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CHROM CAVALIER VD

#クロムキャバリア #お祭り2022 #バレンタイン #VD(ヴァレンタイン・デイ)


●身体は甘い闘争を求める
「ハッピーバレンタイン。今年も愛する者へチョコを送る祭典が幕を開けた。クロムキャバリアではこの時期に各地でリア充憎しとテロ活動に勤しむ武装集団『S.H.I.T.』も、クリスマスでの働きによって今年は鳴りを潜めているようだ」
 リコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)が『ギア』と呼ばんでいる、テレビウム用の作業用機械に乗りながら猟兵たちを出迎えた。いつもながら顔文字が浮かばないモニターであったが、どこか心なしかウキウキとさせている。

「そしてだが、君たちを呼んだのはクロムキャバリアで今起きようとしている事柄についてだ。そう身構えなくても良い。今回はオブリビオンマシンの活動ではなく、とあるイベント行事についてだ」
 そのようにリコは念を押すと、ブゥンとモニターに自らが予知したビジョンを映し出して、猟兵たちに見せる。
 その場面は闘技場、いわゆるバトリングと呼ばれるキャバリア同士が互いにぶつかり合う競技の一場面であった。タッグ・トーナメントのようで、呼吸のあった連携で肩を赤く塗ったチームが勝利すると、そのコクピットから出てきたのは一組の男女であった。
 彼らは勝利の美酒に酔いしれながら、絆を確かめ合うかのように熱い抱擁を交わしていた。

「絶え間ない戦乱が続くクロムキャバリアでも、恋人たちはバレンタインの日にお互いの愛を確かめ合っている。他の世界同様、手作りのお菓子や料理を振る舞ったり、戦地へ向かう恋人へお守りを手渡すのは同じだが、ここならではの風習がある。パイロットのカップル、若しくは夫婦がキャバリアに乗ってバトリングに出場するといったことだ」
 モニターの場面が変わると、今度は異性にチョコを手渡したり、軍の入隊が決まったあどけなさが残る青年へ恋人であろう女性がお守り袋を手渡す場面が一通り流れた。
 そして、最後の映像が終わればリコのモニターはブツンと切れて、いつもの何も映っていない画面へと戻る。

「場所は、何時ぞやバトリングにオブリビオンマシンが参加していたのを排除した、傭兵国家『ヘキサ』の闘技場だ。この日に合わせて派兵先の任地から、若しくは自らの腕ひとつでフリーランスの傭兵として活動している者も帰国しているようだ。新しい出会いを求めたり、気になっているあの子に良いところを見せるタイマン勝負も開催されているようなので、例え独り身であったとしても催しを楽しむことは出来るだろう」
 普段は口数の少ないリコが妙に饒舌なのも、世界は違えどキマイラフューチャーにおいてテレビウムによるバトリングの選手だった過去があってのことだったのだろう。
 そして、リコの誘いに乗った猟兵たちも、ある者は甘酸っぱい闘争を、またはほろ苦い闘争を求める者たちであった。

「どうやら話が決まったようだな。一足早いが、会場へと向かうぞ」
 その様子をリコは確かめると、モニターが光を発して彼らを甘い闘争が渦巻く廃プラントの闘技場へと誘うのだった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 バレンタインデー、略してVD。この記号を見るとどうしても身体が闘争を求めてしまうので、レイヴンであることを遺伝子レベルで刻まれているのだなぁと想うところです。

●シナリオ概要
 当シナリオは、1章のみの構成となっております。
 舞台は、傭兵派遣を主産業としています小国家『ヘキサ』。その国内の外れに位置する、廃プラントを再利用した闘技場となります。
 以前に展開したシナリオと同じ闘技場となりますが、より詳しくどのような構造であるかのご確認はこちらをご参照になられてください。
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=28919

 闘技場ですが、地上は荒野と廃墟が織りなすバトル・フィールド、地下は選手待機所兼観戦所となっています。
 ですので、バトリングに参加される方は地上で、選手待機所の食堂をお借りしたり手紙などで想いを伝えたりする場合は地下でとなる形になります。
 特にプレイングボーナスはございませんので、思い思いのプレイングをお投げくださいませ。

 それでは、チョコをも溶かす熱い闘争に溢れたプレイングをお待ちします。
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第1章 日常 『クロムキャバリアのバレンタイン』

POW   :    闘技場や訓練場を訪れる

SPD   :    料理を作り、大切な人と食事を共にする

WIZ   :    愛を伝える手紙を綴る

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アルマリジーア・ホープスター
恋とか愛とか信じるタマじゃないけど、この季節くらいは、楽しい酒を飲む相手が欲しいもんだねえ。
という訳で一夜の出会いを求めてバトリングに出ようか。

ジャンピング・シェイドで出場。「遊撃、ダッシュ、操縦、先制攻撃」を使用して、エンジンかまして急襲だよ。UC:短剣巧者も使用、「地形の利用」で廃墟の狭いルートに誘い込んで、スパイダー・リリーで「投擲、部位破壊」を織り交ぜて攻撃だ。
攻撃には「武器受け」で対処。
さあ、動きについてこれるかい? 無茶な運転は慣れているのさ。じゃじゃ馬をならすつもりなら、覚悟決めて飛び込んでくるんだね!

勝っても負けても飲みに誘おう。いいビールが飲める店があるんだよ。行かないかい?



 傭兵国家『ヘキサ』。かつては暴走衛星『殲禍炎剣(ホーリー・グレイル)』によって世界が炎に包まれたその日に起きた国主の死から端を発し、国家としての統制が失われ各地の軍閥が集合離散を繰り返す軍閥割拠の地であったが、混迷を極めた内戦の末に傭兵国家として平定された。百年近い内戦によって平和を知らずして生まれ、平和を知らずにして育ったキャバリア乗りたちはそれに馴染めずに泣く子も黙る『ヘキサの傭兵』として名を馳せ、今日もどこか見知らぬ土地で闘争に明け暮れているであろう。
 だが、この日。2月14日のバレンタインデーはそんな戦鬼たちにとっても特別な日であった。普段は強面のキャバリア乗りたちが闘争の乾きを癒しているコロシアムも、数多くの老若男女で溢れている。片や年が近い若い男女、片や苦も楽も等しく分け合って来たであろう夫婦。そして、この祭事を縁に新たな出会いを求める者たちである。

「恋とか愛とか信じるタマじゃないけど、この季節くらいは、楽しい酒を飲む相手が欲しいもんだねえ」
 雑踏に紛れたアルマリジーア・ホープスター(短剣ほど素敵な友達はいない・f36387)は、人々が自由に気の合う連れ合いを探している光景を見回していた。その眼は何処か羨望の眼差しであり、遠い昔を思い出すと眉をひそめながら深い溜め息をして軽く頭を振った。
 アルマリジーア・ホープスター。どこか俳優か歌手めいた芝居がかった名であるが、その実は夫殺しと呼ばれ、私刑によって殺された『平凡な主婦』が名乗った偽名である。彼女は夫の殺害を咎められ一度死に、その後弔う者なきまま打ち捨てられた彼女はデッドマンとして猟兵に覚醒すると自由を得た。生きる死者として蘇る前まで彼女の自慢だった艷やかな黒髪は不条理な世界への怒りを現すように燃える炎の緋色の髪となっていたが、これは整形した顔も相まって悪女として語り継がれる者だったと知るものなどは居ない。
 だが、怒りで蘇った後は名と姿を変え、探偵と傭兵の二足の草鞋で街と戦場を駆け巡っても、PTSDの域にまでトラウマを植え付けられた記憶によって暴力的で支配欲の強い夫の悪夢にうなされる夜などは無かった。そんな過去を持つ彼女が一日限りの出会いであったとしても、自らの人生を狂わせた男を忘れさせてくれる一夜の出会いを求めるのは自然の成り行きであったのかもしれない。

「連れ合いじゃなく新しい出会いを求めるバトリングは……ここだね」
 恒例のタッグトーナメントに負けない人だかりが、ソロトーナメントの受付場に集っていた。さながら結婚相談所めいた様子で様々な風貌で引き締めあっていたが、アルマリジーア同様に『訳あり』な顔持ちの者も一定数居ると言ったところだ。エントリーを済ますと自らのキャバリアに搭乗し、その中で待機し続けて自分の番を告げるアラームが鳴れば地下のハンガーからエレベーターで戦場となる地上へと出る。

「ジャンピング・シェイド、出るよ」
 アルマリジーア同様、戦場でただただ朽ちていくだけだった機体を運良く拾いあげて改造に次ぐ改造を施した量産型キャバリア『ジャンピング・シェイド』。型番も忘れ去られ、ツギハギに次ぐツギハギの末に頭部胸部しか形を残していないそれは、まさしく彼女の写し身でもあった。
 鈍重そうな見た目に反する高速機動で廃墟に突入すると、路地を縫うように滑走して追走する対戦者のキャバリアをサブカメラが捉える映像を通してモニターで確認する。
 相手はHCM-74『ピースメーカー』。傭兵国家ヘキサで開発された量産型キャバリアだ。機体を隠すまでの大盾を有している本機であるが、市街地戦を想定してか取り回しの良い小盾に持ち替えている。
 あれなら、自らが得意とする白兵戦に持ち込むのは容易である。そう確信したアルマリジーアは機体に急制動を掛けて、金属同士が擦れ合う甲高い摩擦音と火花を散らしながらより狭い路地へと入り込んだ。

『そこは行き止まりだぞ』
 ホームグラウンドとして地の利に明るい彼にとって、もはやアルマリジーアは袋のネズミ同然である。うまく逃げたつもりだが迂闊な女だと零し、刃を赤熱化させたヒートアックスを構えながら詰めに入ろうとした矢先、紅い飛翔体が彼が乗るピースメーカーに襲いかかった。

「行き止まり? それを知ってここに入ったのさ」
 一見すると、ジャンピング・シェイドは路地を塞ぐ瓦礫によってピースメーカーに追い詰められているように見える。だが、裏を返せばピースメーカーも狭い路地によって行動が制限されているといった状況だ。この状況を打開しようとするならば、路地から抜け出すしか無い。行動がそれに限られている今、戦いのイニシアチブはアルマリジーアによって握られているも同然である。

『クソ、待ち伏せか!?』
 案の定、獲物を追い詰めたと思った対戦者は後退を余儀なくされ、小盾で機体を防御しながら引くしか無い。

「さあ、動きについてこれるかい? 無茶な運転は慣れているのさ。じゃじゃ馬をならすつもりなら、覚悟決めて飛び込んでくるんだね!」
『……ッ! 言ったな!!』
 そして、止めのひと押しでの共通チャンネル越しの挑発が功を奏する。後ずさりをして仕切り直そうとしていたピースメーカーはアルマリジーアの啖呵に乗って、ヒートアックスを振りかざしながら詰め寄ってくる。
 鈍重な外観とは反して高い機動性をもってジャンピング・シェイドの装甲を、熱せられた刃で薄っすらと傷が走る。まさに紙一重の差で躱してみせた、アルマリジーアは赤い短剣を無防備となったピースメーカーの頭部を貫く。
 そして、バトリングの規定である『頭部を破壊された者は失格』のルールによって、アルマリジーアが勝者となった。

『まさか、相手があんただったとはね』
「おや、私の名前と顔をご存知だったのかい?」
『ああ、蛇の道は蛇ってね』
 そして、両者の機体は地下へと回収され、名も顔も知らされずに死闘を繰り広げた両者はここで初めて顔を合わせることになる。
 アルマリジーアの対戦相手はヘキサの傭兵であった。彼曰く、常勝のレコードホルダーと語っているが、果たして何処まで本当か自分を大きく見せるホラを吹いてることやら。そんな彼に興味を持ったのか、笑みを浮かべながらアルマリジーアから誘いを出す。

「……いいビールが飲める店があるんだよ。行かないかい?」
『喜んで。飲み合いながらお互いの武勇譚に花を咲かそうぜ』
 そして、一組の男女はバトリング施設のBARへと足を運ぶ。
 ……今夜はいい夢が見れそうだ。気怠げだったアルマリジーナであるが、一瞬であったが晴れやかな笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クリスティーヌ・エスポワール
なるほど、バトリングで共同作業、というのが流儀なのね
……というわけで、姉にして恋人のニコ(f02148)と一緒にバトリングよ!

ニコをコクピットを並列型の複座に改装してお出迎え
「どうぞ、お姫様♪」
うん、つかみはOKかしらね
でも、乗ってからのニコのスキンシップにドキドキしちゃうっ
「も、もうっ!索敵と出力制御は忘れないでよ!」

さて、実戦では【流星は闇天を裂く】で高速巡航とフルバーストで相手を一気に叩く!
制御の半分をニコに投げてるから、割当分ではいいところ見せるわよ!
「マルチロック、レーザー発振器全励起!ファイア!」

♪高い空飛び出して、太陽を掴もう♪

戦闘後に二人でハグとキス!
見せつけても、いいわよね?


ニコレット・エスポワール
大好きな双子妹のクリス(f02149)とバトリングー!

と言ってもボクの機体は芸能特化型だからお休みで、
クリスの機体に横並びの形で相乗り…新鮮だよねっ
お姫様!?…う、うん。お願いね、王子様っ(かぁっ)

判ってるってば、クリスっ
索敵と出力制御は念動力でキッチリ♪
(時々手を握ったり顔を覗き込んだりと遠慮がない)

後、【天に響くは、月女神の詩】で
ボクも何時でも援護射撃できるからねっ

♪羽をおっきく広げよ、チョコより甘い空へ♪

…うん、クリスかわいいしカッコいいよっ
でもドキドキキュンキュン来ると、
ボク管理の出力もついついアップしちゃう♪

バトリング後は降りるなり全力ハグ&ディープキス
こういう風習なんでしょ?ねっ♪



「なるほど、バトリングで共同作業、というのが流儀なのね」
 廃プラントの守備隊施設跡を改装した地下観戦所の巨大モニターでは、栄えある優勝者のカップルがズームアップされて観客たちから盛大な祝福を受けていた。
 小国家同士の衝突が絶えないクロムキャバリアにおいて、長い戦乱で一般的なスポーツ大会などの大衆娯楽が廃れていたことも手伝えばキャバリアを用いた娯楽がそれらに置き換えられるものあろうと、クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)は頷いてみせた。

「クリス、そろそろボクたちの出番だよ!」
 クリスティーヌの隣で、彼女と顔立ちが非常に似ている少女が観戦モニターに映し出されている自分たちの名前を指し示している。
 彼女の名は、ニコレット・エスポワール(破璃の黒百合・f02148)。クリスティーヌの双子の姉である。観戦所に響くその通る声を聞いて周囲からの好奇の眼差しがこちらに向けられていると気づいたクリスティーヌが、みるみると白い肌を紅潮させて姉を制止させながらハンガーに留めてあるクロムキャバリア『ASP-44 メテオール』の元へと足早に向かうのであった。

「もぅ、ニコ。騒ぎすぎよ?」
 参加者の多くは男女だが、参加するにあたっては異性同士であらねばならないという訳でもない。中にはお互いの絆や友情を確かめるべく、兄弟や戦友といった男同士や女同士での参加者も居る。彼女たちの世界で言えば友チョコを送り合うような感じなのだろうが、やはり全体の割合的に見れば物珍しいものだったのであろう。

「だって、クリスと一緒に参加できて嬉しいんだもん♪」
 特に悪びれる様子もなく、テヘッと笑いながらペロッと舌を出すニコレットが零した言葉に、クリスティーヌは再び顔を赤らめながらコクピットハッチの開閉ボタンを押す。
 彼女たちの故郷であるスペースシップワールドでも活動できるよう気密性が高められたメテオールのコクピットが、プシューという音を立てさせながらロックが解除された。そして、二人乗り用に改造された『プリンセスハグ型マルチシート』が露わになれば、先にクリスティーヌが入り込むとニコレットへと手を差し出した。

「どうぞ、お姫様♪」
「お姫様!? ……う、うん。お願いね、王子様っ」
 今まで姉のニコレットに振り回されて顔を赤らめされ続けられていた妹のクリスティーヌであったが、今度は攻守逆転とばかりにニコレットが小麦色の肌を赤らめさせた。導かれるままコクピットのシートに座った姿は、まさにお姫様だっこそのものであった。
 体高が5メートルほどのキャバリアが、オーバーフレーム、コクピットブロック、アンダーフレームと各部位で三分割されれば、コクピットは一人乗りでも窮屈なものとなってしまう。複座式のコクピットもあるにはあるが、そうなると細身で流線型のフォルムであるメテオールの各フレームにも手を加えなければならなくなるだろう。
 そうなればコクピット内部のシートを工夫する形となり、ギリギリ二人分乗り込めれるよう元からあるシートの傍に補助席めいたものを増設し、それをメインパイロットを務める側の膝の上にサポーターのシートをスライドさせることで解決したのがコレである。一見すればサブパイロットの頭部がメインパイロットの視界を邪魔しているようにも見えてしまうが、実際にはキャバリアが武器を持った腕と重なるのでそうでもなく、死角にはなりえない。
 お互いの視線を遮らないギリギリの配置を計算して作られた複座型コクピットシート、それがプリンセスハグ型マルチシートなのである。だが、問題が無いわけでもない。

「お姫様抱っこしている王子様の顔……キスができちゃうぐらい、ものすごく近いね?」
「も、もうっ! 索敵と出力制御は忘れないでよ!」
 それは、両者が密接しあって顔も近すぎることである。そんな訳でキャバリアに大幅な改修を施さず複座式にできる画期的なコクピットシートにも関わらず、小国家の軍では風紀の乱れを助長させるといった理由で採用されているのが皆無といったところだ。
 とは言え、こういう催しでは当然ながら需要はあるもので、この日のためにコクピットを改装するものは多く居るとのこと。クリスティーヌもバトリング会場で短時間に機体を相乗り化できて、バスの補助席を畳むよう簡単に一人乗りへ戻せるといった触れ込みをしている改造屋に飛びついてはみたが、いざ座ってみると確かに距離が近すぎる。待ち時間の間に暇を持て余したニコレットが腕を伸ばして抱きついてきたり、耳に熱い吐息を吹きかけられながら頬を擦り合わせてきたりなスキンシップをしてくる。互いの息づかいがはっきりと聞こえてしまう密閉空間内において、クリスティーヌの心臓が早鐘のように打ってしまうのも無理のない話であった。

「そ、そろそろ時間よ、ニコ」
「ちぇ、もっとクリスとイチャイチャしたかったなぁ」
 口を尖らせながら名残惜しそうに身体をクリスから離すと、ニコは彼女の脇にあるサブモニターに顔を向けてコンソールに両手を添えさせる。そうしてメテオールがエレベータで地下から地上に出て数十秒後すると、闘いをゴングを告げる鐘の電子音が無線越しにコクピットへ響いた。
 対戦相手の名前と機体は、彼女たちに知らされてはいない。それは相手も同じことで、この廃墟のバトルフィールドのどこかで自分たちを探し出そうとしているのだろう。

「ニコ?」
「判ってるってば、クリスっ。索敵と出力制御は念動力でキッチリ♪」
 メインパイロットのクリスティーヌの視線と意識は既にメインモニターと操縦桿に向けられており、サブパイロットのニコレットととは声がけをして意思疎通するしかない。索敵や機体出力の調整などはニコレットが担当で、クリスティーヌの左脇のサブモニターから得られる情報を逐一に彼女へと伝える……。が、やはり先程同様にイタズラ心が起きるようで、ちょっと隙を見れば空いた手を操縦感を握っている妹の手の上に添えてみたり、真剣になっている顔を覗き込んだりと遠慮がない。

(こうしてみると、どこの国でも採用されていない理由が分かってくるわ……)
 だが、普段なら索敵も機体の制御も自分ひとりでこなす多忙さから開放され、意識を只々目の前の敵に集中できているのは確かである。

「見つけた! 距離300、200……すぐそこまで来てる!!」
 だが、ニコレットは決してふざけていてはおらず、彼女は自らの役割を果たしてクリスティーヌへと伝達する。制御の半分を姉に投げてる以上、割当分で妹の自分も良いところを見せなければ。そう意気込めば自然と操縦桿を握る力が強まって、クリスティーヌはこちらから先制を仕掛けて相手を一気に叩くべく、メテオールの両肩に設けられたメガスラスター『EP-04AL エトワール・フィラント』で姿勢制御をしながら上空へと躍り出た。

「見つけたわ、リコ。そこね!」
 コクピットは改造されたが、電脳魔術士専用コクピットの機能までは手を加えられてはいない。シートを介して機体と直接同期されたクリスティーヌの網膜に、電子処理されて拡大された対戦相手『ガザニア』の姿が映し出された。細部を確認すると、ただのガザニアではなく相当手を加えられたカスタムタイプであることが伺える。それを証左するように、相手もこちらが上空を取ったことを察知したのか手にしいるビームライフルを撃ち放って牽制を仕掛けてきた。

「相手が1機だけだから、あっちもこっちのように相乗りしてるみたいね」
 ニコレットの索敵で得られたデータがクリスティーヌへと伝われば、それなら条件は同じね、と普段物静かな彼女とはひとつ違った強気な素振りを見せる。ふと、ニコレットが視線を反らして妹の顔を覗き込めば、何時になく真剣な顔持ちの彼女が居て思わず胸をときめかせてしまう。

(……うん、クリスかわいいしカッコいいよっ。でも、ドキドキキュンキュン来ると、ボク……。管理の出力もついついアップしちゃう♪)
 操縦の邪魔をさせないよう心で呟いたが、抑えようにも抑えられないものがある。そんな気持ちを込めて、両者による激しい応戦で機体が揺れる中、そっと口ずさむように小さな声で歌い始める。

「羽をおっきく広げよ、チョコより甘い空へ♪」
「……高い空飛び出して、太陽を掴もう♪」
 それを聞き取ったクリスティーヌが少し迷う素振りを見せたものの、次の歌詞を歌い返した。この歌は『天に響くは、月女神の詩』。将来は芸能界入りしようと日々努力しているニコレットが創った歌であり、UCでもある。
 激しい応酬が繰り広げられる中、メテオールのコクピットでは双子の姉妹の歌声が自然と重なり合い、UCの発現でニコレットの念動力と外装に施されたナノマシンで形成された重力レンズの焦点がガザニア・カスタムへと向けられる。
 彼女たちの歌声が思念波に収束され、それが対戦相手であるパイロットの脳へ直接伝播されれば、一驚を喫して機体の動きに隙が生じるのは必然であった。

「マルチロック、レーザー発振器全励起! ファイア!」
 思わず歌に酔いしれつつあったクリスティーヌであったが、この好機を逃さず一気呵成に打って出た。放たれたビームの軌跡をなぞるように螺旋を描きながら機体をロールさせて、ロックオンしたことを告げる軽快な電子音を合図に『BS-S26IC ニュアージュ・メテオリク』の発振器が光を灯す。流星雨の如き光の雨が誘導レーザーとなってガザニア・カスタムの四肢の関節部を貫く。

『これは勝負あり! 勝者はエスポワール姉妹だぁああッ!!』
 実況中継をしていたリング・アナウンサーの判定により、このマッチの勝者はクリスティーヌとニコレットとなった。上空からメテオールを下降させる中、敗者となったキャバリアの残骸は回収機によって手際よく片付けられており、機体の周囲には栄えある勝者の勇姿を地下観戦所の巨大モニターに映し出すためのドローンがカメラを向けてる。
 不定期に芸能系バイトをしているニコレットはともかく、カメラ慣れしていないクリスティーヌからすれば機体越しでもどこか気恥ずかしさがあったが、観戦所で見ていた『勝者への祝福』に比べればまだ心の準備時間である。

「ニコ、着地したわ。コクピットから出て……ニコ?」
 片膝を突かせる形でにメテオールを降着させ、この改造シートの都合で姉のニコレットへ先に外へ出るようクリスティーヌが促すと、突然ニコレットが抱きついてきた。

「ね、王子様。このまま……シート越しじゃないお姫様抱っこ、してくれない?」
「……もう、わがままなお姫様ね」
 そして、地下観戦所の巨大モニターにはニコレットを抱きかかえたクリスティーヌの姿が映し出される。ドローンのカメラが向けられる中、二人は視線を反らして互いに見つめ合い始めた。ニコレットがクリスティーヌの首に両腕を回すと、彼女も愛しい恋人でもある姉の身体を起こして互いに引き寄せ合う。勝利の高揚感と愛情による至福感が入り混じった熱い抱擁をしながら、二人の幸せを見せつけるかのように舌も入るほどの濃厚で熱い口づけを交わしあったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年03月01日


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト