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この燃え盛る桜都に革命を

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #逢魔弾道弾 #桜シリーズ

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 ――それは、何の前触れもなく、予兆もなく……と言えばおかしな話だった。
『我……継ぎ……変革を……』
 地鳴りのように呻く影朧のその声に。
 それは満足げに頷いて、その中に籠められた魂を射出する。
『それこそが、我らの求める世界』
 崩れてしまった世界を正すためにこそ、私はここにあったのだから。
『さあ……黄泉の世界を越え、新たなる世界の安寧と秩序を齎す者よ。今此処で汝の求める革命を果たせ』
 その言の葉と共に。
 天から降り注いだ全てを焼き尽くす焔が今、帝都の一角に降り注いだ。


「このタイミング……ですか」
 帝都桜學府諜報部。
 その一室で、部下から報告を受けたその男……竜胆は沈痛な表情で小さく呻く。
「見通しを甘くしたつもりはありませんでしたが……先手を打たれてしまいましたね。いや……恐らく、水仙さんのことも、全てはこの時の為に私達の戦力を削ぐ策だったのでしょう」
 一先ず、打てるだけの手は打った。
 しかし……足りない。
 帝都に降り注ぐ革命の炎を……破壊の焔を止めるには、とても足りない。
 だから……。
「やれることをやるしかありませんね」
 そう軽く頭を横に振り。
 押し寄せる炎の海で人々の被害を最小限に食い止めるべく竜胆は1通の電報を打った。


「……やはり、来たか」
 グリモアベースの片隅で。
 双眸を瞑り、その事件を視ていた、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が蒼穹に輝く目蓋を開く。
 その蒼穹の双眸で、優希斗は目前に集まった猟兵達を見て、皆、と静かに呼び掛けた。
「帝都桜學府のある場所に、幻朧戦線による逢魔弾道弾……逢魔が辻を人為的に発生させるそれが着弾したよ。現在、着弾地点を中心に炎が広がり始めている。このままでは、帝都が焼き払われかねない」
 撃たれる兆候を予期していた帝都桜學府諜報部もまた、人命救助のために人員を動員した様だが……。
「先日、帝都桜學府で起きた騒動の影響でね、負傷者や、疲弊している者達が多数と言うのもあり、逢魔弾道弾が着弾した周囲の人々の迅速な避難及び、逢魔弾道弾そのものの排除まで手が回らなかったらしい。その事は、竜胆さんからも連絡を受けている」
 である以上、至急猟兵達を派遣する必要がある。
 先ずは、大火と化したその辺りの人民の避難及び救助が最優先ではあるが。
「取り敢えず竜胆さんも急ぎの指示を出してこれ以上外から人が入らないよう、封鎖は既にしているらしい。が、それでも取り残されている人々は多数いる」
 既に諜報部の人間達は、この事件の鎮圧に力を尽くしている。
 彼等の協力を得られれば、幾分救出は楽になるだろう。
「ともあれ、人々を避難させたからと言って、生まれ落ちた逢魔が辻を放置するわけにも行かない。人々の避難及び救助が完了したら、大至急逢魔が辻に突入、逢魔弾道弾のコアとなった影朧達を止めてくれ。これは皆にしか出来ないことだ」
 切羽詰まった口調でそう言いきると、優希斗が静かに息を吐く。
「……下手を打てば、人々に犠牲も出かねないかなり厳しい状況だ。この災厄が広がれば、帝都もただではすまないだろう。だから皆……どうかよろしく頼む」
 その優希斗の祈りを籠めた言葉と共に。
 蒼穹の風が吹き荒れると共に……猟兵達はグリモアベースから姿を消した。
 ――急を告げる、風雲と共に。


長野聖夜
 ――浄化こそ、我が革命の果てであり。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけで、サクラミラージュシナリオをお送りいたします。
 このシナリオは、下記タグの拙著シリーズと設定を多少リンクしております。
 とは言え旧作未参加者でも、参加は歓迎致します。
 参考タグシリーズ:桜シリーズ。
 このシナリオはホットスタートになります。
 火の手が既に回っており、人々は逃げ惑い、或いは火に飲まれて倒壊している建物などもあります。
 何時、火の手が回りきるか分からない建物なども。
 皆様には、其処に取り残された人々も出きる限り手助けして下さいます様、出来る限りの協力をお願い致します。
 尚、負傷者等も出ている様です。
 また、このシナリオでは下記人物達と行動する事も可能です(桜シリーズ内でもし、他に手助けして頂きたい方がいたら連絡を取っても構いませんが、シナリオに登場するとは限りません)
 1.竜胆。
 帝都桜学府諜報部の幹部の1人です。人々の避難、立ち入り禁止の封鎖令等、事態収拾の為に指揮を執っています。現場に出てこれる可能性は低いです。
 2.雅人。
 諜報部の人物で、桜シリーズ1章から度々登場している諜報部員のユーベルコヲド使いです。猟兵への協力は惜しみません。
 3.水仙。
 前作『その愛と遺志を継ぐ、灯桜祭の名の下で』で登場。嘗ては反旗を翻しましたが、今回は償いの意味も兼ねて人々の避難に手を貸しています。猟兵達に対する感情は複雑ですが、敵対することはありません。

 プレイング受付期間及びリプレイ執筆期間は下記の予定です。
 プレイング受付期間:4月8日(金)8時31分以降~4月9日(土)13:00頃迄。
 リプレイ執筆期間:4月9日(土)14:00以降~4月11日(月)一杯迄。
 変更ありましたら、タグ及びマスターページにてお知らせいたします。

 ――それでは、最善の結末を。
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第1章 冒険 『燃える帝都』

POW   :    火を消す

SPD   :    延焼を止める

WIZ   :    住民を助ける

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウィリアム・バークリー
逢魔弾道弾!? あれが使えたんですか!?
いえ、今はそれは後回し。早く避難誘導を始めないと。

まずは広範囲の消火を狙います。
「範囲攻撃」のPermafrostで、広域を凍土で包み、炎の熱を吸収させます。猛吹雪を吹き付ければ、火の勢いも弱まるでしょう。

桜學府の入り口に施設案内板ありますかね。
それを見ながら、他の猟兵と受け持ち範囲を決めたいです。
誰々はこの棟の二階、誰それはこっちの棟の一階、みたいに。

ぼくも自分の受け持った建物へ向かいます。
水の「属性攻撃」で霧を生み出し消火しながら、声を張り上げて逃げ遅れた人たちを探し、見つけ次第連れ出しましょう。
崩れそうな建物は氷で補強。
皆さん、これで全員ですか?


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動

SIRDはこれより、行方不明者の捜索及び救助、避難誘導、被害状況の把握を行います。当然、最優先事項は救助活動です。例え要救助者が虫の息であっても、全力で救護を行ってください。その為に必要とあらば、全ての手段の使用を許可します。

竜胆さんと共に全般指揮を行います。SIRDメンバーだけでなく、他の猟兵とも連絡をとり、救助や避難、被害状況の状況把握に努めます。さらに夜鬼を召喚を、上空から被害の状況等を確認し、それを皆に伝達。
また、可能であれば夜鬼を逢魔弾道弾のグラウンド・ゼロに向かわせ、弾道弾の状況を監視させます。

…これは最早、戦争ですね。

アドリブ及び他者との絡み歓迎


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎

コマンドを確認。被災者の救護活動を最優先事項に設定。これより、実行に移ります。

何はともあれ、他の猟兵の方々と一緒に逃げ遅れた人や怪我人の救助を行います。幸いわたくしめは御覧の通り、耐熱性は他の種族の方よりも優れておりますので、例え火の中でもへっちゃらです。
建物内で逃げ遅れた方々を、機体内の様々なセンサー類をフル稼働させて捜索し、居場所を特定、救助にあたります。必要とあらば、少々乱暴ですが、建物の壁や瓦礫を破壊して排除、可能な限り最短ルートで救助します。当然、二次災害に気を付けてですけどね。
また、状況によっては、UCで救助した方々を守ります。


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で連携

…放火魔の未来に革命の輝きなんてありませんよ

先ずは指定UCでジェットタービン式放水消火装置を積んだ無人戦車(以下UGV)複数台とサーマルカメラ搭載の無人偵察機を作成。同時に局長や仲間と逐次連絡を取り、避難路を設定してその経路を中心として周囲にUGVを展開。ジェット放水で付近の温度を下げ湿度を上げるよう水霧の壁を作りつつ、建物・瓦礫を濡らして避難路両側に防火帯を形成して安全確保し仲間の避難誘導を支援

同時に偵察機のほうは上空を旋回させ、延焼進行状況・風速情報等と温度差を利用し逃げ遅れの市民の位置を(情報収集)させ随時に局長へ報告し可能なら自身の装甲車で救助に向かう

アドリブ歓迎


白夜・紅閻
壊すことは得意だが
火を消すとか焼却とかは…出来なくはないが
イザークに炎を捕食してもらうとか…なら?

とりあえず住民の避難でも
ルカやガイにも手伝わせよう
意外に子供のほうがウケがいいかも?
まぁ戦闘中じゃないから大丈夫だと思うけど

あとは動物たちを使って逃げ遅れてしまった住民とか
迷子などの保護というか情報収集もしておく

ついでに、何処か怪しい所とか無いかも調べて貰うよ

篁臥には僕の足になってもらうよ
白梟は、近くで火消しとか焼却とかしている連中のサポートをお願いしておくよ

アドリブ・連携はお任せ


吉柳・祥華
妾は祈りで天候操作し雨を呼ぼうかのう
その雨には浄化と破魔を施しておこう
なんし怪しげな気配も感じるからのう

これは…
巻き込まれた影朧の叫びなのじゃろうか?

式神も手伝わせるのじゃ
冥風雪華は妾と一緒に火消しを
護鬼丸は近場の住民どもの救助

朱霞露焔
こやつはもとより実体が封じられておるでの
霊符として結界を張り、少しでも延焼を抑えようと思うのじゃ

そうじゃな
あとは朱雀、青龍、白虎、玄武…等の封印を解いて召喚し
朱雀は焼却を抑えてもらい、青龍は妾と火消しを
玄武は精神攻撃で催眠術でも使うかのう
パニック状態の住民どもを催眠術で大人しくさせて避難でもさせるかのう
白虎も式神と一緒に救助活動でもさせておくのじゃ

アドリブ連携可


亞東・霧亥
【SIRD】と協力

『毒使い』『薬品調合』『早業』で、現地で必要になる薬を用意。
嵩張らない、水を必要としない、即効性の観点から舌下錠で大量に、また、鎮痛効果のある黄色の煙を出す香木もそれぞれ携行する。

現地で『救助活動』を開始。
『医術』の知識で軽傷者と重傷者を見極め、軽傷者に舌下錠を渡して回復し次第、協力して重傷者を比較的安全な場所に固める。
鎮痛効果のある香を焚いて、他のメンバーに重傷者の位置を知らせる。

【UC】
ドリルの様な矛で道を作り、飛来や倒壊する瓦礫は盾で防ぎ、時折詠唱を止めて人々の様子を見てから詠唱再開を繰り返す。

避難場所まで切り開いたら、次々と『道案内』を繰り返す。


天星・暁音
革命なんてのは…時に血生臭いものなのは事実だけど、手を出してはいけないものというのは何事も存在するものだよね
世界には本来あるべき姿などなく
世界の在り方はそこ生きるモノたちが作り上げていくものではあるんだけど…
残念ながら、今のこの世界を壊してまで作る世界としては俺的に認められないね

皆、お願い力を貸してね
汚れた分は後でちゃんと綺麗にするからね




呼び出した人形たちの技能を活用して、追跡で一般人の捜索、救助活動、怪力を用いての、瓦礫撤去、救助、動けない人の避難、医術で、怪我人治療等を行います
同時に星の船を用いて空から水を撒いたり、放水することで消化活動を行います


スキルUCアイテムご自由に
共闘アドリブ歓迎


真宮・響
【真宮家】で参加(他猟兵との連携可)

水仙主導の白紅党蜂起も黒幕にとっては計算の内だった、ってことかい。忌々しいね、全く。無辜の人々を犠牲にしてまで何を成したいんだが。

考えるのは後だ。まずはこの火災を何とかしないとね。奏、救助は任せた。瞬はアタシと消火活動だ!!緊急事態だ、手数を増やす。真紅の騎士団に消火活動を手伝ってもらう。悪いが建物による延焼が範囲が広過ぎるなら建物の一部破壊も許して貰えるかね。流石に最後の手段にしたいが。【ダッシュ】で駆け回り、邪魔な瓦礫は【怪力】でどかす。

段々規模が大きくなってきたね・・・早く黒幕の尻尾を掴みたいところだが。


真宮・奏
【真宮家】で参加(他猟兵との連携可能)

黒幕も強硬手段に出てきましたね。全て焼き払った跡は何も残らない事をいしてない訳ではないでしょうに。色々と思う所ありますが、まずは人命優先です。

風の妖精騎士で救助の手数を増やしましょう。建物に閉じ込められた方がいれば【怪力】と風の妖精騎士の手で救出して、【火炎耐性】でフルに動きながら避難誘導していきます。火の手が避難民に迫るなら【結界術】で結界を張って物理的に火を食い止めます。

黒幕のいう革命というのは一体どこを目指してるんでしょうね?傍迷惑には変わりありませんが。


神城・瞬
【真宮家】で参加(他猟兵との連携可)

水仙さんの覚悟を決めた蜂起も、黒幕にとっては機会を掴む手段に過ぎなかったという事ですか。どこまで人の心を弄べば気が済むのか。・・・まずはこの火を何とかしないと。

僕は母さんと共に火災の対処を。奏は救助と避難誘導、気をつけて。【式神使い】で鴉の朔を飛ばし、火が出ているところを精霊顕現で【属性攻撃】を100レベルにして水の精霊を【範囲攻撃】化して消火して貰います。延焼が酷ければ【結界術】で建物の間を強引に区切り延焼を止めます。

無辜の人々を無差別に命の危険に晒してまで、何がなされるというのでしょうね。まあ、禄な事ではないでしょうが。


彩瑠・姫桜
人々の避難に協力
あお(f06218)と、仲間と連携して対応するわね

倒壊寸前の建物をはじめ、
一般人が立ち入るのは危険な場所に取り残されている人々の救出を優先
こういう時に使えるユーベルコードは持ってないから、身一つになるけど
猟兵なんだし焼け焦げることはないでしょ(水かぶり)

建物内に入って、動けない人は背負う、
落ちてくる瓦礫や火の粉は[かばう、武器受け]で払うことはするわ

…確かに、あおのUCの田中さんなら
障害物取り除いて避難経路の確保したり
複数の人を背負うことできるなら心強いわよね

提示されてる安全な場所まで避難させたら再び建物内へ
大勢で立ち入るところができないところに積極的に入るようにするわね


榎木・葵桜
人々の避難に協力
姫ちゃん(f04489)や他の猟兵達と連携して対応するね

てか、姫ちゃん、そーゆー建物内は一人では危ないよ!
いくら猟兵だからって、できることとできないことはあるんだから

救助のために建物内に入るにしても
瓦礫とかに挟まれて動けない人とかは早く助けなきゃだし
複数人いたら一気に運べた方がいいしね
ここはUCで田中さん召喚して協力してもらって、準備整えて行こう!

水仙さんはどのあたりに居るのかな?
人手必要そうなとことか、安全な避難場所とか
知ってるんじゃないかなって思うから、
合流できそうなら会話して、必要なところに行くようにするね

水仙さんは色々思うとこあるだろーけど
ひとまず一緒にがんばろー!


馬県・義透
SIRDの面々と一緒に
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
蛍嘉(f29452)とは双子でこちらが兄

さて、私たちは救助優先でー。瓦礫あるのならば、陰海月が怪力でどけてくれますしねー。
黄色の煙が目印と聞いていますしー…ええ、そこを重点的に。
もしも見えなかったら…そのときは、地縛鎖で位置を把握しましょう。
そして、UCで作った避難場所へと導きましょう。今回は、広目の和室になってますからねー。中には蛍嘉がいますから、あとは任せましたー。
大丈夫ですよー、助けに来ましたからねー。


陰海月、ぷきゅっと瓦礫をどける。海色結界で熱から守る!


外邨・蛍嘉
SIRDの人たちとも協力しつつ
義透(f28057)内の『疾き者』とは双子でこちらが妹。基本呼び捨て

んー、義透から『人手が要る』って声をかけられたんだけど…。たしかにこれはね。

義透の作ったUC内に最初からいるさ。広いね、ここ。布団とか敷いておこう。
避難者が来たら、即座にUCを使っての負傷治療。ここなら風使っても大丈夫だからね。
ここは安全だから、無理に動かなくていい。むしろ、ゆっくりしておいき、と声をかけよう。

もしも、精神的にも…な人がいたら。陽凪が落ち着くように相手してるかもね。


陽凪、今回は心理的癒しのためにメガリスの力を全振り。ドクターフィッシュの名に懸けて。
鳴けないため、全部ジェスチャー。


鳴上・冬季
「出でよ、黄巾力士水行軍」
黄巾力士123体召喚
3体ずつ41組に編成し砲頭から水球打ち出させ消火活動
取り残された人間を見つけた場合は救助優先
1体が要救助者運び1体がそれをオーラ防御で庇いもう1体が水球で打ち出し続け消火しながら撤退ルートを開く

自分は風火輪
普段から護衛に連れ歩いている黄巾力士は飛来椅で空中から火災の様子を俯瞰
火災のひどそうな場所要救助者の多そうな場所に優先的に召喚した黄巾力士を送り込んでいく
また竜脈使い黄巾力士の能力を底上げして黄巾力士が仙術(水球弾)使用するのを補助する

「俯瞰で火事の様子はほぼ全景把握できますが…建物内は分かりかねますね」
火勢の状況等他の猟兵にも式神で情報共有図る


御園・桜花
「帝都が…帝都が!」
初めて見た大火に一瞬涙ぐみ慌てて駆け出す

火災現場に到着したら即UC「願いの桜吹雪」使用
皆の傷を癒し再行動で素早く動けるようにする
封鎖している桜學府関係者に取り残されている人の居る可能性のある場所聞いたら頭から水被りUC使い続けたまま火災の中に突入
走りながら高速多重詠唱で氷の精霊呼び出し氷打ち込ませながらどんどん進む
精霊自体も高ペースで召喚送還して消滅するまでの無理はさせない
落下物は第六感や見切りで躱す
怪我人発見したら向かいつつUC使用
怪我治し本人達にも屋外へ出るよう促す
屋外への道は氷の精霊に確保させ倒壊物は盾受けからのシールドバッシュで弾き飛ばす
「大丈夫です、だから此方へ」


朱雀門・瑠香
随分と急な展開ですね・・・
水仙さんでしたっけ?とりあえず手伝ってください!
う~ん、延焼止めるのなら爆弾が手っ取り早いんですけど生憎持ち合わせがないんですよね・・・
しょうがないですね燃え移りそうな建物を片端から切り崩していきますか。中に逃げ遅れた人がいないか確認して水仙さんにも手伝ってもらって避難させてからその建物の大黒柱とか支えている柱を片端から切り崩して延焼させないようにしましょう!
水仙さんは何か思うところがあるのでしょうけど今は避難させるのが先決ですから考えるのは後回しにしてとにかく人々の避難を!死人を出すわけにはいきませんからね。


文月・統哉
これはまた派手に来たね
それでも諦めたりするものか
誰も死なせない、この着ぐるみにかけて!

仲間と連携
可能なら雅人達とも合流して協力したい
地形や建物の情報はあるだろうか

さあ、今こそ着ぐるみの力を見せる時
ふわもこ戦隊・着ぐるみナイン救助隊、出動だ!

救助活動100レベルの着ぐるみ9体召喚
オーラ防御も展開
技能フル活用で迅速に人々を救助する

炎に巻かれた家屋や倒壊寸前のビルへ突入し
逃げ遅れた人々を次々抱えて脱出させる
地形と風を見切り、火の回りを予測して
消火栓や給水塔を利用しての消火作業も行いながら
適切な避難経路を即座に割り出して人々を誘導する
それは正しくヒーローの様に

ここが狙われた理由
雅人達なら知ってるのかな


館野・敬輔
【闇黒】
アドリブ大歓迎

…ふざけるな
革命と言葉を飾ったところで
これはただの破壊行為だ
一刻も早く住民を避難させるぞ!

帝都存亡がかかる以上、手段は選んでいられない
指定UC発動、分身を10体召喚
俺自身への被ダメージ激増は覚悟の上だ
分身も俺も「オーラ防御、火炎耐性」で火炎遮断のオーラを纏って行動開始

分身や他猟兵と手分けして
火に呑まれ倒壊している建物に積極的に突入
「視力、聞き耳、追跡、失せ物探し」で救助を求める声や人々の痕跡を辿り捜索し
発見次第「救助活動、怪力」で瓦礫除去し救出
要救助者が走れない場合は怪力で抱え脱出だ

…陽太さんのことは心配だけど
過去は過去、今は今
今、できることを精一杯やるしかないんだ


森宮・陽太
【闇黒】
アドリブ大歓迎

…帝都が、燃えている
俺が住む、帝都が…

(燃える帝都に、何処とも知れぬ近未来的な都市の幻影が重なる)
(脳裏に過るのは、忘却の彼方にある「反抗する輩を都市ごと纏めて獄炎で焼いた」過去)
(一瞬、白のマスケラが現れかけるが…)

…違う
あの時とは違う
火をつけたのは革命を嘯く影朧たち
昔の俺じゃ…ない
俺じゃ、ない…!

…そうだな、敬輔
過去は過去…その通りだ
だから今は…『陽太』はこの暴挙を止める
『暗殺者』俺を止めんじゃねえぞ!
(「陽太の意を尊重する故、止める気は最初からない」と聞こえた気がするが…空耳かも)

俺は消火活動に専念しよう
「高速詠唱、言いくるめ」から指定UCでフォルカロル召喚
フォルカロルは火災現場全体を見渡せる高度まで浮上させてから「属性攻撃(水)、制圧射撃、蹂躙」
激流を空に撃ち上げ広範囲に疑似的な豪雨を降らし一気に消火
俺自身も激流のデビルカード「投擲」で援護だ
激流で建物を破壊しつつ延焼を阻止できそうなら挑戦させるが…

…闇の天秤、影朧ども
ここまでやらかして
ただですむと思うなよ


藤崎・美雪
アドリブ連携大歓迎

ああもう!
何でこうも事を急く輩がぽこぽこ湧くのか!
…誰か胃薬くれないか?

諜報部や他猟兵と連携
救助及び消火は他猟兵に任せ
私は避難所へ急行し怪我人の治療に専念
運び込まれた怪我人を指定UCの出張カフェに収容し
「医術、救助活動」で怪我人の治療に専念しよう
このカフェ内は異空間ゆえ、安全は確保できる
気を落ち着かせるためのハーブティーも振る舞うよ

手当てしつつ状況整理だ
ここまでの流れなんだが
切り裂きジャックが椿さんを殺害し妹桜が黄泉還らせ
水仙さんと白紅党員を煽動し決起させてスケープゴートにし
桜學府全体の力を削いで今回の事態への対応を遅らせた…だよな?

だとすると
今回の計画、椿さん殺害の段階から綿密に練られ過ぎている
用意周到にも程があるが
いったい誰が…否、何が裏で糸を引いている?

竜胆さんは現場に出てこれないだろうけど
無線越しに話す時間くらいはあるだろう
先日、例の現場の調査に赴いたと白蘭さんから聞いているが
何か把握したことがあれば教えてくれ
…以前討伐したアレが復活するとは思えないんだが…


文月・ネコ吉
※アドリブ連携歓迎
統哉に引き続き参加

全く、厄介事ってのはどうしてこうも続くかね
眉間に皺を寄せつつ溜息
眉間の皺はいつもだろうって?うるさいな

密かにUC使用
ケットシーの身軽さを活かしつつ
仲間と連携して救助活動
オーラ防御展開し
危険箇所を見切り、人々を庇い救出
医術の知識も活かして怪我人の応急処置も

水仙が居るという事は
元白紅党の奴等もいるのだろうかね
見かけたらさり気なくフォローする
目の前の人を助けたいと思うのは
彼等も桜學府も猟兵も、皆同じという事だ
協力できるならそれに越したことはない、だろ?

空を見上げれば雨の気配(天候操作)
雨男も偶には役に立つものだな
焼石に水かも知れないが、何も無いよりマシだろう




 ――轟々。
 それはまるで、全てを食らう火竜の様に。
 帝都の1都市を巻き込む炎の姿を見て。
「あ、ああ……帝都が……帝都が!」
「……帝都が、燃えている。俺達が住む、帝都が……」
 蒼穹の風が止むや否や地面に降り立った御園・桜花がその翡翠の瞳に白い滴を称え、森宮・陽太がその惨状に呆然としていた。
 涙ぐみ、ギュッ、と桜鋼扇を握りしめる桜花。
 大きく見開かれた其の目には、激しい動揺が走っている。
 其の桜花の隣で、この光景を目の辺りにした陽太の脳裏に不意に過ぎるのは……。
 ――轟……轟!
 蹂躙されたかの如く焼き尽くされ、崩れ落ちていく何処とも知れぬ近未来的な都市の幻影。
(「俺は……『俺』はあの時……」)
 それはこの地に辿り着くよりも、遥かに前の記憶。
 自らの記憶にない、老若男女も分からない者達を纏めて獄炎で焼き払った……。
「あっ……ぐうっ……!」
 陽太の顔に、不意に白のマスケラが現れかける。
 其れがすっぽりと陽太の顔を覆うよりも、早く。
「ふざけるな! 革命と言葉を飾って虐殺を、破壊行為を容易く行うなんて……!」
 憤怒の籠められた館野・敬輔の怒声が、パチン、と陽太の耳を叩いた。
 その声に籠められた憤怒に頬を張り飛ばされたかの様に……。
「……違う。あの時とは、違う。火を点けたのは革命を嘯く影朧達……昔の俺じゃ……ない! 俺じゃ、無いんだ……!」
 陽太が必死に白のマスケラを叩き落とし、ぐい、と額の汗を拭うその間に。
「あまり悠長にしている時間もありませんね。直ぐに行動に移しましょう。桜花さん、大丈夫です。帝都桜學府生として、この帝都を守らない訳には行きませんから」
 ポン、と慰める様に桜花の肩を鳴上・冬季が叩きながら。
「出でよ、黄巾力士水行軍」
 123体の黄巾力士達を召喚し、3体41小隊へと編成。
 その冬季の決意に頷き、桜花が軽く頭を横に振り。
 涙を振り払い、帝都の一角を包み込む大火に向かって駆け出していく。
「……陽太さん、僕達も」
「……そうだな」
 桜花の其の後を追う様に駆け出す敬輔に其の背を押され、頷き必死に脳裏に纏わり付く其れを振り払いながら大火に向けて走る陽太。
 3人41小隊の黄巾力士水行軍達が其々に宝貝・金磚を構えて其の後に続く。
 その間に冬季は、自らの両足首に宝貝・風火輪を嵌め込んで、火災の状況、倒壊の状況、人々の状況を空から確認するべく飛翔した。


 ――同時刻。
「……状況は?」
 手元にある無線を使って、諜報部員に素早く連絡を取る竜胆。
 無論帝都桜學府學徒兵達にも、既に火災鎮火のための援軍の要請は完了している。
(「ですが……」)
 そこには帝都桜學府内でも最新レベルであろう、最新鋭の通信器具の数々。
 だが其れを使いこなせる者は限られており、故に竜胆ですら、この状況の完全な事態の把握には手を持て余していた。
(「電報で彼等に連絡を送りましたが、そんな彼等も何時来るのか……」)
 と、背筋に冷汗をかいた其の刹那。
 ――ガタン!
 突然扉が開いたその音に、反射的に竜胆が身構えるが、其の相手を見た瞬間、何時の間にか手に握っていた汗を拭っていた。
「お久しぶりですね、竜胆さん。あなた程の方が持て余す状況とは……」
 ネリッサ・ハーディのさりげない呼びかけに、すみません、と軽く一礼する。
「私達の世界では迅速な通信・電子機器の類いは其処まで発展しておりませんものでして」
「……オーバーテクノロジーのあるサクラミラージュにもそう言った弱点はあるのですね。了解しました」
 竜胆の回答にネリッサが頷き、小型情報端末MPDA・MkⅢを取り出して。
 竜胆の目前にあるコンピューターに接続し、同時に猟兵間の通信を円滑にするネットワークの構築を開始。
(「ラムダさんにも一緒に来て頂いた方が良かったかも知れませんが……貴重な救助人員の手を減らすわけには行きませんか」)
 そう内心で呟きつつ、周囲に次々にデータが浮かび上がり、帝都を食らわんと燃え盛る炎と周囲の状況を素早くチェック。
 スピーカーモードを起動させ、直ぐに通信を取ると……。
「此方、灯璃・ファルシュピーゲル。指揮所との良好な通信状態を確認しました。局長、現在西側で、既に行動を開始した者達がいる様です」
「同じく、ラムダ・マルチパーパスでございます、ネリッサ様。コマンドを確認致しました。これより被災者の救助活動を最優先事項に設定、実行に移るべく現場に直行します」
「霧亥だ、ネリッサ。ラムダ達と共に、俺も行動を開始する。義透達は既に現場に緊急避難所の作成を開始している様だ」
 亞東・霧亥が、無線で簡潔に分かりうる情報を送り、ネリッサが其れに1つ頷く。
 と、此処で一枚の式神が、部屋の窓を器用に開けてスルリと部屋の中へと入り込み、ふわふわと迷い無く竜胆の元へ。
「……成程。冬季達も動きましたか。朱雀門家の令嬢にも封鎖への協力は要請してありますしね」
 呟く竜胆の其れにネリッサが軽く頷いた、丁度其の時。
「うわ、これはまた派手に来たね。ネリッサ!」
 ネットワークを通じて文月・統哉の聞き慣れた声が届く。
「文月さん。あなたは今、帝都桜學府の何処に?」
「もうすぐ、現場につく! 多分、そんなに時間はかからない! 竜胆さん! 手を打っているって事は、雅人はもう現地入りしているんだね?」
 その統哉の確認に、竜胆がはい、と首肯した。
「既に消火活動を開始している筈です。……最悪を想定した際の現場での判断を全面的に支援できるよう、特例も出しておりますので」
「先日の戦いでも出た御免状の様な許可ですか。しかし、逢魔弾道弾まで使って、こんな帝都桜學府と帝都を巻き込んだ大災厄を引き起こすとは……!」
 そう通信に割り込んで、苦しげに呻いたのはウィリアム・バークリー。
 スピーカーモードの統哉の黒にゃんこ携帯から入ってきたウィリアムのその声に同意する様に、文月・ネコ吉もまた頷く。
「全くだ。どうしてこうも厄介事ってのは続くのかね?」
 眉間に眉を寄せながらのネコ吉の其れに、竜胆が恐らく、と呻いた。
「水仙さんの一件の段階で、算段は整っていたのでしょう。今回は完全に一枚上を行かれています。……せめて死者が出る事だけは避けなければ……」
 ――一角とは言え、帝都に火が放たれたのだ。
 既にパニックになっている人々の事もあり、これ以上余計な不安を帝民達に抱かせる訳には行かない。
 それを許せば、何の為の帝都桜學府だ、と非難の的になる可能性は十分ある。
「全く……忌々しい話だね。何も人々に不信感を植え付けるとか、命の問題だけじゃない。水仙主導の白紅党蜂起ですら……」
「……覚悟を決めた蜂起も、機会を掴む手段に過ぎなかったと言う事ですからね。黒幕も、本当に何処迄人の心を弄べば気が済むのか……!」
 同じく回線に割り込む様に舌打ちしながら呟いた真宮・響の其れに、神城・瞬も怒りを籠めて、首肯を1つ。
「こんな強硬手段にまで出て。……全てを焼き払った後には何も残らない事を知らないわけではないでしょうに。……なのに、どうして……!」
 通信機の向こう側で、キツく拳を握り締める鈍い音を響かせたのは、真宮・奏。
 その呻きの様な呟きにくそっ! と鋭い舌打ちが通信に割り込んでくる。
「まったく! 何でこうも事を急く輩がぼこぼこ湧くのか! ……胃薬が欲しくなる!」
「美雪だったな。ならばこれを使え」
 藤崎・美雪のその言葉に、既に現場にラムダ達と共に向かっていたのであろう、霧亥がその手に素早く一錠の薬を握らせた。
「……本当に胃薬が出てくるとは思わなかったぞ」
「そうですねー。まあ、此処で市民達を救助しない理由は何もありませんからねー」
 美雪に続いて、のほほんとそう言うのは馬県・義透……『疾き者』、外邨・義紘。
 そのいつも通りの静の中に燃え滾る、揺るがない決意に気付いているのは、義透の妹、外邨・蛍嘉位だろう。
(「だからこそ、義紘は私にも『人手が要る』って声をかけたんだろうしね」)
 と……その時。
 ポツリ、ポツリ。
 不意に、炎に煽られ、煌々と赤く照らされていた炎上した帝都の上を黒雲が覆う。
 その黒雲から、しとしとと降りだした雨が、僅かに燃え上がる炎の勢いを弱めるその様を、モニター越しに見つめるネリッサ。
「これは……」
「おぬしはネリッサと言ったでありんすな。妾は天から人々の救助に向かうでありんす。地上には白夜が要る故、何かあれば其方に」
 そう告げたのは、彩天綾を翻し、ふわふわと空を舞いながら黒雲から雨を降り注がせる吉柳・祥華。
「了解しました。白夜さん、聞こえますか?」
 問いかけたネリッサのその呼びかけに、ああ、と低く呻く声が届く。
「聞こえている。流石にバラバラに行動するのは得策ではなさそうだな。僕も一度君達の部隊……SIRDと言ったか。其方に合流しよう」
 その言葉と共に、ネリッサが指揮場に来る前に天空に放った夜鬼が目撃したのは、現場に向かって疾走する一匹の漆黒の獣。
 それは篁臥……自らの黒き巨大な獣に跨る、白夜・紅閻その人だった。
 その背後にはルカとガイ……月聖霊と、銀双翼の聖霊等が一緒に跨っている。
「まあ、僕は壊す事は得意だが、消火とかは……出来なくはないが、あまり得意ではない。だから、出来る限り人々の避難や救助活動を優先するよ」
 紅閻の其れに、分かりましたとネリッサが頷いたところで。
 何かを思い出したか、白夜さん、と改めて呼びかけた。
「協力して頂けるのであれば必要な時には、篁臥や白梟をお借りするかも知れませんが、宜しいですか?」
「構わない。必要ならば僕の方でもそういう判断はしよう」
 紅閻の同意を確認し、其処に割り込む様に祥華がネリッサ、と軽く呼びかける。
「おぬしが気が付いているかどうかは分からぬでありんすが……逢魔弾道弾でありんすか? あれが着弾してから、どうも妾は怪しげな気配を感じているでありんす。人助けと並行して其方の調査をするつもりじゃが、おぬしでも調査は可能でありんすか?」
「この戦い、必要なのは情報です。先程私の夜鬼を空に偵察も兼ねて飛ばしました。夜鬼と連携を取り、少しでも多くの情報の収集をお願いします」
 祥華の其れにネリッサがそう答えるのに、了解じゃ、と頷き念話を一度切る祥華。
 それらの話を星の船に搭載した通信機越しに聞き取りながら、ふわりと星の船の転送装置を起動し、現場に舞い降りたのは……。
「暁音さん、ですか」
 炎取り巻く都市への道の封鎖をしていた朱雀門・瑠香がそう呼びかけた少年、天星・暁音。
 瑠香達の周りに張り巡らされているのは、KEEP OUTと書かれた断熱板。
「この中に近寄らない様に!」
 と周囲に声を張り上げている多種多様な格好をした者達も一緒に居た。
 恐らく帝都桜學府の學徒兵や、警察官達であろう。
 少なくとも、こう言った厄介事に慣れている者達なのは、傍目にも直ぐ分かる。
「そうだね、瑠香さん。通して貰えるかな?」
 暁音の確認というよりも、人によっては脅迫にも聞こえる静かな口調で告げられた其れに、瑠香が小さく頷いて。
「此処は任せます。此処で状況変化が起きたら、逐一竜胆さんに報告を!」
 近くの學徒兵に呼びかけ瑠香が後事を託すと、其の學徒兵がはい! と敬礼する。
 キビキビとした、瑠香のその姿を見て。
「慣れているのね」
 暁音の後ろから姿を現した彩瑠・姫桜が瑠香に聞くと、瑠香が微かに照れくさくなったか、いえ、と学帽を頭直し。
「……これでも、朱雀門家の次期党首ですから……」
「次期党首様かぁ~格好良いね、そう言うの!」
 そう応える瑠香を見て、姫桜の隣にいた榎木・葵桜が思わず笑みを綻ばせた。
「……此方、朱雀門・瑠香です。竜胆さん、応答の程を」
 誤魔化す様に目を逸らした瑠香が指揮場に連絡を入れると、人を落ち着かせる声が聞こえてきた。
「此方竜胆です。どうやら無事に超弩級戦力の皆様が到着した様ですね」
「はい、然様です竜胆さん。私も此から……」
 と、此処で。
 瑠香がある事に気がつき、近くを歩き回る學徒兵達に素早く目を凝らす。
 そして1人の人影を目に留めて、え~と、と其の娘に向けて呼びかけた。
「水仙さん! ……でしたよね? 私達の學級の中でもトップクラスの成績を誇る、エリートの……」
 その瑠香の呼びかけに。
「ええ……そうね」
 状況を確認し、呼び止められた水仙が瑠香の方を振り向き、直ぐに此方へと小走りに駆け寄ってくる。
 其の水仙の姿を見て、葵桜がパッ、パッと白地の桜の花弁のあしらわれた桜舞花を開いて振って会釈をしてみせた。
「あなた達……来たのね」
 其の水仙の呼びかけに、葵桜がうん! と溌剌と首を縦に振る。
「うん、来たよ! 大変な状況だって聞いたから。そうか、水仙さんも封鎖のために手を尽くしてくれていたんだね」
 葵桜の其れにまあ、と軽く頬を赤らめつつも、複雑な感情を宿した眼差しで射貫く様に見つめながら頷く水仙。
「無罪放免というわけではないけれども、私にも償わなきゃいけないことがあるからね。其れに今私に出来ることはしておかないと……って他の党員の子達に諭されたのもあるし」
「……ネコ吉さんの説得に応じた党員達の事ね。じゃあ、彼等も今此処の封鎖に協力を?」
 納得した様に呟く姫桜の其れに、ええ、と水仙が静かに頷く。
「これ以上被害を広げるわけには行かないから。最悪周囲の建物を崩す許可も下りているわ」
「では、私達に協力してくれますね?」
 瑠香の其の確認に、水仙は仕方が無い、とばかりに溜息を1つ。
「……朱雀門家の跡取り娘にそう言われたら頷かないわけには行かないわね。良いわ。党員達に此処は任せて私もあなた達と一緒に行く」
「よし! それじゃあ、急ごう! あっ、そうだ、水仙さん、あの火事の中で今、人で必要そうな所とか、安全な避難場所とか分かる?」
 水仙の同意を確認するや否や、矢継ぎ早に質問する葵桜。
 先日の諍いのことなど、全く気にした様子も見せずに好意的に話しかけてくる葵桜に流石に戸惑いを隠せぬ表情を浮かべる水仙。
 と……此処で。
 不意に水仙が持つスマアトフォンのばいぶれえしょんが大きく唸る。
 気がついた水仙が慌てて懐から其れを引っ張り出すが、其の起動に悪戦苦闘。
「一寸借りるわよ、水仙さん」
 様子を見かねた姫桜が水仙のスマートフォンを借り受けて、スピーカーモードにして素早く着信を押すと。
「繋がりましたか。其方に居るのは水仙さんですね?」
 そうネリッサが電話越しに呼びかけてくるのに姫桜が軽く首を縦に振った。
「私とあお、暁音さんも一緒に居るわ。御免なさい出遅れて。直ぐに私達も中に突入するから。何処に人を避難させれば良いかしら?」
 その姫桜がスマートフォン越しの質問に。
「現在、藤崎さんが避難場所に移動、セーフティーハウスを臨時に用意しています。ですので、其方に人々を避難誘導する様、お願いします。また負傷者等が居る可能性もありますので、彩瑠さん達はそのまま突入を。もし、此方が繋がらないところにあなた達が入った場合、鳴上さんの式神が連絡を取るために向かいます。誰1人死者を出さないよう、最善を尽くして下さい」
「ええ、勿論よ。私達だって、誰かを犠牲になんてするつもりないんだから……!」
 そう告げて。
 近くの消火栓を叩き壊して溢れた水を姫桜が自ら浴びて。
「ちょっ……姫ちゃん!?」
「な、何を……?!」
 溢れ続ける水を浴びつつ、何となく焦った口調になる葵桜と瑠香を一瞥し。
「さて……急ぐわよ、皆!」
 告げてひらりと鳥の様にキープアウトのテープを飛び越えて炎の中に飛び込んでいく姫桜に慌てて葵桜や瑠香、水仙が続く。
 其の後を追う様に暁音もまた走り出しながら……。
「……皆、力を貸して」
 其の手の星具シュテルシアを錫杖から10フィートの棒形態に変形させて、トン、と軽く大地を叩くと。
 大地に染み渡る様な音色を奏でる様々なファンシーなぬいぐるみや動物人形達が姿を現した。
 何れもが楽器を持ち、人の心安らげる音楽を奏で、鳥が空から、猫のぬいぐるみが嗅覚を走らせる様子を一瞥しながら。
「革命なんてのは……時に血生臭いのは事実だけれど、手を出してはいけないものと言うのは、何事にだって存在するものだよね」
 そう誰に共なく呟くと。
「ええ……その通りですね、天星さん」
 スピーカーで恐らく其れを偶々漏れ聞いたのであろう。
 指揮場から冬季が集めた陽太達猟兵の現在位置、パニックになりヒステリーを起こしている集団を確認していたネリッサが頷く。
「……でも、時にそう言った倫理や価値観と言ったものが存在しなくなる瞬間というのが、人々の間には、あります。それは……」
 そう呻く様に呟くのに。
 暁音の共苦の痛みが、まるで何かを訴えかけるかの様に針で突き刺す様な凄まじい苦痛と灼熱感を暁音に与える。
 ――其れは、世界の声か。
 いや……今、聞こえている此は、きっと……。
「SIRD…………Specialservice Information Research Department局員へ。SIRDはこれより、行方不明者の捜索及び救助、避難誘導、被害状況の把握を行います。最優先事項は救助活動です。例え、要救助者が虫の息であっても、全力で援護を行って下さい。他の猟兵の皆様も私達に力をお貸し下さい。其の為に必要とあらば全ての手段の使用を許可します。……もう此は、只の災厄ではありません」
 無意識に、であろう。
 ゴクリと唾を飲み込み、努めて平静な口調を保ちながらネリッサが続けた。
「……此は最早、影朧によって引き起こされた戦争です。この様な戦争で、誰1人犠牲者を出さない為にも、総員の健闘と、奮起をお願いします」
 額から染み出した汗を拭いながら指揮場から通信を伝達させたネリッサの其れに。
『……Yes.マム!』
 灯璃、義透、ラムダ、霧亥、蛍嘉達SIRD及び其の関係者が一礼し。
「ああ、勿論だ! 誰1人死なせるものか! この正義の着ぐるみにかけて!」
 勢い込んで自らの纏うクロネコ・レッドの首に巻いた赤いスカーフに籠めた誓いと共に、統哉が叫び。
「……うん。私の、私達の帝都をこれ以上焼かせなんてしませんから……!」
 敬輔達と共にキープアウトのテープを越えて、現場へと飛び込んだ桜花が、誓いを籠めた叫びと共に、桜鋼扇を開いて振ると。
 焼き尽くされつつあった幻朧桜の木々に重なり合う様に、幻朧桜の幻が姿を現し、祥華の雨と混ざり合う様に桜吹雪を舞い散らせた。
 空中から四方向から戦火の地へと飛び込む姫桜達の動きを把握するべく監察を続ける冬季の黄巾力士水行軍の41小隊の水球と共に。


 吹き荒れる桜吹雪が、共にいた敬輔と陽太、そして冬季の黄巾力士水行軍の41小隊の背を押し出す。
 桜吹雪による圧倒的な加速を得た敬輔がひゅっ、と何かを呼び出すかの様に指を振る。
 瞬間、現れたのは10体の桜吹雪に加速された肩の傷口から白化した敬輔の実体を持つ分身達。
「帝都存亡が掛かる以上、此処で手段は得られない。一気に行くぞ、陽太さん! 黄巾力士水行軍の皆さんは……」
 そう敬輔が傍に居た冬季の黄巾力士水行軍に声を掛けると。
「各小隊。散開して下さい。その内10小隊は桜花さん達と共に消火活動を」
 上空から冬季の声が式神によって届けられた黄巾力士水行軍達が散開、宝貝・金磚の砲塔から一斉に水球の放射を開始。
 放たれた水球が桜吹雪に背を押されて、先程、封鎖の協力をしていた學徒兵から聞いた高層ビルに叩き付けられた。
「先ずは、あのデパアトからですね。あそこには流行の呉服などを買いに来ていた沢山の人々がいる筈です……!」
 桜花に頷いた10人の敬輔の分身達が黄巾力士水行軍による消火活動の援護を受けて走り出し、その中に飛び込んでいく。
 火の手に呑まれてガラガラと瓦礫物が崩れ落ち、其れが分身の頭を直撃しようとしたところに。
「くそっ……! あんなものが当たったら、一発で敬輔が生き埋めになっちまう! やるしかねぇ……『暗殺者』! 邪魔するんじゃねぇぞ……!」
 そう呻いた陽太が銃型のダイモン・デバイスを構え、其の引金を引く。
 ――『陽太』の意を尊重する故、最初から止める気は無い。
 そんな声が聞こえた気もするが、気に留める余裕もなく……。
「フォルカロル! 激流を巻き起こせ!」
 叫びと共に、大地から竜巻の如く放出された激流が、敬輔に直撃しようとしていた建造物を撃ち抜いていく。
「皆さん、ご無事ですか!? 誰か居ますか!」
 炎の勢いを黄巾力士水行軍達が少し和らげた好きに、自ら其の水球を浴びた桜花がビルに飛び込む。
 必死に周囲に声を掛けながら、桜吹雪を桜鋼扇で巻き起こし続けつつ、精霊呪具を起動。
 桜花の願いに乗じた氷の精霊達が焼けるビルの中の暑さにも関わらず姿を現し、周囲に次々に氷の息吹を吹き付けてくれた。
 霜が降り、凍てついていく炎。
 外からは黄巾力士水行軍の10小隊の内、5小隊がビルを包囲する様に囲んで水球を撃ち出して、外に漏れる炎を沈静化させている。
(「流石に空中からでは中の様子を見ることは出来ませんね。此処は敬輔さん達にお任せするしましょう」)
 其のビルの様子を見ながら冬季が内心でそう呟き、再び地上の彼方此方で燃え上がる火の状況を確認する間に。
「くっ……! 完全に倒壊する前に人々を見つけないと……!」
 敬輔が呻きながら、周囲を見回しつつ階段を駆け上っていく。
 焼け焦げた衣服の匂いや、鼻をつく様な煙の匂いが10人の分身を吸い込んでしまい、其れが自らの体を蝕み咽せそうになるが。
(「考えている場合……じゃない!」)
 そう思い直し、必死に辺りを捜索すると。
「た……助……け……」
 微かな掠れ声が耳に入り、敬輔は分身を2人其方に向かわせた。
 それは炎で崩れ落ちた建造物の下に下敷きにされている数人の人々。
 分身達が其の怪力で素早く瓦礫を持ち上げ、傷だらけの人々を纏めて抱え上げる。
「! その人達を先に逃がしてあげて下さい!」
 桜花が敬輔の分身達が救助した人々の姿を認めるや否や、桜鋼扇を振るう。
 生まれ落ちた幻朧桜の幻影から吹き荒れた桜吹雪が重傷の人々の傷を癒しつつ、敬輔の分身達の背を押して一気に救助を成功させた。
「救助者を一先ず避難させるが……何処が一番……?」
 恐らく、美雪がいるであろう避難施設が一番安全だろうが、そこに至る一番安全な道を探す暇が無い。
 そう焦る敬輔の分身達をフォローするかの様に目前に現れた冬季の式神達がまるで、こっちこっちと誘導する様に移動を開始。
 その間に一緒に突入した黄巾力士水行軍の5小隊が、水球で鎮火をしていると。
 ――ガラガラガラ!
 凄まじい音と共に、今、正に逃げようとしていた人々に瓦礫の山が降り注いだ。
 その瞬間、水行軍が黄巾色の結界を張り巡らして人々を庇い、更に別の小隊員が水球を放出してそれを人気の無い場所へ吹っ飛ばす。
 そうして力尽くでこじ開けた避難ルートに敬輔が陽太、桜花が走り込んだ時。
「だ、誰か居ないか!」
 沢山の瓦礫によって、固く閉ざされた扉の向こうから聞こえる声を耳にした。
「居るんだな? 他には?!」
 敬輔がその瓦礫を他の分身達と共にどかしながら、呼びかけるその間に。
「私、上も確認してきます!」
 桜花が敬輔に変わって叫び、敬輔の了解を得るよりも先に、氷の精霊達に周囲を凍てつかせながら階段を駆け上っていく。
「あっ、おい桜花! 1人で行くのは危ねーぞ!」
「陽太さん! 桜花さんを追って! 此処は俺が引き受ける! 下の火事は今、冬季さんの黄巾力士水行軍が消火してくれている筈だ!」
 瓦礫を退かしながら叫ぶ敬輔に頷き、陽太が桜花を追って階段を駆け上がる。
 念のためにと、2体程分身を送り出し、残った6体と自身の7人掛かりで瓦礫を除け、防災シャッターの前に辿り着くと。
「下がって!」
「あっ……ああ!」
 敬輔が黒剣を抜剣、シャッターを力任せに叩き壊した。
「皆、怪我は!? 重傷者などはいるか!?」
 煙の向こうの体を震わせていた避難者……シャッターの向こうから声を掛けてきていた者が、顔を青ざめさせている。
 助かったと言う安堵感と、突然現れた七つ子に戸惑いを抱いたのかも知れないが。
「大丈夫、僕は超弩級戦力で、この分身達は、僕のユーベルコヲドだから」
 身分証明も兼ねて帝都桜學府から支給されるサアビスチケットを見せつけると、微かに安堵の息を漏らし。
「俺達は、助かるんだな! で、でも、未だ上にも逃げ遅れた奴等が……!」
「其方は僕の仲間達が行っている。兎に角皆は僕について避難して。下のフロアの鎮火及び避難経路の確保は終わっているから」
 そう事情を説明し、ヘタレて動けなくなっている者等に分身に手を貸させつつ、自らも率先して怪我人を背負う敬輔。
 そのまま速やかに冬季の黄巾力士水行軍達や桜花が鎮火した階下に駆け下りつつ。
「ネリッサさん、聞こえるか?」
 防水仕様スマートフォンで連絡を入れると、混線していた先程と違い、今度は明確な返事が返ってきた。
「此方、指揮本部です。その声は、館野さんですね? 人々の避難状況は?」
「シェルター内にいた人々は保護した。何処に避難させれば良い?」
「藤崎さんの居る指定避難場所へ。場所は其処から……」
 其の指示を受けて、救助した多数の人々を誘導しつつ、敬輔は一瞬、2体の分身を送った階上へと気掛かりな視線を送り。
「……陽太さん。過去は過去、今は今。今、出来ることを精一杯やるしかないんだ」
 そう祈りの言の葉を紡いで直ぐに。
 人々を引き連れ、或いは怪我人達を分身に運ばせて、敬輔は階下へと向かう。
 階下で救助活動及び、避難ルートの確保と消火に勤しんでいた黄巾力士水行軍の5小隊と合流し、ビルを脱出。
 外で包囲網を形成、ビルに水球を一斉掃射し、鎮火を最優先していた残存の黄巾力士水行軍5小隊に分身と共に避難民を引き渡し。
 ネリッサが通信で避難ルートへと、敬輔と避難民達を通信で誘導するその間に。
 陽太と桜花は階上に到着し、更に濃くなった黒煙に顔を顰めていた。
 外からの黄巾力士水行軍の鎮火の御陰で、火勢は弱められているが、それでも倒壊や、焼け焦げた衣服の痕が痛々しい。
「おーい、大丈夫か! 誰か逃げ遅れた奴はいないかー!」
「誰かいたら声を上げて下さい! 私達が必ずあなた達を救います!」
 その声が聞こえたのかどうかは分からないが。
 まだ黒煙を上げる瓦礫に埋まる様に、子供を守って倒れている大人の姿が見えた。
 その姿を見て、一瞬陽太と桜花が間に合わなかったか、と血の気を引かせるが。
「……う……あっ……」
 呻き声が聞こえて未だ息があるのだと悟り、直ぐに其方に向かい。
 一緒についてきた敬輔の分身が、2人掛かりで瓦礫を除去。
 其処に近づき足が潰れて血に塗れ、今にも其の命の灯火が消えかけている大人と彼に守られて無傷の子供がいた。
「ぱ……パパ! パパ!」
 蚊の鳴く様な声で必死に自分を庇った父を呼ぶ子供の声に胸が張り裂けそうになるのを堪えながら、桜花が幻朧桜の幻を召喚。
 吹き荒れた桜吹雪で潰れた足の止血を行い、未だ辛うじて息をしている其の男を支える様に敬輔の分身が抱き上げる。
「大丈夫です。パパもあなたも必ず助かりますから……」
 泣き喚く子供に自分も泣きそうになりながら、優しい声で子供を励ます桜花。
 陽太がギュッ、と拳を握りしめつつ周囲を見回すと、ある一角へと急行した。
「だ……誰か! 誰か!」
 瓦礫の向こうのシェルターから漏れ聞こえた声の方へと。
 其の隙間から煙の匂いが嗅ぎ取って、陽太の表情に焦りが浮かんだ。
(「ちっ、只闇雲に瓦礫を排除しているだけじゃ、炎にやられなくとも煙に巻かれて酸欠になっちまう可能性がある。此処は……!」)
 そう内心で慌てて散弾を纏めた陽太が出した、其の答えは。
「フォルカロル! 其の瓦礫を吹き飛ばせ!」
 その要求に、心得たとばかりにグリフォン型の悪魔が嘶きを上げる。
 フォルカロルは本来、召喚時に指定した激流か暴風のどちらかしか使えないが、桜吹雪の影響かその背の双翼を羽ばたかせて。
 暴風を解き放ち、一息にシェルターを埋もらせた瓦礫を吹き飛ばし、陽太が齧り付く様にシェルターの前に走り。
「下がってろよ!」
 叫んで淡紅のアリスグレイヴを抜き放ち、淡紅色の袈裟を一閃。
 シェルターを破壊され、煙に咽せた人々を引き寄せ、大丈夫だ、と陽太が励ます。
「救助に来た。他に逃げ遅れた奴はいないな?」
 サアビスチケットで身分証明をしつつ問いかける陽太の其れに、鎮火されている周囲の状況を見た人々が漸く安堵の息を吐く。
 其処にネリッサからの通信が、陽太に入った。
「森宮さん、無事ですか?」
「ああ、何とかな。だが、逃げ遅れた奴等は皆疲労しているし、怪我人もいる。ある程度は桜花が応急処置を出来るが……」
 ネリッサからの通信に、手早く状況を報告する陽太。
 其れを聞いたネリッサがでは、と次の指示を下す。
「一旦、屋上へとその人々を搬送して下さい。直ぐに救助隊を送ります」
「分かった。頼んだぜ」
 そうして通信を切り、陽太が先程のやり取りを人々に伝えて屋上への退避を提案。
 其れでも不安げな人々に向けて、子供を宥め終えて抱き抱えた桜花がやってきて、大丈夫です、と安心させる様に微笑んだ。
「必ずあなた達は助かります。今は私達と一緒に屋上へ」
 そう言って、桜花が先導して人々を屋外……屋上へと避難させる其の行く手を阻む瓦礫を、破魔の銀盆で叩き壊す姿を見ながら。
「……闇の天秤に群がる、影朧共。此処までやらかして、只で済むと思うなよ」
 激情を孕んだ声でそう呟き、陽太は避難民をビルの屋上へと連れ出した。


「……北側で一番被害が大きかったビルの人々の救助は無事に完了した様ですね。お見事です。桜花さん」
 陽太や敬輔、桜花の状況を、空から俯瞰していた冬季が静かに言の葉を漏らす。
 外からの消火作業に従事していた黄巾力士水行軍小連隊に指示を下し、屋上の人々を地面に降ろすべく梯子を用意させながら。
「まあ、未だ消火が完了していない場所もありますが……其処は、陽太さん達に任せておけば大丈夫でしょう。黄巾力士水行軍もいますしね」
 状況を確認してそう呟き、続けて冬季が東側の火災現場へと視線を向ける。
 其方では……。


「――Permafrost!」
 空気を震撼させる様な咆哮が轟いた。
 その声を張り上げた主、ウィリアムの眼前には、桜と白、青色の混ざり合った魔法陣が燦然と煌めいている。
 煌めく魔法陣から迸るは、視界を覆わんばかりの猛吹雪。
 戦場全体を永久凍土にするとされる圧巻の猛吹雪が、ウィリアム達の居る北側で飛び火していた炎熱を一瞬で奪い去る。
「……しかし、四方向からの同時鎮火作戦か。確かにこれだけの大火災じゃ、その位は出来ないと鎮圧も難しいだろうね」
「ああ、そうだな」
 ウィリアムの解き放った永久凍土の猛吹雪で弱まった火の勢いを見て、誰に共なく呟く響のそれに、ネコ吉が頷くその間に。
『精霊顕現! 力を借りますよ!』
 火の勢いが弱まったのを好機と見て取った瞬がすかさず六花の杖を天に掲げた。
 掲げられた水晶の様に透き通った美しさを誇る六花の杖の周囲にその姿を曝け出したのは、9体の人魚の姿をした精霊達。
 まるで誘惑するかの様に蠱惑的に尾を動かしながら、水の精霊達が勢いの弱まった火に向けて一斉に口から水を放射する。
 鉄砲水の様に放たれた水が周辺に飛び火していた炎を鎮め、ある家を消火した時。
 家から両脇に子供達を抱えた体の彼方此方に焼け跡を作った青年が飛び出した。
 その頬に刻まれた傷と胸に差された煤けた羽根を見て、統哉が思わず息を呑む。
「雅人! 無事だったか!」
 駆け寄ってくる統哉に雅人が懐かしそうに微苦笑を綻ばせるが、直ぐに其の表情を厳しいものに変えた。
「統哉さん、来ていたのか! ともあれ、先ずは僕よりもこの子達を!」
 そう告げて、子供達を雅人が統哉に引き渡そうとした其の時。
「そう言うことなら、任せろ! 集え、ふわもこ戦隊・着ぐるみナイン!」
 統哉が高らかに叫ぶや否や、クロネコ・レッドのスーツに巻かれた赤いスカーフから9体のふわもこ着ぐるみが出現する。
 突然現れたふわもこ着ぐるみ達を見て、雅人の腕の中の子供達が顔を上げ、わーっ、と危機を忘れたかの如く歓声を上げた。
「可愛い、可愛―い! 着ぐるみさん達が動いているー!」
「ねぇねぇ、お兄ちゃん、この中にはどんな人が入っているの?」
「ニャハハッ♪ 其れは秘密だよ! 着ぐるみナイン救助隊! この子供達を美雪の所に!」
 統哉の指示に頷いて。
 9体のぬいぐるみの内の1体が、雅人から子供をフワフワの手で受け取り、パタパタと避難所に向けて駆け出していく。
 其れを見送る時間も無く、統哉が雅人と、気を引き締めた表情で問いかけた。
「ウィリアムと瞬が今、これ以上の火の拡大を抑えてくれているけれど。未だ彼方此方で火の手が上がっている。一番危険だと思われる場所は何処になる?」
「……この辺りの家の住民達は、ある程度は救出したけれど、未だ手を入れられていないビル街がある。こっちだ!」
 統哉の言葉に即座に頷き、直ぐに其のビルに向かって駆け出す雅人。
 其の雅人の後を追う様に、響と奏、瞬にウィリアムとネコ吉が後を追う。
 雅人が案内したその場所にも既に黄巾力士水行軍の5小隊15人が水球を撃ち込み、消火を行い始めていたが……。
「……まずいな。ビルが今にも崩れ落ちそうだぜ」
 眉間に皺を寄せたまま、其の状況を見て取ったネコ吉がそう呟くのに、統哉と着ぐるみナイン救助隊が険しい顔付きになる。
「しかも此処はビル街だ。もしも放置すればどれ程の被害になるか……!」
 雅人が呻く様にそう呟き、素早くビルの1つに飛び込んでいく。
 統哉と着ぐるみナイン救助隊の8人が其れに続くのを見送り、ウィリアムが険しい表情になった。
(「まずい。ビルの火災は完全に収まっていない。広範囲の炎を食い止めることは出来たけれども……これじゃあ、間に合わない……!」)
 だとすればネリッサ達の判断を仰ぐよりも先に、行動に移すのが先だ。
 そう結論付けたウィリアムが、同じく状況を見て取り険しい表情を浮かべている響やネコ吉へと皆さん、と呼びかけた。
「響さん達は右隣のビルを。ぼくは左のビルに急ぎます!」
「待て! お前1人で人々を避難させるのは……」
 ウィリアムの依頼にネコ吉が軽く頭を振りながら、気遣う様な表情を向ける。
 正にその時、だった。
「こっちでも火事が! 党首の命令だ! 必ず人々を救い出すぞ!」
 背後から聞き覚えのある声が聞こえ、ネコ吉が其方を振り返る。
 振り返った先にいたのは、防火服に身を包んだ……。
「やっぱりお前達も来ていたのか。元白紅党の……」
 ネコ吉にそう呼びかけられ、救助活動に向かおうとしていた者達が其方を振り返り、あっ、と驚いた様な声を上げた。
「ネコ吉さん! アンタも来ていたのか! しかし、なんで顰め面を?」
 党員の其れに、思わず溜息を漏らすネコ吉。
「まあ、そんな話は後だ。此で決まりだ。響、俺はウィリアムとこいつらと一緒に西のビルに行く。お前達2人で……」
 大丈夫か? とネコ吉が聞こうとすると、ポン、と自分の胸を響が叩き。
「いや、それでいい。こういう時の為にきちんとした用意がある。だから急ぐよ!」
 胸を叩いた、右手を素早く振り下ろした。
「はい、母さん……急ぎましょう!」
 同時に奏が其の手に収まっていた魔法石をピンと弾く。
 その瞬間、響の周りに【1】と書かれた真紅の鎧の騎士達が123体姿を現し、更に翡翠の風を纏う妖精騎士が奏の頭上を舞う。
 一気に戦力が増強されたのを確認したネコ吉が眉間に皺を寄せたままよし、と小さく頷いた。
「じゃあ、そっちは任せたぜ! 全員救ってまた会おう」
 其のネコ吉の言葉を合図にして。
 素早く其々の担当を決めたビルに飛び込むウィリアムとネコ吉、響と奏の背に向かって瞬が叫ぶ。
「皆さん! 僕はこれ以上の火の手の拡大を止めるために、此処に水の結界を張り巡らして、周囲を隔離します! どうか無事に戻ってきて下さい!」
 六花の杖を掲げ上げ、9体の水の精霊達が吐き出した鉄砲水を凝縮し、各ビルを包み込む水の結界を張り巡らしながら。


「最悪建物の一部破壊も許して貰えると良いんだけれどね。内側からで構わない、深紅の騎士団! 瞬が結界を張り巡らしている内に、火を鎮圧するよ!」
 その響の言葉を受け入れた響の真紅の騎士団達が一斉に抜剣。
 胸の前に翳して己が矜持を見せつけると同時に、用意してきた非常用の消火器を構えて一斉掃射。
 其の一方で、3組1小隊の黄巾力士水行軍が3小隊、瞬達に続いて地面を掘ってきたのか地下から姿を現して水球をぶちまけた。
「真宮さん、ネリッサです」
 彼等の消火活動の協力を得ている響の無線に、ネリッサの声が入った。
「ネリッサかい。他の地域の状況は?」
「各方面、現在順調に消火活動及び救助活動は進んでいます。それから、先程も話しましたが、今は有事です。建物の延焼を食い止めるための一部破壊の許可を竜胆さんより取りました」
「よし、分かったよ! アンタ達! 火の回りの早い一部分を区切るために内側から周囲を破壊! 何とかこれ以上の被害を食い止めるんだ!」
 響の指示に応じた真紅の騎士達が建造物の破壊も兼ねた消火活動を黄巾力士水行軍と協力して実行する其の間に。
 奏が風の妖精騎士と共に周囲を見回し、必死になって叫ぶ。
「誰か! 誰か居ますか! 私達は帝都桜學府より皆さんの救出を承った超弩級戦力です! あなた達は必ず助かりますから、どうか返事をして下さい!」
 その奏の声が届いたのか。
「こっちだ……こっち!」
 正しく風の様に小さな声が妖精騎士に届き、妖精騎士が剣でその一点を指し示す。
 奏が其方を振り返ると、そこには瓦礫で目前が埋まった避難用のシャッター。
「大丈夫です! 大丈夫ですから! 風の妖精さん、お願いします!」
 其方に駆け寄りながら叫ぶ奏。
 奏の応えに応じる様に、剣を突き出していた妖精騎士が自らの纏っていた風で突風を巻き起こす。
 巻き起こされた突風が瓦礫を一斉に吹き飛ばし、残りの瓦礫を力任せに押しのけ、シャッターをこじ開けると。
 こじ開けた扉の先の人々がいて、怪我人こそ出ている様だが、助けが来てくれた事実に歓喜の声を上げた。
「助かった……? 助かるんだよな、俺達!?」
 矢継ぎ早に尋ねてくる要救助者達に奏がはい、と自信満々に首肯する。
 その頃、真紅の騎士団達は大きく火の回っていた部分を破壊して、そこに大量の瓦礫物を叩き込み、真空状態を作り鎮火させていた。
 更に響が周囲の瓦礫をブレイズブルーを振るって力任せに破壊、人々が安全に避難できる逃げ道を作り上げ。
「さっ、あんまりのんびりしている暇はないよ! こっちだアンタ達! アタシ達が守るから、慌てず急いでこっちに来な!」
 そんな響を手伝う様に黄巾力士水行軍の1小隊が水球を撃ち込み炎の勢いを弱め。
 更に共に飛び込んだ2小隊が、自らの周囲に黄土色の結界を張り巡らし、響が切り開いた避難路を守る。
 其方に向かって我先にと避難民達が駆け出そうとした、其の刹那。
「だめっ!」
 何かに気がついた奏が避難民の手を引き、入れ替わる様にシャッターの外へ押し出つつ、エレメンタル・シールドを突き出した。
 ――ドカーン!
 ……間一髪。
 激しい音と共に巨大な爆発が後方で起き、奏がエレメンタル・シールドを突き出し張り巡らした結界が辛うじて其れを受け止める。
(「……っ!」)
 爆発の衝撃で飛んできた破片を掴んだ手から血が滴るが、構わず後ろを振り返り。
「早く、逃げて!」
 必死に叫ぶ奏のそれに押される様にして。
 難を逃れた人々が避難経路を抜けて避難したのを確認し、奏がそっと息をつく。
「……黒幕の言う革命と言うのは、一体何処を目指しているんでしょうね? 傍迷惑には変わりありませんが」
 呟きながら最後に脱出した奏の其の背後で、水の結界を張り巡らされたビルが沈むかの様に崩れ落ちた。


 ――その頃。
「こっちだ、こっち!」
「落ち着いて、僕達の指示に従って下さい! あなた達は僕達が守ります!」
 真ん中のビルに飛び込んだ統哉が雅人と共に、声を張り上げつつ避難誘導を行っている。
 瓦礫の中に埋もれた人々を捜し当てた着ぐるみナインが素早く安全に瓦礫から彼等を掘り出しては直ぐに担いでその場から脱出。
 力任せに助けるのは危険と判断された人々は共に突入した12体、4小隊の黄巾力士水行軍達が丁寧に1人1人救出する。
 ――ゴゴゴゴゴゴゴ……。
 地鳴りの様な不気味な音が響いている。
 火の手が周り、このビルの大黒柱が崩れかけているのだろう。
(「くっ……不味いな。俺達だけじゃ少し手数が足りないか……?!」)
 そう、統哉が微かな焦りを見せ始めた時。
 硝子を突き破る様に割って、巨大な白き聖獣、白虎に跨がった式神が姿を現した。
「あ……あれは……」
 突然現れた白虎と護鬼丸に人々がパニックに陥りそうになった時。
 白虎の背後からのっそりと巨大な足の長い亀が姿を現し、その瞳を光らせる。
 光輝いたその瞳を受け入れた住民達が何処か安らかな表情を浮かべ、整然と雅人の誘導に従うのに統哉がほっと息をつくと。
「文月、聞こえているかえ? 妾でありんす」
 不意に脳裏に祥華の念動が届き、統哉が思わず瞠目した。
「祥華か!? 如何した?」
「何、今其方に妾の四聖獣……白虎と、玄武、そして妾の式神護鬼丸をむかわせたでありんすからな。避難のために有効利用するでありんすよ」
 そう告げて一方的に念話を切る祥華に統哉が有難う、と軽く頷きながら白虎の背に動けない人々を乗せる。
 まだ自分の意思で動ける者達は、雅人のキビキビとした避難誘導に従い、必死になって逃げる其の状況を見て統哉が軽く目を細めた。
(「雅人もすっかり、頼もしくなったよな」)
 そう内心で思いながら、唾を手に付けて、風向きを素早く調べる統哉。
 風向きにより火の回りがこのまま行けばビルの大黒柱を焼き尽くすのも時間の問題と判断し、消火栓で火を食い止めつつ叫ぶ。
「雅人! 避難を急いでくれ! このビルは瞬の結界術が切れたら倒壊する! もう柱が限界なんだ!」
 統哉が呼びかけ、雅人がそれに頷き人々の避難を急がせようとしたその瞬間。
 ――バチンッ!
 と鋭い音が鳴り、炎が回りきった大黒柱が焼け、巨大な振動と共に、ビルの天井が崩れ落ちそうになる。
「くっ……間に合わなかったか……!? 直ぐに避難を……!」
 と統哉が着ぐるみナイン救助隊と彼等が救助している人々に呼びかけた時。
 ――ガキンッ!
 と崩れ落ちかけた柱を支える様に護鬼丸がガッシリと其れを掴み辛うじてビルの倒壊を抑えて。
 更に冬季の式神が統哉の所に舞い降りて、早く離脱する様にと統哉を急かす。
「……ありがとう護鬼丸、冬季の式神。誰も逃げ遅れはいないな!? 脱出するぞ、着ぐるみナイン!」
 統哉の呼びかけに応じた着ぐるみナイン救助隊と黄巾力士水行軍が次々に避難民を連れて外へと飛び出す。
 統哉も煙を吸って意識を失いかけている娘を担ぎ、白虎の背に乗せた避難民達を自らの体で守る様に覆い被さると。
「ウォォォォォォーン!」
 白虎が唸り声を上げて先程飛び込んできた窓から飛び出す。
 全員の脱出を確認した護鬼丸が大黒柱から手を放すと。
 柱が折れ、天井が雪崩の様に崩れ落ちてきた。
 ビルが崩れ落ちる音を、白虎の背で聞いていた統哉が背後を振り返り。
 着ぐるみナイン救助隊及び黄巾力士水行軍、そして雅人と避難民達も同様に廃墟と化したビルの方を、気を揉んでみていると。
 悠然とした態度で護鬼丸が歩いて姿を現す。
 全員の無事を確認した雅人が思わず安堵の息を漏らし、竜胆へと報告を入れた。


「よし、ぼくは2階フロアに白紅党の皆さんの半数と一緒に動きます」
「分かった、俺は下を回る。そっちは任せたぜウィリアム」
 その間にもウィリアムとネコ吉が素早く役割分担を決め、ビルを探索する。
(「瞬さんの結界も何時迄持つか分かりません。ぼくも覚悟を決めなければ……」)
 手に籠めた氷の魔力を砕き、流水へと変えて周囲に散弾の様に撒き散らしながら内心で呟くウィリアム。
 白紅党の元党員達も、消火器を使って次々にビル内に回った炎を消して回り、更に大声を張り上げている。
「誰かいるか! いるなら返事をしてくれ!」
「救援に来ました! 逃げ遅れた人が居たら、声を上げて下さい!」
 ウィリアム達と共に居る2小隊6名の黄巾力士水行軍達が、炎の中でゴホゴホと咳き込む声を聞き取り、走り出す。
 ウィリアムも後を追おうとした瞬間、グラグラとビルが揺れ始めた。
「……やばいな。このままじゃ崩れ落ちちまうぜ」
 1階を元白紅党党員達と共に探索していたネコ吉が呟きつつ、天井が崩れて降り注いできた崩れた瓦礫を黒ねこ刺繍入り結界で受け止めた。
 眉間に皺を寄せ、このビルの構造を読み取り……。
「そうか。そうなるとあそこを凍てつかせることが出来れば……」
「ひとまずは倒壊を防ぐことが出来ますか。……Permafrost!」
 ネコ吉の呟きを、まるで2階で聞いていたかの様に。
 その場で青と桜色の混ざり合った魔法陣を構築し、絶対零度の猛吹雪を吹き荒れさせ、崩れかけていた柱を凍てつかせるウィリアム。
 ビルの崩壊をウィリアムが食い止めるその間に、黄巾力士水行軍と白紅党の党員達が2階を回り逃げ遅れた人々を助け出していた。
「急ぐぞ。此は時間稼ぎだ。何もしないままだと、直ぐに崩れてくるからな」
 ネコ吉がそう告げて、素早く近くで瓦礫に埋まりかけていた人に手を差し伸べ、そんままガシリと肩に担ぐ。
「うっ……」
 其の衝撃が腹部を圧迫したか、微かに苦痛の呻きを上げる救助者に成程、と眉を顰めたネコ吉が目を細めた。
「肋がやられているのか。此処を出たら応急処置をする。少しの間、堪えてくれ」
 そう呟くネコ吉の言葉を聞いたか、救助した人物が小さく頷く。
 その間にも白紅党党員達と、黄巾力士水行軍が救い出した人々を見て。
「よし……このビルに逃げ遅れた人間はこれ以上……」
「いないですね?」
 ネコ吉同様、2階で問うたウィリアムの其れに、元白紅党党員に救助された女が頷いた。
「はい。この部署の皆さんは、私の知る限り残っていたのは数名位でしたから……」
「2階には殆ど人は居なかった。1階で逃げ遅れたのもわたし達位しかいない筈だ」
 その避難民の何処か確信を持った物言いに、分かったとネコ吉が頷いて。
「よし、其れじゃあ急いで脱出するぞ」
 1階の避難民や元白紅党員達が鉄筋崩れ等に巻き込まれない様、安全なルートを探り移動を開始。
「急いで、でも怪我人もいますから落ち着いて下に避難して下さい。皆さんが脱出するまで、此処の倒壊はぼくが必ず食い止めますから……!」
 ウィリアムがPermafrostを維持したままに人々を促し、其れに従い、元党員達に連れられてビルを脱出する避難民達。
 ふう、と息をついたウィリアムが永久凍土にした大地を、スケートを滑るかの様に滑り、ビルを悠々と抜け出したところで。
「無事でしたね、皆さん!」
 それまでずっと術を維持し続けていた瞬が疲労で顔色を青ざめさせながらも柔らかく出迎えの言葉を掛けるのに、響達は頷いた。


「……東ビル地区の人々の救出が確認されました。ご苦労様です雅人さん。あなた達は避難民を藤崎さんのいる避難施設に避難させて下さい。まだ十分余裕があります」
 竜胆が受けた雅人からの連絡にネリッサが、直ぐに避難民達の避難先を指定する。
 一般人達は大なり小なり、負傷や疲労、失望や悲哀の表情を隠していなかったが、何よりも命を助けられたのは幸いだった。
 しかし……。
「……これだけの規模を燃やせる程の力が逢魔弾道弾に籠められているとは……空恐ろしいにも程がありますね」
 通信を一度切り、軽く頭を横に振って溜息を吐くネリッサ。
(「事実上の戦争ではありますが……それでも人が人同士で相争わないだけ、マシと言う事なのでしょうか……?」)
 そんな疑問を微かにネリッサが脳裏に浮かべた時。
「ネリッサ」
 不意に念話が届き、ネリッサが我に返って思念を頭に思い浮かべた。
「この声……𠮷柳さんですか。如何しましたか?」
「うむ……おぬしは自分の夜鬼と五感を共有できるのでありんすか?」
 その祥華の問いかけに、はい、とネリッサが首肯を1つ。
「出来ますが……」
「では、一度妾と共に居る夜鬼と感覚を共有して貰えるでありんすか? 今、弾道弾の着弾場所を確認しているでありんすが……」
 何処か、切羽詰まった様にも聞こえる祥華の呼びかけに。
 頷き、ネリッサが祥華と共に居る夜鬼と自らの感覚を繋げた時。
 ――ゾクリ。
 背筋に寒気が走る程の、憎しみと殺意の塊が殆ど物理的な衝撃を伴い、ネリッサを襲った。
「ぐっ……これは……?」
(「此が、逢魔弾道弾の着弾地点から夜鬼が感じているもの……?」)
 一瞬言葉を詰まらせたネリッサの其れに、分かったでありんすな、と祥華が沈痛な調子で言葉を紡ぐ。
「どうにも嫌な予感がして仕方ないでありんす。妾の白桜と紅桜……幻朧桜の枝から生み出した姉妹達も、この気配に怯えている」
「……姉妹」
 その祥華の呟きに。
 先日、自分達が戦った妹桜の事が脳裏に過ぎり、ネリッサが軽く頭を横に振った。
(「影朧化した幻朧桜に連なる者達が、今回の事件の首謀者なのでしょうか?」)
 ――否。
 もっと其の奥に潜む何かの強烈な呪詛の籠った気配を感じ取ったネリッサは、この先に待つ戦いに嫌な汗を拭えない。
(「ですが……其れは突入してから考えるべきでしょうね」)
 そう、気を取り直して。
 ネリッサは再び通信器をオンにして、其れを取った相手へと声を掛けた。
「……灯璃さん」
 未だ、猟兵達による人々の決死の救出活動は、峠の半分を超えたばかりだ。


 ――さて、時は遡る。
 西側は、この一帯の中でも最も広い地域だった。
 無論、それだけに突然に起きた大火事に人々が大パニックになって混乱を来し、我先にと逃げ出す者。
 親とはぐれて泣き喚く子供を除ける様にしてまで避難しようとしている人々すらいた。
「此は……先ず、人々のパニックを納めなくてはいけない状況でございますね」
 その姿を見たラムダが思わず、とアイカメラをチカチカ点滅させる。
 大人に撥ね除けられてしまった子供が人混みに巻き込まれないよう、篁臥を疾駆させ素早く助け起こしてやりつつ頷く紅閻。
「ルカ、ガイ頼むよ。人々を少しでも落ち着かせてくれ」
 紅閻に頼まれ、篁臥から飛び降りたルカとガイが、泣き叫ぶ子供達に近付き宥めながら一箇所に子供達を集め始める。
 自分達と同い年程に見える背格好のルカとガイの先導は、子供達の心に良く響く。
 その間に、灯璃がジェットタービン式放水消火装置搭載型の無人戦車を複数製作。
 そして……。
「一斉放水、開始します!」
 キビキビと灯璃が命令を下すや否や、焼け落ちかけている家屋や、店舗などに向けて一斉に水が放出された。
 更に熱を探知するサーマルカメラを搭載した無人偵察機を飛ばし、上空から、建物内に熱源を持つ者……逃げ遅れた避難民がいないかを探していた。
「皆様、落ち着いて下さいませ。この火事はもうすぐ鎮圧されます。わたくしめら超弩級戦力が必ずこの火災を止めます。慌てず騒がず、速やかに指示に従って避難して下さいませ」
 灯璃が逃げ遅れた人々を探す間に、ルカとガイと入れ替わりに篁臥の背に跨がったラムダが落ちついた機械音声で呼びかける。
 人々を安心させるために、女性型ホログラムを起動し自らの姿として偽装、そうしてパニックになる人々に呼びかけるその間に。
 ルカとガイが安全な避難ルートの礎を魔法で作り、更に白梟が焼却を食い止めるべくその双翼を羽ばたかせて火を鎮めていると。
「……サーマルカメラに反応あり。あの建物から多数の人が逃げ遅れた様です」
 この西地区で最も高いビルと其の周囲に野次馬の様に集まる人々の群をサーマルカメラで捉えた灯璃が警告する。
 同時に、JTRS-HMS:AN/PRC-188 LRP Radioを使用して、其方の救助活動に向かうことを、逐一ネリッサに報告していると。
「……灯璃さん」
 JTRS-HMS:AN/PRC-188 LRP Radioの無線機に、ネリッサからの通信が入った。
「局長。現状は先程、報告したとおりです。直ぐに人々を避難させる最適ルートの構築及び、彼等への速やかな伝達・案内をお願いします」
「了解です。現在、真宮さんの真紅の騎士団にも応援を要請し、藤崎産のいる避難所の規模を拡大しています。鳴上さんの式神を向かわせますので、其方の誘導に従う様にして下さい」
「Yes.マム」
 其のネリッサの言葉通り、灯璃の前に現れる冬木の式神。
 其の式神にルカとガイの支援を依頼し、子供達と避難民達を整然と灯璃が避難させる手筈を整えているその間に。
「さあー、今の内にお逃げ下さいね-」
 瓦礫と化して砕け落ちた建物の瓦から人々を守る様に義透が陰海月に海色の結界を張り巡らさせ、それらを受け止めた。
「ぷぎゅっ!」
 気合い一声、陰海月が編み上げた海色の結界が、避難民達を守るのに頷いて。
「さあ、皆さん。彼方の式神について避難して下さいねー。大丈夫ですよー。既に皆さんが安全に逃げられる道は確保しておりますのでー」
 と義透が陰海月に避難民達を守らせつつ、灯璃がサーマルカメラで捉えた野次馬と救助隊が集うビルの前に辿り着いた。
「ああ……ママ、ママ!」
「アンタァっ! アンタァっ!」
 金切り声を上げ、焼けるビルに向かって悲痛な声を上げる人々。
 冬季の黄巾力士水行軍達の10小隊が、そんな野次馬達を守る様に炎とビルの間に眼前として立ちはだかり。
 一斉に水球を放出して鎮火作業に従事している所に。
「灯璃殿、其方はお願いしますねー」
 そう、義透が呼びかけるとほぼ同時に。
「全機、目標(オブジェクト)に向けて一斉放射!」
 灯璃が再び号令を張り上げた。
 瞬間、ジェットタービン式放水消火装置を詰んだ無人戦車がビルへと放水を開始。
 外から見える火を一斉に鎮圧していくその間に。
「3.14159265359……突入だ」
 霧亥がπを淡々と詠唱しながら、人々の群を掻き分けて其のビルへと向かう。
 詠唱に応じて、其の手の中に生まれ落ちたのはドリルの様な矛。
 其の無敵の矛でビルの窓を掘り進み、ビル内の人々を救助するべく突入すると。
「お待ち下さいませ、亞東様。幾らあなた様と言えどたった1人では危険でございます」
 人々を批難していたラムダが気がつき、思わずそう声を上げるが。
「……ならばラムダ、亞東を気にするなら、君も一緒に来い」
 獣奏器を奏でて先日お菓子をあげた動物達の力も借りて、ルカとガイと共に、人々を避難させていた紅閻がそう提案し。
「畏まりました、白夜様」
 その紅閻に頷き、ラムダが女性型ホログラムで唸るサイレンの様に避難放送を繰り返しつつ篁臥の背に跨がる姿勢を正す。
 すると篁臥が唸りと共に、背の重さを物ともしない漆黒の風と化して、霧亥の後に続いてビルの中に飛び込んだ。
 ビルの前の野次馬達とある程度の一般人を避難させ、ほっ、と義透が微笑みと共に息をついた丁度其の時。
「馬県さん、サーマルカメラで逃げ遅れた人々が彼方の店に居る事を確認しました」
 人々の避難のために、装甲車の用意を始めた灯璃の言の葉に義透が頷いて。
「其方は私が任されましたよー。灯璃殿は、住人の完全な避難を優先して下さい-」
 そう背を押された灯璃が頷き、自らの装甲車M1248/JSXF(M-ATV)に取り付けたスピーカーをONにして未だ残っている人々に呼びかけた。
「皆さん、此処に居るのは危険です。どうか私達の言葉を聞いて、速やかにこの場から避難して下さい。私達は誰も死なせません、その為に此処に来た超弩級戦力です。逃げ遅れた方々も必ず私達の仲間が救出します。ですので、今は自分の命を第一に速やかに避難をして下さい」
 その呼びかけよりも寧ろ、装甲車が近付いていくる原始的な恐怖に気圧されたか。
 この大火事を其の目に焼き付けようとしていた避難民達が、灯璃の装甲車に追い立てられる様に逃げ出していく。
「と言う訳ですのでー、この中に入って下さいねー。大丈夫ですよー」
 その間に、灯璃が示した崩れ落ちそうな店舗に辿り着いた義透が陰海月と共に其処に突入。
 そうしながら、自らの手の中に捻れ双四角錐の透明結晶を召喚する。
「必ず皆さんは私と蛍嘉が助けますからねー。安心して下さいね-」
 そう勇気づける様に人々に声を掛けながら。
 傷つき、動けず、逃げ遅れた人々を透明結晶に触れさせる義透。
 そのまま透明結晶に吸い込まれた者達が見たのは、夕焼け空が続く広めの和室。
 そう……帝都の住民が無意識に安心出来る様な、そんな和室。
 その中に……。
「よしよし、よく来たね。此処は安全だからゆっくりとしてお行き」
 予め布団を敷き、丁寧に人々を迎え入れた蛍嘉がパニックになる人々を宥める様に言の葉を紡ぐと。
 紡がれた言葉と共に、涼やかな風が義透に半ば強制的に招き入れられた部屋の中に吹き荒れて、避難民達の傷を癒した。
「あっ、ああ……」
 安堵からか、その場にぺたんと尻餅をつく避難民達を見て。
「大丈夫だよ。此処なら安全だからね。必要なら敷いてある布団でゆっくり横になってくれても構わないからね」
 優しく、ゆったりとした口調でそう告げて。
 義透が避難させた人々を、1人、1人献身的に丁寧にケアをする蛍嘉。
 蛍嘉の其れに落ち着き、気を取り直した人もいるが。
「あっ、ああ……瓦礫が……私の子供が……」
 頭上から落ちてきた瓦礫で子供と離ればなれになってしまったのだろう。
 パニック状態になってまともに話せない女性等が居るのに気がつき、蛍嘉が傍に控えていた陽凪を呼ぶ。
「大丈夫。必ずキミの子供にもまた会えるからね。今は先ず、自分を大事にするのがキミのためでもあるんだ」
 そう穏やかに告げる間に、近付いた陽凪がふわふわと優しくそんな彼女の体を撫でる。
 そこから発せられる暖かな波動が、其の女の子供の事を思い起こさせたか。
「ああ、私の子……無事で、無事で良かった……」
 そう言って穏やかな表情で眠る女性を見て、フワフワと次の精神的な怪我人を探して浮遊する陽凪。
(「はぐれただけならば、生きている限り必ず会えるからね。そう言えば今、子供達は誰が集めているだろうね」)
 そう蛍嘉がふと、そんな事を考えた時。
「蛍嘉。聞こえますかー?」
 不意に、蛍嘉に義透が無線で連絡を取ったのに気がつき、蛍嘉が軽く目を瞬かせた。
「如何したんだい、義紘」
「すみませんねー、急に。実は先程、紅閻殿の聖霊達が保護した、親とはぐれた子供達が居るのですがー。其方に入れて上げられますかねー?」
 その義透の問いかけに、大丈夫だよ、と頷く蛍嘉。
「場所は未だ十分在るからね。子供達を入れてあげておくれ」
「分かりましたー。それでは今、其方に送りますねー」
 義紘のその言葉に乗っかる様に。
 ストン、とまるで空から落ちてきたかの様に姿を現した子供達に涼やかな風を優しく浴びせる蛍嘉。
 傷が癒え、子供達はキョトンとしていたが、その内の1人が。
「ママ……! ママー!」
 と、先程陽凪がゆっくりと養生するべく眠らせた母親と思しき女に気がついてパタパタと駆け寄っていく。
「大丈夫だよ。キミのママは今、少し寝ているだけだからね。目が覚めたら、またキミのことを抱きしめてくれるだろう」
 そう告げて励ます蛍嘉が、祈る様に顔を上げ。
「……皆、頼んだよ。この子達のためにも、誰も死なせず人々を助けておくれ」
 祈る様に呟く蛍嘉の其れが涼やかな風に巻き込まれて消えた。


 ――ドルルルルルルルルルルルッ!
「2653589……」
 淡々と霧亥の口から零れ出るπの数字。
 πを詠唱すればする程、ドリルは更なる回転力を増し、ビルの中を易々と突き進む事が出来る程の道を作り上げる。
 切り開かれたその道に、共に突入してきた黄巾力士水行軍10小隊の内、5小隊がこう金色の結界を展開。
 逃げ遅れた人々を見つけ、救助に成功した時、直ぐに逃がすことが出来る安全な通路として、霧亥が作り上げた道を耕していく。
「皆様、どうかわたくしめ達の声にお答え下さいませ! わたくしめ達は皆様を此処から逃がすための準備を万端にさせて頂いております。どうか、安心して声を上げて下さいませ!」
 霧亥の後を追って篁臥で飛び込んだ紅閻とラムダが、声を張り上げ生存者を探す。
 其の背後には5小隊の黄巾力士水行軍が付き従い、ビルを内側から焼く炎を消し止める作業に従事していた。
 と……此処で。
「……助けが来たのか!? 開けてくれ、開けてくれ! 出られなくないんだ!」
 ――ガン! ガン! ガガン!
 恐らく自動で降りたのであろう。
 断熱用のシャッターを必死に叩き、自分達の生存を伝えてくる音が聞こえてきた。
「……23846……むっ、其方か」
 ドリルで道を掘り進めていた霧亥が其れに気がつき、其方を振り向いたその時。
「イザーク、隔壁を食らえ」
 紅閻が低い声で自らのフォースイーターであるイザークにそう命じていた。
 カボチャ型の顔で、魔法使いの様なとんがり帽子を被ったイザークが、そんな紅閻の命令にケタケタ笑い、隔壁を食らう。
 ぽっかりとした空間になった隔壁痕の向こうに大勢の人々が見え、霧亥が直ぐに彼等に近付いて。
「怪我人は? 大丈夫か?」
 そう呼びかけた、正にその時。
 ――その避難民達のいたシェルターの天井が炎で割れた。
 土砂の様な瓦礫の山が人々に降り注ぎかけ、彼等が思わず悲鳴を上げた、其の時。
「篁臥!」
「モード・ツィタダレ起動。電磁防御フィールド、出力強化!」
 紅閻の叫びに篁臥が人々の頭上に飛び、同時にラムダが自らのシステムを起動。
 天井から降り注ぐ瓦礫と化したコンクリートの山から人々を守る様に高密度電磁防御フィールドを展開する。
「さあ、わたくしめが受け止めている間に亞東様、黄巾力士水行軍様、どうぞ宜しくお願い致します!」
 ラムダのそれに頷いた霧亥が先程ドリルでこじ開けた避難通路へと人々を誘う。
「動揺している者、怪我をしている者がいれば遠慮なく言ってくれ。それとこの薬を今は飲んでおくと良い。傷もそうだが、それ以上に精神的な気休めになる」
 そう告げて霧亥が舌下錠を大量に作り出し、避難民達に手渡すと、避難民達は霧亥に従い、大人しく其れを飲む。
 無論、怪我人の傷の度合いを検めたが、先ずは避難が先決と霧亥は判断。
 篁臥に跨がったラムダが後ろを守ってくれているその間に黄巾力士水行軍達の手助けも得て、次々に人々をビルから連れ出した。
「もう少しでございます……避難できる方は今すぐに避難をして下さいませ!」
 ミシミシと無敵の電磁防御フィールドが重量に耐えきれないのか嫌な音を立てる。
 だが、此処から逃げ出すことは人々の避難が完了するまでラムダには出来ない。
 ――否。
 自分が真っ先に、逃げることなどシステムにない。
 と……其の時。
「ふむ……朱雀、これ以上の焼却をおさえるのじゃ。青龍は火消しのブレスを」
 不意に涼やかな念話と共に、不死鳥の如く緋色の羽を羽ばたかせた朱雀が姿を現し、聖なる竜巻を巻き起こした。
 神の寵愛を受けた鳳凰の巻き起こした風が、焼却の勢いを緩め、其処に青龍が水のブレスを吐き出し鎮火作業。
 そうこうしているうちに……。
「ラムダ、避難完了だ。僕達も退くぞ」
「畏まりました白夜様。ともあれ瓦礫の山を防ぎ続ける為、わたくしめはもう暫く電磁フィールドを展開させたままにさせて頂きます」
 紅閻のそれに頷きつつも尚、電磁防御フィールドを維持するラムダに、軽く苦笑を零した紅閻が篁臥の背を叩くと。
 篁臥がラムダと自分を背中に乗せたまま霧亥達の後に続いてビルから飛び出した。
 どうにかこうにか助け出すことに成功した人々を霧亥やラムダと手分けして、避難場所へと誘導させながら。
(「瑠華、凱。上手くやれていると良いが……」)
 紅閻は、そう胸中で懸念の言葉を呟く。
 紅閻がルカとガイが任務を果たし、今は蛍嘉と共にいるのを知るのは、霧亥が黄色の煙を焚いて、義透を呼び寄せてからの事だった。


「局長。此方、救助チーム第3班、灯璃です。西側の人々の避難及び、救助活動完了致しました」
「了解です、灯璃さん。……此で、西側の住人達も避難も完了ですか。後は南側だけですね」
 上がってきた灯璃からの報告に指揮場で竜胆と共に総指揮を執っていたネリッサが思わず安堵の息を漏らす。
 けれども休む暇など無く、ネリッサは続けて姫桜達へと連絡を取った。
(「未だ報告が上がってきていないのは第4班……彩瑠さん達のいる南側。果たして大丈夫なのでしょうか?」)
 西側から狼煙の様に上がった黄色い煙を見た義透が避難民達の治療をしていると続けて報告を受けたネリッサが静かに頭を横に振り。
 霧亥に一足先に美雪のいる避難所に合流し、避難施設の人々の治療の手助けをする様に、と立て続けに依頼を出しながら。
 其のネリッサの指揮の声を、式神を通して聞いた冬季は、残りの黄巾力士水行軍11小隊33名の状況を確認しふむ、と頷く。
「どうやら空から見ている限り、南側も順調に作業が完了している様ですね」
 その情報を共有するべく、冬季は指揮場に向けて式神を放った。


 ――さて、その南側にいる姫桜達は。
「う~ん、延焼を止めるのなら爆弾が手っ取り早いんですけれど。生憎持ち合わせがないんですよね……」
 鋼鉄製の建築物の群を眺めながらしみじみと呟く瑠香。
 其の瑠香の大胆な発言に、これ以上火が広がるのを危険視ししつつ、ある種の違う不安を隠せぬ水仙の表情に戸惑いが浮かぶ。
「ええと……それ、本当にやって大丈夫なの?」
 水仙の言葉に、姫桜も軽く頭痛を堪える様な表情を見せて同意を示しつつ、南側ブロックの最奥部に走り込んでいた。
 全身に浴びた水でびしょ濡れの姫桜から水が滴り、服が透けて見えるかも知れないが、重ね着故にそれ程目立たないのは幸いか。
「……そうかい、ありがとう」
 不意に猫のぬいぐるみが暁音に近寄り、何かを訴えかけるかの様にニャァと鳴くのに暁音が小さく頷いている。
「か……可愛い、ファンシーなぬいぐるみ……じゃなくて。暁音さん、さっきのニャンコはなんて?」
 一瞬猫の愛らしさにポウ、と気を取られた姫桜が咳払いをして問いかけると、暁音が指し棒形態に星具シュテルシアを変形させて。
 奥の古びたマンションを思わせる建築物……火が上がっているへと其れを突きつけ。
「あそこに未だ人が残って居るみたいだ。急ごう。他にも誰か逃げ遅れた人が居ないかを探してくれているから、先ずは……」
「ええ、そうね。急ぐわよ!」
 暁音の説明を聞いてピュー、と飛び出していくびしょ濡れの姫桜。
「って、ちょっと姫ちゃん、姫ちゃん! 幾ら猟兵だからってあーゆー建物内に1人で入ろうとするのは危ないよ!」
 姫桜と先程一緒に水浸しになった葵桜が泡を食った表情で嘆きつつ、慌てて彼女の後を追っていく。
 その間にも建物からは逃げ出してきたが、パニックになっている人々が周囲に居るのを確認する暁音。
 共苦の痛みが、恐怖に震える彼等の感情を読み取ったかの様な凍えた氷柱に貫かれる様な痛みを与えてきた。
「皆、あの人達を避難所に案内してあげて。怪我人や動けない人が居たら、星の船に転送を」
 空中から、雨の様に星の様に煌めく水を降り注がせる星の船と其のスタッフ達。
 其方への転送をファンシーな人形達に依頼した暁音の指示に頷き、パニックになって怪我人が増えぬ様、避難活動に移る人形達。
 猫や鳥のぬいぐるみ達が、引き続き周囲の探索を行う間にも、マンションに飛び込んだ姫桜が辺りを見回している。
「何処にいるの! 居るなら返事をして! 私達超弩級戦力が助けに来たわ!」
「こっちだ……こっち。た、助けてくれ……動けないんだ!」
 悲鳴の様な声を聞き、はっ、とした表情になり、其方へと向かう姫桜と葵桜。
 顔を見合わせる間に、姫桜が二槍を抜いて薙ぎ払いと共に風を巻き起こして火の粉を払い、声のした方へ駆けていく。
 そこでは、瓦礫に足を挟まれて動けない男が涙声で助けを求めていた。
「此処は、私にお任せだよっ! 田中さん、力を貸して!」
 葵桜が素早く桜舞花を広げ、甲冑武者の戦士、田中さんを召喚。
 呼ばれた田中さんが自らの槍をてこの原理でつっかえ棒にして瓦礫の間に挟み込み、えいや、と槍を持ち上げる。
 瓦礫が四散し、涙声を上げていた男の酷い怪我の状態を見て、姫桜がうっ、と思わず口元を抑える。
 その姫桜と葵桜の脇を駆け抜ける様に男に近付いたのは、暁音の呼び出した音楽を奏でる犬のぬいぐるみ。
 其の犬のぬいぐるみが前足で器用に添え木をし、手早く応急処置をしていく様子に、男も姫桜も葵桜もぽかんと思わず口を開けた。
 けれども直ぐに我に返り、葵桜が慌てて男を抱えた時、限界が来たか炎で焼け落ちたがれきが山と化して降り注いだ。
「させないわよ!」
 葵桜と男を庇う様に前に出た姫桜が二槍を風車の様に回転させながらそれらをはたき落とし、続けて田中さんが槍を一閃。
 最後の瓦礫も吹き飛ばしこれ以上の被害がないのを確認すると、直ぐに暁音や瑠香の元へと戻ってくる。
「大丈夫。此の人は、後は俺が預かるよ」
 葵桜が運び出した男の状態を見て、暁音が頷き星の船へと転送。
 星の船のスタッフ達であれば、恐らく十分な治療してくれることだろう。
 それから次に現れた鳥のぬいぐるみが嘶き、暁音が向こうの複数階建ての店舗かと呟き、姫桜達を伴い其方に駆け出す。
 水仙は、その間に瑠香と共に近くの幻朧桜を血が滲む程にきつく唇を噛み締めて、叩き切り、これ以上火が広がらぬ様対応していた。
「よし、この辺りの対策は完了しましたね。私達も姫桜さん達に続きましょう」
「ええ……そうね」
 瑠香の呼びかけに、水仙が曖昧な表情で頷き、瑠香の後を追い走りだす。
 そんな水仙の方を振り返り、水仙さん、と瑠香が静かに呼びかけた。
「水仙さんが、私も含めてですが、姫桜さん達の様な超弩級戦力……猟兵達に思う所があるのは何となく分かります。私も、姫桜さん達が現れてからあなたと同様に自分の力量不足等を感じて、思う所がありますから」
「……瑠香殿」
 それは、胸中にこびり付いた痼りの様なもの。
 其れを口に出し吐き出す瑠香の其れに、水仙が軽く溜息を漏らす。
「ですがそれよりも死人を出さぬよう、人々を避難させるのが先決です。其れこそが私達が、帝都桜學府學徒兵として何よりも優先すべき事なのではありませんか?」
 その瑠香の確固たる意図の籠められた説得に。
「ええ……その通りね」
 水仙が短く首肯すると、瑠香が満足げに頷き、よし、と小さく息を漏らす。
「でが先ず、燃え移りそうな建物を片端から切り崩していきます。水仙さん、手伝って下さい! 人々の救助は姫桜さん、葵桜さん、暁音さんお願いします!」
 告げて周囲の建物を水仙と共に壊して回る瑠香の其れに、姫桜達が頷き、暁音が見当を付けていた建造物へと飛び込んだ。


「田中さん、其処の人達纏めて運んで! 姫ちゃん、姫ちゃん、1人で突っ走っちゃだめだからねっ!」
 めっ! と言う様に葵桜が田中さんに瓦礫を排除させ、纏めて人々を担ぎ上げさせるのに、やや不満げに頷く姫桜。
「わ、分かっているわよ……」
 其れは自分を気遣ってくれるが故の叱責なのだと理解はしているが、いや、しているからこそ、何となく気恥ずかしくなってしまう。
 照れながらも、猫のぬいぐるみが案内してくれた隙間に潜り込み、少ないながらも未だ逃げ遅れた人達を救出して搬送する。
 姫桜達が連れ出してきた人々を、自身の星具シュテルシアを担架形態にして運びながら、ふと、暁音が胸中を言葉にして漏らす。
「……世界には、本来在るべき姿などなく」
 ――世界の在り方は、今を生きるモノたちが作り上げていくものなのだと……。
 そう不老不死の命をあるモノに齎された少年は、思っている。
 ――でも……この破壊のみしかない行動は。
「……今のこの世界を壊してまで作る世界なんてものは、俺には認められないから」
 ――だから、救う。
 今を生きる人々を救い、助け、傷を癒し、時に導く。
 そうして南側の人々の救助活動を終えた暁音達の元に……。
「皆さん、状況は如何ですか?」
 ネリッサからの通信が水仙のスマートフォンに入り、其れを借りたままだった姫桜がスピーカーモードで其れに応える。
「大丈夫よ。取り敢えず水仙さんからも聞いているけれど、救った人達は、美雪さんが展開している避難所に運べば良いかしら?」
 彼女達の後ろでは、これでもかと言わんばかりに33人の黄巾力士水行軍達が水球をぶちまけ、最後の消火に奔走していた。
「そうですね、そうして下さい。それと……死者は?」
 その、ネリッサの問いかけに。
 姫桜が一瞬身を竦ませるが、胸を撫で下ろす様に深呼吸をしてから静かに告げた。
「大丈夫。幸いにも死者は出ていないわ。何とか皆、救出できたの」
「分かりました。では、今から鳴上さんの式神が、あなた達に最適な経路を案内してくれます。其の経路を使って避難民達を連れて引き上げをお願いします」
 其のネリッサの指示を受け。
 了解、と頷いた姫桜達は現れた冬季の式神の案内で、美雪と霧亥が避難民の治療と保護をしている避難所に人々と共に急行した。


「其方の怪我人は此方に! それから、あなた達はこれを飲んで落ち着くと良い」
 避難所として指定された場所に、備え付けられた一軒のログハウス型のチャーム。
 そこに暁音達が連れてきた人々を収容しながら、美雪がまさかなぁ……と言う様に溜息を漏らして、思わず目を眇める。
(「……避難所で手伝うつもりではあったが、まさか私のチャーム型ログハウスが避難所の中心施設になるとは……!」)
 美雪のチャーム型ログハウスの中に存在するのは、出張カフェ『スノウホワイト』
 巨大冷蔵庫完備のログハウス喫茶店であり、避難所というよりは休憩所というのが相応しいのだが……。
(「だが、あの巨大冷蔵庫の電源を切って、中を空にして救急用の毛布等を敷けば確かに臨時の安全な避難施設になる。しかもシェルターもかくやと言わんばかりの安全仕様……」)
 まあ、要するに需要と供給が一致した結果と割り切るしかないだろう。
 竜胆の指示としては的確で在る事は否めないが、何とも表現しがたい感情が胸に燻る気がするのは気のせいか。
 因みに類同のユーベルコードで和室を用意した義透は、最後の飛び火を警戒して、陰海月と共に周囲の哨戒任務に就いていた。
 その広めの和室の中では双子の妹の蛍嘉が手厚い看護をしている事はまあ、美雪のあずかり知らぬ所ではあるが。
 一方で、先程避難民を連れてきた暁音もまた、ぬいぐるみや人形達と共に、避難民達の怪我の手当に回ってくれていた。
 だからこそ、であろう。
 美雪が人々の手当や介抱を行いながら、ある事に想いを馳せる余裕が出来たのは。
 その内容は……。
(「今回の状況……。今までの流れのおさらい、だな」)
 ネリッサの夜鬼や、祥華が見つけた逢魔弾道弾の着弾地点。
 其処からは瘴気の様なモノが漂い、近付くだけでぞっとする様な恐怖心を煽られるという情報は、既に美雪の耳にも入っている。
 だからこそもう一度、状況を整理する必要があると美雪は己が思考を確認する。
 最も、それが出来るのも、霧亥達、救出班達が救助班としても今、協力してくれている御陰である点は感謝しても仕切れない。
 その霧亥は、先ず、自ずから用意した薬を人々に飲ませていた。
 それから手慣れた様子で人々の怪我を診察、重傷者は義透の用意した異空間に運び込ませると言う様に状況判断が的確だ。
 だからこそ、こんな余裕も何とか出来ている。
(「何せ、他の學徒兵達とネリッサさんと竜胆さんの指示とは言え、此までは此処を切り盛りする猟兵は私だけだったからな……」)
 その間の目の回る様な忙しさを思い出して、思わず込み上げた吐き気を呑み込んで、美雪はその思考を口に出し始めた。
「先ず切り裂きジャックが椿さんを殺害、次に妹桜が椿さんを切り裂くジャックと融合するという形で、反魂ナイフで黄泉還らせた」
 厳密に言えば、菖蒲が黄泉還らせたと言う事になるのだが、それは妹桜に利用されただけなので、その点は除外。
 必然、真犯人である妹桜……嘗て転生させた姉桜の双子の妹にして影朧に焦点を当てて思考を続ける。
「椿さんの黄泉還りについては水仙さんに伝えられ、紫陽花さんの死を経験していた水仙さんは、黄泉還りに一縷の望みを託して白紅党員を煽動して決起」
 其の決起を解決するために、多くの帝都桜學府生達が動員され、結果として大きく帝都桜學府全体の力が削がれた。
 そこに放たれたのが、逢魔弾道弾。
 つまるところ……。
「……水仙さんの決起ですら、黒幕にとってはスケープゴートに過ぎなかったと言う訳だ。しかし……そうすると今回の計画、椿さん殺害の段階から綿密に練られすぎているな……」
 最初にこの作戦に介入した時、ネリッサはこの事件を戦争に例えた。
 あの例えはUDCアースの歴史と照らし合わせても、言い得て妙だと美雪は思う。
「それにしても綿密で、用意周到にも程がある……一体誰が……否、『何』が裏で糸を引いている?」
 そう……結局其れなのだ。
 この事件を起こしている元凶は影朧。
 その影朧達の上位とでも言うべき存在が、今、確かに存在している。
 それも、幻朧戦線をも巻き込んでだ。
 思考を続けつつ、美雪は、竜胆へと連絡を取った。
「竜胆さん、今、少しだけ大丈夫か?」
 其の美雪の呼びかけに。
「ネリッサさんの指揮もありますし、正念場は越えましたからね。如何致しましたか、美雪さん?」
 奇妙に落ち着いた口調で問い返す竜胆に、美雪が先日、と竜胆に話しかけた。
「あなたが直接例の現場に赴いたと白蘭さんから聞いているのだが……何か把握できたことがあったか?」
「……その事ですか。厳密に言えば直接赴いたのではなく、あの地域の状況について綿密な調査をしていたのですが……」
 告げる竜胆の口調が、微かに濁る。
 其の濁りに引っ掛かりを覚え、竜胆さんと、美雪が再度呼びかけた。
「何かがあったんだな? ……正直あまり考えたくない可能性が今、私の脳裏に思い浮かんでいるのだが……」
 その美雪の有無を言わせぬ口調で放たれた追撃に。
「そうですね。分かったというか、やはりと言うべきでしょうか。以前話をした天秤、と言う言葉は伊達では無いと言う推測……仮説を立てることが出来ました」
「仮説……だと?」
 思わぬ竜胆からの返答に、流石に唖然としつつ、美雪が素っ頓狂な声を上げると。
 竜胆がはい、とそれに頷きそれから、ゆっくりと歌う様に言の葉を紡ぎ続けた。
「元々、光と影は表裏一体。その光と影のバランスを取るべく暗躍する者達……嘗てあなた達が転生させたあれと同種の存在は、他にもいる、と言う仮説です」
「では、何か? 竜胆さん、あなたは嘗て私達が転生させたあの闇の天秤の力を持つと名乗っていた何かが再びこの世界に現れた、とそう言いたいのか……?!」
 思わず意気込んで問いかける美雪に、竜胆が未だ、と軽く頭を横に振った。
「まだ、完全に其の全容を私も把握している訳ではありません。ですが、恐らくこの逢魔弾道弾に使われた影朧達にも、それに連なる事情が隠されている可能性が極めて高いでしょう。ネリッサさんや祥華さんの報告も、其の可能性を高めております。ネリッサさんの夜鬼や、祥華さん、そして祥華さんの白桜、紅桜が感じ取ったという其れは恐らく……」
「……恐怖や憎悪……人の心の闇である可能性か」
 呻くような美雪の其れに、はい、と竜胆が静かに頷いた。
「美雪さん。恐らく今回、逢魔弾道弾の贄として捧げられた存在は、今まであなた達が出会ってきた者達の誰かではないかと私は睨んでいます。ですので、この後逢魔弾道弾の核となった影朧に接触した時、その者から何か情報を掴み取れれば……」
「……此の裏に潜む『何か』に近づける可能性がぐっと上がる、か……」
 其の相手には、嫌な予感しかしないけれども。
 ざわつく肌の震えを抑えながら告げる美雪にそうですね、と竜胆が頷き。
「はい、その通りです。その点は心得ておいて下さい、美雪さん、皆さん」
 そう竜胆に告げられた美雪は、思わず生唾を呑み込んだ。


 ――そして、それから少しして。
「……よし、此で完全にこっちの鎮火も完了したな。よくやったぜ、フォルカロル」
 未だ残っていた火事の残り火を、フォルカロルの激流で押し流した陽太が漸く、完全に鎮火した其れを見てほっと息をつく。
「ふう……何とかなりましたね、お疲れ様です、陽太さん」
 自分の担当地区の人々を避難所に預けた後、残り火の消火活動に参加していたウィリアムがそんな陽太に労いの言葉を掛け。
「陽太さん! 皆さん! 無事で良かったです。何よりも……帝都の人々を守り切れて、本当に……良かった……!」
 氷の精霊達の力を借りて、ウィリアムと陽太を援護していた桜花が笑みを浮かべて涙ぐみ、心底嬉しそうな声を上げた。
 其の瞳に湛えられたその涙は、最初にじわりと滲んだものとは、全く別のものだ。
「皆さん、お疲れ様です。此で人々の避難と鎮火は完了しましたね」
 装甲車M1248/JSXF(M-ATV)から降りて、灯璃が桜花達に敬礼する。
「分身達ともう一回りしてきたが……取り残された人はいなかった。取り敢えず最悪の悲劇は回避できたとみて良いだろう」
 10人の分身を戻し、敬輔が灯璃達に近付きそっと安堵の息を吐きつつ報告すると。
「雨男も、偶には役に立つものだな。焼け石に水だったかも知れないが、何もしなかったよりはマシと言う結果で良かった」
「全く、妾の力も借りておったというでありんすに……ネコ吉、其の可愛い眉間に皺を寄せるのは、辞めた方が良いのではありんすかえ?」
 軽く頭を横に振りながら姿を現したネコ吉にカラコロと鈴の鳴る様な笑い声を向けながら祥華がからかう様にそう告げると。
「……いや、俺の眉間の皺はいつもの事だ。別に如何だって良いだろう?」
 ネコ吉がそう言ってそっぽを向くのに統哉が苦笑して軽く肩を竦めて見せた。
「経緯はどうあれ、人々を救い出してこそヒーローってやつだ」
 と、此処で。
 ふと生真面目な表情になった統哉が隣で微苦笑を零していた雅人の方を見やる。
「雅人。そう言えば此処が狙われた理由は分かるか?」
 その、統哉の問いかけに。
 雅人が腕を組んで考え込む様な表情を見せ、恐らく、と軽く溜息をついた。
「此処が帝都の中でも、かなりの人が住んでいる居住区の1つだったから、と言う可能性は否定できない、かな。……逢魔弾道弾に影朧が使われているという噂が本当なら、その原料となった影朧の感情に影響される可能性もあるだろうし」
「まあ、確証があるって訳でもなさそうだね。でも、段々規模が大きくなってきている。……早く黒幕の尻尾を掴みたいところなんだが……」
 その雅人の応えに呻く様にそう返したのは、真紅の騎士団達と共に、哨戒に就いていた響。
 奏は避難施設の警備に、瞬には、念のために一度休息を取らせていた。
「そうだね。だから、もし必要ならば僕にも声を掛けて欲しい。竜胆さんには許可を取った。僕は必要であれば同行できる筈だからね」
 そう告げる雅人の其れに響が分かったと軽く首肯を返したところで。
「空中からも俯瞰し、全景を把握しましたが……もう、火の手が上がっているところはありませんでした。火災の鎮圧は無事にこなせましたね」
 雅人の傍に着陸した冬季が報告すると、そうですね、と瑠香が頷いた。
「となると、後はカミサマとネリッサが気にしていた逢魔弾道弾の着弾点に行くしか無いと言う事だな」
「そうでございますね、白夜様」
 篁臥に跨がり戦場を一蹴して戻ってきた紅閻の呼びかけに同意する様に同乗していたラムダが同意を示す。
「一体、逢魔弾道弾の着弾点に何があるのかしらね。気になるわ」
「そうだね、姫ちゃん! でも、其れを何とか出来るのは私達だけだから!」
 其処に避難民達の護衛も兼ねて周囲の偵察に出ていた姫桜と葵桜が姿を現し、そう口を挟んだのに、敬輔達が頷いたところで。
「皆さん、帝都内の戦争……大火事という事態の収拾は完了しました。続けて第2フェイズ……逢魔弾道弾のグラウンド・ゼロへ向かいます。準備は宜しいですか?」
 ネリッサから確認の通信が入ったところで。
「Yes.マム」
「ああ……了解だ」
 灯璃と陽太が其々に頷いたのを確認し、猟兵達は逢魔弾道弾の着弾点へと速やかに移動を開始した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『夢散り・夢見草の娘』

POW   :    私達ハ幸せモ夢モ破れサッタ…!
【レベル×1の失意や無念の中、死した娘】の霊を召喚する。これは【己の運命を嘆き悲しむ叫び声】や【生前の覚えた呪詛属性の踊りや歌や特技等】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    私ハ憐れナンカジャナイ…!
【自身への哀れみ】を向けた対象に、【変色し散り尽くした呪詛を纏った桜の花びら】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ミテ…私ノ踊りヲ…ミテ…!
【黒く尖った呪詛の足で繰り出す踊り】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:前田国破

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――逢魔弾道弾、グラウンド・ゼロ。
 周囲の幻朧桜を爆発と共に焼き払い、桜都にして帝都の一角たるこの場所に、大いなる禍を齎した始まりの地に。
 ――彼女達は、確かにいた。
『如何して私達は、焼き尽くされなければいけないの?』
『何故皆の魂を救済してきた私達が、この様な仕打ちを受けなければいけないの?』
 逢魔弾道弾の着弾点から、呻きながら現れた少女達。
 頭部から2本の桜の枝を生やした彼女達が、悲哀に満ちた金切り声を上げている。
『何故、私達が人並みの幸せを求めてはいけないの? 何故、只、見ていた夢と幸せの為にしてきた努力を、否定されなくてはいけないの?』
 ――其れは、少女達の心から放たれる魂の叫び。
 現れた少女達……嘗ては桜の精として人々の魂を救済し、悲運の果てに死んでいった彼女達のその声に。
「それは……それは……!」
 猟兵達よりも、僅かに早く。
 その場に足を踏み入れていた紫髪の頭部から桜の枝を生やし、その胸に一枚の羽根を差した少女は返答に窮していた。
(「この娘、達は……」)
 ――人々の理不尽で世界から阻害され、打ち捨てられた、紫蘭の嘗ての同胞達だ。
 同時に其れは、何時か、自分もまた、彼女達と同じになってしまうかも知れないと言う不安を、その少女に与えていた。
 ――紫髪のその少女……桜の精である、紫蘭へと。
 紫蘭は、声もなく現れた影朧と化した少女達を見つめている。
 彼女達に反論する術が思い浮かばぬままに……じゃあ、と紫蘭は1つだけ、彼女達に問いかけた。
「貴女達は、世界に一体、何を望むの? 今を生きる人々に、何を求めるの?」
 その紫蘭の言の葉に。
『私達は、『代償』を求めるわ。私達に魂の転生という重大な役割を与え、その上で私達から夢を、希望を奪った人々に。……そんな理不尽で狂った世界を変える事の出来る、『革命』と言う名の代償を』
 迷いなく言い切る彼女達の其れに、紫蘭は何も言い返さずに、戦闘態勢を取る。
 其の、今正に始まろうとしている1つの『闘争』に、猟兵達が介入する。
 ――其々の想いを、胸に秘めて。

 第2章は下記ルールとなります。
 1.紫蘭が戦場にいます。彼女の扱いは下記となります。
 a.この戦場から、紫蘭が撤退することはありません。
 b.猟兵達には信頼を置いていますので、その指示には従います。
 c.もし猟兵達のフォローがない場合、紫蘭は戦死します。
 d.紫蘭との会話は可能です。
 e.紫蘭は2つのユーベルコヲドを所持しています。
 所持UC:桜の癒し&桜花の舞(データは、鈴蘭の舞相当)
 猟兵達から指示が無い限り、活性化UCは桜花の舞となります。
 2.猟兵達が望めば、雅人が同行してくれます。雅人の扱いは下記となります。
 a.この戦場から撤退しません。
 b.猟兵達の指示には従います。
 c.自己防衛が出来るので、この章中で死亡することはありません。
 d.2つのユーベルコヲドを所持しています。
 所持UC:強制改心刀&剣刃一閃。
 特に指示が無い限り、剣刃一閃が活性化UCになります。
 e.雅人が同行している場合、紫蘭の護衛の難易度が下がる可能性があります。
 f.雅人の同行を希望する方は、『雅人同行』と、プレイング冒頭にご記入下さい。
 3.紫蘭、雅人の生存・参加の有無により、第3章の状況が変わります。
 4.影朧と化した対峙している桜の精達は理性を保持しているので、戦闘は避けられませんが、会話自体は可能です。

 ――それでは、最善の結末を。
ウィリアム・バークリー
人の世は不条理に満ちています。あなた方は特に運が悪かっただけで、誰でもそうなる可能性を持っています。
誰かが誰かを使い潰すなんて当たり前で、そんなことにいちいち構っていられるほど、人の世は呑気じゃありません。
あなた方は既に人を害するモノ。傷つく人が出る前に討滅します。
ええ、ぼくは同情なんてしていません。そんなことを考えたら戦えなくなってしまうから。

「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」でIce Blast。
地表から生える氷の槍が、彼女たちを「串刺し」にします。
あとは逃げられない彼女たちの急所を『スプラッシュ』で突き刺して、終わりにしてあげましょう。

あなた方も輪廻の輪に帰る時ですよ。
紫蘭さん!


白夜・紅閻
――!?
篁臥!先に行け!!
白梟は篁臥をフォローするんだ

紫蘭、怪我は無いか!?
(いや)それより…何故君が居るんだ?

…流石は桜の精ってことなのか?(ぼそり、と呟いて)
(すべては紫苑から始まり、そして紫蘭を巻き込んでの…この騒動。やはり…アレが係わっているのか? いや、憶測で言っても仕方がないな…違うかもしれないし)

そして、アレが件の?
(自分たちが対峙する際には、白梟は俺たちのフォローを。援護射撃・乱れ撃ち・衝撃波等
篁臥は紫蘭の護衛(かばう・威嚇射撃等)兼…可能なら紫蘭を背に乗せて)

まずはPDで動きを封じてみる
あとはイザークをぶっ放し、レーヴァテインで斬りつける




(それとこっそり…動物たちに周囲を探索してもらい怪しいと思う場所や何かを調べさせる。もしかしたら黒幕が居るかもしれないから…)


アドリブ連携、技能等はお任せします


吉柳・祥華
むっ。
アレは…紫蘭、じゃと!?
なんぞ、あやつが…此処に居るなんしかぇ

(考えるのはあと。浮遊+ダッシュで紫蘭とのその間に…もしくは紫蘭を抱えて一寸上空へ。皆が来たらそちらに任せる

紫蘭よ無事かえ?
(…なんと濃い瘴気なのじゃ。コレが“正体”なのかえ…?いや、違うのう…

紫蘭、あの子らは何と謂うておったのじゃ?

(この『革命』の先にあるのは…闇しかあるまい。この世界に限ってはのう
成功したとしても…決して報われはすまい
妾たち猟兵が係わっておらんくてもな…
まぁ…妾の勝手な推測じゃがのう)

帝都の火は全て鎮火しておる、あとはぬしらを鎮めるだけじゃ
ぬしらの無念に、慰めもせねば同情もせぬ

『代償』を望んだところで、決してぬしらの心は晴れはせぬ
むしろその悲しみ苦しみが増すだけじゃ

戦闘
護鬼丸と冥風雪華は紫蘭と雅人を守るのじゃ

霊符で敵を周囲に結界術じゃ一種の行動阻害じゃな
そこへ風華月を投擲し捕縛し、破魔と浄化を籠めたPDで彼女等を覆う瘴気を払う

アドリブ連携お任せ


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で連携

確かに人々のため戦ったんでしょう…ですが、その代償に他人の血を求めた時点で狂ったのは貴方々であり、同情など出来ませんよ?

言いつつ、指定UCで精密誘導型のレイジードッグクラスター爆弾を搭載した爆撃機を召喚。護衛が着く前に紫蘭さんが包囲されないよう、グラウンド0から紫蘭さんに向け進む敵集団へ連続投下。味方が近い事を考慮し、爆炎のない無数の運動エネルギー弾を降らせ突撃を破砕し、仲間の防御態勢構築を支援する(誘導弾・制圧射撃)

防御線が安定してきたら、味方と連携し通常精密誘導爆弾と狙撃(スナイパー)で霊召喚により戦力増強させてる個体狙いで本体を優先排除し戦います



※アドリブ・絡み歓迎


亞東・霧亥
【SIRD】と協力
『雅人同行』

紫蘭は常に死地に身を置く。
実は死に急いでいるのかと疑いたくなる程に。
そんな事を考えながら、雅人を連れて紫蘭の元に駆け付ける。

【UC】
繋げた相手の感情を糸で共有し、相手に返す。
目を背けたい気持ちは解るし、死んだ方がマシな傷でも死ねないのは生き地獄だが、それでも死なない事への代償は必要だ。

雅人とは紫蘭を挟んで背中合わせになる。
「面倒だ、噛み砕け。」
『毒使い』『薬品調合』『早業』『ドーピング』で身体強化を優先した錠剤を数種類、雅人に渡す。
傷は紫蘭に癒やしてもらう。
『残像』で攻撃を往なし『暗殺』術で致命を狙う。

「とりあえず生きてりゃ何とかなる。君は楽には死なせない。」


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動

己が不幸を呪い、それだけでなく、何も罪もない他人を巻き込む…確かにその不幸には同情しますが、それを理由に他者を害するのは、お門違いですね。その思想は、私の世界のテロ組織と大差ありません。

紫蘭さん達の護衛は他の方々に任せ、私は敵の殲滅に注力しましょう。
G19C Gen.5で応射しつつ、意図的に皆と離れて一定の距離を保ち、孤立したと見せかけて敵を集め、タイミングを見計らってUCを発動。流石に、味方を巻き込む訳にはいきませんからね。

現実とは、理不尽なものです。しかし、あなた方の革命とやらで世界を変えても、その理不尽さから逃れる事は、恐らく不可能でしょう。

アドリブ歓迎


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎

ははぁ、革命、革命…アーカイブ検索中…検索完了。権力体制や組織構造の抜本的な社会変革が短期間で行われる事。成程成程。
しかし…(周囲の惨状を見渡し)…ここまでの有様を見ますと、変革どころか、何もかも破壊してしまうだけの様な気が致しますが?とてもの事、民衆の皆様方の事はまるっきり考慮してないとしか思えませんねぇ。

UCを使い、紫蘭様と雅人様をお守りします。
(紫蘭様達の方にメインカメラを向け)紫蘭様、お久しぶりでございます。雅人様は…これが初めましてになるでしょうか?自己紹介させて頂くのが礼儀ですが、生憎今はそれどころではないので、改めてまた後程。


天星・暁音
まあ少しばかり気の毒というのなくはないけれど…
理不尽な事など幾らでもあり、結果、命を落とすことも戦場に出るなら、理不尽は当たり前のことなんだよ
生きる者に代償をか…残念だけど憎しみだけに縋り全てに理不尽を齎すのなら速やかに眠ってもらうしかないよ
君たちの痛みはちゃんと覚えておくけどね

…紫蘭さん、俺は戦う事について幾つか言ってきた
彼女らを見て少しは実感もできたでしょう
だから、この先も戦場に立つつもりがあるのなら、少し考えてみる事を進めるよ


結界で空に陣取り戦場を見渡しながら結界で紫蘭の護衛と結界の斬撃による攻撃を両立させつつ。
必要があれば紫蘭を庇います
護衛優先
スキルUCアイテムご自由に
アドリブ共闘歓迎


御園・桜花
紫蘭の横に立ち
「貴女達が奪われたと言う夢と願いは何です?此処で焼かれて奪われたと?其れとも…転生という役割を果たす為に奪われたと?」

「私が幻朧桜になれずに死んだら、人を転生させる事を望み人を殺しまくる影朧となるでしょう。生者の願いは死を通して歪みます。此の場が焼き払われたのはある意味事故ですが。其れでも望みが代償しかないのなら。生前から貴女達の望みは其れしかなかったのでしょう。ならば次は、殺人鬼に転生すれば宜しい」
UC「侵食・幻朧桜」で概念ダメージ

「動けぬ植物の生存戦略は、元々共存か殲滅しか有りません。人の貴女は、退き時を間違えませんよう…紫蘭さん」
紫蘭への攻撃は第六感で盾受けし絶対死なせない


真宮・響
【真宮家】で参加

このサクラミラージュでは理不尽な目に遭っている人が多い。影朧にしろ、普通の人々にしろ。この世界には縁が深いが、嫌という程悲しい境遇を多く見てきた。

つまりこういう事だ。目の前の影朧のお嬢さん達以外にも理不尽な目に遭った人は多くいる。自分達だけ被害者面したって無駄ってことだ。

影朧の集団をなんとかしないと、紫蘭に被害が及ぶね。即刻数を減らそう。【忍び足】【目立たない】で敵集団の背後をとり、零距離でいきなりフォックスファイアをぶつける。敵の攻撃は【オーラ防御】【残像】【見切り】でかわす。

全く、酷い歌だね。歌い手として呪詛の歌は認める訳にはいかないからね。即刻黙って貰うよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

この影朧の娘さん達も辛い目にあったんですね。でも厳しい事を言いますが、理不尽な目に遭ったのはこの方達だけではありません。私達家族はこのサクラミラージュに縁が深いですが、理不尽な目に遭った例を多く見て来ました。

大体、今回の火災も住民も理不尽に命の危機にさらされていますよね?貴女たちだけではありません。

早く数を減らさないと紫蘭さんに被害が及びますね。数を即急に減らしましょう。トリニティ・エンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【受け流し】【ジャストガード】【拠点防御】でがっちり攻撃を受け止めながら、【衝撃波】や【怪力】を併せた【シールドバッシュ】で攻撃します。


ミハイル・グレヴィッチ
SIRDの面々と共に行動
アドリブ・他者との絡み歓迎

(焼け落ちた市街の光景を見渡しながら)やれやれ、こういう光景は戦場で嫌という程見せられたが・・・随分とハデにやってくれたモンだぜ。
やられたら5倍にしてやり返す、ってのが俺の流儀だ。この借りは、熨斗付けてタップリ返してやらぁ。

見渡しが効く狙撃ポイントに占位して、そこからUCを使用しての狙撃を展開し、敵を攻撃。特に、紫蘭や雅人に接近する敵を優先的に狙撃して間接的に援護を行う。

自分が酷い目にあったからって、他の人間も同じ目にあわせよう、ってか?ふん、革命が聞いて呆れる。手前らのやっている事は、世の中が気に食わないからってテロに走る連中と大差ないぜ。


神城・瞬
【真宮家】で参加

なるほど、革命で世の中の変革を願う程、理不尽な目に遭ったと。でも理不尽な目に遭ったのは貴女達だけではありませんよ?僕達家族はサクラミラージュで多くの理不尽な目に悲しむ例を見て来ました。

そして貴女達の求める革命が犠牲を伴うものなら、それを否定しなければなりません。

早く数を減らさなければ紫蘭さんに被害がおよびますね・・・【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を併せた【結界術】を【範囲攻撃】化して敵集団に展開。【追撃】で【高速詠唱】を併せた月下美人の嵐で攻撃しましょう。闇に染まった桜の精を、月下美人にて葬送しましょう。

敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。


クラウン・アンダーウッド
【アドリブ連携何でも有り】
何とか搬送された緊急性の高い重症者の治療だけでも終わらせて来てみれば、随分と酷い現場だねぇ。

可愛らしいお嬢さん方、自身の不幸を嘆くのは大いに結構だよ。だけど相手に不幸を強要するのは如何なものかな。後、世界は貴女方が生きていた以前から理不尽で狂っているよ。所詮はものの見方が変わっただけさ。井の中の蛙大海を知らずってね♪

人形楽団を展開し戦場(舞台)で演奏による演出を行い、10体のからくり人形と共にお辞儀を一つ笑顔で一言、Shall we dance?相手を挑発してヘイトを此方に向けさせる。

自身やからくり人形、果ては他の仲間や相手にも業火を纏わせて呪詛を浄化して心身を癒す。


鳴上・冬季
「本来は哀れんで差し上げないとまずいのでしょうが。元桜の精がこれかと思うと」
嗤う

「良かったですね。影朧は転生できる。そんな心根の貴女達が、次もまた桜の精に転生できることは決してないでしょうから」
嗤う

「蹂躙せよ、黄巾力士」
護衛の黄巾力士を40m級まで巨大化させ敵を無差別攻撃でぐしゃぐしゃと叩き潰す
自分は竜脈使い黄巾力士の攻撃力底上げ
合間に雷公鞭振るい雷撃も
敵の攻撃は仙術+功夫で縮地して避ける

今回も自分が猟兵や仙であることは隠しカヴァー優先
「大陸にいる仙人は、普段不老不死である代わりに心が老いれば死ぬそうです。願いや望みを諦めるなど死したも同じ。同じく彼女達も、早く黄泉路を辿るが幸せでしょう」
嗤う


馬県・義透
雅人同行
『疾き者』のまま
武器:漆黒風

SIRD、それに他猟兵との連携を綿密にしましてー。
妹はしばらく、救護に回ってますのでー、私だけで。
もしかして紫蘭殿、何かに呼ばれてたりしません?たしか、光側なのでしょう?

即座にUC使いましてー。
『革命』が起こったら、ますます貴女がたみたいな存在が生まれそうですけどねー?
呪詛は気にしませんよ?私だって悪霊ですからねー?耐性ありますしー。
くらった分、強くなるが四悪霊という存在なればー。
攻撃は漆黒風を投擲ですねー。間に合いそうになかったら、内部三人の操る四天霊障での押し潰しがいくのですがー。


陰海月、今度は紫蘭さん護衛に回ってる。海色結界継続、ぷきゅっ!


文月・統哉
雅人同行希望
紫蘭の護衛を頼みたい

仲間と連携
二人を庇うべくオーラ防御展開
攻撃見切り、回避や武器受けしながら
宵を手に応戦、少女達を説得する

人々の理不尽で世界から阻害された桜の精
紫蘭と出会った時の事を思い出す

そうだね、世界はいつだって不完全だ
人の心は弱く脆くて、理不尽に人を傷付ける

でも恨みのままに傷つけ合ってしまったら
連鎖した悲しみはいつまでも続いてしまう
君達の謳う革命の先に
君達が求めた筈の輝く夢はあるのかい?

桜の精の力はやっぱり希望の光なのだと俺は思う
悲しみに染まった重荷を降ろし
未来へと歩んで行く為の

沢山の魂を救ってくれてありがとう
今度は君達の番だ
新しい生で、今度こそ夢を叶える為に
俺は君達の転生を心から願うよ

祈りの刃使用
可能なら雅人にも強制改心刀を
紫蘭に桜の癒しを頼む

闇の天秤
闇であるジャックが椿さんや紫蘭を狙ったのは
二人の光が欲しかったから
桜の精として懸命に生きた彼女達もまた光なら
逢魔弾道弾の核は恐らく、光を持たぬ闇の者
自ら天秤となる為に、彼女達を集める必要があったと
そう言う事かい、花蘇芳?


文月・ネコ吉
雅人や紫蘭に危険あれば庇いつつ
引き続き仲間と連携して戦おう

統哉と共にオーラ防御展開
少女達の攻撃を些細な動きから見切って回避
体の小ささを生かして死角に入り
咎力封じで攻撃力を削いでいく
可能ならユーベルコードも封じたい

人の多い居住区を狙った
逢魔弾道弾による影朧の大量発生
人の営みが多くあればこそ
無念に散った桜の精もこれだけ多くいたのだろうな
『革命』と言う名の代償を謳うのは
こいつらを呼び寄せている核となった影朧の影響か

夢を見て夢に散った少女達
それはどんな夢だったのだろう
聞かせてくれないか
お前達の事を、お前達の夢を

救われて欲しいと願えばこそ
彼女達の悲しみを知る事もまた
大事なのだろうと思う故に

※アドリブ歓迎


藤崎・美雪
【WIZ】
雅人さん同行希望
アドリブ連携大歓迎

いつも通り、「歌唱、優しさ、鼓舞」+指定UCでオーロラ風を吹かせ
皆の回復を行いつつ行動回数を増やしてみよう
雅人さんには紫蘭さんの護衛を頼みたい

彼女たちの訴えを聞く限り
この世界では桜の精やユーベルコヲド使いが虐げられた過去があったのだろうか?
人智を超える力は、時に邪神や悪魔の使いとみなされるもの
帝都桜學府の設立前にそのような過去が全くなかったとは断言できないだろう
そのあたり、余裕があれば雅人さんや竜胆さんにお伺いしたいが
…この状況で聞くのは浅慮だろうか

彼女たちは人々に夢や希望を奪われたと主張しているが
影朧となった彼女たちもまた、人々の夢や希望を奪っている
奪い合いの連鎖が発生しているのだよ
たとえ革命を求めても、世界を変えるためと嘯いても
奪い合いの連鎖は決して世界を変えられない
際限ない力の増強を招き…世界の破滅に繋がるだけ

紫蘭さん
納得できればで構わないので
桜の癒しで彼女たちの転生を

…さて
逢魔弾道弾の核たる影朧とは如何に?
…嫌な予感しかしないけどなぁ


彩瑠・姫桜
紫蘭さんの護衛に専念
余力があれば攻撃

あお(f06218)や他の仲間と連携は常に意識

真の姿(姿変わらず)解放
[かばう、武器受け]を駆使して
可能な限り少女達の攻撃が紫蘭さんに通らないようにするわ

その上でUC発動させ
できる限り少女達を感電させてその動きを止めることを試みるわね

最終的には紫蘭さんに少女達を転生させて欲しいから
そのまま消滅させるのは避けながら
少女達の行動制限させ体力を削ぐことを意識するわ

>少女達
自分達の夢や努力を踏みにじった世界に『革命』を起こしたいという気持ちも、わからなくはないわ

でも、他の人々の命や幸せを壊しつくすことが貴女達が望む『革命』なのかしら
違うでしょう?
貴女達が本当に求める幸せは、『革命』そのものじゃないでしょう?
その先にある、自ら作り出すものなんでしょう?

なら、いい加減、目を覚ましなさいよ
確かに世界は理不尽よ
それでもここにはまだとれる選択肢が用意されているんだから

嘆いて影朧になってる暇なんかあったら
さっさと転生して幸せな未来を、笑顔を、今度こそ勝ち取ってみせなさいよ


榎木・葵桜
姫ちゃん(f04489)と一緒に紫蘭さんの護衛するね
護衛の手が足りてるなら
攻撃する少女達の相手に専念するよ

真の姿(姿変わらず)解放
うまくいくかはわかんないけど、少女達のユーベルコードを封じるために
【桜花捕縛】を[範囲攻撃]で展開を試みるね
あとは必要に応じて胡蝶楽刀での[なぎ払い、衝撃波]で攻撃
できるなら転生させたいから、それが望めるくらいのギリギリまで体力削ってくね

>少女達
歌や踊り、得意だったのかな?
私も歌とか踊り好きだよ

やりたいこと…他にもたくさんあったんだよね
わかるよ、私も女の子だもん
全部犠牲にして頑張って、でも世界に踏みにじられて
それが許せなくて
今、影朧として出てきちゃったんだよね

貴女達が『革命』を求める気持ちはわかったよ
でも、このままじゃまた利用されちゃうだけだよ
そんなの悔しいじゃない
少なくとも私は嫌だよ

私、ちゃんと覚えてるから
本当の意味で貴女達が望む、笑顔でいられる世界になるように頑張るから
もう一度、生まれ変わってこの世界に来てよ
だから、これ以上泣かないで
今はおやすみなさい


森宮・陽太
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…何だよ、これは
逢魔弾道弾の直撃を受けた幻朧桜と桜の精の魂が
不慮の死に見舞われて影朧になった、ってことだよな?
何れにせよ、彼女たちを逢魔が辻から出すわけにはいかねえぞ!

一見、呪詛による攻撃がメインに見えるが
実際は攻撃前に呪詛による自己強化を行うんだろう
だったらその強化、剥ぎ取らせてもらうぜ!

「高速詠唱」から指定UCでマルバス召喚
マルバスには常に「範囲攻撃、制圧射撃、破魔、浄化、優しさ」の黄水晶の雲を逢魔が辻全体に広げ維持するよう厳命
敵には徐々に呪詛属性という名の強化を剥ぎながら疫病を齎し
味方に黄水晶の雨を降らせて傷を癒すぜ

彼女たちに哀れみがねえとは言わねえ
突然どこからか降って来た逢魔弾道弾で焼かれ
想い半ばに命を散らした挙句影朧になるなんて
理不尽にも程があらぁ

だが、それでも理不尽を理不尽で返しちゃいけねえんだ
それじゃ負の連鎖を生み、誰も幸せにならねえ
夢や希望は遺さなきゃいけねえんだよ

紫蘭
彼女たちを転生させてやってくれ
彼女らに桜の精としての誇りを取り戻させるために


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…理不尽を理不尽で返した上
それを代償と、革命と嘯いて正当化するか
ならば俺は、容赦なく彼女らを斬る

死した娘の霊を召喚され戦力が爆増する可能性があるから
攻防双方に対応できる一手を打っておこう
指定UCで分身を10体召喚
分身1体は「かばう、武器受け、オーラ防御」で紫蘭の護衛に専念させよう
念のため、雅人にも護衛を1体つける
残り8体は俺や他猟兵と連携し「2回攻撃、なぎ払い」で彼女たちを集中攻撃
必要に応じて「闇に紛れる、不意討ち」で死角からも攻める
もし死した娘の霊が召喚された場合、分身に霊の撃破を優先させよう

彼女たちへの哀れみ?
そんなものは持ち合わせていない
例えどんな境遇にあろうとも
己が不幸を代償と称して他者に押し付けようとするならば
俺らは精一杯抵抗するだけだ

…本当は理解できなくもないから
理論武装して哀れみの感情を抱かないよう抵抗しているに過ぎないけど
下手な同情はできないしな

彼女たちを転生させるか否かは
紫蘭や他猟兵の判断にゆだねる
…本当に警戒せねばいけないのは、この後だから


寺内・美月
SIRD共同参加
アドリブ・連携歓迎
・特殊火器を用いて火力を発揚し、敵戦力の撃滅を企図する
・周囲の影響を考えて当初は砲は使わないものの
・ただし敵戦力が増加するなら砲も使用し最大火力を発揮する
・状況によっては『司霊』を用いて近接戦闘も検討
・あわせて『繊月』を用いて治療活動を行い、前衛の戦闘力維持に務める
・例によって花びらは打ち落とし、呪詛はイヤホンで防護する




 ――嘗ては美しかったが、今は見る影もない程に焼け落ちた市街の片隅で。
「……やれやれ、こういう光景は戦場で嫌と言う程見せられたが……」
 焼け落ちた幻朧桜に、偶々持ち合わせていたウォッカを賭け乍らミハイル・グレヴィッチが溜息を漏らす。
「……随分と派手にやってくれモンだぜ」
 その幻朧桜の間を通り抜けながらの、ミハイルの呟き。
 ガサリ、と誰かが焼け落ちた木々の痕の隙間で動いているのに気が付いて、そのサングラスの奥の茶色の瞳を一瞬鋭く細めるが。
「……ミハイル様」
 腰に帯びた、白鞘の蒼き宝玉を軽くなぞる様にしつつ現れた寺内・美月の姿になんだよ、とミハイルが軽く肩を竦めた。
「寺内。お前も来ていたのか」
「はい、私は……」
 その美月の言葉を聞いて。
「いやはや、いやはや、これからボクも現場に行くところだけれど……帝都全体も酷い事になっているねぇ」
 と道化師めいた口調で、焼け爛れて崩れ落ちた幻朧桜並木を見たクラウン・アンダーウッドが大仰に肩を竦めて見せた。
 クラウンの其れに、違えねぇ、と頷くミハイル。
「まっ……これだけ派手にやってくれたんだ。この借りは、熨斗付けてタップリと返してやらねぇとなぁ?」
 口元に肉食獣の笑みを浮かべるミハイルの其れに。
「ふふ……そうだねぇ。まあ、キミの言う通りだねぇ。相応の返礼は必要だねぇ?」
 何処か愉快気な様子を含んだクラウンがからかう様にぱちりと青き瞳でウインクを返した時。
「……局長から、現場への地図は転送されていますが……通信で連絡が取れなくなっていますね」
 その傍らで、特殊自動通信機を使ってSIRD局長、ネリッサ・ハーディに連絡を付けようとした美月の其れに。
「そうかい。そりゃ却って俺には好都合、かも知れねぇな」
 肩に背負っていたSV-98Mの調整を行いながら本気とも冗談ともつかない口調でミハイルが告げるのに。
「でも寺内さん、場所は分かっているんでしょう? だったら、後はボク達がそこに向かえばいいだけの事だよねぇ?」
 何処か面白そうにお道化るクラウンの上目遣いな確認に。
「ええ、そうですね。急ぎましょうミハイル様、クラウン様。目的地は、此方です」
 そう告げて。
 ネリッサより転送されてきた目的地へのGPSを起動させた美月の後に、ミハイルとクラウンは続いたのだった。


 ――轟!
「えっ……?」
 紫蘭と、影朧達の間に割り込む様に突如として奔る一条の漆黒の風。
 漆黒の風が横薙ぎにする様に娘達の1人を引き裂いた漆黒の獣……篁臥がグルルルルルと唸る。
 そこに呪詛を纏った黒く尖った足を回転させながら、ひらりとバレェの白鳥の様に舞い、上空から紫蘭を娘が貫こうとするが。
 遥か高みに飛び上がった娘を撃墜する様に白炎のブレスを白梟が放射し、その娘の顔を炙った。
「怪我はないか、紫蘭!?」
 それは後方から滑る様に走りながらの白夜・紅閻の呼びかけ。
 紫蘭が思わず後ろを振り返るその間に、別の娘がバンシーの如き叫びを上げる。
 ――その己が運命を嘆き悲しむ声が、ほぼ精神的、物理的な衝撃を伴って紫蘭に向かおうとした、刹那。
「そんな攻撃、通させないんだから!」
 その決意と共に。
 白梟の足に捕まって上空にいた娘が、紫蘭と音色の間に割り込む様に飛び込んだ。
(「うぐっ……! この嘆き、この悲しみ……!」)
 心の底から湧き上がってくる様なそれの直撃を受け両足を痺れさせる彩瑠・姫桜。
 その腕の桜鏡に嵌め込まれた玻璃色の鏡の鏡面がとてつもない衝撃に震え、激しく漣だっている。
「姫ちゃん! 1人で飛び込んで行っちゃ駄目だって、さっきも言ったよね!? 無茶は駄目だよ、もう!」
 叱咤する様な言葉と共に、娘たちに向かって桜が吹雪と化して吹きつけられる。
 桜吹雪と共に放たれた風が、正面から叩きつけられてきた声を風の流れる方向へ流して威力を弱めた。
 姫桜の隣に姿を現すは、左手に桜舞花を、右手に胡蝶楽刀を構えた榎木・葵桜。
 胡蝶楽刀の柄に取り付けられた神楽鈴をリン、リンと鳴らしながら、ゆったりとした優美な足取りで神楽を舞い、桜吹雪を放射。
(「しかし、其れより……何故紫蘭、君が此処に……?」)
 姫桜と葵桜、篁臥の後ろから紫蘭に駆け寄りながら、紅閻が内心思うその間に。
『邪魔をしないで。私達が幸せになる権利を奪ったあなた達が……!』
 呪詛の呻きの様に、地の底から響き渡る声を解き放ち、ヒラリ、ヒラリと飛鳥の様に舞う死した娘達。
 優美ではあるが、酷く人を惑わせる蠱惑的な舞踊で空から紫蘭を貫こうと……。
「むっ! 紫蘭をやらせるわけには行かぬのぅ」
 すかさず彩天綾を翻し、半月形状の錘が付いた投擲物、風華月を振り回して娘達を叩き落とした吉柳・祥華が静かに息を吐く。
(「しかし……なんぞ、あやつが……此処に居るなんしかぇ?」)
 ――ゾクリ。
 怖気が走る様な濃密な瘴気の気配が全身を弄り、祥華の脳裏の疑問を吹き飛ばす。
 それは、眼下の娘達から放出されている様にも思えたが……白桜と紅桜の幻朧桜から生まれた姉妹達は娘達の先を見て震えていた。
(「……コレが“正体”かぇ……? いや、違うのぅ……」)
 そのまま紫蘭の頭上で彼女を守る様にふわり、ふわりと浮遊を続ける祥華。
 その後方から、雅人と共に亞東・霧亥が戦場を疾駆し、紫蘭の方に向かう。
 この死と隣り合わせの戦場に不意に現れた紫蘭の後姿を、淡々と見つめながら。
(「紫蘭は、常に死地に身を置いている。実は死に急いでいるのか、と疑う程に」)
「……どうだろうな」
 無面目を保っていた筈の霧亥の胸中をまるで推し量ったかの様に。
 雅人の左隣を走る文月・統哉が霧亥の疑問に答えるかの如く、そう小さく囁いた。
「文月殿は、私達よりも以前から、紫蘭殿と交流があったのでしたかねー?」
 統哉の囁きにそのさりげなく水を向けるは馬県・義透……『疾き者』外邨・義紘。
 義透の其れにそうだな、と藤崎・美雪が首肯しつつ、そう言えば、と問いかけた。
「義透さん。あなたの方で収容していた避難民達は如何した?」
「ああー、あの人達の救護と看護には、今、妹が回っていますねー。ですので、今は私だけですー」
 美雪の其れに、のほほんとした口調で応える義透。
 そうか、と軽く美雪が頷いたところで、霧亥が微かに目を眇めた。
「……どうだろうな、とは?」
「ああ。少なくとも紫蘭は死に急いでいる訳ではないと思うぜ。と言うか、そもそも、本当に死に急いでいるなら、予知を通してあいつが視ているだろうしな」
 統哉のその呟きに。
「これ以上は紫蘭殿当人に聞くか、その想いを直接読んだ方が早いでしょうねー」
 もうすぐ紫蘭の元につくと判断した義透がそう締めくくるのに、黙然と頷く霧亥。
「雅人、お前は大丈夫か?」
 雅人の後を追って、統哉の後ろを走っていた文月・ネコ吉の気遣いに、大丈夫、と雅人が微苦笑を漏らす。
「皆ほどではないけれど、これでも僕も多少は戦い慣れているからね。まあ、水仙さんに比べれば剣術では劣るんだけれども」
「……そう言えば、水仙のユーベルコヲドは戦場全体を切り裂く大技だったな。単純な力任せの剣術ではあいつの方が上ってことか」
「まあ、剣技の優劣だけで実力が決まる程、帝都桜學府は単純な学校ではありませんが。學徒として学ぶ私も、それはよく分かっていますよ」
 ネコ吉の其れに、両足首に宝貝・風火輪を嵌め、飛翔しつつフォローする様にそう告げたのは、鳴上・冬季。
「そうか、冬季。お前、學徒生だったんだな」
 意外そうに目を瞬くネコ吉の其れに、そうだね、と雅人が思わず微苦笑を漏らす。
「冬季さん、ちょくちょく講義に顔を出しているのを見た気がするな。家庭科とか」
「帝都の甘味は口に良く合いますからね。まあ、作るよりも食べる方が性に合っていますが」
 そんな他愛もない軽口を叩くその間に。
「……? どうしましたか、局長」
 ネリッサが、小型情報端末MPDA・MkⅢを耳に当て渋面を作っていたのに気がついた灯璃・ファルシュピーゲルが問いかけると。
「いえ、着弾点に近付けば近付く程、雑音が激しくなりまして。誰かが私に通信を取ろうとしているのですが……」
「高性能感知カメラ機能、レーダーシステム共に異常なし。IRセンサー、ソナー共に正常。ですが、先の救出活動において使いました通信網システムは使用不可能となっておりますね……。何らかの対策をしていると言う事なのでございましょうか?」
 自分の中の各システムの起動状態を確認しながらのラムダ・マルチパーパスの呟きに、その様ですね、と頷くネリッサ。
(「皆さんと連絡が取れないのは、ある意味では好都合かも知れませんが……」)
 小型情報端末MPDA・MkⅢの召喚プログラムを確認しながら、ふと、そう気持ちを切り替える様に冷静に決断するネリッサ。
 そんなネリッサ達の様子に気がついているのだろう。
(「嫌な感じ……か」)
 共苦の痛みから激しい灼熱感と針の筵で突き刺す様な鋭い痛みを受けながら、天星・暁音はふと思う。
 星の船との接続は濃密な瘴気の気配に飲まれて切れていた。
 もう紫蘭の所に辿り着くのも直ぐの筈なのに、其の距離が、気が遠くなる程遠く思えるのは、暁音の気のせいであろうか。
 ――実際の所は数十秒にも満たない、そんな時間を過ぎ、紫蘭を守る様に立つ、姫桜達の傍に漸く辿り着いた時。
『……また私達の幸福の簒奪者が増えたのね』
 叩き付ける様な激しい憎しみにその身を焦がされている娘達の言葉を聞いて。
「……っ?!」
 何か胃の腑から沸き上がってくる様な息苦しい圧迫感に包み込まれ、森宮・陽太が思わず表情をくしゃくしゃにする。
 周囲を取り巻くは、真夜中を作り出されたかの様な錯覚を覚える程に深き瘴気と、其の周囲に焼き尽くされた幻朧桜並木。
 その幻朧桜の姿があまりにも痛々しく、時折フラッシュバックの様に蘇る記憶の中の死体達と重なり合う様でざわりと鳥肌が立った。
「……何だよ、これは。まさかお前達は……逢魔弾道弾の直撃を受けた幻朧桜と、桜の精の魂が、不慮の死に見舞われて影朧になっちまった、のか?」
 その陽太の問いかけに。
 焼き尽くされ、炭化した幻朧桜から、ポウ、ポウ……と灯が灯る様に姿を現した娘達を見て、陽太が思わず息を呑む。
「……陽太さん、違う! そいつはきっと幻影だ……! 迂闊に情けを掛けると、妄念に飲まれて戻れなくなるぞ!」
 陽太の感情に引き摺り込まれる様に。
 まるで使者達の嘆きの如く其の手を差し伸べて、助けて欲しいと願う幻聴が聞こえた気がした館野・敬輔が強い口調でそう言い切り。
 腰に佩いた黒剣を抜剣し、刀身を闇の中で光る松明の様に、赤黒く光り輝いた。
「あっ……ああ、悪い、敬輔! どちらにせよ、こいつらを逢魔が辻から出さない様にしなければ、帝都が破壊されちまう!」
 吹き出す嫌な汗の感触を拭う様に淡紅のアリスグレイヴを構え、左手にダイモン・デバイスを構える陽太。
 其の手から吹き出す、滑る様な嫌な汗でダイモン・デバイスを取り落とさない様、細心の注意を払いながら。
 と……此処で。
 ――カツン、と。
 サンダルで地面を叩く様に紫蘭の隣に、御園・桜花が立ちはだかる。
 ――そう。
 紫蘭と同様、桜の精たる其の女が。
 漆黒の蝶の羽ばたきの如く軽やかな足取りで鋭利な蹴りを破魔の銀盆で受け止めて押し返し、貴女達が、と呼びかけた。
「貴女達が奪われたと言う夢と願いは何です? 此処で焼かれて奪われたと? それとも……転生という役割を果たすために奪われたと言うのですか?」
 その桜花の問いかけに。
『私達が奪われたのは、私達の求める夢と、希望。誰かを救うために戦って、戦って……戦わせ続けられて。私達はただ、『生者』であれば誰しもが望むであろう、ほんの細やかな幸せを求めていただけなのに。それを奪われ殺され、見捨てられた。ならば私達は、奪われた者を取り返す。私達が求めた細やかな幸せを今度こそ其の手にする為に、彼等が私達から奪った分の代償を、払って貰う。因果は巡るの。私達から奪った因がある限り、私達が奪い返す果が訪れるのは宿命なのだから……!』
 それは、怨嗟と激しい悲哀、痛みを伴う悲痛なる叫び。
 自分達の体の中に刻み込まれた激しき痛みに対する報いを果たさん事を欲する、純粋にして、切なる願い。
 ――其の願いを、断ち切るかの如く。
「……つまりアンタ達は、自分達が理不尽な目に人々に遭わせられたから、それをアンタ達に与えた『世界』に報いを与えようとしているって訳か」
 不意に彼女達の背後から、音も無く真宮・響の放った無数の狐火が襲い掛かった。
 背後から突然現れた無数の狐火に別の娘が声を張り上げ、桜花に反論した娘は事なきを得るが。
「でも、厳しい事を言いますが、理不尽な目に遭ったのはあなた達だけではありません。私達家族はこのサクラミラージュに縁が深いですが、理不尽な目に遭った例を多く見てきました」
 そう呟くと、ほぼ同時に。
 姫桜達の前に風の妖精の如き軽やかなステップを刻み、風の魔力を帯びた真宮・奏が割り込んで。
 響が隙を作った娘達に向けて、シールドバッシュ。
 風の魔力を帯びたエメレンタル・シールドが空を切り、物理的な衝撃を伴わせて、娘達に叩きつけられ。
「大体、今回の火災も、住民も理不尽に命の危険に晒されていますよね? それも、理不尽な目に遭わされた、という貴女達の手によって。それは……」
 思わぬ攻撃にグラリと傾ぐ彼女達に向けて、降り注ぐのは月下美人の花弁の嵐。
「そう……貴女達の求める革命が犠牲を伴い、其れによって多くの人々が理不尽な目に遭うのであれば、其れを食い止めるのが僕達の役割です」
 儚く脆い、美と恋の花言葉を持つ其の花の花弁を生み出せし神城・瞬の両手からは、月虹の杖と、六花の杖が失われていた。
 其の全てを目前の月下美人の花吹雪……闇に染まりし桜の精達の、葬送曲へと変える、其の為に。
 その月下美人に包み込まれる様にして、生まれ落ちていた失意や無念を抱えたままに死した娘達の幻影の一部が消失する。
 けれども屍山血河を乗り越えて、左右から軽やかなステップを刻みながら漆黒の回し蹴りを解き放つ娘達。
 其の娘達の足下から。
「人の世は、不条理に満ちています」
 不意に、無数の鋭利な氷の刃が出現し、その美しくも醜い呪詛の足を貫いていく。
 1人が其れに足を貫かれてその場に無様に転倒し、もう1人は咄嗟にバックステップで其れを躱すが。
「……そして、あなた方は特に運が悪かっただけで、誰でもそうなる可能性を持っています」
 そう言い切り。
 地面を永久凍土と化させ、娘の足を絡め取ったのは、ウィリアム・バークリー。
 その足には氷の精霊達の魔力が収束されており、それがウィリアムの機動力と魔力を一段と飛躍させていた。
『おのれ……!』
 ウィリアムに貫かれた傷の返礼として。
 呪詛の籠めた呻きと共に別の娘が呪詛を鎖の様に巻き上げた其れを鞭の様に振るおうとするが、其の手に一発の銃弾が着弾し。
 ――パァン!
 と鋭くその手を撃ち抜く音と共に、呪詛の鞭を取り落とした。
『くそっ! 今度は……誰なの?!』
 そう呻いた娘が、憎々しげに見やったのは。
「……その運の悪さ、己が不幸を呪うだけであれば、まだ、同情の余地もありますが。何も罪もない他人を巻き込むこと……それは、お門違いですね」
 愛銃G19C Gen.5の銃口から白煙をくゆらせつつ目を細めるネリッサ。
 続けてウィリアムが再度撃ち出した鋭利な氷刃に、娘はやむなく後退する。
「……誰かが誰かを使い潰すなんて当たり前で、そんな事にいちいち構っていられる程、残念亞ガラ人の世は呑気じゃありませんよ。何よりも、あなた方は既に人を害するモノなのですから」
『……先に私達を使い潰し、私達を害した者達……! その者達に、私達が負った瑕疵を負わせる事は、正当なる復讐の権利! それを、何故、あなた達に害されなければならないというの……!? 私達は、私達が望みもせず、無理矢理払わされた痛みと苦しみを、只、皆に分かち合って欲しいだけなのに……!』
 悲哀に満ちた咆哮と共に。
 現れた無数の死した娘達の嘆きの叫びと、歌と踊りが、瘴気に包まれた戦場を震撼させた。
「……そうだね。少しばかり気の毒というのは無くは無いけれど……」
 その震撼させる嘆きの進路を阻む様に。
 星具シュテルシアを錫杖形態にして、其の先端から眩く光輝く550本の星形結界の刃を解き放ちながら。
「でもね。理不尽なことなど幾らでもあり、結果、命を落とすことも戦場に出るなら当たり前なんだよ。戦場で理不尽に命を奪われるのは……残念ながら当たり前なんだ」
 だからこそ戦争は忌むべきで本来は無くならければならないモノなのだけれども。
「でも……其の憎しみだけに縋り、全てに理不尽を齎すのなら、俺達は、君達に速やかに眠って貰うしかないんだ」
 足下に星形の魔法陣を描き出し。
 其処に描き出された魔法陣の浮力に従って空を舞いながら、暁音が星具シュテルシアを突きつけて。
「だからもう、君達は眠ってくれ。君達の痛みは、ちゃんと、俺が覚えておくから」
 その暁音の言葉を合図としたかの様に。
 前進から殺意と憎悪を迸らせ、周囲を包み込む呪詛と瘴気の力を一段と強め、娘達は一斉に舞う様に踊り始めた。
 ――その心と魂に刻み込まれた、悲哀と、憤怒を尚、濃い瘴気に作り替えながら。


(「このどす黒い瘴気……」)
 娘達が呼び出した、死した魂達から解き放たれる嘆き悲しむ叫び声。
 怒濤の様な奔流に呑み込まれそうになりながら、敬輔が黒剣を青眼に構えてその攻撃を切り裂きながら前進する。
「理不尽を理不尽で返した上、其れを、代償と革命と嘯いて正当化するなど!」
「まあ、あなた達の立場は、本来は哀れんで差し上げないと不味いのでしょうがね」
 10人の分身を生み出しその声に踏み込んでいく敬輔のそれに口元に何処か皮肉に見える笑みを浮かべて。
「ですが、元・桜の精がこれかと思うとね」
 否……冬季の其れは、皮肉の笑みでは無い。
 それは……嘲笑。
 嘗て桜の精だったと言う彼女達が、私怨を撒き散らし、冬季の気に入った世界を破壊しようとする事への、蔑みの笑み。
「私は、全く分からないわけではありません」
 侮蔑と嘲笑を隠さぬ、冬季とは対照的に。
 銀製のお盆で次々に舞う様に降りてくる娘の攻撃を叩きのめして裁く桜花がバサリ、と右手に構えた桜鋼扇を一振りする。
 振るわれ、広がった鉄扇……桜の花弁の刻印のある鋼の連なりから、ヒラヒラと幻朧桜の花弁の幻影が零れ。
 其れが連なり、幻朧桜の林を娘達の左右に連ねるその様を見つめながら、例えば、と淡々と話し続けた。
「もし私が幻朧桜になれずに死んだら、人を転生させることを望み、人を殺しまくる影朧となるでしょう。何故なら、私の願いが死という形で裏切られれば、生者である私の願いは歪みますから。そう言う意味では、此の場が焼き払われたのは、ある意味事故でしょう」
 ――でも。
 幻朧桜の林から、桜吹雪が巻き起こされた。
 巻き起こされたそれを踊る様に飛びずさって躱し、或いは受け流す娘達に向けて、桜花が微かに唇に氷花の様な笑みを浮かべる。
「死によって歪んだ望みが代償しかないのなら。生前から貴女達の望みは『其れ』しかなかったのでしょう。それ以上でも、それ以下でもありません」
『……違う! 私達が求めていたのは、私達が細やかな幸せを手に入れることが出来る未来! 其の未来を理不尽に奪ったのは、ヒトだ、我が同胞!』
 迸る悲哀の咆哮が、桜花に向けて叩き込まれる。
 気付けば数百を優に越える無念の魂を宿した娘達が桜花の周りを取り囲み、彼女に向けて呪詛の籠められた歌を奏でた時。
「いやはや、いやはや。これは、これは酷い現場だねぇ、可愛らしいお嬢さん方」
 からかいの入り混ざった声と主に。
 プップカプーと喇叭が一斉に鳴り響くと同時に、呪詛の籠められた歌を焼き尽くさんと獄炎が蜷局を巻いて歌を覆う。
 ――パチン!
 不意に指を鳴らす音が戦場に響き渡った。
 人形楽団が一斉に鳴らした喇叭のマーチの中に紛れ込んだその音と共に、呪詛の籠めた歌を取り巻いた獄炎が一斉に爆ぜる。
「でーも。相手に不幸を強要するのは、如何なものかな、ものかなー? と言うか、世界なんて貴女方が生きていた以前から、理不尽で狂っているものさ♪ 残念、残念、井の中の蛙、大海を知らずとはよく言ったものだよね♪」
 爆破された獄炎の向こう側から嘲弄交じりの笑みと共に、クラウンハットをひょい、と外して、道化師の如く一礼するクラウン。
 その10本の指先から伸長された糸で整列していた老若男女の10体のからくり人形も同時に丁寧に1礼する。
 突然現れたクラウンとそのあからさまな挑発に、美雪が、ポカン、と口を開いた。
「……クラウンさん。何時の間にこっちに来ていたんだ? と言うか、今まで何処で何をしていたのだ?」
 何故か鋼鉄製ハリセンを取り出しつつ、呆れた様に目を細めて、其れを振り上げる美雪の突っ込みに。
「いやいや、藤崎さん。それはないでしょう。ボクと寺内さんに緊急性の高い重傷者の治療をお願いしてきたのはキミじゃあないですか」
 からかう様な笑みを浮かべて、ヌケヌケと宣うクラウンに、美雪は何も返さずハリセンをしまい、グリモア・ムジカに譜面を展開。
 そんな美雪に満足げに頷き、だ~いたいと、クラウンが剽軽に娘達に向けてわざとらしく肩を竦めた。
「キミ達は、もう生者じゃなくて死者なんだから。そんなにキミ達に取って世界が理不尽ならば、幾らだって新しい人生をやり直した方が楽しいじゃないか♪」
 クラウンの其の挑発に。
『言わせておけば……!』
 と怒りの表情を露わにした娘が肉薄し、鋭利な槍の様に研ぎ澄まされた呪詛の足でクラウンを貫かんと踊って肉薄すれば。
「全く以て、クラウンさんの言うとおりです。良かったですね、皆さん。皆さんは影朧ですから転生できる。そんな心根の貴女達が、次もまた桜の精に転生できることは、決して無いでしょうから」
 口の端に浮かべた嘲笑を、更に深く、深く広げて。
 パチパチとわざとらしく拍手を交えつつ。
 冬季がお供の二足歩行型、宝貝・黄巾力士を嗾けるとそれが全長40m級の巨大な黄巾力士へと伸長させ。
「ハハハハハ! 蹂躙せよ、黄巾力士!」
 クラウンに今にも襲い掛からんとしていた娘を拳を振り下ろし、グチャリと嫌な音と共に其の娘を叩き潰した。
 見るも無惨な姿になった娘の姿に姫桜や紫蘭が微かに引き攣った表情を見せるが、桜花は其れを冷たい眼差しで見つめていた。
「そうですね。あなた方は転生して、殺人鬼辺りになれば宜しいでしょう」
 何処までも冷たく透き通る様な言葉と共に。
 周囲の幻朧桜の林から桜吹雪を巻き起こさせ、蹂躙された娘達に『どんな存在にでも転生可能』と言う概念を植え付ける。
『巫山戯ないで! 私達が受けて来た不幸はこの程度のモノじゃない! どれだけ努力しても、踏み躙られ奪われていった大切な想いを破壊した者達になんて、私達は屈しない!』
 其の概念を、振り解く様に頭を振って。
 素早いダンスステップを刻みながら、其の漆黒の槍の様に鋭い呪詛の足で桜花と紫蘭を貫かんと四方八方から攻める娘達。
 だが……。
「おい、雅人。面倒だ、さっさと噛み砕け」
 其の時には、紫蘭の前後を守る様に挟みこむ様に霧亥が調合した錠剤を渡した雅人と共に駆けつけて。
 紫蘭の前後を守る様に布陣を展開、霧亥が自らと紫蘭を糸で繋ぎ、雅人が肉薄してきた娘の1人を切り落とし。
「……だめっ! やらせられないわっ!」
 更に、玻璃鏡の鏡面を波立たせながらも姫桜が二槍を風車の様に回転させて、残った娘達を叩き落とし。
「紫蘭様をお守りするのは、わたくしめどもの任務でございます。であれば、わたくしめも任務を遂行させて頂く事と致しましょう」
 無意識な機械音声と共に、桜花と入れ替わりに紫蘭の右隣に立ったラムダがそうアナウンスをすると同時に、モード・ツィタダレを起動。
 展開された高密度電磁防御フィールドが放たれた槍の様に鋭い漆黒の蹴りの一撃を受け止めている。
 そのラムダのアイカメラはカシャカシャ動き、唖然とする紫蘭の方に向けられた。
 取り敢えず安心させるつもりもあったのであろう、女性型ホログラムを紫蘭の前に展開し、丁寧に一礼する。
「紫蘭様、お久しぶりでございます。後ろの雅人様は……此が始めましてになるでしょうか? 本来であれば自己紹介させて頂くのが礼儀ではございますが。生憎今はそれどころではございませんので、また後程」
「え……ええ……」
 ラムダのホログラムに戸惑いを隠せぬままに頷く紫蘭の其れに、取り敢えず満足げにアイカメラを180度回転。
 目前の漆黒の鋭い呪詛足を持つ娘の目から放たれる憎悪の光を見て、ハテ、と何かを探るかの様にアーカイブ検索を起動させる。
「この目、どこかでお会いしたことがある様に思われるのですが、果たして何処でございますでしょうかね……? ともあれ、革命、革命……なんだか以前も検索した様な気も致しますが、さてはて……と、検索完了。成程、成程。権力体制や組織構造の抜本的な社会変革が短期間で行われることでございますか」
『そうよ! 今、一番必要なのは、今までに理不尽に蹂躙され、失意や無念を抱いたままに死んでいった私達や皆の魂が安らぐ世界! 其の真に安寧と平和に満ちた世界を生み出すために、私達はこの世界を変革する! 其の大義のために、これは必要な犠牲なのよ!』
 戦場全体に木霊し、震撼する様な悲痛な雄叫びと共に。
 更に蹴りに螺旋の回転を組み込む様にして、ラムダの高密度電磁防御フィールドを打ち破ろうとする、其の娘。
 だが……そこに。
「はっ……其れが革命? 自分が酷い目に遭ったからって、他の人間も同じ目に遭わせよう? 臍で茶を湧かしたくなるくらい呆れる話だぜ」
 ――ズドォォォォォォォーン!
 一発の巨大な銃声が戦場に轟き、ラムダの高密度電磁防御フィールドを破壊しようとしていた呪詛の足を撃ち抜いた。
 カチン、と此処からは見えないところで薬莢が地面を叩く音を、ラムダの複合式多機能カメラセンサー・システムが感知する。
「おや……これは、これは」
(「ミハイル様でございますね? 通信が届きませぬので、確定は出来ませんが」)
 ――更に。
「……革命などを標榜するのであれば、誰も犠牲にしない様、貴様達は努力をするべきだった。貴様達の其れは、人々を大きな厄災を齎した。許される所業ではないぞ」
 低く、呻く様な声と共に。
 漆黒の人影が、撃ち抜かれた呪詛の足を再生するべく後退する娘に肉薄し。
 腰部に帯びた二刀……白き刃多知『繊月』と、黒き刃多知『司霊』を同時に抜刀、X字型に娘を斬り裂いた。
 返り血をピシャリ、と体に浴びるが、双刀の人影、美月は粛然とした佇まいの儘にラムダとネリッサ、灯璃を見やる。
「ラムダ様。ネリッサ様。灯璃様。遅ればせながら参戦させて頂きます。ミハイル様も後方からの支援……狙撃に集中する、と託を授かっておりますのでお伝えさせて頂きます」
「寺内さん。了解です。……灯璃さん」
 美月の其れに応えたネリッサが軽く目配せをしながら、灯璃を見ると。
「Yes.マム。CASorder……course Allgreen,――――― Bombs away.」
「前方の敵に火力を集中、敵の行動を封じ込め」
 灯璃が素早く手を上空に突き出し、爆撃機を召喚、続いて美月が117機の機銃、拳銃、対戦車砲等の火器を周囲に展開。
「……確かに、あなた達は人々の為に戦ったのでしょう。……ですが、その代償に他人の血を求めた時点で、狂ったのは貴方方であり、其処に同情の余地はありませんよ?」
「故に貴様達は相応の報いを受けよ」
 小首を傾げた灯璃の言の葉と、淡々とした美月の言葉に答える様に。
 灯璃が上空に呼び出した爆撃機から精密誘導型レイジードッククラスター爆弾が、後方に陣取る娘達に降り注ぎ。
 前衛を担っていた、死した娘達に向けて大量の銃弾やロケット砲が降り注ぎ、娘達の布陣に大きく穴を穿った。
 その穿たれた穴を埋める様に別の娘が再び、死した娘達を召喚しようとした、其の刹那。
「『革命』が起こったら、益々貴女方みたいな存在が生まれそうですけどねー?」
 そうのほほんと呼びかけながら。
「だからこそ、私……『我等』は貴様等の思い通りにはさせられないのだ」
 一瞬、酷く濁った四悪霊達のエコーと共に、義透の全身から解き放たれるは、己が体を編み上げている『四悪霊の呪詛』
 4人の悪霊達の複合体とでも言うべき義透から解き放たれた呪詛が世界を覆い尽くさんばかりの勢いで、娘達を覆っていく。
「……貴様等の言う通り、全ての果には、そこに至るまでの因がある。その因果は何処までも巡りて回る。そう……何処までもな」
 其の義透の言葉を、体現するかの様に。
 戦場全体を悪霊達の呪詛が覆い、現れた娘達の力を、其の娘達を召喚する力を奪っていく。
『くっ……何を!?』
 自分の力が、義透に吸い込まれている事に気がつき、慌ててサイドステップを刻みながら義透に肉薄する桜の精の娘達。
 其の娘達に向けて……。
「一見、呪詛による攻撃がメインに見えるが、実際は攻撃前に呪詛による自己強化なんだろう? だったら、纏めて剥ぎ取らせて貰うぜ!」
 ――これ以上、彼女達が理不尽を撒き散らさず、負の連鎖を生み、誰も幸せにならない世界を破壊するためにも。
「行けよ……マルバス!」
 其の願いと、共に。
 ダイモン・デバイスの引金を陽太が引くと同時に、銃口の前に強壮なライオンが描かれた魔法陣が出現し、其処を一発の弾丸が通り抜けた。
 ――その瞬間。
「グルァァァァァァァァッ!」
 魔法陣に描き出されていた強壮なライオンの悪魔が咆哮と共に姿を現し、同時に空に黄水晶雲が浮かび上がり。
 空から黄水晶の雲が灯璃の爆撃機が落とした爆弾宜しく、怒濤の様に大地に降り注いだ。
 そこから噴水の様に迸るのは、黄水晶の雨。
 降り注ぐ雨に霧亥と雅人、姫桜等、紫蘭を守る為に傷を負った者達の傷が徐々に癒えていき、同時に娘達の体に黄色い斑点が浮かび上がってくる。
『ぐう……!』
 降り注ぎ突進してくる雲が齎す疾病に、苦しげに呻き声を上げる娘達。
 そこに籠められているあまりにも生々しいその呻き声の中には、善も悪もない。
 ただ、自分が傷つく事への痛みと苦しみが籠められていて其れが尚更、陽太の感情を激しく揺さぶる。
「確かに理不尽だろうよ、此れは……。しかも俺達は、その理不尽に更なる理不尽を重ねる側でもあるんだ」
 ――だから、テメェらを憐れむ心がねぇとは俺には言えねぇよ。
 胸中でそう呼びかける陽太の感情に反応したか。
 黄水晶の雨を浴びて吸収するかの如く、何時の間にか現れた呪詛を纏った漆黒の桜の花弁が、陽太の雨を食らう。
「ちっ……! けれども此処で退いたら、俺は、俺じゃなくなっちまうんだ……!」
 呻きマルバスに黄水晶色の雨の勢いを強めさせるよう、命じる陽太。
 その雨の中を拭う様に敬輔と9人の敬輔の分身が肉薄し、纏めて娘達を薙ぎ払う様に赤黒い光の一閃を解放。
 放たれた刃が娘達を斬り刻み、其の体を傾がせるその間にも敬輔は無意識に血が滲み出る程に唇をきつく噛み締めていた。
「陽太さん、無理はするなよ。そして……俺にはこれだけの犠牲を人々に払わせた貴様達に対する、哀れみなど欠片もない!」
 何かを振り切る様に無機質な、冷たい声音を作って断言する敬輔。
 グリモア・ムジカの譜面を奏でるシンフォニックデバイスを調整していた美雪が、そうだな、と小さく息を吐く。
「先輩の言う通り、影朧と化したあなた達もまた、人々の夢や希望を奪っている。その奪い合いの連鎖を発生させているあなた達を許す道理は私達には無いな」
 グリモア・ムジカが、前奏を開始したその音に合わせた美雪の其れに臍を噛み。
「何故……何故、私達がこの様な傷を負わなければならないの? 私達は、私達から大切なモノを、ヒトが必要とする夢や希望をヒトによって無残に奪われ、只、其れを取り戻そうとしているだけなのに」
 程なくして、双眸から白い滴を滴り落とし始めた娘達のその問いかけに。
「革命などと嘯き、奪われたモノを他のモノから力尽くで奪い、食らおうとした貴様達が、何時迄も被害者面していられると、貴様達は本気で思っているのか!?」
 聞いてはいけない、と暗示をかけ、内心に溶鉱炉の様に煮え続ける其の炎をかき集めながら敬輔が叫び返すと。
『被害者面? 何を言っているの? 私達は、紛う事なく世界に、人々の為に自分達の細やかな望みを潰されたわ。あなた達は、奪われたモノを取り返そうとする誰もが行う当然を、間違っているとでも言うの? 奪うと言う事は、其れに伴う責任があり、報いを受けねばならない事が分からないの!?』
 首を傾げつつ、金切り声を上げ。
 無数の自分達と同じ様に無念や失意の内に『死』んだ者達の霊を娘達が呼ぶ。
 霊達の悲嘆と苦しみに満ち満ちた其れを、敬輔と統哉が受け止めるその間に。
「今の内にやれることをやろうぜ、葵桜」
 そっと耳打ちをしたネコ吉が、統哉の背後から娘達の死角に向かって飛び出した。
「えっ?」
 其の意味を一瞬測りかねた葵桜だったが。
「……うん! そうだね! 姫ちゃん、紫蘭さんは宜しく!」
 間もなくネコ吉の意図に気がつき、巫女装束を風に靡かせ、葵桜が再び神楽を舞う。
 奉じられた神楽舞に誘導される様に生み出された桜吹雪が、其の悲鳴とぶつかり合って爆ぜ、少女達の嘆きを塞ぐその間に。
「人の多い居住区を狙った、逢魔弾道弾による影朧の大量発生……か」
 その人の営みが多くあればこそ、無念に散っていった桜の精も多くあっただろう。
 素早く其の嘆きを抑える様に猿轡を娘の1人に嵌め込みながら。
「聞かせてくれ。お前達はどんな夢を見て、夢に散っていったんだ?」
 別の娘へと問いかけるネコ吉に、葵桜があなた達はと、口から血を流しながら小首を傾げた。
「もしかして、歌や、踊りが得意だったのかな? それを何時か、誰かに聞かせたり見せたりしたいという夢や希望を持っていたのかな?」
 その葵桜の問いかけに。
 一瞬、娘達の動きが緩慢になり、暁音の共苦の痛みの焼け付く様な痛みに、不意に氷嚢が当てられたかの様な清涼感が注ぎ込まれる。
(「……これは……」)
 その、注ぎ込まれる其れの意味を暁音が口に出すよりも、一足早く。
「ええ、その通りよ! 私達は、普通に日の当たる世界で慎ましく、健やかに生きたかった! 幾ら転生させる力を持っているからって、あんな風に兵器として、モノの様に扱われ何の夢も希望も抱くことなく死なされていく自分達が、悲しかった! 其の全ての理不尽を私達は只、『転生』させることが出来ると言うだけで、背負わされた私達は……!」
 夢や、希望。
 其れは生きとし生けるモノ達が、極自然に抱く思いにして、生きていく理由になり得る力。
 其の生きるための原動力を、其の為にしてきた努力の全てを否定されることがどれ程、彼女達に絶望を齎したのだろう。
 どれ程、彼女達の心を壊してしまったのだろう。
 その娘達の想いの丈の籠められた其れに、葵桜がそうだね、と小さく首肯する。
「……やりたいことなんて……他にも、沢山あったんだもんね。それは……分かるよ。私だって、女の子だもん」
 普通にスタァとか、当たり前の女の子らしい幸せに憧れて。
 其れを手に入れるための努力をしていたのに、戦わされて全てを失った彼女達。
 しかもこの世界のシステムを守らせる、其の為だけに利用されて……。
「全部を犠牲にして頑張って、でも世界にそんな努力の何もかもが踏み躙られて、其れが許せなくて、今、影朧になって出てきちゃったんだ」
 その葵桜の確認に。
 成程な、と小さくネコ吉が頷き、其れまで少女達の猛攻を抑えつつ、其の両手に電流を蓄えていた姫桜もまた、溜息をそっと漏らす。
「……ええ、そうね。そう言うことよね。そうして自分達の夢や努力を踏み躙った世界に『革命』を起こしたいという気持ちは、分からなくもないわ」
 もし、自分が彼女達と同様に、其れを奪われてしまっていたら。
 その時自分は、どうなってしまうのだろうか?
 或いは……先程彼女達に対して桜花が言った様に、自分もまた、世界の影……骸の海に囚われて、オブリビオンになってしまうのだろうか。
 そんな事を考えてしまう自分が、少しだけ、姫桜には恐ろしい。
 ――でも、だとしたら。
「そうだよな。お前達にも、お前達が望んでいた、やりたかった事……夢があるんだもんな。其れを世界が破壊したと言うのは、きっと、間違いではないんだろう」
 呟きながら、素早く拘束ロープを繰り出し娘達の一部を纏めて縛り上げるネコ吉。
 そこに敬輔が肉薄し黒剣を一閃して彼等を屠ると、霧亥や雅人を囲んで攻撃を続ける娘達が援護をせんと其方に駆けつけようとする。
「おおっと、其方に行かせるわけには行きませんねー」
「ぷぎゅっ!」
 漆黒の棒手裏剣を投げつけて、彼女達の動きを義透が妨害し、更に紫蘭と霧亥と雅人の周りに海色の結界を張り巡らす陰海月。
 陰海月が頑張るその間に、義透は紫蘭殿、と穏やかな口調で呼びかけた。
「もしかしてあなた、光側である以上、誰かに呼ばれたのではありませんかー?」
 その義透の問いかけに。
 霧亥が繋げた冥の糸が微かに震え、その言葉に激しく動揺を露わにする紫蘭の心が霧亥の心にダイレクトに伝わってくる。
「……光側、闇側というのはよく分からない。でも、私は誰かに『呼ばれて』来た」
 ――其の胸中に思わず紫蘭が浮かべてしまったその言葉は。
(「……助けて、か」)
 霧亥が自らと紫蘭を繋いだ悪意に満ちた冥い糸。
 紫蘭を生かす其の為に、死を共有する糸を繋ぎ、彼女の感情を共有したが、胸に抱かれた憐憫に、どう返すべきかが思い浮かばない。
「そう言った何かを感じ取る事が出来る能力……流石は桜の精ってところ……か?」
 かすれがすれの紫蘭の解を聞き、独り言の様に呟く紅閻。
 だが……何か引っ掛かるところがある。
(「……全ては紫苑から始まり、そして紫蘭を巻き込んでの、この騒動。そして藤崎が聞いたという話。やはり……アレが関わっているのか? いや、憶測を言っても仕方がないし……違うのかも知れないが」)
 或いは其れは、違うと言うことを信じたいだけなのかも知れないけれど。
 だが……。
「……ふむ。貴奴が持っていた気配と、此処が纏っている気配はよく似ておるが、微かに違うでありんすよ、白夜。寧ろ……この負の瘴気の濃さは……」
(「先日対峙した妹桜や、水仙達が抱いていたものに近いのう……。じゃが、それにしては、この瘴気の深さは異様ではあるのじゃが……」)
 内心で呟きつつ護鬼丸と冥風雪華を解放、紫蘭と雅人を守る様に再配置する祥華。
「成程。榎木さん達の言いたいことも、分からないでもありませんが……ね」
「そうじゃのう、ネリッサ。きっと、ぬしの思うとおりじゃ」
 ――例えそれが真実であり、同情に値するモノだとしても。
 其れによって今を生きる多くの人々が痛み、悩み、苦しむ様な革命という名のテロルを行うのは、否定されるべき事なのだ。
(「そも……仮にこの世界で革命が行われて其れが仮に成功しても、決して報われるとは妾には思えぬな。この『革命』の先にあるのは……『闇』だけじゃからのう」)
 其れは自分達猟兵が関わろうと、関わるまいと、変わることのない事実。
 安寧と停滞と……多くの細やかな幸せが否定される思想が革命を為した時、この心優しき世界は其の命を止めるだろう。
 そんな苦しみや痛みを伴った革命は、この世界には悲劇に過ぎぬと祥華は思う。
「のう、文月。おぬしはもしかして、何かを感じているのではないでありんすか?」
 彩天綾をひらりと翻し、ちらりと地上を走る統哉を見やり、カラコロと鈴の鳴る様な笑い声をあげる祥華。
 其の祥華の問いかけを統哉は聞いていたのか、いないのか。
「……そうだね。似ている、と思うよ、俺は」
 其の脳裏を過ぎるのは、人々の理不尽によって、世界から阻害され……隔離されて『死ぬ』宿命にあった頃の紫蘭。
 ――だから。
「俺達は知っている。世界は何時だって不完全で、人の心は弱く脆くて、理不尽に人を傷つける事を」
 再び娘達が召喚した少女達。
 其の少女達の呪詛と怨嗟の籠められた歌声をクロネコ刺繍入り緋色の結界で受け止めながらでも、と統哉は言葉を紡ぐ。
 ――逢魔弾道弾の核となったであろう、革命を標榜した者の姿を思い描きながら。
「でも恨みの儘に傷つけ合えば、連鎖した悲しみは、何時迄も続いてしまう」
 ……そう。
 そんな革命に……。
「君達の謳う革命の先に、君達が求めた筈の輝く夢はあるのかい?」
 その統哉の問いかけに。
『きっとある! そうあの方は、私達を導いてくれた! だから、私達は……!』
 反射的な彼女達の反応に含まれたニュアンスが、微かに桜花に引っ掛かった。
(「……導いて……くれた?」)
 では、彼女達は、自分でこの道を選んだのではないと言うのか。
『誰か』にその道を、『選ばされた』とでも言うのだろうか。
「へぇ……そうかぁ。キミ達を『導いて』くれた人が居るんだね♪ 其れは、その人に感謝の音楽を捧げてあげないといけないね♪」
 ――プップカプー! プッププ、プップカプー!
 道化の様に、茶化す様に。
 クラウンが口元に愉悦に満ちた道化の笑みを浮かべ、そんな彼の心を代弁するかの如く周囲の音楽人形達が喇叭を掻き鳴らす。
「そうか。それが、お前達が誰かに『代償』を支払うことを求める理由か」
 手枷を1人に嵌め込んだネコ吉が、何かを悟ったかの様にそう呟く。
(「逢魔弾道弾の核となった影朧の影響を、集まってきた影朧達が受けるという話は、正直に言えば聞いた記憶は無いが……」)
 だが、恐らくはそう言うことなのだろう。
 少なくとも逢魔弾道弾が打ち込まれれば、その威力は骸の月の趨勢さえ歪める事は、間違いの無い事実なのだから。
 ネコ吉や、統哉達のその言葉。
 戦うことを、自らが生きることを諦めきれぬ彼女達は、今、1つの岐路に立たされていた。


『知った様な口を……私達に希望や夢を与えてくれた其れを、侮辱するなぁぁっ!』
 岐路に立たされた彼女達の大勢が選んだその道の名は、否定。
 差し伸べられた手を拒絶する娘達が、呪詛で織り込まれた足でその場で踊り、其処から大量の呪詛を放出。
 放出された呪詛を護鬼丸とラムダの高密度防御電磁フィールドで受け止めるその間に、それまで掩護に徹していたネリッサが走る。
「あなた方の後ろには、あなた方を導く者がいるのは分かりましたが、その者があなた達に与えた革命で世界を変えても、あなた方が受ける理不尽から逃げることは不可能でしょう」
『違う! 其の理不尽を押しつけてきたのは貴様達だ! 押しつけられた理不尽を乗り越えるために革命を起こすことの何が悪い!』
 最奥部に飛び込もうとしたネリッサを遮る様に娘達が踊り狂う。
 だが、其れを予め予期していたかの如く。
「自分が酷い目に遭ったから、其れを乗り越えるために、他の人間にテメェラが遭ったのと同じ目に遭わせるってか? ふん……それこそ、テロに走る連中のご都合そのままだぜ? しかも誰かに煽動されているなら、余計にな」
 ――ズドォォォォォォォーン!
 SV-98Mの銃口から轟音と共に発射された一発の銃弾が、灯璃が作った爆撃点からネリッサを狙う娘の頭を撃ち抜いた。
 ぱぁん! と果実が弾ける様な音と共に頭が爆散し、崩れ落ちる娘を見て動揺を露わにする娘達に向けて。
「……行きますよ」
 美月が機関銃の連射で切り開いた道を潜り抜けたネリッサが、小型情報端末MPDA・MkⅢに走らせたプログラムを起動。
 画面に『千匹の仔を孕みし森の黒山羊』と文字が走ると同時に太く禍々しい漆黒の触手が周囲一帯を薙ぎ払うと。
 MPDA・MkⅢから現れた漆黒の禍々しい触手による敵味方問わぬ打擲が、娘達の体を千々に破壊した。
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!』
『い、いやぁ、なんで、なんでまた、こんな目に遭わなきゃ行けないの……!?』
 悲鳴や涙交じりのその声を涼やかな表情でネリッサが聞き流すその間に、傷ついた娘達に音も無く肉薄する霧亥。
「死んだ方がマシな傷でも死ねない生き地獄。だが、貴様達には速やかな死が必要な様だな」
 漆黒の触手による拷問にも等しい其れに、感情を心拍数の様に激しく上下させる紫蘭の感情を読みながら霧亥が雷迅を一閃。
 雷を帯びた斬撃が、苦しみ悲鳴を上げる娘達の命を一瞬にして刈り取り、続けざまに目にも留まらぬ速さで貫手を放つ。
 腹部を抉る様に放たれたそれに、虫の息だった娘を屠り、その速度に合わせた雅人が鞘走らせた退魔刀を一閃。
 これ以上の苦しみを与える事なく死を与える慈悲の刃が娘達を一掃するその間に。
「防御線は大分安定してきている様ですね。彩瑠さん達含めてかなりの人員が動員されている以上、そうなりますか。……目標(ターゲット)捕捉。狙いはあなたです。雅人さん、亞東さん、真宮さんと入れ替わりで後退して下さい」
 呟きと、共に。
 其の手に構えたMK.15A SOPMOD2 SASR"Failnaught"のスコープから戦況を覗き込んだ灯璃が引金を引く。
 其の狙いは……。
『間違っている! 私達を、理不尽に命を奪われた者達の想いを壊したあなた達は……! 其の無念を抱いたままに殺されていった私達『ヒト』の悲しみ、嘆きを思い知……』
 無限増殖の様に呼び出される、死した『娘』達を召喚する彼女達を『導いた』とされる者を盲信するその娘。
 音も無く心臓を撃ち抜かれて頽れた彼女への憐れみを見せることなく、素早く新たな弾を装填する灯璃。
(「まあ、多少思う所がないわけでもありませんがね。戦いに狩り出されて夢破れ、そして散っていったと言う事ですから。一番の問題は、其の彼女達の『心』に付け込んだ者がいると言う事でしょうか」)
 そう内心で灯璃が呟き、続けざまにスナイパーライフルの引金を引く。
 ミハイルとは対照的に、音も無く撃ち出された弾丸が、次々に娘の足を撃ち抜き。
「利用されていようがいまいが……その道を選んだのはてめぇらだ。これだけのことをしでかしたてめぇらが5倍返しでやり返されても文句は言えねぇぜ?」
 ――ズドォォォォォォォーン!
 続けざまのミハイルのSV-98Mからの銃撃が、憐れみを受けて変色した桜の花弁を解き放とうとしていた個体の米神を撃ち抜いている。
 その哀れみを思わず向けていた者は……。
「……何処からか降ってきた逢魔弾道弾に焼かれて、思い半ばに命を散らされた影朧。其れとは別に、此処に咲き誇り、立ち続けていた幻朧桜に遣わされて人々を救済して来たが、その想いが報われる事無く死んでいった桜の精。……理不尽にも程があらぁ、な」
 それでもマルバスの魔力を上昇させて黄水晶の雨を天から降らせ続ける陽太だ。
 霧亥と雅人の奇襲で受けた傷、そして其の痛みを共有した紫蘭の傷をマルバスに癒させる陽太の口調は、重い。
「だが……例えどんな境遇にあろうとも、己が不幸を代償と称して、対象に押しつけようとすうお前達を、俺達は決して許しはしない」
 まるで自分自身に言い聞かせるかの様に。
 灯璃と美月の掩護射撃を受けながら、紫蘭の傍に残した1体を除く9体の分身の内、2体を其方に向かわせながら呟く敬輔。
 残りの分身達と共に、踊る様な足取りで戦場を舞う娘達を慈悲無く薙ぎ払う。
『いぎゃあ! 如何して、何度も、何度も殺されなきゃいけないのよ! 理不尽に奪う私達から何もかもを奪う悪者から! ……どうして!?』
 赤黒く光り輝く刃の一閃に、上半身と下半身を泣き別れにされ、自分に更に与えられた苦痛に罵声を叩き付けてくる彼女達。
 その彼女達の声が、敬輔の赤と青の色彩異なる双眸を思わず細めさせ、更に大きく顔を引き攣らせさせた。
(「どんなに理論武装をしたとしても……理解出来なくも無い感情を抱かないでいるのは難しいな……」)
 その敬輔の抱いてはいけない微かな感情の変化を見逃さぬ様に。
『だったら、私達を見て! 全てを奪われた私達の本当の姿を見てよ……!』
 悲痛な痛みを伴う叫びと共に解き放たれた呪詛を纏った桜の花弁が、矢雨の様に敬輔と分身達に降り注ぐ。
(「くっ……。嘗て復讐を志し、其れを果たした……夢を叶えることが出来てしまった僕に、彼女達を否定する事は……! 下手な同情や慰めは、却って彼女達の心を傷つけるけれど……!」)
 だって、敬輔は夢を果たした『勝者』で。
 彼女達は、夢を奪われた『敗者』なのだから。
 そんな敬輔に降り注ぐ呪詛を纏った桜雨。
「だからと言って……其の苦しみと悲しみを、生きている罪のない人達に、理不尽に味あわせるのは、間違っています!」
 その桜雨の眼前に、奏が風の結界を纏ったエレメンタル・シールドを突き出した。
 突き出されたエレメンタル・シールドに掛かった風の魔力を、シールドバッシュの要領で突風にして押し出して、桜雨を吹き飛ばし。
「愚かですよ、あなた達。得手勝手な理由で、桜の精として生まれたあなた達が、この様な蛮行を行って、私達が何故哀れむとでも?」
 思い切り冷笑を投げつけてやりながら。
 空中に浮いていた冬季が黄巾力士を嗾けて、桜雨を降り注がせた桜の精達を踏み躙り、其の拳を振り下ろして拉げさせる。
 悲鳴を上げる暇も無く死んだ彼女達の遺体を見て、そう言えば、と思い出した様に呟いた。
「大陸に居ると言われる仙人は、普段不老不死である代わりに、心が老いれば死ぬそうです。願いや望みを諦めさせられた等と言うのは寝言。心が老いたと言う事なのでしょう。であればかの仙人の如くあなた達も、早く黄泉路を辿るが幸せでしょうね」
「心が老いれば仙人は死亡する、か」
 冬季の嘲笑に、共苦の痛みが斬り裂く様な鋭い痛みを与えてくるのを覚えながら。
 暁音が何かを確認するかの様に星形魔法陣の上で、冬季の隣に並ぶ様に立って呟き、星具シュテルシアを地面に突き出す。
 星具シュテルシアの先端から解き放たれた星光の力を宿す盾にして、刃なるその結界が雨の様に降り注ぎ、娘達を切り裂いた。
 ――その度に伝えられる、苦しみと嘆きの痛みを、共苦の痛みで受け止めながら。
 暁音は其処でちらりと下を見る。
 ラムダや姫桜、葵桜に今は庇われる形になっている、紫蘭を見る。
「……紫蘭さん」
 上空からの暁音の呼びかけに。
 ふと、何かを感じたかの様に空を見上げる紫蘭に向けて、暁音の結界に斬り裂かれた娘の影から別の娘が現れて。
『貴様は……貴様だけは……!』
 憤怒と憎悪に塗れた声と共に、呪詛を纏った踵落としを叩き付けようとする娘の目前に海色の結界が展開された。
「ぷぎゅっ!」
「ああ、すみませんねー。私、……我等は悪霊なり。故に『呪詛』は、食らうのみ」
 陰海月の結界で紫蘭への攻撃を防ぎつつ、着物の裾から取り出した漆黒の棒手裏剣を投擲する義透。
 放たれた其の棒手裏剣……『漆黒風』が娘の喉を貫いて、ゴボリと血の泡を吹いて倒れる其の娘を、紫蘭が静かに見つめている。
(「紫蘭さんは何を想い、如何して此処に来ているのだろうね。でも……」)
 共苦の痛みが疼く様な痒みに近しい痛みを与えてくる。
 其の疼きの意味に、思考を傾けつつもう一度暁音が紫蘭の名を呼んだ。
「俺は、君に戦うことについて幾つか言ってきた。特に『優しい』だけじゃだめだとは何度も伝えてきた筈だ」
 時には強硬な手段も必要だと……そう、確かに暁音は嘗て一度伝えている。
 姫桜が二槍を風車の様に回転させ、其の間隙を拭う様に迫る呪詛の踊りで放たれた蹴りを雅人が退魔刀で切り捨てる。
 雅人も、姫桜も、彼女の為に、命を賭けて戦っている。
 何故ならば……。
「彼女達を見て、少しは実感できたでしょう。話し合いだけで解決できるとは限らない事を。其の為に時には、必要な事もあるのだと」
 ――だから。
「この先も戦場に立つつもりがあるのなら、少しは考えてみる事を勧めるよ」
 その暁音の粛々とした問いかけに。
「……でも、あの子達は言っている。助けて欲しいと。この痛みから、救済して欲しいって。ならば私は、私なりにその事実と向き合わなきゃ行けないの。それが……桜の精として生まれた私の使命だから」
 紫蘭の口から出た、思わぬ反論に。
「桜の精として、生まれた使命……ですか」
 破魔の銀盆で紫蘭への彼女達の蹴りを受け止めた桜花が、酷く共感と郷愁を思い起こさせる口調で小さく呟く。
(「……如何して、私が生まれたのか。何かお役目があったとしても、もう其れを知ることの出来ない私からは、何処か遠い想いですが」)
「ですが……私達、桜の精を生み出す幻朧桜……動けぬ植物の生存戦略は、元々共存か殲滅しか有りませんからね? 桜の精でありながらも尚、『人』であろうとする紫蘭さん。貴女は……どうか、退き時は間違えません様に……」
 ――彼女達を救う事は、出来るのかも知れないけれど。
 それでも『全て』を救う事が出来ないのもまた、真実の一面で。
 だからこそ……転生可能という概念を、救いを与えて彼女達を消滅させ、転生させるのもまた、桜花達『桜の精』の果たすべき使命。
(「紫蘭さん……貴女は、何時から桜の精になったのでしょうか?」)
 まるで、嘗ては『人』であったかの様に、死によって歪んだ代償を求める彼女達を尚、救いたい、と望む彼女は。
 其の胸中の桜花の問いに答えられる者達はいる。
 だからこそ、その者達の先の問いは、あの影朧と化した嘗ての、『桜の精』達の心を漣だたせる。
 ――そう。
 統哉達の、その問いは。
 そして……。


「そろそろ行くわよ! あお、もう少し食い止めて! 紅閻さんも手伝って貰うわよ?」
 ――バチリ、バチリ。
 その両掌に籠められた高圧電流を地面に向けて放出しようとしながら、姫桜がそう紅閻に援護を願うと。
「ああ。元よりそのつもりだ」
 獣奏器を奏でて動物達に依頼してこの周囲に居るかも知れない黒幕を探して貰いながら、自らの両掌に高圧電流を蓄え頷く紅閻。
(「この事件の黒幕は、何処にいる……? 逢魔弾道弾の核となった相手に、文月はある程度見当が付いている様だが……」)
 そう考えて動物達と胸中で心を通わせてみれば、視線の様な何かを感じる様なそんな感触を動物達が教えてくれた。
 けれどもそれは酷く曖昧模糊としていて、完全に『何』で有るのか迄、探り切れていない。
「……妾は貴奴等の無念に、慰めもせねば、同情もせぬ」
 そんな紅閻の表情を読み取っているかの様に。
 護鬼丸と冥風雪華に紫蘭達を守らせつつ、祥華が軽く頭を横に振った。
「御園の言う通り、桜の精として生まれた時から、そう言った感情ばかりを募らせていた可能性もあるでありんすからな。まあ、今回はそれだけでは無さそうではあるが……。いずれにせよ、帝都の火は既に鎮火しており、後は貴奴等を鎮めれば全てが終わる」
 ――決して晴れる事など無い、『代償』を望むその心を。
 この深き瘴気の中でその心を抱き、広げ続ける其の事実は、其の苦しみ、悲しみが増すだけだと言う事を、『神』として知悉しているから。
 祥華の周囲に浮かび上がるは、光輝く25文字。
「じゃが……白夜、彩瑠、文月、クラウン。ぬしらがそれでも尚、紫蘭と共に貴奴等を救いたいと思うのであれば、救われることを望まぬ者共は、妾が浄化しよう」
 その言葉と共に。
 戦場の最奥部、ネリッサ達によってほぼ掃討されていた、娘達に向かって清浄なる裁きの光を解放する祥華。
 全てを打ち砕く裁きの光が、魂事娘達を浄化した、其の刹那。
「……はっ!」
 生き残り、惑い、悩む娘達に向けて姫桜が両掌を大地に向けて叩き付けた。
 悔しさと悲しさに、キツく、キツく唇を噛み締めて。
(「全員を救う事なんて、私達には出来ないけれども……!」)
 でも、先の統哉やネコ吉の言葉に動揺してくれた彼女達だけは。
 救いたいという願いを背負った姫桜に合わせて紅閻が高圧電流を解き放つ。
 解き放たれた電流が、惑う娘達を纏めて締め上げ痺れさせ、そこに口から寿命の代償として血を滴らせた葵桜が桜吹雪を放つ。
 吹雪いた桜の花弁が、彼女達の両足を縛り上げ、其のユーベルコヲドを封じ。
 そこに……。
「そこだ! 皆、畳みかけろ!」
 前奏の終わったトッカータを奏で、温かな七色のオーロラ風を戦場に吹かせる美雪の声が響き渡った。
「やっぱり、美雪の歌は良いね! ……あの、呪詛の混ざった酷い歌には即刻黙って貰うとするよ!」
 トッカータと共に届いた温かな七色のオーロラ風に背を押された響が、娘達の背後から狐火を解き放ち彼女達の背を焼き払い。
「敬輔さん達を守る為にも、母さんに続いて、僕も行きます……!」
 続けざまに放たれた瞬の月下美人の吹雪が容赦なく戦場を包み込み、娘達の体に突き立ち、その動きを無力化させ。
「貴女達が本当に求める幸せは『革命』そのものじゃないでしょう? その先にある、自ら作り出すものなんでしょう!? なら、いい加減、目を覚ましなさいよ!」
 姫桜が温かな七色のオーロラ風と共に高圧電流を叩き込み、彼女達を痺れさせ。
「そうだよ! このままじゃ、利用されちゃうだけだよ。貴女達を出して、煽った奴等に、好きにされちゃうだけだよ! そんなの……少なくとも私は嫌だよ!」
 葵桜の神楽で吹雪いた桜が、彼女達を取り巻く風となり、娘達を締め上げた。
 その葵桜の桜吹雪に締め上げられている娘達に向けて。
「まっ、世の中には色んな人がいるものだよね♪ どちらにせよ、この瘴気から解放されないとさ、キミ達は何時まで経っても、井の中の蛙の儘だ♪ だったら其処から解放してあげるのもボク達の役割さ♪」
 剽軽に肩を竦めたクラウンが自身の胸元から獄炎を放出。
 自らの周囲で喇叭を鳴らし続けていた音楽人形、更に其の指先で操られていた10体のからくり人形にさえ、地獄の炎を解放させる。
 全部で114になる心身を癒し温める焔が戦場全体で踊る様に跳びはねて周囲を覆い、まだその身を動かす娘達に纏わり付いた。
 更に傷ついた霧亥や、其れと自らの命を繋ぎ、自らも苦痛に晒された紫蘭や、守る為に戦っていた雅人達にも。
 解き放たれた神々しい光を放つ獄炎が全ての闇を焼き払わんばかりの焔と化して、娘達を絡め取る呪詛を焼し(いやし)。
「この獄炎と氷の棺の中で、あなた方は一度、輪廻の輪に帰るべき時なんですよ!」
 ウィリアムが地表全体を永久凍土の環境へと変換させる無数の鋭利な氷刃を突き出し、次々に彼女達を串刺しにしていった。
 焔に焼かれ、永久凍土に封印され。
 それでも抗おうと、自らの受けた理不尽……運命を覆さんと欲した娘達に向けて。
「俺は、桜の精の力はやっぱり希望の光なのだと思う」
 其の手に、刃先から宵闇に輝く星彩を思わせる輝きを発させながら。
『宵』を肩に担いだ統哉が微苦笑と共にそう呟く。
『宵』に集った無数の星の花を連想させるその光が漆黒の中で一際輝いていて。
 その輝きに魅入られたかの様に、娘達は『宵』を粛々と見つめていた。
「自分達の幸せを踏み躙られても尚、沢山の魂を救ってくれた嘗ての君達は。悲しみに染まった重荷を下ろし、未来へと皆を歩ませるための灯火となってくれた君達に、俺はきっと感謝している」
 ――だから。
 其の歪んでしまった……歪められてしまった魂の形から解脱していく其の為に。
「新しい生で、今度こそ夢を叶える為に、俺は君達の転生を心から願うよ。雅人……あれを」
 その統哉の呼びかけに。
「ああ……分かっているよ、統哉さん」
 転生を拒みし魂達の血糊のついた刀身を一振りし。
 再び清浄なる銀の輝きを取り戻した退魔刀に、祈りを籠めて。
 ――更に。
「紫蘭さん! お願いします! 今こそ、転生の術式を!」
 すかさずウィリアムがそう叫び、其の意図に気がついた紫蘭が胸の前で両手を組み、そっと双眸を瞑る。
 双眸を瞑ると同時に、ふわりと彼女の周囲を風が舞い、同時に幻朧桜の花弁達がヒラヒラと舞うその姿を見て。
「……概念を、真実にするその力。此が統哉さんが仰り、義透さんが指摘した、天秤とやらの『光』なのでしょうか。ならば、私も桜の精として、手伝えることは手伝うべきなのでしょうね」
 ふわり、と桜鋼扇を翻し。
 周囲に桜花が幻朧桜の林を召喚し、幻朧桜の林からヒラリ、ヒラリと桜が舞う。
「……お休みなさい、良い夢を……」
 その、紫蘭の祈りの言の葉と共に。
 紫蘭の周囲で吹き荒れた桜の花弁が戦場を覆い尽くす激しい風を巻き起こし。
 同時に、雅人の銀閃と、統哉の星閃が、戦場を奔った。
 ――彼女達……哀れなる桜の精達のその魂の。
 脆く弱かった心に巣くった、『邪心』を断ち切る斬光と共に。


 統哉と雅人が同時に放った祈りと願いの込められた一閃。
 其れによって遺された娘達の邪心が浄化され、限界が来た彼女達がその場に頽れ。
 其処に吹雪いた桜の癒しが、彼女達を永遠の眠り……何時か目覚める輪廻の輪へと、娘達の魂を運んでいく。
「大丈夫だよ。私は、ちゃんと覚えているから」
 葵桜が桜の花弁へと姿を変えた娘達を見送り、切なげな呟きをポツリと漏らす。
「そうね。影朧としてのあなた達の嘆きは、喚きは私達も覚えているから。だから今度は転生して、幸せな未来を、笑顔を、今度こそは勝ち取ってみせなさいよ」
 その葵桜の呟きに静かに頷いて姫桜がベレー帽で目線を隠しながらやや切り口上でそう告げた。
 その目に白い雫が溜まっていたが、其れに気がついた義透は、ただ穏やかな表情でそんな姫桜を見つめていた。
 その一方で。
「ありがとうよ、紫蘭。桜の精としての誇りを取り戻させてやるために。負の連鎖を断ち切ってあいつらに希望や夢をもう一度与えるために、あいつらを転生させてくれてよ」
 ぶっきらぼうに礼を告げる陽太の其れに、紫蘭は何も言わずに首を横に振った。
(「救う事が出来て良かった……か」)
 例え、死ぬ程痛い目に遭うことがあるのだとしても。
 それでも救われない魂を救った事に対する紫蘭の満足を、繋いだ糸から感じ取った霧亥が軽く頭を横に振る。
(「……此も、幻朧桜に生み出された力。私は、これ程の力を持った幻朧桜に、何時かなる事が出来るのでしょうか……?」)
 紫蘭によって転生させられた娘達の花弁を見送りながら、桜花の脳裏に何故かそんな考えがちらりと過ぎった。
「ふう……どうにか終わったみたいだな」
 其の決着を見届けた美雪が額に滲んでいた汗をそっと拭う。
 漸く人心地という状況で、美雪がそう言えば、とやや言い辛そうに雅人に尋ねた。
「雅人さん……この状況で聞くのは浅慮かも知れないが……」
 其の美雪の問いかけに。
「何が?」
 そう軽く後ろを振り返る雅人の其れに、今、転生されていった彼女達を見送りつつ、美雪が躊躇いがちに話を続ける。
「彼女達の主張を押し通せば、結局奪い合いの連鎖は止まらず、際限ない力の増強による……世界の破滅を招きかねない結末に至る。だからこそ、私達はそうならない様に彼女達を食い止めた訳だが……」
 どう問いかけようかと、迷いながら。
 ボソボソと話を続ける美雪の其れに、雅人が軽く相槌を打つ。
「……そうだね」
 しかし、躊躇うことなく、雅人は続けてこう畳みかけた。
「でも、別に其れを今、確認したいわけじゃないだろう? 何を聞きたいんだい、美雪さん」
 そう言われてしまえば、いかに美雪と言えど、そうだなと頷くほかあるまい。
「その……彼女達というか、桜の精やユーベルコヲド使いが虐げられた過去があったのだろうか? 人智を越える力は、時に邪神や悪魔の使いとみなされるものだ。帝都桜學府の設立前に、その様な過去が全く無かったとは断言出来ないが……」
 躊躇いながらも一気に推測を吐露した美雪の其れに、雅人が軽く頭を横に振った。
「仮に其の歴史があったとしても。もう、この世界では700年以上の平和が続いている。そしてその平和を守るために、僕達ユーベルコヲド使いが生まれ、帝都桜學府が設立されたならば。そんなある意味『不都合』な歴史が、果たして歴史に記録として残るかな?」
「……其れは一理あるが……だが、彼女達の言動は……」
 そう告げる美雪の其れに。
 雅人が軽く溜息を吐き、ただ、と紫蘭に聞こえぬ様、声量を絞って言葉を紡いだ。
「ただ……紫苑や、椿さんの事を考えて欲しい。絵梨佳さんの事でも良い。今、僕が名前を挙げた人達に共通すること。それはこの世界にいる影朧達を救済するとして戦場に向かい、其処で戦死したと言う事だ。それに紫陽花さんは憤った。そして、柊さんも、影朧達に対抗する為に、人体に影響を及ぼさない対影朧兵器の開発に携わっている。つまり……」
「……望むと望まざるとに関わらず、私達の様な力を与えられた者達は、影朧との戦いという『戦争』に向かう事になる、と言う事か」
 無論、そうでないユーベルコヲド使いも多く居るだろう。
 だがこの娘達に限れば、自分達の力が在るが故に、その細やかな夢や希望を叶えられず、戦場に向かわされたのは確かなのだ。
 その痛みや、憎しみ、悲しみを、人々に無理矢理背負わされて。
「影朧兵器が異端とされる理由も、よくよく考えてみればそう言うことだと思う。戦うことを望まぬ者達に戦う力を持たせて、無理矢理戦わせる其の為に作られた兵器達。それが戦乱の世では大量に投入されていた」
 淡々とした雅人の其れに、美雪もまた二の句が継げず、重い溜息を漏らした時。
「おっと、藤崎、雅人。これ以上はのんびりしていられそうにないでありんすよ?」
 不意に、上空から祥華にそう声を掛けられて、美雪がそっと顔を上げた。
「……そうだな。逢魔弾道弾の核たる影朧を見つけ出さなければいけないか。……嫌な予感しかしないけれどなぁ」
 思わず愚痴の様に美雪がそう零した時。
「統哉。本当に警戒しなければならない、核となる相手についてなんだが……」
 そう敬輔が統哉に問いかけると。
 祈りの刃を振り切り、静かに彼女達に黙祷を捧げていた統哉がゆっくりと双眸を開き、そして厳しい表情になった。
 その赤き双眸は、ある一箇所へと、『宵』と共に向けられている。
「桜の精として懸命に生きた……生かされた彼女達。嘗て光だった彼女達を、闇へと歪めた、逢魔弾道弾の核」
 その虚ろな深淵に向けて。
 統哉が言葉を紡いでいると、その先からコツリ、コツリと軍靴の音が鳴り響いた。
「この音……軍靴で大地を踏み拉く音でございますね。……ふむ、何か記憶に引っ掛かる足音なのでございますが……?」
 ラムダのアーカイブスの中に該当する其の記憶。
 理由を手繰り寄せるべくデータを引き出そうとする間にも統哉の問答は続く。
「闇の天秤……世界のバランスの一角である悪意として在ったジャックは、椿さんや紫蘭を狙った。椿さんは恐らくその心に、紫蘭は嘗ての戦いの影響で、闇の天秤のバランスを崩す光を持っていると判断されたから。だから、2人の光が欲しかった」
 そしてあの切り裂きジャックは浄化した。
 あの戦いの中で、自分達が。
 けれども、天秤と呼ばれる程の力を望む者は後を絶たないことだろう。
 それがあれば自らの想いの儘に、世界を左右することも出来るかも知れないから。
 ――黄泉還りと、救済と呼ばれる転生が、表裏一体のコインであるのと同様に。
 ――ゴボゴボ、ゴボゴボ……。
 蛇の様に激しくのたうち回る憎悪と怨嗟……革命への妄念が呪詛と化して、溶岩の様に溢れ出す。
「……この気配。先程夜鬼が感じていた暴力的な憎悪と怨嗟の正体は……此ですか」
 ネリッサが、G19C Gen.5の銃口を統哉の『宵』と同じ方角に向ける。
 触れれば火傷してしまいそうな程に深き『業』を纏ったそれは、高らかに鳴る軍靴の音と共に、確実に統哉達に近付いてきた。
「何だよ……こいつ。こいつが、悪意の源なのか?」
 肌にざらつく様な嫌な汗を掻くのを感じてネコ吉が全身の毛を逆立てる。
「イザーク、レーヴァテイン。篁臥、白梟。何時でも動ける様に準備を抜かるな」
 そっと色褪せてしまった指輪を撫でながら静かに目配せを送る紅閻の其れに、篁臥や白梟が低い獣の唸りを上げるその中で。
「……だから、今度は己の目的を、革命を果たすために。自らが天秤の『闇』になる為に、光である彼女達を集めて闇に堕として、自らの力にする必要があったと。そう言うことかい?」
 統哉が、悪意と呪詛に満ち満ちた『闇』そのものとでも見紛う『其れ』へと問う。
「……花蘇芳?」
 其の、統哉の呼びかけに。
『もう誰にも、我を阻ませぬ。此こそが我が求めた真の力。託された遺志……!』
 理性の火が消えながらも尚、逢魔弾道弾として自ら核となった其の男が、この逢魔弾道弾から吐き出された悪意と憎悪を身に纏い。
『其れを成就する、其の為ならば……我は、全てを捧げようぞ……!』
 獣の様に花蘇芳が咆哮し、逢魔弾道弾によって撒き散らされた『負』の全てを取り込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黯党戦闘部隊『深闇』将校』

POW   :    凸式戦闘術
【闘気を纏った】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【同胞】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    死霊術式戦闘術
【銃剣】で武装した【同胞】の幽霊をレベル×5体乗せた【装甲車】を召喚する。
WIZ   :    「貴公らはこの欺瞞を棄ておくのか!」
対象への質問と共に、【冥府】から【亡き同胞】を召喚する。満足な答えを得るまで、亡き同胞は対象を【生前の得物】で攻撃する。

イラスト:ひなや

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は国栖ヶ谷・鈴鹿です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『……全てを、捧げる……継ぐべき時……来た……レリ……!』
 瞬間、漆黒の白熱が閃光と化して、戦場を覆い尽くした。
 それは、逢魔弾道弾に搭載された憎悪と憤怒、新たなる世界への希求の果て。
 其の果てを自らの手中に収めた其の男の名は……。
「花蘇芳殿……! あなたは……!」
 姿形こそ、以前、グラッジパウダーを注射した時の姿と変わらぬ。
 然れどその全身を覆い尽くすその深淵は、嘗てよりも遙かに深みを増し、それは生きとし生けるモノに原始の恐怖を呼び起こさせた。
 ――轟々! 轟々!
 鎮火した筈の、帝都の一角。
 大火の中で焼け落ちた幻朧桜達……逢魔弾道弾の落ちた着弾点たるこの戦場が、黒い炎に覆われ始めた。
『アア……我が……チカラ……! 我が……革命……!』
 恍惚とした、咆哮を上げて。
 全身に纏った漆黒の呪詛を、周囲全体を包み込む黒き焔に捧げる花蘇芳。
 刹那、1860体の銃剣で武装した黒い人影が、装甲車に乗って彼の傍に現れて。
 ――ジーク花蘇芳! ジーク花蘇芳!
 幻聴には聞こえない歓声を上げ始めた。
 それが戦場全体に木霊して、見る見る内に花蘇芳の士気を昂揚させていく。
『我が……同胞……! 世界に……憎しみを、抱く者……! 今こそ……我が下で……立ち上がる時……ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!』
 狂った様な哄笑を挙げる花蘇芳の其れに、現れた漆黒の幻影達もまた激しい歓呼の雄叫びを上げた。
「狂っている……。世界が、狂い、始めているの……?!」
 焼け落ちた幻朧桜達の生み出した人々の声を聞いた紫蘭が其の表情をはっきりと青ざめさせ。
「花蘇芳殿……! あなたは其処までして力を求めるのか……! 優しさに満ちた、この美しき世界を破壊するための力を……!」
 退魔刀を下段に構えて悲しげに目を細め、苦しげに呻く雅人の叫び等、まるで耳に入っていないのだろう。
『ヲヲ……ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ! 今こそ、決起の時……! 世界に、革命を齎す時……! 新たなる血の秩序を、齎す時……!』
 譫言の様に、世界の革命を、破壊を、戦争を、自らの手で齎す悦びを、其の夢を果たせる事への希望を紡ぎ続ける花蘇芳。
『革命』と言う名の戦争を、破壊を齎す事を望んだ煽動者は、世界を自らの色に塗り潰すべく、目前の猟兵達と対峙した。
『革命を……! この世界に、真の秩序を……齎す……モタラス……!』
 ――焼け落ちた幻朧桜達を糧に生み出した黒炎を、再びこの都市に拡大せんと。

*第3章のルールは下記となります。
1.戦場
 戦場全体が黒炎に包み込まれており、対処が必須となります。但し、単純に水を掛ければ消火できる訳ではありません。
(逢魔が辻で発生している現象です。幻影なのですが、実際に都市を燃やせる炎です)
 放置しておくと焼け落ちた幻朧桜に燃え移り、再びこの都市を火の海に変えてしまいます。対処不足でそうなったと判定された場合、シナリオ結果は『失敗』です。

2.NPC
 雅人と紫蘭の2人が戦場にいます。
 この戦いでの2人の扱いは下記となります。
 共通ルール
 *戦場からの離脱は不可(UCで部屋に匿う等も不可)
 *2人とも、猟兵の指示には基本的に従います。
 但し、他の方と指示が異なる場合、よりプレイングが良い方を優先します。

 a.雅人
 *放置しても死亡することはありません。
 *鎮火活動の手助けはしてくれます。
 *使用可能UC:『剣刃一閃』or『強制改心刀』
(プレイングで指定がある方を優先します。基本UCは『剣刃一閃』です)

 b.紫蘭
 *放置すると死亡します(UCで不死身にする等の効果も不可になります)
 *死亡した(或いは花蘇芳側に拿捕されたとMSが判定した)場合、判定は『失敗』になります。
 *使用可能UC:『桜の癒し』or『桜花の舞(UC:鈴蘭の舞相当)』
(プレイングで指定がある方を優先します。基本UCは『桜花の舞い』です)
 *鎮火活動の手伝いも可能ですが、活性化UCは『桜花の舞』で固定です。

3.花蘇芳は下記ルールで扱います。
 *花蘇芳のレベルは、最低でも『372』として扱います。
 *花蘇芳は絶対先制で、『死霊術式戦闘術』を使用します。其の為、初期の段階で最低、1860体の『同胞』がいると判定します。
 最初のこのユーベルコヲドは封じることも出来ず、『一度使われたUC』と数えません(SPDのUCをPCが使用する場合、同効果のUCを通常通り使用します)
 *花蘇芳を核にした存在について聞く事は可能です。但し其れは、花蘇芳の革命を肯定する事が『必須』になります。
 *彼の革命を肯定した場合、戦闘能力は下がるかも知れません。但し、周囲の黒炎の拡大は大きくなり、人的・都市被害の判定に影響を及ぼします。
 *花蘇芳は紫蘭を捕虜にしたい様ですが基本、目前の革命(戦闘)を優先します。
 *呼び出された同胞達に、精神洗脳・支配・無力化系のUC・技能は無効です。

 ――それでは、最善の結末を。
天星・暁音
貴方達の言う革命の大半は、ただ今の世界が憎いだけで、先の事が何も見えてこないんだよ…
悪いけどそんなもの認める訳にはいかない

エレクトラ、船の全権を任せるから皆の援護をお願い

命の息吹よ…お願い、君たちの力も貸して…俺も全力で行くから



船の操作を副長の精霊に任せて、戦域、全てに浄化と力のある金色の雨を降らせて、亡霊への弱体化と、黒炎を浄化の雨で消火しながら、植物の生長を速める力で桜の治癒と、新たに芽吹く木々で炎が広がるのを抑えて、延焼を推し留め。浄化の力の残る木々で黒炎を包む様にして圧し潰して消していきます
消耗は激しいですが、仲間を信じて自身は消火に集中します

アドリブ共闘歓迎
スキルUCアイテムご自由に


吉柳・祥華
【銀紗】

心情
普通じゃな黒炎
つまりユーベルコードで対応するしかないってことじゃろうな
ならば、妾は黒炎の対処にあたるのじゃ
これ以上幻朧桜を失うワケにじゃいかないのじゃ…(多分、それが世界を守ることに必要じゃと思うのでな…。いや、勘じゃがの…)

空中、もしくは黒炎(戦場全体)が見る場所にて
なんとか黒炎を拡がらせないように霊符を使い範囲攻撃で結界術を展開させるのじゃ

白楼、紅桜、は桜の精にはなれぬが…
この幻朧桜から生まれたモノじゃ、妾は…守ることが出来なかったからのう
せめて…この子らの

可能なら妾の使役する四神獣どもも召喚し
それぞれが持つチカラを持ってして黒炎をなんとか抑えるのじゃ
朱雀や青龍はブレスとかなぎ払いや吹き飛ばしなどで黒炎の鎮火に
白虎や玄武は皆のフォローに

白夜、妾は祈りに専念するのじゃ、おぬしはアレを片付けるのじゃ
護鬼丸と冥風雪華は紫蘭から離れるでないぞ、必ず守るのじゃ。他の連中も手伝ってくれるじゃろ
もちろん紫蘭を狙う敵は攻撃してよいぞ!

アドリブ連携技能アイテムに関してはお任せじゃ


真宮・響
【真宮家】で参加(他の猟兵との連携可)

まあ、花蘇芳がそう簡単に終わる訳ないと思っていたが、最悪の形でまた現れたね。全然嬉しくないが。

まあ、今の花蘇芳は妄念の塊だ。容赦無く骸の海に叩き還すかね。

大量の同胞は厄介だね。アタシは召喚主を直接狙う。【忍び足】【目立たない】で敵の背後を取り、【戦闘知識】で敵の動きを良く読み、【オーラ防御】【残像】【見切り】で敵の攻撃を回避。赫灼の闘気で同胞ごと攻撃。追撃で容赦無く【怪力】【グラップル】で正拳突き→【頭突き】→【足払い】で攻撃する。

攻撃が途中で中断されようと花蘇芳本人を狙うさ。アタシの方に注意がむくれば僥倖だ。コイツを止める為にはこれぐらいしないとね。


ウィリアム・バークリー
花蘇芳、本物の影朧になって現れましたか。それも、これだけの手勢を連れて。
今度こそ、輪廻の輪へ戻っていただきます。

魔導原理砲『イデア・キャノン』を起動し、影朧エンジンを接続。Mode:Final Strike.攻撃回数5倍、移動力半分。
「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」で原理砲発射!
これでできる限り同胞達を殲滅していきます。
花蘇芳は巻き込めるものなら巻き込みます。

完全に遠距離戦型なので、間合いに敵が侵入してこないよう注意。

過去の化身オブリビオンが革命とは、矛盾にもほどがあります。革命とは、人々の新たな毎日のために行われるものでしょう。
結局自分に都合よい言葉で遊んでいるだけです。


真宮・奏
【真宮家】で参加(他猟兵との連携可)

花蘇芳さんは簡単に諦めるはずは無いという事は感じてましたが、復活の仕方が最悪ですね・・・少なくとも深い闇に紫蘭さんを巻き込む訳には行きません。絶対守ります!!

白銀の騎士で移動距離を犠牲に装甲値を上げます。紫蘭さんの傍を離れないで、【オーラ防御】【拠点防御】【盾受け】【武器受け】【受け流し】【ジャストガード】でいつでも紫蘭さんを【かばう】事が出来るようにします。

敵の攻撃が猛烈過ぎるので紫蘭さんを護衛するのに精一杯になると思いますが、紫蘭さんに敵が接近するなら、【衝撃波】や【怪力】【シールドバッシュ】などあらゆる手で引き離しを狙います。


神城・瞬
【真宮家】で参加(他猟兵との連携可能)

花蘇芳は悪い意味で影響力が強い。そう簡単に諦めませんよね。でもその妄念は確実に世界を焼き尽くす。それは防がないと。

黒炎は既に広範囲に広がり始めてます。何とか消火しないと大変な事になります。花蘇芳の対処は他の方に任せて消火に専念。

精霊顕現で【結界術】のレベルを100レベルに。【高速詠唱】【全力魔法】【魔力溜め】【多重詠唱】で出来る限り【範囲攻撃】化して【属性攻撃】で結界を氷属性に更に結界に【浄化】【破魔】を併せます。

無茶したばかりで正直身体が保つが心配ですが、都市一つを焼き払われそうな事態です。倒れる覚悟でやりますとも!!


灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員で密に連携

最早、革命を言い訳に戦争をして、生き甲斐を感じたいだけにしか見えないですね…軍人以前に情けない人ですね。貴方は(呆れつつ)

初動は仲間達の動きに連携し黒炎対応に動きます。
指定UCで炎とその霊・魔力エネルギーを吸収する霧と壁の迷宮を展開、
市街への延焼及び、敵首魁からの追加の黒炎攻撃があった場合に
それを防御・消火支援する様図ります

更に敵同胞部隊の対応にあたる、ミハイルさん、寺内さん達と密に連絡を取り合い、スペツナズや味方兵の動きに合わせ、迷宮の壁や霧を適宜動かして味方の遮蔽や敵への罠になるよう再配置しつつ、敵を狙撃し支援します(情報収集・地形の利用・罠使い)

敵部隊をある程度減らせたら、UC:オーバーウォッチを使用。
花蘇芳の動きを監視し、逐次に局長達へ報告し突進や増援召喚の兆候を警告(情報収集・戦闘知識)すると同時に花蘇芳の足・武装を持つ手狙いで精密狙撃(スナイパー・見切り・鎧無視攻撃)を仕掛け攻撃を妨害し、近接戦にあたる仲間の支援に当たります

※アドリブ・絡み歓迎


ネリッサ・ハーディ
【SIRD】のメンバーと共に行動

あれが、花蘇芳…話には聞いていましたが。最早、手段の為に革命という目的すら見失っている様に見えます。強いて言えば、あれは革命ではなく宗教、狂信者ですね。

敵は少なくとも増強連隊規模。全てを相手にしている余力も時間もありません。ですので、こちらの戦力を一点に集中し中央突破、花蘇芳に直接仕掛けるのが最適解かと。
UCの大いなる白き沈黙の神の吹雪で敵を攻撃すると同時に、消火を図ります。効果があるか否か未知数ですが…少なくとも普通の水よりは効果が見込める筈です。
チャンスがあれば、花蘇芳に対しUCの邪悪なる黄衣の王で対抗。まぁ花蘇芳に手が届けば、の話でしょうけど。

アドリブ歓迎


馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
SIRD及び他猟兵との連携綿密に

うーん…かつてと比べて、目的と手段が入れ替わってるような?
ああ、蛍嘉。良いところに。
そして、陰海月に霹靂…守りを。

さて、私は私で花蘇芳殿の気を引くべく、UC(攻撃力)使用しつつ漆黒風を投擲していきましょう。
ええ、突進されたとして、それは力になりますし…生命力吸収もしますよ。悪霊ですしね?
紫蘭殿を、あんたに渡すわけにはいかない。
あと、革命は否定し続けますからねー。


陰海月、借りた黒曜山(盾。『不動なる者』ではないため未来視不可)で紫蘭さんの守りにつく。熱遮断結界もする。
霹靂、こっそり紫蘭さんの影に移動して護衛。守りは翼使用。クエッと鳴く。


外邨・蛍嘉
SIRD及び他猟兵との連携綿密に
オフロードバイクの松見草で急いできました

さて、一段落ついて急いで来てみれば。何だいこれは?
いいタイミング?それはよかった。

私は消火に回ろう。
呼び出す巫女たちは雨乞い属性でね。ただで消えない炎だろうけど、概念的に雨は無駄でないと思うしね。
加えて、癒し…鎮魂のもあるさ。巫女の役割だからね。

むろん、自己防衛できるように。藤色蛇の目傘はそのままに、広げたら盾のように使うさ。
突進は見切って避けたいけど、後ろに紫蘭さんいるなら、無理してまでは避けない。後ずさっても、戻ればいいからね。


陽凪、『大変だー!』とメガリスを消火方面へ。
いざとなったら炎を食べる。


ラムダ・マルチパーパス
SIRDの皆様方と共に行動
アドリブ及び他者との絡み歓迎

これはまた、厄介な事になりましたねぇ。敵の殲滅と消火活動を同時に行わなければならないとは。とはいえ、わたくしも微力ながら皆様のお手伝いをさせて頂きます。

紫蘭様達をUCで守りつつサンダーロアを使用、キャニスター弾を使用し敵を砲撃、味方への支援砲撃を展開致します。支援状況を見極め、余裕が出たらすかさず弾種を炸裂弾に変更、主な火災の発生源に向けて射撃します。いわゆる、油田火災を消火する手段ですね。もっとも、あの黒炎に対してどこまで効果があるか正直分からない上、火災発生付近に多少の被害が出る少々荒っぽい手段ですが…非常時故に大目にみてください。


白夜・紅閻
【銀紗】
カミサマは黒炎を抑えるために奮闘するようだけど…
ユーベル使うわけだから当然的になる…よな
その時は白梟に向かわせよう

絶対先制…猟兵の数だけってことだったけ?
個々の能力はどうなのか…ああ、装甲車か

花蘇芳は同胞を上手く動かしての攻撃になるのか
なら先に
イザークの姿の幻影を念動力を使い召喚しブレスという形で衝撃波・吹き飛ばしで装甲車同士を巻き込む形で蹂躙し
俺もレーヴァティンで斬撃波・重量攻撃・貫通撃等で
鎧無視攻撃・鎧砕き等で直接ぶっ壊せないだろうか

なんとか同胞や装甲車の数を減らしつつUCで花蘇芳へ攻撃

てめぇの身勝手でこの世界を壊させるわけにはいかない…
此処まで築き上げてきたセカイが…嘆きで自ら動きを止めてしまわないように…(セカイに意思があるとカミサマは言っていた。実際のところはわからない…。でも、このセカイが蹂躙されるのを黙って見過ごすわけには!
なんとなく似ている気がするから…。何に、なんてわからないけど)

敵対処には
オーラ防御と結果術、残像・フェイント・カウンターなどで

アドリブ連携お任せ


亞東・霧亥
【SIRD】と協力
無茶するので真の姿に変身

展開されたなら、速やかに殲滅するしかあるまい。

クリエイトフォースを『武器改造』し多数の砲身を創造、次いで宙界の瞳を全て展開。
精密射撃支援プログラムClairvoyanceを起動し、第一種臨界不測兵器と創造した全砲身をリンクさせる。
俺自身は『闇に紛れる』事で『索敵』と『追跡』に集中する。

【UC】
捕捉した敵兵に対し、全砲身から『レーザー射撃』を繰り返す。
本来の不測兵器には全く及ばないが、これなら味方を巻き込む事もないだろう。

では次だ。
UCは継続したまま、『武器改造』で砲身を銃身に変える。
砲身より一回り小さいがその分、数は非常に多い。
不測兵器をSAAのQuicksilverに持ち替え、再リンクし、明咒彈を装填する。
明咒彈に篭めるのは不動明王の『破魔』と『浄化』の炎。
『高速詠唱』で不動明王の真言を唱えつつ『クイックドロウ』で黒炎に向けて発砲。
浄炎を降らせて、黒炎の鎮火を試みる。

「やれる事、ありったけをぶつけてやるぜ!」


ミハイル・グレヴィッチ
SIRDの面々と共に行動
アドリブ・他者との絡み歓迎

やれやれ、すっかり人間辞めちまった様だな。おまけに死霊共も団体さんでご登場ときたモンだ。ま、そっちがその気ならこちらも手加減なしの総力戦でいってやらぁ。猟兵の力を、徹底的に教育してやるぜ。

ストーラウスに搭乗し、味方猟兵の盾になりつつ、UCでMi-24部隊を召喚し側面援護に廻し、花蘇芳目指して敵の群れの強行突破を敢行。ストーラウスは大きく目立つだろうから、敵の攻撃を引き付けて他の猟兵を援護しつつ、搭載火器で射撃しつつ片っ端から叩き潰し突破口を開く。

(射撃音と装甲の被弾音聞きながら)…いいね、こうでなきゃな。ようやく戦争らしくなってきたじゃねぇか。


彩瑠・姫桜
引き続き紫蘭さんの護りに専念
あお(f06218)と他の仲間に消火活動はお願いするわね

引き続き真の姿解放し[かばう、武器受け]併用

花蘇芳が呼び出した同胞が
紫蘭さんを攻撃したり捕獲したりする可能性高いから
紫蘭さんに近づけさせないように意識
【サイキックブラスト】と[範囲攻撃]併用し
できるだけ動きを止め
可能な限りドラゴンランスで[串刺し]にしていくわね

>花蘇芳
かつて対峙した時、貴方にはまだ人間としての心が残っていたように感じたけれど
今の貴方は、『革命を起こす』というその一点だけに執着しているようにしか見えないわ
自分の思想に酔って、世界を壊して…その後はどうするつもりなのよ
貴方が慕っていた紫陽花さんへの想いは、継ごうした意志はどこに行ったのよ
今の貴方は紫陽花さんの意志を継ぐどころか、
誰かの都合のいいように操られているだけじゃない

紫蘭さんは渡さない
紫陽花さんの娘の魂は貴方には渡さない

そして
貴方が、貴方のいう『革命』が
紫陽花さんの『信念』が暴走したものだというのなら
何度でも全て叩き潰してみせるわ


榎木・葵桜
黒炎の対処中心
あと増えるだろう同胞の皆さんを蹴散らすよ

紫蘭さんの護りは姫ちゃん(f04489)と仲間におまかせするね!

真の姿解放

黒炎は浄化させるのが一番なんだろうなと思うけど
それ以外でも有効なものがあるか試してみる
うまく行きそうならそれを実行
できないならうまく行った仲間の手伝いに回るよ
私自身は[衝撃波]の攻撃とか、
UCにて召喚した田中さんの炎で相殺できないかとかやってみるね

黒炎の消火以外には
その場に一般人とか残ってるようなら避難させるなども意識しておくよ

余力がありそうなら花蘇芳と対峙
あの人一発殴らないと気がすまない…!

>同胞
増加はするんでしょうけど、できる限り減らしていくようにする
姫ちゃんや紫蘭さんに近いところから対応して
姫ちゃん達の負担を軽減させてくね

>花蘇芳
なんていうか、感情論で申し訳ないんだけどさ
先日のパリでの出来事から、私、貴方のこと嫌いなんだよね
革命に酔って、思想に酔って、自分自身に酔って
たくさんの人の気持や命を踏みにじって
ほんっと腹が立つ
私は貴方を絶対に赦さないんだから…!


寺内・美月
SIRD共同参加(指揮系統からは独立)
アドリブ・連携歓迎
「……軍の本分は血の一滴まで祖国に捧ぐにありだ」
・〖霊軍統帥杖〗の効果にて即応部隊を緊急召喚。先制する同胞に対しては歩戦共同で適度に押し返す。
※この時に〖霊軍統帥旗〗を持ってこさせてUCの発動準備。
・頃合いを見計らって指定UCを発動、戦闘地域の地形を強制変更して此方の戦力を十分に展開できるようにする。
※ただし炎に関しては此方で対処できるか確信がないので、不安なら燃焼範囲は含めないように発動。
・地形変更後にUC【雷霆万鈞】(一個軍団規模)【地獄雨】(一個師団規模)【叢雨】(一個師団規模、空挺欠)を発動、敵全同胞に対し同時攻撃を開始する。
・同胞を歩兵軍団で包囲しつつ、砲撃および空爆により撃滅するよう運用。
┗POW、突進してくるなら同胞を集中攻撃し、ボスの突進威力を減殺。
┗SPD、召喚された瞬間に歩戦共同の対機甲戦闘にて車両を撃破、人員も砲迫射撃の支援を受けつつ殲滅。
┗WIZ、召喚された瞬間に砲と爆弾の雨で爆砕。
※ボスと消火は味方に委任。


朱雀門・瑠香
さてと、黒幕には興味がありますけどここで消えてもらいますよ!
黒炎の対処は他の人達に任せるとして・・・
配下の兵隊たちはその挙動を見切ってその合間を縫ってダッシュで接近。
相手の突撃は武器受けで防ぎ呪詛耐性で耐えながら紫蘭さんの処へは絶対に行かせない。
とは言えどうしよう?と考える暇もなし・・・
私にできるのは彼の浄化のみ
破魔の力をもって切り裂きましょう!


クラウン・アンダーウッド
おや、何時ぞやの先導者殿じゃないか!久方ぶり♪ジョブチェンジ?クラスアップ?して革命に対する妄執を肥大化させたご様子、取り巻きも以前より増やされたようで...お元気そうで何よりです(笑)

嫌がらせの様な所業には嫌がらせでお返ししよう♪

おいで、δ!指定対象無し、忘却の森(未完)!
戦場全体を樹海の迷路として焼け落ちた幻朧桜を壁(大樹)で覆い隠し、周辺の都市部と一時的に隔絶。
壁を障害物兼防火帯とする。

人々の更なる進化を促すための革命から世界に復讐するための革命、大義から主義への変化。堕ちる所まで堕ちたね、独り善がりの暴君殿。

黒炎の火種について情報収集して原因究明。戦闘間は相手の妨害、陽動に徹する。


鳴上・冬季
「とにかく数を減らして行きましょうか。出でよ、黄巾力士水行軍」
13体2組
14体7組
計124体黄巾力士召喚
・砲頭から水球弾で制圧射撃
・砲頭からマッハ3を越えるウォーターカッター放ち鎧無視・無差別攻撃で蹂躙
・上記2組をオーラ防御で庇う
3組1隊として3隊作成
1隊を紫蘭直掩として近づく敵全ての鏖殺命じる
2隊は花蘇芳に到達する道を作るため敵殲滅命じる
1隊を先に出し隊が半壊したら2隊目と入れ換え再編
2隊目が半壊したら再編隊を加え敵殲滅か全滅まで戦闘続行

自分は風火輪
普段から連れ歩く黄巾力士は飛来椅で空中から戦場俯瞰
黄巾力士にオーラ防御で庇わせ竜脈使い全黄巾力士に仙術での強化と攻撃に破魔の属性攻撃上乗せする


御園・桜花
「それでは私、あの鬼畜を殴り殺して参ります」

暫くは紫蘭の側で制圧射撃
敵を近付けず紫蘭守る
敵が減り紫蘭を守る手が足りたら離れUC「桜の影」
接敵ルートは第六感で選択
場合によっては装甲車の上を飛び移り近付く
花蘇芳に接敵したら桜鋼扇で殴り合い
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
躱せず盾受けして吹き飛ばされる場合もカウンターでシールドバッシュしダメージ重ねる

「全ては今上帝の掌の上。此の世をこうして護られる今上帝が貴方を唆したのだとしても。無聊を慰める為に此の場を楽しく眺めていらっしゃったとしても。此の世を護られる今上帝への私の敬愛は変わりません。貴方など…何度でも転生して、また私にぶち殺されにいらっしゃい」


文月・ネコ吉
眉間に皺寄せ
仲間と連携し行動
天候操作で雨を呼び炎鎮め
配下の霊を次々と斬り数を減らす

白紅党の決起も、その前の椿氏の件も
この逢魔弾道弾を確実に撃つ為の陽動
なんとも用意周到な事だ
そこまでして貫く革命への信念…いや、執念と呼ぶべきか
その迷いの無さだけは
ある意味羨ましくもある

誰かに憧れて
その背を追いかけて
その遺志を継ぎたくて
その力を奪いたくて
欲望に塗れた深い闇は
ある意味誰より人間らしい

奴に転生の見込みなんてあるかどうかも分からない
でも願わなければ始まらない
元より猟兵なんて常識の埒外の存在だ
不可能を可能にする
そう願ったって悪くはないさ

配下を倒し花蘇芳の威力を低減
配下のそして彼の転生願い
仲間の攻撃に繋げたい


文月・統哉
衝撃波に氷の属性攻撃を乗せて炎を払い
オーラで防御固めて紫蘭を庇う
絶対に死なせない
逆に庇い手が多いなら
宵を手に前に出て花蘇芳と刃を交えよう

突進を見切り回避
或は武器受けでダメージを相殺
カウンターで押し返し、一歩も退かない構え

世界には理不尽が溢れてる
そんな事は百も承知だ
だからこそ目を逸らさずに
どうしたいのかを自らに問う

前回もそうだったね
転生を真っ向から否定して、革命の名の元に力を望むお前を
救う事なんて出来ないのかもしれない
でもだからといって、諦めなきゃいけない訳じゃない
お前がお前の願いとして革命を叫ぶなら
俺もまた俺の願いをぶつけよう
届かなくても何度でも
それが猟兵としての俺の矜持、俺が俺であるという事だから
(桜の精達を救いたいと願ってくれた、先刻の紫蘭の様に

執念を貫く狂気と、諦めぬ想いの力
俺達はある意味似ているのかも知れないね
全てを出し切り戦った花蘇芳へ
俺の最後の一撃は
迷う事なく祈りの刃

良ければ雅人にも強制改心刀を
紫蘭に桜の癒しを頼みたいけど…いや
2人には自分自身で選んで欲しい
今こそ己の願う道を


館野・敬輔
【POW】
アドリブ連携大歓迎

貴様の革命の為に
帝都を、世界を黒き焔に包ませるわけにはいかない
…ここで確実に斬る!

鎮火活動は他猟兵に任せて
俺は花蘇芳へのアタックに専念
鎮火できそうな手段は持っていないし
紫蘭が拿捕されたら全てが終わることに変わりはないから
元凶を叩く方が早いだろう
…手が空いたら香草茶はぶっかけておくか
何らかの魔術の触媒程度にはなるだろ

指定UCで限界いっぱいまで両手から白刃を生やそう
白刃の全てに「属性攻撃(聖)」を宿らせてから
絶対先制で召喚された同胞たちを「範囲攻撃」で斬り怯ませる
同胞の数が減ったら花蘇芳の全身に白刃を集中させ斬り刻ませる
俺自身は「闇に紛れる、忍び足」で背後に回って
「2回攻撃、怪力」で花蘇芳を叩き斬るのみ
貴様の革命、成就させん!

革命は一切肯定しない
世界を破壊で更新しようとするような革命は、ただの世界滅亡だ
ただ、情報収集のための作戦として革命を肯定する者がいた場合
俺は「演技」という名の沈黙を保つことで協力する
…生真面目だから何か話すとボロ出そうだし


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

花蘇芳!
なぜてめぇが蘇っている!?

…いや、おそらくこれは本物じゃねえ
骸の海から呼び寄せられた花蘇芳か
本物の花蘇芳は巴里のカタコンブで斬ったはずだからな
ならば雅人の叫びは届きすらしねえな

花蘇芳、てめえは自ら望んで逢魔弾道弾の核になったか
ならばてめえはもう、世界の「敵」だ!!

真の姿解放(オーバーロード)
「高速詠唱、魔力溜め」+指定UCでスパーダ召喚
スパーダが召喚した短剣には
「属性攻撃(氷)、破魔、浄化」で分厚い氷を纏わせておく

…俺は氷だけ宿したつもりだったが
破魔と浄化が乗っているな
…陽太の鎮魂の想いか?

氷の短剣には同胞たちの一掃と鎮火補助を兼ねさせる形で
上空から周囲一帯を「範囲攻撃、制圧射撃、蹂躙」
俺は「闇に紛れる、迷彩」で花蘇芳の背後に回り込み「ランスチャージ、暗殺」
亡き同胞は攻撃を「見切り」避けた後二槍伸長で一気に葬る

革命は肯定せず
俺の役目は血の秩序の破壊なり
この世界のシステムは欺瞞ですらない

ただし、作戦で革命を肯定するなら
「言いくるめ」で話を合わせ協力しよう


藤崎・美雪
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

…ぁー
逢魔弾道弾の核となり得る影朧、何通りか予想はしていたが
一番出てほしくない方が正解でしたか

しかしこれはまあ…計り知れん憎悪と革命への執着心だな
逢魔弾道弾の核となって
益々手が付けられなくなった気がする

ま、私がやることはいつも通り
「歌唱、優しさ、鼓舞」+指定UCで
猟兵全員を回復しつつ再行動狙いなんだが
鎮火活動のための手数稼ぎも重要ということで
亡霊の攻撃は…気合で

一応、歌の片手間に携帯用水タンクを地面に置いておくので
魔術触媒等で水が必要な方は遠慮なく使ってくれ
何、この焔だとぶっかけたら即蒸発しそうでな

花蘇芳さんを核にしたのは一体誰…いや、何だ?
革命を肯定すれば教えてくれそうだが
破壊と革命の連鎖が世界滅亡に繋がると學徒兵らに説いてきた身としては
肯定は絶対したくないんだよな
…私、口はうまくないんだぞ?

せめて戦闘が終わったら
竜胆さんに「逢魔弾道弾の発射箇所」が判明したか否かは聞いておこう
あと、花蘇芳さんの「家族」や元部下の現況も
…核として利用しそうなのはこの辺りな気が




 ――ジーク花蘇芳! ジーク花蘇芳!
 亡霊達による歓喜と歓声が、戦場に轟いている。
 轟く歓喜に押される様にして、黒焔が焼け落ちた幻朧桜をパチリ、パチリと薪に火をくべるかの如き音と共に焼いていく。
 その燃え盛る黒焔が、周囲に広がり始めるその様と、1860体の装甲車に乗った亡霊達と共にある花蘇芳を見て。
「おやおや、キミは何時ぞやの先導者殿じゃぁないか! 久方ぶりだねぇ♪」
 道化の様に口元に笑みを浮かべ、戯けた様にクラウン・アンダーテッドが大きく両手を広げてみせた。
 其の両手の指先に糸に結ばれたからくり人形の1体、δがカシャカシャと動いて、クラウンの傍に寄り添う。
 そんなδに満足げに頷きながら。
「どうやらキミは、ジョブチェンジ? クラスアップ? して革命に対する妄執を肥大化させ、取り巻きも以前より増やされたご様子で……お元気そうで何よりです♪」
 歌う様に皮肉な笑みを浮かべると周囲の人形楽団が一斉に喇叭を吹き鳴らした。
 ――プップカプー! プッププ、プップカプー!
『邪魔を……するな……超弩級戦力……ドモ!』
 呪詛の様に呻き声を上げるや否や己が同胞達を装甲車から下ろし、まるでチェスの駒の様に移動させ、有利な陣形を整える花蘇芳。
『革命の……邪魔を……!』
 その花蘇芳の苛立ち交じりの八つ当たりに。
「最早、革命を言い訳に戦争して、生き甲斐を感じたいだけにしか見えないですね」
 呆れかえって空を仰ぎながら、灯璃・ファルシュピーゲルがそっと息を吐く。
 其の手は、何時でも次の行動を移すことが出来る様に指を鳴らす準備を整えているが、其れよりも一足早く同胞が動きだした。
『何故、革命を否定する? この世界の安寧という名の偽りの停滞がこの世界の膿となっているのが分からないのか?』
 陣形を構築した同胞の合間を縫って姿を現した亡き同胞達が、機関銃を一斉掃射。
「……!」
 突然現れた妄執の果てでも尚、問うことの出来る亡き同胞の銃撃に、灯璃が一瞬、バックステップをするが。
「あっ……!」
 薬莢を飛ばしつつ機関銃から放たれた無限にも等しい弾丸が、紫蘭に迫り蜂の巣にしようとした刹那。
「紫蘭さん!」
 エレメンタル・シールドを構え、翡翠色の結界を構築、真正面から真宮・奏が其の銃撃を受け止めた。
 だが、機関銃による連射を支援するべく前に押し出された装甲車が機銃を掃射。
 更に何時の間にか自分達を包囲する様に陣形を組み直していた数百人の機関銃部隊が、続けざまに機銃から銃弾をばらまいている。
「くっ……紫蘭!」
 其の銃弾を掻い潜る様に雅人が抜刀した退魔刀の平で銃弾を受け止め、少しでも被害を食い止めようとするその間に。
「其処の鬼畜は、私達が殴り殺して差し上げます。全ては、今上帝と、この大正の世界を守るためです。其の為に己が身を捧げる事に、何を躊躇う必要があるのでございましょうか」
 ――ドルルルルルルル! ドルルルルルル!
 と左手の破魔の銀盆を掲げて銃撃を受け止めつつ、右手の軽機関銃の引金を躊躇うことなく引き銃撃に応戦するは、御園・桜花。
(「とは言え、手数は明らかにこの鬼畜共の方が上ですか。この状況で火の手が広がるよりも先にあの黒焔を消し止めよ、と」)
「全くでございますね、御園様。本当に厄介なことになりましたねぇ。しかも黒炎が焼け落ちた幻朧桜に飛び火して広がっていくのを止めろというのも中々に難題でございます。しかもこの火災の規模では、放水のみで消火するのは難しいとわたくしめのアーカイブスの検索結果でも出さざるをえませんですし」
 紫蘭包囲下から、一斉に浴びせかけられた機関銃の鉛弾を受け止める様に。
 紫蘭の背後に立ち、モード・ツィタデレ……高密度電磁防御フィールドを展開するラムダ・マルチパーパスのモノアイが点滅する。
 漏らされた音声も、如何に今の戦況が不利で在るのかを嫌という程伝えてきており、文月・ネコ吉が反射的に眉を顰めた。
 其の腰の叢時雨の柄を握りしめ、抜刀。
 古びた脇差しながら鈍くとも鋭い光を発する其れを天に掲げると、ポツリ、ポツリと小雨が降り始める。
「……少しずつ、少しずつで良い。その黒炎の鎮火は、俺達の役割だ」
 そのまま大地を蹴って亡霊達を斬り裂くつもりであったネコ吉であったが、途切れることのない銃撃は、付け入る隙を与えない。
 小雨の様に降り注ぐ雨が黒焔に触れる度に水蒸気と化し、黒焔が広がる勢いを抑えることは難しいと見て、益々眉を顰める。
(「いや……当然か」)
 やむなく弾幕への対処に回りながら、ネコ吉は思う。
「白紅党の決起も、その前の椿氏の件も、逢魔弾道弾を確実に撃つ為の陽動だったんだからな。これ程用意周到な相手が、簡単に付け入る隙を与えてはくれないか」
 そのネコ吉の呟きに。
「ああ……全くだな」
 突き出した漆黒の大鎌、『宵』を引き戻し、クロネコ刺繍入り深紅の結界を展開、銃撃をやり過ごしながら文月・統哉が同意して。
 雅人の隣に立ち、『宵』の刃先に氷の魔力を蓄えて氷結の波を吹き付ける様にして、銃撃を凍てつかせた。
 其の余波で数人の同胞達が崩れ落ちる様が見えたが、彼の氷の刃は、同胞達の包囲と弾幕により黒焔に届かない。
(「このままだと黒焔が広がって、この都を……!」)
 そう微かな焦りが統哉の脳裏をちらりと過ぎった時。
「統哉さん。落ち着いて下さい。まだ戦いは始まったばかりです」
 何処か、静かな決意を湛えた表情で。
 両手で立花の杖を握った神城・瞬が統哉を諭す様に静かにそう告げる。
「……花蘇芳は悪い意味で影響力が強い。あのカリスマ、そして執念とでも呼ぶべきもの。そう簡単に革命を諦める様な相手ではありません」
「ああ、そうだね、瞬。その点はアタシも同感だよ。少なくとも、花蘇芳が簡単に終わるわけないと思ってはいたさ。まあ、最悪の形でまた現れたのは確かだけれどね」
 薄い猛る炎の様に赤い、赫灼の結界を張り巡らした真宮・響もまた瞬に同意する。
(「今すぐに奴の後ろに回る事は出来ない。けれども、チャンスは必ず訪れる」)
 そう状況を冷静に見て取る響の胸中の呟きに。
「母さん、奏、皆さん。もし何かあったら、後は宜しくお願いします!」
「瞬……?!」
 統哉が何をするのか、と問いかけるよりも一足先に。
「精霊達よ! 其の力をどうか、僕に!」
「……今ですね。合わせて下さい、灯璃さん」
 瞬の叫びに合わせてG19C Gen.5で援護射撃を行いつつ、状況を探っていたネリッサ・ハーディが静かに告げた。
「花蘇芳……最早、手段の為に革命という目的すら見失っているあの狂信者に、これ以上この街を焼かせるわけには参りません。SIRD……Specialservice Information Research Department。此より対花蘇芳、最終ミッションを開始します。各員の奮戦と健闘を期待します」
『Yes.マム!』
 そのネリッサの激励に、SIRD所属者達が一斉に士気を高めていく。
 その間にも、同胞達は弾幕を途切れさせることなく、進を続け、其の包囲を縮めていくその間に。
「……Einen Schritt voraus ist Dunkelheit.(一寸先は闇ですよ)」
「さあ、It’s Show Time、δ!」
 瞬が自らの周囲に9体の氷の精霊達を呼び出し、精霊達が飛翔、氷の息吹と共に編み上げた氷晶の結界が広がる黒焔を覆う様に展開し。
 更に灯璃が戦場を覆う様に漆黒の霧と黒壁が展開され、二重に其れを覆う様に大樹の迷宮が戦場を覆い尽くしていく。
 其れは広がろうとする黒焔と燃え尽きた幻朧桜達の間を隔てる様に展開され、一時的に帝都と戦場を遮断する空間を形成。
「これだけでは済みませんよ」
 更に灯璃が縦横無尽にエネルギーを吸収する霧と黒壁を自在に移動させ、瞬とクラウンをネリッサ達から引き離した。
「……灯璃さん」
 その様子を見たネリッサのそれに灯璃が小さく応えを返す。
「黒焔への対処が中心の神城さんやクラウンさんへの攻撃を、私が食い止めます」
「了解しました。其の辺りの判断は、灯璃さんに一任します」
 灯璃の解に対するネリッサが頷き、霧と樹海の迷宮による二重壁、及び氷の結界によって外界と戦場が隔離されようとした其の直前。
 ブルン、ブルン、ブルン……!
 包囲の外からオフロードバイク、松見草の唸るエンジン音が遮断されようとしていた戦場に響き渡った。
 其の聞き慣れた音を聞いた馬県・義透……『疾き者』、外邨・義紘が軽く肩の力を抜いて目を細める。
「ああ、蛍嘉。良いところに。おっと、陰海月に霹靂。紫蘭殿の守りを密に」
 其の義透の命令に。
「ぷぎゅっ!」
 陰海月が威勢の良い鳴き声と共に、潜んでいた紫蘭の影から飛び出して海色の結界を構築しつつ、盾に変形した黒曜山を構え。
「クエッ!」
 上空に飛び上がった霹靂が、地表の紫蘭を守る様に金色の結界を作成した其の時。
「良いところに? タイミングが良かったって事だね、其れは良かった」
 亡霊達の群れの向こうからも際だって良く聞こえた義透の其れに、ふう、と軽く息をついた外邨・蛍嘉が小さく頷き。
「……此処からは姿を確認できないのですが……皆さん、ご無事ですか!?」
 松見草の補助席に同乗させて貰い、現場に合流した朱雀門・瑠香が包囲網の先に向けて声を掛ける。
「……落ち着くんだよ、キミ。今、焦ったところで良い結果を生むことはないからね。でも、安心をし。私達以外にこの遮断に巻き込まれた人達はいない様だからね」
 そう告げて。
 自らの周囲に梓弓を構えた歩き巫女達を114人召喚した蛍嘉が雨乞いの儀式を彼女達に請い、願う。
 蛍嘉の願いに応じた巫女達が頷きと共に雨乞いの儀式を始め、ネコ吉が降らせた小雨を強化、大雨を降り注がせつつ。
「さて、キミはキミに出来る事があるのだろう? この黒焔は私達が何とかするから、キミはキミの出来る事をするんだよ」
「分かりました、蛍嘉さん。しかし、この状況では紫蘭さんの所に向かうのも……」
 難しい、と判断せざるを得ない瑠香の呻く様な呟きに。
「やれやれ、局長からの通信が漸く繋がったから来てみれば……随分とまあ、派手な事になっているじゃねぇか」
 口元に鮫の様に愉快な笑みを浮かべて。
 何時の間にか咥えて火を点けていた煙草をピン、とミハイル・グレヴィッチが天空へと放り投げた時。
 ――バラバラバラバラバラバラバラ!
 ヘリの巨大なローター音が天空から響き渡り、Mi-24戦闘ヘリがその姿を現した。
 ――その底部に、XPT-11B<ストラーウス>をワイヤーで繋ぎながら。
「さーて、すっかり人間辞めちまった、死霊共の団体さん連れた花蘇芳に、猟兵の力を徹底的に教育してやるぜ。おい朱雀門、ついてきな」
 落とされたXPT-11B<ストラーウス>のコクピットにラダーを使って上がって乗り込みながら。
 鱶の笑みを浮かべるミハイルの其れに、ポン! と何か名案を思いついたかの様な表情で瑠香が手を叩く。
「では、私もいっそ派手に暴れてやりましょう!」
 その言葉と共に、パチン、と瑠香が指を鳴らすと。
「……エレクトラ、船の全権を任せるから、援護をお願い」
 その指を鳴らす瑠香の姿を、繋がりの回復した『星の船』による天からの目で確認した天星・暁音が小さく呟く。
 呟きと共に、星の船の後部デッキから瑠香の傍に落とされたのは1台の20式戦車。
 其れに乗り込む様子をエレクトラが確認し、念話でその事を暁音に報告するのに、暁音がそのまま頼むよと呟き静かに双眸を瞑った時。
 その手の星具シュテルシアが星々の煌めきを受けて輝き、星屑の如き光を放出。
 それが蛍嘉とネコ吉の降り注がせる雨の中に染み込み、金色の光雨を編み上げて。
 黄金畑に自然が齎す恵みの雨の様に、幻朧桜に向かって降り注ぐ。
 その木々に降り注ぐ黄金の雨を銀髪で受け止め、水滴から流れ込んでくる癒しの力を感じながら。
(「ふむ……天星はそう来るか。じゃが、黒焔そのものをこれだけで簡単に浄化できるとは……妾には如何しても思えぬな」)
 そう冷静に、粛々と思考を進めていく、𠮷柳・祥華。
「であるならば……妾も祈りを捧げようぞ。これ以上、幻朧桜をこの世界より失わせぬ其の為にも……」
 ――多分、其れが世界を守る事に繋がるだろうから。
 そう胸中の思いを念話で、白夜・紅閻に伝えながら。
「レソ・ニーヴェオ・ディスグラーツィア・ズヴァーチ・ヘイ……」
 彩天綾を翻して空中を舞う様に飛翔していた祥華が、祈りの言葉を『世界』へと手向ける。
 手向けられた祈りの言葉を受けた黒き雨が暁音の黄金の雨と混じり合う様に、燃え盛る黒焔に向けて降り注いだ。
 降り注ぐそれが、その炎の勢いを確実に弱めるその様子を見つめながら。
「花蘇芳! 敬輔に斬られたテメェは! 自ら望んで逢魔弾道弾の核になり、この『世界』を破壊しようとするテメェは! 俺の……『敵』だ!」
 不意に冥府から現れた亡霊にその動きを妨げながらも、尚。
 哄笑するかの者の人影を目の端に捉えていた森宮・陽太が怒号を張り上げた時。
 其の顔を白いマスケラに覆われ、全身をブラックスーツに包み込まれた『無面目の暗殺者』と化した陽太がその姿を曝け出し。
「……行け、スパーダ」
 嗾ける様に、其の手の濃紺のアリスランスと、淡紅のアリスグレイヴを十文字に構えた陽太がそう告げた。
『無面目の暗殺者』……陽太の其れに応え、十文字に構えた二槍の先に、2つの角を持つ漆黒と紅の悪魔が現れて、咆哮。
 同時に1170本の凍てつく冷気を纏った刀身が紅の短剣が姿を現し、幾何学紋様的を描き出し黒炎に向かって縦横無尽に飛翔する。
 縦横無尽に走り回る短剣が祥華の降り注がせた黒き雨と絡み合い、黒炎を白き輝きと共に少しずつ鎮静化させていく。
(「俺は氷だけ宿したつもりだったが……この破魔と浄化の力は陽太の鎮魂の想い、か?」)
『無面目の暗殺者』がそう内心で呟いた、其の時。
 ――ドルルルルルルル!
 陽太に亡霊達から機銃の掃射が行われ、其れに反応するよりも先に陽太の目前が弾幕に埋め尽くされた瞬間。
「くっ……花蘇芳の革命のために、帝都を、世界を黒き焔に包ませる訳には行かない! 陽太! お前は、祥華さん達と鎮火作業に従事してくれ!」
 陽太を庇って黒剣を一閃弾幕の嵐を叩き落とした館野・敬輔が必死の形相で叫ぶ。
「……敬輔か」
「ああ……こいつらは、俺達が食い止める!」
 陽太のその言葉に静かに頷き。
 敬輔が両手から123本の鈍く輝く白刃を生やして、目前の数百体の亡者達に向けて回転させながら一斉投擲。
 全てを斬り刻む白刃が亡霊達を果敢に斬り裂いていくが、目に見えて減った、と言いきれる状況ではない。
(「いくら何でも、数が多すぎる……! 何て言うカリスマだ、花蘇芳……!」)
 お返しとばかりに撃ち返される銃撃を白く光輝く両手を突き出し漆黒の結界を形成、敬輔が受け止めた時。
「兎に角数を減らして行くべきでしょう。出でよ、黄巾力士水行軍」
 その状況を、風火輪で空中に浮かび天から其れを見つめていた鳴上・冬季が囁く様に呟くとほぼ同時に。
 地面に向かって13体2組、14体7組の分隊に編制された124体の黄巾力士達を召喚。
「1隊は紫蘭さんの直掩に。2隊には亡者達の殲滅を命じたい所ではありますが……」
 この混迷する戦場の中で、狙い通りに其の目的を果たす事が出来るのか。
 そう冬季が沈思黙考を進めた時。
「こっちに黄巾力士水行軍の2隊を落とせ、鳴上。紫蘭の直掩隊は、榎木の傍にいる武士を目標に落とせ」
 天に向かって解き放たれた赤黄緑青紫白黒の7機の飛行機……宙界の瞳から、冬季に向けて声が掛かる。
 冬季が其の呼びかけに気がついて、敬輔の傍に視線を向ければ、其処にはその瞳を紫に輝かせる男の姿。
 其の周囲に多数の砲身を創造し、紫電の光を瞳から放出する亞東・霧亥の其れに、分かりました、と冬季が頷き。
「では……黄巾力士軍第1部隊、田中さんの傍への着地をお願いします」
 その冬季の命に応じて、古代の甲冑姿の武士……田中さんと榎木・葵桜が呼ぶ霊の傍に着地する黄巾力士水行軍の1部隊。
「本当は、炎の対処に回りたかったんだけれど……田中さん! 取り敢えず紫蘭さんに敵を近づけないで!」
 葵桜が叫んで田中さんを前に出し、自らも、桜舞扇を閃かせて風を巻き起こす。
 田中さんは其の手の薙刀を一閃し、暴風の如き衝撃波を弾幕へと叩き付けていた。
 その葵桜を支援する様に、着地した黄巾力士水行軍がマッハ3……音速を超えるウォーターカッターを射出。
 目にも留まらぬ早さで放たれたそれが、一瞬途切れた弾幕の間隙を拭って亡霊達に直撃し、何人かを屠る。
 ――だが。
『革命……力……更なる……力……ユ……ケ……!』
 地獄の底から鳴り響く様な声が戦場に轟き、その声に押されて弾幕に屠られた亡霊達を踏み台にして何体かの亡者が紫蘭に迫ると。
「これだけの防衛網を突破してくるって言うの?! でも……紫蘭さんはあなた達になんて絶対に渡さない!」
 ――バリリ! バリリ!
 紫蘭に上空から肉薄してきたその亡者達に向かって放たれる高圧電流。
 其れが纏めて亡霊達の肉体を焼くかの様に痺れさせ、彼等が大きく痙攣をする間に左手のschwarzを突き出す、彩瑠・姫桜。
 その漆黒の槍が纏めて敵を串刺しにしてその動きを止め、更に反対側から迫った別の亡者達を右手のWeißで纏めて貫く。
 そのまま消失していく亡霊達の姿に、ギリリ、と唇から血を滴らせる程、きつく唇を噛み締めながら。
(「花蘇芳を盲信して亡霊になってまで戦い、紫蘭さんをも奪おうとするなんて……此の人達の戦いに、何の意味があるの……? こんな事をして、本当に紫陽花さんの『信念』を引き継いだとでも言うの……!?」)
 姫桜の千々に乱れる心を読み取ったのだろうか。
「彩瑠。今は目前の亡霊達に集中した方が良い。……イザーク、装甲車を、食らえ」
 祥華へと機銃の照準を合わせた装甲車に向けて白夜・紅閻が、姫桜を宥めつつ己がフォースイーター、イザークを嗾けた。
 まるで猫の様な顔をした、魔法使いの帽子を想起させる帽子を被ったイザークがケラケラと笑い声を上げて装甲車を食らう。
「続け……レーヴァテイン」
 続けられたその言の葉と共に。
 亡霊達の一部が搭乗している其の装甲車に向けて、終焉の炎の名を冠するイザークの『陽』たるレーヴァテインを解放する紅閻。
 放たれた重量の乗せられた漆黒の斬撃の波が荒れ狂って装甲車を叩き割り、辛うじて祥華への攻撃を止める。
「だが……まだまだ、敵が減る気配は見えないか」
「……あー、そうだな、紅閻さん。せめて、この状況を何とか打開できるだけの力を用意できれば良いのだが……」
 其の紅閻の独り言に。
 自分の目前に現れた亡霊が唐竹割りに振るった銀刀の一閃を気合いで避けた藤崎・美雪が軽く頭を横に振る。
(「逢魔弾道弾の核となり得る影朧、何通りか予想はしていたが……一番出て欲しくない方が正解だったんだよなぁ」)
「しかし此はまぁ……計り知れん憎悪と革命への執着心な事で。しかも同胞達も増えているし……手が付けられない相手とは、正にこの事だ……」
 ぼやく美雪の前には、グリモア・ムジカの譜面が展開されているが、この乱戦の中で其の歌を奏でる余裕を作ることが出来ない。
 余裕が出来れば、十分に歌える状況なのは重々承知だが……そもそも、黒焔の対処などで散り散りになってしまった者達もいる。
(「全員の力を結集すれば、未だ何とかなるかも知れないが……如何せん、もう少し全員の準備が出来るまでは耐え忍ぶしかない……か」)
 そう諦念の境地で美雪がそっと溜息を漏らした時。
「……でしたら、藤崎様。少しでも戦況を押し返すために、私も動きましょう」
 ネリッサ達に予め伝えておいた状態でSIRDの指揮系統から独立して行動していた、寺内・美月が静かに呟く。
 手に握りしめられた霊軍元帥杖を天に掲げて、即席の歩兵戦闘部隊を召喚。
 召喚された歩兵達が、1860体から、更に増えた様にも思える同胞達と真正面から向き合っているその間に。
「道を切り開く手段は、あります。ですが……準備が必要なんです。すみませんが、それまでは皆さん、防御の方、お願いします。……Idea Cannon」
 空中に巨大な魔法陣を描き出し。
 その魔法陣から魔導原理砲『イデア・キャノン』を召喚し、ルーンソード『スプラッシュ』を抜剣して。
「影朧エンジン、『スプラッシュ』接続起動。Idea・Cannon Final Mode、コード承認。形態シークエンス開始……」
『イデア・キャノン』を構えながら、其のコンソールにウィリアム・バークリーが切り札となるコードを叩き込み始めていく。
 ――其々の死闘は、未だ始まったばかりだった。


「……ぐうっ……!」
 瞬が戦場に張り巡らした凍てついた結界を破壊せんと、黒焔が迫ってくる。
 上空から降り注ぐ黄金と漆黒の雨が、凍てついた破魔を纏った短剣が、その焔の勢いを少しずつ抑え込んでいくが、足りない。
 ――何故、足りないのか。それは……。
『コロセ……! 革命の邪魔をする者を……コロセ!』
『何故だ? 何故、不合理に大切な者を奪われた者達が、其れを奪われたままにしなくてはならないのだ!?』
 花蘇芳によって冥府から黄泉還った亡霊が、瞬に銃剣を突きつけ妨害するから。
 氷の結界に残された魔力を振り絞り続けている瞬に、その銃剣が突き刺さり、ぱっ、と血飛沫が舞い、苦痛が瞬の集中を乱す。
「アハハハハハハッ! そんなものでボク達の作り出した三重の結界を破壊することは出来ないよ♪」
 からかう様に笑ったクラウンが、瞬を守る様に投げナイフを投擲し、銃剣を使う亡者を突き倒すが、彼は倒れない。
『何故だ? 貴様達が、何故守る為等と戯言をほざいて戦う? 貴様達の行いは、世界の進化を停滞させる悪しき行動なのだぞ?』
「いやいや、たかが世界に復讐するためだけの革命、まあ大義から主義に堕落したキミ達の革命なんて、させる価値なんて全く無いだろう? 独り善がりの暴君殿とお仲間さん♪」
 切って捨てる様にそう告げて。
 クラウンが肉薄しながら抜剣した、宝石花剣『Hoffnung zurück』をその亡者に突き立て、撫で切りにする。
 そうしながら黒焔の成分を分析するべく、δ以外の9体のからくり人形達に炎の勢いが弱まる様子を具に観察させていた。
「リヒト・ザラーム・インベル・セイクリッド……」
「命の息吹よ……お願い、君達の力も貸して……」
 その黒焔に上空から降り注ぐ黄金色の大雨が焼け落ちた幻朧桜に降り注ぎ、その樹木を、徐々に徐々に再生していく。
『何故、貴様達は、我等の革命を邪魔する? この幻朧桜達こそ、転生……人の記憶を奪う忌まわしき兵器だというのに?』
 命の息吹達への祈りと共に共苦の痛みを通して感じる溶岩に呑み込まれたかの様な苦痛に加え、槍を突き出し暁音に突き立てる亡者。
 亡者の鋭い刺突の一撃を、星具シュテルシアを錫杖形態にして、祈りを捧げたままに受け止めた暁音の足が縺れた。
「貴方達の言う革命の大半が、今の世界が憎いだけで、先の事が何も見えてこないからだよ」
 足を縺れさせてその場に頽れそうになる暁音。
 それでも、其の金の瞳に湛えられた真っ直ぐな意思はそのままに彼は続けた。
「貴方達は言う。転生は、記憶を奪うモノだと。其れは否定されるべきモノだと。だが、転生し、記憶の無い幼子として生まれた者達は、それ故に前を向いて、今を歩いて行くことが出来る。だから紫蘭さんも、雅人さんも此処に居る。紫蘭さんは、過去に囚われた彼女達を救うと自らの意志を示して戦った。そう言った未来を見据えて生きる者達から、闇雲に命を奪う革命を、俺には許す事なんて出来ない」
 暁音の、吐き捨てる様なその声に応えることなく無造作に槍を突き出す冥府より召喚された亡者。
 疲労で顔を青ざめさせながら、幻朧桜の生長、回復のための祈りを絶やすことの出来ぬ暁音の命を刈り取ろうとする其れに。
「……妾のことは気にするな。行け!」
 祈りを絶やさず浄化と癒しを与える黒き雨を上空から降らせ続ける祥華が其の手の指輪を輝かせ、髪留めを外して地上に投げた。
 指輪から解き放たれた白き聖獣、白虎が咆哮と共に、暁音を貫かんことを欲していた亡者を食らい。
 亡霊達が断続的に続けている機関銃による一斉掃射に向けて、青龍が口腔内に溜めていたブレスを一気に放出する。
 青光と共に解き放たれた神罰のブレスが纏めて弾幕を呑み込んだ、その瞬間に。
「……Claiervoyance、起動。第一種臨界不測兵器の出力を最大。一斉射撃、開始」
 上空に飛ばした宙界の瞳からその光景を見て取った霧亥の命令と共に、先程大量に生み出した砲塔から大量の光線が迸る。
 ――ドゥン!
 あらゆる物質、存在を破壊する破壊光線が纏めて亡者達を焼き尽くした直後。
「少しでも敵を減らします。……ミハイルさん」
 灯璃がJTRS-HMS:AN/PRC-188 LRP Radioでミハイルに連絡を取りながら、MK.15A SOPMOD2 SASR"Failnaught"の引金を引いた。
 撃ち出された弾丸が、霧亥に空けられた穴を埋めるべく現れた同胞を撃ち抜き。
「おうよ! 精々派手に暴れさせて貰うとしようかぁ!」
 ミハイルが<ストラーウス>の肩に搭載されたミサイルランチャーの引金を引く。
 次々に大地に着弾し、続々と爆発の花で、連鎖的に亡者達を焼き尽くすミハイル。
 自らの指揮官にして、傭兵であるミハイルの呼び出したスペツナズ隊員の幽霊達が側面からそこにグレネードを撃ち込み。
「黄巾力士水行軍、第3部隊、一斉砲撃開始」
 更に消火班達を襲う亡霊達の背面を取った冬季の黄巾力士水行軍、13人部隊がすかさずウォーターカッターで追撃を開始。
 3班で1小隊、全部で4小隊と2体の黄巾の結界を張り巡らした黄巾力士水行軍によるが、ズタズタに幽霊達を斬り裂いていく。
『無駄だ……! 方円陣形……!』
 何処からともなく、花蘇芳の命令が飛び交った。
 伝達されたその命令を受けた生き残った亡者達が、更に1000人近い亡者達が装甲車に乗って再び現れ再砲撃。
 打ち込まれた装甲車による機銃掃射が黄巾力士小隊を壊滅させるが、躊躇う事無く次の小隊が前進し、ウォーターカッターを発射。
 音速を超えた水刃が全てを切り裂き、更にミハイルが<ストラーウス>の背に装備された30mm機関砲の引金を引く。
 ――ドルルルルルル! ドルルルルルルル!
 巨大なウォーマシーンから掃射された機銃が全弾、装甲車の上に乗っていた亡霊達を撃ち抜きその場から滅するその間に。
「主砲……撃ちます!」
 キュラキュラキュラ……と巨大なキャタピラで地面を慣しながら、現れた20式戦車が巨大なカノン砲を景気よく発射。
 装甲車の装甲など、容易くぶち抜くことの出来る巨大な砲弾による一撃が、装甲車を撃ち抜き、そのまま只の鉄屑へと其れを変える。
「……ようし、このままどんどん、行きますよ!」
 戦車の主で有り、搭乗者でもある瑠香と、ミハイルのウォーマシーンは火力的にも、其の威容においても明らかに目立つ。
 故に花蘇芳も対応の為の戦力を其方に集中させ、ミハイル達に向けて機銃を撃ち込ませるが、結果としてそれが、紫蘭達の窮地を救った。
「着弾音を確認致しました。このミサイル爆撃音はミハイル様のストラーウスでございますね。此方の着弾音は聞き覚えがございませんが、恐らくは戦車の主砲による物でございましょう。それでは、わたくしめも此より援護攻撃に移らせて頂きます」
 霧亥の宙界の瞳から送信されたデータを元に、爆発地点を算出したラムダが、モノアイと肩のカノン砲の砲塔を120度回転させ。
 ――ズドォォォォォォォーン!
 対人用砲弾であるキャニスター弾を発射、散弾の様に拡散させて、ミハイル達の周囲の亡霊達を吹き飛ばし。
「やるなら、今……ですね。風に乗りて歩む者よ、其の絶対零度の嵐にて薙ぎ払え」
 放物線を描いてシャワーの様に降り注ぐラムダのキャニスタ-弾による効果を確認したネリッサが手を挙げる。
 上げられた手から生み出されたのは、565本の氷柱の刃。
 それが荒れ狂う氷の斬撃と化して、姫桜や統哉が対応していた同胞達を切り裂き、纏めて薙ぎ払い。
「……軍の本分は、血の一滴まで祖国に捧ぐにあり。貴様の様に祖国を滅ぼす者に、軍としての誇り無し」
 美月が冷たく吐き捨てると共に、軍師統帥杖で召喚した歩兵部隊に持ってこさせた霊軍統帥旗を構えてその場で振るった。
 統帥旗にされた美しく豪華な装飾が、眩い光と共に、先程霊達を押し返す為に用意した歩兵部隊の背後から無数のレーザーを放射する。
 放射されたレーザーが近隣の大地を撃ち抜いた其の時……。
「何だ? この地面は?!」
 雅人が動揺の声を上げるのを聞き、美雪が思わず目を細めて、作り替えられた大地を見つめた。
 正しく無骨で硬質的な、その軍事演習場の姿を。
 その中でも尚、すくすくと黄金の雨を受けてすくすくと生長していく幻朧桜並木と、対照的に収まり始めた黒焔の姿は……。
「い、いや、あまりにも混沌としていないか、これは!? と、取り敢えず多少は余裕が出来たから、今なら準備も整えられるが……!」
 やや泡を食いつつ、グリモア・ムジカに譜面を展開し、シンフォニックデバイスの音量を調整する美雪。
「……機体性能、オールグリーン。影朧エンジンフルドライブ。精霊力収束率90%……Final Modeを砲撃連射モードに変更……Holdシステム安定稼働……」
 ――ジャキン! ジャキン、ジャキン!
 コンソールに次々にシークエンスを叩き込んでいくウィリアム。
 ウィリアムのプログラムを元に、『イデア・キャノン』の姿が変形していく。
 巨大な大砲の様な形態から、その場に固定される魔道砲台モードに変形し、底部から伸びた脚立が、『イデア・キャノン』をその場に固定。
 そのままグリップを握り、情報に目を走らせていくウィリアムの目前にスコープが伸長し、ウィリアムが片目を瞑って其れを覗き込む。
「現状は、多く見積もって半分撃破と言った所でしょうか藤崎さん。……寺内さん」
 氷柱の刃で切り裂いた亡者を一瞥し、鎮火にはあまり意味が無いことを確認しつつ、小型情報端末MPDA・MkⅢに素早くプログラムを走らせるネリッサ。
 ネリッサの解析に美月が静かに頷きながら、霊軍統帥旗を振るうと。
 振るわれた其れに応じる様に、118の自動車化亡霊歩兵軍団『雷霆万釣』と、23部隊の砲兵軍団、空に23部隊の空挺軍団が召喚された。
「……圧倒的な数の暴力だが……全部体一斉攻撃開始。敵部隊を殲滅……」
 せよ、と美月が言うよりも先に。
『我等の革命……その程度で……妨害など……出来ぬぞ……超弩級戦力!』
 咆哮の様な、怨嗟の籠った叫びと共に。
「……これは……寺内さん、急ぎ後退して下さい……!」
「下がれ、寺内!」
 灯璃と、上空から状況を監視していた霧亥から、美月に同時に通信が入った。
 だが、其れよりも一足早く。
「……っ?!」
 美月の体に激痛が走る。
 驚愕して目を見開いて見れば、そこには伸長された鋭い骨の槍。
 背後から不意に迫り、自らの腹部に突き立ち、其の命を吸い上げる其れに美月が思わず喀血した。
 同時に、航空部隊たる叢雨部隊が消滅。
 続けざまに召喚された1680体の新たな増援に気がつき、咄嗟に美月が砲兵部隊『地獄雨』に一斉射撃の命令を下すが。
『サガレ……! 誰かが避ければ、タダノマトダ……!』
 嘲笑を籠めた花蘇芳の命令に応じ、装甲車から素早く離れる様に亡者達が離脱。
『地獄雨』の砲撃の嵐の初撃を装甲車以外が躱し、その場で、ただ、ただ撃ち続けるだけの部隊へと無力化させ。
 亡霊達が銃剣から一斉掃射を叩き込み、『地獄雨』部隊を纏めて撃ち抜いていく。
(「理性を失っても、指揮能力は顕在と言う事か……! 何と言う相手だ……!」)
 内心でそう忌ま忌ましさと称賛の綯い交ぜになった舌打ちする美月に向けて。
『我が革命を……邪魔できると思うな……超弩級戦力……ヲヲヲヲヲヲッ!』
 周囲で尚、銃撃戦を行う同胞達の合間を縫う様にして飛び出してきた漆黒のオーラを纏った花蘇芳が、雷霆万釣を薙ぎ払った。


「……やられましたね。部隊指揮能力の高さを読み違えていましたか。流石は、紫陽花さんの部下だったと言うべきでしょうか?」
 此方の思惑を裏切る程の力を持つ花蘇芳の其れに、灯璃が思わず舌打ちを一つ。
 多くのユーベルコードや軍事力に頼れば、元々は将校であった花蘇芳ならば、ある程度其の策を読み切れる。
 この軍事演習場という地形は、仮に其処から力を吸収することが出来ずとも彼にとっては利用価値の高い『戦場』なのは変わらない。
 花蘇芳は、尚も亡者達を残したまま、紫蘭達の前に立っている。
 ――そう。『同胞』達の力を受けて、己が力を蓄えたままに立っている。
『我が革命……何故、貴様等は否定する……!』
 怨嗟の籠められた繰り返しの叫びと共に、其れこそ目にも留まらぬ速さで大地を蹴り砕いて肉薄する花蘇芳。
 其の花蘇芳の狙いは……。
「駄目! あなた達に紫蘭さんは絶対に渡さないわ!」
 姫桜が其の間に飛び込む様に割り込み、二槍を構えてその攻撃を受け止めるが。
「ぐっ……!」
「くっ……彩瑠殿!」
 烈風を斬り裂く勢いで振り下ろされた斬撃のあまりの衝撃に、がくりと膝をつく姫桜を守る様に義透が漆黒風をすかさず投擲。
 投擲された漆黒の棒手裏剣に気がついたか、反射的に大きく後ろに飛んで其れを躱した花蘇芳に……。
「花蘇芳! お前の相手は俺達だ! 雅人! 紅閻!」
 その穴を埋める様に統哉が『宵』を構えて踏み込み、袈裟に大鎌を振り下ろし。
「紫蘭を奪われるわけには行かないんだ……!」
「同胞を上手く動かせるのは流石だが。かと言って、てめぇの身勝手でこの世界を破壊させるわけには行かない……!」
 雅人が側面に回り込む様に肉薄して退魔刀を逆袈裟に振るい、紅閻が地の底から沸き上がる様な感情をぶつけながら闇のオーラを纏う。
 漆黒の闇を思わせる其れを纏った紅閻のレーヴァテイン……終焉の炎の名を持つそれが炎の剣に変形し鋭い刺突を解き放つ。
 花蘇芳は、統哉の袈裟には右手のサーベルの背で其れを受け。
 雅人の逆袈裟の一閃には、その腕で自発的に蠢く骨を伸長させて牽制し。
 そして、紅閻の刺突は自らの左掌を掌底の如く突き出して、敢えて受け止めた。
(「……こいつ……?!」)
 黒い血飛沫を見た紅閻が自らの首筋に走る鋭い痒みに気がつき、深く潜り込む様に其の体を前傾姿勢に倒れ込ませ。
「……白梟!」
 祥華の護衛のために呼び出しておいた白梟の名を叫んだ。
 主の求めに応じた白梟が嘶きと共に、上空から其の鉤爪で強襲を掛けると、花蘇芳はそれを敢えて肩で受ける。
 そうやって、白梟に肉を切らせるその間に。
『我を止められるものか……! 我が革命を……理解出来ぬ愚か者ドモニ……!』
 咆哮と共にサーベルを頭上に振り上げて、其処から斬撃の波を解き放った。
 解き放たれた斬撃を白梟が咄嗟にその場で燕の様に翻って躱し再び上空に上がりながらブレスを吹き付ける。
 それを紙一重と言った様子で見切る花蘇芳に対して、ネリッサが、小型情報端末MPDA・MkⅢに走らせていたプログラムを起動。
「……さぁ、貪り尽くしなさい」
 起動コードは、『邪悪なる黄泉の王』
 走らせたプログラムによって姿を現したのは、見ているだけでもおぞましさを感じさせる、黄衣を纏った不定形の魔王。
(「……正直、届く自信はありませんね。相手が恐怖という感情を捨てた狂信者に成り下がっているのであれば、尚更です」)
 内心でそう思いながらも無数の禍々しい触手を、黄衣を纏った不定形の魔王に飛ばさせるネリッサ。
 高命中率の容赦の無い触手の槍の隙間と隙間を拭う様に横移動を続ける花蘇芳。
 彼の銃剣を持つ同胞達もまた、自ら肉壁となる様にその場で防御陣形を組み立てて、それらの触手をまともに受け止めている。
「此は……厳しいですね」
 背筋にひっそりと冷汗を零しながらの、ネリッサの呟き。
 だが……其の時。
「……其の迷いの無さ故に恐怖を抱くことすらない、か。ある意味で羨ましいな」
 ネコ吉が眉間に眉を寄せながら、小さく呟く。
「そこまでして貫く革命への信念……いや、執念と呼ぶべき其れは……欲望に塗れた深い闇は、ある意味誰よりも人間らしい」
 ――けれども。
「だからと言って、お前達の事を肯定する理由は、俺達には無い。だから……」
「ええ、その通りですね、ネコ吉さん」
 ――ゾワリ。
 其れは、母なる揺り籠の如く。
 ありとあらゆる過去を呑み込み……同時に世界の全てを無へと還す『其れ』の陰気が不意に周囲を押し包んだ。
(「……これは……渾沌氏……? いや、俺の此と同種の力……か」)
 だからこそ、其の力の纏い主は、敬輔の力を隠す。
 それが……敬輔と響を深き闇の其処に隠すことの出来る『海』となる。
 そう……屑鉄と化した装甲車の上を跳び跳ねて、上空から肉薄する桜花の影は。
 その手に掲げる桜鋼扇を開き。
 大上段から振り下ろし、花蘇芳のサーベルと真正面からぶつかり合った。
「此も全ては、今上帝の掌の上の物語。此の世をこうして護られる今上帝が、貴方を唆したのだとしても」
 ヒラリ、ヒラリ。
 桜鉄扇の刃先を風に靡かせる様に振り上げながら桜花が淡々と話を続ける。
 銃剣を構えた亡者達が、桜花の背後から彼女を蜂の巣にするべく銃を構えるが。
「黄巾力士水行軍、一斉射撃」
 上空の冬季からの声と共に、紫蘭の直掩についていた1部隊が、一斉にウォーターカッターを掃射。
 其の銃剣の先を斬り裂いたところで。
「私だって、あの人に言ってやりたいことがあるんだから! あなた達、邪魔しないで! 田中さん!」
 葵桜が胡蝶楽刀の鈴を鳴らして衝撃の波を撃ちだし、亡者達の一部を食い破り。
 更に田中さんが薙刀を横一文字に薙ぎ払い、亡者達の一部を封殺する。
 葵桜の援護を背後で受けながら、桜花は微笑みを崩さぬ儘に。
「無聊を慰める為に此の場を楽しく眺めていらっしゃったとしても。此の世を護られる今上帝への私の敬愛は変わりません。貴方など……何度でも転生して、また私にブチ殺されにいらっしゃい」
 桜鉄扇に纏わせた骸の海に由来する陰気の力を解放した。
『ガガッ?! 我が、革命……革命を……侮辱するカ……!?』
「世界を破壊で更新しようとする様な革命等……只の世界の滅亡に過ぎない! そんな下らない革命を俺達が肯定などするものか!」
「そう言うことだよ、花蘇芳。最早妄念の塊と化したアンタには、桜花が呼び出したこの陰気の揺籠の中がピッタリで……!」
 其の叫びと、共に。
 花蘇芳の背後に2つの殺気が忍び寄り、白刃と全てを焼き尽くす赫灼の闘気が熱風と化して、花蘇芳を襲った。
『がっ……?!』
 敬輔の白刃による間断無き斬撃と、響の燃え上がる闘気に背中を焼かれ、グラリと僅かに傾ぐ花蘇芳。
「ついでに、こいつがお似合いさ!」
 そのまま闘気を籠めて腰を深く落として正拳突きを響が叩き込み、続けざまに後ろから強烈な頭突きをぶちかます。
『ググッ……!』
 其の鉄の頭かと思わんばかりの頭突きを受け止めるべく白骨を伸長させ、響の急所を貫こうとする花蘇芳。
 ぱっ、と響が後ろに飛びずさり、急所への刺突を躱して距離を取ったところで、側転の要領で飛ぶ花蘇芳。
 花蘇芳は、先程呼び出した亡者達の間に割り込む様に入り、自らの身を護る様に影に潜んで傷を癒すべく猟兵達を待ち伏せる。

 ――戦いは未だ、終わる気配を見せていない。


 ――ザー……ザー……。
 黄金と黒の雨が降り注ぐ。
 其の雨の中でユラリ、ユラリと陽炎の様に立ち、静かに祈りを捧げ続ける祥華をサポートする様に。
 エレクトラに任せてきた星の船が全速前進、地面から祥華に向けて突き出される銃弾を受け止め続けていた。
 ――グラリ、と。
 黄金の雨を降らせ続けていた影響だろう。
 激しい頭痛が暁音を襲い、同時に深い疲労が波の様に自らの全身を侵食してきた。
(「もう大分、黒焔は収まっているけれども……」)
 だが……まだだ。
 まだ、完全に鎮火したという状況には、程遠い。
「大変だーっ! 大変だーっ!」
 其れは鳴き声、ではなく慌てふためく悲鳴。
 メガリスを食らった事のある陽凪が、まだ収まりきっていない黒焔に向けて、自らが嘗て食らったメガリスを放出。
 メガリスの力で更に鎮火は加速したが……。
「まだ、足りないねぇ」
 迫り来る亡者達の銃剣の構えからの突進を。
 ひらり、ひらりと衣の裾を翻して躱す蛍嘉に、クラウンが軽く肩を竦めて見せた。
「これ以上の被害の拡大は報告されていないから良いかと思っていましたが……このままにしていたら、確実にボク達が持ちませんね」
 ――だから、必要なのだ。
 後一手……浄化と破魔の力を持つ、そんな光が。
 自らの同胞達を隠れ蓑にして横っ飛びに戦場に掻き消えた花蘇芳の様子をちらりとみながら、さて、とクラウンが息をつく。
「如何したら良いのかな? 誰かが後一押ししてくれれば大丈夫だけれど……?」
 と、此処で意味ありげに。
 クラウンがちらりと目配せを霧亥に送る。
 蛍嘉もまた、何となく其の状況を把握していたのだろう。
 ミハイルが幾度目かのミサイルランチャーを発射し、それが亡者達の群れに着弾、激しい爆発に巻き込まれ消えていったのを見つめながら。
 自らが呼び出した巫女達の雨乞いの儀式で、暁音と祥華の降らせ続ける雨の勢いを強化しながら1つ頷いた。
「霧亥。アンタの出番だろう? もう、此の正体は分かっているんだ。きっと、アンタの力なら鎮火の最後の一押しになるんじゃないだろうかね?」
 そう、蛍嘉が呟いた、其の刹那。
 紫蘭を囲う亡者達の群れ側から暖かく、優しい七色のオーロラ風が吹き荒れた。
 それが、上空に配備した宙界の瞳の白号が捉えた、美雪が奏で始めた歌声によって発生した風なのだと霧亥は気がつく。
 ――諦めない意志を称賛し、貫く事を願うトッカータに其の背を押されて。
「そう言うことだったら、俺のやれること、ありったけを、ぶつけてやるぜ!」
 紫色の雷光の如き光を、その瞳から放出しながら。
 先程作成した数多の砲身を、その場で即座に改造し、銃身へと作り替える霧亥。
 全体的に一回り砲身が小さい分、小回りが利き、また非常に数の多い銃身達。
 大量の銃身を用意した上で、破壊光線兵器である不測兵器からにQuick silverへとクイックドロウ。
 其の弾倉に、素早く明咒彈を叩き込み、銃の安全装置を外して……。
「ノウマク サンマンダ バザラダン……!」
 すかさず不動明王の真言を唱えながら、不動明王の『破魔』と『浄化』の炎を籠めた明咒彈を撃ち出す引金を引く。
 不動明王の詠唱に気がついた亡者達が咄嗟に装甲車を前面に押し出して、そんな霧亥を機銃で撃ち抜こうとするが。
「はっ……俺達を出し抜こうなんぞ、100年早いんだよ!」
 好戦的な肉食獣の笑みを浮かべたミハイルが鼻で笑いながら、<ストラーウス>の肩に取り付けられた30mm機関銃を掃射する。
 ――ドルルルルルルルルッ!
 腰を据えて放たれた機関銃の弾幕が装甲車に大きな穴を穿ち、そのまま崩れていくのに慌てて退却を図ろうとする亡者達。
 だがそれは、霧亥が空に飛ばした宙界の瞳で戦況を捉えた灯璃の予想の範疇内。
 同胞達を射撃で食い止めながら、霧と黒壁を素早くミハイルの前から逃亡を図ろうとした亡者達の逃げ道を塞ぐ様に再配置し。
「……Товарищи、一斉射撃!」
 ミハイルの号令一下、アサルトライフルを構えたスペツナズ隊員達の一斉掃射が横一面に激しい火線を構築、亡者達を撃ち抜いた。
(「……いいね。漸く戦争らしくなってきたじゃねぇか」)
 血みどろになって倒れる亡霊達の姿と、戦場全体に激しく響き渡る銃撃の音。
 其れが、他に出来る事の無い……そして今も変わらない……傭兵として聞き慣れた戦いの匂いと共にミハイルの魂を揺さぶるのが。
 ――俺にとっては、愉快で堪らねぇんだよな。
 とっくの昔に良心の呵責等と言う甘い感情は戦場に立つ上では捨て去っているし、必要であれば非道な作戦も躊躇わない。
 だが……やはりそれを『人同士』ではなく、過去から現れた敵で幾らでも出来る事実は、ただ、愉悦のみをミハイルに与えてくれる。
「そう言う意味では俺も人間辞めちまったあいつとあまり変わりねぇかも知れないが……構うものかよ。なあ……亞東?」
 そのミハイルの呼びかけに応じる様に。
「ノウマク サンマンダ……!」
 不動明王の真言を唱え続けながら、鎮まりつつある黒焔に向け、明咒彈を撃ち続ける霧亥。
 幾重にも作り替えられた無数の銃身の口から吐き出された無限にも等しい弾丸が、黒焔に着弾し、眩い光彩を解き放った。
「……どうやら、陽太の想いが正解だったか」
 七色のオーロラ風に同様に其の背を押された『無面目の暗殺者』陽太が小さくそう呟き、同時にアリスランスを握る左手を挙げる。
 ゆっくりと上げられた淡紅色の光に導かれる様に咆哮するスパーダ。
 其の咆哮と共に再び其の周囲に1170本の紅の短剣が浮かび、踊る様に幾何学紋様を描いて、明咒彈に被さる様に黒焔に突き立った。
「セイクリッド イン ダークネス。……天星、正念場じゃぞ……!」
 鎮静化していた黒焔が不動明王の真言と陽太の凍てついた破魔と浄化の力に抑え込まれたその瞬間を見て祈りを強める祥華。
「そうだね。この命の一滴までを使い尽くしてでも……皆、最後まで俺に力を貸して……!」
 全身が身を削られる程の痛みと疲労感に苛まれながらも、暁音もまた頷き、星具シュテルシアを高々と掲げ上げた。
 錫杖形態の星具の先端から迸る星屑の光。
 それが、まるで暁音の命の煌めきと輝きを現すかの如き極光の光と化して、黄金色の雨を煌めかせ激しく黒焔に降り注ぎ。
「まだ……まだ……! たとえ、此の身が朽ちて倒れようとも……!」
 同様に氷の精霊達の力を最大限に酷使した反動で、全身の皮膚が破れて血を滲ませながら瞬が両手で強く六花の杖を握りしめる。
 その杖の先端から迸る氷色の其れが、9体の精霊達の息吹と絡み合い、クラウンと灯璃と共に戦場と帝都を遮断していた結界を一際強化。
 月読みの紋章が瞬の背後に浮かび、それが暁音の星々の光に照らされて、煌々とした煌めきと共に、眩い浄化の氷嵐を巻き起こした。
「若い子達には負けてられないねぇ。私達も最後まで頑張るよ。……それも、巫女の役割だからね? そうだろう、アンタ達」
 戦場全体を凍てつかせ、更に黒焔を浄化させる光に溢れるその場所で蛍嘉が自らと共にいる巫女達に呼びかける。
 巫女達はそれに頷き、黒炎達から、生長し、嘗ての姿を取り戻した幻朧桜を守る雨の城を組み立てた時。
 ――再び生長し、嘗ての姿を取り戻した幻朧桜達が、黒い雨に癒され、暖かく優しき桜吹雪を戦場に吹き荒れさせた。
 吹き荒れた桜吹雪が最後の残りカスと為った黒焔を、欠片も残さず消失させて。
 同時に、あまりにも濃密で濃厚すぎた瘴気の気配が浄化と破魔の温かな光に包み込まれて急速に萎んでいくのを感じ取る祥華。
 彼女のペットであり、姉妹でもある白桜と紅桜が、先程までの震えを抑え、少しだけ嬉しそうに微笑むのに祥華が淡い笑みを浮かべた。
「……お主達は、桜の精にはなれぬが……あの幻朧桜達から生まれたモノじゃ。お前達の求めるモノが手に入るという奇跡が起きるのであれば……妾も其の背を押そう」
 祥華の其の、言の葉と共に。
 自らの紅の耳飾りを外し、更に1個の『器』を懐から取り出す祥華。
「朱雀、玄武。未だ戦いは終わっておらぬ。この戦局を打開するためにも、朱雀門達の手伝いをするのじゃ。天星、神城。お主等は少し、休むでありんす」
 其の呟きと共に。
 ふう……と祥華が耳飾りと器に息を吹きかけて、四聖獣に現世に出現させた。
 其の力を与えられた鳳凰……朱雀が深紅の翼を広げて嘶きを上げると共に、瑠香の背後に迫っていた亡霊達にブレスを吹き付け。
 更に大地に降り立った巨大な亀の様な姿をした玄武が、自らの体を力場の支点にして結界を展開して。
 力を使い切ったか、その場に蹲る様に倒れ込む瞬と、星具シュテルシアを何とか支えにして膝をつく暁音を護る力となった。
 白虎と青龍もまた、周囲を警戒する様に唸り声を上げ、肉薄する亡霊達を食い止めてくれるのに安堵して。
「……瞬さん」
 そのまま安らかな寝息を立て始めた瞬の背をそっと擦った暁音が、何とか星具シュテルシアを手にその場に立とうとするが。
「ああ、そんな体で戦場に戻るのは行けないよ。怪我人、疲労人はきちんと休めるべき時には休むのが仕事だからね」
 暁音の目の下に出来上がった大きなクマと、眠る様に頽れた瞬に蛍嘉が陽凪と共に其方へと近寄り、休ませる様に横たわらせる。
 その様子を陽凪が見つめ、ドクターフィッシュの面子に変えて、玄武の結界に護られながら彼等の治癒と看護を行うその間に。
「……急ぐぞ、霧亥」
『無面目の暗殺者』を名乗る陽太が淡々と霧亥に呼びかけると。
「ああ……当然だ、森宮」
 同じく紫電の光を残像に変えて、その場から影の様に姿を眩ました霧亥が陽太と共に、花蘇芳がいる戦場に向けて影の様に走り出す。
「おらおらおら! てめえ等の相手は俺だよ! 精々、もう少し気張って……楽しませてくれやぁ!」
 豪快で、粗雑な笑い声を上げたミハイルの<ストラーウス>から発射された幾度目かのミサイルが着弾した爆発を隠れ蓑にして。
「私も……目一杯行きますよ!」
 立て続けに20式戦車から巨大な砲弾を、花蘇芳と亡霊達に向けて瑠香が吐き出し。
 影の様に消えていった陽太と霧亥の後を追って戦車のキャタピラを走らせ始める。
 其の一方で。
「おっと、それじゃあ朱雀門さん? 此処はボク達が引き受けるから、キミ達は、任務を無事に果たして下さいよ♪」
 そう告げて。
 クラウンがからくり人形達と共に、ミハイルの<ストラーウス>の背中に飛び乗り人形楽団に高らかに喇叭を吹き鳴らさせる。
 そう……まるで、軍楽隊の如き、其の音楽を。
 士気高揚の為の音楽が奏でられ、それに後押しされる様に七色のオーロラ風が瑠香の20式戦車を後押しする。
 そのまま高速で花蘇芳の方に向かう、瑠香の20式戦車を横目の端に捉えて。
「と言う訳で、ミハイルさん。ボクも此方のお手伝いをさせて貰いますよ?」
 道化の様に笑い、<ストラーウス>の背でウインクをするクラウンに。
「はっ……。戦争じゃ、軍楽隊ってのは、真っ先に狙われて死ぬのがお約束だぜ?」
 肉食獣の笑みで冗談めかして告げるミハイルの其れに。
「ハッハッハッハッハ♪ だからこそ、良い陽動になるんじゃないですか♪ 後は朱雀門さん達に任せましょう♪」
 何処か満足げにからかう様に笑うと共に、パチン、と指を鳴らして全てを忘却する樹海の迷宮を再作成するクラウン。
 同時に10体のからくり人形達に投げナイフを握らせて、ミハイルの30mm機関銃の銃撃に合わせて一斉投擲。
 ――プップカプー! プッププ、プップカプー!
 そんなクラウンとミハイルの陽動を後押しするかの様に。
 クラウンの人形楽団が仰々しく行進曲を鳴らした時。
 黒焔の防衛のために回っていた花蘇芳の同胞達が、暁音や瞬、蛍嘉から一斉に意識を外し、ミハイルとクラウンに殺意を叩き付けた。
「……やっぱりこうでなきゃな、戦争は。此なら最後まで退屈せずに済みそうだぜ」
 何処か歓喜に満ちたミハイルの、その声に応える様に。

 ――黒焔は無事に消し止められ、戦局は刻一刻と変化を続けていく。

 其の変化の流れが猟兵達の方に決定的になる其の時まで……後、少し。


「黒焔は無事に消し止められましたか。一先ず情報の共有を急ぎましょうか」
 其の状況を空から浮かんで見つめていた冬季が小さくそう呟き。
 飛来椅に座り、空から状況を監視していた自らの直衛の黄巾力士に頷いてみせる。
 冬季の頷きに応えた直属の黄巾力士が飛来椅で、下方の紫蘭と其れを護る様に円陣を組む、姫桜、葵桜、ラムダ、奏の元へと向かう。
 其の傍では義透が睨みを利かせて、漆黒風を投げつけて牽制を行い、陰海月が黒曜山の盾を構えて海色の結界を張り巡らしていた。
「状況は少しずつ好転してきている様ですが、油断は禁物と言った所でしょうか」
 其の戦況を見据えて粛々と口に出して確認する冬季。
 実際、一度は花蘇芳に肉薄した統哉達もまた、再び進路を遮る様に姿を現した銃剣持ちの同胞達によって、足止めをされている。
 また後方では、砲台としての完全変形を完了させた『イデア・キャノン』を構えたウィリアムがスコープを覗き照準を合わせていた。
 其の背後から忍び寄ろうとしている亡者達に気がつかない様子を見せながら。
「ふむ……では、私も行きますか。黄巾力士水行軍残存部隊は、ウィリアムさんの周囲に集結。其の後、彼の回りに集まる亡者達を掃討しなさい」
 その冬季の命令を、意志を受けたのか。
 其れまで亡霊達の排除を最優先としていた黄巾力士水行軍達が、其の砲塔をウィリアムの背後に回った亡霊へと向けた。


「……?! しまった、懐に潜り込まれた……!?」
 思わぬ亡者達の肉薄にウィリアムの顔から一気に血の気が引く。
 砲撃モードに完全変形を完了させ、其の魔力を砲塔に収束させ、最終攻撃を行おうとしていた『イデア・キャノン』は機動力を犠牲にしている。
 ウィリアムが覚悟を決めた、その瞬間。
 ――バシャァ!
 ウィリアムの後方から、不意に放たれたウォーターカッター。
 其れに無残に斬り裂かれた亡霊達の姿を見て、ウィリアムがはっ、となり其れを使う黄巾力士水行軍を操る冬季の方を見る。
 冬季はそんなウィリアムに軽く頭を横に振り、そして諭す様に言の葉を紡いだ。
「超弩級戦力のウィリアムさん。この戦局を打開するためであれば、帝都桜學府の一学生として、私も協力を惜しみません。ですので、後はお任せしますよ。援護を続けよ、黄巾力士水行軍」
 冬季の言葉に、ウィリアムの周囲に陣形を組み直し、一斉射撃と黄巾色の結界で、ウィリアムへの肉薄を妨害する黄巾力士水行軍隊。
 その瞬間を、戦局打開の好機を与えられたのだと悟ったウィリアムは。
「ええ、分かっていますよ、冬季さん」
 静かにそう頷いた。
 その時、『イデア・キャノン』の砲塔に集った氷の精霊達の精霊力の臨界が……。
「120%突破。……オーバードライブモード掃射準備完了。遅くなりましたが……此で行けます……!」
 その言葉と、共に。
 コンソール画面に現れた承認のパネルをタッチしながらウィリアムが咆哮した。
「Mode:Final Strike。……GO TO HELL! オブリビオン!」
 其のウィリアムの咆哮に応える様に。
『イデア・キャノン』が最終殲滅形態としての其の真の姿を露わにし、全てを凍てつかせる氷の波動砲を連続で5発撃ち出した。
 亡者達を影も形も残さぬ程に凍てつかせ……消失させる、爆発的な衝撃の波を。


「! 前方で超氷結帯の砲撃を確認致しました。これより道を切り開くため、わたくしめも援護に回らせて頂きます」
 波動砲、とでも呼ぶべき圧倒的な衝撃の波をセンサーで感じ取ったラムダがピコピコとモノアイを驚愕に点滅させる。
 そうしながら、その肩のM19サンダーロアを爆発的な精霊力臨海地点に向けて、放物線を描いて撃ち出した。
「局長、ミハイルさんより入電。『戦闘中。然れど黒焔の鎮圧には成功。此よりクラウンと協力して、残存戦力に陽動を行う』との事です」
 そう呟きながら、MK.15A SOPMOD2 SASR"Failnaught"に新たな弾丸を装填し、音無きスナイプを開始する灯璃。
 目にも留まらぬ速さと正確さで撃ち出された砲丸が、ネコ吉が鈍い銀刀で斬り合っていた同胞の頭部を撃ち抜き其の始末を完了していた。
 ラムダや姫桜、葵桜、奏に四方を守る様に囲まれている紫蘭は、目前に集まった莫大な精霊力を、声もなく見つめている。
「……此方、帝都桜學府學徒兵の冬季です。上空から見ている限り、花蘇芳の同胞達との戦いは間もなく決着がつきそうです」
 そこに降り立ったのは、黄巾頭巾から手渡された其の式神。
 それを読んだネリッサが、灯璃との報告も合わせてそうですね、と首肯する。
 花蘇芳に手痛い反撃を被った美月は、美雪の温かな七色のオーロラ風を受けて傷を癒し、左手で霊兵統帥刀を抜刀し。
「此処で名誉挽回と行きましょう。……視認完了。変換開始」
 右手の霊軍統帥旗を高々と掲揚し、其の装飾からホーミングレーザーを全方位に向けて一斉掃射。
 紫蘭達と、統哉達先行班を分断し、各個撃破に移ろうとしていた花蘇芳達の同胞達をホーミングレーザーで纏めて薙ぎ払い。
「……参る!」
 尚、撃ち漏らした亡霊に肉薄して霊兵統帥刀を振るい、其の亡霊達を血祭りに上げていく。
 儀仗や、象徴的な一面の強いものが多い軍刀だが、名匠に打たれた霊兵統帥刀は、兵仗的な逸品だから。
 銀刃が、其の輝きを一切曇らせること無くホーミングレーザーで射貫かれた同胞達を瞬く間に斬殺する。
 更に……。
「田中さん!」
 紫蘭の右を守る葵桜が田中さんに命じて、薙刀を一閃させ、鋭い衝撃の斬撃が軍事演習場の大地を抉り同胞達を一掃し。
「これ以上、此処で時間を無駄にするわけには行かないのよ……!」
 姫桜が叫びと共に両掌に蓄えた高圧電流を二槍に伝え、二槍を大地に突き立てた。
 大地を走る高圧電流の竜達が其の顎を開き、同胞達を纏めて痺れさせたところに。
「これ以上、紫蘭さんに近づけさせはしませんよ! 母さんと統哉さんと一緒に、前に出て戦ってくれている雅人さんの為にも!」
 奏がシルフィードセイバーを白銀の輝きを纏わせて、其の剣を大地に振り下ろす。
 振り下ろされた大地が砕け、その砕けた後を、風の精霊達の力を纏ったエレメンタル・シールドで押し出すと。
 風に押し出された岩礫達が、爆発的なスピードを伴い、周囲の同胞達を打ちのめした、其の時。
「もう一度、行きます。……出でよ、絶対零度の嵐。風に乗りて歩む者達よ……其の力を持って全てを薙ぎ払え」
 ネリッサの言葉と同時に、小型情報端末MPDA・MkⅢにプログラムが走り、其れを受領したコードが端末に浮かぶ。
 ――スノウスートム・オブ・イタクァ。
 そう名付けられた、氷柱の如き565の刃が空中へ解き放たれ、重力加速度を乗せて一気に氷柱の如く降り注ぎ。
 周囲の残存の同胞達を一掃し、ネリッサ達が進む道が漸く開けた、正にその時。
「過去の化身オブリビオンが革命とは、矛盾にも程がありますよ!」
 前方でウィリアムが叩き付ける様に言葉を投げつけると共に、『イデア・キャノン』最終殲滅形態のトリガーを引いていた。
 収束された爆発的な数の氷の精霊達を凝縮した一矢が、地面に叩き付けられて、ごぅん! と轟音と共に地面を揺らし。
 続けざまの2発目は、先程ラムダが発射したキャニスター弾を受け止めて、自己鍛造弾の如く拡散し、次々に同胞達を穴だらけにし。
『イデア・キャノン』に取り付けた影朧エンジンが熱で悲鳴を上げているのを気にせずに、3発目の殲滅波をウィリアムが発射する。
 発射された波動の如き砲弾が、鋭く研ぎ澄まされた矢の如く同胞達に穴を空け、そこに畳みかける様に4発目を放射。
 氷の精霊達によって作られた極太のレーザーの様な巨大な氷柱が鏡の如き煌めきと共に、同胞の一角を撃ち抜き戦列に穴を空けた。
『ぐぐっ……我が同胞達を……!』
 次々に消失する同胞達の姿を見て、冥府から死した同胞を黄泉還らせる花蘇芳。
『何故だ? 何故貴様達は、失われた魂達に、哀悼を捧げる事無く我等を滅ぼす。我等の革命を否定する者が、我等を滅ぼして良い理由が何処にある?!』
 呼び出された同胞が5発目を射かけようとしたウィリアムに向けてそう叫びながら一発の狙撃銃の引金を引く。
 ネコ吉が、ウィリアムの眉間を狙うその一撃に眉を寄せながら叢時雨を一閃。
 其の銃弾を切り捨てながら。
「誰かに憧れて、其の背を追いかけて、其の遺志を継ぎたくて、其の力を奪いたくて、其の欲望を満たそうとしたお前達。俺達はそんなお前達に、ただ……その魂に輪廻に戻って貰いたくて、生まれ変わって欲しいそれだけだ。俺は只、其れを願う。だからこそ、お前達を今、この場で倒している」
 ネコ吉の言葉にウィリアムが静かに頷き、其の後を引き取る様に話し続けた。
「そもそも革命とは、人々の新たな毎日のために行われるものです。それを、自分勝手な都合で歪めて解釈し、言葉を弄ぶあなた達を……」
 ――プスン、プスン。
 ほぼ壊滅している同胞達。
 一方で、『イデア・キャノン』もまた、とうにオーバーロードを起こして、銃口から白い煙を立てている。
 その砲台全体も彼方此方ガタが来ていて、今にも空中分解しそうな有様だった。
「だから……この一発が、この『イデア・キャノン』の最後です」
『革命』と言う名の欺瞞を口に出す、貴方達への贖罪を。
「促すための……一撃です!」
 その言葉と、共に。
 限界が近いことを承知の上で、ウィリアムが最後の一発を解放するため、『イデア・キャノン』の引金を引く。
 最大火力の波動砲弾を5回撃てる様に調整していた原理砲が火を噴くと、同時に激流の如き怒濤の氷塊が音速を超えて飛び出した。
 音速を超えた氷塊の大津波が、統哉達と花蘇芳の間を遮る様にしていた同胞達を纏めて呑み込み、雪崩で浚って生き埋めにする。
『イデア・キャノン』が遂に限界を突破して機能を完全停止、もう暫くは使い物にならないか、とウィリアムがそれをしまった刹那。
『同胞……同胞……! 汝等の無念、我が……必……ラズ……!』
 呪詛の様な呻きを上げて、漆黒のオーラを纏った花蘇芳が、文字通り全力で叩き付ける様にサーベルを構えて突進した。


「今です、全部隊、全速前進して下さい」
 突進してくる花蘇芳を認めたネリッサが即座にその命令を下した時。
「局長様、わたくしめ、モード・この超電磁防御フィールドを展開中ですと、動くことは極めて困難なのでございますが……」
「じゃろうな。護鬼丸。ラムダめを連れて行ってやるのじゃ」
 ラムダのその極めて小さな懸念は、上空から聞こえた祥華の一声で搔き消された。
「黒焔の鎮圧は何とか終わったでありんすが……未だ、貴奴めが残っているでありんすからな。皆の者、努々油断するでないでありんすよ」
 その言葉と共に、一枚の式符を落とす祥華。
 その式符から姿を現した護鬼丸が、軽々とラムダを持ち上げるのに、成程、とラムダが感心した様に音声を上げた。
「いつもであれば、白夜様の篁臥様を使わせて頂いておりますが、今回の様な時にはこの様な式神様に連れて頂ける様になるとは、中々新鮮な体験でございますね」
「……急ぐよ! あの人は、一発殴ってやらないと気が済まないんだからっ!」
 ラムダの感心した音声に葵桜が軽く頷き、姫桜や紫蘭に統哉達への合流を促す。
「……僕は、此処に残り念の為の哨戒に回らせて頂きます。ネリッサ様、皆様どうかお気を付けて向かって下さいませ」
 美月が呟いて霊兵統帥旗を掲揚し、『雷霆万鈞』歩兵突撃部隊を戦場全体に配置。
「分かりました、此方はお任せします、寺内さん」
 哨戒任務を授けて、残存しうる可能性のある同胞達の包囲完全殲滅の役割を担う事を宣言するのに、ネリッサが静かに首肯した。
「では、行くとするかのう。白梟、冥風雪華、紫蘭達を花蘇芳の元へと案内するのじゃ。妾は、完全に鎮火したとは言え、また何かの拍子に広がりうる黒炎の警戒を鳴上達と共に上からしているからのう」
 祥華の言葉に同意する様に、護鬼丸の傍に配置されていた冥風雪華が淡々と頷き、正面に向かって前進。
「皆さん、すみません。ぼくの方は限界です。……花蘇芳は、お任せします」
「分かった、後は任されよう、ウィリアムさん」
 臨界まで魔力を使い果たしたウィリアムと途中で擦れ違った時にその想いを託されて美雪が静かに頷き彼をそこに置いて先へと進む。
 ウィリアムの回りには、冬季の残存の黄巾力士水行軍部隊が揃っている。
 彼の命が危険に陥ると言う事は無いだろう。
 そう美雪が思い、その先に進んだ向こう側には。
『我が……革命を……!』
 漆黒のオーラを纏い、サーベルを紅閻に向けて突き出す花蘇芳の姿。
 未だ時折離れたところから聞こえる爆音からもミハイルが掃討仕切れていない同胞達の力で其の力を強めているのが分かるが……。
「巫山戯るな……てめぇの身勝手が此処まで築き上げ来たセカイを……止められるものか……! 嘆きでセカイを自ら、動きを止めさせるわけには……!」
 漆黒の闇のオーラを纏った紅閻が花蘇芳の突進を、イザークを前に飛び出させて防御しながら、死角からレーヴァテインを嗾ける。
(「視聴嗅覚での感知を不可能にしている筈だが……こいつ……オーラの気配だけで、俺に気がついている……?!」)
 終焉の炎の名を持った猫型のフォースイーターが、重力を帯びた巨大な鎚となって花蘇芳に殴りかかる。
 花蘇芳は右腕に巻き付いた白骨を鎖の様に伸長してその動きを絡め取りつつ……。
「アア……アアアアアアアッ……!」
 咆哮と共に、足を撥ね上げて紅閻を容赦なく蹴り上げようとする。
 顎を狙った膝蹴りの一撃を受け、軽い脳震盪を起こし記憶が微かに混濁する紅閻。
「セカイの……イシを……あの場所に似たセカイを……あんたに……渡しは……!」
 譫言の様に呻きつつ朦朧としたままヨロヨロ後退する紅閻。
(「僕は……いま……?」)
 血に滲む視界の前で、何が起きているのか分からない、と紅閻が子供の様に淡々と思考を紡ぐその間に。
「前回も、そうだったね」
 紅閻に止めを刺そうとする花蘇芳の前に敢然と踏み込み『宵』で、当たれば致命傷になり得る斬撃を、紙一重で受け止める統哉。
 その声は、あまりにも静かで、淡々としていた。
「お前は、転生を真っ向から否定して、革命の名の元に力を求め続けていた。この世界が理不尽に溢れているからと、常にお前は叫んでいた」
 ――でも、それは。
「俺達には、当然分かっていることだ! その上で……貴様の革命は、理不尽に理不尽を重ねる最悪の所業に過ぎないことも!」
 統哉の背後から飛び出す様に現れた敬輔が、白く輝く手から12本の白刃を射出。
 全身を細切れに選ばかりの勢いで射出されたその白刃が、花蘇芳をズタズタに斬り裂くが、まるで堪えた様子を見せていない。
 だが、敬輔の一撃に花蘇芳の力と勢いが、僅かに鈍る。
「そう。そんな事は、俺達は百も承知なんだ。だからこそ、俺は……」
 ――どうしたいのかを自らに問う。
 内心の誓いと共に拮抗する程に『宵』に籠めた力を更に底上げし、鍔迫り合いに持ち込む統哉。
 思い切った踏み込みと自らの誓いへの想いが花蘇芳に勝り、遂に彼が退いた所で。
「……俺の役目は、血の秩序の破壊なり。この世界の転生という名のシステムは欺瞞ですらない」
 花蘇芳の背後に、不意に無機質に声が響き渡り。
「……っ?!」
 同時に、背後から濃紺色の光が走って、その腹部を貫き、同時に淡紅の斬撃が、その右肩から左脇腹に掛けてを袈裟に斬り裂き。
「貴様達のやろうとしていることは只の虐殺。であればこそ、俺達は貴様達を速やかに殲滅する!」
 上空から破壊光線が降り注ぎ、爆発の華を咲かせるその中で、冷ややかな貫手の一撃が、背中から内蔵、腹部に掛けてを貫通した。
 霧亥の貫手と破壊光線による攻撃に喀血しつつ、サーベルを掲げようとする花蘇芳に向かって。
「もうこれ以上、戦力を増やさせるわけには生きません! ……参ります!」
 キュラキュラキュラという巨大なキャタピラ音と共に現れた20式戦車のハッチから瑠香が飛び出し、物干竿・村正を抜剣。
 大気を断ち割る程の神速の突きが、ぱっ、とサイドステップで道を譲った桜花の背後から、花蘇芳に迫り。
 その突きが、右手に集中していた武器の1つである、白骨を貫いた。
「今です……覚悟!」
 其の突きを起点として、瑠香が素早く物干竿・村正を唐竹割りに振るう。
 振るわれた銀の刃の輝きと共に、放たれた98撃の目にも留まらぬ斬撃が敬輔の白刃に刻まれた傷口を更に拡げていった。
「陽太と霧亥、それに瑠香か!」
 すかさず横っ飛びして態勢を立て直しつつ、肩で荒い息をつく花蘇芳に其の拳に燃え上がる闘気を纏って響が突進。
 再びの正拳突きをその鳩尾に叩き込み、内側から掌底の如く闘気を流し込んで大きく花蘇芳の体を仰け反らせる。
『ガァ……ッ! 我が革命は……邪魔……サセヌ……!』
 仰け反りながらも背面に咄嗟に回ったネコ吉の斬撃には気がついていたのだろう。
 そのまま空中でトンボ返りを打ってその攻撃をヒラリと躱し、次の攻撃に備えて身構える花蘇芳に。
「……紫蘭殿を、あんたに渡すわけにはいかない。あんたの求める革命など、我等の様な新たな復讐者を生み出す狂言に過ぎぬ。我等、その様な汝の革命など望まじ」
 義透が低く怨嗟を籠めた声で呟くと同時に、漆黒風に呪詛を纏わせて投擲する。
 それは先の牽制の投擲よりも更に疾く空中を飛翔し、花蘇芳の右肩に突き刺さり。
「良い加減、革命、革命と馬鹿の一つ覚えの様に繰り返すのを辞めて下さい。軍人どころか、人間としても失格ですよ、あなた」
 そこに灯璃が一発の音無き銃弾を撃ち込み、其の足を射貫いてその動きを止める。
 その瞬間。
 紫蘭を守っていた姫桜と葵桜が同時に大地を蹴って、花蘇芳に向けて肉薄した。


「……嘗て貴方に対峙した時」
 二槍に両掌に蓄え高圧電流を纏わせて、雷竜の如き気配を纏わせながら。
 何処か悲しげに……懐かしげに姫桜が、目を細め、二槍を突き出す。
 突き出された二槍から、奔流の様に解放された高圧電流が、花蘇芳の体を縛り上げ、其の体を感電させていく。
 花蘇芳は、そんな自分に纏わり付く雷を、ものともせずにサーベルを振るう。
 完全には躱しきれずに耳朶を斬り裂かれ、パッ、と血飛沫を迸らせながらも、姫桜の懐旧は続いていた。
「貴方には、まだ人間としての心が残っていた様に感じていたけれど」
 ――ポタリ、ポタリ。
 斬られた耳朶から滴り落ちる血が乾いた大地を叩く音が、耳に響く。
 同時に肩口をやられたか激痛が姫桜の体を走っているが、真の姿を解放している姫桜を、倒しきるには至らない。
「でも、今の貴方は『革命を起こす』という一点だけに執着している様にしか見えないわ」
 その腕の玻璃鏡の鏡面が、何処か淡く悲しい煌めきと共に漣だっている。
 其れは姫桜の心の奥底に眠る、今の花蘇芳への憐憫か。
 それとも花蘇芳への同情だろうか。
「自分の思想に酔って、世界を壊して……其の後は、どうするつもりなのよ?」
 ――今の花蘇芳の復讐の果てに何が残るのか、先のことが何も見えてこない。
 だから、貴方を否定すると……それに近しき事を告げたのは、暁音であったか。
『其の後? そんなものは決まっている。新たな世界の秩序を作り直す。黄泉より還りし我等が真の世界を作り上げる。その先の我等の革命が、如何して貴様達には見えないのだ?』
 ――ぼう……と言う薄ぼんやりとした灯と共に。
 現れた、死した花蘇芳の亡き同胞の問いかけに、姫桜は答えず二槍を突き出す。
 突き出されたそれをいなした目前に現れた亡き同胞が、二丁拳銃の引金を引いた。
 姫桜は小刻みにステップをしながら、撃ち出された無数の弾丸を風車状に二槍を回して受け流すが、肩や足を完全には守り切れず。
 灼熱感と苦痛と共に、姫桜の足を跪かせるには十分なその一撃を加えた亡き同胞が止めとばかりに銃口を姫桜に向けた時。
「姫ちゃん! やらせないんだからっ!」
 叫びと共に、姫桜を庇う様に飛び出した葵桜が叫びながら胡蝶楽刀の鈴を鳴らしながら振り上げて。
 放たれた衝撃波で其の弾丸を切り捨てると。
「させません! 紫蘭さんも、他の皆も、私達は殺させませんっ!」
 非常にゆっくりとした足取りながらも、無事に姿を現した奏がエレメンタル・シールドで空中をバッシュ。
 大気に集う酸素をシルフィード……風の精霊達の力で凝縮し、風の砲弾にして叩き込み、花蘇芳を大きくよろめかせた。
 その様子を流血で微かに意識を朦朧とさせつつ、その青い瞳で見つめる姫桜。
「あお……奏さん……」
 それは、友と慕う大切な人と、仲間として共に在る者達に抱く姫桜の想い。
 多くの人々の幸せを愛し、人々を敬慕する想い。
 奇しくも、そう言った敬慕や尊敬の念は……。
「……貴方は、紫陽花さんを私が、あおや、統哉さん……皆を慕う様に、あの人を敬慕していたのでは、無いの? 水仙さんの様に……。だからこそ、貴方は、あの人の意志を継ごうとしたのでは、無いの? その頃の貴方の意志は、何処に、行ったの……?」
 ――そう。
 今の花蘇芳が抱き続ける革命への執着は……。
「……誰かの、都合の良い様に、操られている、だけ、じゃない……。そんな、貴方に紫陽花さんの意志も、あの人の嘗ての娘の魂も……渡せないん……だから……!」
 げほっ、と喀血しながら、七色のオーロラ風で僅かに癒された足を踏み出して、渾身の力を込めて、二槍を突き出す姫桜。
 夥しい流血が自らの足下を濡らすが、姫桜の二槍の鋭い刺突は止まらない。
 鈍重な、しかし鋭利なその二突きを、花蘇芳が辛うじてサーベルで受け止めた時。
「……其の均衡、崩させて貰います」
 ――バァン!
 ネリッサが、G19C Gen.5の引金を引いた。
 放たれた弾丸が、姫桜の刃をサーベルで受け止めた花蘇芳の左肩を撃ち抜いて。
『がっ……!』
「さっさと転生してしまいなさい。貴方の様な存在に、この世界の秩序を乱す愚者のいる居場所など、今上帝が守るこの世界にはございません」
 呻き、よろけて後退した花蘇芳に、冷たく言い捨てた桜花が、桜鋼扇の刃状の扇部分でその身を叩き斬る。
 桜花に斬り裂かれる度に、入り込んでくる陰気が、花蘇芳の思考と幸運を減衰させ、実体を伴う亡き同胞の姿を揺るがせた。
 ――と……此処で。
「姫ちゃんをよくも! あなた、感情的にもだけれども絶対に赦さないんだから!」
 葵桜がその間に背後へと捲り、呼び出していた田中さんと挟み撃ちにする形で花蘇芳を取り囲み。
「先日の巴里の出来事から、私、貴方の事嫌いだったけれど……今日、大嫌いになったんだから! 革命に酔って、思想に酔って、沢山の人の気持ちや命を踏み躙って……あまつさえ、姫ちゃんさえこんなに傷つけて!!」
 其の憤怒の儘に、胡蝶楽刀を唐竹割りに振り下ろす葵桜。
 何時になく激しく其の柄に取り付けられた魔除け鈴がリンリンと鳴り響きながら、花蘇芳の背を一息に一刀両断し。
 それに合わせた田中さんが突き出した槍が、花蘇芳の其の左目を貫く様に穿つ。
『ゴガァッ……?!』
 そのまま叩き込む様に我武者羅に背後で胡蝶楽刀を振るい、激しく鳴り止まない魔除け鈴と共に、次々に傷口を広げていく葵桜。
 ズタズタに斬り裂かれた花蘇芳に向かって、祥華が瑠香にお供として付けた、朱雀が上空から獄炎のブレスを吹き付けて。
 更に、紅閻の白梟が白炎のブレスを浴びせて花蘇芳の肉を焼き、義透の霹靂の鉤爪が、花蘇芳の体を深く抉る。
 其処に……。
「主砲発射準備完了。本来であれば対消火用手段として使う予定だった物ですが……皆さん、退避して下さいませ」
 護鬼丸に運ばれていたラムダが、すかさずサンダーロアの弾丸を、キャニスター弾から炸裂弾に変更して発射。
 螺旋の速度を得て加速した炸裂弾が、姫桜を連れて離れた田中さんと桜花の間を拭って花蘇芳に直撃し、爆発の花を咲かせる。
『ガァッ……?!』
 白熱する爆発的な熱に炙られ、全身を焼け焦げた血の色へと変貌させた花蘇芳。
 それでも尚、己が執念を果たすためにその刃を振るわんと欲してサーベルを反射的に振るう妄執の塊と化した其の男の前に。
「……そうか。やはりそれが、お前の願い、なんだね」
 統哉が飛び込み、勢いが衰えたサーベルを『宵』で易々と受け止める。
 目前に何度も立ちはだかる者を叩き潰さんと、花蘇芳が左拳を振り上げるが。
「……チェックメイトだ……! セカイをお前に、蹂躙などさせない……っ!」
 先の一撃で地面に沈んでいたと思われた紅閻が、叫びと共に立ち上がりながら、イザークの幻影を召喚する。
 召喚された耳の垂れた犬の様な姿をした怪物が、ケタケタと笑い声を上げて、その口をパックリと広げて、口腔から闇のブレスを放射。
 放射されたブレスに視界を黒く染め上げられ、一瞬動きを止めた花蘇芳の振り上げられた左手に銃弾が撃ち込まれて吹き飛ばされた。
「……まだ此で、攻撃が終わったわけではありませんよ」
 其の灯璃の言葉の正しさを、証明するかの様に。
 冥風雪華……雪女と呼ばれる鬼神が其の口から凍てつく吐息を吐き出して、見る見るうちに花蘇芳の左腕を凍てつかせ。
 凍てつかせた腕を凍死させ、ポロリと地面へと落とさせた。
『ガッ……!』
「……これだけの攻撃を受けても尚、未だ諦めないその執念。……それ程の妄執と覚悟を抱くお前であれば、俺達は、お前を転生させて救う事なんて本当は出来ないのかも知れないね」
 ――転生させることで、その者の魂は救済され、救われる。
 それはこの世界では常識で……でも、そうであるが故にそれが幻想である可能性など誰も考えない。
 嘗てウィリアムが言った様に、確かに転生という概念は、魂が救われて欲しいと言う願いを、欲望を分かり易い言葉にしただけなのかも知れない。
 ミハイルの以前の言葉通り、甘っちょろい理想論にしか過ぎないのかも知れない。
 ――それでも。
「俺達は願わずにはいられないんだ、少なくとも、俺や統哉は。だって俺達猟兵は、元より常識の埒外の存在なのだから。だからこそ、統哉の願いもまた、尊いものなんだよ」
 そのネコ吉の激励に頷いて。
「そうだな、ネコ吉。花蘇芳をも救済する事。それこそが、俺の願いだ」
 ――だから。
「例え、届かなくても、何度でも……」
『宵』に宵闇の中で輝く月光の如き、輝きを伴わせ。
 其の刃先に纏わせる、己が『信念』……その想いを、願いと祈りを、力に変えて。
「何度でも俺が俺である為に、この想いを……お前を救うという想いをぶつけよう」
 ――桜の精を救いたいと願ってくれた、先刻の紫蘭の様に。
 ――自らの信念、依るべきものを諦め想いの力と、共に。
 だから……。
「雅人、紫蘭。君達は何を想い、何を願う? 其の答えを、俺に聞かせてくれ」
 その言葉と、共に。
 傷だらけで最早動く力も無く、只狂気の儘に統哉に唐竹割りに振り下ろそうとする花蘇芳の刃を避けながら。
 星彩の煌めき伴う『宵』の一閃を、其の頭部……『魂』に向けて、解き放とうとする統哉のそれに。
「……統哉さん。僕の答えは、あの時からもう決まっているんだよ」
 紫苑と永遠の別離を経験し、其の後ユーベルコヲドに覚醒したあの時から。
 この頬に刻み込まれた傷と、胸に差された羽根と共に。
 何処か、柔和な表情で。
 悟った様な笑みを浮かべて雅人が静かにそう呟き。
 其の手の退魔刀に蓄えられた『邪心』を断ち切る想いの力を解放し。
 統哉が頭部に『宵』を振り下ろし、其の邪神を断ち切るのに合わせる様に、花蘇芳の首を一閃する。
「僕の役割は……彼の……影朧と化してしまった花蘇芳殿を解放し、救済する事。其の為に僕に与えられた力が……このユーベルコヲドなのだから」
 ――だから。
 願いと祈りを籠めた邪心を断ち切る宵闇の中で輝く月の如き統哉の一閃と、闇夜を照らす松明の如き雅人の銀光が、花蘇芳の『邪心』を断ち。
 ――そして。
「私の、願いは……迷える魂を『救う』事。だから……!」
 呟きと共に紫蘭が暁音と祥華によって再生した幻朧桜達に向けて祈りを捧げる。
 それに応じた幻朧桜達から花弁が吹雪いて花蘇芳を包み込み、永遠の揺籠……転生と言う名の『眠り』へと花蘇芳を『還』していく。
 そうして桜の花弁と化して舞い散り消えていく花蘇芳の姿を見届けて。
「……今上帝様。あなた様は何を求めてこの様を眺めていらっしゃるのでしょうか。それとも、取るに足らぬ事として、祈りを捧げ続けていらっしゃるのでしょうか」
 どの様な結末を、今上帝が望んだかは、深淵の向こうである以上、分からない。
 けれども、私のあなた様への敬愛が、決して変わることはございませぬ。
 だって私は、今世に生まれ落ち、時代の幻朧桜になる事を定められた、只の1人の桜の精、なのですから。
 その桜花の小さな想いは。
 花蘇芳の桜吹雪と共に……風に乗って、舞う様に何処かに向かって行った。


 ――同時刻。
 ――プップカプー! プップップ、プップカプー!
「……おや? 終わったみたいですね♪」
 戦場の一角で音楽人形の奏でる喇叭が響き渡る。
 其の時には、先程までミハイル達と激しい銃撃戦を繰り広げていた者達が幻朧桜の桜吹雪に呑み込まれ、次々に深い眠りに落ちていた。
「……あっ? どうやらあの花蘇芳の野郎を局長達が倒したみてぇだな。桜吹雪って事は、転生とやらをさせたのかもしれねぇが」
 その転生には全く興味が無さそうに。
 戦いが終わり、ヤレヤレ、と言う様にコクピットの中で煙草を加え、そのままそれに火を灯そうと……。
「ああ、そう言うことでしたら、此をどうぞ♪」
 クラウンがパチン、と指を鳴らして其の指先に獄炎を灯し、コクピットの中を覗き込んでミハイルの煙草に火を点ける。
「別に火位持っているぜ? まっ……一応、礼は言っておくか。どうせだったら美人の方が良かったけれどな」
「まあまあ、そう言わず、そう言わず。煙草が楽しめる様に勝利の凱歌も一緒にプレゼントしてあげるからさ♪」
 そう告げて。
 人形楽団達に嬉々として、勝利の凱歌を奏でさせるクラウンにまっ、こういうのも良いか、と笑ってミハイルが煙草を吹かし。
「どうやら、終わったみたいだねぇ。後は、私達は帰るだけか」
 瞬と暁音の看護と回復をしていた蛍嘉と陽凪が安堵の息を漏らすのに。
「……そうだね」
 疼く様な不可思議な痛みを、共苦の痛みを通じて感じながら。
 暁音が静かに頷き、虚空を見つめるかの様に金の瞳を、そっと眇めるその姿を。
「任務完了しましたか。やれやれですね」
 見つめた冬季が息を漏らすのに、傍に控えて伝令を担っていた黄巾力士が我が意を得たりという様に静かに首肯で返したのだった。


 ――そして。
「まあ、兎に角鎮火作戦及び、逢魔弾道弾の処理は、無事に完了したぞ、竜胆さん」
 各々が休息を取り、グリモアベースに帰還されるその前に。
 事の顛末を報告しておく義務があると感じた美雪が、竜胆に連絡を取っていた。
「成程。無事に任務完了ですか。ありがとうございます、美雪さん、皆さんも、本当にお疲れ様でした」
 相変わらずの丁寧な竜胆の物言いに、ああ、と美雪が静かに首肯をするが、彼女の心の中には大きなしこりが残っている。
(「結局、花蘇芳さんを逢魔弾道弾にしたのは一体誰……いや、何だったんだ?」)
 革命を肯定すれば、姫桜が指摘した昔の人としての心を少し残した、花蘇芳としての意識を呼び覚ますことが出来たかもしれない。
 けれどもそれは、今まで自分達が主張してきた破壊と革命の連鎖が世界滅亡に繋がると言う信念を真っ向から否定する所業である。
 或いは革命を肯定するそぶりを見せると言う演技も出来たかも知れないが……。
(「当然と言えば、当然だろうけれど……誰も、それをしていなかったな」)
 義透達の『革命』に対する態度を思い出し、安堵の息をそっと吐き出す美雪。
 だが、其れは同時に、この戦いの『黒幕』と思える存在の炙り出しが出来なかった、とも言える。
 だとすれば、今、美雪に出来る事は……。
「それで……竜胆さん。今回の『逢魔弾道弾の発射箇所』は特定できたのか?」
 そう、竜胆に聞くだけだろう。
 その美雪の問いには、やはり、と言うべきだろう。
 やや沈痛そうな表情を浮かべた竜胆が静かに芳しくない返事を返した。
「残念ですが、未だ……今現在、正しくそれを調査中なのですが……その調査の中断の妨害も、恐らく今回の作戦の中には組み込まれています」
「前回の水仙さんの件は勿論、前々回の切り裂きジャックの件も含めて立て続けにこうも狙われれば、流石に調査をする暇もないか」
 諦めの境地に達して溜息を吐く美雪の其れに、はい、と竜胆が静かに頷いている。
(「これでは、犯人がいて、いない様なものではないかとも思うが……何だろうな、この違和感は……?」)
 と、此処でふと脳裏に浮かんだ疑問を美雪がそっと口にする。
「そう言えば、花蘇芳さんの『家族』や元部下は今、如何しているのだ?」
 それは、自分の脳裏に走った何かを捕まえる為に口にした美雪の苦肉の策。
 その美雪の問いかけに、そうですね、と竜胆が沈痛な息を漏らした。
「元々、花蘇芳は天涯孤独でした。そういう意味では、彼にとっては、帝都桜學府の将校たちは、ある意味では家族と言えたのかもしれません。だからこそ、此処迄歪んでしまった可能性はあるでしょうね」
「部下は勿論、上司であった紫陽花さんすら『家族』か。それはまた、歪む材料に事欠かないな……」
 何処か虚空を見つめる様な眼差しになる美雪に、竜胆がええ、と静かに首肯する。
「その上で、嘗て巴里で花蘇芳に従っていた共犯たちは逮捕・或いはそれぞれに監視をしておりましたが、特に犯行に及んだ形跡はありませんでした。今回の件に関して言えば、白と言っても過言ではないでしょう。……そもそも、花蘇芳を逢魔弾道弾の『核』に仕立て上げた者が、人であるのかどうかすら、正直な所、怪しいのです」
 その竜胆の、言の葉に。
 美雪があることに思い至り、成程、と静かに頷きを一つ。
「『天秤』、か。光と闇、2つの存在を司ると言う相反するものでありながら、決して切り離すことの出来ない其れ。つまり、今、竜胆さんが今回の主犯として疑っている相手は……whoではなく、whatなのだな?」
 そう美雪が問いかけると。
「ええ……その通りです。『天秤』と言う概念自体が、恐らく黒幕と言っても過言ではないでしょう。そして……今回の騒動で漸く、その『天秤』になりうるであろう可能性のある存在に法則性を見出すことが出来ました」
「法則性? それは……?」
 その美雪の問いかけに。
 竜胆は直接応えることなく、美雪さん、と静かに問いかける。
「この世界では、私達は『救済』と言う名目で、死して不安定な魂達を世界に還す……即ち『転生』を促進しています。それが私達、帝都桜學府の基本であり、絶対的な方針です。そして、そのためにはどうしても必要な存在がいます」
「……待て、竜胆さん。それは……」
 不意に、美雪の脳裏に嫌な予感がせりあがってくる。
 そして、ちらりと紫蘭の方を見て、それから、ごくり、と生唾を飲み込んだ。
「光あるところに影がある。桜の精達は影朧達を転生させることが出来る光の存在です。であれば、それを生み出す者達、或いはそれ自体が、もし、闇に回れば……?」
「……転生と言うシステムを作った『概念』の象徴こそが、今回の『黒幕』だと?」
 その美雪の疑問の声に。
「……まだ確証はありません。今回の逢魔弾道弾が発射された場所が特定されれば、恐らく全ての事が判明するでしょう。今暫くお待ちください」
 それ以上の有無を言わせぬ、と言う様に告げた竜胆の其れに。
「……了解した」
 美雪が静かに頷いて、連絡を切り、額に溢れ出した汗をぬぐう。
『転生』と、『黄泉還り』
 ……相反しながらも隣り合わせる概念を巡る戦いの終局の足音は、一歩、一歩、確実に猟兵達に忍び寄って来ていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年04月25日
宿敵 『黯党戦闘部隊『深闇』将校』 を撃破!


挿絵イラスト