●失われし日々と、恐るべき敵
ごうごうと、黒い炎が燃え盛る。
灼熱草原と呼ばれているメンフィスの草原が、今もなお。
戦争は終わった。終わったはずだ。
それなのに黒い炎は絶えず残り、今もなお人々に恐るべき敵の幻影を見せつける。
終わったはずの出来事を、終わらせたはずの出来事を、埋めたはずの穴をもう一度掘り返すかのように。
縫い終わったはずの傷を抉り、更に広げるかのように。
そんな中、黒い炎の中から現場には少々似つかわしくないオブリビオンの集団が生まれてきた。
辺りには桜のような、梅のような、形が定まらない花びらがはらはらと舞っては、炎に炙られ燃え尽きる。
それでもなお黒い炎から生まれた『失われし日々の残滓』は炎を守ることを決めた。
黒い炎を守ることで餌《猟兵》がやってくることを、よく知っていたから。
草原を燃やし尽くす黒い炎が人の恐るべき幻影を見せるのならば、『失われし日々の残滓』はその人の過去の幻影を映し出す。
『失われし日々の残滓』は忘れてはならない過去を、失われた日々の出来事を思い出させては、その人がそれまでに踏みしめた道の数だけの生命力を吸い取ってゆく。
黒い炎と相まって、これまでにない幻影を見せつけられることだろう。
「…………」
過去の幻影を映しだす敵と、恐るべき敵の幻影を映す黒い炎は猟兵達を待ち構える。
消せるものなら、消してみろと。
●乗り越える時は必ず来る
「メンフィス灼熱草原……戦争が終わったというのに、まだ黒い炎は健在のようですね」
そう小さく呟いたのは金宮・燦斗(《夕焼けの殺人鬼》[MorderAbendrot]・f29268)。アポカリプス・ランページが終わった後だというのに、今もなお残る黒い炎には疑問を抱いていた様子。
今回はその黒い炎を消すことを目的とした任務に出向いて欲しい、ということで猟兵達を集めたのだが……厄介なことに、戦争が終わって以後黒い炎は周辺にオブリビオンを設置し始めたのだという。
「もともと戦争のときから、黒い炎から生まれるオブリビオンは何体か確認がされていました。しかし今回は明確に『消されないようにする』ために生み出しているのが確認出来てます」
「そして非常に厄介なのが……今回生み出している集団系オブリビオンというのが、過去の幻影を見せては生命力を吸い取るという力を持つ者達らしくてですねぇ……」
恐るべき敵の幻影を見せつけてくるという黒い炎と対面する前から、過去の幻影を見せつけてくる敵と戦うという、幻影まみれな戦場へ出向くことになるのは間違いないとは燦斗の言葉。
しかし両方の幻影を乗り越えた先にあるのは、黒い炎の一部消滅。このまま黒い炎を残しておくには何かと厄介なので、是非とも消してきてほしいと彼は言う。
「集団オブリビオンを倒せば倒すほど、炎の一部が消滅することは確認が取れています。しかし炎が視界を覆う故、倒しづらいのが今回の任務。幻影に立ち向かう勇気がある方でないと、少々難しいかもしれません」
厄介な現場に向かうことになる。釘を差すようにそう告げる燦斗の目は、覚悟を伺う様子で猟兵たちに向けられる。
「己の過去を、己の恐るべき敵を乗り越える勇気がある方は、どうぞ我が手を。――ええ、すぐに戦場へ送って差し上げますとも」
そう笑う燦斗は、猟兵たちに右手を差し出して――。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
戦後シナリオ、黒い炎と対峙するシナリオをお届けに上がりました。
こちらのシナリオは全2章の構成となっております。
初めての方はMSページをご確認の上、ご参加ください。
また以前に参加済みの方も更新が入っていますのでご確認の程をお願いします。
●第一章:集団戦シナリオ
集団敵『失われし日々の残滓』との戦いです。
黒い炎から生まれ、過去の幻影を見せて生命力を吸い取るために猟兵達に襲いかかります。
この章では黒い炎が燃え盛る草原内での戦いです。視界は完全に閉ざされているというわけではありませんが、時折目の前が閉ざされる等もあります。
またこの章では『過去の幻影』を投影することが出来ます。
プレイング内に乗り越えたい過去を記載することでリプレイ内で乗り越えることがあるかもしれません。
●第二章:冒険シナリオ
黒い炎は消える前に『恐るべき敵の幻影』を実体化させてきます。
強い恐怖心を持つ者からの攻撃を受けないという強力な幻影です。
この恐るべき敵の幻影を倒さない限り、猟兵にまとわりついた炎は消えません。
この章では『恐るべき敵の幻影』を投影します。
そのため必ず敵の幻影をご用意ください。幻影ですが戦闘入ります。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 集団戦
『失われし日々の残滓』
|
POW : あの日を
【過去の幻影を見せて生命を吸う花びら】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 思い出して
【広げた枝】から、戦場全体に「敵味方を識別する【過去の幻影を見せて生命を吸う花びら】」を放ち、ダメージと【情緒が乱れる事による集中力低下】の状態異常を与える。
WIZ : 過去は消えない
【花びらを含んだ風を巻き起こす事】によって【過去の幻影を見せて生命を吸う花びら花吹雪】を発生させ、自身からレベルm半径内の味方全員の負傷を回復し、再行動させる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
ハルツ・ノウゼン
幻影:オブリビオンに故郷を蹂躙された日に殺された父母と、今より幼い自分が談笑する光景
「……父ちゃん、母ちゃん?」
幻影として現れるのは、モンスターに故郷の村を壊されたときの光景だと思っていた。
それならまだ心が痛んだって戦えたのに。
考えないようにしていたことも忘れるほど押し込めてきた喪失を前に涙すら流れず、ただ在りし日の幻影を眺める。
生命力が奪われていることも気づかずにいると、キカイな斧がガチガチ音を立てて危険を知らせる。
「……分かってるよ、ぼくの斧。……分かってるんだ、けど」
幻影をずっと見つめていたいと想う感情を無理やり振り払い、キカイな斧で周辺の地形ごと破壊する。
「消えてよ!!」
※アドリブ歓迎
●在りし日の思い出は時に刃となる。
轟々と燃え盛る黒い炎の中。ハルツ・ノウゼン(無邪鬼・f13678)は目の前に広がる光景を前に呆然と立ち尽くしていた。
「……父ちゃん、母ちゃん?」
他者から見ればハルツの前に広がっているのは、黒い炎の中を失われし日々の残滓が立ち尽くすだけの光景だ。桜のような、梅のような、形の定まらない花びらが黒い炎の中で燃え尽きていく。
だが、ハルツに見えているものは違った。自分が守ることが出来なかった村で、殺されてしまった父と母が幼い自分と談笑している光景。今はもう過ぎ去り、夢でさえ見ることがないほどの光景が広がっていた。
「……うう……っ!」
ズキズキと心が痛む。
もし、幻影として現れるならばモンスターによって故郷の村が壊された時の光景なら、どんなによかっただろう。自分の罪が風景として現れるなら、もっと簡単に、もっと楽に、この光景を壊して回って、失われし日々の残滓達を倒すことが出来た。
けれど、今! 今!! 目の前に広がっているのは、失ってしまって二度と手に入れることができない『思い出』だ! それを壊せと言われるのは、なんと残酷なことだろうか!
「っ……」
もう、涙さえも流れない。
考えないようにしていたことを忘れるほどに押し込めてきた喪失を前に、本来ならば流れるはずの涙は流れない。むしろ、ハルツの脳裏にはある一言が流れていた。
――このままずっと、眺め続けていたい。
忘れてしまわないように、ずっと、永久に眺め続けていれば。
それは『思い出』としてでなく、『現実』として在り続けるのだろうと考えが捻じ曲がってしまうほどにハルツの脳は状況の把握を間違えていた。
けれど、これはハルツの生命力と引き換えに行われている劇場だ。
キカイな斧が危険を知らせるようにガチガチと音を立てると、ハルツは正気に戻る。
「……分かってるよ、ぼくの斧。……分かってるんだ、けど……」
斧の柄を握りしめ、流れてきた眺め続けていたいという言葉を振り払うように頭を振るう。これは赦されないこと、己の生命と引換えにするものではないのだと、頭の中の思考を固めたハルツはキカイな斧を振り上げる。
「――消えてよ!!」
花びらが燃え盛る黒い炎。その中で花びらを大盤振る舞いしていた失われし日々の残滓の群れに向けて、ハルツのユーベルコード『グラウンドクラッシャー』が炸裂。
1体の残滓が潰されると、周辺の地形が大きくひび割れて迫り上がり破壊されていった。
まるで、映された画面が砕けるように。
大成功
🔵🔵🔵
氷咲・雪菜(サポート)
人間のサイキッカー×文豪、15歳の女です。
普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●雪と氷は夏と熱を嫌う
「う、うう……炎……」
ごうごうと燃え盛る黒い炎の中、氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)は目の前に広がる集団オブリビオン・失われし日々の残滓と対峙する。
辺りが燃え盛る光景というのは、雪や氷が大好きな雪菜にとってはあまり好ましくない光景だ。黒い炎からあまり熱さは感じないとは言え、じんわりと溶ける雪の結晶をすぐに水へと変化させる炎を目にするだけで少々元気がなくなってしまうほど。
しかしこんな考えだからこそ、急いで終わらせたいと雪菜は前へ出る。例え相手が過去の幻影を見せてくる相手だとしても、倒してしまえばこの炎は消えて失われし日々の残滓は生まれなくなるからだ。
「氷の剣よ、私の手に宿りて全てを凍てつかせ――切り裂く力を貸してください!」
両手に魔力を集め、ユーベルコード『絶対零度の剣』の準備を行う雪菜。それに対抗して失われし日々の残滓は辺りに花びらを撒き散らし、雪菜の過去の記憶から見える幻影を呼び起こして生命力を着実に吸い取っていった。
「うっ……これは
……!!」
両手に集まった超硬質の氷の剣が振り下ろされる前に、雪菜は幻影を目にする。
それは、真夏日となった日の雪菜の姿。室内でぐでんととろけ、冷たいところを探してずるずると床を這いずっては冷たい場所でひんやりと涼んでいる日常的な姿。
彼女が夏になると元気がなくなる理由は名の由来である雪が夏の現場で維持できないのと同じ理由。水のようにとぅるんと溶けては床に広がるその様子を、過去の幻影である雪菜は体現していた。
「み、見ないでください!! 見ちゃ駄目です!!」
現在この幻影を見ているのは失われし日々の残滓のみで、他に味方はいない。そのため、雪菜は思いっきり氷の剣を振り下ろして幻影ごとばっさりと切断。今、この場には何もないし何もなかったと言い張るような一撃は次々に失われし日々の残滓の群れを切り落としていく。
黒い炎がごうごうと燃え盛り、花びらが舞うメンフィス草原。
そこに1つ、過去の幻影を切り裂く雪の華が舞い踊っていたという……。
成功
🔵🔵🔴
天王寺・あいる(サポート)
ご機嫌よう、我輩はサクラミラージュの敏腕探偵天王寺あいるであります
事件を察知してどのような現場にも勇んで参ります
インドア派と侮るなかれ自宅警備で鍛え上げた白虎拳でどのような相手にも柔軟に対応可能であります
規律を守り猟兵の職務を全うして参りますのでどうぞ宜しくお願い致します
●バイトの経験は意外と活きる
「綺麗な光景……と、言いたいところですが黒幕が早速お出ましですね」
黒い炎の中、咲き乱れる花びらに目を奪われていた天王寺・あいる(脳筋探偵・f36076)はチラリと集団オブリビオン・失われし日々の残滓に目を向ける。この花びらはあなたが原因ですねと、探偵らしく決め台詞を決めながら。
その台詞に対して首を振るわけでもなく、失われし日々の残滓の群れは辺りに花びらを撒き散らす。過去の幻影を見せるという力を秘めた花びらは、あいる共々辺りを埋め尽くしては視界を遮り――。
「……え?」
花びらで埋め尽くされた視界がひらけた時、目の前では過去のあいるが様々なバイトを繰り返している光景が映し出されていた。
田舎から都会に上京してきたあの日に意気込んでいったはいいものの、日が経つにつれて徐々に自分の肌に合わないことを自覚した彼女はアルバイトで生計を立てて生活をしている光景。とにかく様々なアルバイトに手を出したことがある彼女にとっては、この経験はある意味良い経験として活きている。
そして今やあいるはユーベルコードが目覚め、猟兵となった。最初はどのようなことを行えばいいのかわからなかった彼女だったが、やがては『探偵』と呼ばれるほどにまで成長した。
「ああ、そうそう。そういえばあの事件ではああやって力技で解決したんですよね」
見えている過去の幻影を前に、思い出に浸るあいる。自分が今こうしてここにいるのは様々な事件が起こり、様々なアルバイト経験による知識と力によって全てを解決してきたからだ。
――なら、今回もやることは決まっている。
「まずはその枝を伐採しなきゃいけませんね。ということで、こちらをどうぞ」
す、と前に出たあいるは指先を失われし日々の残滓達の枝へと触れる。途端にその枝は外からの衝撃を受けたわけではないのに、小さく破裂して吹き飛んだ。
ユーベルコード『白虎絶命拳』によってあいるの指先は今や凶器と同じ。
どの枝が弱っているかの知識は、過去のバイトで得た知識から導き出せる。
こうして、『脳筋探偵』は事件のもととなる失われし日々の残滓の群れを潰していく。
意外と昔の知識も悪くない。そう思いながら、彼女は戦場をゆっくりと闊歩していった。
成功
🔵🔵🔴
鐘射寺・大殺(サポート)
砕魂王国の支配者、鐘射寺・大殺である!
吾輩が来たからにはもう安心だ。圧倒的カリスマと武力と心配りで、どんなトラブルも解決してやろう。
・戦闘は基本的に神竜とオメガ(剣の名前)による接近戦。武器を手に《切り込み》、【黒影剣】による剣技で敵を《切断》《重量攻撃》で撃破していきます。
・炎の魔王軍を召喚し、《悪のカリスマ》で支配することも可能。また。圧倒的存在感で《悪目立ち》し、敵の攻撃を引き付ける盾役も得意です。体はタフなので、大抵の攻撃には耐えられます。ダメージを喰らってもやせ我慢してフハハと笑います。基本アホの子なので、シリアスなお話には向いていません。サポート不要なら、構わず流してください。
子犬丸・陽菜(サポート)
ダンピールの咎人殺し×聖者、15歳の女です。
「いっしょに苦しんであげるよ」
「臓物がはみ出したくらいで動けなくなると思った?」
「はらわたを搔き回される苦しみはどう?」
宝珠による臓物を掻き回しを多用し、知られざる枷を使います。怪我は厭わず積極的に行動、臓器の負傷でユーベルコードの威力が上がるので負傷は状況によりわざと受けたりもします。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
潜在的なマゾヒストなのでユーベルコードの苦痛になにか感じる場面もあるかも?
負傷重症描写歓迎むしろ希望、内臓が出るくらいやっていただいて全く構いません!
よろしくおねがいします!
●時として、過去は知らないほうがいい
――ぐちゃぐちゃと、内臓がかき回される。その痛みに耐えきれるのは、よほどの者でない限りは難しいだろう。
「くっ……あたしの、苦痛の一端……感じて、みますか……? ぐっ、ぅう……!」
子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)のユーベルコード『知られざる枷』は今、まさに、集団オブリビオン・失われし日々の残滓に向けて発動していた。彼女の視線から依代の宝珠による内蔵をかき回される苦痛を放つことで、相手と共にはらわたの異様な感覚を共有することで相手の動きを封じる力。彼女の身体に這いずる感覚のおぞましさは、表現するにも恐ろしい。
そしてこの状態は鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)にとっても好都合の状況だった。黒い炎から生まれる失われし日々の残滓達は、炎を消し去るために一気に殲滅しなければならない。しかしそれを行うには1人では都合が難しく、陽菜という助力を得ることでその力を最大限に発揮できると喜んでいた。
「フハハハハ! 良い、実に良い光景だ! 我輩の力を思う存分使わせてもらおう!」
黒い炎がごうごうと燃え盛る中、また、新たに炎が湧き上がる。大殺のユーベルコード『炎の魔王軍』によって呼び起こされた彼の配下モンスター達が招集に応じ、彼の持つ悪のカリスマによって周囲を支配、次々に蹂躙していった。
だが、敵はこのままやられるわけではない。陽菜の視界から逃れた失われし日々の残滓は辺りに過去の幻影を見せる花びらを撒き散らし、陽菜と大殺の視界いっぱいに過去の幻影を見せつける。
目の前に広がるのは各々の過去の幻影。思い出したくない過去や見たくはない過去が目の前に浮かぶ中で、陽菜も大殺もニヤリと笑みを浮かべていた。
「残念、だけど……あたしには、むしろご褒美みたいなものだね
……!!」
陽菜にとって、自分の過去が見えることはどうでもいい。むしろどんどん見せればいいとさえも思っている。だってその先にある、失われし日々の残滓の持つ生命力吸収の力がなんとも、興味深いのだから。
どのような原理で吸い取っているのか? どのような状態から生命力を奪っていくのか? その力の根源、そして原理を知りたくて仕方がないから、目の前に溢れる過去をずっと、ずーっと見続ける。視界に映った幻影だけでなく、失われし日々の残滓を視界に焼き付けて、はらわたの異様な感覚を共有することを忘れずに。
……見える過去は、真っ黒で渦巻いたものだ。他者から見るとそうとしか言えない。だが陽菜には全てが見えている。過去も、今も、全て。
「なるほど、過去を見せると来たか。だが残念だったな、我輩は過去には囚われることなどない! 我輩はこの瞬間も、過去を振り返ることなどしないのだからな!」
大殺はその手に名刀・神竜と魔剣・オメガを握りしめ、見境なく辺りを切り刻みながら配下モンスターとともに辺りを蹂躙してゆく。見えている過去も、その場に立ち尽くす失われし日々の残滓も、無慈悲に叩き切る。
過去を振り返って何になるものか。魔王とは常に未来を見据え、王者の威厳と権力を振りかざして進むものである。それこそが先代魔王である父の教え! 偉大なる我が先駆者の言葉なり!
……とは言うものの、目の前に広がる光景は彼にとっては精神的にもよろしくない。内容は控えさせてもらうが、彼は高笑いをしながらも、やせ我慢をしているとだけは言っておこう。
やがて、黒い炎の渦巻く中で2つの影だけが残される。
辺りに散らばっていた花びらさえも燃やし尽くされ、残ったのは陽菜と大殺の姿のみ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 冒険
『恐るべき幻影』
|
POW : 今の自分の力を信じ、かつての恐怖を乗り越える。
SPD : 幻影はあくまで幻影と自分に言い聞かせる。
WIZ : 自らの恐怖を一度受け入れてから、冷静に対処する。
|
●
失われし日々の残滓の群れは猟兵達の手によって滅ぼされた。
そのおかげで黒い炎の弱体化に成功したのだが……まだ、黒い炎は猟兵達の周囲にまとわりつくように燻っている。
小さく、今にも消えそうな炎は最後の最後、余力を使ってある幻影を見せてきた。
それは、猟兵達の持つ『恐るべき敵の幻影』。
心の奥に残された、恐るべき敵。それが人なのか、オブリビオンなのか、あるいはまた別の事柄なのかは定かではない。
しかし発現したその幻影はいつかは本物を、あるいは過ぎ去った事柄として乗り越えなければならないものばかり。ここで見過ごす事はできない。
黒い炎はあと僅か。
残された炎の力を滅するためには、ここで幻影とぶつかるしか無い。
猟兵達に見えたその幻影は、何を見せつけてくるのだろうか。
-----------------------------------------------
プレイング受付:即時
残された黒い炎から現れる『恐るべき敵の幻影』を乗り越える第二章です。
必ずプレイング内に『恐るべき敵の幻影』の記載をお願いします。
この幻影は『強い恐怖心を持つ者からの攻撃を受けない』という非常に強力な力を持っており、恐怖心を乗り越えなければ倒せないという敵となっているためご注意ください。
なお今回のリプレイでは人物・オブリビオンの幻影では戦闘が入り、
過去の事柄に対してはその時の風景が映し出されます。
プレイングにお役立てください。
-----------------------------------------------
リーヴァルディ・カーライル(サポート)
「…今を生きる人々を害する存在を討つ。それが猟兵としての私の使命よ」
故郷のダークセイヴァーで主に活動する吸血鬼狩り
機械音痴で他世界の知識に疎く物珍し気に周囲を観察し、
必要に応じ「精霊石の耳飾り」に各属性の精霊を降霊し、
第六感的な精霊の視力を借りて暗視や索敵を行う
「…どこの世界でも精霊達は変わらないみたいね、助かるわ」
空中機動を行う「血の翼」を使う際には、
「影精霊装」の闇に紛れるオーラで防御してから飛行し、
肉体改造術式を用いた環境耐性や狂気耐性等で過酷な状況を受け流し、
各種の「精霊結晶」やアイテム、選択UCを用いて障害を突破する
「…この程度で立ち止まっている暇は無い」
「…さあ、先を急ぎましょう」
●滅するべきは目の前の『敵』
メンフィスの草原で轟々と燃え盛っていた黒い炎は、気づけば小さな焚き火のような炎へと変貌している。先立って集団オブリビオンを倒した影響で炎は勢いを失い、草原に残るほどの力をなくしているようだ。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそんな黒い炎が消えることを願いながらも、じっと揺らめく炎を眺めている。それを見つめることは危険だとグリモア猟兵に伝えられたとしても、消えるまでを確認しなければ終わりはないのだからと。
「……うん?」
ふと、黒い炎の向こう側に何かが蠢くのを見つけたリーヴァルディは大鎌を構える。黒い炎は見つめた者の恐るべき敵の幻影を生み出すという情報は戦争期からあるが、小さな炎でもそれは変わりないようだ。
何が来てもおかしくないこの状況下、彼女の恐るべき幻影と言えば――このアポカリプスヘルとは遠い別の世界、ダークセイヴァーに住まう吸血鬼以外に他ならない。
「っ……――!!」
無意識に大きく息が吸われて、リーヴァルディが駆け出す。恐怖を既に乗り越えている彼女は今の自分を信じて大鎌を振るい、ユーベルコード『吸血鬼狩りの業・黄昏の型』を用いて炎より生まれた恐るべき敵の幻影を、そしてそれを生み出した黒い炎を塵にして崩してゆく。
炎の中から生まれる吸血鬼達は次々にリーヴァルディに向かって走り、恐怖を思い出させようと彼女に手を伸ばす。恐怖を芽生えさせれば自分たちは強いということは、幻影だからこそ考えること。リーヴァルディに炎を消させないために必死で幻影は手を伸ばす。
「……それでも、私がやることに……変わりはない」
冷酷に、吸血鬼の幻影へ視線を送ったリーヴァルディ。その視線の先にいたはずの幻影達は一瞬のうちに大鎌による一撃とともに分解され、メンフィス草原の空を舞う塵へと変貌させられていった。
――恐怖というものは、過去に置いてきた。
それを指し示すようにリーヴァルディの大鎌は黒い炎の幻影を断ち切った。
成功
🔵🔵🔴
マホルニア・ストブルフ
黒い炎、今まで燃え続けていたのか……。
オブリビオンは撃破されたようだが、炎が消えなければまた厄介な敵が生まれるかもしれん。
炎に良い思い出はないが、殲神封神大戦の幻覚を突破して以降、母を手に掛けた影や焼かれた家の恐怖感は薄れた。さして問題はないだろう。
ーーいや、炎といえばもう一つあったな。丁度アポカリプスヘルの、私が居た拠点(ベース)で見たやつだ。
古臭い刃物のようなものを使って、何やら研究者たちが作業をしていたな。失敗でもしたのか、奴らが急に沸騰したように弾けて、研究所も焼け落ちていた。未だにあれが何だったのか……。
確かに恐ろしい光景だったが、それは幼少の頃だ。今は猟兵として様々なオブリビオンを見てきたし、恐怖心を好奇心に変えられる。
●今見えるのは、恐怖ではなく
「黒い炎、今まで燃え続けていたのか……」
メンフィス草原のどこか、黒い炎がまだ残るその場所でマホルニア・ストブルフ(欠けた年代記・f29723)は辺りを見渡す。
アポカリプスヘルで起こった戦争では、この黒い炎によって心に恐怖が蘇り打ち勝った者達ばかりだ。しかしだからといって完全に消えていたかと言えば、そうではない。今もなお、小さく残り続けるのみ。
マホルニアにとって、炎はあまり良い縁がない。母親を手にかけた影や燃やされた家、それが脳裏に残されていればきっと、今この場で見えていたのはその時の光景だっただろう。
今は……別の世界、封神武侠界で起こった戦争で見えた幻覚によって、その時の光景はもう見ることはない。否、あったとしてもそれは『終わったこと』として脳内で処理されるに違いない。
「……あの幻覚を突破してからは恐怖感は薄れている。さして問題は……」
問題は、ない。……そう思っていたが、どうやら彼女にはまた別の問題が残されているようだった。
ちらり、ちらりと黒い炎は燻る。心の奥に残る恐怖を湧き上がらせようとするかのように。
マホルニアの脳裏に残されているもう1つの恐怖を、思い出せと告げるかのように。
「……ああ、もう1つあったな。『コレ』が……」
彼女の目の前に広がったのは、研究者達が作業をしている様子。マホルニアがアポカリプスヘルにいる時に居た拠点で見た光景が映し出されている。
くたびれた白衣が研究者達の長い研究時間を示すかのように揺らめき、はためく。何かしらの研究を行っていたであろう彼らの姿は……もはや、人のそれとは言い難い。その手に握られていたモノが何らかの作用を果たし、沸騰したように肉が弾けていた。
「アレは、本当になんだったんだろうな。研究でこんな姿になることは、予測ができなかったのだろうか」
恐れよりも、怖れよりも、何よりも好奇心が前に出てしまっているマホルニア。この光景は過去、彼女が幼い頃に見ていた光景のようだが、それはもう何年も前の話で恐怖心などどこにもない。
今は逆だ。あの手に握られていたモノ――古臭い刃物のようなものがなんだったのか、何故研究者達が沸騰したように弾けたのか。猟兵として目覚め、数々のオブリビオンを相手取ってきた今の彼女には、様々な疑問が脳裏を支配していた。
そして、炎によって見せつけられた光景は全て、虚ろへと還される。
今はまだ、この光景に答えを出すことは出来ないとマホルニアが定義づけるように。
大成功
🔵🔵🔵
ロス・ウェイスト
み、見えるのは、白い服の人たち
思い出すのは、け、研究所にいた、は、白衣のやつら
いっぱいいっぱい、いた、痛いことされたし、ひどいことされた
こ、怖い?ま、まだおれ、あいつらのこと、怖いんかな
でも、大丈夫
「先生」が、教えてくれてん
いっぱいいっぱい殺したら、怖いもんなくなる、て!
「なあ、なあなあ、おま、お前らは殺したらあかんやつ?」
「…誰も、あかんて言わん」
「やったら、ころ、殺してええんやんな!な!」
残雪
スローイングナイフの一斉発射
高速で背後に回って喉笛掻き切って暗殺
あかんかったら、次は目
人体の急所は、ぜ、ぜんぶ、先生に教えてもらった
「こ、こ、怖ないもん」
「お前らなんか、もう、ぜ、全然怖ないねんで!」
●教えてもらったから、殺すだけ
黒い炎が燃える中、ぽつんと立つのは白衣の人々と――彼らを目の前にして少々震え上がっているロス・ウェイスト(Jack the Threat・f17575)。どうやら現在、ロスが『研究所』にいたときの恐怖が目の前に映し出されているようだ。
残機制不死実験の被検体であり、殺人兵器。それが元々与えられていた彼の存在意義。炎が見せる幻影――研究者達が人を人とも思わぬほどの残忍な実験を繰り広げ、彼へ幾重もの恐怖を植え付けた。
「っ……」
小さく、歯が重なって鳴り響く。自分に対して沢山のひどいことをしてきた人々が、また目の前にいるという恐怖がロスの身体を大きく支配する。また何か、別のひどいことをされるんじゃないかと不安になって仕方がない。
「ま、まだおれ、あいつらのこと……」
言葉を言い切る前に、ふと、ある事を思い出す。なんてことはない、自分を助けてくれた『先生』のたった一言。
――沢山殺せば、その恐怖は薄れる。
いったいどこのろくでなしが与えたアドバイスなのだろうか、本来であればそのような一言は脳内から排除されるものだ。極めて正常な判断をつけられる者なら、この言葉は到底ありえないと判断する。
だが……ロスは違う。自分を助けてくれて、色々なことを教えてくれた『先生』の言葉は……すっごくわかりやすかったから!
「なあ、なあなあ、おま、お前らは殺したら、あかんやつ?」
念のため、目の前にいる研究者達に殺していいかどうかを尋ねる。殺して良いのかどうか、それを判断するための材料として彼がよく用いる手法だが、その言葉に対して研究者達は答えを返さず。
むしろいくつもの冷ややかな目がロスを貫いている。お前に口答えをする権利はないと、今にもその口を開きそうな幻影の姿がそこにあった。
「……誰も、あかんて言わん。やったら、ころ、殺してええやんな!」
答えなき答えは、肯定。それもきちんと教わっているのか、次の言葉を待つことなくロスは研究者達の背後に回り込み、ユーベルコード『残雪』によるスローイングナイフの一斉射撃で研究者達の喉を一気に割く。
大半は喉を切られた事による呼吸不全の急死。生き残った者に向けては目を潰し、それでも死なない者には人体の急所を全て狙ってでも殺す。
教えてもらった人の急所を全部試して、それでようやく死んでくれる。殺しちゃダメだなんて止められても、きっと、もう手遅れ。
「こ、こ、怖ないもん。お前らなんか、もう、ぜ、全然怖ないねんで!」
的確に急所を貫いて、割いて、炎から生まれた研究者達の幻影を殺していくロス。
彼を恐怖から救い出した『先生』の存在は、図らずも彼を成長させてゆく。
●黒い炎、消失。
猟兵達の計らいにより、メンフィス草原を覆い尽くしていた黒い炎は消失。
一部焼け残った部分が見受けられたが、元通りの草原らしさが戻ってきていた。
過去を振り返るのは、ここで一旦おしまい。
前だけを見て歩き続ける、それだけで良いのだ。
大成功
🔵🔵🔵