【マヨイガ往訪】占拠された病院ハウス
●病院ハウス、封鎖
「ひぎぎぎぎ!!! ち、ちりょ、ち、ちちちち、血!!!」
古びた机に置かれたカルテの束がが鋭いメスで斬り裂かれる。
「あがががが、しゅ、しゅしゅしゅしゅじゅつぅ!!!」
投げつけられた薬剤入りの瓶がボロボロの医療器具が乗せられた台を横倒しにする。
「いいい、いだいいだいだいいだいいいいいいっ!!! はやく! はやぐっ、しゅじゅちゅ! 血ぃ! 凌ぉ! 治(ころ)させでぇ!!」
うっすらと開くその双眸には、もはや理性の光は欠片も残されていない。
●超巨大高密度集積住居型メガリス「マヨイガ」
「みなさん、妖獣型オブリビオンによる被害を食い止めに、マヨイガに向かって下さい」
グリモアベースの一角で真月・真白(真っ白な頁・f10636)が声を上げる。
マヨイガ、話を聞くために集まった猟兵達の中には、その名にハッとした者もいれば聞き慣れぬと首をかしげる者もいる。真白は彼らに礼を述べると本体を開いて説明しだす。
「マヨイガとはシルバーレイン世界にあるメガリスの名です。巨大な、特殊空間と呼ばれる異界を内包しています」
マヨイガの中は無数の古い建築物が不規則に組み合わさった迷宮と化している。そんなマヨイガの住人は、皆ゴーストだ。
「ゴーストは本来生命の敵対者です。けれど生命根絶を望まなかった一部のゴーストは、銀誓館学園の能力者と協調し、マヨイガの中で平和に暮らしています」
そんな場所に妖獣型オブリビオンが出現するという。このタイプは本能や衝動、苦痛に支配されて人間を暴力的に殺戮するようになる。生命を持たぬゴーストだけの場所で、猟兵が近づけばその気配に気づいて襲い掛かってくるだろう。
「オブリビオンが出現したのは廃病院のように見えました。現地でゴーストの皆さんに話を聞けば、具体的な場所や行き方がわかるでしょう」
また、と真白は続ける。問題のオブリビオンは攻撃性が高い強敵だが、余り複雑な思考は出来ないようなので上手くそこを突けば有利に戦えるだろう、と。
「今回の現場に一般人は居ません。『現在(ひとびと)』が『過去(オブリビオン)』に害される事は無い。ですが、マヨイガで暮らす者達は『人(いま)』と共に存える事を選んだ『魔(かこ)』です。僕達猟兵が守るべき対象だと、思います」
どうかよろしくお願いします。と本を閉じて一礼した真白は転送準備に入るのだった。
えむむーん
閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。
●シナリオの概要
日常、冒険、ボス戦のシナリオフレームです。
シルバーレイン世界の平和に暮らしたいゴースト達の住処『マヨイガ』に妖獣型オブリビオンが出現しました。迷宮の様なマヨイガを抜けて倒しに向かってください。
1章ではまず、避難してきたゴーストがいるファミレスに向かい、そこで彼らから向かうべき目的地と行き方を聞いてください。
積極的に情報収集に励んでもいいですし、ただお客さんとして居座ったり、お店のお手伝いをしていても彼らの会話が聞こえてくるので情報は集まります。
2章では迷路のようなマヨイガを抜けてオブリビオンのねぐらへと向かいます。
3章ではオブリビオンとの戦いです。妖獣化の影響により、非常に狂暴で危険ですが同時に複雑な思考が出来なくなっています。
●合わせ描写に関して
示し合わせてプレイングを書かれる場合は、それぞれ【お相手のお名前とID】か【同じチーム名】を明記し、なるべく近いタイミングで送って頂けると助かります。文字数に余裕があったら合わせられる方々の関係性などもあると嬉しいです。
それ以外の場合でも私の独断でシーン内で絡ませるかもしれません。お嫌な方はお手数ですがプレイングの中に【絡みNG】と明記していただけるとありがたいです。
それでは皆さまのプレイングをおまちしております、よろしくお願いします!
第1章 日常
『ファミレス会議』
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POW : がっつりボリュームのある料理を頼む
SPD : サラダバーやドリンクバーでオリジナルブレンドを作る
WIZ : 甘いデザートを楽しみ尽くす
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●大広間の間
銀誓館学園の室内プール。時はお昼休み、転移によってやってきた猟兵達の目の前で変化が起きる。
人気の無い静かなプールが真っ二つに割れ、地下への階段が現れる。
「ようこそモキュ! 僕はこれからお昼を食べに行くところだから、ついでにマヨイガに案内するモキュ!」
階段を昇って来たのは一匹のモーラット。来た道を戻る彼(?)の後をついていく猟兵達。
プールの地下へと進んだ猟兵達は、その隠されたフロアで手合わせをして切磋琢磨する能力者達を横目に一つのドアへと案内される。そのドアは異界であるマヨイガに通じているのだ。
猟兵達はドアの先へと進む。一歩踏み込めば風景は一変する。果てが見えないほど広大な板敷の大広間がそこには広がっていた。
「ようこそ、ここがマヨイガだモキュ!」
●ファミレス『シニクーヤ・大広間の間店』
───今日はいつにもまして忙しい日だ。
男は心の中で思わずぼやく。客がいるという事はこの店の長である男にとっては本来喜ばしい事ではある。特にこの大広間の間に建てられた当店は、立地の関係上通行は盛んだが、あくまで通過点であってここで食事をとろうという客はあまり多くないのだ。
だがそれにも限度というものがある。今の客数は普段の三倍を超えている。客席はその気になればいくらでも『増やせる』が、料理人の数は己一人だ。
「ねーちゃん、こっち料理まだー?」
「はぁい、視肉チャーハンお待たせしましたぁ」
「ウェイトレスさん、視肉入りパフェお代わりお願いします」
「はいはい、かしこまりましたぁ」
「おじょうちゃんや、ワシの視肉寿司はまだかのう?」
「もう、いやだわぁおじいちゃんたら、さっき食べたでしょぉ?」
「そうじゃったかのう……? もう骨だけで脳みそないから忘れちまったわい、カーカカカ」
制服を(勝手に)魔改造し、大胆に肌を露出させたバイトのウェイトレスは、両手と尻尾の蛇まで総動員して出来た端から料理を運んでいる。必死なのにどこかチャーミングな愛嬌を忘れないのは流石リリスと言った所か。いや今はどうでもよい。
男、店長が喜べないのは忙しすぎるからだけではない。客達が一様に浮かない顔をしているからだ。
「……で、何時になったら病院ハウスの封鎖は解けるんだ? 俺取れた腕の縫合手術予約してるんだけど」
「ものすごく暴れる危ないのが居るから近づいちゃだめだって、神主さんが言ってたよ」
右腕だけで視肉チャーハンを食べるリビングデッドの男に、届いた視肉パフェを受け取った座敷童の地縛霊が答える。
それだ、この忙しさの原因。客が増えたとえ、彼らが笑顔でなければ素直に喜べない。その理由。
来客を告げるベアベルが鳴る。店長は反社的にいらっしゃい空いてますよ、と声を挙げながら己に繋がる鎖をじゃらりと鳴らす。みるみるうちに店舗は広がり新たな席が生み出される。
「なんじゃ、妖獣が痛くて暴れとるんかのう、難儀なもんじゃなぁ、その点ワシはもう神経も無いから痛くないんじゃけど、骨が弱ってきてのう……お医者様にみてもらわにゃいかん……おおい、お嬢ちゃんや、わしの視肉寿司まだかのぅ?」
「違うモキュ、僕達の仲間じゃないモキュ。女の人のお人形だって言ってたモキュ」
老人スケルトンの言葉を遮ったのはたった今入店したばかりのモーラットだった。
「能力者さん達が言ってたモキュ。オブリビオンってうんだモキュ。ゴーストじゃないから視肉を食べてもだめなんだモキュ」
モーラットはそう言うと、さっさと新たな空席に行ってしまう。
「なんでぇ、それじゃあ叩きのめすしかねぇのか。くそう、俺の腕がくっついてりゃなぁ」
「駄目だよ、案内人のおじちゃんだってバラバラにされちゃったんだもの、危ないよ」
「マジかよ、あの恐竜のゴーストだって抑え込んじまうおっさんがかよ……じゃあ誰がそいつを何とかできるんだ?」
はぁ、と肩を落とすゴースト達。店内は重苦しい雰囲気に支配されていた。
●
モーラットの向かうファミレスへ足を踏み入れた猟兵達。古臭いが普通の建物に見えたその内部は異様な光景だった。
ひしめく客席には、ゴーストと呼ばれる存在。動く死体や骨。あるいは体から鎖をたらす幽霊のような存在感の実体。はたまた刺激的な恰好をした蛇の尻尾を持つ女性や複数の獣が混じった様な奇怪な動物達が座り食事をしている。
せわしなく店内を行き来して配膳する(過激な恰好の)ウェイトレスもまた蛇を生やしているし、カウンター奥で休むことなく料理を作り続ける店主にいたっては、首に縄が巻かれた鎖持つ幽霊に見える。
モーラットは憶する事無く奥へ進み、客達に何かを話した後でさっさと席についた。
猟兵達はここで客として料理を食べながら周囲の話に耳を傾ける事も、店長やウェイトレスの手伝いを申し出る事も、他の客達に積極的に関わる事も出来るだろう。
暗都・魎夜
pow
【心情】
オブリビオン、マヨイガにも出てくるのか
まあ、マヨイガだって世界の一部だし、そういう意味じゃ特別な場所でもないよな
でも、俺にとっては戦争で散々世話になったし、いつもの遊びの場所で、なじみのデートコース
全力で守らせてもらうぜ
【行動】
「こんな店出来てたんだなあ。ちょうど、昼飯時だし食ってくか」
昼だったらランチメニューを頼むのは値段も量も鉄板
微妙に足りない感じはあるし、サイドメニューでおすすめを探す
デザートも中々だが……戦いの後だな
飯は食いながら「情報収集」はキッチリと
「ウェイトレスの姉ちゃん、さっきの話、詳しく聞かせてもらっていいかい?」
「安心しな、何とかできる奴なら、ここにいるぜ」
●ボリュームたっぷり満足ステーキ
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)はマヨイガにオブリビオンが出現した、という情報に驚きを覚えつつも一人納得する。マヨイガだって世界の一部なのだから、そういう意味では特別な場所でもないのだ、と。
彼にとってマヨイガとは、銀誓館学園で暮らしたかつての日々において戦争で散々世話になり、また、いつもの遊びの場所でなじみのデートコースでもある。
ある意味で、死と隣り合わせの青春の象徴であるのかもしれない。
「こんな店出来てたんだなあ。ちょうど、昼飯時だし食ってくか」
ここまで案内してくれたモーラットに続いて自らも入店した魎夜は興味深げに店内を見回す。飲食店としてのプライドなのか、掃除や手入れは行き届いて清潔感はある、が、やはり壁や調度品等は経年劣化を感じさせる。古民家が集合するマヨイガの建築物ならではと言った所か。
「いらっしゃいませぇ……あら、素敵なお客様」
ウェイトレスはやや声のトーンをあげつつ魎夜をカウンター席へと案内する。たった今生み出された新たな椅子に腰かけた魎夜はメニューに手を伸ばした。
「ここはやっぱりランチメニューか」
昼ならばランチメニューを頼むのは値段も量も鉄板。それが魎夜の経験則だった。
メニューには名前や説明と共に写真も載っている。プレートの上で威風堂々といった風に鎮座する分厚いステーキやハンバーグ。チーズたっぷりのドリア。あるいはパスタも数種類並んでいた。説明に目を通せば肉類はやはり視肉を使っているし、ミートソースなどの原料も視肉のようだ。
幾つかある選択肢のを無言で比較しながら至った魎夜の結論は。
(「サイドメニューも頼もう」)
意気軒高で精力的に活動を続ける魎夜にとっては、分厚い視肉ステーキのランチセットだけでは少々物足りない。この後一仕事ある事も考えるならもう少しカロリーが欲しい。目を走らせるサイドメニューのコーナーには、グラタンや揚げ物の文字が躍る。
デザートも目を引かれるがそれは戦いの後、勝利を祝う時に食べるとしよう。そう決めた魎夜はウェイトレスを呼び止めるのだった。
しばし待って登場したステーキランチ。早速肉を切ってみれば程よい焼き加減。口に頬張れば視肉の旨みがしっかりと引き出された素晴らしい味付け。白米が進む逸品、一口食べるごとに活力がみなぎってくるのを感じる。
サイドメニューでおすすめとされていたグラタンもアツアツで、火傷しないように気を付けて口に運べば、濃厚なミルクとチーズの共演が舌の上で開かれる。
視肉は例え生のまま齧り付いたとしても美味い。しかし魎夜が今口にしているのはしっかりした技術に裏打ちされた『調理』によってその美味さが他の食材と共に更なる昇華を果たした『料理』だった。
「ウェイトレスの姉ちゃん、さっきの話、詳しく聞かせてもらっていいかい?」
店長が磨き上げた技術をたっぷりと堪能しつつ、彼は能力者としてそして猟兵としての仕事も忘れない。魎夜は料理が大変美味な事をその満足感と共に店長やウェイトレスに伝え、その際に話を切り出した。
「お客さんゴーストじゃないわよねぇ? 病院ハウスって場所しってるかしら? なんでも今そこが危なくて近づけないんですって」
病院ハウス。その名に魎夜は聞き覚えがあった。確か、廃墟となった古い診療所などが寄り集まった一角で、マヨイガのゴースト達へ治療や改造を施す能力のある場所だったはずだ。
「みんな困ってるし、早く何とかなるといいのにねぇ」
「安心しな、何とかできる奴なら、ここにいるぜ」
グリモア猟兵が語った廃病院も恐らくその地域にあるのだろう。向かうべき目的地は判明した。魎夜は困り顔のウェイトレスを安心させるようにウィンクすると、ステーキを勢いよく頬張るのだった。
成功
🔵🔵🔴
山吹・慧
う~む、やはりマヨイガにもオブリビオンの
魔の手が及びましたか……。
ここは多くの能力者達の想いが刻まれた場所でも
ありますからね。
何としてでも平穏を取り戻さなければ……。
それはそれとして視肉カレーをお願いします。
そういえばここのショッピングモールやプラネタリウムで
デートした友人達もいましたね。
彼らは今どうしているのでしょう?
こんなご時勢でも元気にしていれば良いのですが……。
(視肉カレーを食べながら昔を思い出す)
おっと、情報も集めなければいけませんね。
先程、モーラットが話しかけていた客達の様子を
伺いましょうか。
アドリブ等歓迎です。
●思い出を味わうカレーライス
山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)はカウンターで顎に手をあててう~むと唸る。己の悪い予感が当たり、マヨイガにもオブリビオンの魔の手が及んだ事に、眉を寄せてしかめっ面をする。
(「何としてでも平穏を取り戻さなければ……」)
マヨイガは多くの能力者達の想いが刻まれた場所でもあるのだ。真面目な慧は胸中で決意を固める。
「それはそれとして視肉カレーをお願いします」
入店して何も頼まないのも失礼。メニューを確認して慧も戦の前の腹ごしらえと相成った。
ライスと共に掬われたカレーが口元へ運ばれる。既に濃厚なスパイスの香りが鼻孔をくすぐる。ゆっくりと口内へ消えるカレーライス。辛さは勿論ある。けれどそれ以上に野菜から持たされる甘さ、数種類のスパイスが織りなす変幻自在な味わい。そしてそれらと調和しつつしっかりと自己主張を忘れないブロック視肉。しっかり煮込まれほろほろと口の中でほどけていく。美味い。
「……」
静かに味わい嚥下する慧。香しいカレーはいつしか過去の記憶を紐解いていく。銀誓館学園に通っていた日々。その何時かの時に友人たちと食べたカレーライス。そういえばその中には、マヨイガのショッピングモールやプラネタリウムでデートした友人達も居たはずだ。
(「彼らは今どうしているのでしょう?」)
慧は学園卒業後欧州へと渡った。友人達は国内に残ったものもいれば、己の様に海外へ飛び出した者もいる。
「こんなご時勢でも元気にしていれば良いのですが……」
この世界の全生命の存亡をかけた戦いを勝ち抜き、世界結界がいずれ失われ混沌が待ち受けるとはいえ、様々な対策を行い希望溢れる未来へと進んだ筈だった。だが、混乱は全く想定外の方向から現れ、新たな戦いが始まった。彼らは今、どうしているのだろうか。
「しかしよぉ」
物思いに耽っていた慧はその言葉で我に返る。それは先程モーラットが話しかけていた客の一人だ。カレーを口に運びながらそっと様子をうかがう事にする。
「その、おぶりびおん? とかいう奴が病院ハウスを出て別の所に行ったら危ねぇよな」
「神主さんが神社寝殿の辺りを迷路にして出られないようにしたんだって。念のためにしばらく別のお家に行ってなさいって追い出されちゃったんだから」
腕のとれたリビングデッド男に答えた座敷童の少女はぷくりと頬を膨らませる。
「なんじゃ、もうこんな時間か。早くお医者様の所にいかんとじゃのう」
「まてまて骨の爺さん、だから今は迷路で行けなくなってるんだって」
「神主さんにお願いすれば入れてもらえるかもしれないけれど、迷路は解いてもらえないだろうからおじいちゃんじゃ迷っちゃうね」
(「神社寝殿。それに迷路ですか……」)
オブリビオンのねぐらへ向かうには突破しなければいけない関門があるようだ。そして現地にいるらしい『神主さん』なるゴーストに会う事で挑戦は可能らしい。
次に向かうべき場所と、するべき行動はこれでわかった。慧は彼らの話を心に刻み込みつつ、最後の一口を掬いあげるのだった。
成功
🔵🔵🔴
鳶沢・成美
マヨイガかあ、そういえば『マヨイガの戦い』ってのがありましたね
知り合いの男性が女湯の戦場で重傷になっちゃって……あれ?
僕はUDCアース出身のはずなのになぜこんな記憶が? まあいいか
とりあえず飲み物でも頼んでみますか
注文いいですか? アイスミルク、ダブルでなんちゃって
このフレーズたまに言いたくなるんですよね
そういえば何の乳なんだろう? 牛の妖獣さんかな
まさかお姉さん(リリス)のじゃないよね
なんて馬鹿話をしながら話を聞いてみましょうか
なんだか雰囲気暗いですね、お困りごとでも?
●白き誘いアイスミルク
(「マヨイガかあ、そういえば『マヨイガの戦い』ってのがありましたね」)
鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は入店する前に見た大広間の間を思い返して感慨に耽る。今は良好な関係を築けているマヨイガだが、かつて人類を守るためにゴーストと戦っていた銀誓館学園にとっては、大量のゴーストがひしめくこの場所は驚異に映った。敵対する勢力との争いの場になった事もあったのだ。
(「知り合いの男性が女湯の戦場で重傷になっちゃって……あれ?」)
当時を懐かしんではたと我に返る。己はUDCアース出身のはずだ。なのになぜこんな記憶が? 銀誓館学園で過去の出来事をまとめた資料を閲覧した事はあるが、まるで自身が見て来たかのような生々しい記憶……。
「……まあいいか」
成美はしばし首をひねるが、やがてこれ以上考えても詮無き事と頭から追い払う。切り替える為にもとりあえず飲み物でも口にしようと彼はウェイトレスを呼び止める。
「注文いいですか? アイスミルク、ダブルでなんちゃって」
「うふふ。ダブルでございますね」
このフレーズたまに言いたくなるんですよね。とおどけた調子で指を二本立てて注文する成美に、ウェイトレスもくすくすと笑いながら応える。
ほどなくしてグラスに入ったアイスミルクが届けられる。真っ白い液体の中を透明度の高い氷が浮いていた。
成美は添えられていたストローを口に銜え吸う。初めにキッチリ冷やされた液体の心地よさが口内へ、そして喉を滑り落ちていく。そして牛乳本来の甘みに砂糖の甘さが絡み合い舌の上で踊っていく。
「はぁぁ……美味しいですねぇ」
目を細めて思わず、といった風に成美は息を吐いて独り言つ。二口、三口と再び吸い上げれば、見る見るうちにグラスの中は空になっていく。
「そういえば何の乳なんだろう?」
ふと成美の胸中にそんな疑問が飛来したのは、注文したお代わりが届くのを心待ちにしながら、空のグラスの中で溶けていく氷を眺めていた時だ。
まず真っ先に候補に浮かぶのは牛の妖獣。マヨイガには妖獣も数多く生息している。中には牛乳を搾る事の出来る者もいるだろう。
「お待たせしましたぁ」
そこへウェイトレスがお代わりを届けに来る。成美の横から身を乗り出して眼前のカウンターにグラスを置くウェイトレス。成美の視線は自然と隣で前かがみになっているウェイトレスの豊かな胸へ。
「このミルク、まさかお姉さんのじゃないよね」
「え? やだぁもぅ……出るかどうか、試したいんですかぁ?」
妖艶な笑みを浮かべて品を作るウェイトレス。成美は馬鹿話を続け打ち解けてから本題を斬りだした。
「なんだか雰囲気暗いですね、お困りごとでも?」
「そうなのぉ。実はねぇ……」
楽しそうに会話をしていたウェイトレスは眉をしかめ悲しそうな顔をして語りだす。暴れ出す危険な存在のせいで病院ハウスに近づけない事を。足止めをされたゴースト達が腰を落ち着ける為に多数入店している事を。
病院ハウスには多数の病院や診療所があり、怪我をしたゴーストがお世話になったり、年寄のゴーストが朝から集まって談義に花を咲かせてたのだという。そんな彼らは足止めを喰らい、とりあえず腰を落ち着けるために今ここにいる。
「お店が忙しいのは構わないのだけれどぉ……私も店長もお客さんがご飯で喜んでもらえることが嬉しいのぉ。でもみんな悲しい顔でご飯を食べているから、私達も悲しくなっちゃうのよねぇ」
そこまで語ってウェイトレスは別の客に呼ばれ立ち去る。成美はお代わりのアイスミルクを一気に飲み干し、勢いよく立ち上がる。向かうべきは、病院ハウスだ。
成功
🔵🔵🔴
桂木・京
私としてはゴーストの領域に踏み込むのは好ましくないのだが、人魔共存が進む中でオブリビオンが現れたとあれば仕方あるまい。
…「彼女」も心配しているだろうしな。
店には入ってみるものの、注文はしない。
邪魔をするようで気が引けるが、宗教上の理由で私はここの食べ物は口にできないのだ。誤解しないで欲しい、害がないのは分かっている。
さて、一番多く客の話を聞いているだろうウェイトレスから情報を集めるとしよう。(目の保養にもなることだしな)
どんな奴が暴れているのか、姿形、能力など推測出来る材料が集まればいいがな。
●お冷のおかわりは自由です
「いらっしゃぁい、ご注文はお決まりですかぁ?」
着席した桂木・京(土蜘蛛のファイアフォックス・f35523)に向けられるウェイトレスの言葉に、彼女は申し訳なさそうな顔をして首を横に振る。
「邪魔をするようで気が引けるが、宗教上の理由で私はここの食べ物は口にできないのだ」
誤解しないでほしい、害が無いのはわかっている。そういって謝罪する京へ、ウェイトレスは笑って手を振る。
「大丈夫よぉ、お席は幾つでも店長が増やしちゃうんだからぁ」
そう行ってお冷を置き、別の客の注文を受けに立ち去るウェイトレスを眺めつつ、京は小さく息を吐く。彼女はゴーストの領域に踏み込むのは好ましく思っていないのだ。
(「だが、人魔共存が進む中でオブリビオンが現れたとあれば仕方あるまい」)
京自身の思いと信念とは別に、時は進み世界は変わり続けていく。人と魔は互いの領域を近づけ、傷つけあわずに共に存える道を模索し続けている。更には新たな世代が遂に生命と死の領域を超えて踏み出し始めたのだ。例え己の信念と異なっていても、『未来(さき)』を求める者達が『過去』に脅かされる事を由とする京では無かった。それに。
(「……『彼女』も心配しているだろうしな」)
共に死と隣り合わせの青春を駆け抜けた『彼女』ならば、恐らくオブリビオンに脅かされるゴースト達をも心配しただろう。それだけで、京にとってここに赴くに足る理由となるのだ。
「すまない、ちょっといいだろうか?」
「はぁい」
兎にも角にも情報を得よう。その為にこの店に入ったのだ。京はウェイトレスを呼び寄せる。客足も落ち着き、店内の客への配膳もある程度済んでウェイトレスの手が空いたタイミングを見計らう事も忘れていない。
「なんでも暴れている奴がいるんだって?」
「そうなのよぉ……」
話を向けられた京にウェイトレスは浮かない顔で話し始める。ウェイトレスは直接の目撃者ではない、が、普段より多い来客達から一番多くの話を聞いているだろう。その京の推測通り様々な話を聞くことが出来た。
(「どんな奴が暴れているのか、姿形、能力など推測出来る材料が集まればいいがな。まぁそれに」)
京の銀の瞳と眼鏡がキラリと光る。視線の先には美しい容姿のウェイトレスの顔。
(「目の保養にもなることだしな」)
趣味と実益を兼ね備えた最適な選択だった。
「そうねぇ、なんでも見た目は白衣の女の人らしいわよ。鎖が無かったから最初はお仲間(リリス)かリビングデッドかと思われたみたい。でもぉ」
一見すると人間によく似た外見、だが四肢をよく見れば皮を被った人間のそれではなく、作り物。人形だったのだそうだ。
「それで近くにいたお医者さんや患者さんに、持っていたメスで斬りかかったり、お薬を投げつけたりしたらしいの。新しく来たゴーストを案内するリビングデッドさんなんてバラバラにされてしまったんですってぇ」
ゴーストの肉体に傷を負わせる程の一撃であるというならば、それはきっとそのオブリビオンのユーベルコードなのだろう。
「後はぁ、痛い痛いって物凄い叫び声をあげていたのだそうよぉ」
グリモア猟兵の話によれば出現したのは妖獣型オブリビオン。妖獣ゴースト同様に常に苦痛にさいなまれているのならば注意力も散漫になり、己があげる叫び声は多少の物音ならかき消してしまいそうだ。
歴戦の能力者でもある京は、ウェイトレスの聞いた話から敵に関していくつもの重要な情報を見出す。
京は、ウェイトレスにウィンクをしながら感謝を述べると立ち上がった。得るべき情報は得た。後は現地へ向かうだけだ。
胸の内に戦意を灯して、京は真っすぐに出口へ向かって歩き出すのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『地縛霊の特殊空間』
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POW : 特殊空間の解除のために本体である地縛霊と戦う。又は思いつく限りの脱出条件を手あたり次第試す。
SPD : 地縛霊の動きを制限しつつ脱出の時間を稼ぐ。又は速やかに脅威や地縛霊の排除・弱体化を試みる。
WIZ : 特殊空間に魔力や霊力等、神秘の力で干渉して解除を試みる。又は地縛霊の特徴等から脱出条件を推測し試す。
👑7
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●神社寝殿
猟兵達はゴーストから情報を得てマヨイガを進む。向かう目的である病院ハウスエリアに続く道を進むと、やがて幾重にも重なった鳥居が見え始めた。
鳥居の内側にはかなり古風な屋敷や神社が立ち並んでいる。
行き交うゴースト達の間を縫いながら先へ進むと、一際大きな鳥居が現れる。その間には、まるでバリケードテープの様に幾重にも注連繩が張り巡らされている。
「あんたら、この先には行けねぇよ」
鳥居の横から声がする、そちらを向いた猟兵達の目に飛び込んできたのは、なんとバラバラ死体だった。否バラバラになったリビングデッドだった。
彼はこの神社寝殿エリアで案内役を買って出ているゴーストだという。聞けばこのエリアは新たにマヨイガへやって来たゴースト達をとりあえず住まわせる客室等が用意されているのだとか。
暴れん坊のゴースト等を抑え込む事もあり、彼は力には自信があったのだが、病院ハウスに現れた新顔に合えなくバラバラにされてしまったらしい。
「こりゃいかんって事で神主さんが封鎖してるんだよ」
どうやらファミレスで得た情報の突破しなければいけない関門がここのようだ。猟兵達は注連繩の隙間を通り抜ける。
●神社迷宮
ふと気づくと猟兵達は十字路の中央に立っていた。
背後を振り返っても先ほど通った注連繩塗れの鳥居は無い。十字路の四方はどれも神社の本殿らしき建物に続いている。
十字路の中央には方角を示す記しが刻まれており、どうやら十字路はそれぞれが東西南北に続き、四つの本殿もそれぞれ東西南北を向いているようだ。
さてどうするかと思案する猟兵達の頭上から一枚の和紙が降ってくる。そこには『先ずは天におわす神々の不動の座へ参れ。次に天照大神を参れ。しかる後海の三神を参れ。最後に不動の座を仰ぎ見る北の守護神を参れ』と書かれていた。
このメッセージは特殊空間を抜けるための正規の手順なのだろう。だが、特殊空間を抜ける方法は一つではない。
セオリーならば特殊空間の本体である地縛霊を倒せば解除されるだろうが、今回はマヨイガの住民である地縛霊なのでそれは行うべきではないだろう。
戦う以外の手段でどうにかしてこの特殊空間による迷宮を突破しなければならない。
鳶沢・成美
これ普通に神主さんに事情を話して通してもらえばいいのでは? 僕は訝しんだ
解決のために来た猟兵ですけど、通してもらえませんかねえ
ぶっちゃけそれが手っ取り早いんですが
北の守護神は北、それが仰ぎ見ている不動の座は南
天照大神は東とするなら残っている海の三神が西なんですかね
南→東→西→北の順番?
単純すぎますかねえ、天におわすとか仰ぎ見るとかに
意味があるかもしれないし無いかもしれない
脱出ゲームとかあんまりやらないからなあ……
まあ、さっと通してくれるならこの謎解きに意味はあまりないんですけど
桂木・京
アドリブ連携等歓迎
ふぅん…天におわす神々の不動の座とは北極星のことだろう、最初は北に迎えということか。
次の天照大神は太陽だから東、海の三神は住吉三神のこと、これは西。
そして最後にもう一度北。
つまり北→東→西→北の順で参ればこの空間を抜けられるということだな。
では推理した順で神社にお参りして、特殊空間を抜けられるか確かめてみるとしよう。
上手くいったならそのまま通り抜ければ良し。
間違っていたなら…さてどうしたものか。
誰かが通りかかるのを待って同行させてもらえればよいが…
最悪、この空間の起点になっていそうなもの、神社を破壊してみることになるか…神職の家に生まれた身としては避けたいところだがな。
山吹・慧
むむむむ、これはかなり苦手分野ですね……。
う~む、とにかく考えてみましょう。
曲がりなりにも探偵倶楽部に入っている身ですからね。
え~と、思いついた所から……。
最後に向かう『北の守護神』はやはり『北』でしょうか。
そして、それを仰ぎ見るという『不動の座』は『南』かな?
『天照大神』といえば太陽神なので日が上る『東』。
消去法で『海の三神』は『西』。
ですから『南』『東』『西』『北』の順で回れば
良いのでしょうか?
ダメだったら、別の手順で試していきましょう。
今回の一件も滞りなく解決しますように……。
(お参りして柏手を打つ)
暗都・魎夜
【心情】
特殊空間の解除条件か
ヒントが出ているのは助かるが、さてさてってところだな
【行動】
この順番に本殿を参れ…ってことなんだと思う
不動の座は「北の守護神が仰ぎ見る」ので南
天照大神は太陽のことだから東として
海の三神と方角結びつける要素が思い出せないのが不安だな
一応、他の手がかり無いかUCで召喚したモーラットの「失せもの探し」で捜索
無けりゃ消去法的で気に入らないが、一応の推理通り「南→東→西→北」で行ってみるか
※即断即決が多く見えるが、当人の中に勝算が見えないと割と消極的になる
※選択肢がないと腹を括れば、分が悪くても挑む
最悪、全パターンやればどこかで出れるだろ
「よし、行くぞ、お前たち!(モラに)」
●出題
「特殊空間の解除条件か」
ヒントが出ているのは助かるが、と暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は腕を組みさてさてと考え始める。
「むむむむ、これはかなり苦手分野ですね……」
山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)はやや困り顔で唸るが、曲がりなりにも探偵倶楽部に入っている身だからと頭を回転させ始める。
「これ普通に神主さんに事情を話して通してもらえばいいのでは?」
一方鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は訝しんだ。
「解決のために来た猟兵ですけど、通してもらえませんかねえ、ぶっちゃけそれが手っ取り早いんですが」
「難しいだろうな」
天井を仰ぎ見て手を合わせる成美へ桂木・京(土蜘蛛のファイアフォックス・f35523)は首を横に振る。 他のゴーストに比べて地縛霊は決められた行動パターンを崩せない性質を持つことが多い。俗な言い方をすれば頑固である事が多いのだ。自分では手に負えない危険なオブリビオンが居る場所へ、自分が作った特殊空間すら抜けられぬ者を通すわけにはいかないとしているならば、何らかの手段で実力を示す必要があるだろう。
猟兵達は改めて手に入れたメモを見直す。
「この順番に本殿を参れ……ってことなんだと思う」
魎夜の推測に他の物も首肯して賛意を示す。ではその順番とは如何なるものか。猟兵達は頭を突き合せながら一つ一つ確認をしていく。
●先ずは天におわす神々の不動の座へ参れ
「ふぅん……天におわす神々の不動の座とは北極星のことだろう、最初は北に迎えということか」
「あれ?」「おや?」「ん、そうなるのか」
一つ目のフレーズに京が答えると他の三人は意外な顔をした。
「不動の座は『北の守護神が仰ぎ見る』ので南だと思ったんだ」
魎夜の言葉に慧と成美も同じ推測をしたと述べる。ただ一つ明確に方角が示された『北の守護神』を北向きの本殿であると彼らは考えたのだ。
「……だけどそうか、確かに北極星は位置が変わらないから不動か……」
京の言葉を受けて慧は独り言つ。どの本殿が対応しているかはともかくとして不動の座=北極星というのは妥当であるように思えた。
「なので私は最初と最後に二度北を参ると考えた」
「単純すぎますかねえ、天におわすとか仰ぎ見るとかに意味があるかもしれないし無いかもしれない」
最初が南で最後が北ではないかと考えた成美。彼としては言い回しに引っかかるものがあるようだ。
お互いの考えを述べ合った猟兵達は、最初と最後に関しては一端横に置くことに決めた。
●次に天照大神を参れ
「『天照大神』といえば太陽神なので日が上る『東』」
「だな」「だな」「ですよね」
慧の言葉に皆首肯する。これは満場一致だった。
●しかる後海の三神を参れ
「海の三神と方角結びつける要素が思い出せないのが不安だな」
己の知識の中にとっかかりを見つけられず悩む魎夜。
「残っている海の三神が西なんですかね」
「えぇ、消去法で考えれば」
成美と慧も答えは出るものの確証が持てなかった。
「海の三神は住吉三神のこと、これは西」
そんな中京一人が確信をもって断言する。それは問わる神話に出てくる神々で、この神を奉る本殿は西を向けて建てられるのだと、神職の家で生まれ育った京は知っていた。
その確かな説得力に確証の持てなかった三人は納得する。
●最後に不動の座を仰ぎ見る北の守護神を参れ
二番目と三番目がまとまった事で、話は再び最初と最後の行先に戻ってくる。
「仰ぎ見る、か……お、戻って来たな、どうだった?」
腕を組んで考える魎夜の元に、もきゅもきゅと9体のモーラットが集まってくる。彼は話し合いを初める段階で、まだ他の手がかりが無いか、一応念を入れて召喚したモーラットに探索を命じていたのだ。
「もきゅぅ……」
魎夜を仰ぎ見たモーラット達は一様に肩(?)を落として首(?)を横に振る。
成果を上げられなかったと意気消沈するモーラット達を魎夜は優しく撫でる。
「ん? ……そうか、逆なのか」
その様子を眺めていた慧はぽつりと独り言つ。彼は北の守護神が北から仰ぎ見るのだから不動の座は南だと考えたが、不動の座が北極星であるならば、その図は180度入れ替わるはずだ。
「不動の座が北なら北の守護神は南からそれを仰ぎ見ているんですね。ちょうど今のモーラット君たちの様に、向かい合って」
自分の閃きを皆に伝える慧。
「ふむ、本殿は神が住まう場所でな、本殿の正面とはつまり神が向いている方向とみなす事が出来る」
実家で教わった事を皆に伝える京。海の三神も日本海を見ているから西向きの本殿になるのだという。
「という事は北を仰ぎ見る。南側が正面になってる本殿が『北の守護神』って事になるんですか?」
脱出ゲームとかあんまりやらないからなあ……と多少自身なさげではあるが、成美は最初から引っかかっていた仰ぎ見る等の表現から推測を組み立てる。
「それなら最後は北って事で良さそうだな。お手柄だぞお前達」
それぞれに確認を取りつつ魎夜はそう宣言し、モーラット達をもう一度撫でるのだった。
●答え合わせ
斯くして最初を除いて答えは出た。残すは一番最初の行先だが。
「最初は北かと思ったが、これは南だな」
人々が北極星を参るにはどちらを向けばよいか、北側だ、となれば逆に本殿の正面は人々と相対する為に南側となる。京は先ほどのやり取りから考えを改め、ここに全員の答えが一致した。
即ち、南→東→西→北の順に参る事。早速一行は南を向く本殿へと向かう。
「上手くいったならそのまま通り抜ければ良し。間違っていたなら…さてどうしたものか」
「ダメだったら、別の手順で試していきましょう」
失敗した場合を考える京に慧が返す。特殊空間を別の方法で突破しても、主である神主の地縛霊には認められるだろう。問題はその手段だが。
「最悪、この空間の起点になっていそうなもの、神社を破壊してみることになるか……」
神職の家に生まれた身としては避けたいなと眉を顰める京。
「最悪、全パターンやればどこかで出れるだろ」
既に腹を括った魎夜に迷いはない。モーラット達に行くぞと号令をかけて先頭に立って進む。
「まあ、さっと通してくれるならこの謎解きに意味はあまりないんですけど」
言わずもがなな呟きを独り言ちつつ成美も続く。京と慧もそれに続いた。
●突破
(「今回の一件も滞りなく解決しますように……」)
柏手の乾いた音が響く。慧は心の中で任務の無事を祈り瞳を開く。眼前にあるのは北を向く本殿。つまり最後の一つだ。
目の前が唐突に変化する。特殊空間が解かれる時の感覚に襲われた一行は、次の瞬間別の場所にいた
「よくぞ試練を抜けられた」
猟兵達の前には狩衣に身を包み、烏帽子をかぶった老人が立っている。その装束の間からは地縛霊特有の鎖が地面へと延びていた。
「真に勝手なお願いではあるが、あれなる脅威を取り除くため、試練を乗り越えられるほどの力量をお持ちの貴方方にご助力を賜りたい」
老人は膝を付くと猟兵達へ深く頭を下げる。元よりそのつもりでここまで来たのだ、猟兵達は快諾し先へ進む。
大成功
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第3章 ボス戦
『ドクタードール』
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POW : 手術のお時間です
自身の【うっすら開いた瞳】が輝く間、【医療用メス】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : 消毒のお時間です
近接範囲内の全員を【ふらふら】にする【薬剤】を放ち、命中した敵にダメージと麻痺、味方に隠密効果を与える。
WIZ : 身体改造のお時間です
【医療用メス】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。
👑11
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●病院ハウス
こじんまりとした診療所から大病院まで、そのエリアにはいくつもの廃墟が立ち並んでいる。多くのゴーストが急いで逃げだしたせいだろうか、周囲には物が散乱し、時には拾い損ねたらしいリビングデッドやスケルトンの物と思われる手足や骨まで残っていた。
「ひぎいいぃっ!! せ、せいめ、ちりょおおぉっ!!」
やや離れた廃屋から絶叫が迸る。生命ある者達の侵入を察知したオブリビオンがこちらへやってこようとしているのだ。
妖獣化の影響で非常に攻撃性が高まり危険な相手、油断は出来ない。だが同時に、攻撃性と苦痛からその思考は非常に単純化されている。目の前にいる猟兵に何も考えずに襲い掛かるであろう程に。
この場は廃墟となっている診療所や病院も多い、上手く相手の隙を突く方法もあるはずだ。無論、危険はあるが己の力量を信じ真向から立ち向かう事も出来るだろう。
猟兵達は各々の最も得意とする殲術を頭に描きながら戦いの準備を始めるのだった。
アリス・フォーサイス
なんとかお話のクライマックスには間に合ったみたいだね。さあ、苦痛に苦しむオブリビオンを解放に行こうか。
病院の通路をうまく使って、死角から、魔法の矢を撃ち、軌道を曲げてあてていくよ。
撃ったらすぐに移動、その場所を探しに来たときにはもういないって寸法だよ。
オブリビオンは人形だって話だけど、いったいここで何があったんだろうねえ。お話の調味料に、少し調べてみようか。
山吹・慧
随分苦しんでいるようですね……。
敵とはいえ忍びない。
早急に終わらせてあげましょうか。
このオブリビオンの為にもマヨイガの為にも。
開けた場所であえて正面から挑みましょう。
敵の攻撃は【オーラ防御】を展開した上で
【残像】を伴う動きで攪乱して回避していきます。
回避困難な攻撃は【受け流し】で凌ぎましょう。
敵の攻撃を凌いだら【功夫】による接近戦を仕掛けていきます。
そして【グラップル】による組技で【体勢を崩す】ことで
隙を作り、【集中力】で気の流れを読んでから
【リミッター解除】した【羅山靠・戒】を放ちます。
せめて安らかに眠れる事を祈りましょう……。
アドリブ等歓迎です。
鳶沢・成美
ふむ、なるほど生命ある者を感知する感じですかね
目立たない様に廃墟の建物の物陰から【火雷神道真】を使って攻撃してみますか
建物の陰から放たれる誘導弾の様に敵を追跡する礫の弾幕
直撃する軌道だけではなく、大きく外れたと思ったらUターンして戻ってきて当たる軌道
ジグザクに動く軌道、螺旋を描くような軌道、
あえて礫どうしをぶつける目くらまし等々、様々な動きで敵を攻撃します
まあ僕の居場所を察知されても、囮として機能すると考えれば
それはそれでありでしょうね、やる事はさほど変わりませんよ
アドリブ・絡み・可
暗都・魎夜
【心情】
妖獣型オブリビオン、全身の苦痛とか妖獣のフィジカルみたいな性質を持つオブリビオンゴースト、って感じだな
さ、マヨイガの平和のため、終わらせてやろうか
【戦闘】
医療技術の治癒と、妖獣化で強化された戦闘力で来る感じだな
面倒な相手だが、妖獣化で行動がシンプルになったのはやりやすいぜ
「見切り」で攻撃を回避しつつ、逃げるふりをして「地形の利用」で暗がりへ誘い込む
暗い場所が多いってのはありがたいな
周囲が完全な闇になったところでUCを発動
「生命力吸収」「暗視」「闇に潜む」を使用
「思い出の場所であんま暴れてほしくねえからな。治療を受けてもらうぜ、お医者さん!」
終わったらファミレスでデザート食って帰るか
桂木・京
アドリブ連携歓迎
黄泉返ってきたというのに、苦痛で正気を失っているとは哀れなことだ。
少しばかり荒っぽくなるが、もうすぐ解放してやれるだろう。
それが私なりの弔いだ。
戦闘に入る前に、共闘する全員に【白燐奏甲】を施しておく。
単純な強化だが、障害物の多いこの場ならもう一つの効果もそれなりに期待できるだろう。
敵の特性を利用して、囮役に突っ込んできたところを側面や背後から強襲。
目標を絞らせせないように一撃離脱を繰り返し、ダメージを蓄積させ、最終的な討伐を目指す。
なお、囮役は私が務めよう。
激しい戦いは出来れば若い世代に任せたいのだよ。これで私もアラサーなのだから。
●開戦前
「黄泉返ってきたというのに、苦痛で正気を失っているとは哀れなことだ」
銀の瞳を細め桂木・京(土蜘蛛のファイアフォックス・f35523)は独り言つ。利き腕全体を覆う巨大な赤手は強く握られている。
「随分苦しんでいるようですね……敵とはいえ忍びない」
早急に終わらせてあげましょう、と続ける山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)その言葉に他の者達も首肯したその時、彼らの背後に新たな気配が現れる。
「なんとかお話のクライマックスには間に合ったみたいだね」
振り返ればそこにいたのはアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。彼女は茶色の髪をふわりと浮かせて大きく首肯し、苦痛に苦しむオブリビオンを解放に行こうか、と指をさす。
「少しばかり荒っぽくなるが、もうすぐ解放してやれるだろう」
それが私なりの弔いだ。京のその言葉と共に、彼女の体内から淡い光を放つ白き蟲達が現れる。人と、他者と共に在る事を選んだ白燐蟲達も、全てを滅びに導かんとするオブリビオンへの抵抗の意思を持ち、宿主たる京の意思に応じて猟兵達の武具に纏いつく。
「さ、マヨイガの平和のため、終わらせてやろうか」
準備を整えた一行は、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)の一言と共に行動を開始した。
●交戦
「ち、ちちちち、血知千ぃぃぃぃりょおおぉぉoooooo!!」
「おっと!」
現れたオブリビオンは魎夜の姿を見るなり手にしていた瓶から薬剤を振りかける。対する魎夜は慌てることなく冷静に宙を舞う薬剤の軌道を見切って距離を取る。
「医療技術の治癒と、妖獣化で強化された戦闘力で来る感じだな。面倒な相手だが……っ」
「ぎあああぁぁぁっ!!! ちりょおおおおぉっ!!」
薬剤が届く距離まで走ってくるオブリビオンに対し、魎夜は転身して駆けだす。オブリビオンはそのまま凄まじい形相で彼の背を追い始める。
(「妖獣化で行動がシンプルになったのはやりやすいぜ」)
魎夜は勿論無目的で逃げているわけではない。逃げるふりをしなが彼は的確に望む地形へとオブリビオンを誘い込んでいた。
「ふむ、なるほど生命ある者を感知する感じですかね」
目立たぬ用廃墟の物陰に隠れている鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は、そこから魎夜とオブリビオンの追いかけっこを観察し、顎に手を当てて独り言つ。
自分や他の猟兵達を感知していないわけではないのだろうが、なによりも目の前に現れた魎夜に意識が持っていかれているのだろう。
「それならちょっと攻撃してみますか」
ハチマキを締め直しながらリラックスした声色の成美、懐から魔導書を取り出し術式に魔力を注ぎ込む。
「道真さんよろしくー」
呪(しゅ)とはある種の『思い込み』である。目には見えぬモノ、形の無きモノ、この世の摂理にそぐわぬモノ、されどそこに在ると信じる事、彼と我が共有する空想(ユメ)。故にまずはカタチを練り上げなければならない。
成美は『ソレ』を菅原道真と設定した。学問の神として広く知られ奉られるかの存在は、しかしかつては怨霊として畏怖の対象でもあった。
カミ鳴るが故に雷。現代において気象現象の一つに過ぎないそれは、古の人々にとって神意そのものであり、突如訪れる呪いであった。故に。ここに今、空想(カミ)は成る(鳴る)。
術式は力と形を得て実現する。成美の掌に乗った礫が、バチバチと放電を始める。
「ぐあぎゃあっ!?」
雷を纏いし礫が飛ぶ。建物の影から放たれたそれらは残光を置いてオブリビオンを襲う。その服や体には通電による焼け焦げが残る。
「うあああっ! ち、ちりょ、りょりょりょ」
残された僅かな知性か、はたまた獣性が本能的に己の力を把握しているんのか。オブリビオンは傷を癒し己を強化する為に神秘宿りしメスを自身に突き立てようと振りかざす……が。
「ぐあっ!?」
大きく外れた筈の礫は、弧を描いて戻り完全な死角となった背後からその手を強かに打ち据え、メスを弾き飛ばす。
苛立つオブリビオンが礫を叩き落とそうとするが、ジグザクに小刻みに動き、あるいは螺旋を描く様にオブリビオンの攻撃を避ける。
更に目前で礫同士がぶつかり、迸る雷光がオブリビオンの目を焼く。翻弄し傷つける成美の術式は確実にダメージを与えていった。
「ぐあああ!! ちりょおおぉぉぉ!!」
直接姿が見えてはいないが、魔力の残滓をかぎ取ったのか、狂えるオブリビオンは隠れた成美の方を睨みつけている。
(「それはそれでありでしょうね、やる事はさほど変わりませんよ」)
成美はあくまで焦らずペースを崩さず、己が狙われたなら囮として機能すればいいだけだと更なる術式を回し始める。
「おっと、こっちを忘れないでくれよ?」
だがオブリビオンに魎夜がストップをかける。慌てて周囲を見回すオブリビオンだが、魎夜の姿は何処にもない。
(「暗い場所が多いってのはありがたいな」)
魎夜は廃墟同士の生み出した影にその身を潜めていた。呼吸を整え意識を研ぎ澄ませ、闇と合一する。
深紅の瞳が開き闇の中で輝く。生命を感じるのに姿を捉えられず苛立つオブリビオンを視界に収める。
血を励起させる。血脈に継がれた記憶を、想いを呼び起こす。能力者としてその心身に溶け込んだ詠唱銀が、猟兵として新たに目覚めた大いなる力が、魎夜の一族が長い時をかけて収集した技の一つを呼び起こす。
「思い出の場所であんま暴れてほしくねえからな。治療を受けてもらうぜ、お医者さん!」
「ぞごがぁっ!!」
魎夜の声にようやく暗がりの中にいると気づいたオブリビオンは闇へと飛び込む。闇がオブリビオンを飲み込んだ。
殴る程の勢いで薬品の容器を握って振るった拳は虚しく空を切る。たたらを踏むオブリビオンの周囲に無数の深紅の双眸が光る。
「実はこれ、結構得意技なんだぜ」
闇の中オブリビオンを襲うのは漆黒の吸血蝙蝠の群れだ。人ならざるオブリビオンは妖獣化の影響もあって、暗闇の中でも気配で相手を察知は出来る、出来るが、物量には無意味だった。
「ぎゃあおおおぉっ!!」
無数の牙が闇の中で舞う。マネキンのような体をしたオブリビオンに血液自体は流れていないが、それでもその肉体を維持するエネルギーは体を巡っていて、魎夜の放った吸血コウモリの群れはそれも吸い取っていく。
「ぢりょおおぉぉぉっ!!」
オブリビオンは吸血コウモリの群れを振り払い闇から飛び退る。
「せいっ!」
そのオブリビオンの横っ面を、炎を纏った巨大な爪持つ腕が殴り飛ばす。物陰でタイミングを見計らっていた京の赤手だ。
「があああっ!!」
痛みと怒りで吠えるオブリビオンが京に向かおうとする、が、既に彼女は走り抜けて廃墟に消える。そして。
「逃がさないよ」
近くの病院からアリスの声と共に魔法の矢が飛び出しオブリビオンを襲う。オブリビオンは身をひねり裂けるが、魔法の矢はまるで意思があるかのごとく空中で曲り迫る。さらに。白く淡い光が瞬くとオブリビオンががくりと体勢を崩す。
その足元には紙の束があった、それはオブリビオンが暴れた病院の中で、医者のゴーストが付けていたカルテだったものだ。滅茶苦茶に暴れたオブリビオンによって斬り裂かれ、投げ捨てられ、それが偶然『不幸にも』この時この瞬間に足元へ滑り込んだのだ。
「因果応報というやつ、さっ!」
「ぎゃあああっ!!」
体勢を崩した絶好のタイミングで、再び京が飛び出して殴り掛かり、それとタイミングを完璧に合わせた魔法の矢が貫く。
「ぎ、が、ち、りょ……」
地面に叩きつけられたオブリビオンが立ちあがった時には、再び京は姿を消していた。既に理性などとうの昔に消し飛んでいるオブリビオンは、自身の不利など考える事も出来ず。痛みで散り散りになる思考と記憶をかき集め、姿を消した京より、声を発した矢の射手を獲物と定めて病院へと走りこむ。
「残念、その場所を探しに来たときにはもういないって寸法だよ」
空間そのものをハッキングしてオブリビオンの動向を監視していたアリスはえへんと得意げに胸を張りつつ独り言つ。彼女は院内の廊下から魔法の矢を放った後、直ぐに移動していた。そして彼女の代わりにそこには。
「さぁ、来なさい」
現れたオブリビオンに向かって慧はゆっくりと歩み寄る。
慧はオブリビオンに相対し手袋をはめた両拳を構える。
「があああっ!! ちりょおぉぉっ!!」
オブリビオンは瞳を開け、手にした医療用メスをがむしゃらに振るう。大上段から振り下ろされる一撃を紙一重で横に避ける。追いすがる横薙ぎはオブリビオンの手首に手を添えて、軸にして大回転し回避。振り切った所からの刺突には練り上げた気と俊足による残像で攪乱させる。
オブリビオンが自身すら傷つけて行う猛連撃を、慧は黒い風となって避ける。
「次はこちらからっ」
床を蹴って慧が前に出る。鋭い掌底。強かにオブリビオンの腹を打ち、くの字に曲げさせる。慧が積み上げた功夫を感じさせる一撃だった。
すかさず更に一歩踏み込む慧。メスを握っていた手首を掴みひねる。人形が如き体ではあるがやはり関節の駆動部には人と酷似した限界があるのか、ひねられた手はオブリビオンの意思を無視して緩み、医療用メスは落ちて床に刺さる。
慧はそのまま組み付き、テコの原理を応用してオブリビオンの膝を破壊する。
「ぎゃあああうううっ!!」
片膝を付き体勢を崩したオブリビオンの絶叫。それを聞き流しながら慧は瞳を閉じ意識を集中させる。
異界なるマヨイガ。されど此処もまた宇宙の内に在る。故に森羅万象はマヨイガにも通ずる。さらに。
(「感じる」)
死の側に立つゴースト達の楽園。だが慧はそこに、無数の命の奔流を感じた。マヨイガもまた『現在(いま)』を『生き』ようとしている。故に全てを終わらせんする『過去(オブリビオン)』を許容しない。
慧は膨大な気の流れに飲み込まれる。討てと、誘われる。開眼。
「この一手で穿つッ!」
全ての枷を解き放った渾身の一撃が放たれる。オブリビオンは胸を撃ち抜かれ、大きな穴を開けたまま吹き飛ぶ、吹き飛びながら四肢の末端から崩れ消えていく。
「あ、ち、りょ……」
顔が消えていくその一瞬、慧の目には苦痛から解き放たれ穏やかな表情に戻ったように見えた。
「せめて安らかに眠れる事を祈りましょう……」
構えを解き黙祷する慧。他の猟兵達も集まって来た。
●決着
「これで終わり、ですかね。お疲れさまでした」
面々にねぎらいの言葉をかける成美。
「師匠が言ってたぜ!『仲間の絆は最強の武器』ってな! 」
ぐっと親指を立て勝利を噛み締めるのは魎夜だ。
「激しい戦いは出来れば若い世代に任せたいのだよ」
これで私もアラサーなのだから、と運命の糸症候群で肉体は若返っても、精神がかつての十代のようにはなれない京はふぅとため息をつく。これは早く帰って恋人にたっぷり甘えなくてはならないと心に決める。
「それを言ったら俺ももうすぐアラサーなんだけどな」
京のアラサー発言に反応する魎夜。余談だが両名は偶然にも一日違いの誕生日だ。
「……」
「……」
四捨五入してようやく、といった所の慧と、四捨五入してもまだ、な成美は下手に口を挟むと藪蛇な気がして黙った。沈黙は金である。
「終わったし、ファミレスでデザート食って帰るか」
魎夜の提案を京は丁重に断った。先もマヨイガでは飲食はしないと言っていたし、なにより今は早く帰りたい別の用事がある。
アリスはマヨイガのファミレスに興味津々だったが、先にやりたい事があるので別に行くと言い、残る男衆で、事態解決の報告がてらファミレスへ向かうのだった。
●続・病院ハウス
猟兵達の活躍で脅威が取り除かれ、病院ハウスエリアには徐々に人……ではなくゴーストが戻り始めていた。
壊された物を片付ける彼らをなんとなしに眺めながら、アリスは手の中の医療用メスに語り掛ける。
「オブリビオンちゃんは人形だったけど、いったい何があったんだろうねぇ」
如何なる謂れがあり、如何なる因縁があったのか。今回のオブリビオンは妖獣化していた事もあって、そのパーソナルに踏み込むことは不可能だった。それがアリスには少々気に入らない。
己と同じ人形の姿だったからだろうか、はたまたこれだけでは『情報(ものがたり)』の『喰い』出が無いということか。アリスはお話の調味料に少し調べてみようと決意する。
己が出会えるあのオブリビオンのそうとなる前のクラマックスはどのようなものか。アリスは好奇心に胸を躍らせながら治療用メスを大切にしまうと、往来するゴースト達の雑踏に消えていくのだった。
大成功
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