銀河帝国攻略戦⑰~その身を晒す覚悟はあるか
●アゴニーフェイス艦隊攻略戦
「大まかな状況は把握しているね? そう、銀河帝国攻略戦……今回集まって貰った皆に頼みたいのは、『アゴニーフェイス艦隊』の撃破だ」
貴公子然としたグリモア猟兵は、ふわりと微笑み、敵について説明を始めた。
精神破壊兵器『アゴニーフェイス』。使い捨ての専用カートリッジ――材料は、サイキッカーの脳だという――を用いて作動し、強大な『テレパシーの悲鳴』を放つことで、受けた艦の人間達の精神を破壊する恐るべき兵器だという。
そして、解放軍の艦隊には『アゴニーフェイス』の攻撃を防ぐ方法が無い。カートリッジの関係上、それだけで蹂躙とはいかないものの、彼らにとっては大きな脅威だ。
そこで必要とされるのが、猟兵たちの力である。
「僕たちの生存本能ならば、アゴニーフェイスの精神破壊攻撃に、何とか対抗できる。但し、平然と、とはいかないがね。――代償として、一人残らず、最初から『真の姿』を晒して戦うことになる」
その覚悟だけは決めて臨んで欲しいと、グリモア猟兵は呼びかける。
また、『アゴニーフェイス』の副作用か、真の姿が通常の姿から大きく外れていればいるほど、より強力な戦闘力を発揮する事ができるらしい。
目標の『アゴニーフェイス』を守るのは、無数のクローン重騎兵たち。艦隊とは言うが、宇宙戦艦の類は布陣していない。
「まあ、本来であればアゴニーフェイスだけで敵を無力化できるんだ。手薄というよりは、隠密性を重視した編成だったのだろうね」
だが、それが猟兵たちにとっては、突くべき大きな隙となったのだ。
先にアゴニーフェイスを破壊することができれば、普段の姿に戻り、残った敵を掃討することになる。
戦況次第では、先に敵を掃討してからアゴニーフェイスを破壊――と、手順が逆転することもありえるだろう。
その辺りは、臨機応変に。
「さあ、己の本性を晒す覚悟は決めたかい? よろしい。それでは――武運を祈るよ、諸君」
貴公子は、大仰に礼をして。猟兵たちを送り出すのだった。
黒原
初の戦争シナリオ運営となりました、黒原です。
概要はOPの通り。例によって宇宙での戦闘になりますが、呼吸その他諸々の心配はありません。
今回限りのプレイングの注意点と致しまして、イラストの有無にかかわらず、「真の姿をどのように描写して欲しいか」を明記することを、強く推奨します。
姿、戦闘スタイル、場合によっては自分の姿への思いなど、多少の無茶は効くものかと思いますので、設定を盛り込んで下さい。それだけでプレイングボーナスがつくわけではありませんが、描写は納得いくものになりやすいかと存じます。
それでは、よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『クローン重騎兵』
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POW : インペリアル・フルバースト
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : コズミックスナイプ
【味方との相互情報支援】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【狙撃用ビームライフル】で攻撃する。
WIZ : サイキッカー拘束用ワイヤー
【アームドフォートから射出した特殊ワイヤー】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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ミーユイ・ロッソカステル
頭痛がする
いつものような眠気はない。宇宙の暗闇に囲まれた中では、あの呪わしい睡魔は意味をなさない
けれど……その戦場に鎮座するモノが、どうしようもなく思い起こさせる
お前は、吸血鬼の腹から生まれたのだと
いつものような桃色ではなく、毛先のみだった鮮血の真紅に染まった髪
それが、吸血鬼としての本性を暴かれた姿
猟兵として真の姿を晒す機会にあっても、一度も見せたことのないもの
……人の心を、勝手に剥き出しにさせるな
怒りも露わに呟いて、次いで紡いだのは言語として意味をなさない歌
「不愉快で耳障りな狂想曲 第1番」
荒れ狂う暴風のように、歌い続ける
少しでも音を拾ってしまえば、脳を焼き切られるような憎悪と狂気を込めて
●ミーユイ・ロッソカステル
頭痛がする。
いつものような眠気はない。元より、果てなき宙の暗闇に囲まれた中では、彼女にいつも付き纏う呪わしい睡魔は意味もなすまいが。
(「……いいえ。地上でも、変わらなかったでしょうね」)
こうしている間にも頭の中をかき乱す、恐らくは犠牲となったサイキッカーの脳から絞り出される悲鳴。否、悲鳴と言うのも憚られる、それは最早ただの不協和音だ。こんなテレパシーに晒されながら欠伸を漏らせるほど、図太い神経はしていない。
苦鳴が理性を削る度に。沸き起こる力がその身の内で脈打つ度に。
ミーユイ・ロッソカステルの本性が、厳然たる事実を突き付ける。
――お前は。吸血鬼の胎から、生まれたのだと。
ミーユイの髪は、特徴的な色合いをしている。リップのような桃色から、鮮血の紅へと移ろう、艶やかな毛並み。
それが今、鮮血の真紅に染まっていた。猟兵として普段晒す「真の姿」ともまた違う。一度も見せたことのない、ミーユイの、吸血鬼としての本性。
知らず、爪先の突き立った掌に血が滲むほどに、拳を強く握り。
顔を上げ、睨む先にあるのは――悲鳴の出元。精神兵器『アゴニーフェイス』を守るように布陣する、クローン重騎兵たち。
彼らにこの感情をぶつけるのは、筋違いだろうか。
ああ、けれど。――もう、抑えられそうにない。
「……人の心を、勝手に剥き出しにさせるな」
不快感。怒り。敵意。屈辱。狂気。
全ての感情を込めて歌うのは、『不愉快で耳障りな狂想曲』――否。それを歌と、曲と呼ぶのは、或いは普段のミーユイに対する侮辱ですらあった。
『くruエ』『to惑え』『許シwおkoェ』『nakI叫nデ』『コu悔せヨ――ッ!!』
荒れ狂う、暴風のような不協和音。言葉にもならぬ言葉、金切り声が戦場の一角を吹き荒れる。音の伝わらないはずの宇宙に、確かにそれは鳴り響く。
重騎兵たちの頭部を守るヘルメットが次々と砕け散り――脳を侵し、焼き切って。
星の海に、地獄が顕現した。
大成功
🔵🔵🔵
花巻・里香
真の姿ね、私のようなスタイルにも有効かしら?
でもコレなら制御できそうね、捕食炉の封印を全て解いて【捕食衝動】を発動、より獰猛に捕食者たるからくり人形の真の姿を解放。
あら私はどちらかというと疑似餌だもの。宝石の体に内包されたフェロモン系超能力エネルギー(性質は【魅惑の外装人形】)を解放し、フェロモンで金縛りの呪蜂を従え、捨て身の誘惑でクローン兵達を誘き寄せ。
擬態(変装)と【クリスタライズ】の透明化からくり人形でだまし討ち
金縛りの呪詛や十指の糸で動きを封じ糸鋸状の鎌で捉えた、クローン兵を抵抗する間もなく【蟲惑の小部屋】へ送り、獰猛な蟲達よ喰らい尽くしなさい
色香に惑え、捕食者たる花蟷螂はあなたの傍に
●花蟷螂
――クローン重騎兵の一団が遭遇したのは、星の海に抱かれるようにゆらゆらと揺れる、豊満な肢体を花のようなドレスに包んだ女だった。その茫洋とした瞳が何を映しているのかは見通せないが――あるいは、『アゴニーフェイス』により精神を破壊されたかのような。
あまりにも場違いな姿。困惑が広がる中、騎兵の一人が、仲間が制止する間もなく、ふらふらと誘われるように近付いていく。
銀河帝国に付き従う忠実なクローン兵士としては、あまりにも軽率な対応。
ヘルメットの中で、彼は――ごくりと、生唾を呑んでいた。メット越しにも伝わる色香。心を壊され、抵抗できないのではないか。そんな邪念が、判断を誤らせ。
――その欲望に満ちた視線が、彼の、最後に見た景色となった。
「「「――っ
!?」」」
突如、細切れのブロック状になって宇宙に飛び散る仲間の姿に、仰天したクローン重騎兵たちはブラスターを女に向けるが――遅い。女の指先から伸びる十糸が銃を握る腕に巻きつき、逸らし、縛り上げ――抵抗の力を奪った瞬間には、片端から虚空に送り込んでいった。
(「――ああ。私のような姿にも、有効なのね。これなら、捕食炉を全開放しても制御できる」)
血煙のしぶく中、ほう、と花巻・里香は溜め息をつく。彼女の身体は、『疑似餌』だ。真の姿というのなら、或いは、彼女の操るからくり人形こそがそれに相応しいとすら言えるかもしれない。
花のようなドレスに擬態した、鎌の腕を持つ外装人形――そして、今は――。
ゆらりと、里香の背後で不自然に光が歪む。クリスタライズの力で透明化した人形の鎌こそが、最初の兵士を惨殺した刃だった。
そうこうするうち、異空間に送り込んだ兵士たちの悲鳴が止んだのを察知する。蟲たちに、喰らい尽くされたのだろう。
それを確認すると、里香はゆらりと動き出し、次の戦場へと進んでいった。
やることは、変わらない。誘き寄せ、喰らうだけだ。
花巻里香は花蟷螂。――色香に惑え。捕食者たる花蟷螂は、あなたの傍に。
大成功
🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【POW】
あっぐ……!!うう、ぎ、ぃ……ッ、これが、アゴニーフェイス!?
ひ、ひっぱら、れ、るっ……っき、ぅう、ゔ、……!
(真の姿:真人格【マダム】)
――――っは、ァ。
はは、引きずりだされたと思えば……。
く、ふふ、どういう奇天烈な仕組みだ?
やってくれる……!く、ふ……ははは!【脳】に深刻なダメージだ。
だが、【私】を引きずり出したのだ。
――覚悟はよろしいな?
一斉発射にはあたりの亡骸を使ってカバーする。
感傷など持ち合わせていないよ。
腕の一本足の一本打ち抜かれたところで『脳』さえあれば貴様らを破壊するのは容易いさ。
仕上げに【疑似餌】を投げ、【ワトソン】を活性化だ。
――さぁ、『逆転せよ、我が因果!』
●マダム・モリアーティ
「あっ、ぐ
……!!」
頭の中をかき乱す、恐らくは犠牲となったサイキッカーの物であろう、断末魔の精神波。
「うう、ぎ、ぃ……ッ、これが、アゴニーフェイス!? ひ、ひっぱら、れ、るっ……」
ヘンリエッタ・モリアーティは、割れそうに痛む頭を押さえて身をよじり。
「――っき、ぅう、ゔ
、……!」
……そして。
「――――っは、ァ。はは、引きずりだされたと思えば……。く、ふふ、どういう奇天烈な仕組みだ?」
にぃ、と、脂汗の浮かぶ顔で嗤う。
その人格は、もはや知りたがりのヘンリエッタではない。戦闘特化のヘイゼルでも、自由に生きるルビーでも。
真人格、マダム・モリアーティ。
「やってくれる……! く、ふ……ははは! 【脳】に深刻なダメージだ。だが、【私】を引きずり出したのだ」
――覚悟は、よろしいな?
●
戦場の各所で地獄のような光景を繰り広げる異形の猟兵たちに、クローン重騎兵たちは浮足立ち始めていた。
通信システムからは、友軍の悲鳴が絶えず響く。新たに現れた女に、先手を取られてなるものかと、全武装のフルバーストが叩き込まれ――
(「――相互情報支援が裏目に出たね。恐怖に縛られた群衆ほど、手玉に取りやすいものはない」)
光と爆発が晴れてなお、マダム・モリアーティは健在だ。オープンフィンガーグローブに包む指先が掴んでいたのは、戦場を漂っていた兵士の死骸。肉の盾。感傷など、持ち合わせてはいない。
とはいえ、彼女も無傷ではない。――むしろ、重傷だ。熱線銃が体の各所を貫き、左腕などは取れかかっている。
だが、問題ない。何もかも、黒幕の計画通り。
「腕の一本足の一本打ち抜かれたところで、『脳』さえあれば貴様らを破壊するのは容易いさ」
活性化させるのはUDC、ワトソン。魂を喰らう触手の群れが、重騎兵たちを襲い。
「――さぁ、『逆転せよ、我が因果!』」
成功
🔵🔵🔴
ピート・ブラックマン
真の姿はデュラハンのような見た目
下半身はジャンクで構成された馬のような形でケンタウロスのような見た目
上半身は首の無い甲冑で腕が六本あり、中身がタール状の黒い液体が詰まっている
体格も巨大化
この姿はあんま好きじゃねぇんだよなぁ
古臭ぇ見た目だし、ダサいしよ……まぁ背に腹はかえられねぇか
こうなっちまったら、やることはシンプルだ
全力で駆けて、敵をブン投げて、踏みつぶして蹂躙するだけだ
できれば、さっさとアゴニーフェイスをぶっ潰して元の姿に戻りてぇんだけどな
それで一人突っ走って囲まれても洒落になんねぇし、その辺は周りと合わせて戦うさ
●無面六臂の半馬騎士
星の海に、馬蹄の音が鳴り響く。
鳴るはずのない音に、重騎兵が戸惑いながらもブラスターを向けた先――一直線に駆けてくるのは、異形の黒騎士の姿であった。
下半身は、ジャンクで構成された馬のそれ。
上半身は六腕を持つ甲冑姿。甲冑の内側では、タール状の黒い液体が、ぐるぐる、ぐるぐると渦巻いていた。
その全高は3メートルにも及ぼうか。無面六臂のケンタウロス・デュラハンは、降り注ぐ無数の熱線を、その腕で受け、流し、歩みを止めることなく、布陣するクローン重騎兵たちの間に突っ込んで、
「この姿は、あんまり好きじゃねぇんだよなぁ」
独白と共に、駆け抜ける。
駆け抜けた先、六本の腕にはそれぞれに、引き千切った兵士たちの頭部が握られていた。
「古臭ぇ見た目だし、ダサいしよ……なぁ」
旋回。返すぜ、とばかりに生首を投げつけながら、
「お前らも、そう思うだろ?」
浮き足立つ兵士たちの中に、もう一度突入する。
今度は立ち止まり、そのまま暴風のように六腕を振るう。突き刺さる熱線をものともせず、兵士の身体を殴り、掴み、ぶつけ、千切り、更には馬の脚で蹴り潰す。
「まぁ、背に腹は変えられねぇよな」
最後の一人の頭を掴み上げ。じたばたと暴れて逃れんとする兵士の頭を――ぐしゃりと、握り潰し。
「できれば、さっさとぶっ潰して元の姿に戻りてぇんだけどな」
はあ、とため息。
視線を向けた先は――未だ遠く、兵士たちの影に隠された、精神兵器アゴニーフェイス。
突出して叩かれるのも面白くない。ならば地道にこうやって、一つひとつ、隊を潰していくしかないのだろう。
(「あぁ――しっかし、本当に」)
再び、進軍を開始する。高々と馬蹄の音を響かせながら。
「ダセぇよなぁ。この姿も、この音も」
相棒の吐き出す重低音が、早くも懐かしい。
ピート・ブラックマンは、重い溜め息を漏らした。
成功
🔵🔵🔴
ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
(言葉のみならず思考にもノイズが走る。)
(鉄鎧は荒々しく隆起し)
(右腕の砲塔は戦車のそれの如く変生し、獲物を狙う。)
Guhhhhhh――
(背から生える様に数多の銃器、兵器が乱立する。
ざわりと逆立つ獣の毛の様に蠢くそれは、一斉に敵へと向けられる。)
(兜の奥、ぎょろりとターゲットサイトが化け物の目の様に光って、照準を合わせる。)
Gahhhhhhhhhh――――‼︎
(後は衝動に従って、撃ち尽すのみ。)
(殺意、殺意だ。
害なす物を全て屠るという、この姿の原初たる感情。)
(――過去の残滓にも怖れはあるのか。『僕』は怖いか?お前達にはどう映る?)
(――やっぱり僕は、『兵士』じゃない。『怪物』だ。)
●Juggernaut
――ザザッ
聞き慣れた者も、周囲には多いだろう。黒豹型の機械鎧。その言動が常に帯びる、電子の雑音。
だが、今ノイズが走るのは、彼の言葉ではない。口に出す言葉ではなく――その思考を、砂嵐がかき乱す。
「Guhhhhhh――」
無骨でありながらも、どこか獣の優美さを備えた鉄鎧は、今や異形と化していた。
右腕の砲塔は戦車のそれの如く変生し、背からは数多の銃器、兵器が屹立する。
ざわりと逆立つ獣の毛の様に蠢くそれは、一斉に敵へと向けられて。
それでようやく、眼前の「死」を認識したのか。
正面に布陣するクローン重騎兵の一隊。そのブラスターが一斉に火を噴き、無数の熱線が降り注ぎ――
「Gahhhhhhhhhh――――!!」
遅い。弱い。何よりも、手数が足りない。
黒豹の全身の火器が火を噴いた。砲弾、銃弾、熱線、爆撃。
一軍に匹敵する飽和攻撃が、熱線を飲み込み、クローン兵の隊列を半壊させた。
(「殺意、殺意だ。これは、殺意だ」)
――――ザザッ
ノイズ交じりに、思考する。
害なす物を全て屠るという、この姿の原初たる感情。心を壊し、真の姿を晒すというのなら、この身が殺戮の衝動に支配されるのは、必然と言えた。
(「過去の残滓にも怖れはあるのか。『僕』は、怖いか? お前達にはどう映る?」)
禍々しく赤い輝きを放つターゲットサイトが映す先。
生き残ったクローン重騎兵たちは、浮き足立ち、反撃を放棄して逃げ出そうとしていた。
その哀れな背をマルチロック。砲身を向け、傍目には無秩序な乱射に映るであろう正確無比な射撃が、至極あっさりと、全ての兵士の命を刈り取った。
ああ、今、分かった。
この姿を、ジャガーノート・ジャックの真なる姿を、オブリビオンの兵士すらも恐れるというのなら。
(「――やっぱり僕は、『兵士』じゃない。『怪物』だ」)
――――――――ザザッ
大成功
🔵🔵🔵
ユウカ・セレナイト
※アレンジ・アドリブOKです
朗々と、歌を奏でましょう
悲痛なその思念を受け止めて
それをも包み込むように、優しく、高く
この宙域で戦い続ける皆へ、未来の希望を届けましょう
この宇宙にだってきっと、たくさんの夢や希望の欠片があるはず
それを踏みにじらせない為に、私は歌うの
……何よりも、
生きたかっただれかの命を犠牲にして生み出されたもの
こんな悲しい兵器を、そのままにはしておけないわ
もう決してどこへも往けないあなたたちをも救えたら、なんて
きっとそんなのは傲慢なのだけれど
・真の姿
真の姿は「すべての人々に捧ぐ賛歌」
想いを乗せて響く旋律そのものがその本態
形もなく、姿もなく、響き渡る歌だけが彼女の存在を示す
●すべての夢見る者たちへの賛歌
――星の海に、歌が響いた。
悲痛なその思念を受け止めて。
それをも包み込むように、優しく、高く。
朗々と、歌が響く。
狂気の絶叫をわめき散らす吸血鬼の歌姫に。
見えざる大鎌で命を刈り取る花蟷螂の絡繰に。
無欠なる犯罪計画を練り上げる大罪の女主人に。
苛立ちのまま暴威を振るう無面六臂の半馬騎士に。
兵士のペルソナを投げ捨て銃火を放つ殺戮の機獣に――。
己の業を晒し戦場に立つ全ての猟兵へ、未来の希望を届けんと。
その身体の傷を癒やし、そして願わくば、時に真の姿と共に彼らの心を覆う狂気を祓わんと、歌は響く。
この宇宙には、たくさんの夢や希望の欠片があるはずと。
それを踏みにじらせないためにと、歌は、響く。
――何よりも。
生きたかった誰かの命を犠牲にして生み出された、悲しき兵器。
もう決してどこへも往けない、その「誰か」の魂すらも、救わんと。
その考えが傲慢以外の何者でもないと知りながら――歌は、響く。
今や彼女に、実体はない。
星の海に響く希望の歌、想いを乗せて響く旋律こそが、ユウカ・セレナイトと名乗る猟兵の真なる姿。
1033の希望を乗せて。未来に繋がる、か細き運命の糸を紡がんと。
ただ、ただ。
終わりなき賛歌と祝福を、歌い続ける。
成功
🔵🔵🔴
蒼焔・赫煌
よっしゃー! つまり、つまり! どかーんと暴れればいいわけだね!
可愛いボクにお任せさ! 何せ、可愛いボクは正義の味方だからさ!
……おなかがすいたよ?
たくさんたべられるものがあったよ?
ぜんぶたべちゃおうか? そうだね? そうだね?
どんなあじがするんだろう? たのしみだね?
――――いただきます
【真の姿】
真紅の瞳、夜色のドレスに身を包み、背からは蝙蝠の翼を広げる、ヴァンパイアそのものな姿
ドレスは影そのもので、触れたモノを呑み込み、捕食する
影は食欲と飢餓感に応じて肥大化
本人は常に食欲と飢餓感に満ちており、真の姿時はそれしか考えられない
ユーベルコードで特性が強化される
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
●廻姫月蝕
「おなかが、すいたよ」
ちかちかと、あまりの飢えに目がクラむ。
なんでボクは、ここにいるんだろう。思い出せない曖マイな記憶。
『――よっ■ゃー! つまり、■まり、ど■ーんと■■ればいい■けだね!』
まるでワルいユメのよう。アカとシロのヨロイの女が、ばかみたいにさけんでいた。
『■■いボクにお任せさ! 何せ、■■いボクは■■の■■だからさ!』
……ボク? あれは、ボク?
ボクは……ボクは、なんなんだっけ。
ぐぅぐぅぐぅとおなかがなって、なにかんがえてたのか、わすれちゃった。
おなかがすいたよ。だれか、だれか、いないの。
コウモリのツバサではばたいていたら、シロい、ヘイタイさんたちとであったよ。
――ああ、よかった。
「たくさんたべられるものがあったよ?」
わらってはなしかけたのに、ヘイタイさんたちは、おこっちゃったみたい。
みんなしてわいやーをとばして、ボクのカラダをしばりあげる。
ぶちぶちと、ひきちぎって、かじってみたけど。
「これは、おいしくないなあ」
やっぱりたべるなら、おにくがいい。
あついチのしたたる、おにくが、たくさん。
「ぜんぶたべちゃおうか? そうだね? そうだね?」
さっきからはなしかけているのに、ヘイタイさんたちは、ちっともヘンジをしてくれない。
こんどはジュウからビームをうって、ボクのカラダにアナがアく。
あつい、あつい。はやくたべないと。
「どんなあじがするんだろう? たのしみだね?」
かげのドレスを、ぐぅんとのばす。
ヘイタイさんをつかまえて、ばきばき、べきり、ぐちゃぐちゃ、ごくん。
ああ――おいしい。
おいしいから、すこしだけあたまがうごいて、おもいだせた。
ヘイタイさん、ごめんなさい。
ボク、だいじなことをわすれてた。
あやまるから、にげないで?
ちゃんと、いうから。
せーの、
「――――いただきます」
成功
🔵🔵🔴
雪生・霜逝
記憶を封印する制御コードが、アゴニーフェイスの悲鳴の前に毟りとられていく。
霜逝としての意識はそこまでだ。
記憶領域の奥底から、思い出されることのない真実が、露わになる。
マシン胸部の格納庫を内側から破ったのは、人間の腕にも似た幾本もの錆色の塊。 錆塊は、蝶が羽化するように格納庫から上体を露わにする。無数の腕、一つの貌。その貌は霜逝に似ていたが、幾分か年を重ねて見えた。
物言わぬ錆塊は、攻撃に肉体を削られながら、粛々と「食事」を摂る。アゴニーフェイスを屠り、重騎兵を引き千切り、溢れる血を啜る仕草は、まるで紅茶を飲むように優雅。
しかしあくまで、モノを解体する所作は【鏡犯者】――同族殺しのそれであった。
●此れなるは鏡
「――が、ぁ
……!?」
理性をかき乱す悲鳴に、男の顔が苦悶に歪む。
頭を抱え、「大柄」という言葉では言い表せない巨躯をくの字に折り曲げる姿は、まるで怯える子供のように。
がりがり、がりがり。
記憶を封印する制御コードが、アゴニーフェイスの悲鳴の前に毟り取られていく。思い出されることのない真実が、露わになる。
――雪生・霜逝としての記憶は、それまでだ。
屈んでいた身体が壊れた玩具のように跳ね起きて。人間であれば背骨がへし折れるほどに逸らした胸が、内側から弾け飛ぶ。
もとより、彼の巨躯は修理の効く、ウォーマシンとしての筐体に過ぎない。頭部とても着脱式。首から下に至っては、修理に修理を重ねた骨董品である。胸部に位置するのは心臓ではなく、格納庫。
胸部格納庫を内側から破ったのは、人間の腕にも似た幾本もの錆色の塊であった。
錆塊は、蝶が羽化するように格納庫から上体を露わにしていく。姿を現したのは、『腕』――そして今、花弁のような無数の腕の中心で、一つの貌が、ゆっくりと面を上げる。露わとなったその貌は、霜逝に似ていたが、幾分か年を重ねて見えた。
「――――」
物言わぬ錆塊は、ゆらりと顔を上げる。視線の先にあるのは――徐々に数を減らした重騎兵の先、漸く姿の垣間見え始めたアゴニーフェイス。苦悶に喘ぐ貌を模した、悪趣味な精神兵器。
錆塊は、顔色一つ変えることなく。アゴニーフェイスに向けて進み出し――その身体に。ブラスターから放たれた、無数の熱線が突き刺さる。
――ここで阻止しろ!
――何が猟兵だ、異形共め!
巨体に集中する攻撃にも、罵倒にも、やはり顔色は変えず。錆色の腕を伸ばし、わしりと、果物でももぎ取るように重騎兵の一人を捕まえて――そのまま。新たに3本の腕で手を、足を、首を掴み、ぶちぶちと引き千切る。
そうして。残った胴を口元に引き寄せ、まるで紅茶を飲むように、溢れ出た血を優雅に啜った。
一瞬の静寂。
恐慌を起こしたように激しさを増す熱線の雨。錆の身体が焼け落ち、削られて――削られる端から、めぎめぎと、不気味な音を立てて盛り上がり、より解体に適した姿へと、徐々に徐々に形を変えて。
その姿を。喜ぶでも愉しむでもなく、淡々と重騎兵たちを引き千切り続けるその姿を。殺戮者というのは、適切ではないだろう。
それは――今は霜逝と呼ばれることになった、かつてのその機械は――モノだ。同じモノを、解体するモノ。
其は【鏡犯者】――其の在り様は、同族殺しのそれであった。
成功
🔵🔵🔴
石動・劒
纏うは甲冑、武者鎧
兜と面頬の境より爛々とした眼光を放ち、野太刀を背負う
既にその目に理性はなく、しかして横溢する闘気は剣鬼のそれ
いざ、いざ。尋常に勝負せよ
未知の戦さ場に心が躍る。奇々怪々なれど刀は振れる。刀が振れるのならば未知であっても斬りようはある
第六感、見切りでもって急所を避けた捨て身の突喊でもって、敵陣へ斬り込む
ひとたび怪力でもって野太刀を薙げば鎧など無きに等しい。甲冑組手術にて伊達にして帰すも良し
おお、快なり!
異境にあって未知の戦さ場、未知のつわものが星の数ほどいようとは!
たとえ刀折れ矢尽きれども、亡霊となってでもこの戦さ場を駆け抜けん!
勝負、二本目。参ろうぞ。
●剣鬼
星影の中、野太刀背負いて鎧武者が駆ける。
兜と面頬の境より覗く眼光は爛々と。既にその目に理性はなく、しかして横溢する闘気は剣鬼のそれだ。
「いざ、いざ。尋常に勝負せよ!」
抜き打ち、振り下ろす。白き鎧の雑兵が一つ、その一振りで左右に分かたれ左右に二つ。
未知なる戦さ場、未知なる敵。足の下に踏み締めるべき地はなく、見渡せば一面、星の海。
何とも面妖、奇々怪々。
なれどこの手には刀がある。刀があれば、斬りようもあろう。
それが、未知なる敵であろうとも。否、星の海であろうとも。
「怯まぬか! おお、おお、それでこそ!」
一人斬られた程度では怯まぬと見える雑兵ども。その手元から伸びる光の帯を切り払い、返す刃でそっ首一つ貰い受ける。
――首を落としてから。払ったはずの光の帯が、己が腕を焼いていたことに気付く。
妖術か。それも良い。防げぬならば斬り伏せるまで。
野太刀を大きく薙ぎ払う。上下に分かたれた雑兵は二。この剣腕を前にして、鎧など無きに等しい。
懲りずに光の帯を放とうとする兵士の額に飛礫を放ち、仰け反る喉を刀で貫く。背後より迫る新手の鼻面を籠手でかち上げて、再び一閃。
斬って、斬って、それでも尚、雑兵どもの数の尽きぬこと、雲霞の如く。
呵々と、知らず笑みが漏れる。
「おお、快なり!」
異境にあって未知の戦さ場、未知のつわものが星の数ほどいようとは。
「――いざ、いざ、いざ! いざ、尋常に――勝負!」
斬って、斬って、斬って。
――いつしか、周囲に雑兵の姿はなくなっていた。
奴ばら、ついにこの刀に恐れを成したか。
だが、この身とて無傷とは行かぬ。随所に穿たれた傷からはぶすぶすと煙が漏れて、右腕は今にも千切れんがばかり。
……ああ、それは、困る。腕がもげれば、刀が振れぬ。この顎に刀を噛みしめ振るうとするか。だがそれでは、名のある侍と出会うても名乗りが上げられぬ。
なればこの身は此処にて果てるか。あるいは戦は終わりとわきまえ、大将首を譲るとするか。
否。否。断じて否。
たとえ刀折れ矢尽きれども、亡霊となってこの戦さ場を駆け抜けん。
――冗談のような数のクローン重騎兵たちの死骸が溢れる中で。鎧武者の身体からくたりと力が抜けたかと思えば――その身体から抜け出すように。おぼろげな、幽霊武者が立ち上がる。
「――勝負、二本目。参ろうぞ」
成功
🔵🔵🔴
未魚月・恋詠
「本性を晒す覚悟に、ございますか」
「ヤドリガミとしての己を知ったその時より、決してそれを明かさぬと主様に誓いましてございます」
「覚悟と申すなら、あるのは生涯隠し通す覚悟のみ。
参りましょう、ヒナゲシ、ナデシコ。恋詠めの姿に目を向ける暇など与えません」
「これより人形舞台にて、皆様方の死出の旅路へ花を添えましょう」
市女笠を被って真の姿は虫の垂衣で隠し晒さない。
UCを発動、疑似人格を得た人形2体と連携
敵は射撃が主なので射線を常に他の敵に重なる様立ち回り、
フェイント、騙し討ちを交えながら恋詠が人形を、人形が恋詠を援護射撃する連携攻撃。
垂衣が乱れぬ楚々とした動きながら的確に敵集団をかき乱す。
※アドリブ歓迎
●
クローン重騎兵の一隊。その前に立ちはだかったのは――
着物の、女であった。頭の上には市女笠。虫の垂衣が垂れ下がり、その様相は定かではない。
戦場の各所で猟兵たちがクローンを蹂躙する様子は、ここからでも見て取れる。迷わず無数の熱線銃が向けられる中で身じろぎもせず、女は、グリモア猟兵の言葉を思い出す。
(「真の姿を晒す覚悟に、ございますか」)
そんなもの、聞かれるまでもない。
「――ありませぬ」
囁き。降り注ぐ熱線の雨をふわりふわりとかわしながら、笠の内に姿を秘めし女は、舞うように前に出る。
ヤドリガミとしての己を知ったその時より、決してそれを明かさぬと主に誓ったのだ。故に。
「覚悟と申すなら、あるのは生涯隠し通す覚悟のみ」
嫣然と――そう。虫の垂衣に隠されて見通せぬ、その気配が、確かに嫣然と、笑む。
「参りましょう、ヒナゲシ、ナデシコ。恋詠めの姿に目を向ける暇など与えません」
雛芥子、撫子。
恋詠と己が名を告げた女と共に舞い踊るは、花の名を冠された、身の丈一尺に見たぬ2体の操り人形。
クローン重騎兵の隊列の中に飛び込み、三つの影は縦横無尽に舞い踊る。
兵の身体を盾として、人形と主、互いの隙を補うように弓を引き絞り。
クローン兵士たちの連携とて、未熟ではない。否、むしろ相互情報支援システムを備えた彼らの連携は完璧だ。
完璧であるが故に、互いを撃ちかねないこの距離では、銃撃は散発的なものとなる。
とん、と、また一人、重騎兵の一人の額を矢が貫いて。結果を見届ける間もなく、舞って、舞って、舞い続け。けれど恋詠の垂衣には、一筋の乱れもなく。
終わることなく繰り広げられる人形舞台。
演目の名は、『汝、死ニ候エ』。なれば、
「――皆様方の死出の旅路へ。花を、添えましょう」
成功
🔵🔵🔴
オリオ・イェラキ
夫の居ない戦場で良かった
まだ、少しだけ勇気が要りますの
いつもの夜とは違う、最も深い夜陰の姿
貴方達はご覧になって
『真の姿
辛うじてオリオの形と認識できる程度の不定形
全てが星夜を連想させる彩で構成され
顔と思わしき所は眼なのか一等星の光が二つ浮かぶ
装備も一体化し夜そのものが襲いかかるかのように敵を斬り裂く
声は発声所が不明で脳に直接響く』
深く
より、深い夜へ
さあ。おいでなさい
わたくしは真夜中
貴方が沈む、終わりの深潭
敵の銃撃にこの身から剥がれ落ち舞うメテオリオで相殺
更に極夜を深め流星の如く全身を星の花弁に変え荒れ狂う
と思えば敵の背後で集合し瞬く星で貫き倒す
アゴニーフェイスだけは丁寧に葬りますわ
おやすみなさい
●
(「――夫のいない戦場で良かった」)
まず、そう思った。
星の海のただ中で、ゆらりと、周囲とは異なる「夜」が揺れる。
『人の形をした星空』。それこそが、オリオ・イェラキの真なる姿。
よくよく注視すれば、その星夜が普段のオリオと全く同じシルエットをしていることが分かるだろう。顔と思わしき位置には、それが眼だとでも言うのか、一等星の光が二つ、浮かんでいた。
美しい、と称する者もいるだろう。
悍ましい、と称する者もいるだろう。
磊落な彼は、この姿を見てどう感じるか。その答えを信じてはいても――
この姿を夫に晒すには、まだ少しだけ、勇気が足りない。
けれど。
「貴方たちは、ご覧になって」
その言葉で。ようやく、すぐ目の前に敵がいることに気付いたのだろう。
慌てて銃を構え、けれどこちらの姿を捉えられないクローン重騎士兵たちを――星の煌きを纏う黒薔薇の花びらが、薙ぎ払う。『夜彩と流星花(メテオリオ)』。
花びらの出元を狙い、光線銃の熱線が降り注ぐが――オリオの夜はなお深まって、全身を花弁と化して、ビームを飲み込み、なお吹き荒れる。
「深く、より、深い夜へ……さあ、おいでなさい」
どこか甘い囁きと共に。オリオの身体は溶けるように形を変えて、敵兵の背後で再び姿を成して――束ねた星の光が、兵士たちのビームライフルに倍する極光となって、兵士たちを飲み込んでいく。
「わたくしは真夜中。貴方が沈む、終わりの深潭。お眠りなさい。……そして」
夜が、彼方を向く。
精神兵器アゴニーフェイス。それを守るクローン重騎兵は、もはや残り1部隊のみ。
成功
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天御鏡・百々
人の脳を道具として使うなど、許しがたき所業だな
救うことができぬならば、せめて早急に破壊して楽にしてやろう
【真の姿】
直径1mほどの円形の鏡
和風の古い鏡で神社の御神体として祀られていたものですが
真の姿になるにあたってサイズが10cmから10倍くらいになっています
その鏡の中にヤドリガミとしての仮の体の姿が映っています
仮の体の外見は、服装や装飾が日本神話の神様風に豪華になっています
鏡は浮遊して移動します
【戦闘】
アゴニーフェイスは天鏡破魔光で破壊する
集団戦では神通力による障壁(オーラ防御28)で敵の攻撃を防御した上で
鏡像反攻儀にて映し取った敵の技にて反撃するぞ
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、絡み歓迎
アーデルハイド・ルナアーラ
人間を兵器の材料にするなんて許せない!
兵器より先に邪魔する奴らを一人残らずぶっ飛ばしてやるわ!
私の真の姿は銀色の毛並みを持った人狼よ。服の上からだと犬耳と尻尾が生えるのと、髪の色が変わるぐらいかしら。あと、爪と牙もちょっとだけ伸びるけど。顔立ちは変わんないから誰だか分かんなくなったりはしないと思うわ。
戦い方は普段と同じく基本肉弾戦だけど、燃費を気にしなくていいから、雷を常に身に纏ったままにできるわ。
あと、真の姿の時はなぜか四つん這いに近いぐらい重心が下がる癖があって、戦い方もちょっと野蛮になるわ。敵を掴んで武器代わりにしたりとかね。
※アドリブ歓迎、連係歓迎(特に美少年)、ユーベルコードはお任せ
●獣と鏡
腰まで伸びた長い髪を靡かせて。狼の耳と尾を生やした獣の魔女、アーデルハイド・ルナアーラは星空を駆ける。
その毛色は、銀。金糸のような髪は透き通るような白銀に変じ、星の光を映して煌めいていた。
疾走の先にあるのは、残り少なくなったクローン重騎兵、その最後の一隊。
アーデルハイドの瞳に怒りが燃える。
「人間を兵器の材料にするなんて、許せない!」
掲げた細腕に、伸ばしたすらりとした足に、ばちばちと雷を纏い。
「兵器より先に、アンタたちをぶっ飛ばしてやるわ……!」
突進の勢いのまま、ドロップキック。流星のような蹴りが兵士たちを薙ぎ倒し、その隊列をかき乱す。
無論、兵士たちとて、ここが最後の防衛ライン。ただでやられはしない。連携してワイヤーを放ち、無謀にも身一つで飛び込んできた女を捉えようとするが、
「こんなもんでぇ……私を、止められるもんですかッ!」
アーデルハイドはそのワイヤーを纏めて掴み、身体強化魔術によるものか、それとも素で剛腕なのか、外見に似合わぬ怪力任せに振り回した。ハンマー投げの要領でぐるりと身体を回し、ワイヤーの根元の騎兵たちを――鈍器のように、別の兵士に、叩きつける!
同時にワイヤーを通じて電流を流し込んでやれば、5人ほどまとめて無力化完了。
「ウォォォォォン!」
荒ぶる魂の赴くままに遠吠えを上げる様は、まるで獣。
獣を狩り出さんと、ビームライフルの熱線が降り注ぎ――
「無茶をする娘だな。だが、先ほどの叫びには同感だ」
そんな言葉と共にアーデルハイドを庇い、ビームの雨を遮ったのは、直径1mほどの鏡だった。地球、日本の出身者であれば、神鏡、といった方がしっくりくるだろう。
鏡は厳かな霊気を纏って熱線を遮り――そして、まるで鏡面で乱反射したかのように、撃ち返す。狙いも碌に付けずに乱れ撃たれた熱線が、逆に回避を許さず、近くの兵士たちを悲鳴を上げる間もなく焼き払った。
鏡が、くるりと魔女を向く。鏡面に映るのは人狼に変じたアーデルハイドの姿……ではなく、日本神話風の豪奢な和装を纏った少女の姿だ。声が聞こえる度に少女が口を開くのが見え、どうやら彼女が手助けしてくれたらしいと見て取れた。
「……通話の魔術、じゃなさそうね。それが真の姿なの?」
礼もそこそこに訝しげな顔をする魔女に、和装の少女――天御鏡・百々は、うむ、と鷹揚に頷いて。
「人の脳を道具として使うなど、許しがたき所業だ。せめて早急に破壊して楽にしてやりたいが――少々、苦戦しておってな。丁度良い、手伝って欲しい」
既にアゴニーフェイスへの攻撃を試みていたという百々が用いたユーベルコードは、『天鏡破魔光』。妖魔、死霊に対して特に効果を発揮する、浄化の光だ。
かの精神兵器の原動力は、もはや狂気に沈んだ怨念その物。苦痛を与えることなく浄化することができると踏んだのだが――
「思いのほか、外殻が強固でな。光が中まで届かぬ。其方のような攻撃力に長けて、まだしも話の通じそうな猟兵と、狙いを合わせて――」
と、まだ続きそうな説明を遮るように、アーデルハイドはなるほどなるほど、と頷いた。兵たちを薙ぎ払ったことでついに顔を覗かせたアゴニーフェイス――苦悶する人の顔を象った悪趣味な兵器を指差して。
「つまり、あれをぶっ壊して、ヒビでも入れたらいいのね?」
「え。……まあ、そうなのだが」
「分かったわ。そういうの、得意。――もう、出し惜しみする必要もなさそうだし」
ばちばち、ばちばち。魔女の纏う雷が、勢いを増し、手の中に収束していく。
バレーボール大に育った雷球を、アーデルハイドは高々と放り投げ。
「――その腐ったノーテン、叩き壊してやるわ!」
美しいまでのオーバーヘッドキックで、アゴニーフェイス目掛けて蹴り飛ばす。
「だから、脳は犠牲者だと言っておろうに……」
ぼやくように律儀なツッコミを入れながら、神鏡もまた光を収束。かの鏡を命たらしめたのは、数多の年月を超えて受け継がれてきた信仰の祈りだ。未来と真実を映す鏡に宿る少女は、
(「――せめてこれ以上苦しむことなく、眠るが良い」)
そんな、優しき想いを載せて。
雷球を追うように、破魔の光を放ち――。
●
――眩いほどの光が収まった後、兵器の外殻は砕け、静かに動きを止めていた。
鳴り響いていたテレパスの苦鳴も止み、精神攻撃が終わったことで、猟兵たちも普段の姿と、ある者は見失っていた心を取り戻していく。
もはやクローン重騎兵は残り僅か。真の姿に頼らずとも、掃討は遠くないだろう。
かくして、ついに、この宙域の精神兵器アゴニーフェイスは破壊されたのであった。
大成功
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