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荒廃都市のプレゼント

#アポカリプスヘル #お祭り2022 #バレンタイン


●予知:戦後の復興計画。
 アポカリプスヘルの某所。
 かつて交易の中心部として賑わいを見せていたその都市は、度重なるオブリビオン・ストームにより破壊され、無人の廃墟群と化していた。
 だが、昨年発生した大きな戦い、アポカリプス・ランページにおいてヴォーテックス一族が壊滅し、オブリビオンの数が激減したことで復興を夢見る奪還者(ブリンガー)たちが足を運ぶようになっていた。
 小さなキャンプを分散させて細々と、そして時間をかけて探索を続けたことで、この街には脅威となる存在がいないことを確認した。
 奪還者たちが各自の拠点(ベース)へと物資を分配しようと相談した折、話題に上がった単語があった。

「そういえば、そろそろバレンタインじゃないか」

 その声を聴いて、奪還者たちは物資を仕分ける前に、土産を選ぼうと決めた。
 食糧や燃料ではない、家族や仲間を喜ばせる贈り物を探そうと決めたのだ。
 そして……彼らは街の中を散策するのだった。

●招集:宝物を探そう!
「ハッピーバレンタイン、エブリワン! ということで、ご案内であります!」

 バルタン・ノーヴェが看板を高く掲げ、猟兵たちに声をかける。
 イベントの誘致である。

「今回はバトルはありマセーン、オブリビオンとは関係なしの平和な一時であります!
 内容としマシテハ、プレゼント探索であります!」

 バルタンがプロジェクターで投影したのは、一つの荒廃した都市。
 居並ぶビルは比較的外観が綺麗に残っており、どことなく整頓されている節もある。
 奪還者たちが探索し、危険を取り除いていったのだ。

「こちらの都市を探索していた奪還者の方々が、各地の拠点にここの物資を持って帰ろうという計画を進めておりマシテ。
 その前段階として、気になる方や伴侶、子どもへのプレゼントを探そうとしておりマース!
 皆様には一緒になってプレゼントの模索、製作、散策をしていただこうかと!」

 それは奪還者たちが物資を物色する手伝いをすればよいのか? という趣旨の問いをバルタンは否定する。

「いえ、搬出する資源ではなく、娯楽用のおもちゃや観賞用の宝石、あとは花を積んで花束にするとかデスネー。
 この都市には自然公園があるのデスガ、そこで草花がたくましく繁殖しているのであります!
 いやあ、オブリビオン・ストームが減ったとはいえ、よくぞ残ったものでありますな」

 HAHAHA、と笑うバルタン。
 もしかしたらここは、どこかのオブリビオンが拠点にしていたのかもしれない。
 残党や設備が残ってない以上、引き上げたのか、どこかの戦いで壊滅したのか……。それは推測するしかできないが。

 奪還者たちも、レイダーたちと戦ってきた猟兵の存在に好意を寄せており、共に散策することに異論はないという。
 もとより、貴金属や食糧・燃料にならない物品が多くあっても、処理しきれないのだ。
 ……中には、猟兵を恋愛対象として狙う奪還者がいるかもしれない。

「という訳で、この都市を歩き回って何か良いものを物色してみマショー!
 デパートには貴金属や雑貨が残っていたり、個人商店に値打ち物が残されていたり。
 自然公園には色んな花が、アミューズメント施設には……流石に壊れたゲームとかしかないデスカナ? 何かあるかもしれマセンガ。
 あとは、カップルやコンビで廃墟デートと洒落込むのもグッドデスネ!」

 そして、バルタンはグリモアを掲げてゲートを開く。
 危険がないというので、バルタンを連れて行くこともできるだろうが、まあ、うん。必要があればお声掛けください。

「それでは皆様、行ってらっしゃいマセー!」


リバーソン
 こんにちは。リバーソンです。
 マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。

 今回の舞台はアポカリプスヘル。バレンタイン企画となります。
 『プレゼントを手に入れる』にすることが目的です。そのままシナリオ内で誰かにあげてもかまいません。
 一般的な都市に存在したであろう建築物が残っている状態です。
 古びておりますが、貴金属、雑貨、骨董品など、多種多様なものを発見することができます。
 物品としてではなく、景観や言動をプレゼントにしても構いません。

 プレイングボーナスなどは特にありません。能力値も気にせず、楽しんでください。
 また、今回は日常フラグメント一章完結であるため、ご要望がありましたらグリモア猟兵『バルタン・ノーヴェ(f30809)』をリプレイに呼び出すことが可能です。
 呼ばれなければ登場しませんが、ご用命がありましたら遠慮なくお申し付けください。

 オープニング公開後、断章を公開します。
 プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
 それでは、皆様。ハッピーバレンタイン。

 登場人物:奪還者の方々。年齢性別様々で、あちこちの拠点からやってきています。
  バレンタインということを名目に、残してきた妻子や恋人、気になる方への贈り物を探したり作ったりしようとしています。
  中には独身や彼氏彼女いない歴=年齢の方もおり、そういった肉食系の方々がソロの猟兵へアプローチを仕掛けようと考えているかもしれません。
  登場させたい場合にはご記載ください。
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第1章 日常 『アポカリプスヘルのバレンタイン』

POW   :    日持ちのするお菓子や料理を用意する

SPD   :    木材や光る石を使ってアクセサリーを作る

WIZ   :    荒野に咲いた花を摘み、花束や押し花を作る

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●断章:奪還者(ブリンガー)たちの想い。

「天候よし、敵影なし、体調不良なし、異常なし。
 よし、それじゃあ予定通り、今日は作業は休みだ」

 まとめ役の宣言に、おお! と歓声を上げる奪還者たち。
 かねてより話し合っていた贈り物探しのために、今日一日は搬出作業を休止して、各々が街の中を散策してプレゼントを見繕うのだ。

 妻を持つ男が伴侶に似合う装飾品を求めてデパートに向かう。
 多くの孫を抱える老兵が足取り軽くおもちゃ屋へと踏み込む。
 身体の弱い父を拠点に残している娘が公園に花を集めに行く。
 それぞれ、思い思いの想いを抱え、贈り物を探しに行く。

 ……一方で。

「噂の猟兵も来るんだよな……!」「宝石を見つけてあげたら、喜んでくれるかね?」
「私、見たことありますよ。すごく強くて、そして美人が多いんです」「ゴクリ……」
「狙うは埒外の生命力よ……!」「身だしなみは整えた。あとは度胸……!」
「美少女おっぱいプリティガール……!」「イケメン筋肉ナイスガイ……!」

 独り身の若きブリンガーたちが、レイダーのように目を光らせて猟兵たちの到来を待ち構えている。
 さすがにカップルに割って入るような真似はしないだろうが、チャンスがあるなら一夜のロマンスを、と目論んでいることだろう。
 それぞれの思惑の中、荒廃した都市でプレゼント探しが始まる。

 なお、このシナリオは全年齢対象ですので、未成年者の飲酒や過度なエロ・グロ・バイオレンスなプレイングはマスタリングさせていただくことがあります。ご了承ください。
リア・アストロロジー
老兵さんのおもちゃ屋散策に同行させていただきたいです。

「プレゼント選びのお手伝いは出来そうもないですが。
 わたしには玩具の良し悪しの知識がありませんので」

「た、たくさん選ばれるのですね……」

……やっぱりわたしもお手伝いした方が良いのでは?
と大真面目に何か変なものを持って来てはオススメしてみたり?

おじさまは黙示録の黄昏に臨んだ時も家族をちゃんと守れたのでしょうか。
――それとも、失って、それでもまただれかと家族になれたのでしょうか?

……わたしはあたたかいもの、やさしいものが好きです。
たくさんの家族を守りいつくしむ老兵に、贈り物を選び相手を想うときのやさしい目に会えただけでも、来た甲斐がありました。


エーミール・アーベントロート
【兄妹】
メルさんは仲が良さそうでいいですねえ。
私は……彼女の存在に嫉妬してしまってます。
仲良くと言われても……ちょっと難しいですよ。

……なんて言ってももう遅いか。
じゃあはい、リア、メルさん、兄さんへのプレゼントを考えますよ。

兄さん、お菓子は好きじゃないから……。
アクセサリーなら付けてくれるでしょうか。
兄さんに合いそうなアクセサリーは……え? ペンダント?
ああ……確かに、兄さんはそういうのは持ってなかったですよね。

……えっ、私にも??
いや、お前から受け取る理由なんて……いえ、貰いましょう。
私達は兄妹なんですし。

でも勘違いしないでくださいね。
私はお前をまだ妹と認めたわけではありませんからね!!


エミーリア・アーベントロート
【兄妹】
むー、エーミール兄様に嫌われてる気配を察知ですの。
リアは別に、エーミール兄様のことは嫌いじゃないのに……むー。

はぁい。
兄様への贈り物ですね!お任せください!
兄様達のリサーチは済んでますの!

兄様の贈り物……お花とかも嫌いって言ってましたの。
でしたら、兄様へはペンダントはいかがでしょう?
家族から貰ったものなんて1つもないと仰ってましたから。
ここはリア達がプレゼントするのが1番ですの!

作ったペンダントは3つ。(赤と青と緑)
青をエーミール兄様、緑をメルに渡します。
だって、エーミール兄様もリアのお兄様ですから!
メルも可愛い弟ですの!

ふふ、大丈夫ですの。
きっと、認めてくれる日が来ると信じてますの。


メルヒオール・ツァーベル
【兄妹】
エミさんってそんなに姐さんが苦手やったんか……。
でも、仲良く出来るんやない? 似た者同士やし。
まー、そのうち気づいたら心許してるって。

ほいほい、プレゼントな。
あの兄貴へのプレゼントねー……。
何がええんやろ。

ペンダントか。確かにそれなら場所を選ばず付けれるな。
まー、あの兄貴がつけるかって言ったら怪しいところやけど。
意外と弟妹思いやし、貰ってくれるやろ。
エミさんから渡されたら絶対に貰うやんあの人。間違いない。

ん、俺も?? ええの??
まあ確かに俺も兄弟言うたら兄弟やけど……。
あー、待って。恥ずかしなってきた。

エミさんが姐さんを認める日、ねぇ……。
そんなんあるんやったらいつか写真に収めたいな。


ニコリネ・ユーリカ
荒くも整った景観に人々の努力が見える
まだ貧しい拠点へ物を贈ろうとする心も素敵ね
彼等の逞しさに敬意を示して尽力しましょう
さぁバルタンさんもご一緒に!
貴女の溌溂とした明るさで皆を元気づけて下さいな

野生の花が咲くという自然公園へ
荒地に咲く草花に現地の人を重ねつつ花を束ねましょう
ここは花屋にお任せを!
どんな花だって人を笑顔にする力があるって示したい
奪還者さんに家族や恋人の話を聞いて丁寧に花束を作るわ

UDCアース出身の私も祖国を離れて一人ぼっち
来日して直ぐはママの事ばかり考えてた
境遇は全然違うけど少しでも寄り添えたらいいな

花束を贈られる人も、贈る人も笑顔にできますように
花を束ねる間の会話を愉しみましょう


フレスベルク・メリアグレース
まぁ、わたくしも家族から眉目が非常に優れているとは聞かされていましたが……
とは言え、この荒廃した世界で復興する為にモチベーションがある事は良い事です

若き男性ブリンガー達を集めてそれぞれの話を聞き、一人一人丁寧に話を聞いてあげてカウンセリングをした後、それぞれに適切な指示を出してこの都市の復興準備を一緒に行っていきます
これがわたくしの義理チョコならぬ宣託カウンセリング
それぞれの最重要本質……例えるならこの荒廃した世界において見出した自身の剣(ブレイド)と言える本質を見出させる事がわたくしのバレンタインプレゼントです

……できれば、この世界にこの都市を基点として聖教を布教させてみたり


サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

番い竜を召喚して皆さんと話しながらアクセサリーを作りをお手伝いします、二頭の抜け落ちた鱗もアクセサリーの一部にどうですか?傷が付きにくいのでおすすめですよ!

私ももうすぐ成人するのでこの二頭みたいにパートナーが欲しいなぁとは思っているんですが恋愛ってよくわからなくて……え?体験してみるのが一番理解しやすい?なるほど?
では『どなたか今日私と付き合ってくださーい!』と募集をかけてみます(お相手はおまかせします)。

えっと、二頭を参考にすると、寄り添ったり毛繕いしたり?うーん、 難しいですね、どうしても竜の愛情表現になってしまいます。

アドリブ歓迎です。


栗花落・澪
【犬兎】
皆のプレゼント集め、頑張らないとね
僕達へのプレゼントは思い出って事で
壊れたアイテムは…夏輝君、直せたりする?
僕は専門外だから

というわけで分担して手伝おうかな、と
僕は花や貴金属の方行こうかな
もし皆の希望の花が見つからない場合は★花園でなんでも出せるし
貴金属は僕の魔法を使えば加工の手伝いもできるかも
折角だからお祈りも添えておこうか?
プレゼントを貰った誰かの未来に安寧と幸福が訪れるように

自分達のプレゼントは今日は気にしない
行動を共にする奪還者達の希望に沿う事を最優先
ただ、別行動率の高さからかソロと勘違いされちゃったりして

え、恋人?
ごめんなさい、僕相手が…
あ、夏輝君。そっちの様子はどう?(天然


小林・夏輝
【犬兎】
まぁ、これでも一応ガジェッティアだしな
破損具合にもよるかもしんねぇけど…
部品ごとぶっ壊れてなきゃなんとかなると思うぜ

つーわけで俺は娯楽用のおもちゃの方手伝いに行こうかと
例えば塗装が剥げてるとか
内部プログラムにちょっとした問題が出てるとか
その程度なら持ち込んだ★ツールや★パソコンを駆使して修理
他にも依頼があれば出来る範囲で答える

ただ、一応自分の作業しつつも澪の方は気にかけとく
あいつ鈍いからな…

案の定声かけられてんの見たらさり気なく近づき
澪ーこっちなんか手伝う事あるか?
おう、こっちは順調だぜ
んぇ? 恋人…えっちょ、俺じゃな…
あー、まぁ澪が平和になるならいいか…勘違いさせたままで…



●犬と兎は駆け回る。

「皆のプレゼント集め、頑張らないとね。僕達へのプレゼントは思い出って事で」
「おー! 頑張ろうぜ!」

 愛らしい美貌のオラトリオ、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と、
 流行にこだわる元気な犬系男子、小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)は、
 この地の奪還者たちのプレゼント集めを手伝うべく登場した。
 彼らが得るのは、楽しい思い出。
 物品は求めず、奪還者たちの希望に沿う事を最優先に行動しようと定めていた。

「というわけで分担して手伝おうかな、と。
 壊れたアイテムは…夏輝君、直せたりする? 僕は専門外だから花や貴金属の方に行こうかなって思うんだけど」
「まぁ、これでも一応ガジェッティアだしな。
 破損具合にもよるかもしんねぇけど……部品ごとぶっ壊れてなきゃなんとかなると思うぜ。それじゃあ俺はおもちゃの方だな」

 えいえいおーと拳を上げて、澪と夏輝は合流時間と場所を決めてから、それぞれの助っ人として動き出す。
 二人と前後して、この荒廃都市に駆け付けた猟兵たちも思い思いのプレゼントを思案して、行動を開始していく。


●家族の在り方について。

 聖母マリアの七つの悲しみに対応したコードにて開発されたフラスコチャイルド創造計画のシリーズNo.2、リア・アストロロジー(良き報せ・f35069)は、おもちゃ屋を散策する老兵に同行していた。
 白い髪を刈り上げた老兵はかくしゃくとした様子でリアと歩調を合わせている。

「……プレゼント選びのお手伝いは出来そうもないですが。
 わたしには玩具の良し悪しの知識がありませんので」
「いやいや、そんなことはないさ。一緒に来てくれるだけでもうれしいよ。
 お嬢ちゃんも気に入るものがないか、探してみるといい」

 笑顔を見せる老兵が、おもちゃ屋の壊れた扉をこじ開けて中へと踏み込む。
 文明崩壊の余波により、中は荒れ果てている。
 棚は倒れ、おもちゃが床に散乱し、あちこち埃に塗れている。

 そんな中を老兵は慣れた足取りで踏破し、損傷の少ない玩具や綺麗なぬいぐるみを見出していく。
 男の子が好みそうなもの、女の子が好みそうなもの。
 元気なわんぱく坊主のためのもの、大人しい内向的な子が喜ぶもの。
 誰に渡すか名前を呟きながら、次々に用意したナップザックに入れて行く。

 その様子を、リアは店の入口で呆然と見つめていた。
 老兵の手際の良さ、目利きだけでなく、取っていくおもちゃの数にも驚いているようだ。

「た、たくさん選ばれるのですね……」
「ははは、うちはチビスケが多いからなぁ。かといって同じものばかりじゃあ、な。
 数は揃っても気に入るものがなかったら、残念に感じてしまうだろう」

 経験による年の功か、老兵はリアが手出しすることなく順調に宝物を物色していく。

「……やっぱりわたしもお手伝いした方が良いのでは……?」

 何か役に立てないかと、リアが店のカウンター裏へと踏み込む。
 足元には破壊されたレジスターが転がっており、遥か以前に誰かが金目の物を持ち去ったことがうかがえる。
 それはさておき。
 リアは怪我をしないよう気を付けて、何かないかと戸棚を開けて中を探り、未開封の段ボール箱を見つける。

「あ、これは……」

 パッケージに記載された文字を見て、リアは段ボール箱を引きずり出し、カウンターの上に乗せる。

「あの、おじさま。これなどどうでしょうか?」
「ん? はは! そいつはいい、旧時代の携帯ゲーム機か!
 なんとまあ、懐かしいもんが残ってたもんだ!」

 段ボール箱に入っていたのは、ポケットに携帯できるキャラクターを育成するゲーム機だ。
 カラフルなバリエーションが特徴の、手のひらサイズの玩具である。
 ただ、保存状態は良好だが、それを動かすためには専用の電池が必要となるだろう。
 今の時代、まともなゲーム用の電池が無事に残っている可能性は、どれだけあるだろうか。
 それでも、老兵は本心から嬉しそうにリアに笑いかける。

「ありがとうよ嬢ちゃん。こいつはベースの連中に良い土産になる。
 何個か気に入った奴があったら持って行きな、嬢ちゃんの見つけた手柄だ」
「ありがとうございます。……あの、……。
 おじさまは……黙示録の黄昏に臨んだ時も、家族をちゃんと守れたのでしょうか?」

 老兵の顔を見上げて、リアは心に浮かんだ疑念を問いかける。
 老兵は、一瞬目を大きく開き……剃り残した顎鬚を静かに撫でて、反芻する。

「……そうさなぁ。……いろいろあった、というかな。
 孫は守れたが、息子夫婦は守れなかった。オレの兄弟は、どうなったかもわからん。
 隣近所の知り合いも、友人も……多く失った」
「……それは……」
「だが、立ち止まっては居れんかったなぁ。
 生き残った子どもの面倒を見なきゃいかんかった。
 友人に託された妻子を守らなきゃならん、偶然助けた連中を、合流したベースの生き残りを……。
 そうやって生き続けて、死に損なって、気が付けばこの年で……。
 けどまあ、やっぱりまだ死ねんなぁ。孫が山ほどいるんでな」

 快活に笑う老兵に、リアは呟く。

「――失っても、それでもまた、だれかと家族になれるのでしょうか?」
「ああ、もちろんさ。
 血のつながりは、まあ大事だろうが。一番大事なのは心の持ちようだ。
 オレの血を引いてる子も、そうじゃない子らも、今じゃみんなオレの家族だ。
 あいつらは皆、オレの可愛い孫だよ」

 老兵からすれば孫のように幼いリアであっても、猟兵である。
 その戦闘力は数十年生きた老兵よりも、遥かに高いことだろう。
 それでも、リアは老兵から得られた物がある。

「……わたしはあたたかいもの、やさしいものが好きです」
「ん、そうか」
「おじさまは、とてもやさしいのですね」
「はは、照れるなぁ」

 たくさんの家族を守り慈しむ老兵に、贈り物を選び相手を想うときのやさしい目に会えただけでも、来た甲斐があったと。
 多くの宝物を抱えて、リアと老兵はやってきた夏輝から素晴らしい贈り物をもらうことになるのだった。


●夕焼けの殺人鬼の弟妹たちは団らんする。

 エーミール・アーベントロート(《夕焼けに立つもう一人の殺人鬼》・f33551)。
 エミーリア・アーベントロート(《夕焼けに佇む殺人鬼[LadyAbendrot]》・f35788)。
 メルヒオール・ツァーベル(トリック&スピードスター・f36178)。

 とある猟兵の弟妹である三人の兄妹は、『兄』への贈り物を探してこの都市にやってきた。
 他者が口出ししづらい複雑な境遇のフラスコチャイルドたちであるため、仔細は省略させてもらう。

「メル、こっちですわ。この建物ですわ!」
「姐さん、そない急がんくっても大丈夫やって」

 目当ての店をリサーチ済みのエミーリアが駆け足で建物の中に入り、メルヒオールに呼びかけている。
 メルヒオールは瓦礫を避けて、軽快にエミーリアを追いかけている。
 そんな二人の様子を、エーミールは渋い表情を浮かべて眺めている。

「……メルさんは、彼女と仲が良さそうでいいですねえ。
 私は……彼女の存在に嫉妬してしまってます」

 どうやら、エーミールはエミーリアに対して何か含むところがあるようで、疎外感があるようだ。
 こちらの調書によれば、エーミールとエミーリアは初めて出会った時にトラブルがあったらしいが、さて……。

「エミさんってそんなに姐さんが苦手やったんか……。
 でも、仲良く出来るんやない? 似た者同士やし」
「仲良くと言われても……ちょっと難しいですよ」
「まー、そのうち気づいたら心許しとるって」

 足取り重いエーミールに近づいたメルヒオールが二人で語らっていると、店の中からエミーリアがドアに半身を隠して二人を見つめていた。

「むー、エーミール兄様に嫌われてる気配を察知ですの。
 リアは別に、エーミール兄様のことは嫌いじゃないのに……むー」
「……なんて言ってももう遅いか。
 じゃあはい、リア、メルさん。兄さんへのプレゼントを考えますよ」
「ほいほい、プレゼントな」

 手を叩き、空気を入れ替えようとするエーミール。
 メルヒオールもエミーリアも、エーミールの言葉に素直に応じる。
 我が意を得たりとエミーリアが手を広げる。

「はぁい。兄様への贈り物ですね! お任せください!
 兄様達のリサーチは済んでますの! このデパートは百貨店なのですわ!
 食べ物はダメになってるかもですけれど、衣類も装飾品もジュエリーも、残っているはずですの!」

「ほほう、百貨店かー。……あの兄貴へのプレゼントねー……。何がええんやろ」
「兄さん、お菓子は好きじゃないから……食品回りは見なくていいでしょう」
「兄様はお花とかも嫌いって言ってましたの。
 だから自然公園ではなくここを選んだのですわ」

 三人の脳裏に浮かぶのは、誠実そうな笑顔を張り付けたメガネの男。
 衣服は返り血に塗れるだろうし、香水も消臭目的で使用していると聞く。
 宝石は、彼ならメリケンサック代わりに用いるかもしれない。

「うーん。……アクセサリーなら付けてくれるでしょうか。
 兄さんに合いそうなアクセサリーですが……」
「でしたら、兄様へはペンダントはいかがでしょう?
 家族から貰ったものなんて1つもないと仰ってましたから。
 ここはリア達がプレゼントするのが1番ですの!」
「ペンダントか。確かにそれなら場所を選ばず付けれるな。ええやん、姐さん」

 ペンダントならば嵩張らず、懐に仕舞えば汚れずに済む。
 装飾品売り場に向かえば、何かしら品物も残っていることだろう。

「え? ペンダント? ああ……まあ、確かに。
 兄さんはそういうのは持ってなかった、ですよね?」
「まー、あの兄貴がつけるかって言ったら怪しいところやけど。
 意外と弟妹思いやし、貰ってくれるやろ。
 エミさんから渡されたら絶対に貰うやんあの人。間違いない」
「そうですわ! さあ、行きましょう。こちらですわ」

 フロアマップも把握していたエミーリアに先導され、三人は装飾品売り場へと足を運ぶ。
 いくつかのショーケースは壊され、宝石や金細工のものはほとんど失われている。
 それでも質素なデザインのものは残り、箱の中に仕舞われていた量産品など無事なものもあった。

 同じように贈り物を探している奪還者たちと会釈しつつ、手分けして物色していく中、エーミールが兄が好みそうな雰囲気のペンダントを見出した。
 そしてエミーリアは、ご機嫌に笑みを浮かべてペンダントを三つ、並べる。
 店内に残っていた装飾品を組み合わせて、赤色と青色、緑色のペンダントを造ったのだ。
 助っ人に来た澪が魔法を施して加工した鎖で装い、お揃いのデザインのペンダントが輝く。

「それでは、はい! エーミール兄様、メルも!」
「……えっ、私にも??」
「ん、俺も?? ええの??」

 エミーリアは自分に赤色のペンダントをつけ、青色のペンダントをエーミールに、緑色のペンダントをメルヒオールに差し出す。
 兄への贈り物だけでなく、兄弟へも贈り物をしようとエミーリアは考えて、備えていたのだ。計画通りである。

「だって、エーミール兄様もリアのお兄様ですから! メルも可愛い弟ですの!」
「まあ確かに、俺も兄弟言うたら兄弟なんやけど……」

 素直に受け取り、首にかけるメルヒオール。
 一方でエーミールは一瞬躊躇するが……。

「いや、お前から受け取る理由なんて……いえ、貰いましょう。
 私達は兄妹なんですし」
「! エーミール兄様……!」

 贈り物を受け取ってくれたことに、感極まった様子のエミーリアが喜びの感情を露わにする。
 その顔を見て、エーミールとメルヒオールが頬に朱を刺す。

「でも勘違いしないでくださいね!
 私はお前をまだ妹と認めたわけではありませんからね!!」
「あー、待って。俺もなんか恥ずかしなってきたわ」

 赤面する二人の兄弟を、エミーリアは笑顔で眺める。

「ふふ、大丈夫ですの。きっと、認めてくれる日が来ると信じてますの」
「勘違いしないでと言ってるでしょう!
 ほら、兄さんへのプレゼント、剥き出しだと風情がないでしょう!
 何か包装紙を探しますよ!」

 エーミールが急ぎ足で店の奥に向かい、エミーリアが嬉しそうにその後を追っていく。
 二人の兄姉の背中を眺め、メルヒオールが微笑みながらつぶやく。

「エミさんが姐さんを認める日、ねぇ……。
 そんなんあるんやったら……いつか写真に収めたいな」

 いつの日か、その記念すべき日が訪れることを思い浮かべながら。
 メルヒオールは自身を呼び掛ける兄と姉を追いかけるのだった。


●花が彩る人の想い。

 ニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)はグリモア猟兵のバルタン・ノーヴェと共に、自然公園へと赴いていた。
 オブリビオン・ストームが吹き荒ぶアポカリプスヘルにおいて、野生の花が咲くというこの場所は希少なものであろう。
 幾人かの奪還者たちが、想い想いの花を見定めている。

「荒くも整った景観に人々の努力が見えるわね……。
 まだ貧しい拠点へ物を贈ろうとする心も素敵ね」
「ワタシたちが戦った後も、皆様はここで生きて行くのでありますな」

 現地の人々の逞しさに敬意を示し、尽力しようとニコリネは意気を籠める。
 傍らに控えるバルタンに声をかけ、ニコリネは笑顔で自然公園に入る。

「さぁバルタンさんもご一緒に! 貴女の溌溂とした明るさで皆を元気づけて下さいな」
「HAHAHA! 了解であります、ニコリネ殿!」

 バルタンは立て看板を持ち、ニコリネの後を歩いていく。
 その看板には、『フロラ・フルル』の文字が張り紙されていた。
 手ごろな広さの草原に敷物を広げ、ニコリネとバルタンは奪還者たちに声をかけていく。
 生花を売り歩く花屋さん、『フロラ・フルル』の臨時開店だ。

「ここは花屋にお任せを! 皆さんの家族や恋人の話を聞かせてくださいな。
 どんな花だって人を笑顔にする力があるわ!」
「いらっしゃいマセー! ニコリネ殿が皆様の花束を造る手伝いをしてくれマース!」

「お。猟兵さんが手伝ってくれるのか?」
「助かるわ、数を集めればいいって訳じゃないもの」
「花言葉っての、知ってますか?
 何か妻に渡したらマズイ花があるって聞いたことがあるんですけど……」

 にわかに集まって来る奪還者たち。
 その一人一人の話に耳を傾け、ニコリネはそれぞれの贈る相手に相応しい花を見繕う。
 荒地に咲く草花に現地の人々の姿を想い重ねつつ、ニコリネは慣れた手つきで花を束ねる。

「あの……私のお父さん、身体が弱くて、あまり外を出歩けないから……」
「それなら、こちらの花なんてどうかしら。明るい色合いの花で……」

 ニコリネは、UDCアースの出身である。
 この世界とは境遇こそ全く違うものの、祖国を離れて独り立ち活動している。
 故郷の母を想い過ごした日も少なくないだろう。
 そうしたシンパシーから、奪還者たちに親身になって適切な花を選んでいく。

「実は、この機会に告白しようと思って、その人は色のない花が好きって言ってたんだけど、……どんな花なのか……」
「それなら白い花のことね! 任せて、この公園の中だと……んー、そうね……」

 そうしているうちに花が不足してきた。
 取り尽くす訳にはいかないし、もともとの種類も豊富という訳ではない。
 しかし、助っ人に駆け付けた澪の魔法によって、土の上に色とりどりの花が咲き誇る。
 魔力によって構成されたものであるため、生態系に支障はないという話だ。
 奪還者たちが驚き、栄える花園に感嘆の息を漏らす。
 彼に礼を告げ、ニコリネは思う存分に知識を振るって花束を作っていく。

「ニコリネ殿! こちらの方が薔薇をメインに据えたいとのことデース!」
「わかったわ。どんな方に贈りたいのか、教えてね! 立派な花束を作って見せるわ」

 恋する情熱に、家族を思う慈しみに、愛を伝える直向きさに。
 花束を贈る側も、贈られる側も笑顔にできるように。
 贈り手の花を束ねる間の会話も愉しみながら、ニコリネは真摯な時を過ごしていく。


●一日にしては成らない剣。

 それぞれ、奪還者や猟兵が宝物を探し、作っている頃。
 都市部の臨時スペースにて、一人の猟兵が奪還者の若者に囲まれていた。
 琥珀色の髪を長く伸ばし、煌めく緑色の瞳を大きく開いた少女。
 フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)である。

「まぁ、わたくしも家族から眉目が非常に優れているとは聞かされていましたが……」
「はい! とても綺麗です! できればお近づきになりたいと思います!」
「ふふっ、ありがとうございます」

 異世界クロムキャバリアの宗教国家の代表といえるフレスベルクの前には、若き男性の奪還者たちが目を輝かせて列を形成していた。
 眉目秀麗なフレスベルクと語らえ、お近づきになれるチャンスであると判断してのことだった。
 その意志を汲み取り、フレスベルクはこの都市の航空地図を手に男性たちと語らっている。

「この荒廃した世界で復興する為にモチベーションがある事は良い事です。
 それでは……こちらの建物の屋上にアンテナの設置をお願いできますでしょうか?
 身軽だというあなたになら任せられると思うのです。危険だと思いますが……」
「おまかせください! 命を懸けて設置してきます!」
「ありがとうございます。でも……絶対に無事に帰って来てくださいね?」
「はい! 必ずや無傷で生還いたします!」

 このように。
 フレスベルクの美貌に引き寄せられた奪還者一人一人から丁寧に話を聞き、人心掌握(カウンセリング)を行っていた。
 ユーベルコード《大衆を騎士団とする智と戦司りし蛇にして梟の女神(マスターマインド・ザ・アテナ)》。
 人心を掌握した奪還者たちの得意な能力、やりたいこと、為したいこと。
 そうした情報を聞き出し、適切な指示を出してこの荒廃した都市を立て直す準備を一緒に行っていた。
 これが、フレスベルクの義理チョコならぬ宣託カウンセリングである。

「あの、フレスベルクさん! 好きな宝石とか、ありますか!
 俺、土を掘ったりするのが得意で、岩の中にある宝石とか見つけたりも!」
「そうですね。今は……宝石よりも、こちらの広場が気になりますね。
 瓦礫を取り除いたら、飛行機は無理でもヘリなどが離発着できるようになりそうで……。
 もしよろしければ」
「喜んで! 是非、俺にその瓦礫を撤去させてください!」
「ありがとうございます」

 優しく微笑むフレスベルクに、また一人奪還者が心を掌握された。
 男性陣たちは慈愛に満ちたフレスベルクのために、好感度アップのために奔走する。
 フレスベルクの巧みな話術により、仲違いや競争で負傷者がでないよう割り振りも考えて配分している。

 うまくいけばこの都市を復興させた折に、メリアグレース聖教を布教させることができるかも? という思惑もあるようだ。
 とはいえ、まだオブリビオン・ストームが完全に消滅した訳ではない。
 ここに過剰に物資を投入しては、要らぬ災厄を招くことになるだろう。

「焦りは禁物ですね。安全第一に、しっかりと足場を固めて行かないと」

 故に、此度は準備。
 いつしか、アポカリプスヘルに真の意味で平和が訪れた時に、すぐに復興に取り掛かれるように。
 フレスベルクの指示を受けた若者たちがそのやり方、手段を身に着けて、他の都市でも取り掛かれるように。
 その下ごしらえ、彼らが文明を立て直すための剣(ブレイド)を見出させる事がこそが、フレスベルクの贈り物であった。


●無垢なる竜姫の愛情表現。

 フレスベルクが布教行為をする傍ら、広い路上にて複数人の奪還者が集まり加工場を形成していた。
 男女混合の奪還者たちは工業用カッターやハンマー、ドリルなどを用意して、それぞれが拾い集めてきた物品を加工してアクセサリーを作ろうとしていた。
 チェーンソーもあるよ。
 そこに、銀髪紫瞳の女性が二体の竜を伴って現れていた。

「お仕事終わったらデートして来ても大丈夫だからね」

 人工のドラゴンを創るための実験体として囚われていたドラゴニアンの少女。
 サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)は《番い竜の召喚(サモン・ペアドラゴン)》により雄竜と雌竜の若い夫婦を召喚して、アクセサリー作りのお手伝いをしていた。
 番い竜は前足が翼になっており四つ足型であるために物作りは行えないが、その鱗を抜け落として素材として提供していた。
 竜鱗である。

「みなさん、アクセサリーの一部にどうですか?
 傷が付きにくいのでおすすめですよ!」

 サフィリアの許しを得て、何人かの若い奪還者が竜の鱗を手に取る。
 陽にかざして眺めたり、ドリルで穴を開けようとしたり、それぞれの反応を見せる。

「すごい、綺麗……」「あの、ドリルが潰れたんだけど……」
「穴開けられねぇな、これ。縁取りしてブローチみたいにするか……?」

 このアポカリプスヘルで滅多にお目にかかれない希少な素材を囲んで、あーだこーだと話し合っている奪還者たち。
 その様子を退屈そうに眺めている番い竜は、じゃれ合うように身を寄せ合う。
 その様を見上げて、サフィリアが嘆息する。

「私ももうすぐ成人するので、この二頭みたいにパートナーが欲しいなぁとは思っているんですが」

 耳を大きくした独身男性奪還者が数名、静かにかつ速やかにサフィリアに近寄って来る。

「恋愛ってよくわからなくて……」
「お嬢さん、それなら一度体験してみるのはいかがかな?」
「俺が手取り足取り教えて差し上げますよ」

 露骨なアピールであるが、サフィリアを子供のように思っている番い竜が特に気にする素振りを見せていないため、直接的な危害はないと判断されているようだ。
 度を越せば、番い竜が行動を起こすことだろう。

「え? 体験ですか?」
「そうそう! 経験するのが一番理解に近づくと思うんだ!」
「なるほど? それならどなたか、今日私と付き合ってくださーい!」

 はいはいはい! と、挙手する男性陣。
 この場にいる女性奪還者が鋭い眼差しを向けている。
 衆人環視の中でならば妙な真似はしないだろう。

「それじゃあ、ええと……」

 サフィリアは恋愛の参考にするべく、番い竜を見上げる。

「こう、首を近づけて寄り添ったり」「ひゃわ……!?」
「毛づくろいをしたり」「あ、お、おお……か、香りが……」
「してもらったり……お願いしますね?」「おおお、おおうとももおわお」

 サフィリアとの接触に震え、おっかなびっくり髪に触れ、男たちは顔を赤くして轟沈していく。
 心配は要らなかったと見える。

「うーん、難しいですね、どうしても竜の愛情表現になってしまいます」

 人間の男性たちにとって、竜の愛情表現は刺激的だったようだ。
 具体的にはデートとかショッピングとかを想定していたらボディタッチされたのでノックアウトされている。

 そんな様子を眺めながら、女性陣はサフィリアの実力に慄きつつ、「参考になるわ」と心のメモに刻んでいるのであった。
 なお、竜鱗は助っ人にやってきた澪の協力により無事に加工され、奪還者たちが望むブローチやネックレス、腕輪の装飾などに用いられていった。


●そして二人は支えて行った。

 澪はデパートでも自然公園でも大活躍だった。
 百貨店にてエーミールたち兄妹と出会った時にはペンダントのために貴金属を加工して鎖を編み、装飾品を物色していた奪還者たちの選んだ貴金属を浄化の魔力で清めて行った。

 自然公園ではニコリネの判断のもとで、『everywhere garden』を発動させた。
 澪の魔力を込めて聖痕をかざす事で綺麗な花園を生み出して、年若い奪還者たちが見たこともない花を披露した。
 生まれて初めて薔薇を見たという少年奪還者のお礼の言葉を胸に抱き、澪は合流地点へと向かう。

 そこではサフィリアの番い竜の鱗でアクセサリーを加工しようと四苦八苦している奪還者たちが居たので、協力した。
 そして澪は行く先々で、プレゼントを受け取る誰かの未来を想い、安寧と幸福が訪れるように祈りを添えて行った。
 そんな愛おしい様子を見つめる一人の奪還者が、澪に近づこうとしていた。


 夏輝はおもちゃ屋やアミューズメント施設に赴き、数々の機械を修理し、サポートをこなした。
 リアが抱える電池のない携帯ゲーム機の配電を弄り、充電式に変えることで起動できるようにした。
 画面が動いた瞬間、リアと一緒にいた老兵は笑顔で涙を浮かべていた。

 奪還者たちがアミューズメント施設を物色しているのを見かけ、剥げている塗装を修繕し、回路やプログラムの不具合を直し、電力があれば使えるように修理して行った。
 手で持ち帰る一部の物品に限られているが、奪還者たちは蘇った文明の痕跡に喜び燥いでいた。
 そうして夏輝が奪還者たちへのプレゼントを贈り、合流地点へ向かうと……。
 心配していたことが起こっていた。


「ああ、あの!」
「ん?」

 澪に声をかけたのは、若い男性奪還者。
 フレスベルクやサフィリアではなく、澪に魅了された独身男子であった。
 意を決して告白しようとしているところへ、夏輝がさり気なく近づいていく。

「猟兵さん、もしよかったら、その、俺と……! こ、交際を!」
「えっ、あ、恋人? ご、ごめんなさい、僕相手が……」
「澪ー、こっちなんか手伝う事あるか?」

 硬直する男子奪還者。
 そして、夏輝の後ろをついてきていた女性奪還者も硬直した。

「あ、夏輝君。そっちの様子はどう?」
「おう、こっちは順調だぜ。ん? そいつは?」
「こ、恋人、さんと、一緒だったんですね……」

「え?」「んぇ?」

 崩れ落ちる男性奪還者。
 そして澪と夏輝の背後で慟哭を上げる女性奪還者。

「ど、どうかお幸せに……うぅ……」
「かっこいいし腕もすごいし、狙ったのに……!
 そりゃあ恋人いるわよねぇ……!
 しかもめちゃくちゃ可愛いし、完敗だわ……!」
「恋人……えっちょ、俺じゃな……」

 前後を絶望した奪還者たちに挟まれ、夏輝は思案する。
 状況が把握できずに首をかしげる澪を見て、まあ勘違いさせたままなら平和になるだろうと判断して、説明することを止めた。
 そして、ふと思い至ったことを口にする。

「ところで、お二人とも恋人いないんだったら、二人で付き合ったらどうなんだ?」
「「えっ」」

 それは発想の転換。
 ずっと行動していたことで互いの力量はある程度把握しているし、人格も理解している。
 なまじ、それぞれ別々の拠点からやってきたという立場から『同業者』という認識であり、男女として意識していなかったことが露見した。
 猟兵という高嶺の花を狙うことに意識が向いていたがために、見落としていたようだ。

 夏輝の落とした一言により、これから各拠点間で合同婚活パーティが計画されることとなるのだが……それが、今回の一番大きなプレゼントなのかもしれない。

 こうして、数多くの猟兵たちの介入により、奪還者たちのバレンタインは賑やかに過ごすことが叶った。
 それぞれの拠点に持ち帰った宝物は、多くの人を笑顔にすることだろう。
 それが、アポカリプスヘルの未来につながることは間違いない。

 ―――ハッピーバレンタイン、エブリワン!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年02月21日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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