【サポート優先】盗品の行方を追え!
「これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。」
●
燃え盛る邸宅に響くは、盗賊団の元締めだった大男の笑い声だった。
その後、鎮火された邸宅を兵士達と共にグリモア猟兵が盗品の捜索をしたのだが、やはり【予知】通りひとつも見つからなかった。
仕方がなく、その後の調査を司馬炎の配下である大将軍の1人に任せ、グリモア猟兵はグリモアベースへと帰還したのだった。
それから数日後ーー。
「皆様、お疲れ様です」
ナノ・ナノン(ケットシーの聖者・f18907)は、グリモアベースを訪れた猟兵たちに深々とお辞儀した。
「盗賊団の討伐、お疲れ様でした。その後、進展があったようですよ」
そう言うナノンの手には書簡が握られていた。どうやら、大将軍が盗品の行方について手掛かりを見つけたようだ。
「盗賊団は大陸の彼方此方で様々な物を盗み出していたそうです」
その中には、大きな酒壺も含まれていたという。この事から、背後で『韓信大将軍の侵略』が動き出し、幹部達の影が見え隠れしているような気がすると、ナノンは言う。
「いつかは幹部クラスのオブリビオンに遭遇するかもしれませんね」
その言葉に一部の猟兵が大きく頷いた。
「取り敢えず、今回は幹部との接触の心配は無さそうです」
ナノンはそう言うと、猟兵たちに今回の依頼について説明を初めた。
「今回皆様にお願いしますのは、人界と仙界を繋ぐ洞穴の奪還です」
封神武侠界は『人界』と『仙界』が幾つもの洞穴で繋がり、積極的に交流が行われている。そして戦後の今、残党と思しきオブリオンがその洞穴の幾つかを占拠し、盗品を仙界へと運び出しているようだ。
盗品の流出を防ぎ、行方を追うにも洞穴の奪還は必要不可欠だろう。
「今回奪還して頂く洞穴には黄金の龍が居座り、巨大な体から黒い瘴気を吐き出しています」
広い洞穴内に充満した瘴気は現在外に漏れ出し、入り口に広がる桃花の園を汚染しはじめているという。
桃花の園には樹齢千年を超える巨木が生い茂り、仙界の氣を浄化している。そして、その副産物として仙桃がなるのだが、食べた者に強い呪詛耐性を与えてくれる優れものだという。
「黄金の龍の瘴気に耐えるには、この仙桃が必要不可欠なのですが……」
残念ながら桃の木は黒い瘴気によって弱っており、現在実を付けていないのである。
「仙桃を手に入れる為にはまず、洞穴の周囲に生える桃の木を元気にしないといけません」
ナノンはそう言うとグリモアの力を宿す杖を取り出し、転送用の魔法陣の準備を始める。
「実を手に入れたらいよいよ黄金の龍の討伐になりますが、1つ注意する点があります」
洞穴内では、盗賊団の足取りを追っていた大将軍の配下が拘束されているという。洞穴内に『粘りつくユーベルコード』を張り巡らし、侵入者を拒むと同時に拘束している者の数に比例してユーベルコード発動者に力を与えるという、少し厄介な効力があるとの事だ。
「拘束された兵士達は瘴気によって徐々に侵食されているはずですので、救出したうえでの戦闘となります」
やがて転送用の魔法陣が紫色に輝きはじめる。
「向こうで桃花の園を管理する老仙が待っていますので、詳しい話はその方に聞いてください。それではお気をつけて」
猟兵たちはナノンの言葉に頷くと、次々と魔法陣へと飛び込んだ。
柚子胡椒
猟兵の皆様こんにちは。寒さと花粉でティッシュが手放せない柚子胡椒です。
前回に引き続き、盗賊団関連のシナリオです。
こちらは戦後シナリオのため、2章構成となります。また、「これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。」
以下補足です。
第1章、日常『桃の木の世話を』です。
詳細は断章で述べますが仙桃を入手する為、桃の木のお世話をする訳ですが、ただお世話するだけでは終わりません。当然、オブリビオン達が邪魔しに来ます。
第2章、ボス戦『黄金の欲望者 金色ノ龍』です。
黄金に固執した者の成れの果ての姿。吐き出される黒い瘴気は、触れる物全てを金に変える呪詛です。当然、呪詛耐性が必要となります。
また敵は『粘りつくユーベルコード』を使って兵士達を拘束し、大きくパワーアップしているため、兵士を解放してパワーダウンさせる必要があります。
兵士達を救出した際は、グリモア猟兵が予め用意した避難用魔法陣で脱出させる事が可能です。尚、粘りつくユーベルコードは金糸の形で洞穴内に張り巡らされていますが、猟兵の力であれば最も容易く断ち切れます。
第2章のプレイングボーナス……兵士達を救出する/仙桃を食べて呪詛耐性を得る。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。よろしくお願い致します。
第1章 日常
『桃の木の世話を』
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POW : 水をあげる
SPD : 虫除けをする
WIZ : 土壌を良くする
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●瘴気に覆われた桃花の園
「皆様、よく来てくださった!」
魔法陣を抜けた猟兵たちを出迎えた老仙は、朗らかな表情だった。
もしかしたら、猟兵たちの到着に安堵していたのかもしれない……。
「状況を説明致しましょう。見てくだされ」
老仙は手にしていた羽扇で猟兵たちの視線を誘導した。
「あそこに見えますのが、桃源郷創生頃から存在すると言われる桃の木たちです」
そこには、猟兵たちが想像していたより遥かに大きい桃の木があった。
その佇まいはまるで縄文杉のようで、太く立派な幹は猟兵10人が両手を伸ばしてもあり余り、天を覆うように広げられた枝は天蓋のようだった。
そんな巨木が彼方此方にあるのだ。
しかし、どの木も葉が茶色に変色し、瘴気に触れた根本が金色に輝き始めていた。しかも困った事はそれだけではなかった。
うっかり木に近づこうものなら、上から黄金に輝く毛虫……ではなく、人の腕ぐらいの大きさの『黄金ノ龍』が落ちてくる。それならばと根本の土を掘り返すと、黄金に輝く巨大なミミズ……と思いきや、同じく人の腕ぐらいの大きさの『黄金ノ龍』が飛び出してくる。
水やりぐらいならと思って井戸の水を汲み出すと、黄金の水と共にドジョウに扮した『黄金ノ龍』が襲いかかってくる。
「猟兵の皆様ならお世話も問題なく出来ましょう。それではワシはこれにて……」
老仙は満面の笑みでお辞儀をすると、煙となって消えたのだった。
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という訳で、POWならドジョウが、SPDなら毛虫が、WIZならミミズが(どれも人の腕ほどの大きさの『黄金ノ龍』ですが)物理攻撃を仕掛けてきますのでご注意を!
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです
杼糸・絡新婦(サポート)
関西弁口調。
とある忍者が使っていた武器・鋼糸【絡新婦】のヤドリガミ。
白い女物の着物を着用しているが、
名前沿った姿なだけで、オネエとかではなく中身はれっきとした男。
子供や親子中心に一般人には愛想よく接するが、
敵とみなしたら容赦なく叩く。
日常でも戦場でも自分のペースを崩さず、
フェイントや挑発、相手の動きを拘束するように阻害したり、
あえて誘い出してこちらに攻撃を仕向け、
自他へのすきを作り出したりする、戦闘スタイル。
また使えるものはなんでも使う。
元の持ち主の影響で、忍者らしい動きも見せる。
所持する黒い狩衣を着た狐獣人の姿をしたからくり人形は、
かつての主人が作ったものを模したもの、名前はサイギョウ。
雛里・かすみ(サポート)
バーチャルキャラクターの戦巫女×UDCメカニックの女性です。
普段の口調は「明るく朗らか(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
寝起きは「元気ない時もある(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
明るく朗らかな性格の為、
男女分け隔てなくフレンドリーに会話を楽しみます。
どんな状況でも、真面目に取り組み
逆境にも屈しない前向きな性格です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
シャーロット・ゴッドチャイルド(サポート)
ダークセイヴァ―の貧しい農村に生まれた聖なる力を宿した女の子です。暗い過去を背負った子ですが、いつも周りに気を使っていて笑顔を絶やしません。
ホーリー・ボルト~光の精霊の力で、光属性の魔法の矢を放ちます。
エレメンタル・ファンタジア~炎の精霊を呼び出し、炎の竜巻を巻き起こす。予想以上の威力のため、制御するのがやっと。
絶望の福音~10秒後の未来を予測する。
生まれながらの光~左の手のひらにある聖痕から他者を癒す。
※エロやグロNG
※5人以上まとめたリプレイNG
●桃の木のお世話
「……」
老仙が爽やかに去っていく様子を沈黙したまま見送った響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)、杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)、雛里・かすみ(幻想の案内人・f24096)、そしてシャーロット・ゴッドチャイルド(絶望の福音・f23202)の4人。
やがてリズが場を仕切り直すように「コホン」と小さく咳払いをすると、にっこりと朗らかな笑みを浮かべた。
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
続けてシャーロットも笑顔で紅ドレスの端を軽く摘み、礼儀正しく挨拶をする。
「こちらこそ、よろしくね」
こうして偶然出会った猟兵たちは其々挨拶を交わし、桃の木を改めて見上げた。
さて、どうやって桃の木を安全に世話するか……。
「やっぱりここは、害虫、害獣駆除を率先して行うべきよね……?」
「そうですわね。お世話をするにもイチイチ邪魔されてはたまりませんわ」
雛里の言葉にリズがゆっくり頷いた。
作業効率を考えるなら、やはりミニ『黄金ノ龍』の駆除が優先されるだろう。
「元を絶ってしまえば出て来る事もないやろ」
即ち、洞穴を占拠しているオリジナルを討ち果たせば瘴気も消え、自然にミニ黄金ノ龍も消滅するだろうと杼糸。
「その為にも、仙桃を入手しなくちゃ……」
各自気合いを入れると片手に武器を、もう片方の手に老仙が準備していたクワやジョウロ、防虫剤や駆除剤を手にして動き始めたのだった。
●まずは毛虫の駆除から
杼糸はかつて、とある忍者が使っていた武器であった。やがて鋼糸『絡新婦』のヤドリガミとして目覚めたわけだが……。
「あぁ、久々やな、この感じ」
飴がたんまり入った袖を揺らし、ヒシヒシと感じる殺気に袖の端で口元を隠し笑う。
茶色に変色した葉をヒラヒラと落とし物悲しそうな桃の木に反し、天蓋のように空いっぱいに広がる枝から獲物を狙う獣の視線が降り注ぐ。そんな中を何処か懐かしみながら、杼糸は【オペラツィオン・マカブル】を発動した。
それと同時に、杼糸目掛けて上空からバラバラと夥しい数の黄金ノ龍が落ちてくる。
杼糸の体がゆらりゆらりと揺れ、龍の攻撃を無効化にすると、いつの間にか側に控えていたからくり人形『サイギョウ』がググっと怪しく動き出す。
十指に結びつけた糸が波打ち、素早く龍を捕らえていく様はまるで蜘蛛の糸に絡め取られた虫そのものだった。
サイギョウが、宙ぶらりんの龍達に向けて杼糸が【オペラツィオン・マカブル】で受けた攻撃をそっくりそのままお返しすると、黄金の鱗が落葉のように降り注いだ。
最期に幻想的な光景を作り出したオブリビオンが消滅していくのを見届けた杼糸は、続いて老仙が準備していたと思われる虫除けスプレーを構えた。
「オブリビオンに効果があるのか分からんけど、やらないよりはマシやろ」
杼糸はカラカラと笑いながら身軽な動きで幹を登り、枝の間を飛び回りながら薬剤を散布していく。目の前では、さっそく枝から次々と芽吹きはじめていた。
「なるほどなぁ。創世記から存在するだけのことはあるわ」
その生命力の高さに関心しつつ、杼糸はサイギョウと共に黄金ノ龍の駆除と薬剤の散布を行った。
杼糸がサイギョウと害虫駆除を行なっていた場所から少し離れた所では、シャーロットが真っ白いフクロウ『ステファニー』と作業を行なっていた。
ダークセイヴァーの農村の出であるシャーロットは、瘴気とオブリビオンに侵食され、枯れていく桃の木の姿が故郷の風景と重なる気がした。
大地は荒廃し、太陽の恩恵も届かない薄暗い世界。
痩せた土地でも成長する作物を育て、オブリビオン達の遊びがいつ自分たちの村で行われるかと恐怖を抱きながら、それでも強く逞しく生きていた人々。そして、心の豊かな両親と過ごした幸せな幼少期……。
「オブリビオンは、どの世界でも同じだよね」
世界に存在する美しいものや優しいもの、温もりと豊かさを根底から壊し、奪い去っていく。
シャーロットは暗い過去を背負うきっかけになったのも、オブリビオンだった。
沈みかけた気持ちに気が付き、シャーロットは桃の木の幹にそっと触れた。
外側は瘴気で黄金に変わっていたが、中からゴンゴンと水を吸い上げる力を感じる。
「そうだった。私は笑うって決めたの。じゃなきゃ、前に進めないもん」
シャーロットはニコリと微笑むと、【メアリー・アンブレラ】を発動した。
『風さん、風さん、私に力を貸して……!』
『メアリー・アンブレラ』を開き、風に乗って一気に桃の木のテッペンへと登ると、続いて風の魔法を発動する。
小さな竜巻は枝に絡み付いていた黄金ノ龍を引き剥がし、空中へと放り投げたところを狙って風の刃で仕留めていく。
流石の龍も、風を味方につけたシャーロットには敵うはずもない。反撃すらできず落下していく龍は、地面に辿り着く前に元の瘴気に戻って飛散した。
「ふぅ……。あとは、薬剤を散布すれば良いんだよね」
シャーロットは防虫剤を風に乗せて散布していくと、それまで元気のなかった桃の木に若葉が生え始める。
それを見たシャーロットは、今日一番の笑顔を浮かべたのだった。
●土壌を良くする為には、良く耕すべし
猟兵2人の活躍により木の側での作業が可能になると、頃合いを見計らっていた雛里がクワを携えやってくる。
桃源郷で、しかも貴重な桃の木のお世話となれば、色々と多趣味な彼女にとっても新しい事を知る絶好の機会となろう。
そんな彼女は興味のある事に対しては、とことん頑張る。反面、興味のないことには、とことん無関心であった。
さて、農業は雛里にとってどちらとなるか……。
勿論、猟兵としての仕事はきっちり、そしてとことん頑張る人物なのでご安心をーー。
「えっと……確か、土を掘り返すとミミズ擬きの龍が邪魔してくるのよね?」
雛里は桃の木の周囲の土壌を観察する。瘴気が這うように漂っていたせいで、土が硬くなり石ころのような黄金が混じっている。
試しにクワの先で軽く掘ってみたところ、土はそれなりに硬いものの雛里の力であれば耕せない事もない状態だった。
桃の木の根も地中深くまで伸びているようで、ちょっと掘り返したぐらいでは根を傷付ける心配もなさそうだ。
「という事は、クワで一気に敵を刺激して飛び出してきたところをユーベルコードで薙ぎ払うのが効率的よね?」
害虫駆除を行なったうえで耕せば、耕すことに専念できる。入念に耕せば土も柔らかくなり、水や肥料の浸透も良くなるはずだ。そうなれば水と栄養が吸えれば木の回復も早くなり、仙桃も沢山なるかもしれない。
「そうと決まれば……」
雛里はクワを大きく振り上げ、一気に振り下ろした。
地面に刺さったクワから大きな振動が地面の中を伝うと、振動の刺激で地面に隠れていた小さな黄金ノ龍が一斉に飛び出す。
雛里はすかさず【巫覡載霊の舞】を発動した。
その身を一時的に神霊体に変え、クワから『なぎなた』に持ち替えると直線上に衝撃波を放つ。
衝撃波は木と木の間を通り抜け、宙に浮いていた龍たちを吹き飛ばしながら斬り刻んでいく。
その間、何匹かが雛里に噛みつこうと飛び出してきたが、神霊体の雛里はダメージを負うことはなく、思い切り踏み潰し、蹴り飛ばし、なぎなたでとどめを刺していく。
ようやく静かになったかなと感じた雛里は元の姿に戻ると、今度は肥料を混ぜ込むように丁寧に土を耕したのだった。
●水をあげたら完了です
オラトリオの聖者にしてビーストマスターであるリズ。本来なら動植物を大切にし、相手に寄り添うよう配慮するのだが、今回の相手は桃の木を苦しめる害虫や害獣。
つまり問答無用な相手である。
リズは気を引き締めると純白の大きな翼を広げ、【戦神のご加護を(ゴッド・ブレス・ユー)】を発動した。
『皆様に戦神のご加護がありますように……』
その場に『光のオーラ』が満ちると、続いてリズ愛用の月を象った杖『ルナティック・クリスタ』を構えた。
杖の先に付いた青いクリスタルを井戸に向け、祈りの力を込めながら呪文を口にする。
決して、井戸を破壊しようとしている訳ではない。
やがて青いクリスマスに月の光が宿り、四方に聖なる光を放ち始めると井戸の奥底目掛けて祈りの力を注ぎ込んだ。
「水をあげようにも、水自体が汚染されていては意味がありませんわ」
やがて井戸から光の柱が放出され、ドジョウに扮した黄金ノ龍が何匹も吐き出される。
リズは杖をくるりとひと回転させると大きく振った。杖の軌跡から氷の粒が生まれ、やがてツララを作り出すと、黄金ノ龍を次々と串刺しにしていく。
それはそれは、本当に鮮やかな駆除であった。
「これで大丈夫ですわね」
ぽかぽかと木漏れ日のような笑顔を浮かべたリズは井戸の水を汲み上げると、丁寧に桃の木の根本へとかけていく。
浄化された透明の水はキラキラと輝きながら瘴気を洗い流し、黄金に変色していた幹を元に戻していく。
やがて桃木の葉の色が緑色に変わり始め、艶やかになっていく様子を見たリズはーー。
「うふふ、気持ち良いの? そう、美味しいのね。それは良かったわ」
思わず優しく声をかけるリズの目の前で、次々と桃の木が一斉に花が咲き出した。
辺りに桃の香りが漂い、同時に瘴気が桃の木に取り込まれていく。花の間に小さな実が生まれ、みるみる内に大きくふっくらまん丸の仙桃へと姿を変えた。
「わぁ、うまくいったようですわね」
リズは仙桃を1つ手に取ると、ずっしりとした仙桃を両手で優しく包み込んだ。
これでようやく洞穴内に入る事ができる。
残すは黄金に取り憑かれ、自ら黄金の龍へと姿を変えた哀れなオブリビオンを討ち取るだけだ。
成功
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第2章 ボス戦
『黄金の欲望者『金色ノ龍』』
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POW : 欲深き意思
全身を【黄金化効果のある瘴気】で覆い、自身の【欲望の力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 欲深き犠牲
【黄金塊や黄金化した犠牲者を投げる事】による素早い一撃を放つ。また、【瘴気を解放する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 欲深き瘴気
【黄金化の瘴気】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が黄金化し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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●黄金の洞穴
桃の木の世話を終え、仙桃狩りを楽しんだ猟兵たちは、再び老仙に出会うと洞穴の入り口へと案内された。
「ここから先、瘴気による呪詛が強くなっております故、仙桃をお食べになってから進まれると良いでしょう。それと……」
老仙は仙桃とは別に、囚われた兵士達用の丸薬を準備したというのだ。
体の一部を黄金に変えられ、逃げる事が困難な者も中にはいるはずだとーー。
「それから、脱出用の魔法陣をちょっと弄らせて頂きました」
猟兵の誰かが、「と、仰いますと?」と首を傾げながら尋ねる。
「皆様の周囲にランダムで現れるようにしておきました。それであれば、敵に魔法陣を破壊される心配もなく、また一度魔法陣の元に戻る手間も生じますまい」
その言葉に、猟兵たちは大きく頷く。そして老仙の思わぬ協力に礼を述べた。
やがて準備が整った猟兵たちは仙桃と丸薬を老仙から受け取ると、各自仙桃を口にする。そしてオブリビオンの潜む、黄金の世界へと足を踏み入れたのだった。
●黄金の洞穴
猟兵たちは中に入ってまず驚いたのが、その広さであった。
天井は遥か遠く、道は綺麗に整備され、馬車道が4列さらに歩道まである。
瘴気で黄金に変えられた洞穴の壁や天井の一部は、壁に沿うように置かれた篝火に照らされ不規則にキラキラと輝いており、篝火のオレンジの光は黄金を濃い蜂蜜のように一層妖しく輝かせていた。お陰で洞穴内は十分明るく、進むだけなら最も簡単だった。
ただ、黒い瘴気は空気より重いのか猟兵たちの腰の辺りを漂い留まり、それを掻き分けるように進んで行く必要があった。
バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』
年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?
下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も
アドリブ、連携歓迎
●闇医者の後方支援
「……むぅ。我が黄金を狙って、盗人がこの洞穴に足を踏み入れたか」
黄金の欲望者『金色ノ龍』は唸るように言うと、黄金に輝くその巨体をくねらせ、鼻腔から黒い瘴気を吹き出した。それこそ、触れるものを黄金に変える【欲深き瘴気】だった。
「まぁ良い。ここまで辿り着いてみよ。我自ら踏む潰してくれる!」
太く腹に響く声は洞穴中に響き渡る。当然猟兵たちの耳にも届いていた。
欲深き瘴気は大きく畝り、洞穴内の地形を黄金に変え、金色ノ龍の戦闘力を爆発的に高めていった。
「さて……」
ラミアで闇医者のバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、偶然にも今回のオブリビオン討伐に呼ばれた猟兵の1人である。
現在、洞穴内には敵のユーベルコードに捕らえられた兵士達がいると聞き及んでいる。
「医師である私が呼ばれたのも納得ね」
呪詛に侵食されてしまっているであろう兵士の救護を担うべく、バジルは洞穴内を静かに進む。蛇の下半身は音を立てず、気配を絶ったままスルスルと進むのに好都合だった。
やがて金色の糸に絡め取られ、人形のようにぶら下がる兵士達を見つける。意識はあったが、老仙の言っていた通り体の一部が黄金に変わっており、そのままでの脱出は難しいようだった。
状況から見て、長いは無用な場所である。それ故バジルは、兵士達の救出と治療に専念し、脱出の手助けを開始した。
こうする事で効率良く兵士を解放し、尚且つ敵の力を削げる筈だと……。
バジルは使い魔『にょろざーる』を呼び出すと、兵士達に巻き付く金の糸を噛み切るよう指示し、自身はユーベルコード【白蛇の鎖(サーペントチェイン)】を発動して治療を開始した。
『きっとあなたも誰かの特効薬なのよ』
白蛇の形の光の鎖が兵士達に巻きつくと、高速治療が始まる。当然、バジル自身は疲労するが更に疲労すれば複数同時の高速治療も可能となる為、バジルは静かに耐える。
バジルのこうした地道な活動は【欲深き瘴気】の効力を打ち消すに至り、後に続く猟兵たちにも大きく貢献をしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
マルガレータ・フォルシアン(サポート)
バイオモンスターのミュータントヒーロー×ダークヒーロー、31歳の女です。
普段の口調は「聖なるかな(わたくし、~様、ございます、ございましょう、ございますか?)」、覚醒時は「邪悪なり(オレ、呼び捨て、か、だろ、かよ、~か?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
「なんと酷い光景でございましょうか……」
洞穴内の煌びやかさとは相反して、生身の人間が宙吊りにされている光景にマルガレータ・フォルシアン(フォルス・ザ・モンスター・f16583)は嘆いた。
金糸が天井から垂れ、キラキラと輝く様はネックレスのチェーンのようで美しく、黄金の壁も息を飲むほど豪華なものだった。
しかし、そこにぶら下がるのは生身の兵士。しかも体が瘴気に蝕まれ、黄金に変えられようとしている。
その過程は酷く苦しいものなのだろう。洞穴内の奥に進むほどに兵士達の苦痛に満ちた呻き声が増えてくるのだ。
見るに耐えず、また聞くに耐えぬ光景ーー。
これが、黄金に取り憑かれた者の心なのかもしれないと、マルガレータは表情を曇らせた。
まずは兵士達をこの苦痛から解放しなければと、マルガレータは『バトルガントレット』をはめた両手で金糸を吹き飛ばした。そして、地面に落ちた兵士達の中で比較的動けそうな者から老仙から受け取った丸薬を与え、ランダムに出現する魔法陣へと誘導していく。
そしてある程度の所で場所を変えると、敵の襲撃を待ち構えた。
兵士達を救出し続ければ敵の力が削がれる。という事は当然、ある程度の所で敵に察知され、猟兵を狙ってくるだろう。
それこそ、こちらの狙いなのだが……。
やがてズルズルと何かが引き摺られる音が洞穴の奥からすると、ぬるりと『金色ノ龍』の頭部が姿を現す。
その双眸は赤々と輝き、怒りに満ち満ちていた。
「良くも、我の生贄と黄金を!」
【欲深き意思】により全身を黄金化効果のある瘴気で覆った敵は、肥大したその欲望を力に変えるとマルガレータに体当たりをして来る。
その回避不可能な攻撃に、マルガレータはすかさず【バイオミック・オーバーロード】を発動させた。
ここに至るまでに溜め込んだ【怒り】の感情を一気に爆発させ、自身の身体サイズと戦闘能力が増大させる。
やがてマルガレータの身体が金色ノ龍と同じ体格まで膨れ上がると敵が振り下ろした尻尾を両手で掴み、持ち前の怪力で敵の長い体を鞭のように振り回した。巨大な龍の体を黄金の壁や天井、そして地面に何度も打ち付け、最後に洞穴の奥に向けて投げ飛ばす。
しばらく様子を窺っていると、ズルズルと体を引き摺る音が洞穴の奥へと消えていく。
マルガレータは安堵の息を吐くと他の猟兵に追撃を任せ、再び兵士達の救助を再開したのだった。
成功
🔵🔵🔴
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
正面からのぶつかり合いを好みますが、護符を化け術で変化させて操作したりなどの小技も使えます。
全力魔法使用後の魔力枯渇はにゃんジュール等の補給で補います
名刀『マタタビ丸』は量産品なので、もしも壊れても予備があります。
ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ミカエラ・マリット(サポート)
好奇心旺盛な少女
世間知らずなところもあるのでどんな事も割とすぐに受け入れるけど、ツッコむ事も知っている
どんなことも力づくでどうにかできるという思考回路
基本的にギャグ漫画の様に人間離れした力持ち
自分より遙かに大きいものを持ち上げたり、ぶん投げたりして戦う
愛用はイラストにあるハンマー
近接戦は大体これでピコハンのように殴る
遠距離の時は自分より大きなアンカーを鎖掴んで振り回す
足元が不安定な場所や冷気に弱い敵にはあずきソード
いずれにしても鈍器
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用
多少の怪我は厭わず積極的に行動
他の猟兵は大体年上なので懐くし頼りにしてる
エロは禁止
●欲深き者に(物理的な意味の)鉄槌を
陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)とミカエラ・マリット(撲殺少女・f23163)
は、洞穴内を直走っていた。
勿論、金糸から兵士達を解放しながらである。
陽環は服の袖からバラバラと護符をばら撒くと、護符から炎を発生させて金糸のみを燃やしていった。
解放した兵士達にはミカエラが老仙から受け取った丸薬を与え、次々と脱出用の魔法陣へ誘導する。
「ぐずぐずしてると、敵に見つかっちまうからな!」
陽環は、急げ急げと兵士達を促した。
因みに彼女の行動原理は至って分かりやすく、「悪い奴らはぶっ潰す」であった。そして、今回のオブリビオンは正しく「悪い奴」である。ならば、あれこれ考える必要は一切ない。
そしてミカエラも、「どんなことも力付くでどうにかできる」という思考回路の持ち主であった。
力で解決する手段を好む点においては、2人の相性はとても良いと言える。
2人は息の合った動きで兵士達を救出しながら、スピードを落とす事なく尚も前進した。
やがて洞穴の中間地点に辿り着くと、金色に輝く1匹の龍が姿を現した。
どうやら、自身の張ったユーベルコードが破壊されている事に気が付き、出てきたようだ。
「おのれ、おのれ、せっかく□□様から頂いた力が……」
黄金の欲望者『金色ノ龍』は陽環とミカエラに対して怒りを露わにすると、【欲深き意思】を発動させた。
全身を黒い瘴気で覆い、肥大化した黄金への欲望を力に変えると瘴気を纏った状態で回転しながら突っ込んで来る。
しかし彼女たちは、『仙桃』の効力で瘴気の影響を受けずに動くことが出来たのである。
陽環はヒラリと身を翻すと弾幕で姿を眩まし、【屍塊転燃(シカイテンショウ)】を発動した。
『エネルギーチャージといこうじゃねえか!』
陽環は持参した屍肉を取り出すと一気に食べ尽くす。そうして自身の戦闘力を増強させると。爆符『烈火乱れ咲き』でばら撒き弾、誘導弾、爆裂弾と事前に組んでおいた様々な弾幕を展開した。
「グァアアァーーーー!」
体当たりに失敗した敵は当然弾幕の中を突っ切る形となり、無数の弾によって金色の鱗が剥がされ、肉を削がれていく。
ミカエラは敵が激痛に苛まれ、のたうち回っている間に『にゃんこあくすはんまー』を担いだまま頭上へと大きく飛んだ。
「とりあえず、なぐっておきますね」
『にゃんこあくすはんまー』を握ったまま空中でくるりと回転すると、ミカエラは敵の首目掛けて振り下ろした。落下する途中、ハンマーに仕込んであった斧を飛び出させると打撃直後に斧で硬い皮膚を切り裂いた。
敵の首元から大量の血が噴き出すと、瞬く間に辺り一面地の海と化した。しかし、ミカエラの攻撃はこれで終わりではない。手にしたハンマーを手放し、続けてユーベルコードを発動する。
「びったんびったん、はつどう!」
ミカエラは手にしたハンマーを手放すと敵の長い尻尾を掴んで持ち上げ、高速回転を行いながら壁に頭部をガンガンと激しくぶつけていく。そして最後に地面へと、思い切り叩きつけた。
洞穴内に轟音が響き渡り、地面が大きく揺れる。
やがて、元の強さに戻った金色ノ龍が血の海から起き上がる。そして無言のまま、ふらふらと反対側へと逃げて行く。
勿論、このまま逃す2人ではない。お互い頷き合うと、トドメを刺すべく敵の跡を追うのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レイン・ファリエル(サポート)
『さぁ、貴方の本気を見せて下さい』
人間のサイキッカー×ダークヒーローの女の子です。
普段の口調は「クールで丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、機嫌が悪いと「無口(私、アナタ、ね、よ、なの、かしら?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は落ち着いてクールな感じのミステリアスな少女です。
人と話すのも好きなので、様々なアドリブ会話描写も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
土御門・泰花(サポート)
※アドリブ・連携・苦戦描写・UC詠唱変更・その他歓迎
「あらあら……。大変な事態です。微力ながらお手伝い致します」
一人称:私
口調:基本的に敬語。柔和な印象を与える口ぶり。
表情:基本的に柔和な笑みを湛え、義憤もその下に隠す。
性格:普段はおっとりだが「陰陽師の家系の当主」という自覚があり、凛々しくみせる時も。
先ずは私や仲間へ【オーラ防御/結界術】展開、守りを。
【早業/軽業/地形の利用】で移動。
敵の攻撃は防御結界で弾き、物理攻撃は薙刀で【武器受け】し薙刀or式神の黒揚羽で【咄嗟の一撃/カウンター/2回攻撃】。
UCは戦況と効果次第で適切なものを使用。
可能な限り【早業】で敵のUC発動前に発動。
後はお任せ。
阿紫花・スミコ(サポート)
アルダワ魔法学園の生徒。暗い過去を持ちつつも性格は明るい。自信家で挑発的な一面がある。力があれば何をしてもいいというようなダークセイバーの領主達を心底嫌っている。機械系に強く様々な世界の機械知識を広く持ち自作ガジェットの研究・開発を行っている。
からくり人形「ダグザ」:巨大な棍棒で敵を粉砕する。
精霊銃「アヴェンジングフレイム」:黄金に輝くリボルバー。弾丸には炎が宿る。
ワイヤーギア:射出したワイヤーを引っかけ、巻き取りと、蒸気噴出で推進力を得る。
※エロやグロNG
※5人以上をまとめたリプレイNG
●欲深き者の最後
猟兵たちから襲撃を何度も受けた黄金の欲望者『金色ノ龍』は、明らかに弱り始めていた。
それでも、金色ノ龍は『黄金』を諦めるようなことはしない。何故なら、彼にとっての存在意義そのものだからだ。
龍は洞穴で息を潜め、身を隠す。そして、少しでも回復に努めた。
しかし、オブリビオンという存在に安らぎなど与えられるはずもない。この世界は『今、この時を生きる者達の為の世界』であって、過去が存在して良い世界ではない。
過去の存在である彼が安らげる唯一の場所は、『骸の海』以外に何処にもない事を知る猟兵たちは、龍に最後の戦いを挑んだのだった。
●
「さぁ、貴方の本気を見せて下さい」
人間のサイキッカーにしてダークヒーローの少女レイン・ファリエル(クールビューティー・f17014)は、黄金の欲望者『金色ノ龍』と静かに向き合った。
その小さな手に嵌められているのは、緑色のエネルギー障壁を放出する手袋『エーテル・ウォール』だ。
レインは、堕落した龍に毅然とした態度で問う。
「何故、黄金を求めるのです? 真に豊かである事は、所有している金銀財宝の量とは無関係なはずです」
しかし返ってきた答えは、欲にまみれた愚かな答えだった。
「黄金は何事にも変えがたく、いかなる存在よりも尊い。決して朽ちることのない黄金は、永遠を象徴すると言っても良い!」
胸を張り、堂々と答える龍は、それ以外の存在は存在する価値すらない、と言いたげだった。
そこに、紫色の衣に身を包んだ土御門・泰花(風待月に芽吹いた菫は夜長月に咲く・f10833)と、アルダワ魔法学園の生徒、阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)が駆け付ける。
「あらあら……。大変な事態です。微力ながらお手伝い致します」
「ふぅん。なんだか、ダークセイヴァーのオブリビオンとは違った価値観の敵だね」
2人はそう言うと、それぞれ武器を構えた。
龍は戸愚呂を巻き、新たに現れた猟兵たちを威嚇する様に頭を左右に揺らし始める。最早、龍をパワーアップさせていた兵士達はいない。
【粘りつくユーベルコード】の効果が消え、元の状態に戻った龍は残った力を注ぎ込み、【欲深き意思】、【欲深き犠牲】、そして【よく深き瘴気】を発動させた。
全身を黄金化の効果を有する瘴気で覆い、欲望の力で自らの戦闘力を上げた龍は、瘴気で黄金化させた天井の鍾乳石を尻尾で薙ぎ払い、次々と落下させる。
「ここはお任せください!」
土御門が素早く印を結び、自分とレイン、そして阿紫花にオーラ防御と結界術を展開し、守りを固めた。しかし、鍾乳石と共に降り注ぐ瘴気は防げても、重量のある鍾乳石を完全に弾き返す事は出来なかった。
当たれば、致命傷は間逃れないだろう。
レインは咄嗟にサイキックで鍾乳石のいくつかの軌道を空し、互いにぶつけて破壊した。その間に阿紫花がからくり人形『ダグザ』を操り、巨大な棍棒で敵に殴りかかった。
「ボクの人形に勝てるかな?」
フルスイングした棍棒で瘴気に覆われた龍の胴体を凹まし、残った鱗を破壊する。
純粋な打撃を食らい、動きが鈍る敵を続いてレインが【ナイトメア・カッター】で攻撃する。
『逃げ場などありませんよ、これで切り裂かれなさい』
龍の頭部を狙って、衣服に隠した投擲用の暗器を次々と放つ。放たれた暗器は、強靭なツノを切断し、左目辺りをザックリと切り裂いた。
「ぐぁあっぁあーーーーーーーーーーー
!!!!」
絶え間ない攻撃に敵が堪らず仰け反り、傷から血を噴き出しながら悲鳴を上げる。
「噴き出す血ですら、金ですか……」
やられる姿も派手な敵の姿に、土御門も流石に驚く。
「見た目だけでなく、体の中まで金で出来ているとは……。ある意味、徹底しているとも言えますね」
おっとりした口調で感想を述べた土御門は、続いて【導眠符(ドウミンフ)】を発動させた。
『安らかな眠りで、心身を癒してくださいね』
片手で印を結び、もう片方の手で深い眠りに落とす術を込めた霊符を放つ。霊符はスッと空を切るように飛び、暴れ狂う龍の体に張り付いた。
最初は眠りと癒しをもたらす霊符の力に争っていた龍も、最後はスヤスヤとその場で眠り始める。
そんな敵に終焉をもたらすべく、阿紫花は【ロングレンジ・ショット】を発動した。
『これでもくらえ!』
阿紫花は、【狙撃用スコープ】を装着したロングレンジライフルを静かに構えた。
狙うは心臓ーー。
体中をダグザの棍棒で打ち砕いたお陰で、心臓の位置が丸見えとなっていた。
次の瞬間、発砲音が洞穴内に響く。しかし、龍の断末魔は聞こえなてこなかった。
それもそのはずだ。土御門の『導眠符』で深く眠っていた龍は、本人も知らずのうちに息絶えたのだから……。
「終わりましたね〜」
「はい」
「帰りましょうか」
土御門、阿紫花、そしてレインは息絶えた龍を見つめると、次に互いに笑い合った。
こうして全てを終えた猟兵たちは龍の亡骸の処理を仙人達に任せ、グリモアベースへと帰還したのだった。
成功
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