7thKING WAR②〜バスジャック黙示録園児
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「ちょっとだ、ちょっと借りてすぐ返すだけのつもりだったんだ!」
「お、俺だってそうだ! ただちょっと、その日はデカいレースがあって……」
「なあ、頼む……もうちょっとでアケミちゃんが落とせそうなんだ!」
「それでちゃんと返していられればわたくしもこんなことはしていませんわ。まったく、揃いも揃っていけない子ばかり……」
目の前に平伏する悪魔たちを見下ろし溜息を尽きつつ言う巨大な氷の半身を持つ女。彼女こそ西のラスボス『アイスエイジクイーン』。今彼女は命知らずにも自らに借金した悪魔たちに取り立てを行っている所だ。
「か、返す気はある! ただもうちょっと待ってくれれば……!」
「Punish you……! お尻ぺんぺんするぞ悪い子めら……!」
突然の一喝に、言い訳していた悪魔たちが黙る。
「当てもないくせに適当いわないでくださいまし。仕方ありません、今回は特別にわたくしがあなた方に相応しい悪魔的遊戯を用意してあげましょう。見事それを成し遂げられればあなた方の借金は帳消し、それどころか出来次第によってはさらなる報酬を差し上げますわ」
債権者からのゲームの提案、それは往々にして破滅への第一歩だが、金に目のくらんだ悪魔たちはそれすらももう分からない。
「わ、分かった! やる、何でもやるよ!」
「ふふ、いい子ですわね。ならお乗りなさい、あの希望のバスへ!」
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「みんなー! 7thKING WARの始まりだよー!」
ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)を乗せた超乳幼女、花園・ぺしぇが元気よく告げる。デビルキングワールドで時代のデビルキングを決めるとともに、この世界唯一のガチワルい悪魔『ガチデビル』の凶行を止めるための世界一丸となっての大戦争だ。
「で、最初にやるのは西のラスボス『アイスエイジクイーン』ちゃんの妨害! クイーンちゃんは自分に借金している悪魔たちを脅かして、バスジャックさせちゃったんだって!」
流石はキング候補ともなれば中々にやることが悪辣だ。変な話だが真っ当な悪だと感心する猟兵たち。
「だから、そのバスに乗って悪魔たちをやっつけて、バスを助けてあげてきて!」
うん、やっぱりそういう依頼になるよね……と頷きかけたところで猟兵は違和感を覚える。バス? 乗客じゃなくて?
「うん、魔界の『バスジャック平原』ってとこには魔界の幼稚園児達を無理やり体内に乗車させる、気性の荒い「野生バス」が住んでるんだけど、今回悪魔たちはそのバスに自分から無理矢理乗り込んで逆バスジャックをしちゃったんだって!」
やっぱりデビルキングワールドはデビルキングワールドだった。ていうか野生バスってなんだよ。
「悪魔たちは魔界の幼稚園児なんだけど、ついミニ四駆のレースの為にパーツを買っちゃったり、どうしてもお菓子とジュースがやめられなかったり、好きな子にお花をプレゼントしすぎちゃったりして借金を重ねた多重債務者なんだって。多い人は何と1000D……1000円もクイーンちゃんに借金してるから逆らえないみたい!」
ああ、うん、幼稚園児には大金だよね。なお踏み倒すとか親の財布からくすねるとかそういう発想には年齢的なものもあってまだ至らないらしい。
「それでバスジャックしてその上でクイーンちゃんの配下として大暴れすれば借金帳消し、さらにお小遣いボーナスまでもらえるからすっごい張り切ってるよ!」
この悪魔王遊戯を成功させることでクイーンは一歩次のデビルキングに近づく。それ自体は別に問題はないのだが、猟兵によるガチデビル撃破を念頭に置いた場合、彼女には少し道を譲ってもらわねばならないのだ。ここは少しばかり邪魔をさせてもらおう。
「だから、みんな頑張ってバスの中で多重債務者の幼稚園児を倒してきてね! バスの中でKOするか、捕まえてバスから放り出しちゃえばOK! デビルキングワールドの悪魔だからUC全力でぶつけるくらいなら全然平気だけど、その分すっごい強いから油断しないでね!」
デビルキングワールド民はガチデビルも認める36世界最強の一般人である。幼稚園児とはいえその実力は並の集団型オブリビオンを軽く凌駕するだろう。
「攻撃は泣きながら組み付いて来たり、やけになって暴れ出したり、寄ってたかって一人をいじめたりしてくるよ!」
そう言われると子供っぽいが、威力が全てオブリビオンのUCレベルというから洒落にならない。
「幼稚園児やクイーンちゃんはやっぱりみんないい子なんだけど、ガチデビルはほんとーに悪い奴だからそれをやっつけるために悪魔王遊戯は全部潰さなきゃならないんだ! だから皆、頑張ってきてね! あ、それと!」
ミルケンは大事なことのように指を立てて言う。
「おやつは300円までだからね! あと家に帰るまでが依頼だよ! 最後まで気をつけなきゃだめだからね! それじゃ皆、いってらっしゃーい!」
多分悪魔たちも守っていそうなルールを念押しし、ぺしぇは猟兵たちを遠足もとい依頼へと送り出すのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。7thKING WARの始まりです!
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……狭いバスの中で戦う/幼稚園児をバスから放り出す』
今回は『バスジャック平原』にて、借金を重ねた多重債務幼稚園児たちが逆バスジャックした野生バスに乗り込み、彼らを鎮圧していただきます。
幼稚園児とはいえバス内にぎゅうぎゅうに詰まっているので、非常に狭くて動きづらいです。この狭い状況でどうにか戦いKOするか、バスから放り出してゲームから脱落させるかすればプレイングボーナスとなります。
幼稚園児たちはオブリビオンではない一般人ですが、デビキン民なのでカンスト猟兵が全力で攻撃UC叩き込んだくらいじゃ死にません。
敵は『D多重債務者』で使用UCも基本同じですが、外見は幼児化し可愛らしい幼稚園児になっています。想像力の翼を限界まで広げてイラストの姿を脳内変換してください。無理ならそれっぽい年齢のをトップに立たせといたんでそれでも見といてください。
デビルキングワールドなんでネタ色強めですが、割と敵は普通に集団型として強いんでそこだけご注意を。
それでは、命より重いプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『D多重債務者』
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POW : 猿猴捉月(えんこうそくげつ)・・・!
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【負のオーラ】を与える。
SPD : 阿鼻叫喚(あびきょうかん)・・・!
【泣き喚きながら羽交い絞めしたり】【泣き叫びながら足に組み付いたりして】【自分達の為に倒されてくれと懇願する姿】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 雲散霧消(うんさんむしょう)・・・!
自身の【背負う借金の額が10倍】になり、【自暴自棄になる】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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鍋島・小百合子
WIZ重視
連携アドリブ可
その歳で借金を拵えるとは恥ずかしくないのか!?
己の責は己で贖え!
「楽など許さぬわ!地道に返すがよい!」
狭いばすに乗り込めば一喝と同時に薙刀の一閃で吹き飛ばしていく(なぎ払い、範囲攻撃、衝撃波(以下壱)併用)
悪魔の童供がぎゅうぎゅうと詰められた様相は見るに滑稽じゃな・・・そしてそれを吹き飛ばしていくのはなお快感なり
こちらへの攻撃には言論物理問わず薙刀による吹き飛ばし反撃(壱、カウンター、咄嗟の一撃併用)で返していく
なおもばす内が騒がしいようであればUC「煙人間変化」で煙状の体に変化し彼奴等の体に巻きついて窒息させて苦しめてやろうかの(継続ダメージ、息止め、逃亡阻止併用)
迅雷・電子
【心情】うーわ…マジで幼稚園児かい…しかもこんなにぎゅうぎゅうの空間か…仕方ない、大人気ないけどやるしかないね…バスジャック阻止のためにもね!
【作戦】周囲の一般人を【恫喝】して【恐怖を与える】事でなんとか空間を作ってもらうよ…すまないねぇ…本当に…後で謝っておこうかね…
そして戦闘では敵の攻撃は【見切り】か【受け流し】で回避し、連続つっぱりで攻撃していくよ!つかみかかってくる敵は【怪力】を使い相撲の要領で腰部分を掴んでバスから投げ飛ば
すよ!「ちびっこ相撲になるかと思ったけどなかなかやるじゃないか!もっと来な!」(絡み・アドリブOK)
魔界はバスジャック平原。幼稚園児を拉致する『野生バス』の群生地として名高い場所である。本来幼稚園児はそこに近づいてはならないのが魔界の常識であったが、色々事情が重なってはそうもいかない。
今ここに、一つのバスに大量の幼稚園児が詰め込まれていた。
「うーわ……マジで幼稚園児かい……しかもこんなにぎゅうぎゅうの空間か……仕方ない、大人気ないけどやるしかないね……バスジャック阻止のためにもね!」
平原を走るそのバスを見て、迅雷・電子(女雷電・f23120)が若干引き気味に言う。
事前に聞いていた通り、バスの中は幼稚園児で隙間なく埋め尽くされていた。だがその狭い空間に、猟兵は躊躇なく乗り込んでいく。
「な、何か来たぞ……!」
当然注目はそちらに集まるが、その目は驚愕や恐怖よりも半ば自棄気味な決意の方に満ち溢れていた。はっきり言って幼稚園児がしていい目ではないが、そうなるにはそれ相応の理由があった。
「その歳で借金を拵えるとは恥ずかしくないのか!? 己の責は己で贖え!」
電子と共にバスに乗り込んだ鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)が、園児たちを一喝した。そう、この幼稚園児たち、この幼さでアイスエイジクイーン借金(最大1000円)をし、そのカタとしてこの死のゲーム(安全性保障済み)に参加していた多重債務幼稚園児たちなのだ。
そして一喝と同時に小百合子の薙刀が一閃される。それは狭いバス内を思い切りなぎ払い、衝撃波まで巻き起こして園児たちを押しのける。
「う、うわー!」
その勢いで窓から数人の園児が転げ落ちていく。これは大惨事……なんてことは一切なく、明らかに刃が当たった者も傷一つなく、落ちて言った園児も土汚れこそついているが別にどこも怪我していない。
これぞまさにデビルキングワールドクオリティ。だが、ゲーム脱落には変わりなく借金を消す手段は潰えるとあって、園児たちも必死に抵抗する。
「だ、だまれ……俺たちにだって事情があるんだ……!」
懸命に強がって襲い掛かろうとする幼稚園児たち。なお事情とはお菓子やおもちゃの買い過ぎだったり、好きな女の子に見栄を張ってプレゼントしすぎたりである。
「やかましい! ぶっとばすよ!」
そんな子供たちを、電子が一喝する。大人からの大声にはやはり反射的に怯えてしまうのか、襲い掛かろうとしていたその手は一斉に止まり、思わず後退ってしまう。
(すまないねぇ……本当に……後で謝っておこうかね……)
そうは思うが、作戦上ここは相手をKO、もしくはバスから放り出さなければならないのだ。そうしてできた僅かな隙間に電子は体を捻じ込んでいく。
「どすこいどすこいどすこい!!」
そのまま前にいる子どもたちに【連続つっぱり】を叩き込み、有無を言わさず張り飛ばしていく。子どもたちは当然吹っ飛んでは行くのだが、やはり怪我などはなく狭いバス内で器用にぶっ倒れたり、あるいはうまいこと窓から落ちていくだけである。
「こ、こうなったら……俺はこのアイテムを使うぞ!」
一人の幼稚園児が取り出した瓶を一気飲みし、猛然と小百合子に襲い掛かっていく。投げ捨てたその瓶を見ると、乳酸菌飲料(500ml)の文字が。どうやら借金の上乗せを条件にパワーアップアイテム(主にプラシーボ効果)が支給されているらしく、その効果で園児は文字通りにすっ飛んでくる。
「甘いわ!」
それをカウンターで薙刀を振り、綺麗にかっ飛ばす小百合子。飛翔の勢いのまま、その園児は窓から綺麗にアーチを描いて飛んでいった。
「悪魔の童供がぎゅうぎゅうと詰められた様相は見るに滑稽じゃな……そしてそれを吹き飛ばしていくのはなお快感なり」
狭いところで滅茶苦茶に暴れるという普段ない快感に小百合子はちょっとうっとり気味だ。その横で、電子も自分に群がる園児たちと組み合っている。
「ちびっこ相撲になるかと思ったけどなかなかやるじゃないか! もっと来な!」
泣きながら滅茶苦茶にしがみついてくる園児たちだが、意外としっかり腰を落としてまわしを取ってくる。やはり園児とはいえ36世界最強一般人、それは異世界の成人男性よりよほど力強く、その小さい体の中の無限の可能性を感じさせた。
だからこそ、手加減はしない。
「どすこぉぉぉぉい!」
そのまま腰を取り返し、見事なうっちゃり投げで園児をバスの外へ放り出す。
「ず、ずるいぞ! 大人の癖に!」
ここに来て子供アピールを始める園児たち。額はともかく多重債務からのデスゲームという青年マンガのような真似をしておいて何をいまさらという感じだが、今更泣いたって容赦はしない。
「我はもくもくと体を変えては……煙に巻く!」
小百合子が【煙人間変化】し、狭いバスの中にガスの体を充満させた。
「げほっ、げほげほっ!?」
息苦しくなり目も明けられなくなる子供たち。恐らく幼稚園で習っているのか、丁寧に体を伏せて口にハンカチを当て移動を始める。
「お帰りはこっちだよ!」
電子が入口を開けておけば、おさないかけないしゃべらないでそこから出ていく子供たち。なおバスは走行中だが、見事に転がってダメージは消している。
こうして和風武術を使う女性二人の前に、良い子の多重債務者たちは見事バスから降ろされていくのであった。
大成功
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ジョウ・クロビス
アドリブ・絡みOK
デッドラインを持って対処する。
銃撃しつつジャンプで踏み台にしたり天井付近の壁を蹴ったりして相手を避けつつ射撃を行う。踏み台にするときにUCを混ぜる。
属性攻撃による凍結させる魔力球を放り込んでドーム状の極低温空間を作り出し動きの抑制を狙う。
「子供であれ、敵になるのなら排除する」
恐怖を与える獰猛な覇気や威圧を放つ。
「クイーンを討てば借金もなくなるだろ。残った金もしらん」
要約すると投降して道を開ければ借金もなくなり金も得られる。
降りるか獰猛な獣と死合うか二択を迫る。
幼稚園児にバスジャックされた状態でバスジャック平原を走る野生のバス。そんなパワーワードの塊に次に乗り込んできたのは、ジョウ・クロビス(暗黒時代を知る者・f37038)だ。
ジョウは手にしたレバーアクション式ライフル『デッドライン』をまず一射し、園児たちを威圧する。傍から見ればどちらがバスジャック犯だか分かったものではないが、この場合はこれが正しい行動なので何も問題はない。
さらにそのまま園児に向かって銃を撃ちかければバスジャック犯を通り越して殺人鬼だが、これもまたこのバス内では必要な行為であり一切問題になることはない。
「今度は変なおじさんが乗ってきたぞ!」
「鉄砲撃ってきたぞ、捕まえろ……!」
何しろ銃弾が直撃したところでちょっと痛くて涙目になる程度なのだ。そのまま半泣きで掴みかかってくる園児たちの頭を踏みつけ、跳躍するジョウ。【暗殺者の戦術】も込めた一蹴りには、流石の園児たちもタンコブ級のダメージを受けてしまう。
さらにそのまま天井を蹴る……というよりそもそも天井が2メートルそこそこしかないバスなのでほとんど頭突きに近い状態になってしまったが、何にせよ反動で着地しながらドーム状に氷の魔力を広げ氷結空間を作る。
「さ……寒い……!」
「まだ5月なのに……クーラー付けたら怒られるぞ!」
そもそも氷が出るような温度なのだが、やはり悪魔の感覚では冷房効きすぎ程度にしかならないらしい。だがデリケートな幼稚園児の肌はそれでも十分に動きが抑制されてしまっている。
「子供であれ、敵になるのなら排除する」
さらにもう一押しと、思い切り威圧して心の方も寒くしてやろうと試みるジョウ。やはりデビキン園児なので戦闘面での恐怖はかなり感じ辛いが、ゲーム的に手加減しないという意味合いでは意図は伝わったらしい。
「そ、そんな脅されたって負けないぞ……このゲームを成功させなきゃ、俺は一生お小遣いで返済しなきゃならないんだ……!」
子供特有の軽く出てくる一生だが、言ってる方は多分に本気だ。
「クイーンを討てば借金もなくなるだろ。残った金もしらん」
ならその本気を利用してやろうと言ってみれば、その時園児たちに電流走る……!
「そ、そうだった……!」
「でもクイーンお姉ちゃん滅茶苦茶強いぞ……!」
「死ねば生きられる……!」
今まで考えてもみなかったが、お金を借りたうえ貸主を倒して踏み倒すなんてとんでもない悪行である。ちょっと金銭感覚が身についていないだけで根は大変いい子であるデビルキング園児たちは、お父さんお母さんの言いつけ通り日々悪いことを心がけていることもあり、その悪行に素直に従い始める。
要約すると投降して道を開ければ借金もなくなり金も得られる……とより詳しく説明してみれば、素直によく聞いた後で自らバスを降りだす始末だ。
「ありがとうおじさん!」
「感謝……圧倒的感謝……!」
降りるか獰猛な獣と死合うか二択を迫る間もなく、口々に礼を言いながら降りていく園児たち。なおジョウは22歳ということになっているのだが、実のところその年齢はある種の偽りとも言えるもの。まあ幼稚園児から見れば20歳過ぎればおじさんカテゴリに入ってしまうので、深いところまで彼らが察しているかどうかはかなり疑問の残るところではある。
いずれにせよ、相手を自ら降車させることには成功したジョウ。もちろんこの後クイーンに挑んだ園児たちがどうなるかは、彼の知るところではないのであった。
大成功
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
野生のバス、です?
某有名映画の猫さんみたいな感じ、ですかねぇ?
転移と同時に【煌箍】を発動し『光刃の網』を召喚、園児さん達が状況を把握し『演説』等を行う前に捕獲を開始、捕まえた端から窓から放り出しますすぅ。
何しろ狭い車内ですから、適当に網を投げても捕まえられる上、パワーは有っても園児の体格であれば『体重』は然程無く、窓の大きさでも投げ出せるでしょう。
並行して『FMS』のバリアと『FGS』の重力障壁を展開、『FAS』も障壁に回し防御に備えますぅ。
園児達が突進して来たら、新兵装『FIS』を使用し瞬間移動、相手の背後に回ると共に、勢いを利用し『衝撃波』で車外に押し出しますねぇ。
イディエット・ブラインドネス
【アドリブ・他猟兵との連携歓迎】
わあ地獄絵図
しかしまあぎちぎちに詰まってるなあ…これ私めちゃくちゃ動きづらいね…
まあデビキンの悪魔皆頑丈だし、【肉体改造】でうまく体を変形させて通ると致しましょうかね。
ええと、とりあえず放りだせばいいんだよね?
それじゃあUC発動。この音楽を使ってみんなの気をそらすなりなんなりして、多少はおとなしくさせようか。
あとは【怪力】なりなんなりで無理やりつまみ出すと致しましょう。お出口はあちらになりまーす。
このバスは野生の動物である。バスの親からバスとして生まれ、本能的に子供を中に詰め込んで誘拐を試みるという生態を持つ自然の生き物である。
「野生のバス、です? 某有名映画の猫さんみたいな感じ、ですかねぇ?」
そんな可愛らしいものを想像してきた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だったが、平原を走っていたのは普通にUDCアースあたりでいくらでも走っていそうな何の面白みもないバスであった。現実は非情である。違うことと言えば道路を無視して好き勝手な方向に走っていることと、中に悪魔の幼稚園児がまだまだこれでもかと詰め込まれていることであった。
「わあ地獄絵図。しかしまあぎちぎちに詰まってるなあ……これ私めちゃくちゃ動きづらいね……」
その詰まりぶりは、るこるとイディエット・ブラインドネス(盲目白痴にして全知全能に魅入られし魔王・f34591)がバス内に転移したら先の猟兵に降ろされた分のスペースがほぼ埋まり切ってしまう程。もっともこれは二人の体のサイズにも原因があるのだが、それは色々と仕方ない。
「まあデビキンの悪魔皆頑丈だし、【肉体改造】でうまく体を変形させて通ると致しましょうかね」
とりあえず自分のラスボス部位をうまく縮めて中に入るイディエット。
「圧倒的ラスボス感……!」
「白いラスボスと肉のラスボス……!」
その質量から、イディエットだけでなくるこるもラスボス認定されてしまったらしい。それに対する反論の代わりに、るこるは転移と同時に発動しておいた【豊乳女神の加護・煌箍】の網を放り投げた。
「嵌っている……! 既に首まで……!」
あっさり網の中に捕らわれてしまう園児。そのまま振り回し、窓から放り投げて嬌声退場をかけるるこる。最早言うまでもないことだが、例え子供でもこの程度で怪我をするようなデビキン民などいない。
その雑でありながら的確な処理に、イディエットも成すべきことを再確認する。
「ええと、とりあえず放りだせばいいんだよね?」
そう、放り出せばいいのだ。手段は問わないし何なら生死も問わない。何しろどうせ何したって死なないのだから問いようがない。
「さあ、私の退屈を慰める姿なき生きている音よ、その音楽を聞かせてあげて」
【歌え生きた音よ、我が無聊を慰めよ】と、『生きた音』を奏で始めるイディエット。生きた音とはいかなるものか、普通に考えれば比喩表現だろうが、何しろそもそも今いる場所が生きたバスの中である。デビルキングワールドに異世界の常識を持ち込むのはカクリヨファンタズムやアリスラビリンスでそれをするよりナンセンスと言うものだろう。
「毒を食らわば皿まで……アイスを食らわば蓋の裏まで……!」
「理不尽の連続……だがそれが生きるってことじゃねぇか……!」
自暴自棄になって突撃しようとしたり人生(約5年)を語って互いに奮起しようとしていた園児たちに音が届く。そうすると園児たちはその場で揃って手を叩き、ステップを踏んで踊り始めた。歌が聞こえればお遊戯の時間。デビルキングワールドであっても幼稚園児の修正は変わらなかった。
多少大人しくなればと思ってのユーベルコードだったが、大人しくはならなかった代わりに抵抗は封じられた。後は怪力でつまみ出せば……と掴みかかろうとするが、悪魔パワーの乗ったダンスは予想外に突破力があり捕まえづらい。
しかもどういうパートに入ったのか、園児たちが一直線に突進しはじめた。とっさにるこるが各種防御兵装を並べるが、子供特有のハイテンションで全て突破してくる。
「こうなればぁ……」
ならばと新兵装『FIS』を使用。色々と機能はあるが今回は瞬間移動を使用し、園児たちの後ろに回り込んだ。そしてそのまま体当たりし、圧巻の衝撃波でバスの降車口から吹き飛ばしていくるこる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
まるで気圧差でふき取ばされたかのごとく浮き上がり、なんかやたら長い悲鳴と共に手足をバタバタさせながら落ちていく園児。その姿に走っていた他の園児たちは我に返るがもう遅い。
「お出口はあちらになりまーす」
近い奴からイディエットがつまんで放り出し、後ろからはるこるがその体をフル活用してそちら側へ押し込んでいく。
やがて全員が押し出され、ついにバスジャック園児たちは全てゲーム脱落となった。体が軽くなり気分も良くなったか、軽やかな足取りもといタイヤ取りで猟兵を送り届けようと走り出す野生バス。
去り際に後部座席から振り向くと、脱落した幼稚園児たちを黒服の悪魔が回収しているのが目に入る。
恐らく彼らはゲーム失敗の罰としてアイスエイジクイーンに回収され、別室に送られたり焼いた鉄板の上で反省させられたりするのだろう。もちろん、デビルキングワールド的感覚では『子供相手だからその程度で済ませてくれてる』となるのだろうが。
しかし『その程度』で済まさないガチ悪魔がいることを、猟兵たちはもう知っているのだ。
悪魔的戦争は、まだ始まったばかりである。
大成功
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