3
脳髄ディゾブル

#アポカリプスヘル #戦後 #ドクター・オロチ #プレジデント #風魔小太郎 #魔軍転生


●影の城
「ここまでやられちゃうとは……もうすぐ、猟兵がボクを見つけちゃうかもしれないね」
 はーあ。
 ドクター・オロチはわざとらしく嘆息してみせて。
 それでも、そのマッドな口ぶりは変わらない――風魔小太郎に、『百面鬼の術』で変化させ、来たる猟兵を出迎えてもらうことにした。
「ボクも、魔軍転生でプレジデントを憑装しておこう!」
 オロチの言下。
 華奢な四肢は、筋骨隆々な武人のそれとなり。胸ポケットをぽんぽんと触る。ありもしない葉巻を無意識に探しているのだ。
 どこに葉巻を咥える口があるのかはこの際触れずにおく。
「さて、猟兵諸君が私のもとに辿り着くのは、約束されたことかな。風魔小太郎には気張ってもらいたいところだが――……ううん、」
 ドクター・オロチはやはり嘆息した。
「ボクこの術使うと性格引っ張られちゃうんだけど、信長はどうしてたのかな?」
 回答は得られない。
「でもいいや、ボクだって必死なんだもん!」
 フィールド・オブ・ナイン探しは最後まで諦めたくはないし、ここには、ドクター・オロチの『本体』を持ってきてしまっているのだ。
 なりふり構っている場合ではないのだから。

●グリモアベース
 金銀の長い髪をゆるく結い上げた少年は、紫瞳を細め、ふわりとやわい頬に小さな笑みを刻む。
「懐かしい……で、いいかな。こうして、みんなと依頼の話ができるのは」
 和井・時親(紫の呪言士・f36319)は、能力者たちをかの学園で迎えていたように、グリモアベースで猟兵たちを出迎えた。
「いや、思い出話をしにきたわけじゃないんだ。ドクター・オロチを完全にぶちのめしてきてほしくてね」
 ドクター・オロチの目的が明らかになった今、ドクター・オロチを斃せる好機となった今、止まっていられない。
 いろいろと話したいことをぐっと飲み込んで、時親は唇を舐め、説明を続ける。
「あれは、メンフィス灼熱草原の中心部にある、漆黒の『影の城』にいる」
 黒い炎に包まれているそこが、ドクター・オロチの拠点だ。
 そこにあれの本体――『コンクリ塊』もある。
「けど、敵もそう易くなくてね。あれには護衛がついている。まず、それを討ってもらわないと、ドクター・オロチには手が届かない」
 護衛は、風魔小太郎。
 風魔忍法奥義『百面鬼の術』によって『二刃四拳の魔人』に化け、かつ【プレジデント・ナックル】を得ている。これを斃せば『影の城』へと乗り込むことができるだろう。
 そして、ドクター・オロチもまた、魔軍転生の術で『プレジデント』を憑装し、鋼の筋肉の鎧を身につけている。
「ふざけているわけではないんだろうけど、まあ、まるでプレジデントのものまねをしているようでね」
 とはいえ、その力は本物に間違いなく、油断大敵だ。
「ドクター・オロチは、『残り三体のフィールド・オブ・ナインの探索』と、『風魔小太郎を利用した彼らの力の奪取』を目的にしていたが、猟兵たちの働きで、オロチはそれを諦めざるをえなくなったと言える。そして、軍勢をまとめ、どこかに逃げようとしているわけだ」
 時親は指先にふっと息を吹きかける――瞬間、紫の風蝶の群が乱れ飛んだ。
「だから、逃げられないように。しっかり斃してきて。よろしく」
 舞う蝶は、黒炎包むメンフィス灼熱草原へと向かって羽ばたいて――戦地へとひらひら、猟兵を誘う。

●メンフィス灼熱草原
 『二刃四拳の魔人』へと変じた風魔小太郎は、灼熱草原にて、猟兵を迎え討つために城を背にして立つ。
 諸手は【プレジデント・ナックル】へと強化されども、握る刀の邪魔になることはない。
「…………」
 びょうっと吹いた風が、彼の僅かな声音を流した。
 語るには、まだ早い。


藤野キワミ
このシナリオはアポカリプスヘルに侵略してきたドクター・オロチと決着を着ける「最終決戦シナリオ」です。
特別なプレイングボーナスはなく、二章で完結します。
====================
特殊ルール……ドクター・オロチとの最終決戦シナリオの「成功本数が20本に達した日」で結果が変化します。

・5月1日午前中まで
ドクター・オロチを完全撃破し、影の城からオロチが何度でも蘇っていた原因とみられる「コンクリ塊」を回収、猟兵達で保存します。

・5月15日午前中まで
ドクター・オロチを撃退し、何も持ち帰らせません。

・それ以降
ドクター・オロチは、すんでのところで残る3体のフィールド・オブ・ナインを発見します。そのうち2体を連れ帰り、1体をアポカリプスヘルに残していきます。
====================
なぐる? なぐる?? 接近戦する???
藤野キワミです。よろしくお願いします。

▼プレイング受付
・【OP公開直後~4/19(月)8:30まで】
・成功度に達しなかった場合延長します。
・オーバーロードはいつでもお好きにどうぞ。
・一章に断章はありません。
・二章プレイング受付開始時にはアナウンスします。
・採用は先着順ではありません。

▼二刃四拳の魔人
当シナリオにおいて、『魔人』『狂人』また『風魔小太郎』と呼称する予定です。
各ユーベルコードに【プレジデント・ナックル】が付与された攻撃となります。

▽プレジデント・ナックル とは
両腕が巨大機械化している。この機械拳は、ボクシングで戦う際の攻撃力・攻撃回数・攻撃範囲を超強化する。

▼お願い
技能の使い方は明確にプレイングに記載してください。
プレイング採用の仔細、ならびに同行プレイングのお願いはマスターページにて記載しています。

▼最後に
純戦闘になる予定のシナリオです。みなさまのかっこいいプレイングをお待ちしております!
73




第1章 ボス戦 『二刃四拳の魔人』

POW   :    剛刃・火車
自身の【記憶と人間性】を代償に、【理屈無き圧倒的な武芸から成る二刀で、剛力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって記憶と人間性を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    二刃四拳の魔人
【刃避ければ四拳が襲い、四拳避ければ二刃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    幻刃・朧車
自身の【記憶と人間性】を代償に、1〜12体の【実体ある分身】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
陽向・理玖
風魔!
まさに魔人って感じだな
でもそのナックルほんと使いこなせんの?
俺に試させてくれよ
覚悟決め

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らしつつ残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴ると見せかけてフェイント
しゃがんで足払いでなぎ払い
吹き飛ばして追い打ちで蹴り

その武器から出んなら確かに剛力だ
けど
あんたに合ってねぇな
忍者ってそういう戦い方じゃねぇんじゃね?
動き見切り限界突破でスピード上げて回避
魔人と言えども人の形してりゃ弱点も同じだしな
暗殺用い急所狙い鋭く突く
そういうのも忘れちまうんじゃ意味ねぇ

それ使ってた奴とは一度戦ってる
あんた全然使いこなせてねぇよ
残像纏い更に懐へ踏み込みUC




「……風魔!」
 メンフィス灼熱草原。
 黒炎に包まれた『影の城』を背にして立つ、四腕の姿をみとめ、陽向・理玖(夏疾風・f22773)は喉の奥で唸る。
 機械の腕は物々しくファイティングポーズをとり、帯びた刀の鯉口を切った状態の――『百面鬼の術』によって、己の姿を変じさせたという、風魔小太郎だ。
 理玖の青瞳に映るその姿は、まさに魔人。帯びる刀は、二振り。それを振るって余りある腕は異様に発達した巨大な機械腕と化している。
「でもそのナックル、ほんと使いこなせんの?」
「汝のその疑問は、今に証明されよう。なに、容易なことよ」
 魔人の姿をした風魔小太郎は、騒々しく、烈気漲る【プレジデント・ナックル】を掲げて見せる。
 理玖は、《龍珠》を弾き、瞬間掴み取った。煌然と虹色に光るそれは、内より溢れる理玖の闘志そのもの。
「だったら、俺に試させてくれよ――変身ッ!」
 覚悟を決めた彼に迷いはない。闘志を食ったドラゴンは、理玖の総身を装甲で覆い尽くしていく――刹那、弾かれたように走り出す。
 一挙に間合いを詰めて肉弾戦へと持ち込む。嬉然とした魔人が剛腕を振り抜く。それは予測できていた。僅かに躰を反らせ躱しカウンターを放つ。が、他方のナックルで防がれる。怯まずに、大振りの拳打をもう一発。それも防がれる――想定内だ。瞬間、理玖はしゃがみ込んで足払い。
「小賢しい」
「キックボクシングって知ってるか?」
 蹴ってもルール違反じゃないと嘯いて、バランスを崩した風魔小太郎へと更なる蹴撃を放った。
 しかし機械腕は理玖の脚を受けとめきる。隆々たる剛力で弾き飛ばされた。確かに剛い。剛く烈しい力だ。
「けど、あんたに合ってねぇな」
 残る違和感は、風魔小太郎という忍を識っているからか。
 眼前のこれは、まったくの別者であるとは判っているが、どうしても不和を覚える。
「己に合う力か否か、汝の身を以て知るが良い」
 打ち鳴らされたのは、【プレジデント・ナックル】――鋼鉄は嘶き、覇気が燃える。
 俄かに理性的だった言葉が出て来なくなる。獣じみた唸り声とともに刀は抜き放たれ、抜きざまに理玖を斬り上げた。
「――っ!」
 流石の高速の一閃――来ると判っていたが読み切れなかった。寸でのところで後方へと跳んだが、刀の切っ先は理玖を覆う装甲を物ともせずに斬り裂いた。
 誰しもが目を奪われるほどの圧倒的な武と、効率的な殺しの技が、異様なまでの剛力で振るわれたのだ。
 体感として、斬られた傷は深くないだろう。しかしそこに気をやっている隙はない。狂人は鋭く踏み込み、理玖のあけた間合いを一足で詰める。容赦ない刺突。それでも準備はできた。先の一刀よりも見る時間はあった。
「忍者ってそういう戦い方じゃねぇんじゃね?」
 突き出された切っ先を躱し、今度は理玖が距離を詰める。
 いくら魔人の面をつけたところで、人のかたちをしているのだから弱点もまた人と変わらないだろう。
 ならば攻めようはいくらでもある。人間性はもとよりないかもしないが、それでも記憶はあるだろう――そういうものを忘れてしまっては、本末転倒ではあるまいか。
 刹那の間に理玖の残像が生じ、無理やりに跳ね上げたスピードについてこられなかった空気が悲鳴を上げる。
 踏み込んだ足が力を逃さないように大地を掴む。固めた拳へと力は注がれる――渾身の一撃を風魔小太郎の腹へと突き込んだ。
「ァ、ガっ!」
 インパクトの瞬間、膨大なエネルギーが衝撃波となって草原を震撼させる。
「それ、」
 激しく咳いて蹲った背を見下ろし、理玖は【プレジデント・ナックル】を見やった。
「それ使ってた奴とは一度戦ってる――でも、あんた、全然使いこなせてねぇよ」
 一撃一撃が必殺のごとき重みだった。かつ、ボクシングという美学の中で凄まじい強さと潔さで戦う重みがあった。
 されど、そのどちらもが、オブリビオンであることは承知の上――理玖は、咳く風魔小太郎を見下ろす。
 斬られた傷の痛みはまだ感じないが、握る拳に血は伝う。

成功 🔵​🔵​🔴​

サイモン・マーチバンク
武人を模しているはずなのに、彼はその姿から離れていく気がします
だからといってこちらも退くつもりはありません
怖いけど……頑張りますよ

勇気を奮い立たせて『ムーンストライク』を握ります
この作戦、失敗した時のリスクがでかいですが……
けれど遠距離から戦うのは望ましくない気がします
だから――いざ勝負!

全力で【ダッシュ】して距離を詰め、相手の攻撃の瞬間を見定めます
絶対に目を反らすな
躊躇すれば死ぬぞ
刃が振るわれる瞬間に、予想される軌道へ向かってUCを
【武器受け】の要領で【怪力】を駆使しハンマーを刃へとぶつけます
その衝撃で刃が折れれば僥倖
そうでなくても【捨て身の一撃】で更に踏み込みハンマーをお見舞いしましょう!




 理玖の強烈な【灰燼拳】が魔人の腹に刺さり、大きく体勢を崩している今が好機だ。
 サイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)は、《ムーンストライク》を手に、兎よろしく全身のバネを弾けさせ、驀地に駆ける。
(「武人を模しているはずなのに、彼はその姿から離れていく気がします……」)
 彼の『百面鬼の術』も、強大な力たる【プレジデント・ナックル】も、風魔小太郎をていよく利用しているだけのように見えてならない。
 記憶を失って、人間性を失って――それでも力を振るうことを選んだ姿は、凄惨に歪み悲愴すら覚える。
 四腕から繰り出された容赦ない剛力が、ひどく痛々しく見えたのだ。否、そう見えただけかもしれない――サイモンは、柄を握る手に力を込める。
(「怖いけど……だからといって、こちらも退くつもりはありません」)
 怖気づいているわけではない。本心から怖がっているのならば、もとよりここにはいない。
 サイモンはこの戦いに勝つつもりで、この地にあるのだ。己の勇気を振り絞る。震える心を奮い立たせる。
 激しく咳いていた魔人が、いまに立ち上がろうと背を起こした。
「――いざ勝負!」
「猪口才なァ!」
 怒号。
 さらなる記憶と人間性が失われ――それが風魔小太郎であるのか、わからなくなる。彼はこれほど声を張り上げる者だったのか。判然としない。
 鋭く踏み込み、サイモンとの距離が一気に詰まる。機械の双腕がサイモンを両断せんと、咳いている間も握られたままだった刀を振り上げ、構える。
 これの間合いに入り込むのは、命取りだ――しかし、遠間から戦うことは躊躇われた。それは魔人の放つ気迫が、サイモンをそう思わせたのか。
 しかし、やってやれないことはない。勝算はある。
 油断するな。
 大丈夫だ。リスクがあることは十分理解している。
 絶対に目を逸らすな。
 その一瞬が命取りになる。
 躊躇いを見せれば死が待っている。
 この一撃で決める。
 やかましい自問自答と、うるさく鼓動する心臓はそのままに、サイモンは集中力を高める。
 振り抜かれた二刀による剣閃の凄絶な残光に、ひゅっと息を飲む。
 タイミングを合わせ、烈声を噴き、【月穿ち】――ピンポイントにぶち当てる。
 金属同士の衝突に、甲高い爆音が響く。柄を伝い昇ってくる衝撃が肩を突き抜ける。
 剛力と怪力がぶつかり合って、一瞬の拮抗――しかし、狂人の一撃は重く重く、サイモンの鎚を弾き飛ばす。
 それでも。
 捻じ曲げられ、反転させられたベクトルをそのまま利用して、鎚は新たな慣性に従い、さらに、そこにサイモンの意志が反映される。
 《ムーンストライク》が暴走しないようにしっかと捕まえ、回転の力も載せ、サイモンは鎚を振り抜き、渾身の力で叩きつける!
 鈍い衝撃と、爆音に似た衝突音。蛙が潰れたような音が魔人の喉から漏れ出た。
 詰めていた息がそろりと漏れる。
「ぬう……」
 サイモンの続く二撃目を、咄嗟に機械腕で防いだ狂人は軽くふらつく。
 一歩二歩と後退し、そして――パキッと小さな悲鳴。
「己の刀が……」
 ぽつり呟き、刀を見れば。
 僅か罅が入っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
二刃四拳の魔人ですか。
単純に手数が多いし、当たれば即座にノックアウトなナックルは困った相手です。
ただ、手数は増えても人ですから、背中側は死角ではあるのですよね。

そこを突きましょう。

魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
まずは相手の太刀筋や動きを観察するべく、攻撃を【受け流し】たり、【第六感】で回避していきます。
動きが見えてきたところで反撃。
UC【月光幻影】を使って、死角にテレポート。
【先制攻撃】【衝撃波】【電撃】や【功夫】を駆使して、一撃離脱を繰り返します。
足を集中攻撃することで、相手の速度を奪います。


エリー・マイヤー
オロチが何者なのか、私は詳しいことは知りませんが…
やってることは迷惑極まりないですね。
できればここで倒してしまいたいところです。

そのためにも、まずはコタローを潰さないとですね。
私はボクシングのルールも技も全く知りませんが、
それが地上に立つ人間を殴るための技術であることはわかります。
なので【念動力】で自分の体を掴んで浮かせます。はるか上空に。
殴れるもんなら殴ってみやがれです。
そのまま【念動ハンド】で殴ったり抜き手したりチョップしたり、
足払ったり首絞めたりくすぐったり白刃取りしたり…
まぁそんな感じでいろいろやって攻撃します。
二刃四拳の魔人、でしたっけ?
ならこちらは、その大体30倍拳ですね。




(「ドクター・オロチが何者だとか……私は詳しいことは知りませんが……」)
 聞こえてくるしがらみを、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は紫煙と共に吐き出した。
 あれの行っていることは迷惑極まりないことに変わりはない。ここで倒してしまいたいというのが、エリーの本音だ。
 そのためにも――眼前の風魔小太郎に集中する。
 魔人はサイモンが放った渾身のハンマーの一撃を受け、怯んでいる。
 機に乗じて、エリーは力場を生み出す。超常の力は、エリーの細身を掴んではるか上空へと投げ飛ばした。
「殴れるもんなら殴ってみやがれです」
 エリーの声に反応するより速く、その言葉を遮る。
「コタロー、アナタの周りにいる手は、さて、何個でしょうか」
「手なんぞ、なっ!?」
 風魔小太郎は漸う顔を上げたが、驚愕に声を張り上げた。
 脇腹を一発殴られたのだ。
「私はボクシングのルールも技も全く知りませんが、それが地上に立つ人間を殴るための技術であることはわかります」
 念動力で生み出された百手の暴力は、魔人をその場に縛り付ける。
 拳を構えディフェンスする風魔小太郎へ、サイ・ハンドによる正拳突き、貫手、果てはくすぐ攻撃(ぴくりとも身をよじらせることはなかったが)まで。実に多彩な攻撃の『手』を加える。
 抜き身の刀を振ろうした手を掴み捻り上げる、しかし片方の刀が奔る。それを遮ることはできず――それでも負傷を顧みないサイ・ハンドは刀身を挟み掴みとった。真剣白刃取りだ。
「ぐう……小癪な!」
 エリーに翻弄されて、烈々たる激昂を噴く。
 手数が多く、おまけに風魔小太郎はどこから攻撃されるか見えていない。無理やりに拘束を振り払い、二刀が弧を描いてはでたらめに振るわれ、シャドーボクシングとなってしまった拳は空を打ち続ける。
「二刃四拳の魔人、でしたっけ? ならこちらは、その大体30倍拳ですね」
 はるか高みからの声――エリーの綽々たる声音につられた魔人が上を見上げた。視線が地上から離れた。
「卑怯なりし、汝の横っ面を叩いてやろう!」
「できるものならどうぞ」
 エリーはふわりと紫煙を吐いた。
(「二刃四拳……困った相手ですね」)
 非常に厄介だ。
 風魔小太郎が化けた、あの姿――腕が多い分、単純に手数が増えていたし、まして巨大な機械拳を持っている。
 ボクシングで戦うという条件下において、あの拳から繰り出される打撃は、とてつもない破壊力となるだろう。空振りに終わった拳打でさえ、殴られた空気が悲鳴を上げ、風切り音は鈍く鋭い。
 それをエリーが上空から、圧倒的な手数で制し、今は怒りを煽っている。
 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、油断することなく、《緋月絢爛》を抜き放つ。
 突くならそこだ。
 絶対的に己の力を信じているのなら、その拳、その手数――それをひっくり返すだけ。そうして、人である以上、急所は存在するだろう。
(「ノックアウトだけは避けたいですね」)
 摩那は、赤縁メガネの奥で、ブラウンの双眸を輝かせる。
 上空の彼女へと注意が傾いた瞬間、駆ける。
 さすがに、こちらの接近に気づかない風魔小太郎ではないらしく――振り抜く剣閃と、それを受けた刀が激しくぶつかった。
 刀に罅が入っていることすら、【忘れて】しまったか。
「不意をついたつもりか」
「まさか。正々堂々斬ろうと思っただけです」
 瞬間。
 巨大な機械腕が猛然と振り下ろされる。次いで迫る拳打、拳打、拳打――抜いた細剣で受けんと掲げるも、その膂力たるや摩那をいとも簡単に吹き飛ばす。
 体勢を崩したところへ四拳は猛然と迫る――回避を、可能な限り回避を、いままで潜り抜けた死線の記憶は、細胞レベルで摩那に染みついている。否、鈍重な拳打は摩那に躱されることを想定しているように、刀を高速で抜いた。
 太刀筋の予想は出来るが、それを《緋月絢爛》で受けるのが精いっぱい。きらりとルーン文字が散る。かと思うと凄まじい拳打が襲い、重い一撃でさらに吹き飛ばされる。
「心意気は褒めてやろう――しかし、汝には己を止めることは不可能」
「だからどうしたっていうんですか」
 観察するためにわざわざ近づいたのだ。
 実際に立ち回って見なければわからないこともあるだろう――サイ・ハンドに翻弄されていた様子も、間近で太刀筋を見て受けたものも――すべて摩那に蓄えられる。
「セーフティ解除……」
 己のリミッターを一時的にぶち壊す。命を削る荒業ではあるが、それ以上に魔人の意表をつくことができるだろう。
 打たれた傷は痛むが、構っていられない。
「死角がまるでない……ということはないんですよ。あなたにだって、見えていないところがあります」
 高機動モードへと移行した摩那は、風魔小太郎の真後ろへテレポートした。刹那、細剣が閃く。
「なにっ!」
 振り返ろうとしたその躰が、突然傾ぐ。
「足元注意」
 ふわりと降ってくるのは、紫煙を吐くエリー。青い眸は無感動に、動けず驚く姿を見る。
「動けないでしょう、コタロー」
 最後のサイ・ハンドが足首を掴んで放さない。
 摩那は雷花を咲かせ、動かぬ足へと斬撃が放たれる。その衝撃は、躰中を駆け巡り、風魔小太郎の機動性を削いだ。
「ほらね。人のかたちをしている限り、いくら人から外れようとも、同じです」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ローラ・エンディミオン
※流血描写歓迎

異形が存在する限り殲滅する
踏みにじられた人狼騎士の無念憤怒…1日たりとも忘れてない
シロクロチャまずあの邪魔者狩るよ

UCで獣爪を創造
体温は動けるギリギリまで削る
クロに機上しシロとチャは併走
至近で三方に散らせ目眩まし…ッ通用しない?!
人間性を佚した敵にかつての『名も無き者』レオンハルトが重なる
「トビアス!またこんな外法を繰り返してッ!」
助けてくれようとしたレオンハルトの気高さは踏みにじられた
小太郎も同じ

咆吼あげ盡力の儘に爪を叩きつける
相打ち関係ない
何度も起き上がり斬りかかる
「みんなみんな殺された!」
無謀な己を庇う3匹、噛んで威力を削ぐ様に我に返る
「ありがと…もう無茶はなし」
連携で攻撃




 ローラ・エンディミオン(狼使い・f35786)の決意は固い。
 かつての戦いの記憶は今も彼女の身に刻まれたまま。それは『過去』ではあるが、『今』でもある。
 異形に踏み躙られた人狼騎士たちの無念憤怒悔悟に覚悟――あれから一日たりとも忘れたことはない。いくら時を重ねようとも、渦巻く怨讐は消えることはなかった。
「シロ、クロ、チャ。まずあの邪魔者狩るよ」
 猟兵たちの度重なる攻撃を受けてなお、『影の城』を背にして立つ風魔小太郎の姿に、嫌悪と悲哀がいや増す。
 クロの背に乗り駆る。彼に並走するシロとチャの闘志も十分。
 【フロストファング】にて凍てる獣爪を創造し、限界ギリギリまで体温を捧げ、長い銀髪の奥で鮮やかなローズピンクが煌く。
 狼たちが風魔小太郎に肉薄――瞬間、彼の前で散開。クロの牙は刀が、シロの爪はナックルが、もう片方のナックルはチャを押し止め、絶対零度に凍える獣爪は罅の入った刀で受け止められた。
 凄まじい膂力で弾き飛ばされ、クロの背から転げ落ちる。
「ッ……通用しない?!」
 みなが弾かれたこと以上に、己の得物がいまにも壊れてしまいそうに刃毀れしていることも忘れたか――もとより人語を話せぬ獣のように唸り続ける。人間性を佚したその姿に、瞠っていた目を眇め、唇を噛んだ。
 哀しい姿だ。否応なく、あの森でローラを助けてくれた『名も無き者』と重なる――気高きレオンハルトは、誇りを踏み躙られ、そして成すすべなく散っていった。
 風魔小太郎自ら望んだ現状かもれないが、眼前で崩れゆく姿が、蘇る記憶と重なった。
 ギチリと爪と刃が擦れ合い、喧々とがなる。
「トビアス! またこんな外法を繰り返してッ!」
 ローラの怒号はまだ届かない。それでも吼えた。
 狂人は、「オ゛オ゛オ゛ォォォ……!!」と咆哮する。記憶も理性もかなぐり捨て、剛力を求めたがゆえの姿で。
 恨みと憎しみと怒りが渾然一体となって荒れ狂う。やめろ落ち着け話を聞け止まれと叫ぶ狼たちの声すら、風の中だ。
 振るわれる斬撃に真正面から突っ込み、盡力の儘に爪を叩きつける。
「みんなみんな殺された!」
 絶望を喰らったことはあるか。悲愴に打ちのめされたことはあるか。
 一合二合と斬り結び、容赦ない刺突が耳を擦れるように走り、裂けた膚からだらりと血が溢れ、髪はばらりと落ちる。刃が返る――横薙ぎに剣閃、しゃがんで躱し、他方の刀が逃げたローラに迫る。
 地を転がり避けながら振るった凍爪が、ぎちっと耳障りな音で鳴けども、剛腕から繰り出される斬撃は、息つく間もなくローラを追い詰める。一等疾い尖撃がローラの眉間を穿たんと繰り出され、咄嗟に倒れ込み躱すも、その鋒鋩は額を裂いた。
 何度も転げ、血を流せども、ここで相討ちになろうとも、ローラの闘争心は衰えない。
 躰は一段と冷えて感覚は麻痺していく。獣爪は凍気を垂らして、狂人の繰り出す刀を凍らせた。
「わたしたちをめちゃくちゃにした異形だけは、絶対に赦さない!」
 ローラは凍える憤怒に支配される。
 そのとき――狼が鋭く吼えた。振り上げられた刀を持つ腕にチャが、もう片方の腕にクロが噛みついたのだ。
「邪魔をするなあ!」
 がなる狂人に怯むことなく、ローラの進路を塞いだシロ――戦う三頭の狼の姿が鮮烈だった。
 ローラは己の腕に牙を立てる。フーッと激しく呼気、溢れすぎた怒りが上がる体温で融けていく。鈍くも鋭い痛みが己を引き戻す。
 振り払われたクロとチャがローラの傍らに戻ってきた。
「ありがと……もう無茶は、なし」
 三対の瞳と目が合って、次はひたりと風魔小太郎に合わさる。
「大丈夫、まだ、いける」
 そこに我を忘れた無謀なローラはいない。
 陽動に狼たちが駆け、息の合ったフォーメーションは狩りそのもの――三頭の攻撃に翻弄されて、一瞬、ローラが意識から外れた。その瞬間、驀地に駆け、勢いのままに凍爪を振り下ろす!
「ァ……」
 幾度となく斬り結び、いよいよ限界を超えた刀が、バキリと折れた。
 欠片が地に落ちた甲高い音が、耳に新鮮だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

護堂・結城
【外道狩】
…ほぼ投げ捨ててるようなあれの人間性で代償になるのか…?どう思うよ従僕
ま、どうあれ結末は同じ、外道狩りだ

蒼月の尾を振るい、天候操作で御剣のUCを補助しながら戦う

「しっかりサポートしろよ従僕」
「清々しいほど人の形を捨てておいて、人間性や記憶を代償とは笑わせる」

敵UCにはこちらもUCを発動して対抗、精神攻撃で自己暗示をかけて無敵の水拳を召喚だ
真正面から怪力を込めた水拳で殴り飛ばす

「有って無いような代償で、止められるかぁああ!!」

御剣が先に狙われた場合は氷牙を無敵斬艦刀に変化させ、巨大な刀身を障壁代わりに武器受けでかばう
カウンターでそのまま薙ぎ払う範囲攻撃だ

「よそ見なんて余裕だな」


御剣・章
【外道狩】
あれにとって重要ならなりうるんじゃないか、妖狐
どっちにしたって俺達がやるのは変わらないだろ…外道を守るなら断罪する

戦闘開始と共にUC発動。戦場に雨を降らせながら万色の雷の自動一斉射撃
主な攻撃は結城に任せ、虎駆龍翔と星龍咆哮で飛翔したまま援護射撃に徹する。

「そっちこそしっかり殴らねぇとダメージ通らねぇぞ妖狐」
「雷のおかわりはたっぷりある、いくらでももっていけっ!!」

結城が接近戦を仕掛けているうちに目立たないように雷雨の中を飛翔、背後から暗殺を仕掛ける
有効打にならずとも集中を乱させるために当てることを優先して攻撃

「こっちを向いても向かなくても、貴様に待ってるのは地獄だよ」




 風魔小太郎の、刀の一本は折られた。
 さんざっぱら攻撃を受け止めてきた後で、急速に凍らされたのが原因だろう――冷静さを取り戻したローラと、狼たちとのコンビネーションが成したものだった。
 ずいぶんと、変わり果てた姿となった風魔小太郎を睥睨。
「……ほぼ投げ捨ててるようなあれの人間性で代償になるのか……? どう思うよ、従僕」
「あれにとって重要ならなりうるんじゃないか、妖狐」
 互いに名を呼び合わない二人は、ちらっと互いに視線を合わす。
 赤緑のオッドアイと、エメラルドグリーンの双眸は、しかし一瞬後、眼前の外道へと向けられる。
「どっちにしたって俺達がやるのは変わらないだろ」
 御剣・章(断罪する者・f35373)が嵌めた白手袋を引っ張り、深く握り込む。
「ま、どうあれ結末は同じか」
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)の後ろでは《蒼月の尾》が冴え冴えと輝き、ふらふら揺れる。
 尾の愛らしさとはうらはらに、張り詰める殺気は二人の間で噴き上がる。それを鋭く感じ取った魔人は、じろりとこちらを見た。
 見るかげはない。刀は折れ、傷にまみれ、それでも【プレジデント・ナックル】を掲げ、闘志を浪費する。
 外道狩りの時間だ。
 途端、銀の雨が降りしきる。次第に雨足が強くなるのは、結城の尾が揺れているから。
「しっかりサポートしろよ、従僕」
「そっちこそしっかり殴らねぇとダメージ通らねぇぞ妖狐」
 補助の手を差し伸べながらの軽口の応酬は、いつもと同じで。
 メンフィス灼熱草原に雷鳴が轟いた。
 万色の稲妻が、濡れそぼる狂人へと落ち続ける。章の背にはオーラの翼が煌いて、ふわりとその身を浮かす――《虎駆龍翔》と《星龍咆哮》は、接近して攻撃を繰り出す結城の援護を担うにちょうどいい。
 上空からなら狂人の動きもよく見える。
「雷のおかわりはたっぷりある、いくらでももっていけっ!!」
 雷に打たれて息を飲んだ風魔小太郎の背後へ回ろうとした瞬間、折れた刀が章目掛けて擲たれた。
 まっすぐこちらに飛来、それを咄嗟に躱すためにバランスを崩した。
「己の拳も喰らってみるが良い!」
 機械拳を掲げ、ジャブとストレート、クロスへの打ち分け、意表をついた剣刃が閃く。
 剛毅な連撃の猛攻の端々が章の躰に触れるたびに衝撃が駆け抜ける。烈々たる拳打のどれもが重く、思わず舌打ち。
「おい、よそ見なんて余裕だな――氷牙ッ!」
 お供竜が瞬時に巨大な剣へと変じさせ、巨刀を章と狂人との間に割り込ませる――鋭い金属の衝突音は、機械拳が刀身を殴りつけたインパクト音――衝撃は剣を通じて結城にも走った。が、いちいち気にしない。返す刀で力の限りにスイング――颶風が巻き起こっても不思議でない凄まじさで、空気ごと狂人を両断せんと薙げども。
「汝が己を討とうとしているのは感じている。よそ見はしておらぬ――はて、それでもなぜ汝は己を狙う?」
 猟兵たちの猛攻の末の折れた刀は、章に向け放り投げ、手放してしまっている。本来ならば、二刀で繰り出されるはずの一撃の威力を補填するように、狂人はさらに代償を捧げたようだ。
 見る者を圧倒し、比類なき武の構えから、抜き放たれた神速の剣閃は、機械拳の剛力により更に轟烈の剣となって結城に襲い掛かる。
 巨刀でなんとか凌ぐことは出来たが、狂人はそのまま圧してきて、鍔迫り合い――結城は、負けじと圧し返す。
 外道が人間性を語るなぞ、片腹痛い。培ってきた記憶、積み重ねてきた記憶を手放してまで、剛力を求めるのは――外道に他ならないか。
 ならば、やはり躊躇うことはなにもない。
「清々しいほど人の形を捨てておいて、人間性や記憶を代償とは笑わせる!」
 おおっと烈気と共に吶喊し、わざと一瞬力を緩め、バランスを崩させ――
「狐さんはな、貴様のような外道を滅さずにはいられないんだ」
 斬艦刀を振り抜いた。機械腕と、腹が潰されたように裂ける。
 それでも、狂人は【プレジデント・ナックル】を掲げファイティングポーズをとり、ボクシングの様相を呈する。
 結城に意識が集中した。
 狂人だ――あれは、風魔小太郎だろうが、なんだろうが。積み上げた記憶を忘れ、力に翻弄される凶刃だ。
 眼前の結城へと叩きつけんと機械拳が振り上げられた瞬間、万色の雷が、その背を撃ち抜いた。
 それだけではない。絶え間なく落ちる雷撃が隙を生み出す。
「有って無いような代償で、止められるかぁああ!!」
 結城が吼えた。
 思念が力の源となる【大海竜奏】だ。心が弱らぬようにと自己暗示をかけ、巨大な水拳を創造する。
 炯々と尖る双眼は、真正面から狂人を見据え、一意専心――怪力を込めた水拳で殴り飛ばす!
 ふらりとよろけた外道は、喉の奥で低く唸る。
 章の翼が空気を掻き混ぜて、それの間合いの外から観察する。
 ひどい有様だ。よく立っていれるものだ。その闘志がどこからくるのか、解せぬことばかりなれど。
「こっちを向いても向かなくても、貴様に待ってるのは地獄だよ」
 ぼたりぼたりと血が落ちて、銀の雨に溶け、草原に滲み込んでいく。
「されども……己は、汝らを討たねば……――いかな理由だったか、忘れてしまったが、な……」
 低く昏く笑声をあげた。
 荒い息は乱れたままに、風魔小太郎は、【プレジデント・ナックル】を掲げ、『影の城』に背を向け立ちはだかる。
「そうまでして外道を守るか――……はやり、断罪するしかないな」
 章の冷たい声音が、甘やかで優しい雨に濡れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

香神乃・饗
新人?さんっぽいグリモア猟兵さんの頼みっす!
無事成就してあげるっす!

風魔小太郎……まだこんな所に居たっすか
そろそろ信長を追って退いたらどうっすか
未練があろうと無かろうとおくってやるっす!

忍びは剣術にも長けるというっす
でも幾ら斬られようとも幾ら殴られようとも
諸共に斬ってしまえばいいっす!
速さ勝負なら負けないっす!勝負は一瞬っす!

香神写しで武器を増やし
半分を攻め手にして四方から攻めたて集中力を削ぎ隙あらば斬る構えで
残りを俺の周りに飛来させ盾にしながら間合いを詰めるっす
斬られても殴られても武器で全部受け流すっす

武器を全て削り取られてもそこに俺は居ないっす
武器が尽きたとフェイントをかけるっす
何時も生えてない手のお陰で死角が増えてないっすか?そこを突くっす!
別の方向から刃を剛糸で逸らし掻い潜るっす
多少斬られても物ともせず
拳のタイミングでその拳に刃を突き立て懐に入り込み一撃を喰らわせるっす
拳は肉である分、刃より斬り易い筈っす
狙えるなら急所を目掛けて刃を突き立てるっす

苦無も呼び針山にしてやるっす




 章が降らせた銀の雨は、猟兵たちの傷を癒す。
 目に見える傷も、目に見えずとも痛む傷も、すべてが消えていく――しかし、風魔小太郎の傷は癒えない。多くの傷に塗れながらも強く強く立つその姿を香神乃・饗(東風・f00169)は、しっかと黒瞳に映した。
「風魔小太郎……まだこんな所に居たっすか」
「己の居場所は己で決めよう――はて、汝とは何処かで相対したろうか」
「そろそろ信長を追って、退いたらどうっすか」
「のぶなが、とは、そうか、信長様は、」
 言い淀んだ狂人は、肩を震わせる。笑っているのだ。
 四拳の動きを確かめるように、握って開く――そうして、一際高く笑い捨てた。
「猟兵を葬り、かの者の信義に応えると言ったのだ。それを違えるわけにはいくまい」
 断片的に残る記憶で、ふいに顔を出す風魔小太郎に、饗は眉を寄せ黒瞳を尖らせる。
 交わした約束を守る――いやに人間らしいことを言ったが、『百面鬼の術』によって変容した姿は、やはりヒトとはかけ離れているように見えて仕方ない。
 執着するような物言いに、ある種の未練がましささえ感じさせた。
 それでも、狂人は狂人。
 未練があろうとなかろうと――その存在を捨ておくわけにはいかない。
 腕は機械に取り込まれて侵蝕されてしまったかのように、巨大に膨れ上がる。猟兵の猛攻に耐えきれなかった二刀のうちの一本は棄てられた。
 負った傷から命が流れ出ていく。とめどなく、それでも終わりはすでに見えていた。
 饗は苦無を複製させていく。合わせ鏡に映したように、百余の苦無が草原に居並ぶ。
「黄泉路へ送ってやるっす」
「餞は固辞しよう」
 残る刀を構え、【プレジデント・ナックル】の双腕も構え、拳を握る。
 このような成りでも、元は忍だ。諜報だけではなく、剣術にも長けていると噂にきく。しかし、饗はその手前に興味はない。いかな忍術の手練れであろうと、いかな剣術の達人であろうと――人の道から外れた者の振るう力なんぞ、くそくらえだ。
 腹は決まっている。
 この身を案じる者の小言を聞くはめになろうが、腹は決まった。
「速さ勝負なら負けないっす! 勝負は一瞬っす!」
 コピーした苦無のすべてが、饗の意識下で無尽に奔る。
「ならば、見せてみよ!」
 ふらついたのは、最初の一歩だけであった。驀地に饗との距離を詰め、機械拳の猛ラッシュが予備動作なしで繰り出される――その悉くが苦無によって弾かれる、否、殴り落とされる――が、防御に展開したものがすべてではない。
 死角から飛来させた苦無の切っ先が風魔小太郎の躰に刺さる。獣じみた呻き声があがるが、饗への攻撃の手は止まらない。
 半数を盾にすることに徹し、残る刃は縦横無尽に飛び回る。僅かな隙を作るために、仕留めきる好機を生み出すために。
「俺も頼まれたんっす。無事に成就してあげるって決めたっすから、こんなところで退くわけにはいかないっす!」
 斬られようとも、殴られようとも――その拳、その刀、仇なすもの諸共に斬り捨ててしまえばいいだけのこと。
 抜き放たれた一閃は、苦無の刃が受け止め火花が散った。
 全身のばねを弾けさせ、一足跳びに無合いへ、逆手に持った苦無を振り上げる、が、ナックルの拳打に阻まれる。
 追撃を赦さない複製苦無が饗を守るように雪崩れ込む。激しい金属音ががなって、不協和音のような呻き声が轟く。
 見目通りの烈々たる膂力に裏打ちされた剛腕が振るわれ、猛烈な勢いで苦無が落ちていく。
「ああっ! 俺の苦無が!」
 情けない悲鳴のような声は、饗の常套句。
 その隙まみれの声音は、相手の隙を誘い出す――すべての苦無を使いきったと思わせ、ディフェンスを緩め、風魔小太郎は攻撃に転じる。
 四方から攻めたてられ集中力が削がれたところへ、転がり込んできた好機だ。そう思っただろう――饗の策とも知らずに。
 魔人の眼前から、饗の盾が落ちきる。それを待たずして、強烈な拳打がそこへ突き込まれる!
「ッ!?」
 感触のなさに驚きと戸惑いを隠せていない――饗がいないのだ。
 いつもとは勝手の違う腕が生えている現状で、いくら己の忍術とて、それに早々に順応するだろうか。考えても詮無いことだが、隙が生じたことは確かだ。
 死角へ、【プレジデント・ナックル】があることによって生じる死角へ、手負いであるが故に功を焦り、狭くなった視野の外へ。
 饗は、剛糸を括り付けた苦無を一本、その場に残して消えた。銀線を描き奔る。苦無に連れられた剛糸は、まるで蛇のように首に巻き付いた。
 咄嗟に腕を滑り込ませ、縊られることを防いだが、時すでに遅し。饗の早業は止まらない。閃く苦無の斬撃と交差するように鋭い刺突が繰り出される。双方負傷を顧みない一撃は、互いに深手を負わすことはなく、しかし息つく間もなく打ち込まれたのは、固められた拳。
 硬い機械を砕くより、拳であれば斬りやすかろう。瞬時に判断、饗は苦無を突き立てる――出会い頭の衝撃で、ずぶりと刃が深く入り込んだ。
「ァッ、があァ!!」
「真正面から挑む戦法だと、騙されたっすか?」
「こ、ざかしい……汝の小細工なぞ……! 恐るるに足りん!」
「それは虚勢っていうっす」
 鼻白んで、饗。
 台詞と状況下のアンバランスは否めない――それを見通せないわけでもあるまい。承知の上で虚勢を張るのならば、完膚なきまでに斃すまで。
 もとより、情けをかける相手でもない。
 剛力によって返ってくる刃が饗の皮膚を裂こうとも止まらない。狂人の懐へ飛び込み、その胸へと苦無を突き立てた。
 肺に傷が入ったか、突然暴発する奇妙な音を聞きながら、殴り落とされた苦無を再稼働。
「もう動かないと思ったっすか? また、騙されたっすね」
 苦無の鋒鋩は、狂人の躰の中へと次々に消えていく。その数、百余本――針山となった風魔小太郎は、いよいよ血を吐き、その場に倒れた。


 先刻の癒し雨に打たれて濡れた躰は、風に吹かれれば、指先から冷えていく。それでも、勝利の高揚を冷ますものではなかった。
 消えゆく面と、風魔小太郎を最期まで見つめる――もう二度と相まみえることがないようにと願って。
 そうして、双眼は『影の城』へと向けられて、いまにも発火しそうな視線を注ぐ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ドクター・オロチwithプレジデント』

POW   :    ロケット・ナックル
【恐るべき筋力】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
SPD   :    プライド・オブ・プレジデント
全身を【大統領のオーラ】で覆い、自身の【大統領魂】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    プレジデント・フェイタル
【華麗なステップ】で敵の間合いに踏み込み、【衝撃波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●影の城
 その姿はまさに異形だ。
「あ、来た来た! 待ってたよ!!」
 守られているはずの脳は無防備に丸出し。
 頭蓋骨の代わりに被る赤いクマのフードのついたマントは、神経を逆撫でする少女の声音で猟兵に向かって、からりと笑った。
「痛かった? 痛かったよね? だって腕が四本だよ? すごかった?」
 大仰に腕を広げてから、しゅっしゅっとボクシングの真似事をして。
「ムシュ、だって、君達の勢いがさ、すごいでしょ? ボクも覚悟しなきゃねって」
 笑う脳は、躰を震わせる。
「でも……ボクだってやりたいことを邪魔されて、頭にきてるんだよ。だからさ、」
 ドクター・オロチはそこで言葉を切った。大きく吐息、次に声を発したときには、それは、先刻とはまるで別人であった。
「私と語らおう、今一度! ここで! このッ、拳でだ!」
 魔軍転生の秘術にて、かつて大統領と呼ばれた男を憑装した異形は――未発達のような細い体が、異様なほどに筋骨隆々たる体躯へと変化していく。
「来たまえ、猟兵の諸君!」
御剣・章
【外道狩】
終わった奴が残していいのは名と誰かに継がれた意志だけだぞ、大統領

その飄々とした言動の裏でどれだけの罪が重ねられてきたのか
俺が正義とは口が裂けても言わないが、罪には報いを、その誓いに一片の曇りなし
外道、殺すべし!

「オーダー了解、少し踊るとしよう」

結城の言葉に応えUC発動、技能レベルを上げて戦闘開始だ
ダッシュで距離を詰め星龍雷爪を起動、雷の爪で怪力任せに切断攻撃を仕掛ける
敵UCは野生の勘と瞬間思考力で軌道を読み、白虎翔嵐で纏った風と雷爪で受け流し。
ついでに触れたところから生命力吸収してカウンターだ

「つかなんだ大統領オーラって!?他に見たことないんだけど」

「はいはい、最後までクライマックスだぜ!」
「サイクロン…レックスロア!!」

結城のUCに合わせ、龍爪銃に白虎翔嵐の風を付与し貫通斬撃波
挟撃の〆は二人で敵をかちあげ跳躍、断罪妖刀を巨大化し、虎駆龍翔で上空から地面に向けて加速
ギロチンのような切断攻撃だ

「断罪せよ」
「貴様の外道はここで散る」


護堂・結城
【外道狩】
理不尽に流される涙を止める、あの日の決意は何も変わっちゃいねぇ
怒りを貯めてるのが自分だけだと思うなよ
外道、殺すべし!

「上位互換というか…命のかかってない場なら正々堂々殴りあって教わってみたかったもんだ」
「御剣、『断罪の時間だ、全力でやれ』」

命令を下して戦闘開始
氷牙と黒月の尾を刀に、生命力吸収しながら御剣と連携して攻撃

敵UCの源は筋力、なら怪力で地面を踏み砕く地形破壊、マヒの電撃を載せた刃で弾く様にとっさの一撃
避けきれないときは紅月・緑月の尾で召喚した焔鳳と誘導弾を自動射撃で放ち行動不能の隙を軽減する

「主人公オーラとかの亜種だろ、多分。ほら、大技いくぞ」
「歌え、吹雪、ブラストハウル!!」

吹雪の咆哮で衝撃波を放ち、体勢を崩させUC発動
高速移動のすれ違い様に居合切りを仕掛け、挟撃開始だ

「俺の、俺達の必殺技!双星乱舞!」

挟撃の〆は二人がかりで空中に殴り飛ばし、氷牙を大剣に変化させて力溜め
限界突破した渾身の一撃で大剣を振り上げる逆ギロチン攻撃だ

「砕け散れ、貴様の外道はここで散る」




 ごそごそと服の上からなにやらを探しているドクター・オロチは、プレジデントを憑装している――ということは、葉巻だろう。いつも吸っているものがないと落ち着かず、口寂しくなる――とはよく聞く話だ。
 なるほど、性格や所作まで引っ張られているというのは、実際目にして分かった。
「終わった奴が残していいのは、名と誰かに継がれた意志だけだぞ、大統領」
 かつての情景が不意に重なる。御剣・章(断罪する者・f35373)は、白い頬にあるかないかの笑みを刻み、今の自分を顧みる。
 僅かに視線の下にある、主人の赤髪をちらと一瞥。
 色違いの双眼には、烈々とした怒りが発露している。
「怒りを貯めているのが自分だけだと思うなよ」
 護堂・結城(雪見九尾・f00944)は鋭く吼える。
 理不尽に流される涙を止める――あの日の決意は、結城の中で崩れてはいない。
 強固なまま、変わらずに在る。
「私の怒りと、諸君の怒り。甲乙つけるような代物ではないが、原動力たりえるものだ。ふむ、よろしい」
 飄然たる物言い。頭蓋の中身を堂々と曝した異形は、かつての大統領を模した言葉でのたまう。
 どれほどの罪の上に立っているというのか。
 どれほどの哀しみを生み出したというのか。
 章には、己の口が裂けても、「俺が正義だ」とは言えないが――それでも、だ。
 断罪を。贖罪を。粛清を。
 立てた誓いに一片の曇りはない。

「「 外道、殺すべし! 」」

 二人の声が同じ言葉を発して、二人は殺気を噴き上げる。脳髄だけであるから表情を読み取ることはできないが――その瞬間、それは大きく深く笑ったようだった。
「御剣、『断罪の時間だ、全力でやれ』」
「オーダー了解、少し踊るとしよう」
 主が名を呼んだ。
 主の命が下りた。
 内なる獣が目を醒ます。鎖縛は砕け、待ち侘びた主命に歓呼する。
 星龍と白虎は章に宿り、力となる――プレジデントを憑装し、大統領に染まり上がったドクター・オロチとの距離を瞬時に詰める。
 従者が勇んで先行したのを、くつりと喉の奥で笑って、結城は二つの腕に刀を握る。ドクター・オロチの力の源は筋力か――大統領たる矜持と共に高速戦闘を仕掛ける姿に、赤瞳を眇める。
 《星龍雷爪》が、けたたましい雷鳴で吼え、鋭尖な爪がオロチに迫る。躱しざまにステップ、踏んだ床が一段下がっている。
「ムシュっ!?」
 雷鳴と重なるように結城が床を踏み抜き、足場を崩したのだ。その僅かな隙に、《黒月》に雷花を纏わせ、刺突。踏み込みの衝撃でさらに床が抉れる。
 崩れた体勢に逆らわずオロチが転げ、結城の打突を躱せども、その先にあるのは、章の雷爪だ。
 まるでブレイクダンスでもするよう、地に手をつき章の手を蹴り上げた。その一瞬の接触でもオロチの躰に電流が奔る。《白虎翔嵐》の風の盾が足を滑らせ、直撃を避けられたのは、あらゆることを想定した結果だ。
「つか、なんだ大統領オーラって!? 他に見たことないんだけど」
「主人公オーラとかの亜種だろ、多分」
 纏うだけで戦闘センスに磨きがかかるオーラとはなんだ――章には解せないが、主の泰然と飄然とした物言いに、これは日常茶飯事かと錯覚しそうになる。
「ほら、大技いくぞ」
 結城の言葉に、章はからりと、「はいはい、最後までクライマックスだぜ!」と返事をした。
 白磁の頬に、深い笑みが刻まれる。
「歌え、吹雪、ブラストハウル!!」
 主命は、白竜の咆哮を喚ぶ。
 周囲の空気が凶悪に振動し刃と成れば、超高速で二人を攪乱していたオロチは、果たしてバランスを崩し、息を詰めた。
 それでも急に止まれないオロチと擦れ違いざまに、《黒月》を抜刀――流れるように一閃。
 それが、領域を――『双剣閃く流星の獄』を作り上げるトリガー。

「俺の、俺達の必殺技! 双星乱舞!」
「サイクロン……レックスロア!!」
 
 《レックスロア》に颶風が纏わりつく。鋭く尖る龍爪がオロチを斬り裂き貫かんと迫り、それを躱すことも出来ず、異形は斬撃を受けた。
 喉が潰れるような呻き声。
 ぼたりと裂傷から血が落ちる。
「上位互換というか……命のかかってない場なら正々堂々殴りあって教わってみたかったもんだ」
 言って結城は、血を流す赤フードを掴み上げた。
「やめろ! 離せ! ボクにさわるなぁ!」
「当たり前だろう、誰が好き好んで外道を抱かにゃならん」
 喚いたオロチを投げ飛ばす。それをさらに蹴り上げ、高く中空へ放り出したのは章。
 彼はそれを追い越すように強く跳躍した。《断罪妖刀》を尋常ならざる大きさまで膨れ上がらせる。
 オーラの翼が背に顕れた。煌と輝く光粒を撒き散らしながら、急降下。
 自由落下の速度では足りない。急加速し、タイミングを計る。
「断罪せよ」
 中空には章。
 地には結城。
 鏡合わせの挟撃は、空を無尽に駆って遂行される。
「砕け散れ」
 呻き喚き、今に落ちてくるオロチを見据え、

「「 貴様の外道はここで散る 」」

 それは、ドクター・オロチの行く末を暗示する――否、明示する宣言だった。
 落ち始めたオロチの頭を斬り落とさんと氷牙は、主命に従い大剣へと姿を変じさせる。
 結城の限界を超えた渾身の斬撃が放たれる。

「調子にのるなぁ!」

 オロチの裂帛。剛腕から繰り出される【ロケット・ナックル】とかち合う。
 章の焦った声がいやに遠くで聞えた気がした。
 総身に激痛が走る。いまに吹き飛ばされる――持ち堪えろ、一閃、この一閃を、あの細首に走らせれば。衝撃は刀身を伝播し、結城の肩に突き刺さる。否。刹那の間に紅い焔旋が巻き起こる。
「ぐぅッ……!」
 噛み締めた歯が軋む。退きざまに猛烈な激痛が、結城の躰の自由を奪った。
「もう少しで頸が落ちるところだったよ、あぶないな」
 猛火の中で、声がする。
 いやに落ち着き払った声色に、神経は逆撫でされる。
「しかし驚いたな。まさか、私の頸を、わずかでも斬ろうとはね」
 動けない隙に付け入らせぬよう、疾風は炎を巻いてオロチを狙い続けたが、異形は自由に駆け回り、猛火を嘲笑った。
 それでも、それは離脱の時間を作り上げる。
「情けないな、妖狐」
「黙れ、従僕」
 焔鳳がオロチを攪乱する間に、二人は一旦距離をとった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

香神乃・饗
別にこの程度の痛みはたいした事無いっす
その邪魔とやらを徹底的にやってやるっす!計画を完膚なきまでに叩き潰してやるっす!

何度も語らう程話題は無いっす
二番煎じはお呼びじゃないっす!とっとと帰るっす!

香神写しで武器を増やし
高速には敵わない風を装いおびき寄せ
張り巡らせた糸が切れる様子で飛来する方向を特定
俺が見失ったとフェイントをかけて突っこんできた処へ
けしかけた苦無でオーラを削ぎ落し真っ向勝負というフェイントをかけ
死角から滾る殺気を隠し暗殺を狙うっす
強大な力を持つ相手っす
無傷で済まなくとも仕方ないっす
それでも一太刀は食らわせてやるっす

大統領魂――国を背負う覚悟っすか
でも覚悟を決めてるのはお前だけじゃないっす
でも俺の覚悟は勝つ為っす!斃す覚悟っす!
黄泉還りの国をも斃してやるっす!

世界を越えて何度でも還って来るのは埒が明かないっす!
魂に終わりを刻んでやるっす!




「ほんと……次から次へと、どこまでボクの邪魔をしたら気がすむっていうんだよ」
 ぼやく脳髄は、どこの器官で声を発しているのか、不思議でならない。
 それでも聞き取れてしまうのだから、まさに異形だ。
「徹底的に邪魔をするに決まってるじゃないっすか」
 風魔小太郎との戦いで負った傷は、深くない。大したことはなく、痛みもさほど強くない――計画を完膚なきまでに叩き潰してやると意気込むのは、香神乃・饗(東風・f00169)だった。
「邪魔をしにきてやったっす!」
 ドクター・オロチの余禄でもない計画とやらも。幾度も蘇ってくる異様な状況も。すべてを邪魔し、終わらせ、頓挫させる。
 ぴくりと反応する赤装束の脳髄は、ぐるりと肩を回した。
「邪魔をするなら、私も相応に相手をしなければな、猟兵」
「二番煎じはお呼びじゃないっす! とっとと帰るっす!」
「再びこの地に立てた喜びくらい、もう少し味わわせてくれてもいいじゃないか? せっかちかな?」
 プレジデントは先刻受けたダメージなぞ気にした様子もなく、大統領たりえる風格を漂わせながら、その場で細かくジャンプ――今にも饗へと襲い掛かってこんと気概に溢れる。
 異形といつまでも語り合う言葉は、あいにくと饗は持ち合わせていない。
 おしゃべりに興じることは嫌いではないが、これと愉しく語らうことはない。
 それ以上の言葉は棄て、得物を【香神に写す】――合わせ鏡に映されたように増えていく。むろん、そのひとつひとつに、饗の意志は宿り続ける。
 オロチと饗の間に――否、饗の周囲をぐるりと取り囲むように複製した剛糸を張り巡らせ、苦無をずらりと展開させた。幾重にも、幾層にも張られた糸は、さながらセンサーで、居並ぶ苦無は攻防一体の盾だ。
 超高速で展開される戦闘が不得手であることは、饗自身が一番解っている。なればこそ解決策もおのずと解るというもの。
 展開した複製武器が視える罠であることは、ドクター・オロチも判っているだろうが、突っ込んでくる――姿を視認できなくなった。
 ブツン!
 バチン!
 破裂音が立て続けに鳴った刹那、諸手に握る苦無を掲げ、正面から迎え撃つ――否、これは囮。一斉に苦無が異形へと殺到する。
「これはこれは! 大勢だな!」
 拳で叩き落とすには数が多いが、至極愉快だと言わんばかりに、苦無の群れを躱しては殴りつけ血飛沫が盛大に上がる。それでも意に介さない。狂気じみた矜持に、饗は眉根を寄せる。
 ドクター・オロチの意識が饗から苦無の軍勢へと移った隙に、それの死角へと入り込む。
 滾り漏れ出そうになる殺気を上手に隠す――これは得意だ。嘘を装うのは、慣れたもの――複製元の苦無に刻まれる梅花がオロチの首筋へと奔る。
「そう、多少の犠牲は織り込まないといけないのだよ」
 振り返りざまに振り抜かれた裏拳は、高速で空気を裂くよう振るわれる。ほとんど脊髄反射で呼び寄せた苦無が拳に突き刺さり、振り抜いたそれは、ふざけたクマのフードを斬り、僅かに脳髄に傷をつけた。しかし、剛腕の裏拳は止まらない、その強打を喰らい吹き飛ばされる。
 背から床に叩きつけられ、呼吸を一瞬奪われる。
「ガッは……!」
 肺が衝撃に潰されたようだった。軋む腕に走る激痛に、折れたかと錯覚させるもだったが、それでも、腕は潰れていない。
「おお? 砕けなかったか。なかなかタフじゃないか、猟兵。では、次は腕の一本でも粉砕してあげよう」
 己の傷を顧みず目的のために突き進むその姿は、どうしたって狂気じみて見える。
 嫌悪する。
 滲む涙は咳いた拍子に出たものだ。
「ときに、リーダーが傷を負うことは、士気を起爆させることができるんだよ――ああ、今は、私を崇拝する部下はいないがね」
「それが、大統領魂――国を背負う覚悟っすか。大層なものっす」
 覚悟ならば饗にもある。
 終わらせるためにきたのだ。
 この場で斃すためにきた。
 不快と不吉と不安を植え付けるこの異形の魂に終わりを刻むために。
 幾度も、幾度も、斃されてなおも立ち上がっては世界を嘲笑う異形に、最後通牒を突きつけるためにきたのだ。
「俺の覚悟は勝つ為のものっす。黄泉還りの国をも斃してやるっす!」
「よろしい。その気概、私は嫌いではないよ!」
 猛然と膨れ上がるのは、強烈なプレジデントたりえるプライド。
 もう一度くる――先刻落ちた苦無が俄かに頭を擡げ、オロチへと奔る。
 鈍く軋む痛みに耐え、最高速に達したオロチへ複製苦無を嗾け、勢いを削ぎ落す。
 愉しげに真っ向勝負を仕掛けてくる――センサーを果たした剛糸を張るまでもない、プレジデント然としたオロチは、飛び交う苦無を無視し、饗へと拳を突き込む。今更引けない、来る、一か八か――博打は好きではないが、むざむざ殴られるよりはうんと良い――梅花の彫られた刃が銀に輝き、剛拳を迎える。
 衝撃。
 走り抜けるさらなる激痛に、意識が揺らぐ。
 噎せ返るような濃厚な鉄の匂いに、饗は鼻に皺を寄せ、露骨に嫌悪感を示した。
 繁吹く血を浴びた刃は、真っ赤に染まり上がる。烈声を上げ、烈気を纏い、睨めつける――突き刺さった苦無を、もう一歩踏み込んで捻じ込む。
 強かに殴られた躰が悲鳴を上げているが、ここで負けるわけにはいくまい。揺らぐ意識を繋ぎ止める。
 心を決めてきたのだ。
「俺の覚悟は、お前を必ず斃すっていう覚悟っす」

大成功 🔵​🔵​🔵​

サイモン・マーチバンク
本物のプレジデント相手なら正々堂々と戦うことも考えましたが、あなたは偽物です
だから意地汚くとも勝ちにいく方向でいきますよ

『アングイス』に乗り『ラビットダッシュ』を構える
相手の攻撃は強烈ですが、ある程度の猶予はある
それなら限界ギリギリまで撃ち抜くのみです
UCを発動し武器を強化しましょう

基本は逃げ回りつつ【呪殺弾】撃ち込みです
ひたすら【スナイパー】で狙いつつひたすら削っていきましょう
けれど相手は強敵です
間合いに踏み込まれて殴られることも覚悟
【激痛耐性】で意識を保ちましょう

3発入れられても最後まで足掻きます
バイクを突っ込ませて足止めさせつつ、最後まで攻撃を続けます
どちらが先に倒れるかの勝負です……!




「まったくもって憎いね」
 斬られ、刺され、血が流れる躰の傷を一瞥、大仰に吐息する。一見するにすでに活動に支障をきたしているようにも思えるが、異形は至って飄然としている。
 眼前の、筋骨隆々たる赤い姿が、本物のプレジデントであったなら、正々堂々と真正面から戦うことも考えた。
「でも、あなたは偽物ですから――」
 サイモン・マーチバンク(三月ウサギは月を打つ・f36286)は肩に掛けたスリングをツっと触り、《ラビットダッシュ》の位置を少し調節する。
 跨るは重厚なバイク――伝わる振動は、力強く、低く一定で排気される轟きは、サイモンの鼓動と共に集中力を高めていくよう。
「意地汚くとも勝ちにいく方向でいきますよ」
「いいモンスターに乗っているじゃないか、憎いね」
「どうも」
 瞬間、ステップが踏まれる。思わず見とれてしまうほどに華麗なステップだ――来る。《アングイス》を急発進させる。一気にかかる重圧を感じながら、ドクター・オロチとの距離をとった。
 すれ違いざまに、怨念が籠るショット。
「兎の悪魔らしく、月の力を見せてあげますよ」
 月に狂わされたライフルに無尽蔵の力が宿る――狂おしいほどに銀に輝く弾丸が充填され続け、マガジンが空になることがなくなる。
「俺か、あなた――どちらが先に倒れるか、勝負です」
 銃身が熱くなるほどの連続射撃を物ともしないドクター・オロチは、脳だけの頭で笑声を上げる。
「楽しみだ!」
 一気に離された距離を、瞬く間に詰めるそのステップ――バイクであるが故、進路を予測しやすいのだろう、タイミングを合わせて飛び込んで、剛腕を振るえば、とてつもない衝撃波が車体ごと飲み込み、操縦を困難にした。
 全身を握りつぶされるような衝撃に、サイモンは唸る。隙は見せられない。痛みを無視して、再度ライフルを構えれば、間合いを詰められ、凄まじい拳打と共に吹き荒れる衝撃波は颶風となってサイモンに襲い来る。
 それでも。
 これは想定済みだ。
 ドクター・オロチをなめてかかっているわけではない。一撃が重いこと、その力の凶悪さ、そうして力を振るう者が狂気そのものだ。
 《ラビットダッシュ》を取り落とすことなく、距離を取りながら操縦に専念し、ハンドルとバランスを取り返す。
「ほう、転倒しないのか?」
 煽られども噛みつかず、銃口は瞬時にオロチを捕らえる。スナイプし、トリガーを引き続ける。
 限界まで、撃ち抜く――そう心を固めたのだ。
 まだ終わっていない。オロチのステップは踏まれたまま。あの足運びはサイモンの命を狙い続ける。カウントダウンは容赦ない。総身を支配せんとうねる激痛には、無理やりに順応して、歯を食い締めながらタイミングをはかる。
(「三度目まで、四度目はない……!」)
 轟く排気音、前輪とオロチが一直線上に並ぶ、瞬時にアクセルを全開、エンジンの回転数を上げ――強引にクラッチ、爆発的に加速した《アングイス》から飛んだ。
 コントロールを失ったバイクは、慣性に従ったままにオロチへと突っ込んでいく、それを躱さなければ正面衝突は免れない――攻撃のリズムを崩し、バランスを崩したところへ、弾丸は雨あられと降り注いだ。
 ぐうううっと苦し気に呻いたオロチは、躰中から血を流し、こちらを見る。
 脳髄だけの頭では、その感情は読み取れなったが。
「なんだってボクが……このボクが、バイクなんかに轢かれなくちゃいけないんだよ……!」
 口汚く罵るドクター・オロチの声がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
いよいよオロチ戦ですね。
腕が鳴ります。
しかも今度は腕が2本だけです!
少しはやりやすくなったとも言えるでしょう。

向こうもやる気のようですから、受けて立ちます。

得意の【功夫】で戦います。
オロチの攻撃や衝撃波は【第六感】と勢いをいなす【受け流し】で対応します。
間合いに入らせないように、【念動力】や【ジャンプ】も使って、付かず離れずにいます。

相手の攻撃をのらりくらりと躱しながら、隙を付く形でUC【サイキックブラスト】を叩き込んでからの、【気合】と【重量攻撃】を込めて回転蹴りを食らわせます。




 黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、ブラウンの双眸を眇めたのは、バイクがオロチを轢いた音と、弾丸の嵐が吹き荒れた音が、いっしょくたになってけたたましく影の城に響いたからだ。
 残響が静まる手前。
 銃創から流れ出る血を忌々し気に見、大仰な素振りで肩を竦める――ぶちぶちと文句を連ねているのは、オロチの方だろう。
 その様子に、こくりと肯く。摩那は《ガリレオ》のブリッジに触れた。
「いいですね、やりやすいですね、だって腕が二本だけです!」
 先刻の四腕の猛攻を思い返しつつも、摩那の得意とするところの戦法がとれると、勝気に笑む。
 赤装束の異形がゆらりと揺れて、隆々たる四肢についた穢れを叩いてみせた。
「そうだね猟兵、私はオクトパスではない」
「もしそうだったら、たこ焼きにしてあげましたよ」
 ドクター・オロチの軽口は、プレジデントを憑装したことによる副作用――かつての大統領は、ぐるりと腕を回しながらダメージを確かめ、摩那に向き直る。
 その場で軽くジャンプを二度――否、軽く跳ね続けるステップは、ボクシングそのもの。
 機敏に反応できるよう研究された華麗なステップだ。
 すでに負った傷からの痛みはないのか――痩せ我慢なのか。どちらか判然としないが、闘志は消えていない。
「やる気十分ですか。受けて立ちます」
「いくらレディでも容赦はなしだよ、猟兵」
「お気遣いなく!」
 摩那の独特の構え。
 敵を見据えるブラウンは光る。
 やはりオロチは数多の傷を気にすることもなく、意に介することもなく摩那との距離を詰めてくる。
 対して摩那は、凪ぐ潮のように静かに呼吸を整え、しっかと見据え見極める。
 フェイントを織り交ぜた拳が打ち込まれる――衝撃波を伴って、空気は攪拌され、尖牙を剥いた顎(あぎと)となって摩那を飲み込む。
 しかし、それを真正面から馬鹿正直に受けてはいない。間合いに居続けられぬよう、飛び退さっていなした。
 それでも追いかけてくる異形の猛攻は、止まらない。鋭く呼気、激流に逆らわない木葉のように受け流す――間合いは一定に保つように、詰められないように、また離れすぎては反撃に支障が出る。
 表情は読み取れない。脳髄だけの異形だからどこを見ているのかもわからないが、拳撃の動作を読み取る、撃ち出された瞬間の衝撃波を念動力で沈め、飛び出す。
 摩那の双掌に雷花が咲き乱れる。
 バチバチと嘶く雷電が閃く。突き出された拳打をいなせば、その身に電流が走り、次いでもう片方の掌に雷光が走った。
 繰り出した掌底突きが、稲妻を落とす。
「ッが!」
 突き抜ける衝撃と電撃に体のコントロールを失ったオロチが、一瞬その場で固まった。
 トッとステップ。
 先のオロチの踏んだものよりも静かな足捌き――踏ん張る軸足、振り上げた足は、回転の慣性にのって、摩那の踵はオロチの頭へ迫る。
 烈々たる気迫が余すことなく発露して、渾身の力は蹴打に伝播する。
 烈声。
 反応できずにいるのは、その身が痺れてしまい動けずにいるからだ。
 オロチに成すすべはない。
 剥き出しの脳髄に摩那の踵は、深く鋭く突き刺さり――赤い痩身は蹴り飛ばされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
変身状態維持

もう3回目なんだろ?
俺はあんたと2回目だけど
手ぇ変え品を変えされても
もう見飽きた
だから
終わりにしてやる

衝撃波フェイントと目晦ましに飛ばしつつ
残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴って吹き飛ばし
追い打ちで蹴り

大統領魂って言うけど
あんたに何が分かんだ?
借りもんの力で
その拳ぬるいぜ
本物はそんなもんじゃなかった!
UC起動
空飛ぶ位で逃げられると思うなよ
衝撃波で邪魔し動き阻害し追いすがり
蹴りで地面へ叩き落す

頭の中には戦闘知識でボクシングの動きが叩き込まれてる
ましてやプレジデントも2度目だ
動き見切り直前で避けカウンター
拳の乱れ撃ち
その脳みそぶちまけろッ!

再生怪人が許されんのは2度目までだぜ




 猟兵の止まない攻撃に、じわりじわりと命が削られていく。それは、いかなドクター・オロチでも焦り苛立つことだろう。
「ムシュ……ボクが、こんな……」
 感電激しく、蹴り飛ばされた肢体は思うように動かない。
 銃創から流れ出る命も憎らしい――口をついたスラングは、大統領にあるまじき姿。
(「……やっぱり、プレジデントじゃない」)
 陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、先にメンフィス灼熱草原の戦いに於いて纏った装甲はそのままに、ドクター・オロチの眼前に敢然と立つ。
「猟兵と戦うのは、三回目なんだろ?」
 宇宙で、果てない大地で、そうして、今此処にいる、脳髄の異形――かつて大統領と呼ばれた男の魂を痩身に宿して呪詛を吐いている。
「俺はあんたと二回目だけど」
 理玖は相対したときのことを思い返す。全力の一撃をぶちこみ、仲間と共に斃した。だのに、何度も蘇ってきては、神経を逆撫でする。不安を煽り立てる。猟兵がそれを看過することができないと分かっていて、だ。
「手ぇ変え品を変えされても、もう見飽きた」
 そのたびに叩き潰されてきたことを忘れたというのか。
 覚えていたとして、尚更。学習はしないのか――否、それほどまでして、滅びたいのならば。
「終わりにしてやる」
「ムシュシュ……――いやはや、なに、少しフラついただけだ。問題があるように見えるかい?」
「少なくとも、這う這うの体だろ」
 言い放つと同時に、固めた拳で正拳突き。殴られた空気は内包した衝撃をそのままにオロチへと叩き込まれる。
「決して屈せずに立つ! それがナイスガイってものだろう」
 そのまま素直に斃れておけ――口をついて出た言葉は、目晦ましに次々と放たれる衝撃波の爆風に掻き消される。
 残像を纏うほどの高速移動で、オロチとの距離を一足の間に詰める。
 右の本命を確実に突き込むために、左のフェイント。それを本命だと思わせるための、衝撃波をもう一発。
 その全てに反応してくるオロチだったが、強化された拳撃を受けて、平気でいられないだろう。理玖の右ストレートをガードして、なんとか耐えたオロチを逃すまいと、頭部を狙い回し蹴りを放つ。
 舌打ちのような音が聞こえる。
 どうやって音を出しているのかは定かではないが、赤装束の異形は奇妙な力場を生み出して、ふわりと浮かび上がる。
 全身をプレジデントの纏っていたある種のカリスマ性で覆い、いよいよ空を駆けるという――だが、機動力が跳ね上がるのならば、こちらも同様に底上げするまでのこと。
「大統領魂って言うけど、あんたに何が分かんだ?」
 重力から解放されたぐらいで、理玖から逃げられると思うな。
 【閃光烈破】を起動させれば、リミッターは瞬間的に破壊された。
 殴るために突き出された拳を殴り返して押しとどめた瞬間、空気は烈しく振動。凄まじい膂力でもって繰り出されるオロチの一撃をむちゃくちゃな体捌きで躱して、もう一度迫り来る一発は、真正面から衝撃波を放って阻害した。ぐらっとバランスが崩れたのを見逃さない。
 空中を踏んで、超高速の蹴撃を放つ!
 赤いそれは一直線に墜ち、床が割れるほどの衝撃を生み出して叩きつけられる。
「ムシュ……ムシュ……く、ボクを、何度も蹴るなんて……!」
「その拳を使ったプレジデントともやり合ったが、やっぱり借りもんだからじゃね? その拳、ぬるいぜ」
 ボクシングの知識は叩き込まれている。ひょろりと立ち上がったオロチへ、ジャブを繰り返し、本命の強烈なパンチを織り混ぜながら、追い詰める。
「本物はそんなもんじゃなかった!」
 息を整えさせてやるほど、理玖は甘くない。情けは無用だろう。怒涛の連撃は、ほとんどの拳をオロチに叩き込むことができた。しかし、それでもさすがというべきか――苦し紛れでもなんでも、鮮烈な拳撃を一発繰り出してくる。多くのダメージを負った今、精彩を欠いた一撃を見切り、神速の領域での反応――わずかに上体を傾けるだけで躱した。
「その脳みそぶちまけろッ!」
 一発、鮮烈な拳打がめり込む。
 あとは、息もつかせない拳のラッシュだった。
 躱すも受けるも出来ず、全撃を叩き込まれ、さすがのオロチももんどりうって倒れ込む。
 その姿を見下ろして、それでも警戒は解かず、理玖は息をつく。
「再生怪人が許されんのは、二度目までだぜ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ローラ・エンディミオン
※流血歓迎
無血宰相トビアス!この名が通じるか関係ない
赦さない
護衛してくれた皆を
気高き『名も無き者』レオンハルトを
殺した仇、討つ

噛み傷が理性を維持してくれる
異形は怒りや悲しみを理解できない
だからお前を殺してわからせてやる
行くよ、みんな!

UC使用
3匹は本来の巨体へ戻る
シロに騎乗し獰猛果敢なオス2匹嗾け

トビアスは仲間を嬲った
わたしも狼も、遊びの弾なんて、ない
狼ら攻撃するのを挫くよう射撃

命はひとつ。あの日のみんなは帰ってこない
お前もやりなおし効かないって怯えればいい…

急所わからない
だから喉心臓頭、全部噛みつけ!
飛翔も追いすがる
最後はシロから飛び、足を首に絡めて零距離射撃
血を吐くよう死ねと連呼し連射する




 その姿。
 傷にまみれ、ぼろぼろに汚れていようとも。
 記憶にある姿によく似ている。
 忘れられるはずもない異形――鮮やかなピンクの瞳は憎悪に染まる。
「無血宰相トビアス!」
 この呼び名が通じようが通じまいが関係ない。
 ローラ・エンディミオン(狼使い・f35786)は頭に血がのぼるのを自覚しながら、その沸騰しそうな憤怒をそのままに、異形を睨みつける。
「その名……ああ、返事をしてみせた方がいいかな? レディ?」
 満身創痍のドクター・オロチには至極不釣り合いな軽口に返事をしてやることすら腹立たしい。
「赦さない、赦さない……!」
 怒りは収まらない。
 この場に来てから、この身を支配するのは、今にも燃え尽きてしまいそうなほどの烈しい怒りだ。
「絶対に、赦さない」
「……赦さないのは、ボクの方だ……ボクがここまで、一体どれだけの期間、どれだけ準備してきたと思ってるんだ……!」
「その準備とやらで、わたしたちを……護衛してくれた皆を、殺したっていうの」
 相手にするな。あの戯言を真に受けるな。虚言だ。妄言だ。息遣いが怒りで乱れ始めるも、じくじくと痛む腕がローラの理性を保ってくれる。
 もう、湧き出でる怒りに支配されることはない。怒りで我を失うことは、ない。
「討つ、ここで、お前を殺す」
 気高き『名も無き者』レオンハルトを殺した仇だ。
 あの優しき獅子を殺した仇だ。
 討たねばならない。
 ドクター・オロチを通して、仇敵を睨む。
「うるさいうるさい! ムシュ~!!」
 魔軍転生の秘術で、四肢は不釣り合いなほどに逞しく膨れ上がる。
 異形は怒りや悲しみを理解できない――ドクター・オロチが、かの異形ならば、解るはずもない。
「だからお前を殺してわからせてやる……行くよ、みんな! 絶対、逃がすな!」
 咆哮。
 ローラと共にいる三頭の狼は、本来の巨躯へと変じていく。伏せたシロの背に乗り、銃をその手に、クロとチャを嗾ける。
 過去の姿と、今見えている姿がどうしても重なって仕方がない。
 トビアスは、ローラの仲間を嬲った。命を弄び、嘲笑い、使い捨てた。替えはいくらでもあると言わんばかりに。
「わたしも狼も、遊びの弾なんて、ない!」
 放つ一撃、繰り出す一手、そのすべてに全身全霊の殺意が込められている。
 大統領だか族長だか酋長だか知らないが、その微々たる矜持にローラが屈するはずもない。
 クロとチャがオロチに飛びかかり、いなし弾き飛ばされる前に、拳を撃ち抜く。
「うぐぅっ!」
 苦悶の声が上がる。
 生物の急所たる脳髄を晒しながら、そこに軽くとは言え損傷を与えられながらも動き続ける異形の急所は、もはや判らない。
 だから狼たちに下した命令は、「喉心臓頭、全部に噛みつけ!」――烈しく咆哮を上げる。
 爆発的な機動力で跳び上がりそうになったオロチの脚へ、チャが噛みついた。彼の背を足場にクロが腹に食らいつき、オロチを地に引き摺り落とす。
「邪魔を、じゃま、すっ」
 狂気に叫ぶオロチに向かって、ローラはシロの背から飛び降り、藻掻く異形に馬乗りになる。
 脳髄に銃口をこすりつける。
「命はひとつ。あの日のみんなは帰ってこない! お前もやりなおし効かないって怯えればいい……!」
 絶叫に等しい血を吐き、引き金を握る。
 瞬間、弾け出る銃弾のすべてが脳髄へと撃ち込まれた。
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!」
 銃声とともにがなる。
 溜まりに溜まった怨念を一片残さず籠める。
 非業を遂げた無念の叫びが聞こえるか、同じ淵に立ったいま、お前にも聞こえるか、淵の奥底からお前を呼ぶ声だ、地獄に落ちろ、死んでなお苦しみ続けろ、銃声は詰り誹り咎め責め詛う、輪廻の外へと誘う呪詛だ。
 銃声は、止まない。
 異形の躰から命のすべて流れ落ちてしまうまで。


 むかつくむかつくむかつくむかつく!
 なんでボクが!
 痛い痛いいたいいたいいたい! 動かない、動けよ、躰! なんで食いちぎられてる! 犬のくせに! ボクに噛みつくなんて! むかつくむかつくむかつくむかつく!!
 痛覚が邪魔だ、この上なく邪魔だ、こんなものがあるから動くことが億劫になる。
 垂れ流れる液体は赤く、命を多分に含んでいる。これも憎い。こんなものがあるから躰が冷えて動かなくなる。
 動けよくそが!
 悔しい悔しい悔しいむかつく! 嫌だ死にたくなく! まだ『やり残した』ことがあるのに!
 ダサい断末魔がボクの喉から出ていることすら吐き気がする、あああ! いやだ! いやだ死にたくない死にたくないしにたく――


 下肢は噛み千切り、腹は食い破った。脳髄に銃口を突きつけ躊躇いなく撃ち込んだ銃弾は数え切れぬほど。
 銃声の度にオロチの躰は痙攣し、跳ね、やがて動かなくなる。
 フーッ、フーッ――興奮に息は乱れ、鋭くなった。
 先刻よりも縮んだシロがローラに寄り添うよう、鼻を脇に差し込んできた。
 馬乗りになったままだったが、痩身から下りれば、それはやはり動かない。
 だらり。ゲル化していくように、形は崩れていく。
 広がる赤を見下ろした。
 轟き続けた爆音が止んで、静寂はかえって喧しく感じられて。
(「おわ、った……」)
 乱れたアッシュシルバーの髪が、そろりと揺れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年04月30日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル
🔒
#戦後
🔒
#ドクター・オロチ
🔒
#プレジデント
🔒
#風魔小太郎
🔒
#魔軍転生


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレオンハルト・アウストラリスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト