの数を前にどれだけ耐えられるかな?』
「行こうぜ、相棒……本気でやろう」
燈子の言葉に応じて掃が飛び出す。それが、交戦の合図となった。
鎧の音を響かせ大広間を埋めつつ迫るのは、悪魔達の大軍勢。
『囲い込め!』『逃がすな!』
「……」
迫る鉄球を屈んで躱す。
即座に柄へ手を掛け、一閃。
『!』
足を斬られ、がしゃりと悪魔が倒れ込む。鋭利な太刀は鉄の甲冑を両断し、その奥に赤い切り口を覗かせていた。
起き直るや、動揺する悪魔の首を狙う。
描かれる剣閃。それは翳された鉄槌の柄を両断し、首元を横殴りに殴りつけた。
『うぉ!』
金属同士が擦過する音と共に、首が収まったままの兜が吹き飛ぶ。
剣豪は斬るという行為に一生を懸ける存在。生身の頑丈さなど通用しない。
ましてや召喚獣。遠慮はいらない。
「……」
殺到する前列に向け、掃は大きく引いた刃を横薙ぎ。戦意を斬られ、悪魔達は棒立ちになる。
たちまち後方で始まる渋滞。そこへ向けて掃が何事かを呟けば、たちまち呪言による同士討ちが始まる。
『や、やめろ!』『ひぃ!』
次々消滅していく悪魔の軍勢。
彼等から掃は視線を外すと、それを少し後方で立ち回る燈子へと向けた。
閃光が走った。
魔王ガチデビルの口から放たれた極太のビームは燈子の真横に着弾。その場の地面を深く抉り抜く。
悪魔軍の対処を掃を任せた燈子だが、彼女が担うのはガチデビルの誇る宝珠のうち、実に三つもの対処。その責任は決して軽くない。
だがその中で最も直接的と言える『ビームスプリッター』は、未だ一度も燈子を捉えていないのだ。
『ほう……』
高精度のビームはガチデビルにとって敵が『いる場所』を正確に射抜いている、筈だが、燈子は無事に魔力の封印を解除し終えている。
ならばと知識強化に走れば、その速度に明らかな遅れを感じ取る。
――魔女の秘術、認識干渉。
そう勘付いたガチデビルが植物怪獣の群れを展開した瞬間、燈子の指輪が煌めく。
「さ、行くわよ」
二本の杖と浮かぶ魔導書。その周囲で巻き起こる炎の渦が、そのまま波と化して戦場を埋め尽くす。
「植物に特攻。やーっぱ火って便利だわ~」
恐ろしい声を上げて焼き焦がされる植物怪獣を睥睨しながら、燈子は軽く肩を揺らすのだった。
「……」
『うおお!!』
掃が目配せすれば、側面から突撃するのは三匹の大狼。
崩れる戦列。そこに風の如く斬り込めば、鎧の隙間を縫う剣閃が駆け抜け、手足を刎ね飛ばす。
戦いは一進一退。だがその天秤は着実に猟兵側へと傾いていく。
ガチデビル側が数の利を活かせなかったのは勿論、猟兵側が敢えて魔王との直接対決を避けた事で、二つの宝珠を事実上無効化出来た為だ。
「あと少しよ……本当だから」
二本の杖を手にした燈子の周囲では、サイキックエナジーと魔力の混ざった力場が発生していた。
紫紺の魔眼は怪しい輝きを宿し、浮かぶ魔導書は激しい音を立てて捲れ続けている。
術が為る一歩手前。そう確信した掃は、再度呼吸を整え、生気を練った。
『仕留めろ。逃がすな』
吠え声と共に殺到する悪魔軍団を前に、掃は三、四歩助走をつけ。
羅刹紋を浮かばせた体を踊らせ、手に持つ太刀を勢い良く薙いだ。
「――」
鋭い円弧が描かれ、断たれた悪魔達の上体や腕が吹き飛ぶ。
それらが消滅するよりも早く、後方から圧倒的な熱量が膨れ上がった。燈子が巨大な炎の波を解き放ったのだ。
「地獄の業火なんて生ぬるいわ……地獄ごと燃やしてやるよ」
それまで相棒を防戦に回され続けた鬱憤を、この一撃に込める。
炎の流れは瞬く間に悪魔軍と植物怪獣達を消し去る。だが時間を掛けて編まれた術は簡単には止まない。
盾を展開するガチデビル。しかし炎が到達した時、それは幾本もの火柱となって巨体を包み込んだ。
『……』
そして炎の魔力が消滅した時、戦況は逆転していた。
5つの宝珠はガチデビルの周囲から姿を消し、代わりに、燈子と掃の近くをふわふわと浮遊していたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
諸悪の根源、魔王
その目論見ごと叩っ斬る!
白き翼の姿に変身
飛翔(空中戦)して腹からの光線を躱す
行き掛けの駄賃に、古代悪魔を聖槍で【なぎ払う】
ガチデビルには――届かない。勇者の盾に護られて
あの盾を無力化しなければ埒が明かない
そして何より……勇者の力が邪悪に使われるのは、見るに堪えない
飛翔速度を【限界突破】、【空中機動】で光線を躱し、勇者の宝珠へ吶喊(勇気・ランスチャージ)
勇者よ、その使命を思い出せ!
味方に出来れば防御を宝珠に任せ、全魔力(全力魔法・属性攻撃・破魔・焼却)を聖槍に集中
【極煌灼滅剣】を形成し、全霊の力で両断する!(斬撃波)
灼滅剣よ、邪悪を焼き尽くせ――!
ばさ、と何者かが翼をはためかせる音が響いた。
「諸悪の根源、魔王! その目論見ごと叩っ斬る!」
宣言。ガチデビルと悪魔の軍勢が側面を見遣ると、そこに居たのは白銀の髪を揺らす一人の麗人。
白を基調にした戦闘衣、白銀の槍、天使が如き巨大な翼。
翼の姿を取ったオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、真っ直ぐガチデビルへと槍を突き付ける。
そのガチデビルの口元に光が収束した瞬時、オリヴィアは床を強く蹴り、空へと舞い上がる。
そして放たれた光線が地を抉った時、オリヴィアの姿はガチデビルの眼前に急迫していた。
『ほう』
「――はぁっ!!」
滑空と共に振るわれる聖槍。虚空に描かれた金色の閃き。
敵陣を斬り抜けたオリヴィアの背後では、悪魔の軍勢達が消滅していく。だがガチデビルは――無傷。
(「――届かない」)
オリヴィアの一閃を防ぎ止めたのは、『勇者リリリリ』の宝珠が展開する盾のオーラだ。
単純にして強力。容易に突破する事は敵わない。
そして何より、見るに堪えない。
勇者と呼ばれた者の力が、邪悪な魔王に使われている事にだ。
『これが5thKING『勇者リリリリ』の力。簡単には破れぬぞ』
「っ
……!?」
歯痒さに口の端を噛むオリヴィアに向けて、ガチデビルが腹部から光線を放つ。
巨大な光が迫る感覚を視界の端で捉えながら、オリヴィアは、眦を吊り上げた。
体を捻ると同時、目の前の空のみ見据え、翼を窄める。
その身を斜め下方へと急速旋回する事で、迫る光線を背後へと置き去りにした。
『ほう……』
限界ギリギリの空中機動でビームの回避に成功する。片翼で気流を制御し方向転換。再度ガチデビルへと向き直り、空中で上半身を大きく引く。
「勇者よ、その使命を思い出せ!」
悪魔軍が地上を埋め尽くす視界の中、銀の爪先で指したガチデビルに向けてオリヴィアは槍を構え――吶喊。
勇者の宝珠へ向けて、その身を弾丸と化した。
「――!!」
駆け抜けた白銀の暴風に、盾のオーラが澄んだ音を立てて真正面から砕かれる。
静寂。だがガチデビルの身体からは蒼の宝玉が離れ、そのままふよふよと上空へと飛んでいく。
全員がその行く先を見上げれば、そこには静かに滞空するオリヴィアの姿があった。
その手にある聖槍は、燃える巨大剣と化していた。
『撃ち落とせ!』『やらせるな!』
これまでに無かった魔力量を前に、地上の悪魔達が鉄球を投げつけるも、それは勇者の盾に全て跳ね返された。
その間もオリヴィアは瞳を閉じ、全霊力を目の前の聖槍に集中する。
練り上げた魔力を超高密度に圧縮していけば、それは巨大な熱量となってオリヴィアの手元で膨れ上がり続ける。
「神世を焼き尽くせし炎の剣よ、遍く邪悪を灼滅せよ――」
『させぬ』
発動の寸前を狙い、ガチデビルの腹から極大の光線が放たれた。
だがそれを、見せない障壁がオリヴィアの間近で防ぎ止める。
ビリビリと肌を震わす衝撃。凄まじい威力。だがそれすらも、勇者の盾は完全に防御し切っていた。
「――」
さらに膨れ上がり、灼熱の輝きを増した炎の大剣を背に担ぎ、オリヴィアはさらに天高く舞い上がる。
そして両手で柄を握り、急降下。
――ユーベルコード、極煌灼滅剣。
自身の持ちうる全ての魔力。それをオリヴィアは、この一撃に込め爆発させた。
『――』
オリヴィアが大剣を振り下ろした瞬間、灼熱の大斬撃が地上を奔り抜けた。
地獄の業火に包まれる戦場。軌道上の悪魔達と植物怪獣達はその熱さに耐え切れず、炎に巻かれて逃げ惑う。
それはガチデビルすらも例外ではない。巨体に刻まれた炎の斬線は辛うじて両断こそ免れたものの深手。動く事もままならない。
「灼滅剣よ、邪悪を焼き尽くせ――!」
魔力を使い果たし地上に降りたオリヴィアが、それでも全霊を込めて叫ぶ。
それに呼応したかのように、ガチデビルを覆う火勢は勢いを増し、傷口を内側から一気に焼き焦がすのだった――。
成功
🔵🔵🔴
アルゼブ・アズモリィ
はっ!デカいワルそうな口してるじゃんか!
その歯、1本残らず折ってやるつもりで行くぜ!
『なかなかの啖呵だが……油断するなよ』
わかってるさ!
敵の召喚した悪魔軍の攻撃に対しては、レブヤ・ベザルで《受け流し》つつ、《ダッシュ》回避も試みる。
ちっ、掠っただけでわかる邪悪さだ!
ならこっちだって数を用意してやるさ!
出てこい!【炎の魔王軍】!
もし敵の魔王軍が壁を築いているなら、《時間稼ぎ》も兼ね半数をそこに突撃させる
あとの半数は宝珠に対して一斉攻撃
お前たち!第一に狙うは『ビームスプリッター』の宝珠だ!
オレたちが悪魔の、いや猟兵の力を見せてやるんだ!
*アドリブ、共闘OK
*『』は喋る武器の声
「こいつは……なかなかのワルだぜ」
アルゼブ・アズモリィ(玉座を見据えし悪魔・f31513)はそう呟いた。
転送されるや目に飛び込んできた魔王ガチデビルの姿。
デビルキング法の理想を体現したかのようなそのワルさに、口角を上げて挑発する。
「はっ!デカいワルそうな口してるじゃんか! その歯、1本残らず折ってやるつもりで行くぜ!」
『なかなかの啖呵だが……油断するなよ』
背中から投げかけられた喋る武器『レブヤ・ベザル』の声に鷹揚に頷く。
振り返りはしない。あと数秒で接敵する位置に、邪悪な雰囲気を発散する軍勢が展開しているからだ。
「わかってるさ!」
がちゃがちゃと漆黒の鎧を犇めかせ、古代悪魔の軍勢が迫り始める。
対するアルゼブもまた『レブヤ・ベザル』を横に構え、大胆に間合いを埋めに行った。
『突撃!』
そしてアルゼブが間合いに入り込んだのを認め、鋼の軍勢は一斉に殺到を開始した。
途端に放たれた鉄球を、アルゼブは少し刀身を傾けただけで受け流す。
続く横薙ぎを素早く身を伏せ回避。右肩に武器を乗せ、左手で地面を掴むその姿勢は、今にも飛び掛かろうとする地獄の猟犬を思わせた。
一瞬、視界から消失した敵に悪魔達が当惑した瞬間、アルゼブは右足に溜めた力を爆発させた。
「……――っらぁっ!!」
連続して鋼鉄を殴り付ける音。脛の高さで横薙ぎされた紫緋の一閃に、悪魔軍の最前列が一斉に崩れ落ちる。
後方で無数の鉄球が地面を抉る音を無視し、アルゼブは身を低めて斬り抜けた。
『こいつ、ちょこまかと!』
「!」
技の終息を狙う敵の目前で、ワルスタイリッシュなデザインのシューズがそのグリップ力を発揮した。
方向転換。そのままぐるりと独楽のように一回転。アルゼブの脳天に鉄球が降るよりも早く、紫の刀身が鎧を砕かんばかりの峰打ちを喰らわす。
「ちっ、掠っただけでわかる邪悪さだ!」
アルゼブの立ち回りで、先制を防がれた古代悪魔軍『強欲』。
だが彼等の間に空いた戦列の穴を、今度は植物怪獣達が埋めつつある。
『このままではジリ貧だぞ』
「わかってるさ!」
喋る武器の声に従いアルゼブが視線を向ければ、そこでは悪魔軍が城壁の建造を開始しつつあった。
悪魔の軍勢もそこに集結し始めている。先程のアルゼブの勢いを警戒しての持久戦の構えか。
絶体絶命。だがここで諦めるつもりはない。
「ならこっちだって数を用意してやるさ! 出てこい!」
展開される魔法陣。そこから召喚されたのは姿も種族も様々な、炎を纏ったモンスター達。
炎の魔王軍。
配下を従えるのはガチデビルの専売特許では無い。アルゼブもまた、デビルキングへの野望を秘めた悪魔の一人なのだ。
「突撃!!」
アルゼブの号令と共に、炎の軍勢が二つに割れるや、吶喊を開始する。
半数の行く手には壁に身を隠した悪魔軍。舞い踊る炎と振るわれる鋼鉄が激突し、辺りはたちまち阿鼻叫喚の渦に包まれる。
数で圧倒されているものの、アルゼブ配下のモンスター達の戦意は凄まじい。彼等が稼ぎ出した時間は、もう半数がガチデビルへと接近するには十分な時間だった。
「お前たち!第一に狙うは『ビームスプリッター』の宝珠だ!」
応戦とばかりに放たれる光線。だが全ての軍勢を薙ぎ払う訳にもいかず、ビームと盾の宝珠が、集中した炎の攻撃を前に沈黙する。
そのままふよふよとガチデビルの元を離れた二つの宝珠は、今度はアルゼブの周囲を飛び回り始める。
炎の軍勢を再召喚するアルゼブ。同時に彼の腹部には、巨大な口が形成されていた。
準備万端。反撃の狼煙とばかりに、アルゼブはガチデビルに向けて宣言した。
『仕切り直しだな』
「ああ、オレたちが悪魔の、いや猟兵の力を見せてやるんだ!」
成功
🔵🔵🔴
月白・雪音
…善たる魂を有する住民が生きる世界において唯一つ生まれた邪なる命。
私には何らかの意思が働いているようにも思えてなりませんが…、今は栓無き事ですね。
如何な因果があれ、過去の暴威を以て今を脅かす存在に手が届くとあらば。
──我が武を以て、猟兵として在るこの身の責務を果たすまで。
野生の勘で憤怒獣、放たれるレーザーの起こりを感知し
カウンターで反撃及び回避
初手を凌げばUC発動、野生の勘、見切りで攻撃を感知しつつ怪力、グラップル、残像を用いた無手格闘にて戦闘展開
宝珠をまず狙い、優先順位は緑、黒、青、赤、白
植物怪獣の身体も足場とし、青の宝珠を攻略すればオーラにてビームを防御
宝珠を剥がせば落ち着き技能の限界突破、無我の至りを以て極限まで技を練り
野生の勘、見切り、殺人鬼としての技巧を以て敵の急所を正確に見極め
怪力、グラップル、残像を交えた最大速度、最大威力の一撃を以て
敵の存在の核を打ち砕き、腹部の口の白羽の矢を引き抜く
…今を治めるべきは今を生きる命。
或いは望まなかったその黒き魂を、骸の海へと還しましょう。
「――!」
月白・雪音(月輪氷華・f29413)の体のすぐ横を、極大のビームが通り過ぎる。
光速の射撃をぎりぎりで躱した雪音は即座に動揺を殺し、迫る憤怒獣の前足を拳槌で打った。
攻撃を叩き落とされ、軽い吠え声を上げて離脱する敵を横目に雪音は、空間の奥を仰ぎ見る。
『よく躱したな。だがそれだけでは我が宝珠と憤怒獣は破れぬ』
魔王ガチデビル。その周囲には闇色の炎が広がりつつある。
(「……善たる魂を有する住民が生きる世界において、唯一つ生まれた邪なる命」)
魔界の悪魔は善良が過ぎて絶滅寸前にまで陥った種族。その中にあって、彼はまさしく異端児だ。
雪音としてはその誕生に何者かの意思の介在を感じざるを得ない。
今、正誤を確かめる術は無いにせよ、推測としては順当と言える。それを静かに胸に仕舞い込み――意識は平静に。
『5人ものデビルキングの力だ。それを前に無手で身を晒した度胸だけは誉めてやろう』
(「如何な因果があれ、過去の暴威を以て今を脅かす存在に手が届くとあらば」)
ここまで追い詰められたとはいえ、強者揃いの悪魔達の頂点に君臨した存在だ。ほんの僅かな手心さえ加える余裕はない。
(「──我が武を以て、猟兵として在るこの身の責務を果たすまで」)
敵の口に再びビームが充填され始めるそのタイミングで、雪音は上体を低め、駆け出した。
『ガゥアァッ!!』
強烈な遠吠えを一つ放ち、憤怒獣もまた凄まじい勢いで飛び掛かって来た。
消失する両者の距離。虚空を貫いて来る獣の巨体。
激突のタイミングで、大きく開かれた口が、恐ろしい噛み音を響かせた。
同時に雪音の居た場所を巨大な光線が駆け抜け――一瞬遅れて狼の後方で、ぶわりと銀髪が躍る。
次の瞬間、狼は吹き飛んだ。
残像からの初動を見切った投げ。ユーベルコード『拳武』により高められた技術による陽動と反撃だ。
雪音は獣を振り返りもせず、広がる炎の領域へと踏み込んだ。
そのままガチデビルの真下へと肉薄し、目前の宝珠へと突撃する。
『ほう』
勢いを乗せた拳を数発。たちまち宝珠は涼やかな音を立て、雪音を中心に回り始める。
『――ォォオオオオオッ!』
雪音の背後から憤怒獣が迫る。だがそれが飛び掛かるより前に、雪音は跳躍していた。
『ふん』
「――!!」
ガチデビルの巨大腕による薙ぎ払い。その起こりを動物的な直観で捉え、瞬時に足場と化す。
跳躍の頂上で鋭い蹴撃を繰り出せば、再び澄んだ音が燃える大広間に響いた。
「っ!」
続く落下。迫る着地点で待ち構える炎の獣を避け、咄嗟に雪音はガチデビルの背中を蹴った。
空中で体を捻って着地。雪音の周囲には緑と黒の宝珠が浮かんでいた。
『大した身のこなしよ。大抵の者は5thか6thのものを優先して狙うのだがな』
「……」
再びの対峙。目を爛々と輝かせる憤怒獣の奥で、デビルキングが洞穴のような腹の口を開けば、そこへ再度ビーム光が収束する。
矢継ぎ早の高精度攻撃を前に、僅かに荒れる雪音の呼吸。だがそれとは裏腹に明晰さを失わない意識へ向けて、新たな知識が流れ込んで来る。
判断に至るや、雪音の姿が残像を纏い、揺れた。
『む!?』
そして次の刹那、ガチデビルの目前に現れていた。
戦場に姿を現し始めた植物怪獣達を蹴り、一気に宝珠を叩きに行った。
『貴様……』
『堕天使エンケロニエル』の宝珠を最優先とした雪音の選択は、破れかぶれでも、ガチデビルから長期戦の選択肢を奪う為でもない。
その身一つを武器に戦い続ける雪音が、残る全宝珠に肉薄する為の、足掛かりであった。
(「――今!」)
青と赤の宝珠が近付いた瞬間を狙い、雪音は気息と共に手刀を一閃した。
『ゥゥゥゥゥッ!』
「!」
着地と同時に襲い掛かる憤怒獣の突撃をやり過ごし、逆に植物の怪獣を押し付けれるように動けば、互いの距離はみるみる離れていく。
捌くのが先程より格段に容易。
――否。
雪音が強化されている。
宝珠の加勢を受け、確実に有利になっている。
それを雪音が実感した瞬間、充填を済ませた高濃度のレーザーが撃ち出された。
至近距離。だがそれは雪音の目の前に集中展開された盾のオーラに防がれる。
ビリビリと肌を揺らす衝撃から僅かに動いて射線をずらし――とん、と近くの植物怪獣の背を蹴って跳躍。
落ち着いて蹴撃一つ。最後の宝珠が雪音の味方となる。
『私は破れぬ。貴様を退け、然る後に異世界に混乱を齎してくれる』
意志の強さを見せる魔王ガチデビルだが、もはや彼を守る宝珠は存在しない。
「……今を治めるべきは、今を生きる命」
雪音はそう呟くと、確かめるように目前に手刀を構えた。
白く柔らかい手だ。そこには鋭い爪も無く、闘気も魔力も篭っていないが、代わりにそれ自体が凄まじい技巧の塊である。
殺人的なまでの闘争本能を律する鋼の精神を身に付け、無我に至った者のみが辿り着ける領域。どこまでも純粋な『業』であった。
「或いは望まなかったその黒き魂を、骸の海へと還しましょう――」
次の瞬間、雪音が消えた。
威嚇的に両腕を広げたガチデビルに正面から、アルビノの少女が突進する。
憤怒獣の視界を振り切り、まるで矢のように真っ直ぐに。
双眸を見開くガチデビルが反応するよりも先に。
その一撃は放たれた。
『うおっ!!』
貫手が魔王の正中を捉え、衝撃。驚愕の声を上げさせる。
心技体の揃った最高速、最大威力の一撃は、ガチデビルの存在の核を正確に射抜いていた。
極限の武と、急所を見抜く殺人鬼としての技巧。それが共に発揮されたのだ。
「安らかに」
読み難いタイミングと速さで、雪音はもう片方の手を伸ばし――止めとばかりに口に刺さった白羽の矢を引き抜く。
その途端、貫手に存在の核を破砕されたガチデビルが、消滅していく黒き炎にゆっくりとその巨体を横たえる。
最後の最後まで悪あがきを続けた、魔界の帝王。彼がこの世界に君臨する事は、もう二度と無いだろう。
大成功
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