Merchant of death
●侵蝕する『死』
轟く銃声、響く悲鳴。弾は跳ね、いくつもの弾線が描かれる。
下手な鉄砲なんとやら、とにかく放たれたその弾丸のいくつかの先に、標的が居ればいい。そんな撃ち方。
「か、カシラァ! カチコミです!」
「うるせェ! ンな事ァわかってる!」
ここは数ある世界のひとつ、サイバーザナドゥ。
そして、そのどこかの地域の、どこかの組織の事務所。
粗製の拳銃を手にした『カシラ』と呼ばれた男は慟哭したくなる心を抑え、立ち上がる。
(クソッ、クソッ、どうしてだ。弱小ヤクザの組を内側から手中に収め、それから成り上がっていく計画だったのに!)
デスクを遮蔽物に、身を乗り出して発砲、3発。
その返しに放たれた銃弾……20発。
「ッ! バカな!?」
向けられた銃口を見た瞬間、まずはデスクに伏せ、そして次の遮蔽物となるソファに滑り込む。……即座にデスクは穴だらけとなった。
そこで、ようやく『驚愕』の番だ。
「クソッ、クソッ、奴ら俺達と同じ弱小ヤクザのはず。なのになんなんだ、あの銃!?」
その手に持つ粗製の拳銃と、敵の持つ長物のような銃を見比べる。
向こうは大容量の弾倉からフルオートで弾をばら撒く事の出来る長い銃身のシルエット……いわゆるアサルトライフル。カスタム次第では軍隊での使用にも堪えるであろう。
対して男が持つのは回転式、いわゆるリボルバーだが装填できる弾は5発まで。銃身も短いため飛距離も威力もない。……アサルトライフルを前にした男の目には、その粗製の拳銃はまるで玩具のように映った。
次々に倒れていく部下、飛び交う弾丸に破壊されていく事務所。
そして……すべての遮蔽物となる家具がなくなり、逃げ場もない。
攻め込んできた敵の銃口すべてが、男に向けられる。
「――あんたのとこも買っておくべきだったなァ?」
にたにた、口の端を吊り上げ敵の男たちは嬉々として引き金を引いた。
無数の銃弾が身体に沈んだ直後……男は見た。
「……リトル……グレイ……」
敵の男たちの持つ銃に彫られたロゴ。
それは『リトル・グレイ』と読める文字だった。
●グリモアベース
「今回はサイバーザナドゥ世界での仕事だ」
古きウォーマシン、萩原・誠悟(屑鉄が如く・f04202)は手に持つ書類を広げる。
サイバーザナドゥ。またの名を『骸の雨降るサイバーシティ』。今なお汚染が進む危険な土地。
その上に築かれた都市はトラブルが絶えず、事件も頻繁に発生する。そして、今回の案件はまさに『猟兵』の領分だという。
「今回我々が相対するのは、この『リトル・グレイ社』という銃器製造会社だ」
書類に挟まれた写真が横に置かれる。数々の銃器が写ったもので、その銃器にはいずれも『Little Grey』というロゴが刻印されている。
しかし、そこはサイバーザナドゥ。モラルは崩壊し、警察でさえ堕落する世界において銃器を売る企業はさして珍しいものでもない。
となれば問題は銃器を作り、売っている事。それ以外にある。
「そう……この会社の作る銃器にはひとつ、罠が仕掛けられている」
弾倉を装着、弾丸を装填し、誠悟は引き金を引く。……弾は、発射されない。
「銃器のひとつひとつがIDによって管理されている。認証されなければこの通り、使用はできない」
購入時に登録されるユーザー情報、紐付けられる銃器のID。これらが一致した時のみ引き金が引けるようになるという。
そして、その管理をしているのは……当然、リトル・グレイ社。
「彼らは品質の良い銃を、割安の値段で提供している。その顧客のほとんどはヤクザだ。ヤクザ達はその銃を使い、ライバル組織を蹴散らすだろう。そして……」
頃合いを見て、そこにリトル・グレイ社と連携した警察が動き出す。
ライバル組織からの物資や土地、権利などを貯め込み膨らんだヤクザは、リトル・グレイ社の銃器で応戦しようとするが……そこで、罠が発動する。
「弾が出ない、という罠だ。それまでヤクザ達が頼ってきた銃は、リトル・グレイ社によって一瞬でただの鉄塊と化す」
そして、動揺するヤクザ達は警察によって易々と駆逐され、集められた戦利品は警察によって押収される。
リトル・グレイ社と腐敗した警察の筋書きはそんなところだろう。
「幸い、この会社の銃器はまだ流行り出す前だ。今すぐ潰せばまだ間に合う」
侵蝕してしまえば、リトル・グレイ社の指先ひとつで争いを操作される。そんな地域が出てきてしまう恐れがある。今回は、それを防ぐ戦いだった。
「……メガコーポにとっては、これもただの実験なのかもしれない」
銃器を売り、ヤクザ同士を争わせ、そして機を見て罠を発動し、甘い汁を吸い上げる。
……このような事を何度も続ける事は出来ない。それはメガコーポも分かっている事であろう。それゆえの実験だ。
「だが、その実験のために多くの人間が『致命的な損害』を被る事になる。これは、何としても阻止しなければならない」
罠の下地、リトル・グレイ社の侵蝕。
それらを食い止めるために、猟兵は往く。
「皆、頼りにしている。メガコーポの野望のひとつ、必ず打ち砕いてやってくれ」
サイバーザナドゥへ向かう猟兵達へ、誠悟は最後に手を振った。
あるばーと。
こんにちは。あるばーと。と申します。お久しぶりです。
今回はサイバーザナドゥのお仕事となります。
銃器製造会社の阿漕な商売をぶち壊しに行きましょう。
●第1章:冒険
サイバースペース内部にダイブを行い、証拠データを探しましょう。
●第2章:集団戦
メガコーポ送り込んできたオブリビオンの集団との戦闘です。
●第3章:ボス戦
オブリビオン集団のリーダー格との戦闘です。
撃破しましょう。
第1章 冒険
『ハック&クラック』
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POW : 片っ端からデータを破壊する
SPD : 一見それとわからないよう、巧妙にデータを書き換える
WIZ : 犯罪の証拠となるデータのログを取る
👑7
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紅月・美亜
ハッカーの出番と言う訳だな。ID認証制の銃器なんざロンダリングしてしまえばいいと思うんだがな……引き金を引くのに何処かの誰かの許可が要るなんてロクな代物じゃない。
まあそれはいい。地道に証拠品を集めてもいいんだが、この際だしもう少し派手にしよう。ID認証しているサーバーにDoS攻撃を加えて一時的にでもサーバーを落す。この瞬間だけでも全ての銃器が使えなくなる訳だ。リトル・グレイ社の銃器を使ってる奴全員に不幸になって貰おう。
それでも、その手の銃を使い続けるか? 一度抱いた不信は決して消える事は無いぞ。
メルガシェラ・トヴェナク
へえー。面白いですね。それに賢いです。
自分が矢面に出ることなく、全体の流れを決めることができるなんて。
きっと頭がいいんでしょうね。
『どうして安いのか』を考えなさそうな、弱小ヤクザをターゲットにしてるのも、賢いです。
まあ、予知されてしまう危険性を考えなかったのはお馬鹿さんですけどね。
【情報収集】しましょう。
ボクの皮膚は特別製。フェアレスト・スキンを使って、ブレイン・ティアラで増幅した思念波でハッキングします。
出てきた情報は全部、瞬間記憶で覚えてしまいましょう。記憶にとどめておけば、足もつきませんからね。
●動く者、佇む者
「へぇー」
サイバースペースへアクセス中、サイボーグの少女メルガシェラ・トヴェナク(スノウ・ドロップ・f13880)は件の銃器製造会社の概要を見直していた。
(面白いですね。自分が矢面に出ることなく、全体の流れを決めることができるなんて)
頭がいい、とメルガシェラ……メルは思った。
「ID認証制の銃器なんざロンダリングしてしまえばいいと思うんだがな……」
近くから聞こえる声。丁度、メルと同じフリーポータルからアクセスしている様子の少女……ダンピールが呟いたものだ。おそらく、同業だろう。
確かに、それが出来ればそうしてしまうのが手っ取り早い。
だが、メルが思うに、それも踏まえての事だ。
(『どうして安いのか』を考えなさそうな、弱小ヤクザをターゲットにしてるのも、賢いです)
そんな『弱小ヤクザ』だからこそ、おそらくロンダリングなどという発想は持ち合わせがないだろう事は容易に想像が付いた。
明確にターゲットを絞った、計画的な犯罪。その準備が進んでいる事は疑いようがなかった。
「ハッカーの出番と言う訳だな」
同じ頃、こちらはダンピールの少女が『プログラム』の準備をしていた。
彼女は『大いなる始祖の末裔 レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット』……その真なる名を紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)。
(地道に証拠品を集めてもいいんだが、この際だしもう少し派手にしよう)
現在準備しているプログラムにかかれば、問題なく証拠品集めも出来るだろうという自負が、美亜にはある。
しかし、今回は……あえて別の趣向で行ってみる事にする。
「たぶんこれが一番早いと思いますという奴だ」
チェーンを打ちこみ、プログラムをスタートする。……【Operation;T.A.S.】始動である。
「さて、どんなものかな」
プログラムを操作する傍ら、片手で付近の様子をモニターに映す。
その場面は今まさに、ヤクザ同士の小競り合いが始まった所だ。
粗製の拳銃でちまちまと撃ち付ける弱小ヤクザ。
それに相対するヤクザはアサルトライフルにライトマシンガン、調子に乗ってサブマシンガンを二挺持って撃ちまくる者も居る。おそらく全てリトル・グレイ社製の銃器だろう。
良いタイミングだ。
美亜はふ、と息を吐いて笑う。
「リトル・グレイ社の銃器を使ってる奴全員に不幸になって貰おう」
美亜が笑うと、モニターに映る小競り合いの状況に変化が起き始める。
リトル・グレイ社製銃器を使う側のヤクザ達が、突然戸惑い始めたのだ。
『お……おい、なんだよ。弾が出ねぇぞ!?』
『こっちもだ! 銃がいかれたのか!?』
何度引き金を引いても弾は発射されない。
反撃の機と見た相手方のヤクザは、ここで一気に攻勢に出た。
リトル・グレイ社製銃器を扱っていたヤクザは狼狽え切っており、あえなく撤退。……どうやら、予備の武器などは持っていなかったようだ。
「上手くいったようだな」
美亜が行ったのはID認証しているサーバーに対して重いデータをいくつも送り、負荷をかける……いわゆる『DoS攻撃』。
それも『乱数改竄プログラム』を用いた事により、リトル・グレイ社のサーバーにかなり効果的に作用するものだった。
「この瞬間だけでも全ての銃器が使えなくなる訳だ」
もちろん、すぐに復旧はされるだろうが……サーバーダウンが確認された時点で、美亜の目的はほぼ達成されたと言っていいだろう。
「引き金を引くのに何処かの誰かの許可が要るなんてロクな代物じゃない。……それでも、その手の銃を使い続けるか?」
モニターの向こうの、弾の出ない銃を持って逃げ惑うヤクザへの、聞こえるはずのない問い。
何人かは、銃を捨ててまで走っている。美亜は笑う。
「――一度抱いた不信は決して消える事は無いぞ」
美亜はモニター越しの状況から、自身の初動が効果が覿面であった事を見た。
(そして、ボクが動くのは今ですね)
傍に居たダンピールの猟兵がサーバーダウンを引き起こしたのを見届けつつ、メルは自身の行動の準備を進めていた。
猟兵メルガシェラのやる事は……【情報収集】の一手だ。
リトル・グレイ社のサーバーが落ちているのもメルにとって都合が良かった。
落ちている間はこちらからやる事もないが……狙い目は、復旧した瞬間だ。
そうこうしているうちに、リトル・グレイ社のサーバーが立ち上がり始める。
ナノマシンの集合体『フェアレスト・スキン』の思念波を『ブレイン・ティアラ』によって集積、増幅させ放射する。
起きたてのサーバーに思念波を当て、メルのハッキングは始まる。
立ち上がりたてのサーバーは、特に脆弱だ。情報なども普段よりは容易に閲覧できるだろう。結果として、ハッキングは上手くいった。
メルは手当たり次第に社外秘の情報を目の前に並べていく。
顧客情報に売れた銃器の種類、数。それらも商売をするにあたっては重要な機密情報だ。
メルは片っ端から『瞬間記憶』によって情報を記憶にとどめておく。データを媒体に保存して、足がつくのを避けるためだ。
その中で、メルは気になる情報を見つけ、スクロールを止める。
(……暗示?)
それは、顧客となったヤクザにかけられた『暗示』の内容に関するデータだった。
どうやら、購入前の審査時にどこかのタイミングでヤクザは暗示をかけられているという。その内容は簡単に言えば、『他のヤクザに対して好戦的になる』というもの。
(そこまでするのか。手が込んでいます)
銃を売り、さらに気まで大きくさせていた、というわけだ。
より確実に後々押収する物を増やすための工作でもあるだろう。
「――まあ、予知されてしまう危険性を考えなかったのはお馬鹿さんですけどね」
目ぼしい情報をあらかた片付けたメルは、情報を映していたブラウザをすべて閉じた。
そこには、何の痕跡も残されていなかった。
大成功
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紅丸・菜々花
警察が巨大企業を手を組み悪行を為す……
この世界ではありふれてしまっている事とはいえ、放置は出来ませんね
一つ一つを潰していくため、今日も頑張りましょう!
それで、サイバースペースまでやって来たのですが……
この手の細かい調査はあまり得意ではないのですよね
という訳で物理で何とかしましょう
UCを発動し分身を10人ほど生み出します!
一応戦闘行為は想定していないですが、この状態だと打たれ弱いので怪我などには注意していきましょう
あとは片っ端から気になるものをチェックです
リトル・グレイ社、取引先のヤクザ、近くの警察など……
気になるワードを重点的にデータを確認していきますね
果たしてどんな情報がつかめるのでしょうか
御園・桜花
「リトルグレイと聞いて、宇宙人の侵略かと思いましたが…違いました」
目を逸らす
「私、もしかしたら倫理観が変なのかもしれません。全てのギャングが壊滅して、悪徳警官とメガコーポだけが生き残る。悪の一元化のような気がして、問題なく思えてしまうのです」
「問題が問題であると認識できるようになるには、知らなければならないでしょう?だから、知りに行こうと思います」
サイバースペースでUC「古木の宿」使用
片っ端からデータをコテージに放り込む
「データが失くなるという意味では破壊工作になりますし。ただ、現実に戻った時、どういう形でコテージに残るかは…私の想像力にかかっていそうな気がします」
メモ帳に字がぎっしりを期待
●理由を持つ者、探す者
「この世界ではありふれてしまっている事とはいえ、放置は出来ませんね」
サイボーグの武装警官、紅丸・菜々花(ヴェロニカ・f36582)は拳を握りしめる。
警察が巨大企業を手を組み悪行を為す。……菜々花にとっては、口にした通り捨て置けない現実であった。
「――一つ一つを潰していくため、今日も頑張りましょう!」
軽く頬を叩き、菜々花はサイバースペースへ乗り込んでいく。
腐敗した組織の中にあっても救える人は居る。その決意を胸に。
――しかし。
「……この手の細かい調査はあまり得意ではないのですよね」
同時に、その呟きには不安の色も滲んでいた。
「リトルグレイと聞いて、宇宙人の侵略かと思いましたが……違いました」
桜の精、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は社名を耳にした時の率直な意見を口にする。
リトルグレイ。知らない人に説明する場合、大雑把に言えば『宇宙人と言われて大体の人が思い描く、タコじゃない方の宇宙人』である。
別の世界や猟兵達の間ではスペースノイドという種族が存在、浸透している以上、『宇宙人』自体は架空の存在ではないが……それでもリトルグレイの『宇宙人』としての存在感の強さは変わらないだろう。
話を戻して。
(私、もしかしたら倫理観が変なのかもしれません)
桜花には、自身を疑うほど気になっている事があった。
(全てのギャングが壊滅して、悪徳警官とメガコーポだけが生き残る。悪の一元化のような気がして、問題なく思えてしまうのです)
巨大企業群・メガコーポ。
このサイバーザナドゥにおいて、政府・警察・ヤクザ・ニンジャというあらゆる暴力組織を傘下に置く、企業間戦争で覇権を争う無数の大企業の総称。
闇雲に相手取って戦うには、確かにその組織は多すぎる。その点で言えば、組織同士の潰しあいで吸収・合併されていけば分かりやすくはなるだろう。
そこに、桜花は問題を感じなかったのである。
「とはいえ、問題が問題であると認識できるようになるには、知らなければならないでしょう?」
ひとり頷いて、桜花はフリーポータルに振り向く。
「だから、知りに行こうと思います」
これは、桜花にとって理解への第一歩だ。
――という訳で物理で何とかしましょう。
あれからやや考えて、菜々花が導き出した最適解・物理。
人差し指と中指の二本を立て、発動するのは【カゲブンシン・フェノメノン】。
数えて10体の『実体を持つ分身』が、次々にサイバースペースを駆け始める。
苦手分野ゆえ効率が悪いと言うのなら、手数で補ってしまえば良い。
(あとは片っ端から気になるものをチェックです)
今はまだ戦闘になる段階ではないが分身は打たれ弱いため、そこは注意する。
菜々花は10倍に増やした手を使い、気になるワードをどんどん調べ上げていく。
リトル・グレイ社、顧客のヤクザ、警察との関係……それらの情報量を、10人分の処理能力を持って紐解いていく。
「……顧客となるヤクザは何れも弱小。そしてそのどれもが似たような組織と小競り合いをしている状態だった……」
当然ながら、戦闘が想定されない状況では武器は売れない。武器の需要は『戦いが始まる前』もしくは『まさに戦っている最中』に最も高まると言える。
ただ、菜々花が気になったのはその取引先の選び方だった。
「……いつも、やや劣勢な方へ売り出している?」
攻められて余裕のない組織ならば、確かに武器は喉から手が出るほどに欲しい物だろう。
しかし、弱小ヤクザにそんな物を調達する財力があるとは思えない。
ここで、菜々花はグリモア猟兵が言っていた事を思い出す。
格安の価格で売った銃器を使い、奪わせて、そして奪う。これがリトル・グレイ社と連携した警察、ひいてはメガコーポの狙いだったはず。
つまり……。
「疑っている余裕もない組織に銃を売り付けられれば、疑問に思わせないまま銃を使わせられます」
その弱味に付け込んだ商売。
菜々花が抱いた印象はその一点だった。
「そして、ギャングは膨れ上がるのですね」
同じ頃、桜花も【古木の宿】の内部で奪ったデータを閲覧していた。
データは物質としてのメモに変換されており、手に取って眺める事が出来る。データをそのまま物質化しているため、傍から見たらデータそのものが無くなっているようにも映るだろう。
――データが失くなるという意味では破壊工作になりますし。
つまるところ『運び去られたように無くなるデータ』という状況。それは、規模が大きければちょっとしたパニックになるだろう。
とはいえ、そちらは飽くまでついで。桜花としての本題は情報収集だ。
「……暗示?」
リトル・グレイ社が設けた取引時の審査。そこで購入者にかけられる『暗示』。
ほとんどの場合、その暗示はただ単に『引き金を軽くする』程度のものだった。
しかし……全体の約一割程度には、追加で暗示がかけられている。
「警察などの組織に寝返りを考え始める」
その暗示をかけられた者は自身の所属する組織を裏切る事を考え、警察に情報を売ろうとする。
それを受け取った警察は押収する物資のあたりを付け、そして奪う。
メモに蓄積していくデータ。顧客の数。その膨大な量を、桜花は見る。
「この勢力が一気に警察やメガコーポに吸収されたら……問題かしら?」
それはちょっと大きくなりすぎかもしれない。
それが、桜花の率直な感想だった。
「外道ですね」
「はい、外道です」
別々に調べ物をしていた菜々花と桜花の感想は、ここに一致した。
大成功
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狐々愛・アイ
【WIZ】
企業の実験のためだけに、多くのヒトが苦しむ……それは、とても悲しいことです。
リトル・グレイ社の野望、愛を以て打ち砕きましょう。ヒトのために造られた、ぼくがぼくであるためにも。
さて、まずはサイバースペースへのダイブですね。
ぼくにはハッキングの機能はありませんが、データを直接読み込むだけなら十分可能です。これでもレプリカントですからね!
セキュリティに守られていないデータをかき集めて、証拠となるものを探してみましょう。
銃器のID認証が出来なくなるというのであれば……ユーザー情報を改竄しているか、それともID側を書き換えているのか。
認証の手続きそのものをスキップしている可能性もありますね。
●アイゆえに
「まずはサイバースペースへのダイブですね」
狐の少女の姿を取った少年……の、心を持つレプリカント、狐々愛・アイ(愛は優しさ、愛は力・f36751)はフリーポータルの前に立っていた。
彼女、もとい彼もまたグリモア猟兵の呼びかけに応えて馳せ参じた猟兵のひとりである。
(ぼくにはハッキングの機能はありませんが、データを直接読み込むだけなら十分可能です)
――これでもレプリカントですからね!
ふふーん、と自慢げに鼻を鳴らす。
アイ自身が製造された目的とは関係のない、用途の違う分野であるため、ハッキングやそれらをサポートする機能はアイには搭載されていない。
だが、サイバーザナドゥの勝手ならアイにも理解がある。
アイは意気込んでポータルへアクセスする。
グリモア猟兵によれば、警察への抵抗の際に使用しようとした銃器は、リトル・グレイ社の手によって直ちに使えなくなってしまうという。
「銃器のID認証が出来なくなるというのであれば……ユーザー情報を改竄しているか、それともID側を書き換えているのか」
コンソールを操作しながら、アイはリトル・グレイ社の手口を想像する。
「認証の手続きそのものをスキップしている可能性もありますね」
少し聞いた程度では細かい違いのように思われやすいものだが、その方法や対処は異なってくる。
ID認証のスキップだと、冗談抜きで誰にも銃器が使えないという状態が考えられるが、一方でリトル・グレイ社がユーザー情報やIDを改竄している場合は誰かが銃器を扱う余地を残す事ができる。
もちろん、それらをどうにかするという事はアイ自身にはできないが、できる者と相談すればそれらは有用な情報となるだろう。
しかし、そこまで考えてはみたものの、その答えはリトル・グレイ社のセキュリティに阻まれ、結論に辿り着く事はできない。
仕方なく、アイはアプローチを考え直す。
(セキュリティに守られていないデータをかき集めて、証拠となるものを探してみましょう)
一見して関係のない、重要性の低い情報でも、吟味すれば効果的な証拠能力がある物も出てくるのではないか。アイは思い至る。
セキュリティレベルの低い情報記事をずらりと並べ、アイはひとつひとつ処理を始めていく。
「……あ、これは」
読み進めていくうちに、アイはリトル・グレイ社側ではなくヤクザ側のSNSの情報を発見した。
所々濁してはいるものの、安く手に入った銃器などを自慢する内容などがある。
この事から、これらのアカウントはリトル・グレイ社の取引相手と見て間違いない。アイは確信した。
アイは、それらが発信する情報を重点的に調べる事にする。その結果、わかった事と言えば……。
「もうすでにいくつかの組織には警察が接触を始めている」
アカウントには、賄賂を受け取りにやってくる警察官への愚痴のような内容の文章がちらほら目に付いた。
しかし、それ以前に聞いていた『押収』という単語は出てこない。
「……ひょっとして、比較的従順なヤクザからは賄賂を受け取ってお目こぼししてるって事なんでしょうか?」
それでいくと、押収するのは飽くまで警察に逆らう組織から、という事になる。
だが、そもそもリトル・グレイ社の銃器という強力な武器を持つヤクザが、わざわざ素直に賄賂などを払うものだろうか?
「……この賄賂を受け取る警察官も、リトル・グレイ社の息のかかった人なのかもしれませんね」
素直に賄賂を渡すヤクザ組織の所にだけ顔を出す汚職警察官。これに接触すれば、あるいはもっと敵の情報を得られるかもしれない。
アイは、ヤクザと接触しているという警察官に狙いを絞り、調べものを再開した。
「企業の実験のためだけに、多くのヒトが苦しむ……それは、とても悲しいことです」
元々、ヒトを愛し愛される事が製造目的であるレプリカント・アイ。
そのヒトが、何人も危機に陥り、苦しむ。そうなる想像をするだけでも、息が詰まる。
「リトル・グレイ社の野望、愛を以て打ち砕きましょう。ヒトのために造られた、ぼくがぼくであるためにも」
その決意は熱くなる心と、コンソールを動かす指に宿る。
憎しみではなく、愛を以て敵を打ち倒す。
それが彼、狐々愛・アイの戦いである。
大成功
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第2章 集団戦
『悪徳武装警官』
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POW : 正義の鉄槌を喰らえッ!この蛆虫どもォオッ!!!
【サイバーザナドゥ化した剛腕】で超加速した武器を振るい、近接範囲内の全員を20m吹き飛ばし、しばらく行動不能にする。
SPD : 公務執行妨害でぇ……死刑ッ!!!
【銃火器による無差別乱射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : 助かりたいならわかるよな…袖・の・下(ワイロ)♪
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【顔に唾や痰を吐きつけながら金品】、否定したら【胸ぐらを掴み顔面を殴り付けて闘争心】、理解不能なら【殴る蹴るの集団リンチで生命】を奪う。
👑11
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●火のない所に狼煙は立たず
「全員動くな、蛆虫どもォ!」
猟兵達がサイバースペースにて情報収集や裏工作をし始めてしばらく、それは突然やって来た。
それは、警官のような服装をしたならず者……もとい、ならず者のような雰囲気の警官であった。
「ここに怪しい連中が居るとリトル……いや、匿名で通報があった。間違いない、お前達の事だろう!」
早口でまくし立てる警官。どうやら、猟兵達の話を聞く気は毛頭無いようだ。
指を鳴らして猟兵達に近寄って行く。その手に、手錠は握られていない。
「コソコソ嗅ぎ回りやがって。少しばかりシメてから連行してやる!」
そうする必要性があるのか、それともただ自分達が殴りたいだけなのか。それは定かではない。
しかし、猟兵達もこれまで集めたリトル・グレイ社の情報を渡すわけにはいかない。
どうせ相手は悪徳警官。遠慮はいらないだろう。
各々の集めた物をしまい込み、猟兵達はいつでも抵抗できるように気構えた。
狐々愛・アイ
口を滑らせましたね、警官さん。癒着の証拠がまた一つ、です。
その詰めの甘さ……それもまた、一つの個性。ぼくにはとても愛おしく感じます。
とはいえそれはそれ、これはこれ。
……ぼくはヒトの味方。あなた方の企みは、ここまでです。
AIBoardを起動、接近戦で【切り込み】をかけます。『L.O.V.E.Strafe』アクティブ!
ボードで繰り出す突撃と急転換の連撃……威力は低いですが、小回りは効きます。
一撃与えたら次の警官へ、また一撃与えたら次の警官へ。
これを繰り返し、敵の位置取りを妨害しましょう。
フロート・オブ・アムールで【誘導弾】を放ち、牽制も併せます。
散開を封じれば、無差別に撃つわけにはいきませんよね?
●
「口を滑らせましたね、警官さん」
オブリビオン『悪徳武装警官』がやってきた時、いち早く動いたのはレプリカント、狐々愛・アイ(愛は優しさ、愛は力・f36751)だった。
幼い声は、悪徳警官の視線を他の猟兵から引き受けるように脇に、脇にそれていく。
「癒着の証拠がまた一つ、です。その詰めの甘さ……それもまた、一つの個性。ぼくにはとても愛おしく感じます」
「このガキ、ナメてんのか……?」
また、言った本人に自覚があるかは定かではないが、その言葉は悪徳警官には挑発のような機能が働いていた。
数人の悪徳警官が本陣から離れ、歩くアイの後を追う形で取り囲もうとする。
「とはいえそれはそれ、これはこれ」
その手にハートと炎が描かれた愛用のフロートボード『AIBoard』を取り、アイは立ち止まって悪徳警官と対峙する。
「あなた方の企みは、ここまでです」
アイの最後の言葉に、ついに悪徳警官達の額に血管が浮き出る。
「いい度胸だなクソガキィ! ならお前から公務執行妨害でぇ……死刑ッ!!!」
お決まりの台詞を言い放ち、悪徳警官達はそれぞれ銃火器を取り出してアイやその周囲の物に銃口を向ける。
かなり大雑把に照準を向けているが、悪徳警官達の銃火器の扱い方は精密さより撃った弾の数を重視するもので、撃った弾のどれかがメインターゲットに当たればそれで良いと言うような撃ち方だ。
しかし、そのような戦い方もアイは予習済み。
「疾く、鋭く、愛おしく……! 『L.O.V.E.Strafe』アクティブ!」
AIBoardに乗り、急速発進。駆りだす先は、悪徳警官……のひとり。
「う、うおぉ!?」
その『愛の炎を伴う突撃』を受け、まずひとりが吹き飛ぶ。防御が間に合っておらず、受け身も取れずにごろごろと転がっている。
「なんだと! この……ッ!」
別の悪徳警官が即座にアイに対して銃口を向ける。
が、アイは間髪入れずに『急旋回』。加速に合わせて『疾風の刃』が発生し、さらに配置したハート型浮遊砲台『フロート・オブ・アムール』が牽制で誘導するビーム弾を放つ。
「この、クソガキがァ!!」
「よせ、今撃つな!?」
制止する声を無視し、激昂した悪徳警官のひとりが銃火器を乱射し始める。
しかし、尚も高速機動を続けるアイにはろくに命中せず、かわりにアイが通過した後に残る悪徳警官が蜂の巣となる。
AIBoardの高速機動に【L.O.V.E.Strafe】による連続攻撃。フロート・オブ・アムールによる牽制。それらが悪徳警官の陣形を乱し、動揺を招く。
「散開を封じれば、無差別に撃つわけにはいきませんよね?」
完全に出鼻を挫かれた形となった悪徳警官達は、もはやアイをその照準に捉える事ができない。
先ほど言った言葉に、嘘はない。この悪徳警官達でさえ、アイにとっては『愛おしい者』だ。
「――ぼくはヒトの味方」
しかし、だからと言ってヒトを苦しむのを見過ごす事も、アイにはできそうにない。
だから、ヒトを苦しめるという、この者達の野望は食い止めなければならない。
「あなた方の企みは、ここまでです」
先ほども告げた言葉をもう一度告げ、アイはさらに加速する。
大成功
🔵🔵🔵
メルガシェラ・トヴェナク
わあ、来てくれたんですね。嬉しいなあ。
いいタイミングですよ。本当にいいタイミングです。
ボク、おなかが空いていて。頭を使うと、おなかが減りますよね。
だから、助かりました。ごはんの方から来てくれて。
肉体を全部、捕食性ナノマシンに戻して。
スノウ・クイーンもフェアレスト・スキンもナノマシンに戻して。
人間の形なんて、ただの擬態ですから。
サイバーザナドゥ化した部分って、機械ですよね?
隙間に入り込んで中から捕食しちゃいます。
生身の部分は柔らかいので、触れたところからどんどん捕食しますね。
本当に、最近たくさん食べられる機会がなくて。
ボク、機械も人間も美味しくたくさん食べられますから。
それでは、いただきます。
●
「わあ、来てくれたんですね。嬉しいなあ」
各々で応戦を始める猟兵達の中にあって、出迎えるように諸手を挙げて悪徳警官達に歩み寄る者が居た。
髪に肌に白色、目の色も銀色。豪奢服に見えるそれも白と黒のモノトーンで構成され、独特な雰囲気を纏っている。
「いいタイミングですよ。本当にいいタイミングです。ボク、おなかが空いていて。頭を使うと、おなかが減りますよね」
少女、メルガシェラ・トヴェナク(スノウ・ドロップ・f13880)は微笑んでいる。
他の猟兵達と比べ異様とも言える雰囲気に、悪徳警官達は互いに顔を見合わせた。
「何言ってんだこいつ?」
「知らねぇよ。とりあえず注意して――」
警戒する姿勢を見せる悪徳警官達。そのままじりじりと距離を詰め――
「――正義の鉄槌を喰らえッ!」
悪徳警官のひとりが突然走り出し、そのサイバーザナドゥ化した剛腕を目の前の少女に叩きつけようとする。
驚いたり、制止したりする者は居らず、全員がこうするつもりだったのであろう事が見て取れた。
剛腕は加速に加速を重ね、そのままメルガシェラへと叩き込まれる。
勢いのまま剛腕はメルガシェラを貫通し……その身体は、白い粒子のように散らばっていく。
「おい、粉々かよ! 容赦ねぇな!」
「もっといろいろ楽しめただろうが、しょうがねぇヤツだぜ!」
先を越された形となる警官達が、その様子に下卑た笑い声をあげる。
メルガシェラだった物は瞬く間に散り散りに、広がっていく。その派手さに、悪徳警官達の笑い声はさらに高まる。
しかし、当のメルガシェラを貫いたひとりは、黙っていた。
――歯応えが無さすぎる。
その、如何ともし難い違和感に苛まれ、ただ散らばる白い粒子……雪のようなものを眺めていた。
「助かりました。ごはんの方から来てくれて」
その声は、散らばる雪のような何か、全てから発せられた。
猟兵メルガシェラ……メルの身体は、悪徳警官によって砕かれたわけではない。
その身体も装備も【浸食ノ白雪】によって無数のナノマシンとなり、自ら散らばったのである。雪や粒子に見える、それらの事だ。
悪徳警官達がそれに気付いた頃には、もう辺り一面にナノマシンが散布されきった段階だった。
そのうち、先に切り込みをかけた警官がナノマシンに覆いつくされる。
「ぎ……ぎやぁぁああ!?」
間もなく悲鳴が響き……ナノマシンが再び散らばると、そこに警官の姿はなかった。
「本当に、最近たくさん食べられる機会がなくて」
ひとりの『捕食』を終え、次へ次へと悪徳警官達にナノマシンが襲う。
メルガシェラ・トヴェナク。無機有機問わず、あらゆる物質を捕食・消化し、自身のエネルギーに変える、無数のナノマシンの塊たる兵器。
彼女にかかれば、悪徳警官もただの捕食対象に過ぎなかった。
「ボク、機械も人間も美味しくたくさん食べられますから」
辺りから聞こえる少女の声。それは、すでに悪徳警官達に逃げ場が無い事を示す。
「大いに飲み干しましょう」
叫び声をあげ、逃げ惑う悪徳警官達。
そうして、最後には一所に集まり……そこへ、ナノマシンが集中する。
さながら、皿に盛られた餌を食いつく動物のごとし。
――それでは、いただきます。
その最後の『一皿』を味わい尽くすと……満たされた姿の少女が、再び姿を現した。
大成功
🔵🔵🔵
紅丸・菜々花
同じ警察官として大変嘆かわしいですね……
ですがこのような輩がいるからこそ、私は警察に潜入することになったのです
一切容赦はしない!
敵の攻撃はシンプルだからこそ気を付けなければなりません
囲まれてリンチされるのは困りますからね
なるべく動き回り捕捉されないように気を付けましょう
弱い外道ほど群れるものですからね
そして拳を構えた相手には……
動くな!
警察手帳を見せつけてUCです!
相手は構わず殴りかかって来るでしょうが、こちらはニンジャ
【早業】で相手より早く動いて盾を構えます
あなた達のような腐敗した相手に負ける道理はない
全力の【シールドバッシュ】をお見舞いしてあげましょう!
骸の海で自分の行いを深く反省しろ!!
●
サイボーグの武装警官、紅丸・菜々花(ヴェロニカ・f36582)は溜息を吐く。
「同じ警察官として大変嘆かわしいですね……」
日頃から人を助けるためならば自ら危険に飛び込む事も厭わないほどの熱血ぶりを見せる彼女からしてみれば、その悪徳警官の振る舞いはまさに『醜態』と言ってもよかった。
もちろん相手は警官とはいえオブリビオンなのだし、彼らが菜々花の同僚なのかと言われればそうではない。
それでも。
「……このような輩がいるからこそ、私は警察に潜入することになったのです――一切容赦はしない!」
自身を奮い立たせ、戦う理由と事情を再確認し、菜々花は機動隊で使われる盾を手に取る。
「ケッ、婦警ごときが調子に乗るなよ!」
使われなくなって久しい略称をあえて使い、悪徳警官達は菜々花に襲い掛かる。
走りながらサイバーザナドゥ化した剛腕を起動し、加速をつけて殴りつける魂胆だろう。
「――正義の鉄槌を喰らえッ!」
捻りのない直進ルート。悪徳警官の剛腕はまっすぐに菜々花に突き進む。
その対抗に、大きく息を吸う。
「――動くな!」
菜々花は懐から『警察手帳』を取り出すと、吸った息のまま大声で悪徳警官達に『命令』を下した。
菜々花の行動を、悪徳警官達は一笑に付す。
「そんな命令で止まるバカがどこに居るってんだよォ!?」
構わず突っ込む悪徳警官。そして激突する剛腕と盾。
菜々花は吹き飛ぶが……大した事もなさげに、静かに着地してみせる。
「な、なにィ?」
菜々花を殴り飛ばす勢いで振るわれた剛腕は、しかし思ったよりも勢いが出ていなかったようだ。
実は、菜々花の見せた『警察手帳』と『命令』により、菜々花の【ホールド・アップ!】が発動していたのである。
対象に警察手帳を見せたうえで、対象が命令に背いた場合、対象のあらゆる行動速度が半減する。
菜々花はその場から飛びのいて、なるべく多くの悪徳警官を視界に入れる位置取りを探し、また盾を構える。
繰り返せば気付かれてしまうだろうが……その分、動き回って注意を引けばいい。
「……弱い外道ほど群れるものですからね」
挑発のような台詞に、攻撃する悪徳警官達は苛立ちを隠せない。
「……ナメやがって、このアマァ!!」
さらに固まって走り出す悪徳警官達。
この様子を見るに、まだこの戦術は使えそうだった。
「あなた達のような腐敗した相手に負ける道理はない」
何人もの悪徳警官の剛腕が一斉に盾に盾にぶつかり……その全てが、菜々花の踏ん張りによって停止した。
「……ば、バカな
……!?」
驚愕に染まる悪徳警官達。
そして、違和感を覚える間もない。
「――骸の海で自分の行いを深く反省しろ!!」
菜々花、反撃のシールドバッシュ。
自慢の剛腕による攻撃を完封され、むしろ吹き飛ばされた悪徳警官達。
今回は、菜々花の警察手帳とそれに宿る熱血な心に軍配が上がったようである。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・美亜
「おっと、追い詰められてしまったかな?」
両手を上げてホールドアップしよう。
「ごらんの通り丸腰でな。穏便に連行でもして貰えると助かるのだが」
どうせ、そうはするまい。
「ああ、穏便に行けば助かったのに……お前達がな」
Operation;R-GEARの電撃を腕輪から放つ。既に対象はロックオン済み。やらせる事はただ一つ。
「だから言ったのだ。自分の意思で撃てない銃など、持つべきではないとな」
互いに銃を向け合わせて銃爪を引くだけ。13秒も必要無い。
「ふっ、やはりこれはいい。とてもハッカーしてるじゃぁないか」
●
「おっと、追い詰められてしまったかな?」
猟兵達が各々の戦いを始める頃、こちらでも戦いが始まろうとしていた。
紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)は両手を見せ、ひらひらと上に挙げる。……ホールドアップだ。
「ごらんの通り丸腰でな。穏便に連行でもして貰えると助かるのだが」
「おいおい、助かりたいならわかるよな……袖・の・下(ワイロ)♪」
抵抗するそぶりを見せない美亜に対して下卑た笑みを滲ませつつ、無遠慮に寄ってくるのは悪徳警官達。これは要求に応じなければ暴行を加える類の行動なのだと、美亜は知っていた。
「ああ、穏便に行けば助かったのに……」
嘆く美亜。確かにここで賄賂を払えば暴行自体は避けられる。しかし、その場合も別の何かを奪われてしまう。
悪徳警官達は美亜が応じる気が無い事を察すると、顔を見合わせて3人がかりで美亜を囲む。
悪徳警官達は笑い……美亜もまた、笑っていた。
「――お前達がな」
胸倉をつかみ上げようとする悪徳警官の腕を避け、そのまま距離を取る。
美亜が距離を確認すると……突然、美亜が装備している腕輪から強烈な『電撃』が放たれた。
「な、ぐわァ!?」
「テメェ、何しやがるッ!」
電撃を喰らい、怒りをあらわにする警官達。反撃に銃を取り出し、美亜へ向ける。
しかし……美亜にとって、その銃は最早脅威ではなかった。
「な……お、おい!」
「う、腕が勝手にィ
……!?」
これが、先ほど美亜が腕輪から発生させた電撃……命中した標的の行動のコントロールを得る【Operation;R-GEAR】による効果だ。
「ふっ、やはりこれはいい。とてもハッカーしてるじゃぁないか」
あまり長く標的の行動をコントロールすると、文字通り美亜の命に関わってくるが……今回はそこまで時間をかけるつもりはない。
電撃さえ当たれば、13秒も必要無い。
「や……やめろ。こっちに銃口を向けるな!」
「そ、そっちこそよせよ!」
美亜が操る警官達は、全員その手に銃を持ち、互いに向けあっている。
警官達の持つ銃はリトル・グレイ社製ではないが、とはいえやらせる事ただ一つ。
背を向けて歩く美亜。背後からは次々に銃声、悲鳴が響き渡る。
「だから言ったのだ。自分の意思で撃てない銃など、持つべきではないとな」
10秒。
それで銃声も、悪徳警官達の悲鳴も聞こえなくなった。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「此の世界は…骸の海が近すぎて、死を経ずともオブリビオン化するのですね…」
警官眺め
「貴方達の欲望は、生者でも普通に持つものですから。貴方達がオブリビオンで良かったです
。貴方達も、私達が仇敵だと感じるでしょう?」
小さく笑う
「貴方達の望みは、他者を蹴落としても己が欲望を充足したい、でしょう?どうぞ、其の願いの儘、また人に転生なさって下さい」
UC「侵食・サクラミラージュ」使用
転生を否定すれば行動成功率低下
第六感や見切りで掴み掛かるうでをスルリと躱し制圧射撃しながら高速・多重詠唱
更に行動阻害しつつ召喚した雷と炎の精霊に属性攻撃を依頼
「此処は今サクラミラージュ。骸の海に還るより、転生を望んでみませんか」
●
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は自身の種族、桜の精の故郷であるサクラミラージュとこの世界、サイバーザナドゥを比較し、感慨深げに悪徳警官達を眺めていた。
サクラミラージュにおけるオブリビオンとは、傷つき虐げられた者達の『過去』より生じる、不安定な存在『影朧』の事だ。こちらは、桜の精の働きによって『転生』させる事ができる。
一方、このサイバーザナドゥのオブリビオンとは骸の海の過剰投与により人為的にユーベルコードを覚醒させた『改造生物』だ。影朧とは根本から違う存在と言える。
「此の世界は……骸の海が近すぎて、死を経ずともオブリビオン化するのですね……」
興味深くもあり、嘆かわしくもあり。
とにもかくにも、桜花は前に出る。
桜の精の働きを全うするために。
「おい、そこの女ァ! 助かりたいならわかるよな……? 袖・の・下(ワイロ)♪」
次々と猟兵と悪徳警官達が交戦を始めていく中、今度は桜花にもお鉢が回ってきたようだ。
出すもの出すべしと手をずいと差し出しながら詰め寄ってくる。
そんな彼らを前に、桜花は静かだった。
「貴方達の欲望は、生者でも普通に持つものですから。貴方達がオブリビオンで良かったです。貴方達も、私達が仇敵だと感じるでしょう?」
微笑。
凡そ敵に浮かべる表情ではないが、何もサイバーザナドゥに来たからと言ってサイバーザナドゥ流に振る舞う必要は無い。桜花は桜花として振る舞うだけだ。
「あァ? 何ワケのわからねェ事を……」
胸倉をつかみ上げようとする悪徳警官。その腕をひらりと避ける桜花。
舌打ちし、追いかけようとする警官……その顔の前に『花弁』が舞い落ちる。
「な……なんだ、こりゃ」
不審がった悪徳警官が見上げれば、そこにあるのはサイバーザナドゥにあるべきではない物。サイバースペースに『幻朧桜』が咲き誇っていた。
「貴方達の望みは、他者を蹴落としても己が欲望を充足したい、でしょう?」
サイバースペースに【侵食・サクラミラージュ】により出現させた幻朧桜を背に、桜花は悪徳警官達と対峙する。
「骸の海から世界を引き入れる。此処は今サクラミラージュ。願えば貴方達にも転生が叶う地です」
「て、転生だ……?」
「ええ」
怪訝な表情の悪徳警官に対し、桜花はその微笑を崩さない。
傍らに『精霊呪具』から召喚した雷と炎の精霊を従え、その手に軽機関銃を持つ。
「――どうぞ、其の願いの儘、また人に転生なさって下さい」
口火を切り、精霊と共に攻撃を開始。
軽機関銃による銃撃、そして雷と炎によって焼かれていく悪徳警官達。
このサクラミラージュと化した領域は、転生を否定する者の行動を阻害する。
悪徳警官達の歯応えの無さに、桜花は彼らのほとんどが転生を望んでいない事を察する。
「残念です」
結局のところ。
桜花が攻撃を終えるまで、悪徳警官達は誰も転生を始めなかったのである。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『フルメタル・サージェント』
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POW : アイアムジャスティス
【パトランプ】を見せた対象全員に「【抵抗するな】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【生命力】が半減する。
SPD : ポリス・ヴィークル
自身の身長の2倍の【電脳接続した武装警察車両】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : ウォンテッド・マーク
攻撃が命中した対象に【緊急指名手配】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【周辺に存在するあらゆる警備装置】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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●強欲の果てに
「よくもやってくれたな……」
襲い掛かってきた悪徳武装警官を返り討ちにした猟兵達の前に、がしゃがしゃと軋んだ様な足音を立てて歩み寄る者が居た。
特徴的なメット、特徴的なマント、銃器、携行品、そして鎧を思わせる防具一式。
「ああ、すまない。君達に言ったわけじゃない。こいつらに言ったのさ」
そう言って、男は倒れ伏す悪徳警官を足で押し退ける。
「こいつらが余計な事をしなければ俺が出張ってくる必要は無かったんだ……余計な仕事を増やしてくれたよ――さて」
男は立ち止まる。
戦いが始まる間合いだった。
「俺としてはもう少しリトル・グレイ社で遊んでいたいんだ。悪いが、君達には集めた情報と一緒に消えてもらいたい」
メットの眼が妖しく光る。
サイバーザナドゥにおいて、警察にはメガコーポの傀儡のオブリビオンも混じっている。彼らは法と権力、さらにはメガコーポに与えられた最新装備による武力を、自らの欲望を満たすための道具として利用する。
それが彼ら『フルメタル・サージェント』。
全身鎧、メガコーポの傀儡兵である。
メルガシェラ・トヴェナク
あー、いらっしゃい。上司の方? 違う?
ええ、まあ、どちらでもいいんですけど
全部機械なんですか? ボクは好き嫌いがないので歓迎ですけどね
ええと、じゃあ抵抗しませんよ
というフリをして両手を挙げて後ろを向きます
そしたら、パトランプは見えなくなりますよね
その隙に掌からナノマシンを出して、ナノマシン雲で警察車両を包んで、食べちゃいますね
パトランプもいっしょにですよ
あ、びっくりしましたか? 次はあなたたちですよ
銃で撃たれても銃弾を食べます
殴られたら殴った手から、蹴られたら蹴った足から食べます
好き嫌いはしませんよ おなかが減るって悲しいことですから
●戦術的撤退
「あー、いらっしゃい」
まず、熱の無い声でフルメタル・サージェントを迎えたのは、メルガシェラ・トヴェナク(スノウ・ドロップ・f13880)だった。
思っていた対応と違ったのか、サージェントも肩を竦めながら歩み寄る。
「上司の方? 違う? ええ、まあ、どちらでもいいんですけど」
転がる食い散らかし……悪徳警官達を一瞥し、メルはサージェントに対して背を向ける。
「ええと、じゃあ抵抗しませんよ」
「……なんだって?」
そう言うと、さらにメルは両手をあげ、投降の構えを取る。
まだ何も言っていないし、してもいないサージェントは、メルのその態度に思わず足を止める。
敵に対して背を向けるという行為は常識的に考えれば大変危険な行為だ。銃を持っているような者に対しては尚の事危ない。
しかし、銃はとにかく……サージェントの持つ能力のひとつに対しては、その行為は対策としては有効のようであった。
「……」
無意味に光を回す、サージェントの後方の車両のパトランプがそれを物語っていた。
居心地の悪い沈黙、空間。ふと、サージェントは文字通り食い散らかされた悪徳警官達を見る。
――その瞬間。
「――全部機械なんですか? ボクは好き嫌いがないので歓迎ですけどね」
サージェントが飛び退いたのとほぼ同時に、サージェントのパトランプが車両ごと『消失』した。
「……食べたのか!」
「あ、びっくりしましたか? 次はあなたですよ」
この時、すでに現場はメルの【飽食ノ雪雲】により『ナノマシン霧』に包まれつつあった。
そのナノマシン、特性は『捕食』。包んだものから文字通り捕食し、消化を行う見た目にそぐわない獰猛な性質を持つ。
「……なるほど、それでこいつらも喰らったわけか」
一部悪徳警官達の不可解なやられ方に合点がいったサージェントは、そのまま距離を取りながら手の銃でメルを射撃する。――霧が濃くなる。
ひとつ、弾倉を撃ち尽くす。メルは、立っていた。
「好き嫌いはしませんよ。おなかが減るって悲しいことですから」
「銃弾も、か……これは参ったな」
直接メルを狙った銃弾も、散布されたナノマシンがその都度銃弾を食らっていく。
これを目の当たりにしたサージェントは、溜息を吐く。
その足取りはメルを向きつつ、しかし距離を取り始める。
「どこに行くんです?」
「君が満腹になるまで付き合うのも一興だが、他にも居るんだろう?」
後ずさりするサージェントに、メルはさらにナノマシンを追わせる。
しかし、警戒して距離を開けていたサージェントはすでに撤退の体勢だ。
悪徳警官に警察車両。そしてサージェントの放つ銃弾。それらはすでに、メルのエネルギーだ。逃がしたのはサージェントひとりのみ。
それでもメルは、満たされない。
その事実だけが、メルを苛んだ。
成功
🔵🔵🔴
紅月・美亜
「お前のような奴が正義を騙るか。まあ、騙るに資格は元より不要だが。ならば、私の正義を見せてやろう……アーマードポリスユニット”ギャロップ”出撃!」
全機合体しギャロップの主役機、R-11Bピースメーカーを成型し搭乗する。大きさは乗用車位に縮小。
「火力は心許ないが、コイツは元から市街地での運用を想定した機体。機動力は折り紙付きだぞ」
バルカンと直進ロケットを叩き込んで車両を攻撃。パトランプと警備装置は全方位に正確無比にレーザー照射できるロックオン波動砲で迎撃する。
主に攪乱目的かな。この石川県警はどうしても決め手に欠ける機体でなぁ……機動力で引っ掻きまわれば誰かが隙を突いてくれるだろう。
紅丸・菜々花
こんな強力なオブリビオンまでが警察に紛れているとは……
ですが好機でもありますね
一つでも多くの悪を潰すチャンスです
ならば突き進むのみ!
相手の能力は非常に厄介です
ですがそれ単体で生命力を削りきることは出来ないはず
強硬突破しかありませんね
【早業】で警察手帳を取り出してUCです
そのままダッシュで突き進み、相手が行動する前に少しでも距離を詰めましょう
敵の能力が発動してもお構いなしです
痛みに対しては歯を食い縛り
とにかく前へ!
何故苦しくても止まらないか?
あなたを見過ごし逃げるくらいなら戦い抜いて死にたいからだ
かといって負けるつもりはありませんが!
接近したら『機動隊の盾』で渾身の【シールドバッシュ】です!
●正義の在処
「――動くな!」
「――抵抗するな!」
突進し、迫りくる壁の如き盾と、フルメタル・サージェントの持つ銃のストックがぶつかり合う。
紅丸・菜々花(ヴェロニカ・f36582)は、サージェントの『命令』を耳にした瞬間に自身の身体が急激に重くなったように感じた。
それに、身体の至る所に痛みや不調が走る。原因はわかっている。サージェントの能力のひとつ【アイアムジャスティス】の効果だ。
遠距離攻撃手段を持たない菜々花が戦う手段は自然と接近白兵戦となる。
そして、そうなると……サージェントの『パトランプ』は、どうしても目に入るわけで。
「……こんな強力なオブリビオンまでが警察に紛れているとは……非常に厄介な能力です」
「お互い様だろう」
菜々花が思わず口に出していた感想は、サージェントの耳にも届いていた。
それに対するサージェントの反応は、銃のストックによる殴打と、苦々し気なコメントだった。
この状況、実はサージェントもまた菜々花の『命令』により身動きが取り難くなっていた。
菜々花のまっすぐな突進をサージェントが避けられないのがその証拠で、しっかりと【ホールド・アップ!】の効果が発揮されていた。
「警察手帳……君、警官か」
「ええ」
仮にも警察組織に属するサージェントは、菜々花の持つ警察手帳と能力に覚えがある風であった。
が、サージェントもまた対面する菜々花から目を離せず、警察手帳も目に入る。互いに対策らしい対策が取れない状態。
そう、相手の能力は非常に厄介。しかし。
(ですが好機でもありますね)
普段から人を助けるためなら危険に飛び込むことも厭わない菜々花にとって、これは一つでも多くの悪を潰す、そんなチャンスであった。
「お前のような奴が正義を騙るか」
その戦いに、まずは口を挟む者が居た。
腕を組み、戦いを俯瞰していた紅月・美亜(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)は満を持して介入する。
「まあ、騙るに資格は元より不要だが」
「そうさ、警察ってだけで正義の味方になれるなら、こんなに簡単な事は無いからね」
まるで『正義』そのものを鼻で笑うような発言に、美亜は目を細める。
自らの欲を満たすために傀儡となる事を是とした彼らにとって、その言葉はどれほど陳腐な響きのするものか。
「ならば、私の正義を見せてやろう……アーマードポリスユニット“ギャロップ”出撃!」
組んでいた腕を解き、手を掲げるポーズを取るとどこからともなく独特なデザインの乗り物――『波動砲搭載次元戦闘機』が姿を現す。
それぞれが合体した姿……ギャロップの主役機、『R-11Bピースメーカー』に乗り込む美亜。
これぞ、【Operation;R】。美亜の戦闘プランのひとつである。
「火力は心許ないが、コイツは元から市街地での運用を想定した機体。機動力は折り紙付きだぞ」
「面白いな」
サージェントが指を鳴らすと、傍らにごつごつとした無骨な武装車両が現れる。
車両には警察章が刻まれている。……つまりこれは『武装警察車両』だ。
サージェントも車両に搭乗し、美亜を見据える。
「その玩具の力を見せてもらおうか」
「教えてやる。Rとは、単機で敵中枢に潜り込み、戦局をひっくり返す存在だと!」
美亜の戦闘機とサージェントの武装車両。
搭乗型同士での戦いであっても、その戦法には大きな差がある。
サージェントの搭乗する武装車両は強固に出来ていて、多少の被弾があろうとも弾幕を張り続ける。
対して、美亜の戦闘機『R-11Bピースメーカー』は先に美亜自身が言った通り機動力が持ち味だ。そのスピードで、武装車両はもちろんパトランプや警備装置をも破壊していく。
しかし。
(コイツは、どうしても決め手に欠ける機体でなぁ……)
バルカンに直進ミサイル、波動砲といった武装を搭載している本機ではあるが、それでも火力が足りていない事を美亜は自覚していた。
それでも今回、美亜がこの機体を選んだのは……主に攪乱目的だ。
(ここまで機動力で引っ掻きまわせば誰かが隙を突いてくれるだろう)
当然な事ながら、猟兵は必ずしもひとりで戦っているわけではない。
戦闘機の中から目を配ると、そこに美亜の希望を叶える『人影』が目に映った。
「――動くな!!!」
肺に溜めた息のすべてを一瞬で吐き尽くす勢いで叫び、菜々花は再び突進する。
その声量に、武装車両に搭乗するサージェントも思わず振り向き、菜々花の掲げる警察手帳を見てしまう。
「くッ……身体がきつくないのか、君?」
「ええ――ですがそれ単体で生命力を削りきることは出来ないはず」
サージェントの能力により痛む身体、削られる『生命力』。
それらすべて、歯を食いしばって耐える菜々花。
強行突破――突き進むのみ!
「――とにかく前へ!」
菜々花の警察手帳の効果で動きが鈍るサージェントに武装車両。そこへ、空かさず美亜の戦闘機が集中砲火を浴びせていく。
視認できるパトランプの数は減り、これにより菜々花も格段に動けるように。
「ッ……理解出来ないな。どうしてそうまでして戦える?」
「あなたを見過ごし逃げるくらいなら戦い抜いて死にたいからだ」
動きが止まった武装車両の正面に立ち、菜々花はその盾を構える。
追いかけ続けた、攻撃の機会だ。
「――かといって負けるつもりはありませんが!」
信念と決意の乗った菜々花の攻撃。助走をつけた、渾身のシールドバッシュ。
それは、武装車両のフロント部分に綺麗にシールドの形を作り、大きく損傷させた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・桜花
「勘違いをなさっているかもしれませんけれど。私達は別に正義ではありませんよ」
首傾げ
「私達は、漏れ出した過去の悪意と闘う者です。其れを滅する為なら街のインフラ毎貴方を滅するのも躊躇しませんし、転生を望まぬなら、纏めて骸の海にお還り頂いても一向に痛痒を感じません。だって彼等ももう、オブリビオンと同義なのでしょう?」
UC「召喚・精霊乱舞」
高速詠唱で雷の精霊召喚
620個の雷球の内500個を時間差付けボス敵に飛ばす
敵の攻撃は第六感や見切りで躱すが攻撃してきた警備装置にも残りの雷球をどんどん放ち破壊
「次はオブリビオンと成らず、望みに邁進する事が出来ますよう…お休みなさい」
転生願い鎮魂歌を歌う
●生まれ変わりか、死か
「勘違いをなさっているかもしれませんけれど。私達は別に正義ではありませんよ」
淡々とした言葉を、首を傾げながら口にする者が居た。
振り向くフルメタル・サージェントを前に、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は言を続ける。
「私達は、漏れ出した過去の悪意と闘う者です。其れを滅する為なら街のインフラ毎貴方を滅するのも躊躇しませんし、転生を望まぬなら、纏めて骸の海にお還り頂いても一向に痛痒を感じません」
「へぇ」
サージェントはそれは意外そうに、声を漏らす。
桜花の言う通り、世界を侵す者と戦う猟兵も善人や聖人とは限らない。仕事のためと割り切って戦う傭兵のような者も居れば、戦いといった行為そのものに快楽を求める者も居るだろう。
「だって彼等ももう、オブリビオンと同義なのでしょう?」
「ああ」
短く同感の意を示し、サージェントは腕を掲げる。
「転生なんて機会を与えているから、とんだ甘ちゃんなのかと勘違いしてしまったよ。悪かったね」
掲げた手の人差し指が、桜花を指した。
――緊急指名手配。【ウォンテッド・マーク】。
警備装置のけたたましい警報音が、開戦の合図となった。
「――おいで精霊、数多の精霊、お前の力を貸しておくれ」
サージェントの行動に対応して、桜花は詠唱を開始。【召喚・精霊乱舞】、その呼びかけに無数の雷の『精霊』が姿を現す。
その数、延べ620。
「大した数だ。だが、このエリアの警備装置まで対応できるかな?」
銃に警備装置、そして『雷の精霊』による雷球の打ち合い。
まず、桜花は500程の精霊に対し、時間差でサージェントを攻撃するように指示。他は桜花の周りに控えさせる。
一方、サージェントは標的を桜花と、雷球という飛び道具で攻撃してくる精霊とで状況に応じて切り替えて射撃する。
また、サージェントの攻撃はそれだけではなく……警備装置、タレットも桜花を狙う。
桜花は上手く第六感などを駆使してこの攻撃を回避。やや体勢は崩れるものの、返しに控えさせていた精霊の雷球で警備装置を破壊していく。
サージェントを狙う精霊、銃で迎撃するサージェント。
桜花を撃つ警備装置に、精霊で迎撃する桜花。
それは目にも激しい『消耗戦』の様相を呈していた。
精霊と警備装置。今回、その数が足りたのは……『精霊』の方であった。
「……ここら一帯の警備装置を破壊されつくしたか。本当に大したものだな」
「ええ」
桜花は指先に精霊を乗せ、サージェントに差し向ける。
「次はオブリビオンと成らず、望みに邁進する事が出来ますよう……お休みなさい」
その言葉と共に、精霊は雷球を放出。サージェントに命中する。
そのダメージに、サージェントは片膝を付く。
「……俺が消えてもまた別のヤツが現れるだけだろうに、ご苦労な事だ」
サージェントはメットに中からふ、と息を漏らすように笑う。
桜花の『鎮魂歌』は届いたのか。
それは、桜花はもちろんサージェント本人にすらわからない。
成功
🔵🔵🔴
狐々愛・アイ
ヒトとは欲望に忠実なもの……あなたは間違ってなどいません。
ですが、あなた方のやり方は多くのヒトを不幸にし過ぎる。遊びは、ここまでにしておきませんか?
『L.O.V.E.Drive』を使います。
この炎はヒトへの愛であり、あなたへの愛。
「抵抗するなというなら力尽くでどうぞ。今のぼくは一撃受ければおしゃか、ですよ?」
これでぼくの生命力は半分、防御力はゼロ。嘘偽りなく伝え、あちらの一撃が決定打となることを印象付けましょう。
まずはボウ・オブ・アムールによる牽制射撃。被弾のプレッシャーをかけるのが目的です、狙いは甘くて構いません。
さらにフロート・オブ・アムールの【誘導弾】を全て敵弾の相殺に回し、膠着状態を作り上げます。
遠距離戦が続くならそれも良しですが……痺れを切らして接近戦を挑みに来たらチャンスです。
懐に入られれば撃ちにくい武器ばかりと思わせて【騙し討ち】を見舞います。
ピースと共に左目でぱちりとウィンク。
アイズ・アイズレーザーによる【レーザー射撃】で迎撃です。
一撃が決定打となるのはお互い様、ですよ。
●騙る正義、語る愛
フロント部分が破損し、中破状態の武装車両。センサーが損壊し使い物にならない警備装置。猟兵達の激しい攻撃にさらされ、フルメタル・サージェントは力の要を失いつつあった。
装備に対して愛着は無い。あれらはただ、好きにやるためにメガコーポより与えられた道具で、壊れれば代替品がまた届く。
「ヒトとは欲望に忠実なもの……あなたは間違ってなどいません」
しかし、それらを捨てて逃げるという選択肢も、あの者は取らせてくれそうにない。
最早走行することもできない車両。その上をただ回るパトランプの光に照らされる小さな影。それが、サージェントを見つめて放さない。
「ですが、あなた方のやり方は多くのヒトを不幸にし過ぎる。遊びは、ここまでにしておきませんか?」
――最後の相手はこんな子どもか。
ヤキが回ったかのような展開に思わず溜息をこぼし、サージェントは銃を手に取った。
「――今更、俺が他人の不幸を気にするようなヤツに見えるのかい?」
想像通りと言えば想像通りな台詞。とはいえその答えは、狐々愛・アイ(愛は優しさ、愛は力・f36751)をほんの少し、ほんの僅かに落胆させた。
改心の余地はなく、取り付く島もない。であれば、手加減はもはや不要であった。
「――燃え盛るような、愛をあなたに……!」
大きいとは言えない身体から噴き出る熱気は、やがて炎となりて。
起動した【L.O.V.E.Drive】は、アイを燃え盛る『愛情の炎』で包んでいく。
「今のぼくは一撃受ければおしゃか、ですよ?」
「おしゃか、ね。レプリカントらしい表現だ」
この【L.O.V.E.Drive】、飛躍的に攻撃力を増強するアイの機能のひとつ……なのだが、その分デメリットも大きい。
唯一にして最大の弱点。それがアイも言ったように、致命的な『耐久力の低下』。
しかし、あえてそれを包み隠さず口にすることにより、アイの思惑の在処を曇らせる。
「抵抗するなというなら力尽くでどうぞ」
「いいだろう」
銃を手に、照準をアイに向け、構える。
「――抵抗するな」
宣言、【アイアムジャスティス】。
『愛』の挑戦を、名ばかりの『正義』が受け立つ。
ここからは、アイにとってぎりぎりの戦いとなる。
パトランプの回転する光は、アイが動けば動くほどに生命力を奪っていく。
しかし、どうせ一撃が致命傷になるというなら、どれだけ生命力を持っていかれようが関係ない。アイは命令を無視し、その手に和弓型兵器『ボウ・オブ・アムール』にエネルギー状の矢を番える。
放たれる矢はアイの『愛情』そのもの。悪徳警官にさえ向けられるそれは、もはや質量としては無尽蔵とも言える。
ボウ・オブ・アムールの射撃を、サージェントは横に駆け出して回避する。
(被弾のプレッシャーをかけるのが目的です、狙いは甘くて構いません)
弾幕を見れば大回りで回避したくなるのが理性あるものの心理というもの。サージェントも例にもれず、素早い動作で走り出している。
「この銃だってリトル・グレイ社製だぜ。忘れてないかい?」
そして、サージェントもまた撃たれるばかりではない。走りながらも銃の照準をアイに向けている。
アイは急ぎ、ハートの形を取った浮遊砲台『フロート・オブ・アムール』を展開する。
こちらの照準はサージェント……ではなく、放たれた銃弾そのものだ。
「身持ちが固いな」
サージェントの銃撃を、フロート・オブ・アムールのビーム弾が相殺する。
互いに射撃武器による撃ちあい。今のアイの接近戦をしかけるリスクを考えれば、こうなるのは道理ではある。
実際、射撃戦はこちらがやや有利だ。
サージェントの持ち込んだ武装の多くは破損しており、現在はパトランプと手持ちの銃器のみ。アイの装備を考えると不足気味である。
(遠距離戦が続くならそれも良しですが……)
おそらく、そうはならない。
アイは『その時』に備え、一層サージェントを眼を凝らして注視する。
「――洒落臭い」
突如、サージェントは走り出す。
砲台を撃ってもアイ本体を撃っても、砲台が弾丸を撃ち落とす。その上、アイもまた攻撃の手を緩めない。サージェントには圧倒的に手数が不足していた。
となれば、この手段を取るしかないのは自明の理であった。
アイの砲台目掛けて銃撃し、相殺を誘い、自身はアイに肉薄。
そしてアイ自身の射撃を回避し、最後は捕獲しようと手を伸ばす。捕まえてしまえば、後は銃で撃つなりストックで殴りつけるなりなんとでもなる。
砲台の間を駆け抜けるサージェント。その距離あと数メートルの所で……アイは、その手の弓をぽん、と放り出す。
「――一撃が決定打となるのはお互い様、ですよ」
右手の人差し指と中指が離れた時、そこに『ピースサイン』が生まれる。開いた指とは逆に、左目は閉じる。『ウィンク』だ。
その瞬間、アイの左目から光が走り……アイの左目の『アイズ・アイズレーザー』がサージェントの胸を貫いた。
「……テキトーに撃っていると思っていたが、誘き寄せられていたのか。たまらないな……」
貫いた光は一瞬の後、サージェントのアーマーを砕いて進む。
余波でそのままサージェントの身体は宙を舞い……最後はどさり、背を打つ。
「……残念だよ。もう少しあの会社で遊びたかったんだけどな……」
背を地に預けたまま、サージェントの溜息はこぼれる。
撃破確認のため歩み寄ってきたアイに、サージェントは懐から取り出したものを強引に押し付ける。
「……これは?」
「IDカード。……致命傷だからね、これから消える俺にはもう必要ない」
曰く。これを持っていれば自由にリトル・グレイ社製の銃器を使えるし、またリトル・グレイ社製の銃器に狙われた際に照準を向けてくる銃を強制的にロックするのだという。
単なる証拠品のみならず、これからリトル・グレイ社と相対するのに重要な道具だ。アイは一旦、受け取ったIDカードを懐にしまい込む。
「これから骸の海か……あそこは、つまらないんだよな――」
メットから聞こえる、息を吐く呼吸音。その最後の一息の後、サージェントの身体は急速に朽ち果てていく。
フルメタル・サージェント。騙る『正義』。己が快楽のためにメガコーポを利用し、利用される者。
それは、自身と同じくもう動かないもの達を眺め、そして敗北を認め、骸の海へと去って行った。
大成功
🔵🔵🔵
●後処理
猟兵達の活躍により集まった情報は、証拠能力として大きな力を持っていた。
警察との『癒着』の疑いもかかっていたが、それを否定するかの如く警察はすぐにリトル・グレイ社に捜査のメスを入れる事となる。
引き金を軽くするような『暗示』をかけていた疑いもあり、リトル・グレイ社製銃器は全回収され、本社もその規模を大きく縮小させていく結果となった。
近く、完全に解体される可能性もあるが……そうなる頃には、猟兵達も含め、リトル・グレイ社の事など忘れているのかもしれない。