道の分かれた先には
「ひひ……やっと、やっと、この時が来た。」
こけしのような人形を持った男が道を走る。
「もうすぐだ、もうすぐ」
分かれ道、そこにある小さなほこらの前で、陣を描く。
「ひ、ひひひ!さぁ、全てを食らいつくせ!」
陣から浮かび上がる影、それは一気に数を増やし、男に群がった。
「ひ、ひ……喰え、喰って、喰らい、つく……せ。」
ギチギチギチ……不気味な音を響かせ、呼び出された眷属たちもまた、自分の信奉する邪神を復活させようとしていた。
「皆さん、UDCアースで邪神を復活させようとする動きがあるようです。」
アト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)は集まった皆を前に話し始めた。
「邪神の力を持った祭具が人の手に渡り、それによって狂わされた人が復活のための儀式を行ってしまうようです。」
といって、簡単なメモ書きの資料を配る。
「祭具は、いわゆるこけしのような形ですね。
ただし、なぜか口が二つ描かれています。
通常の場所と、後頭部に当たる場所ですね。」
暴食をつかさどる邪神らしいですね……とつぶやき、次は地図の描かれた資料を出す。
「儀式の行われる場所はここになります。」
街……というより村といった方がいいような、家がまばらで畑と田んぼと林の多い地図である。
その中の、村の外へ出る道を指さし、
「この道の脇にほこらがあり、そこで儀式が行われるようですね。
そこへ祭具を持ち込まれてしまうと、何が起こるかわかりません。
何とか阻止してください。」
お願いします、と頭を下げるアト。
「ちなみに、先ほども言いましたが、祭具に封じられているのは暴食をつかさどる邪神のようです。
祭具の持ち主には、そのような兆候が見られるようです。
お腹が減るのが早いとか、大量のご飯を食べるとか、ですね。
人の少ない村ですから、聞きだすのはそれほど難しくはないでしょう。」
実質、被害は予知にある一人だけのようで、村人からも警戒されることもないようだ。
「ところで、私が予知で見たのは、復活の儀式で出てくるのは眷属でした。
彼らの姿は、暗くてよくわかりませんが、数はそれなりにいるようです。
対して強くはないとは思いますが、くれぐれも無理はしないでくださいね?」
それでは皆さん、よろしくお願いします。
その言葉とともに、村のはずれへのゲートが開かれた。
ヨグ
ヨグです、今回もよろしくお願いします。
村で語られる、暴食の噂。
それを皆さんで突き止め、阻止してください。
第1章 冒険
『追跡戦【序】』
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POW : 虱潰しに走り回り、容疑者を探す。
SPD : 容疑者の痕跡を探し、追跡する。
WIZ : 容疑者の行動を予想し、先回りする。
👑11
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タイタス・レイヴン
【SPD】
「村の人達に聞き込みをすればわかるだろうか?」
村人たちには「やあ。すいません。たまたま仕事で立ち寄ったのですがお腹空いちゃってこの辺で食べるところってありますかねえ?美味しいところだと嬉しいけど。美味しいところだとたくさん食べる人もいるのかなあ。」と会話。食べるところを探しててというところから世間話をして最近たくさん食べる人っています?と話をつなげていき、噂や情報を集める。
「さて、村の人達に聞き込みをすればわかるだろうか?」
早速、村で聞き込みを始めたタイタス・レイヴン(復讐の大鴉・f06435)。
道を歩いていると、畑仕事の合間に休憩している男の村人の姿があった。
「やぁ、すいません。」
「おや、ここでは見かけない顔だな?」
「ええ、たまたま仕事で立ち寄りましてね。用事は済ませたのですが、お腹がすいてしまって……」
「おお、そういうことか!そうだなぁ……飯屋なら1件あるぞ、この道を行ったところだで。」
村人が指さした先に、入り口に暖簾のかかった家が見える。
「お、ありますね。美味しい所です?」
「ああ、味は間違いねえな!量も多いぞ、たらふく食っていけ!」
「いやぁありがたい、助かりますよ。……それだけ美味しければ、たくさん食べる人もいるんでしょうね?」
「ん?ああ、そうだな!ここの人間なら母ちゃんの料理以上に食っちまうな!」
がっはっは!と冗談のつもりか笑っている男。
「は、はぁ……じゃあ、私は行きますね。」
「おお、行ってらっしゃい!店主にはもっと食えよと言っておいてくれ!」
「ん?それはどういう……」
「おう、あれだけうまい飯作るのに痩せててよ、みんな不思議がってるんだ!」
成功
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アトシュ・スカーレット
判定:【SPD】
暴食をつかさどる邪神か…
それなら、食べたものが散乱してる場所を探してみようかな?
宇宙バイクのHimmelで【追跡】してみるね
街というより村なら、速度を落としてゆっくり走っても問題ないかも
痕跡を見つけたら、慎重に【追跡】するよ
【目立たない】ようにね
アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)はのんびりとバイクを走らせ、村で邪神の痕跡を探していた。
が、なかなか見つからず、気が付けば村のはずれまで来ていた。
「うーん……ここって、儀式の場所だよね。」
村の外への道、分かれ道のすぐ脇に、小さなほこらが祀られている。
せっかくだからと覗き込むと、男女二人がこちらを向いて立ちながら手をつなぎ合わせているような意匠の石像がこちらを向いていた。
いわゆる道祖神のようで、元々は村に悪いものが入り込まないようにと立てられたのだろう。
「……これは別に、おかしくはないな」
村に戻ろうかな……と考えていると、お供えとして置かれていたであろう湯飲みが目についた。
「ふぅん、『食い処、味彩』ねぇ。」
その名前には見覚えがある。
村に唯一、入り口に暖簾が下がっていた家にかかっていた看板だ。
「お参りしてるのが、ここの人だけなのか?」
それともたまたま最初に置いたのがそこの人か、よくわからないが覚えておこう。
そう考えて、また村へ向けてバイクを走らせた。
成功
🔵🔵🔴
ケイス・アマクサ
「食べる、ということは確かに楽しいな! まぁ、それとこれとは話は別だが!」
【行動】
俺は「【SPD】容疑者の痕跡を探し、追跡する」ことにする。
ということで、まずは村人への聞き込みだ!
聞きたいことは主として以下の3点!
・変わった様子の人物はいないか
・変わった出来事はないか(特に食に関することで)
・不審な農作物被害
特に2、3点目については、もしそういった事があれば現場で何か手がかりが見つかるかもしれないしな!
技能【追跡】もあるし、きっと重要な手がかりも見つかるだろうよ!
おっと、一応俺自身が村人から警戒されないように、旅行者を装って気さくにふるまっていくぜー!
「らっしゃーい」
「一人だぜ、入れるかい?」
「はい、空いてるところへどうぞ」
へっへ、やっぱり人が集まるのは飯屋だよな、と『食い処、味彩』に入ったケイス・アマクサ(己が罪業の最果て・f01273)
昼をすこし過ぎ、昼食をとり終えた村人が談笑しているところである。
「とりあえずビール……っていきたいけど、まだやることもあるし、おすすめの定食でよろしく!」
「へい」
と、どこか陰気な小太りの店主に伝え、周りの話をなんとなく聞き耳を立ててみるケイス。
「いやぁ、ここ入ったの久しぶりなんだけどよ。店主の奴どうしたんだい?」
「あぁ、俺もそう思った。急に痩せたなら病気かって思うけどな……」
「まーだからって、ここの飯がまずくなるわけじゃないしいいんだけどよ!」
どうも、店主の様子がおかしいらしい。
「……どうぞ」
「お、おう!こりゃ旨そうだな!」
実際いい匂いがする。
程よい加減に焼かれた魚の干物にネギと油揚げの味噌汁、小鉢には大根と南瓜の煮物……などがご飯とともに目の前に並ぶ。
と、それを置いて立ち去ろうとする店主の後ろ姿を見ると、服のサイズが合っていない気がした。
どうもきつそうである、主に腹回りが。
「……どう考えても、あの店主だよな」
大成功
🔵🔵🔵
イベリア・オディビエント
妹のリリィと協力して容疑者を探さなきゃ。
事前に持ち運び可能な限りな範囲での食料を持ち込んでおく。
リリィには村人から情報を聞き出してもらって、そのうちに私は影喰い狼を使いながら痕跡を探してみる。
痕跡を見つけ次第、追跡開始。追跡先でリリィと会えたなら合流して、事前に用意した食料を容疑者が見つけやすそうな場所に置いていこう。
もし先についても行動は同じ。
これで釣れればいいんだけど。
リリィ・オディビエント
姉さん(イベリア)と協力して事件を解決しにいこう。
キマイラフューチャーでコンコンして得たり、様々な手法で食料を確保して姉妹で持ち込んでおく。
警戒はされていないようだが、恐らく例の人物によって食料事情に難があるかもしれない。
困っているならば騎士として見過ごすわけにもいかないしな、食料の一部も村人たちに分けることにしよう。
「食料を運んでいた道すがら、辺鄙な人物の話を聞いてね。なにやら異様に大食いだとか。もし食料に困っているのなら、助力しよう」
会話を終えたらイベリアと合流しておこう。
情報を元に、容疑者が見つけやすそうな場所に食料の配置をする。
祠のある道へ先に行かれるのだけは気を付けておかないとな。
村はずれの道へ行く途中。
道端の見える所に食べ物を置き、しばらく待っていると、小太りの人影が現れた。
「えっと、あいつがそう?」
「ああ、そのようだ。姉さん。」
物陰から覗く2つの影、イベリア・オディビエント(引っ込み思案な処刑人・f02463)とリリィ・オディビエント(パラディンナイト・f03512)
いかにもなおにぎりと漬物、ペットボトルのお茶を並べた乗せたテーブルに近づいていく店主。
すぐ横に立ち、辺りを見渡し……人の気配がないことを察すると、おにぎりに手を伸ばした。
「それにしても、飯屋の店主だったか……多少食べ過ぎた程度では目立たぬわけだ」
「うん、そうだね。でも、わかっちゃえばこっちのものだし、何とかしようね、リリィ。」
口に押し込み、それをお茶で流すように食べている店主。
物陰から飛び出し、一気にそこへ詰め寄る二人。
「!?…ゲホ!ゴッホ!」
驚き咽て、身動きの取れない店主を見ると、尻のポケットからこけしの頭が見える。
抜き取るのは造作もないことだった。
「これは没収。」
「ああ、これで一安心だな。」
「く……ゲホ!か、返せ」
「そうはいかない」
後ろから羽交い絞めにするリリィ。
イベリアはそのまま手に持ったこけしを検めると、最初に説明された通りの特徴である2つの口が描かれていた。
「渡さねば……渡さなければ……!」
「く、おい暴れるな!」
「外へ!外に!渡すのだ!」
「致し方あるまい!」
リリィは店主の首へ腕を回し、絞め落とす要領で意識を失わせる。
「おつかれ、リリィ。」
「ああ、造作もない。」
白目をむいて泡を吹いてはいるが、しばらくは目を覚まさないだろう。
店主を近くの電信柱に身をあずけさせる形に座らせて、
「それにしても、外に渡せと言っていたな。」
「うん、なんだろうね?」
「これに操られているという話だったが……まぁ、あくまでも予知は予知、というところか」
ハズレならハズレでいいが、後で文句の一つも言ってやらねば。
そんなことを考えていると、道路脇の地面が急に盛りあがり、ギチギチという音とともに地中から邪神の眷属達が現れた。
「え、なんで!?」
「く……こいつら、祭具を狙って来たのか!」
「まってよ!ほこらの前に出てくるんじゃなかったのリリィ!?」
「素直にこの店主を行かせたなら、ということだったのだろう。」
なんにしろ、倒すしかない。
二人は武器をとり、眷属達と対峙した。
成功
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第2章 集団戦
『マガツアリス』
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POW : 古き神々の意志
【邪神「第零の蟻」】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD : 呪われし鉤爪
【異様に膨れた両腕の鉤爪】が命中した対象を切断する。
WIZ : 軍隊蟻の行進
いま戦っている対象に有効な【悍ましき妖虫】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
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イベリア・オディビエント
こんなに眷属が出るなんて……
せっかく手に入れた祭具を奪われてたまるか!
リリィ!ここは一緒に切り抜けよう!
守りが硬いリリィに祭具を渡すね。
取られないよう、しっかり守ってね!
リリィが守備をかためてくれるみたいだから
私はライオンライドを使用して攻撃に集中する。
この斧で皆処刑しなきゃ!
むやみやたらに攻撃しても仕方ないし
確実に1匹ずつ仕留めていく。
声をかけ合いながら気を引き締めていこう。
祭具を渡したリリィに攻撃が集中してきたら
リリィを攻撃する敵を倒すことを優先。
これだけは奪われるわけにはいかない!
リリィ・オディビエント
慣れていない依頼に上手く情報を纏めれなかった、恥じることはあれどここで挽回しないと!
狙いは私たちのようだね、なら話は早い。
「姉さん、祭具を私に!」
こけしを受け取りながら守りを固める。これでやつらは私を狙うと思う。
姉さんも狙われる様子があれば用意した盾を使い、技能の「かばう」を駆使して姉さんを守り攻めを任せる
祭具を持つ私に攻撃が集中してきたら祭具を身に隠し、ユーベルコード【無敵城塞】によって完全防備を築く
私と姉さんの連携ならこの程度の相手造作もないよ!
敵の数が減ってきたら私も積極的に剣で攻撃に参加しよう。
雛河・燐
助太刀いたす。
とかふざけて言いながらWIZ【ウィザードミサイル】で物陰から攻撃。
遅れてきたことを誤魔化してるだけなんだぞ。
にしてもやっぱり邪神はだめだねー。店主完全におかしくなってるじゃん
「姉さん!祭具をこちらへ!」
「う、うん、任せるよリリィ。」
イベリアから投げ渡される祭具、それを受け取ったリリィは盾を構え、守りを固める。
出てきた眷属、マガツアリスは10体。
見たところ、祭具へ向かってくるようだ。
「やはり、相手の狙いはこの祭具のようね。」
「うん、それなら頑張って守っててねリリィ。」
まずは数を減らさなきゃ、とリリィの後ろへ飛びのき、イベリアは黄金のライオンを召喚する。
その間、リリィは群がりカギ爪で切断しようとしてくる眷属を盾でいなす。
「よしよし、今日も力を貸してね。」
リリィ!と声がかかり、リリィは半身ほど横に避けると、黄金のライオンに乗ったイベリアがそこを一気に駆け抜けた。
ライオンの爪でひき倒され、さらにイベリアの斧が振り下ろされると、1体の胴が斬り離されていた。
その様を見た眷属達は、ギチギチと音を立てると、狙いをイベリアに変えたようだ。
「させるか!」
盾を構えたリリィが眷属へ突進し、イベリアへカギ爪を振り上げた個体を弾き飛ばす。
だが、いかんせん数が多い。
ライオンに数体のカギ爪が振り下ろされ、傷をつけていく。
「こ、この!」
イベリアがそのうちの1体へ斧を振り下ろし、頭を潰す。
その隙に、カギ爪を振り上げる眷属。
「姉さん!」
カバーが間に合わないと思った瞬間、上から眷属達に向けて炎の矢が降り注いだ。
火の影響か、眷属達は一斉に二人から離れて威嚇を始めた。
「助太刀いたす、ってね!」
そこに届く、飄々とした雰囲気の男の声。
声の方を向くと、電信柱の影から顔を出し、店主を覗いている雛河・燐(笑って嗤って・f05039)がいた。
「あーあ、やっぱり邪神はだめだねー。店主完全におかしくなってるじゃん。」
ってわけで、手伝っちゃうぜ!と言うが早いか、また炎の矢を頭上に発生させる。
「助かった、礼を言う。」
「いいってことよ。」
眷属達はそんなやり取りを威嚇しながら見ているが、ギチギチと音を立てると目が赤く輝く。
「雰囲気が、変わった?」
「さぁくるぜ!」
襲い掛かる眷属達、今度は3人にバラバラに向かってきた。
先ほどより明らかに動きが早くなっている。
「っておいマジか!」
雛河が放つ炎の矢に全く動じていない。
1体は動かなくなったが、ほかの個体からの攻撃を何とかかわす。
「これはちょっと厄介かー?」
ま、これくらいじゃないと張り合いはないよな、と飄々とした雰囲気を崩さず、ひょいひょいと避けながら炎の矢を生み出していく。
リリィは襲い来る眷属に向かい、防御姿勢をとっていた。
「てりゃあ!」
ライオンのフットワークで自身へ向かってきた眷属を引き離したイベリアは、リリィに殴り掛かっている眷属の1体を斧で叩き潰した。
「大丈夫?リリィ。」
「ああ、もちろん。ありがとう姉さん。」
あれだけの攻撃にも傷ついた様子はない。
盾の扱い方を熟知したリリィにとって、単調に殴りかかってくる眷属のカギ爪は脅威ではなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ケイス・アマクサ
「怪しいとは思ってたけどよ……」
さてさて、なんか出てきたのでお仕事しましょうねっと!
さて、行動についてだが……特に深く考えることは無いな!
【降魔化身法】を使って、あとは叩くだけだ!
相手の攻撃に対しての警戒は当然するけど、な。
それと一人で突撃せず、孤立しないように注意しつつ……だ!
狙う相手は、基本的には
・集団から少し距離を取っている。
・弱っている。
・ほかの連中から集中攻撃を受けている。
あたりを選定基準にするぜ。
さーって!
厄介なお客さん方にはとっと帰っていただきますかっと!
ミアス・ティンダロス
UDC達と仲良くなりたくて、できればり彼らを傷つけたくないが、人に危害が加わるなら別の話なんです。
『正しい』共存の道のためにこそ、UDCの力が悪用されることをほっとけるわけにはいきません。
と、心の中で自分を説得しながら戦います。
蝙蝠のような羽をもつ馬と昆虫の交雑体に見える【星間の駿馬】を召喚し、その機動力をもって敵をちょくちょく攻撃しようとします。
【悍ましき妖虫】は違う相手を同時に対応できなさそうだから、こうすれば多少牽制になるかもしれません。
できれば僕自身も衝撃波で敵の行動を邪魔してみます。
雛河の炎の矢で牽制されていた眷属、マガツアリスに向かって飛び掛かる、小さな影。
蝙蝠の羽に馬のような体、外殻は昆虫のような光沢がある、ビヤーキーと呼ばれる眷属である。
すれ違いざまの一閃、1体のマガツアリスの首が落ちた。
「おお、助かるー!」
「大丈夫、ですか?」
逃げ回る雛河におずおずと声をかけてきたのは、ミアス・ティンダロス(夢を見る仔犬・f00675)だった。
「うんうん、大丈夫よー。」
「そっか、よかった。」
もう1体のマガツアリスは相手が増えたのを見て、自身の体から別の蟲をボロボロと生み出した。
それは地面につく前に飛び上がり、羽虫の群体となってビヤーキーへ襲い掛かる。
「……悪い子は、ここで倒さないと。」
ビヤーキーが羽虫に取り囲まれる寸前、ミアスの放つ衝撃波によって切り裂かれた羽虫が落ち、ビヤーキーの逃げ道が作られる。
そのまま羽虫の群れから本体のマガツアリスへ飛び掛かるビアーキー。
羽虫の制御に気をとられていたマガツアリスに対し、ビヤーキーのひずめがその腹に突き刺さり、背中へ抜けていった。
「……本当は、この子も悪い子じゃないのに。」
マガツアリスの亡骸に、黙祷を捧げるようにミアスは目を閉じて祈りをあげていた。
「あれだ、店主が怪しいって話をしたけどよ……。」
その少し前。
イベリアに引き離された2体のマガツアリスに、横から飛び掛かる大柄な影があった。
「まさか罠にかけると思わなくって、な!」
元々大柄なケイスが悪鬼の力を宿し、普段より一回り大きく肥大した筋肉から生み出される、重い拳。
その一撃をまともに受けたマガツアリスは、そのまま動かなくなった。
だが、その反動は大きく、限界を超えて使われる筋肉からは血がにじみ出している。
「へ……まだ少し、使いこなせてねえか。」
口ににじむ血の味に、ペッと唾を吐く。
その様を見たもう1体のマガツアリスがカギ爪を振り上げて襲い掛かる。
「……だがな、まだ動けるんだよ!」
ケイスが少し体勢を低くする……と見えた時には、全速力で駆け出していた。
その勢いのまま体はマガツアリスのカギ爪の下をくぐり、拳を胸に叩きつけ……そのまま突き抜けた。
「これで厄介なお客さんは以上、かな。」
腕を振るい、マガツアリスの死骸を道路に投げ捨てて周りを見渡すと、残りのマガツアリスも仲間によって倒されていた。
「何とかなったな」
「おー、みんなお疲れさん!」
「終わった、かな?」
傷もそれほど受けずに眷属達を倒しきった一同。
「そういえばリリィ、祭具は大丈夫?」
「ああ、ここに」
ある……そういって盾とともに握っていた祭具のこけしをリリィが取り出すと、最初に見た時よりも口が明らかに増えていた。
「え、なに、これ?」
「いやまて、少し前まではこうではなかったぞ!?」
「ね、ねえ。あ、あれ!」
おびえた様子でミアスが一方を指さしている。
その方向を見ると、地面に倒れていたマガツアリスを飲み込もうとする口が、地面から生えていた。
そのままバクン!と閉じ、飲み込み、舌なめずりをする口。
地面からさらに腕が生え、マガツアリスをつかみ、また別の口へ放り込む。
「……あー、これはあれか。祭具の周りに餌があれば出てくるってやつだな。」
「そんな感じだねぇ。」
ケイスの言葉に同意する雛河。
そうこうしているうちに、邪神は地面を食い破って現れた。
じゅるり……。
舌なめずりとともに、邪神は手近な猟兵たちへと襲い掛かってきた。
大成功
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第3章 ボス戦
『牙で喰らうもの』
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POW : 飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
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雛河・燐
これはーなんと言うかー…とても呼び出しやすい気軽な邪心だね。
ありがたみも何もないねぇ。
SPD【レプリカクラフト】で犬や猫、大雑把に言えば生物の剥製を複製し注意を引けないかと試す。
注意が引ければ他の人にとっての隙が作れるはずだから。
タイタス・レイヴン
「邪神が相手ならば喜ばしいことだ。復讐を果たせるからな。邪神は全てうち滅ぼしてやる!Let's morphing !」
変身コールで完全戦闘形態へ移行。更に「フォーム・エクシードレイヴンッ!モード・ジャガーノートッ!!」真の姿である巨大な鋼鉄の大鴉へと変貌し、それと同時にモード・ジャガーノートを発動。その姿は青き炎に包まれる。
青い炎を纏った大鴉は「牙をで喰らうもの」を焼き尽くすかのように空中から突撃を仕掛ける。
「これはー、なんていうかー……とても呼びだしやすい、気軽な邪神だねぇ。」
ありがたみも何にもないやな、とつぶやいた雛河は、簡単に犬や猫のはく製のようなレプリカを手元に作り、
「まーとりあえず、腹ペコ邪神は餌で釣るかな!」
向かってくる邪神の横に一気にばら撒く……が、大口を開けて襲い来る邪神は見向きもせず、
「……って、俺たちの方が美味しそうって事ー!」
バクン!と口を閉じる。
一同は間一髪避けるが、レプリカ作りで反応が遅れた雛河の服の一部が、邪神の牙に引っかかっていた。
「え、ちょ!」
口を上へ向ける勢いで空中に放り出される雛河。
そのままあけられた大口へおさめられてしまうか、と思われた。
「Let's morphing !」
と、響き渡る変身コール。
口に収める直前の邪神へ、突進する巨大な鴉がいた。
鋼鉄の体を青い炎に包み、その質量を生かした一撃は、邪神の体勢を崩すのは造作もなかった。
「……うっひえー、助かったー。」
「大丈夫だったかね?」
倒れた邪神を見て振り返った大鴉は、渋い男の声で語り掛けてきた。
「あ、ああ。ありがとうな」
「そうか、ならばいい。」
大鴉は変身したタイタスである。
傷がそれほどないのを確認すると、タイタスは邪神へ向き直る。
「今、私は気分がいい。邪神が相手ならば喜ばしいことだ。」
言葉とともにバサッ!と飛び上がる大鴉。
「復讐を果たせるからな。邪神は全てうち滅ぼしてやる!」
大鴉の体が、青い炎に包まれる。
「限界突破……今ここで全てを出し切るッ!この力、破壊神の如き!モード・ジャガーノートッ!!」
先ほどより一回り大きい炎を纏った大鴉が、やっと起き上がった邪神へ渾身の体当たりを仕掛けた。
一番大きな口の下顎をかすめ、もぎり取る。
「ひゅー、やっるー!」
「……今少し、致命傷には程遠そうだな。」
「まーまー、これからだからいいんじゃね?」
ちょうど注意もこっちから離れてくれたし、と言葉をかける雛河。
うぐるぉおおお!!と一声咆哮すると、邪神は地に落ちているマガツアリスの死体へ向かい、飲み込むように捕食していた。
「ああ、確かに。まだこれからだな。」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リリィ・オディビエント
でたな…!召喚の阻止をしようと思っていたがそれすらも罠だったのかもしれないね
姉さんのことは、私が守る!
戦法は変わらず守りを担って姉さんに任せるスタイルだけど、二人で敵う相手でもなさそう
仲間たちにも気を配りPTのメイン盾になろう
眷属との戦いで助けてもらった雛河・燐がいれば庇うことで借りを返したいところだね
剣で牽制しながら盾を構えて前面に立つ
相手のユーベルコード【貪欲なる顎の新生】は警戒すべき技だ
咄嗟にSPDを回避できるとも思えない
でも相手の技に合わせて体を潜り込ませるぐらいはできるだろう
盾の技能【かばう】で咄嗟に割り込みユーベルコード【騎士の誇り】を発動
自身を危機に追い込むことで強化を計る
イベリア・オディビエント
こいつがボスかぁ…でっかい口…
齧られたら厄介そうだなぁ
ここまできたらキッチリ終わらせよう
行くよ!リリィ!
相手の行動を伺いつつ、斧でダメージを与えていこう。万が一噛み付かれそうになった時は毒蛇のナイフで【毒使い】を使用。
タダで齧られるわけにはいかない。私の毒ごと飲み込んでしまえ。
もし私らではなく、店などにある商品を食べようとするのならそれに向かってナイフを投げて毒を仕込ませてみる。
私も食べるのは好きだけど
何でもかんでも食べるのは身体に毒だよ?
「こいつ本当に、でっかい口してるよねリリィ。」
マガツアリスを飲み込んだ邪神の口が再生していくのを見た、イベリアの素直な感想。
「そんなことより、来るぞ!姉さん!」
イベリアへ襲い来る邪神に対し、あえて盾を構えず庇うリリィ。
大口を開けて飲み込まんとする邪神に対し、下手に防御をするとそのまま飲み込まれる。
その判断は正しく、二人のいた空間を飲み込む邪神。
「あ、ありがとう。」
「まったく、これだから放っておけないな、姉さんは。」
そんなに食べたければ、この毒蛇のナイフを口に放り込んでやろう。
そう考えて、イベリアはあえて避ける動きを見せなかった。
だが、リリィの『姉を傷つけさせない』という強い意思を感じ、そのままナイフをしまった。
「……ごめんねリリィ。」
「いや、構わない。さぁ、反撃に移ろう、姉さん。」
「うん!行くよ!」
斧を構えるイベリアと、盾を構えるリリィ。
邪神は相変わらず、相手に喰らいつこうとする。
「動きは見えた!」
先ほどの姉を庇う動き。
その間も冷静に邪神の動きを見ていたリリィは、邪神の口の先に盾を叩きつけ、攻撃をそらした。
「たりゃあ!」
横を通り過ぎていく邪神に対し、斧をたたきつけるイベリア。
右手をライオンの頭部に変え、野生の力を開放し叩きつけられた斧により、邪神の胴体は切断されたかのように見えた。
「……ひい!」
「な、これは……。」
確かに振りぬいた。
手ごたえもあった。
現に邪神は、二つに分かれた。
そして……その切断面に牙が生え、間の空間を呑み込み、新たな口として繋がった。
「こいつ、何でもありか!」
「で、でも。」
ダメージは入ってそう。
その呟きの通り、邪神の動きは先ほどと比べると、悪くなっていた。
「うん。殴り続けてれば勝てるね。」
「そのようだ。」
では続けよう。
守りのリリィと攻めのイベリア、二人の息の合った連携は、確実に邪神の体力を削っていた。
だが邪神も、ある程度身を斬られたとみると、落ちているマガツアリスを拾って口に運ぶ。
「……私も食べるのは好きだけど、なんでもかんでも食べるのは体に悪いよ?」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ケイス・アマクサ
「ぐぇー! なんつーか案の定だけどよ、やっぱ気持ちわりぃなぁこの野郎!」
お口のお化け?貪食の化身?何だ?どんなもんでも食うのか?
ま、いいや。ほぼほぼ遭遇戦って感じだがやることは変わらねぇな。
【降魔化身法】を使ってからの攻撃!攻撃!攻撃!
代償での体の負担は……ま、大丈夫だろ!
動きの方針は
・単独で突っ込まない
・無理をしない
以上!
【戦闘後】
あ、目撃者とか居るのかな?
居たのなら一応、記憶消去銃で邪神だの眷属だのの記憶を消してフォローしておいた方が良いかな!
コロッサス・ロードス
「あれが邪神か……これほど悍ましい怪物は初めてだな」
基本的に『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間を『かばう』事で被害を抑える為にも、敵に肉薄して『おびき寄せ』攻撃を誘う
但し闇雲に突出する愚は冒さず、他の猟兵と連携して確実な隊列維持に重点を置いた闘いに徹す
攻撃は『鎧砕き』と『2回攻撃』で相手の防御力を奪いつつ、
【飽き止まぬ無限の暴食】等に対しては、敵の形態変化を素早く『見切り』、その動きの隙を突くために相討ち『覚悟』で敵の懐に飛び込み、腹部にある口に目掛けて『捨て身の一撃』【黎明の剣】を放つ
「もはや貴様に喰わす肉……否、命はない。最後の晩餐は我ら猟兵の刃と心得よ」
「ぐぇー! なんつーか案の定だけどよ、やっぱ気持ちわりぃなぁこの野郎!」
先ほどの切断からの再生を見たケイスは、こみ上げる嫌悪感と戦っていた。
「口のお化け?貪食の化身?何でも食うのかよ。」
だが……と、体に悪鬼の力を降ろし、構えをとる。
「ま、いいや。やることは変わらねぇな!」
そして、リリィの盾でいなされ、二人から少し離れたところに突っ込む。
叩きつけられる、重たい拳。
邪神はさらに体勢を崩し、近くの電信柱へもたれかかるようによろめいた。
「あ!店主!」
意識を失ったままの店主に邪神が近づく。
……が、まるで彼が存在していないかのように無視し、また起き上がる邪神。
どういうことだ?という考えが浮かぶが、邪神がそのままこちらへ向かってくる。
「く、今は……。」
「どっせいっ!」
ケイスの目の前で、横から飛び出してきた巨大な男の剣により吹き飛ばされる邪神。
「こいつが邪神か、これほど悍ましい怪物は初めてだな。」
ケイスも人の中では大きい方だが、この男はその上をいっていた。
「すまねえ、助かった。」
「構わん、俺の前に敵がいただけだ。」
剣を構えた男、コロッサス・ロードス(金剛神将・f03956)は邪神へ向く。
「あぁ、そうだな。」
体から血がにじむ、その感触を味わいながらも構えをとるケイス。
「来るぞ!」
「おう!」
変わらぬ邪神の突進。
構えた剣で、勢いを受け止めるように立ちはだかるコロッサス。
「我、神魂気魄の閃撃を以て獣心を断つ。」
邪神が間合いに入ったと見るや、一気に動いた。
「はっ!!」
裂帛の気合とともに振りぬいたコロッサスの剣により、邪神の体はまたも二つに裂ける。
「うらあ!!」
さらに、別れた片側をケイスの拳が弾き飛ばした。
「これでどうだ!」
吹き飛ぶ邪神の上半身。
だがやはり、下半身も後を追うように飛びのき、口を閉じるようにつながり、新たな口となった。
「ち、またかよ。」
「ぬ?」
あれを見ろ、とのコロッサスの声にケイスも邪神を見ると、邪神の全身から紫色の体液のようなものが滲み出し、全身の肉を膨らますように膨れた。
まるで、憑依させた霊により、筋肉のリミッターをはずして戦うケイスのように。
「こんのやろう、俺の技じゃねえか!」
「ふむ。だが、そろそろ限界が近いのだろう。」
成功
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イベリア・オディビエント
アイツは確実に弱ってる…!このままダメージを与え続ければ倒せるはず!
リリィ!このまま押し切ろう!
同行してくれる人がいればよろしく!
喰われるのだけは勘弁!
さっきみたいにリリィに心配かけるわけにはいかないし毒付与は止めておこう。
【二回攻撃】を出し惜しみなく使って、再生する隙を与えないくらい切り刻んでやる。
出来れば首切りたいけど首どこだか分かんないや……。
トドメをさせるならリリィと共にガチキマイラを使用する。
暴食なのは私達姉妹も一緒。
喰われるのはお前の方だったね!
リリィ・オディビエント
店主を無視した…?なにか理由があるのか?
とかく、後を続いた二人の猟人へ更に続き、再び攻撃を仕掛ける。
ここまでくれば防御は最低限に、より破壊力のある姉さんを中心に攻撃をサポートする。
「いい加減に倒れて…よ!!」
いくら復活しようと、何度だって黒剣を突き立ててやろう。
もしもトドメを刺せそうなタイミングなら双子で同じユーベルコードを使おう
こけし…祭具もなんとかしないとな。
「邪神が神降ろし……って、なんだか変な気もするね、リリィ。」
「ああ、確かに。」
ぐるる……ぐぅぉおおおお!
膨れ上がり咆哮をあげる邪神と対峙するイベリアとリリィの姉妹。
「来るぞ!」
あいも変わらずの大口を開けての突進。
だが、勢いが違った。
「く、間に合わん!?」
「リリィ!」
盾で弾こうとしたリリィだったが、その手からは盾がはじき飛ばされた。
幸い、鼻先を殴りつけた勢いで飛びのいた二人は、喰いつかれはしなかった。
邪神はその勢いのまま駆け抜け、その足元をすさまじい勢いの影が滑り込む。
「……足は、もらったぞ」
青い炎を纏った大鴉である。
そのまま転がるように止まる邪神。
再生のためか、手近なところに落ちていたマガツアリスに手を伸ばす。
その瞬間、マガツアリスのレプリカは爆発した。
「あっはっはー、やっぱりこっちを食べ物だと思ったかな?」
腕と足をもぎ取られた邪神は、それでも立ちあがろうともがく。
紫色の体液をまき散らしながら、うごめいている。
「チャンスだよ、リリィ。このまま倒そう!」
「そうだな、姉さん。」
行くよ!という声とともに二人は武器を持ち、邪神へ突進する。
途中、二人は黄金のライオンの気迫を纏い、まるで2体の黄金のライオンが襲い掛かるがごとく。
「てりゃあああ!」
その勢いのまま振り下ろされるイベリアの斧とリリィの剣。
潰され、斬りつけられ、いくつかの肉隗と化した邪神。
「はぁ……はぁ……」
「……終わった、かな?」
息を整えながら、様子を見る二人。
肉隗はわなわなとうごめいていたが、少しするとその動きを止めた。
「ああ、そのようだ。」
「よっしゃ!これで終わりだぜ!」
大男二人の目の前で、肉塊はドロドロに溶けていき、紫色の煙となって消えていった。
「良かった~……。」
「おっと。」
ふらついたイベリアを支えるリリィ。
「ふふ、お疲れ様だな、姉さん。」
「ありがとう、リリィ。」
「うーん……」
「あ、目が覚めた!」
店主が目を覚ますと、周りを一同が取り囲んでいた。
「あ、あれ……?あぁそうだ、こけしは。」
「それなら、ここにある。」
リリィの手元には、上から紫色の絵の具をかけたように変色したこけしがあった。
「……かなり、変わりましたね。」
「そうかもしれんな。」
「そうだ、私はそれを、外に持っていこうとしていたんです。」
ぽつりぽつりと店主が語ったところによると……
「気が付いたら店に置いてあって、それを見てからは食べなければ、飲み込まなければ……そういう風に体が動いて、口に無理やり詰め込まれる気分でした。そんな毎日が続いてたのですが、今日の昼飯を終えた頃に一組の夫婦が来ましてね。」
『そのこけしを村の外に出せ。そうすれば、後は私たちが何とかしよう。』
「……そういうので、こけしを手にして歩いていたところ、そこのお二人に。」
「まって、その夫婦、なんか怪しくない?」
「なんでしょうね……今考えると確かに、なんでその言葉に従ってたのか。」
言われて改めて気が付く店主。
「操られていた、というのが正しいのかもしれない。」
「……そう、なんでしょうね。」
起き上がり、腹をさする店主。
「さて、晩の分の仕込みをしなければ。皆さん、腹が減っていませんか?」
「え、あ……。」
ぐう、と音を立てるイベリアのお腹。
「はっはっは、皆さんうちで食っていってください。お代はいただきませんよ。」
「ああ、いただいていこう。姉さんの腹はだいぶすいているようだしな。」
「ちょっとリリィ!」
こうして、事件は幕を下ろした。
こけしのような祭具は力の一切を失っているようだった。
後日、店主はそれを村のはずれの小さなほこらへ祀り、手を合わせた。
……道祖神である一組の夫婦の石像が、それを変わらぬ笑顔で見つめていた。
大成功
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